(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240912BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61F13/15 380
A61F13/511 500
(21)【出願番号】P 2021152839
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2017108162の分割
【原出願日】2017-05-31
【審査請求日】2021-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】八木 誠
【審判官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110379(JP,A)
【文献】特開2002-360620(JP,A)
【文献】特開2006-136582(JP,A)
【文献】特表2006-512159(JP,A)
【文献】特開2011-182817(JP,A)
【文献】特開2003-70838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品の製造方法であって、
前記トップシートは、親水性のエアスルー不織布であり、
前記トップシートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクをインクジェット印刷によって印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、
前記トップシートに印刷された前記ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm
2以上2000μm
2以下であり、
前記トップシートに前記ホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、7%以上12%以下であり、
前記ホットメルト系インクにおける、バインダーの質量割合は、30%以上40%以下であり、ワックス又はオイルを含む添加剤の質量割合は、50%以上60%以下であり、顔料又は染料の質量割合は、0.5%以上10%以下であり、
前記インクジェット印刷における印刷ライン速度は、100m/分以上であ
り、
前記吸収性物品は、身体側表面に、前記吸収性物品の長手方向に沿って、一対の立体ギャザーを備え、
前記立体ギャザーの一方の面又は他方の面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、
前記立体ギャザーにおける前記ホットメルト系インクのドットの平均面積は、1000μm
2
以上2000μm
2
以下であり、
前記立体ギャザーにホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクが占める面積割合は、7%以上12%以下であることを特徴とする吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記インクジェット印刷は、前記吸収性物品の製造ラインに組み込まれたインライン印刷であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記ホットメルト系インクは、120℃で0.1Pa.s以下の溶融粘度を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記吸収性物品は、前記トップシート及び前記吸収体の間に配置された液拡散性シートを更に有し、
前記液拡散性シートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、
前記図柄、文字等は、前記トップシートを通して視認可能であり、
前記液拡散性シートにおける前記ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm
2以上2000μm
2以下であり、
前記液拡散性シートに前記ホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、7%以上12%以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記トップシートは、サーマルボンド不織布又はスパンボンド不織布であり、
前記トップシートの坪量は、15g/m
2以上50g/m
2以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷が施された軽失禁パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、幼児や大人を対象とした使い捨て紙おむつ等の吸収性物品が広く普及している。これらの吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置される吸収体と、を具備するように構成される。液透過性トップシートは主として不織布から構成され、液不透過性のバックシートはポリエチレン等のプラスチックフィルムから構成される。
【0003】
また、吸収性物品には、様々な目的で、図柄、文字等が印刷され、単色印刷又は多色印刷等の印刷方法が印刷部位や目的等に応じて適宜選択されている。例えば、幼児用の吸収性物品では、バックシートに動物等のキャラクターの図柄が多色印刷されている場合もある。また、大人用の吸収性物品では、吸収性物品のサイズ・前後・吸収量といった仕様上の表記が単色で印刷されている場合もある。
【0004】
印刷方法は、印刷される部材の表面性によって適宜選択されるが、印刷方法によっては印刷精度が制限される場合がある。例えば、被印刷部材がプラスチックフィルムや紙の場合は、フレキソ印刷やグラビア印刷が使用でき、ある程度の印刷精度を得ることができる。ここで、フレキソ印刷やグラビア印刷は刷版ロールと被印刷部材が接触して印刷する方式のことである。
【0005】
この点、トップシート、立体ギャザーシート、個別包装シート等に一般的に使用されることが多い各種不織布等は、プラスチックフィルムや紙等に比べて表面が平滑ではない。したがって、これらに対して上記の接触式の印刷方式で印刷を施す場合は、その表面に大小の凹凸が存在するために、印刷精度が悪くなるほか、見栄え等の美粧性や視認性が損なわれるという問題がある。一方で、需要者にとって、印刷部分の美粧性に対する要求度は、近年ますます強くなってきている。そこで、各種不織布等に印刷を施す場合には、印刷スピードを制限したり、図柄や文字等を大きくしたりするといった対策が必要となる。
【0006】
特許文献1は、見栄えの良い吸収性物品を操業性良く製造することを目的に、外側から視認可能な模様がバックシートに施された吸収性物品の製造方法において、油性インクを用いるインクジェットプリンタと、所定温度以下の冷却用のスプレー液を噴射する冷却手段とを備え、インクジェットプリンタによりバックシートの外面側からインクを吐出することで模様をバックシート上に形成した後、冷却手段により模様の形成された領域を冷却する吸収性物品の製造方法を開示している。
【0007】
特許文献2は、不織布物品用の水性印刷インキに関して色移り抵抗特性を向上させることを目的に、水性ポリウレタン、水及び着色剤を含む水性組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-206330号公報
【文献】特表2010-509460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示されている吸収性物品の製造方法は、被印刷物の表面が比較的平滑であるバックシートにインクジェット印刷によって模様を施すことを想定している。そのため、被印刷物の表面が凹凸であり親水性である不織布に模様等を施す場合には、見栄えの良い吸収性物品を操業性良く製造することに関して問題を生じる。
【0010】
また、特許文献2に開示の水性組成物をインクジェット印刷によって例えばトップシートに印刷する場合には、水性であるため、乾燥工程の時間によって印刷スピードが制限されることから操業性に問題を生じる。
【0011】
したがって、本発明は、トップシート等に使用される不織布に、美粧性に優れ、吸収性能を阻害することのない印刷が施された吸収性物品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、トップシートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有する吸収性物品の製造方法であって、トップシートに印刷されたホットメルト系インクのドットを所定の構成とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
(1) 本発明の第1の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品の製造方法であって、前記トップシートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、前記トップシートに印刷された前記ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm2以上2000μm2以下であり、前記トップシートに印刷された前記ホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は、50μm以上300μm以下であり、前記トップシートに前記ホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、12%以下であることを特徴とする吸収性物品の製造方法である。
(2) (1)に記載の吸収性物品の製造方法において、前記ホットメルト系インクは、インクジェット印刷によって印刷され、前記インクジェット印刷における印刷ライン速度は、100m/分以上であり、前記インクジェット印刷は、前記吸収性物品の製造ラインに組み込まれたインライン印刷であってもよい。
(3) (1)又は(2)に記載の吸収性物品の製造方法において、前記ホットメルト系インクは、120℃で0.1Pa.s以下の溶融粘度を有していてもよい。
(4) (1)から(3)のいずれか1つに記載の吸収性物品の製造方法において、前記吸収性物品は、前記トップシート及び前記吸収体の間に配置された液拡散性シートを更に有し、前記液拡散性シートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、前記図柄、文字等は、前記トップシートを通して視認可能であり、前記液拡散性シートにおける前記ホットメルト系インクのドットの平均面積は、1000μm2以上2000μm2以下であり、前記液拡散性シートにおける前記ホットメルト系インクのドット間隔は、50μm以上300μm以下であり、前記液拡散性シートに前記ホットメルト系インクが印刷されている領域における、前記ホットメルト系インクが占める面積割合は、12%以下であってもよい。
(5) (1)から(4)のいずれか1つに記載の吸収性物品の製造方法において、前記トップシートは、サーマルボンド不織布又はスパンボンド不織布であり、前記トップシートの坪量は、15g/m2以上50g/m2以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の吸収性物品の製造方法は、トップシートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、トップシートに印刷されたホットメルト系インクの各ドットの平均面積が1000μm2以上2000μm2以下であり、トップシートに印刷されたホットメルト系インクの各ドットのドット間隔が50μm以上300μm以下であり、トップシートにホットメルト系インクが印刷されている領域における、ホットメルト系インクのドットが占める面積割合が12%以下である。これにより、トップシート等に使用される不織布に、美粧性に優れ、吸収性能を阻害することのない印刷が施された吸収性物品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)及び(b)は、本発明の吸収性物品の製造方法において、吸収性物品の身体側表面からみた平面図であり、(c)は、本発明の吸収性物品を包装する包装シートの平面図である。
【
図2】(a)は
図1(c)において楕円の点線で示した領域を顕微鏡で撮影した画像であり、(b)は比較例において、最も濃く印刷された領域について、顕微鏡で撮影した画像である。
【
図3】(a)は
図2(a)における画像において、送り方向におけるドット間隔を表示した画像であり、(b)は
図2(b)における画像において、送り方向におけるドット間隔を表示した画像である。
【
図4】実施例、比較例、参考例の各不織布について、吸収速度を測定した結果を示す図である。
【
図5】実施例、比較例、参考例の各不織布について、ウエットバック量を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る、吸収性物品1の製造方法について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0017】
<吸収性物品>
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法として、吸収性物品1は、軽失禁パッド、軽失禁ライナー、生理用ナプキン、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等の吸収性物品1であってもよい。吸収性物品1は、身体側表面に配置された液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向し、衣類側表面に配置された液不透過性又は液透過性のバックシートと、トップシート10及びバックシートの間に配置された吸収体11と、を備え、これにより、吸収体11は、トップシート10とバックシートとの間に挟まれた構造となっている。なお、トップシート10、バックシート、吸収体11は、接着剤や熱融着等により、それぞれが接合されていてもよい。
【0018】
本明細書の説明において、長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向である。また、幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向である。また、本明細書において、身体側表面とは、吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する表面又は吸収性物品1の着用時に着用者の肌に当接する側の表面を指し、衣類側表面とは、身体側表面に対して反対側の面であり、吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に接触する表面又は吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に接触する側の表面を指す。
【0019】
[トップシート]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、吸収性物品1に用いられるトップシート10は、吸収体11に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収体11を挟んで、バックシートに対向して配置される。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、やわらかな感触で、肌に刺激を与えないような性質を有する親水性不織布であることが好ましい。親水性不織布としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いた、エアスルー不織布等のサーマルボンド不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム等を用いることができ、通気性及び着用時の肌触りの観点から、親水性エアスルー不織布等のサーマルボンド不織布又はスパンボンド不織布を用いることが好ましい。
【0020】
トップシート10の坪量は、加工性及び強度の点から、15g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。また、トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。
【0021】
[バックシート]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、吸収性物品1に用いられるバックシートは、液不透過性を有するシート材であり、吸収体11を挟んで、トップシート10に対向して配置される。バックシートは、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを用いたシート材を用いることができる。なお、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。
【0022】
バックシートの坪量は、加工性及び強度の点から、15g/m2以上60g/m2以下であることが好ましい。
【0023】
[吸収体]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、吸収性物品1に用いられる吸収体11は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、SAPとも称する)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキン、おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品1に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを用いることが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ(例えば、サウザンパインやダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(N-BKP)等)、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体11の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、400g/m2以上800g/m2以下の坪量とすることが好ましい。
【0024】
吸収体11に用いるSAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、質量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系共重合体が好ましい。吸収体11のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m2以上700g/m2以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上60質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0025】
吸収体11において、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体11の形状の安定化の目的から、吸収体11をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよく、キャリアシートで吸収体11を包む際の包み方は特に限定されるものではない。
【0026】
なお、吸収体11の坪量は、400g/m2以上1500g/m2以下であることが好ましい。吸収体11の坪量をこのような範囲にすることにより、吸収性に優れ、体液の漏れを効果的に防止することができる。また、吸収体11は、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0027】
吸収体11は、単層であっても複層であってもよく、吸収性繊維及び高吸水性ポリマーがないスリット部分が設けられていてもよい。
【0028】
[液拡散性シート]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、吸収体11の上面への体液の拡散を促進するため、吸収性物品1におけるトップシート10と吸収体11との間に、液拡散性シートを設けてもよい。液拡散性シートとしては、例えば、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の不織布や、スパンボンド/メルトブローン、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布を挙げることができる。
【0029】
液拡散性シートの坪量は、15g/m2以上であることが好ましい。液拡散性シートの形状は、特に制限はないが、尿等の体液がくまなく吸収体11に拡散するよう、吸収体11の表面を完全に覆うことができる形状であることが好ましい。
【0030】
[立体ギャザー]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、吸収性物品1の身体側表面には、使用者の排泄した体液の横漏れを防止するため、吸収性物品1の長手方向に沿って、立体ギャザー用弾性部材と立体ギャザーシートを有する一対の立体ギャザー12を備えていてもよい。立体ギャザー12は、吸収性物品1の幅方向端部(固定端)において、バックシートに固定されており、自由端側は、端部にて二つ折りにされていることが好ましい。そして、立体ギャザー用弾性部材は、二つ折りにされた自由端側の立体ギャザーシートに挟持されていることが好ましい。これにより、立体ギャザー12が起立性を有し、着用者の体型に合わせて変形可能なものとすることができる。
【0031】
立体ギャザー用弾性部材としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、合成ゴム、糸状又は帯状の天然ゴム等を用いることができ、糸状、紐状、平型形状のものを適宜用いることができる。また、立体ギャザーシートとしては、疎水性繊維にて形成された撥水性又は不透液性の不織布、例えば、スパンボンド不織布やメルトブローン不織布、スパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布等が使用される。立体ギャザー用弾性部材の太さは、1240dtex以下であることが好ましい。
【0032】
立体ギャザーシートの坪量は、10g/m2以上40g/m2以下であることが好ましい。
【0033】
[包装シート]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、吸収性物品1は吸収性物品1を包装する包装シート13を備えていてもよい。包装シート13としては、例えば、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等の樹脂フィルム、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布及びスパンボンド/メルトブローン/スパンボンドを積層した複合不織布、あるいはこれらの複合材料等を用いることができる。また、吸収性物品1と接する包装シート13の内側には、シリコン等による剥離処理を行うこともできる。
【0034】
包装シート13の坪量は、特に制限はないが、強度及び加工性の点から、15g/m2以上30g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上25g/m2以下であることが好ましい。
【0035】
[ホットメルト系インク印刷]
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、トップシート10の身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有し、トップシート10の身体側表面となる面に図柄、文字等を形成する工程を有していることが好ましい。なお、ホットメルト系インクが印刷されて形成されるのは、図柄、文字等であればよく、ホットメルト系インクが印刷されることで非印刷領域に形成される図柄、文字等、いわゆる、白抜き図柄、白抜き文字等であってもよく、数字、記号、図形等、吸収性物品1に通常印刷されるものであればよい。また、ブランド、製品名等を印刷してもよく、美粧性の向上を目的に、意匠やデザインを印刷してもよい。また、介護・病院施設等で吸収性物品1の利用者ごとに異なる製品を用いる場合の誤認防止を目的に、吸収量の目安等の吸収性物品1の仕様を印刷することもできる。
【0036】
トップシート10に印刷されたホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1000μm2以上2000μm2以下であり、1100μm2以上1700μm2以下であることが好ましい。また、トップシート10に印刷されたホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は、50μm以上300μm以下であり、80μm以上270μm以下であることが好ましい。なお、トップシート10に印刷されたホットメルト系インクの各ドットのドット間隔は、送り方向におけるドット間隔であることが好ましい。また、トップシート10にホットメルト系インクが印刷されている領域における、ホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、12%以下であり、9%以下であることが好ましい。また、トップシート10に印刷されたホットメルト系インクの各ドットの平均のドット間隔は、90μm以上280μm以下であることが好ましく、100μm以上270μm以下であることがより好ましい。
【0037】
ホットメルト系インクのドットを上述のように印刷することにより、トップシート10の表面に細かいドットにより多色で可変性の高い精細な印刷を有する吸収性物品1とすることができ、美粧性に優れた吸収性物品1とすることができる。また、トップシート10の立体構造に沿ってホットメルト系インクの細かなドットが付着するため、ホットメルト系インクがトップシート10の表面を塞がず、吸収性物品1の吸収性能に対する影響を少なくすることができ、吸収性物品1の吸収性能を阻害することのない印刷が施された吸収性物品1とすることができる。
【0038】
本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法において、ホットメルト系インクは、インクジェット印刷によって印刷されることが好ましい。これにより、印刷デザインを電子データの変更によって容易に変更できるため、版の切り替え作業を不要とすることができる。また、印刷される図柄、文字等は、吸収性物品1の製造工程において、送り方向に等間隔で同じ柄を印刷してもよく、目的に応じて様々な図柄、文字等の電子データを適宜選択することができる。また、フレキソ印刷等の接触式印刷方式と異なり、非接触式の印刷方式のため、印刷対象の坪量等の表面性に左右されずに印刷することが可能となる。
【0039】
また、インクジェット印刷における印刷ライン速度は、100m/分以上であり、200m/分以上であることが好ましく、280m/分以下であってもよい。
【0040】
また、インクジェット印刷は、吸収性物品1の製造ラインに組み込まれたインライン印刷であることが好ましい。これにより、吸収性物品1の高速生産が可能となる。例えば、トップシート10となる不織布シートをインクジェット式印刷装置に搬送し、トップシート10となる不織布シートに対し、ホストコンピュータから転送される印刷画像データに基づいて、インクジェットヘッドを送り方向(機械方向又はMD方向)と直交する方向(機械横断方向又はCD方向)にシリアルスキャンし、ホットメルト系インクを所定の温度とし、トップシート10となる不織布シートのうち、着用者の肌当接面である身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ホットメルト系インクによって図柄、文字等を印刷する。なお、インクジェット式印刷装置は、トップシート10と、バックシートと、トップシート10及びバックシートの間に配置された吸収体11と、を有する吸収性物品1を製造したライン上に設けられていてもよい。また、ホットメルト系インクは常温でも冷却可能だが、インクジェット印刷後の吸収性物品1を冷却ロールや送風装置等によって冷却する冷却工程を設けてもよい。
【0041】
ホットメルト系インクの吐出方式は、特に制限はなく、サーマル方式、ピエゾ方式等を用いることができる。
【0042】
ホットメルト系インクは、120℃で0.1Pa.s以下の溶融粘度を有することが好ましく、0.06Pa.s以下の溶融粘度を有することがより好ましい。これにより、美粧性に優れ、吸収性能を阻害することのない印刷が施された吸収性物品1とすることができる。
【0043】
ホットメルト系インクとしては、上述の溶融粘度を満たすものであれば特に制限はなく、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン等のポリオレフィン、それらの混合物、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル、ポリビニルピリジン、ポリエーテル、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、コポリエステル、オレフィン系ブロックコポリマーゴム、ポリスチレン-アクリル共重合体、テルペン樹脂、ロジン流動体、フェノール樹脂、クマロン-インデン樹脂等を用いることができる。これらのホットメルト系インクとしては、例えば、商品名:MDL5800(製造元:イーデーエム株式会社)等を挙げることができる。ホットメルト系インクにおけるバインダーの質量割合は、20%以上50%以下であることが好ましく、30%以上40%以下であることがより好ましい。
【0044】
また、これらのホットメルト系インクは、流動特性等を改善するために、ワックス、オイル等の添加材を含有していてもよい。例えば、ポリアルキレンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、Fischer-Tropschワックス、直鎖1級アルコール、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ステアリン酸アミド、パラフィンワックス及びモンタンワックス、エトキシル化長鎖アルコール等を用いることができる。これらのワックスは単独で又は組み合わせて使用してもよい。ホットメルト系インクにおける添加剤の質量割合は、40%以上70%以下であることが好ましく、50%以上60%以下であることがより好ましい。
【0045】
また、これらのホットメルト系インクは、無機顔料、有機顔料又は染料を含有していてもよく、ホットメルト系インクに通常用いられるものであれば特に制限はない。例えば、無機顔料は、二酸化チタン(ホワイト)、カーボンブラック(ブラック)、酸化鉄(レッド、イエロー、ブラウン)、酸化クロム(グリーン)、フェロシアン化第2鉄アンモニウム(ブルー)等を使用することができる。また、例えば、有機顔料は、ジアリライドイエロー(ピグメントイエロー)、フタロシアニンブルー(ピグメントブルー)、レッドレーキ(ピグメントレッド)等を使用することができる。ホットメルト系インクにおける顔料又は染料の質量割合は、0.1%以上20%以下であることが好ましく、0.5%以上10%以下であることがより好ましい。
【0046】
また、これらのホットメルト系インクは、バインダー、添加剤及び顔料又は染料に加え、可塑剤、増量剤、増粘剤、脱泡剤、湿潤剤又は界面活性剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0047】
これらのホットメルト系インクをインクジェット印刷する際には、ホットメルト系インクの温度を60℃以上150℃以下とする工程を有していることが好ましく、70℃以上120℃以下とすることがより好ましい。
【0048】
また、液拡散性シートの身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有していることが好ましく、液拡散性シートの身体側表面となる面にドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有していることがより好ましい。液拡散性シートの表面に印刷されている図柄、文字等は、トップシート10を通して視認可能であることが好ましい。液拡散性シートに印刷されるドット状のホットメルト系インクは、上述のトップシート10に印刷されるドット状のホットメルト系インクと同様のものであることが好ましく、印刷方法等についても上述のトップシート10において用いられるものを用いることが好ましい。例えば、液拡散性シートにおけるホットメルト系インクのドットの平均面積は、1000μm2以上2000μm2以下であることが好ましく、液拡散性シートにおけるホットメルト系インクのドット間隔は、50μm以上300μm以下であることが好ましく、液拡散性シートにホットメルト系インクが印刷されている領域における、ホットメルト系インクが占める面積割合は、12%以下であることが好ましい。
【0049】
また、立体ギャザー12の一方の面又は他方の面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有していることが好ましい。また、立体ギャザーシートの自由端側が端部にて二つ折りにされ、折り返されて内側の面を形成する内面と、折り返されて外側の面を形成する外面と、を有する立体ギャザー12の場合、立体ギャザー12の内面となる面又は外側となる面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有していてもよい。立体ギャザー12に印刷されるドット状のホットメルト系インクは、上述のトップシート10に印刷されるドット状のホットメルト系インクと同様のものであることが好ましく、印刷方法等についても上述のトップシート10において用いられるものを用いることが好ましい。例えば、立体ギャザー12におけるホットメルト系インクのドットの平均面積は、1000μm2以上2000μm2以下であることが好ましく、立体ギャザー12におけるホットメルト系インクのドット間隔は、50μm以上300μm以下であることが好ましく、立体ギャザー12にホットメルト系インクが印刷されている領域における、ホットメルト系インクが占める面積割合は、12%以下であることが好ましい。
【0050】
また、包装シート13の一方の面又は他方の面に、ドット状のホットメルト系インクを印刷して図柄、文字等を形成する工程を有していることが好ましい。包装シート13に印刷されるドット状のホットメルト系インクは、上述のトップシート10に印刷されるドット状のホットメルト系インクと同様のものであることが好ましく、印刷方法等についても上述のトップシート10において用いられるものを用いることが好ましい。例えば、包装シート13におけるホットメルト系インクのドットの平均面積は、1000μm2以上2000μm2以下であることが好ましく、包装シート13におけるホットメルト系インクのドット間隔は、50μm以上300μm以下であることが好ましく、包装シート13にホットメルト系インクが印刷されている領域における、ホットメルト系インクが占める面積割合は、12%以下であることが好ましい。
【0051】
[吸収性物品の製造方法]
吸収性物品1の製造方法としては、上述に述べた製造方法以外においては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法のように、ホットメルト系インクをトップシート10の身体側表面となる面又は衣類側表面となる面に印刷する工程を設け、さらに、液拡散性シート及び立体ギャザー12をトップシート10に配置した上で、吸収体11をトップシート10とバックシートとの間に挟持し、トップシート10とバックシートとを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程を設けることで製造することができる。また、例えば、液拡散性シート及び立体ギャザー12をあらかじめトップシート10に配置した上で、吸収体11をトップシート10とバックシートとの間に挟持し、トップシート10とバックシートとを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定する工程を設け、さらに、本発明の実施形態に係る吸収性物品1の製造方法のように、ホットメルト系インクをトップシート10に施すことで製造することができる。
【0052】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例】
【0053】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
実施例1では、吸収性物品のトップシート、液拡散性シート、包装シート等に用いることができるエアスルー不織布に、ホットメルト系インクをインクジェット印刷によって印刷した。エアスルー不織布の坪量は20g/m2であり、繊度は2.0dtexであった。また、インクジェットプリンタのヘッドは市販品を用い、インクジェット印刷の印刷ライン速度は200m/分であった。また、ホットメルト系インクは、バインダーを40質量%と、ワックスを55質量%と、顔料を5質量%含有するものを使用した。
【0055】
実施例1の不織布によれば、ホットメルト系インクによって、
図1(a)から(c)に示すように、美粧性に優れた図柄、文字等を不織布に印刷することができた。
【0056】
また、
図1(c)において、最も濃く印刷された領域(
図1(c)中、点線の楕円で囲まれた領域)について、3D形状測定マイクロスコープ ワンショット VR-3000(商品名、製造元:株式会社キーエンス)を用いて、倍率120倍にて測定した。測定領域は、W:2521.81μm、H:1890.74μmであった。測定領域の画像が
図2(a)である。なお、
図2において、画像上、左右に亘る方向が送り方向(機械方向又はMD方向)であり、上下にわたる方向が送り方向と直交する方向(機械横断方向又はCD方向)である。
【0057】
図2(a)より、ホットメルト系インクの各ドットの平均面積は、1400μm
2であり、ホットメルト系インクが印刷されている領域におけるホットメルト系インクのドットが占める面積割合は、7%であった。また、
図2(a)について、ホットメルト系インクの各ドットのドット間隔を表示したものが
図3(a)である。
図3(a)より、ホットメルト系インクの送り方向における各ドットのドット間隔は、70μm以上290μm以下であって、平均のドット間隔は200μmであった。
【0058】
<吸収速度>
実施例1の不織布について、不織布が吸収する時間を測定した。測定方法は以下のとおりである。実施例1の不織布を、最も濃く印刷された領域を含む縦100mm、横200mmの試料とした。バットに含浸用ろ紙(商品名:Advantech #26-WA、200mm×200mm)を10枚重ねて入れ、ろ紙の上に実施例1の不織布試料を乗せ、内径30mmの円形の注水孔を設けた筒状のおもり(荷重46g/cm
2)を使用して10mL注水し、不織布試料が吸収する時間を測定した(1回目)。1回目の注水から3分間隔で3回目まで10mLを注水し、不織布試料が吸収する時間を測定した。
図4は、実施例1の不織布の吸収速度の測定結果である。なお、実施例1の不織布について、ホットメルト系インクを印刷しないものについても、上述と同様の吸収速度の測定を行い、参考例として図示した。
【0059】
<ウエットバック量>
実施例1の不織布について、液戻り量であるウエットバック量を測定した。測定方法は以下のとおりである。実施例1の不織布を、最も濃く印刷された領域を含む縦100mm、横200mmの試料とした。電子天秤で測定用ろ紙(商品名:Advantech #2、55φ)10枚の質量(W
A)を測定した。バットに含浸用ろ紙(商品名:Advantech #26-WA、200mm×200mm)を5枚重ねて入れた。メスシリンダーで生理食塩水200mLを量り取り、含浸用ろ紙にかけ、1分間程度静置した。各含浸用ろ紙の縁を持ち垂直状態にし、水切りを1分間行った。水切り後の含浸用ろ紙を5枚重ねた上に実施例1の不織布試料を乗せ、不織布試料の上に質量を測定した測定用ろ紙を乗せ、測定用ろ紙の上に円柱状のおもり(直径55mm、質量688g)2個を重ねて乗せたおもりを乗せてから30秒静置し、30秒後に、おもり、測定用ろ紙、不織布試料を取り出し、電子天秤で測定用ろ紙の質量(W
B)を測定した。W
B-W
Aより算出される値を、ウエットバック量とした。
図5は、実施例1の不織布のウエットバック量の測定結果である。なお、実施例1の不織布について、ホットメルト系インクを印刷しないものについても、上述と同様のウエットバック量の測定を行い、参考例として図示した。
【0060】
<ランニングコスト>
実施例1の不織布について、不織布に印刷する柄、文字等を複数回切り替えて、通常の吸収性物品1の製造ラインと同様に1週間稼働させた場合の、生産性、切替性について、評価を行った。実施例1の不織布のランニングコストの評価結果を表1に示した。
【0061】
【0062】
<印刷の鮮明さ>
実施例1の不織布について、印刷された柄、文字等の鮮明さを20名のモニターテストによる官能評価を行った。なお、◎及び〇を合格とした。実施例1の不織布の印刷の鮮明さの官能評価の結果を表1に示した。
◎:「鮮明に見える」「明瞭に見える」が16人以上20人以下のとき
〇:「鮮明に見える」「明瞭に見える」が11人以上15人以下のとき
△:「鮮明に見える」「明瞭に見える」が6人以上10人以下のとき
×:「鮮明に見える」「明瞭に見える」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0063】
<風合い>
実施例1の不織布について、印刷された柄、文字等の印刷領域について、やわらかさ、肌触りを20名のモニターテストによる官能評価を行った。なお、◎及び〇を合格とした。実施例1の不織布の風合いの官能評価の結果を表1に示した。
◎:「やわらかい」「肌触りがよい」が16人以上20人以下のとき
〇:「やわらかい」「肌触りがよい」が11人以上15人以下のとき
△:「やわらかい」「肌触りがよい」が6人以上10人以下のとき
×:「やわらかい」「肌触りがよい」がいないか、1人以上5人以下のとき
【0064】
[比較例1]
比較例1では、吸収性物品のトップシート、液拡散性シート、包装シート等に用いることができるエアスルー不織布に、水性インクをフレキソ印刷によって印刷した。エアスルー不織布の坪量は20g/m2であり、繊度は2.0dtexであった。また、フレキソ印刷の印刷ライン速度は200m/分であった。また、水性インクは、ポリウレタン樹脂、水、着色剤等で構成される不織布用途に通常用いられるものを使用した。
【0065】
また、最も濃く印刷された領域について、3D形状測定マイクロスコープ ワンショット VR-3000(商品名、製造元株式会社キーエンス)を用いて、倍率120倍にて測定した。測定領域は、W:2521.81μm、H:1890.74μmであった。測定領域の画像が
図2(b)である。
図2(b)より、水性インクの各ドットの平均面積は、5500μm
2であり、水性インクが印刷されている領域における水性インクのドットが占める面積割合は、20%であった。また、
図2(b)について、水性インクの各ドットのドット間隔を表示したものが
図3(b)である。
図3(b)より、水性インクの送り方向における各ドットのドット間隔は、100μm以上250μm以下であって、平均のドット間隔は190μmであった。
【0066】
また、比較例1の不織布についても、実施例1と同様に、吸収速度、ウエットバック量、ランニングコスト、印刷の鮮明さ、風合いについての評価を行い、その結果を表1、
図4、
図5に示した。
【0067】
以上のように、実施例1の不織布によれば、不織布の表面性に影響されず、印刷が鮮明であり、印刷による不織布への負荷もなく、不織布の風合いも良好であったことから、印刷の鮮明さの官能評価と風合いの官能評価が「〇」であった。また、所定のドット状のホットメルト系インクが印刷されていたため、吸収速度とウエットバック量において、印刷が施されていない参考例の不織布と比較しても良好な結果となっていた。そのため、実施例1の不織布によれば、美粧性に優れ、吸収性能を阻害することのない印刷が施された吸収性物品を提供することができる。また、ランニングコストにおいても、高速印刷が可能であり、印刷画像データによって印刷画像を容易に切替可能なため切替性が良好であったことに加え、大規模な乾燥工程も不要であったことから、ランニングコストに優れている吸収性物品とすることができる。
【0068】
よって、実施例1によるホットメルト系インクのインクジェット印刷によれば、
図1に示すように、不織布に美粧性に優れた図柄、文字等を印刷することができた。
【0069】
比較例1の不織布では、製造時の印刷ライン速度は実施例1と同様であったが、非接触式のインクジェット印刷ではなく、接触式のフレキソ印刷であった。そのため、不織布の坪量によるムラによって印刷の鮮明さに問題を生じたことから、印刷精度が低くなり、印刷の鮮明さの官能評価が「×」であった。そして、インク付着・インク塗布時の加圧によって不織布の風合いが低下する問題も生じたことから、風合いの官能評価も「×」であった。また、ウエットバック量も、インク付着・インク加圧の影響から、印刷が施されていない参考例の不織布におけるものよりも悪化した。そのため、実施例1の不織布と比べて、美粧性に劣り、吸収性能も阻害される不織布となった。また、水性インクを用いたことから、熱や風による乾燥工程を要し、また、フレキソ印刷であることから印刷画像の切替の作業時間が実施例1と比較して多くなったことから、ランニングコストにおいても劣るものとなった。
【符号の説明】
【0070】
1 吸収性物品
10 トップシート
11 吸収体
12 立体ギャザー
13 包装シート