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特許7554697親水性塗料、アルミニウム材、アルミニウムフィン材及び熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】親水性塗料、アルミニウム材、アルミニウムフィン材及び熱交換器
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/08 20060101AFI20240912BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240912BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240912BHJP
   F28F 13/18 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09D201/08
C09D133/06
C09D5/02
C09D7/65
C09D7/61
F28F13/18 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021050512
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148721
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 佑也
(72)【発明者】
【氏名】小山 絵梨奈
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 伸一
(72)【発明者】
【氏名】碓井 直人
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-002274(JP,A)
【文献】特開昭61-145263(JP,A)
【文献】特開2001-164175(JP,A)
【文献】特開2018-023932(JP,A)
【文献】特開2019-190725(JP,A)
【文献】特開2014-000534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
F28F 11/00 - 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)と、水とを含有し、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)であり、
前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、
前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と前記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、前記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)が0.2以上2.5以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)に対する、前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)の比(AM/BM)が0.10以上4.0以下の範囲内であり、
前記無機金属化合物粒子は、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記有機樹脂粒子は、ポリアクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子、並びにポリメタクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子から選ばれる1種又は2種以上である、アルミニウム材用親水性塗料。
【請求項2】
無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有する親水性塗膜を表面に有し、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)であり、
前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、
前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と前記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、前記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)が0.2以上2.5以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)に対する、前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)の比(AM/BM)が0.10以上4.0以下の範囲内であり、
前記無機金属化合物粒子は、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記有機樹脂粒子は、ポリアクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子、並びにポリメタクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子から選ばれる1種又は2種以上である、アルミニウム材。
【請求項3】
前記親水性塗膜の上に潤滑油及び/又は潤滑皮膜を有する、請求項2に記載のアルミニウム材。
【請求項4】
無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有する親水性塗膜を表面に有し、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)であり、
前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、
前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と前記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、前記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)が0.2以上2.5以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)に対する、前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)の比(AM/BM)が0.10以上4.0以下の範囲内であり、
前記無機金属化合物粒子は、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記有機樹脂粒子は、ポリアクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子、並びにポリメタクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子から選ばれる1種又は2種以上である、アルミニウムフィン材。
【請求項5】
前記親水性塗膜の上に潤滑油及び/又は潤滑皮膜を有する、請求項4に記載のアルミニウムフィン材。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のアルミニウムフィン材を備える熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材からフィン材に成形加工する際に有用な親水性塗料、該親水性塗料によって表面に形成された親水性塗膜を有するアルミニウム材、該アルミニウム材を成形加工したフィン材、及び該フィン材を備える熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムやその合金は軽量でかつ優れた加工性と熱伝導性を有することから、エアコンディショナーの熱交換器用フィン材として広く利用されている。しかし、アルミニウムやその合金の表面の親水性は十分ではなく、エアコンディショナーの運転時にエバポレータのフィン表面に空気中の水分が結露水として付着することがある。この結露水がフィン表面に滞留し、隣接するフィン間にブリッジを形成すると、送風時の抵抗(通風抵抗)が増大し、冷房および暖房能力の低下や室内への水飛びなどの原因となる。
【0003】
これらの問題を回避するため、フィン表面に珪酸塩を中心とした無機系親水性皮膜を形成すること(特許文献1参照)や、親水性を阻害しない樹脂を用いた樹脂系親水性皮膜を形成すること(特許文献2参照)など、水濡れ性に優れた親水性の表面処理を施すことが実施されている。また、フィン表面に親水性樹脂層を2層設け、表面側の第2親水性樹脂層にTiO2微粒子を分散させたアルミニウムフィン材(特許文献3参照)が知られ、また、基板上に設けた親水層の上に無機酸化物微粒子と樹脂系潤滑層を備えたアルミニウムフィン材(特許文献4参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平3-77440号公報
【文献】特開平9-14888号公報
【文献】特開2012-215347号公報
【文献】特開2010-223520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来技術の表面処理方法では、初期の親水性は良好であっても、長期間の運転に耐えつつ良好な親水性を維持できる表面とすることができなかった。また、近年の熱交換器においては、APF「通年エネルギー消費効率」の向上、暖房機の市場ニーズ高などから、従来にも増して水濡れ性の良い親水性に優れたフィン材が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、アルミニウム材に対し、長期にわたって親水性を維持することが可能な塗膜を形成することができる親水性塗料、該親水性塗料を塗布させることによって表面に形成された親水性塗膜を有するアルミニウム材又はアルミニウムフィン材、及び該アルミニウムフィン材を備える熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水に、特定の無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、特定の水溶性樹脂又はその塩(C)とを所定量配合することにより製造可能な親水性塗料が、アルミニウム材に対し、長期にわたって親水性を維持することが可能な塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1]無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)と、水とを含有し、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)であり、
前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、
前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と前記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、前記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)が0.2以上2.5以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)に対する、前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)の比(AM/BM)が0.10以上4.0以下の範囲内であり、
前記無機金属化合物粒子は、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記有機樹脂粒子は、ポリアクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子、並びにポリメタクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子から選ばれる1種又は2種以上である、アルミニウム材用親水性塗料;
[2]無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有する親水性塗膜を表面に有し、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)であり、
前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、
前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と前記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、前記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)が0.2以上2.5以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)に対する、前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)の比(AM/BM)が0.10以上4.0以下の範囲内であり、
前記無機金属化合物粒子は、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記有機樹脂粒子は、ポリアクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子、並びにポリメタクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子から選ばれる1種又は2種以上である、アルミニウム材;
[3]前記親水性塗膜の上に潤滑油及び/又は潤滑皮膜を有する、上記[2]に記載のアルミニウム材;
[4]無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、水溶性樹脂又はその塩(C)とを含有する親水性塗膜を表面に有し、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)であり、
前記水溶性樹脂は、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である単重合体又は共重合体であり、
前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と前記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、前記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)が0.2以上2.5以下の範囲内であり、
前記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)に対する、前記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)の比(AM/BM)が0.10以上4.0以下の範囲内であり、
前記無機金属化合物粒子は、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄、酸化マンガン及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種又は2種以上であり、
前記有機樹脂粒子は、ポリアクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子、並びにポリメタクリル酸、そのエステル及びその塩並びにそれらの架橋物の粒子から選ばれる1種又は2種以上である、アルミニウムフィン材;
[5]前記親水性塗膜の上に潤滑油及び/又は潤滑皮膜を有する、上記[4]に記載のアルミニウムフィン材;
[6]上記[4]又は[5]に記載のアルミニウムフィン材を備える熱交換器;
などである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、アルミニウム材に対し、長期にわたって親水性を維持することが可能な塗膜を形成することができる親水性塗料、該親水性塗料を塗布させることによって表面に形成された親水性塗膜を有するアルミニウム材又はアルミニウムフィン材、及び該アルミニウムフィン材を備える熱交換器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪アルミニウム材用親水性塗料≫
本発明に係るアルミニウム材用親水性塗料は、水に、特定の無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と、アルカリ金属珪酸塩(B)と、特定の水溶性樹脂又はその塩(C)とを所定量配合することにより製造することができる。このように製造したアルミニウム材用親水性塗料を用いることにより、アルミニウム材の表面に、長期にわたって親水性を維持することが可能な塗膜を形成することができる。
【0011】
<無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)>
無機金属化合物粒子としては、例えば、炭酸セリウム、炭酸銅、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン、炭酸コバルト、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化鉄(酸化第二鉄)、酸化マンガン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。有機樹脂粒子としては、25℃の水において粒子として存在する有機樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば、ポリアクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子、ポリメタクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子等が挙げられる。ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のエステルとしては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において、有機樹脂粒子(A)には20℃の水100gに対して0.1g以上溶解できるものは含まれない。このため有機樹脂粒子(A)は後述する水溶性樹脂又はその塩(C)とは異なる。
【0012】
<アルカリ金属珪酸塩(B)>
アルカリ金属珪酸塩(B)としては、公知のものであって、アルカリ金属酸化物(M2O)に対するシリカ(SiO2)のモル比(n)が1.9以上8.0以下の範囲内で示されるものであれば特に制限されるものではない。すなわち、アルカリ金属珪酸塩(B)は、M2O・nSiO2(nは1.9以上8.0以下の範囲内であり、Mはアルカリ金属を表す。)で表すことができる。アルカリ金属(M)としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。アルカリ金属珪酸塩(B)は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
<水溶性樹脂又はその塩(C)>
水溶性樹脂としては、-[C-C(COOH)]-の構造を有し、酸価が700mgKOH/g以上である水溶性の単重合体又は共重合体であれば特に制限されるものではない。共重合体としては、2種以上の繰り返し構造を有するものであれば特に制限されるものではなく、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。なお、本明細書において、水溶性樹脂又はその塩(C)の「水溶性」とは、20℃の水100gに対して0.1g以上溶解できることを意味する。
【0014】
水溶性樹脂又はその塩(C)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等の単量体から構成される重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;該単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;アクリル酸と、メタクリル酸と、スルホエチルアクリレート、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体との共重合体又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩;スチレン-マレイン酸共重合体又はその塩等を挙げることができる。上記(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、シトラコン酸等の単量体と、該単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体としては、例えば、該単量体と、該スルホン酸基含有単量体との共重合体;アクリル酸とメタクリル酸との共重合体等の、該単量体のうち2種の単量体から構成される共重合体;等が挙げられる。なお、アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。上記水溶性樹脂の酸価の上限は特に制限されるものではないが、3000mgKOH/g以下が好ましく、2000mgKOH/g以下がより好ましく、1100mgKOH/g以下がさらに好ましい。水溶性樹脂又はその塩(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本実施形態において、アルミニウム材用親水性塗料に含ませる、特定の無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)とアルカリ金属珪酸塩(B)と特定の水溶性樹脂又はその塩(C)との好ましい組み合わせとしては、例えば、炭酸セリウムとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸セリウムとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸セリウムとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸銅とリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸銅とカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸銅とナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸亜鉛とリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸亜鉛とカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸亜鉛とナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸ニッケルとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸ニッケルとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸ニッケルとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸マンガンとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸マンガンとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸マンガンとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸コバルトとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸コバルトとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、炭酸コバルトとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化カルシウムとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化カルシウムとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化カルシウムとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化スズとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化スズとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化スズとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化鉄(酸化第二鉄)とリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化鉄(酸化第二鉄)とカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化鉄(酸化第二鉄)とナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ等が挙げられる。
【0016】
その他、酸化マンガンとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化マンガンとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、酸化マンガンとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、水酸化アルミニウムとリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、水酸化アルミニウムとカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、水酸化アルミニウムとナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、ポリアクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子とリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、ポリアクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子とカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、ポリアクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子とナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、ポリメタクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子とリチウム珪酸塩(Li2O・nSiO2;n=3~8)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、ポリメタクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子とカリウム珪酸塩(K2O・nSiO2;n=1.9~3.7)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ、ポリメタクリル酸、そのエステル若しくはその塩又はそれらの架橋物の粒子とナトリウム珪酸塩(Na2O・nSiO2;n=2.8~3.3)と上記水溶性樹脂及びその塩のいずれかとの組み合わせ等が挙げられる。
【0017】
<その他成分>
本実施形態において、アルミニウム材用親水性塗料は、水以外に、無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)、アルカリ金属珪酸塩(B)及び水溶性樹脂又はその塩(C)のみからなるものであってもよいが、さらに、他の成分を含むものであってもよい。他の成分としては、例えば、架橋成分、界面活性剤、分散剤、水混和性有機溶媒等が挙げられる。
【0018】
架橋成分としては、例えば、水溶性樹脂又はその塩(C)以外のものであって、水溶性樹脂又はその塩(C)を連結するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、カルボキシル基含有化合物、水溶性金属化合物等が挙げられる。カルボキシル基含有化合物としては、例えば、クエン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、酒石酸、リンゴ酸、イソフタル酸、アジピン酸、ピロメリット酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、1,2,4-トリメリット酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等が挙げられる。水溶性金属化合物の水溶性とは、25℃の水1Lに1gが溶解できることを意味する。水溶性金属化合物としては、水溶性であれば特に制限されるものではなく、例えば、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)チタン等の有機チタン化合物;硫酸クロム(III)、硝酸クロム(III)等のクロム含有化合物;ヘキサフルオロジルコニウム酸等の無機系ジルコニウム含有化合物;ヘキサフルオロチタン酸等の無機系チタン含有化合物等が挙げられる。なお、有機チタン化合物とは、有機基を有するチタン含有化合物を意味する。これらの架橋成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
界面活性剤としては、カチオン性、アニオン性、両性、ノニオン性等の界面活性剤を用いることができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、ステアリルアミンアセテート、ステアリルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン、アミンオキサイド等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル類等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルジメチルベタイン等が挙げられる。その他、イミダゾリン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤等も挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル;オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー;ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸;ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸アンモニウム、第4級カチオンポリマー等が挙げられ、これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
水混和性有機溶媒としては、水と混和するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの水混和性有機溶媒は1種を水と混合させてもよいし、2種以上を水と混合させてもよい。なお、アルミニウム材用親水性塗料に配合させる水混和性有機溶媒の割合は、水と水混和性有機溶媒の総質量に対して50質量%以下であれば特に制限されるものではなく、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、0質量%であってもよい。
【0022】
<各成分の配合割合>
本実施形態において、上記アルミニウム材用親水性塗料における上記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)と上記アルカリ金属珪酸塩(B)との総質量(TM)に対する、上記水溶性樹脂又はその塩(C)の質量(CM)の比(CM/TM)は、0.2以上2.5以下の範囲内であり、好ましくは0.2以上2.3以下の範囲内であり、より好ましくは0.2以上2.2以下の範囲内である。なお、水溶性樹脂又はその塩を2種以上組み合わせて使用する場合は、質量(CM)は総質量を意味する。また、本実施形態において、上記アルミニウム材用親水性塗料における上記無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)の質量(AM)と、上記アルカリ金属珪酸塩(B)のSiO2換算質量(BM)との比(AM/BM)は、0.10以上4.0以下の範囲内であり、好ましくは0.10以上3.8以下の範囲内であり、より好ましくは0.10以上3.6以下の範囲内である。
【0023】
≪親水性塗膜を有するアルミニウム材又はアルミニウムフィン材≫
親水性塗膜を表面に有するアルミニウム材又はアルミニウムフィン材は、アルミニウム材又はアルミニウムフィン材の表面に上記アルミニウム材用親水性塗料を塗布させた後、乾燥させることにより製造することができる。なお、上記親水性塗膜は、アルミニウム材又はアルミニウムフィン材に塗布させたアルミニウム材用親水性塗料中の水や水混和性有機溶媒を乾燥することにより得られるので、親水性塗膜における、無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)、アルカリ金属珪酸塩(B)並びに水溶性樹脂又はその塩(C)の割合は、アルミニウム材用親水性塗料における、無機金属化合物粒子又は有機樹脂粒子(A)、アルカリ金属珪酸塩(B)並びに水溶性樹脂又はその塩(C)の配合割合と同じになる。このようにして製造した、親水性塗膜を表面に有するアルミニウム材は、アルミニウムフィン材を形成するのに有用である。また、親水性塗膜を表面に有するアルミニウムフィン材は、熱交換器の部品として有用である。
【0024】
<アルミニウム材又はアルミニウムフィン材の金属成分>
アルミニウム材又はアルミニウムフィン材を構成する金属成分は、純アルミニウムであってもよいが、アルミニウム合金であってもよい。
【0025】
<塗布工程>
上記アルミニウム材用親水性塗料の塗布方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、ロールコート法、スプレー法、及び浸漬法等が挙げられる。塗布温度は、通常、10℃以上60℃以下の範囲内であり、塗布時間は0.01秒以上600秒以下の範囲内であるが、これらに制限されるものではない。
【0026】
<乾燥工程>
上記アルミニウム材用親水性塗料の乾燥方法としては、アルミニウム材用親水性塗料中の水や水混和性有機溶媒が蒸発すれば特に制限されず、公知の乾燥機器、例えば、オーブン、バッチ式の乾燥炉、連続式の熱風循環式乾燥炉、コンベアー式の熱風乾燥炉、IHヒーターを用いた電磁誘導加熱炉等を用いた乾燥方法等が挙げられる。乾燥温度は、特に制限されるものではないが、通常、80℃以上270℃以下の範囲内であり、好ましくは100℃以上270℃以下の範囲内である。乾燥時間も特に制限されるものではないが、通常、5秒以上120分以下の範囲内である。
【0027】
<親水性塗膜の質量>
本実施形態において、親水性塗膜を有するアルミニウム材又はアルミニウムフィン材における親水性塗膜の質量は、本発明の効果を発揮できる量であれば特に制限されるものではないが、1m2当たり0.15g以上1.0g以下の範囲内であることが好ましく、0.25g以上0.7g以下の範囲内であることがより好ましく、0.3g以上0.5g以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0028】
<他の処理工程>
なお、本実施形態において、アルミニウム材又はアルミニウムフィン材の表面に上記アルミニウム材用親水性塗料を塗布させる前に前処理工程を行ってもよいし、上記乾燥工程の後に後処理工程を行ってもよい。
【0029】
<前処理工程>
前処理工程としては、例えば、清浄化処理工程、防錆処理工程等が挙げられる。これらは、1つの処理工程を単独でおこなってもよく、2つの処理工程を順におこなってもよい。清浄化処理工程としては、例えば、アルカリ性又は酸性の洗浄剤によって、表面の汚れを取り除く処理工程が挙げられる。また、防錆処理工程としては、例えば、公知のクロメ-卜処理工程、りん酸亜鉛処理工程、チタン系化成処理工程、ジルコニウム系化成処理工程、有機皮膜等の耐食皮膜形成工程等が挙げられる。
【0030】
<後処理工程>
後処理工程としては、潤滑油塗布工程又は潤滑皮膜形成工程が挙げられる。より具体的には、アルミニウム材又はアルミニウムフィン材の表面に有する親水性塗膜の上に、潤滑油を塗布させたり、潤滑剤を塗布させて潤滑皮膜を形成させたりする工程が挙げられる。このように、上記親水性塗膜の上に、潤滑油を塗布させた、又は潤滑皮膜を形成させた、複層皮膜を有するアルミニウム材又はアルミニウムフィン材を得ることができる。このようにして得られた、複層皮膜を有するアルミニウム材は、成形加工してアルミニウムフィン材を形成するのに有用である。また、複層皮膜を有するアルミニウムフィン材は、熱交換器の部品として有用である。なお、潤滑油や潤滑剤の塗布方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、ロールコート法、スプレー法、及び浸漬法等が挙げられる。
【0031】
潤滑油としては、成形加工時に使用される公知のものを用いることができる。また、潤滑皮膜を形成するための潤滑剤としては、例えば、水溶性ポリエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン・アルキル・エーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテルなどの公知の潤滑剤を用いることができる。
【実施例
【0032】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<サンプルの作製>
JIS H4000:2014に規定される合金番号1050系の工業用純アルミニウムからなるフィン用アルミニウム材(縦300mm、横200mm、厚さ0.1mm)に対し、アルカリ脱脂処理剤(商品名:ファインクリーナーFC-4477:日本パーカライジング株式会社製)の2%水溶液を、50℃で5秒間スプレーすることにより脱脂を行い、水道水で水洗した。次いで、リン酸クロメート処理剤(商品名:アルクロム-K702:日本パーカライジング株式会社製)の4%水溶液を、50℃で5秒間スプレーした後、水洗して80℃で1分間乾燥し、クロム付着量として20mg/m2のリン酸クロメート皮膜を形成した。このリン酸クロメート皮膜を形成させたフィン用アルミニウム材に対し、比(CM/TM)と比(AM/BM)が以下の表1に示す値となるように各成分を水に配合して調製したアルミニウム材用親水性塗料をバーコート法(#3バー)にて塗布し、220℃で30秒間乾燥することにより、親水性塗膜を表面に有するフィン用アルミニウム材を得た。なお、アルミニウム材用親水性塗料の固形分質量濃度を7%として調製した。親水性塗膜の形成前後の質量を測定したところ、何れのサンプルについても1m2当たりの親水性塗膜の質量は0.5gであった。
【0033】
次に、表1中で「潤滑皮膜」が「有」とされている実施例及び比較例については、親水性塗膜を形成させたフィン用アルミニウム材に対し、ポリエチレングリコール(重量平均分子量20,000)の5%水溶液をバーコート法(#2バー)にて25℃で塗布し、120℃で30秒間乾燥することにより潤滑皮膜を形成し、複層皮膜を有するアルミニウム材(実施例1~18及び比較例1~10のサンプル)を得た。潤滑皮膜の形成前後の質量を測定したところ、何れのサンプルについても1m2当たりの潤滑皮膜の質量は0.15gであった。なお、表1の各欄に示す各記号は、表2に示す物質を意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
実施例1~18及び比較例1~10のサンプルを用いて、加工前後の親水持続性評価、加工性評価、並びに耐食性評価を行った。
【0037】
<親水持続性評価>
各サンプル上に1μLの脱イオン水を滴下し、滴下してから10秒後に形成された水滴の接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製:自動接触角計DM300型)により測定した。サンプルの作製後に25℃まで冷却したサンプルの接触角を初期親水性とした。各サンプルに対し、水道水の流水に8時間浸漬し、その後、各サンプルを80℃で16時間乾燥させるというサイクルを1サイクルとして、このサイクルを5サイクル付加後の接触角を乾湿サイクル後親水性とした。
得られた接触角は以下に示す評価基準に従って評価を行い、4点以上を合格とした。その結果を表3に示す。
(親水性の評価基準)
5点:水対接触角5°未満
4点:水対接触角5°以上,10°未満
3点:水対接触角10°以上,20°未満
2点:水対接触角20°以上,30°未満
1点:水対接触角30°以上
【0038】
<加工後の親水持続性評価>
エリクセン試験機を用いて、各サンプルの親水性塗膜側が凸部となるように20mmの押し出し加工を施した。凸部の中心と円周を直線で結んだ中点に1μLの脱イオン水を滴下し、滴下してから10秒後に形成された水滴の接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製:自動接触角計DM300型)により測定し、加工後の初期親水性を評価した。各サンプルに対し、水道水の流水に8時間浸漬し、その後、各サンプルを80℃で16時間乾燥させるというサイクルを1サイクルとして、このサイクルを5サイクル付加後の接触角を乾湿サイクル後親水性とした。
得られた接触角は以下に示す評価基準に従って評価を行い、4点以上を合格とした。その結果を表3に示す。
(加工後の親水性の評価基準)
5点:水対接触角5°未満
4点:水対接触角5°以上,10°未満
3点:水対接触角10°以上,20°未満
2点:水対接触角20°以上,30°未満
1点:水対接触角30°以上
【0039】
<加工性評価>
サンプルに対し、摺動速度4mm/s、荷重200g、摺動距離10mmで動摩擦係数をバウデン式動摩擦係数試験(協和界面科学株式会社製:バウデン式動摩擦試験機TS501型)により測定し、以下に示す評価基準に従って評価を行い、2点以上を合格とした。その結果を表3に示す。
(加工性の評価基準)
4点:動摩擦係数0.05未満
3点:動摩擦係数0.05以上,0.1未満
2点:動摩擦係数0.1以上,0.2未満
1点:動摩擦係数0.2以上
【0040】
<耐食性評価>
サンプルに対し、JIS Z2371:2015に準じて中性塩水噴霧試験機で240時間試験を実施し、以下の評価基準に従って評価を行い、9.8点以上を合格とした。その結果を表3に示す。
(耐食性の評価基準)
10点:腐食面積率0%
9.8点:腐食面積率0%を超え0.02%以下
9.5点:腐食面積率0.02を%超え0.05%以下
9.3点:腐食面積率0.05%を超え0.07%以下
9点:腐食面積率0.07%を超え0.10%以下
8点:腐食面積率0.10%を超え0.25%以下
7点:腐食面積率0.25%を超え0.50%以下
6点:腐食面積率0.50%を超え1.00%以下
5点:腐食面積率1.00%を超え2.50%以下
4点:腐食面積率2.50%を超え5.00%以下
3点:腐食面積率5.00%を超え10.00%以下
2点:腐食面積率10.00%を超え25.00%以下
1点:腐食面積率25.00%を超え50.00%以下
0点:腐食面積率50.00%を超えるもの
【0041】
【表3】