(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バンド部材の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/20 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B29D30/20
(21)【出願番号】P 2020153158
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智仁
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-337251(JP,A)
【文献】特開平05-220865(JP,A)
【文献】特開2020-028979(JP,A)
【文献】特開2016-210044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00 - 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の、第1ドラムと第2ドラムとを準備し、ここで、前記第2ドラムは、供給される作動媒体の圧力に応じてドラム径方向に拡縮可能に構成される共に、ドラム軸方向に接近離間可能に構成された、一対の支持部を有しており、
前記第1ドラムに、インナーライナおよびカーカスプライを順に貼り付け、
前記カーカスプライの外周面のうち前記ドラム軸方向に離間した位置に、一対のビードを組み付け、
前記カーカスプライのうち前記一対のビードよりもドラム軸方向の外側に位置する部分を、ドラム軸方向の内側に折り返して、ケースを成形し、
前記ケースを、前記第1ドラムから取り外し、
前記第2ドラムの前記一対の支持部を、前記ドラム軸方向に互いに接近した軸方向内側位置に位置させると共に、それぞれの外径が前記ケースの内径より小さくなるように縮径させ、
前記ケースを、前記一対の支持部の外周側にわたして同芯状に配置し、
前記一対の支持部に、第1圧力を供給して前記一対の支持部を前記ケースの内周面に到達させる拡径動作と、前記一対の支持部を前記ドラム軸方向の外側に離間させる離間動作とを個別に実施し、これによって前記ケースを前記一対の支持部の外周面にわたして保持し、
供給される前記第1圧力によって前記ケースの内周面に到達した前記一対の支持部に、
さらに前記第1圧力よりも高い第2圧力を供給して前記一対の支持部を拡径状態に維持しながら、前記ケースにサイドウォールゴムをさらに貼り付けて、バンド部材を成形する、バンド部材の成形方法。
【請求項2】
前記ケースの前記第2ドラムへの移載時に、
前記一対の支持部は、前記拡径動作をした後に前記離間動作を実施する、
請求項1に記載のバンド部材の成形方法。
【請求項3】
前記第1圧力は、前記一対の支持部が、前記ケースの内周面にまで拡径するのに要する最小の圧力である、
請求項2に記載のバンド部材の成形方法。
【請求項4】
前記一対の支持部のそれぞれは、外周部が複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとに周方向に分割されており、前記第1セグメントと前記第2セグメントとが周方向に交互に配置されており、
前記離間動作のとき、
前記第1セグメントは、前記第1圧力によって、前記ケースの内周面に当接しており、
前記第2セグメントは、前記ケースの内周面よりも径方向内側に位置している、
請求項2または3に記載のバンド部材の成形方法。
【請求項5】
前記第2セグメントを、前記離間動作の終了後に、前記ケースの内周面に当接させる、
請求項4に記載のバンド部材の成形方法。
【請求項6】
前記バンド部材の外表面にステッチングツールを押し付けてステッチングすることをさらに含み、
前記第2圧力は、前記ステッチングによる前記バンド部材による径方向内側への押圧力に対して、前記一対の支持部が拡径状態を維持するのに必要な圧力に設定されている、
請求項1~5のいずれか1つに記載のバンド部材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンド部材の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1ドラム上でインナーライナおよびカーカスプライを貼り付けてケースを成形し、該ケースを第2ドラムに移載して、第2ドラム上でサイドウォールゴムをさらに貼り付けて、カーカスバンド(バンド部材)を成形することが知られている(例えば、特許文献1参照)。第2ドラムは、ドラム軸方向に離間して設けられた一対の支持部を有している。一対の支持部は、円筒状に形成されており、外径が拡縮可能、且つ、互いにドラム軸方向に接近離間可能に構成されている。
【0003】
ケースを第1ドラムから第2ドラムに移載するには、第2ドラムの一対の支持部を、予め、ドラム軸方向に互いに接近させておくと共に、それぞれの外径がケースの内径より小さくなるように縮径させておくことを要する。次いで、ケースを、第1ドラムから取り外して、一対の支持部の外周側にわたして同芯状に配置する。その後、一対の支持部を拡径させつつドラム軸方向外側に離間させることにより、ケースが一対の支持部の外周部に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケースを、第2ドラムに移載するときに、一対の支持部が、拡径しつつドラム軸方向外側に移動するときに、ケースの内周面を局所的に強く径方向外側に押圧しつつドラム軸方向外側に移動することがある。この場合、
図8Aに示されるように、ケース91が局所的にドラム軸方向外側に引き延ばされるため、ケース91が第2ドラムD20に対して傾斜した状態で支持される。
【0006】
この結果、
図8Bに示されるように、サイドウォールゴム92を第2ドラムD20に対して周方向に平行に巻き付けてカーカスバンド93を成形すると、サイドウォールゴム92はケース91に対して傾斜することになる。
図8Cに示されるように、カーカスバンド93を第2ドラムD20から離脱させてケース91を周方向に平行に延びるように支持すると、サイドウォールゴム92が周方向に向かって軸方向に蛇行することになる。
【0007】
図示を省略するが、このカーカスバンド93を、トレッドゴムを含むトレッドバンドの内周面に結合させてグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤを加硫成形して製造される空気入りタイヤでは、サイドウォールゴム92の蛇行に起因してアンバランスが増大する。
【0008】
本発明は、ケースを第1ドラムから第2ドラムに移載してサイドウォールゴムを貼り付けてバンド部材を成形するときに、ケースに対するサイドウォールゴムの傾斜を抑制できる、バンド部材の成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
円筒状の、第1ドラムと第2ドラムとを準備し、ここで、前記第2ドラムは、供給される作動媒体の圧力に応じてドラム径方向に拡縮可能に構成される共に、ドラム軸方向に接近離間可能に構成された、一対の支持部を有しており、
前記第1ドラムに、インナーライナおよびカーカスプライを順に貼り付け、
前記カーカスプライの外周面のうち前記ドラム軸方向に離間した位置に、一対のビードを組み付け、
前記カーカスプライのうち前記一対のビードよりもドラム軸方向の外側に位置する部分を、ドラム軸方向の内側に折り返して、ケースを成形し、
前記ケースを、前記第1ドラムから取り外し、
前記第2ドラムの前記一対の支持部を、前記ドラム軸方向に互いに接近した軸方向内側位置に位置させると共に、それぞれの外径が前記ケースの内径より小さくなるように縮径させ、
前記ケースを、前記一対の支持部の外周側にわたして同芯状に配置し、
前記一対の支持部に、第1圧力を供給して前記一対の支持部を前記ケースの内周面に到達させる拡径動作と、前記一対の支持部を前記ドラム軸方向の外側に離間させる離間動作とを個別に実施し、これによって前記ケースを前記一対の支持部の外周面にわたして保持し、
供給される前記第1圧力によって前記ケースの内周面に到達した前記一対の支持部に、さらに前記第1圧力よりも高い第2圧力を供給して前記一対の支持部を拡径状態に維持しながら、前記ケースにサイドウォールゴムをさらに貼り付けて、バンド部材を成形する、バンド部材の成形方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、一対の支持部は、拡径動作と離間動作とが個別に実施されると共に、第1圧力は、サイドウォールゴムを貼り付けるときに供給される第2圧力よりも低いので、一対の支持部はケースを過度に径方向外側へ押圧することなく離間する。さらに、一対の支持部の第1圧力での拡径動作と離間動作とによって、第2ドラムに対するケースの傾斜を修正しやすい。よって、サイドウォールゴムを、ケースに対する傾斜を抑制しつつ貼り付けることができる。
【0011】
また、前記ケースの前記第2ドラムへの移載時に、
前記一対の支持部は、前記拡径動作をした後に前記離間動作を実施してもよい。
【0012】
本構成によれば、一対の支持部は、ケースの内周面に略当接した状態でドラム軸方向の内側から外側へ移動するので、第2ドラムに対するケースの傾斜をさらに抑制しやすい。
【0013】
また、前記第1圧力は、前記一対の支持部が、前記ケースの内周面にまで拡径するのに要する最小の圧力であってもよい。
【0014】
本構成によれば、一対の支持部は、ケースの内周面の形状に沿ってドラム径方向に変位しながらドラム軸方向外側に移動するので、ケースを局所的に強く押圧しながらドラム軸方向に引っ張ることが防止される。よって、第2ドラムに対するケースの傾斜をさらに抑制しやすい。
【0015】
また、前記一対の支持部のそれぞれは、外周部が複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとに周方向に分割されており、前記第1セグメントと前記第2セグメントとが周方向に交互に配置されており、
前記離間動作のとき、
前記第1セグメントは、前記第1圧力によって、前記ケースの内周面に当接しており、
前記第2セグメントは、前記ケースの内周面よりも径方向内側に位置していてもよい。
【0016】
本構成によれば、一対の支持部は、離間動作時には、第1セグメントのみがケースの内周面に当接するので、第2セグメントもケースの内周面に当接する場合に比して、一対の支持部のケースの内周面に対する摺動抵抗を低減させやすい。これによって、一対の支持部を、ケースの内周面のドラム軸方向への引っ張りを抑制しつつ、離間させやすい。
【0017】
また、前記第2セグメントを、前記離間動作の終了後に、前記ケースの内周面に当接させてもよい。
【0018】
本構成によれば、離間動作の終了時には、ケースの内周面は、一対の支持部によって全周にわたって支持されるので、サイドウォールゴムを安定して貼り付けやすい。
【0019】
また、前記バンド部材の外表面にステッチングツールを押し付けてステッチングすることをさらに含み、
前記第2圧力は、前記ステッチングによる前記バンド部材による径方向内側への押圧力に対して、前記一対の支持部が拡径状態を維持するのに必要な圧力に設定されてもよい。
【0020】
本構成によれば、バンド部材に対して安定してステッチングを実施できるので、サイドウォールゴムをケースに密着させやすく、これらの間に介在し得る空気を排出させやすい。よって、該バンド部材を用いて製造される空気入りタイヤにおける空気溜まりの発生が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1ドラムで成形されたケースを第2ドラムに移載してサイドウォールゴムを貼り付けてバンド部材を成形する場合に、ケースに対するサイドウォールゴムの傾斜を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1ドラム上でケースを成形する工程を概念的に示す図。
【
図2】ケースを第2ドラムの外周側に配置する工程を概念的に示す図。
【
図3】ケースを第2ドラムで支持する工程を概念的に示す図。
【
図4】第2ドラム上でカーカスバンドを成形する工程を概念的に示す図。
【
図6A】ケースが移載される前の第2ドラムの準備工程を示す図。
【
図6B】
図6Aに対して第2ドラムの外周側にケースが配置された状態を示す図。
【
図6C】
図6Bに対して第1セグメントを径方向外側に移動させた状態を示す図。
【
図6D】
図6Cに対して一対の円筒部をドラム軸方向に離間させた状態を示す図。
【
図6E】
図6Dに対して第2セグメントを径方向外側に移動させた状態を示す図。
【
図8A】第2ドラムにケースが傾斜して支持された状態を示す図。
【
図8B】
図8Aに対してサイドウォールゴムを貼り付けた状態を示す図。
【
図8C】
図8Bに対してカーカスバンドを第2ドラムから取り外した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0024】
図1~
図4は、本発明の一実施形態に係るタイヤ成形方向のうち、第1ドラムD1および第2ドラムD2を用いたカーカスバンド(バンド部材)の成形工程を、概念的に示す図である。
図1を参照して、まず、円筒状の第1ドラムD1の外周面にインナーライナ11が円筒状に貼り付けられている。以下の説明では、第1ドラムD1および第2ドラムD2について、中心軸方向をドラム軸方向AD、径方向をドラム径方向RD、および周方向をドラム周方向CDとそれぞれ称する。また、
図1~
図4はドラム径方向RDの一方側のみを示している。
【0025】
インナーライナ11の外周面にカーカスプライ12が円筒状に貼り付けられている。カーカスプライ12は、本実施形態では1枚であり、平行に配設された複数本のカーカスコードがトッピングゴムで被覆されて構成されている。
【0026】
カーカスプライ12の外周面には一対の環状のビード13が組み付けられている。一対のビード13は、カーカスプライ12の外周面のうち、ドラム軸方向ADの両側に離間してそれぞれ位置している。ビード13は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなるビードコア14と、ビードコア14の外周面に貼り付けられた断面略三角形状をなす硬質ゴム製のビードフィラー15とを含んでいる。
【0027】
カーカスプライ12のうち一対のビード13よりもドラム軸方向ADの外側に位置する両側部は、一対のビード13の周りに内側に折り返されて、折り返し部12aが形成されている。本明細書において、第1ドラムD1上で成形される、カーカスプライ12がドラム軸方向内側に折り返された円筒部材を、ケース17と称する。
【0028】
次に、
図2に示されるように、ケース17を、トランスファ3によって外径側から支持しつつ第1ドラムD1から取り外して、第2ドラムD2の外周側に同芯状に配置する。次に、
図3に示されるように、第2ドラムD2の外周面にケース17を支持する。最後に、
図4に示されるように、第2ドラムD2上で、ケース17の外周面に、ドラム軸方向ADに一対のサイドウォールゴム18を貼り付けた後、ステッチングツール5を用いてサイドウォールゴム18の外表面をケース17に向けて押圧(ステッチング)することにより、カーカスバンド19が成形される。
【0029】
図5は、第2ドラムD2の概略構成を示す斜視図である。
図5に示されるように、第2ドラムD2は、ドラム軸方向ADに離間した一対の支持部30と、一対の支持部30を中心軸線O1周りに回転駆動する回転駆動部41と、一対の支持部30をドラム軸方向ADにおいて互いに接近離間させる軸方向駆動部42と、を有している。回転駆動部41は例えばサーボモータを用いた周知の回転機構により実現できる。また、軸方向駆動部42は例えばサーボモータ、ボールネジを用いた周知の移動機構により実現できる。
【0030】
支持部30は、円筒状に形成された外周部31を有している。外周部31は、ドラム軸方向ADの外側に位置する外端面32と外周面33とを有し、外端面32と外周面33との間にこれらを斜めに接続する環状の面取り34が形成されている。また支持部30は、外周部31が複数の第1セグメント31Aと複数の第2セグメント31Bとに分割されている。第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bは周方向に交互に配設されている。本実施形態では、第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bは3つずつ設けられている。
【0031】
ドラム周方向CDおいて、第1セグメント31Aのドラム周方向における周長L1は第2セグメント31Bの周長L2よりも長い。周長L1は周長L2の2倍以上4倍以下であり、本実施形態では周長L1は周長L2の3倍に設定されている。
【0032】
第1セグメント31Aは、第1シリンダ37によって、ドラム径方向RDに移動可能にそれぞれ構成されている。第2セグメント31Bは、第2シリンダ38によって、ドラム径方向に移動可能に構成されている。これによって、支持部30は径方向に拡縮可能に構成されている。
【0033】
本実施形態では、第1シリンダ37および第2シリンダ38は、作動媒体を空気とするエアシリンダであって、ロッド37a,38aを、シリンダ37b,38bに供給される空気の圧力に応じて突出後退させる。第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bは、第1シリンダ37および第2シリンダ38によって個別に径方向に移動する。
【0034】
具体的には、第1シリンダ37および第2シリンダ38は、供給される空気の圧力が高くなるとロッド37a,38aを、シリンダ37b,38bから突出させ、供給される空気の圧力が低くなるとロッド37a,38aを、内蔵する不図示の付勢手段(例えばコイルスプリング)によってシリンダ37b,38b内に後退させる、単動型シリンダである。したがって、第1シリンダ37および第2シリンダ38は、供給される空気の圧力に応じて、ロッド37a,38aをシリンダ37b、38bから最も突出した突出端と、シリンダ37b,38b内に最も後退した後退端との間を移動させる。
【0035】
第1シリンダ37および第2シリンダ38は、上記付勢手段に抗してロッド37a,38aを突出端にまで移動させるのに、供給される空気の圧力を第1圧力P1以上に増大させることを要する。換言すれば、第1圧力P1は、ロッド37a,38aを上記付勢手段に抗して突出端にまで移動させるのに要する最小の圧力(最低限必要な圧力)であり、ロッド37a,38aは供給される空気の圧力が第1圧力P1未満であるとき突出端に到達しない。
【0036】
また、一対の支持部30に、ケース17が支持された後は、第1シリンダ37および第2シリンダ38に供給される空気の圧力を、第1圧力P1よりも高い、第2圧力P2に増大させる。第2圧力P2は、例えば第1圧力P1の2倍以上4倍以下である。本実施形態では、第2圧力P2は、第1圧力P1の3倍に設定されている。
【0037】
第2圧力P2を第1圧力P1よりも高くすることによって、ロッド37a,38aを突出端に維持しやすく第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bを径方向外側に保持しやすい。これによって、ケース17に、サイドウォールゴム18を、張力をかけながら安定して貼り付けることができると共に、安定してステッチングできる。
【0038】
また、第1シリンダ37および第2シリンダ38は、供給される空気の圧力が第1圧力P1より低い第3圧力P3未満(例えば大気圧)であるときに、上記付勢手段によってロッド37a,38aを後退端に位置させる。
【0039】
図5は、第1シリンダ37および第2シリンダ38ともに、第1圧力P1で空気が供給された状態が示されており、したがって第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bはともに、径方向における移動可能範囲のうち外径側端に位置している。
【0040】
図6A~
図6Eを参照して、ケース17の第2ドラムD2への移載について詳述する。
【0041】
図6Aは、ケース17が移載される前に実施される、第2ドラムD2の事前準備工程を示している。
図6Aに示されるように、事前準備工程では、一対の支持部30は、互いに接近するように、ドラム軸方向ADの内側に位置している。このとき、一対の支持部30の外端面32間のドラム軸方向ADにおける距離L3は、ケース17のドラム軸方向ADにおける長さL4(
図6B参照)よりも短い。
【0042】
さらに、支持部30において、第1シリンダ37および第2シリンダ38に供給される空気の圧力を第3圧力P3に設定することによって、一対の支持部30を、第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bが径方向における移動可能範囲のうち内径側端に位置する、縮径状態にする。このとき、第1セグメント31Aは、第2セグメント31Bよりも外径側に位置しており、それぞれの周方向端部のドラム周方向CDにおける位置が重複している。したがって、支持部30の最も大きな外径は、第1セグメント31Aの外周面における外径A1になる。外径A1は、ケース17の内径A2(
図6B参照)よりも小さい。
【0043】
次に、
図6Bに示されるように、トランスファ3によって支持されたケース17が、一対の支持部30の外周側にわたして同心状に配置される。このとき、ドラム軸方向ADにおいて、ケース17の中心位置と一対の支持部30間の中心位置とが一致するように、トランスファ3はケース17を支持している。
【0044】
次に、
図6Cに示されるように、一対の支持部30の外径を拡大させる、拡径動作を実施する。具体的には、第1シリンダ37に供給される空気の圧力をP1に増大させてロッド37aを突出端に位置させることによって、第1セグメント31Aを径方向の外径側端に位置させて、支持部30を拡径状態にする。これによって、第1セグメント31Aの外周面がケース17の内周面に当接する。すなわち、支持部30の最も大きな外径は、第1セグメント31Aの外周面において、ケース17の内径A2と等しくなる。このとき、第2シリンダ38に供給される空気の圧力はP3に維持されている。
【0045】
次に、
図6Dに示されるように、軸方向駆動部42によって、一対の支持部30を、互いに離間するようにドラム軸方向ADの外側に離間させる、離間動作を実施する。このとき、第1セグメント31Aのみ径方向の外径側端に位置しているので、第2セグメント31Bも外径側端に位置している場合に比して、ケース17の内周面との間の摺動抵抗の増大が抑制されている。
【0046】
第1シリンダ37には第1圧力P1で空気が供給されており、上述したように第1圧力P1はロッド37aを突出端に到達させるのに要する最小の圧力であるので、第1シリンダ37は、第1セグメント31Aを、外力を受けた場合に容易に径方向内側に変位する程度の力で支持している。
【0047】
この結果、一対の支持部30を、ケース17の内周面17aに沿って、すなわちケース17の内周面17aの径方向における凹凸に沿ってドラム径方向RDに変位しながら、ドラム軸方向ADの外側に移動する。よって、一対の支持部30は、ドラム軸方向ADへの移動時に、ケース17の内周面17aを強くドラム径方向RDの外側へ押圧することがない。
【0048】
軸方向駆動部42は、一対の支持部30の移動量を、面取り34がケース17のドラム軸方向ADの外端部17bに位置するまでの長さに設定している。外端部17bには、ビード13が位置しているので、外端部17bは、残余の部分に比して厚みが増大しており径方向内側に膨出している。すなわち、一対の支持部30が、ドラム軸方向ADにおける外端に到達すると、ケース17の外端部17bが面取り34に落ち込み、これによってケース17が一対の支持部30に位置決めされる。
【0049】
次に、
図6Eに示されるように、第2シリンダ38に供給される空気の圧力をP1に増大させてロッド38aを突出端に位置させることによって、第2セグメント31Bを径方向の外径側端に位置させる。これによって、第2セグメント31Bは、第1セグメント31Aと共に、周方向に連なる外周部31を構成し、ケース17が一対の支持部30の外周部31の全周にわたして、安定して支持される。
【0050】
これによって、ケース17の第2ドラムD2への移載が終了する。次に、第1シリンダ37および第2シリンダ38に供給される空気の圧力を、第2圧力P2に増大させる。最後に、回転駆動部41によって、第2ドラムD2を回転させながらサイドウォールゴム18を貼り付けた後、ステッチングを実施することによって、カーカスバンドが成形される。
【0051】
上述したように、第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bは、第2圧力P2によって外径側端に強固に支持されるので、サイドウォールゴム18の貼り付けおよびステッチングツール5による押圧力等の外力に抗しやすく、径方向内側への変位が抑制される。よって、カーカスバンド19が安定して成形される。
【0052】
上記説明した実施形態に係るカーカスバンドの成形方法によれば、次の効果を奏する。
【0053】
(1)一対の支持部30は、拡径動作と離間動作とが個別に実施されると共に、第1圧力P1は、サイドウォールゴム18を貼り付けるときに供給される第2圧力P2よりも低い。一対の支持部30はケース17を過度に径方向外側へ押圧することなく離間する。さらに、一対の支持部30の第1圧力P1での拡径動作と離間動作とによって、第2ドラムD2に対するケース17の傾斜を修正しやすい。よって、サイドウォールゴム18を、ケース17に対する傾斜を抑制しつつ貼り付けることができる。
【0054】
(2)第1セグメント31Aの拡径動作の後に一対の支持部30の離間動作が実施されるので、一対の支持部30は、ケース17の内周面17aに沿ってドラム軸方向ADの内側から外側へ移動するので、第2ドラムD2に対するケース17の傾斜をさらに抑制しやすい。
【0055】
(3)一対の支持部30は、ケースの内周面17aの形状に沿ってドラム径方向RDの変位を許容しながらドラム軸方向ADの外側に移動するので、ケース17を局所的にドラム径方向RDへ強く押圧しながらドラム軸方向ADに引っ張ることが防止される。よって、第2ドラムD2に対するケース17の傾斜をさらに抑制しやすい。
【0056】
(4)一対の支持部30は、離間動作時には、第1セグメント31Aのみがケース17の内周面17aに当接するので、第2セグメント31Bもケース17の内周面17aに当接する場合に比して、一対の支持部30のケース17の内周面17aに対する摺動抵抗を低減させやすい。これによって、一対の支持部30を、ケース17の内周面17aのドラム軸方向ADへの引っ張りを抑制しつつ、離間させやすい。
【0057】
(5)離間動作の終了時には、第2セグメント31Bも外径側端に位置するので、ケース17の内周面17aは、一対の支持部30によって全周にわたって支持されるので、サイドウォールゴム18を安定して貼り付けやすい。
【0058】
(6)サイドウォールゴム18の貼り付け時およびステッチングの実施時には、第1シリンダ37および第2シリンダ38に供給される空気の圧力は第1圧力P1の2倍以上4倍以下である第2圧力P2に増大している。これによって、第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bは、外径側端に強固に支持されるので、サイドウォールゴム18の貼り付けおよびステッチングツール5の押し付け等の外力に抗しやすく、径方向内側への変位が抑制される。
【0059】
この結果、サイドウォールゴム18をケース17に密着させやすく、これらの間に介在し得る空気を排出させやすい。よって、カーカスバンド19を用いて製造される空気入りタイヤにおける空気溜まりの発生が抑制される。
【0060】
第2圧力P2が、第1圧力P1の2倍未満であると、第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bの外径側端への支持力が不足し、後続するサイドウォールゴム18の貼り付けまたはステッチングの実施時に、第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bが径方向内側に変位する場合がある。第2圧力P2が、第1圧力P1の4倍を超過すると、不必要に空気の圧力を高くするようにエネルギ消費が増大する。
【0061】
(7)第1セグメント31Aおよび第2セグメント31Bのうち、周長L1が長い第1セグメント31Aのみを拡径動作させた状態で、一対の支持部30を離間動作させるように構成されている。これによって、一対の支持部30を、ケース17の内周面17aをより広い範囲で支持しながら、該内周面17aに沿って安定して離間動作させやすい。
【0062】
周長L1が周長L2の2倍未満であると、第1セグメント31Aによるケース17の周方向における支持範囲が不足しやすく、ケース17が多角形状に変形する場合がある。周長L1が周長L2の4倍を超過すると、第1セグメント31Aによるケース17の内周面17aに対する支持範囲が過大となり、ケース17の内周面17aとの間の摺動抵抗が増大しやすくケース17がドラム軸方向ADに引っ張られて傾斜しやすい。
【0063】
上記実施形態では、一対の支持部30は、第1セグメント31Aの拡径動作を実施した後に離間動作を実施するようにしたが、拡径動作と離間動作とを個別に実施するようにすればよく、これによってケース17の内周面17aが局所的にドラム径方向RDに強く押圧された状態でドラム軸方向ADに引っ張られることが防止される。
【0064】
例えば、
図7に示されるように、一対の支持部30を、離間動作を実施してから第1セグメント31Aの拡径動作を実施するようにしてもよい。なお、拡径動作を先に実施した場合、離間動作時に第1セグメント31Aがケース17の内周面17aに沿って移動するので、ケース17の位置ずれが修正されやすい。よって、拡径動作を実施した後に、離間動作を実施するほうが好ましい。
【0065】
本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
3 トランスファ
5 ステッチングツール
13 ビード
17 ケース
18 サイドウォールゴム
19 カーカスバンド
30 支持部
31A 第1セグメント
31B 第2セグメント
34 面取り
37 第1シリンダ
38 第2シリンダ
42 軸方向駆動部
D1 第1ドラム
D2 第2ドラム
P1 第1圧力
P2 第2圧力