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特許7554680電動作業機および電動作業機によって生じる騒音を制御する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電動作業機および電動作業機によって生じる騒音を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240912BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240912BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20240912BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G10K11/178 120
G10K11/16 100
G10K11/162
B25F5/00 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021011309
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114852
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高野 秀明
【審査官】松崎 孝大
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-061490(JP,A)
【文献】特開平05-088681(JP,A)
【文献】特開平07-064572(JP,A)
【文献】特開平09-022291(JP,A)
【文献】特開2017-090736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
G10K 11/16
G10K 11/162
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ定められた現場作業を実行するのに必要な駆動力を発生させるように構成されたモータと、
前記モータの運転に起因する騒音である対象騒音に対して相関を有する参照信号を取得するように構成された参照取得部と、
一連のタップを含み、特性を調整可能なデジタルフィルタであって、前記参照取得部から前記参照信号を受け、前記対象騒音を打ち消すための制御信号を生成するように構成された騒音制御フィルタと、
前記制御信号に従って疑似騒音を発生させるように構成された制御音源と、
あらかじめ定められた消音点での前記疑似騒音と前記対象騒音との合成音を誤差信号に変換するように構成された誤差センサと、
前記制御音源から前記誤差センサに至る経路である二次系を事前にモデル化したN個のタップを含むデジタルフィルタであって、前記参照取得部から前記参照信号を受け、フィルタード参照信号を生成するように構成された二次系フィルタと、
前記誤差信号および前記フィルタード参照信号を用い、適応アルゴリズムに従って前記騒音制御フィルタの特性を調整するように構成された特性調整部と、
を備え、
前記特性調整部は、前記一連のタップにおけるM個のタップの係数を更新するように構成され、
前記係数は、前記係数を変化させる度合いを表す更新ステップサイズに、前記係数を変化させる方向を表す勾配ベクトルを乗じた更新値によって更新され、
前記更新値の算出には、複数の処理サイクルに渡って算出される前記勾配ベクトルの累積値が用いられ、
前記M個のタップは、前記一連のタップの一部または全部に対応し、
M、Nは、M<Nを満たす正整数である
電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記M個のタップは、前記一連のタップの全部に対応し、
前記特性調整部は、前記M個のタップのすべての係数を更新するように構成された
電動作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記騒音制御フィルタが発散傾向にあるか否かを判定するように構成された発散判定部をさらに備え、
前記特性調整部は、前記発散判定部にて前記騒音制御フィルタが発散傾向にあると判定される前は、前記一連のタップにおけるL個のタップの係数を更新し、前記騒音制御フィルタが発散傾向にあると判定された後は、前記一連のタップにおけるM+1番目以降のタップの係数を既定値に設定し、前記一連のタップにおける1番目からM番目までのタップの係数を更新するように構成され、
前記L個のタップは、前記一連のタップの全部に対応し、
Lは、L≧Nを満たす正整数である
電動作業機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動作業機であって、
前記既定値は、前記モータから前記誤差センサに到る経路である一次系のインパルス応答に前記二次系フィルタの逆フィルタを乗じた値である
電動作業機。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の電動作業機であって、
前記発散判定部は、前記誤差信号の強度および/または該強度の変化傾向に基づいて、前記騒音制御フィルタが発散傾向にあるか否かを判定するように構成された
電動作業機。
【請求項6】
請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記発散判定部は、前記L個のタップの各々の出力強度、および/または前記L個のタップの各々の係数の大きさ、および/または該係数の更新に用いるパラメータの変化傾向に基づいて、前記騒音制御フィルタが発散傾向にあるか否かを判定するように構成された
電動作業機。
【請求項7】
請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記L個のタップは、前記モータから前記誤差センサに到る経路である一次系のインパルス応答が収束するのに必要な時間長に対応する長さを有する
電動作業機。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記N個のタップは、前記疑似騒音の発生に必要な処理を終了させることができる長さを有し、
前記疑似騒音の発生に必要な処理には、前記参照信号が検出されてから該参照信号の元となった騒音が前記誤差センサにて検出されるまでに要する時間内に、前記特性調整部が前記参照信号に従って前記係数を更新する処理、および前記係数が更新された前記騒音制御フィルタが前記参照信号に従って前記制御信号を生成する処理のいずれかが少なくとも含まれる
電動作業機。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記特性調整部は、複数の処理サイクルに渡って算出される前記勾配ベクトルの平均値を用いて前記更新値を算出するように構成された
電動作業機。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記特性調整部は、前記騒音制御フィルタの収束状況に応じて前記更新ステップサイズを変化させるように構成された
電動作業機。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記参照取得部は、前記対象騒音を検出して前記参照信号を生成するように構成された参照センサを備える
電動作業機。
【請求項12】
請求項11に記載の電動作業機であって、
前記参照センサは、該参照センサと前記制御音源との間の距離が、前記制御音源と前記
誤差センサとの間の距離より長くなる位置に配置された
電動作業機。
【請求項13】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記参照取得部は、前記モータを駆動する駆動信号を前記参照信号として取得するように構成された
電動作業機。
【請求項14】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
前記参照取得部は、
前記二次系フィルタと同じ特性を有し、前記騒音制御フィルタから前記制御信号を受け、前記誤差センサに到達する前記疑似騒音を表す到達信号を生成するように構成された到達フィルタと、
前記到達信号と前記誤差信号とを加算することで前記参照信号を生成するように構成された加算部と、
を備える電動作業機。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の電動作業機であって、
当該電動作業機は、
前記モータによって駆動されて、気流を発生させるように構成されたファンと、
前記ファンによって発生された前記気流が流れるように構成された流路と、
前記気流を前記流路から排出するように構成された排出口と、
を備え、
前記制御音源および前記誤差センサは、前記排出口が前記消音点となるように配置された
電動作業機。
【請求項16】
請求項15に記載の電動作業機であって、
前記流路の壁面の少なくとも一部には、前記気流が当たることで発生する風雑音を抑制する吸音材が設けられ、
前記誤差センサは、前記吸音材を挟んで前記流路と対向する位置に配置された
電動作業機。
【請求項17】
電動作業機によって生じる騒音を制御する方法であって、
前記電動作業機におけるモータの運転に起因する騒音である対象騒音に対して相関を有する参照信号を取得することと、
一連のタップを含み、特性を調整可能なデジタルフィルタである騒音制御フィルタにより、前記参照信号から前記対象騒音を打ち消すための制御信号を生成することと、
前記制御信号に従って制御音源により疑似騒音を発生させることと、
あらかじめ定められた消音点での前記疑似騒音と前記対象騒音との合成音を、誤差センサにより誤差信号に変換することと、
前記制御音源から前記誤差センサに至る経路である二次系を事前にモデル化したN個のタップを含むデジタルフィルタである二次系フィルタにより、前記参照信号からフィルタード参照信号を生成することと、
前記誤差信号および前記フィルタード参照信号を用い、適応アルゴリズムに従って前記一連のタップにおけるM個のタップの係数を更新することと
を備え、
前記係数は、前記係数を変化させる度合いを表す更新ステップサイズに、前記係数を変化させる方向を表す勾配ベクトルを乗じた更新値によって更新され、
前記更新値の算出には、複数の処理サイクルに渡って算出される前記勾配ベクトルの累積値が用いられ、
前記M個のタップは、前記一連のタップの一部または全部に対応し、
M、Nは、M<Nを満たす正整数である
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電動作業機における騒音制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には電動作業機の騒音を抑制するため、アクティブノイズコントロール(ANC)を用いることが記載されている。
ANCは、音源側のマイクで測定した音(以下、参照信号)を用いて、消音したい位置で逆位相となる音を発生させて打ち消す技術である。この逆位相の音は、適応フィルタを用いて生成される。フィルタの特性は、例えば、Filtered-X、NLMSアルゴリズム等の適応アルゴリズムを用いて逐次計算される。
【0003】
ANCでは、適応フィルタとは別に、制御音を発生させるスピーカから、制御誤差を検出するマイクに至る経路(以下、二次系)の特性をモデル化した二次系フィルタが用いられる。適応フィルタおよび二次系フィルタには、デジタルフィルタが用いられる。デジタルフィルタのタップ数は、インパルス応答が十分に収束するのに必要な時間長に基づき、例えば、数百程度に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平6-508695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタルフィルタの係数を設定する適応アルゴリズムの計算は、膨大な処理量を必要とし、しかも、騒音が検出されてから消音したい位置に到達するまでの伝搬時間よりも、十分に早く完了する必要がある。このため、何らかの理由で計算処理能力の高いコンピュータを使用できない場合には、ANCを適用することが困難であるという課題があった。
【0006】
本開示の1つの局面は、電動作業機の騒音の抑制に必要な計算処理量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面における電動作業機は、モータと、参照取得部と、騒音制御フィルタと、制御音源と、誤差センサと、二次系フィルタと、特性調整部と、を備える。
モータは、あらかじめ定められた現場作業を実行するのに必要な駆動力を発生させるように構成される。参照取得部は、モータの運転に起因する騒音である対象騒音に対して相関を有する参照信号を取得するように構成される。騒音制御フィルタは、一連のタップを含み、特性を調整可能なデジタルフィルタである。騒音制御フィルタは、参照取得部から参照信号を受け、対象騒音を打ち消すための制御信号を生成するように構成される。制御音源は、制御信号に従って疑似騒音を発生させるように構成される。誤差センサは、あらかじめ定められた消音点での疑似騒音と対象騒音との合成音を誤差信号に変換するように構成される。二次系フィルタは、制御音源から誤差センサに至る経路である二次系を事前にモデル化したN個のタップを含むデジタルフィルタである。二次系フィルタは、参照取得部から参照信号を受け、フィルタード参照信号を生成するように構成される。特性調整部は、誤差信号およびフィルタード参照信号を用い、適応アルゴリズムに従って騒音制御フィルタの特性を調整するように構成される。また、特性調整部は、一連のタップにおけるM個のタップの係数を更新するように構成される。M個のタップは、一連のタップの一部または全部に対応する。M、Nは、M<Nを満たす正整数である。
【0008】
このような構成によれば、騒音制御フィルタの発散を抑制しつつ、騒音制御フィルタのタップ数を削減でき、その結果、適応アルゴリズムの計算処理量を削減できる。
M個のタップは、一連のタップの全部に対応してもよい。特性調整部は、M個のタップのすべての係数を更新するように構成されてもよい。
【0009】
前述の電動作業機は、騒音制御フィルタが発散傾向にあるか否かを判定するように構成された発散判定部をさらに備えてもよい。特性調整部は、発散判定部にて騒音制御フィルタが発散傾向にあると判定される前は、一連のタップにおけるL個のタップの係数を更新するように構成されてもよい。特性調整部は、発散判定部にて騒音制御フィルタが発散傾向にあると判定された後は、一連のタップにおけるM+1番目以降のタップの係数を既定値に設定し、一連のタップにおける1番目からM番目までのタップの係数を更新するように構成されてもよい。L個のタップは、一連のタップの全部に対応してもよい。Lは、L≧Nを満たす正整数であってもよい。
【0010】
既定値は、モータから誤差センサに到る経路である一次系のインパルス応答に二次系フィルタの逆フィルタを乗じた値であってもよい。
発散判定部は、誤差信号の強度および/または強度の変化傾向に基づいて、騒音制御フィルタが発散傾向にあるか否かを判定するように構成されてもよい。
【0011】
発散判定部は、L個のタップの各々の出力強度、および/またはL個のタップの各々の係数の大きさ、および/または係数の更新に用いるパラメータの変化傾向に基づいて、騒音制御フィルタが発散傾向にあるか否かを判定するように構成されてもよい。
【0012】
L個のタップは、モータから誤差センサに到る経路である一次系のインパルス応答が収束するのに必要な時間長に対応する長さを有してもよい。
N個のタップは、疑似騒音の生成に必要な処理を終了させることができる長さを有するように構成されてもよい。疑似騒音の生成に必要な処理には、参照信号が検出されてから参照信号の元となった騒音が誤差センサにて検出されるまでに要する時間内に、特性調整部が参照信号に従って係数を更新する処理が含まれてもよい。疑似騒音の生成に必要な処理には、係数が更新された騒音制御フィルタが参照信号に従って制御信号を生成する処理が含まれてもよい。
【0013】
特性調整部は、係数の更新回数が既定値に達すると、係数の更新を停止するように構成されてもよい。
特性調整部は、係数を変化させる度合いを表す更新ステップサイズに、係数を変化させる方向を表す勾配ベクトルを乗じた更新値によって、係数を更新するように構成されてもよい。
【0014】
特性調整部は、複数の処理サイクルに渡って算出される勾配ベクトルの平均値を用いて更新値を算出するように構成されてもよい。
このような構成によれば、騒音制御フィルタの係数の更新が、外部環境の突発的な変化の影響を受けることを抑制できる。
【0015】
特性調整部は、騒音制御フィルタの収束状況に応じて更新ステップサイズを変化させるように構成されてもよい。
このような構成によれば、騒音制御フィルタの発散をより抑制できる。
【0016】
参照取得部は、対象騒音を検出して参照信号を生成するように構成された参照センサを備えてもよい。
参照センサは、参照センサと制御音源との間の距離が、制御音源と誤差センサとの間の距離より長くなる位置に配置されてもよい。
【0017】
参照取得部は、モータを駆動する駆動信号を参照信号として取得するように構成されてもよい。
参照取得部は、到達フィルタと、加算部と、を備えてもよい。到達フィルタは、二次系フィルタと同じ特性を有し、騒音制御フィルタから制御信号を受け、誤差センサに到達する疑似騒音を表す到達信号を生成するように構成される。加算部は、到達信号と誤差信号とを加算することで参照信号を生成するように構成されてもよい。
【0018】
前述の電動作業機は、ファンと、流路と、排出口と、を備えてもよい。ファンは、モータによって駆動されて、気流を発生させるように構成されてもよい。流路は、ファンによって発生された気流が流れるように構成されてもよい。排出口は、気流を流路から排出するように構成されてもよい。制御音源および誤差センサは、排出口が消音点となるように配置されてもよい。
【0019】
流路の壁面の少なくとも一部には、気流が当たることで発生する風雑音を抑制する吸音材が設けられてもよい。誤差センサは、吸音材を挟んで流路と対向する位置に配置されてもよい。
【0020】
このような構成によれば、対象騒音以外の騒音が誤差センサにて検出されることを抑制でき、疑似騒音による対象騒音の抑制精度を向上させることができる。
本開示の別の一局面は、電動作業機によって生じる騒音を制御する方法であって、電動作業機におけるモータの運転に起因する騒音である対象騒音に対して相関を有する参照信号を取得することと、一連のタップを含み、特性を調整可能なデジタルフィルタである騒音制御フィルタにより、参照信号から対象騒音を打ち消すための制御信号を生成することと、制御信号に従って制御音源により疑似騒音を発生させることと、あらかじめ定められた消音点での疑似騒音と対象騒音との合成音を、誤差センサにより誤差信号に変換することと、制御音源から誤差センサに至る経路である二次系を事前にモデル化したN個のタップを含むデジタルフィルタである二次系フィルタにより、参照信号からフィルタード参照信号を生成することと、誤差信号およびフィルタード参照信号を用い、適応アルゴリズムに従って一連のタップにおけるM個のタップの係数を更新することとを備える。M個のタップは、一連のタップの一部または全部に対応する。M、Nは、M<Nを満たす正整数である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1~第3実施形態に係る集塵機の外観を示す斜視図である。
図2】集塵機本体の底面図である。
図3】集塵機本体からハウジングを取り除いた内部状態を示す斜視図である。
図4ハウジングを、部品を取り除いた状態でハウジングとの接合面側から見た斜視図である。
図5ハウジングを、部品を取り除いた状態で上ハウジングとの接合面側から見た斜視図である。
図6ハウジングに一部の部品の位置を配置した状態を示す斜視図である。
図7】下ハウジングの平面図である。
図8】集塵機の電気的な構成を示すブロック図である。
図9】フィードフォワード型ANCシステムのモデルを表すブロック図である。
図10】騒音制御処理を示すフローチャートである。
図11】係数更新処理を示すフローチャートである。
図12】発散判定処理を示すフローチャートである。
図13】第2実施形態における係数更新処理を示すフローチャートである。
図14】第3実施形態における係数更新処理を示すフローチャートである。
図15】ステップサイズ更新処理を示すフローチャートである。
図16】第3実施形態における発散判定処理を示すフローチャートである。
図17】第4実施形態に係るハンディクリーナの外観を示す斜視図である。
図18】ハンディクリーナの断面図である。
図19】ハンディクリーナのハウジング、および部品の一部を取り除いた状態を示す斜視図であり、誤差検出マイクロホン、および制御スピーカの取り付け状態を示す。
図20】フィードバック型ANCシステムのモデルを表すブロック図である。
図21】二次系フィルタの誤差の検討に用いたANCのブロック図である。
図22図21に示すブロック図を変形した等価なブロック図である。
図23図22に示すブロック図を更に変形した等価なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本開示の例示的な実施形態を説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.集塵機の構成]
電動作業機の一例である集塵機1について説明する。集塵機1は、作業者に背負われた状態で使用される。本実施形態では、説明の利便性を考慮して、集塵機1に対し、図1図7に示すように、前,後,上,下,左,右を規定する。
【0023】
図1図7に示すように、集塵機1は、本体3と、操作装置6と、装着具7とを備える。
装着具7は、第1の肩ベルト71Aと、第2の肩ベルト71Bと、腰ベルト72とを備え、いずれも本体3の後面に取り付けられる。第1の肩ベルト71Aおよび第2の肩ベルト71Bは、本体3の上方端かつ左右両端付近からそれぞれ延設され、作業者の左肩および右肩にそれぞれ取り付けられる。腰ベルト72は、本体3の下方端付近から延設され、作業者の腰に取り付けられる。本体3は、装着具7によって作業者に背負われる。
【0024】
操作装置6は、集塵機1を起動、停止させるためのスイッチを含み、作業者によって操作される。操作装置6は、ケーブル61を介して本体3の下端中央付近に接続される。
本体3は、ハウジング30を備える。
【0025】
ハウジング30は、下ハウジング301と、上ハウジング302と、プレート303とを含む。下ハウジング301は、前面に開口部を有する有底箱状の部材である。上ハウジング302は、前面および後面に開口部を有する枠状の部材である。プレート303は、上ハウジング302の上面側の開口部を塞ぐ板状の部材である。ハウジング30は、例えば、樹脂材料を射出成形することで成形される。
【0026】
ハウジング30は、吸引口31と、集塵室32と、第1流路33と、モータ室34と、第2流路35と、排気室36と、第1のバッテリ収納部37Aと、第2のバッテリ収納部37Bと、部品配置部38とを備える。
【0027】
吸引口31は、ハウジング30の上端の中央部に設けられる。吸引口31には、図示を省略するが、可撓性のホースの第1の端部が接続される。また、ホースの第2の端部には、吸込口を有するノズルが接続される。
【0028】
集塵室32は、ハウジング30の上部に設けられる矩形状の内部空間である。集塵室32は、吸引口31に接続される集塵パック41を収納する。集塵パック41は、例えば紙製のパックであり、吸引口31から吸い込まれてくる塵埃を捕集する。
【0029】
第1流路33は、集塵室32の右辺に沿って設けられ、かつ、下端がモータ室34に接続される。第1流路33と集塵室32との境界には、フィルタ42が配置される。フィルタ42は、例えば、高効率微粒子エアフィルタ(HEPA)である。
【0030】
モータ室34は、集塵室32の下方に設けられる矩形状の内部空間である。モータ室34は、右端中央部に第1流路33が接続される流入口341を有し、左端上部に第2流路35が接続される流出口342を有する。モータ室34には、駆動ユニット43が収納される。
【0031】
駆動ユニット43は、ファン431と、モータ432と、ダンパー433とを含む。ファン431は、モータ432の回転軸に接続され、モータ432を駆動することで、モータ室34の流入口341から流出口342へ向かう気流を発生させる。ダンパー433は、モータ432の周囲を覆う環状の部材であり、モータ432が発する音を吸収する。ダンパー433には、例えば、スポンジが用いられる。なお、図3図6において、モータ432は、ダンパー433に覆われて図示されていないが、ダンパー433の中央に位置する。
【0032】
第2流路35は、モータ室34の流出口342と排気室36を接続する。第2流路35には、吸音材46が配置される。吸音材46は、下ハウジング301において第2流路35と集塵室32とを仕切る壁面に設けられる。吸音材46として、例えば、スポンジが用いられる。
【0033】
排気室36は、モータ室34の左側に設けられた内部空間であり、ハウジング30の下面にスリット状の排出口361を有する。
このように構成された本体3では、駆動ユニット43が気流を発生させると、吸引口31、ひいては吸引口31に接続されたホースやノズルを介して、ハウジング30の外部空間から外気がハウジング30の内部空間に吸引される。吸引された外気は、まず集塵室32に到り、吸引口31に取り付けられた集塵パック41を通過することにより、外気に含まれる塵埃が捕捉される。集塵パック41を通過した空気は、フィルタ42を介して第1流路33に到る。フィルタ42では、集塵パック41が捕捉できなかったより細かい塵埃が捕捉される。第1流路33に到った空気は、モータ室34および第2流路35を通過して排気室36に到り、排出口361を介してハウジング30の外部空間に排出される。
【0034】
第1のバッテリ収納部37Aは、第1のバッテリパック45Aを収容する空間であり、ハウジング30の下端付近に設けられ、ハウジング30の下端左端付近に開口する第1のバッテリ取付口371Aを有する。第2のバッテリ収納部37Bは、第2のバッテリパック45Bを収容する空間であり、ハウジング30の下端付近に設けられ、ハウジング30の下端右端付近に開口する第2のバッテリ取付口371Bを有する。第1および第2のバッテリパック45A,45Bは、それぞれ第1および第2のバッテリ取付口371A,371Bから第1および第2のバッテリ収納部37A,37Bに挿入される。第1および第2のバッテリパック45A,45Bは、種々の電動作業機の電源として使用可能な汎用バッテリである。
【0035】
部品配置部38は、モータ室34および第2流路35、排気室36と、第1および第2のバッテリ収納部37A,37Bとの間に位置する内部空間であり、種々の電気部品が配置される。部品配置部38は、モータ室34および第2流路35、排出口361をそれぞれ形成する壁面によって3方を囲われた縦長部位381と、モータ室34と第1および第2のバッテリ収納部37A,37Bとに挟まれ縦長部位381と連通する横長部位382とを有する。
【0036】
横長部位382には、コネクタ52と、参照マイクロホン(以下、参照マイク)53とが配置される。
コネクタ52は、第1のバッテリ収納部37Aと第2のバッテリ収納部37Bとの間に配置され、操作装置6が有するケーブル61を、内部回路に接続するために設けられる。
【0037】
参照マイク53は、モータ室34との境界となる壁面343に形成された第1の取付孔344を利用して、参照マイク53の指向性がモータ室34の内側を向くように取り付けられる。参照マイク53は、ハウジング30内で発生する対象騒音を検出する。対象騒音は、具体的には、駆動ユニット43のモータ432やファン431から生じる騒音、および駆動ユニット43が発生させた気流によって生じる騒音を含む。
【0038】
縦長部位381には、制御スピーカ54と、誤差マイクロホン(以下、誤差マイク)55と、駆動コントローラ44とが配置される。制御スピーカ54および誤差マイク55は、下ハウジング301の下面に形成された第2の取付孔304および第3の取付孔305を利用して、制御スピーカ54および誤差マイク55の指向性がハウジング30の外側を向くように取り付けられる。駆動コントローラ44は、図7に示すように、縦長部位381と、モータ室34との境界となる壁面に取り付けられる。駆動コントローラ44は、電源制御、モータ制御、騒音制御等を行う回路基板であり、その詳細については後述する。
【0039】
なお、誤差マイク55は、消音点となる排出口361の近傍、すなわち、誤差マイク55が消音点にあるとみなせる位置であり、且つ、駆動ユニット43によって発生した気流が直接当たらない位置に配置される。制御スピーカ54は、制御スピーカ54から発せられた疑似騒音の位相が消音点と誤差マイク55の位置とで同位相となる位置に配置される。更に、参照マイク53および制御スピーカ54、誤差マイク55は、制御スピーカ54から放射される疑似騒音が消音点に到達するまでの時間が、対象騒音が直接消音点に到達するまでの時間より短くなるように配置される。つまり、この時間差の間に疑似騒音を生成する処理が実行される。
【0040】
制御スピーカ54は、ハウジング30の外に向けて疑似騒音を放射し、誤差マイク55は、排出口361から排出される対象騒音と疑似騒音とが合成された音を検出する。制御スピーカ54は、対象騒音より十分に大きな音を出せる能力を有する。誤差マイク55は、対象騒音と疑似騒音の合成音を歪みなく受信できる能力を有する。
【0041】
[1-2.駆動コントローラ]
図8に示すように、駆動コントローラ44は、制御回路441と、集塵用回路群442と、騒音用回路群443と、電源回路447とを含む。
【0042】
電源回路447は、第1および第2のバッテリパック45A,45Bから供給される電力を適切な電圧にて各部へ分配する。
本第1実施形態の制御回路441は、マイクロコンピュータの形態である。従って、制御回路441は、CPU441Aと、メモリ441Bとを備える。制御回路441は、マイクロコンピュータに代えて、またはマイクロコンピュータに加えて、例えばディスクリート素子などのような電子部品の組み合わせを備えてもよいし、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えてもよいし、特定応用向け汎用品(ASSP)を備えてもよいし、現場で書き換え可能なゲートアレイ(FPGA)等のプログラマブル・ロジック・デバイスを備えてもよいし、あるいはこれらの組み合わせを備えてもよい。
【0043】
集塵用回路群442は、集塵機としての機能を果たすために必要な各種回路である。集塵用回路群442は、モータ駆動回路と、バッテリ切替回路と、異常検出回路とを含む。モータ駆動回路は、モータ432を駆動する回路である。バッテリ切替回路は、第1および第2のバッテリパック45A,45Bの充電残量に応じて、電力の供給源を第1および第2のバッテリパック45A.45Bのいずれかに適宜切り替えるための回路である。異常検出回路は、モータ432の駆動に関わる各種異常を検出する回路である。
【0044】
騒音用回路群443は、騒音制御装置としての機能を果たすために必要な各種回路である。騒音用回路群443は、第1のアナログ/デジタル(A/D)変換器444と、第2のA/D変換器445と、デジタル/アナログ(D/A)変換器446とを含む。
【0045】
第1のA/D変換器444は、参照マイク53の検出信号をA/D変換して制御回路441に供給する。第2のA/D変換器445は、誤差マイク55の検出信号をA/D変換して制御回路441に供給する。D/A変換器446は、制御回路441から出力される制御データを、D/A変換して制御スピーカ54に供給する制御信号を生成する。
【0046】
制御回路441は、集塵用回路群442を制御することにより、集塵機1としての機能を実現する処理の他、集塵機1が発する騒音を抑制する騒音制御装置10としての機能を実現する処理である騒音抑制処理を実行する。
【0047】
つまり、騒音制御装置10は、騒音抑制処理を実行する制御回路441と、騒音用回路群443と、参照マイク53と、制御スピーカ54と、誤差マイク55とを備える。
制御回路441は、騒音制御処理によって、フィードフォワード型のアクティブノイズコントロール(以下、ANC)を実現する。
【0048】
[1-3.ANCモデル]
騒音制御装置10が実現するフィードフォワード型ANCのモデルについて説明する。
図9に示すように、フィードフォワード型ANCのモデルは、参照センサM1と、制御音源M2と、誤差センサM3と、騒音制御フィルタM4と、二次系フィルタM5と、係数更新部M6とを備える。なお、参照センサM1は、参照マイク53および第1のA/D変換器444に相当する。制御音源M2は、D/A変換器446および制御スピーカ54に相当する。誤差センサM3は、誤差マイク55および第2のA/D変換器445に相当する。また、騒音制御フィルタM4および二次系フィルタM5、係数更新部M6は、いずれも制御回路441の処理によって実現されてもよい。但し、騒音制御フィルタM4および二次系フィルタM5、係数更新部M6の一部または全部が、ハードウェアによって実現されてもよい。
【0049】
参照センサM1は、対象騒音を検出することで参照信号xを生成する。nは、n番目のサンプリングデータであることを表す。
騒音制御フィルタM4は、L個のタップを含むFIRフィルタである。Lは正整数である。騒音制御フィルタM4は、直近で検出されたL個の参照信号{x,xn-1,…,xn-L+1}を要素とするL次元の参照ベクトルx(n)から、制御信号uを生成する。
【0050】
制御音源M2は、制御信号uに従って、疑似騒音を発生させる。
誤差センサM3は、対象騒音と疑似騒音との合成音を検出することで誤差信号eを生成する。
【0051】
以下では、参照センサM1から誤差センサM3に至る音声の伝搬経路を一次系とよび、制御音源M2から誤差センサM3に至る音声の伝搬経路を二次系とよぶ。
二次系フィルタM5は、N個のタップを含むFIRフィルタである。Nは正整数である。二次系フィルタM5は、直近で検出されたN個の参照信号{x,xn-1,…,xn-N+1}を要素とするN次元の参照ベクトルx(n)からフィルタード参照信号rnを生成する。二次系フィルタM5は、二次系の伝達特性をモデル化したフィルタであり、各タップの係数は固定値が用いられる。フィルタード参照信号rは、疑似騒音が誤差センサM3に到達したときに疑似騒音に付加されている二次系の影響分を、参照信号xに付与した信号である。
【0052】
係数更新部M6は、誤差センサM3の位置(すなわち、消音点)にて、対象騒音と疑似騒音とが互いに打ち消し合って、誤差信号eが最小となるように、騒音制御フィルタM4に含まれるL個のタップの係数{w,w,…,w}を更新する。以下では、係数{w,w,…,w}要素とするL次元のベクトルを係数ベクトルw(n)という。
【0053】
騒音制御フィルタM4の係数の更新は、例えば、適応アルゴリズムの一つであるFiltered-x NLMSアルゴリズムを用いることができる。
騒音制御装置10において、騒音制御フィルタM4のタップ数Lは、一次系のインパルス応答が十分に収束する時間に相当する大きさを有し、数百~千数百程度に設定される。二次系フィルタM5のタップ数Nは、L≧N、且つ、騒音制御処理に割り当てられた制御回路441の処理時間内に、騒音制御処理を終了させることができる大きさ、すなわち、制御回路441の処理能力に応じて設定される。また、二次系フィルタM5のタップ数Nは、二次系のインパルス応答が十分に収束する時間に対応する数より小さな値に設定される。つまり、二次系フィルタM5は、インパルス応答の後半部分を除去した近似的な特性を再現する。
【0054】
以下では、騒音制御フィルタM4および二次系フィルタM5において、最新の信号を処理するタップを1番目のタップとし、過去の信号に遡るほど、その信号を処理するタップの番号が大きくなる。また、番号が小さい側のタップを上位のタップ、番号が大きい側のタップを下位のタップという。
【0055】
また、適応アルゴリズムによって更新される騒音制御フィルタM4の係数が発散傾向にあるときに用いる騒音制御フィルタM4のタップ数をMとする。Mは、M≦Nを満たす正整数であり、以下の手法を用いシミュレーション等によって実験的に事前に決定される。
【0056】
例えば、事前推定した一次系のインパルス応答Pと二次系のインパルス応答Cから計算される伝達特性(以下、理論特性)P/Cを騒音制御フィルタM4の真値と仮定する。そして、発散傾向が検出されたときに、真値からのずれが既定値以上となる騒音制御フィルタM4の下位のタップを除く残りのタップの数をMとしてもよい。
【0057】
また、例えば、騒音制御フィルタM4の各タップの係数w~wについて、下位のタップから順番に2乗和を計算して、残りの上位のタップの2乗和と比較する。そして、下位のタップの2乗和が上位のタップの2乗和の値の既定値(例えば、1/2)以下になるまで下位のタップを除く残りのタップの数をMとしてもよい。
【0058】
[1-4.処理]
[1-4-1.騒音抑制処理]
制御回路441が実行する騒音制御処理を、図10のフローチャートを用いて説明する。騒音制御処理は、第1のA/D変換器444および第2のA/D変換器445のサンプリング周期と同じ周期で実行される。サンプリング周期は、対象騒音の最大周波数の2倍の周波数に応じた周期に設定される。また、騒音制御処理が実行される周期を処理サイクルという。
【0059】
制御回路441は、騒音制御フィルタM4の計算のために、L個の参照信号x(すなわち、L次元の参照ベクトルx(n))を順次格納するシフトレジスタを用いる。制御回路441は、二次系フィルタM5の計算のために、N個の参照信号x~xn-N+1(すなわち、N次元の参照ベクトルx(n))を順次格納するシフトレジスタを用いる。制御回路441は、係数更新部M6の計算のために、L個のフィルタード参照信号r~rn-L+1(すなわち、フィルタード参照ベクトルr(n))を順次格納するシフトレジスタを用いる。また、制御回路441は、係数更新部M6での処理結果であって、騒音制御フィルタM4に供給されるL個の係数w~w(すなわち、係数ベクトルw(n))を格納するL個のレジスタを用いる。wは、i番目のタップの係数である。
【0060】
制御回路441の起動時に、発散フラグFLは、オフを表すFL=0に初期化され、騒音制御フィルタM4に含まれるL個のタップの係数、すなわち係数ベクトルw(n)は、予め設定された初期値に初期化される。発散フラグFLは、係数ベクトルw(n)の更新値が収束に向かわず発散傾向にある場合に、オンを表すFL=1に設定されるフラグである。係数ベクトルw(n)の初期値は、例えば、理論特性P/Cを表す値を用いてもよいし、任意に設定された値(例えば、オール1等)を用いてもよい。
【0061】
騒音抑制処理が開始されると、図10に示すように、S110では、制御回路441は、参照信号xを取得し、取得した参照信号xを、騒音制御フィルタM4用のシフトレジスタおよび二次系フィルタM5用のシフトレジスタにそれぞれ格納する。
【0062】
続くS120では、制御回路441は、騒音制御フィルタM4としての処理を実行する。具体的には、制御回路441は、騒音制御フィルタM4用のシフトレジスタに格納された参照ベクトルx(n)と、係数更新部M6の出力用のレジスタに格納された係数ベクトルw(n)を用い、(1)式に従って、制御信号uを算出する。
【0063】
【数1】
【0064】
続くS130では、制御回路441は、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(n)を適応アルゴリズムに従って更新する係数更新処理を実行する。
続くS140では、制御回路441は、係数更新処理によって算出される係数ベクトルw(n)が発散傾向を示しているか否かによって、騒音制御フィルタM4の構成を調整する発散判定処理を実行する。
【0065】
続くS150では、制御回路441は、S120で算出された制御信号uをD/A変換器446に出力して、処理を終了する。D/A変換器446にてアナログ信号に変換された制御信号uは、制御スピーカ54に供給され、制御スピーカ54からは、制御信号uに応じた疑似騒音が発生する。
【0066】
[1-4-2.係数更新処理]
制御回路441が、先のS130にて実行する係数更新処理を、図11のフローチャートを用いて説明する。
【0067】
係数更新処理が開始されると、S210では、制御回路441は、二次系フィルタM5としての処理を実行する。具体的には、制御回路441は、二次系フィルタM5用のシフトレジスタに格納されたN次元の参照ベクトルx(n)と、二次系フィルタM5のタップに予め設定されたN個の係数c~cとを用い、(2)式に従って、フィルタード参照信号rを算出する。制御回路441は、算出されたフィルタード参照信号rを、係数更新部M6用のシフトレジスタに格納する。
【0068】
【数2】
【0069】
続くS220では、制御回路441は、係数更新部M6用のシフトレジスタに格納されたフィルタード参照ベクトルr(n)に含まれるL個の要素の2乗和Rを算出する。フィルタード参照ベクトルr(n)は、直近で算出されたL個のフィルタード参照信号{r,rn-1,…,rn-L+1}を要素とするL次元のベクトルである。以下、この2乗和Rを正規化値という。
【0070】
続くS230では、制御回路441は、誤差信号eを取得する。誤差信号eはスカラー値である。 続くS240では、制御回路441は、勾配ベクトルS(n)を算出する。
【0071】
勾配ベクトルS(n)は、(3)式に示すように、係数更新部M6用のシフトレジスタに格納されたフィルタード参照ベクトルr(n)と、S230で取得した誤差信号eとの積である。勾配ベクトルS(n)は、係数ベクトルw(n)を表すL次元座標空間内で、係数ベクトルw(n)を変化させる方向を表す。
【0072】
【数3】
【0073】
続くS250では、制御回路441は、(4)式を用いて係数ベクトルw(n)を更新し、更新された係数ベクトルw(n+1)を、係数更新部M6の出力用レジスタに格納することで騒音制御フィルタM4に供給して、処理を終了する。μは、適応動作の収束速度と推定精度を調整するスカラー値であり、更新ステップサイズという。
【0074】
【数4】
【0075】
[1-4-3.発散判定処理]
制御回路441が、先のS140にて実行する発散判定処理を、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0076】
発散判定処理が開始されると、S310では、制御回路441は、発散フラグFLがオン(すなわち、FL=1)に設定されているか否かを判定する。制御回路441は、肯定判定した場合は処理を終了し、否定判定した場合は処理をS320に移行する。
【0077】
S320では、制御回路441は、発散判定パラメータを取得する。発散判定パラメータは、S130にて更新される係数ベクトルw(n)が発散傾向にあるか否かの判定に用いるパラメータである。発散判定パラメータには、以下に示す第1判定パラメータ~第3判定パラメータのうち、少なくとも一つが用いられる。
【0078】
第1判定パラメータは、騒音制御フィルタM4に含まれるL個のタップを上位タップと下位タップとに分割し、上位タップの係数の大きさから下位タップの係数の大きさを減算した値である。ここでの上位タップは、1番目からM番目までのM個のタップであり、下位タップは、M+1番目からL番目までのL-M個のタップである。係数の大きさは、例えば各係数の2乗和を用いてもよいし、各係数の絶対値の和を用いてもよい。ここでは上位タップの数をM個としているが、上位タップの数はM個に限定されない。
【0079】
第2判定パラメータは、誤差信号eの絶対値である。
第3判定パラメータは、更新前の係数ベクトルw(n)から更新後の係数ベクトルw(n+1)を減算した差分ベクトルの大きさである。差分ベクトルの大きさは、差分ベクトルに含まれる各要素の2乗和を用いてもよいし、各要素の絶対値の和を用いてもよい。
【0080】
続くS330では、制御回路441は、S320にて取得した発散判定パラメータを用いて、騒音制御フィルタM4の係数が発散傾向にあるか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS340に移行し、否定判定した場合は処理を終了する。
【0081】
具体的には、発散判定用パラメータとして、第1判定パラメータを用いる場合は、第1判定パラメータが負値であれば、すなわち、上位タップより下位タップのほうが大きければ発散傾向にあると判定してもよい。
【0082】
発散判定用パラメータとして、第2判定パラメータを用いる場合は、第2判定パラメータが、装置に許容された最大騒音値に対して一定値(例えば、2倍)以上であれば発散傾向にあると判定してもよい。また、第2判定パラメータが、複数回(例えば、3回)の処理サイクルに渡って単調増加していれば発散傾向にあると判定してもよい。
【0083】
発散判定用パラメータとして、第3判定パラメータを用いる場合は、第3判定パラメータが、複数回(例えば、3回)の処理サイクルに渡って単調増加していれば発散傾向にあると判定してもよい。
【0084】
なお、発散傾向の判定には、第1判定パラメータから第3判定パラメータのうち、いずれか一つのパラメータを用いてもよいし、複数のパラメータを組み合わせて用いてもよい。複数のパラメータを組み合わせて用いる場合、複数のパラメータのうち、いずれか一つでも充足した場合に発散傾向にあると判定してもよいし、任意の複数個のパラメータが充足した場合に発散傾向にあると判定してもよい。
【0085】
S340では、制御回路441は、騒音制御フィルタM4に制限を付与する。具体的には、騒音制御フィルタM4のM+1番目からL番目までのL-M個の下位タップの係数wM+1~wとして固定値を設定する。固定値は、例えば、理論特性P/Cを表す下位タップの係数を用いてもよい。固定値は、任意の値に設定してもよい。また、騒音制御フィルタM4のL-M個の下位タップを無効タップとし、1番目からM番目までのM個の上位タップの有効タップとして、有効タップを用いて制御信号uを算出してもよい。S340にて、騒音制御フィルタM4に制限が付与された場合、制御回路441は、以後の処理サイクルにおいて、S120を実行するときには、制限が付与された騒音制御フィルタM4を用いて制御信号uを生成する。
【0086】
続くS350では、制御回路441は、発散フラグFLを、発散傾向が検出されたことを示すオン(すなわち、FL=1)に設定して、処理を終了する。
つまり、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(n)が発散傾向にあると判定されると、騒音制御フィルタM4に制限が付与され、以後、制限が解除されることはなく、制限が付与された騒音制御フィルタM4を用いた制御信号uの算出が継続して行われる。
【0087】
[1-5.用語の対応]
本実施形態において、参照マイク53および第1のA/D変換器444(すなわち、参照センサM1)が本開示における参照取得部の一例に相当し、S220~S250およびS340の処理が本開示における特性調整部の一例に相当し、S320~S330の処理が本開示における発散判定部の一例に相当する。
【0088】
[1-6.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1a)本実施形態では、二次系フィルタM5のタップ数Nが、インパルス応答が十分に収束する時間に相当する長さより短く設定されるため、騒音制御に必要な計算処理量を削減できる。
【0089】
(1b)本実施形態では、発散傾向が検出される前は、制御信号uの生成に用いる騒音制御フィルタM4に含まれるL個のタップの全部について係数w~wを更新する。また、発散傾向が検出された後は、下位タップの係数wM+1~wを固定値に設定または無効化し、上位タップの係数w~wを更新する。このため、二次系フィルタM5のタップ数Nが不充分な長さに設定されることで無視できない推定誤差を含んでいる場合でも、騒音制御フィルタM4の係数が発散することを抑制することができる。
【0090】
(1c)本実施形態では、誤差マイク55は、駆動ユニット43によって発生する気流が直接当たることによる風雑音など、対象騒音以外の騒音が誤差マイク55に混入することが抑制される位置に配置される。また、誤差マイク55は、消音点とみなせる位置に配置される。制御スピーカ54は、制御スピーカ54によって発生する疑似騒音の位相が、消音点と誤差マイク55の位置とで同位相となるように配置される。その結果、参照マイク53で検出される参照信号xと誤差マイク55で検出される誤差信号eとのコヒーレンスを高めることができ、対象騒音を抑制する制御の精度を向上させることができる。
【0091】
[1-7.二次系フィルタの誤差が騒音制御フィルタの係数に与える影響]
発散傾向が検出されたときに、騒音制御フィルタM4に制限を加えることで、発散が抑制される原理について説明する。
【0092】
二次系フィルタM5の誤差(以下、二次系推定誤差)とは、二次系の実際の特性と、二次系フィルタM5によって表現される特性との差を表す。ここでは、まず、二次系推定誤差が、騒音制御フィルタM4の係数にも大きく影響することを示す。
【0093】
図21図23において、P(z)は、参照センサM1から誤差センサM3に到る一次系の特性のz変換を表す。H(z)は、騒音制御フィルタM4の特性のz変換を表す。C(z)は、騒音制御フィルタM4の出力から制御音源M2を経て誤差センサM3に到る二次系の特性のz変換を表す。CH(z)は、ANC動作開始前に二次系の特性C(z)を推定して係数を固定した二次系フィルタM5の特性のz変換を表す。N(z)は、対象騒音のz変換を表す。NLMSは、学習同定法による係数更新部M6を示す。この検討では、制御音源M2から参照センサM1に到る帰還系B(z)は無視できるものとする。この場合、フィードフォワード型ANCの構造は、図21で表される。
【0094】
係数更新部M6による騒音制御フィルタM4の係数更新が緩やかに行われる場合、騒音制御フィルタM4は、線形フィルタであると仮定でき、理論的には、図22に示すように、二次系と騒音制御フィルタM4の接続順序を入れ替えることができる。
【0095】
但し、一次系の特性P(z)は、(5)式に示すPD(z)に置き換わる。
【0096】
【数5】
【0097】
図22に示す構造において二次系の特性C(z)が誤差ゼロで事前推定されているとすれば、一次系と騒音制御フィルタM4の入力信号、係数更新部M6に適用される信号は、全て一致する。この場合、騒音制御フィルタの特性H(z)は、一次系の特性PD(z)に収束して、(6)式に示すHopt(z)に調整されたときに、理論上では、対象騒音は完全に相殺される。以下では、Hopt(z)を最適騒音制御フィルタの特性という。
【0098】
【数6】
【0099】
実用時には二次系の推定値(すなわち、二次系フィルタM5の特性)CH(z)には、実際の二次系の特性C(z)に対して誤差Δ(z)が含まれる。従って、二次系フィルタM5の特性CH(z)は(7)式で表される。
【0100】
【数7】
【0101】
誤差Δ(z)の影響を考察するために、図22において一次系と騒音制御フィルタM4の入力側に接続されている二次系の特性C(z)を二次系フィルタM5の特性CH(z)に置き換える。この場合、図23に示すように、一次系の特性PD(z)は、(8)式に示す特性PH(z)に置き変わる。
【0102】
【数8】
【0103】
図23からわかるように、(9)式を満たすように、騒音制御フィルタM4の特性H(z)が調整されたとき、すなわち、騒音制御フィルタM4の特性H(z)が、(10)式に収束したときに、理論上では、対象騒音は完全に相殺される。
【0104】
【数9】
【0105】
しかし、実際には、C(z)/CH(z)と騒音制御フィルタM4の特性PH(z)とに分離できないことから、騒音制御フィルタM4の特性は、(11)式に示すHD(z)に収束するように係数が更新されることになる。但し、ΔD(z)は、(12)式で表される。
【0106】
【数10】
【0107】
(11)(12)式から、二次系推定誤差Δ(z)は、単純な加算としてではなく、最適騒音制御フィルタの特性Hopt(z)との畳み込みとして、騒音制御フィルタM4の特性HD(z)に組み込まれて騒音低減効果を低下させることがわかる。
【0108】
この畳み込みが引き起こす騒音低下効果の劣化の程度を明らかにするために、最適騒音制御フィルタの特性Hopt(z)と、収束した騒音制御フィルタM4の特性HD(z)との差を、(13)式に示す。
【0109】
【数11】
【0110】
(13)式から、ΔD(z)が十分に小さい場合は、収束した騒音制御フィルタM4の特性HD(z)と最適騒音制御フィルタの特性Hopt(z)の差は、Hopt(z)とΔD(z)との畳み込みとなることがわかる。
【0111】
(11)式を変形すると、(14)式が得られる。
【0112】
【数12】
【0113】
このように、実際の二次系の特性C(z)に対して、二次系フィルタM5の特性CH(z)が誤差を含む場合、ANCによる騒音低減効果は、(14)式の右辺に示す第2項以降に対応した低下が生じる。
【0114】
次に、二次系フィルタM5のタップ数を十分に用意できない場合について説明する。タップ数を十分に用意できないとは、インパルス応答が十分に収束するのに要する時間に対応したタップ数より少ないことを意味する。
【0115】
二次系フィルタM5のタップ数を十分に用意できない場合、誤差Δ(z)は大きくなる。二次系フィルタM5のタップ数をdとした場合、二次系フィルタM5の特性CH(z)は、(15)式で表される。
【0116】
【数13】
【0117】
Δ(z)z-dは、二次系のインパルス応答において打ち切られた部分のz変換を表す。簡単のため、d-1以前のタップ係数は誤差ゼロで推定されていると仮定する。
この場合、収束した騒音制御フィルタの特性HD(z)は、(16)式で表され、最適騒音制御フィルタの特性Hopt(z)との差は、(14)式の場合と同様に、右辺の第2項以降で表される。
【0118】
【数14】
【0119】
(16)式から、打ち切りによる影響は、騒音制御フィルタM4の係数のd番目以降に限定されることがわかる。この結果は、二次系フィルタM5に十分なタップ数を用意できない場合は、騒音制御フィルタM4のタップ数も二次系フィルタM5のタップ数dと同程度以下とすることで騒音低減効果が得られることを意味する。
【0120】
[2.第2実施形態]
[2-1.第1実施形態との相違点]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0121】
前述した第1実施形態では、騒音制御フィルタM4の係数を、処理サイクル毎に更新をし続けている。これに対し、第2実施形態では、騒音制御フィルタM4の係数を、複数処理サイクル(以下、ブロック)毎に更新し、更新回数も制限される点で、第1実施形態と相違する。
【0122】
[2-2.処理]
第2実施形態の騒音制御装置10が、図11に示す第1実施形態の係数更新処理に代えて実行する係数更新処理について、図13のフローチャートを用いて説明する。なお、図11に示す処理と同じ処理には同じステップ番号を付与して説明を省略する。また、騒音制御装置10の起動時に、カウント値kc,jcおよび累積値SR,SSは、いずれもゼロに初期化される。
【0123】
係数更新処理が開始されると、S200では、制御回路441は、更新回数カウンタのカウント値kcが更新上限回数Kmaxより小さいか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS210に移行し、否定判定した場合は処理を終了する。
【0124】
S210の処理は、第1実施形態の場合と同様である。
続くS222では、制御回路441は、S220での処理と同様に、正規化値Rを算出し、更に、正規化値Rの累積値SRを算出する。
【0125】
続くS230の処理は、第1実施形態の場合と同様である。
続くS242では、制御回路441は、S240での処理と同様に、勾配ベクトルS(n)を算出し、更に、勾配ベクトルS(n)の累積値SSを算出する。
【0126】
続くS244では、制御回路441は、ブロック計算カウンタのカウント値jcを、1増加させる。
続くS246では、制御回路441は、カウント値jcがブロック計算回数JBK以上であるか否かを判定し、肯定判定した場合は処理をS250に移行し、否定判定した場合は処理を終了する。
【0127】
S250の処理は、第1実施形態の場合と同様である。但し、(4)式において、Rの代わりに累積値SRを用い、S(n)の代わりに累積値SSを用いる。
続くS260では、制御回路441は、ブロック計算カウンタのカウント値jcをゼロクリアすると共に、更新回数カウンタのカウント値kcを1増加させて、処理を終了する。
【0128】
つまり、JBK回の処理サイクル(以下、ブロック)毎に、その間に算出,累積された正規化値Rの累積値SRおよび勾配ベクトルS(n)の累積値SSを用いて、騒音制御フィルタM4を更新する。そして、騒音制御フィルタM4の更新は、Kmax回繰り返されると、終了する。
【0129】
BKおよびKmaxは、シミュレーション等の実験結果に基づいて、誤差信号eを十分に小さくすることができる回数に設定すればよい。
[2-3.用語の対応]
本実施形態において、図13に示した係数更新処理のうちS210を除く処理が本開示における特性調整部の一例に相当する。
【0130】
[2-4.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)(1b)(1c)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0131】
(2a)本実施形態では、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(n)の更新に、ブロック計算によって得られた正規化値Rの累積値SRおよび勾配ベクトルS(n)の累積値SSを用いている。従って、正規化値Rおよび勾配ベクトルS(n)が外乱によって瞬時的に異常な値を示したとしても、その影響を抑制することができ、更新される係数ベクトルw(n)の安定性を向上させることができる。
【0132】
(2b)本実施形態では、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(n)の更新回数をKmaxに制限している。従って、係数ベクトルw(n)の値が収束した後に、係数ベクトルw(n)の更新が無駄に継続されることを抑制できる。なお、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(n)の更新回数は、無制限としてもよい。
【0133】
[3.第3実施形態]
[3-1.第1実施形態との相違点]
第3実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第2実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0134】
前述した第1および第2実施形態では、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(n)の更新に使用する更新ステップサイズμとして、固定値を用いている。これに対し第3実施形態では、更新ステップサイズμを可変設定すると共に、更新ステップサイズμのばらつきから発散傾向を判定する点で、第1および第2実施形態と相違する。
【0135】
[3-2.処理]
[3-2-1.係数更新処理]
第3実施形態の騒音制御装置10が、図13に示す第2実施形態の係数更新処理に代えて実行する係数更新処理について、図14のフローチャートを用いて説明する。
【0136】
本実施形態の係数更新処理では、S246にて肯定判定された場合に、S250を実行する代わりに、S252の係数/ステップサイズ更新処理を実行する。
[3-2-2.係数/ステップサイズ係数更新処理]
制御回路441がS252で実行する係数/ステップサイズ更新処理を、図15に示すフローチャートを用いて説明する。
【0137】
係数/ステップサイズ更新処理が開始されると、S410では、制御回路441は、ブロック単位で、対象騒音以外の騒音の信号パワーである外乱パワーQkcと、対象騒音の信号パワーPkcとを算出する。外乱パワーQkcは、誤差信号eの2乗値を、ブロック期間中累積した値を用いる。信号パワーPkcは、参照ベクトルx(n)に含まれる複数の参照信号xの2乗和を、ブロック期間中累積した値を用いる。
【0138】
続くS420では、制御回路441は、(17)式に従って、更新ステップサイズμkcを更新する。ITPは、騒音制御フィルタM4のタップ数、JBKはブロック長、GXは推定誤差の所要値である。推定誤差は、実際の二次系の特性C(z)に対する二次系フィルタM5の特性CH(z)の誤差Δ(z)等である。所要値GXは、推定誤差の最低限の精度を決めるパラメータであり、1>GX>0の値をとる。所要値GXの初期値GX は任意の値であり、1に近い値、例えば0.9に設定される。
【0139】
【数15】
【0140】
続くS430では、制御回路441は、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)を更新する。この処理は、更新ステップサイズとして、固定値のμの代わりにS420で算出されたμkcを用いる以外は、S250での処理と同様である。
【0141】
続くS440では、制御回路441は、S430で更新された騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)の大きさの変化量(以下、係数変化量)Dkcを算出する。係数ベクトルw(kc)の大きさは、例えば、全要素の2乗和を用いてもよいし、全要素の絶対値の和を用いてもよい。
【0142】
続くS450では、制御回路441は、係数変化量Dkcが予め設定された判定閾値THより大きいか否かを判定する。制御回路441は、肯定判定した場合は処理をS460に移行し、否定判定した場合は処理を終了する。
【0143】
S460では、制御回路441は、更新ステップサイズμkcの更新に用いるパラメータである所要値GXおよび判定閾値THを(18)(19)式に従って更新して、処理を終了する。
【0144】
【数16】
【0145】
GXは所要値調整係数であり、1>aGX>0に設定される。bTHは閾値調整係数であり、1>bTH>0に設定される。所要値調整係数aGXおよび閾値調整係数bTHは、所要値GXおよび判定閾値THの変化が小さくなるように、いずれも1に近い値、例えば0.9等に設定される。
【0146】
以上説明したように、係数/ステップサイズ更新処理では、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)および係数ベクトルw(kc)の算出に用いる更新ステップサイズμkcの更新を行う。更に、係数/ステップサイズ更新処理では、更新ステップサイズμkcの調整に用いる所要値GXおよび判定閾値THの調整も行う。
【0147】
所要値GXおよび判定閾値THの調整は、係数ベクトルw(kc)の変化量Dkcが判定閾値THより大きい(すなわち、発散傾向にある)場合に、更新ステップサイズμkcの調整に用いる所要値GXおよび判定閾値THを段階的に小さくする操作を繰り返すことで行う。
【0148】
所要値GXを小さくすると更新ステップサイズμkcも小さく算定され、その結果、係数ベクトルw(kc)の変動量Dkcも小さく算定されることで、発散が抑制される。但し、変動量Dkcが小さく算定されると、発散傾向が検出され難くなり、発散傾向が続いているにも関わらず、これを検出できなくなる可能性がある。このため、所要値GXに応じて発散傾向の判定に用いる判定閾値THも小さくする調整を行っている。
【0149】
[3-2-3.発散判定処理]
制御回路441が、S140にて実行する発散判定処理を図16のフローチャートを用いて説明する。この発散判定処理は、第1および第2実施形態において、制御回路441が実行する図12に示した発散判定処理の代わりに実行される。
【0150】
図16に示すように、発散判定処理が開始されると、S510では、制御回路441は、騒音制御フィルタM4の有効タップ数ITPが下限有効数TPmin大きいか否かを判定し、肯定判定された場合は処理をS520に移行し、否定判定された場合は処理を終了する。有効タップITP数は、係数更新部M6による更新の対象となる騒音制御フィルタM4のタップの数である。下限有効数TPminは、例えば、二次系フィルタM5のタップ数N以下に設定される。但し、下限有効数TPminは、二次系フィルタM5のタップ数Nより大きな値に設定してもよい。
【0151】
S520では、制御回路441は、S330での処理と同様に、騒音制御フィルタM4が発散傾向にあるか否かを判定する。但し、発散傾向の判定には、第1~第3判定パラメータ以外に、S440で算出される係数変化量DkcおよびS420で算出される更新ステップサイズμkcのばらつき量(例えば、前回値との差分の絶対値|μkc-μkc-1|)等を用いてもよい。係数変化量Dkcおよび更新ステップサイズμkcのばらつき量を用いる場合、これらの値が許容値より大きければ発散傾向にあると判定する。
【0152】
S530では、制御回路441は、騒音制御フィルタM4の有効タップ数ITPを、調整量ΔITP(例えば、50)だけ減少させて、処理を終了する。
なお、騒音制御フィルタM4は、上位1番目からITP番目までのITP個のタップが有効タップとなり、ITP+1番目からL番目までのL-ITP個のタップが無効タップとなる。
【0153】
S430の騒音制御フィルタ係数ベクトル更新処理において、有効タップの係数は更新され、無効タップの係数は固定値に設定される。また、S120の騒音制御フィルタ処理において、無効タップは、制御信号uの算出に使用されてもよいし、使用されなくてもよい。
【0154】
つまり、更新ステップサイズμkcのばらつき量が許容値より大きい場合に、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)は、発散傾向にあると判定して、騒音制御フィルタM4の有効タップを下位側から調整量ΔITPずつ減少させている。
【0155】
ある処理サイクルで大きな値の更新ステップサイズμkcが算出されると、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)は発散傾向となって誤差センサM3の出力である誤差信号ekcは大きくなる。大きな誤差信号ekcが検出される次の処理サイクルでは、(17)式からわかるように、小さな値の更新ステップサイズμkcが算出され、発散傾向は抑制される。以下、同様のことが繰り返される。つまり、発散傾向と抑制との繰り返しが生じ、この繰り返しは、更新ステップサイズμkcを変動させるため、この変動からシステムが発散傾向にあるか否かを判定することが可能となる。
【0156】
[3-3.用語対応]
本実施形態において、図14に示した係数更新処理のうちS210を除く処理およびS530が本開示における特性調整部の一例に相当し、S520が本開示における発散判定部の一例に相当する。
【0157】
[3-4.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)(1b)(1c)および第2実施形態の効果(2a),(2b)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0158】
(3a)本実施形態では、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)の収束具合に応じて更新ステップサイズμkcを変化させる、いわゆるステップサイズ制御法を用いている。従って、外乱パワーQkcの変動下であっても、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)の推定誤差を、所要値GX以下に減少させることができる。
【0159】
(3b)本実施形態では、更新ステップサイズμkcのばらつきが許容値を超えた場合に、騒音制御フィルタM4に含まれるタップを、下位側から調整量ΔITPずつ無効化する処理を、更新ステップサイズμkcが安定するまで続ける。従って、外乱パワーQkcが変動する状況下であっても、騒音制御フィルタM4の係数ベクトルw(kc)を安定して更新することができる。
【0160】
(3c)本実施形態では、更新による係数ベクトルw(kc)の変化が収束して安定するまで、更新ステップサイズμkcの調整に用いる所要値GXおよび判定閾値THを段階的に小さくする操作を繰り返し行う。従って、所要値GX、ひいては更新ステップサイズμkcを、騒音制御フィルタM4が安定的に動作する適切な大きさに収束させることができる。
【0161】
[4.第4実施形態]
[4-1.第1実施形態との相違点]
第4実施形態は、騒音制御装置10を適用する作業機、および騒音制御装置10にて使用するANCの制御モデルが第1実施形態とは異なる。
【0162】
[4-2.クリーナの構成]
騒音制御装置10が適用される電動作業機の別の一例であるハンディクリーナ8について説明する。ハンディクリーナ8は、作業者が手で持った状態で使用される充電式の電気掃除機である。
【0163】
本実施形態では、説明の利便性を考慮して、ハンディクリーナ8に対し、図17図19に示すように、前,後,上,下,左,右を規定する。
図17図19に示すように、ハンディクリーナ8は、本体ハウジング80を備える。本体ハウジング80は、吸引口81と、排出口82と、把持部83、第1および第2のバッテリ装着部84A,84Bとを備える。
【0164】
吸引口81は、本体ハウジング80の前部に設けられた円筒状の部位であり、外気を吸引する。排出口82は、本体ハウジング80の後部下方に設けられたスリット状の部位であり、粉塵が除去された空気を排出する。把持部83は、本体ハウジング80の上面に設けられ、作業者に把持される部位である。把持部83には、使用者が把持部83を握った状態で操作できる電子スイッチ85が設けられている。第1および第2のバッテリ装着部84A,84Bは、本体ハウジング80の後面の上方側に設けられる。第1のバッテリ装着部84Aには第1のバッテリパック86Aが取り付けられ、第2のバッテリ装着部84Bには第2のバッテリパック86Bが取り付けられる。
【0165】
ハンディクリーナ8の本体ハウジング80内には、駆動ユニット90と、制御回路基板91とが設けられる。
駆動ユニット90は、ハウジング内の吸引口81と排出口82との間に設けられ、本体ハウジング80の内部空間を吸引口側空間80aと排出口側空間80bとに仕切るように配置される。吸引口側空間80aには、集塵パックが配置される。排出口側空間80bを形成する本体ハウジング80の内壁には、吸音材87が設けられる。吸音材87として、例えば、スポンジが用いられる。また、吸音材87の上部には制御スピーカ88と、誤差マイク89とが配置される。
【0166】
制御スピーカ88および誤差マイク89は、指向性が排出口側空間80bに向かい、かつ、吸音材87を挟んで排出口側空間80bと対向するように取り付けられる。つまり、本体ハウジング80内を流れる気流が誤差マイク89に直接当たることがないように配置されている。
【0167】
また、誤差マイク89は、本体ハウジング80の収納空間内に発生する騒音の定在波の腹が位置する部位に配置される。この誤差マイク89が設けられた位置が消音点となる。騒音の定在波は、本体ハウジング80内を流れる気流の流路の断面積が排出口82で不連続に変化(断面積が急拡大)することにより、排出口82にて音が反射することで発生する。
【0168】
なお、制御スピーカ88および誤差マイク89は、基本的に、第1実施形態で説明した制御スピーカ54および誤差マイク55と同様の能力を有し、同様の考え方で配置される。
【0169】
駆動ユニット90は、図18に示すように、モータハウジング901と、モータ902と、ファン903と、を備える。
モータハウジング901は、本体ハウジング80の内壁に接する円筒状の部材であり、円筒の中心に、モータ902を保持することにより、モータ902とモータハウジング901の内壁との間に、断面が環状の流路80cを形成する。
【0170】
モータ902は、制御回路基板91からの指示に従って作動する直流モータである。
ファン903は、モータ902の回転軸に固定される。
駆動ユニット90は、モータ902が吸引口側空間80aに面し、ファン903が排出口側空間80bに面するように、本体ハウジング80の内部に取り付けられる。駆動ユニット90は、モータ902がファン903を回転駆動することにより、本体ハウジング80内に吸引口81から排出口82へ向かう気流を発生させる。
【0171】
駆動ユニット90が気流を発生させると、吸引口81を介して本体ハウジング80の外部空間から外気が本体ハウジング80の内部空間に吸引される。吸引された外気は、吸引口側空間80aを通過する際に、外気に含まれる塵埃が集塵パックにて捕集される。集塵パックを通過した空気は、流路80cを介して、排出口側空間80bに至り、排出口82から排出される。
【0172】
[4-3.制御回路基板]
制御回路基板91は、バッテリパック86から電源供給を受けて作動する。制御回路基板91は、電子スイッチ85の操作に従ってモータ902を駆動するモータ制御部911と、モータ902が作動することによって発生する騒音(以下、対象騒音)を抑制する騒音制御部912とを備える。
【0173】
モータ制御部911は、図8に示した、集塵用回路群442および制御回路441に相当する構成を備える。
騒音制御部912は、図8に示した第2のA/D変換器445、D/A変換器446、制御回路441に相当する構成を備える。騒音制御部912は、制御スピーカ88および誤差マイク89と共にフィードバック型ANCを実現する。つまり、騒音制御部912、制御スピーカ88、誤差マイク89が騒音制御装置を形成する。
【0174】
[4-4.ANCモデル]
騒音制御装置が実現するフィードバック型ANCのモデルを、図20を用いて説明する。但し、図9を用いて説明したフィードフォワード型ANCモデルとは、一部の構成が異なるだけであるため、同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0175】
図20に示すように、フィードバック型ANCは、フィードフォワード型ANCと比較すると、参照センサM1が省略され、到達フィルタM7および加算器M8が追加された構造を有する。なお、制御音源M2は、制御スピーカ88および図8におけるD/A変換器446に相当し、誤差センサM3は、誤差マイク89および図8における第2のA/D変換器445に相当する。
【0176】
騒音制御フィルタM4、二次系フィルタM5、係数更新部M6、到達フィルタM7、加算器M8は、騒音制御部912がマイクロコンピュータ(以下、マイコン)を含む場合は、マイコンの処理によって実現されてもよいし、その一部または全部がハードウェアによって実現されてもよい。
【0177】
新たに追加された到達フィルタM7は、二次系フィルタM5と同様の構成を備え、直近に算出されたN個の制御信号u(すなわち、N次元の制御ベクトルu(n))から、制御音源M2から誤差センサM3に到達した疑似騒音を表す到達疑似信号aを推定する。
【0178】
加算器M8は、到達疑似信号aから、誤差信号eを減じることで対象騒音を表す参照信号xを推定する。
つまり、フィードバック型ANCでは、参照信号xとして、参照センサM1での検出結果の代わりに、制御信号uおよび誤差信号eからの推定結果を用いる点が、フィードフォワード型ANCとは異なる。
【0179】
[4-5.処理]
騒音制御部912が実行する処理は、基本的には、第1~第3実施形態のいずれかにて説明した処理と同様である。但し、図10に示す騒音抑制処理のS110での処理が、参照センサM1から参照信号xを生成する代わりに、到達フィルタM7を用いて到達疑似信号aを生成し、更に、到達疑似信号aから誤差信号eを減算することで参照信号xを生成する点が異なる。
【0180】
[4-6.用語の対応]
本実施形態において、到達フィルタM7が本開示における到達フィルタの一例に相当し、加算器M8が本開示における加算部の一例に相当する。
【0181】
[4-7.効果]
以上詳述した第4実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1a)(1b)(1c)および第2実施形態の効果(2a)(2b)、第3実施形態の効果(3a)(3b)(3c)を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0182】
(4a)本実施形態では、フィードバック型ANCを用いているため、参照センサM1を省略することができ、装置構成を簡略化できる。
[5.他の実施形態]
(5-1)上記実施形態では、騒音制御フィルタM4のタップ数Lを、二次系フィルタM5のタップ数Nより大きく設定し、発散傾向が検出された場合に、騒音制御フィルタM4のタップのうち、係数更新対象となるタップの数を上位のM個に制限する。本開示の技術は、騒音制御フィルタM4のタップ数をL個からM個へ変更することに限定されず、騒音制御フィルタM4のタップ数をはじめからM個に固定してもよい。この場合、発散傾向を検出して有効タップの数を制限する処理も省略できる。この場合、制御回路441が実行する騒音制御処理では、図10に示すS140の発散判定処理が省略される。
【0183】
(5-2)上記実施形態では、S110の処理において、参照信号xとして、参照マイク53による検出信号を用いているが、参照信号xは、対象騒音と相関を有する信号であればよく、参照マイク53による検出信号に限定されない。例えば、モータ432を駆動する信号を参照信号xとして用いてもよい。
【0184】
(5-3)上記実施形態では、制御スピーカ54と誤差マイク55、および制御スピーカ88と誤差マイク89は、いずれも同一方向を向くように並べて配置されているが、互いに向かい合うように配置されてもよい。
【0185】
(5-4)上記第3実施形態では、ブロック長JBKを一定としているが、信号パワーPkcの変動が想定される場合は、ブロック長JBKを可変とし、信号パワーPkcが一定値となるまでブロック長JBKを延長する制御を行ってもよい。
【0186】
(5-5)上記実施形態では、本開示の技術が適用される電動作業機の例として、集塵機1およびハンディクリーナ8を例示したが、適用対象となる電動作業機は集塵機1およびハンディクリーナ8に限定されない。例えば、日曜大工、製造、園芸、工事などの作業現場で使用され、ファンを用いて発生させた気流を利用する各種の現場用電気機器に適用されてもよい。具体的には、園芸用の作業機、作業現場の環境を整える装置等の各種電動作業機に本開示の技術が適用されてもよい。より具体的には、例えば、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機などの各種電動作業機に本開示が適用されてもよい。
【0187】
(5-6)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【符号の説明】
【0188】
1…集塵機、3…本体、6…操作装置、7…装着具、8…ハンディクリーナ、10…騒音制御装置、30…ハウジング、31,81…吸引口、32…集塵室、33…第1流路、34…モータ室、35…第2流路、36…排気室、37A…第1のバッテリ収納部、37B…第2のバッテリ収納部、38…部品配置部、41…集塵パック、42…フィルタ、43,90…駆動ユニット、44…駆動コントローラ、45A,86A…第1のバッテリパック、45B,86B…第2のバッテリパック、46,87…吸音材、52…コネクタ、53…参照マイクロホン、54,88…制御スピーカ、55,89…誤差マイクロホン、61…ケーブル、71A…第1の肩ベルト、71B…第2の肩ベルト、72…腰ベルト、80…本体ハウジング、80a…吸引口側空間、80b…排出口側空間、80c…流路、82,361…排出口、83…把持部、84A…第1のバッテリ装着部、84B…第2のバッテリ装着部、85…電子スイッチ、91…制御回路基板、301…下ハウジング、302…上ハウジング、303…プレート、304,305,344…取付孔、341…流入口、342…流出口、343…壁面、371A…第1のバッテリ取付口、371B…第2のバッテリ取付口、381…縦長部位、382…横長部位、431,903…ファン、432,902…モータ、433…ダンパー、441…制御回路、442…集塵用回路群、443…騒音用回路群、444…第1のA/D変換器、445…第2のA/D変換器、446…D/A変換器、447…電源回路、901…モータハウジング、911…モータ制御部、912…騒音制御部、M1…参照センサ、M2…制御音源、M3…誤差センサ、M4…騒音制御フィルタ、M5…二次系フィルタ、M6…係数更新部、M7…到達フィルタ、M8…加算器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23