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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】自動部品締結機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240912BHJP
   B25B 23/10 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B23P19/06 C
B25B23/10 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021069104
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163948
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】安積 慶一
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-174351(JP,A)
【文献】特開2008-073831(JP,A)
【文献】特開平11-123621(JP,A)
【文献】特開2000-005948(JP,A)
【文献】実開平05-012049(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0298357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
B25B 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多角頭ボルトに対応する駆動穴が先端に形成されるビット本体を備えるボックスビットと、前記ビット本体が連結されかつ軸線方向に延びる軸穴を有する連結軸と、当該連結軸を回転させる回転駆動源と、前記連結軸の軸穴に連通するように配置されるエア吸引機構とを備えた自動部品締結機であって、
前記ビット本体は駆動穴に連通しかつ軸線方向に貫通して延びる段付き収納穴を有し、当該段付き収納穴には膨径部を有する吸着軸が摺動可能にかつその一部をビット本体の後端から突出させて収納され、当該吸着軸は膨径部の端面に面する拡開穴と当該拡開穴に連通しかつ軸線方向に延びる貫通穴とを有し、しかもこの吸着軸の突出部にはナットが螺合しており、当該ナットはビット本体に当接するように付勢されてなることを特徴とする自動部品締結機。
【請求項2】
前記吸着軸の膨径部は、吸着軸の後端のナットによりボックスビットの先端からわずかに突出する位置に位置調整されることを特徴とする請求項1に記載の自動部品締結機。
【請求項3】
前記吸着軸は、ビット本体の段付き収納穴内に配置されるクッションばねにより付勢されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動部品締結機。
【請求項4】
前記吸着軸は、膨径部の先端に多角頭ボルトの頭部端面側の円形凹部に対応する形状の小径突部を有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の自動部品締結機。
【請求項5】
前記吸着軸は、膨径部の先端に多角頭ボルトの頭部端面側の円形凹部に対応する形状の小径突部を有し、当該小径突部は当該吸着軸の後端のナットによりボックスビットの端面とほぼ同一面上に位置するように位置調整されることを特徴とする請求項1,または3に記載の自動部品締結機。
【請求項6】
前記ボックスビットの移動路上に、多角頭ボルトを保持する開閉自在な一対のチャック爪が配置され、それぞれのチャック爪はその側方に突出する拡開用突起を有し、当該拡開用突起は後端に向かって延びるドグ当接面を有し、しかもこれら拡開用突起の側方でかつ当該ドグ当接面に当接する位置には開閉ドグが往復移動可能に配置され、当該開閉ドグはボックスビットが多角頭ボルトの吸着位置に達すると拡開用突起およびチャック爪を押し開く構成であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の自動部品締結機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置に供給される六角頭部付きねじ、六角ボルト、三角・四角・五角形の頭部を持つ特殊頭ボルト等の多角頭ボルトをボックスビットの先端で駆動穴に嵌合させずに吸着して所定締付位置に締結する自動部品締結機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、六角頭部付きねじ、六角ボルト等の部品を狭い作業空間、例えば深い穴内の締付位置で締結するような場合には、これら部品を駆動穴に嵌合させて吸着するボックスビットを備えた自動部品締結機が多用されている。この種の自動部品締結機の一例として、特許文献1に示すボルト締付装置51(図12参照)がある。このボルト締付装置51にあっては、ボックスビット52はモータ(図示せず)の回転を受けて回転するように構成され、その先端にはキャッチャ53に供給される六角ボルトQの六角頭部に嵌合可能な駆動穴52aが、またこの駆動穴52aに連通して軸線方向に延びる軸穴52bが形成されている。また、この軸穴52bにはボックスビット52の回転中もエア吸引できるように負圧源(図示せず)が接続され、駆動穴52aに嵌合する六角ボルトQがボックスビット52の先端で吸着されるように構成されている。
【0003】
このボックスビット52を備えたボルト締付装置51によれば、キャッチャ53に供給される六角ボルトQの六角頭部が駆動穴52aに嵌合する場合には、所定の締付作業を行うことができる。しかしながら、キャッチャ53に供給される六角ボルトQの六角頭部の姿勢と駆動穴52aの姿勢とが一致することが少ないことから、締付作業前には都度六角ボルトQをボックスビット52の駆動穴52aに嵌合させる工程が必要となっている。そのため、六角ボルトQの締結に要するサイクルタイムが長くなるばかりか、当該工程中で六角ボルトQとボックスビット52との共回りによってボックスビット52の駆動穴52aと六角ボルトQの六角頭部とが上手く嵌合しないことが稀に発生している。これに対応するため、再嵌合動作が必要となり、その分マシンタイムが延長され、生産時間に影響を与えるという問題が生じている。
【0004】
このような問題を解決するため、特許文献2に示す自動ボルト締め機が開発されている。この自動ボルト締め機71は、図13に示すようにモータ(図示せず)の回転を受けて回転するボックスビット72を有している。このボックスビット72はビット部73とビットホルダ74とを有し、ビット部73の先端には六角ボルトRの六角頭部に嵌合する駆動穴73aが設けられている。前記ビット部73には、一端に鍔部75aを持つ吸引スリーブ75が後記ばね76により突出する方向に付勢され、後退可能に配置されている。この吸引スリーブ75の先端は、前記駆動穴73a内を通ってビット部73の端面よりもわずかに突出し、所定のボルト供給位置に供給される六角ボルトRの六角頭部に当接可能に構成されている。また、前記吸引スリーブ75にはその軸線方向に貫通する貫通穴75bが設けられており、当該貫通穴75bは後記スリーブ収納穴74aに連通するように構成されている。
【0005】
前記ビットホルダ74には、軸線方向に延びるスリーブ収納穴74aが設けられており、このスリーブ収納穴74aには前記吸引スリーブ75の鍔部75aとこれを付勢するばね76とが収納されている。また、前記ビットホルダ74はスリーブ収納穴74aに連通しかつ同方向に延びる連通穴74bを有し、この連通穴74bにはビットホルダ74の回転および昇降に支障がないようにエア吸引装置が連接されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭59-152072号公報
【文献】特開平9-174351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この自動ボルト締め機71によれば、吸引スリーブ75の先端がビット部73の端面よりもわずかに突出していることから、この吸引スリーブ75が六角ボルトRの六角頭部に当接することができる。そのため、六角頭部の姿勢とビット部73の駆動穴73aの姿勢とが合致しない六角ボルトRであっても、これを直立した姿勢でボックスビット72に保持することができる。
【0008】
しかしながら、この自動ボルト締め機71ではボックスビット72のビット部73をビットホルダ74に連結する際には、吸引スリーブ75の鍔部75aがビットホルダ74内のばね76により付勢されることから、吸引スリーブ75を鍔部75aが後方に位置するようにビット部73に組み込む必要がある。そのため、吸引スリーブ75の先端を幅広くして吸着面を大きく取ることができず、六角ボルトRが太物でその重量が大きい場合、特に水平方向でのボルト締めを行う場合には、六角ボルトRの吸着力が不足する。これにより、所定締付位置に達するまでの間にボックスビット72が回転すると、六角ボルトRの姿勢が不安定となり、その状態で六角ボルトRが締付位置に達しても、六角ボルトRの先端を所定の締付位置に位置させることができず、所定の締付作業を行うことができないという問題が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題をすべて解決するために発明されたもので、多角頭ボルトに対応する駆動穴が先端に形成されるビット本体を備えるボックスビットと、前記ビット本体が連結されかつ軸線方向に延びる軸穴を有する連結軸と、当該連結軸を回転させる回転駆動源と、前記連結軸の軸穴に連通するように配置されるエア吸引機構とを備えた自動部品締結機であって、前記ビット本体は駆動穴に連通しかつ軸線方向に延びる段付き収納穴を有し、当該段付き収納穴には膨径部を有する吸着軸が摺動可能にかつその一部をビット本体の後端から突出させて収納され、当該吸着軸は膨径部の端面に面する拡開穴と当該拡開穴に連通しかつ軸線方向に延びる貫通穴とを有し、しかもこの吸着軸の突出部にはナットが螺合しており、当該ナットはビット本体に当接するように付勢されてなることを特徴としている。
【0010】
前述の構成によれば、吸着軸はその膨径部で多角頭ボルトの頭部を吸着できるので、多角頭ボルトの頭部の吸着面を広くすることができるばかりか、より大きな開口を持つ拡開穴を設けることが可能となり、多角頭ボルトの吸着力を向上させることができる。また、吸着軸の突出部にはナットが螺合しており、当該ナットの取付け位置により吸着軸の膨径部の端面の位置を多角頭ボルトの頭部の端面形状に応じてビット本体の端面から任意の位置に調整し、多角頭ボルトをビット本体の駆動穴に嵌合させずに、最適な位置で吸着することができる。
【0011】
本発明に係る吸着軸の膨径部は、頭部端面が平面であってビット本体の駆動穴に嵌合しない姿勢の多角頭ボルトを吸着できるようにするため、吸着軸の後端のナットによりボックスビットの端面からわずかに突出する位置に位置調整されることが望ましい。
【0012】
本発明に係る吸着軸は、当該吸着軸を含み複数部品で構成されるボックスビットのユニット化を図ってボックスビットの交換作業を簡単にするため、ビット本体の段付き収納穴内に配置されるクッションばねにより付勢されることが望ましい。
【0013】
また、本発明に係る吸着軸は頭部端面が平面である多角頭ボルト、頭部端面に凹部を持つ多角頭ボルトのいずれにも対応できるようにするため、膨径部の先端に多角頭ボルトの頭部端面側の円形凹部に対応する形状の小径突部を有することが望ましい。
【0014】
本発明に係る吸着軸は、膨径部の先端に多角頭ボルトの頭部端面側の円形凹部に対応する形状の小径突部を有し、当該小径突部は吸着軸の後端のナットによりボックスビットの端面とほぼ同一面上に位置するように位置調整されることが望ましい。この構成により、当該小径突部の一部が多角頭ボルトの頭部の端面に形成されている円形凹部内に入り込むので、多角頭ボルトの頭部の周囲を駆動穴の入り口に軽く接触させて吸着でき、多角頭ボルトを最も安定して保持することができる。
【0015】
さらに、本発明に係るボックスビットの移動路上には、多角頭ボルトを保持する開閉自在な一対のチャック爪が配置され、それぞれのチャック爪はその側方に突出する拡開用突起を有し、当該拡開用突起は後端に向かって延びるドグ当接面を有し、しかもこれら拡開用突起の側方でかつ当該ドグ当接面に当接する位置には開閉ドグが往復移動可能に配置され、当該開閉ドグはボックスビットが多角頭ボルトの吸着位置に達すると拡開用突起およびチャック爪を押し開く構成であることが望ましい。この構成によれば、ボックスビットの先端に多角頭ボルトが吸着されると、開閉ドグが拡開用突起を押し開き、多角頭ボルトを保持するチャック爪が同時に押し開かれ、当該多角頭ボルトから離脱する。この状態で、ボックスビットが所定締付位置に向かってチャック爪間を前進するが、その先端の多角頭ボルトにチャック爪が当接することがなく、多角頭ボルトを脱落させる方向の力が加わらない。そのため、ボックスビットに吸着される多角頭ボルトを所定締付位置に支障なく締結することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、六角頭部付きねじ、六角ボルト、三角・四角・五角形の頭部を持つ特殊頭ボルト等の多角頭ボルトの頭部をボックスビットの先端で駆動穴に嵌合させずに安定した姿勢でしっかりと吸着できるばかりか、多角頭ボルトの頭部端面の形状に応じて当該部品を最適な位置で吸着することができ、しかも複数部品でなるボックスビットのユニット化によりボックスビットの交換作業を簡単に行える自動部品締結機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る自動部品締結機の要部拡大断面図。
図2】本発明の実施形態に係る自動部品締結機を説明する全体図。
図3】本発明の実施形態に係る自動部品締結機の要部拡大左側面図。
図4図2のA-A線に沿った要部拡大断面図。
図5図3のB-B線に沿った要部拡大断面図。
図6】本発明の実施形態に係る自動部品締結機の連結軸とエア吸引機構との接続部を示す一部切欠き要部拡大図。
図7】本発明の実施形態に係る自動部品締結機のアプセットボルト供給時を示す動作説明図。
図8】本発明の実施形態に係る自動部品締結機のアプセットボルト吸着位置での動作説明図。
図9】本発明の実施形態に係る自動部品締結機のチャック爪開放時の開閉ドグを示す動作説明図。
図10図9のC-C線に沿った要部断面図。
図11】本発明の実施形態に係る自動部品締結機のアプセットボルト非嵌合状態(a)と嵌合後の状態(b)を示す動作説明図。
図12】従来の自動部品締結機の一例であるボルト締付装置の要部断面図。
図13】従来の自動部品締結機の他の例である自動ボルト締め機の要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る自動部品締結機を、六角頭部付きねじ、六角ボルト、三角・四角・五角形の頭部を持つ特殊頭ボルト等の多角頭ボルトの一例である鍔付アプセットボルトP(以下、ボルトという)に対応する水平方向の締付け用自動部品締結機について、図面に基づき説明する。この自動部品締結機1は、図1および図2に示すように水平に延びる直線往復移動源のリニアスライド2を有している。このリニアスライド2は水平方向に往復移動する移動台2aを有し、この移動台2aはメインシリンダ(図示せず)の作動により移動する構造であっても、またモータ(図示せず)の回転を受けて回転するボールねじ(図示せず)とこれに螺合するボールねじナット(図示せず)とにより往復移動する構造(図示せず)であってもよい。前記移動台2aは、往動時には後述する本願発明の要部であるボックスビット23がボルト吸引位置に達すると一旦停止し、後記デュアルロッドシリンダ20の復動を待ってボルトPの締結に必要な最前進位置まで移動するように構成されている。また、前記移動台2aには当該移動台2aに対して直立する直立部3aを有するモータ取付用ブラケット3(以下、モータ用ブラケットという)が固定されており、このモータ用ブラケット3の直立部3aにはモータ台4を介して回転駆動源の一例のモータ5が固定されている。このモータ5は、水平方向に延びる駆動軸(図示せず)を有し、前記移動台2aが一旦停止後に往動を再開すると同時に駆動軸を回転させ、ボルトPの締付完了とともに停止する構成となっているが、当該駆動軸を部品供給装置と同時に回転させてボルトPの締付完了とともに停止する構成であってもよい。
【0019】
前記モータ用ブラケット3の直立部3aには、図2および図6に示すようにモータ台4に対向して軸受台6が固定されており、この軸受台6には伝達軸7が水平姿勢で回転可能にかつ軸方向に移動可能に保持されている。この伝達軸7は、前記モータ5の駆動軸と一体に回転可能な連結機構(図示せず)から離れる方向に弾力付勢されており、前記移動台2aと一体に移動するモータ5の駆動軸に対して相対移動可能に構成されている。また、前記伝達軸7は、後記連結軸9のおねじ部9aが螺合する連結軸用めねじ穴7aと当該連結軸用めねじ穴7aに連通する袋穴7bと当該袋穴7bと交差して連通する連通穴7cとを有している。
【0020】
前記軸受台6には、伝達軸7の連通穴7cの周囲に位置して環状凹部6aが形成されており、しかもこの環状凹部6aに連通するよう軸受台ホース継手8を介してエア吸引装置(図示せず)が接続されている。このエア吸引装置は、前記リニアスライド2の移動台2aが往動を一旦停止する直前に吸引を開始し、移動台2aが最前進位置から復動を開始すると吸引を停止するように構成されている、
【0021】
前記伝達軸7の連結軸用めねじ穴7aには、連結軸9の一端に設けられたおねじ部9aが螺合しており、伝達軸7と連結軸9とが同方向に延びるように構成されている。また、図1に示すようにこの連結軸9にはビット本体連結用のめねじ穴を兼用するナット収納穴9bと、これに連通しかつ連結軸9の軸線に沿って延びる軸穴9cとが設けられており、当該ナット収納穴9bには後記ビット本体24に設けられるおねじ部24bが螺合し、伝達軸7とボックスビット23とが一体に回転かつ往復移動するように構成されている。
【0022】
前記リニアスライド2の前進側には、図2に示すように前記モータ用ブラケット3の直立部3aと平行に延びるチャックユニット取付け用プレート10(以下、チャックプレートという)が固定されている。このチャックプレート10には、図5に示すようにチャックユニット11のチャック本体12が取付けられており、当該チャック本体12には水平方向に延びるガイド穴12aと、このガイド穴12aに連通しかつ同方向に延びる待機穴12bとが設けられている。前記ガイド穴12aは前記連結軸9を水平方向に挿通可能に案内し、待機穴12bは連結軸9に連結されるボックスビット23の待機位置となるように構成されている。
【0023】
前記チャック本体12には、図3および図5に示すようにボルト供給管13が回動可能にかつ前記待機穴12bと交差する方向に延びるように取付けられている。また、このボルト供給管13はダブルトーションばね14によりその一部が待機穴12bに位置するように付勢されており、前記リニアスライド2の移動台2aとともに往動するボックスビット23の通過により押し除けられるように構成されている。
【0024】
前記チャック本体12には、前記ボルト供給管13の延びる方向に沿ってホース継手15が取付けられており、このホース継手15にはホース取付穴15aが設けられている。このホース取付穴15aには、部品供給装置(図示せず)の供給ホース16がホース固定具15bを介して取付けられており、部品供給装置からボルトPが1個毎にエア給送されるように構成されている。
【0025】
また、前記チャック本体12には図3ないし図5に示すように一対のチャック爪17,17がそれぞれ取付けボルト18を中心に開閉自在に配置されており、当該チャック爪17,17はそれぞればね〈図示せず〉により常時対向するように付勢され、ボックスビット23の移動路を塞ぐように位置している。前記チャック爪17には、対向する他方のチャック爪17とともに、内部にボルトPの頭部を案内するテーパ穴17aと、当該テーパ穴17aに連通しかつボルトPの脚部を案内するボルト通過穴17bとが形成されている。これにより、部品供給装置からボルト供給管13を通過して給送されるボルトPが対向するチャック爪17,17により保持可能となっている。
【0026】
前記チャック爪17,17それぞれには、先端から離れた後端側の位置で側方に突出する拡開用突起19〈図5では、下方に突出している)が設けられており、当該拡開用突起19は後記開閉ドグ22の移動路に位置して後端に向かって延びるドグ当接面19aを有している。これら対向するドグ当接面19a,19aによりドグ案内凹部19bが形成されており、当該ドグ案内凹部19bには後記三角突部22aが位置し、当該三角突部22aの復動時に直ちに拡開用突起19,19およびチャック爪17,17を押し開くように構成されている(図4参照)。
【0027】
前記チャック本体12には、図5に示すように対向して位置するチャック爪17,17の側方で、これと平行に延びる往復駆動源の一例のデュアルロッドシリンダ20(以下、シリンダという)が固定されており、そのロッド20aには2枚の取付板21,21を介して開閉ドグ22が固定されている。この開閉ドグ22は、その後端側に前記拡開用突起19のドグ案内凹部19b内に位置する三角突部22aを有し(図4参照)、シリンダ20のロッド20aの復動により当該三角突部22aが前記拡開用突起19のドグ当接面19aに当接するように構成されている。これにより、拡開用突起19とともにチャック爪17を拡開する構成が得られる。なお、前記拡開用突起19は、チャック爪17と一体に設けられているが、これを別体としてもよい。
【0028】
前記シリンダ20は、ボックスビット23がボルトPを吸着する位置に達するまでそのロッド20aを往動させて最前進位置に停止させるように構成されている。また、このシリンダ20はボックスビット23がボルトPを吸着する位置に達すると、ロッド20aを復動させて最後退位置で停止させるように構成されている。当該構成により、閉止状態の拡開用突起19およびチャック爪17はボックスビット23がボルトPを吸着する位置に達すると、開閉ドグ22により押し開かれる。これにより、対向するチャック爪17,17により形成されるボルト通過穴17bが拡開され、ボックスビット23がチャック爪17に接触せずに往復移動可能となる。
【0029】
次に、本発明の要部であるボックスビット23について説明する。このボックスビット23は、図1および図5に示すようにビット本体24を備えており、当該ビット本体24には先端にボルトPの頭部に嵌合可能な駆動穴24aと後端に連結軸9に螺合するおねじ部24bとが設けられている。また、このビット本体24は駆動穴24aに連通しかつ軸線方向に延びる段付き収納穴24cを有し、当該段付き収納穴24cには膨径部25aを有する吸着軸25が摺動可能にかつその一部をビット本体24の後端から突出させて収納されている。
【0030】
前記吸着軸25の膨径部25aの先端には、円柱状の小径突起25bが形成されており、ボルトPの頭部の端面に形成されている円形凹部p1内に挿入可能に構成されている。また、この小径突起25bの端面は後記ダブルナット26の取付け位置の調整によりビット本体24の端面と同一面上に位置している。これにより、ボルトPが吸着される際にはこの小径突起25bの一部がボルトPの頭部端面の円形凹部p1内に入り込むので、当該ボルトPはその頭部の周囲を駆動穴24aの入り口に軽く接触させながら、最も安定して保持される。さらに、前記小径突起25bは膨径部25aに設けられることからその端面も十分に広く、ボルトPの頭部の吸着面を十分に広くできるばかりか、より大きな開口を持つ後記拡開穴25cを設けることができ、小径でありながらもボルトPの吸着力を向上させる構成となっている。
【0031】
前記吸着軸25には、膨径部25aの端面すなわち小径突起25bに面する拡開穴25cと、これに連通しかつ軸線方向に延びる貫通穴25dとが設けられている。これら拡開穴25cおよび貫通穴25dは、前記連結軸9のナット収納穴9bおよび軸穴9c、伝達軸7の連結軸用めねじ穴7a、袋穴7bおよび連通穴7c、軸受台6の環状凹部6aに連通し、前述のエア吸引装置に接続されるエア吸引路が形成されている(図6参照)。なお、前記吸着軸25の小径突起25bはボルトPが頭部端面を平面とする六角ボルト(図示せず)に変更される時には、小径ながらも十分な吸着面を有することから、その端面をビット本体24の端面から突出させて位置させてもよい。また、この時には当該小径突起25bを設ける必要はなく、膨径部25aの端面をビット本体24の端面から突出させておけばよく、この場合には膨径部25aが持つ吸着面および拡開穴25cはさらに広くなる。
【0032】
前記吸着軸25の後端の突出部には、固定手段の一例のダブルナット26(以下、ナットという)が螺合しており、当該ナット26の取付け位置により吸着軸25の膨径部25aの端面がボルトPの頭部端面の形状に応じて位置調整されている。例えば、本実施形態のボルトPのように頭部の端面に円形凹部p1が形成されている時には、膨径部25aの端面、すなわち小径突起25bの端面はビット本体24の端面と同一平面上に位置する。また、前記ボルトPが頭部端面を平面とする六角ボルトに変更される時には、膨径部25aの端面すなわち小径突起25bの端面をビット本体24の端面からわずかに突出するように位置させ、ボルトPの吸着に支障のないよう構成される。なお、前記小径突起25bは、円柱状でなくてもよく、図示はしないが、角柱状、その他の柱状であってもよい。また、前記小径突起25bの端面はボルトPの端面形状が球面状の時には、これに対応する凹面状であってもよい。
【0033】
前記ナット26は、ビット本体24に当接するようにクッションばね27により付勢される構成を備えていればよい。本実施形態においては、ビット本体24の段付き収納穴24cにばね収納穴24dが設けられ、このばね収納穴24dにクッションばね27が収納されている。これにより、当該クッションばね27が吸着軸25の膨径部25aを付勢して、ナット26をビット本体24に当接させている。この場合、複数部品でなるボックスビット23は、ユニット化されることとなり、当該ボックスビット23の交換作業が簡単となる。また、図示はしないが、連結軸9に設けられるナット収納穴9bを軸線方向に延長して、このナット収納穴9bに前述のクッションばね27を収納し、ナット26をビット本体24に付勢する構成であってもよい。この場合には、クッションばね27を除いて複数部品のユニット化が図れ、ボックスビット23の交換作業が簡単となる。また、いずれの場合もボックスビット23が複数部品で構成されているにも拘わらず、その部品管理はボックスビット23の1種類、またはボックスビット23とクッションばね27との2種類でよく、部品管理が簡単となる。
【0034】
上記自動部品締結機において、図7に示すように部品供給装置からボルトPが供給ホース16、ボルト供給管13を経由して対向するチャック爪17,17で形成されるテーパ穴17aおよびボルト通過穴17bまでエア給送される。その後、リニアスライド2の移動台2aが往動し、これと一体にモータ5、その駆動軸と一体に回転する伝達軸7および連結軸9並びにボックスビット23が往動する(図2参照)。このボックスビット23がその移動路に位置するボルト供給管13を押し除けながら往動して、対向するチャック爪17,17に保持されたボルトPの吸着位置に達する。この時、リニアスライド2の移動台2aが一旦停止するので、ボックスビット23も停止する。この間に、エア吸引装置が作動し、図8に示すようにボックスビット23のビット本体24に保持された吸着軸25の端面、すなわち膨径部25aに設けられた小径突起25bの端面付近の空気が吸引され、小径突起25bの端面にボルトPが吸着される。この時、小径突起25bは吸着軸25の膨径部25aに設けられていることから、吸着面が広く、また当該小径突起25bの端面に設けられる拡開穴25cも大きな開口を持つことができる。これにより、ボルトPの種類、すなわち頭部端面に円形凹部p1が設けられているか否かに拘わらず、ボルトPの吸着力が格段に向上することとなり、小径突起25bはその端面でボルトPをしっかりと吸着することができる。
【0035】
また、前記小径突起25bがボルトPを吸着する際には、図9に示すようにボルトPの端面の円形凹部p1に入り込み、ボルトPの頭部の周囲がビット本体24の端面、すなわち駆動穴24aの入り口に軽く接触することができ、ボルトPを最も安定してビット本体24の小径突起25bの先端、すなわちボックスビット23の先端に保持することができる。
【0036】
前記リニアスライド2の移動台2aが一旦停止する間に(図2参照)、図9および図10に示すようにシリンダ20のロッド20aが最前進位置から復動して開閉ドグ22がチャック爪17の側面に沿って移動する。この時、開閉ドグ22の三角突部22aが両チャック爪17,17の拡開用突起19のドグ当接面19aに当接し、拡開用突起19,19およびチャック爪17,17を押し開く。前記シリンダ20のロッド20aが最後退位置に達すると、開閉ドグ22が拡開用突起19,19およびチャック爪17,17を最大限押し開き、対向するチャック爪17,17により形成されるボルト通過穴17bが拡開される。
【0037】
前記シリンダ20のロッド20aが最後退位置に達すると同時に、リニアスライダ2の移動台2aが往動を再開するとともにモータ5が駆動されてボックスビット23が回転する(図2参照)。この時、ボックスビット23はその先端にボルトPを吸着した状態でチャック爪17,17間を通過するが、ボックスビット23およびボルトPはチャック爪17,17と接触することはない。そのため、ボックスビット23の先端のボルトPはチャック爪17,17から脱落する方向の力を受けることがなく、ボックスビット23の回転にともなって遠心力の影響を受けても安定してボックスビット23と一体に回転することができる。
【0038】
これにより、図11(a)に示すようにボックスビット23の先端のボルトPは被締結部材28の下穴28aを通って所定締付位置に達し、その先端がねじ穴29aを有する相手部材29に当接する。この時、ビット本体24に形成された駆動穴24aの姿勢が回転するので、ボルトPの頭部の姿勢と一致し、ボルトPが駆動穴24aに嵌合する。この間、ボックスビット23は移動台2aとともに往動しているので、図11(b)に示すようにボルトPの頭部が駆動穴24aとの嵌合を深めながら、吸着軸25の膨径部25aを段付き収納穴24c内に後退させる。そのため、ボルトPの頭部は駆動穴24aにしっかりと嵌合し、ボックスビット23はその回転にともなって、ボルトPを相手部材29のねじ穴29aに締結することができる。このボルト締結の間、移動台2aとボックスビット23との移動量が相違するが、ボックスビット23と一体に移動する伝達軸7が軸方向に相対移動するので、支障なくボルト締結作業を行うことができる。
【0039】
このボルト締結作業が完了すると、移動台2aが復動するとともにエア吸引装置が停止する(図2参照)。また、移動台2aが復動してボックスビット23がチャック本体12の待機穴12bに達すると、シリンダ20が往動して、開閉ドグ22が往動する(図5参照)。これにより、開閉ドグ22が拡開用突起19から離れて、当該拡開用突起19,19およびチャック爪17,17が閉止状態に復帰し、次回のボルト供給に備えることができる。
【0040】
以上説明したように、本発明はボルトPに対応する駆動穴24aが先端に形成されるビット本体24を備えるボックスビット23と、前記ビット本体24が連結されかつ軸線方向に延びる軸穴9cを有する連結軸9と、当該連結軸9を回転させるモータ5と、前記連結軸9の軸穴9cに連通するように配置されるエア吸引装置とを備えた自動部品締結機であって、前記ビット本体24は駆動穴24aに連通しかつ軸線方向に貫通して延びる段付き収納穴24cを有し、当該段付き収納穴24cには膨径部25aを有する吸着軸25が摺動可能にかつその一部をビット本体24の後端から突出させて収納され、当該吸着軸25は膨径部25aの端面に面する拡開穴25cと当該拡開穴25cに連通しかつ軸線方向に延びる貫通穴25dとを有し、しかもこの吸着軸25の突出部にはナット26が螺合しており、当該ナット26はビット本体24に当接するように付勢されてなることを特徴としている。
【0041】
本発明は、上記構成により、吸着軸25の膨径部25aでボルトPの頭部を吸着できるので、ボルトPの頭部の吸着面を広くすることができるばかりか、より大きな開口を持つ拡開穴25cを設けることができ、ボルトPの吸着力を向上させることができる。また、吸着軸25の突出部にはナット26が螺合しており、当該ナット26の取付け位置により吸着軸25の膨径部25aの端面の位置を調整できる。これにより、ボルトPの頭部の端面形状に応じて膨径部25aの端面をビット本体24の端面から任意の位置に位置調整でき、ボルトPをビット本体24の駆動穴24aに嵌合させずに、最適な位置で吸着することができる。
【0042】
本発明に係る吸着軸25の膨径部25aは、吸着軸25の後端のナット26によりボックスビット23の端面からわずかに突出する位置に位置調整されてもよい。この場合、ボルトPの頭部端面が平面であって、ビット本体24の駆動穴24aに嵌合しない姿勢のボルトPをしっかりと吸着することができる。
【0043】
また、本発明に係る吸着軸25はビット本体24の段付き収納穴24c内に配置されるクッションばね27により付勢される構成であってもよい。この構成によれば、吸着軸25を含み複数部品で構成されるボックスビット23のユニット化が図れ、ボックスビット23の交換作業を簡単にすることができる。
【0044】
さらに、本発明に係る吸着軸25は膨径部25aの先端にボルトPの頭部端面側の円形凹部p1に対応する形状の小径突部25bを有する構成であってもよい。この構成によれば、小径突起25bは小径ではあるが、膨径部25aに形成されているため、十分に広い吸着面を有している。そのため、当該小径突起25bは頭部端面が平面であるボルトであっても、これをしっかりと吸着でき、頭部端面に円形凹部p1を持つボルトPはもちろんのこと、頭部端面が平面であるボルトにも対応することができる。
【0045】
本発明に係る吸着軸25は膨径部25aの先端にボルトPの頭部端面側の円形凹部p1に対応する形状の小径突部25bを有し、当該小径突部25bは吸着軸25の後端のナット26によりボックスビット23の端面とほぼ同一面上に位置するように位置調整されてもよい。この構成によれば、当該小径突部25bの一部がボルトPの頭部の端面に形成されている円形凹部p1内に入り込むので、ボルトPの頭部を駆動穴24aの入り口に軽く接触させて吸着でき、ボルトPを最も安定して保持することができる。
【0046】
本発明に係るボックスビット23の移動路上には、ボルトPを保持する開閉自在な一対のチャック爪17,17が配置され、それぞれのチャック爪17はその側方に突出する拡開用突起19を有し、当該拡開用突起19は後端に向かって延びるドグ当接面19aを有し、しかもこれら拡開用突起19,19の側方でかつ当該ドグ当接面19a,19aに当接する位置には開閉ドグ22が往復移動可能に配置され、当該開閉ドグ22はボックスビット23がボルトPの吸着位置に達すると拡開用突起19,19およびチャック爪17,17を押し開く構成であってもよい。この構成によれば、ボックスビット23の先端にボルトPが吸着されると、開閉ドグ22が拡開用突起19,19を押し開く。同時に、ボルトPを保持するチャック爪17,17が押し開かれ、ボルトPから離脱する。この状態で、ボックスビット23が所定締付位置に向かってチャック爪17,17間を前進するが、その先端のボルトPにチャック爪17,17が当接することがない。そのため、チャック爪17,17からボルトPを脱落させる方向の力が加わることはなく、ボックスビット23に吸着されるボルトPを所定締付位置に支障なく締結することができる。
【0047】
なお、本発明の実施形態に係る自動部品締結機は多角頭ボルトの一例のアプセットボルトPを締結する構造について説明されているが、薄頭の六角頭部を持つねじ、頭部端面が平面の六角頭部付きねじ・ボルト、三角・四角・五角形の頭部を持つ特殊頭ボルトの他、六角頭部を持つ締付キャップなど(いずれも図示せず)の締結に用いられる締結機であってもよく、また吸着平面を持つ非円形頭部を備えるボルト・締付キャップにも適用できる。また、本発明の実施形態に係る自動部品締結機は水平方向の締付作業用について説明されているが、垂直方向の締付作業用として適用可能である。この場合、エア給送されるボルトPに対応する構成であってもよいが、部品供給位置を別に設けて、その位置でボルトPの上方からこれを吸着する構成であってもよい。さらに、本発明の各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…自動部品締結機、
9…連結軸、
9c…軸穴、
23…ボックスビット、
24…ビット本体、
24a…駆動穴、
24c…段付き収納穴、
25…吸着軸、
25a…膨径部、
25c…拡開穴、
25d…貫通穴、
26…ダブルナット、
P…アプセットボルト、

図1
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