(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】強力な生ワクチンとして使用するための安定に脱水された原生動物を提供する凍結乾燥方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/10 20060101AFI20240912BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240912BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240912BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240912BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240912BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240912BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240912BHJP
A61K 35/68 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C12N1/10
A61K9/19
A61K47/42
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/22
A61K39/00 H
A61K35/68
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021164424
(22)【出願日】2021-10-06
(62)【分割の表示】P 2019518210の分割
【原出願日】2017-10-04
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ダオウッシ,リム
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,フレデリック・エイチ
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-176580(JP,A)
【文献】米国特許第05856172(US,A)
【文献】国際公開第2015/175672(WO,A1)
【文献】特表2012-500021(JP,A)
【文献】特開2016-065098(JP,A)
【文献】特表2003-505482(JP,A)
【文献】特表2007-519712(JP,A)
【文献】European journal of pharmaceutics and biopharmaceutics,2013年,Vol.85,p.214-222
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
A61K 9/00
A61K 47/00
A61K 39/00
A61K 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原生動物を凍結乾燥する方法であって、凍結ステップ中に、不活性ガスまたは空気で加圧及び減圧することによって氷核形成を制御することを含み、
ここにおいて、前記方法が以下のステップを含む、
A.細胞、原生動物、及び安定化緩衝剤の混合物を、5℃及び1Barの乾燥チャンバに充填する;
B.前記チャンバの温度を-1℃~-15℃間まで下げ、5分間保持する;
C.前記チャンバの温度を-1℃~-15℃間で維持しながら、前記チャンバを1.2~2Bar間に加圧し、45分間保持する、
D.前記温度を-1℃~-15℃間で保持しながら、前記チャンバを1Barに急速に減圧する;
E.前記チャンバ内の圧力を1Barに保持し、前記温度を-50℃の低温にまで下げ、45分間保持する;
F.前記チャンバ内の圧力を1Bar、温度を-50℃の低温で、さらに90分間、保持する;
G.前記チャンバ内の温度を-50℃の低温で保持し、チャンバ圧力を0.1mBarまで下げ、30分間保持する;
H.前記チャンバ内の温度を-50℃の低温で保持し、チャンバ圧力を0.01mBarまで下げ、60分間保持する;
I.前記チャンバ内の圧力を0.01mBarに保持し、前記チャンバ内の温度を-35℃の高温にまで上げ、60分間保持する;
J.前記チャンバ内の圧力を0.01mBarに、前記温度を-35℃の高温で保持し、さらに最大3500分間保持する;
K.前記チャンバ圧力を0.005mBarまで下げ、前記温度を20℃の高温にまで上げ、さらに最大360分間保持する;
L.前記チャンバ内の圧力を0.005mBarに、前記温度を20℃の高温で保持し、さらに最大900分間保持する、
前記方法。
【請求項2】
不活性ガスで加圧及び減圧することによって、氷核形成を制御する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性ガスが窒素またはアルゴンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記安定化緩衝剤が、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート80、及びウシ胎児血清からなる群から選択される成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記緩衝剤が、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート80、及びウシ胎児血清を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記緩衝剤がトレハロース、クエン酸、及びエピガロカテキンガレート(EGCG)をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記原生動物が、アピコンプレックス門由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記原生動物が、コクシジウム綱由来である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記原生動物が、真コクシジウム目から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記原生動物が、肉胞子虫科から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記原生動物が、原生動物をNeospora、Hammondia、及びToxoplasmaからなる属から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記原生動物が、Neospora属に由来する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記原生動物が、Neospora caninumである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、ワクチンの
調製における最終ステップであるか、あるいは、ワクチンの
調製における中間ステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記Neospora caninumが不活性化されているか、あるいは、生で弱毒化されている、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、Neospora caninumの凍結乾燥及び生存能力の保存方法に関する。本発明はまた、一般に凍結乾燥原生動物の生存能力、免疫原性及び感染力を維持するための改良された保存(安定化)プロセスにも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
Neospora caninumは、偏性細胞内コクシジウム寄生原生動物である。Neosporaの分類学的分類は以下の通りである:門-アピコンプレックス、綱-コクシジウム、目-真コクシジウム、科-肉胞子虫科;属-Neospora。アピコンプレックス門には、以下の、表現型の特性に基づいて明確に定義されたいくつかのグループが含まれる:コクシジウム(Neospora、Toxoplasma、Hammondia、Cryptosporidium)、グレガリナ(例えば、Lankesteria)、及び住血胞子虫(例えば、Plasmodiu)、ピロプラズマ(例えば、Theileria)。
【0003】
N.caninumは、飼育及び野生のイヌ属動物ならびに反芻動物に感染することができる。イヌ科動物では、ネオスポラ症は神経筋疾患として現れる。1980年代半ばのノルウェーでは、犬のN.caninum感染により、広範にわたって報告された、後肢麻痺をもたらした神経筋変性の症例が引き起された。肉牛でも乳牛でも、ネオスポラ症は経済的に費用のかかる疾患であり、最も一般的に診断される牛の流産の原因である。別のネオスポラ種であるNeospora hughesiはウマに感染することができ、胎児脊髄脳炎と関連している(Pusterla et al.,J.Parasitol.,97:281-5;2011)。
【0004】
1988年以前は、N.caninumは両者の間の構造的類似性のためにToxoplama gondiiとして誤って分類されていた(Dubey,Int J Parasitol.29(10):1485-8;1999)。どちらの種も組織寄生コクシジウムであり、多くの一般的な生物学的及び形態学的特徴を共有している。しかし、N.caninumがHammondia heydorniと共有する極度の類似性のために、種としてのN.caninumの最初の認識さえ疑問視された(Dubey et al.,Trends Parasitol.,18:66-9;2002)。2つの生物間には遺伝的な違いがあるが、それらは物理的に非常に類似しており、H.heydorni のオーシストは、N.caninumのオーシストと形態学的に区別がつかない(McAllister et al,J Parasitol.,28:1473-9;1998)。
【0005】
Neospora caniniumの生活環は、イヌ属(終)宿主における有性複製、及びウシなどの中間宿主における無性複製の両方を含む。終宿主の糞便となって排出されたオーシストは牛に摂取され、その後運動性タキゾイトが放出され、それがさらに、感染したウシの組織全体に広がる。タキゾイトはさらにブラディゾイト型に成長し、筋肉内にシストを形成する。イヌ属動物は汚染された肉を食べることによって感染し、自らの糞便中にオーシストを流す。オーシストは本質的に厚壁の胞子であり、それらの堅固な壁は主にタンパク質(67~90%)からなり、このことにより、オーシストが宿主の外側で長期間生存することができる。オーシスト壁は、機械的及び化学的な損傷には耐性であるが、凍結及び解凍の影響を受けやすい。1つには、このことは、凍結及び解凍中に起こる、剛性オーシスト壁の膨張及び収縮の有害な影響による。しかし、タキゾイトはオーシス
トよりも急速に分裂し、運動し、それらの膜構造においてより流動性である(Belli
et al.,Trends Parasitol.,22(9):416-23,2006;Mai et al.,Mem.Inst.Oswaldo Cruz,104(2):281-9,2009;Goodswen et al.,Infection,Genetics,Evolution,13:133-50,2013)。しかし、タキゾイトを用いても、細胞内及び細胞外の氷晶の形成のために有害な影響が起こり得る。特に凍結乾燥プロセス中は、これを最小限に抑えて制御しなければならない。本発明の凍結乾燥及び安定化手順は、一般に、アピコンプレックス原生動物のすべての生活環段階に適用可能である。
【0006】
凍結乾燥(フリーズドライ)は、脱水製品の調製において水分を除去するために一般的に使用されている技術である。一般に、凍結乾燥は3つのステップ、すなわち、(1)水性組成物を低温で凍結させること、(2)減圧及び低温条件下で大部分の水を昇華によって除去すること、(3)残存する結合水をさらに減圧、高温の条件下で脱着除去すること、を含む。凍結乾燥製品は非常に低い残留水分(約0.5~5.0%w/w)を含み、乾燥物質は非晶質形態である。使用前に、乾燥製品を再水和する必要がある。生存能力の喪失、免疫原性の低下、及び感染性の喪失/消滅を含む、凍結乾燥製品に対する損傷は、上記のステップのいずれにおいても起こり得る。したがって、安定化成分(凍結保護剤/凍結防止剤)及び緩衝剤を、組成物を凍結乾燥に供する前に組成物に添加することが多く、各ステップ、特に再水和ステップの規模及び動態は正確に定義されなければならない(Mille et al.,Biotech Bioeng.83,578;2003)。
【0007】
Neosporaのような原生動物を含む生物学的成分を含む免疫原性組成物は、それらが調製され、製剤化され、貯蔵される条件に著しく敏感である。ウシをN.caninumタキゾイトで免疫した研究では、タキゾイトをDMSO中で、-80℃で凍結した場合、凍結されなかったものに対して保護が低下することが実証された(Weber et
al.;Clin Vaccine Immunol.,20(1):99-105,2013)。多数の化合物が、生きた弱毒化生物学的成分を含有する異なる組成物を安定化させるそれらの能力について試験されているが、Neospora及びすべての前述のアピコンプレックスを含む原生動物の生存能力、免疫原性及び感染性を保存するための新規な保存溶液、ならびに改良されたフリーズドライプロセスに対する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0008】
本出願人らは、驚くべきことに、より有効な安定化製剤、ならびにNeosporaを含む原生動物を凍結乾燥するための改善された方法を特定し、本明細書中に開示した。
【0009】
本発明の一実施形態は、原生動物を凍結乾燥する方法を提供し、前記方法は、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート80、及びウシ胎児血清からなる群から選択される成分を含む安定化緩衝剤の使用を含む。
【0010】
別の実施形態は、先の実施形態の緩衝剤がウシ血清アルブミン、ポリソルベート80、及びウシ胎児血清を含むことを備える。
【0011】
別の実施形態は、先の実施形態の緩衝剤がさらに、トレハロース、クエン酸、及び(本発明の全ての実施形態に関して)アスコルビン酸で置き換えることもできるエピガロカテキンガレート(EGCG)を含むことを備える。
【0012】
さらなる実施形態は、原生動物の凍結乾燥方法を提供し、前記方法は、凍結ステップ中に、不活性ガスまたは空気で加圧及び減圧することによって氷核形成を制御することを含
む。
【0013】
別の実施形態は、先の実施形態の方法の間に、不活性ガスで加圧及び減圧することによって、氷核形成を制御することを備える。
【0014】
別の実施形態は、不活性ガスが窒素またはアルゴンであることを備える。
【0015】
さらなる実施形態は、凍結乾燥の方法が、以下のステップを含むことを備える:
A.細胞、原生動物、及び安定化緩衝剤の混合物を、約5℃及び約1Barの乾燥チャンバに充填する、
B.チャンバの温度を-1℃~-15℃間まで下げ、約5分間保持する、
C.チャンバの温度を-1℃~-15℃間で維持しながら、チャンバを1.2~2Bar間に加圧し、約45分間保持する、
D.温度を-1℃~-15℃間で保持しながら、チャンバを約1Barに急速に減圧する、
E.チャンバ内の圧力を約1Barに保持し、温度を-50℃の低温にまで下げ、約45分間保持する、
F.チャンバ内の圧力を約1Bar、温度を-50℃の低温で、さらに約90分間、保持する、
G.チャンバ内の温度を-50℃の低温で保持し、チャンバ圧力を約0.1mBarまで下げ、約30分間保持する、
H.チャンバ内の温度を-50℃の低温で保持し、チャンバ圧力を約0.01mBarまで下げ、約60分間保持する、
I.チャンバ内の圧力を約0.01mBarに保持し、チャンバ内の温度を-35℃の高温にまで上げ、約60分間保持する、
J.チャンバ内の圧力を約0.01mBarに、温度を-35℃の高温で保持し、さらに最大3500分間保持する、
K.チャンバ圧力を約0.005mBarまで下げ、温度を20℃の高温にまで上げ、さらに最大360分間保持する、
L.チャンバ内の圧力を約0.005mBarに、温度を20℃の高温で保持し、さらに最大900分間保持する。
【0016】
別の実施形態は、原生動物がアピコンプレックス門由来のものであることを備える。
【0017】
追加の実施形態は、原生動物をコクシジウム綱から選択することを備える。
【0018】
追加の実施形態は、原生動物を真コクシジウム目から選択することを備える。
【0019】
追加の実施形態は、原生動物を肉胞子科から選択することを備える。
【0020】
追加の実施形態は、原生動物をNeospora、Hammondia、及びToxoplasmaからなる属から選択することを備える。
【0021】
追加の実施形態は、原生動物をNeospora属から選択することを備える。
【0022】
追加の実施形態は、原生動物はNeospora caninumであることを備える。
【0023】
さらなる実施形態は、先の実施形態の方法が、ワクチンの調製における最終ステップであることを備える。
【0024】
さらなる実施形態は、先の実施形態の方法が、ワクチンの調製における中間ステップであることを備える。
【0025】
さらなる実施形態は、Neospora caninumが不活性化されていることを備える。
【0026】
さらなる実施形態は、Neospora caninumが生で弱毒化されていることを備える。
【0027】
さらなる実施形態は、Neospora caninumが、Nc-Spain7、NCTS-8、Nc-Nowra、NC-1、及びNE1からなる群から選択されることを備える。
【0028】
さらなる実施形態は、弱毒化生Neospora caninumが、PTS、MIC-1、MIC-3、IMP-1、GRA1、GRA6、GRA7、AMA1、SAG1、SAG4、GRA2、ソルチリン様受容体、CPSII、RON2、ジガラクト脂質抗原、CyP、NcP20、及びDHFRからなる群から選択されるタンパク質に変異を有することを備える。
【0029】
追加の実施形態は、Neospora caninumを、先に開示された実施形態の方法によって凍結乾燥することを備える。
【0030】
さらなる実施形態は、Neospora caninumワクチンを、先に開示された実施形態の方法を含むプロセスによって調製することを備える。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0032】
以下の定義は、実施形態の記載において使用される用語に適用され得る。以下の定義は、参照により本明細書に組み込まれる各個々の参考文献に含まれるいかなる矛盾する定義にも優先する。
【0033】
本明細書において他に定義されない限り、本実施形態に関連して使用する科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって他に要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0034】
本明細書で使用する「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」、及び「有すること(having)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰属する意味を有することができ、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、などを意味し得る。「から本質的になること」または「から本質的になる」は、同様に米国特許法に規定された意味を有し、その用語は非限定的であり、記載したものの基本的または新規な特徴が、記載されたもの以上の存在によって変化することはなく、先行技術の実施態様を除外する限りにおいて、記載されたもの以上のものを含むことができる。
【0035】
本明細書で使用する「アジュバント」という用語は、薬物または免疫原性組成物などの他の物質の効果を改変する薬理学的または免疫学的物質を意味する。アジュバントは、多
くの場合、供給された抗原に対するレシピエントの免疫応答を高めるために、免疫原性組成物に含まれる。
【0036】
本明細書で使用する「抗原」という用語は、免疫系によって認識され、免疫応答を誘導する物質を意味する。抗原は、殺滅された、弱毒化された、または生きた生物全体、生物のサブユニットまたは一部、免疫原性特性を有するインサートを含む組換えベクター、宿主動物に提示されると免疫応答を誘導することができる核酸片または断片、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、エピトープ、ハプテン、炭水化物、糖、またはそれらの任意の組み合わせ、を含み得る。あるいは、抗原は毒素または抗毒素を含み得る。この文脈で互換的に使用する類似の用語は「免疫原」である。
【0037】
本明細書で使用する「弱毒化された」という用語は、病原性が低減されて、特定の疾患を引き起こさずに免疫応答を開始する微生物株を指す。弱毒化株は、それが由来する親株よりも毒性が低い。弱毒化微生物をインビトロまたはインビボでスクリーニングして、それらがその親株よりも病原性が低いことを確認することができる。従来の手段を、インビトロ継代、ならびに化学的変異誘発などの弱毒化変異を導入するために使用する。弱毒化の代替手段は、1つまたは複数の変異を導入することができる、部位特異的変異誘発を使用して所定の変異を作製することを含む。本明細書で使用する「より弱毒化された」という用語は、それが由来する弱毒化株以上にさらに改変されている株を指す。このさらなる弱毒化は、追加のインビトロ継代、または化学的もしくは部位特異的変異誘発の追加の回によって達成し得る。
【0038】
本明細書で使用する「氷核形成」という用語は、凍結の開始、または水滴の氷への転化を意味する。
【0039】
本発明で使用する「免疫原性組成物」または「免疫量」という用語は、動物に単独でまたは薬学的に許容される担体と共に投与した場合に免疫応答を生じる(すなわち免疫原性活性を有する)組成物を意味する。免疫応答は、細胞傷害性T細胞によって主に媒介される細胞性免疫応答、または次にB細胞を活性化して抗体産生をもたらすヘルパーT細胞によって主に媒介される体液性免疫応答であり得る。さらに、特異的Tリンパ球または抗体を生成して、免疫化宿主の将来の保護を行うことができる。
【0040】
本明細書で使用する「不活性ガス」という用語は、一連の所与の条件下で化学反応を受けないガスを意味する。窒素を不活性ガスとして使用することができる。アルゴンを含む希ガスも不活性ガスとして使用することができる。
【0041】
本明細書で使用する「単離された」という用語は、言及した物質が、通常それが見出される環境から除去されることを意味する。したがって、単離された生物学的物質は、細胞成分、すなわちその物質が見出されるかまたは産生される細胞の成分を含まないことができる。単離された物質は、精製されてもよいが、精製されなくてもよい。
【0042】
本明細書で使用する「凍結乾燥させる」または「凍結乾燥」という用語は、2つの主な段階、すなわち、凍結(凝固)及び乾燥からなるプロセスを意味し、後者は、一次乾燥(氷の昇華)及び二次乾燥(水分の脱着)という2つの段階に細分化することができる。
【0043】
本明細書で使用する「寄生体」という用語は、他の種の生物の中または生物上に生息する生物を意味する。寄生体の中には、宿主生物内でのみ複製するものもある(偏性細胞内)が、他の寄生体は環境内で自由に増殖することができる(通性細胞内)。寄生体は、ジアルジア(Giardia)の場合のように1つの細胞から、または寄生蠕虫の場合のように多数の細胞からなる場合がある。
【0044】
本明細書で使用する「病原体」という用語は、細菌、真菌、原生動物、またはウイルスなどの、疾患の特定の原因物質を意味する。
【0045】
本明細書で使用する「予防する」、「予防すること」または「予防」などの用語は、微生物の複製を阻害すること、微生物の伝播を阻害すること、または微生物がその宿主内で自己を確立することを阻害することを意味する。これらの用語などはまた、感染の1つまたは複数の徴候または症状を阻害または阻止することも意味し得る。
【0046】
本明細書で使用する「原生動物(protozoa)」または「原生動物(protozoan)」という用語は、単細胞真核生物の多様な群を意味する。この用語はまた、繊毛虫類、アメーバ類及び鞭毛虫類などの単細胞の非光合成原生生物を示すために、非公式に使用されている。歴史的には、原生動物は、運動性や捕食などの動物様の行動をする単細胞生物として定義されていた。Neosporaは重要な原生動物病原体であり、Toxoplasmaに類似した生活環を有する。
【0047】
本明細書で使用する「安定剤」という用語は、医薬品に添加すると、その医薬品を貯蔵する場合に物理的及び/または化学的劣化を防止または低減する化合物または製剤を意味する。凍結乾燥に関しては、安定剤によって、凍結プロセス中に氷核形成によって引き起こされる不安定な生成物(例えば、微生物)への損傷を防止または低減することができる。
【0048】
本明細書で使用する「対象」という用語は、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類または魚、より有利には、ヒト、伴侶動物または飼育動物;食料生産動物または飼料生産動物;ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、及びトリなどの、ただしこれらに限定されない、家畜、狩猟動物、レース用またはスポーツ用動物などの脊椎動物を意味する。好ましくは、脊椎動物はウシまたはイヌである。
【0049】
本明細書で使用する「タキゾイト」という用語は、Neospora及びToxoplasmaを含む、特定のコクシジウムの組織期の発達における急速増殖段階を意味する。タキゾイトは運動性であり、固着性で成長が遅いブラディゾイトとは対照的に、内生出芽及び多元内出芽によって分裂する。
【0050】
本明細書で使用する「ワクチン」及び「ワクチン組成物」という用語は、目的の抗原に対する防御的免疫応答を誘導する、及び/または抗原に対して効果的に防御する任意の組成物を意味する。
【0051】
以下の記載は、本発明を実施する際に当業者を助けるために提供する。それでも、本明細書で論じられる実施形態における修正形態及び変形形態は、本発明の発見の精神または範囲から逸脱することなく、当業者によってなされ得るので、この記載は本発明を過度に制限しないと解釈されるべきであ
【0052】
免疫原性組成物
活性免疫原性成分は原生動物であり得る。原生動物は、Neospora種(例えば、Neospora caninum、Neospora hughesi)、Toxoplasma種(例えば、Toxoplasma gondii)、Hammondia種(例えば、Hammondia heydorni)、Besnoitia種,Cystoisospora種、Frenkelia種、Nephroisospora種、Sarcocystis種、及びHyaloklossia種を含んでもよいがこれらに限定されない。免疫原性組成物を提供するために本発明の実施に従って操作することができる他
の原生動物としては、Theileria種、Plasmodium種、Trypanosome種、Giardia種、Boophilus種、Babesia種、Entamoeba種、Eimeria種、Leishmania種、Schistosoma種、Brugia種、Fascida種、Dirofilaria種、Wuchereria種、Onchocerea種、Treponema種、Cryptococcus種、Coccidia種、Histomoniasis種、Hexamitiasis種、ならびにC.parvum及びC.hominusなどのすべてのCryptosporidium種が挙げられる。
【0053】
Neospora caninum分離株は、弱毒化または不活性化されてもよい。弱毒化N.caninum分離株は、以下、NC-1、Nc-Nowra(US7,361,359)の弱毒化型として、Nc-Spain7(CCAP寄託番号2051/1、US2010/0255577)、NCTS-8(US6,656,479)、またはCCAP寄託番号2051/2(Hipra Laboratories)、BPA1、BPA2、BPA3、BPA4、BPA5、もしくはBPA6(US5,707,617)、NC-1(US6,787,146)もしくはNE1(ウマ分離株、ATCC寄託番号209,622)株のいずれかの弱毒化変異体、のいずれかから選択することができる。弱毒化株はまた、特定の遺伝子または複数の遺伝子が改変されて、その株がもはや、特定のタンパク質もしくは複数のタンパク質、または前記タンパク質(複数可)の機能的均等物を発現しない、変異体であり得る。前記タンパクまたは複数のタンパク質としては、以下、ホスファチジルスレオニンシンターゼ(PTS)、ミクロネームタンパク質1(MIC-1)、ミクロネームタンパク質3(MIC-3)、免疫マッッピングタンパク質-1(IMP-1)、高密度顆粒タンパク質1、6、または7(GRA1、GRA6、GRA7)、頂端膜抗原(AMA1)、表面抗原-1または4(SAG1、SAG4)、GRA2(Toxoplasma gondii 28kDa抗原のホモログ)、ソルチリン様受容体、カルバモイルリン酸シンターゼII(CPSII)、ロプトリー頚部(RON2)、ジガラクト脂質抗原、シクロフィリンタンパク質(CyP)、NcP20(US 2004/0131633)、またはジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)のうちの1つまたは複数を挙げることができる。
【0054】
原生動物由来の免疫原を調製するための方法は、当技術分野において既知である。原生動物は、免疫原として使用する前に弱毒化または不活性化することができる。弱毒化及び不活性化の方法は、当業者に周知である。弱毒化の方法としては、細胞培養における連続継代、紫外線照射、及び化学的変異誘発が挙げられ得るが、それらに限定されない。弱毒化の方法はまた、特定の遺伝子、複数の遺伝子、または上流もしくは下流の制御領域を攪乱するかまたは欠失させる標的化遺伝子操作を含み得る。そのような遺伝子操作方法は、当業者に周知である。
【0055】
不活性化のための方法としては、ホルマリン、βプロピオラクトン(betapropriolactone)(BPL)またはバイナリーエチレンイミン(BEI)による処理、または超音波処理、ペプチダーゼによる処理、熱ショック、及び凍結ショックなどの、当業者に既知の他の方法が挙げられるが、これらに限定されない。ホルマリンによる不活性化は、原生動物を37%ホルムアルデヒドと混合し、最終ホルムアルデヒド濃度を0.05%にすることによって行うことができる。原生動物とホルムアルデヒドの混合物を、室温で約24時間絶えず撹拌する。次いで、不活性化混合物を、生存率についてアッセイすることによって、残存する生きた原生動物について試験する。BEIによる不活性化は、原生動物懸濁液を0.1MのBEI(0.175NのNaOH中の2-ブロモ-エチルアミン)と混合して、1mMの最終BEI濃度にすることによって行うことができる。原生動物とBEIの混合物を室温で約48時間絶えず撹拌し、続いて1.0Mチオ硫酸ナトリウムを加えて最終濃度を0.1mMにする。混合をさらに2時間続ける。次いで、不
活性化混合物を、生存率についてアッセイすることによって、残存する生きた原生動物について試験する。
【0056】
本発明の免疫原性組成物は、1つまたは複数の獣医学的に許容される担体を含み得る。そのような担体としては、水、食塩水、緩衝食塩水、リン酸塩緩衝液、アルコール溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液が挙げられるが、それらに限定されない。その他の従来使用される希釈剤、アジュバント及び賦形剤を、従来技術に従って添加してもよい。そのような担体としては、エタノール、ポリオール、もしくはそれらの好適な混合物、植物油、及び注射用有機エステルを挙げることができる。緩衝剤及びpH調整剤もまた使用してもよい。緩衝剤としては、有機酸または塩基から調製された塩が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な緩衝剤としては、限定されないが、クエン酸の塩、例えば、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン-Hel、炭酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、フタル酸塩、などの有機酸塩、トリス、トロメタミン塩酸塩(trimethanmine hydrochloride)、またはリン酸塩緩衝液が挙げられる。非経口担体としては、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液(Ringer’s dextrose)、デキストロース、トレハロース、スクロース、乳酸加リンゲル液、または不揮発性油を挙げることができる。静脈内担体としては、液体及び栄養補給剤、電解質補給剤、例えばブドウ糖加リンゲル液などをベースにしたようなものを挙げることができる。防腐剤及び他の添加剤、例えば抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤(例えばEDTA)、不活性ガスなども医薬担体中に提供してもよい。本発明は、担体の選択によって限定されない。適切なpH、等張性、安定性及び他の従来の特徴を有する、上記の成分からのこれらの薬学的に許容される組成物の調製は、当該技術の範囲内である。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,20th ed,Lippincott Williams &
Wilkins,pub.,2000;及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients,4.sup.th edit.,eds.R.C.Rowe et ai,APhA Publications,2003などのテキストを参照のこと。獣医学的に許容される担体としては、更にありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存料、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤なども挙げることができる。希釈剤としては、水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどを挙げることができる。等張剤としては、特に当業者に知られている水、食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールを挙げることができる。安定剤としては、特に当業者に知られているアルブミンが挙げられる。防腐剤としては、特に当業者に知られているメルチオレートが挙げられる。
【0057】
免疫原性成分は更に、アジュバントを含むことができる。アジュバントとしては、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.;Hamilton,MT)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲル、水中油型エマルジョン、例えばフロイント完全及びフロイント不完全アジュバントなどの油中水型エマルジョン、ブロックコポリマー(CytRx;Atlanta,GA)、SAF-M(Chiron;Emeryville,CA)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil A、QS-21 (Cambridge Biotech Inc.;Cambridge,MA)、GPI-0100 (Galenica Pharmaceuticals,Inc.;Birmingham,AL)または他のサポニン画分、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、Escherichia coli由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換え型またはその他)、コレラ毒素、または百日咳毒素が挙げられるが、これらに限定されない。インターロイキン1-α、1-β、2、4、5、6、7、8、10、12(例えば、米国特許第5,723,127号を参照のこと)、13、14、15、16、17、18、インターフェロン-α、β及びγ、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(例えば、米国特許第5,078,996号及びATCC受託番号39900を参
照のこと)、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、GSF、ならびに腫瘍壊死因子α及びβを含むいくつかのサイトカインまたはリンホカインを、アジュバントとして使用してもよい。さらに他のアジュバントとしては、MCP-1、MIP-1α、MIP-1β、及びRANTESを含むがこれらに限定されない、ケモカインが挙げられる。例えばL-セレクチン、P-セレクチン及びE-セレクチンなどのセレクチンのような接着分子も、アジュバントとして有用であり得る。さらに他の有用なアジュバントとしては、ムチン様分子、例えばCD34、GlyCAM-1及びMadCAM-1、LFA-1、VLA-1、Mac-1及びp150.95などのインテグリンファミリーのメンバー、PECAM、ICAM、CD2、及びLFA-3などの免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー、CD40及びCD40Lなどの共刺激分子、血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、B7.2、PDGF、BL-1、及び血管内皮成長因子などの成長因子、Fas、TNF受容体、Flt、Apo-1、p55、WSL-1、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、及びDR6を含む受容体分子が挙げられる。追加のアジュバントとしては、MPL(商標)(3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA;Corixa,Hamilton,MT)が挙げられる。アジュバントとしての使用にも好適なのは、合成リピドA類似体もしくはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはその誘導体もしくは類似体であり、これらはCorixa(Hamilton,MT)から入手可能である。さらに他のアジュバントとしては、L121/スクアレン、D-ラクチド-ポリラクチド/グリコシド、プルロニックポリオール、ムラミルジペプチド、殺滅されたBordetella、QS-21 Stimulon(商標)(Antigenics,Framingham,MA.)などのサポニン、及びISCOMS(免疫刺激複合体)などから生成される粒子が挙げられる。
【0058】
凍結乾燥免疫原性組成物またはワクチン組成物は、その使用及び対象への投与のために、溶媒による再水和によって再構成することができる。溶媒は、典型的には、脱塩水または蒸留水などの水、注射用水であるが、生理溶液または緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液(PBS)もまた含むことができる。
【0059】
本発明の再構成された即時注射用免疫原性組成物またはワクチン組成物中の成分の総含有量は、注射剤を提供するために例えば約100~1200mOsmの範囲内、一般には約250~600mOsmの範囲内、好ましくは約330mOsmの等張濃度で使用することができる。
【0060】
免疫原性組成物もしくはワクチン組成物中、または再構成された即時注射用免疫原性組成物もしくはワクチン組成物中の生微生物の投与量は、約102~約107CCID50/用量の範囲であり得る。
【0061】
再構成された即時使用免疫原性組成物またはワクチン組成物は、非経口または粘膜経路、好ましくは筋肉内及び皮下経路を介した注射によって動物に投与することができる。しかし、そのような再構成された即時使用免疫原性組成物またはワクチン組成物の投与はまた、鼻腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、皮膚上、局所または経口投与を含み得る。注射用量の容量は、約0.1ml~約2.0ml、及び好ましくは約1.0mlであり得る。
【0062】
安定剤
本発明は、Neospora caninumなどのアピコンプレックス門由来の細胞内原生動物を含む原生動物のフリーズドライ方法を包含する。フリーズドライの前に、原生動物を少なくとも1種の安定剤と組み合わせるか、または安定剤中に再懸濁してもよい。
これらの安定剤は、フリーズドライプロセスの前、最中、及び後に、免疫原性、感染性、及び生物学的成分の生存能力を保持することができ、または維持する助けになることができ、それによって生物学的成分は、特に原生動物、ウイルス、細菌、真菌、タンパク質、ポリペプチドを含むがこれらに限定されない。本フリーズドライの方法において使用する安定剤は、例えば均一な形状及び色を含む有益な態様を有し得、対象への投与に安全であり得る。
【0063】
乾燥形態の生物学的成分の安定化は、典型的には抗毒素、抗原及び細菌の保存を含んでいた(Flosodort et al (1935)J.Immunol.29,389)。しかしながら、このプロセスにおける制限として、周囲温度で水性状態から乾燥させた場合のタンパク質の部分変性が含まれていた。凍結状態からの乾燥は、変性を減少させるのに役立ち、不完全ではあるが細菌及びウイルスを含む生物学的成分のより良好な保存をもたらした(Stamp et al.(1947)J.Gen.Microbiol.1,251;Rightsel et al.(1967)Cryobiology
3,423;Rowe et al.(1971)Cryobiology 8,251)。
【0064】
多数の化合物が、生きた弱毒化生物学的成分を含有する異なるワクチンを安定化するそれらの能力について試験されている。そのような化合物としては、SPGA(スクロース、ホスフェート、グルタメート、及びアルブミン;Bovarnick et al.(1950)J.Bacteriol.59,509-522;米国特許第4,000,256号)、ウシまたはヒト血清アルブミン、グルタミン酸のアルカリ金属塩、アルミニウム塩、スクロース、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ソルビトール、Tris-EDTA、カゼイン加水分解物、ラクトビオン酸ナトリウム及びカリウム、ならびに一金属または二金属アルカリ金属リン酸塩が挙げられる。他の化合物としては、例えば、SPG-NZアミン(例えば、米国特許第3,783,098号)及びポリビニルピロリドン(PVP)混合物(例えば、米国特許第3,915,794号)が挙げられる。
【0065】
安定剤は少なくとも1つの還元単糖を含んでもよく、ここで還元単糖はグルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、ソルボース、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0066】
安定剤は、トレハロース、スクロース、ラフィノース、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも1つの非還元オリゴ糖をさらに含んでもよい。
【0067】
追加の有用な糖としては、デキストロース、グルコース、ラクトース、及びマルトースが挙げられる。
【0068】
安定剤は、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、またはそれらの組み合わせを含む、少なくとも1つの酸化防止剤酸化合物を含んでもよい。
【0069】
安定剤は、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、またはそれらの組み合わせを含む少なくとも1つの糖アルコールを含んでもよい。
【0070】
安定剤を含むいくつかの成分は、易溶性ではない場合がある。しかしながら、可溶性安定剤を得る目的で、(例えば、より可溶性の成分を選択することによって)好適な類似成分を代用すること、及び/または安定剤中に存在する不溶性成分の量または分量を調整することは、当業者には十分に実現可能であろう。成分の溶解度は、目視による溶解性試験によって容易に確認することができる。溶解性試験は、安定剤の全成分を約55℃の温度で添加し、約30分間混合するステップを含む。室温で約24時間撹拌しないでおいた後
、沈殿物の出現について、安定剤を目視で確認することができる。安定剤が透明であるかまたは澄んでいる場合、安定剤の全ての成分は可溶性である。
【0071】
増量剤
増量剤は、製品質量を増加させ、張度を調整し、製品の外観を改善し、製品の崩壊を防止し、または再水和を補助するために凍結乾燥タンパク質製剤に含まれる(Wang,Int.J Pharm.,203:1-60,2000)。しかし、増量剤は、タンパク質の安定性にほとんどまたは全く影響を与えないと、通常は考えられている。スクロースなどの賦形剤を、特にタンパク質安定性を高めるために添加する(Carpenter et al.,Pharm.Res.,14:969-75,1997;及びCarpenter et al.,Eur.J Pharm.,45:231-8,2002)が、フリーズドライ中及びその後の貯蔵中のタンパク質に対する損傷の程度は、増量剤を含む製剤中のすべての賦形剤によって、場合により影響を受ける。
【0072】
「T’g値」は、ガラス転移温度として定義され、これは、これより低い温度では、凍結マトリックスが、粘弾性状態からガラス質状態への構造転移を起こす温度に対応し、この転移は、分子運動性の劇的な低下、したがって分解反応の低下を伴う。増量剤は、免疫原性組成物及びワクチン組成物のT’g値を高め、これにより凍結の際により高い温度を使用することができる。凍結乾燥させたトローチ及びケーキに増量剤を含めることの利点の1つは、水素結合をもたらすことなく、トローチの固体形態を保持することが可能になることである。
【0073】
増量剤は、限定されるものではないが、デキストラン、マンニトール、マルトデキストリン、ポリビニルピロリドン(PVP)、クロスポビドン、及びヒドロキシエチルデンプンなどの、薬学的または獣医学的に許容されるポリマーであり得る。他のデンプン誘導体としては、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられるが、これらに限定されない。有利には、増量剤はマンニトール、デキストランまたはPVPであり得る。少なくとも2つの増量剤の組み合わせもまた企図される。
【0074】
デキストランを増量剤として使用する場合、その分子量は約5000Da~約70000Da、好ましくは約10,000Da~約40,000Daであり得る。PVPを増量剤として使用する場合、その分子量は約8,000Da~約360,000Da、好ましくは約10,000Da~約60,000Daであり得る。マルトデキストリンを増量剤として使用する場合、そのデキストロース当量値(DE、これはデンプンポリマー加水分解度の定量的尺度である)は、約3~約20、好ましくは約5~約18、より好ましくは約10~約15であり得る。ヒドロキシエチルデンプンを増量剤として使用する場合、その分子量は約70,000Da~約450,000Da、好ましくは約130,000Da~約200,000Daであり得る。ヒドロキシエチルデンプンの置換度は、約0.4~約0.7、好ましくは約0.4~約0.6であり得る。置換度は、グルコース単位当たりのヒドロキシエチル基の数として定義する。
【0075】
凍結乾燥プロセス
免疫原性組成物を凍結乾燥(フリーズドライ)させるプロセスは、(a)懸濁液または溶液を安定剤と接触させ、これによって安定化免疫原性懸濁液または溶液を形成するステップと、(b)安定化免疫原性懸濁液または溶液を、安定化免疫原性懸濁液の約T’g値未満の温度まで、大気圧で冷却するステップと、(c)低圧で氷を昇華させることにより安定化免疫原性懸濁液または溶液を乾燥させるステップと、(d)安定化免疫原性懸濁液または溶液の圧力をさらに低下させ、温度を上昇させることによって過剰の残留水を除去す
るステップ、とを含む。
【0076】
冷却ステップ(b)は、約-40℃未満の温度で起こり得る。低圧での氷の昇華による安定化免疫原性懸濁液または溶液の乾燥(c)は、例えば、約200マイクロバール以下の圧力で起こり得るが、さらなる減圧は、約100マイクロバール以下の圧力で起こり得る。最後に、過剰の残留水を除去する(d)際の安定化免疫原性懸濁液または溶液の温度は、例えば生物学的製品については約20℃~約37℃の間の温度で起こる。
【0077】
凍結乾燥材料の含水量は、約0.5%~約5%w/w、好ましくは約0.5%~約3%w/w、より好ましくは約1.0%~約2.6%w/wの範囲であり得る。
【0078】
有利には、少なくとも1種の増量剤を含む安定化免疫原性懸濁液または溶液は、約-36℃~約-30℃の間の高いT’g値を有するが、製剤組成及び濃度に応じて-36℃より低く及び/または-30℃より高くてもよい。高いT’g値によって、凍結プロセス及び/またはフリーズドライプロセスの水凍結ステップの際に、より高い温度であることが可能になり、それによって活性免疫原性成分のストレスへの曝露が低減して、実質的な活性の損失が回避される。したがって、凍結乾燥プロセスの間、例えば氷核形成ステップの間に、これらのストレスをできるだけ最小にすることが重要である。
【0079】
凍結乾燥プロセス中の圧力をよりよく制御するために、不活性ガスをチャンバ内に導入することができる。不活性ガスの一例は窒素であろう。しかし、他の物質との反応性が極めて低い希ガスも使用することができる。アルゴンは、使用し得る例示的な希ガスである。しかし、空気は、78%の窒素を含有しているので、それも凍結乾燥プロセス中の圧力を制御するために使用し得る。
【0080】
水の凍結、ならびに一次及び二次乾燥段階中のその除去を含む各ステップは、本発明の免疫原性懸濁液または溶液中の生物学的成分に機械的、物理的及び生化学的衝撃を与える。これらは、生物学的成分の構造、外観、安定性、免疫原性、感染性及び生存能力に対して、場合により悪影響を及ぼし得る。
【0081】
本明細書に開示された安定剤及び凍結乾燥プロセスはすべて、任意のNeospora
caninum単離物もしくは免疫原性組成物の保存、または任意の原生動物単離物もしくは免疫原性組成物の保存に使用することができる。免疫原性組成物は弱毒化生微生物を含むことができ、ここで本プロセスはワクチン調製の最後のステップである。このプロセスは、N.caninumのストック培養物の保存にも使用することができ、最大の生存率が貯蔵中ずっと確実に維持される。このプロセスはまた、不活性化免疫原性組成物の調製プロセスにおける中間ステップであり得る。N.caninum単離物、または他の原生動物単離物は、このプロセスを使用して凍結乾燥させ、次いで後に再水和し、場合により他の再水和N.caninum調製物と組み合わせることができる。次いで、このN.caninum単離物、または他の原生動物単離物は、当業者に周知であり、そして本明細書において以前に記載されたいくつかの手段のうちのいずれかによって不活性化することができる。
【0082】
本発明は、ここで、本発明の種々の実施形態の実例として与えられる、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。しかし、それらは決して本発明を限定することを意味するものではない。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
原生動物を凍結乾燥する方法であって、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート80、及びウシ胎児血清からなる群から選択される成分を含む安定化緩衝剤の前記使用を含む、前記方法。
[態様2]
前記緩衝剤が、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート80、及びウシ胎児血清を含む、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記緩衝剤がトレハロース、クエン酸、及びエピガロカテキンガレート(EGCG)をさらに含む、態様2に記載の方法。
[態様4]
原生動物を凍結乾燥する方法であって、凍結ステップ中に、不活性ガスまたは空気で加圧及び減圧することによって氷核形成を制御することを含む、前記方法。
[態様5]
不活性ガスで加圧及び減圧することによって、氷核形成を制御する、態様4に記載の方法。
[態様6]
前記不活性ガスが窒素またはアルゴンである、態様5に記載の方法。
[態様7]
前記方法が以下のステップを含む、態様4に記載の方法:
A.細胞、原生動物、及び安定化緩衝剤の混合物を、約5℃及び約1Barの乾燥チャンバに充填する;
B.前記チャンバの温度を-1℃~-15℃間まで下げ、約5分間保持する;
C.前記チャンバの温度を-1℃~-15℃間で維持しながら、前記チャンバを1.2~2Bar間に加圧し、約45分間保持する、
D.前記温度を-1℃~-15℃間で保持しながら、前記チャンバを約1Barに急速に減圧する;
E.前記チャンバ内の圧力を約1Barに保持し、前記温度を-50℃の低温にまで下げ、約45分間保持する;
F.前記チャンバ内の圧力を約1Bar、温度を-50℃の低温で、さらに約90分間、保持する;
G.前記チャンバ内の温度を-50℃の低温で保持し、チャンバ圧力を約0.1mBarまで下げ、約30分間保持する;
H.前記チャンバ内の温度を-50℃の低温で保持し、チャンバ圧力を約0.01mBarまで下げ、約60分間保持する;
I.前記チャンバ内の圧力を約0.01mBarに保持し、前記チャンバ内の温度を-35℃の高温にまで上げ、約60分間保持する;
J.前記チャンバ内の圧力を約0.01mBarに、前記温度を-35℃の高温で保持し、さらに最大3500分間保持する;
K.前記チャンバ圧力を約0.005mBarまで下げ、前記温度を20℃の高温にまで上げ、さらに最大360分間保持する;
L.前記チャンバ内の圧力を約0.005mBarに、前記温度を20℃の高温で保持し、さらに最大900分間保持する。
[態様8]
前記原生動物が、アピコンプレックス門由来である、態様7に記載の方法。
[態様9]
前記原生動物が、コクシジウム綱由来である、態様8に記載の方法。
[態様10]
前記原生動物が、真コクシジウム目から選択される、態様9に記載の方法。
[態様11]
前記原生動物が、肉胞子虫科から選択される、態様10に記載の方法。
[態様12]
前記原生動物が、原生動物をNeospora、Hammondia、及びToxoplasmaからなる属から選択される、態様11に記載の方法。
[態様13]
前記原生動物が、Neospora属に由来する、態様12記載の方法。
[態様14]
前記原生動物が、Neospora caninumである、態様13記載の方法。
[態様15]
前記方法が、ワクチンの前記調製における最終ステップである、態様7に記載の方法。
[態様16]
前記方法が、ワクチンの前記調製における中間ステップである、態様7に記載の方法。
[態様17]
前記Neospora caninumが不活性化されている、態様14に記載の方法。
[態様18]
前記Neospora caninumが生で弱毒化されている、態様14に記載の方法。
[態様19]
前記Neospora caninumが、Nc-Spain7、NCTS-8、Nc-Nowra、NC-1、及びNE1からなる群から選択される、態様17または18に記載の方法。
[態様20]
前記弱毒化生Neospora caninumが、PTS、MIC-1、MIC-3、IMP-1、GRA1、GRA6、GRA7、AMA1、SAG1、SAG4、GRA2、ソルチリン様受容体、CPSII、RON2、ジガラクト脂質抗原、CyP、NcP20、及びDHFRからなる群から選択されるタンパク質に変異を有する、態様18に記載の方法。
[態様21]
態様7に記載の方法によって凍結乾燥されたNeospora caninum。
[態様22]
態様7に記載の方法を含むプロセスによって調製されたNeospora caninumワクチン。
【実施例】
【0083】
実施例1.製剤及び凍結乾燥プロトコール
数回の試験の後、安定剤溶液の最適組成及び濃度が導き出された。最終製剤(表1)は
、BSA、Tween80、トレハロース、クエン酸及びEGCG(抗酸化剤であるエピガロカテキンガレート)を含有していた。しかし、この製剤はDMSOを含まず、最終的なフリーズドライペレットの品質上の問題(毒性)、ならびに操作者及び機器に対する危険性の問題(引火性、爆発の危険性)を回避している。表1に記載されている試薬のそれぞれは、その寄与率に関して、BSA(5~25%w/v)、トレハロース(5~25%w/v)、Tween(登録商標)80(Croda Americas)(0.5~25%v/v)、クエン酸(1~10%w/v)、及びEGCG(0.1~5mg/ML)または同等のアスコルビン酸(0.1~5mg/ML)、のように変えることができる。一般的に言うと、別の糖または糖アルコールを、トレハロースの代わりに使用するなら、表1のストック中の濃度は、15~25%であるべきである。表1に示す安定化溶液は2.5%のクエン酸濃度を含み、これが好ましい。約1.5%のクエン酸濃度もまた非常に好ましい。他のタンパク質安定剤をウシ血清アルブミンの代わりに使用することができ、当該技術分野で周知のように、例えば同様の濃度のヒト血清アルブミンが含められる。
【0084】
「Spans」(登録商標)(Croda Americas及びCroda Europe Ltd)などの他の多くのソルビタンエステル、及び「Tweens」(登録商標)(Croda)などのそれらのエトキシレートは、(また、安定剤溶液中約0.5~25%v/vの濃度で)、Span20、40、60、80、及び120(それぞれモノラウレート、モノパルミテート、モノステアレート、モノオレエート、及びイソステアレート(isolsterate)ならびにTween20、40、60及び80(それぞれモノラウレート、モノパルミテート、モノステアレート、モノオレエート、PEG-20ソルビタン)を含み、本発明の実施において有用であることもまた留意すべきである。有用なTween(登録商標)及びSpan(登録商標)濃度に関して、少なくとも約0.5%v/vの低くした最終濃度まで実質的な有効性が認められている。安定剤溶液を2時間撹拌し、続いて0.2μm滅菌フィルターに通して濾過した。
【0085】
【0086】
次いで、Neospora感染Vero細胞培養物を、セルスクレーパーを用いて機械的に回収した。感染した細胞は非常に壊れやすいので、寄生体のほとんどは、すでにいくつかの遊離寄生体細胞を含んでいる培地に放出する。ブラディゾイト型及びオーシストを認めることができるけれども、回収された寄生体の多くはタキゾイトである。Marc-145細胞が代替培養細胞株である。回収した培地中の原生動物の濃度は、血球計により9.09×105/mlであると定量した。
【0087】
代表的な例では、最終製剤は以下のように組み立てる。回収した細胞培養物45MLをFBS(ウシ胎児血清)5MLと混合すると、10%FBSの溶液が生じる。この溶液50MLを上記安定剤溶液50MLと混合(1:1)するが、3成分をこの正確な配列で混合する必要はない。上記のように、本発明の凍結乾燥及び安定化手順は、一般に、アピコンプレックス原生動物のすべての生活環段階に適用可能である。
【0088】
凍結乾燥品の調製のために、最終製剤をそれぞれ2ミリリットルずつ15ccバイアルに分注し、部分的に栓をして、予冷した棚に入れた。少量の混合物を用いて、変調示差走
査熱量測定(DSC)によって測定して、ガラス転移温度を決定した。アスコルビン酸を、安定剤溶液中でEGCGの代わりとして、0.45mg/MLの濃度で、またはEGCGに対して実施可能であると記載されている他の任意の濃度(例えば、約0.1~約5.0mg/mL)で使用し得る。
【0089】
凍結乾燥の凍結段階中に起こり得る微生物の生存率への有害な影響を最小限にするために、凍結ステップ中の氷核形成温度をよりよく制御することを特に意図して、修正プロトコールを開発した。乾燥室を2Barまで加圧し、続いてチャンバを大気圧まで急速に減圧した。次いでチャンバ内の温度を-1℃~-15℃に保った。次いで、一次乾燥期間中に温度を-50℃という低温まで低下させ、次に-35℃という高温まで上昇させた。これは製剤のガラス転移温度より低く、これにより凍結乾燥ペレットが崩壊し、分解するのを防いだ。次いで、二次乾燥ステップの間に温度を20℃まで上げた。凍結乾燥製品の残留含水量は、決して3%を超えなかった。このプロトコールの間、圧力が低下したときに圧力をよりよく制御するのを助けるために、チャンバ内にガスを導入した。
【0090】
次いで、凍結乾燥させた原生動物を、-70℃で貯蔵した。37日間保存した後、それらを培地で再水和した。再水和直後の生存能力のある原生動物の濃度は7.0x105/mlであると定量され、これは77%の生存率に相当する。再水和原生動物はまた、Vero細胞培養物を感染させるためにも使用した。30時間のインキュベーション後、細胞単層全体を感染させ、約54時間以内に、生存能力のあるタキゾイトは、宿主細胞内でそれらの生活環を完了した(データは示さず)。原生動物培養物を54時間後に回収し、生存能力のある微生物を、トリパンブルー染色及び血球計により計数した。濃度は6.5x106原生動物/mLであると定量した。この方法は、前述のすべての追加の原生動物の対応する生活環段階に適用可能である。
【0091】
実施例2.タキゾイト生存率に対する安定剤濃度の効果。
ウシ胎児血清(FBS)の存在下または非存在下で、表1の安定剤溶液を異なる濃度で使用して、凍結乾燥N.caninumタキゾイトの生存率に対する効果を評価した。実施例1のプロトコールに従ってタキゾイトを凍結乾燥させ、-80℃で37日間貯蔵した後、続いて培地中で再水和した。次いで、生存能力のあるタキゾイトを、トリパンブルー染色及び血球計計数を使用して数え上げた。結果(表3)は、安定剤濃度と凍結乾燥タキゾイトの生存率との間の相関関係を示し、ここで安定剤の濃度の増加は生存率の増加をもたらした。生存能力のあるタキゾイトのパーセンテージは、FBSが存在しない場合よりもFBSが存在する場合の方が高かったので、安定化緩衝剤中にFBSを含めることの明白な効果もまた実証された。
【0092】