(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】クライオポンプシステムおよびその監視方法
(51)【国際特許分類】
F04B 37/08 20060101AFI20240912BHJP
F04B 37/16 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F04B37/08
F04B37/16 A
(21)【出願番号】P 2020194876
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 走
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-301617(JP,A)
【文献】特開2011-174376(JP,A)
【文献】米国特許第05971711(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 25/00-37/20;41/00-41/06
F04B 49/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空プロセス装置に搭載されるクライオポンプシステムであって、
複数のクライオポンプ
であって、各クライオポンプが当該クライオポンプ上の複数の機器と接続された入出力回路を有する複数のクライオポンプと、
前記
複数のクライオポンプを制御するクライオポンプコントローラと、
前記
入出力回路と前記クライオポンプコントローラを接続し、前記クライオポンプに関する情報を前記クライオポンプと前記クライオポンプコントローラとの間で伝送するネットワークと、
前記ネットワークに接続され、前記ネットワークを介して伝送される前記クライオポンプに関する情報を表示するクライオポンプモニタと、を備え、
前記クライオポンプコントローラは、前記真空プロセス装置の筐体内に配置され、前記クライオポンプモニタは、前記真空プロセス装置の筐体外に配置されることを特徴とするクライオポンプシステム。
【請求項2】
前記クライオポンプコントローラは、前記真空プロセス装置に設けられるホストコントローラに接続可能であり、
前記クライオポンプモニタは、前記ホストコントローラを介することなく前記ネットワークに接続されることを特徴とする請求項1に記載のクライオポンプシステム。
【請求項3】
前記真空プロセス装置の筐体外に配置され、前記ネットワークに接続される少なくとも1つの圧縮機をさらに備え、
前記クライオポンプモニタは、前記圧縮機に設置されることを特徴とする請求項1または2に記載のクライオポンプシステム。
【請求項4】
前記クライオポンプモニタは、前記ネットワークを介して伝送される前記圧縮機に関する情報を表示することを特徴とする請求項3に記載のクライオポンプシステム。
【請求項5】
前記クライオポンプモニタは、前記クライオポンプシステムを操作するための操作部を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のクライオポンプシステム。
【請求項6】
前記クライオポンプモニタは、前記複数のクライオポンプを制御する前記クライオポンプコントローラに接続されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のクライオポンプシステム。
【請求項7】
真空プロセス装置に搭載されるクライオポンプシステムを監視する方法であって、
前記クライオポンプシステムは、
各クライオポンプが当該クライオポンプ上の複数の機器と接続された入出力回路を有する複数のクライオポンプと、前記真空プロセス装置の筐体内に配置され、前記
複数のクライオポンプを制御するクライオポンプコントローラと、前記
入出力回路と前記クライオポンプコントローラを接続し、前記クライオポンプに関する情報を前記クライオポンプと前記クライオポンプコントローラとの間で伝送するネットワークと、を備え、
前記方法は、
クライオポンプモニタを前記ネットワークに接続し前記真空プロセス装置の筐体外に配置することと、
前記ネットワークを介して伝送される前記クライオポンプに関する情報を前記クライオポンプモニタに表示することと、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライオポンプシステムおよびその監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クライオポンプは、極低温に冷却されたクライオパネルに気体分子を凝縮または吸着により捕捉して排気する真空ポンプである。クライオポンプは半導体回路製造プロセス等に要求される清浄な真空環境を実現するために真空プロセス装置に搭載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、真空プロセス装置に搭載されるクライオポンプシステムについて検討したところ、以下の課題を認識するに至った。真空プロセス装置の稼働中にクライオポンプに関する情報を見ることができれば便利である。そうした情報は、とくに、何らかの異常が起こったとき、異常の原因の特定や正常状態への回復に役立つ。そこで、情報を表示する表示部をクライオポンプに一体的に組み込む案が考えられる。しかしながら、このようにしても、現実には稼働中に情報を見られないことが多い。なぜなら、クライオポンプは真空プロセス装置内に収められるので、表示部を設けたとしても、たいていの場合、外から見えない場所に隠れてしまうからである。そのうえ、真空プロセス装置で使用される高電圧や高エネルギービームなど危険への接触を避けるという安全上の理由により、真空プロセス装置の稼働中、クライオポンプなど真空プロセス装置の内部構成要素には人が物理的にアクセスしないことが要請される。真空プロセス装置の稼働を停止すれば、クライオポンプに近づいて表示部を見られるであろうが、装置の稼働停止は生産性の低下を招くから望ましくない。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、クライオポンプに関する情報を真空プロセス装置の稼働中に容易に確認できるクライオポンプシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によると、真空プロセス装置に搭載されるクライオポンプシステムが提供される。クライオポンプシステムは、少なくとも1つのクライオポンプと、クライオポンプを制御するクライオポンプコントローラと、クライオポンプとクライオポンプコントローラを接続し、クライオポンプに関する情報をクライオポンプとクライオポンプコントローラとの間で伝送するネットワークと、ネットワークに接続され、ネットワークを介して伝送されるクライオポンプに関する情報を表示するクライオポンプモニタと、を備える。クライオポンプコントローラは、真空プロセス装置の筐体内に配置され、クライオポンプモニタは、真空プロセス装置の筐体外に配置される。
【0007】
本発明のある態様によると、真空プロセス装置に搭載されるクライオポンプシステムを監視する方法が提供される。クライオポンプシステムは、少なくとも1つのクライオポンプと、真空プロセス装置の筐体内に配置され、クライオポンプを制御するクライオポンプコントローラと、クライオポンプとクライオポンプコントローラを接続し、クライオポンプに関する情報をクライオポンプとクライオポンプコントローラとの間で伝送するネットワークと、を備える。方法は、クライオポンプモニタをネットワークに接続し真空プロセス装置の筐体外に配置することと、ネットワークを介して伝送されるクライオポンプに関する情報をクライオポンプモニタに表示することと、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クライオポンプに関する情報を真空プロセス装置の稼働中に容易に確認できるクライオポンプシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係るクライオポンプシステムを示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係るクライオポンプシステムに使用されうるクライオポンプの一例を示す模式図である。
【
図3】実施の形態に係るクライオポンプシステムに使用されうる圧縮機の一例を示す模式図である。
【
図4】実施の形態に係るクライオポンプシステムに使用されうるクライオポンプモニタの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。説明および図面において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施の形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0012】
図1は、実施の形態に係るクライオポンプシステム100を示す模式図である。クライオポンプシステム100は、真空プロセス装置200に搭載され、真空プロセス装置200の真空容器202を所望の真空度に真空排気するために使用される。真空プロセス装置200は、真空容器202内の真空環境で例えばウェハなどの被処理物を所望の真空プロセスで処理するように構成される。真空プロセス装置200は、例えばイオン注入装置、スパッタリング装置、蒸着装置、またはその他の真空プロセス装置であってもよい。
【0013】
真空プロセス装置200は、真空容器202に加えて、ホストコントローラ204と、筐体206とを備える。ホストコントローラ204は、真空プロセス装置200とクライオポンプシステム100との通信を制御するように構成される。ホストコントローラ204は、真空プロセス装置200を制御する制御装置として構成され、またはそうした制御装置の一部を構成してもよい。筐体206は、真空プロセス装置200の外装を形成し、真空プロセス装置200の様々な構成要素を収納する。真空容器202とホストコントローラ204は、筐体206内に配置される。
【0014】
筐体206は、真空プロセス装置200の全面を覆うエンクロージャーであってもよい。筐体206は、真空プロセス装置200の構成要素が配設されこれらを支持するフレーム構造と、真空プロセス装置200の内部を外から仕切るパネル部材と、真空プロセス装置200の内部に外からアクセスするための開閉可能な扉とを備えてもよい。パネル部材と扉はフレーム構造に装着されていてもよい。筐体206は、真空プロセス装置200で発生しうる放射線が外に漏れるのを防ぐために、例えば鉛などの放射線遮蔽材を有してもよい。
【0015】
あるいは、筐体206は、真空プロセス装置200の全面を覆うものでなくてもよい。筐体206の一部が開放され、真空プロセス装置200の一部が外から見えてもよい。
【0016】
クライオポンプシステム100は、少なくとも1つのクライオポンプ10と、少なくとも1つの圧縮機12と、クライオポンプコントローラ110と、ネットワーク120と、クライオポンプモニタ130とを備える。
【0017】
クライオポンプ10は、真空プロセス装置200の真空容器202を真空排気するために真空容器202に取り付けられる。よって、クライオポンプ10は、真空容器202とともに真空プロセス装置200の筐体206内に配置される。実施の形態に係るクライオポンプシステム100に使用されうるクライオポンプ10の例示的な構成については、
図2を参照して後述する。
【0018】
圧縮機12は、クライオポンプ10に設けられた膨張機(後述)に冷媒ガスを給排するために設けられている。圧縮機12は、ガスライン13によりクライオポンプ10の膨張機と接続され、真空プロセス装置200の筐体206外に配置される。ガスライン13は、圧縮機12から膨張機に冷媒ガスを供給するように圧縮機12を膨張機に接続する高圧ライン13aと、膨張機から圧縮機12に冷媒ガスを回収するように圧縮機12を膨張機に接続する低圧ライン13bとを備える。実施の形態に係るクライオポンプシステム100に使用されうる圧縮機12の例示的な構成については、
図3を参照して後述する。
【0019】
なお、クライオポンプシステム100には、複数のクライオポンプ10、例えば数台から十数台、またはそれより多数のクライオポンプ10が設けられてもよい。また、これらクライオポンプ10に冷媒ガスを給排するために複数の圧縮機12がクライオポンプシステム100に設けられてもよい。
【0020】
クライオポンプコントローラ110は、ホストコントローラ204から受信する指令に基づいてクライオポンプシステム100を統括的に制御するように構成される。また、クライオポンプコントローラ110は、クライオポンプシステム100に関する情報をホストコントローラ204に送信するように構成される。よって、クライオポンプコントローラ110は、ホストコントローラ204からの指令に基づいてクライオポンプ10と圧縮機12を制御することができ、クライオポンプ10に関する情報と圧縮機12に関する情報をホストコントローラ204に送信することができる。
【0021】
クライオポンプコントローラ110は、第1通信線208によりホストコントローラ204に通信可能に接続される。第1通信線208は、例えばRS-232Cなどの通信ケーブルであってもよい。クライオポンプコントローラ110は、ホストコントローラ204と同様に、真空プロセス装置200の筐体206内に配置される。
【0022】
クライオポンプコントローラ110の内部構成は、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、図では適宜、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。たとえば、クライオポンプコントローラ110は、CPU(Central Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。
【0023】
ネットワーク120は、クライオポンプ10とクライオポンプコントローラ110を通信可能に接続する。クライオポンプシステム100は、ネットワーク120を介して、クライオポンプ10に関する情報をクライオポンプ10とクライオポンプコントローラ110との間で伝送する。クライオポンプ10は、第2通信線122によりクライオポンプコントローラ110に接続される。第2通信線122は、例えばRS-485などの通信ケーブルであってもよい。
【0024】
ネットワーク120は、さらに、圧縮機12とクライオポンプコントローラ110を通信可能に接続する。クライオポンプシステム100は、ネットワーク120を介して、圧縮機12に関する情報を圧縮機12とクライオポンプコントローラ110との間で伝送する。圧縮機12は、第3通信線123によりクライオポンプコントローラ110に接続される。第3通信線123は、例えばRS-485などの通信ケーブルであってもよい。
【0025】
クライオポンプモニタ130は、ネットワーク120に接続され、ネットワーク120を介して伝送されるクライオポンプ10に関する情報を表示するように構成される。これに加えて、またはこれに代えて、クライオポンプモニタ130は、ネットワーク120を介して伝送される圧縮機12に関する情報を表示するように構成されてもよい。
【0026】
クライオポンプモニタ130は、ホストコントローラ204を介することなくネットワーク120に接続される。つまり、クライオポンプモニタ130は、真空プロセス装置200のホストコントローラ204とは通信しないように構成される。この実施の形態では、クライオポンプモニタ130は、第4通信線124によりクライオポンプコントローラ110に接続される。第4通信線124は、例えばRS-485などの通信ケーブルであってもよい。
【0027】
クライオポンプモニタ130は、真空プロセス装置200の筐体206外に配置される。クライオポンプモニタ130は、筐体206から離れた場所に配置される。この実施の形態では、クライオポンプモニタ130は、圧縮機12またはその近傍に設置される。クライオポンプモニタ130は、圧縮機12に取り外し可能に装着されてもよい。あるいは、クライオポンプモニタ130は、圧縮機12の近傍に設けられたモニタ設置面に設置されてもよい。モニタ設置面は、例えば、圧縮機12の近傍の壁面、または圧縮機12の近傍にある機器の表面であってもよい。クライオポンプモニタ130は、作業者が携帯可能な機器として構成されてもよい。
【0028】
実施の形態に係るクライオポンプシステム100に使用されうるクライオポンプモニタ130の例示的な構成については、
図4を参照して後述する。
【0029】
図2は、実施の形態に係るクライオポンプシステム100に使用されうるクライオポンプ10の一例を示す模式図である。クライオポンプ10は、膨張機14と、クライオポンプ容器16と、放射シールド18と、クライオパネル20とを備える。また、クライオポンプ10は、圧力センサ21と、ラフバルブ24と、パージバルブ26と、ベントバルブ28とを備え、これらはクライオポンプ容器16に設置されている。
【0030】
圧縮機12は、冷媒ガスを膨張機14から回収し、回収した冷媒ガスを昇圧して、再び冷媒ガスを膨張機14に供給するよう構成されている。膨張機14は、コールドヘッドとも称され、圧縮機12とともに極低温冷凍機を構成する。膨張機14を指して「冷凍機」と称する場合もある。圧縮機12と膨張機14との間の冷媒ガスの循環が膨張機14内での冷媒ガスの適切な圧力変動と容積変動の組み合わせをもって行われることにより、寒冷を発生する熱力学的サイクルが構成され、膨張機14は極低温冷却を提供することができる。冷媒ガスは、通例はヘリウムガスであるが、適切な他のガスが用いられてもよい。理解のために、冷媒ガスの流れる方向を
図1に矢印で示す。極低温冷凍機は、一例として、二段式のギフォード・マクマホン(Gifford-McMahon;GM)冷凍機であるが、パルス管冷凍機、スターリング冷凍機、またはそのほかのタイプの極低温冷凍機であってもよい。
【0031】
クライオポンプ容器16は、クライオポンプ10の真空排気運転中に真空を保持し、周囲環境の圧力(例えば大気圧)に耐えるように設計された真空容器である。クライオポンプ容器16は、吸気口17を有するクライオパネル収容部16aと、冷凍機収容部16bとを有する。クライオパネル収容部16aは、吸気口17が開放され、その反対側が閉塞されたドーム状の形状を有し、この内部に放射シールド18とクライオパネル20が収容される。冷凍機収容部16bは、円筒状の形状を有し、その一端が膨張機14の室温部に固定され、他端がクライオパネル収容部16aに接続され、内部に膨張機14が挿入されている。また、圧力センサ21は、クライオポンプ容器16内の圧力を測定する。
【0032】
放射シールド18は、膨張機14の第1冷却ステージに熱的に結合され、第1冷却温度(例えば80K~120K)に冷却される。クライオパネル20は、膨張機14の第2冷却ステージに熱的に結合され、第1冷却温度より低い第2冷却温度(例えば10K~20K)に冷却される。放射シールド18は、クライオパネル20を囲むようにしてクライオポンプ容器16内に配置され、クライオポンプ容器16および周囲環境からクライオパネル20への入熱を遮蔽する。クライオポンプ10の吸気口17から進入する気体はクライオパネル20に凝縮または吸着により捕捉される。また、クライオポンプ容器16内には、放射シールド18の温度を測定する第1温度センサ22と、クライオパネル20の温度を測定する第2温度センサ23とが設けられている。放射シールド18とクライオパネル20の配置や形状などクライオポンプ10の構成は、種々の公知の構成を適宜採用することができるので、ここでは詳述しない。
【0033】
ラフバルブ24は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容部16bに取り付けられている。ラフバルブ24は、クライオポンプ10の外部に設置されたラフポンプ(図示せず)に接続される。ラフポンプは、クライオポンプ10をその動作開始圧力まで真空引きをするための真空ポンプである。クライオポンプコントローラ110の制御によりラフバルブ24が開放されるときクライオポンプ容器16がラフポンプに連通され、ラフバルブ24が閉鎖されるときクライオポンプ容器16がラフポンプから遮断される。ラフバルブ24を開きかつラフポンプを動作させることにより、クライオポンプ10を減圧することができる。
【0034】
パージバルブ26は、クライオポンプ容器16、例えばクライオパネル収容部16aに取り付けられている。パージバルブ26は、クライオポンプ10の外部に設置されたパージガス供給装置(図示せず)に接続される。クライオポンプコントローラ110の制御によりパージバルブ26が開放されるときパージガスがクライオポンプ容器16に供給され、パージバルブ26が閉鎖されるときクライオポンプ容器16へのパージガス供給が遮断される。パージガスは例えば窒素ガス、またはその他の乾燥したガスであってもよく、パージガスの温度は、たとえば室温に調整され、または室温より高温に加熱されていてもよい。パージバルブ26を開きパージガスをクライオポンプ容器16に導入することにより、クライオポンプ10を昇圧することができる。また、クライオポンプ10を極低温から室温またはそれより高い温度に昇温することができる。
【0035】
ベントバルブ28は、クライオポンプ容器16、例えば冷凍機収容部16bに取り付けられている。ベントバルブ28は、クライオポンプ10の内部から外部に流体を排出するために設けられている。ベントバルブ28から排出される流体は基本的にはガスであるが、液体または気液の混合物であってもよい。ベントバルブ28は、クライオポンプコントローラ110の制御により開閉可能である。それとともに、ベントバルブ28は、クライオポンプ容器16の内外の差圧によって機械的に開きうる。ベントバルブ28は、クライオポンプ容器16内に過剰な圧力が発生したときこの圧力を外部に解放するための安全弁としても機能するよう構成されている。
【0036】
また、膨張機14には、膨張機14を駆動する可変速の膨張機モータ30が設けられている。膨張機モータ30はインバータを有し、クライオポンプコントローラ110の制御によりモータ運転周波数を変化させることができる。
【0037】
クライオポンプコントローラ110は、クライオポンプ10の真空排気運転において、放射シールド18(またはクライオパネル20)の冷却温度に基づいて、膨張機モータ30を制御してもよい。例えば、クライオポンプコントローラ110は、放射シールド18の冷却温度を一定とするように、膨張機モータ30の運転周波数を制御してもよい。
【0038】
また、クライオポンプコントローラ110は、クライオポンプ10の再生運転においては、クライオポンプ容器16内の圧力に基づいて(または、必要に応じて、クライオパネル20の温度およびクライオポンプ容器16内の圧力に基づいて)、ラフバルブ24、パージバルブ26、ベントバルブ28、膨張機モータ30を制御してもよい。
【0039】
クライオポンプ10は、クライオポンプ10とクライオポンプコントローラ110との送受信を集約する入出力回路32を備える。入出力回路32は、例えばI/Oモジュール、またはリモートI/Oユニットであってもよい。入出力回路32は、クライオポンプ10の各機器、例えば、圧力センサ21、第1温度センサ22、第2温度センサ23、ラフバルブ24、パージバルブ26、ベントバルブ28、膨張機モータ30と信号を送受信するようにこれら各機器と電気的に接続される。また、入出力回路32は、第2通信線122によりクライオポンプコントローラ110と通信可能に接続される。
【0040】
したがって、クライオポンプ10は、圧力センサ21によるクライオポンプ容器16内の測定圧力を示す測定圧力信号を入出力回路32(および第2通信線122)を介してクライオポンプコントローラ110に送信する。クライオポンプ10は、第1温度センサ22および第2温度センサ23それぞれの測定温度を示す測定温度信号を入出力回路32を介してクライオポンプコントローラ110に送信する。また、クライオポンプ10は、各バルブ(すなわち、ラフバルブ24、パージバルブ26、ベントバルブ28)の開閉状態を示すバルブ状態信号を入出力回路32を介してクライオポンプコントローラ110に送信する。クライオポンプ10は、膨張機モータ30のオンオフ状態と運転周波数を示すモータ状態信号を入出力回路32を介してクライオポンプコントローラ110に送信する。
【0041】
また、クライオポンプ10は、各バルブへの動作指令を示すクライオポンプコントローラ110からのバルブ制御信号を入出力回路32で受信し、入出力回路32はこのバルブ制御信号を対応するバルブに送信する。バルブ制御信号を受信したバルブは、バルブ制御信号に従って、開閉される。同様に、クライオポンプ10は、膨張機モータ30への動作指令を示すクライオポンプコントローラ110からのモータ制御信号を入出力回路32で受信し、入出力回路32はこのモータ制御信号を膨張機モータ30に送信する。膨張機モータ30は、モータ制御信号に従って、オンオフされ、または運転周波数が制御される。
【0042】
なお、この実施の形態では、個々のクライオポンプ10には、測定圧力、測定温度、各バルブや膨張機モータ30の動作状態など、クライオポンプ10に関する情報を表示する液晶パネルやモニタなどの表示部は設けられていない。
【0043】
図3は、実施の形態に係るクライオポンプシステム100に使用されうる圧縮機12の一例を示す模式図である。圧縮機12は、高圧ガス出口50、低圧ガス入口51、高圧流路52、低圧流路53、第1圧力センサ54、第2圧力センサ55、バイパスライン56、圧縮機本体57、および圧縮機筐体58を備える。
【0044】
高圧ガス出口50は、圧縮機12の作動ガス吐出ポートとして圧縮機筐体58に設置され、低圧ガス入口51は、圧縮機12の作動ガス吸入ポートとして圧縮機筐体58に設置されている。高圧ガス出口50には高圧ライン13aが接続され、低圧ガス入口51には低圧ライン13bが接続される。高圧流路52は、圧縮機本体57の吐出口を高圧ガス出口50に接続し、低圧流路53は、低圧ガス入口51を圧縮機本体57の吸入口に接続する。圧縮機筐体58は、高圧流路52、低圧流路53、第1圧力センサ54、第2圧力センサ55、バイパスライン56、および圧縮機本体57を収容する。圧縮機12は、圧縮機ユニットとも称される。
【0045】
圧縮機本体57は、その吸入口から吸入される作動ガスを内部で圧縮して吐出口から吐出するよう構成されている。圧縮機本体57は、例えば、スクロール方式、ロータリ式、または作動ガスを昇圧するそのほかのポンプであってもよい。圧縮機本体57は、可変速の圧縮機モータ57aを備えてもよい。圧縮機モータ57aはインバータを有し、クライオポンプコントローラ110の制御によりモータ運転周波数を変化させることができる。このようにして、圧縮機本体57は、吐出する作動ガス流量を可変とするよう構成されていてもよい。あるいは、圧縮機本体57は、固定された一定の作動ガス流量を吐出するよう構成されていてもよい。圧縮機本体57は、圧縮カプセルと称されることもある。
【0046】
第1圧力センサ54は、高圧流路52を流れる作動ガスの圧力を測定するよう高圧流路52に配置されている。第2圧力センサ55は、低圧流路53を流れる作動ガスの圧力を測定するよう低圧流路53に配置されている。よって第1圧力センサ54、第2圧力センサ55はそれぞれ、高圧センサ、低圧センサと呼ぶこともできる。
【0047】
バイパスライン56は、膨張機14を迂回して高圧流路52から低圧流路53に作動ガスを還流させるように高圧流路52を低圧流路53に接続する。バイパスライン56には、バイパスライン56を開閉し、またはバイパスライン56を流れる作動ガスの流量を制御するためのリリーフバルブ60が設けられている。リリーフバルブ60は、その出入口間に設定圧以上の差圧が作用するとき開くように構成されている。リリーフバルブ60は、オンオフ弁または流量制御弁であってもよく、例えば電磁弁でもよい。設定圧は、設計者の経験的知見または設計者による実験やシミュレーション等に基づき適宜設定することが可能である。これにより、高圧ライン13aと低圧ライン13bの差圧がこの設定圧を超えて過大となることを防ぐことができる。
【0048】
一例として、リリーフバルブ60は、クライオポンプコントローラ110による制御によって開閉されてもよい。クライオポンプコントローラ110は、測定される高圧ライン13aと低圧ライン13bの差圧を設定圧と比較し、測定差圧が設定圧以上の場合にリリーフバルブ60を開き、測定差圧が設定差圧未満の場合にリリーフバルブ60を閉じるようにリリーフバルブ60を制御してもよい。クライオポンプコントローラ110は、高圧ライン13aと低圧ライン13bの測定差圧を、第1圧力センサ54と第2圧力センサ55の測定圧力から取得してもよい。別の例として、リリーフバルブ60は、いわゆる安全弁として作動するように構成されていてもよく、すなわち、出入口間に設定圧以上の差圧が作用するとき機械的に開放されてもよい。
【0049】
また、この実施の形態では、圧縮機12は、圧縮機12を操作するための操作パネル62を備える。操作パネル62は、圧縮機筐体58に設置されている。操作パネル62には、操作部63と制御部64と表示部65が設けられている。操作部63は、操作者による圧縮機12への操作を受け付ける例えば操作ボタン等の入力手段を有する。制御部64は、操作パネル62の内部に収められており、操作部63への操作に応じて圧縮機12の各機器、例えば、圧縮機本体57(圧縮機モータ57a)、リリーフバルブ60を制御する。表示部65は、制御部64により制御され、圧縮機12に関する情報を表示する。
【0050】
圧縮機12の制御部64は、圧縮機12とクライオポンプコントローラ110との送受信を集約する入出力回路(例えばI/Oモジュール、またはリモートI/Oユニット)として動作することもできる。したがって、制御部64は、圧縮機12の各機器、例えば、第1圧力センサ54、第2圧力センサ55、圧縮機本体57(圧縮機モータ57a)、リリーフバルブ60と信号を送受信するようにこれら各機器と電気的に接続される。また、制御部64は、第3通信線123によりクライオポンプコントローラ110と通信可能に接続される。
【0051】
したがって、圧縮機12は、第1圧力センサ54および第2圧力センサ55それぞれの測定圧力を示す測定圧力信号を制御部64を介してクライオポンプコントローラ110に送信する。また、圧縮機12は、圧縮機モータ57aのオンオフ状態と運転周波数を示すモータ状態信号と、リリーフバルブ60の開閉状態または開度を示すバルブ状態信号を、制御部64を介してクライオポンプコントローラ110に送信する。
【0052】
また、圧縮機12は、圧縮機モータ57aへの動作指令を示すクライオポンプコントローラ110からのモータ制御信号を制御部64で受信し、制御部64はこのモータ制御信号を圧縮機モータ57aに送信する。圧縮機モータ57aは、モータ制御信号に従って、オンオフされ、または運転周波数が制御される。同様に、圧縮機12は、リリーフバルブ60への動作指令を示すクライオポンプコントローラ110からのバルブ制御信号を制御部64で受信し、制御部64はこのバルブ制御信号をリリーフバルブ60に送信する。リリーフバルブ60は、バルブ制御信号に従って開閉される。
【0053】
なお、圧縮機12は、そのほか種々の構成要素を有しうる。例えば、高圧流路52には、オイルセパレータ、アドゾーバなどが設けられていてもよい。低圧流路53には、ストレージタンクそのほかの構成要素が設けられていてもよい。また、圧縮機12には、圧縮機本体57をオイルで冷却するオイル循環系や、オイルを冷却水で冷却する冷却系などが設けられていてもよい。
【0054】
図4は、実施の形態に係るクライオポンプシステム100に使用されうるクライオポンプモニタ130の一例を示す模式図である。クライオポンプモニタ130は、操作部132と、入出力回路134と、表示部136とを備える。
【0055】
操作部132は、操作者によるクライオポンプシステム100(例えば、クライオポンプ10、圧縮機12)への操作を受け付けるための各種操作ボタン等の入力手段を有する。操作部132は、操作部132への操作を示す操作信号を入出力回路134に送信するように入出力回路134と電気的に接続される。クライオポンプコントローラ110は、この操作信号を入出力回路134(および第4通信線124)を介して受信し、操作信号に従ってクライオポンプ10(または圧縮機12)を制御する。この例では、操作部132は、クライオポンプモニタ130の下部に設けられている。
【0056】
入出力回路134は、クライオポンプモニタ130の内部に収められており、第4通信線124によりクライオポンプコントローラ110と通信可能に接続される。入出力回路134は、例えばI/Oモジュール、またはリモートI/Oユニットであってもよい。第4通信線124は、クライオポンプモニタ130に設けられたコネクタに接続され、このコネクタを介して入出力回路134に接続されてもよい。
【0057】
表示部136は、クライオポンプ10に関する情報、及び/または圧縮機12に関する情報を示す信号を入出力回路134から受信するように入出力回路134と電気的に接続される。表示部136は、入出力回路134がクライオポンプコントローラ110から受信した信号に基づいて、クライオポンプ10及び/または圧縮機12に関する情報を表示する。一例として、表示部136は、表示パネル部136aと、表示灯部136bとを有する。表示パネル部136aは、クライオポンプ10及び/または圧縮機12に関する情報を示す数字や文字、記号等を表示可能な例えば液晶パネルまたはその他の表示デバイスであってもよい。表示灯部136bは、クライオポンプ10及び/または圧縮機12に関する情報を示すように点消灯される例えばLEDランプまたはその他のインジケーターであってもよい。この例では、表示部136は、クライオポンプモニタ130の上部に設けられている。
【0058】
表示部136に表示可能なクライオポンプ10に関する情報としては、例えば以下に挙げるものが例示され、これらに限定されない。
・クライオポンプ10に搭載されたセンサによる現在の測定値(例えば、圧力センサ21の測定圧力、第1温度センサ22の測定温度、第2温度センサ23の測定温度など)
・クライオポンプ10に搭載された機器の現在の動作状態(例えば、ラフバルブ24の開閉状態、パージバルブ26の開閉状態、ベントバルブ28の開閉状態、膨張機モータ30のオンオフ状態(すなわちクライオポンプ10のオンオフ状態など)、膨張機モータ30の運転周波数など)
・クライオポンプ10の運転履歴(例えば、クライオポンプ10の運転継続時間、クライオポンプ10の再生開始からの経過時間、クライオポンプ10の再生完了回数、クライオポンプ10の運転中に発生したクライオポンプ10に関するアラーム、クライオポンプ10とクライオポンプコントローラ110の通信時間、クライオポンプ10に搭載されたセンサによる過去の測定値、クライオポンプ10に搭載された機器の過去の動作状態など)
・クライオポンプ10の内部パラメータ(例えば、クライオポンプ10の真空排気運転を実行するための放射シールド18およびクライオパネル20の設定冷却温度、放射シールド18(またはクライオパネル20)の温度調整のための制御パラメータ(例えばPID制御のための制御ゲイン等)、クライオポンプ10の再生を実行するための温度、圧力、各バルブの開閉タイミングなど諸条件を定義する各種の再生パラメータなど)
・クライオポンプ10に関するその他のパラメータ(例えば、クライオポンプ10のシリアルナンバー等)
・クライオポンプ10を操作するための各種のコマンド
【0059】
また、表示部136に表示可能な圧縮機12に関する情報としては、例えば以下に挙げるものが例示され、これらに限定されない。
・圧縮機12に搭載されたセンサによる現在の測定値(例えば、第1圧力センサ54の測定圧力、第2圧力センサ55の測定圧力、第1圧力センサ54と第2圧力センサ55の測定圧力の差圧など)
・圧縮機12に搭載された機器の現在の動作状態(高圧流路52と低圧流路53の差圧の設定値、圧縮機モータ57aのオンオフ状態(すなわち圧縮機12のオンオフ状態)、圧縮機モータ57aの運転周波数、リリーフバルブ60の開閉状態または開度、圧縮機本体57を冷却する冷却水の流量など)
・圧縮機12の運転履歴(圧縮機12の運転継続時間、アドゾーバの使用時間、圧縮機12の運転中に発生した圧縮機12に関するアラーム、圧縮機12に搭載されたセンサによる過去の測定値、圧縮機12に搭載された機器の過去の動作状態など)
・圧縮機12の内部パラメータ
・圧縮機12に関するその他のパラメータ
・圧縮機12を操作するための各種のコマンド
【0060】
なお、クライオポンプモニタ130は、大容量のストレージなどの記憶部を備えてもよく、または、外部記憶装置に接続可能であってもよい。クライオポンプシステム100の過去の測定値や動作状態、またはその他の表示可能な情報が、この記憶部または記憶装置に蓄積され、必要に応じてクライオポンプモニタ130からアクセス可能とされクライオポンプモニタ130に表示されてもよい。
【0061】
また、クライオポンプモニタ130は、情報を視覚的に提示するとともに、聴覚的またはその他の手段により提示してもよい。
【0062】
実施の形態に係るクライオポンプシステム100の監視方法は、クライオポンプモニタ130をネットワーク120に接続し真空プロセス装置200の筐体206外に配置することを備える。例えば、クライオポンプモニタ130は、第4通信線124を用いてクライオポンプコントローラ110に接続される。これにより、クライオポンプモニタ130は、ネットワーク120に接続され真空プロセス装置200の筐体206外に配置される。クライオポンプコントローラ110が真空プロセス装置200の筐体206内に配置されるため、クライオポンプモニタ130とクライオポンプコントローラ110との接続をクライオポンプシステム100の稼働中(すなわち真空プロセス装置200の稼働中)に行うことは困難でありうる。よって、クライオポンプモニタ130の接続作業は、クライオポンプシステム100の稼働前に行うことが好ましい。
【0063】
クライオポンプシステム100の監視方法はさらに、ネットワーク120を介して伝送されるクライオポンプ10に関する情報をクライオポンプモニタ130に表示することを備える。また、この方法は、ネットワーク120を介して伝送される圧縮機12に関する情報をクライオポンプモニタ130に表示することを備えてもよい。これらの表示は、クライオポンプシステム100の稼働中に行われてもよく、または、クライオポンプシステム100の稼働停止中に行われてもよい。
【0064】
クライオポンプシステム100では、上述のように、クライオポンプ10に関する情報と圧縮機12に関する情報はすべてクライオポンプコントローラ110に集約されることになる。クライオポンプシステム100内の通信に用いられるネットワーク120は、例えばRS-485のように、通信データ(クライオポンプ10(または圧縮機12)に関する情報を含む)をすべてのノードにブロードキャストするように構成されている。したがって、クライオポンプモニタ130をネットワーク120(例えばクライオポンプコントローラ110)に接続することにより、クライオポンプモニタ130は、クライオポンプコントローラ110とクライオポンプ10(または圧縮機12)との間でネットワーク120を介して伝送される通信データを取得(いわば傍受)することができる。こうして、クライオポンプモニタ130は、取得した通信データに基づいて、クライオポンプ10(または圧縮機12)に関する情報を表示することができる。
【0065】
クライオポンプシステム100の監視方法はさらに、クライオポンプモニタ130への操作に従ってクライオポンプシステム100を制御することを備えてもよい。上述のように、クライオポンプコントローラ110は、操作者が操作部132を操作することで生成される操作信号を入出力回路134(および第4通信線124)を介して受信し、操作信号に従ってクライオポンプ10(または圧縮機12)を制御することができる。例えば、クライオポンプモニタ130を使用して操作者が行えるクライオポンプシステム100の操作としては、例えば以下に挙げるものが例示され、これらに限定されない。
・クライオポンプ10のオンオフ
・クライオポンプ10の再生開始、再生モードの選択
・クライオポンプ10に搭載された機器の動作(例えば、ラフバルブ24、パージバルブ26、ベントバルブ28の開閉動作、膨張機モータ30の運転周波数の変更など)
・クライオポンプ10に搭載されたセンサ、例えば圧力センサ21の較正(例えば、大気圧調整、ゼロ点調整)
・圧縮機12のオンオフ
【0066】
本書の冒頭で述べたように、真空プロセス装置200の稼働中にクライオポンプ10に関する情報を見ることができれば便利である。そうした情報は、とくに、クライオポンプシステム100に何らかの異常が起こったとき、異常の原因の特定や正常状態への回復に役立つ。
【0067】
しかしながら、既存のクライオポンプ製品では多くの場合、そうした情報表示ツールが装備されていないため、異常の解析と正常への回復に長時間を要することがある。このような場合、クライオポンプシステム100は真空プロセス装置200に接続されているから、クライオポンプシステム100に関する情報を真空プロセス装置200から入手しうるかもしれない。ところが、現実には、真空プロセス装置200はクライオポンプシステム100に関するあらゆる情報にアクセスすることができるように設計されているわけではないのが普通である。そのため、この方法は、異常の解析と正常への回復に必要な情報を入手できることを必ずしも保証するものではない。また、異常の一因として、真空プロセス装置200のホストコントローラ204とクライオポンプシステム100との間の通信異常が疑われる場合もありうる。
【0068】
そこで、情報を表示する表示部をクライオポンプ10に一体的に組み込む案が考えられる。しかしながら、このようにしても、現実には稼働中に情報を見られないことが多い。なぜなら、クライオポンプ10は真空プロセス装置200内に収められるので、表示部を設けたとしても、たいていの場合、外から見えない場所に隠れてしまうからである。そのうえ、真空プロセス装置200で使用される高電圧や高エネルギービームなど危険への接触を避けるという安全上の理由により、真空プロセス装置200の稼働中、クライオポンプ10など真空プロセス装置200の内部構成要素には人が物理的にアクセスしないことが要請される。真空プロセス装置200の稼働を停止すれば、クライオポンプ10に近づいて表示部を見られるであろうが、装置の稼働停止は生産性の低下を招くから望ましくない。
【0069】
これに対して、実施の形態によると、クライオポンプモニタ130が真空プロセス装置200の筐体206外に配置され、クライオポンプモニタ130にクライオポンプ10(及び/または圧縮機12)に関する情報が表示される、そのため、操作者は、表示されたクライオポンプ10(及び/または圧縮機12)に関する情報を真空プロセス装置200の稼働中に手元で容易に確認することができる。操作者は、クライオポンプモニタ130を見ることで、必要な情報を安全な場所で随時入手することができる。クライオポンプシステム100に何らかの異常が起こったとき、操作者は、クライオポンプモニタ130から入手した情報を利用して、異常の原因の特定や正常状態への回復を迅速に進めることができる。
【0070】
また、実施の形態によると、クライオポンプモニタ130は、ホストコントローラ204を介することなくネットワーク120に接続される。例えば、クライオポンプモニタ130は、クライオポンプコントローラ110に直接接続されることによってネットワーク120に接続される。これにより、ホストコントローラ204の異常、またはクライオポンプコントローラ110とホストコントローラ204間の通信異常が疑われる場合であっても、クライオポンプモニタ130は、クライオポンプコントローラ110から情報を得て表示することができる。また、クライオポンプモニタ130は、ホストコントローラ204経由では得られない情報(ホストコントローラ204がモニタ対象外としているクライオポンプの情報)もクライオポンプコントローラ110から得て表示することができる。
【0071】
さらに、実施の形態によると、クライオポンプモニタ130は、クライオポンプシステム100を操作するための操作部132を備える。そのため、真空プロセス装置200のホストコントローラ204を介してクライオポンプシステム100を作動させることとは別に、クライオポンプモニタ130から必要な操作をクライオポンプシステム100に行うことができる。
【0072】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0073】
上述の実施の形態では、圧縮機12とクライオポンプモニタ130がそれぞれ個別の通信ケーブル(第3通信線123と第4通信線124)でクライオポンプコントローラ110に接続されている。ある実施の形態では、第3通信線123と第4通信線124が端部で分岐した1本の通信ケーブルにまとめられ、この1本の通信ケーブルを用いて圧縮機12とクライオポンプモニタ130がクライオポンプコントローラ110に接続されてもよい。
【0074】
クライオポンプモニタ130をクライオポンプコントローラ110に直接接続することに代えて、クライオポンプモニタ130は、圧縮機12に有線で接続されることによりネットワーク120に接続され真空プロセス装置200の筐体206外に配置されてもよい。この場合、クライオポンプモニタ130の接続作業は、クライオポンプシステム100の稼働前に行われてもよく、または、クライオポンプシステム100の稼働中に行われてもよい。また、クライオポンプモニタ130は、ネットワーク120上のその他のノード(例えばクライオポンプ10)に接続されることによりネットワーク120に接続され、真空プロセス装置200の筐体206外に配置されてもよい。
【0075】
クライオポンプモニタ130は、圧縮機12に一体的に搭載されてもよい。例えば、圧縮機12に設けられた操作パネル62がクライオポンプモニタ130として動作するように構成されてもよい。
【0076】
クライオポンプモニタ130は、少なくとも一部の表示機能(及び/または操作機能)の有効と無効を切替可能とされてもよい。例えば、クライオポンプ10の内部パラメータの表示など一部の表示機能がクライオポンプモニタ130の初期状態では使用不能とされるように例えばパスワード等によりロックされてもよい。クライオポンプモニタ130は、このロックを解除することによりこの表示機能を使用可能としてもよい。
【0077】
クライオポンプモニタ130のネットワーク120への接続は無線化されてもよい。例えば、圧縮機12がクライオポンプコントローラ110に有線で接続され、クライオポンプモニタ130と圧縮機12が無線接続されてもよい。クライオポンプモニタ130と圧縮機12はともに真空プロセス装置200の外に配置され、また互いに近接して配置されるから、無線通信のための搬送波が相互に良好に伝わりやすい。あるいは、可能とされる場合には、クライオポンプコントローラ110とクライオポンプモニタ130が無線接続されてもよい。
【0078】
上述の実施の形態では、クライオポンプモニタ130は、操作部132を有し、これによりクライオポンプシステム100の操作機能を有する。しかし、ある実施の形態では、クライオポンプモニタ130は、操作機能を有さずに、表示機能のみを有してもよい。
【0079】
クライオポンプシステム100に設けられる少なくとも1つのクライオポンプ10は、コールドトラップであってもよい。典型的に、コールドトラップは、単段式の極低温冷凍機により冷却され、例えばターボ分子ポンプなどの高真空ポンプの入口に配置され、主として水蒸気をコールドトラップ表面に凝縮して排気するものである。クライオポンプモニタ130は、コールドトラップに関する情報を表示してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 クライオポンプ、 12 圧縮機、 100 クライオポンプシステム、 110 クライオポンプコントローラ、 120 ネットワーク、 130 クライオポンプモニタ、 132 操作部、 136 表示部、 200 真空プロセス装置、 204 ホストコントローラ、 206 筐体。