(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】自動ドア、電子機器、自動ドアの稼働方法、自動ドアの稼働プログラム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/70 20150101AFI20240912BHJP
【FI】
E05F15/70
(21)【出願番号】P 2020189746
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】来海 大輔
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/091491(WO,A1)
【文献】特開2002-334624(JP,A)
【文献】特開昭60-142275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0031633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/70ー15/79
H01H 9/54-9/56
H03K 17/74-17/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動ドアを構成し、信号が入力される構成機器を備え、
前記構成機器は、
前記信号の入力に応じて接触状態となる接点と、
前記接点が非接触状態から前記接触状態に切り替わった後、当該接点からの前記信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定部と、
前記接触状態に切り替わった後、前記検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶部と
を備え
、
前記時間記憶部は、前記検出可能状態判定部が、前記接点からの前記信号が検出可能状態となったことを判定した後、前記接点が前記接触状態から前記非接触状態に切り替わるまでの安定時間を記憶する自動ドア。
【請求項2】
自動ドアを構成し、信号が入力される構成機器を備え、
前記構成機器は、
前記信号の入力に応じて接触状態となる接点と、
前記接点が前記接触状態から非接触状態に切り替わった後、当該接点からの前記信号が検出不可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定部と、
前記非接触状態に切り替わった後、前記検出不可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶部と
を備え
、
前記時間記憶部は、前記検出可能状態判定部が、前記接点からの前記信号が検出可能状態となったことを判定した後、前記接点が前記接触状態から前記非接触状態に切り替わるまでの安定時間を記憶する自動ドア。
【請求項3】
自動ドアを構成し、前記信号を出力する前記構成機器と異なる他の構成機器を備え、
前記接点は、前記構成機器内、前記他の構成機器内、または、前記構成機器と前記他の構成機器の間に設けられる
請求項1または2に記載の自動ドア。
【請求項4】
前記構成機器または前記他の構成機器は、自動ドアを通行する物体を検知するセンサ、前記センサの検知情報に基づいて自動ドアを開閉制御するコントローラ、自動ドアを施錠する電気錠の少なくともいずれか一つである
請求項3に記載の自動ドア。
【請求項5】
前記信号は、自動ドアの外部機器から入力される
請求項1または2に記載の自動ドア。
【請求項6】
前記遷移時間が所定の閾値を超えるか否かを判定する遷移時間判定部を備える
請求項1から
5のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項7】
前記時間記憶部は、前記閾値を超えた前記遷移時間を記憶する
請求項
6に記載の自動ドア。
【請求項8】
前記遷移時間判定部の判定結果に基づいて、前記検出可能状態判定部における前記基準を調整する基準調整部を備える
請求項
6または
7に記載の自動ドア。
【請求項9】
前記時間記憶部は、記憶処理を実行した時刻に関する情報を記憶する
請求項1から
8のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項10】
前記時間記憶部に記憶された情報を自動ドアの外部に送信する送信部を備える
請求項1から
9のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項11】
前記時間記憶部に記憶された情報を表示する表示部を備える
請求項1から1
0のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項12】
信号の入力に応じて接触状態となる接点と、
前記接点が非接触状態から前記接触状態に切り替わった後、当該接点からの前記信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定部と、
前記接触状態に切り替わった後、前記検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶部と
を備え
、
前記時間記憶部は、前記検出可能状態判定部が、前記接点からの前記信号が検出可能状態となったことを判定した後、前記接点が前記接触状態から前記非接触状態に切り替わるまでの安定時間を記憶する電子機器。
【請求項13】
自動ドアを構成する構成機器において、信号の入力に応じて接触状態となる接点が非接触状態から前記接触状態に切り替わった後、当該接点からの前記信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定ステップと、
前記接触状態に切り替わった後、前記検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶ステップと
を備え
、
前記時間記憶ステップは、前記検出可能状態判定ステップが、前記接点からの前記信号が検出可能状態となったことを判定した後、前記接点が前記接触状態から前記非接触状態に切り替わるまでの安定時間を記憶する自動ドアの稼働方法。
【請求項14】
自動ドアを構成する構成機器において、信号の入力に応じて接触状態となる接点が非接触状態から前記接触状態に切り替わった後、当該接点からの前記信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定ステップと、
前記接触状態に切り替わった後、前記検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶ステップと
をコンピュータに実行させ
、
前記時間記憶ステップは、前記検出可能状態判定ステップが、前記接点からの前記信号が検出可能状態となったことを判定した後、前記接点が前記接触状態から前記非接触状態に切り替わるまでの安定時間を記憶する自動ドアの稼働プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドアその他の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、互いに通信可能な複数の構成機器を備える自動ドアが知られている。各構成機器の間には、信号が入力されている間は接触状態となり、信号が入力されていない間は非接触状態となる接点が設けられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接点では、いわゆるチャタリング(Chattering)の問題が発生しうる。これは、接点が非接触状態から接触状態に切り替わる際や、接触状態から非接触状態に切り替わる際に、接点を構成する機械要素間の弾性衝突等により生じる機械的な振動現象である。チャタリングの多い接点では、信号を適切に入力できないことがあり、自動ドアの開閉駆動に支障が生じうる。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、接点でのチャタリングの発生状況を効果的に把握できる自動ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動ドアは、自動ドアを構成し、信号が入力される構成機器を備え、構成機器は、信号の入力に応じて接触状態となる接点と、接点が非接触状態から接触状態に切り替わった後、当該接点からの信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定部と、接触状態に切り替わった後、検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶部とを備える。
【0007】
この態様では、自動ドアの構成機器において信号入力を受けた接点が接触状態に切り替わった後、検出可能状態となるまでの遷移時間が記憶される。チャタリングが多い接点の場合は遷移時間が長くなる傾向があるため、これに基づき接点でのチャタリングの発生状況を効果的に把握できる。
【0008】
本発明の別の態様もまた、自動ドアである。この自動ドアは、自動ドアを構成し、信号が入力される構成機器を備え、構成機器は、信号の入力に応じて接触状態となる接点と、接点が接触状態から非接触状態に切り替わった後、当該接点からの信号が検出不可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定部と、非接触状態に切り替わった後、検出不可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶部とを備える。
【0009】
この態様では、自動ドアの構成機器において信号入力の途切れた接点が非接触状態に切り替わった後、検出不可能状態となるまでの遷移時間が記憶される。チャタリングが多い接点の場合は遷移時間が長くなる傾向があるため、これに基づき接点でのチャタリングの発生状況を効果的に把握できる。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、信号の入力に応じて接触状態となる接点と、接点が非接触状態から接触状態に切り替わった後、当該接点からの信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定部と、接触状態に切り替わった後、検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶部とを備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、自動ドアの稼働方法である。この方法は、自動ドアを構成する構成機器において、信号の入力に応じて接触状態となる接点が非接触状態から接触状態に切り替わった後、当該接点からの信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する検出可能状態判定ステップと、接触状態に切り替わった後、検出可能状態となるまでの遷移時間を記憶する時間記憶ステップとを備える。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接点でのチャタリングの発生状況を効果的に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の自動ドアを概略的に示す正面図である。
【
図2】自動ドアの内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す図である。
【
図3】自動ドアの構成機器の信号入力部の構成を模式的に示す図である。
【
図4】各構成機器の接点における典型的な信号入力パターンを模式的に示す図である。
【
図5】ON時遷移時間、安定時間、OFF時遷移時間の傾向をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
初めに実施形態の概要を説明する。本実施形態の自動ドアでは、コントローラや起動センサ等の構成機器が相互に通信可能に設けられる。各構成機器の信号入力部には機械的接点が設けられるが、ここでチャタリングが発生しうる。チャタリングが発生した場合、接点がONになってからも信号がふらつくため、信号処理を開始できるまでの時間が長くなる。本実施形態では、この遷移時間を記憶することで、接点でのチャタリングの発生状況を効果的に把握する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る自動ドア100を概略的に示す正面図である。自動ドア100は、開閉駆動される扉部10と、自動ドア100全体を制御するコントローラ20と、通行者を検出するセンサ30(起動センサ31、補助センサ32の総称)と、動力を発生させるドアエンジン40と、動力を扉部10に伝達する動力伝達部50とを主に備える。なお、以下の説明では、
図1における左右方向を水平方向とし、
図1における上下方向を鉛直方向とするが、自動ドア100は任意の姿勢で設置することができ、その設置方向が以下の例に限定されるものではない。
【0017】
扉部10は、それぞれ水平方向に可動に設けられる第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rと、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rが開状態のときにそれぞれと重なる位置に設けられる第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rと、第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の動作をガイドするガイド機構13を備える。第1の可動扉11L、第2の可動扉11R、第1の固定扉12L、第2の固定扉12Rは、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法よりも大きい縦長の矩形状に構成される。扉部10の開駆動時には、
図1で左側に示される第1の可動扉11Lが左方向に駆動され、
図1で右側に示される第2の可動扉11Rが右側に駆動される。また、扉部10の閉駆動時には、開駆動時とは逆に、第1の可動扉11Lが右方向に駆動され、第2の可動扉11Rが左方向に駆動される。なお、扉部10を構成する扉の数や形状は上記に限られず、設置場所のニーズに合わせて適宜設計可能である。また、同様に、扉部10の可動方向も水平方向に限られず、水平方向から傾斜した方向としてもよい。
【0018】
ガイド機構13は、走行レール131と、戸車132と、ガイドレール133と、振れ止め部134を備える。走行レール131は、可動扉11L、11Rの上方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する柱状のレール部材である。戸車132は、可動扉11L、11Rの上部にそれぞれ二つずつ設けられ、各可動扉11L、11Rを走行レール131に懸架する。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、戸車132が走行レール131を転動するため、円滑な開閉動作が可能となる。ガイドレール133は、可動扉11L、11Rの下方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する溝状のレール部材である。振れ止め部134は、可動扉11L、11Rの下部から張り出して溝状のガイドレール133に収まる。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、振れ止め部134がガイドレール133に沿って動くため、各可動扉11L、11Rの見込み方向(
図1の紙面に垂直な方向)の振動を抑制できる。
【0019】
なお、扉部10の開閉に関する各種のパラメータはコントローラ20で設定可能である。例えば、開閉速度、開閉強度、開口幅等を設定できる。開閉速度は、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rの水平方向の速度であり、両扉の速度の方向は互いに逆向きである。両扉で速度の大きさ(速さ)は等しくするのが好適であるが、異なる速さとしてもよい。また、開閉速度は、通常開閉時とそれ以外の時で異なる値を設定してもよい。例えば、扉部10の通常の閉駆動中に、閉じる可動扉11L、11Rに通行者が挟まれるのを緊急回避するために開駆動に切り替えるいわゆる反転の場合、その開駆動時の可動扉11L、11Rの速度は、通常の開駆動時の速度と異なる値を設定してもよい。
【0020】
開閉強度は、可動扉11L、11Rの開閉時の力の大きさであり、後述するモータ42の発生トルク値で制御される。上記の開閉速度と同様に、基本的には可動扉11L、11Rで等しい開閉強度とするのが好適である。また、通常開閉時とそれ以外の時で異なる開閉強度を設定してもよい。開口幅は、扉部10が全開のときの第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の間隔である。
図1に示されるように、第1の可動扉11Lの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW1、第2の可動扉11Rの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW2とすれば、開口幅はW1+W2で表される。ここで、移動距離W1、W2は、自動ドア100の水平方向寸法に収まる範囲で個別に設定できる。
【0021】
図1には、センサ30の例として、起動センサ31と、補助センサ32が設けられる。起動センサ31は、扉部10の上方の無目60の表面に設けられる光電センサである。起動センサ31は、赤外線等の光を床面に向けて発射する投光部と、床面からの反射光を検出する受光部を備える。通行者等の物体が自動ドア100に近づいて光を遮ると受光部の受光量が変化するため、物体を検出できる。このような起動センサ31での検出情報がコントローラ20に入力されると、ドアエンジン40の駆動により扉部10が開く。なお、起動センサ31は室内側(例えば
図1の紙面の表側)と室外側(例えば
図1の紙面の裏側)にそれぞれ設けられ、いずれの側から近づく通行者も検出できる。以下で両者を区別する必要がある場合は、それぞれ室内側起動センサ31、室外側起動センサ31と記載する。
【0022】
なお、起動センサ31は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検出する構成としてもよい。また、
図1で31Aとして示すように、可動扉11Lおよび11Rの少なくとも一方に設けられるタッチプレートが通行者によって押されることで、扉部10を駆動する構成としてもよい。また、観光施設やアミューズメントパーク等では、通行者の検出や操作に加えてまたは代えて、施設の係員の操作で扉部10を駆動する態様も想定される。このとき、施設の係員は、扉部10から離れた位置に設けられる操作盤や、自動ドア100と通信可能な操作端末で遠隔から扉部10を駆動できる。
【0023】
補助センサ32は、扉部10の第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rに設けられる光電センサである。補助センサ32は、第1の固定扉12Lおよび第2の固定扉12Rの一方に設けられる投光部と、他方に設けられる受光部を備える。投光部と受光部は床面から同じ高さに設けられ、投光部から水平方向に発射される赤外線等の光を受光部で検出する。扉部10が開いている状態で、その開口部を通行者が通過して光を遮ると受光部の受光量が変化するため、通行者を検出できる。補助センサ32の主な目的は閉保護であり、可動扉11L、11Rの閉動作中に補助センサ32が通行者を検出すると、コントローラ20は閉駆動を中止して開駆動に切り替える反転制御を行う。これにより、通行者が閉じる可動扉11L、11Rに挟まれるのを防止できる。なお、このような閉保護の制御において、補助センサ32と同様に光電センサで構成される起動センサ31の検出情報を併用することで、通行者の検出精度を高めて安全性を更に向上できる。
【0024】
なお、補助センサ32は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検出する構成としてもよい。また、補助センサ32は固定扉12L、12Rとは異なる場所に設けてもよい。例えば、起動センサ31と同様に無目60に設けてもよいし、自動ドア100近傍の天井に設置してもよい。このような補助センサ32を複数設ければ、コスト高にはなるものの、安全性が飛躍的に高まる。
【0025】
上記の起動センサ31および補助センサ32は、出力段に増幅器を備えており、各センサでの検出値を、後段のコントローラ20で扱える所定のレベルまで増幅する。したがって、センサの検出強度が低い場合は増幅率が高くなり、センサの検出強度が大きい場合は増幅率が低くなる。このように、各センサの増幅率は各センサの検出強度を示すデータになっている。
【0026】
ドアエンジン40は、モータ駆動部41と、モータ42と、駆動プーリ43を備える。モータ駆動部41は、インテリジェントパワーモジュール(IPM)で構成され、コントローラ20の制御の下でモータ42を駆動する電圧ないし電流を発生させる。回転動力を発生させる動力源としてのモータ42は、各種の公知のモータとして構成できるが、本実施形態では、一例として、ホール素子を用いたエンコーダを備えるブラシレスモータとする。エンコーダで検出されたモータ42の回転子の位置がモータ駆動部41に入力され、それに応じた駆動電圧ないし駆動電流がモータ42に印加されることで、所望の回転動力が発生される。モータ42によって回転駆動される駆動プーリ43は、図示しない歯車機構等を介してモータ42の回転子と連結され、連動して回転する。
【0027】
動力伝達部50は、ドアエンジン40で発生された動力を扉部10に伝達し、可動扉11L、11Rを開閉駆動する。動力伝達部50は、動力伝達ベルト51、従動プーリ52、連結部材53を備える。動力伝達ベルト51は、内周面に多数の歯が形成された環状のタイミングベルトであり、
図1の右側において駆動プーリ43に巻き付けられ、
図1の左側において従動プーリ52に巻き付けられる。この状態において動力伝達ベルト51の水平方向の寸法は、駆動プーリ43と従動プーリ52の水平方向の距離に等しく、また可動扉11L、11Rの可動域の水平方向の寸法と同程度である。モータ42により駆動プーリ43が回転すると、動力伝達ベルト51を介して従動プーリ52が連動して回転する。
【0028】
連結部材53は、可動扉11L、11Rをそれぞれ動力伝達ベルト51に連結して、開閉駆動する。ここで、一方の可動扉は動力伝達ベルト51の上側に連結され、他方の可動扉は動力伝達ベルト51の下側に連結される。
図1の例では、動力伝達ベルト51が反時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが左側に移動し第2の可動扉11Rが右側に移動する開動作となり、動力伝達ベルト51が時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが右側に移動し第2の可動扉11Rが左側に移動する閉動作となる。
【0029】
以上のような構成の自動ドア100において、起動センサ31が通行者を検出すると、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が反時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を開駆動する。また、開駆動後、通行者が検出されない状態が所定時間継続した場合は、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を閉駆動する。なお、閉駆動中に補助センサ32や起動センサ31が通行者を検出すると、コントローラ20が閉駆動から開駆動に切り替える反転制御を行う。
【0030】
図2は、自動ドア100の内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す。自動ドア100は、各構成機器が接続され、構成機器間のデータ通信を行うバス2を有する。バス2は、任意の通信規格、例えばCAN(Controller Area Network)に則って構成される。CANは、ホストコンピュータを介さずに構成機器が相互に通信できるように設計されており、自動ドアに限らず様々なシステムの制御情報の伝送に広く利用されている。バス2に接続された各構成機器は、バス2を介して他の構成機器に情報を送信でき、他の構成機器がバス2に送信した情報のうち自身に必要な情報を選択的に受信できる。
【0031】
図2には、バス2に接続される構成機器として、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37が例示され、いずれの構成機器も自動ドア100を構成する。なお、本図は、バス2に接続されうる構成機器を例示列挙したものであり、
図1に示されない構成機器も含まれている。また、実際の自動ドア100に設ける構成機器は目的に応じて選択でき、図示される全ての構成機器を設ける必要はない。例えば、通行者の検出や操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、係員等の操作を行うための操作盤33は設ける必要はない。逆に、観光施設やアミューズメントパーク等で、施設の係員の操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、通行者の検出や操作のための起動センサ31やタッチプレート31Aを設ける必要はない。ただし、自動ドア100全体を制御するコントローラ20は、いかなる場合でも必須の構成機器である。
【0032】
図示される構成機器のうち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32については前述したので説明を省略する。
【0033】
操作盤33は、観光施設やアミューズメントパーク等で施設の係員が操作し、扉部10を駆動する制御盤である。例えば、利用者が所定のタイミングで異なる部屋を移動するアトラクションにおいては、その移動タイミングに合わせて係員が操作盤33を操作し、各部屋の扉部10を開閉制御することで利用者が円滑に移動できる。なお、操作盤33は、施設に固定的に設置されたものでもよいし、係員が携帯できるものでもよい。また、後述する外部インターフェース36を介してコントローラ20等と通信可能なタブレットやスマートフォン等の通信端末に操作盤33の機能を実装してもよい。
【0034】
認証装置34は、集合住宅やオフィスの入口など、高いレベルのセキュリティが要求される場所で、通行を許可すべき通行者を認証するものである。認証の方法は、扉部10近傍に設けられるキーパッドの入力によるパスワード認証や、指紋等の通行者の生体情報を用いた生体認証などがある。認証装置34での認証が成功すると、コントローラ20が扉部10を開駆動し、通行者は自動ドア100を通行できる。認証装置34での認証が失敗すると、たとえ起動センサ31が通行者を検出していたとしても、コントローラ20は扉部10を開駆動せず、不正な通行者の通行を阻止できる。
【0035】
電気錠コントローラ35は、自動ドア100を施錠する電気錠35Aを制御する。電気錠35Aは、錠を施錠位置と解錠位置の間で駆動する錠駆動手段として、例えば通電状態に応じた駆動力を発生するソレノイドを備える。
【0036】
外部インターフェース36は、有線または無線の接続により、自動ドア100外の各種の外部機器36Aとの間で信号を入出力する。外部機器36Aとしては、自動ドア100の設置や保守点検のために現場に赴いた作業員が使用する調整器等の作業端末や、インターネット等の公衆情報通信網を介して接続された遠隔のサーバやコンピュータが例示される。このような外部機器36Aの入力操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。また、外部機器36Aは、自動ドア100の各構成機器や、それらに付随して設けられるメモリから情報を読み取り、状態診断や保守点検を行える。なお、上述の通り、自動ドア100内のバス2はCAN規格に則って構成されるが、外部機器36Aと外部インターフェース36の間の通信が、それとは別の規格、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)で行われる場合、外部インターフェース36は一方の規格に基づく信号を他方の規格に基づく信号に変換するプロトコル変換器として機能する。
【0037】
表示装置37は、他の構成機器から受信した情報に基づいて自動ドア100の稼働状況等を表示する表示部である。この表示装置37がタッチパネル等の入力機能を備える場合は、表示画面上のタッチ操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。なお、表示装置37は、扉部10の付近に設けてもよいし、扉部10から離れた場所、例えば、自動ドア100と同じ建物内でその管理を行うバックヤードに設けてもよい。
【0038】
以上で例示列挙した自動ドア100を構成する構成機器、すなわち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37は、CAN規格に則ったバス2を介して相互に通信可能である。つまり、各構成機器はCAN通信のためのCANトランシーバとCANコントローラを内蔵している。外部インターフェース36は、これらに加え、外部機器36Aが利用する通信規格とCAN規格のプロトコル変換を行うプロトコル変換部を有する。これにより、外部インターフェース36に接続された外部機器36Aは、自動ドア100の他の構成機器とバス2を介して相互に通信可能である。
【0039】
図3は、自動ドア100の構成機器の信号入力部または受信部の構成を模式的に示す。図示される各構成機器3は、
図2で例示列挙した、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37のうち任意のものでよい。構成機器3は、接点301と、検出可能状態判定部302と、入力信号処理部303と、時間記憶部304と、遷移時間判定部305と、基準調整部306を備える。
【0040】
図3に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、演算機能、制御機能、記憶機能、入力機能、出力機能を有するコンピュータや、各種の電子素子、機械部品等で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによって様々な形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0041】
接点301は、バス2からの信号の入力に応じて機械的に開閉するスイッチである。入力信号があるときは接点301が閉じて接触状態となり、入力信号がないときは接点301が開いて非接触状態となる。なお、接点301への入力信号は、自動ドア100の内部の他の構成機器3から入力されるものでもよいし、外部インターフェース36を介して自動ドア100の外部の機器から入力されるものでもよい。また、接点301は、構成機器3内部の構成として図示したが、構成機器3外部の構成として、構成機器3とバス2の間に設けてもよい。
【0042】
検出可能状態判定部302は、信号入力の始めに、接点301が非接触状態(開状態)から接触状態(閉状態)に切り替わった後、接点301からの信号が検出可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する。同様に、検出可能状態判定部302は、信号入力の終わりに、接点が接触状態(閉状態)から非接触状態(開状態)に切り替わった後、接点301からの信号が検出不可能状態となったことを所定の基準に基づいて判定する。これらの判定の基準については別の図を参照して後述する。
【0043】
入力信号処理部303は、検出可能状態判定部302が検出可能状態となったと判定した接点301からの入力信号を処理する。ここでの処理の内容は、各構成機器3が自動ドア100において果たすべき機能により異なる。例えば、構成機器3としてのコントローラ20に、他の構成機器3としての起動センサ31から通行者の検出情報が入力された場合、コントローラ20の入力信号処理部303は、ドアエンジン40を駆動して扉部10を開く処理を行う。
【0044】
時間記憶部304は、接点301の接触状態と非接触状態の切り替わり、および、検出可能状態判定部302の判定による検出可能状態と検出不可能状態の切り替わり、に関する各種の時間情報を記憶する。詳細は後述するが、具体的には次の三種類の時間情報を記憶する。
【0045】
(1)ON時遷移時間:接点301が非接触状態(OFF状態)から接触状態(ON状態)に切り替わった後、検出不可能状態から検出可能状態に切り替わるまでの時間
(2)OFF時遷移時間:接点301が接触状態(ON状態)から非接触状態(OFF状態)に切り替わった後、検出可能状態から検出不可能状態に切り替わるまでの時間
(3)安定時間:検出不可能状態から検出可能状態に切り替わった後、接点301が接触状態(ON状態)から非接触状態(OFF状態)に切り替わるまでの時間
また、時間記憶部304は、補足情報として、上記の記憶処理を実行した時刻を記憶する。
【0046】
遷移時間判定部305は、ON時遷移時間およびOFF時遷移時間が所定の閾値を超えるか否かを判定する。閾値は、ON時遷移時間とOFF時遷移時間で同じでも異なっていてもよい。時間記憶部304は、遷移時間判定部305の判定結果を受け、閾値を超えるON時遷移時間またはOFF時遷移時間があった場合に上記の三種類の時間情報を記憶する。換言すれば、ON時遷移時間およびOFF時遷移時間が共に閾値以下の場合は時間情報を記憶しなくてもよい。これにより、時間記憶部304や後述する共有メモリ4の必要容量を低減できる。
【0047】
基準調整部306は、遷移時間判定部305の判定結果に基づいて、検出可能状態判定部302における検出可能状態および検出不可能状態の判定基準を調整する。具体的な内容は後述する。
【0048】
バス2には、複数の構成機器3で共用される共有メモリ4が接続される。この共有メモリ4は、自動ドア100各部に関するあらゆる種類の情報を格納可能な汎用メモリである。各構成機器3の時間記憶部304に記憶されるべき時間情報は共有メモリ4にも記憶できる。特に、ある構成機器3の時間情報を全て共有メモリ4に記憶する場合は、その構成機器3には時間記憶部304を設けなくてもよい。
【0049】
具体的な内容は後述するが、時間記憶部304や共有メモリ4に記憶された時間情報は、送信部としての外部インターフェース36を介して自動ドア100の外部に送信できる。また、時間記憶部304や共有メモリ4に記憶された時間情報は、表示部としての表示装置37で表示できる。
【0050】
図4は、接点301における典型的な信号入力パターンを模式的に示す。
図4(A)は通常時の信号入力パターンを、
図4(B)はチャタリング発生時の信号入力パターンを、
図4(C)および(D)は突発的なノイズによる信号入力パターンをそれぞれ示す。
【0051】
図4(A)の信号入力パターンは、時間記憶部304に関して示した次の三つの時間に区分される。
(1)ON時遷移時間:接点301が時刻T1にOFFからONに切り替わった後、検出可能状態判定部302が時刻T2に検出可能状態になったことを判定するまでの時間、すなわちT2-T1。
(2)OFF時遷移時間:接点301が時刻T3にONからOFFに切り替わった後、検出可能状態状態判定部302が時刻T4に検出不可能状態になったことを判定するまでの時間、すなわちT4-T3。
(3)安定時間:時刻T2に検出可能状態になった後、時刻T3に接点301がONからOFFに切り替わるまでの時間、すなわちT3-T2。
【0052】
ON時遷移時間およびOFF時遷移時間は、
図4(B)に関して詳述するように、接点301で発生したチャタリング等の収束に必要な時間である。一方、チャタリング等の問題がない安定時間中は、構成機器3の入力信号処理部303に有効な信号が入力され、そこでの処理に利用される。
【0053】
図4(B)では、接点301でのチャタリングの発生により、ON時遷移時間およびOFF時遷移時間が、
図4(A)の通常時よりも長くなる。これはチャタリングの影響により、検出可能状態判定部302の判定に要する時間が長くなるためである。いくつかの具体的な判定基準を例示して説明する。
【0054】
検出可能状態判定部302の判定基準の一つの例は、所定間隔で接点301からの信号がONになっているか否かを確認し、N回連続でONになっていることが確認された場合に検出可能状態と判定し、そうでない場合に検出不可能状態と判定する。この判定基準に含まれるパラメータは任意に設定できるが、例えば信号確認間隔を1msとし連続ON回数を20回とする。この場合、チャタリングのない
図4(A)では、時刻T1で接点301がONに切り替わった後はON状態がそのまま維持されるため、T1から連続20回のONが検出され、T1から最短の20ms後のT2で検出可能状態と判定される。一方、
図4(B)では、接点301が時刻T1でONに切り替わった直後にチャタリングが発生しており、その中に散在するOFF信号の影響でON検出の連続回数が20に到達する前に途切れてしまう。このため、チャタリングが落ち着くまでは検出可能状態の判定がなされず、ON時遷移時間(T2-T1)が長くなる。同様に、OFF時遷移時間(T4-T3)も、チャタリングの発生によって長くなる。このように、チャタリングが発生すると、ON時遷移時間およびOFF時遷移時間が通常時に比べて長くなるため、その時間情報を時間記憶部304や共有メモリ4に記憶することで、チャタリングが発生している接点301を特定でき、迅速な保守対応が可能となる。なお、安定時間(T3-T2)は、入力信号処理部303の処理内容に依存するため、
図4(A)と(B)で、その長短は一概に決まらない。
【0055】
検出可能状態判定部302の判定基準の他の例として、所定間隔で接点301からの信号がONかOFFかを検出し、ONが検出されたら+1をカウントし、OFFが検出されたら-1をカウントし、そのカウントの合計がNに到達した場合に検出可能状態と判定し、そうでない場合に検出不可能状態と判定する。この判定基準に含まれるパラメータも任意に設定できるが、例えば先の例と同様に信号確認間隔を1msとしNを20とする。また、ON検出時のプラスカウント量と、OFF検出時のマイナスカウント量を変えてもよい。OFF検出時のマイナスカウント量の絶対値を大きくすれば、チャタリング発生時に検出可能状態判定のための20カウントに到達しづらくなるため、チャタリングが十分に収束するまで入力信号処理部303の処理が開始されない。つまり、ON時遷移時間は長くなるものの、入力信号処理部303はチャタリングが十分に除去された信号を扱えるので、信号処理の安定性が向上する。同様の効果を得るために、Nの値を大きくしてもよい。例えば、Nを40とすれば、Nが20の場合と比べてON時遷移時間が長くなるものの、信号処理の安定性が向上する。なお、信号処理確認間隔を1msとした場合、Nが40の場合と20の場合の判定時間差は最小で20msと極めて小さく、自動ドア100の開閉制御や通行者の安全確保に支障を及ぼすものではない。
【0056】
以上で挙げた検出可能状態判定部302の判定基準は例に過ぎず、チャタリング等の接点301に発生する問題の収束を判定できるものであればどのようなものでもよい。また、上記では、ON時遷移時間に関わる検出可能状態の判定基準と、OFF時遷移時間に関わる検出不可能状態の判定基準を同一のものとしたが、異なる判定基準としてもよい。また、同一の判定基準とした場合も、異なるパラメータを設定してもよい。
【0057】
図4(C)は、突発的なノイズ等により検出可能状態判定部302の検出可能状態判定基準が偶然に充足されてしまった誤検出の例を示す。ON時遷移時間(T2-T1)は、
図4(B)のような接点301でのチャタリングの発生の可能性に加え、ノイズ自体がチャタリングと類似の信号パターンを示す可能性もあるため、
図4(A)の通常時と比較すると長くなる傾向がある。同様に、OFF時遷移時間(T4-T3)も長くなる傾向がある。また、正規の入力信号ではないため、信号の継続時間は概して短く、安定時間(T3-T2)は極めて短くなる。
【0058】
図4(D)は、
図4(C)と同様に突発的なノイズ等が入力されたものの、検出可能状態判定部302の検出可能状態判定基準が充足されることなく未検出のまま収束した例を示す。時刻T1で接点301がONになったものの、その後のチャタリングの発生や、ノイズ自体の信号パターンによってON状態が安定せず、検出可能状態判定基準が充足されないまま、時刻T2で接点302がOFF状態に収束する。この時刻T2は、
図4(A)~(C)のT2とは意味合いが異なり、むしろT3に近い意味合いを持つが、時間記憶部304は、このT2-T1をON時遷移時間として記憶する。信号パターンはノイズの態様にも依存するが、多くの場合は図示されるように信号がONとOFFの間で不安定に遷移する期間が長く続くと想定されるため、ON時遷移時間は概して長くなる。また、この例では、安定時間およびOFF時遷移時間が存在しない。
【0059】
図5は、以上のON時遷移時間、安定時間、OFF時遷移時間の傾向をまとめた表である。詳細は上述した通りだが、次の傾向がある。(A)通常時は、ON遷移時間は短い、安定時間は不定、OFF時遷移時間は短い。(B)チャタリング発生時は、ON遷移時間は長い、安定時間は不定、OFF時遷移時間は長い。(C)ノイズ混入時(誤検出時)は、ON遷移時間は長い、安定時間は短い、OFF時遷移時間は長い。(D)ノイズ混入時(未検出時)は、ON遷移時間は長い、安定時間はない(ゼロ)、OFF時遷移時間はない(ゼロ)。
【0060】
図5に示される傾向に基づき、時間記憶部304や共有メモリ4に記憶された時間情報から、各構成機器3の接点301の状態を的確に確認または診断でき、必要に応じて迅速な保守対応を取れる。
図5(A)の傾向を示す接点301は、正常に稼働しており問題ない。
図5(B)の傾向を示す接点301は、チャタリングが多く発生しており、修理や交換等の保守対応が求められる。
図5(C)や(D)の傾向を示す接点301は、それ自体には問題ない場合もあるが、ノイズが混入しやすい状況にあるため、接点301周囲の配線の見直しや電磁ノイズ対策が必要となる。また、自動ドア100の複数の構成機器3の接点301で共通して
図5(C)や(D)の傾向が見られる場合は、自動ドア100の設置環境自体の問題が疑われる。このような診断は、自動ドア100の表示装置37に時間情報を表示することで行ってもよいし、外部インターフェース36を介して接続された外部機器36Aに時間情報を表示することで行ってもよい。また、診断は時間情報を確認する作業員等が行えるが、上記の傾向を踏まえた所定のアルゴリズムに基づいて診断支援情報を自動的に生成し、作業員等に対して表示してもよい。なお、前述した通り、遷移時間判定部305の閾値判定によって、ON時遷移時間またはOFF時遷移時間が所定の閾値を超えた場合に、時間情報が時間記憶部304や共有メモリ4に記憶される。したがって、適当な閾値設定により、両遷移時間が短い
図5(A)の通常時の時間情報の記憶を省略して、必要記憶容量を低減できる。
【0061】
また、時間記憶部304や共有メモリ4は、上記のON時遷移時間、安定時間、OFF時遷移時間を記憶する際に、その時刻を記憶する。これにより、
図5(B)のようなチャタリングが発生しやすい時間帯や、
図5(C)や(D)のようなノイズが混入しやすい時間帯を把握して、的確に対処できる。例えば、特定の時間帯でチャタリングが多く発生する場合は、その時間帯に合わせて後述する基準調整部306で検出可能状態判定基準を調整し、チャタリングを収束させるための時間を通常よりも長めに取ることで、信号処理の安定性を向上できる。また、特定の時間帯にノイズが多く混入することが分かると、その原因究明を円滑にできる。例えば、一日の中の日照条件の移り変わりに伴うノイズは特定の時間帯に集中して発生しやすい。
【0062】
また、コントローラ20のメモリや、共有メモリ4には、自動ドア100の稼働に関する各種の稼働情報が時刻情報と共に記憶されている。これらの稼働情報を、同じ時間帯に記憶されたON時遷移時間、安定時間、OFF時遷移時間等の時間情報と対照することで、チャタリング発生やノイズ混入の原因を多様な観点から究明できる。なお、これらの時間情報と稼働情報は同一のテーブルに格納してもよく、その場合は抽出したい時刻条件を指定することで、特定時間帯の時間情報と稼働情報を同時に抽出できる。
【0063】
以下は、時間情報と対照可能な自動ドア100の稼働情報の例示である。
・コントローラ20の駆動情報:コントローラ20がドアエンジン40を駆動する際の電圧、電流、1駆動当たりの通電時間等
・構成機器3の稼働情報:起動センサ31や補助センサ32の検出強度、1検出当たりの通電時間、電気錠35Aの施錠/解錠の状態、外部インターフェース36への外部機器36Aの接続状態等
・自動ドア100の動作状態に関する情報:例えば、扉部10の動作状態に応じた「全閉待機時」、「全開待機時」、「停止中」(全閉待機時、全開待機時以外で扉部10が停止中)、「閉作動中」、「開作動中」、「開閉作動中」等の情報
・自動ドア100に発生した異常に関する情報
・扉部10の開閉状態に関する情報:例えば、扉部10が全閉位置まで到達したときにコントローラ20が出力する「全閉リミット」、扉部10が全開位置まで到達したときに出力する「全開リミット」等の情報
・自動ドア100の動作モードに関する情報:例えば、夜間に扉部10の開閉速度を落としたり、扉部10の開駆動のためのセンサ30の検出閾値を上げたりする夜間モードや、休日のオフィス等で自動ドア100の屋内側から近づく通行者に対してはセンサ30に基づく開駆動を許容し、自動ドア100の屋外側から近づく通行者に対しては開駆動のために認証装置34による認証を必要とする休日モード等の情報
・コントローラ20が他の構成機器3を制御する情報
・構成機器3が自動ドア100の駆動等のためにコントローラ20や他の構成機器3に送信する情報:起動センサ31や補助センサ32の検出情報、各センサ30が複数の検出スポットを有する場合に物体が実際に検出された検出スポットの情報、各国の安全規格に則り補助センサ32が開閉の度に動作テストする際のテスト結果(テストが失敗した場合は成功するまでのリトライ回数や時間も含む)等
【0064】
以上のような稼働情報との対照により、コントローラ20の駆動情報が特定の値や状態にあるときにチャタリングやノイズが増加する、構成機器3の稼働情報が特定の値や状態にあるときにチャタリングやノイズが増加する、自動ドア100が特定の動作状態にあるときにチャタリングやノイズが増加する、自動ドア100に発生する特定の異常とチャタリングやノイズに相関がある、扉部10が特定の開閉状態にあるときにチャタリングやノイズが増加する、自動ドア100が特定の動作モードにあるときチャタリングやノイズが増加する、コントローラ20が特定の構成機器3に特定の制御情報を送信する際にチャタリングやノイズが増加する、特定の構成機器3がコントローラ20や他の構成機器3に特定の情報を送信する際にチャタリングやノイズが増加する、等の自動ドア100の診断に有用な知見を得ることができる。逆に、チャタリングやノイズが、コントローラ20の駆動情報、構成機器3の稼働情報、自動ドア100の動作状態、自動ドア100に発生した異常、扉部10の開閉状態、自動ドア100の動作モード、コントローラ20が他の構成機器3を制御する情報、構成機器3が送信する情報に及ぼす影響を分析することもできる。例えば、
図4(C)のノイズによる誤検出のパターンが確認された時刻に、扉部10が実際に開閉していれば、その誤検出に基づいて扉部10が誤開閉したことが分かる。また、自動ドア100内から取得できる稼働情報に限らず、インターネット等の公衆情報通信網を介して自動ドア100外から取得できる天気等の外部環境情報を時間情報と対照してもよい。これにより、特定の外部環境条件にあるときにチャタリングやノイズが増加する等の知見を得ることができる。
【0065】
以上、ON時遷移時間、安定時間、OFF時遷移時間等の時間情報を利用した各構成機器3の診断について述べたが、これらの時間情報を利用して各構成機器3の検出可能状態判定パラメータを調整することで、チャタリング/ノイズ耐性および信号処理の安定性を状況に応じて自動的に変えることができる。具体的には、
図3の遷移時間判定部305が、ON時遷移時間またはOFF時遷移時間が閾値を超えたと判定した場合、基準調整部306が検出可能状態判定部302の判定基準を構成するパラメータを自動的に調整する。
図5(B)~(D)で示したように、ON時遷移時間またはOFF時遷移時間が長い場合は接点301にチャタリングやノイズが発生しており、後段の入力信号処理部303で安定した信号処理を行えない場合がある。そこで、チャタリングやノイズを収束させるための時間が通常よりも長くなるように、検出可能状態判定基準のパラメータを調整する。具体的には、先に例として示したように、判定カウント数Nを大きくする、OFF検出時のマイナスカウント量の絶対値を大きくする、等によってチャタリングおよびノイズへの耐性を高め、入力信号処理部303での信号処理の安定性を向上できる。
【0066】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0067】
図4(B)はチャタリング発生時の入力信号パターンとして説明したが、信号を出力する構成機器3の劣化によって、これと似た入力信号パターンが現れることがある。例えば、信号出力側の構成機器3としての起動センサ31の信号出力部等の劣化によって検出信号自体が
図4(B)のように不安定になる場合があり、それが信号入力側の構成機器3としてのコントローラ20等の接点301の入力信号パターンとして現れる。したがって、
図4(B)の入力信号パターンを利用して、接点301のチャタリングだけでなく、信号出力側の構成機器3の劣化も診断できる。なお、両者を区別するためには異なる構成機器3からの入力信号パターンを比較すればよい。特定の構成機器3からの入力パターンのみが
図4(B)のようになる場合は、その構成機器3の劣化が疑われる。一方、どの構成機器3からの入力パターンも
図4(B)のようになる場合は、それらの信号出力側の構成機器3の劣化ではなく、信号入力側の構成機器3の接点301でのチャタリング発生が疑われる。
【0068】
実施形態では、自動ドア100の構成機器3の接点301に関して説明したが、本発明は、自動ドアに限らず、信号入力のための機械的接点を持つ構成機器を備える任意の電子機器に適用できる。
【0069】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0070】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0071】
2 バス、3 構成機器、4 共有メモリ、20 コントローラ、30 センサ、31 起動センサ、32 補助センサ、33 操作盤、34 認証装置、35 電気錠コントローラ、35A 電気錠、36 外部インターフェース、36A 外部機器、37 表示装置、100 自動ドア、301 接点、302 検出可能状態判定部、303 入力信号処理部、304 時間記憶部、305 遷移時間判定部、306 基準調整部。