(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】耐震壁
(51)【国際特許分類】
E04B 2/56 20060101AFI20240912BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240912BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
E04B2/56 604F
E04B2/56 643A
E04B2/56 645F
E04B2/56 632J
E04B1/94 H
E04H9/02 321B
(21)【出願番号】P 2021012532
(22)【出願日】2021-01-28
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2020132736
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】中村 正寿
(72)【発明者】
【氏名】馬場 重彰
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁彦
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065685(JP,A)
【文献】特開2016-216899(JP,A)
【文献】特開平07-133640(JP,A)
【文献】特開2020-016022(JP,A)
【文献】特開2019-218694(JP,A)
【文献】特開2008-255627(JP,A)
【文献】特開2022-020037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04H 9/02
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨梁を含む柱梁架構の構面内に設けられる耐震壁であって、
前記柱梁架構内に設けられた木質板からなる木質壁部と、
前記木質壁部の出隅部で前記木質壁部と前記
鉄骨梁とを接合する接合金物と、
前記柱梁架構の構面内に設けられ
た熱吸収部と、
前記木質壁部と前記鉄骨梁との間をセメント系材料で塞いだ閉塞部と、
前記鉄骨梁を覆う耐火被覆材と、を備え
、
前記接合金物は、前記鉄骨梁に接合される架構接合部と、前記架構接合部から延びて前記木質壁部の側端面に接合される壁接合部と、を備え、
前記熱吸収部は、前記木質壁部の側方で前記接合金物の架構接合部および前記壁接合部に接しており、
前記耐火被覆材は、前記鉄骨梁に加えて、前記接合金物の架構接合部、前記熱吸収部、および前記閉塞部を覆うことを特徴とする耐震壁。
【請求項2】
鉄骨梁を含む柱梁架構の構面内に設けられる耐震壁であって、
前記柱梁架構内に設けられた木質板からなる木質壁部と、
前記木質壁部の出隅部で前記木質壁部と前記
鉄骨梁とを接合する接合金物と、
前記柱梁架構の構面内に設けられ
た熱吸収部と、
前記木質壁部と前記鉄骨梁との間をセメント系材料で塞いだ閉塞部と、
前記鉄骨梁を覆う耐火被覆材と、を備え
、
前記接合金物は、前記鉄骨梁に接合される架構接合部と、前記架構接合部から延びて前記木質壁部の側端面に接合される壁接合部と、を備え、
前記熱吸収部は、前記鉄骨梁の前記架構接合部に接するフランジを挟んで前記架構接合部とは反対側に設けられ、
前記耐火被覆材は、前記鉄骨梁に加えて、前記接合金物の架構接合部、前記熱吸収部、および前記閉塞部を覆うことを特徴とする耐震壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨系の柱梁架構の構面内に設けられる耐震壁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、取付金物を介して木質壁を鉄骨部材に取り付けることが行われている(特許文献1、2参照)。
特許文献1では、木質壁の四隅に斜材が設けられており、これら斜材は、鉄骨柱と鉄骨梁との間に斜めに架設されている。
特許文献2では、木質壁パネルの四隅に荷重伝達部が設けられ、これら荷重伝達部は、鉄骨梁のフランジ上に固定されている。
ところで、建築基準法では、大型の建物について、火災時に鉄骨梁や鉄骨柱などの主要構造部が所定時間に亘って変形や損傷が生じない耐火構造とすることを規定している。しかしながら、特許文献1、2に示された構造では、火災により木質壁が燃焼すると、この燃焼熱が取付金物を介して鉄骨梁や鉄骨柱に伝達されるため、所定の耐火性能を確保できないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-218694号公報
【文献】特開2020-16022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、鉄骨系の柱梁架構の構面内に設けられて、火災時に柱梁架構の耐火性能が低下するのを抑制可能な耐震壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、鉄骨系の柱梁架構内に設ける木質耐震壁として、木質壁部と柱梁架構とを接合する接合金物の外側表面に熱吸収部を設けることで、火災時に生じる木質壁部の燃焼熱の一部が熱吸収部で吸収されるため、柱梁架構に対して優れた耐火性能を備えた木質耐震壁を実現できる点に着目して、本発明に至った。
第1の発明の耐震壁(例えば、後述の木質耐震壁1、1A~1G)は、鉄骨系の柱梁架構(例えば、後述の柱梁架構2)の構面内に設けられる耐震壁であって、前記柱梁架構内に設けられた木質板からなる木質壁部(例えば、後述の木質壁部10)と、前記木質壁部と前記柱梁架構とを接合する接合金物(例えば、後述の接合金物20、20A~20G)と、前記接合金物に接して、または、前記接合金物の近傍に設けられた熱吸収部(例えば、後述のモルタルブロック26、26D)と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、木質壁部と柱梁架構とを接合する接合金物に接して熱容量の大きい熱吸収部を設けた。よって、火災により木質壁部が燃焼した際には、燃焼熱が接合金物を介して鉄骨系の柱梁架構に伝達されるが、このとき、火災で生じた熱や木質壁部の燃焼熱の一部が熱吸収部に吸収される。したがって、接合金物に接してまたは接合金物の近傍に熱吸収部を設けることで、鉄骨系の柱梁架構に伝わる熱量を低減でき、柱梁架構の温度の上昇が抑制可能となる。よって、鉄骨系の柱梁架構の耐火性能が低下するのを抑制できる。
なお、熱吸収部は、例えば、接合金物の外側表面や接合金物の内側表面に設けられる。
【0007】
第2の発明の耐震壁は、前記木質壁部と前記柱梁架構との間をセメント系材料で塞いだ閉塞部(例えば、後述の閉塞部30)をさらに備えることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、木質壁部と柱梁架構との間をセメント系材料で塞いで閉塞部とした。この閉塞部が木質壁部と柱梁架構との接合材となるので、木質壁部と柱梁架構との一体性が高まる。また、閉塞部が耐火被覆材として機能するので、木質壁部が燃焼した際には、熱吸収性材料に加えて閉塞部でも燃焼熱が吸収されて、鉄骨系の柱梁架構に伝わる熱量が低減し、鉄骨系の柱梁架構の耐火性能が低下するのを大幅に抑制できる。
【0009】
第3の発明の耐震壁は、前記熱吸収部は、前記木質壁部の四隅、前記木質壁部の表面に沿った所定間隔おき、および、前記接合金物に当接する鉄骨梁のウエブ側面のうち、少なくとも1つに設けられることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、熱吸収部を、木質壁部の一部、つまり、木質壁部の四隅あるいは木質壁部の表面に沿って所定間隔おきに接合金物を配置した。よって、熱吸収部の取付け箇所を少なくでき、木質壁部と柱梁架構とを比較的容易に接合できる。
また、熱吸収部を、接合金物に当接する鉄骨梁のウエブ側面に設けることで、鉄骨系の柱梁架構に伝わる熱量を低減でき、柱梁架構の温度の上昇が抑制可能となる。また、この熱吸収部は、鉄骨梁のウエブの補剛材としても機能する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鉄骨系の柱梁架構の構面内に設けられて、火災時に柱梁架構の耐火性能が低下するのを抑制可能な耐震壁を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る木質耐震壁の正面図である。
【
図2】木質耐震壁の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【
図3】木質耐震壁の接合金物の部分拡大側面図である。
【
図4】
図3の接合金物のB-B断面図およびC-C断面図である。
【
図5】本発明の木質耐震壁に水平力が作用した場合の挙動を説明するための図である。
【
図6】本発明の木質耐震壁が燃焼した場合の燃焼熱の伝わり方を説明するための図である。
【
図7】熱伝導解析に用いた、木質耐震壁の一部の解析モデルの斜視図である。
【
図8】熱伝導解析で得られた接合金物の温度変化を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る木質耐震壁の上部の正面図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る木質耐震壁の接合金物の斜視図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る木質耐震壁の接合金物の斜視図である。
【
図13】本発明の第5実施形態に係る木質耐震壁の接合金物の側面図およびE-E断面図である。
【
図14】第4実施形態に係る木質耐震壁が燃焼した場合の燃焼熱の伝わり方を説明するための図である。
【
図15】本発明の第1の変形例に係る木質耐震壁の上部の正面図である。
【
図16】本発明の第2の変形例に係る接合金物の斜視図である。
【
図17】本発明の第3の変形例に係る接合金物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、鉄骨系の柱梁架構の構面内に設けられた木質耐震壁である。この木質耐震壁では、熱吸収部が設けられた接合金物により木質壁部と柱梁架構とが接合されるとともに、木質壁部と柱梁架構との間をセメント系材料で塞いだ閉塞部が設けられている。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る木質耐震壁1の正面図である。
木質耐震壁1は、鉄骨鉄筋コンクリート造の柱梁架構2の構面内に設けられる。
柱梁架構2は、一対の鉄骨鉄筋コンクリート柱3と、この一対の鉄骨鉄筋コンクリート柱3間に架設された上下一対の鉄骨梁4と、鉄骨梁4の上に設けられた床スラブ5と、を備える。
木質耐震壁1は、柱梁架構2内の水平方向中央部に設けられた木質板からなる矩形状の木質壁部10と、木質壁部10の四つの出隅部に設けられて柱梁架構2の鉄骨梁4に接合される接合金物20と、木質壁部10と柱梁架構2の鉄骨梁4との間をセメント系材料で塞いだ閉塞部30と、を備える。つまり、木質壁部10は、接合金物20および閉塞部30を介して、柱梁架構2に接合されている。
木質壁部10を構成する木質板は、例えば、CLTや合板である。CLT(Cross Laminated Timber)は、木材から切り出したひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層して接着したものである。合板は、木材から切り出した単板を繊維方向が直交するように積層して接着したものである。
木質耐震壁1の鉄骨梁4との接合部分および鉄骨梁4は、けい酸カルシウム板6で覆われている。
【0014】
図2は、
図1の木質耐震壁1の破線Aで囲んだ部分の拡大図である。
接合金物20は、柱梁架構2に接合される架構接合部21と、架構接合部21から鉛直方向に延びて木質壁部10の側端面に接合される壁接合部22と、を備える。
図3は、接合金物20の部分拡大側面図であり、
図4(a)は、
図3の接合金物20のB-B断面図であり、
図4(b)は、
図3の接合金物20のC-C断面図である。なお、
図3では、理解を容易にするため、けい酸カルシウム板6の表示を省略している。
【0015】
架構接合部21は、柱梁架構2の鉄骨梁4のフランジに沿って設けられた板状部材であり、この鉄骨梁4のフランジに複数のボルト24で接合されている。
壁接合部22は、木質壁部10の出隅部の側端面11に沿って延びる板状であり、この側端面11に複数のビス25で接合されている。これらのビス25は、上下方向に所定間隔おきに複数列で設けられている。
【0016】
接合金物20の外側表面つまり架構接合部21と壁接合部22との入隅部には、熱吸収部としての熱容量の大きいモルタルブロック26が設けられている。
また、接合金物20の壁接合部22の鉄骨梁4側の部分および架構接合部21は、耐火被覆材として機能するけい酸カルシウム板6で覆われている。
【0017】
閉塞部30は、
図3に示すように、柱梁架構2の鉄骨梁4に溶接固定されたスタッド31にメッシュ筋32を配筋し、グラウト材を充填したものである。この閉塞部30の側面は、けい酸カルシウム板6で覆われている。
【0018】
以上の木質耐震壁1は、柱梁架構2に水平力が作用した場合、以下のように動作する。すなわち、木質壁部10の上下端面と鉄骨梁4との隙間を閉塞部30で塞いだので、
図5(a)に示すように、閉塞部30を介して、柱梁架構2の鉄骨梁4から木質壁部10に押圧力が伝達される。なお、この閉塞部30は、鉄骨梁4の耐火被覆としても機能する。また、
図5(b)に示すように、接合金物20により、この水平力が木質壁部10の出隅部に確実に伝達される。
また、火災時には、木質壁部10が燃焼すると、火災で生じた熱や木質壁部10の燃焼熱が接合金物20を介して鉄骨梁4に伝達されるが、このとき、
図6に示すように、この熱の一部が接合金物20の表面に設けたモルタルブロック26に吸収されて、鉄骨梁4に伝わる熱量が低減し、温度の上昇が抑制される。
【0019】
〔接合金物の耐火性能についての検証〕
以下、本発明の木質耐震壁を対象として、接合金物の熱吸収部による温度上昇抑制効果について検証した。具体的には、仮想三次元空間上に比較例および実施例の解析モデルを生成し、有限要素法による熱伝導解析を行った。ここで、比較例は、接合金物にモルタルを設けない構造とし、実施例は、接合金物にモルタルを設けた構造とした。
【0020】
図7(a)は、解析モデルを一端側から視た斜視図である。
図7(b)は、解析モデルを他端側から視た斜視図である。
図7(c)は、解析モデルからけい酸カルシウム板を取り外した状態の斜視図である。
図7に示すように、今回の解析モデルは、木質耐震壁の
図1中破線Aで囲んだ部分(つまり木質耐震壁および鉄骨梁の1/4の部分)でかつ鉄骨梁の中心軸で二分割したものとした。さらに、解析モデルを以下のように設定した。鉄骨梁は、BH-400×200×12×22とした。床スラブは、厚さ100mmのALC板とした。閉塞部は、厚さ70mmのモルタルとした。接合金物、閉塞部、ならびに、鉄骨梁の側面のうち接合金物および閉塞部に接続される部分は、厚さ60mmのけい酸カルシウム板で覆い、残りの部分つまり鉄骨梁のうち接合金物および閉塞部に接続されない部分は、厚さ25mmのけい酸カルシウム板で覆った。言い換えると、木質耐震壁が設置される鉄骨梁の側面は、厚さ60mmのけい酸カルシウム板で覆い、木質耐震壁が設置されない鉄骨梁は、厚さ25mmのけい酸カルシウム板で覆った。ただし、鉄骨梁端部の断熱境界面は、厚さ35mmのけい酸カルシウム板で覆った。鉄骨梁内部の空洞は、熱対流を無視して熱放射のみとした。また、木質壁部については、火災による焼失を想定し、モデル化は行っていない。
【0021】
以上の比較例および実施例の解析モデルに対して、標準加熱温度曲線(ISO834曲線)で2.4時間加熱し、鋼材温度を出力した。ここで、鋼材温度とは、接合金物の架構接合部と壁接合部との接合部分の温度である。
図8は、熱伝導解析の解析結果(鋼材温度の経時変化)を示す図である。
図8より、接合金物20にモルタルを設けることで、鋼材温度の上昇を抑制できることが判る。具体的には、2時間加熱した時点で、モルタルなしでは約460℃であるが、モルタルありでは約410℃であり、鋼材温度を11%低減できていることが判る。
【0022】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)木質壁部10と鉄骨梁4とを接合する接合金物20の外側表面に、熱容量の大きい熱吸収部であるモルタルブロック26を設けた。よって、火災により木質壁部10が燃焼すると、火災で生じた熱や木質壁部10の燃焼熱が接合金物20を介して鉄骨梁4に伝達される。このとき、火災で生じた熱や木質壁部10の燃焼熱の一部がモルタルブロック26に吸収されて、鉄骨梁4に伝わる熱量が低減され、温度の上昇が抑制される。よって、鉄骨系の柱梁架構2の耐火性能が低下するのを抑制できる。
【0023】
(2)木質壁部10と柱梁架構2の鉄骨梁4との間をセメント系材料で塞いで閉塞部30としたので、この閉塞部30が木質壁部10と鉄骨梁4との接合材となり、木質壁部10と鉄骨梁4との一体性が高まる。また、閉塞部30が耐火被覆材として機能するので、木質壁部10が燃焼した際には、モルタルブロック26に加えて閉塞部30でも燃焼熱が吸収されて、鉄骨梁4に伝わる熱量が低減するから、鉄骨系の柱梁架構2の耐火性能が低下するのを大幅に抑制できる。
【0024】
(3)木質壁部10の表面に全長に亘って接合金物および熱吸収部を配置するのではなく、木質壁部10の四隅にのみ接合金物20およびモルタルブロック26を配置した。よって、接合金物20の取付け箇所を少なくでき、木質壁部10と柱梁架構2とを比較的容易に接合できる。
【0025】
〔第2実施形態〕
図9は、本発明の第2実施形態に係る木質耐震壁1Aの上部の正面図である。
図10は、
図9の木質耐震壁1AのD-D断面図である。
本実施形態では、接合金物20Aの構造が、第1実施形態と異なる。すなわち、接合金物20Aは、木質壁部10の表面に沿って所定間隔おきに設けられている。具体的には、接合金物20Aは、木質壁部10の正面側および裏面側に、それぞれ3つずつ設けられている。
接合金物20Aは、断面略L字形状であり、柱梁架構2に接合される架構接合部21と、架構接合部21から鉛直方向に延びて木質壁部10の側端面に接合される壁接合部22と、を備える。架構接合部21と壁接合部22との入隅部には、熱容量の大きい熱吸収部であるモルタルブロック26が設けられている。この接合金物20Aは、耐火被覆材として機能するけい酸カルシウム板6で覆われている。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)と同様の効果がある。
【0026】
〔第3実施形態〕
図11は、本発明の第3実施形態に係る木質耐震壁1Bの接合金物20Bの斜視図である。
本実施形態では、接合金物20Bの架構接合部21と壁接合部22との入隅部に、リブ40が設けられている点が、第1実施形態と異なる。このリブ40は、モルタルブロック26に埋設されている。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)と同様の効果がある。
【0027】
〔第4実施形態〕
図12は、本発明の第4実施形態に係る木質耐震壁1Cの接合金物20Cの斜視図である。
本実施形態では、接合金物20Bの架構接合部21の外側表面に、スタッドボルト41が設けられている点が、第1実施形態と異なる。このスタッドボルト41は、モルタルブロック26に埋設されている。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)と同様の効果がある。
【0028】
〔第5実施形態〕
図13(a)は、本発明の第5実施形態に係る木質耐震壁1Dの接合金物20の側面図である。
図13(b)は、
図13(a)の木質耐震壁1DのE-E断面図である。
本実施形態では、モルタルブロック26Dが、接合金物20に接しておらず、鉄骨梁4の接合金物20側の下フランジ7およびウエブ8の側面に接して設けられている点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、モルタルブロック26Dは、鉄骨梁4のウエブ8の側面に設けた鉛直補強リブ間において、架構接合部21に接する鉄骨梁4の下フランジ7と上フランジとの中間の高さ位置まで設けられている。
この木質耐震壁1Dでは、火災時に、木質壁部10が燃焼すると、火災で生じた熱や木質壁部10の燃焼熱が接合金物20を介して鉄骨梁4に伝達されるが、このとき、
図14に示すように、この熱の一部がモルタルブロック26Dに吸収されて、鉄骨梁4に伝わる熱量が低減し、温度の上昇が抑制される。
【0029】
本実施形態では、モルタルブロック26Dを、鉄骨梁4の下フランジ7と上フランジとの中間の高さ位置まで設けたが、これに限らず、鉄骨梁4の上フランジの高さ位置まで、つまり、下フランジ7と上フランジとの間の全高に亘って設けてもよい。このようにすれば、モルタルブロック26Dを鉄骨梁4の下フランジ7と上フランジとの中間の高さ位置まで設けた場合に比べて、鉄骨梁4のウエブに対する補剛効果を高めることができる。
本実施形態によれば、上述の(1)~(3)の効果に加えて、以下の効果がある。
(4)モルタルブロック26Dを、鉄骨梁4の下フランジ7およびウエブ8の側面に当接して設けることで、鉄骨梁4に伝わる熱量を低減でき、鉄骨梁4の温度の上昇が抑制可能となる。また、このモルタルブロック26Dは、鉄骨梁4のウエブ8の補剛材としても機能する。
【0030】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
上述の第2実施形態では、接合金物20Aを木質壁部10の表面に沿って所定間隔おきに設けたが、これに限らず、
図15に示すように、接合金物20Eを木質壁部10の正面側および裏面側に全長に亘って設けてもよい。この接合金物20Eは、耐火被覆材として機能するけい酸カルシウム板6で覆われている。このようにしても、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
また、上述の各実施形態では、熱吸収部を接合金物20、20A、20Bの外側表面に設けたが、これに限らず、接合金物の内側表面に設けてもよい。このように熱吸収部を接合金物の内側表面に設けた場合でも、火災による熱や木質壁部10の燃焼熱の一部を熱吸収部が吸収し、柱梁架構2の耐火性能の低下を抑制することができる。
また、上述の各実施形態では、熱吸収部をモルタルで形成したが、これに限らず、熱吸収性に優れたコンクリート、石膏、熱吸収セラミック材のいずれかで形成してもよい。
【0031】
また、上述の各第4実施形態では、接合金物20Bの架構接合部21の外側表面にスタッドボルト41を設けたが、これに限らず、スタッドボルト41の代わりに、
図16に示すように、頭付きスタッド42を設けてもよいし、
図17に示すように、スタッドボルト43およびナット44を設けてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G…木質耐震壁(耐震壁)
2…柱梁架構 3…鉄骨鉄筋コンクリート柱
4…鉄骨梁 5…床スラブ 6…けい酸カルシウム板 7…下フランジ 8…ウエブ
10…木質壁部 11…側端面
20、20A、20B、20C、20E、20F、20G…接合金物
21…架構接合部 22…壁接合部
24…ボルト 25…ビス 26、26D…モルタルブロック(熱吸収部)
30…閉塞部 31…スタッド 32…メッシュ筋
40…リブ 41…スタッドボルト 42…頭付きスタッド
43…スタッドボルト 44…ナット