(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ダブルディスクリファイナ
(51)【国際特許分類】
D21D 1/30 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
D21D1/30
(21)【出願番号】P 2021549281
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 SE2020050172
(87)【国際公開番号】W WO2020185140
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515203011
【氏名又は名称】バルメット・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロングレーン,カール
(72)【発明者】
【氏名】ルンドフォーシュ,ミーケル
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05040736(US,A)
【文献】特表2016-516138(JP,A)
【文献】実公昭48-045151(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229242(US,A1)
【文献】米国特許第03207450(US,A)
【文献】米国特許第03685747(US,A)
【文献】実開昭60-004600(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のリファイニングディスク(11)および第2のリファイニングディスク(12)を備えるダブルディスクパルプリファイナ(10)であって、第1のリファイニングディスク(11)は、リグノセルロース材料(M)が第1のリファイニングディスク(11)の入口開口部(16)を通して供給される、リファイナ(10)の供給端に配置され、第2のリファイニングディスク(12)は、第1のリファイニングディスク(11)と同軸に、離間してかつ対向して配置され、前記第1のリファイニングディスク(11)にはリグノセルロース材料(M)をリファイニングするための少なくとも一つのリファイニングセグメント(13)およびセンタープレート(20)が設けられ、センタープレート(20)は、
前記第1のリファイニングディスク(11)の表面から離れた距離を「高さ」とした場合、該センタープレート(20)がリファイナ(10)の第1のリファイニングディスク(11)上に配置されたときに、第1のリファイニングディスク(11)に設けられた少なくとも一つのリファイニングセグメント(13)
の高さと等しいか、あるいはそれよりも高
い高さで突出するように構成された断面プロファイルを有し、さらに、前記センタープレート(20)には、細長の突起またはウイング(21)が設けられ、
細長の突起またはウイング(21)は、センタープレート(20)上で半径方向に延在し、
細長の突起またはウイング(21)の高さが、センタープレート(20)の高さであり、前記ダブルディスクパルプリファイナ(10)は、前
記高さが、前記センタープレートの遠位表面と前記第2のリファイニングディスク(12)の表面との間の距離が、リファイナの所定の最小安全値に近づく距離によりこれらの表面が互いに接触しないように可能な限り小さくなるようなものであることを特徴とする、リファイナ(10)。
【請求項2】
ウイング(21)は、第1のリファイニングディスク(11)の入口開口部(16)同士の間に延在することを特徴とする、請求項1に記載のダブルディスクパルプリファイナ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にディスクリファイナに関し、より詳細には、ディスクセンタープレートを含むダブルディスクパルプリファイナに関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルディスクパルプリファイナは、近接して配置された逆回転ディスクをパルプが半径方向に通過するときに発生する加熱および応力にパルプをさらすことによって、パルプおよび同様の材料をリファイニングするために長年利用されてきた。従来技術の一例として、特許文献である米国特許第5167373号明細書は、2つの逆回転リファイナディスクであって、それらの間にリファイニングゾーンを定義する2つの逆回転リファイナディスクが異なる速度で逆回転される、ダブルディスクリファイナを記載している。
【0003】
図1は、従来技術による典型的なダブルディスクリファイナ10の一部の概略図であり、2つのリファイニングディスク11、12は、異なる回転速度で、および/または反対方向に、すなわち逆回転で回転する。リファイナ10はケーシング17を備え、その中にリグノセルロース材料Mのような供給原料が供給管18を通して供給される。次に、供給原料は、蒸気および希釈水と共に、供給側の第1のリファイニングディスク11の入口開口部/チャネル16を通って流れ、対向するリファイニングディスク11、12の間の空間に達する。第1および第2の同軸シャフト31、31’は、電動モータ30、30’によって、通常反対の回転方向R、R’で独立して回転される。これにより、供給端部の第1のリファイニングディスク11は、ケーシング17内で同軸上に離間して対向する第2のリファイニングディスク12に対して逆回転される。リファイニングディスク11、12は、通常、1つ以上のそれぞれのリファイニングセグメント13、14に分割された粉砕プレートを備え、それらの間にリファイニングゾーン15を画定し、パルプは、逆回転ディスクによって生成される加熱および摩擦の影響下でリファイニングされる。1つ以上のリファイニングセグメント13、14は、リファイニングディスク11、12の周囲付近に配置され、パルプがリファイニングゾーン15を半径方向に通過するときにパルプに施される仕事の性質に影響を及ぼすように慎重に設計された表面特性を有する。リファイニングされたパルプM’は、ディスク間の空間を半径方向に通過し、既知の方法でケーシング17から排出される。対向するディスク11、12間の距離は、例えば制御システム(図示せず)によって、通常は油圧によって、最小安全値よりも大きく維持される。最小安全値は、可能な限り小さくなければならないが、それでもなお、動作中にディスクのリファイニングセグメントが互いに接触する危険性はない。リファイニングディスク11、12は、典型的には、同じ外径を有し、これは、リファイニングパルプがケーシング17の壁を通って排出される直前に通過する周縁を規定する。しかしながら、
図1に示されるディスク11、12は実質的に環状であるが、本明細書で使用される用語は、それらの間にリファイニングゾーンを画定する円錐形嵌合面などの異なる形状を有する機能的等価物を含むことを意味することを理解されたい。
【0004】
このタイプのリファイナにおける問題は、リファイナに非中心的に入ってくる供給原料が、必要に応じてリファイニングディスクの周囲に向かって移動するだけでなく、リファイニングディスクの中心に向かって移動し、そこで材料が堆積し、リファイナ内の材料の分布に悪影響を及ぼす可能性があることである。これは、材料供給の不均一および乱流をもたらし、より高い比エネルギー消費およびより低い生産率をもたらす可能性がある。したがって、ダブルディスクリファイナのリファイニング領域における材料分布を改善することが、当技術分野で必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ダブルディスクパルプリファイナのリファイニング領域におけるリグノセルロース材料の分布を改善するセンタープレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的および他の目的は、提案される技術の実施形態によって満たされる。
【0008】
本発明は、第1のリファイニングディスクと第2のリファイニングディスクとを備えるダブルディスクパルプリファイナに関し、第1のリファイニングディスクは、リファイナの供給端に配置され、リグノセルロース材料は、第1のリファイニングディスクの入口開口部を通ってリファイナに供給され、第2のリファイニングディスクは、第1のリファイニングディスクと同軸に、離間してかつ対向して配置され、前記第1のリファイニングディスクには、リグノセルロース材料をリファイニングするための少なくとも1つのリファイニングセグメントと、センタープレートであって、該センタープレートがリファイナの第1のリファイニングディスクに配置されたときに、第1のリファイニングディスクに設けられた少なくとも1つのリファイニングセグメントの最大高さと同じか、またはそれよりも高い最大高さまで突出するように構成された断面プロファイルを有するセンタープレートとが設けられ、前記最大高さは、前記センタープレートの遠位表面と前記第2のリファイニングディスクの表面との間の距離が、それらの表面が互いに接触することなく可能な限り小さくなるようなものである。
【0009】
提案された技術のいくつかの利点は、
リファイナに供給される材料は、乱流が少なく、したがって、より安定かつ効率的である。これは、より高い生産率とより低い比エネルギー消費をもたらす。また、リファイナを通る蒸気の流れを減少させることもできる。
【0010】
他の利点は、詳細な説明を読めば理解されるであろう。
【0011】
本発明は、その更なる目的および利点と共に、添付の図面と共に以下の説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】従来技術による典型的なダブルディスクリファイナの一部の概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態によるダブルディスクリファイナの一部の概略図である。
【
図3a】本開示の実施形態による、ダブルディスクリファイナのためのセンタープレートを備えたリファイニングディスクの概略図である。
【
図3b】
図3aのリファイニングディスクの斜視図である。
【
図4a】
図3aのリファイニングディスクのA-A線に沿った断面図である。
【
図4b】
図4(a)の一部をクローズアップした図である。
【
図4c】
図3(a)のリファイニングディスクのB-B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一般にディスクリファイナに関し、より詳細には、センタープレートを含むダブルディスクリファイナに関する。
【0014】
図面全体を通して、同じ参照符号は、類似または対応する要素に使用される。
【0015】
背景技術の項で述べたように、ダブルディスクパルプリファイナにおける材料分布を改善することが当技術分野で必要とされている。典型的なダブルディスクリファイナにおける問題は、リファイナへの材料の供給が十分に制御されていないことである。供給原料は、水蒸気および希釈水と一緒に、供給側のリファイニングディスクの開口部/チャネルを通って流れ、最終的にリファイニングディスクの間に達する。上述したように、典型的なダブルディスクリファイナにおける問題は、リファイナに非中心的に入る流入供給原料がリファイニングディスクの中心に向かって移動し、その中心に堆積し、リファイニングディスク上の周辺に向かって配置されたリファイニングセグメント間で材料のリファイニングが行われるので、リファイニングディスクの中心では材料はリファイニングされないことである。材料が途中で堆積すると材料の供給が不均一で乱流になり、リファイナを通るより高い蒸気流が必要となり、その結果、より高い比エネルギー消費とより低い生産率が得られる。
【0016】
図2は、本開示の一実施形態によるダブルディスクリファイナの一部の概略図である。
図2のリファイナ10は、
図1の従来技術のリファイナと同様の特徴、例えば、異なる回転速度および/または反対方向に回転する2つのリファイニングディスク11、12を備え、リファイニングディスク11、12には、リファイニングゾーン15を画定するそれぞれのリファイニングゾーン13、14がその間に設けられ、ここで、第1のリファイニングディスク11の入口開口部16を通ってリファイナ10内に供給されるリグノセルロース材料Mがリファイニングされる。しかしながら、
図2に概略的に示されているように、本開示の一実施形態による供給端リファイニングディスク11には、供給原料がリファイニングディスク11、12の中心に堆積するのを防止し、リグノセルロース材料をリファイニングディスク11、12の周囲に向かって、リファイニングディスク11、12のリファイニングセグメント13、14内に供給するのを助けるために、センタープレート20がさらに設けられている。
【0017】
センタープレート20は、厚さおよび/または高さ、即ち、第1のリファイニングディスク11の表面からどれだけ離れて中センタープレート20の輪郭が突出するか、が変化し得る断面プロファイルを有する。センタープレート20は、材料がそこに堆積しないようにするために、ディスクの中央にあるリファイニングディスク11、12の間の空間の少なくとも一部を満たすべきである。したがって、センタープレート20の断面プロファイルの少なくとも一部は、第1のリファイニングディスク11の表面から第2のリファイニングディスク12の表面に向かって延びるべきであり、好ましくは、第1のリファイニングディスク11上に設けられたリファイニングセグメント13の断面プロファイルの任意の部分と等しいか、またはそれよりも遠くに第1のリファイニングディスク11の表面から延びるべきである。換言すれば、センタープレート20は、センタープレート20がリファイナ10の第1のリファイニングディスク11上に配置されたときに、センタープレート20が第1のリファイニングディスク11上に設けられたリファイニングセグメント13の最大高さと同じか、またはそれよりも高い最大高さまで突出するように構成された断面プロファイルを有する。これは、センタープレート20の遠位表面、すなわち第1のリファイニングディスク11から離れて面する表面が、第1のリファイニングディスク11上のリファイニングセグメント13の遠位表面と少なくとも同じだけ第1のリファイニングディスク11の表面から離れて位置することを意味する。特定の実施形態では、センタープレート20は、該センタープレート20の先端面と対向する第2のリファイニングディスク12の表面との間の距離が、動作中に表面が互いに接触する危険性がなくできるだけ小さいように、すなわち、距離が上述した所定の最小安全値に近づくように適合された断面プロファイルを有する。より具体的には、センタープレート20の遠位面と対向する第2のリファイニングディスク12の表面との間の距離は、セグメントの寿命中のセグメントの予想されるまたは許容される摩耗が考慮されるように選択される。(摩耗のために、セグメントの厚さは、ダブルディスクリファイナの動作中に連続的に減少され、ディスク間のリファイナギャップを一定に保つことによって、センタープレートの遠位表面と対向する第2のリファイニングディスクの表面との間の距離は、結果として動作中に連続的に減少される)通常、いくつかの製造公差も許容され、また、それらの回転中にディスクのいくらかのぶれも許容される。これらの効果を考慮して、センタープレート20の先端面と対向する第2のリファイニングディスク12の表面との距離を、例えば5~15mm、より好ましくは8~12mmとすることができる。
【0018】
図3(a)は、本開示の実施の形態に係るダブルディスクリファイナ用のセンタープレート20を設けた供給端部第1のリファイニングディスク11の概略図であり、
図3(b)は、
図3(a)のリファイニングディスクの斜視図である。本実施の形態において、リファイニングディスク11は、リファイニングディスク11の周囲に少なくとも1つのリファイニングセグメント13を設け、リファイニングディスク11の中央にセンタープレート20を設け、センタープレートとリファイニングセグメント13との間に入口開口部16を設けたものである。この実施形態では、センタープレート20には、センタープレート20上に半径方向に延び、センタープレート20の最大高さに対応する高さを有する細長い突起またはウイング21が設けられている。一実施形態では、ウイング21は、ウイング21がリグノセルロース材料のための障壁を構成し、この障壁が、リグノセルロース材料が入口開口部16の間を移動するのを防止するように、入口開口部16の間に延在する。
【0019】
図4aは、
図3aのリファイニングディスクのA-A線に沿った断面図であり、リファイニングディスク11、12を示し、リファイニングディスク11、12には、それらの間にリファイニングゾーン15を画定する、それぞれのリファイニングセグメント13、14が設けられている。センタープレート20は、リファイナの供給端部に配置された第1のリファイニングディスク11の中心部に配置されており、入口開口部16は、センタープレート20と第1のリファイニングディスク11のリファイニングセグメント13との間に配置されている。センタープレート20の表面と第2のリファイニングディスク12の表面との間の距離は、動作中に表面が互いに接触する危険性がなく、できるだけ小さい、すなわち、距離は、リファイナの所定の最小安全値に近づく。
図4(b)は、
図4(a)の一部をクローズアップしたものであり、
図4(c)は、
図3(a)のリファイニングディスクのB-B線に沿った断面図である。すなわち、供給端ディスクの入口開口部は、この図からは見えない。
【0020】
要約すると、
図2~
図4に示されている本実施形態のセンタープレートは、逆回転するリファイニングディスクの中心間に閉鎖容積を提供し、これはリファイニングディスクの周囲に向かう供給原料材料の供給を集中させる。したがって、本発明によるセンタープレートは、入ってくる材料をリファイニングセグメントにより良く分配し、それによって材料供給における変動および乱流を低減する。この結果、より高い生産速度、より低い比エネルギー消費および、リファイナを通過する、低減された蒸気流をもたらす。
【0021】
本開示によるセンタープレートの全ての実施形態は、既知のダブルディスクパルプリファイナの供給側ディスクに取り付けることができる。環状ディスクを有するこのようなダブルディスクリファイナの一例は、
図1を参照して上記に概略的に記載されている。しかしながら、円錐形または球形の嵌合面を有するディスクを備えたリファイナのような他の構成も、本開示によるセンタープレートに関連して使用することが可能である。
【0022】
上述した実施形態は、単に例として与えられたものであり、提案された技術がこれに限定されるものではないことを理解すべきである。添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正、組み合わせ、および変更を実施形態に行うことができることが、当業者には理解されよう。特に、異なる実施形態における異なる部分解決策は、技術的に可能な場合、他の構成で組み合わせることができる。