(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】映像送出システム、映像編集装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/91 20060101AFI20240912BHJP
G11B 27/02 20060101ALI20240912BHJP
H04N 21/854 20110101ALI20240912BHJP
【FI】
H04N5/91
G11B27/02 Z
H04N21/854
(21)【出願番号】P 2021147404
(22)【出願日】2021-09-10
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 善弘
【審査官】大西 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-015436(JP,A)
【文献】特開2007-082088(JP,A)
【文献】特開2016-213738(JP,A)
【文献】特開2019-169851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/91 - 5/956
G11B 27/00 -27/06
H04N 21/00 -21/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた映像データである素材映像を編集して作成した出力映像を送出する映像送出システムであって、
前記素材映像を時間的に分割した複数のクリップ映像が、時間的に変化しない静止画像で構成された静止映像を挟んで時間的に結合された2次利用用映像をエンコードした2次利用用ファイルが記憶され、
前記2次利用用ファイルをデコードして前記2次利用用映像中における前記クリップ映像と前記静止映像とを区別して認識するデコーダが用いられ、
前記2次利用用ファイルから認識された前記クリップ映像から前記出力映像を生成することを特徴とする映像送出システム。
【請求項2】
前記デコーダは、前記2次利用用ファイルにおけるデータをGOP単位でデコードし、前記クリップ映像に対応すると認識された前記データをデコードした出力を組み合わせて前記出力映像を生成することを特徴とする請求項1に記載の映像送出システム。
【請求項3】
複数の前記クリップ映像を組み合わせて用いた第1の出力映像を作成し、当該第1の出力映像をエンコードした第1の出力ファイルを作成する映像編集装置を具備し、
前記映像編集装置は、前記第1の出力ファイルを作成する際に、前記2次利用用ファイルも作成し、
当該2次利用用ファイルを用いて第2の出力映像を生成し、当該第2の出力映像をエンコードした第2の出力ファイルを出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の映像送出システム。
【請求項4】
前記2次利用用映像において、
前記静止画像は、直前の前記クリップ映像の最後の画像、又は直後の前記クリップ映像の最初の画像であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の映像送出システム。
【請求項5】
与えられた映像データである素材映像を時間的に分割した上で組み合わせた出力映像を送出する映像送出システムにおいて、前記出力映像を作成するために前記素材映像を編集する映像編集装置であって、
前記素材映像を時間的に分割した複数のクリップ映像を生成し、時間的に変化しない静止画像で構成された静止映像を挟んで前記クリップ映像が時間的に結合された2次利用用映像を作成することを特徴とする映像編集装置。
【請求項6】
前記2次利用用映像において、
前記静止画像は、直前の前記クリップ映像の最後の画像、又は直後の前記クリップ映像の最初の画像であることを特徴とする請求項5に記載の映像編集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素材となる映像を編集して送出する映像送出システム、これに用いられる映像編集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ番組等のテレビジョン放送において、リアルタイム放送が行われている以外の場合においては、実際に放送される映像(完全パッケージ:完パケ)は、放送される対象となる部分を全て含む一連の映像データである番組素材(素材映像)が編集されて作成される。
【0003】
一方、このような映像は、複数回にわたり放送(配信)される場合もある。このような場合において、初回に使用された完パケがそのまま後でも用いられるとは限らない。例えば、既に放送されたスポーツ放送が後でオンデマンド配信される場合には、初回に使用された完パケとは異なるように素材映像が新たに編集されて用いられる。
【0004】
このような素材映像の利用状況を考慮し、完パケだけではなく、未編集の素材映像も管理して大容量の記録装置に記録(アーカイブ)されている。この際、記録されるデータ容量が大きくなりすぎると、データの書き込み・読み出し処理に時間を要する、あるいは必要となる記録装置の記憶容量が大きくなりすぎる、等の問題がある。
【0005】
特許文献1には、このような状況を考慮し、素材映像において必要となる部分のみを特定するための情報(クリップ情報)を素材映像と組み合わせてアーカイブ装置(記憶媒体)に記憶させる技術が記載されている。クリップ情報は、素材映像に基づきカット編集装置で作成される。この技術においては、クリップ情報に従って素材映像がクリップされた複数の映像データが生成され、例えばCM映像等を間に挟んでこれらの映像データが結合されて一本化された新たな映像データが、完パケとして作成される。
【0006】
その後にこの素材映像を用いた新たな配信(放送)を行う際には、クリップ情報を認識すれば、素材映像を新たにクリップする作業は不要となる。このため、素材映像を記憶した上で上記のクリップ情報を用いることによって、新たな配信用の完パケを作成する作業を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術によって、新たな配信に伴う運用者による新たな編集作業の手間が省ける一方で、素材映像毎にクリップ情報を作成する作業が代わりに必要となり、新たにクリップ情報も管理することが必要となった。このため、特許文献1に記載の技術では、作業者による作業は充分には軽減されなかった。
【0009】
このため、同一の素材映像を用いた複数回の配信を行う場合において、作業者による作業を十分に軽減する技術が望まれた。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、与えられた映像データである素材映像を編集して作成した出力映像を送出する映像送出システムであって、前記素材映像を時間的に分割した複数のクリップ映像が、時間的に変化しない静止画像で構成された静止映像を挟んで時間的に結合された2次利用用映像をエンコードした2次利用用ファイルが記憶され、前記2次利用用ファイルをデコードして前記2次利用用映像中における前記クリップ映像と前記静止映像とを区別して認識するデコーダが用いられ、前記2次利用用ファイルから認識された前記クリップ映像から前記出力映像を生成する。
この際、前記デコーダは、前記2次利用用ファイルにおけるデータをGOP単位でデコードし、前記クリップ映像に対応すると認識された前記データをデコードした出力を組み合わせて前記出力映像を生成してもよい。
この際、複数の前記クリップ映像を組み合わせて用いた第1の出力映像を作成し、当該第1の出力映像をエンコードした第1の出力ファイルを作成する映像編集装置を具備し、前記映像編集装置は、前記第1の出力ファイルを作成する際に、前記2次利用用ファイルも作成し、当該2次利用用ファイルを用いて第2の出力映像を生成し、当該第2の出力映像をエンコードした第2の出力ファイルを出力してもよい。
この際、前記2次利用用映像において、前記静止画像は、直前の前記クリップ映像の最後の画像、又は直後の前記クリップ映像の最初の画像であってもよい。
本発明は、与えられた映像データである素材映像を時間的に分割した上で組み合わせた出力映像を送出する映像送出システムにおいて、前記出力映像を作成するために前記素材映像を編集する映像編集装置であって、前記素材映像を時間的に分割した複数のクリップ映像を生成し、時間的に変化しない静止画像で構成された静止映像を挟んで前記クリップ映像が時間的に結合された2次利用用映像を作成する。
この際、前記2次利用用映像において、前記静止画像は、直前の前記クリップ映像の最後の画像、又は直後の前記クリップ映像の最初の画像であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、同一の素材映像を用いた複数回の配信を行う場合において、作業者による作業を十分に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係る映像送出システムにおいて用いられる映像データの構成の例である。
【
図2】実施の形態に係る映像送出システムの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態に係る映像送出システムにおける、2次利用用ファイルから再利用ファイルを作成する動作を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態に係る映像送出システムにおける、2次利用用映像と再利用映像の関係を示す例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を図面を参照して具体的に説明する。ここでは、まず、未編集である元の映像データ(素材映像)と、実際に放送に供する映像データ(完パケ)との間の関係について説明する。この素材映像は、例えばスポーツ中継の映像であり、例えば試合開始の直前から試合終了の直後までが連続的に録画され、かつ、CM映像等、このスポーツ中継と直接関係のない映像はこの中には含まれない。このため、この素材映像には、試合中における重要な場面であるために放送に供される部分の大部分が含まれる一方で、例えばサッカーの試合におけるハーフタイム等、放送には供されるとは限らない部分も含まれる。このため、実際に放送や配信に供される完パケは、この素材映像が編集されて作成される。本発明の実施の形態に係る映像送出システムは、素材映像を編集して作成した出力映像(完パケ映像)を出力するために用いられる。
【0015】
このような完パケ映像と素材映像との関係の一例を、
図1に模式的に示す。ここでは、素材映像V0と、完パケ映像V1の例が模式的に示され、横軸が映像における経過時間に対応する。前記の通り、素材映像V0は一連の連続的な映像である。これに対して、完パケ映像V1においては、素材映像V0における初めの約1/4程度に対応したクリップ映像V01、その後の約1/4程度に対応したクリップ映像V02、その後の約1/4程度に対応したクリップ映像V03、その後の残りの部分に対応したクリップ映像V04が用いられる。クリップ映像V01、V02、V03、V04はいずれも素材映像V0の一部であり、互いに重複する部分はないものとする。
【0016】
完パケ映像V1においては、クリップ映像V01とクリップ映像V02の間には挿入映像C1、クリップ映像V02とクリップ映像V03の間には挿入映像C2、 クリップ映像V03とクリップ映像V04の間には挿入映像C3が、それぞれ設けられている。挿入映像C1~C3は、CM映像等に対応した動画の映像であり、素材V0とは無関係に予め準備される。これによって形成される完パケ映像V1の時間長(
図1における横方向の長さ)と素材映像V0の時間長とが等しい必要はなく、完パケ映像V1の時間長は、放送(配信)の状況に応じて適宜設定される。このような完パケ映像V1は、作業者が素材映像V0の各時点における映像や音声ををディスプレイ等で確認した上でクリップ映像V01~V04を作成し、挿入映像C1~C3と組み合わせる編集作業を行うことによって作成される。これによって、素材映像V0が例えばスポーツ中継の映像である場合には、ハーフタイム等の間の映像は完パケ映像V1(クリップ映像V01、V02、V03、V04)には含まれず、かつこのスポーツの試合中における重要な場面は完パケ映像V1(クリップ映像V01、V02、V03、V04のいずれか)に含まれるようにすることができる。
【0017】
素材映像V0、完パケ映像V1は、それぞれ例えばMPEG-2形式でエンコードされて素材ファイル、完パケファイルとされ、この形態で記憶し、かつネットワークを介して機器間でやりとりすることができる。これらのファイルから素材映像V0、完パケ映像V1に対応する映像信号、音声信号を得るためには、このファイルをデコードする操作が必要となる。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態に係る映像送出システム1の構成を示す図である。ここでは、素材映像V0がエンコードされた素材ファイルが入力され、これを記憶するコンテンツサーバ10が設けられる。素材ファイルのコンテンツサーバ10への入力の態様は様々であり、ライブ回線を介してベースバンド収録される場合、他の装置からネットワークNを介して入力する場合等がある。この入力に関わる構成は周知の技術であり、
図2では記載が省略されている。
【0019】
図2においては、このように素材ファイル(素材映像V0)を作業者が編集して完パケファイル(完パケ映像V1)を作成するための編集装置(映像編集装置)20がコンテンツサーバ10とネットワークNを介して接続されて設けられる。この編集作業に際しては、作業者は実際に素材映像V0をディスプレイで確認しながら、前記のクリップ映像V01等を作成し、素材映像V0とは無関係に準備された挿入映像C1等と組み合わせて完パケ映像V1を作成する作業を行う。このため、編集装置20は、例えば素材ファイルをデコードして
図1に示されるような素材映像V0を得るデコーダ21、作成した完パケ映像V1をエンコードして完パケファイルを作成するエンコーダ22を有する。
【0020】
編集装置20によって作成された完パケファイルは、ネットワークNを介して送出サーバ30に転送される。送出サーバ30は、入手した完パケファイルを記憶し、これを地上デジタル放送用の設備に送信して放送させる、あるいはネットワーク配信するための機器に送信して配信させる。この際、送出サーバ30側における完パケ映像V1の内容を確認する作業を可能とするために、送出サーバ30側にも、完パケファイルをデコードするためのデコーダ31、映像データをエンコードするエンコーダ32が設けられる。
【0021】
また、多くの素材ファイル(素材映像V0)を記憶する大容量の記録装置40も設けられる。前記の通り、素材映像V0等はMPEG-2等の形式で符号化されたファイルとして扱われるが、記録装置40においては、このファイルが多数更にアーカイブされて記憶される。記録装置40には、ハードディスクや不揮発性メモリ以外にも、読み出しや書き込みに時間は要するものの大容量のデータを高い信頼性で記憶する各種の記憶媒体を用いることができる。また、記録装置40は、作成(送出)された完パケファイルも、必要に応じて素材ファイルと同様の形態で記憶することができる。
【0022】
このため、素材ファイルや完パケファイル等の映像ファイルのネットワークNを介したやりとりを制御するための転送制御装置50が設けられる。
【0023】
前記のように、編集装置20によって、素材ファイル(
図1における素材映像V0)から完パケファイル(
図1における完パケ映像V1)を作成することができる。ただし、この映像送出システム1においては、完パケファイルに類似した2次利用用ファイルも作成される。
図1においては、この2次利用用ファイルの映像である2次利用用映像V2の構成も示されている。この2次利用用ファイルは、素材ファイル等と同様の形態で記録装置40に記憶させることができ、後で利用することができる。
【0024】
図1においては、この2次利用用映像V2の形態が完パケ映像V1と対応させて示されている。2次利用用映像V2においては、完パケ映像V1において用いられた挿入映像C1~C3の代わりに、静止画像で構成された静止映像P1~P3が用いられている。静止映像P1の前半部分(静止映像前半部分P11)は、直前のクリップ映像V01の最後のフレームの画像と等しく、静止映像P1の後半部分(静止映像後半部分P12)は、直後のクリップ映像V02の最初のフレームの画像と等しい。静止映像P2、P3についても、静止映像前半部分P21、P31は、直前のクリップ映像V02、V03を用いて、静止映像後半部分P22、P32は、直後のクリップ映像V03、V04を用いて、それぞれ作成される。
【0025】
なお、静止映像P1、P2、P3の時間長(継続時間)は、完パケ映像V1における挿入映像C1~C3の時間長とは無関係に設定することができ、これらの時間長は、後述するように、これらが動画ではなく静止画像であることを認識できるように適宜設定され、フレーム単位ではなく、特にGOP(Group of Picture)単位で設定される。
【0026】
このため、2次利用用映像V2は、クリップ映像V01~V04のみを用いて生成することができる。また、上記のように2次利用用映像V2は静止画像を含むものの、全体としては動画である単一の映像データとして扱うことができる。また、編集装置20は、クリップ映像V01~V04を作成すれば2次利用用映像V2を容易に作成することができるため、完パケ映像V1を1回作成すれば、2次利用用映像V2も作成することができる。このため、2次利用用映像V2をエンコードした2次利用用ファイルも、素材ファイルや完パケファイルと同様に扱うことができる。
【0027】
このため、編集装置20は、完パケファイルを放送(配信)のために送出サーバ30に送信する一方、2次利用用ファイルを記録装置40に送信し、記録装置40は、他の映像ファイルと同様の形態で2次利用用ファイルをアーカイブして記憶させることができる。
【0028】
上記の映像送出システム1においては、出力映像となった完パケ映像V1が放送(配信)された後で、同一の素材映像V0に関わる新たな放送(配信)のために新たな出力映像を作成する場合には、素材映像V0(素材ファイル)に全くアクセスせずに、代わりに2次利用用映像V2(2次利用用ファイル)を用いることができる。
【0029】
この際、MPEG-2形式でエンコードされた上記の2次利用用ファイルは、
図2におけるデコーダ21、31でデコードすることができる。この際に、以下に説明するように、これを利用して同一の素材ファイル(素材映像V0)を用いた新たな映像ファイルである再利用映像ファイル(再利用映像)を容易に作成することができる。
【0030】
図3は、この際の編集装置20における動作を示すフローチャートである。ここでは、上記の編集装置20が上記の再利用映像ファイルを作成するものとするが、デコーダを有する限りにおいて、他の構成要素においても同様の動作が可能であり、例えば送出サーバ30においても同様の動作が可能である。
図4は、2次利用用ファイルの映像(2次利用用映像V2)と、これによって新たに作成される再利用映像ファイル(再利用映像)を
図1に対応させて示す図である。ここでは、2種類の再利用映像の例が記載されている。再利用映像(1)(再利用映像V3)は、クリップ映像V01~V04のみが直列接続されたものであり、再利用映像(2)(再利用映像V4)は、
図1における完パケ映像V1における挿入映像C1~C3が他の映像に置換されたものである。
図3の動作は、再利用映像V3を作成する場合の動作に対応する。
【0031】
デコーダ21はMPEG-2形式とされた映像データ(映像ファイル)をデコードして映像信号や音声信号を作成する。この動作は、GOP単位で行われる。
【0032】
図3において、デコーダ21は、2次利用用ファイルから1GOP分のデータを圧縮バッファに読み込み(S1)、デコード処理を行い(S2)、このデータに対応する映像信号データを伸長バッファに書き込む。デコーダ21には通常のデコード処理機能に加えて、この映像信号データが動画であるか静止画像であるか否かを判定するための機能が付与されている。この判定は、フレーム毎の画像の同一性を見ることによって行われ、前記のとおり、このデータが静止画ではない、すなわち、
図1の2次利用用映像V2における静止映像P1、P2、P3以外の部分(クリップ映像V01~V04)である場合(S3:No)には、この映像信号データが出力バッファに書き込まれる(S4)。
【0033】
2次利用用ファイルにおいて読み込むべきデータがまだ存在している場合(S5:No)には、デコーダ21は、このデータの読み込みに対応するポインタをインクリメントし(S6)、再び次のデータが順次読み込まれる(S1)。以降は同様の動作が繰り返されることによって、出力バッファにおいて連続的な映像に対応した映像信号データが生成される。
【0034】
一方、デコーダ21が、伸長バッファに読み込まれた映像信号データが静止画像であると認識した場合(S3:Yes)には、この内容の出力バッファへの書き込み(S4)、ポインタのインクリメント(S6)は行われずに、次のデータ読み込み(S1)が行われる。すなわち、読み込んだデータが静止映像P1、P2、P3のいずれかであった場合には、出力バッファにおいては新たな映像信号データは追加されない。
【0035】
なお、静止映像前半部分P11と静止映像後半部分P12の境界部分は実際には動画ではないものの、静止画像ではないと認識される(S3:No)。しかしながら、この場合に認識されるのは直後のクリップ映像V02の先頭フレームの画像であるため、この映像データが同様に出力バッファに書き込まれても、
図4における再利用映像V3は、実質的にはこれがない場合の映像データと変わらない。
【0036】
以上の動作により、
図4における再利用映像V3が新たに生成される。この場合には、クリップ映像V01~V04のみが直列に接続される。その後、この再利用映像V3をエンコーダ22によってMPEG-2形式にエンコードする(S7)ことによって、再利用映像V3に対応した再利用ファイルが得られる。この場合には、この再利用ファイルをそのまま
図1における完パケファイルとして新たに送出サーバ30から新たに送出することができる。
【0037】
図3において、読み出されたデータによる映像信号データが静止画像であると認識された場合(S3:Yes)に、次のデータを読み込む(S1)前に、
図1における完パケ映像V1と同様に、予め準備された他の映像(挿入映像)を出力バッファに追加することもできる。
図4における再利用映像V4は、このような操作を行って作成される。この場合においても、挿入映像C4~C6を別途準備しておけば、作業者による編集作業を要さずに再利用映像V4を作成することができる。この際、元の素材映像V0(素材ファイル)に再度アクセスする必要はない。
【0038】
すなわち、この映像送出システム1は、
図1における完パケ映像V1を素材映像V0を基にして作成して初めの出力映像(第1の出力映像)を作成し、これをエンコーダした完パケファイルを第1の出力ファイルとして出力する。この際に、完パケファイルと共に上記の再利用用ファイルも作成される。その後、
図3の動作によって、素材ファイル(素材映像V0)を全く用いずに、再利用用ファイルを用いて自動的に
図4における再利用映像V3、V4を作成し、これをエンコードした再利用ファイルを第2の出力ファイルとして出力することができる。この際、作業者による新たな編集作業は不要である。
【0039】
例えば、前記の2次利用用ファイル(2次利用用映像V2)の代わりに、先に作成され送出された完パケファイル(完パケ映像V1:
図1)を用いて同様に再利用ファイル(再利用映像)を作成することも不可能ではない。しかしながら、この場合には、前記のように2次利用用映像V2中における静止映像P1等を認識する代わりに、
図1の完パケ映像V1中における挿入映像C1等を認識することが必要になる。しかしながら、挿入映像C1は前記のようにCM映像等であり予め定められるため、例えばクリップ映像V01と挿入映像C1の境界を認識するための基準の設定は容易ではなく、上記の静止映像P1等の認識と同様の認識は困難である。このため、この場合には特許文献1に記載されたようなクリップ情報を素材ファイルと組み合わせて用いる、あるいは素材映像の編集作業を改めて行うことが必要になる。
【0040】
これに対して、上記の2次利用用ファイル(2次利用用映像V2)における静止映像P1等は、前記の通り、作業者によってクリップ映像V01等が設定されれば、自動的に作成される。このため、2次利用用ファイルは、作業者による1回の完パケファイル作成作業(素材映像の編集作業)によって、自動的に作成することが可能である。その後において2次利用用ファイルは通常の映像ファイルと変わるところがなく扱われ、かつそのデコード時において静止映像P1等を認識することも上記のとおり容易である。このため、これを用いた再利用ファイルの作成も、容易となる。
【0041】
このため、上記の映像送出システム1においては、同一の素材映像を用いた2回目以降の放送(配信)のための作業が大幅に簡略化される。このため、一つの素材映像(素材ファイル)の活用効率を高めることができる。また、一度の同一の素材映像へのアクセスにより、複数回の放送に利用可能となるため、
より活用効率を高めることができる。
【0042】
また、上記の動作において、デコーダ21としては、MPEG-2形式のファイルをデコードして映像信号を生成するという従来の動作に加えて、上記の判定(S3)をする機能を新たに設けたものを用いることができる。エンコーダ22の動作は、従来のエンコーダと変わりがない。また、
図1における他の構成要素(コンテンツサーバ10、転送装置30、記録装置40)の動作は、前記の通り、従来におけるものと変わりがない。このため、上記の映像送出システム1を安価かつ容易に得ることができる。
【0043】
また、前記の通り、2次利用用ファイルの作成は、クリップ映像V01~V04が認識できる限りにおいて、編集装置20以外(例えば送出サーバ30)で行うこともできる。この場合においても、上記と同様に2次利用用ファイルを作成することができ、これを用いて後の放送(配信)を容易に行うことができる。
【0044】
また、前記の2次利用用映像V2においては、静止映像P1として、直前のクリップ映像V01の最後のフレームの画像を用いた静止映像前半部分P11と、直後のクリップ映像V02の最初のフレームの画像を用いた静止映像後半部分P12とが組み合わせて用いられ、静止映像P2、P3についても同様であった。しかしながら、このようにクリップ映像間に設けられる静止映像としては、クリップ映像(素材映像)の内容によらずに上記の判定(S3)が可能であり、かつ前記と同様に認識されたクリップ映像を用いて2次利用用映像を作成することができる限りにおいて、他の画像を用いることもできる。例えば、前記の静止映像前半部分、静止映像後半部分のうちの一方のみをこの静止映像として用いてもよい。
【0045】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0046】
1 映像送出システム
10 コンテンツサーバ
20 編集装置(映像編集装置)
21、31 デコーダ
22、32 エンコーダ
30 送出サーバ
40 記録装置
50 転送制御装置
C1~C6 挿入映像
V0 素材映像
V01~V04 クリップ映像
V1 完パケ映像
V2 2次利用用映像
V3、V4 再利用映像
P1~P3 静止映像
P11、P21、P31 静止映像前半部分
P12、P22、P32 静止映像後半部分