(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】離型フィルム{RELEASE FILM}
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240912BHJP
C09D 161/28 20060101ALI20240912BHJP
C09D 201/02 20060101ALI20240912BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240912BHJP
【FI】
B32B27/00 L
C09D161/28
C09D201/02
C09D7/40
(21)【出願番号】P 2022141454
(22)【出願日】2022-09-06
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0119147
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520080171
【氏名又は名称】東レ尖端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INC.
【住所又は居所原語表記】(Imsu-dong)300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ミンウ
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ホンジプ
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-050863(JP,A)
【文献】特開2021-079699(JP,A)
【文献】特開2012-241130(JP,A)
【文献】特開2021-091127(JP,A)
【文献】特開2017-105092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09D 1/00- 10/00,
101/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム;及び前記基材フィルムの少なくとも一面に離型コーティング組成物が塗布されて形成される離型層;を含み、
前記離型コーティング組成物は化学式1のメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体、またはこれらの組合わせであるメラミン成分;極性官能基を含有し、重量平均分子量が3,000~30,000である重合体成分;及び酸触媒を含み、
前記重合体成分はシリコン重合体成分を含まず、
前記重合体成分はポリエステル、ポリウレタン、ポリビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アクリレート、メタクリレート、これらの組合わせ、及びこれらの共重合体からなる群から選択された1つ以上であり、
前記極性官能基は水酸化基、カルボキシ基、アミノ基、アミン基、カルボニル基、アクリル基、アクリロイル基、ニトリル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、及びエステル基で構成された群から選択された1つ以上であり、
前記離型層は、下記式(1)を満たす離型フィルム。
式(1)
0.5≦P
b/P
a≦10.0
P
a:FT-IRスペクトルにおいて、波数が1450cm
-1以上1650cm
-1未満の領域における最大吸収ピーク強度
P
b:FT-IRスペクトルにおいて、波数が1650cm
-1以上1850cm
-1以下の領域における最大吸収ピーク強度
[化学式1]
【化1】
(式中、Xは水素原子、-CH
2OH、または-CH
2-O-Rを示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。Rは、炭素数1~8つのアルキル基を示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。少なくとも1つのXは-CH
2-O-CH
3である)
【請求項2】
前記離型フィルムは、下記の条件(1)~条件(4)のうちの1つ以上を満たす
請求項1に記載の離型フィルム。
条件
(1)前記離型フィルムの離型層にTESA7475テープを付着した後、0.3m/分の剥離速度で180°剥離時の剥離力を測定したとき、剥離力が30~50gf/inである
(2)前記離型フィルムの離型層にTESA7475テープを付着し、常温で24時間経過後、0.3m/分の剥離速度で180°剥離時の剥離力を測定したとき、常温1日剥離力が200~250gf/inである
(3)グリーンシートに対して前記離型フィルムを0.5m/分の剥離速度で90°剥離時の剥離力を測定したとき、グリーンシートに対する離型フィルムの剥離力が1~100gf/inである
(4)RF
90/RF
1≧0.9(ここで、RF
1及びRF
90は、それぞれグリーンシートが付着した離型フィルムを24時間(1日)及び90日間室温23℃、湿度50%の条件下で保管した後に測定したグリーンシートに対する離型フィルムの剥離力である)
【請求項3】
X線蛍光(XRF)分析器を用いて測定した前記離型層中のシリコン含量が0.001~0.015g/m
2である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型フィルムの残留接着率は94%以上である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記離型層の表面エネルギーが21~30dyne/cmである、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記離型層の揮発性有機化合物の残留量が5ppm以下である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記メラミン成分の総酸価は390~780mgKOH/gである、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項8】
前記重合体成分はポリエチレンテレフタレート共重合体であり、
前記ポリエチレンテレフタレート共重合体はテレフタル酸;エチレングリコール;及びイソフタル酸、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、及びシクロヘキシレンジメタノールのうちの1つ以上;を含む共重合体である
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記重合体成分は互いに異なる2以上の極性官能基を含有するものである、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記酸触媒は塩酸、硫酸、窒酸、リン酸、シュウ酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メラミンヨウ化亜鉛(melamine ZnI
2)、メラミントリスルホン酸(melamine trisulfonic acid;MTSA)、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、メチルアシッドフォスフェート、エチルアシッドフォスフェート、プロピルアシッドフォスフェート、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、ラウリルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、オレイルアシッドフォスフェート、ベヘニルアシッドフォスフェート、フェニルアシッドフォスフェート、ノニルフェニルアシッドフォスフェート、シクロヘキシルアシッドフォスフェート、フェノキシエチルアシッドフォスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドフォスフェート、ビスフェノールAアシッドフォスフェート、ジメチルアシッドフォスフェート、ジエチルアシッドフォスフェート、ジプロピルアシッドフォスフェート、ジイソプロピルアシッドフォスフェート、ジブチルアシッドフォスフェート、ジオクチルアシッドフォスフェート、ジ2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、ジラウリルアシッドフォスフェート、ジステアリルアシッドフォスフェート、ジフェニルアシッドフォスフェート、ビスノニルフェニルアシッドフォスフェートスルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩で構成された群から選択された1つ以上である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項11】
前記離型コーティング組成物のうち、メラミン成分と酸触媒の重量比が100:5~100:3
0である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項12】
前記離型コーティング組成物は組成物全体の総重量を基準に0.2~1.0重量%のメラミン成分、または
組成物全体の総重量を基準に0.01~5重量%の重合体成分を含む、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項13】
前記離型コーティング組成物のうち、メラミン成分及び重合体成分の重量比は固形分を基準に100:3~100:70である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項14】
前記離型コーティング組成物は帯電防止剤、伝導性向上剤、pH調節剤、界面活性剤、及び防汚剤のうちの1つ以上をさらに含む、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項15】
前記帯電防止剤はPEDOT、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリピロール、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩からなる群から選択された1つ以上である、
請求項
14に記載の離型フィルム。
【請求項16】
前記pH調節剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びアンモニア水からなる群から選択された1つ以上である、
請求項
14に記載の離型フィルム。
【請求項17】
前記界面活性剤はカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、変性シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、またはこれらの組合わせである、
請求項
14に記載の離型フィルム。
【請求項18】
前記防汚剤はフッ素、フッ素基含有シラン系化合物、フッ素基含有有機化合物、及び自己乳化型シリコンからなる群から選択された1つ以上である、
請求項
14に記載の離型フィルム。
【請求項19】
前記防汚剤は自己乳化型シリコンであり、
前記自己乳化型シリコンは水酸化基を含むシリコンモノマーである、
請求項
18に記載の離型フィルム。
【請求項20】
前記離型コーティング組成物は組成物全体の総重量を基準に
0.1~30重量%の帯電防止剤、
0.01~0.3重量%のpH調節剤、
0.05~0.2重量%の界面活性剤、または
0.1~0.3重量%の防汚剤を含む、
請求項
14に記載の離型フィルム。
【請求項21】
前記離型コーティング組成物はオキサゾリン系硬化剤をさらに含む、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項22】
前記離型コーティング組成物は水または水と有機溶剤の組合わせを含み、
前記水と有機溶剤の調合比は、水と有機溶剤の総重量を基準としたときの水の含量が50重量%以上である、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項23】
前記メラミン成分と、極性官能基を含有する重合体成分は硬化後、互いに架橋網の構造を形成するものである、
請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項24】
前記離型フィルムは粘着剤、半硬化性接着剤、積層セラミックキャパシタ用セラミックシート、印刷回路用半硬化樹脂、またはプリプレグに用いられる
請求項1に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離型フィルムは、通常、粘着剤の皮膜が付着して粘着成分を大気中の異物または望まない被着剤から保護するための保護フィルムとして用いられるものであって、ポリエステル基材フィルム上に離型層が形成された構造を取るのが一般的である。
【0003】
特に、離型フィルムはMLCC(Multi-Layer Ceramic Capacitor、MLCC)を構成するグリーンシートにおいてセラミックスラリーを薄くかつ均一に塗布するためのキャリアフィルムの用途に用いられる。MLCCは電気を蓄積したり電流を安定させたりするために用いられるキャパシタの一種で、その大きさが小さく、静電容量が大きいため携帯用電子機器に広く用いられており、特に最近、スマートフォン及びタブレットPCの普及によりその需要が大幅に増加している。このようなMLCCはグリーンシートと内部金属電極を数十または数百層交互に積層した後、外部電極を連結することで完成し、その大きさは1mm以下から数nmまで多様である。
【0004】
MLCCに用いられるグリーンシートは支持体であるキャリアフィルム上にセラミックスラリーが均一に塗布された後に焼成して形成され、グリーンシートを成形するためのキャリアフィルムは機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格競争力等に優れた2軸延伸のポリエステルフィルムが基材として用いられ、その一面に高分子シリコン離型層が塗布された離型フィルムが用いられている。
【0005】
最近、MLCCの小型化及び高容量化の傾向により、グリーンシートの厚さをさらに薄膜化し、セラミックスラリーをさらに多層に積層することが要求されているが、MLCCの製造時に用いられる離型フィルムの剥離力が低すぎる場合、セラミックスラリーが離型フィルムから先剥離される問題が発生し得る。逆に、離型フィルムの剥離力が高すぎる場合、セラミックグリーンシートから離型フィルムの除去時に、グリーンシートに亀裂、破断等が発生し得る。従って、MLCCに用いられる離型フィルムは、とりわけ適切な剥離力によって剥がれ得る物性が要求される。
【0006】
また、セラミックスラリーの製造時に用いられる有機溶媒が十分に揮発できず、離型層に残留する場合、グリーンシートの表面にオレンジピールのようなシミが発生するが、この問題は粗度の要因の他に離型層の耐溶剤性が低く、セラミックスラリーの溶媒が離型層内に残留する場合に発生し、改善が必要であった。上記のようなグリーンシートの欠陥を未然に防止することがMLCCの信頼性の向上に繋がるので、MLCCの製造において離型フィルムの機能が大変重要であるといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、離型フィルムのための技術を提供する。本開示は多様な範囲の剥離力を実現し、優れた経時安定性を示すことができる離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は一側面において、離型フィルムを提供することができる。
【0009】
一側面において、離型フィルムは、基材フィルム;及び前記基材フィルムの少なくとも一面に離型コーティング組成物が塗布されて形成される離型層;を含み、前記離型層は、下記式(1)を満たす離型フィルムであってもよい。
【0010】
式(1)
【0011】
0.5≦Pb/Pa≦10.0
【0012】
Pa:FT-IRスペクトルにおいて、波数が1450cm-1以上1650cm-1未満の領域における最大吸収ピーク強度
【0013】
Pb:FT-IRスペクトルにおいて、波数が1650cm-1以上1850cm-1以下の領域における最大吸収ピーク強度
【0014】
一側面において、前記離型フィルムは、下記の条件(1)~条件(4)のうちの1つ以上を満たし得る。
【0015】
条件
【0016】
(1)前記離型フィルムの離型層にTESA7475テープを付着した後、0.3m/分の剥離速度で180°剥離時の剥離力を測定したとき、剥離力が30~50gf/inである
【0017】
(2)前記離型フィルムの離型層にTESA7475テープを付着し、常温で24時間経過後、0.3m/分の剥離速度で180°剥離時の剥離力を測定したとき、常温1日剥離力が200~250gf/inである
【0018】
(3)グリーンシートに対して前記離型フィルムを0.5m/分の剥離速度で90°剥離時の剥離力を測定したとき、グリーンシートに対する離型フィルムの剥離力が1~100gf/inである
【0019】
(4)RF90/RF1≧0.9(ここで、RF1及びRF90は、それぞれグリーンシートが付着した離型フィルムを24時間(1日)及び90日間室温23℃、湿度50%の条件下で保管した後に測定したグリーンシートに対する離型フィルムの剥離力である)
【0020】
一側面において、X線蛍光(XRF)分析器を用いて測定した前記離型層中のシリコン含量が0.001~0.015g/m2であってもよい。
【0021】
一側面において、前記離型フィルムの残留接着率は94%以上であってもよい。
【0022】
一側面において、前記離型層の表面エネルギーが21~30dyne/cmであってもよい。
【0023】
一側面において、前記離型層の揮発性有機化合物の残留量が5ppm以下であってもよい。
【0024】
一側面において、前記離型コーティング組成物は化学式1のメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体、またはこれらの組合わせであるメラミン成分;極性官能基を含有し、重量平均分子量が3,000~30,000である重合体成分;及び酸触媒を含み得る。
【0025】
[化学式1]
【0026】
【0027】
(式中、Xは水素原子、-CH2OH、または-CH2-O-Rを示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。Rは、炭素数1~8つのアルキル基を示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。少なくとも1つのXは-CH2-O-CH3である)
【0028】
一側面において、前記メラミン成分の総酸価は390~780mgKOH/gであってもよい。
【0029】
一側面において、前記重合体成分はポリエステル、ポリウレタン、ポリビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アクリレート、メタクリレート、これらの組合わせ、及びこれらの共重合体からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0030】
一側面において、前記重合体成分はポリエチレンテレフタレート共重合体であり、前記ポリエチレンテレフタレート共重合体はテレフタル酸;エチレングリコール;及びイソフタル酸、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、及びシクロヘキシレンジメタノールのうちの1つ以上;を含む共重合体であってもよい。
【0031】
一側面において、前記極性官能基は水酸化基、カルボキシ基、アミノ基、アミン基、カルボニル基、アクリル基、アクリロイル基、ニトリル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、及びエステル基から構成された群から選択された1つ以上であってもよい。
【0032】
一側面において、前記重合体成分は互いに異なる2以上の極性官能基を含有し得る。
【0033】
一側面において、前記酸触媒は塩酸、硫酸、窒酸、リン酸、シュウ酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メラミンヨウ化亜鉛(melamine ZnI2)、メラミントリスルホン酸(melamine trisulfonic acid;MTSA)、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、メチルアシッドフォスフェート、エチルアシッドフォスフェート、プロピルアシッドフォスフェート、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、ラウリルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、オレイルアシッドフォスフェート、ベヘニルアシッドフォスフェート、フェニルアシッドフォスフェート、ノニルフェニルアシッドフォスフェート、シクロヘキシルアシッドフォスフェート、フェノキシエチルアシッドフォスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドフォスフェート、ビスフェノールAアシッドフォスフェート、ジメチルアシッドフォスフェート、ジエチルアシッドフォスフェート、ジプロピルアシッドフォスフェート、ジイソプロピルアシッドフォスフェート、ジブチルアシッドフォスフェート、ジオクチルアシッドフォスフェート、ジ2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、ジラウリルアシッドフォスフェート、ジステアリルアシッドフォスフェート、ジフェニルアシッドフォスフェート、ビスノニルフェニルアシッドフォスフェートスルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩で構成された群から選択された1つ以上であってもよい。
【0034】
一側面において、前記離型コーティング組成物のうち、メラミン成分と酸触媒の重量比が100:5~100:30、100:10~100:20、または100:10~100:15であってもよい。
【0035】
一側面において、前記離型コーティング組成物は組成物全体の総重量を基準に0.2~1.0重量%のメラミン成分、または組成物全体の総重量を基準に0.01~5重量%の重合体成分を含み得る。
【0036】
一側面において、前記離型コーティング組成物のうち、メラミン成分及び重合体成分の重量比は固形分を基準に100:3~100:70であってもよい。
【0037】
一側面において、前記離型コーティング組成物は帯電防止剤、伝導性向上剤、pH調節剤、界面活性剤、及び防汚剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0038】
一側面において、前記帯電防止剤はPEDOT、PEDOT:PSS、ポリアニリン、ポリピロール、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0039】
一側面において、前記pH調節剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びアンモニア水からなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0040】
一側面において、前記界面活性剤はカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、変性シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、またはこれらの組合わせであってもよい。
【0041】
一側面において、前記防汚剤はフッ素、フッ素基含有シラン系化合物、フッ素基含有有機化合物、及び自己乳化型シリコンからなる群から選択された1つ以上であってもよい。
【0042】
一側面において、前記防汚剤は自己乳化型シリコンであり、前記自己乳化型シリコンは水酸化基を含むシリコンモノマーであってもよい。
【0043】
一側面において、前記離型コーティング組成物は組成物全体の総重量を基準に0.1~30重量%の帯電防止剤、0.01~0.3重量%のpH調節剤、0.05~0.2重量%の界面活性剤、または0.1~0.3重量%の防汚剤を含み得る。
【0044】
一側面において、前記離型コーティング組成物はオキサゾリン系硬化剤をさらに含み得る。
【0045】
一側面において、前記離型コーティング組成物は水または水と有機溶剤の組合わせを含み、前記水と有機溶剤の調合比は、水:有機溶剤の重量比が50:50以上、60:40以上、70:30以上、80:20以上、90:10以上、95:5以上、または99:1以上であってもよい。
【0046】
一側面において、前記メラミン成分と、極性官能基を含有する重合体成分は硬化後、互いに架橋網の構造を形成することもできる。
【0047】
一側面において、前記離型フィルムは粘着剤、半硬化性接着剤、積層セラミックキャパシタ用セラミックシート、印刷回路用半硬化樹脂、またはプリプレグに用いられる。
【発明の効果】
【0048】
本開示の一側面による離型フィルムは、離型フィルムに製造時に広い範囲の剥離力を実現することができ、優れた経時安定性を示すことができ、このような効果はシリコン系離型コーティング組成物によって製造された離型フィルムと比較すると、さらに優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1a】離型フィルムの先剥離テストに関する写真である。先剥離テストの方法を示した図である。
【
図1b】離型フィルムの先剥離テストに関する写真である。先剥離テストの結果を示した写真である。
【
図2】離型フィルムのFT-IRスペクトル測定結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本文書に記載された多様な側面または実施例は、本開示の技術的思想を明確に説明する目的で例示されたものであり、これを特定の実施形態に限定しようとするものではない。本開示の技術的思想は、本文書に記載された各側面または実施例の多様な変更(modifications)、均等物(equivalents)、代替物(alternatives)及び各側面または実施例の全部または一部から選択的に組み合わせられた側面または実施例を含む。また、本開示の技術的思想の権利範囲は、以下に提示される多様な側面または実施例やこれに関する具体的説明に限定されない。
【0051】
技術的または科学的な用語を含め、本文書で用いられる用語は、特に定義されない限り、本開示が属する技術分野において通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有し得る。
【0052】
1.基材フィルム
【0053】
本開示の一側面において、離型フィルムを構成する基材フィルムは、従来の離型フィルムの分野において広く用いられている公知のフィルムを用いることができ、これに制限されない。
【0054】
一側面において、基材フィルムはポリエステル系重合体から形成されたものであってもよいが、離型コーティング組成物が塗布される基材フィルムはポリエステル系フィルムに限定されない。具体的に、ポリエステル系重合体はポリエチレンテレフタレート重合体、ポリブチレンテレフタレート重合体、ポリエチレンナフタレート重合体、ポリフェニレンスルファイド重合体、ポリエーテルエーテルケトン重合体、ポリフタルアミド重合体、ポリイミド重合体、ポリスルホン重合体、ポリエーテルスルホン重合体、ポリエーテルイミド重合体またはこれらの組合わせであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0055】
一側面において、ポリエステル系重合体は芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールの縮合反応から得られたポリエステルであってもよい。一側面において、前記芳香族ジカルボン酸はイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P-オキシ安息香酸等)、またはこれらの組合わせであってもよいが、これに制限されはしない。一側面において、脂肪族グリコールはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、またはこれらの組合わせであってもよいが、これに制限されはしない。
【0056】
一側面において、ポリエステル系重合体としては、前記芳香族ジカルボン酸及び脂肪族グリコールのうちの2種以上の物質を併用し得、第3の成分を含有する共重合体も用い得るが、耐熱性と耐化学性及び機械強度、経済性を考慮する場合、ポリエチレンテレフタレートを用いる方が望ましいこともある。一側面において、基材フィルムは2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる方が望ましいこともある。
【0057】
一側面において、基材フィルムは10~200μmの厚さを有し得るが、これに制限されるわけではない。
【0058】
一側面において、離型コーティング組成物は基材フィルムの少なくとも1面に塗布されて離型層を形成できる。
【0059】
一側面において、離型コーティング組成物は化学式1のメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体、またはこれらの組合わせであるメラミン成分;極性官能基を含有し重量平均分子量が3,000~30,000である重合体成分;及び酸触媒を含み得る。
【0060】
[化学式1]
【0061】
【0062】
(式中、Xは水素原子、-CH2OH、または-CH2-O-Rを示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。Rは、炭素数1~8つのアルキル基を示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。少なくとも1つのXは-CH2-O-CH3である)
【0063】
2.メラミン成分
【0064】
本開示の一側面において、離型フィルムを構成する離型層を形成する離型コーティング組成物は、メラミン成分を硬化後に離型層を構成する主鎖成分として用い、メラミン成分を用いる場合、高い架橋密度により硬い離型層の塗膜が得られるようになり、シリコン系離型コーティング組成物を超える水準の硬化度を達成することができる。MLCCの製造のためのセラミックグリーンシート製造工程用離型フィルムでは剥離力を所望の水準に調節するために離型層塗膜を硬くすることが効果的であるためである。
【0065】
一側面において、メラミン成分は特に限定されはしないが、一般にメラミンとホルムアルデヒドの反応によって製造され、このように生成されたメチロール化メラミンを酸触媒条件で適切な炭素数のアルコールと反応させてアルキルエーテル化メラミン化合物を得ることができる。
【0066】
一側面において、メラミン成分は、下記化学式1の構造を有するメラミン化合物、そのオリゴマー、その重合体及び/又はこれらの組合わせを意味し得る。
【0067】
[化学式1]
【0068】
【0069】
ここで、Xは水素原子、-CH2OH、または-CH2-O-Rを示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。Rは、炭素数1~8つのアルキル基を示し、それぞれ同一であるか、または異なってもよい。また、少なくとも1つのXは-CH2-O-CH3であってもよい。
【0070】
一側面において、前記Xは全て-CH2-O-CH3であってもよく、メラミン成分はフルエーテル型メチル化メラミン、メラミンオリゴマー及び/又はメラミン重合体であってもよい。
【0071】
一側面において、メラミン成分として商業的に入手可能で広く用いられている多様な製品を用いることができ、例えば、サイメル300、サイメル301、サイメル303LF、サイメル350、またはサイメル370N(以上、allnes社の製品)を用いることができるが、ここに制限されはしない。商業的に入手可能な製品を単独または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0072】
一側面において、メラミン成分の含量は組成物全体の総重量を基準に約0.2~約1.0重量%であってもよく、具体的に約0.2~約0.8重量%、約0.3~約0.7重量%、約0.4~約0.6重量%、または約0.5~約0.6重量%であってもよい。メラミン成分を上記最小値未満に過度に少なく用いる場合、所望の硬化効果、即ち、離型層を硬く維持させて離型フィルムのグリーンシートの剥離力を低くする効果が弱くなって剥離力が望むように調節されなくなり得る。また、メラミン硬化がきちんとなされない場合、離型フィルムの経時安定性が減少し得るので、メラミン成分の含量は、下記で言及する酸触媒との含量比率を満たした方が良い。
【0073】
一側面において、メラミン成分の総酸価は390~780mgKOH/gであってもよく、具体的に400KOH/g以上、450KOH/g以上、500KOH/g以上、550KOH/g以上、600KOH/g以上、650KOH/g以上、700KOH/g以上、または750KOH/g以上であるか、または730KOH/g以下、680KOH/g以下、630KOH/g以下、580KOH/g以下、530KOH/g以下、480KOH/g以下、または430KOH/g以下であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0074】
3.重合体成分
【0075】
本開示の一側面において、重合体成分は離型コーティング組成物でバインダーまたは剥離力調節剤として用いられ得る。メラミン成分は単量体の分子量が低いので、硬化後にこまかい架橋構造を形成し、高い架橋密度を有するようになるが、これに比べて相対的に分子量が大きく長鎖構造を有する重合体成分を共に硬化させれば、メラミン成分のこまかい架橋構造の間に長鎖構造を有する重合体が結合するようになって、硬さが解放されて離型層の柔らかさ(softness)が増加し得る。柔らかさが増加するに伴い離型フィルムの剥離力も上昇するようになり、本開示はメラミン成分と重合体成分の組合わせによって広い範囲の剥離力、特に、広い範囲のグリーンシートの剥離力を達成する効果を奏する。
【0076】
メラミン成分は、最大総6つの官能基を有し得る。重合体成分はメラミン成分が互いに結合できないようにメラミン成分の間に結合するようになり、長鎖構造により粗い架橋網の構造を形成させ得、形成されたメラミン成分-重合体成分の共重合体及びこの構造は、離型層の柔らかさを増加させて経時安定性を増加させ得る。
【0077】
通常、シリコン系離型フィルムではシリコン重合体成分を添加して剥離力を増加させるが、この際、シリコン重合体成分の含量が組成物全体の総重量を基準に50重量%を超えるようになれば、経時安定性において深刻な問題が発生する。時間がたつにつれ離型層の表面に存在すべきシリコン重合体成分が離型層の内部に含浸されるためである。従来のシリコン系離型フィルムとは異なって、本開示の離型コーティング組成物は、上述したようにメラミン成分と重合体成分が共重合体になり、架橋網の構造を形成するので、離型性を示す作用基が離型層の表面から内部に含浸されることなく続けて維持されることができ、これにより優れた経時安定性を示すことができる。
【0078】
一側面において、重合体成分は長鎖構造を有する重合体としてメラミン成分と結合して架橋網の構造を形成し、柔らかさが付与できるものであれば制限されない。例えば、重合体成分はポリエステル、ポリウレタン、ポリビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、アクリレート、メタクリレート、これらの組合わせ及びこれらの共重合体からなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに制限されはしない。ここで、ポリエチレンテレフタレートの共重合体(co-PET)はポリエチレンテレフタレートを主な繰り返し単位とする共重合体であれば制限されはしないが、例えば、テレフタル酸;エチレングリコール;及びイソフタル酸、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、及びシクロヘキシレンジメタノールのうちの1つ以上;を含む共重合体であってもよい。
【0079】
一側面において、重合体成分は極性官能基を含有するものであってもよく、互いに異なる2以上の極性官能基を含有するものであってもよい。
【0080】
一側面において、極性官能基はメラミン成分に存在する作用基と反応して架橋結合を形成することができるものであれば制限されない。例えば、極性官能基は水酸化基、カルボキシ基、アミノ基、アミン基、カルボニル基、アクリル基、アクリロイル基、ニトリル基、ビニル基、ハロゲン基、ウレタン基、及びエステル基から構成された群から選択された1つ以上であってもよいが、これに制限されはしない。
【0081】
一実施例において、重合体成分は重量平均分子量が約3,000~約30,000、約5,000~約30,000、約8,000~約30,000、約10,000~約30,000、約10,500~約30,000、約10,500~約20,000、約11,000~約15,000、約11,000~約14,000、約11,000~約13,000、または約11,000~約12,000であってもよい。重合体成分の重量平均分子量が大きくなるほど硬化後の離型層の柔らかさが増加し得る。
【0082】
一実施例において、重合体成分の含量は組成物全体の総重量を基準に0.01~5重量%、0.1~4重量%、1~3.5重量%、1.5~3重量%、または2~3重量%であってもよい。重合体成分を上記最大値を超えて過量に用いる場合、メラミン成分が十分に硬化することができず、硬化していない重合体成分またはメラミン成分が離型層の表面に上がるようになり、離型フィルムのRub-off特性(即ち、離型層の基材フィルムに対する付着力または密着力)が不良に示され得る。重合体成分を上記最小値未満に過度に少なく用いる場合、硬化反応による架橋網の構造が十分に形成されないため、所望の剥離力または経時安定性が達成できないこともある。
【0083】
4.酸触媒
【0084】
一側面において、酸触媒はメラミン成分の架橋反応またはメラミン成分と重合体成分の架橋反応を触媒すると知られているものであれば制限されず、これらを適切に選択して用いることができる。例えば、酸触媒は塩酸、硫酸、窒酸、リン酸等の無機酸類;シュウ酸、硝酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メラミンヨウ化亜鉛(melamine ZnI2)、メラミントリスルホン酸(melamine trisulfonic acid;MTSA)、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、メチルアシッドフォスフェート、エチルアシッドフォスフェート、プロピルアシッドフォスフェート、イソプロピルアシッドフォスフェート、ブチルアシッドフォスフェート、ブトキシエチルアシッドフォスフェート、オクチルアシッドフォスフェート、2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、デシルアシッドフォスフェート、ラウリルアシッドフォスフェート、ステアリルアシッドフォスフェート、オレイルアシッドフォスフェート、ベヘニルアシッドフォスフェート、フェニルアシッドフォスフェート、ノニルフェニルアシッドフォスフェート、シクロヘキシルアシッドフォスフェート、フェノキシエチルアシッドフォスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドフォスフェート、ビスフェノールAアシッドフォスフェート、ジメチルアシッドフォスフェート、ジエチルアシッドフォスフェート、ジプロピルアシッドフォスフェート、ジイソプロピルアシッドフォスフェート、ジブチルアシッドフォスフェート、ジオクチルアシッドフォスフェート、ジ2-エチルヘキシルアシッドフォスフェート、ジラウリルアシッドフォスフェート、ジステアリルアシッドフォスフェート、ジフェニルアシッドフォスフェート、ビスノニルフェニルアシッドフォスフェート等の有機酸類;スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の熱酸発生剤を用いることができるが、これに制限されるわけではない。前記酸触媒成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
一側面において、メラミン成分と酸触媒の重量比は100:5~100:30、100:10~100:20、または100:10~100:15であってもよく、上記記載された上限及び下限値の間に存在する重量比であってもよい。酸触媒の含量が前記重量比の最小値より過度に少なく用いられる場合、硬化反応が十分に起きなくなり、最大値を超えて過量に用いられる場合、過硬化が発生し、2つの場合いずれも経時安定性が不良となる結果が現れ得る。従って、優れた経時安定性を達成するためには、メラミン成分と酸触媒の重量比が前記範囲を満たした方が良い。
【0086】
5.溶媒
【0087】
一側面において、離型コーティング組成物は水系離型コーティング組成物であってもよい。一側面において、水系は、水溶液または水分散体を意味し得、組成物の溶媒成分が水単独であるか、または下記に記載する水と有機溶剤の組合わせであることを意味し得る。
【0088】
一側面において、水系離型コーティング組成物は水系ベースなので、離型層を形成させる場合、揮発性有機化合物(VOC)の排出量を根本的に低減させることができ、環境にやさしい要件を満たし得る。さらに、水系帯電防止剤のような水系添加剤と混合して簡単に用いられ得、1液型調液で離型フィルムの帯電防止能と離型性がいずれも実現できるという長所がある。
【0089】
一側面において、離型コーティング組成物は水系溶媒をさらに含み得る。前記水系溶媒は水または水と有機溶剤の組合わせであってもよい。前記水と有機溶剤の調合比は、水:有機溶剤の重量比が50:50以上、60:40以上、70:30以上、80:20以上、85:15以上、90:10以上、95:5以上、または99:1以上であってもよい。
【0090】
一側面において、有機溶剤は離型フィルム分野において広く用いられている公知の有機溶剤であってもよく、水と相溶性が良い溶媒であれば特に制限されはしない。例えば、有機溶剤はイソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキサン、アセトン、酢酸エチル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチルグリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ガンマ-ブチロラクトン、及びこれらの組合わせからなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0091】
6.その他の成分
【0092】
一側面において、離型コーティング組成物は達成しようとする離型層の物性(例:枠を変化させない範囲内で帯電防止剤、伝導性向上剤、pH調節剤、界面活性剤、及び防汚剤のうちの1つ以上をさらに含み得る。
【0093】
(1)帯電防止剤及び伝導性向上剤
【0094】
本開示の一側面において、帯電防止剤は離型層に帯電防止能を付与するだけでなく、異物の吸着を防止する効果を奏し得る。セラミックグリーンシート製造工程ではセラミックグリーンシートを切断及び裁断する工程が存在し、この際、セラミックグリーンシートは粒子の実のようなビーズが集まっている形態なので、グリーンシートを切る過程でビーズの脱落現象が発生する。従って、帯電防止能は離型フィルムがセラミックグリーンシートと共に切られる過程で静電気によるビーズの脱落現象を防止することができ、これによりセラミックグリーンシート製造の工程性に寄与できる。
【0095】
一側面において、帯電防止剤は離型フィルム分野において広く用いられている公知の帯電防止剤であってもよく、特に制限されない。例えば、帯電防止剤はPEDOT(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene))、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)、ポリアニリン、ポリピロール、第4級アンモニウム塩、スルホン酸塩、及びリン酸塩からなる群から選択されたものであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0096】
一側面において、帯電防止剤は固形分である帯電防止剤成分を含有する水溶液の形態で離型コーティング組成物に含まれ得(固形分の含量は1.0%~2.0%または1.5%~2.0%であってもよい)、この際、帯電防止剤を含有する水溶液の含量は組成物全体の総重量を基準に約0.1~約30重量%、約1~約25重量%、または約5~約20重量%であってもよく、上記記載された上限値または下限値の間に存在する含量であってもよい。帯電防止剤の含量が上記最大値を超えて過量に用いられる場合、離型層の外観に欠点を誘発し得、このような欠点はブルースポット(bluespot)と見られ得る。
【0097】
一側面において、帯電防止剤は、前記含量で含まれ、離型層に約10^4~10^10ohm/sqの表面抵抗を付与し得る。
【0098】
一側面において、離型コーティング組成物は伝導性向上剤をさらに含み、所望の水準の表面抵抗、即ち、帯電防止能を達成することができる。このような伝導性向上剤は帯電防止剤の性能を補助する役割をすることができ、伝導性向上剤を用いることになれば、さらに少ない量の帯電防止剤を用いても所望の離型層の表面抵抗水準を達成することができる。
【0099】
一側面において、伝導性向上剤の含量は組成物全体の総重量を基準に約1~20重量%、約1~15重量%、約1~10重量%、約1~8重量%、約1.5~8重量%、約1.5~6重量%、約2~6重量%、約2.5~6重量%、約3~6重量%、約4~6重量%であってもよい。伝導性向上剤の含量が上記最大値を超えて過量に用いられる場合、離型層の硬化を妨害し得、離型層の外観及びRub-off特性が所望の水準に達成されないことがあり、伝導性向上剤の含量を上記最小値未満に過度に少なく用いる場合、その効果が不十分なこともある。
【0100】
一側面において、伝導性向上剤は、従来に離型フィルム分野において広く用いられている公知の伝導性向上剤であってもよく、特に制限されない。例えば、伝導性向上剤はエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ブチルグリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ガンマ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルカーボネート、及びソルビトールからなる群から選択されたものであってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0101】
(2)pH調節剤
【0102】
本開示の一側面において、pH調節剤は組成物全体のpHを所望の水準に調節することができる。離型コーティング組成物には酸性を示す帯電防止剤が含まれ得、組成物が酸性を帯びるようになれば、界面活性剤または重合体成分のような中性または塩基性成分が十分に機能できないこともあるので、この場合、pH調節が必要である。全体離型コーティング組成物のpHが調節されない場合、組成物自体の経時安定性が急激に悪くなり得、組成物を製造した後の経過時間によって離型層の外観が劣悪になる現象が発生し得る。例えば、離型コーティング組成物を製造して直ちに基材フィルムに塗布して離型層を形成させた場合には良好であった外観が、製造後に約4時間が経過して離型層を形成させた場合には離型層の外観がまだらになる現象が現れ得る。
【0103】
一側面において、pH調節剤は離型フィルム分野において広く知られている公知のpH調節剤であってもよく、特に制限されはしない。例えば、pH調節剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム及びアンモニア水からなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに制限されはしない。pH調節剤は塩基性pH調節剤であってもよい。
【0104】
一側面において、pH調節剤の含量は組成物全体の総重量を基準に0.05~0.3重量%、0.1~0.3重量%、または0.15~0.25重量%であってもよく、上記記載された上限値または下限値の間に存在する含量であってもよい。pH調節剤が上記最大値を超えて過量に用いられる場合、離型層の硬化を妨害し得る。
【0105】
(3)界面活性剤
【0106】
本開示の一側面において、界面活性剤は離型コーティング組成物のウェッティング(wetting)性または基材フィルムに対する塗り性を向上させ、メラミン成分と重合体成分の相溶性を向上させるものであってもよい。一側面において、水系離型コーティング組成物で水を単独溶媒で用いる場合には、互いに異なる2種以上の界面活性剤を用いることができる。
【0107】
一側面において、界面活性剤は離型フィルム分野において広く知られている公知の界面活性剤として表面張力を低くすることができる成分であってもよく、特に制限されはしない。例えば、界面活性剤はカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、変性シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、またはこれらの組合わせであってもよいが、これに制限されはしない。
【0108】
一側面において、カチオン系界面活性剤は、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、またはアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩であってもよいが、これに制限されはしない。
【0109】
一側面において、アニオン系界面活性剤は、例えば、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸エステル塩、アルキルポリオキシエチレンスルホン酸塩、またはモノアルキルリン酸塩類であってもよいが、これに制限されはしない。
【0110】
一側面において、両性界面活性剤は、例えば、アルキルジメチルアミンオキサイド、またはアルキルカルボキシベタインであってもよいが、これに制限されはしない。
【0111】
一側面において、ノニオン系界面活性剤は、例えば、脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、またはポリオキシアルキレン変性シリコン類であってもよいが、これに制限されはしない。
【0112】
一側面において、シリコン系界面活性剤は、例えば、ポリエーテル変性シリコン、またはポリグリセリン変性シリコン等であってもよいが、これに制限されはしない。このような変性シリコンの構造は、側鎖変形型、両末端変成型(ABA型)、片末端変成型(AB型)、両末端側鎖変成型、直鎖ブロック型(ABn型)、分岐型等に分類され得るが、これらのうちでどの構造の変性シリコンでも用いられ得る。
【0113】
一側面において、界面活性剤の含量は組成物全体の総重量を基準に0.05~0.2重量%、0.1~0.2重量%、または0.15~0.2重量%であってもよく、上記記載された上限値または下限値の間に存在する含量であってもよい。
【0114】
(4)防汚剤
【0115】
本開示の一側面において、防汚剤は離型層の表面エネルギーを調節して防汚性を付与することができる。基材フィルムと離型層間の表面エネルギーの差が少ない場合、基材フィルムに対する離型層の湿潤性及び剥離性が低下し得るが、防汚剤は離型層の表面エネルギーを低くして、これを防止する効果を奏し得る。さらに、本開示の離型コーティング組成物に含まれるメラミン成分はスリップ性(滑る特性)がほとんどないので、防汚剤は離型層にスリップ性を付与することができる。
【0116】
一側面において、防汚剤はフッ素、フッ素基含有シラン系化合物、フッ素基含有有機化合物、及び自己乳化型シリコンからなる群から選択された1つ以上であってもよいが、これに制限されはしない。一側面で自己乳化型シリコンは1つ以上の水酸化基を含むシリコンモノマーであってもよいが、これに制限されはしない。
【0117】
一側面において、防汚剤の含量は組成物全体の総重量を基準に0.1~0.3重量%、0.15~0.25重量%、または0.2~0.25重量%であってもよく、上記記載された上限値または下限値の間に存在する含量であってもよい。防汚剤が上記最小値より過度に少なく用いられる場合、離型フィルムの剥離時にシミ跡が残存する問題が発生し得、離型フィルムをグリーンシートから剥離した後にグリーンシートスラリー粒子が離型層に残存する問題が発生し得る。
【0118】
(5)オキサゾリン系硬化剤
【0119】
本開示の一側面において、オキサゾリン系硬化剤は重合体成分の極性官能基、例えば、カルボキシ基、芳香族性のチオール基またはフェノール基の硬化反応を誘導することできるので、離型フィルムのRub-off特性または耐溶剤性を向上させることができる。具体的に、重合体成分に存在する極性官能基はメラミン成分間の結合に関与する水酸化基間の硬化またはメラミン成分と離型コーティング組成物に含まれたシリコン成分(例:自己乳化型シリコン)の水酸化基間の硬化より、硬化の優先順位が低いこともあり、従って重合体成分の極性官能基は硬化反応に完全に参与できないこともある。この場合、メラミン-メラミンまたはメラミン-シリコンから構成された硬化構造上に極性官能基を含む重合体成分がファンデルワールス力程度の弱い結合力で存在するようになるので、離型層の耐溶剤性が弱くなる問題が現れ得る。オキサゾリン系硬化剤を用いる場合、極性官能基を硬化反応に参与させることができ、これにより重合体成分間の架橋体または重合体成分とメラミン成分間の架橋体がさらに形成され、離型フィルムのRub-off特性または耐溶剤性を向上させることができる。
【0120】
一側面において、オキサゾリン系硬化剤はオキサゾリン基を含有する化合物または重合体であってもよく、離型フィルム分野において広く用いられている公知の成分であれば特に制限なしに用いられ得る。オキサゾリン系硬化剤の製造のために使用可能なオキサゾリン基含有単量体としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、またはこれらの組合わせであってもよいが、これに制限されはしない。オキサゾリン系硬化剤の製造のために使用可能な他の単量体としては、上述したオキサゾリン基含有単量体と共重合体を形成できるものであれば、制限なく使用可能で、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、またはスチレンであってもよいが、これに制限されはしない。
【0121】
一側面において、商業的に使用可能なオキサゾリン系硬化剤には株式会社日本触媒の製品名WS-300、WS-500、WS-700がK-2010E、K2020E、K2030E、またはRPS-1005があり得るが、これに制限されるわけではない。
【0122】
7.離型フィルムの物性
【0123】
本開示の一側面において、離型フィルムは基材フィルムの少なくとも1面に離型コーティング組成物を塗布して離型層を形成させて製造され得、このように製造された離型フィルムは次の物性を有するものであってもよい。以下の物性は実験例に記載された方法で測定されることができる。
【0124】
一側面において、離型フィルムを構成する離型層は、下記式(1)を満たし得る。
【0125】
式(1)
【0126】
0.5≦Pb/Pa≦10.0
【0127】
Pa:FT-IRスペクトルにおいて、波数が1450cm-1以上1650cm-1未満の領域における最大吸収ピーク強度
【0128】
Pb:FT-IRスペクトルにおいて、波数が1650cm-1以上1850cm-1以下の領域における最大吸収ピーク強度
【0129】
離型層のFT-IRスペクトルは、実験例8に記載された方法で測定されることができる。
【0130】
前記Pb/Pa値は、前記範囲を満たすものであれば、特に限定されはしないが、例えば、0.55以上、または0.6以上であるか、または9.95以下、または9.9以下、または9.85以下、または9.8以下、または9.75以下、または9.7以下、または9.65以下、または9.6以下であってもよい。
【0131】
前記Pbは重合体成分に含まれた極性官能基に起因したピークであり、前記Paはメラミン成分のうち、N-C-Nベンディングに起因したピークであり、前記Pb/Pa値が上述した範囲を満たすことで、極性官能基を含んだ重合体成分とメラミンの包含を通じて、離型フィルムは優れた経時安定性を示すと共に多様な範囲のグリーンシートの剥離力を達成することができる。また、離型フィルムはグリーンシートの剥離力を高めながらも、優れた残留接着率と経時安定性を達成することができる。前記範囲を逸脱して、Pb/Pa値が10.0を超える場合、極性官能基を含む重合体成分(例えば、co-PET)含量があまりにも多くなり、グリーンシートを剥離するときに残存物が残って完全な転写が難しくなり得る。
【0132】
一側面において、離型フィルムは、下記の条件(1)~条件(4)のうちの1つ以上を満たすものであってもよい。
【0133】
条件
【0134】
(1)前記離型フィルムの離型層にTESA7475テープを付着した後、0.3m/分の剥離速度で180°剥離時の剥離力を測定したとき、剥離力が30~50gf/inである
【0135】
(2)前記離型フィルムの離型層にTESA7475テープを付着し、常温で24時間経過後、0.3m/分の剥離速度で180°剥離時の剥離力を測定したとき、常温1日剥離力が200~250gf/inである
【0136】
(3)グリーンシートに対して前記離型フィルムを0.5m/分の剥離速度で90°剥離時の剥離力を測定したとき、グリーンシートに対する離型フィルムの剥離力が1~100gf/inである
【0137】
(4)RF90/RF1≧0.9(ここで、RF1及びRF90は、それぞれグリーンシートが付着した離型フィルムを24時間(1日)及び90日間室温23℃、湿度50%の条件下で保管した後に測定したグリーンシートに対する離型フィルムの剥離力である)
【0138】
一側面において、離型フィルムは30~50gf/inのテープ即時剥離力を示すものであってもよく、上記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の剥離力を示すものであってもよく、例えば、32gf/in以上、34gf/in以上、36gf/in以上、38gf/in以上、40gf/in以上、42gf/in以上、44gf/in以上、46gf/in以上、または48gf/in以上であるか、または48gf/in以下、46gf/in以下、44gf/in以下、42gf/in以下、40gf/in以下、38gf/in以下、36gf/in以下、34gf/in以下、または32gf/in以下であってもよい。
【0139】
一側面において、離型フィルムは200~250gf/inのテープ常温1日剥離力を示すものであってもよく、上記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の剥離力を示すものであってもよく、例えば、210gf/in以上、220gf/in以上、230gf/in以上、または240gf/in以上であるか、または240gf/in以下、230gf/in以下、220gf/in以下、または210gf/in以下であってもよい。このような離型フィルムは重剥離または超重剥離離型フィルムの剥離力を満たすものであり、これを要求する分野で多様に使用可能である。
【0140】
一側面において、離型フィルムは1~100gf/in、4~98gf/in、10~70gf/in、20~60gf/in、または20~50gf/inのグリーンシートの剥離力を示すものであってもよく、上記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の剥離力を示すものであってもよい。グリーンシートの剥離力は実験例1に記載された方法で測定され得、3μm厚さのグリーンシートに対する剥離力を示すものであってもよい。一側面において、離型フィルムは広いグリーンシートの剥離力を示し、このような範囲は従来のシリコン離型フィルムからは達成できない物性に該当する。特に、3μm厚さのグリーンシートに対する剥離力が少なくとも4gf/inを達成するために、シリコン離型フィルムではシリコン樹脂を多量に添加して剥離力を上昇させなければならないが、この際、シリコン樹脂の含量が離型コーティング組成物の総重量を基準に50重量%を超えるようになれば、上述したように経時安定性で深刻な問題が発生し得る。従って、本開示の一側面による離型フィルムまたはこのような離型フィルムを製造するのに用いられる離型コーティング組成物は優れた経時安定性を示しながら、メラミン成分と重合体成分を組み合わせて広い範囲のグリーンシートの剥離力を実現することができるので、非常に多様な範囲の産業分野で使用可能であるという長所を有する。
【0141】
例えば、IT向けのMLCCの製造時にはグリーンシートの厚さが約2.3μm以下で、高品質のMLCCには約0.6~0.8μmの厚さのグリーンシートが用いられ、産業/電装向けのMLCCの製造時には厚さが約3μm以上のグリーンシートが用いられ得る。グリーンシートの厚さが低い場合、グリーンシート自体の剥離力が高く、厚さが高くなる場合、グリーンシート自体の剥離力が低くなり、従って、厚さが高いグリーンシートであるほど高い水準の剥離力を有する離型フィルムの必要性が大きい。
【0142】
しかし、従来の離型フィルムの場合、厚さ3μmのグリーンシート基準で4gf/in以上の剥離力を発揮し難く、剥離力を高めても、剥離力を高める過程で経時安定性が顕著に低くなるという問題点があった。それに対し、本開示の一側面による離型フィルムは1~100gf/inのグリーンシートの剥離力を示しながらも、優れた経時安定性を有し得る。
【0143】
従って、本開示の一側面による離型フィルムは多様なグリーンシートの剥離力水準(grade)を実現しながらも、同時にテープ即時剥離力またはテープ常温1日剥離力を基準に一定の範囲の重剥離力を実現できるという長所を有し、これにより1つの離型フィルムを多様な用途のグリーンシートの製造のための離型フィルムとして用いることもでき、テープ剥離力を基準に重剥離の剥離力を求める産業分野でも用いることができるため、多様な目的に合わせて使用可能である。即ち、従来のグリーンシートに対する離型フィルムの剥離力がグリーンシートの厚さに反比例的に連動し、その制御に限界があったが、本開示の一側面による離型フィルムはグリーンシートの厚さが多様になっても、メラミン成分と重合体成分の比率を調節するか、またはPb/Paの範囲を調節することで、厚さによる制約なしに産業分野で求められる多様な範囲(即ち、1~100gf/in)のグリーンシートの剥離力を有し得る。従って、本開示の一側面による離型フィルムは多様な産業分野で用いられるグリーンシートの厚さ範囲により要求される多様な範囲の剥離力の範囲を全て満たすことで、多様な産業分野に用いられ得る。
【0144】
一側面において、離型フィルムは0.9以上、0.91以上、0.92以上、0.93以上、0.94以上、0.95以上、0.96以上、0.97以上、または0.98以上であるか、または1.2以下、1.18以下、1.16以下、1.14以下、1.12以下、1.10以下、1.08以下、1.06以下、1.04以下、または1.08以下のRF90/RF1の値を示すものであってもよく、上記記載された上限及び下限値の間に存在する数値のRF90/RF1の値を示すものであってもよい。RF90/RF1の値は実験例1に記載された方法で測定されることができ、90日が経った後のグリーンシートの剥離力の経時変化率を通じて、3μm厚さのグリーンシートに対する経時安定性を示すものであってもよい。一側面において、離型フィルムは優れた経時安定性を示し、このような範囲は従来のシリコン離型フィルムからは達成できない物性に該当する。従って、本開示の一側面による離型フィルムまたはこのような離型フィルムを製造するのに用いられる離型コーティング組成物は優れた経時安定性を示しながら、メラミン成分と重合体成分を組み合わせて広い範囲のグリーンシートの剥離力を実現できるので、非常に多様な範囲の産業分野で使用可能であるという長所を有する。
【0145】
一側面において、離型フィルムはX線蛍光分析器を用いて測定した離型層のシリコン含量が約0.001~約0.015g/m2であってもよい。
【0146】
一側面において、離型フィルムは約94%、約95%、または約96%以上の残留接着率を示し得、残留接着率は実験例4に記載された方法で測定されることができる。一般に、離型フィルムを剥離する過程で、感圧接着体(pressure sensitive adhesive;PSA)または光学用透明接着剤(optically clear adhesive;OCA)のような接着剤を離型フィルム上に付けた後、離型フィルムを剥離する。ただし、このように離型フィルムを剥離する過程で離型フィルムの離型層に存在する未硬化成分が転写して接着剤の接着特性を妨害する問題が発生し得る。本開示の離型フィルムは約95%以上の残留接着率を満たすので、高い基準が要される分野でも使用可能であるという長所がある。
【0147】
一側面において、離型フィルムは離型層の表面エネルギーが約21~約30dyne/cmまたは約25~約27dyne/cmであってもよく、上記記載された上限及び下限値の間に存在する数値の表面エネルギー値を示すものであってもよい。離型層の表面エネルギーは実験例5に記載された方法で測定されることができる。
【0148】
一側面において、離型フィルムは揮発性有機化合物の残留量が約5ppm以下であってもよく、これにより環境にやさしい素材として活用が可能である。
【0149】
一側面において、離型フィルムは粘着剤、半硬化性接着剤、積層セラミックキャパシタ用セラミックシート、印刷回路用半硬化樹脂、またはプリプレグに用いられ得る。
【0150】
8.離型フィルムの製造方法
【0151】
本開示の一側面において、離型フィルムの製造方法は、離型コーティング組成物を用いて離型層を形成させるものであれば特に制限されない。例えば、基材フィルムの少なくとも1面に離型コーティング組成物を塗布し、これを加熱乾燥して離型コーティング組成物に含まれたメラミン成分と重合体成分を硬化させて離型層を形成し、これにより離型フィルムを得ることができる。
【0152】
一側面において、離型コーティング組成物を塗布する方法は、離型フィルム分野において広く用いられている公知の方法であってもよく、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法、イン-ラインコート法、オフ-ラインコート法等があり得るが、これに制限されはしない。
【0153】
一側面において、塗布された離型コーティング組成物は加熱乾燥によって熱硬化し得、この際、加熱温度は110℃~160℃、120℃~160℃、130℃~160℃、140℃~160℃、150℃~160℃、145℃~155℃または150℃~155℃であってもよく、上記記載された範囲内に存在する温度であってもよい。一側面において、加熱時間は5秒~60秒、10秒~40秒、15秒~30秒、または20秒~25秒であってもよく、上記記載された範囲内に存在する時間であってもよい。
【0154】
一側面において、追加で離型コーティング組成物の加熱乾燥の後、未硬化成分の硬化のために後硬化工程を含み得る。例えば、後硬化工程は加熱乾燥によって製造された離型フィルムを巻きロール(roll)状に作った後、40℃~60℃で1日~5日間処理するものであってもよい。処理温度は40℃~60℃、45℃~55℃、47℃~53℃、49℃~53℃、50℃~53℃、または50℃~51℃であってもよく、処理時間は1日~5日、1.5日~4.5日、2日~4日、2.5日~3.5日、または3日~3.5日であってもよい。後硬化工程を行う場合、離型フィルムの物性(例:剥離力、残留接着率、またはRub-off特性)において経時安定性が向上する。
【0155】
一側面において、離型フィルムの離型層は乾燥厚さで0.01~2μm、または50nm~500nmで形成され得る。
【0156】
本開示は、前述した側面及び後述する実験例または実施例を通じてさらに明確になる。以下では、本開示の添付の表を参照して記述される実施例を通じて当該業界の通常の技術者が容易に理解して実現できるように詳細に説明する。しかし、これらの実験例または実施例は、本開示を例示的に説明するためのものであって、本開示の範囲がこれらの実験例または実施例に限定されるものではない。
【0157】
[実施例]
【0158】
1.離型コーティング組成物の製造
【0159】
以下の成分を混合して離型コーティング組成物を製造した。ただし、重合体成分に該当するco-PET化合物の含量は表1に従いメラミン成分100重量部に対して互いに異なる含量で製造した。
【0160】
- メラミン成分(メーカー:Allnex、製品名:CYMEL(R) 303 LF Resin)0.5重量%
【0161】
- 重合体成分(co-PET化合物:テレフタル酸52重量%、エチレングリコール45重量%、及びイソフタル酸3重量%を混合して製造された化合物を固形分基準25重量%で含み、70重量%の水と5重量%のイソプロピルアルコールを含む調液の形態で添加)
【0162】
- メラミン触媒(メーカー:Allnex社、製品名:Cymel(R) 4040 Catalyst)0.06重量%
【0163】
- PEDOT水溶液(メーカー:ヘラウス社、製品名:Clevios PT2)20重量%
【0164】
- 9%のアンモニア水(メーカー:ドクサン薬品工業(株))0.05重量%
【0165】
- 界面活性剤(メーカー:BYK社、製品名:BYK348)0.01重量%
【0166】
- 防汚剤(メーカー:シリコンディーエヌエー社、製品名:SD3667)0.2重量%
【0167】
- 蒸溜水残量
【0168】
2.離型フィルムの製造
【0169】
このように製造した離型コーティング組成物を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(メーカー:東レ尖端素材、製品名:XD500)の少なくとも1面に、バーコータを用いて塗布した後、熱風乾燥器において150℃温度で30秒間加熱乾燥して硬化させ、基材上に離型層が形成された離型フィルムを製造した。
【0170】
[比較例]
【0171】
1.離型コーティング組成物の製造
【0172】
実施例と同一に離型コーティング組成物を製造するものの、比較例1の場合、重合体成分(co-PET化合物)を除き、比較例2~5の場合、重合体成分の代わりに既存の調節剥離添加剤(controlled release additive;CRA)(信越社、製品名:X-62-185)をメラミン成分に対してそれぞれ50%、20%、40%、及び60%の量で添加した。
【0173】
2.離型フィルムの製造
【0174】
上記実施例と同一の方法で比較例の離型コーティング組成物を用いて、離型層が形成された離型フィルムを製造した。
【0175】
[実験例1]グリーンシートの剥離力及び経時安定性の測定
【0176】
チタン酸バリウム(BaTiO3;サカイ化学工業社製、製品名:BT-03)50質量部、ポリビニルブチラル(積水化学工業社製、製品名:エスレックB・KBM-2)5質量部、及びフタル酸ジオクチル(関東化学社製、製品名:フタル酸ジオクチル鹿1級)2質量部に、トルエン69質量部及びエタノール46質量部を添加して、ボールミルで混合分散させてセラミックスラリーを製造した。
【0177】
実施例及び比較例において、製造後、常温48時間保管した離型フィルムを、離型層の表面にアプリケータを用いて前記セラミックスラリーを均一に塗工した。その後、乾燥器で80℃で1分間乾燥させた。最終的に、離型フィルム上に厚さが3μmであるセラミックグリーンシートを得て、セラミックグリーンシートが付着した離型フィルムを製造した。
【0178】
セラミックグリーンシートが付着した離型フィルムを、室温23℃、湿度50%の条件下で24時間及び90日間保管した。その後、セラミックグリーンシートで離型フィルムとは反対側の面にアクリル粘着テープ(日東電工社製、商品名:31Bテープ)を接着させ、その状態で25mm幅に裁断して、これを測定サンプルとした。
【0179】
このような測定サンプルの粘着テープ側を平板に固定させた後、引張試験機(ChemInstrument社のAR-1000機器)を用いて90°剥離角度、500mm/分の剥離速度でセラミックグリーンシートから剥離フィルムを剥離して、剥離力(gf/25mm)を測定した。5回測定した結果の平均値を表1に示した。
【0180】
また、24時間の間保管した後の剥離力(RF1)に対する90日間保管した後の剥離力(RF90)の比(RF90/RF1)を測定して、経時安定性を示した。
【0181】
[実験例2]テープ剥離力の測定
【0182】
本開示の技術分野において広く用いられている標準テープであるTESA7475テープ(ドイツTESA社製)を用いて、上記実施例及び比較例で製造した離型コーティング組成物を塗布して製造された離型フィルムの剥離力を評価した。
【0183】
2kgのローラで離型層の離型コーティング面に標準テープであるTESA7475テープを付着して常温で20分経過後または常温で24時間経過後の剥離時の剥離力を測定した。剥離力の測定はChemInstrument社のAR-1000機器を用いて180°剥離角度、12in/分の剥離速度で5回測定し、その平均値を求めた。
【0184】
[実験例3]シリコン含量の測定
【0185】
X線蛍光分析器(XRF)(OXFORD社製、製品名:LAB X-3500)を用いて、上記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの離型層でシリコン含量を測定した。
【0186】
[実験例4]残留接着率の測定
【0187】
上記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの測定用サンプルを25℃、65%RHで24時間保管後、離型コーティング面に標準テープであるNitto31Bテープを付けた後、このサンプルを常温で20g/cm2の荷重で24時間圧着した。離型コーティング面に接着したテープを汚染なしに回収後、表面が平坦できれいなポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム面に接着した後、2kgのテープローラで1回往復圧着させた後、剥離力を測定した。
【0188】
比較のために、使用したことがないNitto31Bテープを表面が平坦できれいなPETフィルム面に接着した後、2kgのテープローラで1回往復圧着させた後、剥離力を測定した。
【0189】
剥離力は下記のように測定し、それにより数学式1によって残留接着率を算出した。
【0190】
測定機器:ChemInstrument社のAR-1000機器
【0191】
測定方法:180°剥離角度、剥離速度30mm/分
【0192】
<数学式1>
【0193】
残留接着率(%)=[離型層の表面に接着させた後に剥離した接着テープの剥離力/離型層の表面に接触させなかった接着テープの剥離力]×100
【0194】
[実験例5]表面エネルギーの測定
【0195】
上記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの離型コーティング面に接触角測定機(KRUSS社、製品名:DSA-100)を用いて蒸溜水及びヨウ化メチレン(diiodomethane)を落とし、それぞれの接触角を測定した後、測定された接触角値をOwens-Wendtモデルに代入して表面エネルギーを計算した。
【0196】
[実験例6]Rub-offテスト
【0197】
親指で力を入れ、上記実施例及び比較例で製造された離型フィルムの離型層を10回往復してこすった後の離型層の表面が変化する程度を肉眼で観察した。その結果、Rub-off特性を次の通り評価した。
【0198】
◎:評価後、変化がない場合
【0199】
○:微細に押されるが、使用上問題はない場合
【0200】
△:離型層の表面がぼうっとかすんだ場合
【0201】
×:離型層が剥落した場合
【0202】
上記実験例により得られた結果を下表1に記載した。
【0203】
【0204】
表1の結果によれば、本開示の一側面による離型コーティング組成物を用いて得られた離型フィルムは比較例を用いた場合に比べて、優れた経時安定性を示すと共に多様な範囲のグリーンシートの剥離力を達成した。従って、多様な産業分野で活用され得るという長所を有することができる。
【0205】
従来、当該技術分野で重剥離力を示す離型フィルムである比較例2~5の場合、3μmのグリーンシートに対する剥離力が4gf/inを超えることができず、これを超えるとしても、経時安定性が非常に劣悪で、これは上述したようにシリコン樹脂に該当するCRAの含量があまりにも過度であったためである。それに対して、実施例ではメラミン成分と重合体成分の組合わせを通じて4gf/inを超え、既存には達成できなかった重剥離力が達成できた。
【0206】
本開示の一側面による実施例は、製造後90日のグリーンシートで剥離力を測定した際にも製造後1日目とほぼ類似のグリーンシートの剥離力を示し、経時安定性に非常に優れた特性を示したが、比較例は時間が経つにつれグリーンシートの剥離力が減少し、相対的に劣悪な経時安定性を示した。これは、実施例の場合、メラミン成分と重合体成分が硬化後に架橋網の構造を形成するのに対し、比較例はこのような構造が形成できないためである。
【0207】
また、本開示の一側面による実施例は少なくとも94%以上の残留接着率を示し、優れたRub-off特性を示すことを確認した。
【0208】
[実験例7]先剥離テスト
【0209】
離型フィルムの先剥離の程度を模写して評価するために、フォールディングテスター((株)Flexigo、Foldy-100-1C)を用いた。固定プレートとムービングプレート上に実験例1により製造されたセラミックグリーンシートが付着した離型フィルムをテープで固定した後、1.5回/secの速度で1~100回まで繰り返してグリーンシートが離型フィルムから剥がれた程度を比較し、その結果を
図1に示した。
【0210】
図1bによれば、実施例2の場合、繰り返し行っても先剥離がほぼ発生せず、30回の繰り返しから端部で少しずつ先剥離が生じるだけである。これとは異なって、比較例2の場合、塗布後から浮き現象が観察されて先剥離が発生し、繰り返し1回から相当な先剥離が発生し、繰り返し行うにつれ、継続して先剥離が発生し、先剥離領域が増加することを確認することができる。
【0211】
このような結果は、本開示の一側面による離型コーティング組成物を用いて製造された離型フィルムが従来の該当技術分野で重剥離力を示す離型フィルムに比べて相対的に高いグリーンシートの剥離力を実現することができ、さらに優れた経時安定性を有することを意味するものである。前記従来の離型フィルムの場合、CRAの含量を高めてさらに高いグリーンシートの剥離力を実現することができるが、この場合、高くなったCRAの含量により経時安定性が劣悪になる問題が発生する。しかし、本開示ではメラミン成分と重合体成分の組合わせを用いて広い範囲のグリーンシートの剥離力を実現すると共に優れた経時安定性を達成したものなので、当該産業分野で用いるのにはるかに有利である。
【0212】
また、本開示の離型フィルムは同一の剥離力を実現した場合にも従来の離型フィルムに比べてはるかに優れた先剥離特性と経時安定性を示す。特に、グリーンシートの厚さが厚くなるほどさらに高い水準の剥離力が要されるが、従来の離型フィルムの場合、このような剥離力を達成するようになれば、経時安定性が非常に劣悪になり、グリーンシートが付着した離型フィルムをロール状で保管する場合、小さな物理的衝撃にも離型フィルムが浮き上がる先剥離が発生し得る。これとは異なり、本開示の離型フィルムは多様な水準のグリーンシートの剥離力を実現しつつ、同時に優れた経時安定性を示すので、厚いグリーンシートに対しても従来の離型フィルムのような問題はなしに使用が可能である。
【0213】
[実験例8]FT-IRスペクトルの測定
【0214】
実施例2及び比較例1の離型コーティング組成物で製造された離型層におけるFT-IRスペクトルを測定した。具体的に、Bruker社のVERTEX70機器を用い、実施例と比較例の離型コーティング組成物をガラス板に塗布し、熱風乾燥器で150℃の温度で30秒間加熱乾燥して硬化させた後、セラミックナイフでコーティング層を0.1g採取して測定機器のATR法によりスペクトルを測定した。FT-IRスペクトルの測定結果は、
図2に示した。
【0215】
図2によれば、比較例1とは異なって、本開示の離型コーティング組成物から製造された離型層は、1650cm
-1以上1850cm
-1以下の領域で高い吸収ピーク強度を示すことが確認できる。一方、実施例の離型コーティング組成物から製造された離型層に対するP
b/P
aの値は、下表2に示した。
【0216】
【0217】
従って、本開示の離型コーティング組成物を用いて製造された離型フィルムは1450cm-1以上1650cm-1未満の領域における最大吸収ピーク強度をPa、1650cm-1以上1850cm-1以下の領域における最大吸収ピーク強度をPbとしたとき、0.5≦Pb/Pa≦10.0の式を満たすことを確認することができる。また、このような範囲のPb/Pa値を満たすことにより、表1に示された通り優れた経時安定性を示すと共に多様な範囲のグリーンシートの剥離力を達成することを確認することができる。