IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テラダイン、 インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-試験システム及び方法 図1
  • 特許-試験システム及び方法 図2
  • 特許-試験システム及び方法 図3
  • 特許-試験システム及び方法 図4
  • 特許-試験システム及び方法 図5
  • 特許-試験システム及び方法 図6
  • 特許-試験システム及び方法 図7
  • 特許-試験システム及び方法 図8
  • 特許-試験システム及び方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】試験システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20240912BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240912BHJP
【FI】
G01R31/28 P
G01R31/26 Z
G01R31/26 G
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021552901
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020018784
(87)【国際公開番号】W WO2020197664
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】16/367,675
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502391840
【氏名又は名称】テラダイン、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】メシエ、 ジェイソン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィン、 ブライス エム.
(72)【発明者】
【氏名】デミッコ、 アーネスト
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-051641(JP,A)
【文献】特開2000-194315(JP,A)
【文献】特開2008-222770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0181736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験システムであって、
電圧又は電流を試験チャネルに印加する電力増幅器回路と、
第一のコンプライアンス曲線及び第二のコンプライアンス曲線の中からコンプライアンス曲線を選択する1つ又は複数の処理装置と
を含み、
前記コンプライアンス曲線は、前記電圧の出力を前記電流の出力に関係付け、
前記第一のコンプライアンス曲線によれば電流が増加するにつれて電圧が増加し、
前記第二のコンプライアンス曲線によれば電流が減少するにつれて電圧が増加し、
前記1つ又は複数の処理装置は、選択されたコンプライアンス曲線に適合するように前記電力増幅器回路を制御し、
前記選択されたコンプライアンス曲線は、前記第一のコンプライアンス曲線又は前記第二のコンプライアンス曲線である、試験システム。
【請求項2】
前記電圧は直流(DC)電圧であり、前記電流はDC電流である、請求項1の試験システム。
【請求項3】
補償ループをさらに含み、
前記補償ループは、
前記試験チャネル上の前記電圧を検知する電圧センサと、
前記試験チャネル上の前記電流を検知する電流センサと、
前記試験チャネル上で検知された前記電圧及び前記試験チャネル上で検知された前記電流に基づいて前記電力増幅器回路を制御する前記1つ又は複数の処理装置と
を含む、請求項1の試験システム。
【請求項4】
前記試験チャネル上で検知された前記電流が所定の最大値を超えた場合に、前記試験チャネル上の前記電流を制限する電流クランプをさらに含む、請求項3の試験システム。
【請求項5】
前記コンプライアンス曲線は、前記試験チャネルが散逸させ得る電力の量に基づく、請求項1の試験システム。
【請求項6】
モリが前記第一のコンプライアンス曲線と、前記第二のコンプライアンス曲線又は前記第二のコンプライアンス曲線を生成するための情報を記憶る、請求項1の試験システム。
【請求項7】
前記第一のコンプライアンス曲線又は前記第二のコンプライアンス曲線の少なくとも一方は階段関数を含む、請求項の試験システム。
【請求項8】
前記第一のコンプライアンス曲線は階段関数を含み、
前記第二のコンプライアンス曲線は階段関数を含む、請求項6の試験システム。
【請求項9】
前記1つ又は複数の処理装置は、前記電力増幅器回路を制御するための比例-積分-導関数コントローラを含むコントローラを実装するように構成される、請求項1の試験システム。
【請求項10】
前記コンプライアンス曲線に基づく関数をユーザに対して表示するための表示装置と、
前記関数に基づいて前記電圧をプログラムするための入力装置と
をさらに含む、請求項1の試験システム。
【請求項11】
前記関数は前記コンプライアンス曲線である、請求項10の試験システム。
【請求項12】
前記関数は、前記コンプライアンス曲線の境界内に含まれる階段関数である、請求項10の試験システム。
【請求項13】
選択されたコンプライアンス曲線に適合するように前記電力増幅器回路を制御することは、電流を設定することが含み、
前記電流を設定することは、前記試験チャネルが散逸させ得る電力の量、最大電圧、及び前記試験システムにプログラムされている電圧に基づき、
前記電流を設定することは、前記試験システムにプログラムされている電圧が前記最大電圧とオーバヘッド電圧との差より低いか、またはそれと等しいことを条件とする、請求項1の試験システム。
【請求項14】
前記電力増幅器回路は、基準電圧に接続された前記試験チャネルのための出力段と帰線とを含み、
前記基準電圧は、前記帰線の電圧より高く、
前記帰線の電圧は非ゼロである、請求項1の試験システム。
【請求項15】
記電力増幅器回路を前記第一のコンプライアンス曲線に適合するように制御することは、前記試験システムにプログラムされている前記電圧に基づいて前記電流を設定することを含み、
前記第一のコンプライアンス曲線は、前記第二のコンプライアンス曲線によって可能となる試験チャネル密度より高い試験チャネル密度を可能にするように構成される、請求項1の試験システム。
【請求項16】
前記電力増幅器回路は出力段を含み、
前記出力段は、前記出力段の電力散逸に対応する物理的サイズを有し、
前記第二のコンプライアンス曲線を使用することによる被試験装置への電力出力が、前記第一のコンプライアンス曲線を使用することによる電力出力より大きくなる結果、前記第一のコンプライアンス曲線を使用することによる前記出力段の物理的サイズの縮小が可能となる、請求項15の試験システム。
【請求項17】
前記電力増幅器回路は、第一の基準電圧及び第二の基準電圧に接続された前記試験チャネルのための出力段を含み、
前記第一の基準電圧は前記第二の基準電圧より高く、
前記試験システムは、前記試験チャネル上の前記電圧を検知する電圧センサを含み、
前記1つ又は複数の処理装置は、前記試験チャネル上の前記電圧に基づいて前記第一の基準電圧又は前記第二の基準電圧の少なくとも一方を制御して、前記試験チャネルへの電力出力を制御するように構成される、請求項1の試験システム。
【請求項18】
前記電力増幅器回路は、第一の基準電圧及び第二の基準電圧に接続された前記試験チャネルのための出力段を含み、
前記第一の基準電圧は前記第二の基準電圧より高く、
前記第一の基準電圧又は前記第二の基準電圧の少なくとも一方はプログラム可能である、請求項1の試験システム。
【請求項19】
前記第一のコンプライアンス曲線又は前記第二のコンプライアンス曲線を生成するための関数を記憶するメモリをさらに含む、請求項1の試験システム。
【請求項20】
前記第一のコンプライアンス曲線は、電流が一つの点まで電圧の上昇と共に増加する曲線を含み、
前記一つの点以降、前記電流は、一つの電圧上昇範囲にわたって一定のままである、
請求項1の試験システム。
【請求項21】
前記電圧は交流(AC)電圧であり、前記電流はAC電流である、請求項1の試験システム。
【請求項22】
方法であって、
試験システムへの入力として電圧を受け取るステップと、
前記電圧に基づいてコンプライアンス曲線を選択するステップであって、前記コンプライアンス曲線によれば電圧出力の絶対値が増大するにつれて最大電流出力が増加する、ステップと、
前記電圧の入力と前記コンプライアンス曲線とに基づいて電流出力を生成するステップと、
前記電圧及び前記電流を前記試験システムの試験チャネルに出力するステップと
を含む、方法。
【請求項23】
試験システムであって、
被試験装置(DUT)との接続の一部である試験チャネルに電圧又は電流を印加する電力増幅器回路を含む出力段と、
前記試験チャネル上の前記電流を制限する電流クランプと、
第一のコンプライアンス曲線及び第二のコンプライアンス曲線の中からコンプライアンス曲線を選択し、前記DUTの電圧に基づいて前記電流クランプを動的に制御するように構成された1つ又は複数の処理装置と
を含み、
前記コンプライアンス曲線は、前記電圧の出力を前記電流の出力に関係付け、
前記第一のコンプライアンス曲線によれば電流が増加するにつれて電圧が増加し、
前記第二のコンプライアンス曲線によれば電流が減少するにつれて電圧が増加する、試験システム。
【請求項24】
前記出力段を通じた電力散逸は、前記DUTを通る電流と、前記出力段の電圧と前記DUTの電圧との差との積に基づく、請求項23の試験システム。
【請求項25】
前記電流を動的に制御することは、前記試験チャネル上の前記電流の限界を制御することを含む、請求項23の試験システム。
【請求項26】
前記電流クランプを制御することは前記電流クランプをプログラムすることを含む、請求項23の試験システム。
【請求項27】
前記1つ又は複数の処理装置は、前記電力増幅器回路を前記選択されたコンプライアンス曲線に適合するように制御するべく構成される、請求項23の試験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、試験チャネル上の電流が試験チャネル上の電圧の上昇と共に増大するコンプライアンス曲線をサポートする試験システムの実装例を説明する。
【背景技術】
【0002】
試験システムは、マイクロプロセッサやメモリチップ等の電子装置の動作を試験するように構成される。試験には、信号を装置に送信することと、装置がこれらの信号にどのように反応するかをその応答に基づいて特定することが含まれていてよい。例えば、試験には、電圧及び電流を試験チャネルへと印加することと、印加された電圧及び電流に基づく装置からの信号を受信することを含んでいてよい。装置の反応は、装置が試験に合格したか不合格となったかを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
例示的な試験システムは、電圧又は電流を試験チャネルに印加する電力増幅器回路構成と、コンプライアンス曲線に適合させるために電力増幅器回路構成を制御するように構成された1つ又は複数の処理装置と、を含む。コンプライアンス曲線は、電圧の出力を電流の出力に関係付ける。コンプライアンス曲線によれば、最大電流出力は電圧出力の絶対値が増大すると増加する。例示的な試験システムは、単独又は組合せの何れかにより以下の特徴の1つ又は複数を含んでいてよい。
【0004】
電圧は直流(DC)電圧であってよく、電流はDC電流であってよい。例示的な試験システムは補償ループを含んでいてよい。補償ループは、試験チャネル上の電圧を検知する電圧センサと、試験チャネル上の電流を検知する電流センサと、試験チャネル上で検知された電圧及び試験チャネル上で検知された電流に基づいて電力増幅器回路構成を制御する1つ又は複数の処理装置と、を含んでいてよい。例示的な試験システムは、試験チャネル上で検知された電流が所定の最大値を超えた場合に、試験チャネル上の電流を制限する電流クランプを含んでいてよい。
【0005】
コンプライアンス曲線は、試験チャネルが散逸させることのできる電力の量に基づいていてよい。コンプライアンス曲線は第一のコンプライアンス曲線であり、メモリは電圧の出力を電流の出力に関係付ける第二のコンプライアンス曲線又は第二のコンプライアンス曲線を生成するための情報を記憶する。第二のコンプライアンス曲線によれば、最大電流出力は電圧出力の絶対値が増大すると減少する。1つ又は複数の処理装置は、第一のコンプライアンス曲線又は第二のコンプライアンス曲線の一方に基づいて電力増幅器回路構成を制御するように構成される。第一のコンプライアンス曲線又は第二のコンプライアンス曲線の少なくとも一方は階段関数を含む。第一のコンプライアンス曲線は階段関数を含んでいてよく、第二のコンプライアンス曲線は階段関数を含む。
【0006】
1つ又は複数の処理装置は、電力増幅器回路構成を制御するための比例-積分-導関数コントローラを含むコントローラを実装するように構成されてよい。例示的な試験システムは、コンプライアンス曲線に基づく関数をユーザに対して表示するための表示装置と、関数に基づいて電圧をプログラムするための入力装置を含んでいてよい。関数は、コンプライアンス曲線であってよい。関数は、コンプライアンス曲線の跳ね上がりと共に下落する階段関数であってよい。
【0007】
コンプライアンス曲線に適合させるために電力増幅器回路構成を制御することには、電流を設定することが含まれていてよい。電流を設定することは、試験チャネルが散逸させることのできる電力の量、最大電圧、及び試験システムにプログラムされている電圧に基づいていてよい。電流を設定することは、試験システムにプログラムされている電圧が最大電圧とオーバヘッド電圧(an overhead voltage)との間の差より低いか、それと等しいことを条件としていてよい。
【0008】
電力増幅器回路構成は、基準電圧に接続された試験チャネルのための出力段と帰線を含んでいてよい。基準電圧は、帰線の電圧より高くてよい。帰線の電圧は非ゼロであってよい。コンプライアンス曲線は第一のコンプライアンス曲線であってよく、第一のコンプライアンス曲線に適合させるために電力増幅器回路構成を制御することには、試験システムにプログラムされている電圧に基づいて電流を設定することが含まれていてよい。第一のコンプライアンス曲線は、それによれば電圧出力が増大すると最大電流出力が減少する第二のコンプライアンス曲線によって可能となる試験チャネル密度より高い試験チャネル密度を可能にしてよい。電力増幅器回路構成は出力段を含んでいてよい。出力段は、出力段の電力散逸に対応する物理的サイズを有していてよい。第二のコンプライアンス曲線を使用することにより、被試験装置(DUT: device under test)への電力出力は第一のコンプライアンス曲線を使用することによる電力出力より大きくなり、それによって第一のコンプライアンス曲線を使用することにより出力段の物理的サイズの縮小が可能となる。
【0009】
電力増幅器回路構成は、第一の基準電圧及び第二の基準電圧に接続された試験チャネルのための出力段を含んでいてよい。第一の基準電圧は第二の基準電圧より高くてよい。例示的な試験システムは、試験チャネル上の電圧を検知するための電圧センサを含んでいてよい。1つ又は複数の処理装置は、試験チャネル上の電圧に基づいて第一の基準電圧又は第二の基準電圧の少なくとも一方を制御して、試験チャネルへの電力出力を制御するように構成されてよい。第一の基準電圧又は第二の基準電圧の少なくとも一方はプログラム可能である。
【0010】
例示的な試験システムは、コンプライアンス曲線又は第二のコンプライアンス曲線を生成するための関数を記憶するメモリを含んでいてよい。第一のコンプライアンス曲線は、電流がある点まで電圧の上昇と共に増加する曲線を含んでいてよい。その点以降は、電流はある電圧上昇範囲にわたり一定のままであってよい。電圧は、交流(AC)電圧であってよく、電流はAC電流であってよい。
【0011】
例示的な方法は、試験システムへの入力として電圧を受け取るステップと、この電圧に基づいてコンプライアンス曲線を選択するステップであって、コンプライアンス曲線によれば最大電流出力は電圧出力の絶対値が増大すると増加するようなステップと、電圧入力とコンプライアンス曲線に基づいて電流を生成するステップと、電圧及び電流を試験システムの試験チャネルに出力するステップと、を含む。
【0012】
例示的な試験システムは、電圧又は電流をDUTとの接続の一部である試験チャネルに印加する電力増幅器回路構成を有する出力段と、試験チャネル上の電流を制限するための電流クランプと、DUTの電圧に基づいて電流クランプを動的に制御するように構成された1つ又は複数の処理装置と、を含む。この例示的な試験システムは、単独又は組合せにより以下の特徴の1つ又は複数を含んでいてよい。
【0013】
出力段を通じた電力散逸は、DUTを通る電流と出力段の電圧とDUTの電圧との差の積に基づく。電流を動的に制御することには、試験チャネル上の電流の限界を制御することが含まれていてよい。電流クランプを制御することは、電流クランプをプログラムすることを含んでいてよい。1つ又は複数の処理装置は、コンプライアンス曲線に適合するために電力増幅器回路構成を制御するように構成されてよい。コンプライアンス曲線は、電圧の出力を電流の出力に関係付けてよい。コンプライアンス曲線によれば、最大電流出力は、電圧出力の絶対値が増大すると増加する。
【0014】
この概要の項を含む本明細書に記載されている特徴の何れか2つ以上を組み合わせて、本明細書に具体的に記されていない実装を形成してもよい。
【0015】
本明細書に記載されている試験システム及びプロセスの少なくとも一部は、1つ又は複数の処理装置で、1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体に記憶された命令を実行することによって構成又は制御されてよい。非一時的機械可読記憶媒体の例には、リードオンリメモリ、光ディスクドライブ、メモリディスクドライブ、及びランダムアクセスメモリが含まれる。本明細書に記載されている試験システム及びプロセスの少なくとも一部は、1つ又は複数の処理装置及び、各種の制御動作を実行するために1つ又は複数の処理装置により実行可能である命令を記憶するメモリからなるコンピューティングシステムを用いて構成又は制御されてよい。
【0016】
1つ又は複数の実装の詳細は、添付の図面と以下の説明に記載されている。その他の特徴及び利点は、説明と図面から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】例示的な試験システムのブロック図である。
図2】例示的な従来のコンプライアンス曲線の提示されたバージョンと実際のバージョンの両方を示すグラフである。
図3】例示的な従来のコンプライアンス曲線の提示されたバージョンを示すグラフである。
図4】同じ試験チャネルの同じ出力段のための従来のコンプライアンス曲線及び逆コンプライアンス曲線を示すグラフである。
図5】例示的な逆コンプライアンス曲線の提示されたバージョンと実際のバージョンの両方を示すグラフでいる。
図6】例示的な逆コンプライアンス曲線の提示されたバージョンと実際のバージョンの両方を示すグラフである。
図7】電流プラトを含む例示的な逆コンプライアンス曲線を示すグラフである。
図8】試験チャネルの例示的な出力段の例示的なコンポーネントを示すブロック図である。
図9】1つ又は複数のコンプライアンス曲線を使って電圧及び電流を発生させる例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
各種の図面中の同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0019】
幾つかの例において、コンプライアンス曲線は被試験装置(DUT)での試験チャネルの電力散逸を明示する。幾つかの場合に、試験チャネルはその上で信号が試験システムからDUTに送信され、その上で信号がDUTから受信される物理的媒体(複数の場合もある)を含む。これらの場合に、試験チャネルは試験システムとDUTとの間の電気的及び/又は光学的接続の一部である。
【0020】
例示的試験チャネルは各々、出力段を有し、これは入力電圧に対して一定の量の電力を散逸させる。幾つかの実装において、入力電圧はプログラム可能であってよく、この場合、出力段の電力散逸の量は電圧の変化に基づいて変化する。各試験チャネルは、ある電圧について試験チャネルを通過できる電流を明示するコンプライアンス曲線によって管理されてよい。例えば、ユーザは試験チャネルに提供すべき電圧を明示してよい。その電圧について、コンプライアンス曲線は、試験チャネルがサポートできる電流の1つ又は複数の値、例えばその範囲を明示する。幾つかの従来のコンプライアンス曲線において、電圧が上昇すると電流は減少する。逆コンプライアンス曲線においては、電圧の絶対値が増大すると、電流も増加する。本明細書では、逆コンプライアンス曲線と従来のコンプライアンス曲線の両方をサポートする試験システムの例示的な実装を説明する。試験システムの例示的なコンポーネントが図1に示されており、それについて以下に説明する。
【0021】
幾つかの実装において、試験システムの各試験チャネルは出力段を含み、これは電圧及び電流を試験チャネルに印加する電力増幅器回路構成を含み、これは本明細書において「電力増幅器」とも呼ばれる。1つ又は複数の処理装置は、DUTに電力を供給するためにコンプライアンス曲線に基づいて電力増幅器回路構成を制御するように構成される。前述のように、コンプライアンス曲線は、試験チャネル上の電圧の出力を電流の出力に関連付け、これらは例えばDUTに送達される電圧と電流である。ある例において、コンプライアンス曲線は逆コンプライアンス曲線であり、この場合、最大電流出力は電圧出力の絶対値が増大すると増加する。しかしながら、試験システムはまた、最大電流出力が電圧出力の増大と共に減少する従来のコンプライアンス曲線もサポートしてよい。複数の試験チャネル、例えば各試験チャネルは、電力増幅器回路構成のあるインスタンス、試験チャネルに専用の1つ又は複数の処理装置、又は電力増幅器回路構成のインスタンス及び1つ又は複数の専用処理装置を含んでいてよい。
【0022】
コンプライアンス曲線は、動作グラフの1つ又は複数の象限において、試験チャネル内の電力散逸を規定できる。例えば、コンプライアンス曲線はグラフの最大4つの象限において、すなわち正の電圧と正の電流について、正の電圧と負の電流について、負の電圧と正の電流について、又は負の電圧と負の電流について、試験チャネルの電力散逸を規定してよい。したがって、本明細書で提示される例は一般に1つ又は2つの象限に限定されているが、本明細書に記載の特徴は何れの数の象限における試験チャネルの電力散逸を規定するコンプライアンス曲線にも使用されてよい。
【0023】
図2は、第一の象限26における、すなわち正の電圧(+V)と正の電流(+I)での試験チャネルの電力散逸、例えばDUTでの電力散逸を規定する従来のコンプライアンス曲線25の例を示す。図2に示されるように、この例では、第一の象限26において電圧の大きさが増大すると電流の大きさが減少する。各試験チャネルの出力段は、ある量の電力を散逸させる。DUTへの電力は、出力段の電力散逸の範囲内である適当な範囲の電流及び電圧を試験チャネルに印加することによって出力できる。幾つかの例において、試験チャネル内で電力が、例えばアースへの電圧レールのショートの結果としてコンプライアンス曲線により規定される以上に散逸されると、試験チャネルが正しく動作しなくなり、物理的に損傷し、又はその両方となるかもしれない。
【0024】
幾つかの場合に、コンプライアンス曲線は、試験チャネルの動作範囲全体ではなく、ユーザに提示される試験チャネルの動作範囲だけを含む。ユーザは、試験チャネルの安全で正確な動作範囲を得るために、提示されたコンプライアンス曲線から電圧と電流を選択してよい。しかしながら、試験チャネルの実際のコンプライアンス曲線は、ユーザに提示されたコンプライアンス曲線の範囲を超える。例えば、図2では、提示されるコンプライアンス曲線25は階段関数であり、これは実際のコンプライアンス曲線28の境界内にある。実際のコンプライアンス曲線28は非線形であり、図に示される提示されたコンプライアンス曲線25の全体を包含し、それらの範囲を超える。提示されたコンプライアンス曲線は実際のコンプライアンス曲線28の境界に追従せず、したがって、試験チャネルがサポートできるものを超えた電力レベルで試験チャネルが電力を散逸させるリスクが低減する。本明細書において、「コンプライアンス曲線」という用語は、28のような実際のコンプライアンス曲線又は25のような提示されたコンプライアンス曲線の何れを指してもよい。
【0025】
出力段での電力散逸とは対照的に、DUTに送達される瞬時電力はコンプライアンス曲線内の各点での電圧と電流の積により規定される。図2において、この電力はコンプライアンス曲線内の選択された電圧と電流の積により規定される。例示的なコンプライアンス曲線25では、DUTへのこの電力は典型的に、点22、23、及び24においてほぼ同じである。すなわち、電圧が上昇すると電流は減少するが、2つの積は同じままである。例えば、図8は、例示的な出力段のコンポーネントを示す。後でより詳しく説明する図8において、出力段内の電力散逸は図に示される以下の電圧及び電流と等しいか、又は比例する(“~”)。
電力散逸~((V+)-(Vd))(Id)
式中、VdはDUTの電圧であり、IdはDUTにより引き出される電流であり、V+は電圧レギュレータの電圧出力である。図8において、DUTへの瞬時電力は図中に示される以下の電圧と電流と等しいか、又は比例する。
DUTへの電力~(Vd)(Id)
幾つかの例において、従来及び逆コンプライアンス曲線はVdとIdを関係付ける。
【0026】
図3は、他の例の従来のコンプライアンス曲線29を示し、2つの象限、すなわち正の電圧(+V)と正の電流(+I)及び負の電圧(-V)と正の電流(+I)における試験チャネルの電力散逸を規定している。図に示されるように、この例では、第一の象限30では、電圧の大きさが増大すると電流の大きさが減少する。この例では、第二の象限31において、電圧が上昇しても電流は一定のままであり、増加しない。
【0027】
前述のように、逆コンプライアンス曲線では、電圧の絶対値が増大すると、電流が増加する。しかしながら、試験チャネルの出力段の大きさを一定とすると、その電力散逸は従来の、及び逆コンプライアンス曲線の全部又は一部について同じままである。例えば、図4は、試験チャネルの出力段の大きさが同じで一定である場合の、逆コンプライアンス曲線32の例と従来のコンプライアンス曲線33を示す。従来のコンプライアンス曲線33では、セグメントエンベロープ36について10ワット(W)の電力散逸が発生し、すなわち、この例では(10V)(1A)イコール10Wである。逆コンプライアンス曲線32では、これは同じ試験チャネルによってサポートされるが、その同じ10Wの電力散逸はセグメントエンベロープ37で発生し、すなわち、この例では(50V-40V)(1A)イコール10Wである。そのため、電力散逸は、従来の、及び逆コンプライアンス曲線の異なる部分において同じである。しかしながら、従来のコンプライアンス曲線上の点27ではDUTに送達される瞬時電力は10Wであり、すなわち(10V)(1A)イコール10Wである。これに対して、逆コンプライアンス曲線上の点34ではDUTに送達される瞬時電力は50Wであり、すなわち(50V)(1A)イコール50Wである。そのため、逆コンプライアンスを使用することによって、試験チャネルの同じ出力段を使用して、より多くの電力を提供することができる。換言すれば、その出力段のサイズを大きくすることなく、より多くの電力を提供することができる。しかしながら、試験チャネルは、従来のコンプライアンス曲線及び逆コンプライアンス曲線の両方を使用する動作をサポートしてよい。
【0028】
幾つかの場合に、逆コンプライアンス曲線は、試験チャネルの動作範囲全体ではなく、ユーザに提示される試験チャネルの動作範囲のみを含んでいる。ユーザは、試験チャネルの安全で正確な動作を確実にするために、提示された逆コンプライアンス曲線から電圧と電流を選択してよい。しかしながら、試験チャネルの実際の逆コンプライアンス曲線は、ユーザに対して示された提示される逆コンプライアンス曲線の範囲を超える。例えば、図5において、提示される逆コンプライアンス曲線38は実際のコンプライアンス曲線39の境界内にある階段関数である。実際の逆コンプライアンス曲線39は、図に示されるように、提示される逆コンプライアンス曲線38の全部を包含し、その範囲を超える。提示される逆コンプライアンス曲線38は実際の逆コンプライアンス曲線39の境界に追従せず、したがって、試験チャネルによりサポートされるものを超える電力レベルで試験チャネルが動作するリスクが低減される。本明細書において、「逆コンプライアンス曲線」という用語は、39のような実際の逆コンプライアンス曲線か38のような提示される逆コンプライアンス曲線の何れを指してもよい。
【0029】
図6は、他の例の2つの逆コンプライアンス曲線40及び41を示し、これらは2つの象限、すなわち正の電圧(+V)と正の電流(+I)43及び正の電圧(+V)と負の電流(-I)44における2つの試験チャネルの動作範囲を規定する。この例では、第四の象限44において、電圧の絶対値が増大すると(+V)、電流(-I)が最大値まで増加する。その値の後に電流は急速にゼロになる。第四の象限44において、より少ない負の電流は電流の増加を意味する。例えば、-500ミリアンペア(mA)は-2アンペア(A)より電流が増加している。図6はまた、実際のコンプライアンス曲線40についての提示されるコンプライアンス曲線46を破線で、また、実際のコンプライアンス曲線41についての提示されるコンプライアンス曲線47を破線で示している。
【0030】
図7は、他の例の逆コンプライアンス曲線48を示し、これは第一の象限49において試験チャネルの動作範囲を規定する。この例では、電流は電圧の上昇と共に点51まで非線形に増加する。ここで、電流はある電圧上昇範囲については平坦、すなわち一定のままであり、その後、急速にゼロに低下する。平坦域51とピーク53との間の領域はオーバヘッド電圧(VOH)に対応する。ある例において、平坦域の電流レベルをサポートするためのオーバヘッド電圧は、コンプライアンス曲線が0アンペア(A)に低下する箇所(単位はボルトであり、平坦域の右)と平坦域の右側(単位はボルト)との差である。電流が増加すると必要なオーバヘッド電圧も上昇し、これは湾曲したコンプライアンス曲線のピークをなすものである。ある例において、オーバヘッド電圧は、試験システムの電圧レールによりサポートされるが、ユーザが試験チャネルの動作のために選択できる電圧より高いある固定電圧である電圧を含む。幾つかの例において、オーバヘッド電圧は5ボルト(V)、10V、15V、20V等である。オーバヘッド電圧は試験システムにプログラムされてよく、幾つかのシステムでは変更されてもよい。ユーザには、図7のそれと同様であるが、平坦域を示し、ピークを示さないコンプライアンス曲線が提示されてよい。
【0031】
再び図1を参照すると、この図は本明細書に記載されているタイプの従来のコンプライアンス曲線及び逆コンプライアンス曲線の両方をサポートしてよい例示的な自動試験機器(ATE: automatic test equipment)10のコンポーネントを示している。しかしながら、とりわけ、従来のコンプライアンス曲線と逆コンプライアンス曲線は、図1のATEとの使用又は本明細書に記載のDUTとの使用に限定されず、むしろ何れの適当な技術的内容においても使用されてよい。図1において、破線は装置間の考え得る信号経路を示している。
【0032】
ATE 10は、試験ヘッド11と試験コンピュータ12を含む。試験ヘッド11は、それに対して試験が行われるDUT(図示せず)とインタフェースする。試験コンピュータ12は試験ヘッド11と通信して試験を制御する。例えば、試験コンピュータは試験ヘッド上の試験器具に試験プログラムセットをダウンロードしてよく、するとそれが試験プログラムセットを実行して、試験ヘッドと通信するDUTの試験を行う。コンピュータ12はまた、従来のコンプライアンス曲線及び逆コンプライアンス曲線を、例えば図表によりユーザに提示し、ユーザに対し、ATE 10内の試験チャネルの能力を示す。
【0033】
ATE 10は試験機13A~13Nを含む。この例において、試験機のうちの1つ又は複数は、試験チャネルに直流(DC)電圧を印加し、DC電流を印加し、印加されたDC電圧及び印加されたDC電流に基づく装置からの信号を受信するように構成されたVI(電圧-電流)試験機である。しかしながら、その他の種類の試験機がVI試験機の代わりに、又はそれに加えて使用されてもよい。例えば、1キロヘルツ(KHZ)より高い周波数を有する交流(AC)電圧及び/又はAC電流信号を生成するように構成された試験機が使用されてもよい。各試験機は、DUTを試験するための試験信号を出力し、DUTからの信号を受信するように構成されてよい。受信信号には、試験信号に基づく応答信号及び/又は試験信号によって促されたものではない(例えば、それに応答したものではない)、DUTから発せられる信号が含まれていてよい。
【0034】
信号は、複数の試験チャネル上でDUTに送信され、及びDUTから受信される。幾つかの例において、試験チャネルは物理的伝送媒体(複数の場合もある)を含んでいてよく、その上で信号が試験機からDUTに送信され、その上で信号がDUTから受信される。物理的伝送媒体としては、導電体のみか光導体、無線伝送媒体との組合せ、又は光導体と無線伝送媒体の両方が含まれていてよいが、これらに限定されない。幾つかの例において、試験チャネルは信号が1つ又は複数の物理的伝送媒体上で送信される周波数範囲を含んでいてよい。
【0035】
幾つかの実装において、ATE 10の異なる試験チャネルがすべて同じコンプライアンス曲線をサポートしてよく、又はATE 10の異なる試験チャネルは異なるコンプライアンス曲線をサポートしてもよい。例えば、異なる試験チャネルの出力段は異なる量の電力を散逸させてよく、又は異なる試験チャネルの出力段は同じ量の電力を散逸させてよい。幾つかの実装において、幾つかの試験チャネルは従来のコンプライアンス曲線のみをサポートしてよく、幾つかの試験チャネルは逆コンプライアンス曲線のみをサポートしてよく、幾つかの試験チャネルは従来のコンプライアンス曲線と逆コンプライアンス曲線の両方をサポートしてよく、又はすべての試験チャネルが従来のコンプライアンス曲線と逆コンプライアンス曲線の両方をサポートしてもよい。
【0036】
ATE 10は、試験機の試験チャネル15をDIB 16に接続する接続インタフェース14を含む。接続インタフェース14は、コネクタ20又は、試験機とDIB 16との間の信号をルーティングするためのその他の装置を含んでいてよい。例えば、接続インタフェースは、1つ又は複数の回路板又は、このようなコネクタがその上に実装されるその他の基板を含んでいてよい。機器の試験チャネルを画定する導体は、接続インタフェースとDIBを通じてルーティングされてよい。
【0037】
図1の例において、DIB 16は試験ヘッド11に電気的及び機械的に接続される。DIBはサイト21を含み、これらはピン、導電性トレース、又はその他の電気的及び機械的接続点を含んでいてよく、そこにDUTが接続されてよい。試験信号、応答信号、及びその他の信号は、DUTと試験機との間でサイト上の試験チャネルを介して受け渡される。DIB 16はまた、試験機同士間で試験をルーティングするためのコネクタ、導電性トレース、及び回路構成、サイト21に接続されたDUT、並びにその他の回路構成も含む。
【0038】
図8は、試験機13Aの試験チャネル等、例示的な試験チャネル60の出力段に含まれてよいコンポーネントの例を示している。図8に示されるように、試験チャネル60の出力段は電力増幅器回路構成61を含む。電力増幅器回路構成は、電圧と電流を試験チャネルの伝送媒体部分64に印加するように構成された電力増幅器を含んでいてよい。試験チャネルはまた、1つ又は複数のコンプライアンス曲線に適合するために電力増幅器回路構成を制御するように構成された1つ又は複数の処理装置65も含む。例えば、処理装置はコントローラ、例えば電力増幅器回路構成を制御する比例-積分-導関数(PID)コントローラを実装してよい。幾つかの実装において、コントローラはフィードフォワードコンポーネントを含んでいてよく、それによってこれは単なるPIDコントローラではなくなる。ある例において、コンプライアンス曲線は、図2、3、及び4に示されるもののような従来のコンプライアンス曲線又は図4~7に示されるもののような逆コンプライアンス曲線であってよい。コンピュータメモリは、処理装置65に内蔵されていても、外付けであってもよく、コンプライアンス曲線を記憶してよい。
【0039】
コンプライアンス曲線は、試験コンピュータの一部である表示スクリーン上でユーザに対して表示するための、(図1の)試験コンピュータ12によってメモリから読み出されてよい。幾つかの実装において、メモリは、コンプライアンス曲線を定義し、そこからコンプライアンス曲線が特定されてよい情報又は関数を記憶してよい。幾つかの実装において、ユーザはすると、コンプライアンス曲線上の試験機の動作範囲内にある、試験チャネル上で、例えばDUTに出力すべき電圧及び/又は電流を選択してよい。幾つかの実装において、ユーザはコンプライアンス曲線によりサポートされる電圧を選択又はプログラムしてよく、システムはその電圧に基づいて電流を自動的に特定してよい。また、幾つかの実装において、ユーザが電流を選択してよく、システムが電圧を自動的に特定してよい。処理装置はすると、電力増幅器、電圧レギュレータ67、又はそれらの両方を制御して、電圧及び電流を試験チャネルに印加してよい。使用されてよい処理装置のタイプの例を本明細書で説明する。
【0040】
すでに説明したように、図8において、出力段における電力散逸は図中に示される以下の電圧及び電流と等しいか、それに比例する。
電力散逸~((V+)-(Vd))(Id)
式中、VdはDUTの電圧であり、IdはDUTにより引き出される電流であり、V+は電圧レギュレータの電圧出力である。幾つかの実装において、V+はプログラミングを通じて変更でき、その結果、出力段の電力散逸が変化する。同じくすでに説明したように、図8において、DUTへの瞬時電力は、図中に示される以下の電圧及び電流と等しいか、それに比例する。
DUTへの電力~(Vd)(Id)
【0041】
幾つかの例において、電力増幅器回路構成を制御して、逆コンプライアンス曲線及び/又は従来のコンプライアンス曲線にしたがって試験チャネルへと、及びそれゆえDUTへと電圧及び電流を印加することには、処理装置が電流を特定することが含まれる。例えば、処理装置はチャネルがサポートできる量の電力、すなわち試験チャネル散逸、最大電圧、及びユーザによって試験システムにプログラムされている電圧に基づいて最大電流を特定してよい。例えば、処理装置はチャネルがサポートできる量の電力、すなわち試験チャネル散逸、最大電圧、及びユーザによって試験システムにプログラムされている電流に基づいて最大電圧を特定してよい。
【0042】
幾つかの例において、ユーザは電圧(Vprog)又は電流(I)の両方ではなく何れかをプログラムする。これらは一般にそれぞれ「印加電圧」及び「印加電流」と呼ばれる。DUTへの電気ローディングは、はっきりと印加されない可変値を特定する。DUTが単純な抵抗器であるような場合を考えるとこのことが明瞭にわかり、すなわちシステムは抵抗器(抵抗Rを有する)に電圧を印加することができ、システムはV/R(Vは抵抗器の電圧)によって規定される電流を得ることができ、又はシステムは電流を印加でき、IR(Iは抵抗器を通る電流)により規定される電圧を得ることができる。幾つかの例において、電圧と電流の両方を同時に印加することはできない。そのため、システムは電圧又は電流の何れかを印加し、印加されない可変値は、そのチャネルに存在する負荷によって特定される。ここでの他の検討事項は、印加されない可変値が可変値がプログラムされた値を超えないようにする、ユーザがプログラム可能な「クランプ」を有することができる点である。例えば、クランプすべき可変値の値は、プログラミングによって設定されてよい。例えば、電流クランプの値は、以下の関係に基づいて動的に設定されてよい。ある例において、電流クランプの値はDUTの電圧、すなわちVdに基づいて動的に設定されて、試験チャネル上の電流を限定してよい。
電力散逸~((V+)-(Vd))(Id)
電流クランプをDUTの電圧、すなわちVdに基づいて動的に制御することによって、逆コンプライアンス曲線の初期曲率が得られる。例えば、図4の例において、40V以前の曲率が得られる。従来のコンプライアンス曲線のみを使用するシステムでは、電流クランプが使用される場合、試験チャネル上の最大電流はVdに関係付けられず、又はそれに依存せず、むしろプリセットされる。
【0043】
印加されない可変値がクランプされた値を超えるような負荷である場合、VIチャネルは(処理装置を介して)状態を動的に変化させ、その代わりにそのクランプを超過しないように「印加されない」可変値を印加する。それゆえ、要約すれば、例示的なチャネルは電圧又は電流を印加することができるが、両方同時には印加しない。この例において、チャネルは、負荷に応じてどちらを印加するかを動的に切り替えるように設定できるが、これは依然として常に一度に一方しか印加せず、他方は負荷によって特定される。
【0044】
試験チャネル上の電力、電圧、及び電流に関する以下の等式中、「P」は試験チャネルの最大電力散逸(既知の数量)であり、VHS、すなわちV-high-sideは、試験システムがその電圧レールを通じて選択されたコンプライアンス曲線内で提供できる最大電圧である。
【0045】
以下の等式において、電圧が印加される場合、すべての可変値はI以外既知であり、Pは(VHS-Vprog)と(I)の積である。以下の等式中、電流が印加される場合、すべての可変値はVprog以外既知であり、Pは(VHS-Vprog)と(I)の積である。
P=(VHS-Vprog)×(I
【0046】
電流の正確な設定は、試験システムにプログラムされている電圧(Vprog)が最大電圧(VHS)とオーバヘッド電圧(VOH)との差より小さいか、それと等しいことが条件となってよい。すなわち、
prog≦VHS-VOH
progがVHS-VOHより大きい場合、試験チャネルは電圧レールにより提供される最大電圧付近で動作し、過電圧状態又は、過剰電圧での動作に関連するその他の問題が生じやすいかもしれない。
【0047】
処理装置は、電圧レギュレータ、電力増幅器回路構成、電圧センサ、及び電流センサを含む補償ループの一部であってもよい。例えば、電圧レギュレータはある範囲の電圧を電力増幅器61に出力するプログラム可能なレギュレータであってもよい。電力増幅器は、処理装置65によって制御されて、試験チャネルの伝送媒体部分64に、電圧レギュレータから提供される電圧から導き出される電流及び電圧を出力するように構成される。電圧センサ70は、試験チャネルの伝送媒体部分64上の電圧を検知して、検知した電圧のレベルを処理装置65に提供する。電流センサ71は、試験チャネルの伝送媒体部分64上で、この例では抵抗器72を通る電流を検知して、検知した電流のレベルを処理装置65に提供する。アナログ-デジタル変換器(図示せず)又はデジタイザは、検知した電圧及び検知した電流のデジタル値を生成する。処理装置は、検知された電圧及び検知された電流のデジタル値に基づいて、例えば検知された電圧と検知された電流の積を特定するとによって、試験チャネル上で発せられる電流の量を特定する。幾つかの実装において、アナログ補償器がデジタル補償器の代わりに使用されてもよい。アナログ補償器は、デジタルドメインの代わりにアナログドメインでの処理を実行する。
【0048】
試験チャネルの伝送媒体部分64上の、それゆえDUTを通じた電力散逸の量がその試験チャネルのためのコンプライアンス曲線、例えば従来のコンプライアンス曲線、逆コンプライアンス曲線又は従来のコンプライアンス曲線及び逆コンプライアンス曲線の両方の電力レベルを超える場合、処理装置は電流クランプ74を制御して、試験チャネル上の電流の量、及びしたがって電力を制限する。電流クランプは、供給されている電力が大きすぎると、電流をカットオフ又は減少させる高速ダイナミッククランプであってよい。例えば、クランプは数十マイクロ秒(μs)のオーダで動作してよい。クランプは、DIB/DUTの負荷の過渡的変動によって大きい電圧変化が生じ、それによって電圧及び電流がコンプライアンス曲線によって規定される過電力状態になった場合に、電流の引出しを制限する。この電流クランプは、例えば50μs内に出力段の電力散逸を持続可能な限度まで減少させ、数ミリ秒(ms)の時間枠内で解除されて、コンプライアンス曲線からユーザが規定する電圧が引き継がれるように構成されてよい。クランプは、電力増幅器内で処理装置の一部として実装されてよく、又はクランプは処理装置により制御可能なハードウェアであるか、それを含んでいてもよい。この例において、クランプは、前述のように、例えば1つ又は複数の処理装置によって、DUTの電圧(Vd)に基づいて動的に制御可能である。
【0049】
幾つかの実装において、電力増幅器回路構成を含む出力段は、基準電圧76(V+)及び帰線75(V-)に接続される。基準電圧は帰線の電圧より高く、試験チャネルの伝送媒体部分64上の電流及び電圧出力を生成するために使用される電圧であってよい。例えば、基準電圧は5V、10V、50V、100V、300V等であってよい。帰線の電圧は幾つかの例においては非ゼロの電圧に設定される。例えば、帰線の電圧はアースレベルではない。例えば、帰線の電圧は1V、2V、3V、5V、10V等に設定されてよい。出力段の帰線を0V(「アース」)より高くする理由は、出力段を通じた電圧/電流(VI)の積を低下させることである。
【0050】
前述のように、幾つかの実装において、電力増幅器回路構成を制御してコンプライアンス曲線に適合させることは、試験システムにプログラムされている電圧に基づいて電流出力を設定することを含んでいてよい。逆コンプライアンス曲線を使用することにより、従来のコンプライアンス曲線(それによれば、電流出力は電圧出力の増加と共に減少する)により可能となるようなチャネル密度より高いチャネル密度が実現されるかもしれない。この点で、電力増幅器回路構成を含む出力段は、その電力散逸に対応する物理的サイズを有する。逆コンプライアンス曲線を使用することによって、出力段の物理的サイズは、従来のコンプライアンス曲線が使用された場合に必要となるであろう出力段の物理的サイズより縮小されるかもしれない。より具体的には、図4に関して説明したように、逆コンプライアンス曲線を使えば、試験チャネルの出力段は50VをDUTに提供できる。一定の大きさの出力段で従来のコンプライアンス曲線を使用した場合、DUTには10Wのみ提供される。したがって、逆コンプライアンス曲線を使って生成されるDUTへの電力出力と同様のDUTへの電力出力を従来のコンプライアンス曲線を使って生成するためには、出力段を大きさの点で増大させる必要があるであろう。したがって、逆コンプライアンスを使用すれば、より小さい出力段を使ってより大きい瞬時電力をDUTに出力することができる。
【0051】
例えば、図3の従来のコンプライアンス30を使って1つの試験チャネル内で12Aの電流出力を実現する場合、出力段の電力散逸は以下のように特定される:
P=(96V-(-30V))×12A≒1.5キロワット(kW)
例えば、逆コンプライアンス曲線を使用すると、出力段の電力散逸は以下のように特定される:
(5V+2V)×2A=14ワット(W)
合計12Vの出力を実現するためには6つのチャネルが使用され、これは14W×6=84Wの電力出力を生成する。前述のように、出力段の物理的サイズは電力と共に拡大され、例えば電力が増大すると、その電力出力を生成するために必要な回路構成の大きさも増大する。同じ量の電流(12A)をより少ない電力で出力できる(84W対1512W)ことにより、逆コンプライアンス曲線に基づいて制御される試験チャネル内の回路構成は大きさを縮小できる。そして、回路構成の小型化の結果、同じ空間内により多くの試験チャネルを配置でき、それによって試験チャネルの密度が高くなる。
【0052】
幾つかの実装において、VI試験機を装置電源(DPS: device power supply)として使用し、出力段の電源上限を電圧及び電流出力と共に増減できるようにした場合、印加電圧(FV)の増減によってDPS電圧増減中の全範囲の定格電流が可能となる。幾つかの実装において、出力段の電圧レール(複数の場合もある)はリアルタイムのDUT電圧を追跡してよい。これらの特徴を含む試験チャネルのある実装は、印加及び回帰経路内の抵抗を能動的に測定し、この情報に基づいて出力段の電圧を自動的に調整する。例えば、出力段の電圧は、電力出力を制御して、電力出力を選択されたコンプライアンス曲線の範囲内に保持するために調整されてよい。
【0053】
図9を参照すると、試験チャネルを制御するプロセス80は以下の動作を含んでいるが、これらに限定されない。プロセスは、試験システムへの入力としての電圧を受け取る動作(81)を含む。例えば、電圧は、試験エンジニア等のユーザによって試験コンピュータにプログラムされてよい。電圧は、関心対象の試験チャネル上で出力される標的印加電圧である。プロセスは、電圧に基づいてコンプライアンス曲線を選択する動作(82)を含む。この選択は、ユーザによって、又はATE 10等の試験機を制御する処理装置によって行われてもよい。プロセスは、前述のように電圧入力及びコンプライアンス曲線に基づいて電流出力を生成する動作(83)を含む。電圧及び電流は、試験プロセスの一部として試験チャネルに出力される(84)。前述のように、幾つかの実装において、電流は試験エンジニア等のユーザによって試験コンピュータにプログラムされていてもよく、電圧は未知であり、特定されてよい。
【0054】
本明細書に記載の例示的なシステムとプロセスは、何れの適当な試験システムに使用されてもよい。例えば、システムとプロセスは、高電圧、低電流VI機器で使用されてもよく、この場合、例示的な高電圧は100V以上、例示的な低電流は200ミリアンペア(mA)以下である。例えば、システムとプロセスは、高電圧低電流の非浮動型機器又は高電圧高電流の浮動型試験機器にも使用されてよい。
【0055】
本明細書に記載されている試験システム及びプロセスの全部又は一部及びそれらの様々な改良は、少なくとも部分的に、1つ又は複数の非一時的機械可読記憶媒体等、1つ又は複数の情報キャリアに有形で具現化される1つ又は複数のコンピュータプログラムを使って1つ又は複数のコンピュータにより構成又は制御されてよい。コンピュータプログラムは、コンパイル型又はインタプリット型言語を含む何れの形態のプログラミング言語で書くこともでき、また、独立プログラムとして、又はモジュール、パート、サブルーチン若しくは、コンピューティング環境での使用に適したその他のユニットを含む何れの形態で配備することもできる。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、又は1つのサイト上の、若しくは分散された複数のサイトにわたり、ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように配備できる。
【0056】
試験システム及びプロセスを構成又は制御することに伴う動作は、前述のウェル形成作業の全部又は一部を制御する1つ又は複数のコンピュータプログラムを実行する1つ又は複数のプログラマブルプロセッサによって実行できる。試験システム及びプロセスの全部又は一部は、FPGA(field programmable gate array)及び/又はASIC(特定用途集積回路)等の特定用途論理回路によって構成又は制御できる。
【0057】
コンピュータプログラムの実行に適したプロセッサには、例えば、汎用及び特定用途両方のマイクロプロセッサ並びに、あらゆる種類のデジタルコンピュータのあらゆる1つ又は複数のプロセッサが含まれる。一般に、プロセッサはリードオンリ記憶エリア若しくはランダムアクセス記憶エリア又はそれらの両方から命令及びデータを受信する。コンピュータの要素には、命令を実行するための1つ又は複数のプロセッサ並びに命令及びデータを記憶するための1つ又は複数の記憶エリアが含まれる。一般に、コンピュータはまた、1つ又は複数の機械可読記憶媒体、例えば磁気、磁気光ディスク、又は光ディスクをはじめとするデータを記憶するための大量記憶装置等も含み、又はそれからデータを受信し、そこにデータを送信し、若しくはその両方を行うために動作的にこれに連結される。コンピュータプログラム命令及びデータを具現化するのに適した非一時的機械可読記憶媒体には、あらゆる形態の不揮発性記憶エリアが含まれ、これには例えば、EPROM(erasable programmable read-only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable read-only memory)及びflash記憶エリア装置等の半導体記憶エリア装置、内部ハードディスク又はリムーバブルディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク、及びCD-ROM(compact diskc read-only memory、及びDVD-ROM(wdgital versatile disc read-only memory)が含まれる。
【0058】
上述の様々な実装の要素を組み合わせて、上で具体的に示されていない他の実装を形成してもよい。前述のシステムから、要素を、それらの動作又はシステム全体の動作に不利な影響を与えるとことなく除去してもよい。さらに、様々な別々の要素を1つ又は複数の個々の要素へと組み合わせて、本明細書に記載の機能を果たすようにしてもよい。
【0059】
本明細書に具体的に記載されていないその他の実装もまた、以下の特許請求の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9