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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】レーザ装置、及びレーザ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/0941 20060101AFI20240912BHJP
   H01S 3/042 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01S3/0941
H01S3/042
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020148902
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043570
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】井口 琢斗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 義則
(72)【発明者】
【氏名】森田 宇亮
(72)【発明者】
【氏名】川合 一希
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-122804(JP,A)
【文献】特開平09-260754(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137259(WO,A1)
【文献】特開2000-277837(JP,A)
【文献】特開平10-275952(JP,A)
【文献】特開平05-335662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0177073(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0129080(US,A1)
【文献】米国特許第06473444(US,B1)
【文献】米国特許第05317590(US,A)
【文献】米国特許第05278860(US,A)
【文献】米国特許第05251369(US,A)
【文献】特開2022-043569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延在するロッド状のレーザ媒質と、
前記レーザ媒質が通った第1切欠きを有する第1ベース、及び前記第1ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第1光源ユニットと、
前記第1方向において前記第1光源ユニットと並設され、前記レーザ媒質が通った第2切欠きを有する第2ベース、及び前記第2ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第2光源ユニットと、
前記レーザ媒質前記第1光源ユニット及び前記第2光源ユニットを支持するホルダと、を備え、
前記第1光源ユニット及び前記第2光源ユニットは、それぞれ、前記ホルダに対して着脱可能であり、
前記第1ベース及び前記ホルダの少なくとも一方は、前記ホルダに対する前記第1ベースの位置を規定する第1規定部を含み、
前記第2ベース及び前記ホルダの少なくとも一方は、前記ホルダに対する前記第2ベースの位置を規定する第2規定部を含み、
前記ホルダは、前記第1方向において並設された第1保持部材及び第2保持部材、前記第1保持部材及び前記第2保持部材を連結する連結部材、並びに、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間において前記連結部材に取り付けられた仕切部材を含み、
前記第1光源ユニットは、前記第1保持部材と前記仕切部材との間に配置されており、
前記第2光源ユニットは、前記第2保持部材と前記仕切部材との間に配置されており、
前記仕切部材は、前記第1規定部として、前記レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿った前記第1ベースの回動を規制する第1ストッパを含み、前記第2規定部として、前記円周方向に沿った前記第2ベースの回動を規制する第2ストッパを含む、レーザ装置。
【請求項2】
前記第1保持部材は、前記第1規定部として、前記第1切欠きに配置される第1凸部を含み、
前記第1凸部は、前記円周方向に沿って回動可能に前記第1ベースを支持する支持面を有する、請求項に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記第2保持部材は、前記第2規定部として、前記第2切欠きに配置される第2凸部を含み、
前記第2凸部は、前記円周方向に沿って回動可能に前記第2ベースを支持する支持面を有する、請求項1又は2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
前記仕切部材は、絶縁材料からなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項5】
前記第1ベースに取り付けられた前記複数の励起光源の少なくとも1つは、前記第1方向から見た場合に、前記第2切欠きと重なっており、
前記第2ベースに取り付けられた前記複数の励起光源の少なくとも1つは、前記第1方向から見た場合に、前記第1切欠きと重なっている、請求項のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項6】
前記第1ベースは、冷媒が流れる第1流路を含み、
前記第2ベースは、冷媒が流れる第2流路を含み、
前記ホルダは、冷媒が流れる第3流路を含む、請求項のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項7】
前記第1流路、前記第2流路及び前記第3流路は、連通している、請求項に記載のレーザ装置。
【請求項8】
前記ホルダは、前記レーザ媒質が内側に配置された筒体を含み、
前記筒体は、光透過性を有し、
前記第3流路は、前記レーザ媒質と前記筒体との間の流路を含む本流路、前記本流路から分岐する第1分岐流路及び第2分岐流路、並びに、前記本流路に合流する第3分岐流路及び第4分岐流路を含み、
前記第1分岐流路の下流端は、前記第1流路の上流端に接続されており、
前記第2分岐流路の下流端は、前記第2流路の上流端に接続されており、
前記第3分岐流路の上流端は、前記第1流路の下流端に接続されており、
前記第4分岐流路の上流端は、前記第2流路の下流端に接続されている、請求項に記載のレーザ装置。
【請求項9】
前記複数の励起光源のそれぞれは、半導体レーザ素子を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のレーザ装置。
【請求項10】
前記半導体レーザ素子は、積層された複数の半導体レーザバーを含む、請求項に記載のレーザ装置。
【請求項11】
第1方向に沿って延在するロッド状のレーザ媒質を支持した状態にあるホルダであって、前記第1方向において並設された第1保持部材及び第2保持部材、前記第1保持部材及び前記第2保持部材を連結する連結部材、並びに、前記第1保持部材と前記第2保持部材との間において前記連結部材に取り付けられ且つ第1ストッパ及び第2ストッパが設けられた仕切部材を含む前記ホルダを準備するステップと、
第1切欠きを有する第1ベース、及び前記第1ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第1光源ユニットと、第2切欠きを有する第2ベース、及び前記第2ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第2光源ユニットと、を準備するステップと、
前記第1保持部材と前記仕切部材との間において、前記レーザ媒質を前記第1切欠きに通しつつ、前記ホルダに、前記第1方向と交差する第2方向における一方の側から前記第1ベースを配置し、前記第1ストッパによって回動が規制されるまで、前記レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿って一方の側に前記第1ベースを回動するステップと、
前記第2保持部材と前記仕切部材との間において、前記レーザ媒質を前記第2切欠きに通しつつ、前記ホルダに、前記第2方向における前記一方の側から前記第2ベースを配置し、前記第2ストッパによって回動が規制されるまで、前記円周方向に沿って他方の側に前記第2ベースを回動し、前記第1方向において前記第1光源ユニット及び前記第2光源ユニットを並設するステップと、を備える、レーザ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置、及びレーザ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッド状のレーザ媒質と、当該レーザ媒質を励起するための励起光を出射する複数の励起光源と、を備えるレーザ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-285807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ装置は、当該レーザ装置がレーザシステムに搭載された状態で各励起光源がレーザ装置に対して着脱可能に構成されている場合がある。そのような構成では、各励起光源を交換する場合に、レーザ媒質における励起分布が所望の状態となるように、レーザ媒質に対する各励起光源の位置や向きをシビアに調整する必要がある。その一方で、上述したようなレーザ装置は、当該レーザ装置の全体がレーザシステムに対して着脱可能に構成されている場合がある。そのような構成では、各励起光源を交換する場合に、レーザシステムの光軸に対してレーザ媒質の光軸が一致するように、レーザシステムにおけるレーザ装置の位置や向きをシビアに調整する必要がある。
【0005】
本発明は、複数の励起光源の着脱の容易化及び複数の励起光源の位置決めの容易化を図ることができるレーザ装置、及びそのようなレーザ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ装置は、第1方向に沿って延在するロッド状のレーザ媒質と、レーザ媒質が通った第1切欠きを有する第1ベース、及び第1ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第1光源ユニットと、レーザ媒質及び第1光源ユニットを支持するホルダと、を備え、第1ベース及びホルダの少なくとも一方は、ホルダに対する第1ベースの位置を規定する第1規定部を含む。
【0007】
このレーザ装置では、第1ベース及び複数の励起光源が第1光源ユニットとしてユニット化されており、第1光源ユニットがホルダによって支持されている。これにより、ホルダに対して第1ベースを着脱するだけで、ホルダに対して複数の励起光源を容易に着脱することができる。更に、レーザ媒質を支持するホルダに第1ベースを取り付ける際に、レーザ媒質が第1ベースの第1切欠きを通り、ホルダに対する第1ベースの位置が第1規定部によって規定される。これにより、レーザ媒質を支持するホルダに第1ベースを取り付けるだけで、レーザ媒質に対して複数の励起光源を容易に位置決めすることができる。以上により、このレーザ装置によれば、複数の励起光源の着脱の容易化及び複数の励起光源の位置決めの容易化を図ることができる。
【0008】
本発明のレーザ装置は、第1方向において第1光源ユニットと並設され、レーザ媒質が通った第2切欠きを有する第2ベース、及び第2ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第2光源ユニットを更に備え、ホルダは、第2光源ユニットを支持し、第2ベース及びホルダの少なくとも一方は、ホルダに対する第2ベースの位置を規定する第2規定部を含んでもよい。これによれば、ホルダに対して第2ベースを着脱するだけで、ホルダに対して複数の励起光源を容易に着脱することができる。更に、レーザ媒質を支持するホルダに第2ベースを取り付けるだけで、レーザ媒質に対して複数の励起光源を容易に位置決めすることができる。
【0009】
本発明のレーザ装置では、ホルダは、第1方向において並設された第1保持部材及び第2保持部材、並びに、第1保持部材及び第2保持部材を連結する連結部材を含み、第1光源ユニット及び第2光源ユニットは、第1保持部材と第2保持部材との間に配置されていてもよい。これによれば、レーザ装置の小型化及び構造の単純化を図ることできる。
【0010】
本発明のレーザ装置では、第1保持部材は、第1規定部として、第1切欠きに配置される第1凸部を含み、第1凸部は、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿って回動可能に第1ベースを支持する支持面を有してもよい。これによれば、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向において、第1光源ユニットの複数の励起光源の位置を調整することができる。
【0011】
本発明のレーザ装置では、第2保持部材は、第2規定部として、第2切欠きに配置される第2凸部を含み、第2凸部は、円周方向に沿って回動可能に第2ベースを支持する支持面を有してもよい。これによれば、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向において、第2光源ユニットの複数の励起光源の位置を調整することができる。
【0012】
本発明のレーザ装置では、ホルダは、第1保持部材と第2保持部材との間において連結部材に取り付けられた仕切部材を更に含み、仕切部材は、第1規定部として、円周方向に沿った第1ベースの回動を規制する第1ストッパを含み、第2規定部として、円周方向に沿った第2ベースの回動を規制する第2ストッパを含んでもよい。これによれば、仕切部材の第1ストッパ及び第2ストッパのそれぞれに第1ベース及び第2ベースのそれぞれを当接させることで、レーザ媒質に対して複数の励起光源を容易に且つ確実に位置決めすることができる。
【0013】
本発明のレーザ装置では、仕切部材は、絶縁材料からなってもよい。これによれば、第1光源ユニットの複数の励起光源と第2光源ユニットの複数の励起光源との間での短絡の発生を確実に防止することができる。
【0014】
本発明のレーザ装置では、第1ベースに取り付けられた複数の励起光源の少なくとも1つは、第1方向から見た場合に、第2切欠きと重なっており、第2ベースに取り付けられた複数の励起光源の少なくとも1つは、第1方向から見た場合に、第1切欠きと重なっていてもよい。これによれば、レーザ媒質における励起分布の均一化を図ることができる。
【0015】
本発明のレーザ装置では、第1ベースは、冷媒が流れる第1流路を含み、第2ベースは、冷媒が流れる第2流路を含み、ホルダは、冷媒が流れる第3流路を含んでもよい。これによれば、レーザ媒質及び複数の励起光源を冷却することができる。
【0016】
本発明のレーザ装置では、第1流路、第2流路及び第3流路は、連通していてもよい。これによれば、レーザ媒質及び複数の励起光源を効率良く冷却することができる。
【0017】
本発明のレーザ装置では、ホルダは、レーザ媒質が内側に配置された筒体を含み、筒体は、光透過性を有し、第3流路は、レーザ媒質と筒体との間の流路を含む本流路、本流路から分岐する第1分岐流路及び第2分岐流路、並びに、本流路に合流する第3分岐流路及び第4分岐流路を含み、第1分岐流路の下流端は、第1流路の上流端に接続されており、第2分岐流路の下流端は、第2流路の上流端に接続されており、第3分岐流路の上流端は、第1流路の下流端に接続されており、第4分岐流路の上流端は、第2流路の下流端に接続されていてもよい。これによれば、簡易な流路構成で、レーザ媒質及び複数の励起光源を効率良く冷却することができる。
【0018】
本発明のレーザ装置では、複数の励起光源のそれぞれは、半導体レーザ素子を含んでもよい。これによれば、励起光源の長寿命化を図ることができる。また、複数の励起光源が第1光源ユニット又は第2光源ユニットとしてユニット化されているため、半導体レーザ素子単品での取り扱いに求められる繊細さが不要となる。
【0019】
本発明のレーザ装置では、半導体レーザ素子は、積層された複数の半導体レーザバーを含んでもよい。これによれば、レーザ媒質を効率良く且つ十分に励起することができる。
【0020】
本発明のレーザ装置は、第1方向において第1光源ユニットと並設され、レーザ媒質が通った第2切欠きを有する第2ベース、及び第2ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第2光源ユニットを更に備え、ホルダは、第2光源ユニットを支持し、第1ベース及び第2ベースの少なくとも一方は、第1ベースに対する第2ベースの位置を規定する第2規定部を含んでもよい。これによれば、ホルダに対して第2ベースを着脱するだけで、ホルダに対して複数の励起光源を容易に着脱することができる。更に、レーザ媒質を支持するホルダに第2ベースを取り付けるだけで、レーザ媒質に対して複数の励起光源を容易に位置決めすることができる。
【0021】
本発明のレーザ装置の製造方法は、第1切欠きを有する第1ベース、及び第1ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第1光源ユニットを準備するステップと、第1方向に沿って延在するロッド状のレーザ媒質を支持した状態にあるホルダにおいて、レーザ媒質を第1切欠きに通しつつ、ホルダに、第1方向と交差する第2方向における一方の側から第1ベースを配置するステップと、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿って一方の側に第1ベースを回動するステップと、を備える。
【0022】
このレーザ装置の製造方法では、第1方向に沿って延在するロッド状のレーザ媒質を第1切欠きに通しつつ、第1方向と交差する第2方向における一方の側から第1ベースをホルダに配置し、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿って第1ベースを回動するだけで、レーザ媒質に対して第1光源ユニットの複数の励起光源を容易に位置決めすることができる。よって、このレーザ装置の製造方法によれば、レーザ媒質に対して複数の励起光源が位置決めされたレーザ装置を容易に得ることができる。
【0023】
本発明のレーザ装置の製造方法は、第2切欠きを有する第2ベース、及び第2ベースに取り付けられた複数の励起光源を含む第2光源ユニットを準備するステップと、ホルダにおいて、レーザ媒質を第2切欠きに通しつつ、ホルダに、第2方向における一方の側から第2ベースを配置し、第1方向において第1光源ユニット及び第2光源ユニットを並設するステップと、を更に備えてもよい。これによれば、第1方向に沿って延在するロッド状のレーザ媒質を第2切欠きに通しつつ、第1方向と交差する第2方向における一方の側から第2ベースをホルダに配置するだけで、レーザ媒質に対して第2光源ユニットの複数の励起光源を容易に位置決めすることができる。
【0024】
本発明のレーザ装置の製造方法では、第1光源ユニット及び第2光源ユニットを並設するステップにおいては、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿って他方の側に第2ベースを回動してもよい。これによれば、レーザ媒質の中心線を中心とする円周方向に沿って第2ベースを回動するだけで、レーザ媒質に対して第2光源ユニットの複数の励起光源を容易に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複数の励起光源の着脱の容易化及び複数の励起光源の位置決めの容易化を図ることができるレーザ装置、及びそのようなレーザ装置の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態のレーザ装置の斜視図である。
図2図1に示されるレーザ装置の別の角度からの斜視図である。
図3図1に示されるレーザ装置の断面図である。
図4図3に示されるIV-IV線に沿ってのレーザ装置の断面図である。
図5図3に示されるV-V線に沿ってのレーザ装置の断面図である。
図6図1に示されるレーザ装置におけるレーザ媒質の励起分布を示す模式図である。
図7図3に示されるVII-VII線に沿ってのレーザ装置の断面図である。
図8図3に示されるVIII-VIII線に沿ってのレーザ装置の断面図である。
図9】変形例のレーザ装置を備えるレーザシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0028】
図1図2及び図3に示されるように、レーザ装置1は、レーザ媒質20と、第1光源ユニット30と、第2光源ユニット40と、ホルダ50と、を備えている。レーザ媒質20、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40は、ホルダ50によって支持されている。一例として、レーザ装置1は、レーザシステムにおいて、レーザ光Lを増幅するレーザ増幅器して用いられる。以下、レーザ装置1にレーザ光Lが入射する方向をX方向といい、X方向に垂直な一方向をY方向といい、X方向及びY方向の両方向に垂直な方向をZ方向という。
【0029】
レーザ媒質20は、X方向(第1方向)に沿って延在するロッド状の固体レーザ媒質である。レーザ媒質20は、X方向に平行な中心線CLを有している。レーザ媒質20の形状は、例えば、10mm程度の直径及び200mm程度の長さを有する円柱形状である。レーザ媒質20の材料は、例えば、Nd:YAGである。
【0030】
第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40は、X方向において並設されている。第1光源ユニット30は、第2光源ユニット40に対して、X方向における一方の側に配置されている。換言すれば、第2光源ユニット40は、第1光源ユニット30に対して、X方向における他方の側に配置されている。第1光源ユニット30は、第1ベース31と、複数の励起光源32と、を含んでいる。複数の励起光源32は、第1ベース31に取り付けられている。第2光源ユニット40は、第2ベース41と、複数の励起光源42と、を含んでいる。複数の励起光源42は、第2ベース41に取り付けられている。
【0031】
第1ベース31及び第2ベース41は、それぞれ、X方向を厚さ方向とする板状の部材である。図4に示されるように、第1ベース31は、レーザ媒質20が通った第1切欠き35を有している。第1ベース31における第2ベース41側(図3参照)の表面には、複数の取付部31aが設けられている。各励起光源32は、各取付部31aに取り付けられている。図5に示されるように、第2ベース41は、レーザ媒質20が通った第2切欠き45を有している。第2ベース41における第1ベース31側(図3参照)の表面には、複数の取付部41aが設けられている。各励起光源42は、各取付部41aに取り付けられている。第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれの材料は、例えば、アルミニウムである。
【0032】
図6の(a),(b)及び(c)に示されるように、複数の励起光源32,42は、それぞれ、レーザ媒質20を励起するための励起光ELを出射する。図6の(a)に示されるように、複数の励起光源32は、中心線CLを中心とする円周に沿って等角度ピッチで配置されている。図6の(b)に示されるように、複数の励起光源42は、中心線CLを中心とする別の円周に沿って等角度ピッチで配置されている。X方向から見た場合には、図6の(c)に示されるように、複数の励起光源32,42は、中心線CLを中心とする円周に沿って等角度ピッチで配置されている。この状態で、第1ベース31に取り付けられた1つの励起光源32が、X方向から見た場合に、第2ベース41の第2切欠き45(図5参照)と重なっており、第2ベース41に取り付けられた1つの励起光源42が、X方向から見た場合に、第1ベース31の第1切欠き35(図4参照)と重なっている。
【0033】
本実施形態では、3つの励起光源32が、中心線CLを中心とする円周に沿って120°ピッチで配置されており、3つの励起光源42が、中心線CLを中心とする別の円周に沿って120°ピッチで配置されている。そして、X方向から見た場合には、6つの励起光源32,42が、中心線CLを中心とする円周に沿って60°ピッチで配置されている。これにより、各励起光源32,34から出射される励起光ELによってレーザ媒質20に均一な励起分布が与えられる。
【0034】
図4に示されるように、各励起光源32は、半導体レーザ素子33を含んでいる。半導体レーザ素子33は、レーザ媒質20に向けて励起光ELを出射する。半導体レーザ素子33は、複数の半導体レーザバー33aと、ヒートシンク33bと、を含んでいる。複数の半導体レーザバー33aは、半導体レーザ素子33とレーザ媒質20とが対向する方向に垂直な面内において各半導体レーザバー33aの出射端面が二次元に配列されるように、積層されている。ヒートシンク33bは、複数の半導体レーザバー33aを支持した状態で、取付部31aに取り付けられている。ヒートシンク33bには、冷媒を導入させる導入口34a、及び冷媒を導出させる導出口34bが設けられている。
【0035】
図5に示されるように、各励起光源42は、半導体レーザ素子43を含んでいる。半導体レーザ素子43は、レーザ媒質20に向けて励起光ELを出射する。半導体レーザ素子43は、複数の半導体レーザバー43aと、ヒートシンク43bと、を含んでいる。複数の半導体レーザバー43aは、半導体レーザ素子43とレーザ媒質20とが対向する方向に垂直な面内において各半導体レーザバー43aの出射端面が二次元に配列されるように、積層されている。ヒートシンク43bは、複数の半導体レーザバー43aを支持した状態で、取付部41aに取り付けられている。ヒートシンク43bには、冷媒を導入させる導入口44a、及び冷媒を導出させる導出口44bが設けられている。
【0036】
図1図2及び図3に示されるように、ホルダ50は、第1保持部材51と、第2保持部材52と、連結部材53と、脚部材54と、筒体55と、仕切部材61と、を含んでいる。一例として、ホルダ50は、レーザシステムの設置部Sに取り付けられている。
【0037】
第1保持部材51及び第2保持部材52は、それぞれ、X方向を厚さ方向とする板状の部材である。第1保持部材51及び第2保持部材52は、所定の間隔をとってX方向において並設されている。第1保持部材51は、X方向におけるレーザ媒質20の一端面20aを露出させた状態で、X方向におけるレーザ媒質20の一端部を保持している。第2保持部材52は、X方向におけるレーザ媒質20の他端面20bを露出させた状態で、X方向におけるレーザ媒質20の他端部を保持している。第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40は、第1保持部材51と第2保持部材52との間に配置されている。第1保持部材51及び第2保持部材52のそれぞれの形状は、例えば、矩形板状である。第1保持部材51及び第2保持部材52のそれぞれの材料は、例えば、アルミニウムである。第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40は、X方向から見た場合に、第1保持部材51及び第2保持部材52のそれぞれの外縁よりも内側に位置している(つまり、当該外縁から外側に突出していない)。これにより、X方向からレーザ装置1に衝撃が加わったとしても、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40を確実に保護することができる。
【0038】
連結部材53は、Z方向を厚さ方向とする板状の部材である。連結部材53は、第1保持部材51及び第2保持部材52を連結している。本実施形態では、連結部材53は、第1保持部材51における設置部S側の端部と第2保持部材52における設置部S側の端部との間に掛け渡されている。連結部材53の形状は、例えば、矩形板状である。連結部材53の材料は、例えば、アルミニウムである。
【0039】
脚部材54は、Z方向を厚さ方向とする板状の部材である。第1保持部材51、第2保持部材52及び連結部材53は、脚部材54上に固定されている。X方向における脚部材54の両端部は、第1保持部材51における設置部S側の端部及び第2保持部材52における設置部S側の端部よりも外側に位置している。X方向における脚部材54の両端部のそれぞれは、Y方向を長手方向とする複数の長穴54aを有している。一例として、ホルダ50は、複数のボルト(図示省略)が複数の長穴54aを介して設置部Sに締結されることで、設置部Sに固定されている。
【0040】
図3に示されるように、筒体55は、X方向に沿って延在する筒状の部材である。筒体55は、筒体55の内側にレーザ媒質20が配置された状態で、第1保持部材51と第2保持部材52との間に掛け渡されている。筒体55は、光透過性(各励起光源32,42から出射される励起光ELに対する透過性)を有している。筒体55の形状は、例えば、円筒形状である。筒体55の材料は、例えば、合成石英である。
【0041】
仕切部材61は、第1保持部材51と第2保持部材52との間において連結部材53に取り付けられている。仕切部材61は、レーザ媒質20及び筒体55が通った切欠きを有している。第1光源ユニット30は、第1保持部材51と仕切部材61との間に配置されている。第2光源ユニット40は、第2保持部材52と仕切部材61との間に配置されている。仕切部材61の材料は、例えばテフロン(登録商標)等の絶縁材料である。なお、X方向における仕切部材61の厚さは、第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれの厚さよりも小さく、第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれの厚さは、第1保持部材51及び第2保持部材52のそれぞれの厚さよりも小さい。仕切部材61、第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれを第1保持部材51及び第2保持部材52のそれぞれよりも薄くすることで、レーザ媒質20において励起光ELが当たらない箇所(デッドスペース)を最小限に抑えて励起効率の向上を図ることができると共に、レーザ装置1全体の小型化を達成することができる。また、第1保持部材51及び第2保持部材52のそれぞれを仕切部材61、第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれよりも厚くすることで、レーザ媒質20、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40を確実に保持することができる。
【0042】
図4に示されるように、第1保持部材51は、第1凸部(第1規定部)57を含んでいる。第1凸部57は、第1保持部材51における第2保持部材52側(図3参照)の表面51bから第2保持部材52側に突出している。第1凸部57の形状は、例えば、中心線CLを中心とする円柱形状である。レーザ媒質20及び筒体55は、第1凸部57を通っている。第1凸部57の側面は、中心線CLを中心とする円周方向に沿って回動可能に第1ベース31を支持する支持面57aである。第1凸部57は、第1ベース31の第1切欠き35に配置されており、支持面57aは、第1切欠き35の側面35aに接触している。側面35aの形状は、例えば、支持面57aの半分の領域と相補的な関係を有する形状である。第1切欠き35は、側面35aの両端部から第1ベース31の外縁に直線状に延在している。
【0043】
仕切部材61は、溝62を有している。溝62は、仕切部材61における第1保持部材51側(図3参照)の表面に形成されている。溝62の一端は、Z方向おける連結部材53とは反対側に開放されている。溝62の側面のうちY方向における一方の側の側面であるストッパ面(第1ストッパ、第1規定部)62aには、第1ベース31の複数の取付部31aのうち溝62内に先端部が配置された取付部31aが接触している。ストッパ面62aは、中心線CLを中心とする円周方向に沿った第1ベース31の回動(図4における反時計回りの回動)を規制する。
【0044】
第1凸部57が第1ベース31の第1切欠き35に嵌められて第1凸部57の支持面57aが第1切欠き35の側面35aに接触させられ、且つ、仕切部材61のストッパ面62aに取付部31aが接触させられることで、ホルダ50に対して(延いては、レーザ媒質20に対して)、X方向、Y方向及びZ方向における第1ベース31の位置が規定される。この状態で、第1ベース31は、第1保持部材51にボルト(図示省略)等によって固定されている。
【0045】
図5に示されるように、第2保持部材52は、第2凸部(第2規定部)58を含んでいる。第2凸部58は、第2保持部材52における第1保持部材51側(図3参照)の表面52bから第1保持部材51側に突出している。第2凸部58の形状は、例えば、中心線CLを中心とする円柱形状である。レーザ媒質20及び筒体55は、第2凸部58を通っている。第2凸部58の側面は、中心線CLを中心とする円周方向に沿って回動可能に第2ベース41を支持する支持面58aである。第2凸部58は、第2ベース41の第2切欠き45に配置されており、支持面58aは、第2切欠き45の側面45aに接触している。側面45aの形状は、例えば、支持面58aの半分の領域と相補的な関係を有する形状である。第2切欠き45は、側面45aの両端部から第2ベース41の外縁に直線状に延在している。
【0046】
仕切部材61は、溝63を有している。溝63は、仕切部材61における第2保持部材52側(図3参照)の表面に形成されている。溝63の一端は、Z方向おける連結部材53とは反対側に開放されている。溝63の側面のうちY方向における他方の側の側面であるストッパ面(第2ストッパ、第2規定部)63aには、第2ベース41の複数の取付部41aのうち溝63内に先端部が配置された取付部41aが接触している。ストッパ面63aは、中心線CLを中心とする円周方向に沿った第2ベース41の回動(図5における反時計回りの回動)を規制する。
【0047】
第2凸部58が第2ベース41の第2切欠き45に嵌められて第2凸部58の支持面58aが第2切欠き45の側面45aに接触させられ、且つ、仕切部材61のストッパ面63aに取付部41aが接触させられることで、ホルダ50に対して(延いては、レーザ媒質20に対して)、X方向、Y方向及びZ方向における第2ベース41の位置が規定される。この状態で、第2ベース41は、第2保持部材52にボルト(図示省略)等によって固定されている。
【0048】
図7及び図8に示されるように、ホルダ50は、第3流路90を含んでいる。図4に示されるように、第1ベース31は、第1流路70を含んでいる。図5に示されるように、第2ベース41は、第2流路80を含んでいる。第1流路70、第2流路80及び第3流路90には、冷媒が流れる。冷媒は、例えば、水である。第1流路70、第2流路80及び第3流路90は、連通している。つまり、第1流路70、第2流路80及び第3流路90は、共通の供給源(図示省略)から供給された冷媒が流れるように接続されている。
【0049】
図7及び図8に示されるように、第3流路90は、本流路91を含んでいる。本流路91は、複数の流路部分91a,91b,91cを含んでいる。流路部分91bは、レーザ媒質20と筒体55との間の流路である。
【0050】
流路部分91aは、第1保持部材51内に形成されている。流路部分91aの上流端は、第1保持部材51の側面51aに位置している。流路部分91aの上流端は、冷媒の供給口90a(図4参照)である。流路部分91aの下流端は、流路部分91bの上流端に接続されている。流路部分91cは、第2保持部材52内に形成されている。流路部分91cの上流端は、流路部分91bの下流端に接続されている。流路部分91cの下流端は、第2保持部材52の側面52aに位置している。流路部分91cの下流端は、冷媒の排出口90b(図5参照)である。なお、第1保持部材51の側面51a及び第2保持部材52の側面52aがY方向における同じ側の側面であるため、外部の配管の取り回しが容易となっている。
【0051】
以上のように構成された本流路91では、流路部分91aの上流端から冷媒が供給され、流路部分91a,91b,91cの順に冷媒が流れて、流路部分91cの下流端から冷媒が排出される。これにより、レーザ媒質20が冷却される。
【0052】
図7に示されるように、第3流路90は、第1分岐流路93と、第2分岐流路94と、を更に含んでいる。第1分岐流路93及び第2分岐流路94は、第1保持部材51内に形成されている。第1分岐流路93は、本流路91から分岐している。第1分岐流路93の上流端93aは、本流路91の流路部分91aの途中(本流路91のうち、流路部分91bよりも上流側の部分)に接続されている。図4に示されるように、第1分岐流路93の下流端93bは、第1保持部材51の表面51bに位置している。図7に示されるように、第2分岐流路94は、本流路91から分岐している。第2分岐流路94の上流端94aは、第1分岐流路93の一部を介して、本流路91の流路部分91aの途中に接続されている。図4に示されるように、第2分岐流路94の下流端94bは、第1保持部材51の表面51bに位置している。
【0053】
図8に示されるように、第3流路90は、第3分岐流路95と、第4分岐流路96と、を更に含んでいる。第3分岐流路95及び第4分岐流路96は、第2保持部材52内に形成されている。第3分岐流路95は、本流路91に合流している。図5に示されるように、第3分岐流路95の上流端95aは、第2保持部材52の表面52bに位置している。図8に示されるように、第3分岐流路95の下流端95bは、第4分岐流路96の一部を介して、本流路91の流路部分91cの途中(本流路91のうち、流路部分91bよりも下流側の部分)に接続されている。第4分岐流路96は、本流路91に合流している。図5に示されるように、第4分岐流路96の上流端96aは、第2保持部材52の表面52bに位置している。第4分岐流路96の下流端96bは、本流路91の流路部分91eの途中に接続されている。
【0054】
図4に示されるように、第1流路70の上流端70aは、第1分岐流路93の下流端93bに接続されている。図5に示されるように、第1流路70の下流端70bは、第3分岐流路95の上流端95aに接続されている。第1流路70では、中心線CLを中心とする円周に沿って隣り合う励起光源32において、上流側の励起光源32の導出口34bと下流側の励起光源32の導入口34aとが、可撓性を有する配管71(図2参照)によって接続されている。更に、第1流路70では、第1分岐流路93の下流端93bと最上流側の励起光源32の導入口34aとが配管71によって接続されており、最下流側の励起光源32の導出口34bと第3分岐流路95の上流端95aとが配管71によって接続されている。なお、図3図4及び図5では、配管71の図示が省略されている。
【0055】
以上のように構成された第1分岐流路93、第1流路70及び第3分岐流路95では、第1分岐流路93の上流端93aにおいて本流路91から冷媒が供給され、第1分岐流路93、第1流路70、第3分岐流路95の順に冷媒が流れて、第3分岐流路95の下流端95bにおいて冷媒が本流路91に合流する。これにより、各励起光源32の半導体レーザ素子33において、複数の半導体レーザバー33aが冷却される。
【0056】
図4に示されるように、第2流路80の上流端80aは、第2分岐流路94の下流端94bに接続されている。図5に示されるように、第2流路80の下流端80bは、第4分岐流路96の上流端96aに接続されている。第2流路80では、中心線CLを中心とする円周に沿って隣り合う励起光源42において、上流側の励起光源42の導出口44bと下流側の励起光源42の導入口44aとが、可撓性を有する配管81(図1参照)によって接続されている。更に、第2流路80では、第2分岐流路94の下流端94bと最上流側の励起光源42の導入口44aとが配管81によって接続されており、最下流側の励起光源42の導出口44bと第4分岐流路96の上流端96aとが配管81によって接続されている。なお、図3図4及び図5では、配管81の図示が省略されている。
【0057】
以上のように構成された第2分岐流路94、第2流路80及び第4分岐流路96では、第2分岐流路94の上流端94aにおいて本流路91から冷媒が供給され、第2分岐流路94、第2流路80、第4分岐流路96の順に冷媒が流れて、第4分岐流路96の下流端96bにおいて冷媒が本流路91に合流する。これにより、各励起光源42の半導体レーザ素子43において、複数の半導体レーザバー43aが冷却される。
【0058】
レーザ装置1の製造方法について説明する。本実施形態では、図4及び図5に示されるように、レーザ媒質20を支持した状態にあるホルダ50が、レーザシステムの設置部Sに取り付けられているものとする。まず、第1光源ユニット30を準備する(第1光源ユニットを準備するステップ)。続いて、図4に示されるように、レーザ媒質20を支持した状態にあるホルダ50において、レーザ媒質20及び筒体55を第1ベース31の第1切欠き35に通しつつ、Y方向(第1方向と交差する第2方向)における一方の側(具体的には、連結部材53とは反対側)からホルダ50に第1ベース31を配置する(配置するステップ)。続いて、第1凸部57が第1ベース31の第1切欠き35に嵌められて第1凸部57の支持面57aが第1切欠き35の側面35aに接触させられた状態で、中心線CLを中心とする円周方向に沿って一方の側に第1ベース31を回動し、仕切部材61のストッパ面62aに取付部31aを当接させる(第1ベースを回動するステップ)。この状態で、第1ベース31を第1保持部材51にボルト(図示省略)等によって固定する。
【0059】
続いて、第2光源ユニット40を準備する(第2光源ユニットを準備するステップ)。続いて、図5に示されるように、レーザ媒質20を支持した状態にあるホルダ50において、レーザ媒質20及び筒体55を第2ベース41の第2切欠き45に通しつつ、Y方向における一方の側(具体的には、連結部材53とは反対側)からホルダ50に第2ベース41を配置する。続いて、第2凸部58が第2ベース41の第2切欠き45に嵌められて第2凸部58の支持面58aが第2切欠き45の側面45aに接触させられた状態で、中心線CLを中心とする円周方向に沿って他方の側に第2ベース41を回動し、仕切部材61のストッパ面63aに取付部41aを当接させて、X方向において第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40を並設する(並設するステップ)。この状態で、第2ベース41を第2保持部材52にボルト(図示省略)等によって固定する。
【0060】
ホルダ50に第1ベース31を取り付ける際には、第1凸部57を第1ベース31の第1切欠き35に嵌めて第1凸部57の支持面57aを第1切欠き35の側面35aに接触させ、且つ、仕切部材61のストッパ面62aに取付部31aを接触させることで、ホルダ50に対して(延いては、レーザ媒質20に対して)、X方向、Y方向及びZ方向における第1ベース31の位置が規定される。このとき、第1ベース31が筒体55に接触して筒体55が破損するような事態が防止される。
【0061】
ホルダ50に第2ベース41を取り付ける際には、第2凸部58を第2ベース41の第2切欠き45に嵌めて第2凸部58の支持面58aを第2切欠き45の側面45aに接触させ、且つ、仕切部材61のストッパ面63aに取付部41aを接触させることで、ホルダ50に対して(延いては、レーザ媒質20に対して)、X方向、Y方向及びZ方向における第2ベース41の位置が規定される。このとき、第2ベース41が筒体55に接触して筒体55が破損するような事態が防止される。
【0062】
以上説明したように、レーザ装置1では、第1ベース31及び複数の励起光源32が第1光源ユニット30としてユニット化されていると共に、第2ベース41及び複数の励起光源42が第2光源ユニット40としてユニット化されており、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40が、X方向において並設された状態で、ホルダ50によって支持されている。これにより、ホルダ50に対して第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれを着脱するだけで、ホルダ50に対して複数の励起光源32,42を容易に着脱することができる。更に、レーザ媒質20を支持するホルダ50に第1ベース31を取り付ける際に、レーザ媒質20が第1ベース31の第1切欠き35を通り、ホルダ50に対する第1ベース31の位置が第1保持部材51の第1凸部57及び仕切部材61のストッパ面62aによって規定される。同様に、レーザ媒質20を支持するホルダ50に第2ベース41を取り付ける際に、レーザ媒質20が第2ベース41の第2切欠き45を通り、ホルダ50に対する第2ベース41の位置が第2保持部材52の第2凸部58及び仕切部材61のストッパ面63aによって規定される。これにより、レーザ媒質20を支持するホルダ50に第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれを取り付けるだけで、レーザ媒質20に対して複数の励起光源32,42を容易に位置決めすることができる。以上により、レーザ装置1によれば、複数の励起光源32,42の着脱の容易化及び複数の励起光源32,42の位置決めの容易化を図ることができる。
【0063】
レーザ装置1では、ホルダ50が、X方向において並設された第1保持部材51及び第2保持部材52、並びに、第1保持部材51及び第2保持部材52を連結する連結部材53を含んでおり、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40が、第1保持部材51と第2保持部材52との間に配置されている。これにより、レーザ装置1の小型化及び構造の単純化を図ることできる。
【0064】
レーザ装置1では、第1保持部材51が、第1ベース31の第1切欠き35に配置される第1凸部57を含んでおり、第1凸部57が、中心線CLを中心とする円周方向に沿って回動可能に第1ベース31を支持する支持面57aを有している。これにより、中心線CLを中心とする円周方向において、第1光源ユニット30の複数の励起光源32の位置を調整することができる。
【0065】
レーザ装置1では、第2保持部材52が、第2ベース41の第2切欠き45に配置される第2凸部58を含んでおり、第2凸部58が、中心線CLを中心とする円周方向に沿って回動可能に第2ベース41を支持する支持面58aを有している。これにより、中心線CLを中心とする円周方向において、第2光源ユニット40の複数の励起光源42の位置を調整することができる。
【0066】
レーザ装置1では、ホルダ50の仕切部材61が、中心線CLを中心とする円周方向に沿った第1ベース31の回動を規制するストッパ面62a、及び、中心線CLを中心とする円周方向に沿った第2ベース41の回動を規制するストッパ面63aを含んでいる。これにより、仕切部材61のストッパ面62aに第1ベース31を当接させ、仕切部材61のストッパ面63aに第2ベース41を当接させることで、レーザ媒質20に対して複数の励起光源32,42を容易に且つ確実に位置決めすることができる。
【0067】
レーザ装置1では、仕切部材61が絶縁材料からなっている。これにより、第1光源ユニット30の複数の励起光源32と第2光源ユニット40の複数の励起光源42との間での短絡の発生を確実に防止することができる。
【0068】
レーザ装置1では、第1ベース31に取り付けられた1つの励起光源32が、X方向から見た場合に、第2ベース41の第2切欠き45と重なっており、第2ベース41に取り付けられた1つの励起光源42が、X方向から見た場合に、第1ベース31の第1切欠き35と重なっている。これにより、レーザ媒質20における励起分布の均一化を図ることができる。
【0069】
レーザ装置1では、第1ベース31が、冷媒が流れる第1流路70を含んでおり、第2ベース41が、冷媒が流れる第2流路80を含んでおり、ホルダ50が、冷媒が流れる第3流路90を含んでいる。これにより、レーザ媒質20及び複数の励起光源32,42を冷却することができる。
【0070】
レーザ装置1では、第1流路70、第2流路80及び第3流路90が連通している。これにより、レーザ媒質20及び複数の励起光源32,42を効率良く冷却することができる。
【0071】
レーザ装置1では、第3流路90が、レーザ媒質20と筒体55との間の流路部分91bを含む本流路91、本流路91から分岐する第1分岐流路93及び第2分岐流路94、並びに、本流路91に合流する第3分岐流路95及び第4分岐流路96を含んでいる。レーザ装置1では、第1分岐流路93の下流端93bが、第1流路70の上流端70aに接続されており、第2分岐流路94の下流端94bが、第2流路80の上流端80aに接続されており、第3分岐流路95の上流端95aが、第1流路70の下流端70bに接続されており、第4分岐流路96の上流端96aが、第2流路80の下流端80bに接続されている。これにより、簡易な流路構成で、レーザ媒質20及び複数の励起光源32,42を効率良く冷却することができる。
【0072】
レーザ装置1では、各励起光源32が半導体レーザ素子33を含んでおり、各励起光源42が半導体レーザ素子43を含んでいる。これにより、各励起光源32,42の長寿命化を図ることができる。また、複数の励起光源32が第1光源ユニット30としてユニット化されており、複数の励起光源42が第2光源ユニット40としてユニット化されているため、半導体レーザ素子単品での取り扱いに求められる繊細さが不要となる。
【0073】
レーザ装置1では、半導体レーザ素子33は、積層された複数の半導体レーザバー33aを含んでおり、半導体レーザ素子43は、積層された複数の半導体レーザバー43aを含んでいる。これにより、レーザ媒質20を効率良く且つ十分に励起することができる。
【0074】
レーザ装置1の製造方法では、レーザ媒質20を第1ベース31の第1切欠き35に通しつつ、Y方向における一方の側から第1ベース31をホルダ50に配置し、中心線CLを中心とする円周方向に沿って第1ベース31を回動するだけで、レーザ媒質20に対して第1光源ユニット30の複数の励起光源32を容易に位置決めすることができる。レーザ媒質20を第2ベース41の第2切欠き45に通しつつ、Y方向における一方の側から第2ベース41をホルダ50に配置し、中心線CLを中心とする円周方向に沿って第1ベース31を回動するだけで、レーザ媒質20に対して第2光源ユニット40の複数の励起光源42を容易に位置決めすることができる。よって、レーザ装置1の製造方法によれば、レーザ媒質20に対して複数の励起光源32が位置決めされたレーザ装置1を容易に得ることができる。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、第1光源ユニット30が3つの励起光源32を含んでいたが、第1光源ユニット30は、複数の励起光源32を含んでいればよい。同様に、上記実施形態では、第2光源ユニット40が3つの励起光源42を含んでいたが、第2光源ユニット40は、複数の励起光源42を含んでいればよい。
【0076】
上記実施形態では、第1ベース31及び第2ベース41の両方が、中心線CLを中心とする円周方向に沿って回動可能であったが、第1ベース31及び第2ベース41の少なくとも一方が、中心線CLを中心とする円周方向に沿って回動可能であってもよい。
【0077】
レーザ装置1は、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40の少なくとも一方を備えていてもよい。その場合、図9に示されるように、第1光源ユニット30を備えるレーザ装置1A、及び、第2光源ユニット40を備えるレーザ装置1Bが同じ光軸上に配置されることで、当該光軸に平行な方向から見た場合に、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40の複数の励起光源32,42が、当該光軸を中心として等角度ピッチで配置されることになるため、レーザ光Lを均一に励起することができる。この構成によれば、例えば、1つのレーザ媒質に対して多数の励起光源から励起光を照射する場合に比べて、各レーザ媒質20に対する励起光ELの照射面積を抑制することができ、熱レンズ効果による各レーザ媒質20の劣化を防ぐことができる。
【0078】
第1流路70は、複数の励起光源32が取り付けられた第1ベース31の本体部内に形成された流路を含んでいてもよい。同様に、第2流路80は、複数の励起光源42が取り付けられた第2ベース41の本体部内に形成された流路を含んでいてもよい。
【0079】
半導体レーザ素子33のヒートシンク33bは、冷媒が流れる流路を含んでおらず、第1ベース31に熱を逃がすものであってもよい。同様に、半導体レーザ素子43のヒートシンク43bは、冷媒が流れる流路を含んでおらず、第2ベース41に熱を逃がすものであってもよい。
【0080】
第1ベース31及び第2ベース41は、それぞれ、第1流路70及び第2流路80を含んでいなくてもよい。その場合には、第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれに放熱フィンが設けられていてもよい。空冷又は自然放熱によって第1ベース31及び第2ベース41が冷却されることで、各半導体レーザ素子33,43が冷却される。
【0081】
各励起光源32が、半導体レーザ素子33を冷却するための電子冷却素子を含んでいてもよい。同様に、各励起光源42が、半導体レーザ素子43を冷却するための電子冷却素子を含んでいてもよい。
【0082】
上記実施形態では、ホルダ50が、ホルダ50に対する第1ベース31の位置を規定する第1規定部として第1保持部材51の第1凸部57及び仕切部材61のストッパ面62aを含んでいたが、第1ベース31が当該第1規定部を含んでいてもよいし、第1ベース31及びホルダ50の両方が当該第1規定部を含んでいてもよい。つまり、第1ベース31及びホルダ50の少なくとも一方が、ホルダ50に対する第1ベース31の位置を規定する第1規定部を含んでいればよい。第1規定部は、位置決めピン及び位置決め穴、位置決めボルト及び位置決めねじ穴(その場合には、ホルダ50に対する第1ベース31の固定も兼ねる)等であってもよい。
【0083】
上記実施形態では、ホルダ50が、ホルダ50に対する第2ベース41の位置を規定する第2規定部として第2保持部材52の第2凸部58及び仕切部材61のストッパ面63aを含んでいたが、第2ベース41が当該第2規定部を含んでいてもよいし、第2ベース41及びホルダ50の両方が当該第2規定部を含んでいてもよい。つまり、第2ベース41及びホルダ50の少なくとも一方が、ホルダ50に対する第2ベース41の位置を規定する第2規定部を含んでいればよい。第2規定部は、位置決めピン及び位置決め穴、位置決めボルト及び位置決めねじ穴(その場合には、ホルダ50に対する第2ベース41の固定も兼ねる)等であってもよい。
【0084】
上記実施形態では、ホルダ50が、ホルダ50に対する第1ベース31の位置を規定する第1規定部として第1保持部材51の第1凸部57及び仕切部材61のストッパ面62aを含み、且つ、ホルダ50が、ホルダ50に対する第2ベース41の位置を規定する第2規定部として第2保持部材52の第2凸部58及び仕切部材61のストッパ面63aを含んでいたが、第1ベース31及びホルダ50の少なくとも一方が、ホルダ50に対する第1ベース31の位置を規定する第1規定部を含み、且つ、第1ベース31及び第2ベース41の少なくとも一方が、第1ベース31に対する第2ベース41の位置を規定する第2規定部を含んでいてもよい。その場合にも、ホルダ50に対して第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれを着脱するだけで、ホルダ50に対して複数の励起光源32,42を容易に着脱することができる。更に、レーザ媒質20を支持するホルダ50に第1ベース31及び第2ベース41のそれぞれを取り付けるだけで、レーザ媒質20に対して複数の励起光源32,42を容易に位置決めすることができる。
【0085】
ホルダ50は、レーザ媒質20及び第1光源ユニット30(第2光源ユニット40を備える場合には、レーザ媒質20、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40)を支持するように構成されていれば、例えば、連結部材53を含んでいなくてもよいし、連結部材53を含むか否かにかかわらず第1保持部材51又は第2保持部材のいずれか一方を含んでいなくてもよい。なお、レーザ媒質20及び第1光源ユニット30(第2光源ユニット40を備える場合には、レーザ媒質20、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40)を支持するようにホルダ50が構成されていることは、レーザ媒質20及び第1光源ユニット30(第2光源ユニット40を備える場合には、レーザ媒質20、第1光源ユニット30及び第2光源ユニット40)のそれぞれがホルダ50に接触していることを必須としない。例えば、第1光源ユニット30がホルダ50に接触した状態で第1光源ユニット30がホルダ50によって支持されており、第2光源ユニット40が第1光源ユニット30に接触し且つホルダ50から離間した状態で第2光源ユニット40がホルダ50によって支持されている場合もある。
【符号の説明】
【0086】
1…レーザ装置、20…レーザ媒質、30…第1光源ユニット、31…第1ベース、32…励起光源、33…半導体レーザ素子、33a…半導体レーザバー、35…第1切欠き、40…第2光源ユニット、41…第2ベース、42…励起光源、43…半導体レーザ素子、43a…半導体レーザバー、45…第2切欠き、50…ホルダ、51…第1保持部材、52…第2保持部材、53…連結部材、55…筒体、57…第1凸部(第1規定部)、57a…支持面、58…第2凸部(第2規定部)、58a…支持面、61…仕切部材、62a…ストッパ面(第1ストッパ、第1規定部)、63a…ストッパ面(第2ストッパ、第2規定部)、55…筒体、70…第1流路、70a…上流端、70b…下流端、80…第2流路、80a…上流端、80b…下流端、90…第3流路、91…本流路、91b…流路部分(流路)、93…第1分岐流路、93b…下流端、94…第2分岐流路、94b…下流端、95…第3分岐流路、95a…上流端、96…第4分岐流路、96a…上流端。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9