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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】半導体発光装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20240912BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/56
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021039981
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139545
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 賢司
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-088443(JP,A)
【文献】特開2001-237335(JP,A)
【文献】特開2018-037581(JP,A)
【文献】特開2007-234637(JP,A)
【文献】特開2019-220672(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159858(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0099908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子に接続された配線と、前記半導体発光素子を囲む環形状の基板金属層が固着された基板接合面とを有する気密性の基板と、
前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、前記基板金属層に対応する環形状のキャップ金属層が固着されたキャップ接合部とを有し、接合層によって前記キャップ金属層が前記基板金属層に接合されて前記半導体発光素子を収容する内部空間を有して前記基板に気密接合された気密性の透光キャップと、を有し、
前記基板金属層及び前記キャップ金属層のうち1つは、当該1つの金属層の延在方向に沿って配列された複数のディンプルを有し、
前記複数のディンプル内には前記接合層の接合材が流入している、半導体発光装置。
【請求項2】
前記複数のディンプルは半球形状を有する、請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記基板金属層及び前記キャップ金属層のうち少なくともいずれかの最表面層は金(Au)層であり、前記接合層の前記接合材は金スズ(AuSn)を含む、請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記複数のディンプルは前記延在方向に一定周期で形成されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記複数のディンプルは、前記延在方向に対して傾斜角θだけ傾斜した一直線上に配列された少なくとも3つのディンプルからなるディンプル群を有し、前記ディンプル群は前記延在方向に一定周期で形成されている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記基板金属層及び前記キャップ金属層のうち1つは、当該1つの金属層の端辺に沿って配列された複数の追加のディンプルを有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の半導体発光装置の製造方法であって、
(a)前記基板金属層の延在方向に沿って前記基板金属層上に複数の接合材バンプを配列し、
(b)前記複数の接合材バンプ上に前記キャップ金属層を載置するように前記キャップ接合部を押圧しつつ加熱して前記複数の接合材バンプを溶融し、
(c)前記複数の接合材バンプを溶融した後に冷却して前記基板金属層及び前記キャップ金属層を接合し、
前記複数の接合材バンプの各々は、前記複数の接合材バンプが溶融した際に隣接する接合材バンプの接合材が前記複数のディンプルの各々内に流入する位置に配列される、半導体発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記複数の接合材バンプは半球状で同一の大きさを有する、請求項7に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記複数の接合材バンプを配列するステップ()において、前記基板金属層の延在方向に対して一定角度で千鳥状に配列した2列のバンプ列を配列する、請求項7又は8に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体発光装置の製造方法であって、
前記複数の接合材バンプは半球状で同一の大きさを有し、前記一定角度は45°である、半導体発光装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の半導体発光装置の製造方法であって、
前記複数のディンプルは、前記延在方向に対して傾斜角θだけ傾斜した一直線上に配列されている少なくとも3つのディンプルを有し、
前記複数の接合材バンプは半球状で同一の大きさを有し、前記傾斜角θは60°である、半導体発光装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置及びその製造方法、特に紫外光を放射する半導体発光素子が内部に封入された半導体発光装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子を半導体パッケージの内部に封入する半導体装置が知られている。半導体発光モジュールの場合では、半導体発光素子が載置された支持体に、発光素子からの光を透過するガラスなどの透明窓部材が接合されて気密封止される。
【0003】
例えば、特許文献1には、凹部を備えるセラミックの基板に、ガラス製の窓部材を接合する際に、封止部にフィレットを形成させた構造が開示されている。
【0004】
特許文献2には、半導体発光素子を収容する凹部が設けられたセラミック基板に、ガラス製の蓋体に設けられた金属層が金属接合部材に埋設された構造が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、セラミックの支持体と、スペーサ本体をAuSn接合層で接合する構造が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、凹部を備えるセラミック基板に、ガラス製の窓部材に設けた第2金属層が金属接合部材に埋設された構造が開示されている。
光半導体素子の側面に出力される光を、傾斜する光反射面上に設けた金属層で反射させて窓部材に向かわせ、光出力を高める光半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-18873号公報
【文献】特開2018-93137号公報
【文献】特開2016-127255号公報
【文献】特開2018-037583号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】長瀬産業株式会社 https://www.nagase-pactech.jp/solder/spec/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、基板と窓部材との間の封止性、接合信頼性について一層の向上が求められている。特に紫外光を放射する半導体発光素子、例えばAlGaN系の半導体発光素子は、気密が不十分であると劣化し易く、当該半導体発光素子が搭載された半導体装置には高い気密性が求められる。
【0010】
また、AlGaN系結晶は水分によって劣化する。特に、発光波長が短波長になるほどAl組成が増加して劣化し易い。そこで、発光素子を収めるパッケージ内部に水分が侵入しない気密構造として、基板とガラス蓋を金属接合材で気密する構造が採用されていたが、多湿環境下又は水回りで使用される場合に気密が十分でないという問題があった。
【0011】
例えば、セラミック基板及び窓部材にそれぞれ金属層を設け、これらの金属層の間に金スズ(AuSn)シートやバンプ等の接合材を挟み溶融することにより、気密構造が形成されていた。
【0012】
しかしながら、本願の発明者は、金属層間にバンプ状に配された接合材片を挟み、接合材を圧着溶融して接合して形成された接合部について知見を得た。すなわち、溶融接合する際、隣接するバンプ同士が合体する。そして当該合体部に応力が掛かることによって接合部にクラック等が生じて気密不良及び信頼性悪化が生じる。また、余剰の接合材がパッケージ内外に流出し、外観不良や短絡不良を生じさせる場合があった。
【0013】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、長期の使用においても高い気密性が維持される高い信頼性、及び、耐湿性、耐腐食性など高い耐環境性を有する半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、接合部のクラック発生の原因となる応力が抑制され、また、接合層の内部の劣化を防止することができる、信頼性の高い気密接合を有する半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の1実施形態による半導体発光装置は、
半導体発光素子と、
前記半導体発光素子に接続された配線と、前記半導体発光素子を囲む環形状の基板金属層が固着された基板接合面とを有する気密性の基板と、
前記半導体発光素子の放射光を透過する窓部と、前記基板金属層に対応する環形状のキャップ金属層が固着されたキャップ接合部とを有し、接合層によって前記キャップ金属層が前記基板金属層に接合されて前記半導体発光素子を収容する内部空間を有して前記基板に気密接合された気密性の透光キャップと、を有し、
前記基板金属層及び前記キャップ金属層のうち1つは、当該1つの金属層の延在方向に沿って配列された複数のディンプルを有し、
前記複数のディンプル内には前記接合層の接合材が流入している。
【0015】
本発明の他の実施形態による半導体発光装置の製造方法は、上記半導体発光装置の製造方法であって、
(a)前記基板金属層の延在方向に沿って前記基板金属層上に複数の接合材バンプを配列し、
(b)前記複数の接合材バンプ上に前記キャップ金属層を載置するように前記キャップ接合部を押圧しつつ加熱して前記複数の接合材バンプを溶融し、
(c)前記複数の接合材バンプを溶融した後に冷却して前記基板金属層及び前記キャップ金属層を接合し、
前記複数の接合材バンプの各々は、前記複数の接合材バンプが溶融した際に隣接する接合材バンプの接合材が前記複数のディンプルの各々内に流入する位置に配列される、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。
図1B】半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。
図1C】半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。
図1D】半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。
図2A図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。
図2B図2Aの接合部(W部)の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
図3】基板金属層とキャップ金属層との接合部を模式的に示す図である。
図4】透光キャップと基板との接合工程を模式的に示す断面図である。
図5】AuSnバンプが加熱溶融時に拡がり、合体する様子を模式的に示す平面図である。
図6】本発明の第2の実施形態によるAuSnバンプの配列を模式的に示す平面図である。
図7A】本発明の第3の実施形態によるAuSnバンプの配列を模式的に示す平面図である。
図7B】AuSnバンプが合体する際のキャビティを示す模式図である。
図8】第1の実施形態の改変例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1Aは、本発明の第1の実施形態による半導体発光装置10の上面を模式的に示す平面図である。図1Bは、半導体発光装置10の側面を模式的に示す図である。図1Cは、半導体発光装置10の裏面を模式的に示す平面図である。図1Dは、半導体発光装置10の内部構造を模式的に示す図である。
【0019】
また、図2Aは、図1AのA-A線に沿った半導体発光装置10の断面を模式的に示す断面図である。図2Bは、図2Aの接合部(W部)の断面を拡大して示す部分拡大断面図である。
【0020】
図1A及び図2Aに示すように、半導体発光装置10の基板11は、半導体発光素子15をその内部に収容する空間である凹部HSを有している。より詳細には、基板11は、基板11の外周部に立設されて形成された枠部である枠11Aによって画定される角柱状の凹部RCを有するハウジング構造(枠体構造)として構成されている。
【0021】
なお、基板11の側面がx方向及びy方向に平行であり、基板11の上面がxy平面に平行であるとして示している。
(基板11、透光キャップ13、基板金属層12及びキャップ金属層21)
図1A図1Dに示すように、半導体発光装置10は、矩形枠形状の基板11と、矩形状の平板ガラスからなる透光性窓である透光キャップ13と、が接合されて構成されている。
【0022】
基板11は、ガス等を透過しない気密性に優れたセラミック基板である。例えば、高い熱伝導率を有し、ガスに対する気密性に優れた窒化アルミニウム(AlN)が用いられる。AlNセラミックの熱伝導率は150~170(W/m・K)であり、また熱膨張係数は4.5~4.6 (10-6・K-1)である。
【0023】
なお、基板11の基材として、熱伝導率の高い炭化ケイ素(SiC)、反射率の高い白アルミナ(Al)などを用いることができる。SiCの熱伝導率は200(W/m・K)であり熱膨張係数は4.4 (10-6・K-1)である、またAlの熱伝導率は29~32(W/m・K)であり熱膨張係数は7.7~8 (10-6・K-1)である。
【0024】
また、図2Aに示すように、基板11の枠11Aの頂面11T上には、矩形環形状の金属層12(以下、基板金属層12ともいう。)が形成され、気密性を有する透光キャップ13と接合されている。
【0025】
基板金属層12は、基板11上に、順にタングステン(又は銅)、ニッケル、金を積層した構造(W(又はCu)/Ni/Au)を有している(Au層が最表面層)。あるいは、ニッケルクロム、金、ニッケル、金 積層した構造(NiCr/Au/Ni/Au)を用いることができる。なお、基板11の基材セラミック焼成後に形成する場合は、基材セラミックに接する金属に窒化(酸化物セラミックの場合は酸化)し易い金属を選択することで基板11に対する高い固着性を得ることができる。
【0026】
透光キャップ13は、窓部13Aとキャップ接合部13Bとを有している。より詳細には、透光キャップ13の矩形環形状の外縁部がキャップ接合部13Bであり、その内側が透光部である窓部13Aである。
【0027】
透光キャップ13は、半導体発光装置10内に配された発光素子15からの放射光を透過する透光性のガラスからなる。例えば、石英ガラス又はホウ珪酸ガラス又はサファイアガラスを好適に用いることができる。
【0028】
キャップ接合部13Bの底面には矩形環形状のキャップ金属層21が固着されており、接合面13S(以下、キャップ接合面ともいう。)が形成されている。なお、透光キャップ13の窓部13Aは凸状、凹状、凸レンズ状、凹レンズ状とすることもできる。
【0029】
キャップ金属層21には、例えば、クロム/ニッケル/金(Cr/Ni/Au)層、もしくは、チタン/パラジウム/銅/ニッケル/金(Ti/Pd/Cu/Ni/Au)層(Au層が最表面層)などを用いることができる。
【0030】
図2Aに示すように、キャップ金属層21が接合層22によって基板金属層12に接合されることによって接合部24が形成され、基板11と透光キャップ13との気密が保たれている。すなわち、キャップ金属層21は、基板金属層12に対応する形状及び大きさを有し、接合層22によって同心であるように互いに接合されている。
【0031】
なお、基板金属層12が固着される基板11の面(基板接合面)11S及びキャップ金属層21が固着されるキャップ接合面13Sは平坦面であることが好ましい。
【0032】
(配線電極、発光素子、保護素子)
図1D及び図2Aに示すように、基板11の主面上には、半導体発光装置10内の配線電極である第1配線電極(例えば、アノード電極)14A及び第2配線電極(例えば、カソード電極)14Bが備えられている(以下、特に区別しない場合には、配線電極14と総称する。)。
【0033】
また、発光ダイオード(LED)又は半導体レーザなどの半導体発光素子15が第1配線電極14A上に金属接合層15Aによって接合され、発光素子15のボンディングパッド15Bがボンディングワイヤ18Cを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0034】
発光素子15は、n型半導体層、発光層及びp型半導体層を含む半導体構造層が形成されたアルミ窒化ガリウム(AlGaN)系の半導体発光素子(LED)である。また、発光素子15は、半導体構造層が、反射層を介して導電性の支持基板(シリコン:Si)上に形成(接合)されている。
【0035】
発光素子15は、支持基板の半導体構造層が接合された面の反対面(発光素子15の裏面)にアノード電極を備え(図示せず)、基板11上の第1配線電極14Aに電気的に接続されている。また、発光素子15は、半導体構造層の支持基板が接合された面の反対面(発光素子15の表面とも称する)にカソード電極(パッド15B)を備え、ボンディングワイヤを介して第2配線電極14Bに電気的に接続されている。
【0036】
発光素子15は、波長265~415nmの紫外光を発光する窒化アルミ系の発光素子であることが好適である。具体的には、発光中心波長が、265nm、275nm、355nm、365nm、385nm、405nm又は415nmの発光素子を用いた。
【0037】
窒化アルミ系の紫外線を放射する発光素子(UV-LED素子)を構成する半導体結晶のAl組成は高く、酸素(O2)や水分(H2O)によって酸化劣化され易い。なお、発光素子15の第1配線電極14Aへの接合にフラックス等の有機物を含む接合部材を用いた場合には、当該残留フラックス(有機物)による発光素子表面への炭化物堆積が起こる。
【0038】
半導体発光装置10内の封入ガスとしては、ドライな窒素ガス(又は不活性ガス)及びドライな酸素ガスを3~20%の範囲で含む混合ガスを用いることが好適である。封入ガスに若干のO2を混合することで炭化物堆積は防止でき、同時に、混合したOは発光素子15を劣化させる以前に不活性化されるので問題とならない。
【0039】
発光素子15は、前述したように支持基板に半導体構造層を接合したタイプ以外に、半導体構造層から放射される光を透光する成長基板上に半導体構造層を有するものを用いることもできる。
【0040】
例えば、成長基板が導電性の場合においては、成長基板の裏面(半導体構造層の反対の面)にカソード電極を備え(図示せず)、半導体構造層の上面にアノード電極(ボンディングワイヤ接続用のパッド電極)を備える。当該発光素子は、カソード電極を第1配線電極14A上に金属接合層15Aを介して接合され、パッド電極と第2配線電極14Bはボンディングワイヤ18Cを介して電気的に接続される。
【0041】
また、成長基板が絶縁性の場合においては、半導体構造層の上面側のp型半導体層上にアノード電極を備え、n型半導体層上にカソード電極を備える。当該発光素子は、アノード電極とカソード電極の各々を、第1配線電極14Aと第2配線電極14Bの各々に、金属接合層を介して接合されている。
【0042】
また、基板11上には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bに接続されたツェナーダイオード(ZD)である保護素子16が設けられ、発光素子15の静電破壊を防止する。
【0043】
基板金属層12は、第1配線電極14A、第2配線電極14B、発光素子15及び保護素子16とは電気的に絶縁され、これらを取り囲むように形成されている。
【0044】
図1Cに示すように、基板11の裏面には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bにそれぞれ接続された第1実装電極17A及び第2実装電極17B(以下、特に区別しない場合には、実装電極17と称する。)が設けられている。具体的には、第1配線電極14A及び第2配線電極14Bの各々は、金属ビア18A、18B(以下、特に区別しない場合には、金属ビア18と称する。)を介してそれぞれ第1実装電極17A及び第2実装電極17Bに接続されている。
【0045】
配線電極14、実装電極17は、例えば、タングステン/ニッケル/金(W/Ni/Au)、もしくは、銅/ニッケル/金(Cu/Ni/Au)である。また、金属ビア18は、タングステン(W)又は銅(Cu)である。
【0046】
図2Aを参照すると、半導体発光装置10は配線回路基板(図示しない)上に実装されるように構成され、第1実装電極17A及び第2実装電極17Bへの電圧印加によって、発光素子15は発光し、発光素子15の表面(光取り出し面)からの放射光LEは透光キャップ13を経て外部に放射される。
【0047】
[発光装置10の製造方法]
以下に、発光装置10の製造方法について、詳細かつ具体的に説明する。
【0048】
(素子接合工程)
まず、基板11の第1配線電極14A上に、素子接合のための揮発性ソルダーペーストはんだを塗布する。揮発性ソルダーペーストとしては、融点付近で揮発するフラックスと金錫合金(AuSn)の微粒子からなる揮発性ソルダーペーストはんだを用いた。金錫合金の組成は、溶融温度が約280℃のAu-Sn:20wt%のものを用いた。粒子サイズは、数nm~数十μmである。フラックスは、例えば、発光素子15の光(365nm)で炭化するロジン類、アルコール類、糖類、エステル類、脂肪酸類、油脂類、重合油類、界面活性剤、有機酸、などである。
【0049】
次に、発光素子15をAuSnペースト上に載せて、基板を300℃まで加熱して、AuSnを溶融・固化して第1配線電極14A上に発光素子15を接合した。発光素子15は溶融したAuSn合金によりセルフアライメントされつつ接合された。なお、保護素子16を搭載する場合には同時に行う。このとき、AuSnペーストに含まれるフラックスは殆ど揮発する。
【0050】
次に、発光素子15の上部電極のボンディングパッド15Bと第2配線電極14Bとの間をボンディングワイヤ18C(Auワイヤ)によって電気的に接続する。
(透光キャップ13と基板11との接合)
図3は、基板金属層12とキャップ金属層21との接合部24を模式的に示す図である。具体的には、図3の下側には接合部24の断面図を示し、当該断面図に示すA-A線に平行な面における断面図(上面視)を上側に示している。
【0051】
基板金属層12の延在方向(x方向)の中心線CXに沿って接合層22が形成されている。また、基板金属層12に中心線CXに沿って一定周期DP(図5)でディンプル(窪み)12Dが形成されている。本実施形態において、ディンプル12Dは半球状の窪みとして形成されている。
【0052】
図4は、透光キャップ13と基板11との接合工程を模式的に示す断面図である。図4を参照して基板11の基板金属層12と透光キャップ13のキャップ金属層21との接合工程について以下に詳細に説明する。
【0053】
(STEP1)
まず、基板11と、透光キャップ13とをキャップ接合装置にセットする。次に、基板11及び透光キャップ13の雰囲気を真空状態にし、温度275℃で15分間、加熱処理(アニール処理)した。
【0054】
続いて、基板11及び透光キャップ13の雰囲気をドライ窒素(N)ガス、1気圧(101.3kPa)で満たした。次に、図4に示す工程1(STEP1)の断面図に示すように、ノズルNZ1から溶融したAuSn融液22Dを基板金属層12上に打ち付けて接合材(AuSn)のバンプ22Bを形成した。
【0055】
AuSnバンプ22Bは、基板金属層12の延在方向の中心線CXに沿って、互いに隣接するディンプル12Dの中間に位置するように一定周期で形成されるのが好ましい。また、AuSnバンプ22Bは、同一サイズ及び同一形状を有することが好ましい。
【0056】
また、同様に、AuSnバンプ22Bは、基板金属層12の他の延在方向(y方向)の中心線CYに沿って一定周期で形成された。すなわち、矩形環形状の基板金属層12の延在方向に沿って基板金属層12の延在方向の全体に亘って形成された。
【0057】
AuSnバンプ22Bは、球形状又は半球形状を有して形成されることが好ましい。例えば、非特許文献1に記載のように、溶融したはんだボールをキャピラリから射出し、半球状のはんだバンプを基板上に形成することができる。
【0058】
(STEP2)
次に、透光キャップ13のキャップ金属層21をAuSnバンプ22B上から載置し、AuSnバンプ22Bを溶融させつつ透光キャップ13を押圧した。これにより、AuSnバンプ22Bが基板金属層12及びキャップ金属層21間で拡がり、隣接するAuSnバンプ22Bが合体した。ディンプル12D内には溶融によってAuSnが流入した。
【0059】
(STEP3)
透光キャップ13を十分に押圧した後、室温まで冷却した。これにより、基板金属層12及びキャップ金属層21間に接合層22が形成された。
【0060】
(応力の低減)
図5は、AuSnバンプ22B(中心C)が加熱溶融時に拡がり、合体する様子を模式的に示す平面図である。AuSnバンプ22Bが基板金属層12の延在方向の中心線CXに沿って一定周期で形成されている。
【0061】
半球状のAuSnバンプ22Bは、加熱溶融時に同心円状(図中、破線及び一点鎖線)に濡れ拡がりつつ(図中、破線矢印)、隣接するバンプ22B同士が互いに合体して気密接合である接合層22が形成される。
【0062】
この際、隣接するバンプ22Bが合体する合体境界線は、ディンプル12Dを境に、中心線CXと直交する方向RSに直線状に形成され、同時に合体境界線に生じる応力は中心線CXと直交する方向RSに放散される。本発明においては、合体境界線の略中央にディンプル12を配置しているので、隣接するバンプ22Bの溶融したAuSnがディンプル12Dに流入して混合する。これにより、合体境界線はディンプル12Dの部分で消失または乱れるので上下に2分割される。
【0063】
また、溶融したAuSnがディンプル12D内で固化する際に生じる残留応力は、ディンプル12Dによって放射状に分散される。
【0064】
従って、本実施形態によれば、接合材(AuSn)の合体部に生じる応力を放散でき、またディンプル12D内においては分散されるので、接合信頼性が向上する。
例えば、部発光装置10を配線回路基板(図示せず)に実装する際の半田付けによるヒートショック、また発光装置10の利用時における温度変化(通電のON/OFF、環境温度)による応力が接合層22に働き、合体境界線にクラックが生じても、ディンプル12Dによってクラックの成長を防止できる。
【0065】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態によるAuSnバンプ22Bの配列を模式的に示す平面図である。第2の実施形態においても、基板金属層12の延在方向(x方向及びy方向)に一定周期でディンプル12Dが形成されている点では第1の実施形態と同様である。
【0066】
図6を参照して説明すると、第2の実施形態における接合層22の形成においては、AuSnバンプ22Bは、基板金属層12の延在方向の両側、すなわち基板金属層12の延在方向の中心線CXに垂直な方向(この場合、y方向)にそれぞれd1及びd2だけ隔たった中心線B1及びB2上の2列のバンプ列として配列される。
【0067】
より詳細には、AuSnバンプ22Bを配列するステップ(STEP1)において、ディンプル12Dが配列された線を中心線(この場合、CX)として、中心線CXに沿って中心線CXの両側に交互にAuSnバンプ22B1及び22B2(それぞれ中心C1,C2)を一定角度(例えば、45°)で千鳥状に配列した2列のバンプ列として配列される。
【0068】
なお、図6に示す場合では、AuSnバンプ22B1及び22B2は同一の大きさであり、線B1及びB2は同一間隔d(=d1=d2)である。すなわち、半球状のAuSnバンプ22B1及び22B2は、加熱溶融時に同心円状に拡がりつつ(図中、破線矢印)、隣接するバンプ22B同士が互いに合体して気密接合である接合層22が形成される。
【0069】
なお、AuSnバンプ22B1及び22B2の大きさ及び配列位置は、溶融時にAuSnバンプ22B1及び22B2のAuSnが拡がり、AuSnバンプの合体部がディンプル12Dに合致するようにAuSnバンプ22B1及び22B2の大きさ及び配列が決められていれば良い。
【0070】
第2の実施形態においても、バンプ22Bの合体部において応力はディンプル12Dによって分散される。また、合体部に生じた応力は半球状のディンプル12D内において放射状に分散される。なお、ディンプル12Dは半球状に限らず半長球状又は半楕円体状であってもよい。本明細書においては、半球状の用語は、半長球状又は半楕円体状を含む。
【0071】
また、第2の実施形態によれば、基板金属層12の延在方向(x方向)に対して傾斜(θ=45°)した方向RSに応力が放散される(図中、矢印)。また、基板金属層12の延在方向(x方向)は、発熱時、主に熱膨張する方向であるので、バンプ22Bの合体部(方向RSに傾斜した合体境界線)に働く引っ張り応力(x方向)が傾斜分だけ分散されて小さくなりクラックの発生および成長を抑制できる。なお、AuSnバンプ22B1及び22B2の基板金属層12の延在方向に対する配列角θは45°に限定されないが、応力の分散及び応力成分が相殺される点で30°≦θ<60°であることが好ましい。
【0072】
第2の実施形態においては、千鳥状にAuSnバンプ22B1及び22B2を配列することにより、接合時の溶融によって濡れ拡がる接合材(AuSn)の幅を狭くすることができ、接合材がパッケージの内側及び外側に漏れることを防止できる。
【0073】
さらに、第2の実施形態においては、環状の基板金属層12には、その両端部の辺に沿って複数のディンプル12E(追加のディンプル)が配列されている。ディンプル12Eは、AuSnバンプ22B1及び22B2の各配置位置に対応した位置に少なくとも1つずつ設けられている。溶融によって拡がる接合材がディンプル12Eによってトラップされるので、接合材がパッケージの内側及び外側に漏れることを防止できる。
【0074】
従って、第2の実施形態においても、接合材(AuSn)の合体部に生じる応力を放散でき、またディンプル12D内においては分散されるので、接合信頼性が向上する。
【0075】
[第3の実施形態]
図7Aは、本発明の第3の実施形態によるAuSnバンプ22Bの配列を模式的に示す平面図である。第3の実施形態においては、基板金属層12の延在方向(x方向及びy方向)に一定周期DPでディンプル群12Dが形成されている。ディンプル群12Dは、ディンプル12D1,12D2A及び12D2B(以下、特に区別しない場合には12D2と称する)、及び12D3を有している。
【0076】
ディンプル群12Dのディンプル12D1,12D2及び12D3は、中心線GC上に一列に配列されている。第3の実施形態においては、ディンプル12D1,12D2A及び12D3からなるディンプル群12Dの中心線GCは基板金属層12の延在方向(x方向)に対して傾斜角θ=θ(以下、θ)だけ傾斜している。また、ディンプル12D1,12D2B及び12D3からなるディンプル群12Dについても同様である。
【0077】
第3の実施形態において、ディンプル群12Dの中心線GCの、基板金属層12の中心線CXに対する傾斜角θは60°である。ディンプル群12Dは稠密に配された正三角形TRの一辺であるように配されている。すなわち、ディンプル群12Dは基板金属層12の延在方向(x方向)に傾斜角θ(=60°又は-60°)及び一定間隔DPで配されており、ディンプル群12Dの長さ(ディンプル12D1の中心からディンプル12D3の中心までの距離)は正三角形TRの一辺の長さに等しい。なお、ディンプル12D2の一方,すなわちディンプル12D2A又は12D2Bの一方が設けられていなくともよい。
【0078】
より詳細には、接合層22の形成において、AuSnバンプ22Bは、基板金属層12の中心線CXの両側に間隔dだけ隔たった中心線B1及びB2上に2列のバンプ列として配列される。
【0079】
より詳細には、AuSnバンプ22Bを配列するステップ(STEP1)において、中心線CXの両側に交互にAuSnバンプ22B1及び22B2(それぞれ中心C1,C2)を60度の角度で千鳥状に配列した2列のバンプ列として配列される。
【0080】
換言すれば、AuSnバンプ22B1及び22B2は、その中心C1,C2が正三角形の頂点に位置するように配列されている。AuSnバンプ22B1及び22B2は同一の大きさであり、隣接するAuSnバンプ22B1及び22B2の合体部はディンプル12D1,12D2及び12D3に合致する。
【0081】
この配置によって、接合材(AuSn)の加熱溶融時に、半球状のAuSnバンプ22Bは同心円状(図中、破線及び一点鎖線)に濡れ拡がりつつ(図中、破線矢印)、隣接するバンプ22B同士が互いに合体して気密接合である接合層22が形成される。
【0082】
そして、AuSnバンプ22B1及び22B2の合体部において応力は放散される。また、ディンプル12D内に生じた応力は半球状のディンプル12D内において放射状に分散される。
【0083】
また、本実施形態の場合、基板金属層12の延在方向に対して傾斜した一直線上の合体部、すなわちディンプル12D1,12D2及び12D3の3箇所が同時に破断しない限りリークは発生しないので、リーク耐性が向上する。
【0084】
さらに、図7Bに模式的に示すように、AuSnバンプ22B1及び22B2が合体しない部分には、接合材(AuSn)の無い部分(キャビティ)12Cが残る。キャビティ12Cによって接合部(接合境界線)が分断され、応力の伝播が分断される。従って、破断し難くリーク耐性が向上する。
【0085】
従って、第2の実施形態においても、接合材(AuSn)の合体部に生じる応力が分散され、低減できるので、接合信頼性が向上する。また、基板金属層12の延在方向に対して傾斜した一直線上に形成された接合材の合体部の3箇所が同時に破断しない限りリークは発生しないので、高いリーク耐性の封止構造が得られる。
【0086】
[第1~第3の実施形態の改変例]
図8は、本発明の第1の実施形態の改変例によるAuSnバンプ22Bの配列を模式的に示す平面図である。上記した第1~第3の実施形態においては、ディンプル12Dが基板金属層12に設けられた場合について説明したが、ディンプル21Dが、キャップ金属層21に設けられていてもよい。
【0087】
図8は、図4を参照して説明した第1の実施形態の改変例の接合工程を示す図であり、ディンプル21Dはキャップ金属層21に設けられている。
【0088】
まず、STEP1において、AuSnバンプ22Bは、基板金属層12の延在方向の中心線CXに沿って、一定周期で配列されて形成される。当該周期は、キャップ金属層21に配列されて設けられたディンプル21Dの周期と同一である。
【0089】
次に、STEP2において、透光キャップ13のキャップ金属層21をAuSnバンプ22B上から載置する。この際、キャップ金属層21の各ディンプル21Dが隣接するAuSnバンプ22Bの中間に位置するように載置する。
【0090】
AuSnバンプ22Bを溶融させつつ透光キャップ13を押圧した。これにより、AuSnバンプ22Bが基板金属層12及びキャップ金属層21間で拡がり、隣接するAuSnバンプ22Bが合体した。ディンプル21D内には溶融によって隣接するAuSnバンプ22BのAuSnが流入した。
【0091】
次に、STEP3において、透光キャップ13を十分に押圧した後、室温まで冷却し、基板金属層12及びキャップ金属層21間に接合層22が形成された。
【0092】
以上、第1の実施形態の改変例について説明したが、第2及び第3の実施形態において、ディンプル21D又はディンプル群21Dをキャップ金属層21に設けてもよい。これらの改変例においても第1~第3の実施形態と同様な効果が得られる。
【0093】
以上、本発明の半導体発光装置及びその製造方法について詳細に説明した。なお、上記した実施形態においては、矩形枠形状の基板及び矩形状の平板ガラスの透光キャップからなる半導体発光装置について説明したがこれに限定されない。
【0094】
例えば、基板の接合部は、多角形環形状、円環形状、長円形状などであっても良く、透光キャップの形状は、多角板形状、円板形状、長円板形状、あるいは半球形状などであっても良い。従って、基板金属層及びキャップ金属層の形状は矩形環形状に限らず、多角形環形状、円環形状、長円形状などであっても良い。
【0095】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の半導体発光装置及びその製造方法によれば、長期の使用においても高い気密性が維持される高い信頼性、及び、耐湿性、耐腐食性など高い耐環境性を有する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。さらに、接合部のクラック発生及び成長が抑制され、また、接合層の内部の劣化を防止することができる、信頼性の高い気密接合を有する半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0096】
10:半導体発光装置、11:基板、11A:枠、11S:基板接合面、11T:枠頂面、12:基板金属層、12C:キャビティ、12D:ディンプル(群)、12D1~12D3:ディンプル、12E:追加のディンプル、13:透光キャップ、13A:窓部、13B:キャップ接合部、13S:キャップ接合面、14,14A,14B:配線電極、15:半導体発光素子、21:キャップ金属層、21D:ディンプル(群)、22:接合層、22B,22B1,22B2:接合材バンプ、24:接合部、C,C1,C2:バンプ中心、CX,CY:延在方向の中心線、DP:ディンプル(群)の間隔
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8