(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】燃焼熱源機
(51)【国際特許分類】
F23N 5/00 20060101AFI20240912BHJP
F23N 3/08 20060101ALI20240912BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20240912BHJP
F24H 15/215 20220101ALI20240912BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20240912BHJP
F24H 15/35 20220101ALI20240912BHJP
【FI】
F23N5/00 G
F23N3/08
F23N5/00 S
F24H1/14 B
F24H15/215
F24H15/219
F24H15/35
(21)【出願番号】P 2021079508
(22)【出願日】2021-05-10
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 真伍
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 悠也
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-294861(JP,A)
【文献】特開2013-007535(JP,A)
【文献】特開平03-067918(JP,A)
【文献】特開2007-120450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0111065(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00 - 5/26
F24H 1/00 - 15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排気を生成するバーナを収容した燃焼室と、
燃焼排気の熱を吸熱し流体を加熱する熱交換器と、
熱交換器を通過した燃焼排気を吸引してバーナに燃焼用空気を供給する送風機と、
バーナに燃料を供給する燃料供給機と、
熱交換器で加熱された後の流体の流出温度を検出する流出温度検出器と、
流体の加熱目標である設定温度を設定する温度設定器と、
少なくとも送風機および燃料供給機を制御する制御器とを備え、
燃焼排気流が燃焼室、熱交換器、送風機の順に流れる構成とする燃焼熱源機であって、
前記制御器は、流体の温度が設定温度となるようにバーナの必要な熱量に応じて燃焼用空気量および燃料供給量を設定する際、燃料供給量が同一とみなせる条件において、前記温度設定器で設定される設定温度または前記流出温度検出器で検出される流出温度が高くなるほど送風機の回転数を増加させるように補正する構成、または、前記温度設定器で設定される設定温度または前記流出温度検出器で検出される流出温度が低くなるほど送風機の回転数を減少させるように補正する構成の少なくとも一方を備える燃焼熱源機。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼熱源機において、
前記制御器は、燃料供給量と送風機の回転数との相関に関する初期設定値を有し、バーナの加熱開始時またはバーナの熱量切替時は必要とされる燃料供給量に対して前記初期設定値による回転数で送風機を動作させ、その後、流出温度検出器で検出する流体の流出温度が所定範囲に入った時以降は前記補正を行った回転数で送風機を動作させる構成とする燃焼熱源機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃焼熱源機において、
熱交換器で加熱される前の流体の流入温度を直接または算出により検出する流入温度検出器をさらに備え、
前記制御器は、さらに、流入温度検出器で検出される流入温度が低くなるほど送風機の回転数を増加させるように補正する構成、または、流入温度検出器で検出される流入温度が高くなるほど送風機の回転数を減少させるように補正する構成の少なくとも一方を備える燃焼熱源機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃焼熱源機において、
バーナは、複数の単一バーナを群としたバーナブロックを複数備え、
前記制御器は、燃焼していないバーナブロックが多くなるほど送風機の回転数を減少させるようにさらに補正を行う構成とする燃焼熱源機。
【請求項5】
燃焼排気を生成するバーナを収容した燃焼室と、
燃焼排気の熱を吸熱し流体を加熱する熱交換器と、
熱交換器を通過した燃焼排気を吸引してバーナに燃焼用空気を供給する送風機と、
バーナに燃料を供給する燃料供給機と、
熱交換器で加熱される前の流体の流入温度を直接または算出により検出する流入温度検出器と、
少なくとも送風機および燃料供給機を制御する制御器とを備え、
燃焼排気流が燃焼室、熱交換器、送風機の順に流れる構成とする燃焼熱源機であって、
前記制御器は、流体の温度が設定温度となるようにバーナの必要な熱量に応じて燃焼用空気量および燃料供給量を設定する際、燃料供給量が同一とみなせる条件において、流入温度検出器で検出される流入温度が低くなるほど送風機の回転数を増加させるように補正する構成、または、流入温度検出器で検出される流入温度が高くなるほど送風機の回転数を減少させるように補正する構成の少なくとも一方を備える燃焼熱源機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナに供給される燃焼用空気量を適正に調整することを可能とする燃焼熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置等の燃焼熱源機では、バーナを安定した燃焼状態とするためバーナの空気過剰率(燃焼用空気量/燃料供給量)が最適に設定されるように、バーナの熱量に基づいて設定された燃料供給量に対する燃焼用空気量が送風機の回転数によって決定される。燃焼用空気量の設定について開示した文献として、以下のものがある。
【0003】
特許文献1には、ガス燃焼装置において、バーナに燃焼用空気を供給するファンの回転速度を燃焼排気中の酸素濃度に対応して設定し、ドレン生成量が増加するに従ってファンの回転速度を速くするように補正することが記載されている。この特許文献1では、熱交換器でのドレン生成量は燃焼排気の排気温度が低くなるに従って増加するため、排気ダクト内に温度センサを設け、この温度センサで検知する排気温度の低下に伴ってファンの回転速度を速くするように補正することが記載されている。
特許文献2には、非コンデンシングボイラーにおいて、熱交換器に流入する還水温度と熱交換器から流出する供給水温度とをセンサで検知して、還水温度および供給水温度の平均温度から空気過剰率を算出して送風機の風量目標値を決定し、風量センサからの入力値をフィードバックして風量目標値を補正することが記載されている。
また、特許文献3には、温風暖房機に関して、バーナの熱量からあらかじめ決定したファンの回転数を室温に応じて補正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-82416号公報
【文献】特許第4712048号公報
【文献】特開昭62-112916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、送風機の位置が燃焼室よりも燃焼排気流の下流側に配置され、送風機で燃焼排気を吸引して燃焼室のバーナに燃焼用空気が供給される引っ張り式の燃焼熱源機では、燃焼排気の排気温度の高低によって送風機周辺の燃焼排気の空気密度が変動し、バーナに供給される燃焼用空気量は、送風機で吸引した燃焼排気の空気量とは同じにならず、排気温度が高くなるほど少なくなってしまう。そのため、引っ張り式の燃焼熱源機の場合、送風機が同じ空気量で燃焼排気を吸引していても、排気温度の影響によってバーナの空気過剰率が変動し、バーナの燃焼状態が悪化するおそれがあった。前記各特許文献に記載する手段では、このような問題を解決できるものではなかった。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、引っ張り式の燃焼熱源機において排気温度の影響を受けることなくバーナに供給される燃焼用空気量を適正に調整することを可能とする燃焼熱源機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る燃焼熱源機は、
燃焼排気を生成するバーナを収容した燃焼室と、
燃焼排気の熱を吸熱し流体を加熱する熱交換器と、
熱交換器を通過した燃焼排気を吸引してバーナに燃焼用空気を供給する送風機と、
バーナに燃料を供給する燃料供給機と、
熱交換器で加熱された後の流体の流出温度を検出する流出温度検出器と、
流体の加熱目標である設定温度を設定する温度設定器と、
少なくとも送風機および燃料供給機を制御する制御器とを備え、
燃焼排気流が燃焼室、熱交換器、送風機の順に流れる構成とする燃焼熱源機であって、
前記制御器は、流体の温度が設定温度となるようにバーナの必要な熱量に応じて燃焼用空気量および燃料供給量を設定する際、燃料供給量が同一とみなせる条件において、前記温度設定器で設定される設定温度または前記流出温度検出器で検出される流出温度が高くなるほど送風機の回転数を増加させるように補正する構成、または、前記温度設定器で設定される設定温度または前記流出温度検出器で検出される流出温度が低くなるほど送風機の回転数を減少させるように補正する構成の少なくとも一方を備える。
【0008】
前記「燃焼排気流が燃焼室、熱交換器、送風機の順に流れる構成」とは、送風機が燃焼排気を吸引することで燃焼室のバーナに燃焼用空気が供給される引っ張り式の燃焼熱源機の構成をいう。引っ張り式の燃焼熱源機の場合、排気温度の高低によって送風機周辺の燃焼排気の空気密度が変動するため、送風機により同じ空気量の燃焼排気を吸引していてもバーナに供給される燃焼用空気量が増減して、バーナの空気過剰率が変動し、バーナの燃焼状態が悪化しやすくなる。一方、設定温度や流体の流出温度が高い場合、熱交換器に多くの熱を与える必要があるため排気温度は高い状態となる。そこで、本発明者らは、設定温度や流体の流出温度から排気温度の状態を想定できると考え、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の前記構成によれば、前記設定温度や前記流出温度が高くなるほど送風機の回転数を増加させるように回転数の設定値を補正することで燃焼排気の排出量を相対的に増加させる。これにより、前記設定温度や前記流出温度が高い場合は、燃焼排気の排気温度が高くなるため、送風機周辺の排気温度が高い状態となり送風機で吸引する燃焼排気の空気密度が相対的に低くなっても、バーナに供給される燃焼用空気量の減少を抑制できる。従って、引っ張り式の燃焼熱源機で排気温度が高い状態となる場合でも、燃料供給量が略同一の条件においてバーナの空気過剰率を一定に維持することができる。
【0010】
また、前記設定温度や前記流出温度が低くなるほど送風機の回転数を減少させるように回転数の設定値を補正することで燃焼排気の排出量を相対的に減少させる。これにより、前記設定温度や前記流出温度が低い場合は、燃焼排気の排気温度が低くなるため、送風機周辺の排気温度が低い状態となり送風機で吸引する燃焼排気の空気密度が相対的に高くなっても、バーナに供給される燃焼用空気量の増加を抑制できる。従って、引っ張り式の燃焼熱源機で排気温度が低い状態となる場合でも、燃料供給量が略同一の条件においてバーナの空気過剰率を一定に維持することができる。
【0011】
このように、燃料供給量が略同一の条件の場合、すなわち、バーナの熱量に変わりがない場合に、排気温度の影響により送風機が吸引する燃焼排気の空気密度が変動しても、バーナに供給される燃焼用空気量を適正に調整して空気過剰率を一定に維持することができ、バーナの燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0012】
以上より、引っ張り式の燃焼熱源機において燃焼排気の排気温度の影響を受けることなくバーナの安定した燃焼状態を確保することができる。また、燃焼熱源機に通常備える流出温度検出器や温度設定器を利用して前記した送風機の回転数補正の制御を行うことができるので、新たに排気温度を測定するセンサを設置することなく排気温度の状態を確認して燃焼用空気量を適正に調整することができる。
【0013】
前記燃焼熱源機において、
前記制御器は、燃料供給量と送風機の回転数との相関に関する初期設定値を有し、バーナの加熱開始時またはバーナの熱量切替時は必要とされる燃料供給量に対して前記初期設定値による回転数で送風機を動作させ、その後、流出温度検出器で検出する流体の流出温度が所定範囲に入った時以降は前記補正を行った回転数で送風機を動作させる構成とすることが望ましい。
【0014】
前記「流出温度が所定範囲に入った時」とは、例えば、流出温度検出器で検出する流体の流出温度が一定以上に達した時、流出温度検出器で検出する流体の流出温度の温度変化が一定以内となり安定した時、流出温度検出器で検出する流体の流出温度と設定温度との差が一定以内となり小さくなった時などをいう。
【0015】
バーナの加熱開始時やバーナの熱量切替時における初期においては、加熱途中の流体の温度や排気温度が安定していないため、この初期の状態から送風機の回転数を補正すると、バーナの燃焼を悪化させてしまうおそれがある。
【0016】
そこで、前記構成によれば、流出温度検出器で検出する流体の流出温度が所定範囲に入って安定した状態となった場合に送風機の回転数を補正することで、燃焼用空気量を適正に設定することができ、バーナの安定した燃焼状態を確保することができる。
【0017】
前記燃焼熱源機において、
熱交換器で加熱される前の流体の流入温度を直接または算出により検出する流入温度検出器をさらに備え、
前記制御器は、さらに、流入温度検出器で検出される流入温度が低くなるほど送風機の回転数を増加させるように補正する構成、または、流入温度検出器で検出される流入温度が高くなるほど送風機の回転数を減少させるように補正する構成の少なくとも一方を備えることが望ましい。
【0018】
流体の流入温度の高低にかかわらず設定温度または流体の流出温度が同じであれば排気温度は同じ温度状態になると思えるが、流体の流入温度が低いほど、同じ設定温度または流体の流出温度の場合は熱交換器に多くの熱を与える必要があるため排気温度が高い状態となることを本発明者らは確認した。
【0019】
そこで、前記構成によれば、流体の流入温度によっても送風機の回転数を補正することで、バーナに供給される燃焼用空気量をより適正に調整して空気過剰率を一定に維持することができ、バーナの燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0020】
前記燃焼熱源機において、
前記バーナは、複数の単一バーナを群としたバーナブロックを複数備え、
前記制御器は、燃焼していないバーナブロックが多くなるほど、送風機の回転数を減少させるようにさらに補正を行う構成とすることが望ましい。
【0021】
燃焼していないバーナブロックがある場合、すべてのバーナブロックが燃焼する全面燃焼時と比べ、送風機周辺の排気温度に差が生じ得る。すなわち、燃焼していないバーナブロックが多くなるほど、全面燃焼時と比べ、送風機周辺で排気温度の低い部分が多くなり得る。
【0022】
そこで、前記構成によれば、それぞれのバーナブロックの燃焼の有無により送風機の回転数を補正することで、送風機周辺での排気温度の差の影響を受けることなくバーナに供給される燃焼用空気量をより適正に調整することができ、バーナの燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0023】
また、本発明に係る燃焼熱源機は、
燃焼排気を生成するバーナを収容した燃焼室と、
燃焼排気の熱を吸熱し流体を加熱する熱交換器と、
熱交換器を通過した燃焼排気を吸引してバーナに燃焼用空気を供給する送風機と、
バーナに燃料を供給する燃料供給機と、
熱交換器で加熱される前の流体の流入温度を直接または算出により検出する流入温度検出器と、
少なくとも送風機および燃料供給機を制御する制御器とを備え、
燃焼排気流が燃焼室、熱交換器、送風機の順に流れる構成とする燃焼熱源機であって、
前記制御器は、流体の温度が設定温度となるようにバーナの必要な熱量に応じて燃焼用空気量および燃料供給量を設定する際、燃料供給量が同一とみなせる条件において、流入温度検出器で検出される流入温度が低くなるほど送風機の回転数を増加させるように補正する構成、または、流入温度検出器で検出される流入温度が高くなるほど送風機の回転数を減少させるように補正する構成の少なくとも一方を備える。
【0024】
前述のとおり、引っ張り式の燃焼熱源機の場合、送風機周辺の排気温度の高低によってバーナに供給される燃焼用空気量が増減して、バーナの空気過剰率が変動し、バーナの燃焼状態が悪化しやすくなる。一方、流体の流入温度の高低にかかわらず設定温度または流体の流出温度が同じであれば排気温度は同じ温度状態になると思えるが、流体の流入温度が低いほど、同じ設定温度または流体の流出温度の場合は熱交換器に多くの熱を与える必要があるため排気温度が高い状態となることを本発明者らは確認した。そこで、本発明者らは、流体の流入温度から排気温度の状態を想定できると考え、本発明を完成させた。
【0025】
すなわち、本発明の前記構成によれば、前記流入温度が低くなるほど送風機の回転数を増加させるように回転数の設定値を補正することで燃焼排気の排出量を相対的に増加させる。これにより、前記流入温度が低い場合は、燃焼排気の排気温度が高くなるため、送風機周辺の排気温度が高い状態となり送風機で吸引する燃焼排気の空気密度が相対的に低くなっても、バーナに供給される燃焼用空気量の減少を抑制できる。従って、引っ張り式の燃焼熱源機で前記流入温度が低く排気温度が高い状態となる場合でも、燃料供給量が略同一の条件においてバーナの空気過剰率を一定に維持することができる。
【0026】
また、前記流入温度が高くなるほど送風機の回転数を減少させるように回転数の設定値を補正することで燃焼排気の排出量を相対的に減少させる。これにより、前記流入温度が低い場合は、燃焼排気の排気温度が低くなるため、送風機周辺の排気温度が低い状態となり送風機で吸引する燃焼排気の空気密度が相対的に高くなっても、バーナに供給される燃焼用空気量の増加を抑制できる。従って、引っ張り式の燃焼熱源機で前記流入温度が高く排気温度が低い状態となる場合でも、燃料供給量が略同一の条件においてバーナの空気過剰率を一定に維持することができる。
【0027】
このように、燃料供給量が略同一の条件の場合、すなわち、バーナの必要な熱量に変わりがない場合に、流体の流入温度の違いによる排気温度の影響により送風機が吸引する燃焼排気の空気密度が変動しても、バーナに供給される燃焼用空気量を適正に調整して空気過剰率を一定に維持することができ、バーナの燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0028】
以上より、引っ張り式の燃焼熱源機において流体の流入温度に起因した燃焼排気の排気温度の影響を受けることなくバーナの安定した燃焼状態を確保することができる。また、燃焼熱源機に通常備える流入温度検出器(流体の流入温度を直接または算出により検出するもの)を利用して前記した送風機の回転数補正の制御を行うことができるので、新たに排気温度を測定するセンサを設置することなく排気温度の状態を確認して燃焼用空気量を適正に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1による給湯装置の構成を示す模式図である。
【
図2】燃焼用空気量(送風機の回転数)と燃料供給量との関係でバーナの燃焼設定ラインを表したグラフである。
【
図3】実施形態1において送風機の回転数補正を行うための処理を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態2において送風機の回転数補正を行うための処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1は、燃焼熱源機として燃焼室10、熱交換器21、送風機50を備え、給水管61から熱交換器21内に供給される水をバーナ11の燃焼排気により加熱し、出湯管62を通じてシャワーやカランなどの給湯端末に供給する給湯装置1である。給湯装置1は、リモコン等の温度設定器70を備え、この温度設定器70によって使用者が要求する水の加熱目標である設定温度が設定される。この給湯装置1は、送風機50の位置が燃焼室10よりも燃焼排気流の下流側に配置され、燃焼排気流が燃焼室10、熱交換器21、送風機50の順に流れる構成を備えている。すなわち、送風機50で燃焼排気を吸引して燃焼室10のバーナ11に燃焼用空気が供給される引っ張り式の給湯装置1である。なお、本発明に係る燃焼熱源機は、給湯装置に限らず、温風暖房機等その他の引っ張り式の器具に適用できる。
【0031】
給湯装置1は、前面に前板(不図示)を取り付けた外装ケーシング2を有し、外装ケーシング2内には、下方から順に、燃焼室10と、熱交換室20と、排気室30とが配設されている。なお、本明細書では、外装ケーシング2の前面と後面とが対向する方向を前後方向、前後方向と横方向に交差する方向を左右方向、前後方向および左右方向と高さ方向に交差する方向を上下方向とする。
【0032】
燃焼室10内には、燃焼排気を生成するバーナ11が配設されている。バーナ11には、ガス供給管60が接続されており、ガス供給管60には、バーナ11に燃料ガスを供給させるためのガスバルブ(燃料供給機)71が設けられている。ガスバルブ71は、バーナ11に要求する熱量に応じた燃料供給量の燃料ガスがバーナ11に供給されるように弁開度が設定される。すなわち、バーナ11に供給される燃料供給量は、ガスバルブ71の弁開度によって決定される。バーナ11の上方には、点火電極12が配設されている。
バーナ11は、ガス供給管60からの燃料ガスと燃焼室10内に供給される燃焼用空気とを混合して燃焼させることで燃焼排気を生成する。このバーナ11の燃焼は、燃焼用空気量と燃料供給量との比である空気過剰率λを一定値に保つことで安定した燃焼状態を確保できる。
【0033】
熱交換室20は、上下に開放する略矩形箱状の筐体を有する。熱交換室20の下端は、燃焼室10の上端と接続されており、熱交換室20の上端は、排気室30の下端と接続されている。熱交換室20内には、複数の伝熱フィン22と、各伝熱フィン22に貫挿される伝熱管23とを備えるフィンチューブ式の熱交換器21が組み込まれている。伝熱管23の一端側は給水管61と接続され、伝熱管23の他端側は出湯管62と接続されている。熱交換器21は、バーナ11により生成された燃焼排気中の熱を回収し、給水管61から供給される水を加熱する。給水管61には、給水管61内を流れる水の給水量を検出する流量センサ72が設けられている。出湯管62には、熱交換器21で加熱された後の出湯管62を流れる水の出湯温度(流出温度)を検出する流出温度検出器としての出湯温センサ73が設けられている。なお、熱交換器21出口付近の出湯管62に熱交出湯温センサを設け、この熱交出湯温センサを前記流出温度検出器として利用してもよい。例えば、熱交換器21を迂回して給水管61から出湯管62へと連結するバイパス管を備える場合は、出湯管62におけるバイパス管との合流部より上流側位置に設けた熱交出湯温センサを前記流出温度検出器として利用することができる。なお、本発明では、熱交換器21で加熱する流体は、水の代わりに他の流体を用いてもよい。
【0034】
排気室30は、内部が空洞の筐体で形成され、上部が左右方向で幅狭となって正面視略逆L字状を有する。この排気室30の上部の凹んだ左側面に送風機50が取り付けられている。送風機50は、羽根車52と、羽根車52を収容するファンケーシング51と、羽根車52を回転駆動させるファン駆動モータ53とを有する。送風機50は、羽根車52を回転させることで熱交換器21を通過した燃焼排気を吸引して器具外へ排出させる。この送風機50によって吸引した燃焼排気の空気量に相当する量の燃焼用空気が燃焼室10内に取り込まれてバーナ11に供給される。すなわち、バーナ11に供給される燃焼用空気量は、送風機50の回転数によって決定される。従って、バーナ11の空気過剰率λ(燃焼用空気量/燃料供給量)は、ガスバルブ71の弁開度で設定された燃料供給量に対して所定量の燃焼用空気量が供給されるように送風機50の回転数を設定することで一定に保持される。
【0035】
また、給湯装置1は、装置全体を制御する制御器3を備える。制御器3は、マイクロコンピュータ、記憶部、タイマ等を有し、また、温度設定器70、センサ類、機器類等と電気的に接続されている。制御器3は、送風機50およびガスバルブ71を制御する。また、制御器3は、熱交換器21で加熱される前の給水管61を流れる水の給水温度を検出する流入温度検出器(不図示)を備えている。この流入温度検出器は、出湯温度(出湯温センサ73の検出値)、バーナ11の熱量(ガスバルブ71による燃料供給量)、給水量(流量センサ72の検出値)に基づいて給水管61を流れる水の給水温度を算出することで検出する。なお、給水管61に流入温度検出器となる給水温センサを設け、この給水温センサによって給水管61を流れる水の給水温度を直接検出するようにしてもよい。
【0036】
制御器3は、バーナ11の空気過剰率λが一定になるように燃料供給量と燃焼用空気量との相関関係に基づく基準データ(基準燃焼設定ライン)のテーブルまたは関係式を有し、この基準データによる燃焼用空気量に基づいて、バーナ11の燃焼開始時またはバーナ11の熱量切替時における送風機50の回転数の初期設定値を決定する。
【0037】
ところで、引っ張り式の燃焼熱源機の場合、排気温度の高低によって送風機50周辺(排気室30内やファンケーシング51内)の燃焼排気の空気密度が変動するため、送風機50により回転数を一定にして同じ空気量の燃焼排気を吸引していてもバーナ11に供給される燃焼用空気量が増減して、バーナ11の空気過剰率λが変動し、バーナ11の燃焼状態が悪化しやすくなる。
【0038】
本発明者らの試験によれば、送風機50の回転数と燃料供給量を一定にして、給水管61を流れる水の量を調整することで出湯温度を変えたときの空気過剰率λおよび排気温度を確認したところ、出湯温度が高くなるにつれて、空気過剰率λが下がり、排気温度が高くなることが分かった。また、送風機50の回転数と燃料供給量と出湯温度を一定にして、給水温度を変えたときの空気過剰率λおよび排気温度を確認したところ、給水温度が低くなるにつれて、空気過剰率λが下がり、排気温度が高くなることが分かった。
【0039】
これより、本発明者らは、出湯温度または出湯温度の目標温度である設定温度から排気温度の状態を想定して、バーナ11の空気過剰率λが一定に維持されるように最適な燃焼用空気量を得るための送風機50の回転数を見出した。また、給水温度からも排気温度の状態を想定して、バーナ11の空気過剰率λが一定に維持されるように最適な燃焼用空気量を得るための送風機50の回転数を見出した。
【0040】
すなわち、実施形態1では、出湯温度または設定温度が高くなるほど送風機50の回転数を増加させるように回転数の設定値を補正し、出湯温度または設定温度が低くなるほど送風機50の回転数を減少させるように回転数の設定値を補正する(第1補正)。加えて、給水温度が低くなるほど送風機50の回転数を増加させるように回転数の設定値を補正し、給水温度が高くなるほど送風機50の回転数を減少させるように回転数の設定値を補正する(第2補正)。
【0041】
制御器3は、初期設定値による送風機50の回転数を前記のように補正する処理を行う。そのため、制御器3は、出湯温度または設定温度との関係においてバーナ11の空気過剰率λが一定になるように一定の燃料供給量に対する最適な燃焼用空気量を得るための送風機50の回転数を補正する第1補正値データ(燃焼設定ライン)のテーブルまたは関係式を有する。また、制御器3は、給水温度との関係においてバーナ11の空気過剰率λが一定になるように一定の燃料供給量に対する最適な燃焼用空気量を得るための送風機50の回転数を補正する第2補正値データ(燃焼設定ライン)のテーブルまたは関係式を有する。
【0042】
送風機50の回転数の補正について、
図2のグラフに基づいて説明する。
図2のグラフは、縦軸に燃焼用空気量(送風機50の回転数)、横軸に燃料供給量(ガスバルブ71の弁開度)とし、給湯動作中のバーナ11の要求熱量に応じたバーナ11の燃焼設定ラインを表したものである。
図2(a)は排気温度が高くなる場合の送風機50の回転数補正による燃焼設定ライン(Lα1、Lα2)を示し、
図2(b)は排気温度が低くなる場合の送風機50の回転数補正による燃焼設定ライン(Lβ1、Lβ2)を示す。なお、
図2(a)(b)に示す燃焼設定ラインLは、例えば、所定の基準温度に対して、給水温度が20℃、出湯温度が40℃(
図2(a))または60℃(
図2(b))のとき、空気過剰率λが2.0となる送風機50の回転数による基準燃焼設定ラインであり、この基準燃焼設定ラインLに従った送風機50の回転数がバーナ11の燃焼開始時またはバーナ11の熱量切替時の初期設定値となる。
【0043】
図2(a)では、給湯動作中のバーナ11での要求熱量において、所定の基準温度において出湯温度が低い側で設定した場合の基準燃焼設定ラインLに対して、出湯温度が基準温度から所定値以上に高い場合は、燃焼設定ラインLα1となるように送風機50の回転数を増加するように補正し(第1補正値)、さらに、給水温度が基準温度から所定値以下の低い場合は、燃焼設定ラインLα2となるように送風機50の回転数を増加するように補正する(第2補正値)ことを示している。
【0044】
図2(b)では、給湯動作中のバーナ11での要求熱量において、所定の基準温度において出湯温度が高い側で設定した場合の基準燃焼設定ラインLに対して、出湯温度が基準温度から所定値以下の低い場合は、燃焼設定ラインLβ1となるように送風機50の回転数を減少するように補正し(第1補正値)、さらに、給水温度が基準温度から所定値以上に高い場合は、燃焼設定ラインLβ2となるように送風機50の回転数を減少するように補正する(第2補正値)ことを示している。
【0045】
以上の補正により、燃料供給量が同一の条件の場合、すなわち、バーナ11の熱量に変わりがない場合に、排気温度の影響により送風機50が吸引する燃焼排気の空気密度が変動しても、バーナ11に供給される燃焼用空気量を適正に調整して空気過剰率λを一定に維持することができ、バーナ11の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0046】
なお、排気室30に排気温度センサを設け、排気温度センサによって検出する排気温度値を用いて送風機50の回転数を補正しようとする場合、排気温度センサの設置場所によっては排気温度の検出値にばらつきが生じて送風機50の回転数の補正値に影響し得るが、実施形態1のように出湯温度または設定温度、また、給水温度から排気温度を想定することにより安定した温度情報を取得でき、送風機50の回転数の補正精度を向上することができる。
【0047】
以下に、
図3を参照して、送風機50の回転数を補正する場合の処理を説明する。なお、この処理は、制御器3の指令によって実行される。
【0048】
流量センサ72によって検出される給水管61内の給水量が所定流量以上になると、送風機50を作動させ、ガスバルブ71を所定の弁開度に設定し、点火電極12をスパークさせてバーナ11を点火し、バーナ11の燃焼を開始する(ステップS1、S2)。この燃焼開始時における送風機50の回転数は、燃料供給量と送風機50の回転数との相関に関する初期設定値の回転数とされる。例えば、
図2中の基準燃焼設定ラインLにおける給湯動作中の要求熱量に対応した送風機50の回転数(補正無し)が設定される。
【0049】
そして、バーナ11の燃焼が開始されると、まず、出湯温度に基づいて送風機50の回転数を補正する処理を行う(ステップS3)。この処理では、ステップS3において出湯温センサ73によって検出される出湯温度を確認する。ステップS3により出湯温度と設定温度との差が一定以内になったことが確認されるまでは、初期設定値の回転数で送風機50を作動させる。ステップS3で出湯温度と設定温度との差が一定以内になったことが確認されると、ステップ4において、出湯温センサ73によって検出される出湯温度が出湯基準温度以上となっているか否か判別される。ここで出湯基準温度は、前記初期設定値における燃料供給量と送風機50の回転数との相関を定めたときの出湯温度である。例えば、
図2に示した基準燃焼設定ラインLにおいて給湯動作中の要求熱量での出湯温度に相当する。
【0050】
そして、ステップS4で出湯温度が出湯基準温度以上であると判別された場合は、処理をステップS5へと移行し、ステップS4で出湯温度が出湯基準温度未満であると判別された場合は、処理をステップS6へと移行する。
【0051】
ステップS5では、出湯温センサ73によって検出される出湯温度が出湯基準温度から離れている高い温度に対応して、送風機50の回転数の設定値を上げるように補正する。例えば、
図2(a)中の給湯動作中の要求熱量が同じ線分上において基準燃焼設定ラインLでの回転数から燃焼設定ラインLα1での回転数に増加するように補正する。
【0052】
ステップS6では、出湯温センサ73によって検出される出湯温度が出湯基準温度から離れている低い温度に対応して、送風機50の回転数の設定値を下げるように補正する。例えば、
図2(b)中の給湯動作中の要求熱量が同じ線分上において基準燃焼設定ラインLでの回転数から燃焼設定ラインLβ1での回転数に減少するように補正する。
【0053】
次に、給水温度に基づいて送風機50の回転数を補正する処理を行う(ステップS7)。この処理では、ステップS7において流入温度検出器によって算出される給水管61内を流れる水の給水温度を確認する。なお、給水管61に給水温センサを設ける場合は、この給水温センサによって検出する給水温度を確認する。給水温度が確認されると、ステップS8において給水温度が給水基準温度以上であるか否か判別される。ここで給水基準温度は、前記初期設定値における燃料供給量と送風機50の回転数との相関を定めたときの給水温度である。例えば、
図2に示した基準燃焼設定ラインLにおいて給湯動作中の要求熱量での給水温度に相当する。
【0054】
そして、ステップS8で給水温度が給水基準温度以上であると判別された場合は、処理をステップS9へと移行し、ステップS8で給水温度が給水基準温度未満であると判別された場合は、処理をステップS10へと移行する。
【0055】
ステップS9では、流入温度検出器によって算出された給水温度が給水基準温度から離れている高い温度に対応して、送風機50の回転数の設定値を下げるように補正する。例えば、
図2(b)中の給湯動作中の要求熱量が同じ線分上において、前記出湯温度に基づいて補正(ステップS3~ステップS7)した後の燃焼設定ラインLβ1での回転数から燃焼設定ラインLβ2での回転数に減少するように補正する。
【0056】
ステップS10では、流入温度検出器によって算出された給水温度が給水基準温度から離れている低い温度に対応して、送風機50の回転数の設定値を上げるように補正する。例えば、
図2(a)中の給湯動作中の要求熱量が同じ線分上において、前記出湯温度に基づいて補正(ステップS3~ステップS7)した後の燃焼設定ラインLα1での回転数から燃焼設定ラインLα2での回転数に増加するように補正する。
【0057】
これ以降、以上の出湯温度と給水温度との両方で補正した回転数で送風機50を作動させる(ステップS11)。以上の出湯温度と給水温度とに基づく送風機50の回転数補正は、バーナ11が消火されるまで実行される(ステップS12で「N」の場合に処理をステップS3に移行する。)。従って、給湯動作中に、設定温度が変更されたり出湯量(給水量と等しい)が変更されたりしてバーナ11に要求される熱量が変更(バーナ11の熱量切替え)されると、変更後の熱量において出湯温度と給水温度とに基づく送風機50の回転数補正が行われることとなる。
【0058】
以上より、実施形態1の給湯装置1によれば、燃料供給量が略同一の条件の場合、すなわち、バーナ11の熱量に変わりがない場合に、排気温度の影響により送風機50が吸引する燃焼排気の空気密度が変動しても、バーナ11に供給される燃焼用空気量を適正に調整して空気過剰率λを一定に維持することができ、バーナ11の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0059】
従って、引っ張り式の給湯装置1において燃焼排気の排気温度の影響を受けることなくバーナ11の安定した燃焼状態を確保することができる。また、本実施形態1では、給湯装置1に通常備える出湯温センサ73や温度設定器70、また、流入温度検出器を利用して送風機50の回転数補正の制御を行うので、新たに排気温度を測定するセンサを設置することなく排気温度の状態を確認して燃焼用空気量を適正に調整することができる。
【0060】
なお、本発明では、制御器3は、送風機50の回転数補正として、出湯温度に基づいた補正(
図3のステップS3~ステップS6)と給水温度に基づいた補正(
図3のステップS7~ステップS10)とを一度に行うようにしてもよい。すなわち、制御器3は、バーナ11の空気過剰率λが一定の値となるように補正する送風機50の回転数を、出湯温度および給水温度との関係で定めたテーブル(下記表1を参照)または関係式を記憶するようにし、送風機50の回転数補正の処理として、バーナ11の燃焼開始後からバーナ11が消火されるまで、出湯温度の確認(
図3のステップS3)と給水温度の確認(
図3のステップS7)とを行い、そして、確認した出湯温度および給水温度に基づいて、下記表1に示すようなテーブルまたは関係式から対応した送風機50の回転数の補正値を取得して、この補正値による回転数で送風機50を作動させるようにする。これにより、出湯温度および給水温度に対応した送風機50の回転数補正を早く行うことができ、排気温度の影響によるバーナ11の空気過剰率λの変動を早く抑制することができる。
【0061】
【0062】
また、本発明では、制御器3は、送風機50の回転数補正を出湯温度に基づいた補正だけを行うようにしてもよい。すなわち、
図3に示す処理において給水温度に基づいた補正の処理(ステップS7~ステップS10)を行わないようにしてもよい。
【0063】
また、
図3に示す処理では、出湯温センサ73で検出する出湯温度に基づいて送風機50の回転数を補正するが(ステップS4、S5、S6)、出湯温度に代えて温度設定器70で設定された設定温度が出湯基準温度以上か否か判別(ステップS4)して、設定温度が出湯基準温度以上の場合は送風機50の回転数を増加させるように補正(ステップS5)し、設定温度が出湯基準温度未満の場合は送風機50の回転数を減少させるように補正(ステップS6)する処理としてもよい。
【0064】
また、本発明では、制御器3は、出湯温センサ73で検出する出湯温度または温度設定器70で設定された設定温度に基づいて送風機50の回転数を補正する場合、次のように変更してもよい。
すなわち、制御器3は、前記出湯温度または前記設定温度が出湯基準温度以上に高くなるほど送風機50の回転数を増加させるように補正するだけとしてもよい。この場合、例えば、
図3に示す処理において、ステップS6の処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
また、制御器3は、前記出湯温度または前記設定温度が出湯基準温度よりも低くなるほど送風機50の回転数を減少させるように補正するだけとしてもよい。この場合、例えば、
図3に示す処理において、ステップS5の処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
なお、前記各変更例の場合でも、
図3に示した給水温度に基づいた補正の処理(ステップS7~ステップS10)を行わない構成としてもよい。
【0065】
また、本発明では、制御器3は、給水温度検出器における給水温度に基づいて送風機50の回転数を補正する場合、次のように変更してもよい。
すなわち、制御器3は、前記給水温度が給水基準温度以上に高くなるほど送風機50の回転数を減少させるように補正するだけとしてもよい。この場合、例えば、
図3に示す処理において、ステップS10の処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
また、制御器3は、前記給水温度が給水基準温度よりも低くなるほど送風機50の回転数を増加させるように補正するだけとしてもよい。この場合、例えば、
図3に示す処理において、ステップS9の処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
【0066】
また、本発明では、制御器3は、
図2(a)(b)で示した基準燃焼設定ラインLを設定するときの出湯温度(出湯温センサ73の検出値)または設定温度(温度設定器70の設定値)によって、送風機50の回転数を増加させる補正だけを行う制御構成、または、送風機50の回転数を減少させる補正だけを行う制御構成としてもよい。
すなわち、制御器3は、所定の基準温度(例えば、50℃)よりも低い温度(例えば、40℃)の出湯温度または設定温度で前記基準燃焼設定ラインLを設定した場合は、送風機50の回転数を増加させる補正だけを行う制御構成とする(
図2(a)の制御)。この場合、例えば、
図3に示す処理において、ステップS6およびステップS9の各処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
また、制御器3は、所定の基準温度(例えば、50℃)よりも高い温度(例えば、60℃)の出湯温度または設定温度で前記基準燃焼設定ラインLを設定した場合は、送風機50の回転数を減少させる補正だけを行う制御構成とする(
図2(b)の制御)。この場合、例えば、
図3に示す処理において、ステップS5およびステップS10の各処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
【0067】
(実施形態2)
上述のとおり、送風機50の回転数と燃料供給量と出湯温度を一定にして給水温度を変えた場合、給水温度が低くなるにつれて、空気過剰率λが下がり、排気温度が高くなることが分かった。本発明者らが、給水温度が約6℃の場合と約25℃の場合とで比較試験を行ったところ、給水温度が約6℃の場合の方が、排気温度は5℃~8℃高くなり、空気過剰率λは0.05ほど下がることが確認された。そこで、実施形態2の給湯装置1では、送風機50の回転数補正を給水温度だけに基づいて行うようにするものである。
【0068】
すなわち、実施形態2における送風機50の回転数補正の処理は、
図4を参照して、バーナ11を点火(ステップS21)し、バーナ11の燃焼(ステップS22)を開始すると、流入温度検出器にて給水温度を確認(ステップS23)する。ステップS23で給水温度が確認されると、ステップS24において給水温度が給水基準温度以上であるか否か判別し、ステップS24で給水温度が給水基準温度以上であると判別された場合は、処理をステップS25へと移行し、ステップS24で給水温度が給水基準温度未満であると判別された場合は、処理をステップS26へと移行する。なお、ここまでのステップS21、ステップS22、ステップS23、ステップS24の各ステップは、実施形態1において
図3に示したステップS1、ステップS2、ステップS7、ステップS8の各処理と同様である。
【0069】
そして、ステップS25では、流入温度検出器によって算出された給水温度が給水基準温度から離れている高い温度に対応して、送風機50の回転数の設定を下げるように補正する。この場合、例えば、
図2(b)中の給湯動作中の要求熱量が同じ線分上において基準燃焼設定ラインLでの回転数から燃焼設定ラインLβ2での回転数に減少するように補正する。
【0070】
ステップS26では、流入温度検出器によって算出された給水温度が給水基準温度から離れている低い温度に対応して、送風機50の回転数の設定を上げるように補正する。この場合、例えば、
図2(a)中の給湯動作中の要求熱量が同じ線分上において基準燃焼設定ラインLでの回転数から燃焼設定ラインLα2での回転数に増加するように補正する。
【0071】
これ以降、以上の給水温度で補正した回転数により送風機50を作動(ステップS27)させ、以上の給水温度に基づく送風機50の回転数補正をバーナ11が消火されるまで実行する(ステップS28で「N」の場合に処理をステップS23に移行する。)。
【0072】
以上の実施形態2の給湯装置1によっても、燃料供給量が略同一の条件の場合、すなわち、バーナ11の熱量に変わりがない場合に、排気温度の影響により送風機50が吸引する燃焼排気の空気密度が変動しても、バーナ11に供給される燃焼用空気量を適正に調整して空気過剰率λを一定に維持することができ、バーナ11の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0073】
従って、引っ張り式の給湯装置1において燃焼排気の排気温度の影響を受けることなくバーナ11の安定した燃焼状態を確保することができる。また、前記した送風機50の回転数補正には給湯装置1に本来必要となる流入温度検出器を利用するので、新たに排気温度を測定するセンサを設置することなく排気温度の状態を確認して燃焼用空気量を適正に調整することができる。
なお、実施形態2による給湯装置1のその他の構成および作用効果は、実施形態1と同様とする。
【0074】
また、本発明では、制御器3は、前記給水温度が給水基準温度よりも低くなるほど送風機50の回転数を増加させるように補正するだけとしてもよい。この場合、例えば、
図4に示す処理において、ステップS25の処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。また、制御器3は、前記給水温度が給水基準温度以上に高くなるほど送風機50の回転数を減少させるように補正するだけとしてもよい。この場合、例えば、
図4に示す処理において、ステップS26の処理は、「回転数の設定を変更しない」という処理とする。
【0075】
(その他の形態)
前記実施形態1、2の給湯装置1において、バーナ11は、複数の単一バーナ11を群としたバーナブロックを複数備える場合、制御器3は、燃焼していないバーナブロックの数が多くなるほど、送風機50の回転数を減少させるようにさらに補正を行う構成とすることができる。例えば、燃焼していないバーナブロックが1段増えるごとに、送風機50の回転数を一定割合または一定回転数ずつ減少させるようにしてもよいし、バーナブロックのすべてが燃焼している場合を100%として燃焼していないバーナブロックの数に応じて回転数の減少割合を定めるようにしてもよい。
【0076】
これは、燃焼していないバーナブロックがある場合、すべてのバーナブロックが燃焼する全面燃焼時と比べ、送風機50周辺の排気温度に差が生じ得る。すなわち、燃焼していないバーナブロックが多くなるほど、全面燃焼時と比べ、送風機50周辺で排気温度の低い部分が多くなり得る。
【0077】
そこで、前記構成のように、それぞれのバーナブロックの燃焼の有無により送風機50の回転数を補正することで、送風機50周辺での排気温度の差の影響を受けることなくバーナ11に供給される燃焼用空気量をより適正に調整することができ、バーナ11の燃焼状態の悪化を抑制することができる。
【0078】
なお、本発明は、前記実施形態に限定するものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 給湯装置(燃焼熱源機)
2 外装ケーシング
3 制御器
10 燃焼室
11 バーナ
12 点火電極
20 熱交換室
21 熱交換器
22 伝熱フィン
23 伝熱管
30 排気室
50 送風機
51 ファンケーシング
52 羽根車
53 ファン駆動モータ
60 ガス供給管
61 給水管
62 出湯管
70 温度設定器
71 ガスバルブ(燃料供給機)
72 流量センサ
73 出湯温センサ(流出温度検出器)