(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20240912BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240912BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20240912BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61F13/534 100
A61F13/53 300
A61F13/494 110
A61F13/535 200
(21)【出願番号】P 2020182220
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-000273(JP,A)
【文献】特開2019-063098(JP,A)
【文献】特開2008-183033(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0358097(US,A1)
【文献】特開2019-141308(JP,A)
【文献】特開2001-190581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記トップシート肌側面に幅方向に対になるように配置された立体ギャザーとを備える吸収性物品であって、
前記トップシートと前記吸収体との間において、前記立体ギャザーの幅方向内側に幅方向に並べて配置された、長さ方向に延びる複数の吸収性シートを更に備え、
前記吸収性シートは、肌側面が起毛して複数の起毛繊維が立設された親水性不織布と、前記親水性不織布の前記起毛繊維間に担持された高吸収性ポリマーと、これらを包む親水性シートと、を含み、
各前記吸収性シートの寸法は、幅が30mm以上70mm
以下であり、長さが300mm以上900mm以下であり、
前記各吸収性シートの前記高吸収性ポリマーの目付が60g/m
2以上390g/m
2以下であ
り、
前記吸収体が、複数の前記吸収性シートを含んで構成される、吸収性物品。
【請求項2】
前
記吸収性シート毎に、前記高吸収性ポリマーの前記目付を変えた、請求項1に記載
の吸収性物品。
【請求項3】
長さ方向の一端部付近及び他端部付近に配置され、一部が前記吸収体と厚さ方向に重な
り合い、前記吸収体よりも幅広に形成された、ウエスト周りの締め付けを緩衝するクッシ
ョン性を有する厚さ1.0mm以上5.0mm以下の芯材を更に備え、前記芯材は、ウレ
タンフォーム又はポリエチレンフォームを含むシート状部材である、請求項1又は請求項
2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品には種々の形態が存在するものの、介護用には、アウターとしてのテープ止めタイプ、パンツタイプ等の紙おむつ、インナーとしての尿取りパッド等のパッド製品とを組み合わせて装着するのが主流である。そして、体液の排泄があったときは、アウターが汚れない限りインナーのみを交換し、アウターは1日から最大3日間ほど使用することが経済性から一般的となっている。従来から、このようなアウターとインナーとの組み合わせについて、種々の提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、アウターとしての吸収性物品と、インナーとしての補助吸収体とを併用したときに、装着者が排泄した尿等の体液を良好に受け止め、体液の横漏れを防止することを目的として、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体の肌面側の幅方向両側を長さ方向に延びるように設けられた第1フラップと、第1フラップの幅方向外方を長さ方向に延びるように設けられた第2フラップとを備え、第1フラップは、吸収体から立ち上がる起点となる第1基部と、吸収体から立ち上がった先端となる第1自由端と、第1基部と第1自由端との間を長さ方向に延びる第1弾性部材とを有し、幅方向の外方に傾斜し、第2フラップは、吸収体から立ち上がる起点となる第2基部と、吸収体から立ち上がった先端となる第2自由端と、第2基部と第2自由端との間を長さ方向に延びる第2弾性部材とを有し、幅方向一端側の第1基部と幅方向他端側の第1基部との間を長さ方向に延びるように設けられた第3弾性部材を更に有し、インナーとして使用される吸収性物品が開示されている。
【0004】
特許文献2には、別体のインナーを併用した一定期間の使用できる耐久性と、単独でも使用できる吸収性能とを併せ持つアウター用吸収性物品の提供を目的として、トップシートと、バックシートと、これらの間に配置された吸収体と、トップシートと吸収体との間に配置され、ホットメルト接着剤により吸収体の肌側面に固定された、エアレイド不織布からなるセカンドシートと、を備え、セカンドシートの上から熱エンボス加工を施し、その後にセカンドシートの上にトップシートを固定した吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-209124号公報
【文献】特開2012-61237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸収性物品を使用する被介護者には、寝たきりの重度のユーザーから、比較的身体が健常ながら排泄に支障があるユーザーまで、介護度の異なる幅広いユーザーが存在する。比較的健常なユーザーが車イスや介助付きで外出する場合、高吸収なアウターであっても歩行や移動時の振動によりインナーがずれてしまい、吸収量に余力を残しながらモレを生じてしまう事例が後を絶たない。比較的健常なユーザーでも外出時に安心して装着できる、インナーの固定性や股間部の密着性を高め、装着時の圧迫感を抑制したアウター用の吸収性物品が求められている。
【0007】
特許文献1に記載のインナー用吸収性物品は、家の中等の、比較的動きの少ない場面ではその目的をある程度達成する。しかしながら、特許文献1では、比較的健常なユーザーが該吸収性物品を装着して車イスや介助付きで外出するときの歩行や移動時の振動は考慮されておらず、歩行や車イス移動によりインナー用吸収体がずれて横モレが生じるという課題を解決することはできない。また、特許文献2でも、アウター用吸収性物品の耐久性や吸収性能は向上するものの、歩行や車イス移動によるインナー用吸収体のズレについては一切考慮されていない。
【0008】
本発明の目的は、歩行や車イス移動によるインナー用吸収性物品のずれを防止し、装着時の圧迫感を抑制し、股間部の密着性を高めた吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トップシート表面に一対の立体ギャザーを有し、体液の吸収を担う吸収部を備える吸収性物品において、一対の立体ギャザーの間の幅方向の領域における吸収部のトップシートと吸収体との間に、所定の構造を有しかつ吸収部の長さ方向一端から他端に延びる吸収性シートを複数配置し、トップシート表面に厚さ方向の凹凸を設ける構成を見出した。そして、本発明者は、該構成によれば、吸収部と装着者の身体との間にインナーとしてのパッド製品を装着して歩行や車イス移動を行っても、主にトップシート表面の厚さ方向の凹凸が大きな段差ではないにもかかわらず、該凹凸により、パッド製品のズレが予想外にも顕著に抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記の吸収性物品を提供する。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、前記トップシート肌側面に幅方向に対になるように配置された立体ギャザーとを備える吸収性物品であって、
前記トップシートと前記吸収体との間において、前記立体ギャザーの幅方向内側に幅方向に並べて配置された、長さ方向に延びる複数の吸収性シートを更に備え、
前記吸収性シートは、肌側面が起毛して複数の起毛繊維が立設された親水性不織布と、前記親水性不織布の前記起毛繊維間に担持された高吸収性ポリマーと、これらを包む親水性シートと、を含み、
各前記吸収性シートの寸法は、幅が30mm以上70mm以下であり、長さが300mm以上900mm以下であり、
前記各吸収性シートの前記高吸収性ポリマーの目付が60g/m2以上390g/m2以下であり、
前記吸収体が、複数の前記吸収性シートを含んで構成される、吸収性物品。
(2)前記吸収性シート毎に、前記高吸収性ポリマーの前記目付を変えた、上記(1)の吸収性物品。
(3)長さ方向の両端部付近に配置され、一部が前記吸収体と厚さ方向に重なり合い、前記吸収体よりも幅広に形成された、ウエスト周りの締め付けを緩衝するクッション性を有する厚さ1.0mm以上5.0mm以下の芯材を更に備え、前記芯材は、ウレタンフォーム又はポリエチレンフォームを含むシート状部材である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、歩行や車イス移動によるインナー用吸収性物品のズレを防止し、装着時の圧迫感を抑制し、股間部の密着性を高めた吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式図である。(a)は模式展開平面図、(b)は吸収性シートと吸収体のみの積層構造を示す模式断面図、(c)は(a)のX
1-X
1切断線における幅方向模式断面図をそれぞれ示す。
【
図2】
図1に示す吸収性物品中吸収体の構成を示す模式断面図である。(a)は幅方向模式断面図、(b)は長さ方向模式断面図をそれぞれ示す。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の構成を示す模式図である。(a)は模式展開平面図、(b)は吸収性シートと吸収体のみの積層構造を示す模式断面図、(c)は(a)のX
2-X
2切断線における幅方向模式断面図をそれぞれ示す。
【
図4】アウターとしての
図1に示す吸収性物品と、インナーとしてのパッド型吸収性物品との組み合わせ例を示す模式図である。(a)は模式展開平面図、(b)は吸収性シートと吸収体のみの積層構造を示す模式断面図、(c)は(a)のX
3-X
3切断線における幅方向模式断面図をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、吸収性物品の装着とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長さ方向とは吸収性物品を身体に装着したときに装着者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長さ方向に対して直交する方向であり、厚さ方向とは各構成部材を積層する方向である。肌面(又は肌側面)とは、吸収性物品を装着したときに、装着者の肌に当接する表面及び肌を臨む表面であり、非肌面(又は非肌側面)とは、装着者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0014】
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の吸収性物品50について説明する。
図1(a)は吸収性物品50を展開した肌面側の外観を示す模式平面図、
図1(b)は吸収部1における吸収体20及び吸収性シート90のみの積層構造を示す幅方向の模式断面図、及び吸収性物品50の要部の模式断面図である。これらの図面は吸収性物品50中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。本実施形態の吸収性物品50は、アウターとして用いられるテープ止めタイプ紙おむつであり、外装部の肌側面で、トップシート10と、複数の吸収性シート90と、吸収体20と、バックシート30と、1対の立体ギャザー40と、を備える吸収部1を支持している。吸収性物品50の、長手方向の寸法は、例えば、650mm以上1100mm以下の範囲である。
【0015】
本実施形態によれば、第1に、内部に吸収部1を備えるアウター用の吸収性物品50における、吸収部1の立体ギャザー40の幅方向内側であって、トップシート10と吸収体20との間に後述する吸収性シート90を複数配置することにより、吸収性シート90に起因するトップシート10肌側面の厚さ方向の凹凸が、吸収部1上に配置されたインナー吸収性物品(パッド製品等)の横ズレを顕著に抑制し、モレを有効に防ぐことができ、装着時にインナーの股間部への密着性を高めることができる。
第2に、また、吸収部1の幅方向中央部付近の吸収性シート90により、股部17中央の吸収力がアウターとしても適切に確保でき、長さ方向に伸びやすいため、装着時に動きやすく、屈曲性が高く締め付けの圧迫感が低減されたアウター用の吸収性物品50となる。
第3に、吸収部1の幅方向両端の立体ギャザー40付近に吸収性シート90を配置することで、横モレを抑制する凸部(堰き)を設けることが出来る。
【0016】
また、複数存在する吸収性シート90について、1本毎に高吸収性ポリマーの目付を変更し適宜配列することで、例えば幅方向中央部に高吸収性ポリマー高目付吸収性シート90を配置して吸収量を確保し、吸収部1の幅方向両端部に高吸収性ポリマー高目付吸収性シート90を配置して防波堤として横モレを抑制し、それ以外の吸収性シート90は低目付として長さ方向の拡散と伸縮性を担い得るように構成する等、アウターとして装着と吸収のバランスを適正化することができる。
さらに、ウエスト周りに緩衝材としての芯材を配置することで、フラッフパルプを主体とする吸収体を含む吸収部を備える従来の吸収性物品に比べて、締め付けの圧迫感が軽減され、よりフィットしてモレを抑制できる吸収性物品50が得られる。
【0017】
なお、本実施形態では、後述するように、複数の吸収性シート90を吸収部1の長さ方向一端部付近から他端部付近に延びて、一対の立体ギャザー40間を幅方向に並ぶように配設することで、インナー用吸収性物品のズレを防ぐことが可能な凹凸をトップシート10の表面に設けている。しかしながら、このような凹凸が前述の効果を示すことは、吸収性物品の研究に携わってきた本発明者にとっても予想外の結果であった。一方、吸収性シート90の長さを、吸収部1の長さ方向一端部付近から他端部付近までの長さの半分程度にした場合は、歩行中や車イス使用中にインナー用吸収性物品のズレを十分に防止することはできなかった。
【0018】
吸収性物品50は、
図1(a)に示すように、装着者の腹側部15に主に当接するように配される前身頃60と、装着者の背側部16に主に当接するように配される後身頃70と、前身頃60と後身頃70との間に介在して装着者の股部17に主に当接するように配される股部80と、後身頃70の幅方向両端から外方に延出された一対のサイドフラップ62と、サイドフラップ62の幅方向途中部に固定され、幅方向両外方に延出された一対のサイドパネル64と、サイドパネル64の2股に分かれたつまみしろに配設された一対のファスニングテープ64aと、前身頃60の長さ方向端部付近において幅方向中央付近に帯状に設けられ、吸収性物品50を装着するときにファスニングテープ64aが固定されるターゲットテープ63と、を含む外装部により外形が構成される。吸収部1は、主に股部80の肌側面に支持され、装着者の股部17を身体の前後から覆う長さ方向に細長い形態を有している。本実施形態では、前身頃60から股部80を介して後身頃70に至る一体化した外装部により吸収性物品50を構成しているが、これに限定されず、前身頃60、及び後身頃70を別体とし、これらを吸収部1により連結して一体化した吸収性物品50としてもよい。
【0019】
前身頃60の幅方向の寸法は例えば380mm以上790mm以下の範囲であり、後身頃70の幅方向の寸法は例えば535mm以上1115mm以下の範囲であり、股部80の幅方向の寸法は例えば250mm以上320mm以下の範囲、又は270mm以上310mm以下の範囲である。前身頃60、後身頃70及び股部80の各寸法を上述の範囲に調整することで、インナー用吸収性物品の定着性を高め、かつ、圧迫感を抑制したテープ止めタイプの吸収性物品50が得られる。
【0020】
以下、各構成部材について、前身頃60、後身頃70、股部80、サイドフラップ62、ターゲットテープ63、吸収部1及び芯材65の順で説明する。
【0021】
<前身頃、後身頃及び股部>
前身頃60及び後身頃70は、吸収部1の前側端部(腹側端部)及び後方端部(背側端部)に、それぞれ、不織布等を含む外装部素材により形成されたものである。また、股部80は、前身頃60と後身頃70との間に介在し、これらと同様に、不織布等を含む外装部素材により形成されたものである。
【0022】
本実施形態では、前身頃60、後身頃70及び股部80は、それぞれ、着用者の非肌側に位置する外装不織布シート(不図示)と、着用者の肌側に位置するバックシートフィルム(不図示)と、を備える。外装不織布シート及びバックシートフィルムからなる外装部素材を、吸収部1が内側となるように吸収部1の中心線で股部80を二つ折りにして、腹側部15及び背側部16の両側縁が接続される。これにより、外装不織布シートは、伸縮性のウエスト開口部と、一対の脚開口部とを形成し、吸収性物品50を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。そして、吸収性物品50を着用すると、腹側部15が着用者の腹側で腰部を覆い、背側部16が着用者の背側で腰部を覆う。
【0023】
外装不織布シートの内側には、例えば、バックシートフィルムが積層されており、前身頃60、後身頃70及び股部80の強度を高めている。外装不織布シートには、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む不織布を使用できる。該不織布の具体例としては、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも、エアスルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。不織布の坪量は、例えば、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。バックシートフィルムとしては樹脂フィルムを特に限定なく使用でき、例えば、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。バックシートフィルムの坪量は、例えば、10g/m2)以上40g/m2)以下である。
【0024】
<サイドフラップ及びターゲットテープ>
図1(a)に示すように、本実施形態の吸収性物品50は、バックシートの腹側部15及び背側部16の幅方向両側端部に形成された一対のサイドフラップ62と、背側部16の各サイドフラップ62の、幅方向の外側端部である、自由端側の幅方向側端部に設けられたサイドパネル64と、サイドパネル64の幅方向の外側端部である、自由端側の幅方向側端部に設けられた2つのファスニングテープ64aとを有している。吸収性物品50は、サイドフラップ62、サイドパネル64及びファスニングテープ64aを有しない実施形態をも包含する。また、サイドパネル64とファスニングテープ64aとは、別々の部材により形成されたものでも、両者が一体となって形成されたものでもよい。また、本実施形態において、一のサイドパネル64上の2つのファスニングテープ64aは、吸収性物品50の長手方向に沿って離間して設けられていてもよい。ファスニングテープ64aは肌側面に、腹側部15と背側部16とを締結するための面ファスナーを構成するフック部材からなる締結手段を備えるとともに、各ファスニングテープ64aの幅方向の外側端部の先端部には、2股に分かれたつまみしろを設けてもよい。一方、腹側部15の衣類側表面には、面ファスナーを構成するループ部材で形成されたターゲットテープ63を設けてもよい。吸収性物品50を装着者に装着するときは、各ファスニングテープ64aが、締結手段としてループ部材で構成されたターゲットテープ63に固定される。これにより、本実施形態の吸収性物品50をテープ止めタイプ紙おむつの構成とすることができる。ただし、これに限定されず、ウエスト部において前身頃60と後身頃70とを幅方向端部で連結し、パンツ状に一体化した吸収性物品50としてもよい。
【0025】
なお、サイドフラップ62の基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等からなる不織布が挙げられ、これらの基材を単独で、又は複数組み合わせてもよい。また、サイドパネル64及びファスニングテープ64aの基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等からなる樹脂フィルムや不織布が挙げられ、これらの基材を単独で、又は複数組み合わせてもよい。また、フック部材とは、面ファスナーを構成する部材のうち、フック状突起からなる部材を指し、ループ部材とは、フック部材と対を成す部材であって、ループ状に密集して起毛された部材を指す。面ファスナーは、このフック部材とループ部材とが対となって構成されている。吸収性物品50は、例えば、背側部16を着用者の背部にあてた状態で、腹側部15を着用者の腹部側に持っていき、ファスニングテープ64aをターゲットテープ63に締結することで、装着できる。
【0026】
<吸収部>
吸収部1は、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、肌側から非肌側に向けて積層した、トップシート10、複数の吸収性シート90、吸収体20、及びバックシート30を基本単位とするものである。本実施形態の吸収部1は、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近に、長手方向に延びる一対の立体ギャザー40を有している。吸収部1には公知の種々の改変を施すことができる。以下、トップシート10、吸収体20、吸収性シート90、バックシート30、及び立体ギャザー40の順に各部材の構成をさらに詳しく説明する。
【0027】
<トップシート>
トップシート10は、吸収性シート90及び吸収体20に向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状基材である。トップシート10は、着用者の肌に当接する場合あることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えない基材が好ましい。該基材としては、例えば、親水性シート、同種又は異種の親水性シートの積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等が挙げられる。親水性シートとしては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂からなる合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維等を用いて作製された、エアスルー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布等が挙げられる。これらの中でも不織布が好ましく、トップシート10肌側面の吸収性シート90による凹凸を形成する観点から、エアスルー不織布またはスパンボンド不織布が好ましい。
【0028】
トップシート10には、液透過性を向上させる観点から、エンボス加工や穿孔加工を表面に施してもよい。トップシート10は、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種以上を含有してもよい。トップシート10の坪量は、強度、加工性及び液戻り量の観点から、例えば、15g/m2以上40g/m2以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、漏れがないように体液を反応性吸収性シート90及び吸収体20へと誘導するために必要とされる、吸収体20の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0029】
<吸収体>
吸収体20は、その長手方向の寸法(最大長さ)が、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、150mm以上500mm以下の範囲、又は270mm以上500mm以下の範囲である。吸収体20の幅方向の寸法(最大幅)は、例えば、50mm以上500mm以下の範囲、60mm以上400mm以下の範囲、又は70mm以上105mm以下の範囲である。また、吸収体20の平面視形状が砂時計型である場合は、長手方向寸法が180mm以上800mm以下の範囲、着用者の腹部及び背部にそれぞれ当接する腹側部及び背側部の幅方向寸法がともに60mm以上400mm以下の範囲であり、着用者の股間部に当接する股部の幅方向寸法が90mm以上250mm以下の範囲である。吸収体20の全面又は一部にエンボス加工を施してもよい。吸収体20の平面視形状としては、例えば、砂時計型、Iの字状、長方形、4角が丸まった角丸四角形、長円等が挙げられる。
【0030】
吸収体20は、例えば、吸収基材として、吸収性繊維と、高吸収性ポリマー(以下「SAP」ともいう)と、を含有する。
【0031】
(吸収性繊維)
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュー、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP))、合成繊維、樹脂繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。吸収体20に吸収性繊維としてフラッフパルプを用いた場合、吸収性繊維の坪量は、例えば100g/m2以上800g/m2以下の範囲又は325g/m2以上615g/m2以下の範囲である。これにより、肌触りを損なわずに、より多くの体液を吸収できる。
【0032】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸アルカリ金属塩がより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムが更に好ましい。高吸収性ポリマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
高吸収性ポリマーは、例えば、粒子状、繊維状等の形態で用いられるが、取扱い易さ等の観点から好ましくは粒子状で用いられる。このとき、粉体としての流動性が悪い微粉末の高吸収性ポリマーの使用を避け、中位粒子径を有する高吸収性ポリマーを用いることにより、吸収に関する基本性能を高め、かつ、吸収体20が硬くなることにより発生するごつごつとした触感を低減することができる。高吸収性ポリマーの中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0034】
吸収体20中のSAPの坪量は、例えば、60g/m2以上450g/m2以下の範囲、又は245g/m2以上445g/m2以下の範囲である。SAPの坪量を前述の数値範囲内とすることで、吸収体20におけるゲルブロッキングを防止し、かつ、吸収体20に多量の体液を吸収させることができる。また、吸収体20において、吸収体20全体の重量に対する、高吸収性ポリマーの重量の比率である、高吸収性ポリマーの重量/吸収体20全体の重量×100(%)は、例えば、15重量%以上の範囲、又は15重量%以上70重量%以下の範囲である。
【0035】
吸収体20において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成したものでもよく、吸収性繊維間にSAP粒子を固着したSAPシートでもよい。
【0036】
<吸収性シート>
図1(a)に示すように、一対の立体ギャザー40の幅方向内側の、吸収体20の肌側面に、長さ方向に延びる複数本の吸収性シート90が幅方向に配列されている。吸収性シート90は比較的扁平(比較的薄い肉厚)で細長い立体形状を有している。本実施形態では、幅方向中央を長さ方向に延びて、長さが相対的に長い2本の吸収性シート90と、これらとは幅方向に間隔を空けて、一対の立体ギャザー40に沿って長さ方向に延びる、長さが相対的に短い2本の吸収性シート90とが配置されている。中央の吸収性シート90は主に体液吸収に貢献し、立体ギャザー40に沿って配置された相対的に短い吸収性シート90は体液の横モレ防止に寄与する。なお、吸収性シート90は、厚さ方向において、立体ギャザー40と重なる位置に配置されていてもよい。また、吸収性シート90が配置される本数については特に限定はなく、吸収性シート90の幅等に応じて適宜選択されるが、例えば、2本以上20本以下の範囲、又は3本以上10本以下の範囲である。
【0037】
吸収性シート90の寸法は、幅が30mm以上70mm以下であり、長さが300mm以上900mm以下である。この寸法を有することにより、トップシート10の肌側面に、インナー用吸収性物品の歩行時や車イス使用時のズレ抑制に有効な凹凸が形成されることが、本発明者の研究により判明している。幅が30mm未満又は幅が70mmを超えると、トップシート10肌側面の凹凸が不十分になり、歩行や車イス使用によるインナー用吸収性物品のズレが発生し易くなる傾向がある。長さが300mm未満では、インナー用吸収性物品のズレを抑制する効果が不十分になる傾向がある。長さが900mmを超えると、装着者の股ぐりの長さを超えて不要な部分が生じるため、装着感が低下する傾向がある。
【0038】
好ましい実施形態では、複数本存在する吸収性シート90のうち、全部が吸収体20と同程度の長さを有しているが、少なくとも1~3本が吸収体20と同程度の長さを有し、残部の吸収性シート90が吸収体20と同程度の長さよりも短く、かつ吸収体20の長さの半分を超える長さを有するように構成してもよい。この構成によれば、トップシート10表面の厚さ方向の凹凸が、歩行や車イス使用の振動による後述のインナー用吸収体3の幅方向のズレを顕著に抑制することができる。
【0039】
吸収性シート90の1個当たりの高吸収性ポリマー12の目付は、60g/m2以上390g/m2以下である。60g/m2未満では、吸収性物品50のアウターとしての吸収性能が低下する傾向がある。390g/m2を超えると、高吸収性ポリマー12由来の硬い感触が強まり、装着感やフィット感が低下する傾向がある。また、好ましい実施形態では、複数の吸収性シート90の高吸収性ポリマー12の目付を、1本毎に変えたものに構成する。この構成によれば、前述のような横モレ抑制効果や、長さ方向の体液拡散性と伸縮性の向上効果が得られる。
【0040】
吸収性シート90は、
図2に示すように、肌側面が起毛面11aである親水性不織布(以下「基体不織布」ともいう)11に高吸収性ポリマー12が担持された体液吸収層が形成され、これらを親水性シート(以下「包装シート」ともいう)13で包んで構成される。吸収性シート90は、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含まない吸収体の一種である。ここで、吸収性シート90とトップシート10との間に、親水性不織布からなるトランスファシート(液拡散性シート)を配置してもよい。
【0041】
(高吸収性ポリマー)
高吸収性ポリマー12としては、吸収体20に用いられる高吸収性ポリマーと同じものを同じように使用できる。高吸収性ポリマー12を基体不織布11の起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11x間に固着担持するには、例えば、ホットメルト接着剤が用いられる。ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。ホットメルト接着剤の含有量は、高吸収性ポリマーの吸収性及び装着時の肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m2以下の範囲である。
【0042】
(基体不織布)
基体不織布11は親水性不織布から構成され、装着者の肌に対向する肌側面が起毛面11aになり、非肌面が非起毛面11bになる。起毛面11aには複数の起毛繊維11xが立設され、複数の起毛繊維11x間には高吸収性ポリマー12が固着担持され、体液吸収層を形成する。起毛面11aに立設された複数の起毛繊維11xは、基体不織布11の表面に毛羽立ち加工等の起毛加工を施すことにより、形成される。基体不織布11の複数の起毛繊維11xにより、不織布本来の嵩高さに加えて、吸収性シート90に適度な厚みとやわらかさが付与され、良好なクッション性が発生し、着用時のフィット感が向上する。また、基体不織布11を起毛させると、起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させることができる。基体不織布11の片側表面11aを起毛させる方法としては、回転ノコ刃、ニードルパンチ等を用いる方法が挙げられ、インラインでの生産性やコストの観点から回転ノコ刃を用いる方法が好ましい。
【0043】
基体不織布11における起毛の程度は特に限定されず、目視で起毛を確認できればよいが、例えば、起毛の程度としての起毛率が5%以上90%以下の範囲、又は8%以上80%以下の範囲である。起毛率とは、起毛加工による基体不織布11の厚さの増加率を意味する。起毛前の基体不織布11の厚さをT1、起毛後の基体不織布11の厚さをT2としたとき、起毛率(%)=[(T2―T1)/T1]×100である。厚さT1、T2は、ハイトゲージ((株)ミツトヨ製)を用いて無荷重下で測定される。また、基体不織布11の非起毛面11bでも、繊維を起毛させてもよい。
【0044】
基体不織布11を構成する親水性不織布(基材)としては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の不織布や、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布等が挙げられる。これらの不織布の中でも、嵩を高くする観点等から、基体不織布11にはエアスルー不織布が好ましい。
【0045】
基体不織布11の厚さは特に限定されないが、着用感及び吸収性能のバランスの観点から、0.3mm以上11.0mm以下の範囲、0.5mm以上5.0mm以下の範囲又は0.5mm以上2.0mm以下の範囲である。また、基体不織布11の坪量は特に限定されないが、例えば、35g/m2以上120g/m2以下の範囲である。また、包装シート13の厚さは0.10mm以上0.25mm以下の範囲、坪量は5g/m2以上40g/m2以下の範囲である。
【0046】
なお、基体不織布11としてエアスルー不織布を用いる場合、エアスルー不織布の坪量が35g/m2以上120g/m2以下の範囲である。好ましい実施形態では、エアスルー不織布を構成する繊維の太さが1.6dtex以上14dtex以下の範囲、1.8dtex以上9.0dtex以下の範囲又は2.0dtex以上6.0dtex以下の範囲である。エアスルー不織布を構成する繊維の太さを上述の範囲に調整することにより、エアスルー不織布の起毛繊維11x間に高吸収性ポリマー12を分散させて固着担持させやすくなり、起毛面11aにおける高吸収性ポリマー12の均一分散性が向上する。
【0047】
(包装シート)
包装シート13は親水性シートから構成され、基体不織布11及び体液吸収層の全体を包む。より具体的には、例えば、包装シート13の表面の幅方向中央部付近に、基体不織布11の非起毛面11bを載置し、これらをホットメルト接着剤等で接着した後、包装シート13の幅方向両端部をC折りし、体液吸収層の上方で厚さ方向に重ね合わせる。これらの両端部をホットメルト接着剤等で固定してもよい。
【0048】
包装シート13は、例えば、体液吸収層全体に体液をほぼ均一に拡散させ、体液吸収層からの高吸収性ポリマー12の脱落を防止する。包装シート13を構成する親水性シートとしては、この分野で常用されるものをいずれも使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布、ティシュペーパー、吸収紙等が挙げられる。親水性不織布の中でも、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、パルプ含有不織布等の親水性不織布がより好ましく、エアスルー不織布、パルプ含有不織布、スパンボンド不織布等がさらに好ましい。
【0049】
<バックシート>
バックシート30は、吸収体20が保持する体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成されればよく、該基材としては、例えば、樹脂フィルム、樹脂フィルムと不織布との積層体である複合シート等が挙げられる。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布等の単層不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0050】
バックシート30の坪量は、強度及び加工性の点から、例えば15g/m2以上60g/m2以下の範囲である。また、着用時の蒸れを防止するため、バックシート30には、通気性を持たせることが好ましい。バックシート30に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート30にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0051】
<立体ギャザー>
立体ギャザー40は、例えば、吸収性物品50の着用者が排泄した体液の横モレを防止するために、吸収性物品50の幅方向両端付近で吸収性物品50の長手方向に沿ってトップシート10の肌側面に固定される。立体ギャザー40は、弾性伸縮部材40aと、撥水性及び/又は防水性のシート部材40bと、を含む。
【0052】
弾性伸縮部材40aは、シート部材40bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、シート部材40bの自由端及びその近傍領域を着用者の体型に合わせて変形可能にする。シート部材40bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート30の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が起立性を有する自由端である。シート部材40bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート30の非肌側面、内部に吸収体20を収納したトップシート10とバックシート30との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。
【0053】
シート部材40bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1シート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。シート部材40bの坪量は、例えば、13g/m2以上20g/m2以下の範囲である。弾性伸縮部材40aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0054】
<芯材>
本実施形態の吸収性物品50は、吸収部1の長さ方向両端部の更に外側(すなわち吸収性物品50の長さ方向両端部付近)のサイド部に、一部が吸収体20と厚さ方向に重なり合い、吸収体20よりも幅広の芯材65を有していてもよい。芯材65は、吸収体20と重複しない領域に配置してもよい。芯材65は腹側部15及び/又は背側部16の外装不織布シートとバックシートフィルムとの間に配置してもよく、また、吸収部1におけるトップシート10、立体ギャザー40のシート部材40b及びバックシート30の長さ方向各端部を延出し、これらの延出された領域間に配置されていてもよい。
【0055】
芯材65は、例えば、吸収性物品50の腹側部15の長手方向端部及び/又は背側部16の長手方向端部の掴みやすさや着脱操作を向上させ、介助者でも装着者自身でも、吸収性物品50の位置合わせや、使用後に新しいインナー用吸収性物品や吸収性物品50の取替操作性が一層向上するとともに、緩衝材としても機能し、吸収性物品50の装着感を向上させる。芯材65としては、その機能を発揮でき、装着者の身体に違和感を与えないものであれば特に限定されないが、例えば、ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等を含む発泡シートが好ましい。発泡シートの厚さは、掴み易さ、耐久性等の観点から、例えば1.0mm以上5.0mm以下の範囲である。また、芯材65の平面視形状は特に限定されないが、掴み易さ等の観点から、例えば、長方形状、長円形状、楕円形状、円形状等が挙げられる。
【0056】
<吸収性物品(第2実施形態)>
吸収性物品51は、
図3に示すように、吸収部1に代えて吸収部2を有する以外は、吸収性物品50と同じ構成を有する、吸収性物品50の変形例である。
図3において、吸収性物品50と同一の構成部材については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0057】
吸収部2は、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを主成分とする吸収体20に代えて、複数の吸収性シート90からなる吸収体21を有する以外は、吸収部1と同じ構成である。ここで、吸収体21を構成する吸収性シート90(以下「非肌側の吸収性シート90」ともいう)は、その肌側に配置された吸収性シート90(以下「肌側の吸収性シート90」ともいう)と同じものであるが、好ましい実施形態では、
図3(c)に示すように、肌側の吸収性シート90よりも幅狭である。この実施形態によれば、相対的に幅狭である複数の非肌側の吸収性シート90を幅方向に並べて配置することで、吸収体21全体としての肌側面に凹凸が生じ、これが肌側の吸収性シート90の位置を安定させ、肌側の吸収性シート90によって生じるトップシート10の凹凸が長時間にわたって安定的に維持され、そのズレ防止効果が継続的に発揮される。
【0058】
図4は、第1実施形態の吸収性物品50をアウター用紙おむつとして用い、インナー用のパッド製品である吸収性物品3との併用例を示している。吸収性物品50の肌側面に配置された吸収部1の表面(凹凸を有するトップシート10肌側面)と、吸収性物品3のバックシート31非肌側面とが接触するように両者を装着すると、トップシート10の長さ方向に延び、幅方向に交互に凹凸を有するトップシート10肌側面が、歩行や車イス使用の振動に対して有効に機能し、吸収性物品3の幅方向(矢印の方向)へのズレが顕著に抑制される。
【0059】
また、吸収性物品3は、トップシート26と、バックシート31と、これらの間に配置された吸収体25と、トップシート26の幅方向両端を長手方向に延びるように設けられた立体ギャザー41とを含み、吸収体25が肌側吸収体25aと非肌側吸収体25bとの2層構造のものである。肌側吸収体25a及び非肌側吸収体25bは、共に、吸収性繊維と高吸収性ポリマーとを含むものである。このような吸収性物品3を併用すると、位置ずれがほとんど起こらないので、装着者の体液は的確に吸収性物品3に吸収され、吸収性物品50の吸収部1まで到達する体液量は少なく、吸収性物品50の体液による汚れも少ないことから、インナーである吸収性物品3のみを新品に変更すれば、吸収性物品50は比較的長い間使用可能な状態を保つことができる。
【0060】
<吸収部の製造方法>
吸収部1は、公知の製造方法により製造できるが、例えば、トップシート10、吸収体20、及びバックシート30を厚さ方向に重ね合わせ、吸収体20の肌側面に複数本の吸収性シート90を所定方向に配置して吸収積層体を得る工程と、吸収積層体をトップシート10とバックシート30との間に配置する工程と、トップシート10の縁辺とバックシート30の縁辺とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程と、バックシート30及びトップシート10の所定位置において、立体ギャザー40の幅方向内側に吸収性シート90が位置するように立体ギャザー40を設置する工程と、を含む製造方法が挙げられる。吸収部2も、吸収体20に代えて複数の吸収性シート90を幅方向に並べる以外は、吸収部1と同様にして作製できる。インナー用吸収性物品3も同様に製造できる。吸収部1、2及び吸収性物品3には、必要に応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等が適宜設けられる。
【0061】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品50、51の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用でき、例えば、前側部15、後側部16、及び股部17の所定の形状を有する外装不織布シート及びバックシートフィルムを用意する工程と、外装不織布シートとバッグシートフィルムとを含む外装部素材の肌側面に吸収部1(又は吸収部2)を配設する工程と、腹側部15のターゲットテープ63と背側部16のファスニングテープ64aとを接合する工程と、を含む製造方法により、吸収性物品50、51が得られる。また、ファスニングテープ64aは、あらかじめ、サイドパネル64の基材表面に締結手段を接着し、所定の形状に切断してサイドパネル64とし、これをサイドフラップ62に接合してもよい。
【0062】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を挙げ、本実施形態を更に具体的に説明する。
【0064】
(実施例1~3)
吸収体としては、表1に記載の肌側吸収体としての吸収性シートと、表1及び表2に記載の非肌側吸収体としての吸収性シート(基体不織布の起毛後厚さ1.2mm、起毛率25%)又はフラッフパルプ吸収体を用い、トップシートとしてエアスルー不織布(坪量20g/m2)を用い、バックシートとして通気性ポリエチレンシート(坪量32g/m2)を用い、立体ギャザーとしてスパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(坪量15g/m2)を用い、外装不織布シートとしてスパンボンド不織布(坪量17g/m2)、バックシートフィルムとしてポリエチレンフィルム(坪量20g/m2)を用い、弾性伸縮部材として紐状の天然ゴムを用い、吸収体の長手方向端部から長手方向外側の前身頃及び後身頃の外装不織布シートと内装不織布シートとの間にポリウレタンフォームシートを用い、吸収部の寸法を長手方向350mm、幅180mmとし、表1に記載の寸法を有する、実施例1~3のアウター用吸収性物品を作製した。また、表2に記載のようにして、実施例1~3のインナー用吸収性物品を作製した。なお、表1及び表2に記載のフラッフSAP吸収体において、装着者の下腹部に主に当接する領域を前側部、装着者の股間部に主に当接する領域を股部、装着者の臀部に主に当接する領域を後側部とする。
【0065】
上記で得られたアウター用吸収性物品と、インナー用吸収性物品とを組み合わせて被験者に1週間、昼夜にわたって装着してもらい、その使い心地を調べ、表2の効果欄に示した。なお、被験者には、排泄に支障があるが身体健常者で、車イス使用者(50代)、介助ありで外出可能な被介護者(50代)、及び排泄に支障があるが身体健常者で、車イス使用者(40代)の3名に依頼した。
【0066】
【0067】
【符号の説明】
【0068】
1、2 吸収部
3 吸収性物品(インナー用)
10、26 トップシート
11 親水性不織布(基体不織布)
11a 起毛面
11b 非起毛面
11x 起毛繊維
12 高吸収性ポリマー
13 親水性シート(包装シート)
15 腹側部
16 背側部
17 股部
20、21 吸収体
30 バックシート
40 立体ギャザー
40a 弾性伸縮部材
40b シート部材
50、51 吸収性物品
60 前身頃
61 弾性伸縮部材
62 サイドフラップ
63 ターゲットテープ
64 サイドパネル
64a ファスニングテープ
65 芯材
70 後身頃
80 股部
90 吸収性シート