(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ジルコニウムに基づく及びランタンに基づくエチレン性不飽和金属塩
(51)【国際特許分類】
C08F 220/04 20060101AFI20240912BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20240912BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240912BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240912BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240912BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20240912BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20240912BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240912BHJP
【FI】
C08F220/04
C08F220/30
C09D4/02
C09J4/02
C09D7/40
C09J11/02
B33Y70/10
B33Y80/00
(21)【出願番号】P 2021531604
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019083357
(87)【国際公開番号】W WO2020114983
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・モニエ
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/085062(WO,A1)
【文献】特開2015-108781(JP,A)
【文献】米国特許第06703518(US,B1)
【文献】特表2020-513446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0192851(US,A1)
【文献】特開平07-062279(JP,A)
【文献】国際公開第2018/095823(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09D
C09J
B33Y 70/10
B33Y 80/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和反応性希釈剤に可溶性である(共)重合性エチレン性不飽和金属塩であって、
式(I):(X)
n-R1-O
2C-R-CO
2H
で表される、ジカルボン酸のエチレン性不飽和ヘミエステル
のジルコニウムオキシド塩あるいはランタン塩であり、任意選択により場合によっては、前記ヘミエステル(I)に加えて、式(II):R2CO
2Hで表される飽和モノカルボン酸の存在下での塩であり、かつ前記塩が以下の式
(IV)、又は(V)
:
[(X)
nR1-O
2C-R-CO
2-]
2-xZr(=O)(-O
2CR2)
x (IV)
(式中、x=0又は1である)、及び
[(X)
nR1-O
2C-R-CO
2-]
3-xLa(-O
2CR2)
x (V)
(式中、x=0又は1又は2であ
る)
{ここで、
Rは、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらが混合した構造のジカルボン酸からカルボキシ基を除いた残基であり、
R1-(X)
nは、(メタ)アクリレート(-CO
2-C(R3)=CH
2、ここで、R3:-H又は-CH
3)、ビニル(-CH=CH
2)、又はアリル(-CH
2-CH=CH
2)から選択されるエチレン性不飽和官能基Xをn個有する、エチレン性不飽和モノアルコールからOHを除いた残基(ここで、nは1~5の範囲の整数であ
る)であり、
R2は、ジカルボン酸のヘミエステル以外のモノカルボン酸であって、脂肪族、脂環式、ヘテロ環式、芳香族、又はそれらが混合したものであるモノカルボン酸、又は
式(VI):R’1-O
2C-R’-CO
2Hの酸ヘミエステルから選択される(エチレン性不飽和をもたない)飽和モノカルボン酸から、カルボキシル基を除いた残基であり(後者の場合、R2=R’1-O
2C-R’-である)、かつ
R’1は、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらが混合した構造の飽和モノアルコールの残基であり、そして
R’は、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらが混合した構造である(エチレン性不飽和のない)飽和構造のジカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基であり、R’はRが飽和構造である場合はRと同じであってもよく、あるいはR’はRとは異なっていてもよい}
のいずれか1つにしたがって定義されたものであり、
かつ、任意選択により場合によっては、前記金属塩はその金属塩と共重合可能なエチレン性不飽和反応性希釈剤中の溶液の形態であってもよい、ことを特徴とする、(共)重合性エチレン性不飽和金属塩。
【請求項2】
前記のジカルボン酸R(-CO
2H)
2が、
- 脂肪族ジカルボン酸については、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、イタコン酸、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、又はドデカンジカルボン酸、C
36ダイマー脂肪酸、あるいはそれらの混合物、
- 脂環式ジカルボン酸については、シクロヘキサン-1,4-、-1,3-、又は-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸、又はそれらの混合物、
- 芳香族ジカルボン酸については、オルト-、イソ-、又はテレフタル酸、テトラブロモフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸
、又はそれらの混合物、
から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の金属塩。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノアルコールHO-R1-(X)
nが以下のものから選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の金属塩:
- Xがアリルである場合は、アリルアルコール、アリルアルコールと脂肪族C
2~C
36ジオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルジオール又はオリゴエステルジオールとのモノエーテル、アリルアルコールと脂肪族トリオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルトリオール又はオリゴエステルトリオールとのジエーテル、アリルアルコールと脂肪族テトラオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルもしくはオリゴエステルテトラオールとのトリエーテル、それぞれ2、3、及び4のOH官能数のポリオールとのジカルボン酸/アリルアルコールのヘミエステルのモノ、ジ、又はトリアリルエステル誘導体、
- Xがビニルである場合は、ビニルアルコール、ビニルアルコールと脂肪族C
2~C
36ジオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルジオール又はオリゴエステルジオールとのモノエーテル、ビニルアルコールと脂肪族トリオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルトリオール又はオリゴエステルトリオールとのジエーテル、ビニルアルコールと脂肪族テトラオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルもしくはオリゴエステルテトラオールとのトリエーテル、それぞれ2、3、及び4のOH官能数のポリオールとのジカルボン酸/ビニルアルコールのヘミエステルのモノ、ジ、又はトリアリルエステル誘導体、
- Xが(メタ)アクリレートである場合は、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート(アルキルはC
2~C
8アルキル)、オリゴエーテルジオール又はオリゴエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、脂肪族トリオール(これはアルコキシル化されていてもよい)のジ(メタ)アクリレート、オリゴエーテルトリオール又はオリゴエステルトリオールのジ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラオール(これはアルコキシル化されていてもよい)のトリ(メタ)アクリレート、又はオリゴエーテルテトラオールもしくはオリゴエステルテトラオールのトリ(メタ)アクリレート、脂肪族ヘキサオール(これはアルコキシル化されていてもよい)のペンタ(メタ)アクリレート、又はオリゴエーテルヘキサオールもしくはオリゴエステルヘキサオールのペンタ(メタ)アクリレート。
【請求項4】
前記の基Xが(メタ)アクリレートCH
2=C(R3)-CO
2-基(R3は-H又は-CH
3である)であり、nが1~5、又は1~3の範囲であり、あるいはnは1に等しく、
前記の塩については以下の一般式
(IV)、及び(V)
:
[(CH
2=C(R3)-CO
2-)
nR1-O
2C-R-CO
2-]
2-xZr(=O)(-O
2CR2)
x (IV)
(式中、x=0又は1である)、及び
[(CH
2=C(R3)-CO
2-)
nR1-O
2C-R-CO
2-]
3-xLa(-O
2CR2)
x (V)
(式中、x=0又は1又は2であ
る)
であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属塩。
【請求項5】
請求項1に規定する式
(IV)、及び(V)のそれぞれの塩についてx=0であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属塩。
【請求項6】
式(IV)の塩についてはx=1であり、式(V)の塩についてはx=1又は2であり、かつ、前記モノカルボン酸R2CO
2Hは、ジカルボン酸のヘミエステルとは異なるモノカルボン酸であり且つ以下のものから選択されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の金属塩:
- R2が直鎖状C
1~C
21アルキル又は分岐状C
4~C
21アルキルである脂肪族モノカルボン酸、
- R2がC
6~C
18シクロアルキルである脂環式モノカルボン酸、
- R2がC
6~C
18アリールである芳香族モノカルボン酸、
- R2が、O、N、及びSから選択されるヘテロ原子を含むヘテロ
環を含むモノカルボン
酸から選択されるモノカルボン酸。
【請求項7】
式(IV)の塩についてはx=1であり、かつ式(V)の塩についてはx=1又は2であり、前記モノカルボン酸R2CO
2Hは、請求項1に規定するとおりの式(VI):R'1-O
2C-R'-CO
2Hのジカルボン酸ヘミエステルであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属塩。
【請求項8】
以下の工程i)~iv)を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属塩の製造方法:
i)以下の各反応:
- 式R(CO)
2Oのジカルボン酸無水物と、前記のエチレン性不飽和モノアルコールHO-R1-(X)
nとの反応(ここで、R、R1、X、及びnは請求項1に規定する通りである)、
- 及び任意選択により場合によっては、ジカルボン酸無水物R’(CO)
2Oと前記の飽和モノアルコールR’1-OHとの反応(ここでR’及びR’1は請求項1に規定する通りである)、
によって式(I)のエチレン性不飽和ヘミエステル、及び任意選択により場合によっては式(VI)の飽和ヘミエステルを調製する工程;
ii)上で定義した前記ヘミエステル(I)の可溶性塩、任意選択により場合によっては前記モノカルボン酸(II)との混合物の可溶性塩を得るために、
式(I)の前記ヘミエステルを、任意選択により場合によってはヘミエステル以外のモノカルボン酸であることができる式(II)の(エチレン性不飽和をもたない)飽和モノカルボン酸との又は式(VI)のヘミエステルとの混合物として、水性媒体中で弱塩基によって中和する工
程;
iii)それぞれの式(II)、(IV)、又は(V)の目標とする塩に応じて、水溶液中で撹拌しながら、それぞれ
、ジルコニウムオキシジクロライド(Zr(=O)Cl
2)、又はランタントリクロライド(LaCl
3)を添加する工程であって、その塩の沈殿を伴う工程;
iv)前記の沈殿した塩をろ過し、水で洗い、乾燥させて、固体のバルク形態の塩を回収する工程。
【請求項9】
エチレン性不飽和反応性希釈剤中の溶液の中で、請求項1~7のいずれか一項において定義される金属塩を製造する方法であって、請求項
8に記載の方法で定義されている工程i)及びii)に加えて、以下の追加の工程iii)~vi)を含むことを特徴とする方法:
iii)二相媒体を作りだすために、工程ii)の水性溶液に、前記金属塩のための溶媒であり、かつ水とは非混和性である不活性有機溶媒(エチレン性不飽和なしの非反応性)を添加する工程;
iv)それぞれの式(II)、(IV)、又は(V)の目標とする塩に応じて、撹拌しながら、それぞれ
、ジルコニウムオキシジクロライド(Zr(=O)Cl
2)、又はランタントリクロライド(LaCl
3)を、前記二相媒体に添加する工程であって、溶液中で形成された金属塩が水/有機溶媒の二相媒体の有機相中へ移動することを伴う工程;
v)水相の除去処理によって分離し、回収した有機相に少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤を添加する工程;
vi)減圧下での蒸発によって前記の不活性有機溶媒を除去し、前記の少なくとも1つの反応性希釈剤中の前記金属塩の溶液を回収する工程。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項にしたがって定義される金属塩又は請求項8又は9にしたがって定義される方法によって得られる少なくとも1つの金属塩を含むことを特徴とする架橋性組成物。
【請求項11】
前記の塩に加えて、一官能又は多官能の(メタ)アクリル、ビニル、又はアリルモノマ
ーから選択される、前記塩と共重合可能な少なくとも1つの反応性希釈剤を含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和オリゴマーをさらに含むことを特徴とする、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
架橋性組成物中での、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属塩の使用。
【請求項14】
光学用途のための高屈折率を有する材料
、歯科用途のための材料、3D印刷用組成物、3D物品の製造、及び極性基材に対するコーティング又は接着剤の接着の促進に関する使用であることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1~7のいずれか一項において定義される少なくとも1つの金属塩又は請求項8もしくは9において定義される方法によって得られる少なくとも1つの金属塩の使用によって、又は請求項10~12のいずれか一項において定義される組成物の架橋によって生じることを特徴とする、架橋した生成物。
【請求項16】
コーティング剤、接着剤、複合材料
、成形部品、高屈折率を有する補正レンズ又は光学プリズム、歯科部材、3D印刷物、又は3D物品であることを特徴とする、請求項15に記載の生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウム又はランタン、及びジカルボン酸のエチレン性不飽和ヘミエステルに基づく、エチレン性不飽和反応性希釈剤中に可溶なエチレン性不飽和且つ(共)重合性の金属塩、前記の塩の調製方法、それを含む架橋可能な組成物、及び光学又は歯科用途のための材料、複合材料、成形組成物、3D印刷組成物、及び3D物品用の組成物、コーティング又は接着剤としてのその様々な使用、並びにそれらから生じる完成した架橋生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和金属塩、特にエラストマー中の架橋剤として使用される亜鉛ジ(メタ)アクリレート又はカルシウムジ(メタ)アクリレートなどの亜鉛又はカルシウム塩は既に知られており、米国特許第5314187号明細書又は米国特許第5506308号明細書に記載されているとおりである。幅広い用途に対してのこれらの塩の主な欠点は、それらが反応性希釈剤媒体、より具体的には過酸化物経路又は放射エネルギー下のいずれかで架橋することができる組成物に溶解しないという事実であり、この事実が、コーティング(ワニス、インクを含む)、接着剤、複合材料、歯科用組成物、3D印刷組成物、3D物品及び成形組成物のための又は光学用途のための透明材料の組成物のための均一系架橋性組成物(全ての反応性成分が架橋性組成物中に可溶である、均一かつ透明な架橋性組成物)における使用を制限している。
【0003】
国際公開第00/075241号、より具体的には、欧州特許出願公開第1980565号公報及び同1189994号公報は、酸化亜鉛(ZnO)及び(メタ)アクリレート官能化ヘミエステル/酸からの可溶性亜鉛塩の合成について記載している。最初の段階は、環状無水物とHE(M)Aとの反応によるヘミエステル/酸の合成である。第2段階は、ヘミエステル/酸と酸化亜鉛との間での従来のエステル化反応である。反応中に形成された水は、平衡を移動させるために共沸溶媒とともに蒸留される。この反応が完了したら、(メタ)アクリレートモノマーをその媒体に添加し、次に溶媒を減圧下で除去する。しかしながら、記載された調製方法は、その他の可溶性金属塩、例えば、酸化ジルコニウム、ジルコニウム、又はランタンの塩を得るためには十分ではない。さらに、記載されている可溶性エチレン性不飽和亜鉛塩は、官能基数(2)が制限されており、さらに高性能の材料、特に高い屈折率及び高い機械的強度を高い熱安定性とともに有する材料への適用には不十分である。
【0004】
エチレン性不飽和反応性希釈剤又はそれを含む架橋性組成物に溶解性であり且つ共重合可能な新規のエチレン性不飽和金属塩は、最新の公知の金属塩の不利な点及び欠点を克服し、前記の金属塩の性能及び組成物中への溶解性の結果として、組成物の成分の選択に応じて広い範囲の目的とする用途をもつ均一且つ様々な架橋性組成物において幅広く使用できるという追加の利点も備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5314187号明細書
【文献】米国特許第5506308号明細書
【文献】国際公開第00/075241号
【文献】欧州特許出願公開第1980565号公報
【文献】欧州特許出願公開第1189994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の主題は、エチレン性不飽和反応性希釈剤中に可溶な(共)重合性エチレン性不飽和金属塩であり、この塩は、ジルコニウム又はランタン、及びジカルボン酸の特定のエチレン性不飽和ヘミエステルに基づくものである。前記の塩は、少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤中の均質な溶液の形態であることができるか、又は均質な溶液の形態中に存在することができる。
【0007】
本発明の別の主題は、バルク(100%)の塩形態にある前記の塩を回収することを伴う、前記の金属塩を調製するための第1の方法である。少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤中の溶液の形態で調製するための方法は、本発明の別の主題である。
【0008】
本発明の別の主題は、本発明による少なくとも1つの金属塩を含む架橋性組成物(架橋可能な組成物)である。
【0009】
本発明の2つの最後の主題は、それぞれ、架橋性組成物中での本発明による前記金属塩の使用、及びそれから生じる完成した架橋した物体である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の第1の主題は、エチレン性不飽和反応性希釈剤中に可溶な(共)重合性エチレン性不飽和金属塩であって、この塩は、
式(I):(X)n-R1-O2C-R-CO2H
で表されるジカルボン酸のエチレン性不飽和ヘミエステルのジルコニウム塩又はジルコニウムオキシド塩又はランタン塩であり、任意選択により場合によっては、前記ヘミエステル(I)に加えて、式(II):R2CO2Hで表される飽和モノカルボン酸の存在下(又はそれが存在するもとで)での塩であり、かつ前記塩が以下の式(III)、(IV)、又は(V):
[(X)nR1-O2C-R-CO2-]4-xZr(-O2CR2)x (III)
(式中、x=0又は1又は2又は3であり、特にx=0又は1である)、
[(X)nR1-O2C-R-CO2-]2-xZr(=O)(-O2CR2)x (IV)
(式中、x=0又は1である)、及び
[(X)nR1-O2C-R-CO2-]3-xLa(-O2CR2)x (V)
(式中、x=0又は1又は2であり、特にx=0又は1である)
のうちの1つにしたがって定義され、
上記式中、
Rは、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらが混合した構造のジカルボン酸からカルボキシ基を除いた残基であり、
R1-(X)nは、(メタ)アクリレート(-CO2-C(R3)=CH2(ここで、R3:-H又は-CH3)、ビニル(-CH=CH2)、又はアリル(-CH2-CH=CH2)から選択されるエチレン性不飽和官能基Xをn個有する、エチレン性不飽和モノアルコールからOHを除いた残基(ここで、nは1~5又は1~3の範囲の整数であり、又はnは1に等しい)であり、
R2は、
- ジカルボン酸のヘミエステル以外のモノカルボン酸であって、脂肪族、脂環式、ヘテロ環式、芳香族、又はそれらが混合したものであるモノカルボン酸、又は
- 式(VI):R’1-O2C-R’-CO2Hの、ジカルボン酸の酸ヘミエステル(この場合、R2=R’1-O2C-R’-であり、R’1は、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらが混合した構造の飽和モノアルコールの残基であり、そしてR’は、脂肪族、脂環式、芳香族、又はそれらが混合した構造である(エチレン性不飽和のない)飽和構造のジカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基であり、R’はRが飽和構造である場合はRと同じであってもよく、あるいはR’はRとは異なっていてもよい)
から選択される、(エチレン性不飽和のない)飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いた残基であり、
かつ、任意選択により場合によっては、前記の金属塩はその金属塩と共重合可能な少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤中の溶液の形態で存在していてもよい。
【0011】
前記の金属塩の具体的な選択肢によれば、前記のジカルボン酸R(-CO2H)2は、以下のものから選択される:
- 脂肪族ジカルボン酸については、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、イタコン酸、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、又はドデカンジカルボン酸、C36ダイマー脂肪酸、あるいはそれらの混合物、好ましくは、マレイン酸、コハク酸、及びイタコン酸、
- 脂環式ジカルボン酸については、シクロヘキサン-1,4-、-1,3-、又は-1,2-ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸、又はそれらの混合物、
- 芳香族ジカルボン酸については、オルト-、イソ-、又はテレフタル酸、テトラブロモフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、特にビフェニル-2,2’-ジカルボン酸(ジフェン酸)、又はそれらの混合物。
【0012】
さらに特に、前記の金属塩においては、前記のエチレン性不飽和モノアルコールHO-R1-(X)nは以下のものから選択される:
- Xがアリルである場合は、アリルアルコール、アリルアルコールと脂肪族C2~C36ジオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルジオール又はオリゴエステルジオールとのモノエーテル、アリルアルコールと脂肪族トリオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルトリオール又はオリゴエステルトリオールとのジエーテル、アリルアルコールと脂肪族テトラオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルもしくはオリゴエステルテトラオールとのトリエーテル、それぞれ2、3、及び4のOH官能数のポリオールとジカルボン酸/アリルアルコールのヘミエステルとのモノ、ジ、又はトリアリルエステル誘導体、好ましくは、アリルアルコール、及びアリルアルコールと脂肪族C2~C36ジオール(これはアルコキシル化されていてもよい)とのモノエーテル、
- Xがビニルである場合は、ビニルアルコール、ビニルアルコールと脂肪族C2~C36ジオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルジオール又はオリゴエステルジオールとのモノエーテル、ビニルアルコールと脂肪族トリオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルトリオール又はオリゴエステルトリオールとのジエーテル、ビニルアルコールと脂肪族テトラオール(これはアルコキシル化されていてもよい)又はオリゴエーテルもしくはオリゴエステルテトラオールとのトリエーテル、それぞれ2、3、及び4のOH官能数のポリオールとジカルボン酸/ビニルアルコールのヘミエステルとのモノ、ジ、又はトリアリルエステル誘導体、好ましくは、ビニルアルコール、及びビニルアルコールと脂肪族C2~C36ジオール(これはアルコキシル化されていてもよい)とのモノエーテル、
- Xが(メタ)アクリレートである場合は、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート(アルキルはC2~C8アルキル)、オリゴエーテルジオール又はオリゴエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、脂肪族トリオール(これはアルコキシル化されていてもよい)のジ(メタ)アクリレート、オリゴエーテルトリオール又はオリゴエステルトリオールのジ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラオール(これはアルコキシル化されていてもよい)のトリ(メタ)アクリレート、又はオリゴエーテルテトラロールもしくはオリゴエステルテトラオールのトリ(メタ)アクリレート、脂肪族ヘキサオール(これはアルコキシル化されていてもよい)のペンタ(メタ)アクリレート、又はオリゴエーテルヘキサオールもしくはオリゴエステルヘキサオールのペンタ(メタ)アクリレート、好ましくは、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート(アルキルはC2~C8アルキル)、及びオリゴエーテルジオールもしくはオリゴエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート。
【0013】
前記の金属塩の好ましい選択肢の1つによれば、前記の基Xは(メタ)アクリレートCH2=C(R3)-CO2-基(R3は-H又は-CH3である)であり、nが1~5、又は1~3の範囲であり、あるいはnは1に等しく、
前記の塩については、以下の一般式(III)、(IV)、及び(V):
[(CH2=C(R3)-CO2-)nR1-O2C-R-CO2-]4-xZr(-O2CR2)x (III)
(式中、x=0又は1又は2又は3であり、特にx=0又は1である)、
[(CH2=C(R3)-CO2-)nR1-O2C-R-CO2-]2-xZr(=O)(-O2CR2)x (IV)
(式中、x=0又は1である)、及び
[(CH2=C(R3)-CO2-)nR1-O2C-R-CO2-]3-xLa(-O2CR2)x (V)
(式中、x=0又は1又は2であり、特にx=0又は1である)
を有する。
【0014】
前記の金属塩の特定の選択肢によれば、前記の残基Rのジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸から選択される。さらに特に、前記のジカルボン酸は、イソ-及びテレフタル酸、並びにビフェニル-2,2’-ジカルボン酸である。
【0015】
さらに特に、前記の基Xは(メタ)アクリレート基であり、かつ前記のモノアルコールHO-R1-(X)nは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、Mn<1000のポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、Mn<1000のポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、Mn<1000のポリカプロラクトンのヒドロキシル化モノ(メタ)アクリレート、二級ヒドロキシル基を有するモノエポキシ化された(メタ)アクリレート化化合物、アルコキシル化されたモノ(メタ)アクリレート化ジエポキシド、任意選択によりエトキシル化及び/又はプロポキシル化されていてもよいトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、任意選択によりエトキシル化及び/又はプロポキシル化されていてもよいグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジグリセロールトリ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートから選択される、好ましくは前記のモノアルコールHO-R1-(X)nは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから選択される。
【0016】
前記の金属塩の好ましい選択肢によれば、上で定義したそれぞれの式(III)、(IV)、及び(V)の塩についてx=0である。
【0017】
前記の金属塩の別の特定の選択肢によれば、式(III)の前記の塩についてはx=1又は2又は3であり、式(IV)の前記の塩についてはx=1であり、式(V)の前記の塩についてはx=1又は2であり、かつ、前記のモノカルボン酸R2CO2Hは、ジカルボン酸のヘミエステルとは異なるモノカルボン酸であり(すなわちジカルボン酸のヘミエステルではない)且つ以下のものから選択される:
- R2が直鎖状C1~C21アルキル又は分岐状C4~C21アルキルである脂肪族モノカルボン酸、
- R2がC6~C18シクロアルキルである脂環式モノカルボン酸、
- R2がC6~C18アリールである芳香族モノカルボン酸、
- R2が、O、N、及びSから選択されるヘテロ原子を含むヘテロ環をもつ基(残基)であるモノカルボン酸。特に、前記のヘテロ環は、チオフェン、フタルイミド、又はフラン環から選択され、より特に、前記の酸R2CO2Hは、チオフェンカルボン酸、N-フタロイルグリシン、及びフロ酸(フランカルボン酸としても知られる)から選択される。
【0018】
前記の金属塩の別の特定の選択肢によれば、式(III)の前記の塩についてはx=1又は2又は3であり、式(IV)の前記の塩についてはx=1であり、かつ式(V)の前記の塩についてはx=1又は2であり、前記のモノカルボン酸R2CO2Hは、上で規定したとおりの式(VI):R'1-O2C-R'-CO2Hのジカルボン酸ヘミエステルである。
【0019】
それぞれ式(III)、(IV)、及び(V)に従う本発明による金属塩の式中のR2CO2-の存在(xが0以外の場合)及びその選択は、前記の金属塩の目標とする特性及び目的とする架橋性組成物の成分との金属塩の親和性を調節することができ、それは所望する目標とする用途における具体的な性能品質を調節するためである。R2は、したがって、パラメータxのように変更できる主要な構造パラメータであり、最終的な用途、及び架橋可能な組成物について目標とする性能要件に従って両方を改変することができる。
【0020】
本発明による前記の金属塩は、より具体的には、特に(メタ)アクリル、ビニル、又はアリルモノマー及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤中の溶液の中に存在し、エチレン性不飽和反応性希釈剤はより具体的には、1~6の範囲のエチレン性不飽和基の官能性を有する。
【0021】
本発明の第2の主題は前記の金属塩の製造方法であって、その方法は以下の工程を含む:
i)以下の各反応:
- 式R(CO)2Oのジカルボン酸無水物と、前記のエチレン性不飽和モノアルコールHO-R1-(X)nとの反応(ここで、R、R1、X、及びnは上で定義したとおりである)、
- 及び任意選択により場合によっては、ジカルボン酸無水物R’(CO)2Oと前記の飽和モノアルコールR’1-OHとの反応(ここでR’及びR’1は上で定義したとおりである)、
によって式(I)の前記のエチレン性不飽和ヘミエステル、及び任意選択により場合によっては式(VI)の前記の飽和ヘミエステルを調製する工程;
ii)上で定義した前記ヘミエステル(I)の可溶性塩、任意選択により場合によっては前記モノカルボン酸(II)との混合物の可溶性塩を得るために、
式(I)の前記ヘミエステルを、任意選択により場合によっては式(I)の前記ヘミエステルとヘミエステル以外のモノカルボン酸であることができる式(II)の(エチレン性不飽和をもたない)飽和モノカルボン酸との又は式(VI)に従うヘミエステルとの混合物としての式(I)のヘミエステルを、水性媒体中で弱塩基によって中和する工程であって、前記の弱塩基は好ましくは炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、又は三級アミンから選択される、工程;
iii)それぞれの式(II)、(IV)、又は(V)の目標とする塩に応じて、水溶液中で撹拌しながら、それぞれ、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl4)、ジルコニウムオキシジクロライド(Zr(=O)Cl2)、又はランタントリクロライド(LaCl3)を添加する工程であって、塩の沈殿を伴う工程;
iv)前記の沈殿した塩をろ過し、水で洗い、乾燥させて、固体のバルク形態の塩を回収する工程。
【0022】
本発明はまた、少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤中の溶液の中で、前記の金属塩を製造する方法を含み、その方法は、先の方法(上記)に対して規定した工程i)及びii)に加えて、以下の追加の工程iii)~vi)を含む:
iii)二相媒体を作りだすために、工程ii)の水性溶液に、前記の金属塩のための溶媒であり、かつ水とは非混和性である不活性有機溶媒(エチレン性不飽和なしの非反応性)を添加する工程;
iv)それぞれの式(II)、(IV)、又は(V)の目標とする塩に応じて、撹拌しながら、それぞれ、ジルコニウムテトラクロライド(ZrCl4)、ジルコニウムオキシジクロライド(Zr(=O)Cl2)、又はランタントリクロライド(LaCl3)を、前記の二相媒体に添加する工程であって、溶液中で形成された金属塩が水/有機溶媒の二相媒体の有機相中へ移動することを伴う工程;
v)水相の除去処理によって分離し、回収した有機相に少なくとも1つのエチレン性不飽和反応性希釈剤を添加する工程;
vi)減圧下での蒸発によって前記の不活性有機溶媒を除去し、前記の少なくとも1つの反応性希釈剤中の前記の金属塩の溶液を回収する工程。
【0023】
好適な不活性溶媒として、以下のものが挙げられる:C1~C3アルキルアセテート、アルカン類、特に、ヘキサン又はヘプタン、シクロアルカン類、特に、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロプロパン、又はメチルシクロブタン、あるいは芳香族溶媒、特に、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、又はメシチレン、好ましくは、酢酸エチル、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、及びトルエン。
【0024】
本発明の別の主題は、本発明にしたがって上で定義した又は上で定義した方法によって得られる少なくとも1つの金属塩を含む架橋性組成物である。
【0025】
特定の選択肢によれば、上記の組成物は、過酸化物経路により及び/又は放射エネルギー下での経路により、架橋することができる。
【0026】
さらに特に、上記の組成物は、前記の塩に加えて、一官能又は多官能の(メタ)アクリル、ビニル、又はアリルモノマー、好ましくは一官能又は多官能の(メタ)アクリル又はビニルモノマーから選択される、前記の塩と共重合可能な少なくとも1つの反応性希釈剤を含む。特に、前記の塩と共重合可能な前記の反応性希釈剤は、任意選択によりアルコキシル化されていてもよいC1~C18アルキル(メタ)アクリレート;任意選択によりアルコキシル化されていてもよい、C2~C4アルキルをもつヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;任意選択によりアルコキシル化されていてもよい、2~6の範囲の官能基数をもつ、脂肪族ポリオールの又は2~4のエーテル単位を有するオリゴエーテルポリオールのポリ(メタ)アクリルエステル、から選択される少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーである。芳香族又は脂環式構造をもつ」という用語は、「芳香族基又は脂環式基を含む」ことを意味する。
【0027】
さらに特定の選択肢によれば、前記の組成物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和オリゴマーをさらに含む。さらに特に、前記のオリゴマーは、以下のものから選択されるエチレン性不飽和基を1~6個を有する:(メタ)アクリレート、ビニル、及びアリル、好ましくは、(メタ)アクリレート又はビニル。さらに特に、前記のオリゴマーは以下のものから選択される:ビニルエステル、不飽和ポリエステル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル(メタ)アクリレートコポリマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、又はポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート。
【0028】
さらに特定の選択肢によれば、前記の組成物は、光開始剤の存在下でのUV(紫外線)照射により、又は光開始剤なしでの電子線によって架橋可能である。
【0029】
前記の架橋性組成物は、特に以下のものから選択される:コーティング組成物、接着剤組成物、成形用組成物、ガラスファイバー又はカーボンファイバーによって強化された複合材料のための組成物、又は3D印刷用組成物。
【0030】
本発明の1つの主題は、架橋性組成物中での前記の金属塩の使用である。
【0031】
さらに特に、前記の使用は、光学用途のための高屈折率を有する材料、特に視力補正眼用レンズ、光学プリズム、又はガラスファイバーもしくはカーボンファイバー強化された複合材料、歯科用途のための材料、3D印刷用組成物、3D物品の製造、及び極性基材に対するコーティングの又は接着剤の接着の促進に関する。
【0032】
最後に、本発明はまた、本発明にしたがって、上で定義した少なくとも1つの金属塩又は上で定義した方法によって得られる少なくとも1つの金属塩の使用により得られる、あるいは上で定義した組成物の架橋によって生じる架橋した生成物も包含する。
【0033】
さらに特に、前記の架橋した生成物に関して、それは以下のものである:コーティング、接着剤、複合材料、特にガラスファイバー又はカーボンファイバー強化された複合材料、成形部品、高屈折率を有する補正レンズ又は光学プリズム、歯科部材、3D印刷物、又は3D物品。
【0034】
以下の例は、本発明及びその性能品質を説明するために提示されており、それらは、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を決して制限するものではない。
【実施例】
【0035】
【0036】
2)エチレン性不飽和金属塩の調製
例1(本発明):ビフェニルメタノールアクリレート(KPX社からのHOO8)中に希釈されたジルコニルジ(HEAフタレート)
【0037】
工程1:29.71 gのヒドロキシエチルアクリレート(HEA, Mw 116.12 g / mol, Sigma Aldrich社)、37.89 gの無水フタル酸(Mw 148.12, Sigma Aldrich社)、及び0.07 gのヒドロキノンメチルエーテル(HQME, Aldrich社)を、撹拌しながら、かつ空気(0.3 ml/H/kg)でバブリングしながら1リットルの反応器に導入する。その混合物を加熱し、mg KOH/gで表される酸価(AN)の測定によって決定される最終的な反応停止基準に達するまで100℃に維持する。予想される最終的な理論上のAN値は、212.3 mg KOH/gである。
【0038】
工程2:70 gの脱塩水に溶かした21.29 gの重炭酸ナトリウム(NaHCO3, Mw 84.0 g/mol, Aldrich社)の溶液を、60℃にて、空気をバブリングしながら、同じ反応器に30分かけて添加する。CO2の放出が観察される。重炭酸ナトリウム溶液の添加の終わりに、反応媒体は乳白色であるが、1時間撹拌した後に、わずかに曇った均質になる。溶液のpHは7と測定される。
【0039】
工程3:60℃にて、撹拌しながら、かつ空気でバブリングしながら、500 gの酢酸エチルを反応媒体に添加し、次に32.0 gの脱塩水中に溶かした48.19 gのジルコニルジクロライド八水和物(ZrOCl2.8H2O, Mw 322.25 g/mol, Alfa Aesar社)の溶液を、その2相媒体に15分かけて添加する。添加を行うと、白い沈殿物が媒体中に形成され、その沈殿物は続いて有機相中に溶解する。添加の最後に、撹拌機を停止すると、2つの相が観察される。すなわち、透明な無色の水相及び不透明な白色の有機相である。
【0040】
工程4:水相を分液漏斗で除去し、有機相を50gの20%塩化ナトリウム溶液で1回洗う。
【0041】
工程5:紙で濾過した後、55 gのビフェニルメタノールアクリレート(H008, KPX社)をその有機媒体に添加し、次に酢酸エチルを減圧下で蒸発させる。
溶媒を蒸発させた後、得られる生成物は、121.94 gの均一な液体であり、すなわち、84%のジルコニルジ(HEAフタレート)塩の最終収率である。その混合物の25℃における粘度は5400 mPa.sであり、屈折率は1.591である。
【0042】
例2(本発明):クミルフェノールアクリレート(Sartomer社からのCD590)中に希釈されたジルコニルジ(HEMAフタレート)
【0043】
工程1:31.62 gのヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA, Mw 130.14 g/mol, Sigma Aldrich社)、35.98 gの無水フタル酸(Mw 148.12, Sigma Aldrich社)、及び0.07 gのヒドロキノンメチルエーテル(HQME, Aldrich社)を、撹拌しながら、かつ空気(0.3 ml/H/kg)でバブリングしながら、1リットルの反応器中に導入する。その混合物を加熱し、mg KOH/gで表される酸価(AN)の測定によって決定される最終的な反応停止基準に達するまで100℃に維持する。予想される最終的な理論上のAN値は、201.6 mg KOH/gである。
【0044】
工程2:70 gの脱塩水に溶かした21.75 gの重炭酸ナトリウム(NaHCO3, Mw 84.0 g/mol, Aldrich社)の溶液を、60℃にて、空気をバブリングしながら、同じ反応器に30分かけて添加する。CO2の放出が観察される。重炭酸ナトリウム溶液の添加の終わりに、反応媒体は乳白色であるが、1時間撹拌した後に、わずかに曇った均質になる。溶液のpHは7と測定される。
【0045】
工程3:60℃にて、撹拌しながら、かつ空気でバブリングしながら、500 gの酢酸エチルを反応媒体に添加し、次に32.0 gの脱塩水中に溶かした49.22 gのジルコニルジクロライド八水和物(ZrOCl2.8H2O, Mw 322.25 g/mol, Alfa Aesar社)の溶液を、その2相媒体に15分かけて添加する。添加を行うと、白い沈殿物が媒体中に形成され、その沈殿物は続いて有機相中に溶解する。添加の最後に、撹拌機を停止すると、2つの相が観察される。すなわち、透明な無色の水相及び不透明な白色の有機相である。
【0046】
工程4:水相を分液漏斗で除去し、有機相を50gの20%塩化ナトリウム溶液で1回洗う。
【0047】
工程5:紙でろ過した後、84.79 gのクミルフェノールアクリレート(CD590, Sartomer社)を上記の有機媒体に添加し、次に酢酸エチルを減圧下で蒸発させる。
溶媒を蒸発させた後、得られる生成物は、155.72 gの均質な液体、すなわち、約88%のジルコニルジ(HEMAフタレート)塩の最終収率である。その混合物の25℃における粘度は4590 mPa.sであり、屈折率は1.561である。
【0048】
例3(本発明):ビフェニルメタノールアクリレート(KPX社からのHOO8)中に希釈されたジルコニルジ(フェニルグリシジルエーテルアクリレートフタレート)
【0049】
工程1:44.32 gのフェニルグリシジルエーテルアクリレート(CN131B, Mw 300 g/mol, Sartomer社)、35.98 gの無水フタル酸(Mw 148.12, Sigma Aldrich社)、及び0.07 gのヒドロキノンメチルエーテル(HQME, Aldrich社)を、撹拌しながら、かつ空気(0.3 ml/H/kg)でバブリングしながら、1リットルの反応器中に導入する。その混合物を加熱し、mg KOH/gで表される酸価(AN)の測定によって決定される最終的な反応停止基準に達するまで100℃に維持する。予想される最終的な理論上のAN値は、123.5 mg KOH/gである。
【0050】
工程2:70 gの脱塩水に溶かした15.38 gの重炭酸ナトリウム(NaHCO3, Mw 84.0 g/mol, Aldrich社)の溶液を、60℃にて、空気をバブリングしながら、同じ反応器に30分かけて添加する。CO2の放出が観察される。重炭酸ナトリウム溶液の添加の終わりに、反応媒体は乳白色であるが、1時間撹拌した後に、わずかに曇った均質になる。溶液のpHは7と測定される。
【0051】
工程3:60℃にて、撹拌しながら、かつ空気でバブリングしながら、25.0 gの脱塩水中に溶かした29.45 gのジルコニルジクロライド八水和物(ZrOCl2.8H2O, Mw 322.25 g/mol, Alfa Aesar社)の溶液を、反応媒体に15分かけて添加する。白い沈殿物が非常に急速に形成される。
【0052】
工程4:上記の白い沈殿物をろ過により分離し、次に100℃のオーブン中で夜通し乾燥させる。回収した生成物を次に100gのトルエン中に溶かす。その濁った溶液を、紙を通してろ過し、透明かつ均質な濾液を得る。
【0053】
工程5:紙で濾過した後、80.0 gのビフェニルメタノールアクリレート(KPX社からのH008)を上記の有機媒体に添加し、次にトルエンを減圧下で蒸発させる。
溶媒を蒸発させた後、得られた生成物は、132.0 gのわずかに曇った均質な液体であり、すなわち、約66%のジルコニルジ(フェニルグリシジルエーテルアクリレートフタレート)塩の最終収率である。その混合物の25℃における粘度は35000 mPa.sであり、屈折率は1.594である。
【0054】
例4(本発明):ビフェニルメタノールアクリレート(KPX社からのH008)中に希釈されたランタントリ(HEMAフタレート)
【0055】
工程1:15.56 gのヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA, Mw 130.14 g/mol, Sigma Aldrich社)、17.70 gの無水フタル酸(Mw 148.12, Sigma Aldrich社)、及び0.035 gのヒドロキノンメチルエーテル(HQME, Aldrich社)を、撹拌しながら、かつ空気(0.3 ml/H/kg)でバブリングしながら、1リットルの反応器に導入する。その混合物を加熱し、mg KOH/gで表される酸価(AN)の測定によって決定される最終的な停止基準に達するまで、100℃に維持する。予想される最終的な理論上のAN値は、201.6 mg KOH/gである。
【0056】
工程2:100 gの脱塩水に溶かした10.69 gの重炭酸ナトリウム(NaHCO3, Mw 84.0 g/mol, Aldrich社)の溶液を、60℃において、空気をバブリングしながら、その同じ反応器に30分かけて添加する。CO2の放出が観察される。重炭酸ナトリウム溶液の添加の終わりに、反応媒体は乳白色であるが、1時間撹拌した後、わずかに曇った均質になる。その溶液のpHは7と測定される。
【0057】
工程3:60℃において、撹拌しながら、かつ空気でバブリングしながら、350 gの酢酸エチルを反応媒体に添加し、次に50.0gの脱塩水に溶かした49.22 gのランタントリクロリド七水和物(LaCl3.7H2O, Mw 371.37 g/mol, Aldrich社)の溶液をその2相媒体に15分かけて添加する。添加を行うと、白い沈殿物が反応媒体中に形成され、沈殿物は次に有機相に溶ける。添加の最後に、撹拌機を停止すると、透明な無色の水相とわずかに曇った有機相の2つの相が観察される。
【0058】
工程4:水相を分液漏斗で除去し、有機相を50 gの10%塩化ナトリウム溶液で1回洗う。
【0059】
工程5:紙で濾過した後、30 gのビフェニルメタノールアクリレート(KPX社のH008)を有機媒体に添加し、次に酢酸エチルを減圧下で蒸発させる。
溶媒を蒸発させた後、得られた生成物は、65.8 gの均一な液体、すなわち、約91%のランタントリ(HEMAフタレート)塩の最終収率である。その混合物の25℃における粘度は9200 mPa.sであり、屈折率は1.588である。
【0060】