(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
A61G 7/05 20060101AFI20240912BHJP
A47C 20/12 20060101ALI20240912BHJP
F16D 41/04 20060101ALI20240912BHJP
F16D 35/00 20060101ALI20240912BHJP
F16H 19/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61G7/05
A47C20/12
F16D41/04
F16D35/00 601Z
F16H19/00
(21)【出願番号】P 2021553328
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 DK2020000070
(87)【国際公開番号】W WO2020182258
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】594167956
【氏名又は名称】リナック エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】シェーヴェ、ブライアン
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-513073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/05
A47C 20/12
F16D 41/04
F16D 35/00
F16H 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可逆電動モータ(19)と、トランスミッション(20)と、非セルフロック式スピンドル(21)と、を備えるリニアアクチュエータであって、前記電動モータ(19)は、前記トランスミッション(20)を介して前記非セルフロック式スピンドル(21)を駆動するものであり、当該リニアアクチュエータは、前記スピンドル(21)に着けられたスピンドルナット(22)と、回転不能に固定された調節部材(23)と、を備え、前記調節部材(23)は、前記スピンドル(21)に着けられた前記スピンドルナット(22)に連結又は一体化されており、軸方向に移動可能であり、当該リニアアクチュエータは、さらにクイックリリース(27)を備え、当該クイックリリースは、前記可逆電動モータ(19)から、並びに、前記可逆電動モータ(19)と前記クイックリリース(27)の間に延びる前記トランスミッション(20)の部分から、前記調節部材(23)の係合を解除して、前記スピンドル(21)が前記調節部材(23)の荷重によって回転するようにするものであり、当該リニアアクチュエータは、前記スピンドルに連結されたブレーキ手段(28)を備え、前記ブレーキ手段は、前記クイックリリースが作動したときに、外部荷重が作用した状態における前記調節部材(23)の速度を制御するものであって、
当該リニアアクチュエータは、前記ブレーキ手段(28)
とは別に追加的に設けられるとともに、前記ブレーキ手段(28)に連結されたカップリング(34;52、53、54)を備え、前記ブレーキ手段(28)は、
[1]前記スピンドル(21)の回転を抑制する作動状態、又は、
[2]前記スピンドル(21)の回転を抑制しない停止状態のいずれかの状態を取るように構成されており、
前記カップリング(34;52、53、54)は、
[3]
前記スピンドル(21)の回転速度が所定の閾値を上回る場合に係合状態
を取り、又は、
[4]
前記スピンドル(21)の回転速度が所定の閾値を上回らない場合に滑り又は非係合状態のいずれかの状態を取るように構成されており、
前記カップリング(34;52、53、54)は、前記カップリング(34;52、53、54)が[3]前記係合状態にあるときは、前記ブレーキ手段(28)を[1]前記作動状態に設定し、前記カップリング(34;52、53、54)が[4]前記滑り又は非係合状態にあるときは、前記ブレーキ手段を[2]前記停止状態に設定することを特徴とする、リニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記カップリングは、遠心カップリング(34)であることを特徴とする、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記遠心カップリング(34)は、ダンパーホルダ(35)、ばね(36)、及び摺動部材(37)を含み、
前記ダンパーホルダ(35)は、前記摺動部材(37)を収容するためのキャビティ(39)を含み、
前記キャビティ(39)は、開口(41)を有し、前記開口を通って前記摺動部材(37)の少なくとも一部が変位可能であり、
前記ばね(36)は、前記摺動部材(37)と前記ダンパーホルダ(35)との間に配置されて、前記摺動部材(37)を前記ダンパーホルダ(35)に対してばね押圧するものであり、
当該リニアアクチュエータは、前記ばね押圧された摺動部材(37)のうち、前記ダンパーホルダ(35)の前記開口から延出する部分に当接させるために設けられたストッパ(49)を含み、
前記カップリングは、
前記ばね押圧された摺動部材(37)のうち、前記ダンパーホルダ(35)の前記開口(41)から延出する前記部分が、前記ストッパ(49)に完全に当接するときは、[3]前記係合状態であり、
前記ばね押圧された摺動部材(37)のうち、前記ダンパーホルダ(35)の前記開口
から延出する前記部分が、前記ストッパ(49)に対して滑る、或いは、離間しているときは、[4]前記滑り又は非係合状態であることを特徴とする、請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
当該リニアアクチュエータを取り付けるための後側取り付け部(26)をさらに備え、前記後側取り付け部(26)は、前記カップリングの少なくとも一部を収容するよう構成されたキャビティ(44)を含み、前記キャビティの側壁(45)は、略環状の断面を有し、前記側壁(45)は、径方向外側に膨らんだ円弧を含み、前記円弧が前記ストッパ(49)を構成することを特徴とする、請求項
3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記ブレーキ手段は、回転ダンパー(28)であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ブレーキ手段は、ラップスプリングであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記ばねは、圧縮ばね(36)であることを特徴とする、請求項3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記ばねは、引張ばねであることを特徴とする、請求項3に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記カップリングは、手動カップリング(52、53、54)であることを特徴とする、請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項10】
当該リニアアクチュエータを取り付けるための後側取り付け部(26)をさらに備え、前記手動カップリング(52、53、54)は、ダンパーホルダ(52)を含み、前記ダンパーホルダ(52)は、その側面から延びる突出部(53)を有し、前記後側取り付け部(26)は、前記手動カップリングの少なくとも一部を収容するためのキャビティ(51)を含むとともに、さらに、手動操作によって前記キャビティ(51)に出入動作し得る停止部材(54)を含み、
前記手動カップリング(52、53、54)は、前記停止部材(54)が前記キャビティ(51)に進入しているときは、前記係合状態であり、前記突出部(53)が前記停止部材(54)に当接し、これにより前記ダンパーホルダ(52)の回転が抑止され、
前記手動カップリング(52、53、54)は、前記停止部材(54)が前記キャビティ(51)から完全に又はほぼ完全に後退しているときは、前記滑り又は非係合状態であり、これにより前記ダンパーホルダ(52)が回転可能である、ことを特徴とする、請求項9に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項11】
マットレスを支承するための調節可能な支承面を備え、前記支承面が調節可能セクション(5、6)を含むベッドにおいて、
請求項1~10のいずれか1つに記載のリニアアクチュエータを少なくとも1つ含み、前記リニアアクチュエータが、前記ベッドの前記調節可能セクションを調節するように構成されていることを特徴とするベッド。
【請求項12】
前記調節可能セクションが背もたれ部(5)であることを特徴とする、請求項11に記載のベッド。
【請求項13】
前記ベッドが、病院用又は介護用ベッド(1)であることを特徴とする、請求項11~
12のうちの1つ又は複数に記載のベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提要件部に記載した種類のリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
病院用及び介護用のベッドは、背もたれ部及び脚のせ部、典型的にはさらに固定の中央部に分割されたマットレス支承面を有する。背もたれ部及び脚のせ部は、それぞれリニアアクチュエータによって水平軸周りに個別に調整可能である。例えば、J. Nesbit Evans&Company Ltd.によるEP0498111号A2公報を参照のこと。
【0003】
例えば心不全の場合などの特定の状況においては、背もたれ部を起立位置から水平位置に迅速に降下させ得ることが極めて重要である。しかしながら、背もたれ部を水平位置まで迅速に降下させるには、リニアアクチュエータの速度は遅すぎる。この課題を解決するために、いわゆるクイックリリースを備えるリニアアクチュエータが開発されてきた。クイックリリースは、非セルフロック式のスピンドル自体をモータから切り離すか、或いは、スピンドルに駆動連結されているトランスミッションの部分を切り離すものである。なお、トランスミッションの当該部分及びスピンドルは、非セルフロック式である。このようなクイックリリースを備える種類のリニアアクチュエータの例は、いずれもLINAK A/SによるEP0577541号A1公報、EP0685662号A2公報、WO03/033946号A1公報、及びWO2006/039931号A1公報などから公知である。上述したように、リニアアクチュエータのスピンドルが非セルフロック式であると、スピンドルナットに連結されたリニアアクチュエータの筒状調節部材に荷重が掛かると、スピンドルが回転する。荷重の力によってスピンドルが加速すると、調節部材は、加速しながら終端位置に向かって移動する。この結果、背もたれ部は、衝突に近い状態で水平位置に到達して急激に停止する。水平位置に向かう加速は、ベッド構造にも依り、背もたれ部が最大限に起立した位置においてリニアアクチュエータに掛かる荷重が最小となる構造であると、加速度はさらに大きくなる。力による衝撃は、背もたれ部が水平位置に近づくほど大きくなり、水平位置において最大となる。このような衝突状態での停止は、既に負傷している患者にダメージを与える可能性が大きいだけでなく、ベッド及びリニアアクチュエータにも過剰な負荷が掛かることになる。このように、負傷の要因となりうるような状況は、総じて、患者にとって有害なだけでなく、背もたれ部が制御不能な状態で水平位置まで急速に移動することで、背もたれ部と、当該背もたれ部がはめ込まれた上側フレームとの間に人が挟まれてしまう危険も少なくない。この課題を解決するために、例えば、DEWERT ANTRIEBS UND SYSTEMTECHNIKによるDE202008001634号公報を参照すると、移動速度を減衰させるガススプリングを組み込んだベッド構造が提供されている。しかしながら、この解決策では、構造が複雑になり、コストも増加する。これは、ガススプリングを固定するための取付け部材などがベッド構造に追加されることに起因する。加えて、取り付けに要する時間が増え、ガススプリングの費用も追加されることになる。さらに、そのようなベッドは、既存の要件を満たすために、通常、2つのガススプリングを備える構成になる。したがって、この解決策は、上記課題の正しい解決策であるとは感覚的に捉えにくい。当該課題は、従来においても、LINAK A/Sに付与されたEP0944788号B1公報によって解決されている。同公報は、クイックリリースと、スピンドルがモータ及びトランスミッションから係合解除されたときにスピンドルの速度を制御するブレーキ手段と、を備えるリニアアクチュエータに関する。このEP0944788号B1公報には、固定の接触面に係合してブレーキばねとして機能するスクリュースプリング(screw spring)に関する実施形態が記載されている。接触面に対するスクリュースプリングの係合を制御して緩めることで、スピンドルの速度を制御することができる。この構造は、十分に有効であるものの、速度を均等に制御するためには、操作者の熟練が要求される。また、構造も複雑である。LINAK A/SによるWO2011/066836号A1公報には、上記速度を手動で制御するという課題を解決するために、遠心ブレーキを用いた構成が開示されている。ただし、この構成も、やや複雑であるとともに、課題を完全に解決するには至っていない。
【0004】
LINAKによるWO2016/026495号公報には、流体式の回転ダンパー(rotary damper)で構成されたブレーキ手段を備えるリニアアクチュエータが開示されている。このダンパーは、流体が充填された外側本体部の中空部の中に内側本体部を備え、一方の本体部がスピンドル又はスピンドルからクイックリリースに延びるトランスミッションの一部に駆動連結されている。クイックリリースが作動して当該本体部が他方の本体部に対して回転すると、減衰作用が発揮されて、スピンドルの速度が減衰され、よって調節部材の速度が減衰される。ただし、上記減衰作用はスピンドルの回転速度に対応するため、スピンドルのストローク長さに沿って減衰量が変化する。したがって、背もたれ部の降下に、若干の時間を要する可能性がある。
【0005】
本発明は、調節部材がモータ及びトランスミッションから係合解除されたときに、当該調節部材の降下又は後退を制御するための他の解決を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明のリニアアクチュエータは、ブレーキ手段に接続されたカップリングを備えることを特徴とする。前記ブレーキ手段は、[1]スピンドルの回転を抑制する作動状態、又は、[2]スピンドルの回転を抑制しない停止状態のいずれかの状態を取るように構成されている。前記カップリングは、[3]係合状態、又は、[4]滑り又は非係合状態のいずれかの状態を取るように構成されている。前記カップリングは、[3]係合状態にあるときは、前記ブレーキ手段を[1]作動状態に設定し、[4]滑り又は非係合状態にあるときは、前記ブレーキ手段を[2]前記停止状態に設定するよう構成されている。
【0007】
これにより、前記カップリングが係合状態にならない限り、前記ブレーキ手段は、作動しない。前記カップリングの状態は、自動カップリング又は手動カップリングを用いて切り替えることができる。
【0008】
一実施形態において、前記カップリングは、前記スピンドルの回転速度に応じて動作する遠心カップリングである。よって、クイックリリースが作動されたときに、前記スピンドルの回転速度に応じて降下速度を制御する構成を提供することができる。
【0009】
一実施形態において、前記カップリングは、回転ホルダ、スプリング、及び摺動部材を備える。前記回転ホルダは、前記摺動部材を収容するためのキャビティを含む。前記キャビティは、前記摺動部材の少なくとも一部を変位させるための開口を有する。前記ばねは、前記摺動部材と前記回転ホルダとの間に配置されており、よって、前記摺動部材は前記回転ホルダに対してばね押圧されている。前記リニアアクチュエータは、前記ばね押圧された摺動部材のうち、前記ダンパーホルダの前記開口から延出する部分に当接させるために設けられたストッパを含む。前記カップリングは、前記ばね押圧された摺動部材のうち、前記ダンパーホルダの前記開口から延出する前記部分が、前記ストッパに完全に当接するときは、[3]前記係合状態であり、前記ばね押圧された摺動部材のうち、前記ダンパーホルダの前記開口から延出する前記部分が前記ストッパに対して滑る、或いは、離間しているときは、[4]前記滑り又は非係合状態である。前記スピンドルの回転速度が所定の閾値を上回ると、前記摺動部材に作用する遠心力によって、当該摺動部材が前記キャビティの前記開口から外側に変位させられる。この閾値は、前記クイックリリースが駆動された場合にのみ到達可能な値である。よって、前記リニアアクチュエータの通常の動作時には、前記ブレーキ手段は摩耗しない。
【0010】
一実施形態において、前記リニアアクチュエータは、当該リニアアクチュエータを取り付けるための後側取り付け部を有する。前記後側取り付け部は、前記遠心カップリングの少なくとも一部を収容するよう構成されたキャビティを含む。前記キャビティの側壁は、略環状の断面を有し、前記側壁は、径方向外側に膨らんだ円弧を含み、前記円弧が前記ストッパを構成する。前記後側取り付け部に前記カップリングの少なくとも一部を組み込むように構成することで、前記リニアアクチュエータの組み込み寸法を極力小さく維持することが可能である。
【0011】
一実施形態において、前記ブレーキ手段は、回転ダンパー又はラップスプリングである。
【0012】
一実施形態において、前記遠心カップリングの前記ばねは、圧縮ばね又は引張ばねである。
【0013】
前記リニアアクチュエータの一実施形態において、前記カップリングは、手動カップリングである。これにより、前記カップリングを係合させて前記ブレーキ手段を作動させるタイミングを、操作者によって決定することができる。
【0014】
一実施形態において、前記リニアアクチュエータは、当該リニアアクチュエータを取り付けるための後側取り付け部を備える。前記手動カップリングは、ダンパーホルダを含み、前記ダンパーホルダは、その側面から延びる突出部を有する。前記後側取り付け部は、前記手動カップリングの少なくとも一部を収容するためのキャビティを含むとともに、さらに、手動操作によって前記キャビティに出入動作し得る停止部材を含む。前記手動カップリングは、前記停止部材が前記キャビティに進入しているときは、前記係合状態であり、前記突出部が前記停止部材に当接し、これにより前記ダンパーホルダの回転が抑止される。前記手動カップリングは、前記停止部材が前記キャビティから完全に又はほぼ完全に後退しているときは、前記滑り又は非係合状態であり、これにより前記ダンパーホルダが回転可能である。
【0015】
他の実施形態において、本発明は、マットレスを支承するための調節可能な支承面を備え、前記支承面が調節可能セクションを含むベッドに関する。前記ベッドは、上述した種類のリニアアクチュエータであって、前記調節可能な支承面を調節するよう構成されたリニアアクチュエータを少なくとも1つ含む。さらに他の実施形態では、前記調節可能セクションは、背もたれ部である。さらに他の実施形態では、前記ベッドは、病院用又は介護用ベッドである。これらの実施形態における前記カップリングは、前記調節部材を可能な限り迅速に降下又は後退させられるように構成されているとともに、前記ベッドを使用するユーザ又は患者の健康及び治療に十分に配慮して構成されている。加えて、前記ベッドに損傷を与えることなく、前記調節可能セクションを降下させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明によるリニアアクチュエータをより詳細に説明する。
【0017】
【
図1】病院用又は介護用のベッドの概要を示す図である。
【
図2】クイックリリースと、ブレーキ手段と、前記ブレーキ手段を作動させるためのカップリングと、を備えるリニアアクチュエータの斜視図である。
【
図3】
図2に示すリニアアクチュエータの縦断面を示す図である。
【
図4】後側取り付け部、遠心カップリング、及びブレーキ手段を示す分解斜視図である。
【
図5a-5d】前記遠心カップリングのダンパーホルダを示す図である。
【
図6a-6b】前記遠心カップリングの摺動部材を示す2つの斜視図である。
【
図7a-7b】前記後側取り付け部の上面図及び斜視図である。
【
図8】前記遠心カップリングが滑り又は非係合状態にあるときの前記リニアアクチュエータを前記後側取り付け部の側から見た断面図である。
【
図9】前記遠心カップリングが係合状態にあるときの前記リニアアクチュエータを前記後側取り付け部の側から見た断面図である。
【
図10a-10b】前記遠心カップリングが滑り又は非係合状態にあるときの前記遠心カップリングと回転ダンパーの側面図及び斜視図である。
【
図11a-11b】前記遠心カップリングが係合状態にあるときの前記遠心カップリングと回転ダンパーの側面図及び斜視図である。
【
図12a-12b】第2実施形態によるカップリングの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示す病院用又は介護用ベッド1は、走行輪3を備える下部フレーム2と、上部フレーム4とを含む。マットレスを支承するための支承面は、上部フレーム4に取り付けられている。前記支承面は、背もたれ部5と、間接式の(articulated)脚のせ部6と、これら2つの間に位置する固定の中間部7と、を含む。背もたれ部5及び脚のせ部6は、それぞれリニアアクチュエータ8、9によって調節可能であって、支承面の輪郭形状を矢印10で示す様に様々に変化させることができる。上部フレーム4の両端は、レバー機構(lever mechanism)11、12によって下部フレーム2にそれぞれ連結されている。上部フレーム4は、レバー機構11、12に連結された一対のアクチュエータ13、14によって、昇降可能である。アクチュエータ8、9;13、14は、制御ボックス15に接続されており、当該制御ボックスは、主電源に接続するための電源装置、任意の要素としての充電式バッテリーパック、並びにコントローラを含む。上記制御ボックス15には、手持ち式コントローラ16、及び、手すり17に設けられた固定の制御パネルなどの操作部が接続されている。
【0019】
図2は、病院用又は介護用ベッド1の背もたれ部5を動作させるために配置されたリニアアクチュエータ8を示す。当該リニアアクチュエータは、可逆電動モータ19を収容したハウジング18を含み、このモータは、ウォームギヤ20を介してスピンドル21を駆動する。そのスピンドルに着けられたスピンドルナット22には、内側チューブとも呼ばれ、且つ、外側チューブ24で囲まれた筒状調節部材23が固定されている。筒状調節部材23の端部には、前側取り付け部25が配置されており、当該リニアアクチュエータの後端には、リニアアクチュエータ8を取り付けるための後側取り付け部(rear mounting)26が配置されている。リニアアクチュエータ8は、係合解除機構を有するクイックリリース部27を備える。
【0020】
図3~
図11を参照すると、リニアアクチュエータ8は、回転ダンパー28を備え、当該回転ダンパーは、スピンドル21の下端/後端に、即ち、後側取り付け部26に最も近い端部に接続されている。回転ダンパー28は、円筒形状の内側本体部を含み、これは、液体が充填された外側本体部29の中空に配置されている。回転ダンパー28の中空に充填される液体は、好ましくはシリコーンオイルである。前記内側本体部は、軸端30を介して、前記スピンドル21の軸端に駆動連結されている。
【0021】
前記回転ダンパー28は、リニアアクチュエータの具体的な構成に合わせて、スピンドル21に直接、又は、1つ又は複数の部材を介して連結されている。本実施形態(
図2~
図11)においては、回転ダンパー28の軸端30は、位置決めホイール(position wheel)32に係合するギヤホイール(gear wheel)31に連結されている。スピンドル21の後端は、位置決めホイール32に係合する端部ナット33に連結されている。
【0022】
回転ダンパー28の外側本体部29は、ダンパーホルダ35とばね36と摺動部材37とを含む遠心カップリング(centrifugal coupling)34に固定されている。ダンパーホルダ35は、円形の部材であって、2つの弓形部分(circular segment)を切り落とした形状を有する。ダンパーホルダ35の上縁からは、回転ダンパー28を回転可能に固定するためのカラー38a~38cが延びる。ダンパーホルダ35は、キャビティ(cavity)39を有し、このキャビティには、2つの開口40、41が設けられている。開口40は、ダンパーホルダ35の上端に開放し、開口41は、側面に開放する。キャビティ39は、摺動部材37を収容するような形状に構成されており、摺動部材37は、長方形のブロック形状であって、一方の端部から側方に延びる突出部42を有する。摺動部材37のうち、開口41に位置する端部は湾曲しており、ダンパーホルダ35の円形外面と高さが揃っている。キャビティ39における小部分は、この例では圧縮コイルばねであるばね36を収容するよう構成されている。ばね36の一端は、キャビティ39の壁部材(wall piece)43に当接する。ばね36の他端は、摺動部材37の突出部42に当接する。ばね36は、壁部材43と突出部42との間の隙間に収められることで圧縮されており、よって、予め応力を加えられた状態(pre-stressed state)である。これにより、摺動部材37は、ばね押圧された状態(spring-loaded)である。
【0023】
後側取り付け部26は、断面が略円環状の壁45を有するキャビティ44を含む。キャビティ44は、少なくともカップリング34の一部を収容して、カップリング34と壁45の間の遊びがごくわずかになるように構成されている。壁45は、径方向外側に膨らんだ円弧を含み、これにより、キャビティ44の円形断面の径方向外側に弓形の小軌道(small arc shaped track)46が形成されている。キャビティ44の底面には、ダンパーホルダ35の下面から延びるピン48を収容する小孔47が形成されており、当該小孔とピンとの間の隙間や遊びが僅かになるように構成されている。この実施形態では、ダンパーホルダ35の下面は、キャビティ44の底面の一部に当接する。この構成は、特に、回転ダンパー28をスピンドル21の長手方向の所定位置に固定するように機能する。
【0024】
ダンパー28とカップリング34(35、36、37)は、スピンドル21に直接的及び/又は間接的に連結されているので、両者は、スピンドル21と共に回転する。スピンドル21の回転速度が所定の閾値を上回ると、摺動部材37に作用する遠心力によって、当該摺動部材がキャビティ39の開口41から外側に変位させられる。この閾値は、クイックリリース部27が駆動された場合にのみ到達可能な値である。よって、通常の動作時には、リニアアクチュエータ8の回転がこのような高速に到達することはない。
【0025】
回転速度が閾値を上回まると、摺動部材37の湾曲端面が、後側取り付け部26のキャビティ44の壁45に当接する。摺動部材37は、壁45の周面における上記円弧の部分に到達すると、弓形の軌道46に進入する。この軌道に進入すると、摺動部材37の側面が、ストッパとして機能する軌道46の終端49に当接する。この実施形態では、軌道終端49は、中空の円筒チューブ50によって構成されており、当該チューブには、長手方向に延びるスリット穴が設けられており、この穴に壁45の突出部が収容されている。
【0026】
遠心力の大きさと、摺動部材37が軌道終端49に当接するときの衝撃との関係によって、摺動部材37が軌道終端49に当接した状態に維持されるか、キャビティ39の中に押し戻されるか、が決まる。摺動部材が押し戻されると、カップリング34は滑り状態(slipping state)になり、スピンドル21、ダンパー28、及びカップリング34が回転し続ける。一方、摺動部材が当接状態に維持されると、カップリング34は係合状態になり、回転ダンパー28が作動する。より具体的には、ダンパーホルダ35は、よって回転ダンパー28の外側本体部29は、固定の非回転状態に維持され、回転ダンパー28の内側本体部における軸端30だけが、スピンドル21とともに回転し続ける。この結果、回転ダンパー28によって、スピンドル21の回転速度が減衰する。スピンドル21の回転速度が減衰すると、摺動部材37に作用する遠心力が小さくなり、やがて摺動部材がキャビティ39の中へと後退する。この結果、回転ダンパー35、カップリング34、及びスピンドル21は、再びすべて一緒に回転する状態になる。
【0027】
カップリング34は、回転速度が閾値に到達してカップリング34が係合状態になるまでに、通常、滑り状態を複数回繰り返す。明瞭化のため、カップリングの非係合状態(disengaged state)と滑り状態とは、単一の状態であるとみなされる。前記閾値は、リニアアクチュエータが用いられるベッド又は他の構造体に合わせて決定されたレベルに設定すればよい。閾値の決定に用いることができる数値範囲のパラメータは、何種類かある。限定するものではないが、例えば、スピンドル21のねじピッチ、ダンパーホルダ35及び摺動部材37の幾何形状及び材料、及び、ばね36の復元力(spring force)などが挙げられる。また、カップリング34は、ばね36として、圧縮ばねの代わりに引張ばねを用いる構成も可能である。
【0028】
本実施形態では、回転ダンパー28は、カラー38a~38cによって回転可能に固定されているとともに、ダンパーホルダ35の下面と後側取り付け部26のキャビティ44の底面の一部とが当接することによってスピンドルの長手軸に沿って固定される。代替的な実施形態では、カラー38a~38cは、外側本体部29の高さいっぱいに延びて、当該外側本体部の上面に係合するばね錠(snap lock)であってもよい。この構成によれば、回転ダンパー28を、回転方向と長手方向の両方で固定することができる。この場合、ダンパーホルダ35の下面とキャビティ44の底面を当接させることは不要になる。
【0029】
回転ダンパーの代わりに、例えば、ラップスプリング(wrap spring)ブレーキなど、他の種類のブレーキ手段又はダンパーを使用することができる。
【0030】
図12a~
図12bは、本発明の第2実施形態によるカップリングを示す概略断面図である。本実施形態のカップリングは、手動カップリング(manual coupling)である。
図12a~
図12bにおいて、リニアアクチュエータの後側取り付け部50は、手動カップリングの少なくとも一部を収容するためのキャビティ51を形成する環状の側壁を有する。ダンパーホルダ52は、当該ダンパーホルダ52の側面から延出する突出部53を含む。後側取り付け部50は、キャビティ51に出入動作し得る停止部材54を含む。ダンパーホルダの上面からは、ブレーキ手段をダンパーホルダ52に固定するためのカラー55a~55cが延びている。ブレーキ手段は、第1実施形態に説明した態様で、リニアアクチュエータのスピンドルに連結されている。本実施形態の手動カップリングは、少なくともダンパーホルダ52及び停止部材54によって構成される。この手動カップリングは、第1実施形態の遠心カップリング34と同様に、滑り又は非係合状態と係合状態との2つの状態のうちのいずれかを取る。滑り又は非係合状態では、停止部材54がキャビティ51から完全に又はほぼ完全に後退しており、よって、ダンパーホルダ52は自由に回転可能である。一方、係合状態では、停止部材54がキャビティ51の中に延出して突出部53が停止部材54に当接するので、ダンパーホルダ52の回転は抑止される。前記係合状態では、ブレーキ手段は作動状態になり、よってスピンドルの回転速度を減衰させる。前記滑り又は非係合状態では、ブレーキ手段は停止状態になり、よって、スピンドルの回転速度は減衰されない。