(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】一時的かつ一過性プラスミドベクター発現システムを用いる細胞のリプログラミング
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20240912BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240912BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240912BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240912BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240912BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20240912BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240912BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240912BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240912BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240912BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N5/074 ZNA
C12N5/10
C12N5/078
C12N15/12
C12N15/38
A61K35/545
A61K45/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P31/12
A61K35/17
(21)【出願番号】P 2020520249
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 US2018055208
(87)【国際公開番号】W WO2019075057
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312000284
【氏名又は名称】フェイト セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラマール,バーラム
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,メーガン
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/123789(WO,A1)
【文献】STEM CELL RESEARCH & THERAPY,2015年,Vol. 6, No. 1,DOI: 10.1186/s13287-015-0112-3
【文献】HUMAN GENE THERAPY,2000年,Vol. 11,pp. 471-479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 5/10
CAPlus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非多能性細胞をリプログラミングして多能性細胞、その細胞株または集団を生成する方法であって、
(a)第1の細胞であって、非多能性細胞である、第1の細胞に、
1つ以上の第1のプラスミドであって、前記第1のプラスミドは、エプスタインバーウイルス核抗原(EBNA)結合部位を含む複製起点、および1つ以上のリプログラミング因子をコードするがEBNAをコードしないポリヌクレオチドを含み、前記1つ以上の第1のプラスミドのうちの少なくとも1つが、OCT4をコードするポリヌクレオチドを含み、前記1つ以上の第1のプラスミドの導入が、リプログラミングプロセスを誘導する、1つ以上の第1のプラスミドと、
(1)EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドであって、EBNA結合部位を含む複製起点、またはリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドを含まない、第2のプラスミド、(2)EBNA mRNAおよび(3)EBNAタンパク質、のうちの1つと、を導入することと、
(b)前記ステップ(a)からの細胞を培養して、第2の細胞を生成することであって、前記第2の細胞が、リプログラミング細胞であり、前記リプログラミング細胞は、前記第1の細胞からの形態学的変化を含みかつEBNAを含まず、前記リプログラミング細胞は、
(1)多能性細胞形態と、
(2)内在性OCT4発現と、を含まない、第2の細胞を生成することと、
(c)多能性細胞を生成するのに十分な時間、ステップ(b)で得られた前記第2の細胞をさらに培養することと、を含む、方法であって、
該方法は、(1) EBNA結合部位を含む複製起点及び(2)EBNAをコードするポリヌクレオチドの両方を含むプラスミドを
、ステップ(a)~(c)のいずれかの細胞にも導入しない、方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドを前記第1の細胞に導入することを含み、前記第2のプラスミドが、EBNA結合部位を含む複製起点、またはリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i) 前記多能性細胞を解離して、単一細胞の解離した多能性細胞を得ること、
(ii) 前記単一細胞の解離した多能性細胞を懸濁させること、
(iii) 1つ以上の多能性マーカーを発現する細胞を選択および単離して、前記マーカーを発現する多能性細胞を濃縮することにより、前記単一細胞の解離した多能性細胞を選別すること、及び
(iv) GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤の存在下で前記多能性細胞を培養して、多能性を維持することをさらに含み、前記多能性細胞は少なくとも5継代にわたって多能性を維持すること、
から成る群より選ばれる少なくとも1つをさらに含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
(i) 前記第1の細胞が体細胞、前駆細胞、または多分化能細胞である、
(ii) 前記第1の細胞が線維芽細胞であり、前記第2の細胞の前記形態学的変化がMET(間葉から上皮への転換)を含む、
(iii) 前記第2の細胞が、ステップ(a)のプラスミドを含まない、
(iv) 前記第2の細胞が、ステップ(a)における1つ以上の第1のプラスミドの前記導入後、4~25日までのリプログラミング細胞を含む、
(v) 前記多能性細胞が、選択または前記多能性細胞の継代を必要とせずに、前記ステップ(a)のプラスミドの前記ポリヌクレオチドを含まない、
(vi) 前記多能性細胞が、以下の特性
(1)遺伝的安定性、および
(2)基底状態の多能性、のうちの少なくとも1つを有する、
及び/又は
(vii) 前記多能性細胞が、胚体外細胞に関連する再活性化遺伝子を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(i) EBNAの発現が一過性かつ一時的である、
(ii) 前記複製起点および/またはEBNAが、EBVベースである、
(iii) 前記細胞が、フィーダーフリー条件下にある、
及び/又は
(iv) 前記ステップ(b)における培養が、チアゾビビン存在下での培養を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(a)1つ以上の第1のプラスミドであって、前記第1のプラスミドが、エプスタインバーウイルス核抗原(EBNA)結合部位を含む複製起点、および1つ以上のリプログラミング因子をコードするがEBNAをコードしないポリヌクレオチドを含み、前記1つ以上の第1のプラスミドのうちの少なくとも1つが、OCT4をコードするポリヌクレオチドを含む、1つ以上の第1のプラスミドと、
(b)
(1)EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドであって、エプスタインバーウイルス核抗原(EBNA)結合部位を含む複製起点またはリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドを含まない、第2のプラスミド、
(2)EBNA mRNAおよび
(3)EBNAタンパク質、
のうちの1つと、を含
む非多能性細胞またはその集団であって、
前記非多能性細胞は、
(1)多能性細胞形態と、
(2)内在性OCT4発現を含まず、
前記非多能性細胞は、多能性細胞を生成するのに十分な時間を与えられると、安定したまたは自己持続的多能性を確立することがで
き、
該
非多能性細胞は、(1) EBNA結合部位を含む複製起点及び(2)EBNAをコードするポリヌクレオチドの両方を含むプラスミドを導入することを含まない、非
多能性細胞またはその集団。
【請求項7】
(i) 前記非多能性細胞が、1つ以上の第1のプラスミドの前記導入後、4~25日までのものである、
(ii) 前記非多能性細胞が、TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤、およびROCK阻害剤のうちの少なくとも1つの存在下で培養される、
(iii) 前記非多能性細胞が線維芽細胞であり、
(
iv) 前記多能性細胞が、選択または前記多能性細胞の継代を必要とせずに、前記プラスミドの前記ポリヌクレオチドを含まない、
(
v) 前記多能性細胞が以下の特性
(1)遺伝的安定性、および
(2)基底状態の多能性、のうちの少なくとも1つを有する、
及び/又は
(
vi) 前記多能性細胞が、胚体外細胞に関連する再活性化遺伝子を含む、
請求項6に記載の非多能性細胞またはその集団。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の非多能性細胞またはその集団を含む組成物。
【請求項9】
TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤の少なくとも1種を含む培地をさらに含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
(i) 前記ROCK阻害剤が、チアゾビビンである、
及び/又は
(ii) 前記培地が、フィーダーフリーである、
請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記多能性細胞が、ゲノム操作された多能性細胞またはそれから生成された細胞株を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(b)における培養が、TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤及びROCK阻害剤の少なくとも1種の存在下で培養することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記多能性細胞を分化して由来非天然細胞を得ることをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記由来非天然細胞が、
(i) 免疫細胞様であり、前記細胞がCD34細胞、造血性内皮細胞、造血幹細胞もしくは前駆細胞、造血多分化能前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、または免疫制御性細胞を含む、
及び/又は
(ii) その天然の細胞対応物と比較して、以下の特性:ヘテロクロマチンの全体的増加、ミトコンドリア機能の改善、DNA損傷応答の増加、テロメアの伸長および短いテロメアの割合の減少、老化細胞の割合の減少、ならびに増殖、生存、持続、または記憶様機能に対するより高い可能性、のうちの少なくとも1つを含む若返り細胞である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項6又は7に記載の非多能性細胞から得られた多能性細胞又は前記多能性細胞から分化された由来非天然細胞を含む、治療的使用のため
の組成物。
【請求項16】
前記多能性細胞が、ゲノム操作した多能性細胞である、請求項15記載の治療的使用のための組成物。
【請求項17】
前記多能性細胞が同種異系または自己である、請求項15又は16に記載の治療的使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2017年10月11日に出願された米国仮特許出願第62/571,105号の優先権を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
この出願は、この出願とともに提出されたASCIIテキスト形式の配列表のComupter Readable Form(CRF)を参照として組み込んでおり、タイトルは13601-187-228_SEQ_LISTING.txtで、2018年10月9日に作成され、サイズは9,600バイトである。
【0003】
本開示は、ヒト人工多能性幹細胞(iPSCまたはiPS細胞)を生成する分野に広く関係している。より具体的には、本開示は、プラスミドベクターの組み合わせを使用して、高い効率で望ましい特性を有するフットプリントフリーのiPSCを得ることに関係する。
【背景技術】
【0004】
iPSCはもともと、主要な転写因子を発現するための組み込みウイルスシステムを使用して生成された。ポリシストロン性および誘導性システムを含むレトロウイルスおよびレンチウイルスシステムは、現在iPSCの生成で成功裏に採用されている。ただし、iPSC分化後の挿入変異と外因性遺伝子再活性化の可能性による永続的なゲノム変化は、これらの方法によって生成された細胞の後続の薬剤スクリーニングと治療用途に潜在的な問題を提示する可能性がある。実際、同じウイルスシステムを使用して生成されたiPSCクローン間の有意差とともに、げっ歯類で分化したニューロスフェアとして移植されるとクローン化された大部分が腫瘍を形成することが、報告されている。研究では、同じウイルス手法を使用して生成されたiPSCが、分化すると異なる動作をする可能性があることが示唆されている。異所性遺伝子組み込み部位の違いは、異なる挿入変異と導入遺伝子の発現のエピジェネティック制御をもたらす可能性がある。組み込みシステムを含むiPSC生成方法の場合、多能性状態と分化状態の両方で安定しているクローンを特定するために、多くのクローンを誘導させおよびスクリーニングする必要がある。
【0005】
iPSC生成のためのさまざまな非組み込みシステムが実証されており、これにはウイルス法と非ウイルス法が含まれる。リプログラミングのための非組み込みウイルスシステムには、アデノウイルスベクター、センダイウイルスベクター、およびエプスタインバーウイルスベースのエピソームベクターが含まれる。リプログラミングのための非組み込み非ウイルスシステムの例には、ミニサークルベクター(最小DNAベクター)、PiggyBac(トランスポゾン)、RNA(mRNAまたはmiRNA)、およびタンパク質(組み換えポリペプチド)が含まれる。
【0006】
当技術分野では、好ましくは多能性の「ナイーブ」または「基底」状態で、好ましくは規定の培養条件で、フットプリントのないiPSCの均質な集団の効率的な生産がかなり必要とされている。多能性の「ナイーブ」または「基底」状態は、高いクローン性、持続的な自己再生、最小限の自発的分化もしくはゲノム異常、および解離した単一細胞としての高い生存率を含むがこれらに限定されない、iPSCの品質を与える。本発明の方法および組成物、具体的には新規プラスミドベクターシステムは、この必要性に対処し、細胞リプログラミングの分野で他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
宿主ゲノム組み込みの確率を下げるため外因性遺伝子の存在を最小限に抑える、効率的だが一過性かつ一時的な発現システムを使用することにより、本開示の目的は、リプログラミングの誘導のために非多能性細胞に導入された外因性DNAを含まない、iPSCを生成するのに効率的な方法および組成物を提供することである。本開示の目的は、多能性および/または高クローン性の「ナイーブ」または「基底」状態のiPSCを効率的に産生する組み合わせプラスミドシステムを提供することである。基底状態の多能性を備えたiPSCは、単一細胞の解離したiPSCの長期生存と遺伝的安定性を可能にし、そのため単一細胞の選別および/または枯渇、クローンiPSCを標的としたゲノム編集、ならびにiPSCの均質集団の指示された再分化、などのバンキング(banking)および操作に適したクローンiPSC系統の生成を可能にする。したがって、本開示の目的は、ポリヌクレオチドの挿入、削除、および置換を含む、選択された部位に1つまたはいくつかの遺伝子修飾を含み、その修飾が保持され、分化、脱分化、リプログラミング、増加、継代および/または移植後に引き続く由来細胞において機能的であり続ける、単一細胞由来のiPSCクローン系統、またはそれからの由来細胞を生成する方法および組成物を提供することでもある。
【0008】
本出願の一態様は、非多能性細胞をリプログラミングして多能性細胞またはその集団を生成する方法を提供し、この方法は、非多能性細胞を1つ以上の第1のプラスミドでトランスフェクトすることであって、第1のプラスミドは複製起点および1つ以上のリプログラミング因子をコードするが、EBNAまたはその誘導体をコードしないポリヌクレオチドを含み、1つ以上の第1のプラスミドのうちの少なくとも1つは、OCT4をコードするポリヌクレオチドを含み、1つ以上の第1のプラスミドの導入が、リプログラミングプロセスを誘導する、トランスフェクトすることと、任意選択的に、下記の、EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドであって、複製起点、またはリプログラミング因子(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含まない、第2のプラスミド、EBNA mRNA、およびEBNAタンパク質、のうちの1つを非多能性細胞に導入することと、を含む。次いで、トランスフェクトされた細胞を培養して、開始非多能性細胞からの形態学的変化を含み、EBNAを本質的に含まないが、多能性細胞形態を欠き、内在性OCT4発現を含まない、リプログラミング細胞を生成する。リプログラミング細胞がさらに十分な時間培養されると、1つ以上の多能性細胞が生成される。本明細書で提供されるリプログラミング方法は、細胞ゲノムに組み込まれ、再活性化して由来細胞を生成する場合には脱分化を誘発するか、臨床の環境で使用される場合に腫瘍形成の傾向を高める可能性がある、外因性導入遺伝子の発現への多能性細胞の曝露を最小限に抑える。
【0009】
一実施形態では、リプログラミング方法は、リプログラミングを誘導するためにプラスミドの組み合わせを非多能性細胞に最初に導入することを含む。前記プラスミドの組み合わせは、1つ以上の第1プラスミドを含み、この第1プラスミドは、複製起点と、1つ以上のリプログラミング因子をコードするがEBNAまたはその誘導体をコードしないポリヌクレオチドと、を含み、かつ、少なくとも1つの第1プラスミドはOCT4をコードするポリヌクレオチドを含む。1つ以上の第1のプラスミドを含むプラスミドの前記組み合わせは、EBNAをコードするヌクレオチド配列を含むが、複製起点またはリプログラミング因子(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含まない第2のプラスミドをさらに含む。リプログラミングを誘導するために非多能性細胞にプラスミドシステムを導入した後、細胞を培養して、プラスミドの組み合わせが導入される開始非多能性細胞からの形態学的変化を含む、リプログラミング細胞を生成する。形態学的変化を示すリプログラミング細胞は、本質的にEBNAを含まなくなるが、多能性細胞の形態を欠いており、内在性のOCT4発現を含まない。提供されるリプログラミングの方法では、前記リプログラミング細胞は、1つ以上の多能性細胞を生成するのに十分な時間さらに培養される。いくつかの実施形態では、リプログラミング細胞の培養は、TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤のうちの少なくとも1つを含む小分子化合物の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、小分子化合物は、TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤、およびROCK阻害剤の組み合わせを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記の一般的な方法は、多能性細胞を解離して、単一細胞の解離した多能性細胞を得るステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、単一細胞の解離した多能性細胞を培地に懸濁させる。いくつかの実施形態では、1つ以上の多能性マーカーを発現する細胞を選択および単離して、選択されたマーカー(複数可)を発現する多能性細胞を濃縮することにより、単一細胞の解離した多能性細胞を選別する。いくつかの他の実施形態では、多能性細胞、またはそこから懸濁、選別、または濃縮された単一解離細胞は、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤のうちの少なくとも1つを含む小分子化合物の存在下で多能性を維持するために培養される。いくつかの実施形態では、長期の多能性維持は、少なくとも5、10、15、または20継代、またはそれ以上である。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記の方法は、体細胞、前駆細胞、または多分化能細胞のリプログラミングを誘導するために使用される。本方法のいくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞はヒト細胞である。本方法のいくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞は免疫細胞である。いくつかの他の実施形態では、リプログラミングのための免疫細胞は、患者特異的、薬物応答特異的、または疾患状態特異的であり得る。一実施形態では、開示される方法を使用してリプログラミングするための非多能性細胞が、リプログラミング細胞によって示される形態学的変化は、MET(間葉から上皮への転換)の形態学的変化である。
【0012】
前記方法の一実施形態では、リプログラミング細胞は、第2のプラスミドによって運ばれるEBNAを本質的に含まない。一実施形態では、リプログラミング細胞は第2のプラスミドを本質的に含まない。本方法のいくつかの実施形態は、約4~10日間(すなわち、プラスミドのトランスフェクション後4~10日)、5~10日間、6~10日間、またはその間の任意の日数間のプラスミドの組み合わせから誘導されているリプログラミング細胞を提供する。この方法のいくつかの実施形態は、トランスフェクション後4~12日、またはその間の任意の日数間のリプログラミング細胞を提供する。本方法のさらにいくつかの実施形態は、トランスフェクション後4~14日、またはその間の任意の日数間のリプログラミング細胞を提供する。本方法のさらに他のいくつかの実施形態は、トランスフェクション後4~21日もしくは4~25日、またはその間の任意の日数間のリプログラミング細胞を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、oriPおよびEBNAの両方を含む追加のプラスミドを導入した細胞と比較して、多能性復帰または自発的分化が低減している多能性細胞を産生する。いくつかの他の実施形態では、前記方法は、プラスミド組み合わせのポリヌクレオチドを本質的に含まない多能性細胞を産生する。いくつかの実施形態では、プラスミドのポリヌクレオチドを本質的に含まない多能性細胞は、多能性細胞の選択または広範な継代を必要とせずに産生される。一実施形態では、本方法は、以下の特性:高いクローン性、遺伝的安定性、および基底状態の多能性、のうちの少なくとも1つを有する多能性細胞を生成する。いくつかの実施形態では、本方法は、胚体外細胞に関連する再活性化遺伝子を含む多能性細胞を生成する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、高い損失率を有する第2のプラスミドの使用に関連し、このため第2のプラスミドによるEBNAの発現は、EBNAが急速に失われ、細胞質内で、iPSC形態または内在性多能性遺伝子発現の出現前に発現されるという意味で、短命で、一過性で、一時的である。本方法のいくつかの実施形態において、第1および第2のプラスミドにそれぞれ含まれる複製起点および/またはEBNAは、EBVベースである。本方法のいくつかの実施形態では、リプログラミングプロセスは、フィーダーフリー条件下で、すなわちフィーダーフリーの培地で行われる。本方法のいくつかの他の実施形態では、培地に含まれるROCK阻害剤はチアゾビビンである。
【0015】
本出願の別の態様は、1つ以上の第1のプラスミドであって、第1のプラスミドが、複製起点、および1つ以上のリプログラミング因子をコードするがEBNAまたはその誘導体をコードしないポリヌクレオチドを含み、1つ以上の第1のプラスミドの少なくとも1つが、OCT4をコードするポリヌクレオチドを含む、1つ以上の第1のプラスミドと、任意選択的に、EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドであって、複製起点またはリプログラミング因子(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含まない第2のプラスミド、EBNA mRNA、およびEBNAタンパク質、のうちの1つと、で非多能性細胞をトランスフェクトした後に得られる、リプログラミング細胞またはその集団を提供し、このリプログラミング細胞は、プラスミドの組み合わせの導入前の非多能性細胞からの形態学的変化を含み、本質的にEBNAまたはその誘導体を含まず、リプログラミング細胞は(i)多能性細胞形態、および(ii)内在性OCT4発現を含まず、かつ、リプログラミング細胞は、多能性細胞を生成するのに十分な時間を与えられると、安定した多能性を確立することができる。一実施形態では、EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドを使用して、リプログラミング細胞およびiPSCを生成し、第2のプラスミドは、複製起点またはリプログラミング因子(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含まない。一実施形態では、第2のプラスミドの代わりに、EBNA mRNAを1つ以上の第1のプラスミドとともに使用して、リプログラミングを誘導し、開示された特性を有するリプログラミング細胞およびiPSCを生成する。別の実施形態では、EBNAタンパク質またはポリペプチドを1つ以上の第1のプラスミドとともに使用して、リプログラミングを誘導し、開示された特性を有するリプログラミング細胞およびiPSCを生成する。
【0016】
リプログラミング細胞またはその集団のいくつかの実施形態では、細胞は約4~10、12、14、21、25日間、またはその間の任意の日数間まで誘導されている。いくつかの実施形態では、リプログラミング細胞またはその集団は、TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤の存在下で培養される。いくつかの他の実施形態では、リプログラミングの形態学的変化がMET(間葉から上皮への転換)の形態学的変化を含むように、リプログラミング細胞またはその集団は線維芽細胞から誘導される。いくつかの実施形態では、リプログラミング細胞またはその集団は、第1および第2のプラスミドを本質的に含まない。いくつかの実施形態において、リプログラミング細胞は、選択または多能性細胞の広範な継代を必要とせずに、プラスミドのポリヌクレオチドを本質的に含まない多能性細胞を生じさせる。いくつかの他の実施形態にでは、リプログラミング細胞またはその集団は、例えば、oriPおよびEBNAの両方を含む追加のプラスミドで導入された細胞と比較して、多能性復帰または自発的分化が低減している多能性細胞を生じさせる。さらにいくつかの他の実施形態では、リプログラミング細胞またはその集団は、以下の特性:高いクローン性、遺伝的安定性、および基底状態の多能性のうちの少なくとも1つを有する多能性細胞を生じさせる。さらに別の実施形態では、リプログラミング細胞またはその集団は、胚体外細胞に関連する再活性化遺伝子を含む多能性細胞を生じさせる。
【0017】
したがって、本出願の別の態様は、上記のリプログラミング細胞またはその集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、TGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤を含む培地をさらに含む。一実施形態では、組成物の培地に含まれるROCK阻害剤はチアゾビビンである。他の実施形態では、培地はフィーダーフリーである。本出願のさらなる態様は、本明細書に開示された前記方法によって産生された単離した多能性細胞または多能性細胞株を提供する。いくつかの実施形態において、そのように産生された単離した多能性細胞または多能性細胞株は、さらにゲノム操作されおよび/または非天然由来細胞に再分化され得る。いくつかの実施形態では、単離した多能性細胞または多能性細胞株から再分化した非天然由来細胞は、CD34細胞、造血性内皮細胞、造血幹細胞もしくは前駆細胞、造血多分化能前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、および免疫制御性細胞、を含むがこれらに限定されない免疫細胞である。いくつかの実施形態では、多能性細胞または多能性細胞株に由来する非天然細胞は、以下の特性:ヘテロクロマチンの全体的な増加、ミトコンドリア機能の改善、DNA損傷応答の増加、テロメアの伸長と短いテロメアの割合の減少、老化細胞の部分の減少、天然の細胞対応物と比較して、増殖、生存、持続、または記憶様機能(memory like function)に対する高い可能性、のうちの少なくとも1つを含む若返り細胞(rejuvenated cell)である。
【0018】
本出願のさらなる態様は、本明細書に記載の方法により得られた多能性細胞、および任意選択的に1つ以上の追加の治療薬を含む治療的使用のための組成物を提供する。また、本明細書に記載の方法により得られる請求項のゲノム操作した多能性細胞または由来非天然細胞、および任意選択的に1つ以上の追加の治療薬を含む治療的使用のための組成物も提供される。いくつかの実施形態において、治療的使用のためのこれらの組成物は、治療が必要な対象の治療に使用するためのものである。本出願はまた、細胞ベースの治療に適用するための多能性細胞の製造に使用するための組成物を提供する。いくつかのの実施形態では、多能性細胞は同種異系である、すなわち、細胞ベースの治療を受ける対象とは異なる対象からの細胞からリプログラミングされ、または自己である、すなわち、細胞ベースの治療を受ける同じ対象の細胞からリプログラミングされる。
【0019】
上記の方法により得られた多能性細胞を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットに含まれる多能性細胞はゲノム操作されている。また、前記方法により得られた多能性細胞に由来する非天然細胞を含むキットも提供される。
【0020】
本出願のさらに別の態様は、非多能性細胞でリプログラミングを開始するためのインビトロシステムを提供し、システムは、(1)1つ以上の第1のプラスミドであって、第1のプラスミドは複製起点、および1つ以上のリプログラミング因子をコードするがEBNAまたはその誘導体をコードしないポリヌクレオチドを含み、1つ以上の第1のプラスミドのうちの少なくとも1つが、OCT4をコードするポリヌクレオチドを含む、1つ以上の第1のプラスミドと、任意選択的に(2)(i)EBNAをコードするヌクレオチド配列を含む第2のプラスミドであって、複製起点またはリプログラミング因子(複数可)をコードするポリヌクレオチド(複数可)を含まない、第2のプラスミド、(ii)EBNA mRNA、(iii)EBNAタンパク質、のうちの1つと、を含む。いくつかの実施形態では、システムの第2のプラスミドは高い損失率を有し、第2のプラスミドによるEBNAの発現は短命で、一過性でかつ一時的である。いくつかの他の実施形態では、システムは、核内で、EBNA複製および/または連続発現を提供しない。一実施形態において、システムは、短期間、かつ多能性細胞形態の出現および内在性多能性遺伝子の誘導発現の前に、EBNAの一過性/細胞質発現を可能にし得る。いくつかの実施形態では、EBNA発現ための短期間は、トランスフェクション後約4、5、6、7、または8日であるが、トランスフェクション後14、15、16、17、18、20、21、22、22、23、24または25日以下である。いくつかの他の実施形態では、システムは、短期間、かつ多能性細胞形態の出現および内在性多能性遺伝子の誘導発現の前に、第1のプラスミド(複数可)に含まれる1つ以上のリプログラミング因子の一過性/細胞質発現も可能にする。
【0021】
このシステムの一実施形態では、第1のプラスミド(複数可)の複製起点は、Polyomavirinaeウイルス、Papillomavirinaeウイルス、およびGammaherpesvirinaeウイルスからなる群から選択されるものである。いくつかの実施形態では、複製起点は、SV40、BKウイルス(BKV)、ウシパピローマウイルス(BPV)、またはエプスタインバーウイルス(EBV)からなる群から選択されるものである。特定の一実施形態では、複製起点は、EBVの野生型複製起点に対応するか、または由来する。いくつかの他の実施形態では、システム内の第2のプラスミドのEBNAはEBVベースである。いくつかの実施形態では、システムは、OCT4、SOX2、NANOG、KLF、LIN28、c-MYC、ECAT1、UTF1、ESRRB、HESRG、CDH1、TDGF1、DPPA4、DNMT3B、ZIC3、およびL1TD1のうちの1つ以上を含むリプログラミング因子(複数可)をコードするポリヌクレオチドを集合的に含む1つ以上の第1のプラスミドを提供する。いくつかの実施形態では、リプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドは、第1のプラスミドのポリシストロン性構築物または非ポリシストロン性構築物に含まれる。ポリシストロン性構築物の一実施形態では、単一のオープンリーディングフレームまたは複数のオープンリーディングフレームを含む。システムが2つ以上の第1のプラスミドを含む実施形態では、各第1のプラスミドは、ポリヌクレオチドの少なくとも1つのコピーによりコードされる同じまたは異なるリプログラミング因子を含み得る。システムが2つ以上の第1のプラスミドを含むこれらの実施形態では、システムはリプログラミング因子の化学量論の制御を提供する。
【0022】
システムのいくつかの実施形態では、第1のプラスミドは、リプログラミング因子をコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含み、隣接するポリヌクレオチドは、自己切断ペプチドまたはIRESをコードするリンカー配列により作動可能に連結される。一実施形態では、自己切断ペプチドは、F2A、E2A、P2AおよびT2Aを含む群から選択される2Aペプチドである。別の実施形態では、第1のプラスミド構築物に含まれる2Aペプチドは同じであっても異なっていてもよい。システムのプラスミドが複数の2Aを含むさらに別の実施形態では、隣接する位置の2つの2Aペプチドは異なる。システムのいくつかの他の実施形態では、第1および第2のプラスミドはそれぞれ、リプログラミング因子およびEBNAの発現のための1つ以上のプロモーターを含み、1つ以上のプロモーターはCMV、EF1α、PGK、CAG、UBC、および構成的、誘導的、内因的に調節された、または時間特異的、組織特異的もしくは細胞型特異的な他の適切なプロモーターのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態では、第1および第2のプラスミドはそれぞれCAGプロモーターを含む。
【0023】
本明細書に記載のインビトロシステムを含むキットも提供される。
【0024】
本方法および組成物の使用の様々な目的および利点は、本発明の特定の実施形態を例示および例として示す添付図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラー図面(複数可)を含むこの特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料を支払うことにより、官庁から提供される。
【0026】
【
図1】STTR(短命一過性および一時的リプログラミング)システムで使用されるベクター1およびベクター2のDNA構築物の図と、EmTTR(EBNA-媒介一過性および一時的リプログラミング)システムのためにベクター1およびベクター2とともに使用される追加のベクター3のDNA構築物の図を示す。
【
図2】EmTTRシステムを使用する線維芽細胞のトランスフェクション後15日目のSSEA4+/TRA181+多能性マーカー発現のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図3】EmTTRシステムを使用するiPSCマーカーを発現するコロニーの出現を確認するための、トランスフェクション後30日目の多能性マーカーOCT4、NANOG、TRA181、SSEA4染色を示す。
【
図4】STTRシステムを使用する線維芽細胞のトランスフェクション後15日目のSSEA4+/TRA181+多能性マーカー発現のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図5】STTRシステムを使用するiPSCマーカーを発現するコロニーの出現を確認するための、トランスフェクション後30日目の多能性マーカーOCT4、NANOG、TRA181、SSEA4染色を示す。
【
図6】STTR由来の集団の大部分が多能性の3つのマーカーすべての発現を維持しているのに対し、EmTTR誘発集団はトランスフェクションの25日後にCD30発現の大幅な低下が示すように多能性を失っているようである、ことを示す。
【
図7】連続継代後28日目の、EmTTRとSTTRから得られたiPSCコロニーで多能性の安定性が異なることを示す。A:両方の集団での培養中のiPSCコロニーの形態と分化したクラスター。B:STTR集団は最小限の自発的分化でiPSCコロニーを維持したが、EmTTR集団はわずかなiPSCコロニーが存在するだけで高レベルの自発的分化を示した。
【
図8】ベクター2に保有されたEBNAの遺伝子発現解析と、STTRシステムを使用する線維芽細胞の細胞リプログラミング中の細胞集団における内在性OCT4発現を示す。
【
図9】マウスにおける多能性発現と奇形腫形成の実証に対するSTTRを使用して得られたiPSCの特性評価を示す。A. iPSCクローンの位相画像。B. SSEA4+/TRA181+多能性マーカー発現のフロー分析。C.多能性マーカーOCT4、NANOG、TRA181、およびSSEA4のクローンの免疫蛍光染色D.内胚葉、中胚葉、外胚葉の3つの胚葉に分化するiPSCクローンの能力。
【
図10】追加のリプログラミング因子とともにSTTRシステムを用いる線維芽細胞のトランスフェクション後15日目のSSEA4+/TRA181+多能性マーカー発現のフローサイトメトリー分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語を下記に定義する。冠詞「a」、「an」、および「the」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素(an element)」とは、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0028】
代替の使用(例えば、「または」)は、代替の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。「および/または」という用語は、選択肢の一方または両方を意味すると理解されるべきである。
【0029】
本明細書で使用される「約」または「およそ」という用語は、基準となる量(quantity)、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量(amount)、重量、または長さと比較して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%程度変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、基準となる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに関して、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%を指す。
【0030】
本明細書で使用される「実質的に」または「本質的に」という用語は、基準となる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さと比較して、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上である量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを指す。一実施形態では、「本質的に同じ」または「実質的に同じ」という用語は、基準となる量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さとほぼ同じ、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さの範囲を指す。
【0031】
本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」および「本質的に含まない」という用語は互換的に使用され、細胞集団または培地などの組成物を説明するために使用される場合、特定の物質またはその供給源を含まない、例えば特定の物質またはその供給源を95%含まない、96%含まない、97%含まない、98%含まない、99%含まない、または従来の手段で測定した場合、検出できない、組成物を指す。組成物中の特定の成分または物質を「含まない」または「本質的に含まない」という用語は、そのような成分または物質が(1)組成物にいかなる濃度でも含まれない、または(2)組成物に機能的に不活性であるが低濃度で含まれることも意味する。同様の意味は、組成物の特定の物質またはその供給源の不在を指す「不在の」という用語に適用することができる。
【0032】
本明細書で使用する場合、「単離した」などの用語は、その元の環境から分離されている細胞または細胞集団を指し、すなわち、単離した細胞の環境は、「単離していない」参照細胞が存在する環境で見出される少なくとも1つの成分を実質的に含まない。この用語には、その自然環境、例えば組織、生検で見られる一部またはすべての成分から取り出された細胞が含まれる。この用語はまた、細胞が非天然起源の環境、例えば培養、細胞懸濁液に見られる少なくとも1つ、いくつかまたはすべての成分から取り出された細胞を含む。したがって、単離した細胞は、自然界に見られる、または非天然起源の環境で成長、保存、もしくは維持される他の物質、細胞、または細胞集団を含む少なくとも1つの成分から部分的または完全に分離される。単離した細胞の特定の例には、部分的に純粋な細胞、実質的に純粋な細胞、および非天然起源の培地で培養された細胞が含まれる。単離した細胞は、所望の細胞、またはその集団を環境中の他の物質または細胞から分離することにより、または環境から1つ以上の他の細胞集団または亜集団を除去することにより得られ得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「精製する」などの用語は、純度を高めることを指す。例えば、純度を少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%に高めることができる。
【0034】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」という言葉は、述べられたステップもしくは要素またはステップもしくは要素のグループの包含を意味するが、任意の他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素のグループの除外ではないことが理解される。特定の実施形態では、用語「含まれる」、「有する」、「含有する」、および「含む」は同義的に使用される。
【0035】
「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含むこと、およびそれに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が所要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
【0036】
「から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素の開示で指示された活動または作用を妨害または貢献しない他の要素に限定される。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が所要または必須であることを示すが、他の要素は任意ではなく、列挙された要素の活動または作用に影響するかどうかに応じて存在する場合と存在しない場合がある。
【0037】
本明細書を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特別な実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」または「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態で任意の適切な様式で組み合わせることができる。
【0038】
「エクスビボ」という用語は、一般に、好ましくは自然状態の最小限の変更で、生体外の人工環境内の生体組織内または生体組織上で行われる実験または測定など、生体外で起こる活動を指す。特定の実施形態において、「エクスビボ」手順は、生物から採取され、通常滅菌状態下で、典型的には数時間または最大約24時間であるが、状況に応じて、最大時間48または72時間以上の間実験装置で培養される生細胞または組織を含む。一定の実施形態では、そのような組織または細胞を収集して凍結し、その後にエクスビボ治療のために解凍することができる。生きた細胞または組織を使用して数日以上続く組織培養実験または手順は、通常「インビトロ」と見なされるが、一定の実施形態では、この用語はエクスビボと交換可能に使用できる。
【0039】
「インビボ」という用語は一般に、生物の内部で起こる活動を指す。
【0040】
本明細書で使用する「リプログラミング」または「脱分化」または「分化能を高める」または「発生能を高める」という用語は、細胞の多能性を高めるか、または細胞をより小さい分化状態に脱分化させる方法またはプロセスを指す。例えば、細胞の多能性が高められた細胞は、非リプログラミング状態の同じ細胞と比較して、より多くの発生上の可塑性を有している(すなわち、より多くの細胞型に分化できる)。換言すれば、リプログラミングした細胞は、非リプログラミング状態の同じ細胞よりも分化状態が低い細胞である。リプログラミングした細胞と対比して「リプログラミングしている細胞」とは、多能性幹細胞の形態またはOCT4、NANOG、SOX2、SSEA4、TRA181、CD30および/またはCD50などの安定した内在性多能性遺伝子発現を含む、多能性細胞の特徴を持たずに移行形態(すなわち、形態の変化)を示す、多能性状態へのリプログラミング/脱分化を受けている非多能性細胞を指す。リプログラミングしている細胞の移行形態は、リプログラミング誘導前の開始非多能性細胞と、ならびに胚幹細胞の特徴的な形態を有するリプログラミングした細胞と、区別される。例えば、線維芽細胞をリプログラミングする場合、リプログラミングしている細胞の形態学的変化はMET(間葉から上皮への転換)を含む。当業者は、リプログラミングが誘導される様々なタイプの体細胞のこのような移行形態を容易に理解および特定する。いくつかの実施形態では、リプログラミングしている細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8日以上、ただし21、22、24、26、28、30、32、35、40日以下の、またはそれらの間の任意の日数の間でリプログラムするように誘導された中間細胞であって、この細胞は自己維持self-maintaining)または自己持続的多能性状態になっていないものである。非多能性細胞は、細胞に1つ以上のリプログラミング因子が導入されると、リプログラミングするように誘導される。1、2、3、または4日間リプログラミングするように誘導されたリプログラミングしている細胞は、リプログラミング因子の形質導入後1、2、3、または4日の細胞である(形質導入の日は0日目である)。リプログラミング因子の外因性発現に曝される前の体細胞とは異なり、リプログラミングしている細胞はリプログラミングプロセスを進行させて安定した多能性状態に到達し、十分な時間が与えられている限り、外因性発現リプログラミング因子が存在しなくてもリプログラミングした細胞になる。
【0041】
本明細書で使用する「人工多能性幹細胞」または「iPSC」という用語は、幹細胞が、中胚葉、内胚葉、および外胚葉の3つ全ての胚葉または皮層の組織に分化できる細胞に誘導または変化されている(すなわち、リプログラミングした)、分化した成人、新生児または胎児細胞から産生されることを意味する。
【0042】
本明細書で使用される「胚性幹細胞」という用語は、胚盤胞の内部細胞塊の天然起源の多能性幹細胞を指す。胚性幹細胞は多能性であり、発達中に外胚葉、内胚葉、および中胚葉の3つの主要な胚芽のすべての誘導物を発生させる。それらは、胚体外膜または胎盤に寄与せず、全能性ではない。
【0043】
本明細書で使用する「多分化能幹細胞」という用語は、3つすべてではなく1つ以上の胚葉(外胚葉、中胚葉および内胚葉)の細胞に分化する発生能を有する細胞を指す。したがって、多分化能細胞は「部分的に分化した細胞」とも呼ばれ得る。多分化能細胞は当技術分野で周知であり、多分化能細胞の例には、例えば造血幹細胞および神経幹細胞などの成体幹細胞が含まれる。「多分化能」は、細胞が特定の系統で多くの種類の細胞を形成する可能性があるが、他の系統の細胞は形成できないことを示す。例えば、多分化能造血細胞は、さまざまな種類の血液細胞(赤血球、白血球、血小板など)を形成できるが、ニューロンを形成することはできない。したがって、「多分化能」という用語は、全能性および多能性よりも低い発生能の程度を有する細胞の状態を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「多能性」という用語は、細胞が体または体細胞のすべての系統(すなわち、胚本体(embryo proper))を形成する能力を指す。たとえば、胚性幹細胞は、3つの胚葉、外胚葉、中胚葉、および内胚葉のそれぞれから細胞を形成できる多能性幹細胞の一種である。多能性は、完全な生物を生じさせることができない、不完全または部分的な多能性細胞(例えば、胚盤葉上層幹細胞またはEpiSC)から、完全な生物を生じさせることができるより原始的でより多能性の細胞(例えば、胚性幹細胞)に及ぶ発生能の連続体である。
【0045】
多能性は、一部には、細胞の多能性特性を評価することにより決定できる。(i)多能性幹細胞の形態、(ii)無制限の自己再生の可能性、(iii)SSEA1(マウスのみ)、SSEA3/4、SSEA5、TRA1-60、TRA1-81、TRA1-85、TRA2-54、GCTM-2、TG343、TG30、CD9、CD29、CD133/プロミニン、CD140a、CD56、CD73、CD90、CD105、OCT4、NANOG、SOX2、CD30および/またはCD50を含むがこれらに限定されない多能性幹細胞マーカーの発現、(iv)3つの体細胞系統すべて(外胚葉、中胚葉、内胚葉)に分化する能力、(v)3つの体細胞系統からなる奇形腫の形成、(vi)3つの体細胞系統の細胞からなる胚様体の形成、が含まれる。
【0046】
2種類の多能性が既に記載されており、後期胚盤胞の胚盤葉上層幹細胞(EpiSC)に似た「プライミングした」または「準安定」状態の多能性および、初期/着床前胚盤胞の内部細胞集団に似た「ナイーブ」または「基底」状態の多能性である。両方の多能性状態は上記のような特徴を示すが、ナイーブまたは基底状態はさらに、(i)雌性細胞におけるX染色体の不活性化前または再活性化、(ii)単一細胞培養中のクローン性と生存率の向上、(iii)DNAメチル化の全体的な減少、(iv)発達調節遺伝子プロモーター上のH3K27me3抑制クロマチンマーク沈着の減少、および(v)プライミングした状態の多能性細胞と比較して分化マーカーの減少した発現、を示す。外因性多能性遺伝子が体細胞に導入され、発現され、その後、結果として生じる多能性細胞から発現抑制されまたは取り外される、細胞リプログラミングの標準的な方法論は、一般に、プライミング状態の多能性の特徴を有していると見られている。標準的な多能性細胞培養条件下では、外因性の導入遺伝子の発現が維持されない限り、そのような細胞はプライミング状態のままになり、基底状態の特性が観察される。
【0047】
本明細書で使用される「多能性幹細胞形態」という用語は、胚性幹細胞の古典的な形態学的特徴を指す。正常な胚性幹細胞の形態は、丸くコンパクトな形状、高い核対細胞質比、核小体の顕著な存在、および典型的な細胞空間によって特徴付けられる。
【0048】
「多能性因子」または「リプログラミング因子」とは、細胞の発生能を誘導または高めるために使用される薬剤または薬剤の組み合わせを指す。多能性因子には、細胞の発生能を高めることができるポリヌクレオチド、ポリペプチド、および小分子が含まれるが、これらに限定されない。例示的な多能性因子には、例えば、転写因子OCT4およびSOX2、ならびに小分子リプログラミング剤、例えばTGFβ阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびROCK阻害剤が含まれる。
【0049】
本明細書で使用される「分化」という用語は、特殊化していない(「コミットしていない」)またはあまり特殊化していない細胞が、例えば血液細胞または筋肉細胞などの特殊化した細胞の特徴を獲得するプロセスである。分化した細胞または分化誘導された細胞は、細胞の系統内でより特殊化した(「コミットした」)位置を占めている細胞である。「コミットした」という用語は、分化のプロセスに適用される場合、通常の状況下では特定の細胞型または細胞型のサブセットに分化し続けるポイントまで分化経路中で進行した細胞を指し、通常の状況下では、異なる細胞型に分化すること、または低分化細胞型に戻すことはできない。
【0050】
多能性幹細胞の分化には、培地の刺激剤や細胞の物理的状態の変化など、培養システムの変更が必要である。最も従来の戦略は、系統特異的分化を開始するための共通かつ重要な中間体として胚様体(EB)の形成を利用する。「胚様体」は、三次元領域内に多数の系統を生じるため、胚発生を模倣することが示されている三次元クラスターである。通常、数時間から数日、分化プロセスを経て、単純なEB(例えば、分化するように誘発された凝集多能性幹細胞)は成熟を続け、嚢胞性EBに発達し、このとき、通常は数日から数週間、それらはさらに処理されて分化を続ける。EB形成は、多能性幹細胞を細胞の三次元多層クラスターで互いに近接させることで開始され、通常、これは、多能性細胞を液滴に沈降させること、細胞を「U」底ウェルプレートに沈降させることなどを含む、いくつかの方法の1つによって、または機械的攪拌によって達成される。多能性培養維持培地で維持された凝集体は適切なEBを形成しないため、EB発生を促進するために、多能性幹細胞凝集体はさらなる分化の合図(cue)を必要とする。そのようなものとして、多能性幹細胞凝集体は、選択された系統に向けて誘発する合図を提供する分化培地に移される必要がある。多能性幹細胞のEBベースの培養では、通常、EB細胞クラスター内での適度な増殖を伴う分化細胞集団(外胚葉、中胚葉、内胚葉の胚葉)が生成される。しかし、細胞分化を促進することが証明されているが、環境からの分化合図への三次元構造内の細胞の一貫性のない暴露により、EBはさまざまな分化状態の異種細胞を生じさせる。さらに、EBは作成と維持が困難である。さらに、EBを介した細胞分化には適度な細胞増殖が伴い、これも低い分化効率に寄与する。
【0051】
これに対して、「EB形成」とは異なる「凝集体形成」を使用して、多能性幹細胞由来細胞の集団を拡大することができる。例えば、凝集体ベースの多能性幹細胞の増殖中、増殖と多能性を維持するために培地が選択される。一般に、細胞増殖は凝集体のサイズを増大させて、より大きな凝集体が形成させ、これらの凝集体は、機械的または酵素的に日常的に小さな凝集体に解離して、培養内の細胞増殖を維持し、細胞数を増やすことができる。EB培養とは異なり、維持培養の凝集体内で培養された細胞は多能性のマーカーを維持する。多能性幹細胞凝集体は、分化を誘導するためにさらなる分化の合図を必要とする。
【0052】
本明細書で使用される「単層分化」は、細胞の三次元多層クラスターによる分化、すなわち「EB形成」とは異なる分化方法を指す用語である。本明細書に開示される他の利点の中でも単層分化は、分化開始のためのEB形成の必要性を回避する。単層培養はEB形成などの胚発生を模倣しないため、特定の系統への分化は、EBの3つすべての胚葉分化と比較して最小限と見なされる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「解離した」細胞とは、他の細胞または表面(例えば、培養プレート表面)から離れて実質的に分離または精製された細胞を指す。例えば、機械的または酵素的方法により、細胞を動物または組織から解離させることができる。あるいは、インビトロで凝集する細胞は、クラスター、単一細胞、または単一細胞とクラスターの混合物の懸濁液への解離などにより、酵素的または機械的に互いに解離することができる。さらに別の代替的実施形態では、接着細胞は培養プレートまたは他の表面から解離される。したがって、解離には、細胞外マトリックス(ECM)および基質(培養表面など)との細胞相互作用の破壊、または細胞間のECMの破壊が含まれる。
【0054】
本明細書で使用される「フィーダー細胞」または「フィーダー」は、第2のタイプの細胞と共培養されて、フィーダー細胞が第2の細胞型のサポートのための成長因子と栄養分を提供するため、第2のタイプの細胞が成長できる環境を提供する、1つの型の細胞を説明する用語である。フィーダー細胞は、それらがサポートしている細胞とは異なる種に由来するものであってもよい。例えば、幹細胞を含む特定のタイプのヒト細胞は、マウス胚性線維芽細胞または不死化マウス胚性線維芽細胞の初代培養によってサポートされる。フィーダー細胞は、通常、それらがサポートしている細胞から成長するのを防ぐために、照射またはマイトマイシンなどの抗有糸分裂剤での処理により他の細胞と共培養される場合、不活性化され得る。フィーダー細胞には、内皮細胞、間質細胞(例えば、上皮細胞または線維芽細胞)、および白血病細胞が含まれ得る。前述を制限することなく、1つの特定のフィーダー細胞型は、ヒト皮膚線維芽細胞などのヒトフィーダーであり得る。別のフィーダー細胞型は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)であり得る。一般に、多能性を維持し、特定の系統への分化を指示し、エフェクター細胞などの特殊化した細胞型への成熟を促進するために、さまざまなフィーダー細胞を部分的に使用できる。
【0055】
本明細書で使用される「フィーダーフリー」(FF)環境は、フィーダー細胞を本質的に含まない、および/またはフィーダー細胞の培養によって事前調整していない培養条件、細胞培養または培地などの環境を指す。「事前調整した」培地とは、少なくとも1日などの期間、フィーダー細胞が培地内で培養された後に収集された培地を指す。事前調整した培地は、フィーダー細胞から分泌される増殖因子やサイトカインなど、多くのメディエーター物質を含有している。いくつかの実施形態では、フィーダーフリー環境はフィーダー細胞を含まず、またフィーダー細胞の培養によって事前調整もされていない。フィーダー細胞には、間質細胞、マウス胚性線維芽細胞、ヒト線維芽細胞、ケラチン生成細胞、および胚性幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
「培養」または「細胞培養」とは、インビトロ環境での細胞の維持、成長、および/または分化を指す。「細胞培養培地」、「培養培地」(それぞれ単数の「培地(medium)」)、「サプリメント」および「培地サプリメント」とは、細胞培養を培養する栄養組成物を指す。
【0057】
「培養する」または「維持する」とは、例えば滅菌プラスチック(またはコーティングされたプラスチック)細胞培養皿またはフラスコで、組織外または体外の細胞を維持、増殖(成長)および/または分化させることを指す。「培養」または「維持すること」は、細胞を増殖および/または維持するのに役立つ栄養素、ホルモン、および/または他の因子の供給源として培地を利用してもよい。
【0058】
本明細書で使用する「継代」または「継代すること」とは、細胞が所望の程度まで増殖したときに、細胞を複数の細胞培養表面または培養器に細分するおよびプレーティングすることによって培養細胞を分割する行為を指す。いくつかの実施形態では、「継代」または「継代すること」とは、細胞を細分、希釈、およびプレーティングすることを指す。細胞が一次培養表面または培養器から次の表面または容器のセットに継代されるため、本明細書では後続の培養を「二次培養」または「最初の継代」などと呼ぶことがある。新しい培養器に細分およびプレーティングする各行為は、1継代と見なされる。いくつかの実施形態では、培養細胞は、1、2、3、4、5、6、7日以上ごとに継代される。いくつかの実施形態では、リプログラミング後に最初に選択されたiPSCは、3~7日ごとに1回継代される。
【0059】
iPSCのゲノム編集または修飾、およびそこから分化した由来非多能性細胞、または非多能性細胞のゲノム編集または修飾、およびそこからリプログラミングされた由来iPSC、の文脈で使用される「機能的」とは、(1)遺伝子レベルでの、成功したノックイン、ノックアウト、ノックダウン遺伝子発現、トランスジェニックまたは制御遺伝子発現、例えば、直接的なゲノム編集または修飾によって、または最初にゲノム操作された開始細胞からの分化またはリプログラミングを介する「伝達(passing-on)」によって達成される所望の細胞発達段階での誘導性または一時的発現、を指すか、または(2)細胞レベルでの、(i)直接ゲノム編集により前記細胞内で得られた遺伝子発現修飾、(ii)最初にゲノム操作された開始細胞からの分化またはリプログラミング介する「伝達」によって前記該細胞内で維持された遺伝子発現修飾、(iii)前記細胞の初期発生段階でのみ現れるか、分化またはリプログラミングを介して前記細胞を生じさせる開始細胞でのみ現れる、遺伝子発現修飾の結果としての前記細胞における下流遺伝子調節、または(iv)iPSC、前駆細胞、または脱分化細胞の起源で行われたゲノム編集または修飾から最初に誘導された、成熟細胞産物内に示される強化されたまたは新たに達成された細胞機能または属性、による、細胞機能/特性の成功した除去、追加、または変更、を指す。
【0060】
本明細書で使用される「遺伝的刷り込み」という用語は、供給源細胞(source cell)またはiPSCの優先的な治療属性に寄与し、供給源細胞由来のiPSC、および/またはiPSC由来の非天然造血系細胞に保持可能な遺伝的またはエピジェネティックな情報を指す。本明細書で使用される「供給源細胞」は、リプログラミングを介してiPSCを生成するために使用できる非多能性細胞であり、供給源細胞由来のiPSCのは、任意の造血系細胞を含む特定の細胞型にさらに分化し得る。供給源細胞由来のiPSC、およびそこから分化した細胞は、状況に応じてまとめて「由来細胞」と呼ばれることがある。本明細書で使用されるように、優先的な治療属性に寄与する遺伝的刷り込み(複数可)は、ドナー、疾患、もしくは治療応答に特異的な選択された供給源細胞をリプログラミングすることによって、またはiPSCにゲノム編集を使用して遺伝子組み換えモダリティを導入することによってのいずれかでiPSCに組み込まれている。具体的に選択されたドナー、疾患または治療状況から得られた供給源細胞の態様では、優先的な治療属性に寄与する遺伝的刷り込みは、根底にある分子事象が識別されているかどうかに関係なく、選択された供給源細胞の由来細胞に伝達される、保持可能な表現型、すなわち優先的な治療属性を明示する任意の状況に特異的な遺伝的またはエピジェネティックな修飾を含み得る。ドナー、疾患、または治療応答に特異的な供給源細胞は、iPSCおよび由来造血細胞に保持可能な遺伝的刷り込みを含むことができ、遺伝的刷り込みには、例えば、ウイルス特異的T細胞または不変のナチュラルキラーT(iNKT)細胞からの予め処理された(prearranged)単一特異性TCR、追跡可能で望ましい遺伝子多型、例えば、選択されたドナーの高親和性CD16受容体をコードする点突然変異のホモ接合体、および所定のHLA要件、すなわち、増加した集団のハプロタイプを示す選択されたHLAマッチした(HLA-matched)ドナー細胞が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用される場合、優先的な治療属性には、由来細胞の、改善された生着、輸送、ホーミング、生存率、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、生存、ならびに細胞毒性が含まれる。優先的な治療属性は、抗原ターゲティング受容体発現、HLAの提示またはその欠如、腫瘍微小環境に対する耐性、バイスタンダー免疫細胞の誘導と免疫調節、オフ腫瘍効果(off-tumor effect)の低減を伴う改善されたオンターゲット特異性(on-target specificity)、化学療法などの治療に対する耐性、にも関連し得る。
【0061】
本明細書で使用する「遺伝子修飾」は、(1)再編成、突然変異、遺伝的刷り込みおよび/またはエピジェネティックな修飾からの天然に由来するもの、または(2)細胞のゲノムへの挿入、削除または置換によるゲノム工学を通じて得られるものを含む、遺伝子編集を指す。本明細書で使用される遺伝子修飾は、ドナー、疾患、または治療応答に特異的である供給源特異的免疫細胞の1つ以上の保持可能な治療属性も含む。
【0062】
本明細書で使用される「増強された治療特性」という用語は、同じ一般的な細胞型の典型的な細胞と比較して増強された細胞の治療特性を指す。免疫細胞の文脈において、例えば、「増強された治療特性」を有するNK細胞は、典型的な、未修飾の、および/または天然起源のNK細胞と比較して、増強、改善、および/または拡大された治療特性を有するであろう。免疫細胞の治療特性には、細胞生着、輸送、ホーミング、生存率、自己再生、持続性、免疫応答制御と調節、生存、細胞毒性が含まれるが、これらに限定されない。免疫細胞の治療特性は、抗原ターゲティング受容体発現、HLAの提示またはその欠如、腫瘍微小環境に対する耐性、バイスタンダー免疫細胞の誘導と免疫調節、オフ腫瘍効果の低減を伴う改善されたオンターゲット特異性、化学療法などの治療に対する耐性によっても明らかである。
【0063】
「組み込み」とは、構築物の1つ以上のヌクレオチドが細胞ゲノムに安定して挿入されること、すなわち、細胞の染色体DNA内の核酸配列に共有結合されることを意味する。「標的化された組み込み」とは、構築物のヌクレオチド(複数可)が細胞の染色体またはミトコンドリアDNAの事前に選択された部位または「組み込み部位」に挿入されることを意味する。本明細書で使用される「組み込み」という用語は、組み込み部位での内在性配列またはヌクレオチドの欠失を伴うまたは伴わない、構築物の1つ以上の外因性配列またはヌクレオチドの挿入を包含するプロセスをさらに指す。挿入部位に欠失がある場合、「組み込み」は、1つ以上の挿入されたヌクレオチドで削除される内在性配列またはヌクレオチドの置換をさらに含んでもよい。
【0064】
「構築物」とは、インビトロまたはインビボのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子または分子の複合体を指す。本明細書で使用される「ベクター」とは、複製および/または発現することができる標的細胞への外来遺伝物質の送達または移入を指示することができる任意の核酸構築物を指す。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、送達される構築物を含む。ベクターは、線状または環状分子である。ベクターは、組み込みまたは非組み込み可能である。ベクターの主要な種類には、プラスミド、エピソームベクター、ウイルスベクター、コスミド、および人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「コードする」という用語は、ヌクレオチドの定義された配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の定義された配列およびそれから生じる生物学的特性のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のためのテンプレートとして役立つ、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生体システムでタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に記載されているコーディング鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コーディング鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードするものと呼ぶことができる。
【0066】
本明細書で使用される「外因性」という用語は、参照分子または参照活性が宿主細胞に導入されることを意味することを意図している。分子は、例えば、宿主染色体への組み込みなどにより、またはプラスミドなどの非染色体遺伝物質として、コード化核酸を宿主遺伝物質に導入することにより導入することができる。したがって、コード化核酸の発現に関して使用される用語は、細胞への発現可能な形態のコード化核酸の導入を指す。「内在性」という用語は、宿主細胞に存在する参照分子または活性を指す。同様に、この用語は、コード化核酸の発現に関して使用される場合、細胞内に含有され、外因的に導入されないコード化核酸の発現を指す。
【0067】
本明細書で使用する「目的の遺伝子」または「目的のポリヌクレオチド配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれた場合、RNAに転写され、場合によってはポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。目的の遺伝子またはポリヌクレオチドには、原核生物配列、真核生物mRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、目的の遺伝子は、miRNA、shRNA、天然のポリペプチド(すなわち、自然界に見られるポリペプチド)またはその断片、をコードし得る。バリアントポリペプチド(すなわち、天然ポリペプチドと100%未満の配列同一性を有する天然ポリペプチドの変異体)またはその断片、操作したポリペプチドまたはペプチド断片、治療用のペプチドまたはポリペプチド、イメージングマーカー、選択可能なマーカーなど、をコードし得る。
【0068】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドもしくはそれらの類似体の任意の長さのヌクレオチドの重合形態を指す。ポリヌクレオチドの配列は、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびポリヌクレオチドがRNAの場合、チミンの代わりにウラシル(U)で構成されている。ポリヌクレオチドには、遺伝子または遺伝子断片(プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグなど)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離したDNA、任意の配列の単離したRNA、核酸プローブおよびプライマーを含むことができる。ポリヌクレオチドはまた、二本鎖と一本鎖の両方の分子も指す。
【0069】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、ペプチド結合により共有結合したアミノ酸残基を有する分子を指す。ポリペプチドには少なくとも2つのアミノ酸を含有している必要があり、ポリペプチドの最大アミノ酸数に制限はない。本明細書で使用する用語は、例えば当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短鎖と、当技術分野で一般にポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる長鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドには、天然ポリペプチド、組み換えポリペプチド、合成ポリペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0070】
「作動可能に連結された」とは、一方の機能が他方によって影響されるように、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列または機能的RNAの発現に影響を与えることができる場合(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある場合)、コード配列または機能的RNAと作動可能に連結される。コード配列は、センスまたはアンチセンスの向きで調節配列に作動可能に連結することができる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「エンゲージャー(engager)」という用語は、免疫細胞、例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、好中球と、腫瘍細胞との間に連結を形成して、免疫細胞を活性化することができる分子、例えば融合ポリペプチドを指す。エンゲージャーの例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー、または多重特異性キラー細胞エンゲージャー、または複数の免疫細胞型と互換性のあるユニバーサルエンゲージャーが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される場合、「表面トリガー受容体」という用語は、免疫応答、例えば細胞傷害性応答を誘発または開始することができる受容体を指す。表面トリガー受容体は操作することができ、エフェクター細胞、例えばT細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、好中球において発現できる。いくつかの実施形態において、表面トリガー受容体は、エフェクター細胞の天然受容体および細胞型とは無関係に、エフェクター細胞と特定の標的細胞、例えば腫瘍細胞との間の二重または多重特異性抗体の関与を促進する。このアプローチを使用して、ユニバーサル表面トリガー受容体を含むiPSCを生成し、そのようなiPSCを、ユニバーサル表面トリガー受容体を発現する様々なエフェクター細胞型の集団に分化させることができる。「ユニバーサル」とは、細胞型に関係なく、表面トリガー受容体を任意のエフェクター細胞で発現および活性化でき、ユニバーサル受容体を発現するすべてのエフェクター細胞が、エンゲージャーの腫瘍結合特異性に関係なく、表面トリガー受容体により認識可能な同じエピトープを有するエンゲージャーに結合または連結できることを意味する。いくつかの実施形態では、同じ腫瘍ターゲティング特異性を有するエンゲージャーが、ユニバーサル表面トリガー受容体と結合するのに使用される。いくつかの実施形態では、異なる腫瘍ターゲティング特異性を有するエンゲージャーが、ユニバーサル表面トリガー受容体と結合するのに使用される。そのため、1つまたは複数のエフェクター細胞型を関与させて、1つの特定の種類の腫瘍細胞を死滅させる場合もあれば、2種類以上の腫瘍を死滅させる場合もある。表面トリガー受容体は一般に、エフェクター細胞活性化のための共刺激ドメインと、エンゲージャーのエピトープに特異的な抗エピトープを含む。二重特異性エンゲージャーは、一方の端で表面トリガー受容体の抗エピトープに特異的であり、他方の端で腫瘍抗原に特異的である。
【0073】
本明細書で使用される「安全スイッチタンパク質」という用語は、細胞療法の潜在毒性またはその他の有害作用を防ぐように設計された操作したタンパク質を指す。場合によっては、安全スイッチタンパク質の発現を条件付きで制御して、安全スイッチタンパク質をコードする遺伝子をそのゲノムに永続的に組み込んだ移植された操作した細胞の安全性の懸念に対処する。この条件付き調節は可変であり得、小分子を介した翻訳後活性化および組織特異的および/または一時的な転写調節による制御が含まれ得る。安全スイッチは、アポトーシスの誘導、タンパク質合成の阻害、DNA複製、成長停止、転写および転写後の遺伝的調節、および/または抗体媒介枯渇を媒介する可能性がある。いくつかの例では、安全スイッチタンパク質は、活性化されると、アポトーシスおよび/または治療細胞の細胞死を引き起こす、外因性分子、例えばプロドラッグによって活性化される。安全スイッチタンパク質の例には、カスパーゼ9(またはカスパーゼ3または7)のような自殺遺伝子、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、B細胞CD20、修飾EGFR、およびそれらの任意の組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されない。この戦略では、有害事象の発生時に投与されるプロドラッグは、自殺遺伝子産物によって活性化され、形質導入細胞を死滅させる。
【0074】
本明細書で使用される「薬学的に活性なタンパク質またはペプチド」という用語は、生物に対して生物学的および/または薬学的効果を達成することができるタンパク質またはペプチドを指す。薬学的に活性なタンパク質は、病気に対する治癒的または緩和的な特性を有しており、病気の重症度を寛解、緩和、和らげ、逆転または軽減させるために投与することができる。薬学的に活性なタンパク質は予防的性質も有しており、疾患の発症を予防するため、または発症した場合、そのような疾患または病状の重症度を軽減させるために使用される。薬学的に活性なタンパク質には、タンパク質またはペプチド全体またはその薬学的に活性な断片が含まれる。また、タンパク質またはペプチドの薬学的に活性な類似体、またはタンパク質またはペプチドの断片の類似体も含まれる。薬学的に活性なタンパク質という用語はまた、治療的利益を提供するために協同的または相乗的に作用する複数のタンパク質またはペプチドも指す。薬学的に活性なタンパク質またはペプチドの例には、受容体、結合タンパク質、転写および翻訳因子、腫瘍成長抑制タンパク質、抗体またはその断片、成長因子、および/またはサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用される「シグナル伝達分子」という用語は、細胞シグナル伝達を調節、関与、阻害、活性化、減少、または増加させる任意の分子を指す。シグナル伝達とは、最終的に細胞内で生化学的事象を引き起こす経路に沿ったタンパク質複合体の動員による化学修飾の形での分子シグナルの伝達を指す。シグナル伝達経路は当技術分野で周知であり、Gタンパク質共役受容体シグナル伝達、チロシンキナーゼ受容体シグナル伝達、インテグリンシグナル伝達、トールゲートシグナル伝達、リガンド依存性イオンチャネルシグナル伝達、ERK/MAPKシグナル伝達経路、Wntシグナル伝達経路、cAMP依存性経路、およびIP3/DAGシグナル伝達経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用する「ターゲティングモダリティ」という用語は、細胞に遺伝的に組み込まれて抗原および/またはエピトープ特異性を促進する分子、例えばポリペプチドを指し、この特異性には、i)それが独特のキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)に関連する抗原特異性、ii)それがモノクローナル抗体または二重特異性エンゲージャーに関連するエンゲージャー特異性、iii)形質転換細胞のターゲティング、iv)がん幹細胞のターゲティング、v)特異的抗原または表面分子がない場合のその他のターゲティング戦略、が含まれるが、これに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「特異的」または「特異性」は、非特異的または非特異的結合とは対照的に、標的分子に選択的に結合する分子、例えば受容体またはエンゲージャーの能力を指す。
【0078】
HLAクラスI欠損、HLAクラスII欠損、またはその両方を含む「HLA欠損」とは、HLAクラスIタンパク質ヘテロダイマーおよび/またはHLAクラスIIヘテロダイマーを含む完全なMHC複合体の表面発現レベルが欠如しているか、もはや維持されていないか、レベルが低下しており、このため減少または減少したレベルが、他の細胞によってまたは合成方法よって本来的に検出可能なレベルよりも低くなる、細胞を指す。HLAクラスI欠損症は、HLAクラスI遺伝子座(染色体6p21)の任意の領域の機能的欠失、または、ベータ2ミクログロブリン(B2M)遺伝子、TAP 1遺伝子、TAP 2遺伝子およびタパシンを含むが、これに限定されない、HLAクラスI関連遺伝子の発現レベルの欠失もしくは減少によって構築され得る。HLAクラスII欠損症は、RFXANK、CIITA、RFX5およびRFXAPを含むがこれらに限定されないHLA-II関連遺伝子の機能的欠失または減少によって構築され得る。本発明以前には、HLA複合体欠損iPSCまたは改変iPSCが、調節された活性を保持しながら、発達し、成熟し、機能的分化細胞を生成する能力を有するかどうかは不明であった。さらに、本発明以前には、HLA複合体欠損分化細胞をiPSCに再プログラムし、HLA複合体欠損を有しながら多能性幹細胞として維持できるかどうかは不明であった。細胞のリプログラミング、多能性の維持および分化中の予期しない失敗は、発達段階の特異的遺伝子発現もしくはその欠如、HLA複合体の提示の要件、導入された表面発現モダリティのタンパク質脱落、適切なおよび効率的なクローンのリプログラミングの必要性、および分化プロトコルの再構成の必要性、を含むがこれらに限定されない態様に関連している可能性がある。
【0079】
本明細書で使用される「修飾HLA欠損iPSC」は、改善された分化能、抗原ターゲティング、抗原提示、抗体認識、持続性、免疫回避、耐性に対する抑制、増殖、共刺激、サイトカイン刺激、サイトカイン産生(オートクリンまたはパラクリン)、走化性、および非古典的なHLAクラスIタンパク質(例えば、HLA-EおよびHLA-G)などの細胞毒性、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、CD16 Fc受容体、BCL11b、NOTCH、RUNX1、IL15、41BB、DAP10、DAP12、CD24、CD3z、41BBL、CD47、CD113、およびPDL1、に関連するがこれに限定されないタンパク質を発現する遺伝子を導入することによってさらに修飾されるHLA欠損iPSCを指す。「修飾HLA欠損」である細胞には、iPSC以外の細胞も含まれる。
【0080】
FcRと略される「Fc受容体」は、認識する抗体の種類に基づいて分類される。例えば、最も一般的なクラスの抗体であるIgGに結合するものはFc-ガンマ受容体(FcγR)と呼ばれ、IgAに結合するものはFc-アルファ受容体(FcαR)と呼ばれ、IgEに結合するものはFc-イプシロン受容体(FcεR)と呼ばれる。FcRのクラスは、それらを発現する細胞(マクロファージ、顆粒球、ナチュラルキラー細胞、TおよびB細胞)および各受容体のシグナル伝達特性によっても区別される。Fc-ガンマ受容体(FcγR)には、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)など、分子構造が異なるため抗体親和性が異なるいくつかのメンバーが含まれる。
【0081】
CD16は、Fc受容体FcγRIIIa(CD16a)およびFcγRIIIb(CD16b)の2つのアイソフォームとして同定されている。CD16aはNK細胞によって発現される膜貫通タンパク質であり、標的細胞に付着した単量体IgGに結合してNK細胞を活性化し、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)を促進する。本明細書で使用される「高親和性CD16」、「非切断性CD16」、または「高親和性非切断性CD16」は、CD16のバリアントを指す。野生型CD16は親和性が低く、NK細胞の活性化時に、白血球上の様々な細胞表面分子の細胞表面密度を制御するタンパク質分解的切断プロセスであるエクトドメイン(extodomain)脱落の影響を受ける。F176VおよびF158Vは、高い親和性を有する例示的なCD16バリアントであり、一方、S197Pバリアントは、CD16の非切断性バージョンの例である。
【0082】
本明細書で使用される「養子細胞療法」という用語は、本明細書で使用される場合、自己または同種リンパ球の輸血に関する細胞ベースの免疫療法であって、リンパ球が、遺伝子組み換えされているか否かにかかわらず、前記輸血前にエクスビボで増加されている、CD34細胞、造血性内皮細胞、造血幹細胞もしくは前駆細胞、造血多分化能前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、または、免疫制御性細胞などであるものである。
【0083】
本明細書で使用される「治療上十分な量」は、その意味内に、所望の治療効果を提供することに言及している特定の治療および/または薬学的組成物の非毒性であるが十分かつ/または有効量を含む。必要な正確な量は、患者の全般的な健康状態、患者の年齢、病状の段階と重症度などの要因に応じて、対象ごとに異なる。特別な実施形態では、治療的に十分な量は、治療される対象の疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を寛解、減少、および/または改善させるのに十分および/または有効である。
【0084】
本明細書で使用される「対象」という用語は、任意の動物、好ましくはヒト患者、家畜、または他の家畜動物を指す。
【0085】
本明細書で使用する「治療する」、「治療」などの用語は、治療的治療を必要とする対象に関して使用する場合、疾患の症状の改善または排除を達成することを含むがこれに限定されない、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。その効果は、疾患またはその症状を完全または部分的に防止する観点で予防的であり得、および/または症状の改善もしくは排除を達成する、または疾患および/またはその疾患に起因する有害作用の部分的または完全な治癒を提供する観点で治療的であり得る。「治療」という用語は、哺乳動物、特にヒトの疾患の治療を含み、(a)疾患の素因となり得るが、それを有するとまだ診断されていない対象において疾患が発生するのを防ぐこと、(b)病気を抑制する、またはその発生を阻止すること、(c)疾患を緩和する、または疾患の退行を引き起こす、または疾患の症状を完全にまたは部分的に排除すること、(d)造血系を再構成するなど、個体を病前状態に回復させること、を含む。
【0086】
I.新規のリプログラミングシステムとそこから生成される細胞
一般に、本開示は、非多能性細胞と少なくとも1つのリプログラミング因子とを、任意選択的にTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤およびROCK阻害剤の組み合わせ(FRM、表1)の存在下で接触させることにより、開始されるリプログラミングプロセスを提供する。
【表1】
【0087】
本発明の一態様は、一過性かつ一時的な導入遺伝子発現を媒介するプラスミドシステムを使用して、フットプリントフリーのiPSCを得る方法を提供する。このプラスミドシステムは、複製起点およびリプログラミング因子(複数可)をコードするがEBNAを含まないポリヌクレオチドを保有する1つ以上の第1のプラスミド(V1)と、EBNAをコードするポリヌクレオチドを含むが複製起点またはリプログラミング因子コード化配列を含まない第2のプラスミド(V2)とを含む。
【0088】
プラスミドの組み合わせにより、形質導入時に細胞内で一時的に導入遺伝子(EBNAおよび外因性リプログラミング因子)の細胞質発現が可能になり、移行性形態または形態的変化(例えば間葉から上皮へ転換(MET))を示すが、OCT4などの多能性細胞の形態または内在性の多能性遺伝子発現を欠く、EBNAを含まない中間細胞の集団で、まだ安定した自己持続的多能性状態に入ることができるものが生成される。したがって、この明確な細胞集団は「リプログラミング細胞」と呼ばれる。本明細書に記載のリプログラミング細胞はまた、形態的だけでなく機能的にも、リプログラミング因子の導入前の体細胞とは異なり、リプログラミングプロセス(例えば、FMM)をサポートする培養条件下で、十分な時間を与えれば、多能性状態にリプログラミングすることができる。したがって、本開示の一態様は、移行形態を有し、リプログラミングプロセスを実行して安定な多能性状態を確立することができるEBNAを含まないリプログラミング細胞を提供する。いくつかの実施形態では、EBNAを含まないリプログラミング細胞は導入遺伝子を含まない。そのため、結果として得られるiPSC集団とiPSCは、EBNAに対する選択や、エピソームリプログラミングで必要なEBNAと導入遺伝子を排除するための連続継代を必要としない、フットプリントフリーである。さらに、この一過性かつ一時的な短命プラスミドシステムを使用して生成されたiPSCには、クローン性および遺伝的安定性の向上、高い均質性、高い正常核型率、最小限の復帰または自発的分化などの特性の少なくとも1つを有し、フィーダー条件の有無にかかわらず、単一細胞の生存および選別、長期的な増加および自己再生、単層分化が可能である。
【0089】
iPSCを生成するために、外因的に導入されたリプログラミング因子を少なくとも10-12日間発現させる必要があることは、この分野で一般に受け入れられている(Okita et al.,Science(2008);322:949-953、Brambrink et al.,Cell Stem Cell(2008);2(2):151-159、Stadtfeld et al.,Cell Stem Cell(2008);2(3):230-240)。外因性転写因子のアデノウイルス形質導入には、非組み込みウイルスベクターによって媒介される遺伝子発現の一過性の性質のため、繰り返しトランスフェクションが必要な場合がある。さらに、アデノウイルス法を使用するリプログラミング効率は、マウスではわずか0.001~0.0001%(Stadtfeld et al.,Science(2008);322:945-946)、ヒト細胞では0.0002%(Zhou et al.,Stem Cells(2009);27:2667-2674)である。センダイウイルスベクター媒介リプログラミングの場合、このウイルスベクターは長期間にわたって大量の外因性タンパク質を連続的に産生して多能性を維持するために導入遺伝子発現に特定の依存性を生成することができるため、複数の形質導入は必要ない。センダイウイルスは、新生児および成人の線維芽細胞と血球を約25日で0.1%~1%の高い効率でリプログラミングできる。ただし、最近リプログラミングされたiPSCからウイルスが完全に失われるには、約10継代がかかり、これは、DNA組み込みの可能性の増加、または多能性遺伝子の内在性回路ではなく導入遺伝子発現によってサポートされるiPSC様クローンの選択の増加を含む、センダイベースのリプログラミングの欠点とみなされる(Fusaki et al.,Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci.(2009);85:348-362、Seki et al.,Cell Stem Cell(2010);7:11-14、Ban et al.,PNAS(2011);108:14234-14239)。
【0090】
プロモーターと導入遺伝子(複数可)を含有するプラスミドは、核内への取り込みが悪く、複製可能ではなく、トランスフェクトされた細胞から急速に失われる。iPS細胞を生成するために使用した場合、ミニサークルDNAベクター(細菌DNAを含まない、最小プラスミド)を含むプラスミドベクターは、フィーダー条件下で許容できないほど低い効率でリプログラミングした細胞を生じ、毎日のトランスフェクションを繰り返したことによってのみ、効率的なリプログラミングが見られるが、多くの場合、トランスフェクトされた導入遺伝子の宿主ゲノム組み込みが生じる(Okita et al.,Science(2008);322:949-953:毎日のトランスフェクションを繰り返して標準プラスミドを使用し、ゲノム組み込みを観察した;10E6個の細胞から1~4個の組み込みのないクローンを得た;Narsinh et al.,Nat Protoc.(2011);6(1):78-88:約0.005%の効率である)。
【0091】
プラスミドと比較して、エピソームは細胞質内で自律的か、または分裂している宿主細胞の染色体とともに維持および複製できる。エピソームベクター媒介細胞のリプログラミングは、主にエプスタインバーウイルス(EBV)ベースのエピソームベクターの適用に示される。目的の外因性遺伝子(複数可)に加えて、EBVベースのエピソームベクターは、エプスタイン-バー核抗原-1(EBNA1)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、EBVに由来する複製起点(oriP)を保有する。EBNAは細胞染色体に結合し、ベクターの核局在化とoriPの姉妹染色分体へのテザリングを可能にする。したがって、安定的に発現されたEBNAはoriPと共同して、分裂細胞の核内でエピソームベクターを複製および保持し、細胞内のEBNAを含む外因性遺伝子の安定的な長期発現を提供し、エピソームベクターは通常約4~8週間持続するため、導入遺伝子組み込みの可能性を高める(Yates et al.,1984,1985、Reisman et al.,1985、Sugden et al.,1985)。oriP/EBNAエピソームベクターは、プラスミドのリプログラミングと比較してリプログラミング効率を改善するが、それでも0.006%~0.1%の不満足な範囲である(Malik et al.,Methods Mol Biol.(2013);997:23-33)。
【0092】
EBNAが複製および転写されるoriPと同じベクターで連続的にEBNAを発現する以外に、EBNAコード化配列を宿主細胞のゲノムに組み込んで、oriPおよび導入遺伝子を含有するベクターのトランスフェクション率を向上させる安定的に発現するEBNAも提供できる(Mazda et al.,1997,J.Immunol.Methods;204:143-151)。しかし、このような設計は、細胞をさらに操作することなく、最終的にフットプリントフリーの多能性細胞を得るという目的を達成できない。
【0093】
いくつかの実施形態では、本リプログラミングシステムは、少なくとも1つの第1のプラスミドおよび少なくとも1つの第2のプラスミドを含み、第1のプラスミドは、oriPと1つ以上のリプログラミング因子を提供するが、EBNAを提供しない構築物を有し、第2のプラスミドは、EBNAを提供するが、oriPまたはリプログラミング因子を提供しない構築物を有する。いくつかの実施形態では、リプログラミングシステムは2つ以上の第1のプラスミドを含み、各第1のプラスミドは同じまたは異なるリプログラミング因子またはそれらの組み合わせを提供する。このプラスミドシステムを使用するリプログラミングは、この分野で知られている従来のプラスミドのリプログラミング方法とは異なり、細胞への複数のトランスフェクション、導入遺伝子のゲノム組み込みは不要であり、しかも非常に高いリプログラミング効率を備えている。EBNAとリプログラミング因子(複数可)が同じ発現カセットに配置され、同じベクターにoriPが存在するエピソームリプログラミングと比較して、いくつかの実施形態のプラスミドシステムは、EBNA複製および/または核内のEBNAおよび導入遺伝子の連続発現を提供しないが、ただし、短期間、かつ多能性細胞形態の出現およびOCT4などの内在性多能性遺伝子の誘導発現の前の一過性/細胞質発現を可能にする。したがって、本開示は、エピソームの再プログラミングでフットプリントのないiPSCを取得するためのiPSCのポジティブセレクションまたは連続継代を除外する、初期段階(例えば、通常21~32日のリプログラミングプロセスのトランスフェクション後4~6日前後)でEBNA発現のないリプログラミング細胞から生成されるフットプリントフリーのiPSCを提供する。いくつかの実施形態では、EBNA発現ための短期間は、トランスフェクション後約4、5、6、7、または8日であるが、トランスフェクション後14、15、16、17、18、20、21、22、22、23、24または25日以下である。
【0094】
複製起点(oriP)は、DNA複製が開始する部位またはその近くの部位であり、2つのシス作用配列:FR(繰り返しのファミリー)、これはEBNA(エプスタイン-バー核抗原)-結合部位として、またシスのプロモーターについての転写エンハンサーとしても機能する、およびDS(2分子対称性要素)、これはFRのEBNA時のDNA合成の開始のためのもので、宿主細胞複製システムによって制御される、で構成される。FRサイトへのEBNAの結合は、細胞周期ごとに1回複製した後のoriPプラスミドの効率的な分配に影響し、oriPプラスミドを核に局在化させ、親細胞分裂時に両方の娘細胞でプラスミドの保持を維持する。一実施形態では、oriPは、パポバウイルス科(Papovaviridae)ウイルスまたはヘルペスウイルス科(Herpesviridae)ウイルスの複製起点であり得る。いくつかの実施形態では、oriPは、Polyomavirinaeウイルス、Papillomavirinaeウイルス、またはGammaherpesvirinaeウイルスの複製起点であり得る。いくつかの他の実施形態では、oriPは、SV40、BKウイルス(BKV)、ウシパピローマウイルス(BPV)、またはエプスタインバーウイルス(EBV)の複製起点であり得る。一実施形態では、oriPは、EBVの野生型複製起点に対応するか、または由来する。一実施形態では、EBNAは、EBVのEBNA-1に対応する野生型タンパク質に対応するポリペプチドまたは誘導体である(UniProtKB/Swiss-Prot受入番号:P03211;配列番号1)。EBNA-1の誘導体は、対応する野生型ポリペプチドと比較して、EBNA-1の1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入または置換を含む修飾アミノ酸配列を有するポリペプチドである。一実施形態では、EBNAの誘導体は、野生型EBNAと比較してトランケーションを含む。一実施形態では、トランケートしたEBNAタンパク質は配列番号2のポリペプチドを有する。他の実施形態では、EBNA-1の誘導体は、EBNA-1の残基約1~約90、残基1~約40、残基約41~約90、残基約91~約324(GAリッチリピート領域)、残基約325~約377、残基約378~約386、残基約451~約608、および/または残基約609~約641と、少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0095】
この分野での幹細胞のリプログラミングで知られているリプログラミング因子はすべて、本リプログラミングシステムおよび方法で使用できる。一実施形態では、リプログラミング因子には、OCT4、SOX2、NANOG、KLF、LIN28、c-MYC、ECAT1、UTF1、ESRRB、HESRG、CDH1、TDGF1、DPPA4、DNMT3B、ZIC3、およびL1TD1が含まれるが、これらに限定されない。これらのリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドは、oriPを含有するがEBNAを含まない同じプラスミド構築物(すなわち、同じ第1のプラスミド)に含まれてもよい。これらのリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドは、それぞれがoriPを含有するがEBNAを含まない少なくとも2つのプラスミド構築物(すなわち、複数の第1のプラスミド)に含まれ得る。これらのリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドは、ポリシストロン性構築物(すなわち、1つのプロモーターによって制御される複数のコード配列)または非ポリシストロン性構築物(一部は1つのプロモーターによって制御され、一部は異なるプロモーターによって制御される複数のコード配列)に含まれてもよい。プロモーターは、例えば、CMV、EF1α、PGK、CAG、UBC、および構成的、誘導的、内因的に制御された、または時間特異的、組織特異的もしくは細胞型特異的な他の適切なプロモーターであり得る。一実施形態では、プロモーターはCAGである。別の実施形態では、プロモーターはEF1αである。いくつかの実施形態では、ポリシストロン性構築物は、単一のオープンリーディングフレーム(例えば、2Aなどの自己切断性ペプチドコード化配列によって複数のコード配列が機能的に連結されている)または複数のオープンリーディングフレーム(例えば、内部リボソームエントリーサイト、またはIRESによって連結された複数のコード配列)を提供できる。
【0096】
本出願のプラスミドシステムのいくつかの実施形態では、1つ以上のプラスミド構築物(第1のプラスミド)は、OCT4、SOX2、NANOG、KLF、LIN28、c-MYC、ECAT1、UTF1、ESRRB、HESRG、CDH1、TDGF1、DPPA4、DNMT3B、ZIC3、およびL1TD1からなる群から選択される1つ以上のリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドを集合的に含む。いくつかの実施形態では、ただ1つの第1のプラスミド構築物のみがシステム内にあり、選択されたすべてのリプログラミング因子を提供する。いくつかの他の実施形態では、1つ以上のリプログラミング因子を提供する2つ以上の第1のプラスミド構築物があり、各構築物はポリヌクレオチドの少なくとも1つのコピーによりコードされる同じまたは異なるリプログラミング因子を含む。一実施形態では、システム内の1つ以上の第1のプラスミド構築物は、少なくともOCT4をコードするポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、1つ以上の第1のプラスミド構築物は、OCT4をコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドを集合的に含む。別の実施形態では、1つ以上の第1のプラスミド構築物は、OCT4およびSOX2をコードするポリヌクレオチドを集合的に含む。一実施形態では、1つ以上の第1のプラスミド構築物は、OCT4をコードするがc-MYCをコードしない少なくとも1つのポリヌクレオチドを集合的に含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の第1プラスミド構築物は、OCT4をコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、およびECAT1、UTF1、ESRRB、HESRG、CDH1、TDGF1、DPPA4、DNMT3B、ZIC3、およびL1TD1のうちの少なくとも1つをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを集合的に含む。
【0097】
第1のプラスミド構築物がリプログラミング因子をコードする2つ以上のポリヌクレオチドを含む場合、隣接するポリヌクレオチドは、自己切断性ペプチドまたはIRESをコードするリンカー配列により作動可能に連結される。自己切断性ペプチドは2Aペプチドであってもよい。2Aペプチドは、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ERAV(ウマ鼻炎Aウイルス)、PTV-1(ブタテスコウイルス-1)、またはTaV(トーシーアシグナウイルス(thosea asigna virus))に由来するものでよく、これらはそれぞれF2A、E2A、P2A、およびT2Aと呼ばれる。第1のプラスミド構築物中の複数の2Aペプチドは同じでも異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、2つの最も近くに隣接する2Aペプチドは異なり、例えば、RF-2A1-RF-2A2-RF-2A1であり、ここで2A1と2A2は異なる。
【0098】
第1のプラスミド構築物のライブラリを事前構築することができ、各構築物は、リプログラミング因子の様々な数、種類、および/または組み合わせをコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含有する。リプログラミングは、待ち時間が長く、非効率的で確率的なプロセスであることが知られている。発現のタイミングとレベル、およびリプログラミング因子の化学量論は、リプログラミングのさまざまな段階でのリプログラミング動態を促進させ、リプログラミングを受けている細胞の中間状態がリプログラミングの完了を決定する。リプログラミング因子の化学量論はまた、リプログラミング効率に影響し、プライミングした状態対基底状態の多能性などのさまざまな品質のiPSC、およびiPSCのクローン性、自己再生、均質性、および多能性の維持(自発的分化とは対照的)などの関連する生物学的特性を生成する。化学量論は、反応プロセスにおける試薬間の定量的関係を測定し、特定の反応に必要な試薬の量、および時には生成される生成物の量を決定するために使用される。化学量論は、化学量論量の試薬または化学量論比の試薬の両方を考慮し、これは反応を完了するための最適な量または試薬(複数可)の比率である。本出願の一態様は、1つ以上の第1のプラスミドをライブラリから好都合に選択し、様々うまく組み合わせ(mix-and-matched)、用量調整、および同時トランスフェクトすることにより、リプログラミング因子の化学量論を評価または利用するシステムおよび方法を提供する。
【0099】
本リプログラミングシステムの第2のプラスミドは、プロモーターおよびEBNAをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを提供し、発現カセットも第2のプラスミドもリプログラミング因子をコードするポリヌクレオチドを含まない。第2のプラスミドに含まれるプロモーターは、例えば、CMV、EF1α、PGK、CAG、UBC、および構成的、誘導的、内因的に制御された、または時間特異的、組織特異的もしくは細胞型特異的な他の適切なプロモーターであり得る。一実施形態では、プロモーターはCAGである。別の実施形態では、プロモーターはEF1αである。上記の少なくとも1つの第1プラスミドと第2プラスミドの組み合わせで非多能性細胞を同時トランスフェクトすることにより、スタンドアロンのEBNAとoriPが少なくとも1つのリプログラミング因子とともに非多能性細胞に導入され、リプログラミングを開始する。
【0100】
いくつかの実施形態では、リプログラミングは、TGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤を含む小分子化合物の組み合わせの存在下で開始され、iPSCは十分な期間後に生成される。いくつかの実施形態では、リプログラミングは、フィーダーフリー条件下で行われる。特別な実施形態では、フィーダーフリー環境は、ヒトフィーダー細胞を本質的に含まず、マウス胚性線維芽細胞、ヒト線維芽細胞、ケラチノサイト、および胚性幹細胞を含むがこれらに限定されないフィーダー細胞によって事前調整されない。
【0101】
いくつかの実施形態では、約7~35、10~32、15~31日間、約17~29日間、約19~27日間、または約21~約25日間誘導された後の細胞は、細胞が単一細胞の懸濁液に解離されるように酵素的または機械的手段のいずれかによって、任意選択的に解離にかけられる。解離細胞は、細胞を維持するため、または細胞選別を実行するための任意の適切な溶液または培地に再懸濁され得る。いくつかの実施形態では、単一解離細胞の懸濁液はROCK阻害剤を含む。いくつかの他の実施形態では、単一解離細胞の懸濁液は、GSK3阻害剤、MEK阻害剤、およびROCK阻害剤を含む。特別な実施形態では、単一細胞の懸濁液は、GSK3阻害剤、MEK阻害剤、およびRock阻害剤を含有し、TFGβ阻害剤を欠く。特定の実施形態では、GSK3阻害剤はCHIR99021であり、MEK阻害剤はPD0325901であり、および/またはロック阻害剤はチアゾビビンである。
【0102】
いくつかの実施形態では、単一解離細胞の懸濁液をさらに選別することができる。一実施形態では、濃縮は、比較的短い時間でクローンiPSCコロニーを誘導する方法を提供し、それによりiPSC生成の効率を改善する。濃縮は、多能性のマーカーを発現する細胞を特定および取得することにより、細胞の集団を選別し、それにより、濃縮された多能性細胞の集団を取得することを含み得る。追加の濃縮方法論は、分化、非リプログラミング細胞または非多能性細胞のマーカーを発現する細胞の枯渇を含む。いくつかの実施形態では、選別のための細胞は多能性細胞である。いくつかの実施形態では、選別のための細胞はリプログラミング細胞である。いくつかの実施形態では、選別のための細胞は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8日以上、ただし25、26、28、30、32、35、40日以内、またはその間の任意の日数間リプログラミングするように誘導されている。いくつかの実施形態では、選別のための細胞は、約21~25日間、約19~23日間、約17~21日間、約15~約19、または約16~約18日間リプログラミングするように誘導されている。
【0103】
細胞は、磁気ビーズまたはフローサイトメトリー(FACS)選別など、細胞を選別する適切な方法で選別できる。細胞は、SSEA3/4、TRA1-60/81、TRA1-85、TRA2-54、GCTM-2、TG343、TG30、CD9、CD29、CD133/プロミニン、CD140a、CD56、CD73、CD105、OCT4、NANOG、SOX2、KLF4、SSEA1(マウス)、CD30、SSEA5、CD90および/またはCD50の発現を含むがこれらに限定されない1つ以上の多能性のマーカーに基づいて選別することができる。様々な実施形態において、細胞は、多能性のマーカーの少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つに基づいて選別される。特定の実施形態では、細胞はSSEA4の発現に基づいて選別され、特定の特別な実施形態では、TRA1-81および/またはTRA1-60と組み合わせたSSEA4の発現に基づいて選別される。特定の実施形態では、細胞は、SSEA4、TRA1-81、またはTRA1-60、および/またはCD30発現に基づいて選別される。一実施形態において、細胞は、SSEA4、TRA1-81およびCD30に基づいて選別される。別の実施形態では、細胞はSSEA4、TRA1-60およびCD30に基づいて選別される。特定の実施形態では、CD13、CD26、CD34、CD45、CD31、CD46およびCD7を含むがこれらに限定されない分化細胞の1つ以上の表面マーカーを使用して、細胞を非リプログラミング細胞について最初に枯渇させ、その後、SSEA4、TRA1-81および/またはCD30のような多能性マーカーについて濃縮させる。
【0104】
リプログラミング後、iPSCは維持、継代および増加される。いくつかの実施形態において、iPSCは、維持培地、例えば表1に示されるようなFMM中で長期間にわたって単一細胞として培養、すなわち維持、継代および増加される。FMMで培養されたiPSCは、未分化で基底のまたはナイーブなプロファイル、培養物の洗浄または選択を必要としないゲノム安定性を維持し続けることが示され、および3つのすべての体細胞系統、胚様体または単層を介したインビトロでの分化(胚様体の形成のない)、および奇形腫形成によるインビボでの分化を容易に生じさせる。例えば、開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第61/947,979号および米国特許出願公開第20170073643号を参照されたい。本リプログラミングシステムおよび方法を使用してリプログラミングするのに適した細胞は、一般に、任意の非多能性細胞を含む。非多能性細胞には、最終的に分化した細胞、または多分化能もしくは前駆細胞が含まれるが、これらに限定されず、これらは、3種類すべての胚葉系統細胞を生じさせることはできない。いくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞は、初代細胞、すなわち、ヒトまたは動物の組織から直接単離した細胞である。いくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞は、例えばドナー、疾患、もしくは治療応答に特異的な、供給源特異的細胞である。いくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞は初代免疫細胞である。いくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞自体が、胚性幹細胞および人工多能性幹細胞を含む多能性細胞に由来する。いくつかの実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞は、由来免疫細胞、例えば、iPSC由来の非天然TまたはNK様細胞である。
【0105】
いくつかの他の実施形態では、リプログラミングのための非多能性細胞は、ゲノムが改変された初代細胞または誘導由来細胞である。非多能性細胞に含まれる遺伝的修飾には、遺伝子発現のノックイン、ノックアウト、またはノックダウンにつながるゲノムへの挿入、欠失、または置換が含まれる。リプログラミングのための非多能性細胞における改変された発現は、構成的または誘導的であり得る(例えば、発達段階、組織、細胞、または誘導因子に特異的)。いくつかの実施形態では、挿入または置換は、遺伝子座に特異的な標的化組み込みである。いくつかの実施形態では、組み込みのために選択された遺伝子座は、セーフハーバー(safe harbor)遺伝子座または目的の内在性遺伝子座である。セーフハーバー遺伝子座には、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ2ミクログロブリン、GAPDH、TCRまたはRUNX1、およびゲノムセーフハーバーの基準を満たすその他の遺伝子座が含まれる。組み込み部位が潜在的なセーフハーバー遺伝子座であるためには、以下を含むがこれらに限定されない基準を満たすことが理想的である:配列アノテーションによって判断されるように、調節エレメントまたは遺伝子の破壊がないこと、遺伝子の密集した領域内の遺伝子間領域、または反対方向に転写された2つの遺伝子間の収束位置であること、ベクターにコード化された転写活性化因子と隣接する遺伝子のプロモーターとの、特に癌関連遺伝子とマイクロRNA遺伝子との間の長距離相互作用の可能性を最小限に抑えるために距離を保つこと、ユビキタス転写活性を示す広範な空間的および時間的発現シーケンスタグ(EST)発現パターンによって反映されるように、明らかなユビキタスな転写活性を有すること。この後者の特徴は、多能性細胞に関して特に重要であり、分化中にクロマチン再構築は通常、いくつかの遺伝子座のサイレンシングおよび他の遺伝子座の活性化の可能性につながる。外因性の挿入に適した領域内で、挿入に選択される正確な遺伝子座には、反復エレメントと保存配列がなく、相同性アームの増幅用のプライマーを簡単に設計できるはずである。一例では、本システムおよび方法を使用してリプログラミングするための非多能性細胞は、内在性TCR遺伝子座にCARを含むT細胞であり、CAR組み込みの結果としてTCR発現が破壊される。
【0106】
一実施形態では、遺伝子組み換えの非多能性細胞のリプログラミングは、同じ遺伝子修飾(複数可)を含むゲノム操作したiPSCを取得することである。そのため、他のいくつかの実施形態では、1つ以上のそのようなゲノム編集は、ゲノム操作したiPSCを得るためのリプログラミング後にiPSCに導入され得る。一実施形態では、ゲノム編集のためのiPSCは、クローン系またはクローンiPS細胞の集団である。
【0107】
いくつかの実施形態では、1つ以上の標的遺伝子編集を含むゲノム操作したiPSCは、MEKi、GSKi、およびROCKiを含み、TGFβ受容体/ALK5阻害剤を含まない、または本質的に含まない培地で維持、継代および増加され、このiPSCは、選択した部位で無傷かつ機能的な標的編集を保持する。いくつかの実施形態では、遺伝子編集により、安全スイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質またはペプチド、薬物標的候補、ならびに多能性細胞および/またはその由来細胞の、生着、輸送、ホーミング、腫瘍浸潤、生存率、自己再生、持続性、および/または生存を促進するタンパク質、のうちの1つ以上を導入する。一実施形態では、ゲノム操作したiPSCは、カスパーゼ9(またはカスパーゼ3または7)、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、B細胞CD20、修飾EGFR、およびそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない1つ以上の自殺遺伝子媒介安全スイッチを含む。いくつかの実施形態では、ゲノム操作されたiPSCは、キメラ受容体、ホーミング受容体、抗炎症性分子、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカイン/ケモカインデコイ受容体、成長因子、変更された炎症誘発性サイトカイン受容体、CAR、または二重または多重特異的もしくはユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体の、導入もしくは増加した発現、または共刺激遺伝子の減少もしくは抑制した発現、を含む少なくとも1つのゲノム修飾を有する。いくつかの実施形態において、ゲノム操作したiPSCは、ターゲティングモダリティとして高親和性および/または非切断性CD16を含む。いくつかの他の実施形態において、ゲノム操作したiPSCに含まれるターゲティングモダリティは、T細胞特異的、またはNK細胞特異的、またはTおよびNK細胞の両方に適合するキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0108】
いくつかの実施形態では、ゲノム操作したiPSCは、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドまたは1つ以上の内在性遺伝子のインデル(in/del)を含む。いくつかの実施形態では、内在性遺伝子に含まれるインデルは、遺伝子発現の破壊をもたらす。いくつかの実施形態において、内在性遺伝子に含まれるインデルは、編集した遺伝子のノックアウトをもたらす。いくつかの実施形態では、内因性内在性遺伝子に含まれるインデルは、編集した遺伝子のノックダウンをもたらす。いくつかの実施形態では、選択された部位(複数可)に1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むゲノム操作したiPSCは、選択された部位(複数可)にインデルを含む1つ以上の標的編集をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、インデルは、免疫応答制御および媒介に関連する1つ以上の内在性遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは1つ以上の内因性内在性チェックポイント遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは1つ以上の内在性T細胞受容体遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは1つ以上の内在性MHCクラスIサプレッサー遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、主要な組織適合性複合体に関連する1つ以上の内在性遺伝子に含まれる。一実施形態では、修飾iPS細胞は、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意のHLA遺伝子のうちの少なくとも1つに欠失または減少した発現を含む。別の実施形態では、修飾iPS細胞は、HLA-EまたはHLA-Gの発現の導入または増加を含む。さらにいくつかの他の実施形態では、ゲノム操作したiPS細胞は、中断されたTCR遺伝子座を含む。
【0109】
iPSCのさまざまな標的遺伝子編集方法、特に、複数遺伝子座ターゲティング戦略での複数遺伝子を用いた単一細胞レベルでiPSCを効果的に操作するための方法には、例えば、国際出願公開WO2017/079673に記載されている方法が含まれ、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
本発明はまた、体細胞をより低い分化(less-differentiated)状態にリプログラミングする薬剤を同定する方法、およびこのように同定された薬剤を提供する。一実施形態では、方法は、本明細書に開示されるリプログラミング組成物および方法を使用して体細胞をリプログラミングすることを含み、少なくとも1つのベクターが候補薬剤を含み、多能性細胞形態の出現およびOCT4などの少なくとも1つの内在性多能性遺伝子の誘導発現を有する細胞を選択する。適切な選択マーカーを発現する細胞の存在は、薬剤が体細胞をリプログラミングすることを示す。このような薬剤は、この出願の目的のためのリプログラミング剤と見なされる。さらなる実施形態において、方法は、本明細書に開示されるリプログラミング組成物および方法を使用して、体細胞を候補薬剤と接触させること、適切な選択マーカーを発現する細胞を選択すること、および多能性特性についてそのように選択された細胞を評価することを含む。多能性特性の完全なセットの存在は、薬剤が体細胞をリプログラミングして多能性になるようにすること示す。本発明で使用される候補薬剤は、多くの化学薬品クラスを包含するが、典型的には、それらは小有機化合物を含む有機分子である。候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、核酸および誘導体、構造類似体またはそれらの組み合わせを含む生体分子にも見られる。候補薬剤は、自然発生する、組み換え、または実験室で設計されたものであってよい。候補薬剤は、微生物、動物、または植物から単離され得るか、または組み換えにより産生され得るか、または当該分野で公知の化学的方法により合成され得る。いくつかの実施形態では、候補薬剤は、本発明の方法を使用して合成または天然化合物のライブラリから単離される。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多種多様な有機化合物および生体分子のランダムで指向性のある合成のための多数の手段が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリが入手可能であるか、容易に生成される。さらに、天然または合成的に生成されたライブラリおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段により容易に変更され、組み合わせライブラリを生成するために使用され得る。既知の薬物は、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化を含む、指向的またはランダムな化学修飾を受けて、構造的類似体を生成し得る。たとえば、ChemBridge DIVERSetTMなど、数多くの市販の化合物ライブラリがある。
【0111】
上記のスクリーニング方法は、細胞で実施されるアッセイに基づく。これらの細胞ベースのアッセイは、当技術分野で記載されているハイスループットスクリーニング(HTS)形式で実施することができる。例えば、Stockwell et al.は、翻訳後修飾を含む小型化した哺乳動物細胞ベースのアッセイにおける小分子のハイスループットスクリーニングについて説明した(Stockwell et al.,1999)。同様に、Qian et al.は、抗癌剤のハイスループットスクリーニングのための白血病細胞ベースのアッセイを説明した(Qian et al.,2001)。両方の参考文献は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
II.インビトロで得られたiPSC由来細胞
本発明は、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるシステムおよび方法を使用して得られたiPSCに由来する非多能性細胞をさらに提供する。いくつかの実施形態では、由来非多能性細胞を生成するためのiPSCは、iPSCの標的編集を通じて、または部位特異的組み込みまたはインデルを有するゲノム操作した非多能性細胞のリプログラミングを通じて、ゲノム操作される。いくつかの実施形態では、iPSC由来非多能性細胞は、前駆細胞または完全に分化した細胞である。いくつかの実施形態では、ゲノム操作したiPSCに含まれる同じ標的編集を保持するiPSC由来細胞は、非天然の中胚葉細胞、CD34細胞、造血性内皮細胞、造血幹細胞または前駆細胞、造血多分化能前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、免疫制御性細胞、または任意の胚葉系統の任意の細胞である。いくつかの実施形態では、iPSC由来の非天然免疫制御性細胞は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞または間葉系間質細胞を含み、これらはNK、B、およびT細胞の強力な免疫調節因子である。
【0113】
ドナーの供給源からの分離によって得るのが難しい、特定のタイプまたはサブタイプの細胞の無制限の数を生成することに加えて、ヒトiPSC由来の系統は胎児期の細胞の特性を示すため、リプログラミングプロセスは、細胞の運命(特定/分化から多能性への)だけでなく、最初の体細胞ドナーの年齢とは無関係にドナー細胞集団の年代順の年齢特性もリセットすることが示されている。神経細胞、心臓細胞、または膵臓細胞が含まれるiPSC由来の系統で観察される胎児様特性以外に、老化の細胞の顕著な特徴は、リプログラミングプロセス後のiPSCからの再分化細胞の若返りを示す測定可能な変化を示している。高齢ドナー線維芽細胞集団で発現した年齢関連パラメーターは、iPSC誘導およびiPSC由来線維芽細胞様細胞への分化後にリセットされた(Miller et al.,2013)。T細胞クローンからリプログラミングされたiPSCから分化したiPSC由来の抗原特異的T細胞は、元のT細胞クローンよりも長いテロメアによる若返りを示す。若返りプロセスを示す完全に分化した細胞の追加の変化には、ヘテロクロマチンの全体的な増加、ミトコンドリア機能の改善(ROSの減少、mtDNA突然変異の減少、超微細構造の存在)、DNA損傷応答の増加、テロメアの伸長および短いテロメアの割合の減少、および老化細胞の割合の減少が含まれるが、これらに限定されない。(Nishimura et al.,2013)。これらのさまざまな年齢関連の側面における正のリセットは、増殖、生存、持続性、および記憶様機能の可能性がより高い非天然細胞をもたらす。したがって、リプログラミングと再分化を介した若返りは、完全に分化したiPSC由来細胞に多くの分子的、表現型的および機能的特性を与え、それらの非天然特性により、細胞系統におけるそれらの類似性にもかかわらず、初代細胞の対応物とは異なっている。
【0114】
iPSC由来の造血細胞系統を得るための適用可能な分化方法および組成物には、例えば、国際出願番号PCT/US2016/044122に示されるものが含まれ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。提供されているように、造血細胞系統を生成するための方法と組成物は、無血清、フィーダーフリー、および/または間質フリーの条件下で、およびEB形成の必要がないスケーラブルな単層培養プラットフォームでのiPSCを含む、多能性幹細胞に由来する最終的な造血性内皮(HE)によるものである。提供された方法に従って分化され得る細胞は、多能性幹細胞から、特定の最終分化細胞および分化転換細胞にコミットする前駆細胞、多能性中間体を経由せずに造血性の運命に直接移行したさまざまな系統の細胞に及ぶ。同様に、幹細胞の分化によって生成される細胞は、多分化能幹細胞または前駆細胞から最終分化幹細胞、およびすべての介在する造血細胞系統までに及ぶ。
【0115】
単層培養における造血系統の細胞を多能性幹細胞から分化および増加させる方法は、多能性幹細胞をBMP経路活性化因子、および任意でbFGFと接触させることを含む。提供されるように、多能性幹細胞から胚様体を形成することなく多能性幹細胞由来の中胚葉細胞が得られ、増加される。その後、多能性幹細胞から胚様体を形成することなく、中胚葉細胞をBMP経路活性化因子、bFGF、およびWNT経路活性化因子と接触させて、最終的な造血性内皮(HE)ポテンシャルを有する増加した中胚葉細胞を取得する。bFGF、および任意でROCK阻害剤、および/またはWNT経路活性化因子とのその後の接触により、最終的なHEポテンシャルを有する中胚葉細胞は最終的なHE細胞に分化し、これはまた分化中に増加もする。
【0116】
本明細書で提供される造血系統の細胞を取得する方法は、EB形成が、中程度から最小限の細胞増加をもたらし、均質な増加、および集団内の細胞の均質な分化を必要とする多くの用途にとって重要である単層培養を可能とせず、面倒で低効率であるため、EB媒介多能性幹細胞分化よりも優れている。
【0117】
提供された単層分化プラットフォームは、造血幹細胞と、T、B、NKT、NK細胞、制御性細胞などの分化した子孫の誘導をもたらす最終的な造血性内皮への分化を促進する。単層分化戦略は、分化効率の向上と大規模な増加を組み合わせることで、さまざまな治療用途向けの治療上適切な数の多能性幹細胞由来の造血細胞の送達を可能にする。さらに、本明細書で提供される方法を使用する単層培養は、インビトロでの分化、エクスビボでの調節、およびインビボでの長期造血自己再生、再構成および生着の全範囲を可能にする機能的造血系統細胞をもたらす。提供されているように、iPSC由来の造血系統細胞には、限定されないが、最終的な造血性内皮、造血多分化能前駆細胞、造血幹細胞および前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、調節性マクロファージ、調節性樹状細胞、および間葉系間質細胞が含まれる。
【0118】
多能性幹細胞の最終的な造血系統細胞への分化を指示する方法であって、この方法は、(i)多能性幹細胞を、BMP活性化因子、および任意にbFGFを含む組成物と接触させて、多能性幹細胞から中胚葉細胞の分化および増加を開始させることと、(ii)中胚葉細胞を、BMP活性化因子、bFGF、およびGSK3阻害剤を含む組成物であって、任意選択的にTGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させて、中胚葉細胞から最終的なHEポテンシャルを有する中胚葉細胞の分化および増加を開始させることと、(iii)最終的なHEポテンシャルを有する中胚葉細胞を、ROCK阻害剤と、bFGF、VEGF、SCF、IGF、EPO、IL6、およびIL11からなる群から選択される1つ以上の成長因子およびサイトカインと、任意選択的に、Wnt経路活性化因子とを含む組成物であって、任意選択的にTGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させて、最終的な造血性内皮ポテンシャルを有する多能性幹細胞由来中胚葉細胞からの最終的な造血性内皮の分化および増加を開始させることと、を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、方法は、多能性幹細胞をMEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤を含む組成物であって、TGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させて、多能性幹細胞を播種および増加させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、iPSC、またはナイーブiPSC、または1つ以上の遺伝的刷り込みを含むiPSCであり、iPSCに含まれる1つ以上の遺伝的刷り込みが、そこから分化した造血細胞に保持される。多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化を指示する方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化は、胚様体の生成がなく、単層培養形態である。
【0120】
上記の方法のいくつかの実施形態では、得られた多能性幹細胞由来の最終的な造血性内皮細胞はCD34+である。いくつかの実施形態では、得られた最終的な造血性内皮細胞はCD34+CD43-である。いくつかの実施形態では、最終的な造血性内皮細胞はCD34+CD43-CXCR4-CD73-である。いくつかの実施形態では、最終的な造血性内皮細胞はCD34+CXCR4-CD73-である。いくつかの実施形態では、最終的な造血性内皮細胞はCD34+CD43-CD93-である。いくつかの実施形態では、最終的な造血性内皮細胞はCD34+CD93-である。いくつかの実施形態では、最終的な造血性内皮細胞はCD34+CD93-CD73-である。
【0121】
上記の方法のいくつかの実施形態では、この方法は、さらに(i)多能性幹細胞由来の最終的な造血性内皮を、ROCK阻害剤と、VEGF、bFGF、SCF、Flt3L、TPO、およびIL7からなる群から選択される1つ以上の成長因子およびサイトカインと、任意選択的にBMP活性化因子とを含む組成物と接触させて、最終的な造血性内皮のプレT細胞前駆細胞への分化を開始させることと、任意選択的に、(ii)プレT細胞前駆細胞を、SCF、Flt3L、およびIL7からなる群から選択される1つ以上の成長因子およびサイトカインを含むが、VEGF、bFGF、TPO、BMP活性化因子およびROCK阻害剤の1つ以上を含まない組成物と接触させて、プレT細胞前駆細胞のT細胞前駆細胞またはT細胞への分化を開始させることと、を含む。この方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のT細胞前駆細胞はCD34+CD45+CD7+である。この方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のT細胞前駆細胞はCD45+CD7+である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のT細胞は、ドナー供給源から単離された初代T細胞よりもはるかに高いγδT細胞の割合を含む。
【0122】
多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化を指示するための上記方法のさらにいくつかの実施形態では、方法はさらに、(i)多能性幹細胞由来の最終的な造血性内皮を、ROCK阻害剤と、VEGF、bFGF、SCF、Flt3L、TPO、IL3、IL7、およびIL15からなる群から選択される1つ以上の成長因子およびサイトカインと、任意選択的に、BMP活性化因子とを含む組成物と接触させて、最終的な造血性内皮のプレNK細胞前駆細胞への分化を開始させることと、任意選択的に、(ii)多能性幹細胞由来のプレNK細胞前駆細胞を、SCF、Flt3L、IL3、IL7、IL15からなる群から選択される1つ以上の成長因子とサイトカインを含む組成物と接触させて、(ここで、培地は、VEGF、bFGF、TPO、BMP活性化因子およびROCK阻害剤のうちの1つ以上を含まない)、プレNK細胞前駆細胞のNK細胞前駆細胞またはNK細胞への分化を開始させることと、を含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のNK前駆細胞はCD3-CD45+CD56+CD7+である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のNK細胞はCD3-CD45+CD56+である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のNK細胞は、NKp46(CD335)、NKp30(CD337)、DNAM-1(CD226)、2B4(CD244)、CD57およびCD16のうちの1つ以上によって任意にさらに定義される。
【0123】
本方法の別の実施形態において、本方法は、多能性幹細胞由来の最終的HEを、ROCK阻害剤と、MCSFと、GMCSFと、IL1b、IL3、IL6、IL4、IL10、IL13、TGFβ、bFGF、VEGF、SCF、およびFLT3Lからなる群から選択される1つ以上の成長因子およびサイトカインと、任意選択的に、AhRアンタゴニストおよびプロスタグランジン経路アゴニストの一方または両方とを含む、培地と、接触させることから、免疫制御性細胞を産生することを可能にする。
【0124】
いくつかの実施形態では、由来免疫制御性細胞は、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む。一実施形態では、由来免疫制御性細胞の集団はCD45+CD33+細胞を含む。いくつかの実施形態では、由来免疫制御性細胞の集団は単球を含む。いくつかの実施形態では、単球はCD45+CD33+CD14+細胞を含む。さらにいくつかの他の実施形態では、由来免疫制御性細胞の集団は、CD45+CD33+PDL1+細胞を含む。本発明の一態様は、CD45+CD33+、CD45+CD33+CD14+、またはCD45+CD33+PDL1+細胞を含むiPSC由来免疫制御性細胞の濃縮細胞集団または亜集団を提供する。いくつかの他の実施形態では、由来免疫制御性細胞の集団は、CD33+CD15+CD14-CD11b-細胞を含む。いくつかの実施形態では、iMDSCを含む由来免疫制御性細胞の集団は、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.1%未満の赤血球、リンパ球、顆粒球、CD45-CD235+細胞、CD45+CD7+細胞、またはCD45+CD33+CD66b+細胞を含む。いくつかの実施形態において、由来免疫制御性細胞の集団は、赤血球、リンパ球、顆粒球、CD45-CD235+細胞、CD45+CD7+細胞、またはCD45+CD33+CD66b+細胞を本質的に含まない。
【0125】
III.iPSCおよびそこからの由来免疫細胞の治療的使用
いくつかの実施形態では、本発明は、開示される方法および組成物を使用して、iPSCおよび/または前記iPSCに由来している免疫細胞の単離した集団または亜集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、iPSCは、iPSC由来免疫細胞で保持可能な1つ以上の標的遺伝子編集を含み、遺伝子操作されたiPSCおよびその由来細胞は、細胞ベースの養子療法に適している。一実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、iPSC由来のHSC細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、iPSC由来のHSC細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、iPSC由来のproTまたはT細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、iPSC由来のproNKまたはNK細胞を含む。一実施形態において、遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、iPSC由来の免疫制御性細胞または骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来の遺伝子操作された免疫細胞は、改善された治療可能性のためにエクスビボでさらに調節される。一実施形態では、iPSCに由来している遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、増加した数または比率の、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞を含む。一実施形態では、iPSCに由来している遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、増加した数または比率のI型NKT細胞を含む。別の実施形態では、iPSCに由来している遺伝子操作された免疫細胞の単離した集団または亜集団は、増加した数または比率の適応NK細胞を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来の遺伝子操作されたCD34細胞、HSC細胞、T細胞、NK細胞、または骨髄由来サプレッサー細胞の、単離した集団または亜集団は、同種異系である。いくつかの他の実施形態では、iPSC由来の遺伝子操作されたCD34細胞、HSC細胞、T細胞、NK細胞、またはMDSCの単離した集団または亜集団は、自己由来である。
【0126】
いくつかの実施形態では、分化のためのiPSCは、エフェクター細胞に望ましい治療属性を伝える遺伝的刷り込みを含み、その遺伝的刷り込みは、前記iPSCに由来する分化した造血細胞で保持され機能する。
【0127】
いくつかの実施形態では、多能性幹細胞の遺伝的刷り込みは、(i)非多能性細胞をiPSCにリプログラミングする間またはリプログラミングした後、多能性細胞のゲノムへのゲノム挿入、欠失、または置換によって得られる1つ以上の遺伝子組み換えモダリティ、または(ii)ドナー、疾患、もしくは治療応答に特異的な供給源特異的免疫細胞の1つ以上の保持可能な治療属性、を含み、多能性細胞は、供給源特異的免疫細胞からリプログラミングされ、iPSCは、供給源の治療属性を保持し、これらは、iPSC由来の造血系統細胞にも含まれる。
【0128】
いくつかの実施形態では、遺伝子組み換えモダリティは、安全スイッチタンパク質、ターゲティングモダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補、または、iPSCもしくはその由来細胞の生着、輸送、ホーミング、生存率、自己再生、持続性、免疫応答制御および調節、および/または生存を促進するタンパク質のうちの1つ以上を含む。いくつかの他の実施形態では、遺伝子組み換えモダリティは、(i)B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子の欠失または減少した発現、(ii)HLA-E、HLA-G、HACD16、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、または二重または多重特異的もしくはユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体の導入または増加した発現、のうちの1つ以上を含む。
【0129】
さらにいくつかの他の実施形態では、造血系統細胞は、(i)抗原ターゲティング受容体発現、(ii)HLA提示またはその欠如、(iii)腫瘍微小環境に対する耐性、(iv)バイスタンダー免疫細胞の誘導および免疫調節、(iv)オフ腫瘍効果(off-tumor effect)の低減を伴う改善されたオンターゲット特異性(on-target specificity)(v)化学療法などの治療に対する耐性(vi)ホーミング、持続性および細胞毒性の改善、の1つ以上に関連する供給源特異的免疫細胞の治療属性を含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、iPSCおよびその由来造血細胞は、B2Mヌルまたは低(null or low)、HLA-E/G、PDL1、A2AR、CD47、LAG3ヌルまたは低、TIM3ヌルまたは低、TAP1ヌルまたは低、TAP2ヌルまたは低、タパシン ヌルまたは低、NLRC5ヌルまたは低、PD1ヌルまたは低、RFKANKヌルまたは低、CIITAヌルまたは低、RFX5ヌルまたは低、RFXAPヌルまたは低の1つ以上を含む。修飾HLAクラスIおよび/またはIIを有するこれらの細胞は、免疫検出に対する耐性が増加しているため、インビボでの持続性が向上する。さらに、そのような細胞は、養子細胞療法におけるHLAマッチングの必要性を回避することができ、したがって、普遍的な市販の治療レジメンの供給源を提供する。
【0131】
いくつかの実施形態では、iPSCおよびその由来造血細胞は、hnCD16(高親和性の非切断性CD16)、HLA-E、HLA-G、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2A R、CAR、またはTCRのうちの1つ以上を含む。そのような細胞は、改善された免疫エフェクター能力を有する。
【0132】
いくつかの実施形態では、iPSCおよびその由来造血細胞は抗原特異的である。
【0133】
養子細胞療法に適した対象に本発明の免疫細胞を導入することにより、さまざまな疾患を寛解することができる。疾患の例としては、様々な自己免疫障害であって、円形脱毛症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、若年性特発性関節炎のいくつかの形態、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、心筋炎のいくつか形態、多発性硬化症、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、関節リウマチ、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性ループス、エリテマトーデス、甲状腺炎のいくつかの形態、ブドウ膜炎のいくつかの形態、白斑、多発性血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナー病)、を含むがこれらに限定されないもの、血液悪性腫瘍であって、急性および慢性白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫および骨髄異形成症候群を含むがこれらに限定されないもの、固形腫瘍であって、脳、前立腺、乳房、肺、結腸、子宮、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、頭、首、胃、子宮頸部、直腸、喉頭、または食道、の腫瘍を含むがこれらに限定されないもの、および感染症であって、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の、RSV(呼吸器合胞体ウイルス)の、EBV(エプスタインバーウイルス)の、CMV(サイトメガロウイルス)の、アデノウイルスのおよびBKポリオーマウイルスの、関連障害を含むが、これらに限定されないもの、が含まれる。
【0134】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来造血細胞を含む治療的使用ための組成物をさらに提供し、ここで、医薬組成物は、薬学的に許容される培地をさらに含む。一実施形態では、治療的使用ための組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のT細胞を含む。一実施形態では、治療的使用のための組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のNK細胞を含む。一実施形態では、治療的使用のための組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のCD34+HE細胞を含む。一実施形態では、治療的使用のための組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のHSCを含む。一実施形態では、治療的使用のための組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のMDSCを含む。
【0135】
さらに、本発明は、いくつかの実施形態では、養子細胞療法に適した対象に組成物を導入することによる上記治療用組成物の治療的使用を提供し、対象は自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、または、HIV、RSV、EBV、CMV、アデノウイルス、またはBKポリオーマウイルスに関連する感染を有する。
【0136】
単離した多能性幹細胞由来の造血系統細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%のT細胞、NK細胞、NKT細胞、proT細胞、proNK細胞、CD34+HE細胞、HSC、B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞または間葉系間質細胞を有することができる。いくつかの実施形態では、単離した多能性幹細胞由来の造血系統細胞は、約95%~約100%のT細胞、NK細胞、NKT細胞、proT細胞、proNK細胞、CD34+HE細胞、HSC、B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞を有する(MDSC)、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞または間葉系間質細胞を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、精製した、T細胞、NK細胞、NKT細胞、CD34+HE細胞、proT細胞、proNK細胞、HSC、B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞、または間葉系間質細胞を有する治療用組成物、例えば細胞療法を必要とする対象を治療するための、約95%の、T細胞、NK細胞、NKT細胞、proT細胞、proNK細胞、CD34+HE細胞、HSC、B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、制御性マクロファージ、制御性樹状細胞または間葉系間質細胞、の単離した集団を有する組成物、を提供する。
【0137】
本明細書に開示される実施形態の由来造血系統細胞を使用する治療は、症状が生じた場合、または再発予防のために実施することができよう。「治療する」、「治療」などの用語は、本明細書では、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、疾患を完全にまたは部分的に予防するという観点で予防的であり得、および/または疾患に起因する有害作用の部分的または完全な治癒の観点で治療的であり得る。本明細書で使用する「治療」は、哺乳動物における疾患のあらゆる治療を包含し、および、病気に罹りうるが、まだそれを有していると診断されていない対象に疾患が発生するのを予防すること、病気を抑制すること、すなわちその発生を阻止すること、または病気を緩和すること、すなわち病気を後退させること、を含む。治療薬または組成物は、疾患または損傷の発症前、発症中、または発症後に投与することができる。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化または軽減する進行中の疾患の治療も特に興味深い。特別な実施形態では、治療を必要とする対象は、細胞療法により少なくとも1つの関連する症状を治療、寛解、および/または改善することができる疾患、状態、および/または傷害を有する。特定の実施形態は、細胞療法を必要とする対象が、骨髄または幹細胞移植の候補、化学療法または放射線療法を受けた対象、過剰増殖性障害または癌、例えば、造血系の過剰増殖性障害または癌に罹患しているまたは有するリスクがある対象、腫瘍、例えば固形腫瘍を有するまたは発症するリスクがある対象、ウイルス感染またはウイルス感染に関連する疾患を有するまたは有するリスクがある対象を含むが、これらに限定されないことを企図する。
【0138】
開示されているように由来造血系統細胞を含む治療用組成物は、他の治療の前、最中、および/または後に対象に投与することができる。したがって、併用療法の方法は、追加の治療薬の使用前、使用中、および/または使用後のiPSC由来免疫細胞の投与または調製を含み得る。上記のように、1つ以上の追加の治療薬は、ペプチド、サイトカイン、マイトジェン、成長因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分またはその置換因子(replacement factor)、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法薬または放射性成分(radioactive moiety)、または免疫調節薬(IMiD)を含む。iPSC由来の免疫細胞の投与は、追加の治療薬の投与から数時間、数日、または数週間で時間的に分離することができる。追加的または代替的に、投与は、抗腫瘍剤、手術などの非薬物療法などであるがこれらに限定されない他の生物活性剤またはモダリティと組み合わせることができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は抗体または抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、またはキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片は、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態では、抗体または抗体断片は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍またはウイルス特異的抗原は、投与されたiPSC由来の造血系統細胞を活性化して、それらの殺傷能力を増強する。いくつかの実施形態では、投与されるiPSC由来の造血系統細胞に対する追加の治療薬としての併用治療に適した抗体には、抗CD20(レツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ユブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ)、抗Her2(トラスツズマブ)、抗CD52(アレムツズマブ)、抗EGFR(セルツキシマブ(certuximab))、および抗CD38(ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202)、およびそれらのヒト化およびFc修飾バリアントが含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、1つ以上の化学療法薬または放射性成分を含む。化学療法薬とは、細胞傷害性抗腫瘍薬、すなわち、腫瘍細胞を優先的に死滅させるか、急速に増殖する細胞の細胞周期を破壊する化学物質、または幹癌細胞を根絶することが見出された化学物質、腫瘍細胞の成長を予防または減少させるために治療的に使用される化学物質を指す。化学療法薬は、抗腫瘍薬または細胞毒性薬または薬剤と呼ばれることもあり、当技術分野で周知である。
【0141】
いくつかの実施形態では、化学療法薬は、アントラサイクリン、アルキル化剤、アルキルスルホネート、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有剤、インターフェロン、およびインターロイキンを含む。例示的な化学療法薬には、アルキル化剤(シクロホスファミド、メクロレタミン、メファリン(mephalin)、クロラムブシル、ヘアメチルメラミン(heamethylmelamine)、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン)、アニメタボライト(animetabolites)(メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリンチン、チオグアニン、ペントスタチン)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド、エトポシドオルトキノン、およびテニポシド)、抗生物質(ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ビスアンスレン(bisanthrene)、アクチノマイシンD、プリカマイシン、ピューロマイシン、グラミシジンD)、パクリタキセル、コルヒチン、サイトカラシンB、エメチン、マイタンシン、およびアムサクリン、が含まれるが、これらに限定されない。追加の薬剤には、アミングルテチミド(aminglutethimide)、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、アルトレタミン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)、イリノテカン(CPT-11)、アレムツザマブ、アルトレタミン、アナストロゾール、L-アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、セツキシマブ、クラドリビン、クロフラビン(clofurabine)、シタラビン、ダカルバジン、デニロイキンディフティトックス、ディーチルスチルベストロール(diethlstilbestrol)、ドセタキセル、ドロモスタノロン、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エチニルエストラジオール、エキセメスタン、フロクスウリジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フルタミド、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ(2a、2b)、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、メクロレタミン、メゲストロール、メルファリン(melphalin)、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーセ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トペテカン(topetecan)、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビノレルビン、ゾレドロネート、が含まれる。他の適切な薬剤は、化学療法薬または放射線療法薬として承認され、当技術分野で知られているものを含む、ヒトでの使用が承認されているものである。このような薬剤は、多くの標準的な医師および腫瘍医の参考文献(例えば、Goodman & Gilman´s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ninth Edition,McGraw-Hill,N.Y.,1995)を介して、または国立がん研究所のウェブサイト(fda.gov/cder/cancer/druglistfrarne.htm)を介して参照でき、両者は随時更新される。
【0142】
サリドマイド、レナリドマイド、およびポマリドマイドなどの免疫調節薬(IMiD)は、NK細胞とT細胞の両方を刺激する。本明細書で提供されるように、IMiDは、癌治療のためにiPSC由来の治療用免疫細胞とともに使用され得る。
【0143】
当業者が理解するように、本明細書の方法および組成物に基づくiPSCに由来する自己および同種造血系統細胞の両方は、上記の細胞療法で使用することができる。自家移植の場合、由来造血系統細胞の単離した集団は、患者と完全または部分的にHLAマッチである。別の実施形態では、由来造血系統細胞は、対象にHLAマッチしていない。
【0144】
いくつかの実施形態では、治療用組成物中の由来造血系統細胞の数は、用量あたり、少なくとも0.1x105細胞、少なくとも1x105細胞、少なくとも5x105細胞、少なくとも1x106細胞、少なくとも5x106細胞、少なくとも1x107細胞、少なくとも5x107細胞、少なくとも1x108細胞、少なくとも5x108細胞、少なくとも1x109細胞、または少なくとも5x109細胞である。いくつかの実施形態では、治療組成物中の由来造血系統細胞の数は、用量あたり約0.1x105細胞~約1x106細胞、用量あたり約0.5×106細胞~約1×107細胞、用量あたり約0.5x107細胞~約1x108細胞、用量あたり約0.5x108細胞~約1x109細胞、用量あたり約1x109細胞~約5x109細胞、用量あたり約0.5x109細胞~約8x109細胞、用量あたり約3x109細胞~約3x1010細胞、またはその間の範囲である。通常、60 kgの患者の場合、1x108細胞/用量は1.67x106細胞/kgに換算される。
【0145】
一実施形態において、治療用組成物中の由来造血系統細胞の数は、血液の部分的もしくは単一のさい帯血(cord of blood)中の免疫細胞の数であるか、または少なくとも0.1x105細胞/体重kg、少なくとも0.5x105細胞/kg体重、少なくとも1x105細胞/kg体重、少なくとも5x105細胞/kg体重、少なくとも10x105細胞/kg体重、少なくとも0.75x106細胞/体重kg、少なくとも1.25x106細胞/体重kg、少なくとも1.5x106細胞/体重kg、少なくとも1.75x106細胞/体重kg、少なくとも2x106細胞/kg体重、少なくとも2.5x106細胞/体重kg、少なくとも3x106細胞/体重kg、少なくとも4x106細胞/体重kg、少なくとも5x106細胞/体重kg、少なくとも10x106細胞/体重kg、少なくとも15x106細胞/体重kg、少なくとも20x106細胞/体重kg、少なくとも25x106細胞/体重kg、少なくとも30x106細胞/体重kg、1x108細胞/kg体重、5x108細胞/kg体重、または1x109細胞/kg体重である。
【0146】
一実施形態では、由来造血系統細胞の用量が対象に送達される。例示的な一実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、すべての介在する用量の細胞を含めて、少なくとも2x106細胞/kg、少なくとも3x106細胞/kg、少なくとも4x106細胞/kg、少なくとも5x106細胞/kg、少なくとも6x106細胞/kg、少なくとも7x106細胞/kg、少なくとも8x106細胞/kg、少なくとも9x106細胞/kg、または少なくとも10x106細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kgである。
【0147】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、すべての介在する用量の細胞を含めて、約2x106細胞/kg、約3x106細胞/kg、約4x106細胞/kg、約5x106細胞/kg、約6x106細胞/kg、約7x106細胞/kg、約8x106細胞/kg、約9x106細胞/kg、または約10x106細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kgである。
【0148】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、すべての介在する用量の細胞を含めて、約2×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約3×106細胞/kg~約10×106細胞/kg、約4x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、約5x106細胞/kg~約10x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、2x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、3x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、4x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約6x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約7x106細胞/kg、5x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、または6x106細胞/kg~約8x106細胞/kg、である。
【0149】
投与量のいくらかの変動は、治療される対象の状態に応じて必然的に発生する。いずれにしても、投与の責任者は個々の対象について適切な用量を決定する。
【0150】
いくつかの実施形態では、由来造血系統細胞の治療的使用は単回投与治療である。いくつかの実施形態において、由来造血系統細胞の治療的使用は、複数回投与治療である。いくつかの実施形態では、複数回投与治療は、毎日、3日ごと、7日ごと、10日ごと、15日ごと、20日ごと、25日ごと、30日ごと、35日ごと、40日ごと、45日ごと、50日ごと、またはその間の任意の日数ことに、1回の投与である。
【0151】
本発明の由来造血系統細胞の集団を含む組成物は、無菌にでき、ヒト患者への投与に適切であり、すぐに投与できる(すなわち、さらなる処理なしで投与できる)。投与の準備ができている細胞ベースの組成物は、組成物が対象への移植または投与の前にさらなる治療または操作を必要としないことを意味する。他の実施形態では、本発明は、1つ以上の薬剤で投与する前に増加および/または調節した由来造血系細胞の単離した集団を提供する。組み換えTCRまたはCARを発現するように遺伝子操作された由来造血系統細胞については、例えば米国特許第6,352,694号に記載されている方法を使用して、細胞を活性化および増加させることができる。
【0152】
特定の実施形態では、由来造血系統細胞に対する一次刺激性シグナルおよび共刺激性シグナルは、異なるプロトコルによって提供され得る。たとえば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中に存在するか、表面に結合する。表面に結合する場合、薬剤は同じ表面(すなわち、「シス」形成)に、または別々の表面(すなわち、「トランス」形成)に結合できる。あるいは、1つの薬剤を表面に結合させ、他の薬剤を溶液に結合させることができる。一実施形態では、共刺激シグナルを提供する薬剤は細胞表面に結合することができ、一次活性化シグナルを提供する薬剤は溶液中にあるか、表面に結合している。特定の実施形態では、両方の薬剤が溶液中にあり得る。別の実施形態では、薬剤は可溶性形態であってよく、次いで、Fc受容体を発現する細胞または抗体または米国特許出願公開第20040101519号および第20060034810号に開示されているような本発明の実施形態におけるTリンパ球の活性化および増加における使用が企図される人工抗原提示細胞(aAPC)についての薬剤に結合する他の結合剤などの表面に架橋することができる。
【0153】
患者への投与に適した治療用組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)および/または希釈剤(たとえば、薬学的に許容される培地、たとえば細胞培養培地)、または他の薬学的に許容される成分を含むことができる。薬学的に許容される担体および/または希釈剤は、投与される特定の組成物によって、ならびに治療用組成物を投与するために使用される特定の方法によってある程度決定される。したがって、本発明の治療用組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、Remington´s Pharmaceutical Sciences,17thed.1985、を参照、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0154】
特別な実施形態では、iPSC由来の造血系統細胞の単離した集団を有する治療用細胞組成物はまた、薬学的に許容される細胞培養培地、または薬学的に許容される担体および/または希釈剤も有する。本明細書に開示されるiPSC由来の造血系統細胞の集団を含む治療用組成物は、静脈内、腹腔内、経腸、または気管投与方法により個別に、または所望の治療目標を達成する他の適切な化合物と組み合わせて投与することができる。
【0155】
これらの薬学的に許容される担体および/または希釈剤は、治療用組成物のPHを約3~約10に維持するのに十分な量で存在することができる。このため、緩衝剤を、全組成物の重量対重量ベースで約5%程度の量にできる。塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどであるがこれらに限定されない電解質も治療用組成物に含めることができる。一態様では、治療用組成物のPHは約4~約10の範囲にある。あるいは、治療用組成物のPHは、約5~約9、約6~約9、または約6.5~約8の範囲にある。別の実施形態では、治療用組成物は、前記PH範囲うちの1つのPHを有する緩衝液を含む。別の実施形態では、治療用組成物は約7のPHを有する。あるいは、治療用組成物は、約6.8~約7.4の範囲のPHを有する。さらに別の実施形態では、治療用組成物は約7.4のPHを有する。
【0156】
本発明はまた、一部では、本発明の特定の組成物および/または培養物における薬学的に許容される細胞培養培地の使用を提供する。そのような組成物は、ヒト対象への投与に適している。一般的に言えば、本発明の実施形態によるiPSC由来の免疫細胞の維持、成長、および/または健康を支援する任意の培地は、薬学的細胞培養培地としての使用に適している。特別な実施形態では、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清および/またはフィーダーフリー培地である。様々な実施形態において、無血清培地は動物を含まず、任意選択的にタンパク質を含まなくてもよい。任意選択的に、培地は生物学的に許容される組み換えタンパク質を含有することができる。動物を含まない培地とは、成分が非動物源に由来する培地を指す。組み換えタンパク質は、動物を含まない培地で天然の動物タンパク質に置き換わり、栄養素は合成、植物または微生物源から得られる。対照的に、無タンパク質培地は、実質的にタンパク質を含まないと定義される。当業者は、上記の培地の例は例示であり、本発明での使用に適した培地の配合を決して限定しないことを理解するであろう。
配列表
配列番号1
長さ:641
タイプ:PRT
生物:ヒトヘルペスウイルス4
MSDEGPGTGPGNGLGEKGDTSGPEGSGGSGPQRRGGDNHGRGRGRGRGRGGGRPGAPGGSGSGPRHRDGVRRPQKRPSCIGCKGTHGGTGAGAGAGGAGAGGAGAGGGAGAGGGAGGAGGAGGAGAGGGAGAGGGAGGAGGAGAGGGAGAGGGAGGAGAGGGAGGAGGAGAGGGAGAGGGAGGAGAGGGAGGAGGAGAGGGAGAGGAGGAGGAGAGGAGAGGGAGGAGGAGAGGAGAGGAGAGGAGAGGAGGAGAGGAGGAGAGGAGGAGAGGGAGGAGAGGGAGGAGAGGAGGAGAGGAGGAGAGGAGGAGAGGGAGAGGAGAGGGGRGRGGSGGRGRGGSGGRGRGGSGGRRGRGRERARGGSRERARGRGRGRGEKRPRSPSSQSSSSGSPPRRPPPGRRPFFHPVGEADYFEYHQEGGPDGEPDVPPGAIEQGPADDPGEGPSTGPRGQGDGGRRKKGGWFGKHRGQGGSNPKFENIAEGLRALLARSHVERTTDEGTWVAGVFVYGGSKTSLYNLRRGTALAIPQCRLTPLSRLPFGMAPGPGPQPGPLRESIVCYFMVFLQTHIFAEVLKDAIKDLVMTKPAPTCNIRVTVCSFDDGVDLPPWFPPMVEGAAAEGDDGDDGDEGGDGDEGEEGQE
配列番号2
長さ:422
タイプ:PRT
生物:ヒトヘルペスウイルス4
MSDEGPGTGPGNGLGEKGDTSGPEGSGGSGPQRRGGDNHGRGRGRGRGRGGGRPGAPGGSGSGPRHRDGVRRPQKRPSCIGCKGTHGGTGAGAGAGGAGAGGAGAGGGGRGRGGSGGRGRGGSGGRGRGGSGGRRGRGRERARGGSRERARGRGRGRGEKRPRSPSSQSSSSGSPPRRPPPGRRPFFHPVGEADYFEYHQEGGPDGEPDVPPGAIEQGPADDPGEGPSTGPRGQGDGGRRKKGGWFGKHRGQGGSNPKFENIAEGLRALLARSHVERTTDEGTWVAGVFVYGGSKTSLYNLRRGTALAIPQCRLTPLSRLPFGMAPGPGPQPGPLRESIVCYFMVFLQTHIFAEVLKDAIKDLVMTKPAPTCNIRVTVCSFDDGVDLPPWFPPMVEGAAAEGDDGDDGDEGGDGDEGEEGQE
【実施例】
【0157】
以下の実施例を、限定ではなく例示として提供する。
【0158】
実施例1-材料と方法
単一細胞の解離 すべてのリプログラミング培養を、トランスフェクション後14日目にFMMに切り替えた。FMMに入ったら、すべてのリプログラミング培養を維持し、アキュターゼ(Accutase)を使用して分離した。次に、単一細胞をマトリゲルまたはビトロネクチンでコーティングした表面で継代した。次いで、単一細胞の解離細胞をFMMで増加させ、フローサイトメトリーによる選別まで維持した。
【0159】
フローサイトメトリー分析と選別 単一細胞が解離したリプログラミングプールを、冷却された染色緩衝液に再懸濁させた。SSEA4-FITC、TRA181-Alexa Fluor-647およびCD30-PE(BD Biosciences)を含む結合一次抗体を細胞溶液に添加し、氷上で15分間インキュベートした。すべての抗体は、100万個の細胞あたり100μLの染色緩衝液中7~10μLで使用した。染色緩衝液中の再懸濁された解離単一細胞をスピンダウンし、今回はROCK阻害剤を含有する染色緩衝液中に再懸濁し、フローサイトメトリー選別のために氷上で維持した。「結果」セクションで説明したゲーティング戦略を使用して、FACS Aria II(BD Biosciences)でフローサイトメトリーでの選別を実行した。選別された細胞を、ウェルあたり3および9イベントの濃度で96ウェルプレートに直接排出させた。各ウェルにはFMMが事前に充填された。選別が完了したら、96ウェルプレートをコロニー形成と増加のためにインキュベートした。選別後7~10日で、細胞を継代した。FMMの後続の継代は、75~90%のコンフルエンシーで定期的に行った。Guava EasyCyte 8 HT(Millipore)でフローサイトメトリー分析を実行し、FCS Express 4(De Novo Software)を使用して分析した。
【0160】
導入遺伝子の存在の試験 QIAamp(登録商標)DNA Mini KitおよびプロテイナーゼK消化(Qiagen)を使用して、ゲノムDNAを単離した。100ngのゲノムDNAを、Taq PCR Master Mix Kit(Qiagen)を使用して、リプログラミング因子とEBNA1を含む導入遺伝子に特異的なプライマーセットを使用して増幅した。PCR反応は次のように35サイクル行った:94℃で30秒間(変性)、60~64℃で30秒間(アニーリング)、72℃で1分間(伸長)。レンチウイルス法を使用して生成された線維芽細胞およびhiPSCからのゲノムDNAを陰性対照として使用した。エピソーム構築物のDNAを陽性対照として使用した。
【0161】
アルカリホスファターゼ染色細胞を4%v/vパラホルムアルデヒド(Alfa Aesar)で固定し、PBSで3回洗浄し、アルカリホスファターゼ染色キット(Millipore)で染色した。簡単に説明すると、2部のファストレットバイオレット、1部のナフトールAS-BIホスフェート(Phosphaste)、1部の水を混合し、固定細胞に加え、25℃で15分間インキュベートした後、PBSで洗浄した。
【0162】
核型分析 細胞遺伝学的分析は、WiCell Research Institute(Madison、WI)により、Gバンド中期細胞で実施された。各核型分析には最小数20スプレッドが含まれ、最初の20で非クローン異常が特定された場合、分析は40スプレッドに拡張される。
【0163】
奇形腫の形成 200μL溶液(100μLのFMMおよび100μLのマトリゲル)あたり50万および300万細胞の濃度の単一細胞解離hiPSCをNOD/SCID/γnullマウスに皮下注射した。5~6週間(300万個の細胞の注入)および7~8週間(50万個の細胞の注入)後、処理のために奇形腫を採取、固定、および維持した。試料は、セクショニング、染色、および検査のためにUCSD Histology Core Facilityに提出された。
【0164】
統計分析 少なくとも3つの独立した実験が行われた。値は平均+SEMとして報告される。統計分析は、ANOVAで行われ、p<0.05が有意であるとみなされた。
【0165】
培地 従来のhESC培養は、20%ノックアウト血清代替物、0.1mM(または1%v/v)の非必須アミノ酸、1~2mM L-グルタミン、0.1mMβ-メルカプトエタノールおよび10~100ng/ml bFGF)を補充したDMEM/F12培地を含有する。対照的に、多段階培養培地は、ROCK阻害剤、ならびにGSK3阻害剤、MEK阻害剤およびTGFβ阻害剤のうちの1つ以上をさらに含む。この段階特異的な培養プラットフォームは、フィーダーフリーのリプログラミングと維持もサポートする。
【0166】
特定の適用では、従来の培養の成分に加えて、リプログラミング培地(FRM)は、SMC4:ROCK阻害剤、GSK3阻害剤、MEK阻害剤およびTGFβ阻害剤の組み合わせ、を含有し、また、維持培地(FMM)は、SMC3:ROCK阻害剤、GSK3阻害剤、およびMEK阻害剤の組み合わせ、を含有する。
【0167】
実施例2-一過性かつ一時的リプログラミングシステムを使用したリプログラミング
プラスミドベクターとエピソームベクターの両方は、非組み込み染色体外DNAである。標準プラスミドには、プロモーターと発現するポリヌクレオチド(複数可)のみを含有しており、自律的にまたは宿主細胞の染色体とともに複製することはできない。したがって、プラスミドによって媒介される導入遺伝子の発現は連続的でも安定的でもなく、むしろ一過性(細胞質)および一時的(短期)であり、トランスフェクション効率、コピー数、プラスミド損失率の影響を受けやすい、生き残ったインプットベクターDNAによって決まる。プラスミドベクターの毎日のトランスフェクションを繰り返すことによってのみ、リプログラミングがまだ許容できないほど低い効率で達成されたことが示されている(Okita et al.,Science(2008);322:949-953)。
【0168】
プラスミドベクターと比較して、エピソームベクターは存在し、細胞質内で自律的に、または染色体の一部として複製できる。したがって、エピソームベクターによって媒介される導入遺伝子発現は、ベクターの複製により連続的で安定している。例えば、目的の導入遺伝子(複数可)に加えて、EBVベースのエピソームベクターは、エプスタイン-バー核抗原-1(EBNA1)タンパク質とEBVに由来する複製起点(oriP)の両方をコードし、分裂細胞の核でエピソームベクターを複製および保持する。エピソームベクターで発現したEBNAはoriPに結合し、細胞DNA複製複合体成分を動員して、oriPが宿主細胞の染色体複製とともにベクターDNAの複製を開始できるようにする。EBNA-1はその後、S期に生成された娘エピソームを、oriPを介して宿主染色体にテザリングし、エピソームの核内保持を維持し、したがって、連続的な導入遺伝子(複数可)とEBNA発現を維持する(Gil et al.,Gene Ther 201017(10):1288-1293)。EBNA媒介エピソームテザリングは、有糸分裂中に各娘細胞にエピソームの分離を与え、細胞ごとに一定数のエピソームが確保される(Gil et al.,2010)。oriPとEBNA-1発現カセットの両方を含有するエピソームプラスミドは、選択なしで細胞周期あたり約95%のエピソーム保持で培養ヒト細胞の複製を持続できる(Gil et al.,2010)。EBVベースのエピソームベクターは、少なくとも12日間(自己持続的多能性状態を確立するのに必要な期間、Okita et al.,Science(2008);322:949-953参照、または米国特許第8,5546,140号に記載されている少なくとも8日~少なくとも30日)外因性のリプログラミング因子を継続的に発現する。
【0169】
本出願の過渡的および時間的リプログラミングシステムを使用してリプログラミングを実行するために、表1および
図1に示すようにいくつかのベクターを構築した。ベクター1(V1)は、選択されたリプログラミング因子(RF)(複数可)の発現を促進するプロモーターとoriPを含有するプラスミドベクターである。ベクター1にはEBNAコード化配列がないため、結果として宿主細胞での保持時間が短縮されている。ベクター1はoriP/RFプラスミドとも呼ばれる。ベクター1が1つ以上のリプログラミング因子をエンコードする場合、因子は自己切断性2Aペプチド、またはIRESによって分離され得る。複数のリプログラミング因子の異なる組み合わせが望ましい同時トランスフェクションには複数のV1を使用でき、V1の組み合わせで各リプログラミング因子の相対コピー数を制御することにより、リプログラミング因子の化学量論を事前に決定できる。ベクター2(V2)は、プロモーターとEBNAコード化配列を含有するプラスミドで、発現はプロモーターによって駆動される。さらに重要なことは、V2にはoriPを欠くため、トランスフェクトされた宿主細胞集団のV2保持時間が大幅に短縮される。ベクター2はEBNAプラスミドとも呼ばれる。V2は、EBNA mRNAまたはタンパク質/ペプチドに置き換えることもできる。mRNA媒介リプログラミングの方法と材料は、例えば、Warren et al.(Cell Stem Cell(2010):7,618-630)に記載され、一方、組み換えタンパク質媒介リプログラミングについては、例えば、Zhou et al.(Cell Stem Cell(2009):4,381-384)に記載されており、両者は参照により本明細書に組み込まれる。ベクター3(V3)はoriPとEBNAの両方を発現するベクターであるが、リプログラミング因子コード配列はない。これらのベクターがリプログラミングをサポートしているかどうかを調べるために、V1、V2、およびV3を単独または異なる組み合わせでヒト線維芽細胞に形質導入した(表2を参照)。
表1-ベクター構築物
【表2】
【0170】
最初に試験されたのは、V1、V2、およびV3の組み合わせで(EmTTR、EBNAを媒介した一過性かつ一時的リプログラミングシステム)、EBNAの長期発現、持続的な導入遺伝子の保持、および効果的なリプログラミングを誘導した。この組み合わせで使用されるリプログラミング因子には、OCT4、NANOG、およびSOX2(V1AおよびV1B)が含まれていた。トランスフェクションの15日後(D15)、多能性状態を示すSSEA4とTRA181の両方を発現する細胞のリプログラミングプールをフローサイトメトリーで選別した。これらの多能性マーカーでは、細胞の顕著な21.4%が二重陽性である(
図2)。トランスフェクションの30日後(D30)、iPSC多能性マーカーTRA181、SSEA4およびCD30(NANOGの代理マーカー)でリプログラミングプールを染色した(
図3)。OCT4およびNANOGの免疫蛍光染色により、iPSC多能性マーカーを発現するコロニーの出現が確認され、リプログラミングの成功が示される。
【0171】
V3がEmTTRシステムで超生理学的な量の導入遺伝子発現をトランスで作成する可能性を排除するために、リプログラミングを駆動する際に内在性多能性因子へのタイムリーな移行ではなく、導入遺伝子発現に過度に依存する細胞を作成し、組み合わせからV3を削除して、線維芽細胞をV1(V1A+V1B)とV2のみでトランスフェクトする、STTR(短命一過性かつ一時的リプログラミング)と呼ばれたシステムを行った。驚くべきことに、V1とV2の組み合わせにより、リプログラミングが行われるだけでなく、V1とV2のトランスフェクションを繰り返す必要がなく、適度な効率が得られた。トランスフェクション後のD15には2.35%のSSEA/TRA181二重陽性細胞があった(
図4)。トランスフェクションの27日後、iPSC多能性マーカーTRA181、SSEA4およびCD30でリプログラミングプールを染色した。免疫蛍光染色により、iPSC多能性マーカーを発現するコロニーの出現が確認され、STTRシステム(V1およびV2のみ)を使用したリプログラミングが成功したことが示される(
図5)。
【0172】
これはまったく予想外の結果であった。短命の導入遺伝子の発現は期間またはタイミングのいずれにおいても十分ではないと想定されたため、STTRシステムはリプログラミングをサポートしないと予想されていた。
表2-リプログラミングのためのベクターの組み合わせ
【表3】
1 :Yu et al.,Science(2009);324(5928):797-801(3個のエピソームベクターの同時トランスフェクションによる7個のリプログラミング因子の移行、および従来型hESC培地で調整したフィーダーを使用したリプログラミングによる3~6個のコロニー/10
6インプット細胞の取得)。
2 :AP染色は、リプログラミング効率の推定において二重陽性よりも厳格でない
【0173】
さらに、EmTTRシステムによる初期リプログラミングは、二重陽性細胞の割合に基づくSTTRリプログラミングに比べてはるかに効率的に見えるが、STTRは、自己持続的多能性を有し、長期間維持できるiPSCの生成に向けた細胞リプログラミングをより適切にサポートする。EmTTRおよびSTTRシステムを使用してリプログラミングするように誘導された線維芽細胞をそれぞれ25日間維持し、多能性マーカーSSEA4、TRA181、CD30の発現で評価した。
図6に示すように、D25でSTTRから誘導された集団の大部分は多能性の3つのマーカーすべての発現を維持しているが、D25でEmTTRにより誘導された集団は、CD30発現の大幅な低下によって示されるように多能性を失っているようであり、持続不可能または不安定な多能性状態に関連する復帰を示している。次いで、両方の集団を継代し、培養中のiPSCコロニーと分化クラスターの形態をその後観察し、D28で比較した(
図7A)。SSEA4、TRA181、CD30の同時発現の維持で最初に指摘したように、STTR集団は、自発的分化は最小限で主にiPSCコロニーとして維持されたが、EmTTR集団は高レベルの自発的分化を示した(
図7B)。
【0174】
STTRシステムの一過性かつ一時的な性質を分析するために、定量RT-PCRを使用してトランスフェクション後の細胞集団におけるEBNA発現を分析した。また、細胞集団における多能性状態の出現を示す内在性OCT4発現もモニターした。
図8に示すように、トランスフェクション後にEBNAの発現が現れ、D2で最高点に到達し、D4で1%未満に急激に低下し始め、これは、細胞分裂あたり90%以上のV2プラスミドの損失率を反映している(EBVベースのエピソームベクターの約5%の損失率と比較して)。従来のアッセイでは、実験開始時のプラスミドの選択を排除し、長期的な集団増殖におけるプラスミドフリー細胞の出現のスクリーニングが行われる。D6までに、集団におけるEBNA発現は本質的に検出不可能であり、一過性の発現システムを特徴付ける。EBNA発現のこのような急速な損失は、極端な短命で一時的な性質を決定し、核取り込みおよび染色体テザリングまたはゲノム組み込みの利益なしで細胞質内のV2プラスミドの一過性の保持が最も可能性が高いことを示す。さらに重要なことは、培養中にiPSCの形態が現れる前、そして確実に自己持続的多能性状態が形成される前にEBNAが失われたことである。本明細書で提供される方法は、EBNAを介したプラスミド保持時間を短縮したが、エピソームを介したリプログラミングにおける安定したEBNA発現の必要性とは明確に対照的である(少なくとも8日間から少なくとも30日間の安定したEBNA発現が必要とされるUS8,546,140またはMazda et al.,1997の宿主細胞での構成的発現を参照)。
【0175】
Howden et al.,2006(Human Gene Therapy;17:833-844)は、EBNA mRNAをEBVベースのエピソームベクターと同時トランスフェクトすると、核への取り込みが増加し、EBVベースのエピソームベクターの染色体テザリングが増加し、したがって、トランスフェクション効率は10倍増加することを示した。本願では、STTRシステムでのV2プラスミドトランスフェクションによるEBNA発現の一過性スパイクはEBNA mRNAの形状と類似している可能性があるが、oriPのみを含有し、EBNAを発現しない本明細書のV1プラスミドは、継続的なEBNA発現に依存してベクターDNAを長期間保持および複製してトランスフェクション率に有意な影響を与えるEBVベースのエピソームのテザリングメカニズムを欠く。V1などのoriPを含有するプラスミドの細胞質から核への輸送が、2つのプラスミドの同時トランスフェクションの際に一過性に発現したEBNAプラスミドV2によって増加しても、V1は、V1とV2の間で同様の損失率で示されるように、リプログラミング因子導入遺伝子の長期的な発現をまだサポートしない。
【0176】
したがって、V1およびV2を使用するSTTRのリプログラミングは、比較すると核に位置し長期的であるエピソームのリプログラミングとは異なり、真に一過性で(染色体外および細胞質)および一時的(持続時間が極めて短い)なものとして特徴づけられるプラスミドのメカニズムによるものである。複数のトランスフェクションを必要とせずに、V1およびV2が媒介したプラスミドのリプログラミングは驚くほど効率的である。さらに、プラスミドのリプログラミングは、D6までにすべてのEBNAプラスミドを失うようであり、その時点でiPSCまたは多能性状態は形成されていない。EBNA検出を介して、STTRシステムは、導入遺伝子の損失が急速であり、マーカーの1つとして高められた内在性OCT4発現レベルを用いて、一般にD21~D32前後の多能性状態を確立する前に有意であることを実証した。
【0177】
興味深いことに、STTRシステムを使用したリプログラミング効率はEmTTRシステムよりも低くなったが(約2%対21%)、EmTTRシステムとは異なり、STTRシステムで生成されたiPSCの大部分がiPSCステータスを維持し、3つの胚葉すべて、内胚葉、中胚葉、および外胚葉に分化できたため、STTRシステムで多能性復帰および/またはiPSCの自発的分化を検出しなかった(
図9)。これは、部分的には、細胞集団への導入遺伝子曝露の短い期間に起因する可能性があり、その結果、リプログラミングは、その存在がEmTTRに見られるように、EBNAの長期発現によって維持され得る外因性のリプログラミング因子によって大幅に推進されるのではなく、誘導された内在性の発生システムおよび動力学の利用に傾いている。
【0178】
新たに形成されたiPSCにV1 DNAがないことのさらなる証拠を提供するために、ハイグロマイシンの存在下での生存について複数のiPSC系統(D25~D30)で機能性試験を実施した。試験されたすべてのhiPSC系統は、STTRの遺伝的要素がまったくないことを実証し、ハイグロマイシンに耐性があることを示したが、これらは、STTRシステムにおけるV1 DNAの完全な消失のさらなる証拠である。選択されたクローンは、フィーダーフリー環境で単一細胞として継代され、未分化細胞の均質な集団を維持すると同時に、3つの体細胞系統に効率的に分化する能力が示された。核型とコピー数の変動分析により、FMMで維持される長期培養中にゲノム的に安定したhiPSC系統を明らかにした。さらに、選択されたクローンは、3つの胚葉の細胞を生成する能力を示し、指示された場合、CD34+細胞、NK細胞、T細胞を含む造血細胞に均一に分化した。
【0179】
また、STTRシステムは、個別のV1ベクターによって実行されるさまざまなリプログラミング因子の組み合わせに関係なく、リプログラミングの開始に効果的であることが示された(
図10および表3)。
表3-STTRシステム媒介リプログラミングに適用可能な新規リプログラミング因子の組み合わせ
【表4】
【0180】
本STTRシステムを使用したリプログラミングとEBVベースのエピソームベクターを使用したリプログラミングにより、外因性DNA含有量に関して異なるiPSCが生成される。EBVベースのエピソームリプログラミングは、フットプリントフリーのiPSCを生成することで高く評価されましたが、細胞分裂あたり約3~5%のエピソームDNA損失の遅い速度に大きく依存している(Leight et al.,Mol Cell Biol(2001);21:4149-4161)。したがって、エピソームベクターをリプログラミングに使用すると、フットプリントフリーのiPSC集団が可能になるのは、iPS細胞を何回も継代した後のみになる。最初に取得したiPSCを少なくとも12~15継代(4~7日ごとに分割する各培養が1継代としてカウントされる)して、選択することなく本質的にフットプリントフリーの多能性幹細胞集団を取得することが示されている(Cheng et al.,Cell Stem Cell(2012);10:337-344)。それまでは、このようにして生成されたiPSC集団は、外因性DNA含有量の点で非常に不均一である。ある研究では、集団のiPSCの約3分の2がトランスフェクションの約20日後にoriP/EBNAエピソームベクターを含有することが示された(Leight et al.,Mol Cell Biol(2001);21:4149-4161、Yu et al.,Science(2009);324(5928):797-801)。顕著なまたは高い自発的分化率を有するリプログラミングした細胞の場合、長期の自然継代プロセスを通じてフットプリントフリーのiPSCを得るのはさらに不十分である。
【0181】
まとめると、データは、ここで提供される短命のプラスミドベクターの組み合わせを使用してリプログラミング遺伝子を一過性かつ一時的に発現させることにより、フットプリントフリーのhiPSCを容易に生成できることを示し、プラットフォームは、実質的に均質なフットプリントフリーのiPSC集団の効率的かつ迅速な生成をサポートする。いくつかの実施形態では、フットプリントフリーのiPSC集団は、広範囲の継代を必要とせずに、任意選択的に、完全にフィーダーフリー環境で生成される。
【0182】
実施例3-治療的使用のための由来細胞の供給源として単一細胞由来iPSCバンクを生成するための一過性かつ一時的なリプログラミングシステム
STTRリプログラミング組成物および方法は、市販の免疫療法のための再生可能かつ信頼性の高い細胞源として使用するためのクローンマスターiPSC系統を生成するために使用されている。ドナーが同意した線維芽細胞に、開示されているプラスミドの組み合わせをトランスフェクトした。リプログラミング細胞をクローン密度で96ウェルプレートに選別し、単一細胞由来のiPSCクローンを増加させ、多能性、リプログラミングプラスミドの喪失、ゲノム安定性、分化能などの望ましい属性についてスクリーニングした。選択されたクローンiPSC株は、厳格な製造およびプロセス品質管理の下で製造および凍結保存され、関連規制の下で必要とされる「マスターセルバンク」としての資格を得るために、株は広範な特性評価および試験を受けた。製造されたiPSCバンクは、現在の適正製造基準に従って、臨床的に適切な規模のナチュラルキラー(NK)細胞に分化された。由来細胞は、関連規制の下で必要とされる「原薬および医薬品」としての資格を得るために、さらに広範な特性評価および試験を受けた。iPSC由来のNK細胞を凍結保存して、単剤療法として、または免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて、血液がんおよび固形がんの養子細胞療法で使用するために、約1x108細胞/用量で多数の用量を生成した。通常、60kgの患者の場合、1x108細胞/用量は1.67x106細胞/kgに換算される。各適応症の剤形、投与経路、および投与計画は、インビトロおよびインビボの両方でのGLP(優良試験所基準)および非GLP研究からの前臨床データに従って設計および決定された。
【0183】
がんや免疫疾患を治療するためiPSC由来の免疫細胞をサポートするだけでなく、STTRリプログラミングプラットフォームによって生成されたフットプリントフリーおよびフィーダー細胞フリーのマスターiPSC株は、黄斑変性症、糖尿病、パーキンソン病、血液障害、心血管疾患に至るまでの変性疾患に対する既製の細胞療法を可能にする可能性を秘めている。
【0184】
当業者は、本明細書に記載の方法、組成物、および製品が例示的な実施形態を代表するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことを容易に理解するであろう。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示された本開示に対して様々な置換および変更を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0185】
本明細書で言及されるすべての特許および刊行物は、本開示が関係する当業者のレベルを示す。すべての特許および刊行物は、あたかも各個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0186】
本明細書に例示的に説明される本開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定がなくても適切に実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、用語「含む」、「本質的にからなる」、および「からなる」のいずれかは、他の2つの用語のいずれかに置き換えられ得る。使用されている用語と表現は説明の用語として使用されており、限定するものではなく、そのような用語と表現の使用において、示され説明された特徴の同等物またはその一部を除外する意図はないが、請求される本開示の範囲内で様々な修正が可能であることが認められる。したがって、本開示は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書に開示された概念の修正および変形は、当業者よって行われ得ること、ならびにそのような修正および変形は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると見なされることを理解されたい。
【配列表】