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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】工作機械の主軸装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/10 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B23Q11/10 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021072601
(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公開番号】P2022167068
(43)【公開日】2022-11-04
【審査請求日】2023-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健作
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-169242(JP,U)
【文献】特開2000-000736(JP,A)
【文献】特開昭63-077636(JP,A)
【文献】米国特許第05690137(US,A)
【文献】特開平07-024687(JP,A)
【文献】特開2007-307651(JP,A)
【文献】特開2007-307679(JP,A)
【文献】特開2016-059975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
B23B 1/00-25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回転自在に支持されかつ先端に工具取付部を有する中空状主軸と、前記主軸内に前記主軸に対して軸方向に移動しうるように同軸上に配され、かつ軸方向の移動により前記工具取付部への工具のクランプ、アンクランプを行うドローバーと、前記ドローバーをクランプ方向に移動させる第1移動手段と、前記ドローバーをアンクランプ方向に移動させる第2移動手段とを備えており、前記工具取付部に固定された工具に外部からクーラントを供給するスルークーラント経路と、前記工具取付部に外部からエアを供給する洗浄エア経路と、前記スルークーラント経路から漏れ出したクーラントを外部から供給されたエアによりハウジングに設けられたドレン穴に誘導するパージエア経路とが設けられている工作機械の主軸装置であって、
前記第1移動手段による前記ドローバーのクランプ方向への移動と、前記第2移動手段による前記ドローバーのアンクランプ方向への移動によって、前記洗浄エア経路および前記パージエア経路に流れるエアの流量が変化するようになされており、
前記第1移動手段が前記ドローバーをクランプ方向に付勢する付勢手段からなり、前記第2移動手段が、前後方向に移動するピストンを備えかつ前記付勢手段の付勢力に抗して前記ドローバーをアンクランプ方向に移動させるアクチュエータからなり、前記ピストンが、前記第1移動手段による前記ドローバーのクランプ方向への移動を許容して工具をクランプする第1位置と、前記ドローバーをアンクランプ方向に移動させて工具をアンクランプする第2位置との間に移動するようになっており、
前記ピストンに、前記洗浄エア経路の一部となる洗浄用エア流路が形成され、前記ピストンが前記第1位置にあるときに前記パージエア経路にエアが流れるとともに前記洗浄用エア流路へのエアの流れが遮断され、前記ピストンが前記第2位置にあるときに前記洗浄用エア流路にエアが流れるとともに、前記洗浄用エア流路に流れるエアの一部が前記パージエア経路に流れるようになっている工作機械の主軸装置。
【請求項2】
前記ピストンに、前記パージエア経路の一部となるパージ用エア流路および前記洗浄エア経路の一部となる洗浄用エア流路が並列状に形成され、前記ピストンが前記第1位置にあるときに前記パージ用エア流路にエアが流れるとともに前記洗浄用エア流路へのエアの流れが遮断され、前記ピストンが前記第2位置にあるときに前記洗浄用エア流路にエアが流れるとともに前記パージ用エア流路へのエアの流れの少なくとも一部が遮断される請求項1記載の工作機械の主軸装置。
【請求項3】
前記ハウジングと前記ドローバーとの間に回転継手が設けられ、前記ドローバーと前記回転継手とに前記スルークーラント経路の一部となるクーラント流路が形成され、前記ハウジングと前記ピストンとの間に、前記回転継手から漏れたクーラントを収容するとともに前記ドレン穴に通じるドレン室が設けられ、
前記ドローバーの後部に径方向外方に張り出したプレートが固定状に設けられ、前記ピストンが前記第1位置にあるときに、前記プレートと前記ピストンとの間および前記ドローバーと前記ピストンとの間にまたがり、かつ前記パージエア経路および前記ドレン室に通じるラビリンス部が形成され、
前記ピストンが前記第1位置にあるときに、パージエアが前記パージエア経路から前記ラビリンス部を経て前記ドレン室に吹き出され、前記ドレン室に吹き出されたパージエアの圧力によって前記回転継手から漏れ出したクーラントが前記ドレン穴に誘導されるようになっている請求項1または2記載の工作機械の主軸装置。
【請求項4】
前記洗浄エア経路から分岐し、かつ前記ピストンが前記第1位置にあるときに塞がれるとともに、前記第2位置にあるときに前記洗浄エア経路を前記ドレン室に通じさせる分岐エア経路が設けられている請求項3記載の工作機械の主軸装置。
【請求項5】
前記ドローバーの前記プレート後面の外周縁に後方に突出した環状壁が設けられるとともに前記環状壁に囲まれて凹所が形成されており、
前記ピストンが、ハウジングに設けられたシリンダ室内に配置された受圧部と、前記受圧部に設けられて前方に延びた円筒状のロッド部とよりなり、前記ロッド部が、前記ピストンが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に前記プレートの前記環状壁の後面を押圧する円筒状の押圧部と、前記押圧部の径方向内側部分に、前記押圧部よりも前方に突出するように設けられて前記凹所内に前後方向移動自在に嵌められた円筒状の嵌入部と、前記嵌入部の前端に径方向内向きに突出するように内向きフランジ部とを備えており、
前記パージエア経路の一部が、前記嵌入部を前後方向に貫通するように形成され、前記洗浄用エア流路が、前記押圧部を前後方向に貫通するように形成され、前記ドレン室が前記ロッド部の内部空間と前記ハウジングとの間に形成されている請求項3または4記載の工作機械の主軸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば自動工具交換装置により工具交換が行われかつ金属からなる被削材に切削加工を施す工作機械に設けられる主軸装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、主軸の工具取付部が設けられた側、すなわち図1の左側を前、これと反対側を後というものとする。
【背景技術】
【0003】
従来周知の工作機械の主軸装置として、ハウジングに回転自在に支持されかつ先端に工具取付部を有する中空状主軸と、前記主軸内に前記主軸に対して軸方向に移動しうるように同軸上に配され、かつ軸方向の移動により前記工具取付部への工具のクランプ、アンクランプを行うドローバーと、ドローバーをクランプ方向に移動させる複数の皿ばねと、ピストンを有しかつドローバーを皿ばねの付勢力に抗してアンクランプ方向に移動させるアクチュエータと、工具取付部に固定された工具に外部からクーラントを供給するスルークーラント経路とが設けられているものがある。このような周知の主軸装置においては、ドローバーの後端とハウジングとの間に回転継手が設けられ、スルークーラント経路が、ハウジング、回転継手およびドローバーにそれぞれ設けられたクーラント流路によって形成されている。
【0004】
上述したような周知の主軸装置の場合、長期間の使用により回転継手が汚れたり、動きが悪くなったりすると、被削物への加工時に回転継手からクーラントが漏れ出し、主軸を支持する軸受や主軸駆動用のモータにクーラントが浸入し、主軸装置の故障の原因となることがあった。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、本出願人は、上述した周知の主軸装置において、前記洗浄エア経路に分岐路を設け、当該分岐路を前記ドローバーの後端部が前後移動する空間内へ連通させるとともに、前記ハウジングに、前記空間と前記ハウジング外部とを連通させるクーラント排出路を設け、加工が終了し、前記ドローバーがアクチュエータにより前方に移動させられたアンクランプ時に、加工時に回転継手から前記空間内へ漏れ出したクーラントを、前記分岐路を介して前記空間内へ送り込まれた圧縮空気により、前記クーラント排出路を介して前記ハウジング外部へ排出可能としたことを特徴とする工作機械の主軸装置を提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-202301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の主軸装置においては、加工時に回転継手から漏れ出したクーラントを、加工終了後にハウジングの外部に排出しているので、加工時に漏れ出したクーラントを、加工を継続している間にハウジングの外部に排出することはできない。
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、加工時にスルークーラント経路から漏れ出したクーラントを、加工を継続している間にハウジングの外部に排出することができる工作機械の主軸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)ハウジングに回転自在に支持されかつ先端に工具取付部を有する中空状主軸と、前記主軸内に前記主軸に対して軸方向に移動しうるように同軸上に配され、かつ軸方向の移動により前記工具取付部への工具のクランプ、アンクランプを行うドローバーと、前記ドローバーをクランプ方向に移動させる第1移動手段と、前記ドローバーをアンクランプ方向に移動させる第2移動手段とを備えており、前記工具取付部に固定された工具に外部からクーラントを供給するスルークーラント経路と、前記工具取付部に外部からエアを供給する洗浄エア経路と、前記スルークーラント経路から漏れ出したクーラントを外部から供給されたエアによりハウジングに設けられたドレン穴に誘導するパージエア経路とが設けられている工作機械の主軸装置であって、
前記第1移動手段による前記ドローバーのクランプ方向への移動と、前記第2移動手段による前記ドローバーのアンクランプ方向への移動によって、前記洗浄エア経路および前記パージエア経路に流れるエアの流量が変化するようになされており、
前記第1移動手段が前記ドローバーをクランプ方向に付勢する付勢手段からなり、前記第2移動手段が、前後方向に移動するピストンを備えかつ前記付勢手段の付勢力に抗して前記ドローバーをアンクランプ方向に移動させるアクチュエータからなり、前記ピストンが、前記第1移動手段による前記ドローバーのクランプ方向への移動を許容して工具をクランプする第1位置と、前記ドローバーをアンクランプ方向に移動させて工具をアンクランプする第2位置との間に移動するようになっており、
前記ピストンに、前記洗浄エア経路の一部となる洗浄用エア流路が形成され、前記ピストンが前記第1位置にあるときに前記パージエア経路にエアが流れるとともに前記洗浄用エア流路へのエアの流れが遮断され、前記ピストンが前記第2位置にあるときに前記洗浄用エア流路にエアが流れるとともに、前記洗浄用エア流路に流れるエアの一部が前記パージエア経路に流れるようになっている工作機械の主軸装置。
【0011】
2)前記ピストンに、前記パージエア経路の一部となるパージ用エア流路および前記洗浄エア経路の一部となる洗浄用エア流路が並列状に形成され、前記ピストンが前記第1位置にあるときに前記パージ用エア流路にエアが流れるとともに前記洗浄用エア流路へのエアの流れが遮断され、前記ピストンが前記第2位置にあるときに前記洗浄用エア流路にエアが流れるとともに前記パージ用エア流路へのエアの流れの少なくとも一部が遮断される上記1)記載の工作機械の主軸装置
【0012】
3)前記ハウジングと前記ドローバーとの間に回転継手が設けられ、前記ドローバーと前記回転継手とに前記スルークーラント経路の一部となるクーラント流路が形成され、前記ハウジングと前記ピストンとの間に、前記回転継手から漏れたクーラントを収容するとともに前記ドレン穴に通じるドレン室が設けられ、
前記ドローバーの後部に径方向外方に張り出したプレートが固定状に設けられ、前記ピストンが前記第1位置にあるときに、前記プレートと前記ピストンとの間および前記ドローバーと前記ピストンとの間にまたがり、かつ前記パージエア経路および前記ドレン室に通じるラビリンス部が形成され、
前記ピストンが前記第1位置にあるときに、パージエアが前記パージエア経路から前記ラビリンス部を経て前記ドレン室に吹き出され、前記ドレン室に吹き出されたパージエアの圧力によって前記回転継手から漏れ出したクーラントが前記ドレン穴に誘導されるようになっている上記1)または2)記載の工作機械の主軸装置。
【0013】
4)前記洗浄エア経路から分岐し、かつ前記ピストンが前記第1位置にあるときに塞がれるとともに、前記第2位置にあるときに前記洗浄エア経路を前記ドレン室に通じさせる分岐エア経路が設けられている上記3)記載の工作機械の主軸装置。
【0014】
5)前記ドローバーの前記プレート後面の外周縁に後方に突出した環状壁が設けられるとともに前記環状壁に囲まれて凹所が形成されており、
前記ピストンが、ハウジングに設けられたシリンダ室内に配置された受圧部と、前記受圧部に設けられて前方の延びた円筒状のロッド部とよりなり、前記ロッド部が、前記ピストンが前記第1位置から前記第2位置に移動する際に前記プレートの前記環状壁の後面を押圧する円筒状の押圧部と、前記押圧部の径方向内側部分に、前記押圧部よりも前方に突出するように設けられて前記凹所内に前後方向移動自在に嵌められた円筒状の嵌入部と、前記嵌入部の前端に径方向内向きに突出するように内向きフランジ部とを備えており、
前記パージエアの一部が、前記嵌入部を前後方向に貫通するように形成され、前記洗浄用エア流路が、前記押圧部を前後方向に貫通するように形成され、前記ドレン室が前記ロッド部の内部空間と前記ハウジングとの間に形成されている上記3)または4)記載の工作機械の主軸装置。
【発明の効果】
【0015】
上記1)~5)の工作機械の主軸装置によれば、ドローバーがクランプ方向に移動している加工時に、パージエア経路が開放されるとともに洗浄エア経路が閉じられることにより、洗浄エア経路およびパージエア経路に流れるエアの流量が変化させられてパージエア経路にエアが流れるとともに洗浄エア経路へのエアの流れが遮断されると、パージエア経路に流れるエアの流量が比較的多くなり、エアの圧力によってスルークーラント経路から漏れ出したクーラントがドレン穴に誘導され、ハウジングの外部に排出される。したがって、加工時にスルークーラント経路から漏れ出したクーラントを、加工を継続している間にハウジングの外部に排出することができる。その結果、加工時にスルークーラント経路から漏れ出したクーラントが、加工を継続している間に主軸を支持する軸受や主軸駆動用のモータに浸入することによって主軸装置の故障の原因となることが防止される。なお、ドローバーがアンクランプ方向に移動しているアンクランプ時にスルークーラント経路から漏れ出したクーラントは、その後の加工時に、上述のようにしてハウジングの外部に排出される。
【0016】
また、ドローバーがアンクランプ方向に移動しているアンクランプ時にスルークーラント経路からクーラントが漏れ出した場合、洗浄エア経路が開放されるとともにパージエア経路の一部のみが閉じられることにより、洗浄エア経路およびパージエア経路に流れるエアの流量が変化させられて洗浄エア経路にエアが流れるとともにパージエア経路にエアの一部が流れると、パージエアの圧力によってスルークーラント経路から漏れ出したクーラントがドレン穴に誘導され、ハウジングの外部に排出される。
【0017】
上記4)の工作機械の主軸装置によれば、比較的簡単な構造で、ドローバーがアンクランプ方向に移動しているアンクランプ時に、洗浄エア経路を開放するとともにパージエア経路の一部のみを閉じることが可能になる。
【0018】
上記3)および5)の工作機械の主軸装置によれば、構造が比較的簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明による工作機械の主軸装置の全体構成を示し、工具がクランプされた状態(上半部)と、工具がアンクランプされた状態(下半部)とを説明する縦断面図である。
図2】工具がクランプされた状態の主軸装置の要部を示す縦断面図である。
図3】工具がアンクランプされた状態の主軸装置の要部を示す縦断面図である。
図4】この発明による工作機械の主軸装置の変形例を示し、工具がクランプされた状態を示す要部の縦断面図である。
図5図4の主軸装置の工具がアンクランプされた状態を示し、(a)は要部の縦断面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1はこの発明による工作機械の主軸装置の全体構成を、工具がクランプされた状態を上半部に示し、工具がアンクランプされた状態を下半部に示す。図2は工具がクランプされた状態の図1の要部を示し、図3は工具がアンクランプされた状態の図1の要部を示す。
【0022】
図1において、主軸装置1は、マシニングセンタなどの主軸頭(図示略)に設けられたハウジング2と、ハウジング2内に回転自在に配置された中空状主軸3とを備えている。主軸3の前部および後部は、それぞれ転がり軸受4、5によりハウジング2に対して回転自在に支持されている。ハウジング2内の前側の軸受4と後側の軸受5との間の部分に、主軸3を回転させるためのモータ6が設けられている。
【0023】
主軸3の前端には、工具(図示略)を保持した工具ホルダ7のテーパシャンク7aを嵌め入れるテーパ穴8(工具取付部)が軸心穴9に通じるように形成されているとともに、嵌め入れられた工具ホルダ7をクランプ/アンクランプするためのクランプ機構としてのコレット11が配置されている。工具ホルダ7に、これを前後方向に貫通したクーラント流路7bが形成されている。
【0024】
主軸3の軸心穴9内に、コレット11をクランプ/アンクランプ動作させるためのドローバー12が、主軸3に対して回転はしないが主軸3の軸方向である前後方向に移動しうるように同軸上に配置されている。ドローバー12は、後退位置でコレット11をクランプ動作させ、工具ホルダ7のテーパシャンク7aをテーパ穴8内に引き込んで固定する(図1の上半部を参照)。また、ドローバー12は、前進位置でコレット11をアンクランプ動作させ、工具ホルダ7のテーパシャンク7aのテーパ穴8内からの取り出しを許容する。
【0025】
ドローバー12は、主軸3の軸心穴9の内周面の前部に形成された後向きの段部13と、ドローバー12の外周面の後部に形成された前向きの段部14との間に配置された複数の皿ばね15(付勢手段、第1移動手段)によりクランプ方向(後方)に移動させられ、ドローバー12の後側に設けられたアクチュエータ16(第2移動手段)によって皿ばね15の付勢力に抗してアンクランプ方向(前方)に移動させられる。
【0026】
図2および図3に示すように、ドローバー12の後部は主軸3よりも若干後方に突出しており、この突出部分に径方向外方に張り出したプレート17が固定されている。プレート17後面の外周縁部後方に突出した環状壁18が設けられるとともに、環状壁18に囲まれて凹所19が形成されている。
【0027】
アクチュエータ16は、ハウジング2に設けられかつ図示しない油圧源から圧力油が供給されるシリンダ室21と、ピストン22とを備えている。ピストン22はシリンダ室21内に配置された受圧部23と、受圧部23に設けられて前方に延びた円筒状のロッド部24とよりなり、皿ばね15によるドローバー12のクランプ方向への移動を許容して工具をクランプする第1位置(図1の上半部および図2参照)(後退位置)と、ドローバー12を前方に押圧することによりアンクランプ方向に移動させて工具をアンクランプする第2位置(図1の下半部および図3参照)(前進位置)との間を移動するようになっている。
【0028】
ピストン22のロッド部24は、大円筒部25と、大円筒部25の径方向内側の連結部26を介して一体に設けられかつ内周面がハウジング2に設けられた円筒部2aの外周面に摺接する小円筒部27とを備えている。大円筒部25の前端部は、ピストン22が前記第1位置から前記第2位置に移動する際にプレート17の環状壁18の後面を押圧する押圧部28となっている。小円筒部27の後端面は連結部26の後端面と同一面上にある。小円筒部27の前端部には連結部26よりも前方に突出しかつプレート17の凹所19内に前後方向に移動自在に嵌め入れられる嵌入部29が設けられている。嵌入部29の前端に径方向内向きに突出した内向きフランジ31が設けられ、内向きフランジ31の内周縁に前方に突出しかつドローバー12の後端部の周囲を囲む囲繞壁32が設けられている。
【0029】
ピストン22が前記第1位置にあるときに、ドローバー12は皿ばね15により付勢されて工具をクランプする後退位置に移動する。また、ピストン22が前記第2位置にあるときに、ドローバー12はピストン22に押されて工具をアンクランプする前進位置に移動する。
【0030】
ピストン22の内部には、ピストン22が前記第1位置に移動して後退位置にあるドローバー12と接触し、ピストン22が前記第2位置に移動して前進位置にあるドローバー12と離隔する回転継手33が、前端部を除いた大部分がハウジング2の円筒部2a内に位置するように配置されている。ピストン22とハウジング2との間に、回転継手33から漏れたクーラントを収容するとともにハウジング2に設けられたドレン穴2bに通じるドレン室34が設けられている。ピストン22が前記第1位置にあるときには、円筒部2aの内部空間がドレン室34となり、ピストン22が前記第2位置にあるときには、円筒部2aの内部空間、および円筒部2aの前端と内向きフランジ31との間の空間がドレン室34となる。ドレン室34はハウジング2に形成されたクーラント排出路2cを介してドレン穴2bに通じている。
【0031】
ピストン22が前記第1位置にあるときに、プレート17とピストン22の内向きフランジ31および囲繞壁32との間、ならびにドローバー12と囲繞壁32との間にドレン室34および後述するパージエア経路60に通じるラビリンス部35が形成されるようになっている。
【0032】
主軸装置1には、外部に設けられたクーラント供給手段(図示略)から主軸3前端にクランプされた工具にクーラントを供給するスルークーラント経路40と、外部に設けられたエア供給手段(図示略)からテーパ穴8にエアを供給する洗浄エア経路50と、スルークーラント経路40から漏れ出してドレン室34内に収容されたクーラントを外部から供給されたエアによりハウジング2に設けられたドレン穴2bに誘導するパージエア経路60とが設けられている。
【0033】
スルークーラント経路40は、ハウジング2に形成されてクーラント供給手段に通じる第1クーラント流路41と、回転継手33に形成されて第1クーラント流路41に通じる第2クーラント流路42と、ドローバー12の軸心に形成されかつ前端が工具ホルダ7のクーラント流路7bと通じる第3クーラント流路43とからなる。そして、ピストン22が第1位置に移動してドローバー12が後退位置にあるときに第2クーラント流路42と第3クーラント流路43が通じ、ピストン22が第2位置に移動してドローバー12が前進位置にあるときに第2クーラント流路42と第3クーラント流路43が離隔する。
【0034】
洗浄エア経路50は、ハウジング2に形成されて圧縮エア供給手段に通じる第1エア流路51と、ピストン22の押圧部28に周方向に間隔をおいて前後方向貫通状に形成され、かつ前端が押圧部28前面に開口するとともに後端が押圧部28後面に開口してピストン22内に通じる複数の第2エア流路52(洗浄用エア流路)と、プレート17に周方向に間隔をおいて形成された複数の第3エア流路53と、ドローバー12の後部に第3エア流路53に通じるように周方向に間隔をおいて形成されかつ先端がドローバー12の段部34に開口した複数の第4エア流路54と、主軸3の軸心穴における皿ばね15が配置された空間からなる第5エア流路55と、ドローバー12の前部に第5エア流路55に通じるように形成され、かつ先端がテーパ穴8内に開口した第6エア流路56とからなる。洗浄エア経路50の第1エア流路51は、ハウジング2の後面から前方に延びる1つの第1直線部511と、第1直線部511の前端に連なった環状部512と、周方向に間隔をおいて形成され、かつ後端が環状部512に連なるとともに先端が円筒部2aよりも径方向外側部分の前面に開口した複数の第2直線部513とからなる。
【0035】
ピストン22が前記第1位置に移動してドローバー12が後退位置にあるときに、ピストン22の押圧部28がプレート17の環状壁18後面から離隔するとともに、第2エア流路52の後端開口がハウジング2における円筒部2aよりも径方向外側部分の前面により塞がれることによって、第3エア流路53へのエアの流れが遮断される。一方、ピストン22が前記第2位置に移動してドローバー12が前進位置にあるときに、第1エア流路51と第2エア流路52とが、ハウジング2の円筒部2aよりも径方向外側部分の前面と、ピストン22のロッド部24における押圧部28および小円筒部27の後面との間に形成される空間57を介して通じるとともに、第2エア流路52と第3エア流路53とが通じて、エアが洗浄エア経路50を通ってテーパ穴8内に供給される。
【0036】
パージエア経路60は、洗浄エア経路50の第1エア流路51と、ピストン22のロッド部24の小円筒部27に周方向に間隔をおいて前後方向貫通状に形成された複数のパージ用エア流路61とを備えている。パージ用エア流路61と第1エア流路51の前端開口とは周方向の同一位置にある。
【0037】
ピストン22が前記第1位置に移動してドローバー12が後退位置にあるときに、パージ用エア流路61が洗浄エア経路50の第1エア流路51に通じるとともに、ハウジング2の円筒部2aよりも径方向外側部分の前面と、ピストン22のロッド部24における押圧部28および小円筒部27の後面とが密着して第2エア流路52の後端開口が塞がれる。さらに、パージ用エア流路61が、上述のようにして形成されたラビリンス部35を介してドレン室34内に通じる。これによりパージエア経路60が開放され、エアがドレン室34に送られ、エアの圧力によってスルークーラント経路40から漏れ出したクーラントがドレン穴2bに誘導され、ハウジング2の外部に排出される。
【0038】
上述したように、主軸装置1によれば、ドローバー12がクランプ方向に移動している加工時に、パージエア経路60が開放されるとともに洗浄用エア流路52が閉じられることにより、パージエア経路60にエアが流れるとともに洗浄エア経路50へのエアの流れが遮断され、エアの圧力によってスルークーラント経路40から漏れ出してドレン室34に収容されたクーラントがドレン穴2bに誘導され、クーラント排出路2cを通ってハウジング2の外部に排出される。したがって、加工時にスルークーラント経路40から漏れ出したクーラントを、加工を継続している間にハウジング2の外部に排出することができる。その結果、加工時にスルークーラント経路40から漏れ出したクーラントが、加工を継続している間に主軸3を支持する軸受や主軸駆動用のモータ6に浸入することによって主軸装置1の故障の原因となることが防止される。
【0039】
なお、ドローバー12がアンクランプ方向に移動しているアンクランプ時にスルークーラント経路40から漏れ出したクーラントは、その後の加工時に、上記と同様にハウジング2の外部に排出される。
【0040】
図4および図5は工作機械の主軸装置の変形例を示す。
【0041】
図4および図5において、主軸装置100には、ピストン22が前記第1位置にあるときに塞がれるとともに、前記第2位置にあるときに洗浄エア経路50をドレン室34に通じさせる分岐エア経路110が設けられている。分岐エア経路110は、パージエア経路60のパージ用エア流路61と周方向にずれた位置に形成され、かつ一端がピストン22の洗浄用エア流路である第2エア流路52に開口するとともに他端部がロッド部24の小円筒部27の内周面に開口した貫通穴111からなる。
【0042】
主軸装置100のその他の構成は、図1図3に示す主軸装置1と同一であり、同一符号を付す。
【0043】
図4および図5に示す工作機械の主軸装置100によれば、ピストン22が前記第2位置にあり、ドローバー12がアンクランプ方向に移動している場合にも、洗浄エア経路50を流れるエアの一部が分岐エア経路110を通ってドレン室34に流れ、エアの圧力によってスルークーラント経路40から漏れ出してドレン室34に収容されたクーラントがドレン穴2bに誘導され、クーラント排出路2cを通ってハウジング2の外部に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明による主軸装置は、金属からなる被削材に切削加工を施す工作機械に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
1、100:主軸装置、2:ハウジング、2b:ドレン穴、3:主軸、8:テーパ穴(工具取付部)、12:ドローバー、15:皿ばね(第1移動手段、付勢手段)、16:アクチュエータ、17:プレート、18:環状壁、19:凹所、22:ピストン、23:受圧部、24:ロッド部、28:押圧部、29:嵌入部、31:内向きフランジ部、33:回転継手、34:ドレン室、35:ラビリンス部、40:スルークーラント経路、42:第2クーラント流路、43:第3クーラント流路、50:洗浄エア経路、51:第1エア流路、52:第2エア流路(洗浄用エア流路)、53:第3エア流路、60:パージエア経路、61:パージ用エア流路
図1
図2
図3
図4
図5