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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リヤゲート構造
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/46 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B60P1/46 B
B60P1/46 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021094140
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186093
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 正雄
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-180366(JP,A)
【文献】特開2004-25909(JP,A)
【文献】特開2004-352170(JP,A)
【文献】特開2004-58805(JP,A)
【文献】特開平06-297991(JP,A)
【文献】特許第4204286(JP,B2)
【文献】実開平4-107134(JP,U)
【文献】実開昭57-168449(JP,U)
【文献】米国特許第4563121(US,A)
【文献】独国特許発明第102019206069(DE,B3)
【文献】実開平1-173047(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/46
B60P 1/44
B60P 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬車両の荷室の後端部に装着されるリヤゲート構造において、
ゲート板を回動可能に支持する昇降スライダと、前記昇降スライダを昇降させる昇降手段と、前記昇降スライダを所定高さで停止させる上昇停止手段と、所定高さで停止した前記昇降スライダを固定する固定手段と、を備え、
前記固定手段が前記昇降スライダを固定したことを検知する第一センサと、ゲートの閉鎖時に前記ゲート板が前記昇降スライダに対して所定角度まで立ち上げられたことを検知する第二センサと、前記昇降スライダが固定されていない状態で前記ゲート板が所定角度まで立ち上がった際に前記昇降手段を停止させる制御装置とを、さらに備えた
ことを特徴とするリヤゲート構造。
【請求項2】
前記昇降手段は、前記昇降スライダと前記ゲート板に接続された線状部材と、前記線状部材を出し引きするアクチュエータとを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のリヤゲート構造。
【請求項3】
前記上昇停止手段は、前記昇降スライダ側に突出し前記昇降スライダの当接部を上から押さえる張出部を備え、
前記張出部は、前記昇降スライダに対して出没可能となっている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリヤゲート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷室の後端部に装着されるリヤゲート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を運搬するバン型運搬車両のリヤゲートは、車両後端枠に設けられたガイドレールと、ガイドレールに沿って昇降するゲートスライダと、ゲートスライダに回動可能に設けられたゲート板とを備えている(例えば特許文献1参照)。運搬車両に自動車を積み込む際には、ゲート板は、寝かされた状態となり、その先端部が地面に接地し、自動車がゲート板に乗せられる。運搬車両が走行する際には、ゲート板を立ち上げてゲートスライダに沿わせ、ゲートスライダを所定の高さまで上昇させて固定する。ゲート板の周縁部には、ドアガスケットが周設されており、ドアガスケットを車両後端枠に押さえつけることで、雨水等が車内に浸入するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4204286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運搬車両の走行時には、ゲートスライダを車両後端枠に固定している。ゲートスライダは、車両後端枠側からゲートスライダに挿入される固定ピンにより固定されている。従来のゲートスライダは、筒状のガイドレール内に挿入されて目視が困難であるので、ゲートスライダに設けられるピン孔は長孔形状となっている。そのため、固定ピンとピン孔の間に隙間が発生し、走行時にガイドレールやゲート板等の可動部が振動してしまう。これによって、車両後端枠に周設されたドアガスケットが車両後端枠等に擦れて摩耗し、シール性能が低下してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解決するために案出されたものであって、可動部の振動を抑制することで、シール性能の低下を抑制できるリヤゲート構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明は、運搬車両の荷室の後端部に装着されるリヤゲート構造である。かかるリヤゲート構造は、ゲート板を回動可能に支持する昇降スライダと、前記昇降スライダを昇降させる昇降手段と、前記昇降スライダを所定高さで停止させる上昇停止手段と、所定高さで停止した前記昇降スライダを固定する固定手段と、を備え、前記固定手段が前記昇降スライダを固定したことを検知する第一センサと、ゲートの閉鎖時に前記ゲート板が前記昇降スライダに対して所定角度まで立ち上げられたことを検知する第二センサと、前記昇降スライダが固定されていない状態で前記ゲート板が所定角度まで立ち上がった際に前記昇降手段を停止させる制御装置とを、さらに備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明のリヤゲート構造によれば、上昇停止手段にて所定高さで停止した状態の昇降スライダを固定手段で固定しているので、昇降スライダに長孔等を形成する必要がない。したがって、昇降スライダをガタツキなく固定できるので、走行時の昇降スライダおよびゲート板の振動を抑制できる。これによって、ドアガスケットの摩耗が抑えられ、リヤゲートのシール性能の低下を抑制できる。さらに、ゲート板が回動途中で停止することで、固定手段が作動していないことを確認することができる。この場合、固定手段を作動させた後に、昇降手段を作動させることで、確実に固定手段をセットすることができる。これによって、走行時の昇降スライダの振動を抑制できる。
【0008】
本発明のリヤゲート構造において、前記昇降手段は、前記昇降スライダと前記ゲート板に接続された線状部材と、前記線状部材を出し引きするアクチュエータとを備えているものが好ましい。このような構成によれば、昇降手段が簡単な構成となり、車両後端枠に設置することができる。
【0009】
本発明のリヤゲート構造において、前記上昇停止手段は、前記昇降スライダ側に突出し前記昇降スライダの当接部を上から押さえる張出部を備え、前記張出部は、前記昇降スライダに対して出没可能となっているものが好ましい。このような構成によれば、昇降スライダの係止のオンオフを切り替えられるので、昇降スライダを所定高さよりも高い位置まで上昇させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のリヤゲート構造によれば、昇降スライダおよびゲート板等の可動部の振動を抑制することで、シール性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造を設置した運搬車両の図であって、(a)は側面図、(b)は後面図である。
図2】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造を設置した運搬車両の図であって、リヤゲートが開いた状態の側面図である。
図3】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の開放状態を示した断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の昇降スライダの上昇停止手段を示した図であって、(a)は上昇停止手段が非ロック状態の拡大側面図、(b)は上昇停止手段がロック状態の拡大側面図である。
図5】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の固定手段を示した図であって、(a)は固定手段が非ロック状態の拡大側面図、(b)は固定手段がロック状態の拡大側面図である。
図6】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の上昇停止手段と固定手段と昇降手段のスイッチを示した図であって、(a)は側面図、(b)は後面図である。
図7】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の閉鎖工程を示した図であって、(a)は昇降スライダが下端位置にある状態の側面図、(b)は昇降スライダが閉鎖高さにある状態の側面図である。
図8】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の閉鎖工程を示した図であって、(a)はゲート板が回動途中の側面図、(b)はゲート板が閉鎖位置にある状態の側面図である。
図9】本発明の実施形態に係るリヤゲート構造の開放工程を示した図であって、(a)は固定手段のロックを解除した状態の側面図、(b)はゲート板が水平位置にある状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るリヤゲート構造を、添付した図面を参照しながら説明する。本実施形態では、かかるリヤゲート構造を、自動車運搬車両に取り付けた場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態において、車両の前進方向を「前」、後進方向を「後」とすし、運転手の左手方向を「左」、右手方向を「右」とする。
【0014】
図1および図2に示すように、自動車運搬車両2は、荷室3の内部に自動四輪車等の車両4を積載して運搬するものである。荷室3の後端には、左右一対の縦枠5,5を備えた車両後端枠が設けられている。車両4は、リヤゲート構造1を介して持ち上げられた後、自走して荷室3内に搬入される。
【0015】
本実施形態に係るリヤゲート構造1は、図3に示すように、昇降スライダ10と、昇降手段30と、上昇停止手段40と、固定手段50と、制御手段60とを備えている。
【0016】
昇降スライダ10は、ゲート板11を回動可能に支持する部位であって、縦長に形成されている。昇降スライダ10は、縦枠5内に設けられた昇降スライダ収容部6に昇降可能に挿入されている。昇降スライダ10は、左右一対設けられ、左右の縦枠5内にそれぞれ配置されている。昇降スライダ10の下端部には、後方に突出するブラケット12が設けられている。
【0017】
ゲート板11は、荷室3の後端開口部を閉じる蓋部材である。ゲート板11の基端部11aは、昇降スライダ10の下端部のブラケット12にピン結合されている。ゲート板11は、後端開口部を塞ぐ蓋状態と、車両4を載せる積載状態との間で回動する。ゲート板11は、垂直に立ち上がることで蓋状態となり、水平に横倒することで積載状態となる。ゲート板11の先端部には、スライドゲート13が出没可能に設けられている。図8の(b)に示すように、スライドゲート13は、ゲート板11を立ち上げるときはゲート板11の内部に収容されている。スライドゲート13は、上面が先端部に向けて低くなるように傾斜しており、ゲート板11が積載状態のときは先端側に突出し、路面に摺り付けられる。
【0018】
ゲート板11の先端部と昇降スライダ10の中間部との間には、スライドステー14が掛け渡されている。スライドステー14は、ゲート板11を水平に保持する部材であって、伸縮可能に形成されている。スライドステー14は、伸張した状態でゲート板11を水平に保持する。スライドステー14は、ゲート板11を立ち上げる時には縮退する。車両4の搬出入時には、スライドステー14は伸長した状態でロックされている。リヤゲート構造1の閉鎖時には、昇降スライダ10が所定高さに上昇するまではスライドステー14は伸長した状態でロックされている。昇降スライダ10が所定高さ(例えば、積載状態のゲート板11の上面が荷室の床面と面一になる高さ)に上昇した後に、ロックが解除され、スライドステー14が縮退してゲート板11の回動が開始される。
【0019】
昇降スライダ10には、ガイドローラ15が二つ設けられている。上側のガイドローラ15は、昇降スライダ10の上端部に設けられており、下側のガイドローラ15は、昇降スライダ10の下部に設けられている。昇降スライダ収容部6の内周面には上下方向に延在するガイドレール7が設けられており、ガイドローラ15は、ガイドレール7に沿って回転することで、昇降スライダ10の上下移動を案内する。
【0020】
図4にも示すように、昇降スライダ10の下端部前面には、上昇停止手段40に当接する当接部16が形成されている。当接部16は、後記する上昇停止手段40の張出部41に下側から当接する上端面を備えている。当接部16の下方には、挿入穴17が形成されている。挿入穴17は、水平方向に延在し、前端が開口している。挿入穴17には、固定手段50の出没ピン51が挿入される。
【0021】
昇降手段30は、昇降スライダ10を昇降させる手段である。昇降手段30は、昇降手段収容部8に収容されている。昇降手段収容部8は、縦枠5の内側で昇降スライダ収容部6の前方に設けられている。昇降手段30は、図3に示すように、線状部材31とアクチュエータ32とを備えている。線状部材31は、例えばローラチェーンからなり、昇降スライダ10とゲート板11とアクチュエータ32とに接続されている。線状部材31の一端は、ゲート板11の基端部11aに固定され、他端は、昇降手段収容部8の上端部に固定されている。線状部材31は、各部に設けられた第一乃至第五のスプロケット33a~33eにそれぞれ巻き掛けられている。第一のスプロケット33aは、ゲート板11の基端部11aから所定長さ離れた位置に設けられており、ゲート板11の基端部の固定位置から延在する線状部材31を昇降スライダ10側に向けて方向転換する。第二のスプロケット33bは、昇降スライダ10の側面に設けられており、第一のスプロケット33aから延在する線状部材31を上方に向けて方向転換する。第三のスプロケット33cは、昇降スライダ収容部6の上端部に設けられており、第二のスプロケット33bから延在する線状部材31を前方に向けて方向転換する。第四のスプロケット33dは、昇降手段収容部8の上端部に設けられており第三のスプロケット33cから延在する線状部材31を下方に向けて方向転換する。第五のスプロケット33eは、アクチュエータ32の先端部に設けられた動滑車にて構成されており、アクチュエータ32の伸縮によって昇降する。第五のスプロケット33eは、第四のスプロケット33から延在する線状部材31を上方の固定位置に向けて方向転換する。
【0022】
アクチュエータ32は、昇降手段収容部8に配置されている。アクチュエータ32は、上下方向に延在しており、シリンダから上向きに突出するピストンロッド34が上下に進退する。ピストンロッド34の先端部には第五のスプロケット33eが回転可能に固定されている。このような構成の昇降手段30によれば、アクチュエータ32を縮退させることで、第五のスプロケット33eが下降し、線状部材31が巻き上げられる。アクチュエータ32は、荷室3の後端部に設けられた操作ボタン(図示せず)にて作動する。具体的には、上ボタンを押すとアクチュエータ32が縮退し、下ボタンを押すとアクチュエータ32が伸張する。
【0023】
上昇停止手段40は、図4乃至図6に示すように、昇降スライダ10を所定高さで停止させる装置である。上昇停止手段40は、昇降手段収容部8の内部で昇降スライダ10の前方に配置されている。上昇停止手段40は、張出部41とロックハンドル43とを備えている。張出部41は、昇降スライダ10側に突出し、上昇する昇降スライダ10の当接部16を上から押さえる部位である。張出部41によって当接部16が上から押さえられることで昇降スライダ10のさらなる上昇が阻止される。昇降スライダ10の上昇が阻止される高さは、ゲート板11を立ち上げた際に、ゲート板11がゲートを閉鎖できる高さである。本実施形態では、後方に張り出したゲート板11の基端部上面が荷室3の床面高さと同じになる高さで、昇降スライダ10の上昇が停止される。張出部41は、昇降スライダ10に対して出没可能となっている。具体的には、張出部41の基端部が回動可能なピン44に固定されており、張出部41が回動可能となっている。張出部41が水平になると、張出部41の後端部が後方に突出して当接部16の通過位置に張り出す(図4の(b)参照)。張出部41が後方斜め下に傾斜すると、張出部41の後端部が前方に没入して当接部16の通過位置から前方に外れる(図4の(a)参照)。
【0024】
図6の(b)に示すように、張出部41は、左右の昇降スライダ10の前方にそれぞれ配置されている。左右の張出部41がそれぞれ固定された左右のピン44,44は、連結ロッド45を介して一体的に連結されており、同期回転するようになっている。
【0025】
ロックハンドル43は、張出部41を回動させる際に把持するハンドルであって、一方の張出部41(本実施形態では、左側の張出部41)の先端に固定されている。ロックハンドル43は、張出部41に対して傾斜しており、張出部41が後方斜め下に傾斜したときに、ロックハンドル43が水平になる(図4の(a)、図6の(a)参照)。水平のロックハンドル43を斜め下に引き下げると、張出部41が回動して水平になる(図4の(b)参照)。本実施形態では、左側に配置されたロックハンドル43を操作すると、左右の張出部41,41が同期して回動する。
【0026】
固定手段50は、図5に示すように、昇降スライダ10を所定高さで固定する装置である。固定手段50は、上昇停止手段40によって昇降スライダ10の上昇が阻止される状態(昇降スライダ10の当接部16が上昇停止手段40の張出部41に当接した状態)で昇降スライダ10の上下移動をロックする。固定手段50は、出没ピン51と操作ハンドル52とを備えている。出没ピン51は、昇降スライダ10の前方に形成された挿入穴17に前方から挿入され、挿入穴17に挿入されることで、昇降スライダ10が固定され上下方向に移動するのを規制される。出没ピン51は、前後方向に延在するガイド部53にて前後移動可能に支持されている。出没ピン51とガイド部53は、左右の昇降スライダ10の前方にそれぞれ配置されている。
【0027】
操作ハンドル52は、出没ピン51を出没させる部材であって、把持部54と連結部55とを備えている。把持部54と連結部55とは一体化されている。把持部54と連結部55との接続部分は、回動可能なピン56に固定されており、操作ハンドル52が回動可能となっている。把持部54は、操作ハンドル52を回動させる部分であり、下方に向かって延在している。連結部55は、出没ピン51を前後に押し引きする部位であり、出没ピン51の前端側の基端部に連結されていている。図4に示すように、把持部54が後方に傾斜していると、連結部55が前方に移動して出没ピン51が前方に没入する。図5に示すように、把持部54が前方に回動して垂直になると、連結部55が後方に移動して出没ピン51が後方に突出する。すると、出没ピン51の先端部が挿入穴17に挿入され、昇降スライダ10が固定される。
【0028】
図6に示すように、把持部54は、左側の操作ハンドル52のみに設けられており、右側の操作ハンドル52Rは、連結部55のみ設けられている。右側の連結部55の基端部は、回動可能なピン56に固定されており、回動可能となっている。左右のピン56,56は同軸上に配置され、連結ロッド57を介して一体的に連結されており、同期回転するようになっている。これによって、左側の把持部54を移動させると、左右の連結部55が連動して、左右の出没ピン51が同期して出没する。
【0029】
制御手段60は、固定手段50が非作動の状態(昇降スライダ10の上下移動をロックしていない状態)で、ゲート板11が立ち上がろうとした際に昇降手段30を停止させる装置である。ゲート板11が所定角度以上に立ち上がると、昇降スライダ10を上方に引き揚げようとする力が作用するが、このとき昇降スライダ10が固定されていないと、昇降スライダ10が上昇して、ゲート板11の閉鎖位置からずれてしまう。制御手段60は、これを防止するためのものである。図4および図5に示すように、制御手段60は、第一センサ61と第二センサ62と制御装置(図示せず)とを備えている。
【0030】
第一センサ61は、固定手段50が昇降スライダ10を固定したことを検知するものである。第一センサ61は、リミットスイッチにて構成されており、ヒンジレバー63が操作ハンドル52に設けられた押圧レバー63aの回動領域に配置されている。出没ピン51を後方に突出させるように操作ハンドル52を回動させると、ともに回動した押圧レバー63aが、リミットスイッチのヒンジレバー63を後方に押すことでプランジャ(図示せず)が押され、固定手段50は作動したことを検知する。
【0031】
第二センサ62は、ゲート板11が昇降スライダ10に対して所定角度(本実施形態では30°)まで立ち上げられたことを検知するものである。第二センサ62は、リミットスイッチにて構成されており、ヒンジレバー64がゲート板11の基端部11aに設けられた押圧レバー64aの回動領域に配置されている。ゲート板11が所定角度まで立ち上がると、ともに回動した押圧レバー64aがヒンジレバー64を押し、プランジャ(図示せず)が押される。これによって、ゲート板11が所定角度まで立ち上がったことを検知する。
【0032】
制御装置は、昇降スライダ10が固定手段50で固定されていない状態でゲート板11が所定角度まで立ち上がった際に昇降手段30を停止させる。制御装置は、第一センサ61,第二センサ62およびアクチュエータ32と電気的に接続されている。作業者が上ボタンを押してアクチュエータ32縮退させている際に、制御装置は、第一センサ61が固定手段50の作動を検知しない状態で、第二センサ62がゲート板11の立ち上がりを検知すると、アクチュエータ32を自動的に停止させる。
【0033】
次に、本実施形態の前記構成のリヤゲート構造1のゲートを閉鎖する作業工程を説明する。なお、ゲートを閉鎖する前の状態(車両の搬出入を行う状態)では、図7の(a)に示すように、上昇停止手段40と固定手段50がともにオフ状態であり、スライドステー14が伸張してロックされゲート板11が水平に保持されている。この状態で、昇降スライダ10は昇降可能となっており、ゲート閉鎖時の所定高さより上方まで上昇できる。
【0034】
ゲートを閉じる際には、まず、図7の(a)の状態(上昇停止手段40と固定手段50がともにオフ状態であり、スライドステー14が伸張してロックされゲート板11が水平に保持された状態)から、作業者が水平のロックハンドル43を斜め下に引き下げて、張出部41を後方に張り出させて、上昇停止手段40をオンの状態にする。そして、上ボタンを押して、昇降手段30のアクチュエータ32を縮退させ、線状部材31を巻き上げる。これによって、ゲート板11が水平のまま、昇降スライダ10が引き揚げられる。
【0035】
図7の(b)に示すように、昇降スライダ10が所定高さまで上昇すると、当接部16が張出部41に当接し昇降スライダ10の上昇が停止される。ここで作業者が上ボタンを離して昇降手段30を停止する。この状態で、挿入穴17が出没ピン51とぴったり同じ高さになる。そして、操作ハンドル52の把持部54を回動して垂直にし、出没ピン51を後方に突出させる。すると、出没ピン51の先端部が挿入穴17に挿入され、昇降スライダ10が固定される。このとき、第一センサ61が出没ピン51の突出を検知し、固定手段50の作動を検知する。その後、スライドゲート13をゲート板11の内部に押し込むとともに、スライドステー14のロックを解除する。そして、上ボタンを押して、昇降手段30のアクチュエータ32を縮退させ、線状部材31を巻き上げる。
【0036】
これにより、図8の(a)に示すように、ゲート板11が回動し始める。ゲート板11の回動に伴ってスライドステー14は縮退する。ゲート板11が30°まで立ち上がると、第二センサ62がゲート板11の立ち上がりを検知する。ここで、万一、出没ピン51が突出されておらず、第一センサ61が固定手段50の作動を検知していない場合には、制御装置によって昇降手段30が自動的に停止される。このようにゲート板11の回動が途中で停止した場合には、作業者が操作ハンドル52の把持部54を回動して垂直し、出没ピン51を後方に突出させた後に、上ボタンを押して、線状部材31を巻き上げ、ゲート板11の回動を再開させる。
【0037】
図8の(b)に示すように、ゲート板11が垂直に立ち上がり、ゲートが閉じたら、作業者は上ボタンを離して、ゲートロック(図示せず)をロックして作業が終了する。
【0038】
次に、本実施形態の前記構成のリヤゲート構造1のゲートを開放する作業工程を説明する。ゲートを開く際には、まず、ゲートが閉鎖された図9の(a)の状態から作業者がゲートロックを解除して、昇降手段30の下ボタンを押す。すると、図9の(b)に示すように、昇降手段30のアクチュエータ32が伸張して、線状部材31が巻き下げられ、ゲート板11が後方に回動して開く。これに伴いスライドステー14が伸張する。ゲート板11が水平状態になったところで、スライドステー14が伸び切りロックされる。ここで、スライドゲート13をゲート板11から引き出す。その後、操作ハンドル52の把持部54を後方に回動して、出没ピン51を前方に没入させる。すると、出没ピン51の先端部が挿入穴17から引き抜かれ、昇降スライダ10の固定が解除される。さらに、昇降スライダ10を下降させて、ロックハンドル43を斜め上に引き上げて水平にし、張出部41を前方に移動させて、上昇停止手段40をオフの状態にする。これによって、昇降スライダ10が閉鎖位置よりも高い位置まで昇降可能となり、車両の搬出入等の作業を行うことができる。
【0039】
本実施形態に係るリヤゲート構造1によれば、昇降スライダ10を上昇停止手段40で所定高さに停止した状態で、固定手段50の出没ピン51を昇降スライダ10の挿入穴17に挿入するので、従来のように挿入穴を長孔形状にしなくて済む。したがって、昇降スライダ10およびゲート板11を、ガタツキなく固定できるので、走行時の昇降スライダ10およびゲート板11の振動を抑制できる。これにより、車両後端枠に周設されたドアガスケットの摩耗が抑えられ、リヤゲートのシール性能の低下を抑制できる。
【0040】
上昇停止手段40は、昇降スライダ10の当接部16を上から押さえる張出部41が昇降スライダ10に対して出没可能に設けられているので、昇降スライダ10の上昇停止のオンオフを容易に切り替えられる。上昇停止をオフにすると、昇降スライダ10を所定高さよりも高い位置まで上昇させることができる。
【0041】
また、昇降手段30は、線状部材31とアクチュエータ32とを備え、線状部材31は、スプロケット33a~33eに巻き掛けられているので、昇降手段30が簡単な構成となり車両後端枠に設置することができる。さらに、昇降手段30で昇降スライダ10の昇降とゲート板11の回動をともに行うことができる。
【0042】
さらに、本実施形態では、制御手段60の制御装置が、昇降スライダ10が固定されていない状態でゲート板11が所定角度まで立ち上がった際に昇降手段30を自動的に停止させるので、ゲート板11が回動途中で停止することを目視した作業員が、固定手段50が作動していないことを確認することができる。この場合、固定手段50を作動させた後に、昇降手段30を再度作動させることで、確実に固定手段50をセットすることができる。これによって、走行時の昇降スライダ10の振動を抑制できるので、より一層ドアガスケットの摩耗が抑えられる。また、固定手段50が昇降スライダ10を固定したことを検知する第一センサ61を備えているので、縦枠5の内部に収容された昇降スライダ10であっても、昇降スライダ10が固定されているかを検知できる。
【0043】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、荷室3の床面に車両4を直接積載するようになっているが、これに限定されるものではない。荷室3の床を二重床構造とし、上側の床面に車両4を積載し、下側の床面に小型の荷物を積載するようにしてもよい。この場合、昇降スライダ10は、上昇停止手段40をオフにした状態で、ゲート板11が上側の床面の高さになるまで昇降スライダ10を上昇させる。
【0044】
前記実施形態では、リヤゲート構造1をバン型車両に設けているが、これに限定されるものではない。リヤゲート構造1は、ウイング車等の他の車両であっても適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 リヤゲート構造
2 自動車運搬車両(運搬車両)
3 荷室
4 車両
10 昇降スライダ
11 ゲート板
16 当接部
17 挿入穴
30 昇降手段
31 線状部材
32 アクチュエータ
40 上昇停止手段
41 張出部
43 ロックハンドル
50 固定手段
51 出没ピン
60 制御手段
61 第一センサ
62 第二センサ
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9