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  • 特許-カンナビノイド製剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】カンナビノイド製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20240912BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240912BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/32 20060101ALN20240912BHJP
   A61K 47/38 20060101ALN20240912BHJP
   A61K 47/44 20170101ALN20240912BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K31/352
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/18
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/10
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/22
A61P25/28
A61K47/58
A61K47/26
A61K47/14
A61P25/18
A61P35/00
A61P29/00
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/44
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021570995
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 GB2020051290
(87)【国際公開番号】W WO2020240184
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】1907786.6
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・シルコック
(72)【発明者】
【氏名】ジティンダー・ウィルク
【審査官】関 景輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/011808(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0231083(US,A1)
【文献】国際公開第2019/082171(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/071213(WO,A1)
【文献】特表2019-513146(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263913(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0214412(US,A1)
【文献】国際公開第2018/011798(WO,A1)
【文献】特表2009-514890(JP,A)
【文献】特表2007-517015(JP,A)
【文献】特表2004-521918(JP,A)
【文献】特表2017-500349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/12
A61K 31/352
A61K 47/32
A61K 47/38
A61K 47/44
A61K 47/10
A61K 47/02
A61K 47/36
A61K 47/12
A61K 47/22
A61K 47/20
A61K 47/18
A61K 9/20
A61K 9/14
A61K 9/48
A61K 9/08
A61K 9/10
A61P 25/00
A61P 25/08
A61P 25/22
A61P 25/28
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を含む医薬製剤であって、
前記微粒子が1種又は複数のカンナビノイド及びpH依存放出ポリマーを含み、
前記pH依存放出ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)又はメタクリル酸及びメチルメタクリレートのコポリマー(Eudragit)である、医薬製剤。
【請求項2】
1種又は複数のカンナビノイドが、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピルバリアント(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピルバリアント(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及びテトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
pH依存放出ポリマーが、HPMCAS-L、HPMCAS-M、HPMCAS-H、Eudragit S100及びEudragit L100からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
1種又は複数の湿潤剤を更に含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
1種又は複数の湿潤剤が、ポロキサマー、ポロキサマー188及び炭酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
1種又は複数の懸濁化剤を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
1種又は複数の懸濁化剤が、ポリソルベート20、グリセロール、及びキサンタンガムからなる群から選択される、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
1種又は複数のpH緩衝液を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
1種又は複数のpH緩衝液が、クエン酸、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム及びリン酸緩衝生理食塩水からなる群から選択される、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
1種又は複数の保存剤を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
1種又は複数の保存剤が、ソルビン酸カリウム及び安息香酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
1種又は複数の抗酸化剤を更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
1種又は複数の抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、塩酸システイン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、レシチン、没食子酸プロピル、硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール及びその混合物からなる群から選択される、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
1種又は複数の溶媒を更に含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
1種又は複数の溶媒が、水、エタノール及びアセトンからなる群から選択される、請求項14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
1種又は複数のカンナビノイドが、医薬製剤に対して約10~50wt%量で存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項17】
粘膜付着性ゲル、錠剤、散剤、液体ゲルカプセル、固体カプセル、経口液剤、経口懸濁液、顆粒及び押出物からなる群から選択される経口剤形である、請求項1から16のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項18】
神経保護剤又は抗痙攣薬の投与を必要とする状態の処置において使用される、請求項1から17のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項19】
発作の処置において使用される、請求項18に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項20】
ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ミオクローヌス発作、若年性ミオクローヌスてんかん、難治性てんかん、統合失調症、若年性痙攣、ウエスト症候群、乳児点頭てんかん、難治性乳児点頭てんかん、結節性硬化症、脳腫瘍、神経因性疼痛、大麻使用障害、心的外傷後ストレス障害、不安、初期の精神病、アルツハイマー病、及び自閉症の処置において使用するための、請求項18に記載の使用のための医薬製剤。
【請求項21】
製剤を噴霧乾燥させる工程を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬製剤を調製する方法。
【請求項22】
i)カンナビノイド及びpH依存放出ポリマーの混合物を調製する工程と;
ii)中間粉末ブレンドを製造する工程と;
iii)中間粉末ブレンドを加熱溶融押出機により加工する工程と;
iv)押出物をペレット化する工程と;
v)ペレットを250~500μmに粉砕する工程と
を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬製剤を調製する方法。
【請求項23】
抗酸化剤が工程(i)の後に添加される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
崩壊剤が工程(i)の後に添加される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は複数のカンナビノイドを含有する医薬製剤に関する。好ましくは、製剤は、pH依存放出ポリマー中の1種又は複数のカンナビノイドの分子分散体である。好ましくは、製剤は、カンナビノイドの送達を結腸又は腸等の消化器系の特定の領域に標的化することができる。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイドは、水に難溶性(1μg/mL未満)であることが知られている親油性物質である。対照的に例として、カンナビジオール(CBD)は、36mg/mLでエタノールに、及び60mg/mLで極性溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶性である。
【0003】
薬剤におけるカンナビノイドの現在の使用は、これらの難溶性化合物を送達するより有効な方法を見出すことを必要としてきた。難水溶性に加えて、カンナビノイドは、制限されたバイオアベイラビリティ及び製剤中での不良な安定性を有することも知られている。
【0004】
カンナビノイドが、相対的に高い用量で(最大2000mgの1日量で)、及び/又は困難な患者群、例えば若齢小児に、及び/又は特定の適応症のために提供されることが必要とされる場合、これは更なる難題を引き起こし得る。
【0005】
現在、カンナビノイドの溶解性の不足ゆえにアルコール及び/又は油ベース賦形剤を利用する、4種の市販のカンナビノイド製剤が市場にある。これらは、ゴマ油中でカプセルとして経口送達される合成テトラヒドロカンナビノール(THC)であるドロナビノール(Marinol(登録商標));合成カンナビノイドであって、THCの類似体であり、ポビドン及びトウモロコシデンプンを含むカプセルで経口送達されるナビロン(Cesamet(登録商標));カンナビノイドの天然抽出物であり、エタノール及びプロピレングリコールに溶解され、規定量のTHC及びカンナビジオール(CBD)を含有し、口腔粘膜スプレーにより液体として送達されるナビキシモルス(Sativex(登録商標))並びに植物由来精製CBDを含む経口製剤であるカンナビジオール(Epidiolex(登録商標))である。CBDは、ゴマ油中の製剤とされ、甘味剤スクラロース、ストロベリー香料、及び最大10%v/vのエタノールを更に含む。
【0006】
処方薬剤における最大許容エタノール濃度について明確なFDA指針はないが、論文(Ethanol in Liquid Preparations Intended for Children、Paediatrics:Official Journal of The American Academy of Paediatrics、1984:73:405)は、アルコール含有薬の単回投与後に0.25g/L(250mg/L)の血液アルコール濃度(BAC)を超えるべきでないことを推奨している。
【0007】
更に、油ベース製剤の使用は、非常に重度であり得、患者に薬の使用を中止させ得る下痢等の胃腸副作用を引き起こすことが多い。
【0008】
カンナビノイド製剤への代替手法が提案されてきた。
【0009】
WO 2015/184127(Insys社)は、必要に応じて水を含む、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールのミックス中でカンナビノイドが製剤化される、アルコールを含まない製剤;アルコールを含有する製剤;並びに脂質を含有する製剤を含む、いくつかの異なる経口製剤を開示している。開示された製剤の各々において、カンナビノイドは合成的に製造された(天然に抽出されたものと対照的に)カンナビジオールである。明細書は、抗酸化剤、甘味剤、増強剤、保存剤、香味剤及びpH調節剤等のいくつかの薬学的に許容される賦形剤を含むことを教示している。
【0010】
WO 2012/033478(Murty社)は、カンナビノイドの改善された投与を提供すると言われる自己乳化薬物送達システム(SEDDS)を開示している。SEDDSは一般的に、親油性活性医薬成分(API)、油(APIを溶解するため)及び界面活性剤からなる液体又はゲルが充填された硬質又は軟質カプセルからなる。胃液と接触すると、界面活性剤の存在ゆえに、SEDDSは自発的に乳化する。しかし、多くの界面活性剤は、脂質ベースであり、GIT中のリパーゼと相互作用する。これはAPI及び油担体を乳化する脂質ベース界面活性剤の能力の低下をもたらす可能性があり、両方がバイオアベイラビリティを低下させる。
【0011】
脂質ベース製剤は、脂質製剤分類体系(Lipid Formulation Classification System)(LFCS)に従って分類され、タイプI製剤は消化を必要とする油であり、タイプII製剤は水不溶性自己乳化薬物送達システム(SEDDS)であり、タイプIIIシステムは、いくつかの水溶性界面活性剤及び/若しくは共溶媒(タイプIIIA)又はより大きい割合の水溶性成分(タイプIIIB)を含有する、SEDDS又は自己ミクロ乳化薬物送達システム(SMEDDS)又は自己ナノ乳化薬物送達システム(SNEDDS)である。カテゴリータイプIVは、主に親水性賦形剤である界面活性剤及び共溶媒を含有する製剤への最近の傾向を表す。
【0012】
下のTable 1(表1)はUS 2015/111939からとった表形式の脂質製剤分類体系の概要である:
【0013】
【表1】
【0014】
脂質製剤分類体系の更なる記載は、FABAD J. Pharm.Sci.、55~64頁、2013において見出すこともできる。
【0015】
Drug Development and Industrial Pharmacy (2014)、40、783~792は、水難溶性を有する薬物を製剤化する一般的な原理を開示している。より具体的には、それは水中でカンナビジオールの1000倍の可溶性である1mg/mlの溶解度を有する薬物であるフェノバルビタールの製剤化について考察している。
【0016】
当該文献は、製剤中の共溶媒の存在が薬物の安定性に重要であることを述べており、共溶解力の最大の制限が、薬物溶解度を増加させる高い可能性を有する最も水混和性の共溶媒の毒性であることを更に述べている。それは、この水難溶性薬物の製剤化が製剤化の専門家にとって困難な課題となると結論付けている。
【0017】
当該文献が教示しているミクロエマルジョンは、等方性で、低い粘度を有する熱力学的に安定なシステムである、コロイド状分散体である。構造は、界面活性剤及び補助界面活性剤分子の界面フィルムによって安定化された、脂質又は水のミクロドメインで構成される。それらは水中油型又は油中水型エマルジョンと分類され、液滴サイズは150nm未満である。
【0018】
当該文献は、油、界面活性剤、補助界面活性剤及び薬物の等方性混合物であるS(M)EDDSへの関心の高まりについても考察している。これらの経口製剤の有効性は、界面活性剤濃度、油/界面活性剤比、エマルジョンの極性、液滴サイズ及び電荷を含む多くの製剤関連パラメーターに依存すると述べられている。加えて、味は服薬遵守において重要な役割を有すると述べられている。
【0019】
開発された製剤は全て、界面活性剤(Cremophor又はLabrasol、20%w/w)、分離した油相(グリセロールモノカプリロカプレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリル酸プロピレングリコール及びジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールの独自の形態であるいくつかの油が試験され、典型的には4%w/w)、及び補助界面活性剤(Transcutol、PEG400、グリセロール、エタノール及びプロピレングリコールを含み、典型的には20~35%w/wの間の濃度)を含んだ。
【0020】
結論は、フェノバルビタールはいくつかのミクロエマルジョンに容易に溶解できるが、油相の選択が非常に重要であるということであった。
【0021】
当技術分野からの更なるカンナビノイド製剤は以下を含む:
【0022】
US2016/0213624。ポリソルベート80等の界面活性剤/乳化剤を用いた乳化による、カンナビノイド自体ではなく大麻油の製剤を記載している。界面活性剤/乳化剤は0.02%v/v未満の量で使用される。
【0023】
US2016/0184258。例えば、エタノールに溶解されたアサ抽出物、典型的には約35~56%の油基剤、典型的には約28~52%の界面活性剤、及び典型的には約7~9%のエタノール等の共溶媒を含むSEDDS製剤、特にタイプIII製剤を開示している。
【0024】
International Journal of Pharmaceuticsは、脂質、補助界面活性剤又は他の調節剤の添加なしに、界面活性剤としてSolutolを使用する、非経口投与のためのTHCの非イオン性ミクロエマルジョンを開示している。得られたミクロエマルジョンは0.19%THC及び2.52%(wtで)Solutolを含有した。
【0025】
Pharmacology, Biochemistry and Behaviour 2017、153、69~75頁は、最大5mg/ml THCの濃度のTHCのCremophor/生理食塩水(10/90)溶液を開示している。
【0026】
CN103110582も質量パーセンテージで以下の成分を含有するカンナビノイド含有ミクロエマルジョンを開示している:(a)0.01wt%~30wt%カンナビノイド;(b)0.01wt%~30wt%の油相;(c)0.01wt%~60wt%の界面活性剤;及び;(d)0.01wt%~40wt%の補助界面活性剤。
【0027】
「Cannabinoids delivery systems based on supramolecular inclusion complexes and polymeric nanocapsules for treatment of neuropathic pain」(Fanny Astruc-Diaz、Universite Claude Bernard)は、ベータ-カリオフィレンの送達について、100nmの範囲内の高分子ナノカプセルを開示している。この文献はベータ-カリオフィレンをカンナビノイドと誤って記載しているが、この化合物はセスキテルペンである。
【0028】
US 2012/231083(Carleyら)は、合成THCを含む即時放出及び遅延放出ペレットを開示しており、1つのそのようなペレットは、(a)3.49%w/wドロナビノール;(b)3.49%w/wラウリル硫酸ナトリウム;(c)27.91%w/w Neusilin US2;(d)34.88%w/w Avicel PH101;(e)5.30%w/wエチルセルロース;(f)1.67%w/wセバシン酸ジブチルを含有する。
【0029】
WO 2008/024490(Theraquest Biosciences, Inc.社)は、カンナビジオール、ナロキソン、Eudragit RSPO、Eudragit RLPO及びステアリルアルコールで構成されるものを含む、カンナビノイドアゴニスト及びオピオイドアゴニストを含むいつくつかの異なる組成物を開示している。
【0030】
WO 2019/159174(Icdpharma Ltd.社)は、1種又は複数のカンナビノイドを含む固溶体組成物を開示しており、固溶体は体液と接触すると崩壊する又は浸食される又は膨張する。
【0031】
WO 2018/035030(Corr-Jensen Inc.社)は、ビタミン、カロテノイド、ポリ不飽和脂肪酸及びカンナビノイド等の様々な異なる活性物質を含み得る、延長放出脂溶性活性組成物を開示している。
【0032】
バイオアベイラビリティがより高く、十分な量のカンナビノイド(0.5wt%超、より好ましくは更に少なくとも1wt%)を患者に優しい製剤で送達できる経口製剤(経口送達用に設計されておらず、実際に経口送達に適さない注射剤と対照的に)を手に入れる必要が明らかにある。
【0033】
カンナビノイド含有経口製剤におけるエタノール又は油ベース賦形剤の使用に関する問題に加えて、カンナビノイドの強い苦味は、経口カンナビノイド製剤を製造する場合に克服する必要がある更なる問題をもたらす。
【0034】
より若齢の小児を対象とする小児製品については、より若齢の小児はカプセルを飲み込むことが難しいと感じるので、好ましくはシロップとして調剤された、低エタノール製剤又は非エタノール製剤があることが望ましい。特に活性剤の味がマスキングを必要とする場合、より若齢の小児はまた、シロップ等の甘い、風味付けされた製品を好む。
【0035】
カンナビノイドは、特に経口液剤として送達された場合、迅速に代謝することも知られている。例えば、カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)は体内で7-ヒドロキシカンナビジオール(7-OH CBD)へと迅速に分解し、次いでこれはその後7-カルボキシカンナビジオール(7-COOH CBD)へと分解する。てんかんの処置において、7-OH代謝産物は活性であるが、7-COOH代謝産物(最終代謝産物である)は不活性であることが知られており、したがってCBDから7-COOH CBDへの急速分解は、望ましくなく、患者の処置が成功するためにより多くの活性物質が提供されることを必要とする。
【0036】
結果として、カンナビノイドの代謝を回避又は遅くすることは、より良好なバイオアベイラビリティをもたらす医薬を可能にし、より少ない用量の薬剤が提供されることを可能にする。
【0037】
薬物を結腸又は腸に特異的に送達することは、薬物送達システムにとって望ましい目標であったが、今までのところ魅力的なカンナビノイド原薬を含む製剤を提供していない。
【0038】
結腸特異的薬物送達の手法は、胃腸系の1つ又は複数の態様と相互作用する賦形剤を利用することである。加えて、製剤は胃内での消化に耐えることができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【文献】WO 2015/184127
【文献】WO 2012/033478
【文献】US 2015/111939
【文献】US2016/0213624
【文献】US2016/0184258
【文献】CN103110582
【文献】US 2012/231083
【文献】WO 2008/024490
【文献】WO 2019/159174
【文献】WO 2018/035030
【文献】WO 2007/083098
【非特許文献】
【0040】
【文献】Ethanol in Liquid Preparations Intended for Children、Paediatrics:Official Journal of The American Academy of Paediatrics、1984:73:405
【文献】FABAD J. Pharm.Sci.、55~64頁、2013
【文献】Drug Development and Industrial Pharmacy (2014)、40、783~792
【文献】International Journal of Pharmaceutics
【文献】Pharmacology, Biochemistry and Behaviour 2017、153、69~75頁
【文献】「Cannabinoids delivery systems based on supramolecular inclusion complexes and polymeric nanocapsules for treatment of neuropathic pain」(Fanny Astruc-Diaz、Universite Claude Bernard)
【文献】Guidance for Industry Botanical Drug Products Draft Guidance、August 2000、US Department of Health and Human Services、Food and Drug Administration Centre for Drug Evaluation and Research
【文献】Handbook of Cannabis、Roger Pertwee、1章、3~15頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明の目的は、胃耐性であり、カンナビノイドを腸又は結腸領域に送達できる代替カンナビノイド含有製剤を開発することであった。そのような製剤は、薬物開発に利用できるように、カンナビノイド活性物質の良好なバイオアベイラビリティ及び安定性を提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0042】
一実施形態では、本発明は、結腸又は腸への標的化送達を可能にし、胃内での消化を回避する賦形剤に加えて、カンナビノイドの活性剤を含む微粒子を含む懸濁液の形態の製剤を提供する。
【0043】
更なる実施形態では、本発明は顆粒を含む製剤を提供する。顆粒はカンナビノイド微粒子を含むが、錠剤、充填カプセル及びスプリンクル等の代替剤形を製造するために使用され得る。
【0044】
本発明の第1の態様によると、1種又は複数のカンナビノイド及びpH依存放出ポリマーを含む微粒子カンナビノイド含有製剤が提供される。
【0045】
好ましくは、1種又は複数のカンナビノイドは、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピルバリアント(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピルバリアント(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及びテトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)からなる群から選択される。
【0046】
好ましくは、1種又は複数のカンナビノイドは、純粋な、単離された又は合成されたカンナビノイドである。
【0047】
代替として、1種又は複数のカンナビノイドは植物性原薬として存在する。
【0048】
本発明の更なる態様では、1種又は複数のカンナビノイドは、精製された、単離された又は合成されたカンナビノイド及び植物性原薬の混合物として存在する。
【0049】
好ましくは、pH依存放出ポリマーは、メタクリル酸及びメタクリレートのコポリマー、メタクリル酸及びメチルメタクリレートのコポリマー(Eudragit)、メタクリル酸及びエチルアクリレートのコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メチルビニルエーテル及び無水マレイン酸のコポリマー、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、酢酸コハク酸セルロース(CAS)、エチルセルロース、メチルセルロース、シェラック、ジェランガム、ゼイン、アルギン酸及びワックスからなる群から選択される。
【0050】
より好ましくは、pH依存放出ポリマーはHPMCAS又はEudragitである。
【0051】
より好ましくは更に、pH依存放出ポリマーは、HPMCAS-L、HPMCAS-M、HPMCAS-H、Eudragit S100及びEudragit L100からなる群から選択される。
【0052】
好ましくは、微粒子カンナビノイド含有製剤は1種又は複数の湿潤剤を更に含む。
【0053】
より好ましくは、1種又は複数の湿潤剤は、ポロキサマー、ポロキサマー188及び炭酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0054】
本発明の更なる実施形態では、製剤は1種又は複数の懸濁化剤を更に含む。
【0055】
好ましくは、1種又は複数の懸濁化剤は、ポリソルベート20、グリセロール及びキサンタンガムからなる群から選択される。
【0056】
本発明の更なる実施形態では、製剤は1種又は複数のpH緩衝液を更に含む。
【0057】
好ましくは、1種又は複数のpH緩衝液は、クエン酸、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム及びリン酸緩衝生理食塩水からなる群から選択される。
【0058】
本発明の更なる実施形態では、製剤は1種又は複数の保存剤を更に含む。
【0059】
好ましくは、1種又は複数の保存剤は、ソルビン酸カリウム及び安息香酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0060】
本発明の更なる実施形態では、製剤は1種又は複数の抗酸化剤を更に含む。
【0061】
好ましくは、1種又は複数の抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、アルファ-トコフェロール(ビタミンE)、パルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、塩酸システイン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、レシチン、没食子酸プロピル、硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール及びその混合物からなる群から選択される。
【0062】
本発明の更なる実施形態では、製剤は1種又は複数の溶媒を更に含む。
【0063】
好ましくは、1種又は複数の溶媒は、水、エタノール及びアセトンからなる群から選択される。
【0064】
好ましくは、1種又は複数のカンナビノイドは、医薬製剤に対して約10~50wt%、好ましくは約10~30wt%、より好ましくは約20~30wt%の量で存在する。
【0065】
好ましくは、製剤は、粘膜付着性ゲル、錠剤、散剤、液体ゲルカプセル、固体カプセル、経口液剤、経口懸濁液、顆粒及び押出物からなる群から選択される経口剤形である。
【0066】
本発明の更なる態様では、微粒子カンナビノイド含有製剤は、神経保護剤又は抗痙攣薬の投与を必要とする状態の処置において使用される。
【0067】
好ましくは、製剤は発作の処置において使用される。
【0068】
より好ましくは、製剤は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ミオクローヌス発作、若年性ミオクローヌスてんかん、難治性てんかん、統合失調症、若年性痙攣、ウエスト症候群、乳児点頭てんかん、難治性乳児点頭てんかん、結節性硬化症、脳腫瘍、神経因性疼痛、大麻使用障害、心的外傷後ストレス障害、不安、初期の精神病、アルツハイマー病、及び自閉症の処置において使用ためのものである。
【0069】
本発明の第2の態様では、製剤を噴霧乾燥させる工程を含む、前記請求項のいずれかに記載の微粒子カンナビノイド含有製剤を調製する方法が提供される。
【0070】
本発明の第3の態様では、カンナビノイド及びpH依存放出ポリマーの混合物を調製する工程と;中間粉末ブレンドを製造する工程と;中間粉末ブレンドを加熱溶融押出機により加工する工程と;押出物をペレット化する工程と;ペレットを250~500μmに粉砕する工程とを含む、前記請求項のいずれかに記載の微粒子カンナビノイド含有製剤を調製する方法が提供される。
【0071】
好ましくは、抗酸化剤及び/又は崩壊剤は、カンナビノイド及びpH依存放出ポリマーの混合物を調製した後に添加される。
【0072】
本発明の第4の態様では、微粒子カンナビノイド含有製剤を対象に投与する工程を含む、対象を処置する方法が提供される。
【0073】
好ましくは、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】バイオアベイラビリティ研究からの7-COOH CBD代謝産物についての曲線下面積(AUC)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0075】
定義
「カンナビノイド」は、エンドカンナビノイド、フィトカンナビノイド(phytocannabinoid)及びエンドカンナビノイドでもフィトカンナビノイドでもないもの、以下では「シントカンナビノイド(syntho-cannabinoid)」を含む化合物の群である。
【0076】
「エンドカンナビノイド」は、CB1及びCB2受容体の高親和性リガンドである内因性カンナビノイドである。
【0077】
「フィトカンナビノイド」は、天然由来であり、アサ植物で見出され得るカンナビノイドである。フィトカンナビノイドは、植物性原薬を含む抽出物中に存在し得るか、単離され得るか、又は合成的に再現され得る。
【0078】
「シントカンナビノイド」は、カンナビノイド受容体(CB1及び/又はCB2)と相互作用することができるが、内因的にもアサ植物でも見出されない化合物である。例としてWIN55212及びリモナバンが挙げられる。
【0079】
「単離されたフィトカンナビノイド」は、アサ植物から抽出され、副次的で微量のカンナビノイド並びに非カンナビノイド画分等の全ての付加的な成分が除去される程度まで精製されたものである。
【0080】
「合成カンナビノイド」は化学合成によって製造されたものである。この用語は、単離されたフィトカンナビノイドを、例えば、その薬学的に許容される塩を形成することによって、又は1つ若しくは複数の基をカンナビノイド分子に付加し、それが体内で代謝されるまで分子を不活性にすることによってカンナビノイドのプロドラッグを製造するプロセスによって改変することを含む。
【0081】
「実質的に純粋な」カンナビノイドは、95%(w/w)を超える純度で存在するカンナビノイドと定義される。より好ましくは96%(w/w)超~97%(w/w)~98%(w/w)~99%(w/w)以上である。
【0082】
「高度に精製された」カンナビノイドは、アサ植物から抽出され、カンナビノイドと共抽出される、他のカンナビノイド及び非カンナビノイド成分が実質的に除去される程度まで精製され、したがって、高度に精製されたカンナビノイドは95%(w/w)以上の純度である、カンナビノイドと定義される。
【0083】
「植物性原薬」又は「BDS」は、Guidance for Industry Botanical Drug Products Draft Guidance、August 2000、US Department of Health and Human Services、Food and Drug Administration Centre for Drug Evaluation and Researchにおいて、「1種又は複数の植物、藻類、又は微細な菌類に由来する薬物。それは植物性原料から以下のプロセスの1つ又は複数によって調製される:粉砕、煎出、圧搾、水抽出、エタノール抽出又は他の同様のプロセス」と定義されている。
【0084】
植物性原薬は、高度に精製された又は化学的に改変された天然供給源由来の物質を含まない。したがって、アサの場合、アサ植物に由来するBDSは、高度に精製されたカンナビノイドを含まない。
【0085】
用語「微粒子(microparticle)」又は「微粒子(microparticulate)」は、1~1000μmのサイズの粒子を指す。本発明の用語において、微粒子は、1種又は複数のカンナビノイドに加えて、カンナビノイド等の活性剤を含む。
【0086】
医薬品有効成分
本発明の目的は、改善されたカンナビノイド含有製剤を提供することである。
【0087】
多くの公知のカンナビノイドがあり、本発明に従う製剤は、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビジオールコール(cannabidiorcol)としても公知のカンナビジオール-C1(CBD-C1)、nor-カンナビジオールとしても公知のカンナビジオール-C4(CBD-C4)、カンナビジオール-C6(CBD-C6)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピルバリアント(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピルバリアント(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及びテトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)からなる群から選択される少なくとも1種のカンナビノイドを含む。このリストは網羅的でなく、単に本出願において特定されるカンナビノイドを参照のために詳細に示している。今まで100種を超える様々なカンナビノイドが特定されており、これらのカンナビノイドは以下の通り異なる群に分けられ得る:フィトカンナビノイド、エンドカンナビノイド及び合成カンナビノイド。
【0088】
本発明に従う製剤はHandbook of Cannabis、Roger Pertwee、1章、3~15頁に開示されているものから選択される少なくとも1種のカンナビノイドも含み得る。
【0089】
製剤は、好ましくはカンナビジオール(CBD)又はカンナビジバリン(CBDV)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビゲロール(CBG)及びカンナビジオール酸(CBDA)又はその組合せからなる群から選択される1種又は複数のカンナビノイドを含むことが好ましい。製剤はカンナビジオール(CBD)及び/又はカンナビジバリン(CBDV)を含むことが好ましい。
【0090】
更なる実施形態では、製剤は少なくとも2種のカンナビノイドを含むことが好ましい。好ましくは、これらのカンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビゲロール(CBG)及びカンナビジオール酸(CBDA)からなる群から選択される。
【0091】
1種又は複数のカンナビノイドは、全組成物に対して約0.1~30(%w/v)、好ましくは約5~15(%w/v)の量で存在することが好ましい。
【0092】
好ましくは、1種又は複数のカンナビノイドは、合成であるか、又はその天然供給源から高度に精製される(例えば、植物由来の再結晶化された形態)。高度に精製された供給源が使用される場合、それは1種又は複数のカンナビノイドが全抽出物の95%(w/w)、より好ましくは98%(w/w)超で存在するように精製される。
【0093】
更なる実施形態では、1種又は複数のカンナビノイドは、複合混合物又は植物性原薬(BDS)として存在する。そのような混合物として存在する場合、主なカンナビノイドは、主なカンナビノイドと共抽出される、全ての他のカンナビノイド及び非カンナビノイド成分に加えて存在する。THC BDS及びCBD BDSは、その全体が組み込まれる特許出願WO 2007/083098において特徴付けられている。
【0094】
更なる実施形態では、製剤は、高度に精製された形態(>98%)又は合成形態で存在するカンナビノイドの混合物を、複合混合物又はBDSとして存在するカンナビノイドと組み合わせて含む。
【0095】
経口医薬製剤中のカンナビノイドの単位用量は、0.001~350mg/mL、好ましくは0.1~35mg/mL、より好ましくは1~20mg/mLの範囲であり得る。
【0096】
賦形剤
カンナビノイドを含む微粒子ポリマーを製造するために、以下の賦形剤が重要である。
【0097】
pH依存放出ポリマー:
本発明のpH依存放出ポリマーは、酸性pH(胃内で生じるような)ではなくpH6(腸)又はpH7(結腸)のpHで活性剤の放出を可能にするために使用される。使用され得る適切なポリマーは、ポリメタクリレート誘導体(例えば、メタクリル酸及びメタクリレートのコポリマー、メタクリル酸及びメチルメタクリレートのコポリマー又はメタクリル酸及びエチルアクリレートのコポリマー);ヒプロメロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP));ポリビニルアセテート誘導体(例えば、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP));ポリビニルエーテル誘導体(例えば、メチルビニルエーテル及び無水マレイン酸のコポリマー);セルロース誘導体(例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸テレフタル酸セルロース、酢酸イソフタル酸セルロース、酢酸酪酸セルロース(CAB)、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、酢酸コハク酸セルロース(CAS)、エチルセルロース、メチルセルロース);シェラック、ジェランガム、ゼイン、アルギン酸、ワックス及びその混合物を含む。
【0098】
ポリマーHPMCAS並びにメタクリル酸及びメチルメタクリレートのコポリマーが好ましい。メタクリル酸及びメチルメタクリレートのコポリマーは、商標名Eudragit(登録商標)で公知である。Eudragitの2つの形態が公知である:L100及びS100。L100は、1:1の比の2つの化合物のコポリマーであり、S100は0.3%のラウリル硫酸ナトリウムを更に含む。
【0099】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)
HPMCASは、アセチル及びスクシノイル基を含有するセルロース誘導ポリマーである。それは、ポリマー内に見出されるアセチル及びスクシノイル基の比に依存して、5.5~6.5のpH範囲で溶解する腸溶ポリマーである。
【0100】
それは難溶性薬物の溶解度増強剤として広く使用されており、溶解度の増強は、HPMCASがAPIと共に固体分散体に配合される場合に生じる。
【0101】
HPMCASの3つのグレード、HPMCAS-L、HPMCAS-M及びHPMCAS-Hが利用可能であり、これらのポリマーはそれぞれpH5.5、6.0及び6.5で溶解する。
【0102】
HPMCASは、その規制的許容性、利用可能な毒性データ、それがカンナビノイドと共通の溶媒を共有していること、その汎用性及び最も重要なことにはポリマーが溶解するpHゆえに、適切な担体として選択された。
【0103】
Eudragit L100(メタクリル酸及びメチルメタクリレートコポリマー(1:1))
Eudragit L100は、1:1の比のメタクリル酸及びメチルメタクリレートからなるコポリマーである。メタクリル酸のメチルメタクリレートに対する比は、ポリマーが溶解するpHを制御する。Eudragit L100は、6.0以上のpHで放出するように設計されている。
【0104】
それは最も一般的には、錠剤又はカプセルに腸溶コーティングを付与するためにそれらに噴霧コーティングされる水性基剤に分散されている。それは、APIと共に固体分散体に配合された場合、水難溶性薬物の溶解度増強剤としても使用され得る。
【0105】
Eudragit L100は、その規制的許容性、利用可能な毒性データ、それがカンナビノイドと共通の溶媒を共有していること、その汎用性及び最も重要なことにはポリマーが溶解するpHゆえに、適切な担体として選択された。
【0106】
Eudragit S100(メタクリル酸及びメチルメタクリレートコポリマー(1:2))
Eudragit L100は、1:2の比のメタクリル酸及びメチルメタクリレートからなるコポリマーである。Eudragit S100は、7.0以上のpHで放出するように設計されている。
【0107】
それは最も一般的には、錠剤又はカプセルに結腸コーティングを付与するためにそれらに噴霧コーティングされる水性基剤に分散されている。それは、APIと共に固体分散体に配合された場合、水難溶性薬物の溶解度増強剤としても使用され得る。
【0108】
Eudragit S100は、その規制的許容性、利用可能な毒性データ、それがカンナビノイドと共通の溶媒を共有していること、その汎用性及び最も重要なことにはポリマーが溶解するpHゆえに、適切な担体として選択された。
【0109】
湿潤剤:
ポロキサマー188
ポロキサマー188は、多機能性を有する両親媒性コポリマーである。それは、可溶化剤、乳化剤として、及び固体分散体製剤の湿潤剤としても使用され得る。ポロキサマー188のHLB値は29であり、それが非常に親水性であることを意味する。
【0110】
ポロキサマー188は、水和特性に対して良い影響を有し得ること、カンナビノイド製剤におけるその以前の使用において、不適合性が低レベルであることが明らかになったこと、及びその規制的許容性ゆえに、有望な湿潤剤として選択された。
【0111】
他の湿潤剤
下に列挙されているもの等の他の湿潤剤は、ポロキサマーP188と交換可能である。これらは、ポロキサマー;ポリソルベート80;炭酸ナトリウム;ポリエチレングリコール(PEG、Mw1500~20,000);アラビアゴム、アルギン酸、メチルセルロース等の親水性コロイド;アルコール及びグリセリンを含む。
【0112】
懸濁化剤:
ポリソルベート20(Tween 20)
Tween 20は多機能性を有する非イオン性界面活性剤である。それはソルビトールのエトキシ化によって形成される。名前が示唆する通り、エトキシ化プロセスは20個の反復単位を有する賦形剤をもたらす。これらの反復単位はポリエチレングリコールからなる。Tween 20は乳化剤、湿潤剤として、及び可溶化剤としても作用することができる。Tween 20のHLB値は16.7であり、それが親水性界面活性剤であることを意味する。
【0113】
グリセロール
グリセロールは無色及び無臭の粘性の液体である。それは、食品及び医薬品産業において甘味剤及び保湿剤として広く使用されている。
【0114】
キサンタンガム
キサンタンガムは、食品添加物として、及び医薬品産業において液体の粘度を増加させる作用剤として一般的に使用されている。
【0115】
抗酸化剤:
アルファトコフェロール
アルファトコフェロールはビタミンEの誘導体である。それは医薬製剤において抗酸化剤として一般的に使用されている。
【0116】
アルファトコフェロールは、その規制的許容性、それが他のカンナビノイド製剤において酸化を抑えるのに有効であることを既に示していること、それがアサ植物内に既に天然に存在するという利点を有すること、及びそれがカンナビノイドと共通の溶媒を共有していることゆえに、有望な抗酸化剤として選択された。
【0117】
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)
BHTは医薬製剤において一般的に使用されている結晶性抗酸化剤である。
【0118】
BHTは、その規制的許容性及びそれがカンナビノイドと共通の溶媒を共有していることゆえに、有望な抗酸化剤として選択された。
【0119】
ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)
BHAは医薬製剤において一般的に使用されている結晶性抗酸化剤である。
【0120】
BHAは、その規制的許容性及びそれがカンナビノイドと共通の溶媒を共有していることゆえに、有望な抗酸化剤として選択された。
【0121】
pH緩衝液:
水酸化ナトリウム
水酸化ナトリウムは、pH調整剤として一般的に使用されているアルカリである。それは、8%の最大濃度で経口医薬製剤において使用するためにFDA不活性成分データベースに載せられている。水酸化ナトリウム溶液のpHは、強アルカリとなる13である。水酸化ナトリウムは、溶液のpHを調節するその能力ゆえに賦形剤として選択された。
【0122】
エデト酸カルシウム二ナトリウム(EDTA)
EDTAは医薬製剤においてキレート剤として一般的に使用されている。キレート剤はフリーラジカルを「拭い取り」、したがって、医薬製剤の安定性を増強する。
【0123】
EDTAは、その規制的許容性、またそれがカンナビノイドベース製剤、即ち、経口水性液剤及び静脈内液剤の安定性を改善することを以前に実証していることゆえに、有望なキレート剤として選択された。
【0124】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)
PBSは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二ナトリウム及びリン酸一カリウムを含む緩衝溶液である。PBSのpHは7.4である。PBSは、溶液のpHを調節及び緩衝するその能力、それが生物学的研究においても一般的に使用されていること、及びその成分が良好な規制的許容性を有することゆえに選択された。
【0125】
溶媒:

水は、いくつかの異なる理由でEudragitベース製剤の共溶媒として選択された。文献は、システムへの水の添加がより球状のミクロスフェアの形成をもたらすことを示唆している(Jablan & Jug、2015.)。球形状のミクロスフェアは、より良好に流動し、懸濁された場合に容易に凝集しないという利点を有する。水は、水溶性添加物をシステムに組み込む選択肢も与える。最後に、水は非毒性である。
【0126】
アセトン
アセトンはHPMCASベース製剤の溶媒として選択された。アセトンはHPMCASの懸濁液を形成できるだけであるが、重大な利点を有する。アセトンは56℃という低い沸点を有しており、残留アセトンレベルを許容される値にまで低下させることが簡単であることを意味する。またそれは、FDAクラス1~3溶媒分類体系の範囲外の許容される毒性プロファイルを有する。
【0127】
セルロースポリマーが溶解して溶液を生成することは難しく、DMSO等のより毒性のある溶媒はHPMCASを溶解できるが、溶媒濃度を許容レベルまで低下させなければならないときに問題が生じる。
【0128】
エタノール
エタノールはEudragitベース製剤の共溶媒として選択された。エタノールは、L100を完全に可溶化することができるが、S100の懸濁液を形成するだけである。S100のエタノール懸濁液への水の添加は、澄明な溶液を生成する。
【0129】
エタノールは78℃という低い沸点を有し、残留エタノールレベルを許容される値まで低下させることが簡単であることを意味する。またそれは、FDAクラス1~3溶媒分類体系の範囲外の許容される毒性プロファイルを有する。
【実施例1】
【0130】
好ましい製剤
本発明に従う微粒子カンナビノイド製剤は、カンナビノイド代謝を最小限にできることが好ましい。
【0131】
高分子ミクロスフェアは2つの異なる機構により代謝を低減する可能性を有しており、第1に文献は、適切な粒径(5~10μM)で高分子ミクロスフェアは腸細胞壁によって粒子全体として吸い込まれ、したがって、捕捉された薬物を分解酵素から保護することができることを示唆している。
【0132】
第2に、制御放出ポリマーは、捕捉された薬物を結腸等の胃腸管の異なる部分に送達するために使用することができ、この変化が捕捉されたカンナビノイドの代謝プロファイルを変え得る。
【0133】
以下はカンナビノイドミクロスフェアを調製するために使用され得る本発明に従う好ましい製剤を表す。ここで活性剤は、カンナビジオールとして用意されるが、ミクロスフェアは任意の天然若しくは合成カンナビノイド、その塩又はプロドラッグを使用して製造され得る。
【0134】
20% CBD HPMCAS-L 5% P188ミクロスフェア
・CBD 20(%w/w)
・HPMCAS-L 74.8(%w/w)
・Kolliphor P188 5(%w/w)
・アルファトコフェロール 0.2(%w/w)
【0135】
15% HPMCAS-M 5% P188ミクロスフェア
・CBD 15(%w/w)
・HPMCAS-M 79.8(%w/w)
・Kolliphor P188 5(%w/w)
・アルファトコフェロール 0.2(%w/w)
【0136】
20% CBD L100ミクロスフェア
・CBD 20(%w/w)
・Eudragit L100 78.28(%w/w)
・EDTAカルシウム二ナトリウム 1.52(%w/w)
・アルファトコフェロール 0.2(%w/w)
【0137】
15% CBD S100 5% P188ミクロスフェア
・CBD 15(%w/w)
・Eudragit L100 78.28(%w/w)
・Kolliphor P188 5(%w/w)
・水酸化ナトリウム 1.52(%w/w)
・アルファトコフェロール 0.2(%w/w)
【0138】
15% CBD S100 20% P188ミクロスフェア
・CBD 15(%w/w)
・Eudragit L100 63.28(%w/w)
・Kolliphor P188 20(%w/w)
・水酸化ナトリウム 1.52(%w/w)
・アルファトコフェロール 0.2(%w/w)
【0139】
上記の通り、カンナビノイドを15%及び20%の濃度で添加し、ミクロスフェアを製造したが、0.1%~30%のカンナビノイドの濃度を使用することができる。カンナビノイドの濃度は、使用されるカンナビノイド及び製剤が処置するために使用され得る治療適応症に依存する。
【0140】
以下のTables 2 - 6(表2~6)は、結腸又は腸溶放出に適した例示製剤を示す。ここで、上記のカンナビノイドミクロスフェアを製剤化し、懸濁液を製造した。これらの例示製剤で使用されたカンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)又は高度に精製されたCBD及びCBD BDSの組合せであり、この場合BDS中に存在する他の微量のカンナビノイド及び非カンナビノイドに加えて、主なカンナビノイド、即ちCBD及びTHCの混合物が製剤中に存在する。明らかに、他のカンナビノイド又は精製されたもの及びBDSの組合せを利用して、結腸又は腸溶放出製剤を調製することができる。
【0141】
【表2】
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
【表6】
【0146】
投与の方法
Tables 2 - 5(表2~5)の上記の好ましい製剤は、医薬としての投与に適している。投与の様々な様式を製剤と共に利用することができ、これらは経口液剤、経口懸濁液、顆粒を含む製剤、食品と混合されるスプリンクルを含む製剤、圧縮錠剤、粘膜付着性ゲル、錠剤、散剤、液体ゲルカプセル、固体粉末充填カプセル、押出物、鼻スプレー又は注射製剤を含む。
【0147】
懸濁液又は経口液剤として提供される場合、製剤は、患者の体重(kg)当たりのカンナビノイド(mg)の量に基づいて正確な用量を患者に提供できるように、必要に応じてシリンジを用いてビンに分注される。
【0148】
加えて本発明の製剤は、スプレー、飲料等の代替手段で、又は嚥下前に患者に投与される小容量、例えば30mLの溶液に調製され得る。
【0149】
以下の実施例は、カンナビノイドミクロスフェアを含む製剤である、本発明の製剤の開発を記載する。そのような製剤は、それらの活性剤を腸(腸溶)又は結腸で放出するように設計される。体内で不活性な代謝産物への急速な代謝を受けることが知られているカンナビノイドの腸内又は結腸送達は、薬物送達の新規の驚くほど効率的な方法を提供する。
【実施例2】
【0150】
腸溶放出及び結腸放出微粒子製剤を製造するための賦形剤の選択
薬物水和研究
ポリマーマトリックスからの薬物放出を評価するin vitro実験は、薬物放出がin vivoで微粒子から達成されることを確実にするために重要である。
【0151】
溶媒キャスティング法を使用して、API、ポリマー及び湿潤剤(妥当な場合)からなるポリマーフィルムを作製した。
【0152】
次いで製造されたフィルムをpH7.0の緩衝液中で水和させ、ポリマーフィルムからの薬物放出を評価した。
【0153】
5種の異なるポリマーを薬物水和中に評価した:Eudragit L100、Eudragit S100、HPMCAS-L、HPMCAS-M及びHPMCAS-H。
【0154】
2種の異なる湿潤剤、ポロキサマー188及びTween 20も評価した。
【0155】
実験の結果は、Eudragit L100ポリマーを除く全てのポリマーについて、薬物放出を補助するために湿潤剤が必要であることを示した。加えて、ポロキサマー188がTween 20より有効な湿潤剤であることが見出された。
【0156】
水和されるとフィルムは濁ったエマルジョンを形成した。HPMCAS-Hポリマーからの薬物放出は、様々な薬物及び湿潤剤濃度で不良であった。
【0157】
以下の薬物及び湿潤剤濃度を決定し、更なる開発のために用いた:
・20%CBD;HPMCAS-L;5%P188
・15%CBD;HPMCAS-M;5%P188
・20%CBD;Eudragit L100
・15%CBD;Eudragit S100;20%P188
【0158】
4種のポリマーのうち3種について、湿潤剤をポリマーマトリックスに含めると、薬物放出が胃のpHと一致するpH値で生じ得るリスクがある。胃のpHは約4.0である。
【0159】
したがって、上記の薬物及び湿潤剤濃度のフィルムを、4.0のpHを有する緩衝液中での水和について試験した。このpHでの薬物放出は、試験したポリマーシステムの全てについて0.5%未満であり、下のTable 7(表7)に示されるように、P188を湿潤剤として含めることは、ポリマーマトリックスが薬物を放出すべきpHを変更しないことを示す。
【0160】
【表7】
【0161】
抗酸化剤スクリーニング
カンナビノイドCBE-Iが形成されていることが観察されたので、抗酸化剤をCBD/ポリマーシステムに含める必要があった。CBE IはCBDの酸化誘導分解物であり、これは次にCBE IIへと更に分解する。
【0162】
3種の異なる抗酸化剤を、全て0.2%w/wの濃度でスクリーニングした:
・アルファ-トコフェロール
・ブチル化ヒドロキシトルエン
・ブチル化ヒドロキシアニソール
【0163】
これらは、各々名目上15%のCBD薬物負荷を有する4種の異なるポリマーマトリックスに含めた:
・HPMCAS-L
・HPMCAS-M
・Eudragit L100
・Eudragit S100
【0164】
試料を作製し、40℃/75%RHで28日の期間保存した。
【0165】
抗酸化剤の添加は試料中に形成された未知の分解物の数も著しく減少させたので、結果は、HPMCAS-L及びHPMCAS-Mの両方について抗酸化剤が必要であることを示した。
【0166】
Eudragit L100及びEudragit S100を含有する試料は、HPMCASベース試料と異なる挙動を示した。抗酸化剤の添加は、研究の間にCBE I及びCBE IIのレベルを定量化のレベル未満まで低下させたが、抗酸化剤が存在するかどうかにかかわらず、大量のTHCが試料中に見られた。抗酸化剤はTHCの形成に対して何の効果も有していなかった。これはCBDのTHCへの分解が、酸性機構であり、酸化機構ではないからである。
【0167】
これらの実験から、全ての4種のポリマーシステムは抗酸化剤の添加から利益を得ることが結論付けられた。
【実施例3】
【0168】
腸溶放出及び結腸放出微粒子製剤の製造の方法
腸溶放出及び結腸放出微粒子製剤の製造の2つの代替方法を開発した。第1は、懸濁液又は錠剤に更に製剤化することができる微細な粉末を提供する噴霧乾燥であり、第2は、加熱溶融押出プロセスであり、これにより添加物又はスプリンクルとして使用され得る顆粒が製造される。2つのプロセスは、下に更に詳細に記載されている。
【0169】
噴霧乾燥
CBDを含有するHPMCAS-L(Table 2(表2))及びEudragit S100(Table 4(表4))を含む製剤を噴霧乾燥させて乾燥粉末を形成することが可能であるかどうかを決定した。両方のポリマーを名目上15%の薬物濃度で噴霧乾燥させた。
【0170】
以下の条件を使用してHPMCAS-LをCBDと共に噴霧乾燥させた:
・薬物濃度:15%
・固体濃度:5%
・入口温度:85℃
・出口温度:55℃
・アスピレーター:75%
・ポンプ:5%
・溶媒:アセトン
【0171】
以下の条件を使用してEudragit S100をCBDと共に噴霧乾燥させた:
・薬物濃度:15%
・固体濃度:3%
・入口温度:100℃
・出口温度:62℃
・アスピレーター:100%
・ポンプ:5%
・溶媒:エタノール:水50:50比。
【0172】
上の条件は、試験した両方のポリマーについて噴霧乾燥粉末を製造し、HPMCAS及びCBD、並びにEudragit S100及びCBDからなる噴霧乾燥粉末を作ることが可能であることを示した。
【0173】
HPMCASの異なるグレード間の化学的類似性ゆえに、HPMCAS-Lについての良い結果は他のグレードについての良い結果を示す。Eudragit S100及びEudragit L100も類似の化学構造を共有しており、このことはCBDをL100と共に噴霧乾燥することが良い結果をもたらすことを示す。
【0174】
以下の構成の噴霧乾燥機が好ましい:
・0.7mmのノズル先端を有する2つの流体ノズル
・乾燥ガス:窒素
・陰圧モード
・標準サイクロンの代わりに高性能サイクロンの使用
・廃棄物回収付属品と共に使用される長い乾燥チャンバー
【0175】
HPMCASポリマー
HPMCAS-L及びHPMCAS-Mの噴霧乾燥は互換性があり、したがって、同じプロセスをHPMCAS-L及びHPMCAS-Mに使用することができた。
【0176】
カンナビノイド及びHPMCASを可溶化するその能力ゆえに、アセトンを噴霧乾燥のための溶媒として選択した。加えてそれは、その限定された毒性ゆえにFDAクラスIII溶媒である。アセトン中でHPMCASは溶解し、微細な懸濁液を生成する。
【0177】
Eudragitポリマー
エタノール及び0.5%w/w EDTA溶液の混合物は、Eudragit L100ポリマーの噴霧乾燥のための溶媒ミックスとして選択した。エタノールは、カンナビノイド及びEudragit L100に適する溶媒であるので選択した。それは、その限定された毒性ゆえにFDAクラスIII溶媒でもある。EDTAは、最終CBD L100ポリマーシステムを安定化するのを助けるので必要とされた。エタノール及びEDTA溶液は完全に混和性であった。溶媒ミックスは80:20の比のエタノール:EDTA溶液からなった。エタノール含有量を更に増加させるために更なる最適化を行うことができ、エタノールは水より揮発性であるのでより高いエタノール含有量は有利である。
【0178】
上述の理由により、エタノール及び0.1M水酸化ナトリウムの混合物をEudragit S100ポリマーの噴霧乾燥のための溶媒ミックスとして選択した。0.1M NaOHはS100ポリマーシステムの最適な安定剤であった。
【0179】
噴霧乾燥製剤の応用
次いで上の実験で生成された、得られた噴霧乾燥粉末を更に製剤化し、薬学的に許容される製剤を得ることができる。
【0180】
噴霧乾燥粉末を水又はグリセロール等の溶媒と混合し、溶液として経口投与され得る懸濁液を製造した。噴霧乾燥粉末は代替的に、圧縮して錠剤にするか、又はカプセルに充填し、患者によって飲み込まれてもよい。
【0181】
加熱溶融押出
本発明の微粒子製剤の投与の代替手段が提供される。加熱溶融押出の技術を使用して、微粒子顆粒を製造する。そのような顆粒は、スプリンクルとして食品への添加物として使用され得る。そのような投与選択肢は、より若齢の患者及び錠剤の嚥下が困難な可能性があるそれらの患者に有益である。
【0182】
加熱溶融押出は、熱及び圧力を使用してポリマー及び活性剤を溶融するプロセスである。それは、溶媒を用いず、活性剤の溶解度及びバイオアベイラビリティを増加させ得る。
【0183】
プロセスは以下の通りである:
【0184】
ポリマー及びカンナビノイドを一緒に混合する。この段階の後に必要に応じて抗酸化剤及び/又は崩壊剤を添加してもよい。ブレンドを混合して中間粉末ブレンドを形成し、次いでこれを加熱溶融押出機により加工する。次いで押出物をペレット化し、必要なサイズに更に粉砕する。500μm/250μmのペレットサイズが好ましい。
【0185】
加熱溶融押出により製造されたスプリンクルの試料を試験し、それらが胃のpHではなくそれらの意図されたpHで放出することを決定し、試験した全ての製剤が意図されたpHでそれらの活性物質の93~96%を放出した。どれも胃のpHで活性物質を放出しなかった。
【0186】
加熱溶融押出ポリマーの安定性を12週間の期間にわたり試験し、その期間にわたりCBD関連分解物の著しい増加はなく、粒径の変化も一切なかった。
【実施例4】
【0187】
腸溶放出及び結腸放出微粒子製剤の安定性
噴霧乾燥及び懸濁液への更なる製剤化によって調製された2種の異なる製剤を、下のTable 8(表8)に記載の通りの短期安定性研究に供した。
【0188】
【表8】
【0189】
様々な時点で試験を行い、以下を決定した:外観、カンナビノイドアッセイ、示差走査熱量測定(DSC)及び乾式分散法による粒径。
【0190】
製剤番号4の場合、この製剤は高度に精製されたCBD及びCBD BDSの混合物を含有する。この製剤の安定性を決定するために、製剤中の主なカンナビノイド、即ちCBD及びTHCの濃度を分解産物と共に決定した。
【0191】
下のTables 9 - 12(表9~12)は、安定性研究から得られたデータを示す。
【0192】
【表9】
【0193】
【表10】
【0194】
【表11】
【0195】
【表12】
【0196】
Tables 9 - 12(表9~12)に提示されている結果は、1カ月の期間にわたり、加速条件で、分解物の大きな増加もCBDの量の減少もないことを実証している。
【0197】
結論として、カンナビノイド及びポリマーの微粒子を含む製剤は、安定であり、6カ月の保存期間が可能である。
【実施例5】
【0198】
腸溶放出及び結腸放出微粒子製剤の粒径
上記実施例4に記載の通りの短期安定性研究からの様々な製剤は、微粒子の粒径を測定するために試験した。
【0199】
Table 15(表15)に記載の製剤の場合、この製剤は高度に精製されたCBD及びCBD BDSの混合物を含有する。
【0200】
下のTables 13 - 15(表13~15)はこれらのデータを記載している。
【0201】
【表13】
【0202】
【表14】
【0203】
【表15】
【0204】
見ての通り、カンナビノイド含有微粒子製剤の粒径は安定性研究の間に大幅に変わらず、これは製剤の保存中に粒径の劣化が一切ないことを意味する。
【実施例6】
【0205】
結腸放出微粒子製剤のバイオアベイラビリティ
実施例1で詳細に示した結腸放出(CR)製剤が適切なバイオアベイラビリティを提供できるかどうかを決定するために、ラットを使用するPK研究を行った。
【0206】
これらの製剤をタイプI油ベース製剤と比較した。
【0207】
使用した活性物質は、タイプI油ベース製剤についてはCBDであり、結腸放出及び腸溶放出製剤は2種の異なる活性物質;CBD単独又はTHC及びCBDの組合せで試験した。
【0208】
研究の設計は、ラットへの経口投与後にCBD及びTHC並びにそれらの代謝産物(ヒドロキシ-CBD、カルボキシCBD、ヒドロキシ-THC及びカルボキシ-THC)の血漿薬物動態を測定することであった。
【0209】
1群当たりのオスのhan wistarラット(n=3)に、投与前に絶食させ、投与の4時間後に給餌した。
【0210】
試料採取時間は、投与後0、1、2、4、8、12及び24時間であった。CBD、THC及びそれらのそれぞれの代謝産物の決定は、逆相液体クロマトグラフィーとタンデム質量分析検出を用いてタンパク質沈殿によって行った。CBDのLLOQは1ng/mLであり、全ての代謝産物は0.5ng/mLのLLOQを有した。
【0211】
ヒト等価用量(HED)は以下の式を使用して推定することができる:
【0212】
【数1】
【0213】
ラットのKmは6であり、ヒトのKmは37である。
【0214】
したがって、ヒトの場合、ラットにおける10mg/kg用量は、約1.6mg/kgのヒト用量と等しい
【0215】
Table 16(表16)は試験した様々な製剤のバイオアベイラビリティを詳細に示し、図1はCBDの非活性代謝産物7-COOH CBDのAUCを詳細に示している。グラフに見られるように、CBD微粒子懸濁液並びに高度に精製されたCBD及びCBD BDSの混合物を含有する懸濁液の両方において、外れ値である1つの結果があり、7-COOH CBDの実際の濃度が表に記録されている平均AUCよりはるかに低かったことを示唆している。
【0216】
【表16】
【0217】
結果は、タイプI油ベース製剤と比較して、結腸放出及び腸溶放出製剤における不活性カルボキシ-CBD代謝産物の量の著しい減少を実証している。このことは、より少ない用量の活性物質を投与して同じ効果を可能にすることができることを意味するので、非常に有益である。
【実施例7】
【0218】
好ましい製剤の長期安定性
HPMCAS-L中の高度に精製されたCBD及びCBD BDSの混合物を含有する懸濁液をTable 17(表17)に示す通りの長期安定性研究に用いた。この製剤の安定性を決定するために、製剤中の主なカンナビノイド、即ちCBD及びTHCの濃度を分解産物と共に決定した。
【0219】
【表17】
【0220】
以下を決定するために、様々な時点で試験を行った:外観;カンナビノイドアッセイ及び乾式分散法による粒径。
【0221】
下のTable 18(表18)は、安定性研究から得られたデータを示す。
【0222】
【表18】
【0223】
Table 18(表18)に提示されている結果は、6カ月の期間にわたり、様々な温度で、分解物(CBE-I、OH-CBD、CBN)の大きな増加も、主なカンナビノイドであるCBD又はTHCの量の減少もないことを実証している。
【0224】
結論として、カンナビノイド及びポリマーの微粒子を含む製剤は安定であり、少なくとも6カ月の保存期間を可能にする。
【実施例8】
【0225】
長期研究からの粒径
上記実施例7に記載の通りの長期安定性研究からの製剤を、微粒子の粒径を測定するために試験した。
【0226】
下のTable 19(表19)はこのデータを記載している。
【0227】
【表19】
【0228】
見ての通り、カンナビノイド含有微粒子製剤の粒径は安定性研究の間に大幅に変わらず、これは製剤の長期保存中に粒径の劣化が一切ないことを意味する。
図1