(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】駆動機構システム
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B66B7/00 M
(21)【出願番号】P 2020180410
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波田野 利昭
(72)【発明者】
【氏名】松家 大介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-107962(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2004-0099002(KR,A)
【文献】国際公開第2015/118796(WO,A1)
【文献】特開2001-151479(JP,A)
【文献】実開昭63-113096(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0218385(US,A1)
【文献】中国実用新案第201580948(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00
B23P 19/00-21/00
B25B 23/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置と、前記駆動装置が接続される機構装置とから構成される駆動機構システムであって、
前記駆動装置は、
駆動源が内蔵された駆動部と、
前記駆動部による駆動力を前記機構装置に伝える機構装置接続部と、
前記駆動部による駆動を制御する制御部と、
前記制御部が、前記機構装置と通信する駆動装置側通信部と、を備え、
前記機構装置は、
前記機構装置接続部と着脱可能に接続される駆動装置接続部と、
前記駆動装置接続部によって前記駆動部から伝達された駆動力により駆動される機構部と、
前記機構部の状態を検出する機構装置状態量検出部と、
前記機構装置状態量検出部が、前記駆動装置と通信する機構装置側通信部と、
バッテリ又は商用電源受電部よりなる電源と、を備え、
前記機構装置の電源を、前記機構装置側通信部及び前記駆動装置側通信部を介して前記駆動装置の前記駆動部に供給する
駆動機構システム。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記駆動部により発生する駆動軸の回転数、回転角度、トルク、駆動電流の少なくとも1つを検出する駆動装置状態量検出部を備え、
前記制御部は、前記駆動装置状態量検出部が検出した状態量を取得するようにした
請求項
1に記載の駆動機構システム。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記駆動部での駆動に連動して駆動軸に打撃を加える打撃部を備える
請求項
1に記載の駆動機構システム。
【請求項4】
前記駆動装置は、前記機構装置に貼付された識別コードの読取部を備え、
前記制御部は、前記読取部で前記識別コードを読み取った情報に基づいて前記機構装置の種類を判別する
請求項
1に記載の駆動機構システム。
【請求項5】
前記機構装置接続部は、汎用電動工具のソケットを備えるようにした
請求項
1に記載の駆動機構システム。
【請求項6】
前記駆動装置と前記機構装置の少なくともいずれか一方は、前記機構装置状態量検出部が検出した状態量を表示する表示部を備える
請求項
1に記載の駆動機構システム。
【請求項7】
前記機構装置は、異なる複数の方向の調整作業を行うために、前記機構部及び前記駆動装置接続部を複数備えるようにした
請求項
1に記載の駆動機構システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動機構システムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本、北米、欧州をはじめとする先進国では、少子高齢化に伴う施工作業者の減少が問題となっており、エレベーターの据付現場においても施工作業の省力化と作業性向上が求められている。エレベーターの据付作業は、塔内の計測、レールの据付、出入口の据付、塔内機器の据付、乗りかご組立等、多種多様な作業がある。特に、レールの据付と出入口の据付は、階床毎に繰返し作業を行う必要があるため労力が掛かり、高精度な位置決めも求められるため、作業者には、高い技能とノウハウが必要となる。
【0003】
そこで、レールの据付や出入口の据付作業を支援する自動位置決め装置の導入が考えられる。しかし、駆動部を備えるレール位置決め装置や、出入口部品の位置決め装置を個々の作業ごとに設けると、コストがかかってしまう。また、エレベーターの据付用の各装置は、寸法や重量が大きくなりやすく、保管場所や作業空間に制限のある据付現場では、運用性、運搬性、取り回しが困難になってしまうという問題があった。
【0004】
従来、例えば日用品などの分野では、駆動部と機構部を着脱可能に構成したものが開発されている。例えば、特許文献1には、ブラシを有する歯ブラシ部と、歯ブラシ部を着脱可能とした駆動部である本体とから構成した電動歯ブラシについての記載がある。特許文献1に記載した電動歯ブラシによると、消耗品である歯ブラシ部を本体から外して交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、駆動部と機構部を着脱可能に構成することを、エレベーターの据付用装置に適用した場合、例えばレールの据付装置の駆動部を別体化することが考えられる。レールの据付装置の駆動部を機構部と別体化することで、レールの据付装置のサイズを、駆動部と機構部を一体化したものよりも小型化することが可能になる。しかしながら、上述したように、エレベーターの据付作業として必要な作業には、様々なものがあり、単に個々の据付用装置の駆動部と機構部を着脱可能に構成するだけでは、作業の効率化にはつながらない。
【0007】
本発明の目的は、エレベーターのような重量物の据付作業を行うための装置を構成する際に、現場における運用性や取り回しを改善しつつ、装置の小型化やコスト低減を実現する駆動機構システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、駆動機構システムとして、駆動装置と機構装置とから構成され、駆動装置は、駆動源が内蔵された駆動部と、駆動部による駆動力を機構装置に伝える駆動装置側接続部と、駆動部による駆動を制御する制御部と、制御部が、機構装置と通信する駆動装置側通信部とを備える。
また、機構装置は、駆動装置側接続部と着脱可能に接続される機構装置側接続部と、機構装置側接続部によって駆動部から伝達された駆動力により駆動される機構部と、機構部の状態を検出する機構装置状態量検出部と、機構装置状態量検出部が、駆動装置と通信する機構装置側通信部と、バッテリ又は商用電源受電部よりなる電源と、を備える。
そして、機構装置の電源を、機構装置側通信部及び駆動装置側通信部を介して駆動装置の駆動部に供給するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、据付作業などを行う際には、作業を行う箇所に機構装置を設置した上で、駆動装置を接続して、作業を行うことができるので、機構装置は、駆動部を備えていない分、小型且つ軽量に構成することができる。そのため、現場における取り回しや運用性が改善されると共に、駆動装置を別の作業に共通化することができ、コスト低減に寄与することが可能になる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態例による駆動機構システムの構成例を示す側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態例による駆動機構システムの内部構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態例による駆動機構システムの作業例(例1)を示す側面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態例による駆動機構システムの作業例(例2)を示す側面図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態例による駆動機構システムを使った作業時の流れの例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第2の実施の形態例による駆動機構システムの構成例を示す側面図である。
【
図7】本発明の第3の実施の形態例による駆動機構システムの構成例を示す側面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態例による駆動機構システムの内部構成例を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態例による駆動機構システムの構成例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態例>
以下、本発明の第1の実施の形態例を、
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、駆動機構システム100の全体構成を示す図である。また、
図2は、駆動機構システム100の内部構成を示すブロック図である。
【0012】
本実施の形態例の駆動機構システム100は、
図1に示すように、駆動装置200と、第1機構装置300と、第2機構装置400とを備える。ここでは、第1機構装置300と、第2機構装置400は、エレベーターの据付作業を行う装置であり、それぞれ個別の対象部材1,2を規定された位置に据付ける作業を行う。対象部材1,2としては、エレベーターの様々な部材に適用が可能であるが、例えばレール、出入口などがある。
【0013】
駆動装置200は、
図1に示すように、一般的なナットランナやインパクトレンチのような電動工具に準じた形状である。そして、この駆動装置200は、第1機構装置300や第2機構装置400に対して着脱自在になっており、据付作業を行う作業者が、作業の進行に従って駆動装置200をいずれかの機構装置300又は400に接続する。
【0014】
図1及び
図2に示すように、駆動装置200は、駆動部201、減速機202、制御部203、通信部204、動力源205、機構装置接続部206、機構装置判別部207、トリガ208、及び駆動装置状態量検出部209を備える。
【0015】
駆動部201は、モータなどの駆動源を内蔵し、制御部203を介して供給される動力源205からの電源により回転駆動力を発生させる。
減速機202は、駆動部201からの回転駆動力を減速して、機構装置接続部206内の回転軸を回転させる。
なお、駆動部201又は減速機202は、回転方向へ打撃力を加える打撃部を備えて、より強いトルクを発生させる構成にしてもよい。
【0016】
制御部203は、トリガ208からの指令に基づいて、駆動部201を回転駆動させる。このとき、制御部203は、機構装置判別部207が判別した機構装置の種類と、通信部204を経由して伝送された機構装置側での検出値(機構装置状態量)に基づいて、回転駆動量の制御を行う。この回転駆動量を制御する処理の詳細は後述する。
【0017】
通信部(駆動装置側通信部)204は、接続された第1機構装置300又は第2機構装置400と通信を行い、各機構装置300、400から伝送される情報を受信する。通信部204が受信する情報には、機構装置状態量に関する情報と、接続された機構装置を判別するための機構装置固有信号とがある。
図2に示すように、機構装置状態量に関する情報及び判別した機構装置判別信号は、制御部203に供給される。
なお、通信部204は、機構装置300、400側と有線接続で通信を行う他に、近距離無線通信機能を備えて、無線で通信を行うようにしてもよい。
【0018】
動力源205は、バッテリを内蔵し、制御部203及び駆動部201に給電を行う。また、動力源205からの電源は、通信部204を介して接続された機構装置300又は400へも供給される。
なお、動力源205として、バッテリを内蔵する代わりに、商用交流電源を変換した直流電源を得るようにしてもよい。また、
図2では、通信部204を介して、動力源205から機構装置300、400に給電を行うようしたが、各機構装置300、400がバッテリを内蔵するようにして、通信部204を介して給電を行う構成を省略してもよい。
【0019】
機構装置接続部206は、駆動部201で発生した回転駆動力を減速機202で減速して第1機構装置300又は第2機構装置400に伝える。
なお、機構装置接続部206としては、駆動機構システム100の各機構装置300、400とだけ接続可能な専用の接続機構としてもよいが、例えば、一般的な電動工具が備える汎用のソケットを使用してもよい。この汎用のソケットを使用することで、駆動装置200が、従来のナットランナやインパクトレンチのような電動工具としても使用可能になる。
【0020】
機構装置判別部207は、駆動装置200に接続された相手の装置が、第1機構装置300か、あるいは第2機構装置400かを判別する。機構装置判別部207が判別した結果を示す判別信号は、制御部203に伝送される。
トリガ208は、作業者が駆動装置200の駆動部201を作動させるスイッチである。
駆動装置状態量検出部209は、駆動部201が発生させた駆動力や回転量などを検出し、検出信号を制御部203に伝える。駆動装置状態量検出部209は、駆動軸の回転数、回転角度、トルク、駆動電流の少なくとも1つを検出する。
【0021】
また、
図1及び
図2に示すように、第1機構装置300は、機構部301、駆動装置接続部302、通信部303、及び機構装置状態量検出部304を備える。
第1機構装置300は、
図1に示すように、据付作業を行う際の対象部材1と接続され、対象部材1の水平方向(
図1での左右方向)の設置位置が、第1機構装置300の機構部301により調整される。
【0022】
すなわち、第1機構装置300の機構部301は、駆動装置接続部302を介して駆動装置200の機構装置接続部206と接続される。そして、駆動装置200から伝わる回転駆動力により、機構部301内のスライド機構が移動し、対象部材1の水平方向の位置が調整される。
【0023】
機構装置状態量検出部304は、機構部301による対象部材1の調整量を検出し、検出した機構装置状態量の情報を、通信部303を介して駆動装置200に伝送する。機構装置状態量検出部304としては、例えばレーザ距離センサが適用可能である。
通信部(機構装置側通信部)303は、機構装置状態量検出部304が検出した機構装置状態量の情報と、第1機構装置300の固有信号を、駆動装置200の通信部204に伝送する。第1機構装置300の固有信号の情報は、例えば通信部303に接続された不図示の記憶部に記憶される。
また、既に述べたように、通信部303は、駆動装置200から電源の供給も受ける。この電源により、機構装置状態量検出部304が作動する。
【0024】
第2機構装置400は、機構部401、駆動装置接続部402、通信部403、及び機構装置状態量検出部404を備える。
第2機構装置400は、機構部401の構造が第1機構装置300の機構部301と異なっている。すなわち、第2機構装置400は、
図1に示すように、据付作業を行う際の対象部材2と接続され、対象部材2の垂直方向(
図1での上下方向)の設置位置が、第2機構装置400の機構部401により調整される。
【0025】
第2機構装置400の駆動装置接続部402、通信部403及び機構装置状態量検出部404は、第1機構装置300の駆動装置接続部302、通信部303及び機構装置状態量検出部304と同じ構成なので、説明は省略する。
【0026】
図3は、駆動装置200を、第1機構装置300に接続した状態を示す。
図3に示すように、駆動装置200の機構装置接続部206は、駆動装置200からの回転駆動力が第1機構装置300に伝達されるように、第1機構装置300の駆動装置接続部302に接続される。
また、駆動装置200の通信部204と第1機構装置300の通信部303は、相互に通信可能に接続されている。
【0027】
この状態で、作業者は、駆動装置200のトリガ208をオンにすることで、対象部材1を規定された位置(水平位置)に調整することができる。なお、作業時の機構部301の水平位置は、機構装置状態量検出部304で検出されて、その状態量が駆動装置200の制御部203に供給される。これにより、駆動装置200の制御部203は、機構装置状態量から作業時の機構部301の水平位置を判断することができる。
【0028】
図4は、駆動装置200を、第2機構装置400に接続した状態を示す。
図4に示すように、駆動装置200の機構装置接続部206は、駆動装置200からの回転駆動力が第1機構装置300に伝達されるように、第2機構装置400の駆動装置接続部402に接続される。
また、駆動装置200の通信部204と第2機構装置400の通信部403は、相互に通信可能に接続されている。
【0029】
この状態で、作業者は、駆動装置200のトリガ208をオンにすることで、対象部材2を規定された垂直位置(高さ)に調整することができる。なお、作業時の機構部401による垂直位置は、機構装置状態量検出部404で検出されて、その状態量が駆動装置200の制御部203に供給される。これにより、駆動装置200の制御部203は、機構装置状態量から作業時の機構部301の垂直位置を判断することができる。
【0030】
図5は、駆動機構システム100による据付作業工程の流れを示すフローチャートである。
図5では、駆動装置200を第1機構装置300に接続して据付作業を行う流れが示されている。
まず、駆動装置200と第1機構装置300とが接続されると、駆動装置200から第1機構装置300に給電され、第1機構装置300が起動する(ステップS1)。
その後、第1機構装置300から第1機構装置300の固有信号が駆動装置200に送信される(ステップS2)。この固有信号を駆動装置200が取得すると、駆動装置200の制御部203は、現在接続されている装置が、固有番号に基づいて第1機構装置300であると認識する(ステップS3)。
【0031】
そして、接続された装置を認識した駆動装置200の制御部203は、制御モードを第1機構装置300用に設定(変更)する(ステップS4)。
次に、駆動装置200の制御部203は、第1機構装置300の機構装置状態量検出部304より状態量を取得する(ステップS5)。
また、駆動装置200の駆動装置状態量検出部209は、駆動部201から駆動装置200の状態量を取得し(ステップS6)、この状態量を制御部203へ供給する。
【0032】
次に、制御部203は、所定の目標値と取得した状態量を用いて制御量を演算し(ステップS7)、演算結果に基づいた制御信号を駆動部201へ送信する(ステップS8)。
その結果、駆動部201が駆動を開始し(ステップS9)、駆動部201からの回転駆動力が減速機202、機構装置接続部206、駆動装置接続部302を介して第1機構装置300の機構部301に伝わり、機構部301が駆動される(ステップS10)。
このとき、制御部203は、第1機構装置300の機構装置状態量検出部304より状態量を取得する(ステップS11)。そして、制御部203は、位置決め対象である対象部材1の位置決めが完了したか否かを判断する(ステップS12)。
【0033】
このステップS12で、位置決め完了していないと判断した場合(ステップS12のNo)、制御部203は、ステップS6の処理に戻り、ステップS6からステップS12の処理を繰り返す。
また、ステップS12で、位置決め完了したと判断した場合(ステップS12のYes)、制御部203は、対象部材1の位置決め作業の終了処理を行う(ステップS13)。そして、制御部203における位置決め作業の終了処理が完了した後に、作業者は、駆動装置200を第1機構装置300から分離する。
【0034】
図5のフローチャートでは、駆動装置200を第1機構装置300に接続して行う据付作業の流れを示したが、駆動装置200を第2機構装置400に接続して行われる据付作業についても、同様の流れで行われる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態例の駆動機構システム100によると、
図1に示す対象部材1、2に対してそれぞれ用意した第1機構装置300と第2機構装置400を使って、対象部材1,2を規定された位置に設置する据付作業を行うことができる。
したがって、第1機構装置300と第2機構装置400のように、異なる機構装置に対しても、共通化された駆動装置200を使って据付作業を行うことが可能になる。
【0036】
すなわち、本実施の形態例の駆動機構システム100では、駆動装置200は、接続された装置が第1機構装置300と第2機構装置400のいずれかであるかを認識する。そして、駆動部201が駆動する際の制御モードを、個々の機構装置300,400に適した制御モードに切り替え、適切な位置制御や力制御を行うようにしている。
したがって、本実施の形態例の駆動機構システム100によれば、共通化した駆動装置200を用いて、専用化された駆動部を有する機構装置300、400であっても同様に適正な据付作業が可能になる。
【0037】
また、それぞれの機構装置300,400は、駆動部を備えていない分、小型かつ軽量にすることができる。そのため、作業現場における取り回しや運用性が改善されると共に、駆動装置200の共通化によるコスト低減に寄与することができる。
さらに、駆動装置200の機構装置接続部206を汎用の接続部(汎用のソケットレンチなど)としたことで、駆動装置200を一般的なナットランナやインパクトレンチなどの電動工具として使用することができ、より作業性が向上する。
【0038】
また、駆動部201として回転方向へ打撃力を加える打撃部を備えることで、より強いトルクを発生させることができ、対象部材1,2の位置調整を、より強い力で行うことが可能になる。
【0039】
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例を、
図6を参照して説明する。この
図6において、第1の実施の形態例で説明した
図1~
図5に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0040】
図6は、本実施の形態例の駆動機構システム100aの構成を示す図である。
図6では、駆動装置200と第1機構装置300を示し、第2機構装置400は図示を省略する。
本実施の形態例の駆動機構システム100aは、第1機構装置300の表面に識別コード305が記載されたラベルなどを貼付したものである。識別コード305としては、例えば二次元バーコード(QRコード:登録商標)が適用可能である。
【0041】
そして、駆動装置200は、カメラ210を備え、機構装置判別部207は、カメラ210で撮影した識別コード305の画像から、機構装置の種類を判別する。
なお、
図6では図示を省略するが、第2機構装置400についても、表面に識別コードを貼付する。
本実施の形態例の駆動機構システム100aのその他の箇所は、第1の実施の形態例で説明した駆動機構システム100と同じなので、説明を省略する。
【0042】
本実施の形態例の駆動機構システム100aによると、駆動装置200は、内蔵したカメラ210で識別コードを撮影するだけで、自動的に接続される機構装置の種類を判別できるので、簡単かつ確実に機構装置の種類を判別することができる。
なお、
図6では識別コード305は、第1機構装置300の側面に貼付したが、例えば駆動装置200が接続される面に貼付して、駆動装置200を接続する際に、カメラ210で確実に識別コード305を検出できるようにしてもよい。
【0043】
<第3の実施の形態例>
次に、本発明の第3の実施の形態例を、
図7~
図8を参照して説明する。この
図7~
図8において、第1の実施の形態例で説明した
図1~
図5に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0044】
図7は、本実施の形態例の駆動機構システム100bの外形構成を示す図であり、
図8は、駆動機構システム100bの内部構成を示す図である。
図7~
図8では、駆動装置200と第1機構装置300を示し、第2機構装置400は図示を省略する。
本実施の形態例の駆動機構システム100bは、第1機構装置300が電源307を内蔵する。電源307としては、バッテリを内蔵する他に、商用交流電源を整流・変圧した直流電源としてもよい。
そして、第1機構装置300は制御部306を有し、
図8に示すように、制御部306、機構装置状態量検出部304及び通信部303が、電源307から給電を受けて作動するように構成されている。
【0045】
また、
図8に示すように、第1機構装置300に駆動装置200を接続したとき、電源307からの電源を、機構装置側の通信部303、駆動装置側の通信部204を介して動力源205に供給して、動力源205としてのバッテリを充電する。
また、
図8に示す駆動装置200は、制御部(
図2での制御部203に相当)を省略し、第1機構装置300が、制御部306を持つようにしている。そして、駆動装置200のトリガ208の操作によるトリガ信号と、駆動装置状態量検出部209の検出信号(状態量の信号)を第1機構装置300の制御部306に伝送した上で、制御部306で生成した制御信号を、駆動装置200の駆動部201に伝送する。
なお、
図7~
図8では図示を省略するが、第2機構装置400も、第1機構装置300の電源307と同様の電源を備える。
本実施の形態例の駆動機構システム100bのその他の箇所は、第1の実施の形態例で説明した駆動機構システム100と同じなので説明を省略する。
【0046】
本実施の形態例の駆動機構システム100bによると、駆動装置200を第1機構装置300に接続することにより、駆動装置200の動力源205に常に十分な電力が供給され、据付作業時にバッテリ残量不足のような不具合の発生を防止することができる。
なお、
図8では、駆動装置200が補助的な動力源205を備えるようにしたが、動力源205を省略して、通信部204に給電された電源を、直接駆動部201などに供給してもよい。このように、駆動装置200から電源を除去することで、駆動装置200をより小型かつ軽量に構成することができる。また、
図8では、第1機構装置300が制御部306を備えるようにして、駆動装置200が制御部を持たないようにしたが、駆動装置200と第1機構装置300の双方が制御部を持つようにしてもよい。
【0047】
<第4の実施の形態例>
次に、本発明の第4の実施の形態例を、
図9を参照して説明する。この
図9において、第1の実施の形態例で説明した
図1~
図5に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0048】
図9は、本実施の形態例の駆動機構システム100cの外形構成を示す図である。
本実施の形態例の駆動機構システム100cは、1つの機構装置500と駆動装置200とを備える。駆動装置200は、第1の実施の形態例で説明した駆動装置200と同じ構成なので説明を省略する。
【0049】
本実施の形態例の機構装置500は、第1機構部501と第2機構部511とを備えて、それぞれが個別の調整ができるようにしたものである。すなわち、機構装置500は、
図9に示すように、水平方向の調整が可能な第1機構部501と、垂直方向の調整が可能な第2機構部511を重ねて配置し、第2機構部511の上に対象部材2を載せている。
【0050】
第1機構部501は、駆動装置接続部502と、通信部503と、機構装置状態量検出部504とを備える。これらの駆動装置接続部502、通信部503、機構装置状態量検出部504は、それぞれ第1の実施の形態例で説明した
図1に示す第1機構装置300の機構部301、駆動装置接続部302、通信部303、機構装置状態量検出部304と同様の構成である。
【0051】
第2機構部511は、駆動装置接続部512と、通信部513と、機構装置状態量検出部514とを備える。これらの駆動装置接続部512、通信部513、機構装置状態量検出部504は、それぞれ第1の実施の形態例で説明した
図1に示す第2機構装置400の機構部401、駆動装置接続部402、通信部403、機構装置状態量検出部404と同じ構成なので説明を省略する。
【0052】
据付作業を行う作業者は、対象部材2についての水平方向の位置調整を行うとき、駆動装置200の機構装置接続部206を、第1機構部501側の駆動装置接続部502に接続して調整作業を行う。また、据付作業を行う作業者は、対象部材2についての垂直方向の位置調整を行うとき、駆動装置200の機構装置接続部206を、第2機構部511側の駆動装置接続部512に接続して調整作業を行う。
【0053】
このように1つの機構装置500が複数の駆動装置接続部502、512を備えて、駆動装置200の接続する位置を変えることで、水平方向と垂直方向のような調整方向が異なる調整作業を行うことができるので、1つの機構装置500でより効率よく調整作業を行うことができる。
【0054】
<変形例>
なお、本発明は、上述した各実施の形態例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0055】
例えば、第1~第3の実施の形態例では、それぞれ2つの機構装置300、400を備えるシステム構成としたが、いずれか1つの機構装置300又は400と、駆動装置200とでシステムを構成してもよい。
【0056】
また、各実施の形態例で説明した構成は、それぞれを組み合わせた構成としてもよい。例えば、第2の実施の形態例で説明した識別コードを使用する点と、第3の実施の形態例で説明した電源を機構装置300が備える点を組み合わせてもよい。
【0057】
さらに、それぞれの機構装置300、400、500で説明した水平方向の調整や垂直方向の調整は一例であり、その他の調整を行う機構装置としてもよい。例えば、水平方向に調整する場合には、直交する2軸(x軸及びy軸)の調整が個別に行えるようにしてもよい。
この場合には、x軸の調整機構とy軸の調整機構を、第4の実施の形態例の機構装置500のように個別に構成して組み合わせることになる。
また、機構装置として、傾斜角の調整と、水平角度と、垂直角度の調整を行うようにしてもよい。
【0058】
対象部材を全ての方向に調整することを考えた場合、水平方向のx軸の調整機構、水平方向のy軸の調整機構、垂直方向の調整機構、傾斜角の調整機構、水平角度の調整機構、及び垂直角度の調整機構の6種類を備えればよいことになる。
すなわち、この6種類の調整機構を備えた機構装置を個別に用意するか、あるいは、6種類の調整機構を組み合わせた1つの機構装置としてもよい。
【0059】
なお、第4の実施の形態例の機構装置500では、各機構部501、511が、機構装置状態量検出部504、514を備えるようにしたが、複数の機構部を備える場合、状態量検出部としてのセンサを共通化するようにしてもよい。
【0060】
また、上述した各実施の形態例では、機構装置状態量検出部304,404が検出した状態量(調整量)は、制御部203に送るようにした。これに対して、駆動装置200又は各機構装置300,400が表示部を備えて、表示部が機構装置状態量検出部304,404で検出した状態量(調整量)を数値や図形などで表示してもよい。このように調整量の表示を行うことで、作業者はあとどの程度の調整が必要かが表示から判り、据付作業がより的確に行えるようになる。
【0061】
また、上述した各実施の形態例では、エレベーターの据付作業時に使用する駆動機構システムの例を説明したが、本発明の駆動機構システムは、エレベーターの据付作業に限定されるものではなく、同様の機構装置での位置調整が必要な様々な作業用のシステムに手用が可能である。
【0062】
さらにまた、
図2及び
図8のブロック図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。また、
図5に示すフローチャートにおいて、処理結果に影響を及ぼさない範囲で、複数の処理を同時に実行するか、あるいは処理順序を変更してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,2…対象部材、100,100a,100b,100c…駆動機構システム、200…駆動装置、201…駆動部、202…減速機、203…制御部、204…通信部(駆動装置側)、205…動力源、206…機構装置接続部、207…機構装置判別部、208…トリガ、209…駆動装置状態量検出部、210…カメラ、211…表示部、300…第1機構装置、301…機構部、302…駆動装置接続部、303…通信部(機構装置側)、304…機構装置状態量検出部、305…識別コード、306…制御部、307…電源、400…第2機構装置、401…機構部、402…駆動装置接続部、403…通信部(機構装置側)、404…機構装置状態量検出部、500…機構装置、501…第1機構部、502…駆動装置接続部、503…通信部(機構装置側)、504…機構装置状態量検出部、511…第2機構部、512…駆動装置接続部、513…通信部(機構装置側)、514…機構装置状態量検出部