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特許7554717昇降機保全作業実績登録システム及び昇降機保全作業実績登録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】昇降機保全作業実績登録システム及び昇降機保全作業実績登録方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B66B5/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021111296
(22)【出願日】2021-07-05
(65)【公開番号】P2023008050
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 才明
(72)【発明者】
【氏名】東田 一夫
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 崇
(72)【発明者】
【氏名】三之宮 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】國信 脩平
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/149587(WO,A1)
【文献】特開2019-205132(JP,A)
【文献】特開2009-161310(JP,A)
【文献】特開2017-081685(JP,A)
【文献】特開2020-138863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0300336(US,A1)
【文献】特開2019-019003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0185293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保全作業の対象となる昇降機の構成機器の作業項目と、それぞれの前記作業項目ごとの作業結果としての入力値又は判定結果を示す作業実績情報と、を作業実績データベースとして保持する保全作業サーバと、
昇降機の保全作業を行う作業者が所持し、前記保全作業サーバの前記作業実績データベースから取得した前記作業項目を表示し、前記作業実績情報の入力を受け付け、受け付けた前記作業実績情報を前記作業実績データベースに保存させる作業者端末と、
を有する昇降機保全作業実績登録システムであって、
前記保全作業サーバが備える前記作業実績データベースは、それぞれの前記作業項目ごとに、対応した構成機器が配置された領域の情報を保持し、
前記作業者端末は、保全作業中の昇降機内の自らが存在する領域を判断する判断部と、
前記判断部が判断した領域内の作業項目を前記作業実績データベースから抽出して表示部に表示させる表示制御部と、を備えた昇降機保全作業実績登録システムであり、
前記作業者端末として、第1作業者端末と第2作業者端末を有し、
前記第1作業者端末と前記第2作業者端末のそれぞれで前記作業実績情報が入力され前記作業実績データベースに保存されたとき、前記第1作業者端末と前記第2作業者端末の双方の表示部が入力された前記作業実績情報を表示する
昇降機保全作業実績登録システム。
【請求項2】
前記構成機器の配置領域として、少なくとも、昇降路の上方の領域と、昇降機の下方の領域とを有し、
前記作業者端末の判断部は、前記端末の高度を判断し、
前記表示制御部は、前記判断部が判断した高度に対応して、昇降路の上方の領域、又は昇降路の下方の領域の作業項目を表示させる
請求項1に記載の昇降機保全作業実績登録システム。
【請求項3】
前記構成機器の配置領域として、さらに昇降路の中間の領域を有し、
前記表示制御部は、前記判断部が判断した高度に対応して、昇降路の上方の領域、昇降路の中間の領域、又は昇降機の下方の領域の作業項目を表示させる
請求項2に記載の昇降機保全作業実績登録システム。
【請求項4】
前記作業者端末の前記表示制御部は、保全作業中又は保全作業の終了時に、前記作業実績情報が未入力の前記作業項目を前記表示部に表示させる
請求項1又は2に記載の昇降機保全作業実績登録システム。
【請求項5】
さらに、前記保全作業サーバが保存した前記作業実績データベースを読出し表示する管理者端末を有し、
前記管理者端末についても、保全作業中又は保全作業の終了時に、前記作業実績情報が未入力の前記作業項目を表示させる
請求項4に記載の昇降機保全作業実績登録システム。
【請求項6】
前記第1作業者端末は主作業者が所持する端末であり、
前記第2作業者端末は補助作業者が所持する端末であり、
前記第1作業者端末で入力された作業実績情報は、前記第2作業者端末での上書き更新を禁止し、前記第2作業者端末で入力された作業実績情報は、前記第1作業者端末での上書き更新を許可する
請求項に記載の昇降機保全作業実績登録システム。
【請求項7】
保全作業の対象となる昇降機の構成機器の作業項目と、それぞれの前記作業項目ごとの作業結果としての入力値又は判定結果を示す作業実績情報と、を保持する作業実績データベースを作成し、
昇降機の保全作業を行う作業者が所持した作業者端末で、前記作業実績データベースから取得した前記作業項目を表示し、前記作業実績情報の入力を受け付け、受け付けた前記作業実績情報を前記作業実績データベースに保存させる昇降機保全作業実績登録方法であって、
前記作業実績データベースは、それぞれの前記作業項目ごとに、対応した構成機器が配置された領域の情報を保持し、
前記作業者端末は、保全作業中の昇降機内の自らが存在する領域を判断する領域判断処理と、
前記領域判断処理で判断した領域内の作業項目を前記作業実績データベースから抽出して表示させる表示処理と、を含む昇降機保全作業実績登録方法であり、
前記作業者端末として、第1作業者端末と第2作業者端末を有し、
前記第1作業者端末と前記第2作業者端末のそれぞれで前記作業実績情報が入力され前記作業実績データベースに保存されたとき、前記第1作業者端末と前記第2作業者端末の双方の前記表示処理では、入力された前記作業実績情報を表示する処理を行う
昇降機保全作業実績登録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機保全作業実績登録システム及び昇降機保全作業実績登録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に設置された昇降機は、各部の保全作業を随時行う必要がある。例えば、エレベーターは、乗りかご、昇降路、駆動用モーター、制御盤、釣合い重り、緩衝器が設置されたピット、乗り場ドアや三方枠、乗り場の押し釦、乗りかごの位置を知らせる乗り場表示器などで構成され、それぞれを保全作業時に点検する必要がある。
【0003】
エレベーターの保全作業時には、昇降路の頂部に配置された機器や下部に配置された制御盤など、機器に対応した多様な作業項目が存在し、点検した内容、判定結果、測定結果などの作業実績を記録する記録用紙も複数枚になる。
したがって、エレベーターの保全作業時には、点検作業を行って作業実績を記録する際に、点検作業ごとに決められた場所に記録する必要があり、作業ごとに記録箇所を探す手間が掛かっていた。
【0004】
特許文献1には、工場内で、三次元加速度センサやGPSと連動して作業対象の機器まで作業者を誘導しながら、対象設備の作業項目の一覧を表示する保全点検携帯端末が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-138813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、作業者が所持する携帯端末に、対象設備の作業項目の一覧を表示することは従来から知られている。しかしながら、対象設備の作業項目が多い場合には、携帯端末に表示された一覧から、作業実績を入力する箇所を探すのに時間を要するという問題がある。
また、上述した昇降機の場合には、平面積の狭い範囲で、かつ高さ方向に作業対象箇所が設置されており、三次元加速度センサやGPSでどの設備に近接しているのかを判断するのは困難であった。
【0007】
本発明は、昇降機の保全作業時に、作業者による作業実績の入力を、時間をかけずに容易かつ確実に行うことができる昇降機保全作業実績登録システム及び昇降機保全作業実績登録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、昇降機保全作業実績登録システムとして、保全作業の対象となる昇降機の構成機器の作業項目と、それぞれの作業項目ごとの作業結果としての入力値又は判定結果を示す作業実績情報と、を作業実績データベースとして保持する保全作業サーバと、昇降機の保全作業を行う作業者が所持し、保全作業サーバの作業実績データベースから取得した作業項目を表示し、作業実績情報の入力を受け付け、受け付けた作業実績情報を作業実績データベースに保存させる作業者端末と、を有するシステムとしたものである。
ここで、作業実績データベースは、それぞれの作業項目ごとに、対応した構成機器が配置された領域の情報を保持し、作業者端末は、保全作業中の昇降機内の自らが存在する領域を判断する判断部と、判断部が判断した領域内の作業項目を作業実績データベースから抽出して表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
そして、作業者端末として、第1作業者端末と第2作業者端末を有し、第1作業者端末と第2作業者端末のそれぞれで作業実績情報が入力され作業実績データベースに保存されたとき、第1作業者端末と第2作業者端末の双方の表示部が入力された作業実績情報を表示するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保全作業を行う作業者は、端末に表示された画面中の作業項目に沿って寸法測定や判定内容の入力などを行うだけでよく、膨大な作業項目の中から該当する項目を探す必要がなくなるので、作業者の負担が軽減できると共に作業実績の登録時間を短縮することが可能になる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態例の昇降機保全作業実績登録システムを適用する昇降機の構成機器と、その作業項目の例を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態例による昇降機の作業箇所を領域分けした例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態例によるサーバ及び端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態例による作業実績データベースのデータ構造の例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態例による処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態例による作業者端末の表示例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施の形態例による保全作業時の例(例1)を示す図である。
図8】本発明の第1の実施の形態例による保全作業時の例(例2)を示す図である。
図9】本発明の第1の実施の形態例による保全作業時の例(例3)を示す図である。
図10】本発明の第1の実施の形態例による保全作業終了時の例(入力完了時)を示す図である。
図11】本発明の第1の実施の形態例による保全作業終了時の例(未入力箇所がある場合)を示す図である。
図12】本発明の第2の実施の形態例による処理の流れを示すフローチャートである。
図13】本発明の第2の実施の形態例による保全作業時の例(例1)を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の形態例による保全作業時の例(例2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態例>
以下、本発明の第1の実施の形態例を、図1図11を参照して説明する。
[昇降機の構成]
図1は、第1の実施の形態例の昇降機保全作業実績登録システムにより作業実績を登録する昇降機の構成を示す。ここでは、昇降機の一例として、エレベーターに適用した例を示している。
【0012】
図1に示すエレベーター1は、昇降路2の内部に、様々な構成機器が配置されている。例えば、昇降路2の上方には、各種機器を固定する頂部機器3、反らせ車4と通話装置5を備えた乗りかご6、乗りかご6の異常上昇を検知する上部スイッチ7、最上階の乗り場ドア8、及び最上階の乗場釦9が配置されている。
また、昇降路2の中間には、乗りかご6の上に乗り込み作業することになる釣合い重り10、中間階の乗り場11、及び中間階の乗場釦12が配置されている。
【0013】
さらに、昇降路2の下方には、制御盤13、ブレーキ14、緩衝器15、下部スイッチ16、乗りかご6の異常な速度を検知する調速機17、最下階の乗り場ドア18、及び最下階の乗場釦19が配置されている。下部スイッチ16や調速機17などの機器は、昇降路2の底面であるピット21に配置されている。なお、緩衝器15は乗りかご6が落下した際の衝撃を受け止める機器であり、下部スイッチ16は乗りかご6の異常下降を検知する機器である。
ここで、昇降路2の上方は最上階及びその近傍を示し、昇降路2の下方は最下階及びその近傍を示す。また、昇降路2の中間は最上階と最下階の間の階を示す。
【0014】
エレベーター1の各構成機器3~17については、定期点検などの保全作業時に、作業項目が決められており、作業項目ごとに作業で得た測定値や判定値の記録が行われる。
すなわち、図1に示すように、それぞれの構成機器3~17ごとに、作業項目D1-1~D1-16が決められている。各作業項目D1-1~D1-16では、作業者が確認した測定値や判定値などの作業実績情報の記録を行う必要がある。なお、作業項目によっては、作業実績情報として、現場を撮影した画像を記録する場合も含まれる。
【0015】
[昇降機保全作業実績登録システムの構成]
図2は、本実施の形態例の昇降機保全作業実績登録システムを、図1に示すエレベーター1に適用した場合の構成例を示す。
昇降機保全作業実績登録システムは、エレベーター1の保全作業を実行する作業者30が保持する作業者端末31と、作業実績データベース51を含み、保全作業を管理する保全作業サーバ50と、昇降機の保全作業の管理者61が表示を閲覧し操作を行う管理者端末60とを備える。
【0016】
作業者端末31は、作業者30が作業中に携帯する端末であり、いわゆるスマートフォンやタブレット端末で構成される。この作業者端末31は、表示部32を備え、カメラ35を内蔵する。また、作業者端末31は、気圧計34を内蔵し、気圧の測定値から現在の高さを判定することができる。
作業者端末31は、無線通信機能によりネットワーク40に接続することができる。本実施の形態例の場合には、作業者端末31は、ネットワーク40を経由して保全作業サーバ50と情報の送受信を行うことができる。
【0017】
[各端末及びサーバの構成]
保全作業サーバ50は、作業実績データベース51を備える。作業実績データベース51の構成については、図4で後述する。なお、図面ではデータベースは「DB」と記載している。
保全作業サーバ50が備える作業実績データベース51の情報は、管理者端末60でも閲覧することができる。また、管理者端末60は、ネットワーク40を経由して、作業者端末31と通信を行うこともできる。
【0018】
図3は、作業者端末31と保全作業サーバ50と管理者端末60のハードウェア構成の例を示す。
作業者端末31は、例えばスマートフォンと称される携帯端末で構成される。作業者端末31は、バスにそれぞれ接続された、表示部32、通信部33、気圧計34、カメラ35、CPU(Central Processing Unit)36、主記憶部37、入力部38、及び不揮発性ストレージ39を備える。
【0019】
CPU36は、作業者端末31が行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを主記憶部37から読み出して実行する演算処理部である。
CPU36が主記憶部37又は不揮発性ストレージ39からプログラムコードを読み出して演算処理を実行することで、主記憶部37には、様々な処理機能部が構成される。一例を挙げると、主記憶部37は、領域判断部37a、表示制御部37b、及び登録部37cを含む。これらの領域判断部37a、表示制御部38b、及び登録部38cは、不揮発性ストレージ39に記憶された保全作業管理プログラムを実行した際に構成されるものである。
【0020】
不揮発性ストレージ39には、例えば、SSD(Solid State Drive)やメモリカードなどの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ39には、作業者端末31としての処理機能を実行するプログラム(保全作業管理プログラム)と、そのプログラムの実行で得られたデータが記憶される。
【0021】
表示部32は、各種情報を表示する。例えば、表示部32は、作業実績データベース51から取得した作業項目の一覧などを表示する。表示部32における表示は、表示制御部38bにより制御される。
通信部33は、ネットワーク40と無線接続を行う機能を有し、ネットワーク40を経由して保全作業サーバ50や管理者端末60と各種情報の送受信を行う。
【0022】
気圧計34は、気圧を計測する。この気圧計34での気圧の計測値は、高さ演算部38aにより読み取られ、高さ演算部38aは、作業者端末31の現在の高さが、どの領域かの領域判断処理を行う。
カメラ35は、作業者端末31を所持した作業者の操作で、周囲を静止画又は動画で撮影する。撮影した画像は、例えば不揮発性ストレージ39に記憶される。
入力部38は、表示部32と一体化されたタッチパネルなどで構成され、入力部38から、作業者端末31を所持した作業者の操作で、数値などの情報が入力される。例えば、入力部38によって保全作業に関する情報が入力された場合、入力された情報は、登録部38cによって、作業実績データベース51に登録される。
【0023】
保全作業サーバ50は、作業実績データベース51を含む不揮発性ストレージ52を備えたコンピュータ装置で構成される。すなわち、保全作業サーバ50は、それぞれがバスで接続された不揮発性ストレージ52、CPU53、主記憶部54、及び通信部55を備える。
【0024】
CPU53は、保全作業サーバ50が行う機能である作業実績データベース51を管理するソフトウェアのプログラムコードを主記憶部54から読み出して実行する演算処理部である。
【0025】
不揮発性ストレージ52には、例えば、HDD(hard disk drive)やSSDなどの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ52には、作業実績データベース51が格納される。
通信部55は、ネットワーク40と接続を行う機能を有し、ネットワーク40を経由して作業者端末31や管理者端末60と送受信を行う。
【0026】
管理者端末60は、昇降機の保全作業を管理する管理者61が操作するコンピュータ装置である。
管理者端末60は、バスにそれぞれ接続された、CPU62、主記憶部63、不揮発性ストレージ64、表示部65、通信部66、及び入力部67を備える。
【0027】
CPU62は、管理者端末60が行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを主記憶部63から読み出して実行する演算処理部である。
CPU62が主記憶部63からプログラムコードを読み出して演算処理を実行することで、主記憶部63には、様々な処理機能部が構成されるが、一例を挙げると、表示制御部63aが構成される。この主記憶部63に構成される処理機能部を使った処理の詳細は後述する。
【0028】
不揮発性ストレージ64には、例えば、HDD、SSDなどの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ64には、管理者端末60としての処理機能を実行するプログラム(保全作業管理プログラム)と、そのプログラムの実行で得られたデータが記憶される。
【0029】
表示部65には、各種情報が表示される。例えば、表示部65は、各作業者における保全作業の進行状況などを、作業実績データベース51から取得した情報に基づいて表示する。表示部65での表示は、表示制御部63aにより制御される。
入力部67は、キーボード、マウスなどで構成され、入力部67から、管理者61の操作により各種情報が入力される。
通信部66は、ネットワーク40と接続を行う機能を有し、ネットワーク40を経由して保全作業サーバ50や作業者端末31と各種情報の送受信を行う。
【0030】
[作業実績データベースの構成]
図4は、保全作業サーバ50が保持する作業実績データベース51のデータ構造の例を示す。
図4に示すように、作業実績データベース51は、作業項目D1、設置領域D2、作業番号D3、構成機器D4、入力分類D5、結果分類D6、入力値D7、及び判定値D8の項目を有する。
【0031】
作業項目D1の欄には、寸法測定、動作確認、施錠状態、摩耗量、通話状態、異常音、電圧測定などの昇降機の各設備機器の点検時に行う作業項目の詳細が入力される。
設置領域D2の欄には、該当する設備機器が設置された領域がいずれの領域であるかを示す情報が入力される。
本実施の形態例の場合では、設置領域D2は、領域A、領域B、領域Cに分類され、各設備機器がその3つの領域A,B,Cのいずれに設置されているかが示される。領域Aは、昇降路の下方の領域を示し、領域Bは、昇降路の中間の領域を示し、領域Cは昇降路の上方の領域を示す。
【0032】
ここで、既に述べたように、昇降路の下方の領域は、昇降路の最下階(1階など)とピットなどが設置された箇所を示し、昇降路の上方の領域は、昇降路の最上階とその上方の機器が設置された箇所を示す。さらに、昇降路の中間の領域は、昇降路の最下階と最上階を除く中間の階を示す。
なお、保全作業を行うエレベーターによっては、事前に設置領域D2の欄の領域分けが行われていない場合もある。
【0033】
作業番号D3の欄には、保全作業が必要な各設備機器に付与された識別番号が示される。
構成機器D4の欄には、それぞれの設備機器の名称が示される。
入力分類D5の欄には、入力値の分類が示される。例えば、入力分類D5の欄として、作業者が測定した測定値、作業者が目視などで判定した判定値、作業者が作業者端末31で行う写真撮影などの分類が示される。
【0034】
結果分類D6の欄には、作業結果が入力される形式が示される。例えば、結果分類D6の欄として、数値、良否のいずれか、写真などが示される。
入力値D7の欄には、作業者により作業者端末31で作業結果の数値が入力される。但し、入力値D7の欄に入力が行われるのは、結果分類D6の欄で数値となっている場合であり、良否の判定結果などは次の判定値D8の欄に入力される。
判定値D8の欄には、作業分類が良否である場合に、作業者により作業者端末31で作業結果が良又は否と入力される。また、作業分類が写真撮影である場合には、判定値D8の欄に、作業者により作業者端末31で撮影を行ったと入力される。
【0035】
[保全作業の流れ]
図5は、本実施の形態例の昇降機保全作業実績登録システムにより保全作業が行われる流れを示すフローチャートである。
まず、保全作業を行うエレベーター1に到着した作業者は、エレベーター1の最下階で作業者端末31を操作して、作業者端末31に用意された保全作業管理プログラムを起動する(ステップS11)。なお、作業者端末31には、保全作業を補助する補助者が所持する端末も含まれる。
【0036】
保全作業管理プログラムが起動されると、作業者端末31の高さ演算部38aは、気圧計34の計測値に基づいて、作業者端末31を所持した作業者の現在の高さの判断処理を開始する(ステップS12)。ここで高さ演算部38aは、現在の気圧計34の計測値を、エレベーター1の最下階と判断し、気圧計34の計測値の変化に対応して、作業者の現在の高さがエレベーター1の何階の高さであるかを取得する。
【0037】
そして、作業者端末31は、保全作業サーバ50に保存された作業実績データベース51から、該当するエレベーター1の情報を読み出す。作業者端末31は、読み出した情報から、設置領域D2の欄を参照し、領域A、領域B、領域Cに分類されているか否かを判断する(ステップS13)。
【0038】
ステップS13で、設置領域D2の分類が行われていない場合(ステップS13のYES)、作業者端末31は、取得した作業実績データベース51の作業項目を一覧表示する(ステップS14)。例えば、作業者端末31は、図4に示す作業実績データベース51の表を作業番号D3の順でNo.1から一覧表示する。作業者端末31の表示部32の表示スペースには限りがあるため、表示画面には一部の作業項目だけが表示され、表示画面をスクロールさせることで、所望の作業項目を表示させることができる。
【0039】
そして、作業者端末31を所持した作業者は、作業項目に応じた入力値D7又は判定値D8の入力を開始する(ステップS15)。また、作業者端末31を所持した作業者は、入力値D7又は判定値D8の入力を行うと同時に、それぞれの作業項目の構成機器の設置領域D2として、領域A,B,Cのいずれかを入力して、作業実績データベース51に登録する(ステップS16)。
【0040】
具体的には、昇降路の最下階とピットなどに設置された構成機器については、設置領域D2として領域Aを入力する。また、昇降路の最上階とその上方に設置された構成機器については、設置領域D2として領域Cを入力する。また、その他の階に設置された構成機器については、設置領域D2として領域Bを入力する。
【0041】
また、ステップS13で、設置領域D2の分類が行われている場合(ステップS13のNO)、作業者端末31は、高さ演算部38aが判断した現在の高さから、作業員が領域A,B,Cのいずれに居るかを判断する。そして、作業者端末31の表示制御部38bは、表示部32に、判断した領域に応じた作業項目を優先表示する(ステップS17)。
ここでは、作業者が居る高さに対応した作業項目が表示されるので、作業者は、現在居る場所の近傍の作業項目を容易に探せるようになる。そして、作業者端末31を所持した作業者は、作業項目に応じた入力値D7又は判定値D8の入力を開始する(ステップS18)。
【0042】
ステップS16での領域の登録後、及びステップS18での入力値又は判定値の入力後には、作業者端末31は、エレベーター1についての作業実績データベース51の全ての作業項目の入力値又は判定値が入力されたか否かを判断する(ステップS19)。
ステップS19で、入力されていない作業項目がある場合(ステップS19のNO)、作業者端末31は、未入力の作業項目(入れ忘れの入力値)を表示するように表示部32に通知し(ステップS20)、ステップS13の判断に戻る。ステップS20での通知時には、未入力の作業項目の番号や名称、並びに未入力の作業項目がどの領域かを通知する他に、該当する未入力の箇所が画面上に表示されるように、作業項目の一覧を表示してもよい。作業項目の一覧の中の未入力の箇所を表示する際には、未入力の箇所が目立つように輝度や色を変えて表示させてもよい。
このステップS20での未入力の作業項目の表示は、図5のフローチャートに示した流れで保全作業の実行中に随時行ってもよいが、作業者端末31で保全作業を終了させる何らかの操作がある保全作業終了時に、未入力の作業項目の表示を行うようにしてもよい。
また、作業者端末31で未入力の作業項目の表示を行う際には、作業実績データベース51の情報を管理者端末60に送って、管理者端末60でも未入力の作業項目の表示を行うようにしてもよい。管理者端末60での未入力の作業項目の表示についても、保全作業中に行う場合と、保全作業終了時に行う場合のいずれでもよい。作業者が保全作業の実行中に管理者端末60で未入力の作業項目を表示することで、管理者は保全作業の進行状況を遠隔で監視できるようになる。また、作業者による保全作業の終了時に管理者端末60で未入力の作業項目を表示することで、管理者は作業者に連絡して未入力の作業項目を指示できるようになる。
また、ステップS19で、全ての作業項目が入力済みである場合(ステップS19のYES)、エレベーター1の保全作業を終了する。
【0043】
[作業者端末での表示例]
図6は、作業者端末31での作業項目の表示例を示す。この図6に示される表示例は、図5のフローチャートのステップS17で優先表示される表示例である。
図6Aは、作業者端末31を所持した作業者や補助者が、エレベーター1の領域Aに居るときに表示される画面の例を示す。
【0044】
図6Aでは、作業者端末31の表示部32は、作業実績データベース51の作業項目の中で、設置領域Aに分類された構成機器の情報を優先的に表示する。つまり、表示部32は、昇降路の最下階などに設置された構成機器の情報を表示する。
表示画面の右端には、スクロールバー32xが表示され、作業者が指でスクロールバー32xに触れて上下させることで、表示箇所をその他の作業項目にスクロールすることができる。
【0045】
スクロールバー32xが表示されて、スクロール操作できる点は、図6B図6Cの表示でも同様である。また、図6では上下方向のスクロールのみを示すが、表示画面の横幅が限られている場合には、表示画面の下側又は上側にスクロールバーを表示して、表示画面の左右方向にもスクロールできるようにしてもよい。表示画面の上下方向と左右方向にスクロールバーを設けることで、全ての作業項目を表示することが可能になる。
【0046】
図6Bは、作業者端末31を所持した作業者や補助者が、エレベーター1の領域Bに居るときに表示される画面の例を示す。
図6Bでは、作業者端末31の表示部32は、作業実績データベース51の作業項目の中で、設置領域Bに分類された構成機器の情報を優先的に表示する。つまり、表示部32は、昇降路の中間階に設置された構成機器の情報を表示する。
【0047】
図6Cは、作業者端末31を所持した作業者や補助者が、エレベーター1の領域Cに居るときに表示される画面の例を示す。
図6Cでは、作業者端末31の表示部32は、作業実績データベース51の作業項目の中で、設置領域Cに分類された構成機器の情報を優先的に表示する。つまり、表示部32は、昇降路の最上階などに設置された構成機器の情報を表示する。
【0048】
[具体的な保全作業時の例]
次に、図7図9を参照して、保全作業時の作業者の具体的な位置と、表示状態の関係の例を説明する。
図7は、作業者30が、昇降路2の底面であるピット21に入って、制御盤13を操作している状態を示している。なお、作業者30は、ピット21に入る前に、最下階の乗り場ドア18の前で、作業者端末31に実装された保全作業管理プログラムを起動する。
この保全作業管理プログラムの起動で、気圧計34で計測した気圧に基づいて、高さ演算部38aが、作業者30の最下階からの高さを判断できるようになる。
【0049】
図7に示すように、作業者30がピット21に入っている状況では、作業者端末31は、高さとして最下階の近傍であると判断する。したがって、作業者端末31の表示部32は、領域Aの作業項目が表示された図6Aに示す表示形態になる。つまり、作業者端末31の表示部32は、制御盤13やブレーキ14、調速機17などの最下階やピットに設置された機器に対応する作業項目を優先的に表示する。
【0050】
これにより、作業者30は、自身の周囲にある機器の作業項目が表示されるので、迅速に計測値や判定値の入力を行うことができるようになる。入力値の結果分類D6が写真撮影による判定の場合、作業者30は作業者端末31のカメラ35で撮影した撮影データを不揮発性ストレージ39に保存することになる。
なお、作業者端末31で入力された計測値、判定値、撮影データは、リアルタイムあるいは若干の時間差でネットワーク40を経由して、保全作業サーバ50に送られ、作業実績データベース51に登録される。管理者61は、管理者端末60により作業実績データベース51を検索することで、登録された作業の進行状況を把握することができる。
【0051】
図8は、作業者30が、昇降路2の最上階である領域Cに移動した場合を示している。この状態では、作業者端末31は、気圧計34で計測した気圧に基づいて高さ演算部38aが領域Cの高さを判断する。したがって、表示部32は、領域Cの作業項目が表示された、図6Cに示す表示形態になる。つまり、作業者端末31の表示部32は、頂部機器3などの最上階に設置された機器に対応する作業項目を優先的に表示する。
これにより、作業者30は、自身の周囲にある機器の作業項目が表示されるようになり、迅速に計測値や判定値の入力、あるいは写真撮影を行うことが可能になる。
【0052】
図9は、作業者30が、昇降路2の最上階と最下階を除く階である領域Bに移動した場合を示している。この状態では、作業者端末31は、気圧計34で計測した気圧に基づいて領域判断部37aが領域Bの高さを判断する。したがって、表示部32は、領域Bの作業項目が表示された、図6Bに示す表示形態になる。つまり、作業者端末31の表示部32は、近くに設置されている釣合い重り10や乗りかご6などの機器に対応する作業項目を優先的に表示する。
これにより、作業者30は、自身の周囲にある機器の作業項目が表示されるようになり、迅速に計測値や判定値の入力、あるいは写真撮影を行うことが可能になる。
【0053】
図10は、ステップS19で、全ての作業項目が入力されたと判断されて、保全作業を終了する場合の例を示している。
図10に示すように、作業者端末31の表示部32は、全ての作業項目が入力された場合に、作業完了を表示する。この表示を確認した作業者30は、保全作業を終了する。
【0054】
図11は、ステップS19で、未入力の作業項目があると判断されて、ステップS20で未入力の通知を行った場合の例を示す。
図11に示すように、作業者端末31の表示部32は、未入力の作業項目の番号と領域などを表示する。この表示を確認した作業者30は、該当する項目の計測などを行った後、保全作業を終了する。
この図10での作業完了の表示や、図11での未入力の作業項目がある場合の表示は、管理者端末60でも行われる。これにより、管理者61は、一部の作業の入力忘れ等がないかを管理できる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態例によると、保全作業を行う作業者30の居場所に応じて、作業者端末31の表示部32で表示される作業項目が変化し、居る場所に応じた機器の項目を優先的に表示するようになる。したがって、作業者30は、作業内容の把握や入力箇所を探す手間を大幅に低減することができる。
また、図5のフローチャートのステップS20に示すように入力忘れの項目がある場合には、作業者端末31で未入力の作業項目を表示するため、作業者30が作業を終了する前に作業が行われていない箇所を確認でき、作業忘れを効果的に防止できるようになる。
【0056】
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例を、図12図14を参照して説明する。図12図14において、第1の実施の形態例で説明した図1図11に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0057】
図13に示すように、第2の実施の形態例では、作業者(主作業者)30と補助作業者70の二人で保全作業を行う場合であり、作業時には、作業者30が作業者端末31aを所持すると共に、補助作業者70が作業者端末31bを所持する。保全作業は、主作業者である作業者30が作業全体を統括し、補助作業者70は作業者30の指示で保全作業を実行する。
作業者端末31aは表示部32aを備え、作業者端末31bは表示部32bを備える。作業者端末31a,31bは、第1の実施の形態例で説明した作業者端末31と同一の構成であり、それぞれネットワーク40を介して保全作業サーバ50の作業実績データベース51の読出し及び登録を行うことができる。
昇降機保全作業実績登録システムのその他の全体構成については、図3に示す構成と同じである。
【0058】
[保全作業の流れ]
図12は、本実施の形態例の昇降機保全作業実績登録システムにより保全作業が行われる流れを示すフローチャートである。
まず、保全作業を行うエレベーター1に到着した作業者30と補助作業者70は、エレベーター1の最下階で作業者端末31a,31bを操作して、各作業者端末31a,31bに用意された保全作業管理プログラムを起動する(ステップS21)。
【0059】
保全作業管理プログラムが起動されると、作業者端末31a,31bの高さ演算部38aは、気圧計34の計測値に基づいて、作業者端末31を所持した作業者の現在の高さの判断処理を開始する(ステップS22)。ここで高さ演算部38aは、現在の気圧計34の計測値を、エレベーター1の最下階と判断し、気圧計34の計測値の変化に対応して、作業者の現在の高さがエレベーター1の何階の高さであるかを取得する。
【0060】
次に、2台の作業者端末31a,31bは、同じ領域の高さにいるか否かを判断する(ステップS23)。このステップS23で、同じ領域の高さにいると判断した場合(ステップS23のYES)、2台の作業者端末31a,31bの表示部32a,32bは、現在いる領域に応じた作業項目を同時に表示する(ステップS24)。ここでは、作業者30と補助作業者70とがいる領域に応じて、図6に示すように、領域Aの作業項目の一覧表示、領域Bの作業項目の一覧表示、領域Cの作業項目の一覧表示のいずれかが行われる。
【0061】
この後、作業者30と補助作業者70は、個別に作業者端末31a,31bで計測値などの入力作業を行う。
例えば、ステップS24での表示後、作業者30は、作業者端末31aで、作業項目に応じた入力値D7又は判定値D8の入力を開始する(ステップS25)。そして、作業者端末31aは、ステップS25で入力された値が、作業実績データベース51に未入力の項目か否かを判断する(ステップS26)。
【0062】
ステップS26で、作業実績データベース51に未入力の項目の場合(ステップS26のYES)、作業者30は、作業者端末31aで入力された計測値、判定値又は写真を採用して、作業実績データベース51に登録する(ステップS27)。
また、ステップS26で、作業実績データベース51に入力済の項目の場合(ステップS26のNO)、作業者30は、作業者端末31aで入力された計測値、判定値又は写真を、作業実績データベース51に上書きで登録する(ステップS28)。
【0063】
また、ステップS24での表示後、補助作業者70は、作業者端末31bで、作業項目に応じた入力値D7又は判定値D8の入力を開始する(ステップS29)。そして、作業者端末31bは、ステップS29で入力された値が、作業実績データベース51に未入力の項目か否かを判断する(ステップS30)。
【0064】
ステップS30で、作業実績データベース51に未入力の項目の場合(ステップS30のYES)、補助作業者70は、作業者端末31bで入力された計測値、判定値又は写真を採用して、作業実績データベース51に登録する(ステップS31)。
また、ステップS30で、作業実績データベース51に入力済の項目の場合(ステップS30のNO)、補助作業者70は、そのときの入力済の情報が、作業者端末31bで入力された情報か否かを判断する(ステップS32)。
【0065】
ステップS32で、補助作業者70によって作業者端末31bで入力された情報である場合(ステップS32のYES)、作業者端末31bは、ステップS29で入力された情報を作業実績データベース51に上書きする(ステップS33)。
また、ステップS32で、補助作業者70によって作業者端末31bで入力された情報でない場合(ステップS32のYES)、つまり作業者30によって入力された情報である場合、作業者端末31bは、入力情報の上書きを禁止する(ステップS34)。
【0066】
ステップS27,S28,S31,S33,S34での入力又は入力禁止が行われた後、各作業者端末31a,31bは、エレベーター1についての作業実績データベース51の全ての作業項目の入力値又は判定値が入力されたか否かを判断する(ステップS35)。
ステップS35で、入力されていない作業項目がある場合(ステップS35のNO)、作業者端末31は、未入力の作業項目を表示部32に表示させる通知を行い、ステップS23の判断に戻る。
また、ステップS35で、全ての作業項目が入力済みである場合(ステップS35のYES)、エレベーター1の保全作業を終了する。
【0067】
また、ステップS23で、それぞれ別の領域の高さにいると判断した場合(ステップS23のNO)、各作業者端末31a,31bの表示部32a,32bは、それぞれの作業者端末31a,31bの領域判断部37aが判断した高さの領域に応じた作業項目を個別に表示する(ステップS37)。例えば、作業者端末31aの表示部32aが領域Aの作業項目を表示し、作業者端末31bの表示部32bが領域Cの作業項目を表示するように、それぞれ異なった項目の表示を行う。
【0068】
ステップS37での表示後、作業者30は、作業者端末31aで、作業項目に応じた入力値D7又は判定値D8の入力を開始し(ステップS38)、ステップS26の判断に移る。
また、ステップS37での表示後、補助作業者70は、作業者端末31bで、作業項目に応じた入力値D7又は判定値D8の入力を開始し(ステップS39)、ステップS30の判断に移る。
【0069】
[具体的な保全作業時の例]
次に、図13図14を参照して、保全作業時の作業者30及び補助作業者70の具体的な位置と、表示状態の関係の例を説明する。
図13は、作業者30と補助作業者70の二人が、昇降路2の底面であるピット21に入って作業を行っている状態を示す。
【0070】
図13に示すように作業者30がピット21に入っている状態では、各作業者端末31a,31bは、高さとして最下階の近傍であることが判断される。したがって、各作業者端末31a,31bの表示部32a,32bは、領域Aの作業項目を表示した、図6Aに示す表示形態になる。つまり、各作業者端末31a,31bの表示部32a,32bは、制御盤13やブレーキ14、調速機17などの最下階やピットに設置された機器に対応する作業項目を優先的に表示する。
【0071】
図14は、作業者30が、昇降路2の底面であるピット21に入って作業を行っており、補助作業者70が、昇降路2の最上階の近傍で作業を行っている状態を示す。
この図14に示す状態では、作業者30が所持した作業者端末31aは、高さとして最下階の近傍であることが判断される。したがって、作業者端末31aの表示部32aは、領域Aの作業項目を表示した、図6Aに示す表示形態になる。
一方、作業者端末31bは、高さとして最上階の近傍であることが判断される。したがって、補助作業者70が所持した作業者端末31bの表示部32bは、領域Cの作業項目を表示した、図6Cに示す表示形態になる。
【0072】
このように、本実施の形態例の場合、それぞれの作業者端末31a,31bの表示部32a,32bで、居場所に対応した領域の作業項目が表示され、作業者30と補助作業者70の二人が迅速に入力を行えるようになる。
ここで、作業者30と補助作業者70とで、同じ作業項目に入力が重ねて入力を行おうとした場合、作業者30の入力が優先され、補助作業者70は自身が入力した項目だけが上書きできるようになる。
したがって、本実施の形態例によると、常に主作業者である作業者30の入力が優先され、作業者30の入力値を補助作業者70が上書きするようなことがなく、適切に保全作業を行うことができる。
【0073】
なお、図13及び図14の例の場合でも、各作業者端末31a,31bで入力された計測値、判定値、撮影データは、リアルタイムあるいは若干の時間差でネットワーク40を経由して作業実績データベース51に送られて登録され、管理者端末60でも作業の進行状況を把握できる点は同じである。
【0074】
<変形例>
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施の形態例では、エレベーターの昇降路を、最下階の領域Aと、最上階の領域Cと、中間階の領域Bとの3つに分類して、表示を変化させた。エレベーターなどの昇降機の保全作業を考えた場合、最下階と最上階に保全作業を行う機器が多数設置されているため、この3つに分類するのが最も好ましいが、分類数は3つに限定されない。
具体的には、エレベーターの昇降路を、最下階を含む領域と、最上階を含む領域の2つに分類してもよい。逆に、中間階の領域をさらに複数に分割して、4つ以上の領域に分類してもよい。
【0075】
また、上述した各実施の形態例では、昇降機の一例としてエレベーターの保全作業を行う場合としたが、エスカレーターなどその他の昇降機の保全作業を行う際にも、作業員がいる領域に応じて、表示を変化させてもよい。各端末が領域を判断する際に、高さを利用した点についても一例であり、その他の領域判断処理を行うようにしてもよい。
【0076】
また、上述した各実施の形態例では、昇降機保全作業実績登録システムとして、作業者端末31と保全作業サーバ50とを備えて、保全作業サーバ50が作業実績データベース51を保存する構成とした。これに対して、管理者端末60又はその他の端末が、保全作業サーバ50としての機能を備えて、作業実績データベース51を保持してもよい。
【0077】
また、図3に示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0078】
なお、昇降機保全作業実績登録システムをコンピュータなどの情報処理装置で構成した場合に、プログラムについては、コンピュータ内の不揮発性ストレージやメモリに用意する他に、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…エレベーター、2…昇降路、3…頂部機器、4反らせ車、5…通話装置、7…上部スイッチ、8…乗り場ドア、9…乗場釦、11…乗り場、12…乗場釦、13…制御盤、14…ブレーキ、15…緩衝器、16…下部スイッチ、17…調速機、18…乗り場ドア、19…乗場釦、21…ピット、30…作業者、31,31a,31b…作業者端末、32…表示部、32a,32b…表示部、32x…スクロールバー、33…通信部、34…気圧計、35…カメラ、36…CPU、37…主記憶部、37a…領域判断部、37b…表示制御部、37c…登録部、38…入力部、38a…演算部、38b…表示制御部、38c…登録部、39…不揮発性ストレージ、40…ネットワーク、50…保全作業サーバ、51…作業実績データベース、52…不揮発性ストレージ、53…CPU、54…主記憶部、55…通信部、60…管理者端末、61…管理者、62…CPU、63…主記憶部、63a…表示制御部、64…不揮発性ストレージ、65…表示部、66…通信部、67…入力部、70…補助作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14