(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240912BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240912BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240912BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240912BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240912BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240912BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20240912BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20240912BHJP
B60L 55/00 20190101ALI20240912BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J13/00 301A
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J7/00 P
H02J7/34 B
B60L53/63
B60L53/53
B60L55/00
(21)【出願番号】P 2020159502
(22)【出願日】2020-09-24
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-043642(JP,A)
【文献】特開2020-010442(JP,A)
【文献】特開2014-054003(JP,A)
【文献】特開2014-033539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0022161(US,A1)
【文献】特開2018-161018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 13/00
H02J 3/32
H02J 7/35
H02J 7/00
H02J 7/34
B60L 53/63
B60L 53/53
B60L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続され、当該電力系統との接続点における電力である接続点電力の電力制御を行う電力システムであって、
前記接続点電力の値を検出する検出装置と、
前記接続点電力の値を設定された調整目標値にするための誘導指令値を導出する処理装置と、
各々が、前記接続点に電気的に接続され、かつ、前記誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力を制御する複数の電力制御装置と、
を備えており、
前記複数の電力制御装置は、蓄電池が接続された第1充放電制御装置と、電気自動車を接続可能な第2充放電制御装置と、を含み、
前記第1充放電制御装置は、前記蓄電池の充放電を制御しており、
前記第2充放電制御装置は、前記電気自動車の充放電を制御しており、
前記検出装置と前記処理装置との間の通信、前記処理装置と前記第1充放電制御装置との間の通信、および、前記処理装置と前記第2充放電制御装置との間の通信のいずれかにおいて通信異常が生じたときに、前記第2充放電制御装置は、前記電気自動車の充放電を停止しつつ、前記通信異常が生じていることを報知
しており、
前記第2充放電制御装置は、報知装置を備えるEVスタンドを備えており、前記通信異常が生じていることの報知を、前記EVスタンドの前記報知装置から報知させる、
ことを特徴とする電力システム。
【請求項2】
前記処理装置は、前記電気自動車の充電可否および放電可否を指定するフラグ情報を前記第2充放電制御装置に送信しており、
前記第2充放電制御装置は、前記フラグ情報を受信し、前記誘導指令値および受信した前記フラグ情報に基づいて、前記電気自動車の充放電を制御しており、
前記フラグ情報は、前記電力制御に対する制御モードに応じて決定される、
請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
電力系統に接続され、当該電力系統との接続点における電力である接続点電力の電力制御を行う電力システムであって、
前記接続点電力の値を検出する検出装置と、
前記接続点電力の値を設定された調整目標値にするための誘導指令値を導出する処理装置と、
各々が、前記接続点に電気的に接続され、かつ、前記誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力を制御する複数の電力制御装置と、
第1巻線、第2巻線および第3巻線を含む三巻線変圧器と、
を備えており、
前記複数の電力制御装置は、蓄電池が接続された第1充放電制御装置と、電気自動車を接続可能な第2充放電制御装置と、を含み、
前記第1充放電制御装置は、前記蓄電池の充放電を制御しており、
前記第2充放電制御装置は、前記電気自動車の充放電を制御しており、
前記検出装置と前記処理装置との間の通信、前記処理装置と前記第1充放電制御装置との間の通信、および、前記処理装置と前記第2充放電制御装置との間の通信のいずれかにおいて通信異常が生じたときに、前記第2充放電制御装置は、前記電気自動車の充放電を停止しつつ、前記通信異常が生じていることを報知
しており、
前記第1巻線は、前記接続点に接続され、
前記第2巻線は、前記第1充放電制御装置に接続され、
前記第3巻線は、前記第2充放電制御装置に接続されており、
前記処理装置は、前記複数の電力制御装置の各々から当該電力制御装置の出力電力をそれぞれ受信しており、受信した前記出力電力の合計値が前記第1巻線の巻線容量を超過する場合、前記誘導指令値として当該超過を解消させるための設定値を前記複数の電力制御装置の各々に送信する、
ことを特徴とする電力システム。
【請求項4】
前記設定値は、前記接続点側から前記三巻線変圧器側に電力が供給されている状態において前記合計値が前記巻線容量を超過する場合、前記蓄電池の充放電を停止させる値であり、前記三巻線変圧器側から前記接続点側に電力が供給されている状態において前記合計値が前記巻線容量を超過する場合、前記電気自動車の充放電を停止させる値である、
請求項3に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された複数の電力制御装置を管理して、電力系統との間での送受電の制御を行う電力システムが普及しつつある。例えば、特許文献1には、複数の電力制御装置と処理装置とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、接続点電力を目標電力に制御するための指標(制御指令値)を算出する。接続点電力は、電力系統と電力システムとの接続点における電力である。複数の電力制御装置は、例えば太陽光発電装置および蓄電池制御装置である。各電力制御装置は、処理装置が算出した制御指令値を用いて、分散的に出力電力を制御している。このとき、各電力制御装置は、制御指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このようにして、電力システムのエネルギー管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力制御装置の多様化により、太陽光発電装置や蓄電池制御装置とは異なる種類の電力制御装置が電力系統に連系されつつある。このような電力制御装置としては、例えば電気自動車向けの充放電器(以下「EVスタンド」という)がある。EVは、Electric Vehicleの略称である。EVスタンドは、電気自動車の充電を行うものが一般的だが、中には電気自動車の放電を行うものもある。例えば災害時等に電力事業者から電力の供給が受けられない場合において、電気自動車を電源として電気自動車に蓄積された電力を利用することがある。そこで、電気自動車の充放電制御を含めたエネルギー管理が求められるが、特許文献1に記載の電力システムでは、EVスタンドを含めた電力制御が考慮されていない。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、電気自動車の充放電制御を含めたエネルギー管理を行う電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電力システムは、電力系統に接続され、当該電力系統との接続点における電力である接続点電力の電力制御を行う電力システムであって、前記接続点電力の値を検出する検出装置と、前記接続点電力の値を設定された調整目標値にするための誘導指令値を導出する処理装置と、各々が、前記接続点に電気的に接続され、かつ、前記誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力を制御する複数の電力制御装置と、を備えており、前記複数の電力制御装置は、蓄電池が接続された第1充放電制御装置と、電気自動車を接続可能な第2充放電制御装置と、を含み、前記第1充放電制御装置は、前記蓄電池の充放電を制御しており、前記第2充放電制御装置は、前記電気自動車の充放電を制御しており、前記検出装置と前記処理装置との間の通信、前記処理装置と前記第1充放電制御装置との間の通信、および、前記処理装置と前記第2充放電制御装置との間の通信のいずれかにおいて通信異常が生じたときに、前記第2充放電制御装置は、前記電気自動車の充放電を停止しつつ、前記通信異常が生じていることを報知することを特徴とする。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、前記処理装置は、前記電気自動車の充電可否および放電可否を指定するフラグ情報を前記第2充放電制御装置に送信しており、前記第2充放電制御装置は、前記フラグ情報を受信し、前記誘導指令値および受信した前記フラグ情報に基づいて、前記電気自動車の充放電を制御しており、前記フラグ情報は、前記電力制御に対する制御モードに応じて決定される。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、第1巻線、第2巻線および第3巻線を含む三巻線変圧器をさらに備え、前記第1巻線は、前記接続点に接続され、前記第2巻線は、前記第1充放電制御装置に接続され、前記第3巻線は、前記第2充放電制御装置に接続されている。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、前記処理装置は、前記複数の電力制御装置の各々から当該電力制御装置の出力電力をそれぞれ受信しており、受信した前記出力電力の合計値が前記第1巻線の巻線容量を超過する場合、前記誘導指令値として当該超過を解消させるための設定値を前記複数の電力制御装置の各々に送信する。
【0010】
前記電力システムの好ましい実施の形態においては、前記設定値は、前記接続点側から前記三巻線変圧器側に電力が供給されている状態において前記合計値が前記巻線容量を超過する場合、前記蓄電池の充放電を停止させる値であり、前記三巻線変圧器側から前記接続点側に電力が供給されている状態において前記合計値が前記巻線容量を超過する場合、前記電気自動車の充放電を停止させる値である。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電力システムによれば、処理装置および複数の電力制御装置を備えている。前記処理装置は、接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する。前記複数の電力制御装置は、各々が誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力を制御する。前記複数の電力制御装置は、電気自動車を接続可能な第2充放電制御装置を含んでいる。第2充放電制御装置は、電気自動車の充放電を制御する。この構成によると、前記第2充放電制御装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、電気自動車の充放電を制御する。したがって、本開示の電力システムは、第2充放電制御装置によって、電気自動車の充放電制御を含めたエネルギー管理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態にかかる電力システムの全体構成を示している。
【
図2】誘導指令値と各電力制御装置の出力電力との関係を示す特性グラフの一例である。
【
図3】誘導指令値と各電力制御装置の出力電力との関係を示す特性グラフの他の例である。
【
図4】第2実施形態にかかる電力システムの全体構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下の説明において、同一あるいは類似の構成要素には、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本実施形態の電力システムS1の全体構成を示している。電力システムS1は、電力線90、変圧器91、遮断器92、処理装置A1、複数の電力制御装置B1、検出装置C1、および、ネットワークハブH1を備える。複数の電力制御装置B1は、蓄電池用充放電制御装置10および複数のEV用充放電制御装置20を含む。蓄電池用充放電制御装置10には蓄電池19が接続されている。複数のEV用充放電制御装置20のそれぞれには複数の電気自動車29がそれぞれ1台ずつ接続可能である。本開示において、電気自動車29とは、電動機を動力源として走行可能な自動車をいい、燃料電池車や内燃機関が併設された自動車(たとえばプラグインハイブリッド車)などを含む。電動機は、電気自動車29に備えられた蓄電池に蓄積された電力によって動作する。
【0015】
電力システムS1は、接続点Kに接続され、電力系統Dに連系されている。電力システムS1は、電力系統Dに送電可能(逆潮流可能)であり、かつ、電力系統Dから受電可能である。本開示において、電力システムS1から電力系統Dに電力が出力されているとき、すなわち、逆潮流しているとき、接続点電力が正の値となるものとする。一方、電力系統Dから電力システムS1に電力が出力されているとき、接続点電力が負の値となるものとする。接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Dとの接続点Kにおける電力のことである。
【0016】
電力システムS1は、処理装置A1と複数の電力制御装置B1とが協調して、接続点電力が目標電力となるように電力制御を行う。目標電力とは、接続点電力の目標値(調整目標値)のことである。電力システムS1の電力制御において、処理装置A1は、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための指標を算出する。この指標は、特許文献1に記載の制御指令値に相当し、本開示では「誘導指令値」という。各電力制御装置B1は、処理装置A1が算出した誘導指令値に基づいて、制御対象(蓄電池19あるいは各電気自動車29)の出力目標値を算出する。そして、各電力制御装置B1は、算出した出力目標値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。このように、電力システムS1は、複数の電力制御装置B1が分散的に出力電力の制御を行うことで、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御している。誘導指令値は、各電力制御装置B1が出力目標値を算出するためのものでもある。
【0017】
電力負荷Lは、供給される電力を消費するものである。電力負荷Lは、電力系統Dや各電力制御装置B1から電力が供給される。電力負荷Lは、一般負荷L1と重要負荷L2とを含む。一般負荷L1は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器を含む。重要負荷L2は、災害時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷であり、例えば、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器、建屋の照明や空調機器などが含まれる。
【0018】
ネットワークハブH1は、処理装置A1と各電力制御装置B1との通信、および、処理装置A1と検出装置C1との通信を中継する。ネットワークハブH1と、処理装置A1、各電力制御装置B1および検出装置C1との間の各通信は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。なお、ネットワークハブH1が各機器間の通信を中継することなく、各機器間が直接通信してもよい。
【0019】
電力線90は、電力システムS1における電力ネットワークを構築するためのものである。電力線90は、電力系統Dと電力負荷L(一般負荷L1および重要負荷L2)とを接続するもの、電力系統Dと変圧器91とを接続するもの、および、変圧器91と各電力制御装置B1とを接続するものがある。
【0020】
変圧器91は、例えば三相の三巻線変圧器で構成される。変圧器91は、第1巻線911、第2巻線912および第3巻線913を有する。第1巻線911は、遮断器92を介して、接続点Kに接続されている。第2巻線912には、蓄電池用充放電制御装置10が接続されている。第3巻線913には、複数のEV用充放電制御装置20がそれぞれ接続されている。第1巻線911の電圧および電力(皮相電力)は、例えば6600V、56kVAである。第2巻線912の電圧および電力(皮相電力)は、例えば300V、56kVAである。第3巻線913の電圧および電力(皮相電力)は、例えば210V、50kVAである。第1巻線911、第2巻線912および第3巻線913の各巻線容量は、例えば50kWである。第1巻線911、第2巻線912および第3巻線913の各電圧、各電力および各巻線容量は、これらの値に限定されない。変圧器91は、三巻線変圧器ではなく、接続点Kと蓄電池用充放電制御装置10との間に接続される二巻線変圧器および接続点Kと複数のEV用充放電制御装置20のそれぞれとの間に接続される二巻線変圧器の2つの二巻線変圧器で構成されていてもよい。ただし、三巻線変圧器を用いることで、2つの二巻線変圧器を用いる場合よりも、省スペース化および軽量化を図ることができる。
【0021】
遮断器92は、例えばVCB(真空遮断器)である。遮断器92は、電力系統Dの異常が検出されると、電路が遮断される。例えば、遮断器92は、UVR(不足電圧継電器:図示略)によって電力系統D側の短絡事故や停電などの異常が検出されたとき、OVGR(地絡過電圧継電器:図示略)によって電力系統Dの地絡事故が検出されたとき、RPR/UPR(逆電力継電器/不足電力継電器:図示略)によって電力系統D側への逆潮流や短絡事故などの異常が検出されたときに、遮断される。遮断器92の電路が遮断された状態では、重要負荷L2が電力系統Dから切り離される。このとき、電力システムS1は、自立運転を行い、蓄電池用充放電制御装置10およびEV用充放電制御装置20から電力を重要負荷L2に供給する。
【0022】
検出装置C1は、接続点電力を検出する。検出装置C1は、検出部81および通信処理部82を含む。検出部81は、電力システムS1と電力系統Dとの接続点Kに設置され、接続点電力を検出する。検出部81は、例えば電力トランスデューサである。検出部81は、通信処理部82と通信可能であり、接続点電力の検出値を通信処理部82に出力する。通信処理部82は、検出部81から入力される接続点電力の検出値(アナログ値)をデジタル値に変換するAD変換器であり、変換後の接続点電力の検出値(デジタル値)を、ネットワークハブH1を介して、処理装置A1に送信する。検出装置C1には、適宜、電力システムS1を電力系統Dに連系するための各種保護装置がさらに設置される。例えば、電力システムS1が電力系統Dへの逆潮流を禁止されたシステムである場合、検出装置C1は、保護装置として、RPR(逆電力継電器)を含む。なお、検出装置C1は、ネットワークハブH1を介することなく直接処理装置A1と通信してもよい。
【0023】
処理装置A1は、ネットワークハブH1を介して、複数の電力制御装置B1および検出装置C1のそれぞれと通信可能である。処理装置A1は、接続点電力を監視し、接続点電力を目標電力(調整目標値)に制御するための誘導指令値を算出する。接続点電力は、検出装置C1が検出した検出値を用いてもよいし、各電力制御装置B1から通信によって取得した各出力電力の値から算出される推算値であってもよい。なお、後述する制御モードに応じて接続点電力として、検出値あるいは推算値のいずれかが用いられる。また、目標電力(調整目標値)は、後述する制御モードに応じて適宜予め設定されている。例えば、目標電力は、制御モードに応じて、予め処理装置A1に設定された値やユーザ操作により設定された値、上位装置(例えば電力会社など)から指示された値などが設定されうる。処理装置A1は、算出した誘導指令値を、複数の電力制御装置B1(蓄電池用充放電制御装置10および複数のEV用充放電制御装置20)のそれぞれに送信する。処理装置A1は、たとえば、下記(1)式および下記(2)式に示す状態方程式(連立微分方程式)が設定されており、この状態方程式を解くことで、誘導指令値pr(t)を算出する。処理装置A1は、誘導指令値の算出を所定時間(例えば1[sec])毎に行う。下記(1)式および下記(2)式において、P(t)は接続点電力、P
C(t)は目標電力、λ(t)は状態変数、pr(t)は誘導指令値、εは勾配係数である。
【数1】
【0024】
処理装置A1には、特許文献1に記載の電力システムと同様に、制御モードが設定されている。制御モードは、電力システムS1のシステム機能を決定する設定である。電力システムS1における制御モードには、たとえば、特許文献1に記載の制御モードと同様に、スケジュールモード、ピークカットモード、ピークカット補助モードおよびRPR回避モードを含む。また、その他、自立運転モードおよびDG連携モードなどを含む。自立運転モードは、遮断器92の電路が遮断された状態において、重要負荷L2への電力供給を制御することを目的としたモードである。DG連携モードは、ディーゼル発電機が追加された場合において、電力制御を行うことを目的としたモードである。
【0025】
処理装置A1には、充放電許可フラグが設定されている。充放電許可フラグには、充電許可フラグおよび放電許可フラグがある。充電許可フラグは、電気自動車29の充電を許可するか禁止するかを示すフラグ情報である。充電許可フラグは、電気自動車29の充電を禁止する場合には、フラグ値「0」が設定され、一方、電気自動車29の充電を許可する場合には、フラグ値「1」が設定される。放電許可フラグは、電気自動車29の放電を許可するか禁止するかを示すフラグ情報である。放電許可フラグは、電気自動車29の放電を禁止する場合には、フラグ値「0」が設定され、一方、電気自動車29の放電を許可する場合には、フラグ値「1」が設定される。処理装置A1には、特許文献1に記載の電力システムと同様に、制御モードが設定されており、充放電許可フラグおよび放電許可フラグはそれぞれ、処理装置A1に設定される制御モードによって予め設定されている。たとえば、スケジュールモードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「0」が設定される。ピークカットモードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。ピークカット補助モードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。RPR回避モードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。自立運転モードでは、充電許可フラグにフラグ値「0」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。ただし、自立運転モードにおいて、充電許可フラグを所定の条件に応じて適宜変更される構成であってもよい。DG連携モードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。なお、当該設定値は、利用者の操作により変更可能である。処理装置A1は、たとえば制御モードの設定変更がされる度に、充放電許可フラグの設定情報(充電許可フラグおよび放電許可フラグの各設定情報)を各EV用充放電制御装置20に送信する。充放電許可フラグの設定情報は、制御モードの設定変更がされる度に送信されるのではなく、定期的に送信されてもよい。
【0026】
蓄電池用充放電制御装置10は、蓄電池19の充放電を制御する。蓄電池用充放電制御装置10は、蓄電池パワーコンディショナ11および通信処理部12を含んでいる。本開示では、パワーコンディショナを「PCS」と記載する。蓄電池PCS11と通信処理部12とは、双方向通信を行う。蓄電池PCS11と通信処理部12とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。
【0027】
通信処理部12は、処理装置A1と蓄電池PCS11との通信を中継する。通信処理部12は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値に基づいて、蓄電池PCS11の出力目標値を算出する。出力目標値の算出方法については、後述する。通信処理部12は、算出した出力目標値を含む制御指令を生成し、これを蓄電池PCS11に送信する。
【0028】
蓄電池PCS11は、蓄電池19が接続され、蓄電池19の充放電を行う。
図1では、蓄電池PCS11に、1つの蓄電池19が接続されているが、複数の蓄電池19が接続されていてもよい。蓄電池19は、例えば二次電池あるいはコンデンサである。蓄電池PCS11は、電力線90によって、変圧器91の第2巻線912に接続される。蓄電池PCS11は、変圧器91から入力される電力を蓄電池19に供給することで、蓄電池19の充電を行う。また、蓄電池PCS11は、蓄電池19に蓄積された電力を変圧器91に出力することで、蓄電池19の放電を行う。蓄電池PCS11は、通信処理部12から受信する制御指令に基づいて、蓄電池19の充電量および蓄電池19の放電量を制御することで、制御対象(蓄電池19)の出力電力を制御する。具体的には、蓄電池PCS11は、蓄電池19の出力電力が、制御指令に含まれる出力目標値となるように、電力制御を行う。蓄電池PCS11は、受信した制御指令における出力目標値が正の値のとき、蓄電池19の放電を行う。一方、受信した制御指令における出力目標値が負の値のとき、蓄電池19の充電を行う。
【0029】
蓄電池PCS11の定格出力はたとえば50kWである。
図1に示す例では、電力システムS1は、1つの蓄電池用充放電制御装置10を備えているが、蓄電池用充放電制御装置10の数は限定されない。ただし、蓄電池用充放電制御装置10(蓄電池PCS11)の定格出力および数はそれぞれ、接続される蓄電池用充放電制御装置10の定格出力の合計値が第2巻線912の巻線容量を超えないように設定される。
【0030】
蓄電池PCS11は、蓄電池19への出力電力の値を検出し、これを通信処理部12に送信する。通信処理部12は、蓄電池PCS11から出力電力の検出値を受信し、これを処理装置A1に送信する。また、蓄電池PCS11は、接続される蓄電池19から、当該蓄電池19の充電率(SoC:State of Charge)を取得する。蓄電池PCS11は、蓄電池19の充電率を通信処理部12に送信する。蓄電池19の充電率の情報は、通信処理部12において、出力目標値の算出に用いられる。
【0031】
複数のEV用充放電制御装置20はそれぞれ、電気自動車29の充放電を制御する。複数のEV用充放電制御装置20はそれぞれ、EVスタンド21および通信処理部22を含んでいる。EVスタンド21と通信処理部22とは、双方向通信を行う。EVスタンド21と通信処理部22とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されてもよい。
【0032】
複数の通信処理部22はそれぞれ、処理装置A1と各EVスタンド21との通信を中継する。各通信処理部22は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値に基づいて、各EVスタンド21の出力目標値を算出する。出力目標値の算出方法については、後述する。各通信処理部22は、算出した出力目標値を含む制御指令を生成し、これを各EVスタンド21にそれぞれ送信する。
【0033】
複数のEVスタンド21はそれぞれ、電気自動車29が接続され、電気自動車29の充放電(詳細には電気自動車29に備えられた蓄電池の充放電)を行う。
図1では、EVスタンド21に、1台の電気自動車29が接続されているが、複数台の電気自動車29が接続されてもよい。各EVスタンド21は、電力線90によって、変圧器91の第3巻線913に接続されている。各EVスタンド21は、変圧器91から入力される電力を各電気自動車29にそれぞれ供給することで、各電気自動車29の充電を行う。また、各EVスタンド21は、各電気自動車29にそれぞれ蓄積された電力を変圧器91に出力することで、各電気自動車29の放電を行う。各EVスタンド21は、各通信処理部22から受信する制御指令に基づいて各電気自動車29の充電量および各電気自動車29の放電量を制御することで、制御対象(各電気自動車29)の出力電力を制御する。具体的には、各EVスタンド21は、各電気自動車29の出力電力が、制御指令に含まれる出力目標値となるように、電力制御を行う。各EVスタンド21は、受信した制御指令における出力目標値が正の値のとき、各電気自動車29の放電を行う。一方、受信した制御指令における出力目標値が負の値のとき、電気自動車29の充電を行う。
【0034】
複数のEVスタンド21の各定格出力はたとえば10kWである。
図1に示す例では、電力システムS1は、5つのEV用充放電制御装置20を備えているが、EV用充放電制御装置20の数は限定されない。ただし、EV用充放電制御装置20(EVスタンド21)の定格出力および数はそれぞれ、EV用充放電制御装置20の定格出力の合計値が第3巻線913の巻線容量を超えないように設定される。本実施形態では、第3巻線913の巻線容量が50kWであり、かつ、定格出力が10kWであるEVスタンド21を複数台用いる場合には、最大5台のEVスタンド21を第3巻線913に接続可能である。
【0035】
各EVスタンド21は、電気自動車29への出力電力の値を検出し、これを各通信処理部22に送信する。各通信処理部22は、各EVスタンド21から出力電力の検出値を受信し、これを処理装置A1に送信する。また、各EVスタンド21は、接続される電気自動車29から、当該電気自動車29の充電率(SoC)を取得する。各EVスタンド21は、各電気自動車29の充電率を各通信処理部22に送信する。電気自動車29の充電率の情報は、各通信処理部22において、出力目標値の算出に用いられる。
【0036】
各EVスタンド21は、たとえばディスプレイ(図示略)やスピーカ(図示略)などの報知装置を備えている。各EVスタンド21は、報知装置での報知(たとえばディスプレイへの表示やスピーカからの音声出力)によって、充放電に関する情報あるいは電力システムS1の異常などを報知する。充放電に関する情報は、例えば、EVスタンド21の動作状態(充放電の準備中、準備完了、充放電中、充放電完了など)、電気自動車29の蓄電池の充電状態(SoC)、満充電にするための所要時間、満充電になるまでの残余時間、放電可能量、充放電に関する料金などがある。これにより、電力システムS1は、各EVスタンド21を介して、各電気自動車29の充電状況や電力システムS1の異常などを、ユーザに知らせることが可能である。ユーザあるいは管理者などへの報知は、ディスプレイやスピーカを用いたものに限定されず、無線通信を介して、ユーザまたは管理者などが使用する端末装置へ通知してもよい。
【0037】
次に、各電力制御装置B1(具体的には、通信処理部12および複数の通信処理部22のそれぞれ)が行う出力目標値の算出方法について説明する。通信処理部12および複数の通信処理部22はそれぞれ、処理装置A1から受信した誘導指令値を用いて、予め設定された最適化問題に基づいて、出力目標値を算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含んでいる。
【0038】
通信処理部12および複数の通信処理部22はそれぞれ、設定されている評価関数から導出される下記(3)式および下記(4)式で示す演算式が設定されており、この演算式によって、出力目標値P
refを算出する。下記(3)式および下記(4)式において、P
refは通信処理部12および複数の通信処理部22の各出力目標値、prは誘導指令値、pr
lmtは誘導指令値限界、a
1~a
4はそれぞれ、設計パラメータである。誘導指令値限界pr
lmtは、電力システムS1で用いる誘導指令値prの最大値および最小値を定義する値である。下記(4)式で算出される値Λは、誘導指令値prの最小値(-pr
lmt)と誘導指令値prの最大値(pr
lmt)との間の値に制限される。設計パラメータa
1は、主に誘導指令値prの変化に応じた出力電力の変化量を調整するパラメータである。設計パラメータa
2は、主に誘導指令値prが0付近での出力電力を調整するパラメータである。設計パラメータa
3は、主に出力電力が変化し始める誘導指令値prを調整するパラメータである。設計パラメータa
4は、接続される蓄電池19の充電率(SoC)あるいは接続される電気自動車29の充電率(SoC)に応じたパラメータである。これらの各設計パラメータa
1~a
4は、通信処理部12および複数の通信処理部22にそれぞれ設定されている。通信処理部12および複数の通信処理部22はそれぞれ、下記(3)式および下記(4)式で示す演算式ではなく、設定されている評価関数を解くことで、出力目標値P
refを算出してもよい。当該評価関数は、たとえば特許文献1に記載されたものと同じである。
【数2】
【0039】
通信処理部12および複数の通信処理部22はそれぞれ、上記(3)式および上記(4)式で示す演算式によって算出された出力目標値Prefが、通信処理部12および複数の通信処理部22のそれぞれに設定される制約条件を満たしていない場合には、制約条件を満たすように、出力目標値を補正する。通信処理部12に設定される制約条件には、定格出力制約、残量制約、Cレート制約、および、出力電流制約(あるいは定格容量制約)などがある。各通信処理部22に設定される制約条件は、定格出力制約、充放電許可フラグ制約、および、出力電流制約(あるいは定格容量制約)などがある。たとえば定格出力制約では、算出された出力目標値Prefが、通信処理部12の定格出力あるいは複数の通信処理部22の各定格出力を超えていた場合、出力目標値Prefは、定格出力の値に補正される。また、充放電許可フラグ制約では、処理装置A1から受信する充放電許可フラグの設定情報(充電許可フラグおよび放電許可フラグの各設定情報)に応じて、電気自動車29を充電させないように制限されたり、電気自動車29を放電させないように制限されたりする。
【0040】
電力システムS1では、上記各設計パラメータa
1~a
4および制約条件の各設定を適宜調整することにより、誘導指令値と各電力制御装置B1の出力電力との関係が、例えば
図2に示す特性となるように構成されている。
図2において、縦軸は出力電力であり、横軸は誘導指令値である。また、
図2において、蓄電池用充放電制御装置10の出力電力の変化特性を一点鎖線、複数のEV用充放電制御装置20の出力電力の合計の変化特性を二点鎖線、蓄電池用充放電制御装置10の出力電力と複数のEV用充放電制御装置20の出力電力の合計値の変化特性を実線で示している。
【0041】
図2に示す例では、蓄電池用充放電制御装置10は、誘導指令値が0(ゼロ)より小さいとき、蓄電池19の放電を行い、誘導指令値が0(ゼロ)より大きいとき、蓄電池19の充電を行う。このとき、誘導指令値が0(ゼロ)より小さいほど、放電量が線形的に大きくなり、誘導指令値が0(ゼロ)より大きいほど、充電量が線形的に大きくなる。また、蓄電池用充放電制御装置10は、誘導指令値が0(ゼロ)のときは、蓄電池19の充電も放電も行わない。各EV用充放電制御装置20は、誘導指令値が-50より小さいとき、各電気自動車29の放電を行い、誘導指令値が-50より大きいとき、各電気自動車29の充電を行う。このとき、誘導指令値が-50より小さいほど、放電量が線形的に大きくなり、誘導指令値が-50より大きいほど、充電量が線形的に大きくなる。ただし、第3巻線913の巻線容量が50kWであることから、複数のEV用充放電制御装置20の出力電力の合計値が-50kWよりも小さくならないように制限されている。
図2に示す例では、誘導指令値が0(ゼロ)のときに、複数のEV用充放電制御装置20の出力電力の合計値が-50kWとなるため、誘導指令値が0(ゼロ)以上では、-50kWで一定である。また、各EV用充放電制御装置20は、誘導指令値が-50のときは、各電気自動車29の充電も放電も行わない。
【0042】
電力システムS1において、処理装置A1は、複数の電力制御装置B1(蓄電池用充放電制御装置10および複数のEV用充放電制御装置20)の各々から受信する各出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過する場合には、誘導指令値として当該超過を解消させるための設定値(超過解消設定値)を複数の電力制御装置B1(蓄電池用充放電制御装置10および複数のEV用充放電制御装置20)の各々に送信する。なお、超過解消設定値の送信は、複数の電力制御装置B1の各出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過する場合ではなく、当該合計値が第1巻線911の巻線容量よりも少し小さい値を超過する場合であってもよい。ただし、複数の電力制御装置B1の各出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過する場合に誘導指令値として超過解消設定値を送信する構成においては、第1巻線911における電力が第1巻線911の巻線容量を超過しても少なくとも数分間は動作可能な変圧器91を利用することが望ましい。第1巻線911の巻線容量の超過には、第1巻線911から接続点Kへ電力が供給された状態において超過する場合(放電時超過状態)と、接続点Kから第1巻線911へ電力が供給された状態において超過する場合(充電時超過状態)とがある。放電時超過状態においては、超過解消設定値は、各電気自動車29の充放電を停止させる値である。第1巻線911の巻線容量が50kWであり、かつ、
図2に示す例では、誘導指令値が約-65よりも小さいときに放電時超過状態となり、処理装置A1は、誘導指令値として例えば-50を各電力制御装置B1に送信する。なお、放電時超過状態での超過解消設定値(誘導指令値)は、-50に限定されず、放電時超過状態を解消させる値であればよい。例えば、
図2に示す例では、放電時超過状態での超過解消設定値(誘導指令値)は、-65よりも大きい値であれば放電時超過状態を解消させることができる。充電時超過状態においては、超過解消設定値は、蓄電池19の充放電を停止させる値である。第1巻線911の巻線容量が50kWであり、かつ、
図2に示す例では、誘導指令値が0(ゼロ)よりも大きい場合に充電時超過状態となり、処理装置A1は、例えば誘導指令値として0(ゼロ)を各電力制御装置B1に送信する。なお、充電時超過状態での超過解消設定値(誘導指令値)は、0(ゼロ)に限定されず、充電時超過状態を解消させる値であればよい。例えば、
図2に示す例では、充電時超過状態での超過解消設定値(誘導指令値)は、0(ゼロ)より小さい値であれば充電時超過状態を解消させることができる。処理装置A1は、超過解消設定値を送信後、一定時間経過後に、上記(1)式および上記(2)式の演算により算出された誘導指令値の送信を再開する。
【0043】
上記放電時超過状態および上記充電時超過状態について、例えば
図2に示す特性と異なり、
図3に示す特性である場合を、説明する。例えば電力システムS1において、EV用充放電制御装置20が5つではなく3つであった場合に、
図3に示す特性となる。
図3において、蓄電池用充放電制御装置10の出力電力の変化特性を一点鎖線、複数のEV用充放電制御装置20の出力電力の合計の変化特性を二点鎖線、蓄電池用充放電制御装置10の出力電力と複数のEV用充放電制御装置20の出力電力の合計値の変化特性を実線で示している。
図3に示す例では、誘導指令値が約-75よりも小さい場合に放電時超過状態となり、処理装置A1は、誘導指令値として-50を各電力制御装置B1に送信する。なお、
図3に示す例においても、放電時超過状態での超過解消設定値(誘導指令値)は、-50に限定されず、放電時超過状態を解消させる値であればよい。また、誘導指令値が40よりも大きい場合に充電時超過状態となり、処理装置A1は、誘導指令値として0(ゼロ)を各電力制御装置B1に送信する。なお、
図3に示す例においても、充電時超過状態での超過解消設定値(誘導指令値)は、0(ゼロ)に限定されず、充電時超過状態を解消させる値であればよい。このように、超過解消設定値は、誘導指令値と各電力制御装置B1の出力電力との関係に応じて、適宜設定される。
【0044】
次に、電力システムS1において、各機器間の通信が正常に行われなかった場合について、説明する。例えば、通信が正常に行われない状況としては、各機器の間や各機器内部における各要素の間において通信断が発生した場合、あるいは、各機器の間や各機器内部における各要素の間の信号異常が発生した場合などがある。
【0045】
<ケース1:処理装置A1と検出装置C1との間の通信異常>
処理装置A1と検出装置C1(通信処理部82)との間に通信異常が発生すると、処理装置A1は、検出装置C1から接続点電力の検出値を正しく受信できない。その結果、処理装置A1は、誘導指令値を適切に算出できないことがあり、電力システムS1は、電力制御を適切に行えない可能性がある。
【0046】
そこで、処理装置A1は、検出装置C1から接続点電力の検出値を正しく受信できなかった場合、誘導指令値として制御モードに応じた設定値(異常時設定値)を各電力制御装置B1に送信する。上記異常時設定値としては、例えば、ピークカットモードが設定されている場合、蓄電池19の充放電を停止させる値である。
図2に示す例では、ピークカットモードに対する異常時設定値は、0(ゼロ)である。また、RPR回避モードが設定されている場合、蓄電池19を充電させる値である。
図2に示す例では、RPR回避モードに対する異常時設定値は、0(ゼロ)より大きく100以下である。なお、設定されている制御モードに応じては、接続点電力として検出装置C1の検出値を用いない場合がある。例えば、スケジュールモード、自立運転モード、および、DG連携モードでは、接続点電力として推算値を用いて電力制御が行われる。また、ピークカット補助モードでは、図示しないデマンド監視装置からの信号に応じて電力制御が行われる。この場合、上記異常時設定値を誘導指令値として各電力制御装置B1に送信することなく、各制御モードに応じた通常の処理が行われる。さらに、処理装置A1は、検出装置C1から接続点電力の値を正しく受信できなかった場合、検出装置C1(あるいは通信処理部82)との間で通信異常が発生していることを示すシステム異常フラグをオンにする。そして、当該システム異常フラグがオンであることを示す通知(システム異常フラグオン通知)を各EV用充放電制御装置20に送信する。各EV用充放電制御装置20は、システム異常フラグオン通知を受信すると、当該EV用充放電制御装置20のEVスタンド21は、電気自動車29の充放電を停止するとともに、処理装置A1と検出装置C1(あるいは通信処理部82)との間で通信異常が発生している旨を報知する。
【0047】
<ケース2:処理装置A1と各電力制御装置B1との間の通信異常>
電力システムS1では、処理装置A1と各電力制御装置B1との間の通信に、片方向通信を用いる場合と双方向通信とを用いる場合がある。片方向通信は、例えばUDP通信により行われる。片方向通信は、処理装置A1から各電力制御装置B1に誘導指令値を送信する際に利用される。双方向通信は、例えばModbus通信により行われる。双方向通信は、各電力制御装置B1からは処理装置A1に出力電力の検出値を送信する際に利用される。したがって、電力システムS1では、片方向通信において通信異常が発生する場合と、双方向通信において通信異常が発生する場合とがあり、以下に、それぞれの場合について説明する。
【0048】
<ケース2-1:片方向通信について通信異常が発生した場合>
上記片方向通信において通信異常が発生した場合、各電力制御装置B1は、処理装置A1から誘導指令値を正しく受信できない。その結果、各電力制御装置B1は、出力目標値を正しく算出できず、出力電力の制御を適切に行えない。
【0049】
そこで、蓄電池用充放電制御装置10は、処理装置A1から誘導指令値を正しく受信できなかった場合、蓄電池19の充放電を停止する。また、各EV用充放電制御装置20は、処理装置A1から誘導指令値を正しく受信できなかった場合、各電気自動車29の充放電を停止する。これらにより、上記片方向通信において通信異常が発生すると、蓄電池19の充放電が停止され、かつ、各電気自動車29の充放電が停止される。さらに、蓄電池用充放電制御装置10は、処理装置A1から誘導指令値を正しく受信できなかった場合、双方向通信により、第1片方向通信異常通知を処理装置A1に送信する。処理装置A1は、第1片方向通信異常通知を受信すると、第1片方向通信異常フラグをオンにする。そして、第1片方向通信異常フラグがオンであることを示す通知(第1片方向通信異常フラグオン通知)を、双方向通信により、各EV用充放電制御装置20に送信する。第1片方向通信異常フラグオン通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の片方向通信に異常が発生していることをEVスタンド21から報知する。これにより、ユーザあるいは管理者は、各EVスタンド21を介して、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の片方向通信に異常が発生していることを知ることができる。また、各EV用充放電制御装置20は、処理装置A1から誘導指令値を正しく受信できなかった場合、双方向通信により、第2片方向通信異常通知を処理装置A1に送信する。処理装置A1は、第2片方向通信異常通知を受信すると、第2片方向通信異常フラグをオンにする。そして、第2片方向通信異常フラグがオンであることを示す通知(第2片方向通信異常フラグオン通知)を、双方向通信により、各EV用充放電制御装置20に送信する。第2片方向通信異常フラグオン通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、処理装置A1と他のEV用充放電制御装置20との間の片方向通信に異常が発生していることを、EVスタンド21から報知する。これにより、ユーザあるいは管理者は、各EVスタンド21を介して、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の片方向通信に異常が発生していることを知ることができる。
【0050】
<ケース2-2:双方向通信において通信異常が発生した場合>
上記双方向通信において通信異常が発生した場合、処理装置A1は、各電力制御装置B1から出力電力の検出値を正しく受信できない。その結果、処理装置A1は、正しく受信できた出力電力の検出値しか用いることができない。つまり、処理装置A1が適切な誘導指令値を算出できない可能性があるため、電力システムS1の電力制御が適切に行われない可能性がある。
【0051】
そこで、処理装置A1との間で通信異常が発生した各電力制御装置B1は、制御対象(蓄電池19あるいは電気自動車29)の充放電を停止する。例えば、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の双方向通信が通信異常となった場合、蓄電池用充放電制御装置10は、蓄電池19の充放電を停止する。一方、処理装置A1と各EV用充放電制御装置20との間の双方向通信が通信異常となった場合、各EV用充放電制御装置20は、各電気自動車29の充放電を停止する。これにより、上記双方向通信において通信異常が発生すると、処理装置A1との間で通信異常が発生した各電力制御装置B1において、制御対象(蓄電池19あるいは各電気自動車29)の充放電が停止される。
【0052】
さらに、処理装置A1と各電力制御装置B1との間で通信異常が発生したことを、各EVスタンド21を介して、ユーザあるいは管理者に報知する。例えば、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の双方向通信で通信異常が発生した場合、処理装置A1は、第1双方向通信異常フラグをオンにして、当該第1双方向通信異常フラグがオンであることを示す通知(第1双方向通信異常フラグオン通知)を各EV用充放電制御装置20に送信する。第1双方向通信異常フラグオン通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の双方向通信で通信異常が発生していることを、各EVスタンド21から報知させる。これにより、ユーザあるいは管理者は、各EVスタンド21を介して、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の双方向通信に異常が発生していることを知ることができる。一方、処理装置A1と複数のEV用充放電制御装置20のいずれかとの間の双方向通信で通信異常が発生した場合、通信異常が発生したEV用充放電制御装置20は、処理装置A1との通信異常が発生していることを、EVスタンド21から報知させる。また、処理装置A1は、第2双方向通信異常フラグをオンにして、当該第2双方向通信異常フラグがオンであることを示す通知(第2双方向通信異常フラグオン通知)を、通信異常が発生していないEV用充放電制御装置20に送信する。そして、第2双方向通信異常フラグオン通知を受信したEV用充放電制御装置20は、他のEV用充放電制御装置20と処理装置A1との通信異常が発生していることを、EVスタンド21から報知させる。これにより、ユーザあるいは管理者は、各EVスタンド21を介して、処理装置A1とEV用充放電制御装置20との間の双方向通信に異常が発生していることを知ることができる。
【0053】
<ケース3:蓄電池PCS11と通信処理部12との間の通信異常>
蓄電池PCS11と通信処理部12との間で通信異常が発生すると、蓄電池PCS11は、通信処理部12から出力目標値を正しく受信できない。その結果、蓄電池PCS11は、目標とする電力値(出力目標値)が分からず、出力電力の制御を適切に行えない。また、通信処理部12は、蓄電池PCS11から出力電力の検出値および蓄電池19のSoCを正しく受信できない。その結果、通信処理部12は、出力電力の検出値を正しく受信できないことにより、処理装置A1に出力電力の検出値を送信できず、処理装置A1は、誘導指令値を適切に算出できない可能性がある。また、通信処理部12は、蓄電池19のSoCを受信できないことにより、出力目標値を適切に算出できない可能性がある。
【0054】
そこで、蓄電池PCS11は、通信処理部12から出力目標値を正しく受信できなかった場合、蓄電池19の充放電を停止する。これにより、蓄電池PCS11と通信処理部12との間で通信異常が発生すると、蓄電池19の充放電が停止される。また、通信処理部12は、蓄電池PCS11から出力電力の値や蓄電池19のSoCの情報を正しく受信できなかった場合、第1内部異常通知を処理装置A1に送信する。処理装置A1は、第1内部異常通知を受信すると、第1内部異常フラグをオンにする。そして、第1内部異常フラグがオンであることを示す通知(第1内部異常フラグオン通知)を各EV用充放電制御装置20に送信する。このときの処理装置A1とEV用充放電制御装置20との通信は、片方向通信でも双方方向通信でもよい。第1内部異常フラグオン通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、蓄電池用充放電制御装置10の内部で通信異常が発生していることをEVスタンド21から報知する。これにより、ユーザあるいは管理者は、蓄電池用充放電制御装置10の内部で通信異常が発生していることを知ることができる。なお、通信処理部12は、第1内部異常通知を処理装置A1ではなく各EV用充放電制御装置20に送信してもよい。この場合、第1内部異常通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、蓄電池用充放電制御装置10の内部で通信異常が発生していることをEVスタンド21から報知する。
【0055】
<ケース4:EVスタンド21と通信処理部22との間の通信異常>
各EV用充放電制御装置20において、EVスタンド21と通信処理部22との間で通信異常が発生すると、EVスタンド21は、通信処理部22から出力目標値を正しく受信できない。この場合、EVスタンド21は、目標とする電力値(出力目標値)が分からず、出力電力の制御を適切に行えない。また、通信処理部22は、EVスタンド21から出力電力の検出値および電気自動車29のSoCを正しく受信できない。その結果、通信処理部22は、出力電力の検出値を正しく受信できないことにより、処理装置A1にEVスタンド21の出力電力の検出値を送信できず、処理装置A1は、誘導指令値を適切に算出できない可能性がある。また、通信処理部22は、EVスタンド21から電気自動車29のSoCを受信できないため、出力目標値を適切に算出できない可能性がある。
【0056】
そこで、EVスタンド21と通信処理部22との間で通信異常が発生したEV用充放電制御装置20において、EVスタンド21は、通信処理部22から出力目標値を正しく受信できなかった場合、電気自動車29の充放電を停止する。これにより、EVスタンド21と通信処理部22との間で通信異常が発生したEV用充放電制御装置20において、電気自動車29の充放電が停止される。さらに、EVスタンド21は、報知装置を介して、EV用充放電制御装置20の内部で通信異常が発生していることを報知する。通信処理部22は、EVスタンド21から出力電力の値や電気自動車29のSoCの情報を正しく受信できなかった場合、第2内部異常通知を処理装置A1に送信する。処理装置A1は、第2内部異常通知を受信すると、第2内部異常フラグをオンする。そして、当該第2内部異常フラグがオンであることを示す通知(第2内部異常フラグオン通知)を、各EV用充放電制御装置20に送信する。第2内部異常フラグオン通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、他のEV用充放電制御装置20の内部で通信異常が発生していることをEVスタンド21から報知する。ただし、内部で通信異常が発生しているEV用充放電制御装置20においては、上記のとおり、EVスタンド21の処理によりその旨が報知される。これにより、ユーザあるいは管理者は、複数のEV用充放電制御装置20のいずれかの内部で通信異常が発生していることを知ることができる。なお、内部で通信異常が発生しているEV用充放電制御装置20の通信処理部22は、第2内部異常通知を処理装置A1ではなく、他のEV用充放電制御装置20に送信してもよい。この場合、第2内部異常通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、他のEV用充放電制御装置20の内部で通信異常が発生していることをEVスタンド21から報知する。
【0057】
電力システムS1の作用および効果は、次の通りである。
【0058】
電力システムS1は、処理装置A1および複数の電力制御装置B1を備えている。処理装置A1は、接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する。複数の電力制御装置B1は、各々が誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力を制御する。複数の電力制御装置B1は、電気自動車29を接続可能なEV用充放電制御装置20を含んでいる。この構成によると、EV用充放電制御装置20は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、電気自動車29の充放電を制御する。したがって、電力システムS1は、EV用充放電制御装置20によって、電気自動車29の充放電制御を含めたエネルギー管理が可能である。
【0059】
電力システムS1では、検出装置C1と処理装置A1との間の通信、処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10との間の通信、および、処理装置A1と各EV用充放電制御装置20との間の通信のいずれかにおいて通信異常が生じたときに、各EV用充放電制御装置20が各電気自動車29の充放電を停止しつつ、当該通信異常が生じていることを報知する。処理装置A1と蓄電池用充放電制御装置10とは、および、処理装置A1と各EV用充放電制御装置20とは、それぞれがネットワークハブH1を介して通信する。上記した通信のうちのいずれかかが通信異常となった場合、EV用充放電制御装置20は、電気自動車29の充放電を適切に行えず、意図せぬ充放電が行われる可能性がある。例えば、放電させてはいけない電気自動車29の放電を実行する可能性がある。そこで、電力システムS1では、上記した通信のうちのいずれかが通信異常となった場合、電気自動車29の充放電を停止させることで、電気自動車29の意図せぬ充放電を抑制できる。また、電力システムS1では、EV用充放電制御装置20が通信異常の発生を報知することで、EV用充放電制御装置20(EVスタンド21)のユーザが通信異常の発生を知ることができる。特に、電力システムS1は、従来(特許文献1に記載)の電力システムのように、管理者専用の端末装置がなく、リアルタイムに通信異常の発生を管理者に知らせることができない。そこで、EVスタンド21に備わる報知装置に報知させることで、EVスタンド21のユーザに異常が発生していることを知らせる。これにより、ユーザから管理者への通信異常の情報提供を促し、管理者が通信異常を早期発見することが可能となる。
【0060】
電力システムS1では、処理装置A1は、充放電許可フラグの設定情報(充電許可フラグおよび放電許可フラグの各設定情報)を各EV用充放電制御装置20に送信している。充放電許可フラグは、設定される制御モードに応じて決定される。EV用充放電制御装置20(EVスタンド21)の動作として、充電のみを実施する場合と、放電のみを実施する場合と、充放電の両方を実施する場合とがある。これらは、制御モードに応じて変わる。そこで、電力システムS1では、制御モードに応じて充放電許可フラグが変更されることで、EV用充放電制御装置20による電気自動車29の充放電を適切に制御できる。
【0061】
電力システムS1では、処理装置A1は、複数の電力制御装置B1(蓄電池用充放電制御装置10および複数のEV用充放電制御装置20)の出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過する場合(あるいは当該巻線容量よりも少し小さい値を超過する場合)、誘導指令値として当該超過を解消させるための設定値(超過解消設定値)を、複数の電力制御装置B1のそれぞれに送信する。この構成によれば、第1巻線911における電力が第1巻線911の巻線容量を超過すると、上記超過解消設定値が誘導指令値として各電力制御装置B1に送信される。そして、各電力制御装置B1は、受信した誘導指令値(超過解消設定値)に基づいて、出力電力を制御するため、第1巻線911の巻線容量を超過する状態が解消される。つまり、電力システムS1は、変圧器91の故障(第1巻線911の故障)を抑制できる。
【0062】
電力システムS1では、接続点Kから変圧器91に電力が供給されている状態(充電時超過状態)において、複数の電力制御装置B1の出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過する場合、超過解消設定値は、蓄電池19の充放電を停止させる値である。一方、変圧器91から接続点Kに電力が供給されている状態(放電時超過状態)において、複数の電力制御装置B1の出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過する場合、超過解消設定値は、各電気自動車29の充放電を停止させる値である。これにより、電力システムS1は、複数の電力制御装置B1の出力電力の合計値が第1巻線911の巻線容量を超過することを解消することができる。
【0063】
図4は、第2実施形態の電力システムS2の全体構成を示している。
図4に示すように、電力システムS2は、電力システムS1と比較して、1つのEV用充放電制御装置20の代わりに、PV用出力制御装置30を備えている。PVは、Photovoltaics(太陽光発電)の略称である。
【0064】
PV用出力制御装置30は、太陽電池39による発電を制御する。PV用出力制御装置30は、太陽光PCS31、通信処理部32および検出部33を含んでいる。太陽光PCS31と通信処理部32とは、双方向通信を行う。太陽光PCS31と通信処理部32とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されていてもよい。
【0065】
検出部33は、太陽光PCS31の出力電力を検出する。そして、出力電力の検出値(アナログ値)をデジタル値に変換する。検出部33は、通信処理部32と通信可能であり、変換後の出力電力の検出値(デジタル値)を、通信処理部32に送信する。
【0066】
通信処理部32は、処理装置A1と太陽光PCS31との通信を中継する。通信処理部32は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値に基づいて、太陽光PCS31の出力目標値を算出する。通信処理部32は、通信処理部12および各通信処理部22と同様に、上記(3)式および上記(4)式の演算により、出力目標値を算出する。ただし、通信処理部32に設定される制約条件は、通信処理部12および各通信処理部22とは異なる。通信処理部32は、算出した出力目標値を含む制御指令を生成し、これを太陽光PCS31に送信する。また、通信処理部32は、検出部33と処理装置A1との通信を中継する。通信処理部32は、検出部33から送信された出力電力の検出値を受信し、これを処理装置A1に送信する。
【0067】
太陽光PCS31は、太陽電池39が接続され、太陽電池39が発電した電力(例えば直流電力)を系統連系に適した電力(例えば交流電力)に変換して出力する。
図4では、太陽光PCS31に、1つの太陽電池39が接続されているが、複数の太陽電池39が接続されていてもよい。太陽光PCS31は、電力線90によって、変圧器91の第3巻線913に接続される。太陽光PCS31は、太陽電池39が発電した電力を変圧器91に出力する。太陽光PCS31は、通信処理部32から受信する制御指令に基づいて、太陽電池39の発電量を制御することで、制御対象(太陽電池39)の出力電力の制御を行う。具体的には、太陽光PCS31は、太陽電池39の出力電力が、制御指令に含まれる出力目標値となるように、電力制御を行う。なお、太陽光PCS31は、太陽電池39の出力電力(発電量)の制御を行わないものであってもよい。この場合の太陽光PCS31は、外部接点によって電力の出力を停止することが可能である。
【0068】
次に、電力システムS2において、各機器間の通信が正常に行われなかった場合について、説明する。上記ケース1ないし上記ケース4に対しては、電力システムS2も電力システムS1と同様に処理される。
【0069】
<ケース5:通信処理部32と検出部33との間の通信異常>
通信処理部32と検出部33との間で通信異常が発生すると、通信処理部32は、検出部33から太陽光PCS31の出力電力の検出値を正しく受信できない。その結果、通信処理部32は、出力電力値の検出値を処理装置A1に送信できないため、処理装置A1は、太陽光PCS31の出力電力が分からず、変圧器91の容量超過(第1巻線911の巻線容量超過や第3巻線913の巻線容量超過)や自立運転時の蓄電池19の過充電が起こり得る。
【0070】
そこで、処理装置A1は、通信処理部32から太陽光PCS31の出力電力の検出値を正しく受信できなかった場合、図示しない外部接点を通じて、太陽光PCS31を停止させる。なお、処理装置A1は、出力電力の検出値を正しく受信できなかった場合ではなく、通信処理部32から送信されるPV通信異常通知を受信した場合に、太陽光PCS31を停止させてもよい。さらに、処理装置A1は、通信処理部32から太陽光PCS31の出力電力の検出値を正しく受信できなかった場合、あるいは、通信処理部32から送信されるPV通信異常通知を受信した場合、PV通信異常フラグをオンにし、当該PV通信異常フラグがオンであることを示す通知(PV通信異常フラグオン通知)を、各EV用充放電制御装置20に送信する。PV通信異常フラグオン通知を受信した各EV用充放電制御装置20は、通信処理部32と検出部33との間で通信異常が発生していることを各EVスタンド21から報知する。
【0071】
電力システムS2においても、電力システムS1と同様に、EV用充放電制御装置20は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、電気自動車29の充放電を制御する。したがって、電力システムS2は、EV用充放電制御装置20によって、電気自動車29の充放電制御を含めたエネルギー管理が可能である。
【0072】
また、電力システムS2は、電力システムS1と同様に、電気自動車29の意図せぬ充放電を抑制し、かつ、EV用充放電制御装置20(EVスタンド21)のユーザが通信異常の発生を知ることができる。さらに、電力システムS2は、電力システムS1と同様に、制御モードに応じて充放電許可フラグが変更されることで、EV用充放電制御装置20による電気自動車29の充放電を適切に制御できる。さらに、電力システムS2は、電力システムS1と同様に、変圧器91の故障の抑制および第1巻線911の巻線容量の超過を解消できる。
【0073】
第2実施形態において、検出部33は出力電力の検出値を通信処理部32に送信し、通信処理部32は受信した出力電力の検出値を、ネットワークハブH1を介して、処理装置A1に送信する例を示したが、これと異なり、次のような構成であってもよい。それは、検出部33は、ネットワークハブH1と通信可能であり、出力電力の検出値を、ネットワークハブH1を介して、処理装置A1に送信してもよい。
【0074】
第2実施形態において、PV用出力制御装置30の構成は、上記した例に限定されず、蓄電池用充放電制御装置10と同様に、次のように構成されていてもよい。それは、太陽光PCS31が、太陽電池39の出力電力を検出し、これを通信処理部32に送信する。そして、通信処理部32が、太陽光PCS31から出力電力の検出値を受信し、ネットワークハブH1を介して受信した出力電力の検出値を処理装置A1に送信してもよい。この場合、PV用出力制御装置30は、検出部33を含んでいなくてもよい。
【0075】
本開示にかかる電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0076】
S1,S2:電力システム、A1:処理装置、B1:電力制御装置、C1:検出装置、D:電力系統、10:蓄電池用充放電制御装置、11:蓄電池PCS、12:通信処理部、19:蓄電池、20:EV用充放電制御装置、21:EVスタンド、22:通信処理部、29:電気自動車、30:PV用出力制御装置、31:太陽光PCS、32:通信処理部、33:検出部、39:太陽電池、81:検出部、82:通信処理部、91:変圧器、911:第1巻線、912:第2巻線、913:第3巻線