(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ポーラスプラグ用ポーラスれんが及びポーラスプラグ
(51)【国際特許分類】
C04B 35/101 20060101AFI20240912BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20240912BHJP
C21C 7/072 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C04B35/101
C04B38/00 303Z
C21C7/072 P
(21)【出願番号】P 2020174292
(22)【出願日】2020-10-16
【審査請求日】2023-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)公開の事由1 刊行物:第18回環境と耐火物研究会報告集 発行日:2019年11月15日 (2)公開の事由2 集会名:第18回環境と耐火物研究会 開催日:2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143410
【氏名又は名称】牧野 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】安井 公宏
(72)【発明者】
【氏名】今枝 孝文
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-309515(JP,A)
【文献】特開平02-307863(JP,A)
【文献】特開平10-251739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/101
C04B 38/00
C21C 7/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状アルミナ粒子を主成分と
し10~20質量%のムライト粒子を含む骨材と、結合剤としての微粉と、からなり、
前記骨材及び前記微粉はクロム及びジルコニウムを含有せず、
前記微粉は10~20質量%であり、スピネル1~15質量%と、残部をアルミナを主成分としてなり、
焼結助剤成分及び不可避成分と、を含むことを特徴とするポーラスプラグ用ポーラスれんが。
【請求項2】
前記骨材の粒子径が0.2~1.5mmであることを特徴とする請求項
1に記載のポーラスプラグ用ポーラスれんが。
【請求項3】
前記微粉の粒子径が150μm以下であることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載のポーラスプラグ用ポーラスれんが。
【請求項4】
前記骨材は、ムライト粒子を15~20重量%含み、
前記微粉は10~15質量%であり、スピネル2~6質量%と、残部をアルミナを主成分としてなることを特徴とする請求項
1ないし請求項
3のいずれか1つに記載のポーラスプラグ用ポーラスれんが。
【請求項5】
請求項1ないし請求項
4のいずれか1つに記載のポーラスプラグ用ポーラスれんがを用いたポーラスプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取鍋等の溶融金属容器の底壁に羽口耐火物を介して保持され、溶融金属にガスを吹き込むためのポーラスプラグに好適に用いられるポーラスれんがであって、原料に酸化クロム及びジルコン・ジルコニアを添加しないポーラスプラグ用ポーラスれんが及びポーラスプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
ポーラスプラグは、取鍋、タンディッシュ等の溶融金属容器の底壁の羽口耐火物に装着され、溶融金属にガスを吹き込むための通気性を有する多孔質耐火物であり、溶鋼の撹拌や溶鋼介在物の浮上、冶金反応の促進を目的に使用される。
【0003】
ポーラスプラグは、ポーラスプラグの外周面を形成する鉄皮、鉄皮に充填され、ポーラスれんがを鉄皮内に保持するキャスタブル耐火物、上端面が溶融金属側に露出するように配置されており、ガス吹込み口として作用するポーラスれんが、などを備え、下端にはガス供給管が接続されている。
【0004】
ポーラスれんがは、通気性を有する、例えば、ハイアルミナ質、アルミナ-クロム質、アルミナ-マグネシア質などのアルミナ質ポーラスれんがが広く用いられている。
【0005】
ポーラスれんがに必要な特性は、通気性、強度、耐浸透性及び耐食性である。
【0006】
溶融金属に吹き込むため十分な量のガスを吹き込むためには、十分な通気性を有することが必要である。
【0007】
ポーラスれんがは、溶鋼等の高温の金属溶湯に接触しており、ガス吹き込みによる起因する金属溶湯の攪拌の流れにより損耗が生じる。この損耗を少なくするために高強度であることが必要である。
また、溶融金属やスラグに対する耐食性も必要である。
【0008】
溶鋼にガスを吹き込む場合には、溶鋼及びスラグが気孔内に浸透しにくい耐浸透性が重要である。
ガスの吹き込みが停止されている間、ポーラスれんが内部に溶鋼及びスラグが浸透し凝固することにより浸透層が形成される。浸透層が形成されると、ガスの通気量が低下してしまうので、通気性を回復させるため、酸素洗浄が行われる。酸素洗浄は、溶鋼の排出後のポーラスれんがに容器側から酸素を吹き、浸透した鋼を酸化燃焼させながら浸透し凝固した溶鋼及びスラグを除去することにより行う。このとき、浸透層を除去することによりポーラスれんがの損耗が生じるため、損耗量を少なくするためには、溶鋼及びスラグに対する耐浸透性が必要である。
【0009】
十分な通気性を確保するためには、気孔径や気孔率を大きくすることが有効であるが、気孔径や気孔率を大きくすると、溶鋼及びスラグが浸透しやすくなり耐浸透性が低下するとともに、強度も低下する。つまり、気孔の制御のみにより十分な通気性と耐浸透性及び強度とを両立させて具備することは困難であった。
【0010】
そのため、強度及び耐浸透性を確保するために、様々な方法が検討されてきた。強度及び耐浸透性向上を目的としてジルコンやジルコニアが添加されたもの(例えば、特許文献1、2)や耐浸透性向上を目的として酸化クロムが添加されたもの(例えば、特許文献1、2、3)などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-52168号公報
【文献】特開昭60-65778号公報
【文献】特開平8-309515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、地球環境への配慮の高まりから酸化クロムを使用しないアルミナ質ポーラスれんがの開発が要望されている。また、ジルコンやジルコニア原料は比較的多くの放射性物質が含まれていることが知られており、これらの原料を使用した耐火物からも微量の放射線が放出されている。そのため、ジルコンやジルコニア原料を使用しないアルミナ質ポーラスれんがの開発は重要であるが、ジルコニウムを含有しないポーラスれんがの研究はほとんど報告されていない。
【0013】
そこで、本発明では、ポーラスプラグ用ポーラスれんがとして、クロム及びジルコニウムを含有する原料を用いず、通気性、耐浸透性及び強度に優れたポーラスれんがを提供することを目的とする。また、このポーラスれんがを用いたポーラスプラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明では、ポーラスプラグ用ポーラスれんがが、球状アルミナ粒子を主成分とし10~20質量%のムライト粒子を含む骨材と、結合剤としての微粉と、からなり、前記骨材及び前記微粉はクロム及びジルコニウムを含有せず、前記微粉は10~20質量%であり、スピネル1~15質量%と、残部をアルミナを主成分としてなり、焼結助剤成分及び不可避成分と、を含む、という技術的手段を用いる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のポーラスプラグ用ポーラスれんがにおいて、前記骨材の粒子径が0.2~1.5mmである、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のポーラスプラグ用ポーラスれんがにおいて、前記微粉の粒子径が150μm以下である、という技術的手段を用いる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のポーラスプラグ用ポーラスれんがにおいて、前記骨材は、ムライト粒子を15~20重量%含み、前記微粉は10~15質量%であり、スピネル2~6質量%と、残部をアルミナを主成分としてなる、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、ポーラスプラグが、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のポーラスプラグ用ポーラスれんがを用いた、という技術的手段を用いる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポーラスプラグ用ポーラスれんがによれば、ポーラスプラグ用ポーラスれんがとして、クロム及びジルコニウムを含有する原料を用いず、通気性、耐浸透性及び強度に優れたポーラスれんがを提供することができる。また、このポーラスれんがを用いて、ポーラスプラグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】参考例1、比較例1及び実施例2、3の微細構造及び元素分布の観察結果を示す図である。
【
図2】るつぼ試験後の実施例2の微細構造観察及び元素分布の観察結果を示す図である。
【
図3】るつぼ試験後の実施例3の微細構造観察及び元素分布の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、前述の課題を解決すべく鋭意研究を行い、クロム及びジルコニウムを含有する原料を用いずに、既存のポーラスれんがと同等の特性を有するポーラスれんがを見出した。材料設計の技術的思想を以下に示す。
【0023】
従来のポーラスれんがにおいて、酸化クロム(Cr2O3)は、主にスラグに対する耐食性を向上させることに寄与する。また、ジルコニア(ZrO2)及びジルコン(ZrSiO4)は、主に強度を向上させることに寄与する。
【0024】
そこで、上記効果を奏するために、酸化クロム(Cr2O3)、ジルコニア(ZrO2)及びジルコン(ZrSiO4)に代えて微粉のスピネル(MgAl2O4)及びアルミナ(Al2O3)を用いることを試み、既存のポーラスれんがと同等の特性を有するポーラスれんがを得ることができた。
【0025】
以下に、本発明のポーラスれんがの構成について説明する。
【0026】
本発明のポーラスプラグ用ポーラスれんが(以下、ポーラスれんが、という)は、ジルコニウムまたはクロムを主成分とする粒子を含まず、球状アルミナ粒子を主成分とする骨材と、結合剤としての微粉と、からなり、前記微粉は10~20質量%であり、スピネル1~15質量%と、残部をアルミナを主成分としてなり、焼結助剤成分及び不可避成分と、を含む。
【0027】
ポーラスれんがの気孔率は20~35%が好ましい。気孔率が20%未満の場合、ポーラスれんがが緻密となり、通気性が低下してしまう。また、気孔率が35%を超えると、強度、耐浸透性ともに低下してしまうからである。
【0028】
骨材は、球状アルミナ粒子を主成分とし、他に、10~20質量%のムライト粒子を含むことができる。
【0029】
球状アルミナ粒子として、粒子径0.2~1.5mmの球状アルミナ粒子を好適に用いることができる。骨材のアルミナとして、球状アルミナ粒子を用いることにより、粒子間の接触面積が少なくなり気孔率や気孔径を大きくすることなく高い通気性を得ることができる。
【0030】
球状アルミナ粒子の粒子径は、0.2mmより小さいと気孔径が小さくなり充分な通気性を確保することができない。また、粒子径が1.5mmよりも大きいと、気孔径が大きくなりすぎて、溶鋼が気孔に侵入しやすくなり、耐浸透性が低下する。これにより、粒子径を0.2~1.5mmとすることが好ましい。特に、耐浸透性を重視すると、粒子径を0.2~1.0mmとすることが好ましい。
【0031】
ムライト(3Al2O3・2SiO2)粒子は、球状アルミナ粒子と反応して骨材の結合を強固にし、高い強度を発現させる。
【0032】
ムライト粒子も球状アルミナ粒子同様に、粒子径0.2~1.5mmのものを好適に用いることができる。特に、充分な通気性を確保することを重視すると、粒子径を0.5~1.5mmとすることが好ましい。ムライトの含有量は、10~20質量%であることが好ましい。含有量が10質量%未満であると骨材間の結合力を十分に高めることができず強度を向上させることができない。また、20質量%を超えると気孔率が低下し、充分な通気性を確保することができない。更に、SiO2成分が増大するため耐食性が低下する。
【0033】
微粉は10~20質量%であり、スピネル1~15質量%と、残部をアルミナを主成分としてなる。本発明における微粉とは、粒子径150μm以下のものをいう。粒子径が150μmより大きいと、結合性が下がり、強度が低下するため、上記範囲が好ましい。
【0034】
微粉の含有量が10質量%未満であるとネックの成長が不十分で骨材の結合力を十分に高めることができず強度を向上させることができない。また、20質量%を超えると焼結が進み過ぎて気孔率が低下し、充分な通気性を確保することができない。
【0035】
微粉がアルミナだけの場合、十分な耐浸透性及び強度を得ることができない。そこで、耐浸透性及び強度を発現させるために、微粉に所定量(1~15質量%)のスピネルを含有させた。ここで、微粉すべてをスピネルとすると焼結が進み過ぎて所望の特性を得ることができない。
【0036】
スピネルによる強度向上効果は以下のように説明される。実施例に示すように、スピネル中のMgは粒子全体に拡散している。そのため、骨材とスピネルとで再結合が起こることで緻密化し、結合力が高くなったと考えられる。
【0037】
スピネルによる耐浸透性向上効果は以下のように説明される。スピネルが溶鋼中のFeO成分を固溶したことで、溶鋼の粘性が高くなり浸透が抑制されると考えられる。これにより、初期の浸透を防ぐことができるので、スピネルは1質量%以上という少量でも効果を発現することができる。
【0038】
ここで、スピネルにおけるAl2O3とMgOの割合は、理論組成(MgAl2O4)に限定されるものではない。
【0039】
本発明のポーラスれんがの製造方法は、以下の通りである。各原料及び焼結助剤を秤量・混合し、混練後に所定の形状に成形する。この成形体を大気中で、焼成温度1500℃以上で焼成することによりポーラスれんがが得られる。
【0040】
こうして得られたポーラスレンガを所定形状に成形し、鉄皮及びキャスタブル耐火物にて保持し、ガス供給管を接続してポーラスプラグを得る。
【0041】
本発明の効果を損なわない範囲内において、微粉としてSiO2、TiO2などを含有させることができる。
【0042】
(実施形態の効果)
本発明のポーラスれんがによれば、クロム及びジルコニウムを含有する原料を用いずに、通気性、耐浸透性及び強度に優れたポーラスれんがを提供することができる。また、本発明のポーラスれんがは、十分な通気性、耐食性、強度を有しており、ポーラスプラグに好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例によって説明する。但し本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表1に、従来のポーラスれんがである参考例1、2、本発明のポーラスれんがである実施例1~6及び比較例1、2の原料の配合割合を示す。ここで、参考例はジルコン及びクロムを含有した従来品であり、参考例1は微粉の合計が12質量%、参考例2は微粉の合計が20質量%である。また、実施例1~4では微粉の合計が12質量%、実施例5、6では微粉の合計が20質量%、比較例1では微粉はアルミナのみ12質量%、比較例2では微粉はスピネルのみ20質量%である。
【0044】
骨材の球状アルミナ粒子及びムライトは粒子径0.2~1.5mmのものを使用し(具体的にはアルミナ粒子0.2~1.0mm、ムライト粒子0.5~1.5mm)、微粉は、150μm以下のものを使用した。
【0045】
【0046】
表1に記載した各種原料を適宜水及び添加剤とウェットパンにて混練し、300tフリクションプレス機で円錐台形(φ80×φ140×h300mm)に同じ成形かさ比重となるように加圧成形した。得られた成形体を150℃で24時間乾燥後、1500℃で10時間焼成してポーラスれんがを作製し、評価で用いる所定の試料形状に加工した。
【0047】
評価項目として、通気性指数T、耐浸透性指数S、圧縮強度σを採用し、参考例を基準として比較した。併せて気孔率及び平均気孔性も示す。
【0048】
(通気性指数T)
作成した試料に鉄皮を装着し、通気量を測定した。通気量の測定は、恒温に保たれた空間において、所定圧力で空気を吹き込み、ポーラスプラグ先端から吹きだすエアーの流量を測定した。そして、参考例1の通気量を100として規格化した通気性指数Tを算出して評価した。通気性指数Tは大きいほど通気性が高いことを示す。この通気性指数Tを用い、100≧T>80(◎)、80≧T>60(○)、60≧T>50(△)として評価した。通気性指数Tが50以下の場合は(×)とした。ここで、評価◎、○、△は、当該材料を実機に適用した場合に、参考例1同様に十分に使用に耐えうるという評価である。
【0049】
(耐浸透性指数S)
耐浸透性の評価は、るつぼ浸食試験により行った。るつぼ浸食試験は、るつぼの凹部(φ30mm、深さ25mm)に、C/S=2.0となるよう調合した合成スラグ5gと鋼10gとを投入し、1500℃で3時間保持した。試験後の試料を長手方向に中央で切断して溶損量を測定し、参考例1におけるスラグの浸透量(浸透深さ)を、比較対象の試料におけるスラグの浸透量(浸透深さ)で除して求めた耐浸透性指数Sを算出して評価した。耐浸透性指数Sは大きいほど耐浸透性が高いことを示す。この耐浸透性指数Sを用い、100≧S>90(◎)、90≧S>80(○)、80≧S>70(△)として評価した。耐浸透性指数Sが70以下の場合は(×)とした。ここで、評価◎、○、△は、当該材料を実機に適用した場合に、参考例1同様に十分に使用に耐えうるという評価である。
【0050】
(圧縮強度σ)
圧縮強度σ(MPa)は、JIS R 2206に準拠して測定した。圧縮強度σは、σ>60(◎)、60≧σ>40(○)、40≧σ(×)として評価した。評価◎、○は、当該材料を実機に適用した場合に、参考例1同様に十分に使用に耐えうるという評価である。
【0051】
気孔率の測定は、日本工業規格JIS R 2205に準じて行った。平均気孔径は水銀ポロシメーターを用いて測定したメディアン径を採用した。
【0052】
表2に評価結果を示す。
【0053】
【0054】
実施例1~4は、微粉の合計が12質量%の材料である。いずれの材料も通気性指数、耐浸透性指数及び圧縮強度において良好な値を示した。耐浸透性指数は、スピネルの量が1質量%という少量でも良好な値を示した。特に実施例2、3は、ポーラスれんがとして重要な通気性指数及び耐浸透性指数において優れた値を示した。
【0055】
実施例5、6は、微粉の合計が20質量%の材料である。いずれの材料も実施例1~4と比較して通気性指数が低下する傾向が認められたが、良好な値を示した。圧縮強度は高くなっており、微粉量の増大に伴い焼結が進み気孔率が小さくなったためと考えられる。耐浸透性指数は実施例1~4と同様に良好な値を示した。
【0056】
比較例1は、実施例1~4同様に微粉が12質量%の材料である。比較例1では、通気性指数は良好な値を示したが、耐浸透性指数及び圧縮強度は使用に耐えうる値を示さなかった。耐浸透性指数が低下したのは、耐浸透性の向上に寄与するスピネルが添加されていないためと考えられる。また、圧縮強度が低下したのは、結合強度の向上に寄与するスピネルやジルコンが添加されていないためと考えられる。
【0057】
比較例2は、実施例5、6同様に微粉が20質量%の材料である。比較例2では、圧縮強度及び耐浸透性指数は良好な値を示したが、通気性指数は使用に耐えうる値を示さなかった。通気性指数が低下したのは、微粉がすべてスピネルであり、焼結が進み過ぎて気孔率が小さくなったためと考えられる。
【0058】
以上より、クロム及びジルコニウムを主成分とする原料を用いず本発明で示した条件を充足するポーラスプラグは、通気性、耐浸透性及び強度に優れていることが確認された。特に実施例2、3は、ポーラスれんがとして重要な通気性指数及び耐浸透性指数において優れた値を示した。つまり、ポーラスレンガは、実施例2、3に近似した組成であることが好ましく、骨材がムライト粒子を15~20重量%含み、微粉は10~15質量%であり、スピネル2~6質量%と、残部をアルミナを主成分としてなることが好ましい。
【0059】
(微構造観察)
参考例1、比較例1及び実施例2、3の微細構造及び元素分布の観察結果を
図1に示す。参考例1では、CrとAlとが同じ位置に存在しており、CrがAlに固溶していると考えられた。また、ZrはAlの粒界に存在しており、ガラス化して結合を強化していると考えられた。これにより、Alのみで結合している比較例1より高い強度を示したと考えられる。実施例2では、Mgが粒子全体に拡散しており、結合部がスピネル化されることで緻密化し、結合力が高くなったと考えられる。
【0060】
実施例2のるつぼ試験後の微細構造観察を行った結果を
図2に示す。スラグ成分のSi及びCaは粒界に浸透していた。一方、FeはMgと同じ位置に存在しており、FeOとしてスピネルに固溶していると考えられる。これにより、FeOの浸透が抑制されたと考えられる。
【0061】
実施例2及び実施例3の微細構造及び元素分布の観察結果を
図1に示す。実施例2よりもスピネル量が多い実施例3では、実施例2同様にMgが粒子全体に拡散するとともに、Mgのコロニーが認められた。これは、添加されたMg量が、結合部のスピネル化に必要なMg量を上回り、余剰のMgが拡散しなかったものと考えられる。
【0062】
実施例3のるつぼ試験後の微細構造観察を行った結果を
図3に示す。実施例2と同様に、スラグ成分のSi及びCaは粒界に浸透し、Mgと同じ位置に存在していた。スピネル添加量を変えても耐浸透性指数が変わらなかったのは、実施例3の方が気孔径が大きく、Feが浸透しやすくなったことと相殺されたためと考えられる。
【0063】
以上の結果から、本発明の要件を満たすことにより、通気性、耐浸透性及び強度に優れたポーラスれんがが得られることが確認された。