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特許7554690統計分析を使用して制御負荷を判定するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】統計分析を使用して制御負荷を判定するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240912BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
E01D21/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021026781
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021149957
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】16/821,356
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ユウ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・キーゼル
(72)【発明者】
【氏名】アジェイ・ラガヴァン
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-084404(JP,A)
【文献】特開2006-317413(JP,A)
【文献】特開2007-163390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0198502(US,A1)
【文献】国際公開第2018/159003(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097579(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
構造物を通過する不明な重量の対象物によって引き起こされる交通負荷事象のサンプルに対する、前記構造物の負荷応答の集合を測定することと、
前記負荷応答の集合から、少なくとも1つの統計パラメータを判定することと、
前記構造物に負荷をかけると想定される対象物の母集団のうちの既知の対象物の重量の対応する統計パラメータを判定することと、
前記対応する統計パラメータに対する前記少なくとも1つの統計パラメータの相関関係に基づいて、前記負荷応答の集合の負荷応答に対象物の重量を割り当てることと、
前記負荷応答と前記対象物の重量とを観察することから前記構造物の構造的健全性を推測することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記負荷応答の集合からの前記統計パラメータが、前記負荷応答の集合のモードを含み、
前記構造物に負荷をかける前記既知の対象物の重量の前記対応する統計パラメータが、前記既知の対象物の重量のモードを含み、
前記対象物の重量を前記負荷応答に割り当てることが、前記既知の対象物の重量の前記モードを前記負荷応答の集合の前記モードに割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記負荷応答の集合からの前記統計パラメータが、前記負荷応答の集合の中央値を含み、
前記構造物に負荷をかける前記既知の対象物の重量の前記対応する統計パラメータが、前記既知の対象物の重量の中央値を含み、
前記対象物の重量を前記負荷応答に割り当てることが、前記対象物の重量の前記中央値を前記負荷応答の集合の前記中央値に割り当てることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷応答の集合から、前記統計パラメータを判定することが、
前記負荷応答の集合の中央値及び四分位範囲を計算することと、
前記中央値の信頼区間を計算することと、を含み、
前記構造物に負荷をかける前記既知の対象物の重量の前記対応する統計パラメータを判定することが、前記既知の対象物の重量の中央値を計算することを含み、
前記負荷応答に前記対象物の重量を割り当てることが、前記負荷応答の前記中央値以外の負荷応答に、前記対象物の重量の前記中央値を割り当てることを含み、前記負荷応答が、前記信頼区間内に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象物の重量を前記負荷応答に割り当てることが、前記対象物の重量の前記中央値を前記信頼区間内の最大負荷応答に割り当てることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
追加的な対象物の重量を追加的な負荷応答に割り当てることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記対象物の重量に割り当てられた前記負荷応答の変化を経時的に監視することと、
前記変化に基づいて、前記構造物の劣化を検出することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記構造物が、道路、橋、滑走路、港湾埠頭、又はケーブル構造物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記対象物が、車両、歩行者、飛行機、ボート、ケーブルカー、及びスキーリフトのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
システムであって、
構造物上に配置され、前記構造物を通過する不明な重量の対象物によって引き起こされる交通負荷事象のサンプルに対する、前記構造物の負荷応答の集合を測定するように構成されたセンサと、
前記構造物に負荷をかけると想定される対象物の母集団のうちの既知の対象物の重量のデータベースと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサが、
前記負荷応答の集合から、少なくとも1つの統計パラメータを判定することと、
前記構造物に負荷をかける前記既知の対象物の重量の対応する統計パラメータを判定することと、
前記対応する統計パラメータに対する前記少なくとも1つの統計パラメータの相関関係に基づいて、前記負荷応答の集合の負荷応答に対象物の重量を割り当てることと、
前記負荷応答と前記対象物の重量とを観察することから前記構造物の構造的健全性を推測することと、を行うように構成されている、システム。
【請求項11】
前記センサが、光学センサである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサが、ファイバブラッググレーティング(fiber Bragg grating、FBG)センサである、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記負荷応答の集合からの前記統計パラメータが、前記負荷応答の集合のモードを含み、
前記構造物に負荷をかける前記既知の対象物の重量の前記対応する統計パラメータが、前記既知の対象物の重量のモードを含み、
前記対象物の重量を前記負荷応答に割り当てることが、前記既知の対象物の重量の前記モードを前記負荷応答の集合の前記モードに割り当てることを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
前記負荷応答の集合からの前記統計パラメータが、前記負荷応答の集合の中央値を含み、
前記構造物に負荷をかける前記既知の対象物の重量の前記対応する統計パラメータが、前記既知の対象物の重量の中央値を含み、
前記対象物の重量を前記負荷応答に割り当てることが、前記対象物の重量の前記中央値を前記負荷応答の集合の中央値に割り当てることを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項15】
前記負荷応答の集合から、前記統計パラメータを判定することが、
前記負荷応答の集合の中央値及び四分位範囲を計算することと、
前記中央値の信頼区間を計算することと、を含み、前記プロセッサが、
前記既知の対象物の重量の中央値を計算することと、
前記負荷応答の前記中央値以外の負荷応答に、前記対象物の重量の前記中央値を割り当てることであって、前記負荷応答が、前記信頼区間内存在する、割り当てることと、を行うように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記対象物の重量を前記負荷応答に割り当てることが、前記対象物の重量の前記中央値を前記信頼区間内の最大負荷応答に割り当てることを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記プロセッサが、追加的な対象物の重量を追加的な負荷応答に割り当てるように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記プロセッサが、
前記対象物の重量に割り当てられた前記負荷応答の変化を経時的に監視することと、
前記変化に基づいて、前記構造物の劣化を検出することと、を行うように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
前記構造物が、道路、橋、滑走路、港湾埠頭、又はケーブル構造物である、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
前記対象物が、車両、歩行者、飛行機、ボート、ケーブルカー、及びスキーリフトのうちの1つ以上を含む、請求項10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、構造物の健全性監視のための技術に関する。本出願はまた、このような技術に関する構成要素、デバイス、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の健全性監視は、資産上に設置されたセンサを使用して、構造物の健全性又は状態に関する有用な情報を抽出することを目的とする、大規模かつ発展中の研究分野である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載される実施形態は、不明な重量の対象物によって引き起こされる交通負荷事象のサンプルに対する、資産の負荷応答の集合を測定することを含む方法を伴う。少なくとも1つの統計パラメータは、負荷応答の集合から判定される。資産に負荷をかける既知の対象物の重量の、対応する統計パラメータが判定される。対象物の重量は、抽出された統計パラメータの対応する統計パラメータとの相関関係に基づいて、負荷応答の集合の負荷応答に割り当てられる。
【0004】
実施形態は、資産上に配置され、不明な重量の対象物によって引き起こされる交通負荷事象のサンプルに対する、資産の負荷応答の集合を測定するように構成されたセンサを含むシステムを伴う。システムは、資産に負荷をかける既知の対象物の重量のデータベースを含む。システムは、負荷応答の集合から、少なくとも1つの統計パラメータを判定するように構成されたプロセッサを備える。資産に負荷をかける既知の対象物の重量の対応する統計パラメータが判定される。対象物の重量は、対応する統計パラメータに対する抽出された統計パラメータの相関関係に基づいて、負荷応答の集合の負荷応答に割り当てられる。
【0005】
上記の概要は、各実施形態又は全ての実装態様を説明することを意図したものではない。添付図面と併せて、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって、より完全な理解が明らかとなり、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本明細書に記載される実施形態に従う、既知の交通統計と比較することによって、交通負荷事象のサンプルから制御負荷を判定するためのプロセスを示す。
図2】本明細書に記載される実施形態に従う、既知の交通統計と比較することによって、交通負荷事象のサンプルから制御負荷を判定することができるシステムを例解する。
図3】本明細書に記載される実施形態に従う、100個超の光ファイバのファイバブラッググレーティング(fiber Bragg grating、FBG)歪みセンサを装備した、郊外主要道路上の例示的な3車線の橋から取得したデータを示す。
図4】本明細書に記載される実施形態に従う、図3に示すデータの拡大図を示す。
図5】本明細書に記載される実施形態に従う、例示的な橋からの負荷事象の歪みの大きさの例示的なヒストグラムを例解する。
図6A】本明細書に記載される実施形態に従う、図5のヒストグラムの最も高いビンから負荷事象が抽出された、例示的な橋の上の2つの歪みセンサ上の例示的な負荷事象信号のプロットを示す。
図6B】本明細書に記載される実施形態に従う、図5のヒストグラムの最も高いビンから負荷事象が抽出された、例示的な橋の上の2つの歪みセンサ上の例示的な負荷事象信号のプロットを示す。
図7】本明細書に記載される実施形態を実装することができるシステムのブロック図を示す。
【0007】
図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面に使用される同様の数字は、同様の構成要素を指す。しかしながら、所与の図の構成要素を指す数字の使用は、同じ数字でラベル付けされた別の図における構成要素を制限することを意図していないことが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
構造物の健全性監視は、資産、すなわち、構造物上に設置されたセンサを使用して、構造物の健全性又は状態に関する有用な情報を抽出することを目的とする、大規模かつ発展中の研究分野である。本明細書に記載される様々な実施形態によれば、これらの資産は、負荷を支持する目的で構築される。構造物の健全性監視に対する手法は、資産の負荷事象に対する応答を測定し、負荷に対するその応答を観察することから資産の状態を推測することである。資産は、対象物を用いて負荷がかけられ得る任意の構造物を含むことができる。例えば、資産としては、道路、橋、滑走路、港湾埠頭、及びケーブル構造物のうちの1つ以上を含んでもよい。本明細書に記載される多くの実施形態は、橋構造物の上を走行する車両の例を使用するが、本明細書に記載される方法及びシステムのいずれも、対象物を用いて任意の負荷がかけられ得る種類の構造物に適用することができることを理解されたい。対象物は、資産に負荷を適用することができる任意の対象物であってもよい。例えば、対象物としては、自動車、列車、歩行者、航空機、ボート、ケーブルカー、及びスキーリフトのうちの1つ以上を含むことができる。
【0009】
負荷に対する応答を測定するセンサ(例えば、歪みセンサ、加速度計、変位センサ)を装備している構造物上で実施することができる多くの分析は、それらが既知の又は制御された負荷状態に対する構造物の応答を測定するときに、有用性を提供する。例えば、センサが、通過するトラックに応答して、特に大きな歪みを測定するが、通過するトラックの重量は既知ではない場合、測定された歪みの大きさが大きいことが、トラックが重いことによるのか、又は構造物が過度に可撓性になっているからなのかは、直ちに明らかになるものではない。この理由から、機器を備えた構造物の分析技術は、例えば、構造物にわたって、既知の重量及び寸法を有するトラックを運転することによって既知の負荷が適用される、制御された負荷試験を使用することができる。これにより、センサは、モデル検証/較正などの分析に役立ち得る、既知の負荷応答関係を捕捉することが可能になる。この種類の制御された負荷試験は、不便かつ/又は高価であり得る。このような負荷試験は、既知の時間に構造物の上で制御された負荷を動作させるための人員を伴う場合があり、構造物上に他の不明な車両荷重がないとき(すなわち、橋の閉鎖若しくは夜間の作業、又はその両方)、制御された負荷を適用することを伴う場合がある。
【0010】
本明細書に記載される実施形態では、通常は制御された負荷試験を伴うであろう分析を行う目的で、「既知の」負荷を推測するために、多くの周囲の(すなわち、自然な/制御されていない)交通負荷事象から来る歪み応答データのサンプルを使用するためのプロセスを含む。各車両重量及び種類を判定することを必要とせずに、交通量から負荷を収集することができる。次いで、これらのラベル付けされていない負荷事象を収集した後に行われる後処理ステップでは、これらの負荷事象のうちのいくつかは、交通統計と比較することによって、重量及び車両の種類で識別することができる。これらのここでラベル付けされている負荷事象は、制御された負荷試験として使用することができる。例示的な用途としては、有限要素のモデル較正、データ駆動モデル構築、モデル検証、並びに橋及び/又は他の構造物の負荷又は疲労評価が挙げられる。
【0011】
本明細書に記載される実施形態によれば、第1の手法は、構造物に適用される、制御された又は既知の試験負荷を使用することを伴い、この試験負荷に対する応答が測定される。これは、構造物挙動のデータ駆動モデルを直接構築するために使用することができるか、又は(より一般的に)、構造物のモデル(有限要素のモデルなど)を較正するために使用することができる、既知の力応答関係を確立する。例えば、様々な構成要素の剛性、又は様々な構造要素の限界状態などの構造モデルの不確定パラメータは、既知の負荷がモデルに適用されたときに、実際の物理的な構造物上で測定された応答と十分に類似した結果を生成するように調整されてもよい。
【0012】
様々な実装態様によれば、第2の手法は、いくつかの仮定された分布を用いて負荷のサンプルに対する構造物の応答を測定することを伴う(例えば、多くの交通負荷事象に対する構造物の応答が測定され、ここで、その交通分布がどのように見えるかに関するいくつかの統計値は既知である)。次いで、構造物のモデルは、分布が仮定された交通負荷がモデルに適用されたとき、モデルの出力は、実際の構造物上で測定された応答の分布と十分に類似した分布を有するように調整される。この手法は、仮定された分布から引き出された多くの負荷事象を構造物モデルに適用することを伴い得、これは、少数の制御された負荷を適用する、上記の第1の手法よりも高い計算コストを必要とする。次いで、分布を一致させるように調整することができる。調整は、統計的考察を伴わない第1の手法と比較して、実質的により複雑かつ分析的な高度性を伴い得る。
【0013】
本明細書に記載される実施形態は、追加的な分析と共に、上記の手法の組み合わせを使用してもよい。上記の第1の手法(既知の負荷を適用すること)は、上述したように、実際に実装するには高価であり得るが、単一の目標測定値を伴うため、分析のためにはより単純である。本明細書で提案される手法は、多くの負荷事象のサンプル中に含まれる1つ以上の既知の負荷を識別するために、交通負荷の既知の統計値を使用する。すなわち、対象物の重量の知識なしに捕捉された負荷事象のいくつかは、推測された重量を用いてラベル付けすることができる。次いで、これらの推測された「既知の」負荷は、上記の第1の手法に記載されているものなどの単純な分析に投入することができる。これにより、交通負荷がいくつかの分布に従うと仮定できる限り、制御された負荷試験が実施されていないときでも、制御された負荷試験を伴う一般的な分析種類の広範な配列が開かれる。この手法はまた、上記の第2の手法で行われる複雑な分析よりも単純である。
【0014】
図1では、本明細書に記載される実施形態に従う、既知の交通統計と比較することによって、交通負荷事象のサンプルから制御負荷を判定するためのプロセスを示す。不明な重量の対象物によって引き起こされる交通負荷事象のサンプルに対する、資産の負荷応答の集合を測定する(110)。少なくとも1つの統計パラメータは、負荷応答の集合から判定される(120)。資産に負荷をかける既知の対象物の重量の、対応する統計パラメータが判定される(130)。対象物の重量は、抽出された統計パラメータの、対応する統計パラメータとの相関関係に基づいて、負荷応答の集合の負荷応答に割り当てられる(140)。場合によっては、追加的な対象物の重量が追加的な負荷応答に割り当てられる。対象物の重量に割り当てられた負荷応答の変化が経時的に監視される(150)。この変化に基づいて、資産の劣化が検出される(160)。
【0015】
様々な実施形態によれば、負荷応答の集合から統計パラメータを判定することは、負荷応答の集合のモードを抽出することを含む。場合によっては、資産に負荷をかける既知の対象物の重量の対応する統計パラメータを判定することは、既知の対象物の重量のモードを判定することを含む。対象物の重量のモードは、負荷応答のモードに割り当てられてもよい。
【0016】
様々な実装態様によれば、負荷応答の集合から統計パラメータを判定することは、負荷応答の集合の中央値及び/又は平均値を抽出することを含み、資産に負荷をかける既知の対象物の重量の対応する統計パラメータを判定することは、既知の対象物の重量の中央値及び/又は平均値を判定することを含む。対象物の重量の中央値は、負荷応答の中央値及び/又は平均値に割り当てられる。
【0017】
場合によっては、負荷応答の集合からの統計パラメータは、負荷応答の集合の中央値及び四分位範囲を計算することと、中央値の信頼区間を計算することと、を含む。資産に負荷をかける既知の対象物の重量の、対応する統計パラメータを判定することは、既知の対象物の重量の中央値を計算することを含む。負荷応答に車両重量を割り当てることは、負荷応答の中央値以外の負荷応答に、対象物の重量の中央値を割り当てることを含み、この負荷応答は、信頼区間内に存在する。様々な構成によれば、対象物の重量を負荷応答に割り当てることは、対象物の重量の中央値を信頼区間内の最大負荷応答に割り当てることを含む。
【0018】
図2は、本明細書に記載される実施形態に従う、既知の交通統計と比較することによって、交通負荷事象のサンプルから制御負荷を判定することができるシステムを例解する。複数のセンサ210が、資産205上に配置されている。センサは、負荷応答を測定することができる任意の種類のセンサであってもよい。様々な実施形態によれば、複数のセンサは、光学センサである。例えば、センサは、ファイバブラッググレーティング(FBG)歪みセンサ、ファブリペローセンサ、及び/又は他の干渉光学センサであってもよい。場合によっては、センサは、電気センサ及び/又は抵抗センサ、機械センサ、及び/又は他の種類の歪みゲージのうちの1つ以上を含んでもよい。場合によっては、異なる種類のセンサの組み合わせが使用されてもよい。図2に示す実施形態は、7つのセンサを示しているが、任意の数のセンサが使用されてもよいことを理解されたい。例えば、100個超のセンサを資産に沿って配置してもよい。
【0019】
複数のセンサ210は、不明な重量の対象物によって引き起こされる交通負荷事象のサンプルに対する、資産205の負荷応答の集合を測定するように構成されている。センサ210に結合されたプロセッサ230は、負荷応答の集合から少なくとも1つの統計パラメータを判定するように構成されている。プロセッサ230は、データベース220から既知の対象物の重量を受信し、既知の対象物の重量を使用して、既知の対象物の重量の対応する統計パラメータを判定する。プロセッサ230は、抽出された統計パラメータの、対応する統計パラメータとの相関関係に基づいて、負荷応答の集合の負荷応答に対象物の重量を割り当てるように構成されている。
【0020】
図3及び図4は、100個超の光ファイバのファイバブラッググレーティング(FBG)歪みセンサを装備した、郊外主要道路上の例示的な3車線の橋から取得したデータを示す。歪み信号は、深夜の時間帯に、橋の上の全てのセンサから1時間にわたって収集された。個別の負荷事象310は、歪み信号上で実行されるピーク検出アルゴリズムで識別される。この交通量の少ない時間帯では、交通量が十分にまばらで、図4に示される拡大図でより明確に観察することができるように、車両が一度に1台ずつ橋の上を走行する傾向があることから、深夜の時間帯が選択される。これにより、個別の単離された負荷事象が発生し、交通統計と相関させることがより簡単になる。
【0021】
本明細書に記載される実施形態は、収集されたサンプルの統計値を資産上の交通量の仮定統計値と一致させる。この仮定交通量は、例えば、列車橋の場合では既知の列車スケジュールに基づいて判定することができる。センサ信号が収集され、負荷事象が抽出されると、サンプルに対して関連する統計値が計算される。例えば、この一致に対する1つの手法は、サンプル中の形式上の負荷事象の大きさを取得し、これがその地域の車両重量分布からの形式上の車両重量に対応する可能性が高いことを推測し得る。適切な統計分析により、このような推測の誤差限界を導出し得る。
【0022】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、全体的な地域の車両分布から引き出された独立したサンプルとして、流入交通量をモデル化することができる。サンプリング分布理論は、真母集団からの平均ピーク歪みの信頼区間を付与することができ、これは、真母集団における平均車両重量に対応する。この種類の推測を行うために、サンプル負荷事象の大きさの中央値及び四分位範囲を計算することができる。場合によっては、サンプル負荷事象の大きさの平均値及び標準偏差が計算される。
【0023】
例示的な橋からの負荷事象の歪みの大きさの例示的なヒストグラムを図5に示す。サンプルには、ほぼ正常な重量分布が見られる。ピーク高さの変動は、橋の上を走行する車両の重量の変動によって引き起こされている可能性が高い。したがって、図5のヒストグラムは、サンプル中の車両重量のスケールされたヒストグラムとして見ることができる。
【0024】
本明細書に記載される実施形態によると、統計的推測手順を使用して、母集団分布の既知の統計値を使用して、負荷事象の少なくともいくつかのラベルを推測することができる。サンプル中の形式上の負荷事象の大きさが、地域の交通量分布における形式上の車両重量に対応すると仮定した場合の例示的な推測手順を考察する。図5のヒストグラムの最も高いビン510内に配設された負荷事象は、地域の車両重量分布における形式上の重量を用いてラベル付けすることができる。信頼区間は、母集団の中央値及び/又は(車両重量に直接対応し得る)負荷事象ピーク高さの平均値に対して計算することができる。この信頼範囲におけるより大きな歪みの大きさに対応する負荷事象は、母集団平均車両重量を用いてラベル付けされ得る。信頼区間は、負荷応答が全て偶然性に起因して小型車又は大型車からのものである可能性があるという事実を考慮してもよい。上記の信頼区間によって反映されるように、平均値及び/又は中央重量値の対象物からの応答の範囲が確実ではないので、構造物の最悪の場合は、平均値及び/又は中央値の対象物が大きな応答を引き起こすということであろう。そのため、保守性の観点から、信頼範囲の上端にピークが一致する応答は、平均値の対象物の重量に割り当てられてもよい。
【0025】
これらは、負荷事象のサンプルを地域内の車両の既知の分布と一致させるために、いくつかの統計的推測手順を実施することによって、サンプル中の特定の負荷事象を、重量を用いてラベル付けすることができる方法の2つの特定の実施例である。多くの類似した手順が使用され得、各々が異なる仮定を行い、結果として異なる誤差限界及び保守的なレベルをもたらす。
【0026】
サンプル中の負荷事象の少なくともいくつかが推測重量を用いてラベル付けされると、これらの負荷事象に対応して測定された信号を抽出し、下流側の分析に使用することができる。例えば、図6A及び図6Bのプロットは、例示的な橋の2つの歪みセンサ上の負荷事象信号を示しており、負荷事象は、図5のヒストグラムの最も高いビンから抽出されている。このビンは、地域の車両重量の既知の分布内で最も一般的な重量を有する車両に対応している可能性が高いと推測することができる。領域内の最も一般的な重量は、様々な方法で判定することができる。例えば、最も一般的な車両重量は、その地域の販売データに基づいて判定されてもよい。他の方法を使用して、交通統計などの最も一般的な車両の種類を判定することができる。この最も一般的な車両重量との相関関係は、地域車両の中で最も一般的な重量を有する車両に対する構造物の測定応答として取得することができる。これらの負荷事象信号には、「既知の」/推測された車両重量が割り当てられているため、これらの負荷事象信号は、データ駆動モデル構築又はモデル調整などのタスクでは、制御された負荷試験の代わりに使用することができる。
【0027】
上記の方法は、周知のコンピュータプロセッサ、メモリユニット、記憶デバイス、コンピュータソフトウェア、及び他の構成要素を使用してコンピュータに実装することができる。このようなコンピュータの高レベルブロック図を、図7に例解する。コンピュータ700は、このような動作を定義するコンピュータプログラム命令を実行することによって、コンピュータ700の全体的な動作を制御するプロセッサ710を含む。プロセッサ710は、命令を実行することができる任意の種類のデバイスを含み得ることを理解されたい。例えば、プロセッサ710は、中央処理装置(central processing unit、CPU)、グラフィック処理ユニット(graphical processing unit、GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)、及び特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)のうちの1つ以上を含んでもよい。コンピュータプログラム命令は、記憶デバイス720(例えば、磁気ディスク)内に記憶され、コンピュータプログラム命令の実行が所望されるときにメモリ730にロードされてもよい。したがって、本明細書に記載される方法のステップは、メモリ730内に記憶され、かつコンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ710によって制御されるコンピュータプログラム命令によって定義され得る。本明細書に記載される実施形態によれば、コンピュータ700は、サーバ又はクラウドベースのサービスの一部として、方法ステップを実施することができる。コンピュータ700は、ネットワークを介して他のデバイスと通信するための1つ以上のネットワークインターフェース750を含んでもよい。コンピュータ700はまた、コンピュータ700とのユーザ対話を可能にする他の入力/出力デバイス(例えば、ディスプレイ、キーボード、マウス、スピーカ、ボタンなど)760を含む。図7は、例解目的のためのコンピュータの可能な構成要素の高レベル表現であり、コンピュータは、他の構成要素を含んでもよい。
【0028】
別途指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される形状サイズ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって改変されるものとして理解されるべきである。したがって、それと異なる指示がない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、並びにその範囲内の任意の範囲を含む。
【0029】
上記の様々な実施形態は、特定の結果を提供するために相互作用する回路及び/又はソフトウェアモジュールを使用して実装され得る。コンピューティング技術分野の当業者は、当該技術分野で一般的に知られている知識を使用して、モジュールレベルで又は全体としてのいずれかで、このような記載された機能を容易に実装することができる。例えば、本明細書に例解されるフローチャートは、プロセッサによる実行のためのコンピュータ可読命令/コードを作成するために使用されてもよい。このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶され、当該技術分野において既知のように実行するためにプロセッサに転送されてもよい。
【0030】
例示的な実施形態の前述の説明は、例解及び説明の目的のために提示されている。本発明の概念に網羅的であること、又は本発明の概念を開示される正確な形態に限定することは意図されていない。上記の教示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。開示される実施形態のいずれか又は全ての特徴は、個別に、又は任意の組み合わせで適用することができ、限定することを意図するものではなく、純粋に例解的なものである。発明の範囲は、詳細な説明によってではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって限定されるものであることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7