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特許7554812アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H01G9/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022501730
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021002664
(87)【国際公開番号】W WO2021166570
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2020028871
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390032230
【氏名又は名称】ニッポン高度紙工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴史
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ休 正樹
(72)【発明者】
【氏名】熊岡 弘倫
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176073(JP,A)
【文献】特開2017-119941(JP,A)
【文献】特開2014-072361(JP,A)
【文献】特開2006-004844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子を有するアルミニウム電解コンデンサに用いるセパレータであって、前記セパレータはフィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とからなり、セパレータ全体に占める前記フィブリル化セルロース繊維の含有割合が40~60質量%であり、前記フィブリル化合成繊維の含有割合が40~60質量%であり、前記セパレータは、前記フィブリル化セルロース繊維として、平均繊維径が6~12μmの繊維を含み、前記フィブリル化合成繊維として、平均繊維径が13~22μmの繊維を含み、20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ及び270℃,20分間熱処理後の引張強さを用いて下記式(1)で表される、引張強さ低下率が10~80%であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
式(1) : (X1-X2)/X1×100
X1:20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ
X2:270℃,20分間熱処理後の引張強さ
【請求項2】
前記引張強さ低下率が20~80%であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項3】
前記セパレータは、270℃,20分間熱処理後の引張強さが160~1600N/mであることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項4】
前記セパレータは、前記フィブリル化合成繊維として、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステルのうち少なくとも1種類の繊維を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム電解コンデンサ用セパレータ及び該セパレータを用いたアルミニウム電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム電解コンデンサは、自動車電装部品や、電子機器等、多くの分野に使用されている。
アルミニウム電解コンデンサの中でも、陰極材料に導電性高分子を用いたアルミニウム固体電解コンデンサ(以下、「固体電解コンデンサ」と称す。)は、陰極材料に電解液のみを用いる通常のアルミニウム電解コンデンサと比べ、周波数特性が良好で、等価直列抵抗(以下、「ESR」と称す。)が小さいため、パーソナルコンピュータやコンピュータのCPU周辺回路などにも使用されている。
【0003】
また、陰極材料に導電性高分子と電解液とを共に用いた導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサ(以下、「ハイブリッド電解コンデンサ」と称す。)は、陰極材料に電解液のみを用いる通常のアルミニウム電解コンデンサと比べ、ESRが低いことから自動車電装機器用途にも用いられてきている。
【0004】
一般的に、固体電解コンデンサは、陽極アルミニウム箔と陰極アルミニウム箔との間にセパレータを介在させて巻回し、導電性高分子のモノマーと酸化剤とを含む重合液を含浸し、モノマーを重合して得た導電性高分子を含有した素子を、ケースに挿入した後に封口することで、または、陽極アルミニウム箔と陰極アルミニウム箔との間にセパレータを介在させて巻回し、導電性高分子の分散体を含浸、乾燥して得た導電性高分子を含有した素子を、ケースに挿入した後に封口することで、作製される。
【0005】
ハイブリッド電解コンデンサは、導電性高分子を含有した素子に、更に電解液を含浸させ、ケースに挿入した後に封口することで、または、ケースに電解液を注入した後に素子をケースに挿入し、電解液を含浸させ、封口することで、作製される。
【0006】
電解液のみを用いた通常のアルミニウム電解コンデンサの伝導機構はイオン伝導だが、導電性高分子を含有した固体電解コンデンサやハイブリッド電解コンデンサの伝導機構は電子伝導である。このため、固体電解コンデンサやハイブリッド電解コンデンサは、通常のアルミニウム電解コンデンサと比べ応答性が高く、ESRが低いため発熱を抑えることができ、耐熱性要求の高い自動車電装部品等に使用される。
【0007】
上述したように、導電性高分子を含有する固体電解コンデンサ或いはハイブリッド電解コンデンサ(以下、固体電解コンデンサ及びハイブリッド電解コンデンサを総称して「導電性高分子コンデンサ」とする)は、パーソナルコンピュータや家庭用ゲーム機をはじめ、高耐熱性や長期信頼性が要求される自動車用電装部品等にも適用範囲が広がっている。特に自動車用電装部品として用いられる用途では、コンデンサの保証時間として150℃、2千時間への対応といった要求が出てきている。
【0008】
また、コンピュータ用途においても、コンデンサにリフローはんだ付けを行う際の要求として、従来の260℃よりも高い270℃対応への要求も高まってきている。そのため、セパレータにはさらなる耐熱性の向上が求められている。
【0009】
導電性高分子コンデンサ用セパレータを含む従来の電気化学素子用セパレータを構成する繊維としては、セルロース繊維や合成繊維が用いられ、セルロース繊維或いは合成繊維を単独で用いたセパレータや、これらを混合したセパレータが使用されている。なかでも、セルロース繊維は、水だけでなく、エチレングリコールやγ-ブチロラクトンなどの電解液溶媒、モノマー液、アルコール系溶媒などコンデンサ作製工程で使用される様々な液に対する親和性が高く、電解液溶媒に溶解することもない。そのため、セルロース繊維を含有するセパレータは、導電性高分子コンデンサ用セパレータに用いられてきている。
【0010】
セルロース繊維を含有する導電性高分子コンデンサ用セパレータの耐熱性の向上を目的に、特許文献1~4等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2017-119941
【文献】特開2019-176073
【文献】特開2006-245550
【文献】再表2005/101432
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、電気化学素子用セパレータとして、セルロース繊維からなるセパレータが提案されている。特許文献1に記載されたセパレータを使用することで、耐熱性を高めることが可能とされている。しかし、セルロース繊維のみからなるセパレータは、セルロースの熱分解温度以上で高温暴露すると、徐々にセルロースの分解が促進されてしまう。そのため、セパレータの強度が低下し、ショート不良が発生してしまうという懸念がある。つまり、さらに耐熱性を向上させたセパレータが求められている。
【0013】
特許文献2には、合成樹脂繊維を含有し、空隙率、平均孔径、クラークこわさを制御することでセパレータのしなやかさを制御し、ESR特性及び長期信頼性を向上させたセパレータが記載されており、セルロース繊維を含んだ技術も開示されている。このように、しなやかさを制御したセパレータは、高温環境下でのセパレータの収縮を抑えることができる。そのため、コンデンサに振動などの外力が加わった場合でも、セパレータが適度にしなやかなため素子のズレが起こりにくく、長期信頼性を向上させることができる。しかし、このようなセパレータであっても、近年要求されるような、150℃、2千時間といった長時間の高温暴露や、270℃でのリフローはんだ付けのような、短時間の急激な高温暴露の際に、セパレータの耐熱性が十分でない場合があり、ショート不良の増加やESRの増大を招く可能性があった。つまり、セパレータの耐熱性をさらに向上させることが求められている。
【0014】
特許文献3には、熱膨張測定したときに大幅に伸び縮みや切断を起こしにくいセパレータが提案されており、このセパレータを用いることで、耐熱性が良好で、高信頼性の電子部品を提供できることが記載されている。この特許文献3に記載されているセパレータは、緩やかな温度変化の場合は安定性が高い。しかし、270℃でのリフローはんだ付けのように、素子に急激な温度上昇が起こる場合には、セパレータの伸び縮みや切断を起こす可能性がある。そのため、ショート不良が発生してしまうという懸念がある。
【0015】
特許文献4には、熱処理後の寸法変化率の低いセパレータが記載されている。この特許文献4に記載されたセパレータを用いることで、高温暴露後でも電気化学素子の内部抵抗を低くできることが開示されている。このセパレータは、高温暴露した際の収縮を抑えることで、表面平滑性を保ち、内部抵抗の上昇を抑えることができる。しかし、このような収縮の小さいセパレータでも、高温暴露した際にセパレータの強度が低下することがさけられない。そのため、セパレータの遮蔽性が低下してしまうという懸念があった。
【0016】
特許文献3及び特許文献4は、フィブリル化耐熱性繊維と、非フィブリル化繊維と、フィブリル化セルロース繊維との三成分からなるセパレータである。非フィブリル化繊維を配合することで、フィブリル化耐熱性繊維とフィブリル化セルロース繊維とを捕捉し、セパレータの基本骨格を形成することができるとされている。
しかし、非フィブリル化繊維はフィブリル化繊維と合わせると、結束繊維ができやすい、繊維の分散性が悪いなどの問題があり、セパレータの地合いが悪化しやすい。非フィブリル化繊維を含有したセパレータは、地合いが悪くなりやすく、紙層中の繊維の分布が不均一になってしまう。紙層中の繊維の分布が不均一な場合、熱がかかった際に、局所的にセルロース繊維の多い部分で強度低下が起こりやすくなる。仮に、特許文献3及び特許文献4で、セパレータの伸び縮みや変形を抑えるためにセルロース繊維の配合量を高めようとすると、さらにセルロース繊維の分布が不均一となり、強度低下が顕著となる。そのため、部分的にセパレータが脆くなり強度が低下するなどの影響により、ショート不良が発生するという懸念がある。また、高温への耐性を高めるためにフィブリル化耐熱性繊維の配合量を高めた場合、同様に地合いが悪化し、ショート不良が発生する懸念がある。
【0017】
このように、セルロース繊維を含有するセパレータは、電気化学素子用セパレータとして広く用いられているが、従来のセパレータでは、150℃、2千時間のような長時間の高温暴露や、270℃でのリフローはんだ付けのような短時間の急激な高温暴露に対する耐熱性で問題があった。セルロース繊維を熱分解温度以上に晒した場合、収縮のような形状の変化は起こりにくいが、熱分解が起こることは避けられない。そのため、セルロース繊維を含有するセパレータの耐熱性を向上するには、実際にセルロース繊維が熱分解する条件での耐性を向上させることが重要である。同様に、導電性高分子コンデンサの耐熱性の向上には、セパレータを実際に高温暴露した際の耐熱性を更に向上させることが必要である。
【0018】
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、セパレータを高温暴露した際、セパレータには段階的に様々な劣化が起こるが、その中でも特に、セパレータの引張強さの低下を最小限に抑えることが重要であることが判明した。
【0019】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、セパレータを高温暴露した際に生じる段階的な劣化のうち、特に、セパレータに生じる引張強さの低下を最小限に抑えることで、耐熱性が良好な高信頼性のセパレータ及び該セパレータを用いた導電性高分子コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は上述した課題を解決し、セパレータを高温暴露した際に生じる段階的な劣化のうち、特に、引張強さの低下を最小限に抑えることのできるセパレータを提供することを目的とする。かかる目的を達成する一手段として、本発明に係る実施の形態は、例えば、以下の構成を備える。
【0021】
即ち、一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子を有するアルミニウム電解コンデンサに用いるセパレータであって、前記セパレータはフィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とからなり、セパレータ全体に占めるフィブリル化セルロース繊維の含有割合が40~60質量%であり、フィブリル化合成繊維の含有割合が40~60質量%であり、セパレータは、フィブリル化セルロース繊維として、平均繊維径が6~12μmの繊維を含み、フィブリル化合成繊維として、平均繊維径が13~22μmの繊維を含み、20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ及び270℃,20分間熱処理後の引張強さを用いて下記式(1)で表される、引張強さ低下率が10~80%であることを特徴とする。
式(1) : (X1-X2)/X1×100
X1:20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ
X2:270℃,20分間熱処理後の引張強さ
【0022】
さらに、前記セパレータは、前記引張強さ低下率が20~80%であることを特徴とする。
【0023】
またさらに、270℃,20分間熱処理後の引張強さが160~1600N/mであることを特徴とする。
【0025】
または、以上の構成からなるアルミニウム電解コンデンサ用セパレータを用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサとする。
【0026】
そして例えば、フィブリル化合成繊維として、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステルのうち少なくとも1種類の繊維を含むことを特徴とする。
【0028】
また例えば、前記一対の電極における陰極材料として、導電性高分子を用いたことを特徴とするアルミニウム電解コンデンサとする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、セパレータを高温暴露した際に生じる段階的な劣化のうち、セパレータに生じる引張強さの低下を最小限に抑えることで、耐熱性が良好な高信頼性のセパレータ及び該セパレータを用いた導電性高分子コンデンサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態例について、詳細に説明する。
一般的なアルミニウム電解コンデンサの、リフローはんだ付けのピーク温度及び時間よりも過酷な条件で熱処理をした際、セパレータの劣化は比較的短い時間で急激に進む。劣化は段階的に進んでいくが、その中でも特に、セパレータの引張強さが急激に低下する。
本発明者らは、セパレータに生じる急激な引張強さの低下を抑えることができれば、リフローはんだ付けのような短時間の急激な高温暴露の際の耐熱性だけでなく、コンデンサの使用環境における長時間の高温暴露の際の耐熱性も担保することができることを見出した。
【0031】
以上に鑑み、本実施の形態のセパレータを例えば以下の構成とした。
一対の電極の間に介在し、陰極材料として導電性高分子を有するアルミニウム電解コンデンサに用いるセパレータであって、前記セパレータはフィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とからなり、20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ及び270℃,20分間熱処理後の引張強さを用いて下記式(1)で表される、引張強さ低下率が10~90%であることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ用セパレータとする。
【0032】
式(1) : (X1-X2)/X1×100
X1:20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ
X2:270℃,20分間熱処理後の引張強さ
なお、本発明では、以降、X1:20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さを「調湿後の引張強さ」、X2:270℃,20分間熱処理後の引張強さを「熱処理後の引張強さ」と称す。
【0033】
本発明では、引張強さ低下率をセパレータの耐熱性の指標として用いた。セパレータに270℃,20分間熱処理のように過剰な熱処理を行うと、セパレータを構成する繊維の熱分解、溶融などの変化が生じる。そして、これらの変化が複合的に作用することで、セパレータの引張強さが急激に低下する。セパレータの引張強さ低下率を求めることで、セパレータが熱処理によってどの程度変化したかを推定することができる。つまり、引張強さ低下率が高すぎる場合は、セパレータを構成する繊維に過剰な熱分解や溶融などの変化が起きていることが推定できる。そのため、引張強さ低下率を求めることで、熱処理によるセパレータの変化の度合いを推定し、セパレータの耐熱性の指標とすることができる。なお、本発明の引張強さ低下率は、調湿後の引張強さの値の方が、熱処理後の引張強さの値よりも大きい場合を想定しており、引張強さ低下率は正の値となる。
【0034】
本実施の形態のセパレータは、上記式(1)に示すように、引張強さ低下率が10~90%である。引張強さ低下率が10~90%であれば、セパレータに長時間の高温暴露を行った場合及び短時間の急激な高温暴露を行った場合でも引張強さが低下することがない。つまり、セパレータを構成する繊維の熱分解や溶融による変化を最低限に抑え、熱処理後もセパレータの遮蔽性及び導電性高分子の連続性を維持することができる。繊維の熱分解や溶融といった変化を最低限に抑えることができれば、繊維が脆く崩れやすい状態となったり、紙層中で繊維が部分的に少ない領域が生じたりすることがない。そのため、このセパレータを使用したコンデンサは、リフローはんだ付け後のショート不良率を低減し、長期信頼性を想定した高温負荷試験後のESRの上昇率を低減することができる。好ましくは、引張強さ低下率を20~80%以下とすることで、セパレータを構成する繊維の熱分解や溶融による変化をさらに抑えることができる。
引張強さ低下率は低い方が好ましいが、本発明のセパレータで実現可能な範囲としては、10%が上限となる。但し、素子巻の作製時に必要なセパレータの強度などを考慮すると、20%を上限とすることが好ましい。また、熱処理後のセパレータには、収縮やシワなどの変形がないことが好ましい。
【0035】
引張強さ低下率が90%を超過する場合、長時間の高温暴露又は短時間の急激な高温暴露の際にセパレータの分解が急激に進み、セパレータを構成する繊維同士の絡みや結合が損なわれてしまい、セパレータの遮蔽性を保つことができなくなる。つまり、セパレータを構成する繊維の熱分解や溶融が過剰に進むため、繊維が脆く崩れやすい状態となったり、紙層中で繊維が部分的に少ない領域が生じたりする。そのため、このセパレータを使用したコンデンサでは、リフローはんだ付けや長期信頼性試験を行った場合に、電極箔等のバリがセパレータを貫通することでショート不良が起こる、繊維表面又は繊維間に形成された導電性高分子層にクラックなどが生じることでESRが上昇する、などの問題が生じる場合がある。
【0036】
〔熱処理〕
本実施の形態における熱処理について、以下に説明する。
本実施の形態における「270℃,20分間熱処理」は、予め270℃まで昇温した装置(例えば、庫内温度を270℃まで昇温した恒温槽やオーブンなど)に、セパレータを入れてから20分間放置することを意味する。セパレータを270℃で熱処理するときに使用する装置としては、恒温槽やオーブンなどを使用することができる。試験時の雰囲気は、空気中や不活性ガス中などがあるが、空気中で実施することが好ましい。空気中であれば、セパレータを構成する繊維には酸化による劣化も加わり、過酷な条件での評価とすることができる。この条件でも引張強さ低下率を90%以下とすることが出来れば、不活性ガス中でも同様に引張強さ低下率は90%以下となる。
【0037】
ハイブリッド電解コンデンサの場合、セパレータは電解液を含んだ湿潤状態で素子内に存在している。繊維の熱分解は湿潤状態の方が緩やかに進むため、空気中で引張強さ低下率が90%以下であれば、湿潤状態でもセパレータの引張強さを保つことができ、耐熱性に優れたセパレータとすることができる。
【0038】
本発明の実施の形態のセパレータは、熱処理後の引張強さが160N/m以上であることが好ましい。熱処理によりセパレータを構成する繊維には熱分解や溶融などの変化が起こっても、熱処理後の引張強さが160N/m以上であれば、セパレータの機能を最低限保つことができる。より好ましくは、熱処理後の引張強さが200N/m以上であれば、セパレータを構成する繊維の熱分解や溶融などの変化をさらに抑えることが出来る。熱処理後の引張強さは高いほど良いが、本発明のアルミニウム電解コンデンサ用セパレータとして実現可能な範囲を考慮すると1600N/mが上限となる。
【0039】
本発明の実施の形態のセパレータは、コンデンサ素子巻を作製する際の作業性を考慮して、調湿後の引張強さが330N/m以上であることが好ましく、520N/m以上であることがさらに好ましい。調湿後の引張強さが520N/m以上であれば、素子巻を作製する際の生産性が悪化しにくい。
【0040】
本発明のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維を含有する。セルロース繊維は、セルロース分子間で水素結合を形成するため、セパレータの骨格となり調湿後の引張強さを高めることができる。また、セルロース繊維は熱によって収縮しにくいため、熱処理後のセパレータの形状を保ちやすい。また、叩解処理によりフィブリルの発生したフィブリル化セルロース繊維を配合することで、セパレータの強度や遮蔽性を制御することができる。さらに、フィブリル化セルロース繊維を配合することで、地合いの良いセパレータとしやすく、また調湿後の引張強さをより高めやすくなる。
本発明のセパレータに使用可能なセルロース繊維としては、天然セルロース繊維や、再生セルロース繊維などが挙げられる。天然セルロース繊維としては、木材パルプである針葉樹や広葉樹、非木材パルプではマニラ麻やサイザル麻などの葉脈繊維、ジュート、ケナフなどの靭皮繊維、エスパルト、竹、稲ワラ、竜鬚草などの禾本科植物繊維、コットンリンターなどの種毛繊維等を使用することができる。再生セルロース繊維としては、溶剤紡糸セルロース繊維が好適に使用できる。天然セルロース繊維は、再生セルロース繊維に比べてセルロースの重合度が高く、高温暴露した際にも繊維の強度低下が起こりにくいため好ましい。合成繊維と合わせた際の分散性を考慮すると、天然セルロース繊維の中でも、サイザル麻、ジュート、ケナフ、エスパルト、竹、稲ワラ、ララン草、竜鬚草、バガスなどの繊維を含むことが好ましい。これらの繊維は、繊維長が短く、繊維径も細いため、分散性が良い。そのため、合成繊維と合わせた際にも均一に分散し地合いの良いセパレータとしやすい。
【0041】
本発明のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維の他に、フィブリル化合成繊維を含有する。合成繊維を配合することで、セルロース繊維単独の場合に比べ、引張強さ低下率を抑えることができる。詳細は不明だが、合成繊維とセルロース繊維とが均一に絡み合うことで、熱処理によって局所的に強度の低い領域が生じにくく、強度低下を抑制する効果が得られるのではないかと考えられる。また、叩解処理によりフィブリルの発生したフィブリル化合成繊維を配合することで、地合いの良いセパレータとしやすく、熱処理後の引張強さをより高めやすくなる。
【0042】
合成繊維の中でも高温での安定性や耐薬品性などを考慮すると、全芳香族ポリアミド繊維であるアラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維であるポリアリレート繊維を含有することが好ましい。アラミド繊維としては、メタアラミド、パラアラミドが挙げられ、中でもパラアラミドがより好ましい。これら全芳香族ポリアミド繊維や全芳香族ポリエステル繊維は、繊維を構成する分子が高い配向性を有するため、叩解処理によりフィブリル化することができる。そのためセパレータの強度や遮蔽性を制御することができる。
【0043】
フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とを用いて、引張強さ低下率を10~90%とするには、両繊維の絡み合いのバランスが重要である。本発明では、絡み合いの指標として平均繊維径を用いた。本発明のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径が6~12μmであり、フィブリル化合成繊維の平均繊維径が13~22μmであることが好ましい。両繊維の平均繊維径を上記の範囲とすることで、両繊維を合わせた際に繊維同士が均一に分散し、地合いの良いセパレータとしやすい。
【0044】
フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径が12μmを超える、或いは、フィブリル化合成繊維の平均繊維径が22μmを超える場合、両繊維の絡み合いが弱く、セパレータの地合いが悪化する場合や、調湿後の引張強さが低くなる場合がある。また、フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径が6μm未満、或いは、フィブリル化合成繊維の平均繊維径が13μm未満の場合、微細な繊維が増えすぎることでセパレータ内部の空隙が少なくなり、導電性高分子の浸透性が悪化する。さらに、微細な繊維が増えすぎることで、抄紙機での脱水が悪くなり生産性が低下してしまう。
なお、ここでいう平均繊維径とは、叩解処理によって発生したフィブリル部分ではなく、芯部分の繊維径を示す。フィブリル化セルロース繊維及びフィブリル化合成繊維の平均繊維径は、セパレータを走査型電子顕微鏡で観察すれば測定することができる。
【0045】
フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径を6~12μmとするには、セルロース繊維のCSF値を300ml~0mlの範囲とすればよい。また、フィブリル化合成繊維の平均繊維径を13~22μmとするには、繊維長が0.5~5.0mm、繊維径が15~24μmの合成繊維を用いて、CSF値を700ml~50mlの範囲とすればよい。なお、合成繊維としては、パルプのように枝葉状のフィブリルを有した繊維を用いてもよく、その場合も繊維長及び繊維径が上記範囲であれば、CSF値を700ml~50mlの範囲とすることで平均繊維径を13~22μmとすることができる。
フィブリル化セルロース繊維及びフィブリル化合成繊維のCSF値がこの範囲内であれば、両繊維の平均繊維径を上記範囲とすることができ、セパレータ中の繊維の分布が均一な、地合いの良いセパレータとすることができる。
【0046】
本発明のセルロース繊維及び合成繊維の叩解に用いる設備は、通常の抄紙原料の調成に使用されるものであればいずれでもよい。一般的には、ビーター、コニカルリファイナー、ディスクリファイナー、高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
【0047】
本発明のセパレータ全体に占めるフィブリル化セルロース繊維の含有割合は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。また、フィブリル化合成繊維の含有割合は、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がさらに好ましい。
フィブリル化セルロース繊維の含有量が30質量%未満の場合、即ち、フィブリル化合成繊維の含有量が70質量%を超過する場合、セパレータの調湿後の引張強さを高めることが難しい。さらに、フィブリル化合成繊維はフィブリル化セルロース繊維に比べて水中に分散させた際に凝集しやすいため、セパレータの地合いが悪化しやすい。また、フィブリル化セルロース繊維の含有量が70質量%を超過する場合、即ち、フィブリル化合成繊維の含有量が30質量%未満の場合、導電性高分子の含浸性が悪化しやすい。
【0048】
本発明の実施の形態例では、セパレータは抄紙法を用いて形成した湿式不織布を採用した。セパレータの抄紙形式は、特に限定はなく、円網抄紙や短網抄紙、長網抄紙といった抄紙形式が使用でき、またこれらの抄紙法によって形成された層を複数合わせたものであってもよい。また、抄紙に際しては、コンデンサ用セパレータに影響を与えない程度の不純物含有量であれば、分散剤や消泡剤、紙力増強剤等の添加剤を加えてもよい。さらに、紙層形成後に、紙力増強加工、親液加工、カレンダ加工、エンボス加工等の後加工を施してもよい。ただし、抄紙法による湿式不織布に限定するものではなく、製膜法で用いられるような、繊維分散液をキャスティングにより製膜する等の方法でも問題はない。
【0049】
本発明の実施の形態では、セパレータの厚さ及び密度には特に限定はない。セパレータの遮蔽性や、強度などの使用時の取扱い性を考慮すると、厚さ25~80μm、密度0.250~0.550g/cm程度が一般的である。
【0050】
以上のセパレータの構成により、セパレータを高温暴露した際に生じる段階的な劣化のうち、特に、セパレータに生じる強度の低下を最小限に抑えることで、耐熱性が良好な導電性高分子コンデンサ用セパレータが得られることを見出した。
そして、本実施の形態のアルミニウム電解コンデンサは、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とからなるセパレータとして上記構成のセパレータを用いて、一対の電極の間にセパレータを介在させ、陰極材料として導電性高分子を使用した。
【0051】
〔セパレータ及びアルミニウム電解コンデンサの特性の測定方法〕
本実施の形態のセパレータ及びアルミニウム電解コンデンサの各特性の具体的な測定は、以下の条件及び方法で行った。
【0052】
〔厚さ〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 5.1 厚さ」に規定された、「5.1.1 測定器及び測定方法 a外側マイクロメータを用いる場合」のマイクロメータを用いて、「5.1.3 紙を折り重ねて厚さを測る場合」の10枚に折り重ねる方法で、セパレータの厚さを測定した。
【0053】
〔密度〕
「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 7.0A 密度」のB法に規定された方法で、絶乾状態のセパレータの密度を測定した。
【0054】
〔CSF値〕
CSF値は、JIS P8121-2『パルプ-ろ水度試験法-第2部:カナダ標準ろ水度法』(ISO5267-2『Pulps-Determination of drainability-Part2:“Canadian Standard”freeness method』)に従って測定した。
【0055】
〔引張強さ低下率〕
セパレータの引張強さ低下率は、下記式(1)に従って計算した。
式(1) : (X1-X2)/X1×100
X1:20℃,65%RHで30分間調湿後の引張強さ
X2:270℃,20分間熱処理後の引張強さ
測定サンプルの準備及び測定方法については、「JIS C 2300-2 『電気用セルロース紙-第2部:試験方法』 8 引張強さ及び伸び」に規定された方法で行い、セパレータの縦方向の引張強さを測定した。
X1を測定する際は、準備したセパレータの試験片を、20℃、65%RHで30分間調湿した後に、セパレータの引張強さを測定した。
X2を測定する際は、準備したセパレータの試験片を、予め庫内温度を270℃に昇温した恒温槽に入れ、20分間の熱処理を行った後にセパレータの引張強さを測定した。
このように得られたX1及びX2を用いて、上記式(1)の通り引張強さ低下率を求めた。
【0056】
〔フィブリル化セルロース繊維及びフィブリル化合成繊維の平均繊維径〕
走査型電子顕微鏡を用いて、1000倍の倍率でセパレータの表面を観察し、100本の繊維の芯部分を測長し、その平均値を求めた。
【0057】
〔固体電解コンデンサの作製工程〕
実施例、比較例、及び従来例のセパレータを用いて、定格電圧6.3V、直径8.0mm×高さ7.0mmと、定格電圧50V、直径8.0mm×高さ10.0mmとの二種類の固体電解コンデンサを作製した。
【0058】
具体的な固体電解コンデンサの作製方法は、以下の通りである。
エッチング処理及び酸化皮膜形成処理を行った陽極箔と陰極箔とが接触しないように、セパレータを介在させて巻回し、コンデンサ素子を作製した。作製したコンデンサ素子は再化成処理後、乾燥させた。
【0059】
定格電圧6.3Vの固体電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子の重合液を含浸後、加熱・重合させ、溶媒を乾燥させて導電性高分子層を形成した。定格電圧50Vの固体電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子分散液を含浸後、加熱・乾燥させて導電性高分子層を形成した。そして、所定のケースにコンデンサ素子を入れ、開口部を封口後、エージングを行い、それぞれの固体電解コンデンサを得た。
【0060】
〔ハイブリッド電解コンデンサの作製工程〕
実施例、比較例、及び従来例のセパレータを用いて、定格電圧16V、直径10.0mm×高さ10.5mmと、定格電圧80V、直径8.0mm×高さ10.0mmとの二種類のハイブリッド電解コンデンサを作製した。
【0061】
具体的なハイブリッド電解コンデンサの作製方法は、以下の通りである。
エッチング処理及び酸化皮膜形成処理を行った陽極箔と陰極箔とが接触しないように、セパレータを介在させて巻回し、コンデンサ素子を作製した。作製したコンデンサ素子は、再化成処理後、乾燥した。
【0062】
定格電圧16Vのハイブリッド電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子重合液を含浸後、加熱・重合させ、溶媒を乾燥させて導電性高分子層を形成した。定格電圧80Vのハイブリッド電解コンデンサは、コンデンサ素子に導電性高分子分散液を含浸後、加熱・乾燥させて導電性高分子層を形成した。そして、上記コンデンサ素子に駆動用電解液を含浸させ、所定のケースにコンデンサ素子を入れ、開口部を封口後、エージングを行い、それぞれのハイブリッド電解コンデンサを得た。
【0063】
〔初期ESR〕
作製したコンデンサのESRは、温度20℃、周波数100kHzの条件にてLCRメータを用いて測定した。
【0064】
〔リフローはんだ付け後のショート不良率〕
リフローはんだ付け後のショート不良率は、まず、作製したコンデンサを用いて、ピーク温度を270℃とし、230℃を超える時間が30秒間であるリフローはんだ付けを1分間行った。その後、コンデンサに定格電圧を印加し、生じたショート不良数を計数した。ショート不良となった数を、コンデンサの全数で除して、百分率をもってリフローはんだ付け後のショート不良率とした。
【0065】
〔高温負荷試験後のESR上昇率〕
高温負荷試験後ESRは、150℃、500時間加熱した後に、温度20℃、周波数100kHzの条件にてLCRメータを用いて測定した。
この高温負荷試験後ESRを、高温負荷試験前のESRで除して、高温負荷試験後のESR上昇率を算出した。
【0066】
〔実施例、比較例及び従来例〕
以下、本発明の実施の形態に係るセパレータの具体的な実施例等について説明する。
【0067】
表1に各実施例、各比較例及び各従来例に用いた合成繊維の一覧を示す。表1は、それぞれの合成繊維(合成繊維1~合成繊維6)の繊維材料、平均繊維径、繊維長を示している。
【0068】
【表1】
【0069】
〔実施例1〕
ジュート繊維を用いてCSF値が200mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維60質量%と、合成繊維1を用いてCSF値が100mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維40質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、実施例1のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.5μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は13.4μmであった。
完成した実施例1のセパレータの厚さは40μm、密度は0.453g/cm、調湿後の引張強さは1020N/m、熱処理後の引張強さは410N/m、引張強さ低下率は60%であった。
【0070】
〔実施例2〕
竹繊維とマニラ麻繊維とを1:1の割合で含むセルロース繊維を用いてCSF値が290mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維70質量%と、合成繊維1を用いてCSF値が50mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維30質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、実施例2のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.8μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は13.2μmであった。
完成した実施例2のセパレータの厚さは25μm、密度は0.545g/cm、調湿後の引張強さは1500N/m、熱処理後の引張強さは170N/m、引張強さ低下率は89%であった。
【0071】
〔実施例3〕
竜鬚草繊維を用いてCSF値が20mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維30質量%と、合成繊維2を用いてCSF値が110mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維70質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、実施例3のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は6.3μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は14.2μmであった。
完成した実施例3のセパレータの厚さは50μm、密度は0.260g/cm、調湿後の引張強さは950N/m、熱処理後の引張強さは160N/m、引張強さ低下率は83%であった。
【0072】
〔実施例4〕
ケナフ繊維を用いてCSF値が240mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維60質量%と、合成繊維3を用いてCSF値が670mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維40質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、実施例4のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.6μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は21.4μmであった。
完成した実施例4のセパレータの厚さは35μm、密度は0.360g/cm、調湿後の引張強さは940N/m、熱処理後の引張強さは210N/m、引張強さ低下率は78%であった。
【0073】
〔実施例5〕
ケナフ繊維とマニラ麻繊維とを1:1の割合で含むセルロース繊維を用いてCSF値が0mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維50質量%と、合成繊維4を用いてCSF値が690mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維50質量%とを含む原料を、円網二層で抄紙し、実施例5のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は6.7μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は21.7μmであった。
完成した実施例5のセパレータの厚さは80μm、密度は0.472g/cm、調湿後の引張強さは2700N/m、熱処理後の引張強さは1500N/m、引張強さ低下率は44%であった。
【0074】
〔実施例6〕
サイザル麻繊維を用いてCSF値が250mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維40質量%と、合成繊維5を用いてCSF値が130mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維60質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、実施例6のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.1μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は13.5μmであった。
完成した実施例6のセパレータの厚さは40μm、密度は0.304g/cm、調湿後の引張強さは350N/m、熱処理後の引張強さは290N/m、引張強さ低下率は17%であった。
【0075】
〔実施例7〕
ジュート繊維を用いてCSF値が50mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維55質量%と、合成繊維5を用いてCSF値が480mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維45質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、実施例7のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は8.6μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は17.0μmであった。
完成した実施例7のセパレータの厚さは50μm、密度は0.420g/cm、調湿後の引張強さは810N/m、熱処理後の引張強さは600N/m、引張強さ低下率は26%であった。
【0076】
〔比較例1〕
サイザル麻繊維を用いてCSF値が280mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維80質量%と、合成繊維1を用いてCSF値が20mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維20質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、比較例1のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.3μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は12.0μmであった。
完成した比較例1のセパレータの厚さは50μm、密度は0.470g/cm、調湿後の引張強さは1820N/m、熱処理後の引張強さは150N/m、引張強さ低下率は92%であった。
【0077】
〔比較例2〕
ケナフ繊維を用いてCSF値が330mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維70質量%と、合成繊維4を用いてCSF値が460mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維30質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、比較例2のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は12.8μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は19.0μmであった。
完成した比較例2のセパレータの厚さは50μm、密度は0.378g/cm、調湿後の引張強さは500N/m、熱処理後の引張強さは40N/m、引張強さ低下率は92%であった。
【0078】
〔比較例3〕
竹繊維を用いてCSF値が210mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維20質量%と、合成繊維3を用いてCSF値が740mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維80質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、比較例3のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.7μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は22.9μmであった。
完成した比較例3のセパレータの厚さは30μm、密度は0.390g/cm、調湿後の引張強さは320N/m、熱処理後の引張強さは20N/m、引張強さ低下率は94%であった。
【0079】
〔比較例4〕
ジュート繊維を用いてCSF値が0mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維70質量%と、合成繊維5を用いてCSF値が360mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維30質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、比較例4のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は5.3μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は17.0μmであった。
完成した比較例4のセパレータの厚さは60μm、密度は0.460g/cm、調湿後の引張強さは1600N/m、熱処理後の引張強さは120N/m、引張強さ低下率は93%であった。
【0080】
〔比較例5〕
エスパルト繊維を用いてCSF値が120mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維30質量%と、合成繊維6を用いてCSF値が150mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維70質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、比較例5のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は9.6μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は18.0μmであった。
完成した比較例5のセパレータの厚さは40μm、密度は0.290g/cm、調湿後の引張強さは530N/m、熱処理後の引張強さは20N/m、引張強さ低下率は96%であった。比較例5のセパレータは、熱処理後にシワが発生していた。
【0081】
〔従来例1〕
特許文献1の実施例1に記載の方法を参考にしてセパレータを作製し、従来例1のセパレータとした。
具体的には、ダブルディスクリファイナー及びマスコロイダーで処理した針葉樹パルプを、グリコールエーテル系開孔材及び親水性高分子バインダーを含んだ状態でPETフィルム状にアプリケーターを用いて塗布し、乾燥させてPETフィルムから剥離することで従来例1のセパレータを得た。従来例1のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は計測不能であった。
この様にして得た従来例1のセパレータは、厚さは30μm、密度は0.356g/cm、調湿後の引張強さは2400N/m、熱処理後の引張強さは130N/m、引張強さ低下率は95%であった。
【0082】
〔従来例2〕
特許文献2の実施例8に記載の方法を参考にしてセパレータを作製し、従来例2のセパレータとした。
具体的には、マニラ麻繊維を用いてCSF値が350mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維45質量%と、合成繊維1を用いてCSF値が0mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維50質量%と、ポリビニルアルコールバインダー繊維5質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、従来例2のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は14.1μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は11.2μmであった。
完成した従来例2のセパレータの厚さは50μm、密度は0.470g/cm、調湿後の引張強さは1750N/m、熱処理後の引張強さは140N/m、引張強さ低下率は92%であった。
【0083】
〔従来例3〕
竹繊維からなるCSF値が710mlの非フィブリル化セルロース繊維70質量%と、合成繊維3を用いてCSF値が600mlとなるまで叩解したフィブリル化合成繊維30質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、従来例3のセパレータを得た。非フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は12.7μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は20.9μmであった。
完成した従来例3のセパレータの厚さは40μm、密度は0.260g/cm、調湿後の引張強さは320N/m、熱処理後の引張強さは20N/m、引張強さ低下率は94%であった。
【0084】
〔従来例4〕
ジュート繊維を用いてCSF値が190mlとなるまで叩解したフィブリル化セルロース繊維30質量%と、合成繊維4からなる非フィブリル化合成繊維70質量%とを含む原料を、円網一層で抄紙し、従来例4のセパレータを得た。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は11.0μm、フィブリル化合成繊維の平均繊維径は23.5μmであった。
完成した従来例4のセパレータの厚さは40μm、密度は0.340g/cm、調湿後の引張強さは320N/m、熱処理後の引張強さは30N/m、引張強さ低下率は91%であった。
【0085】
上記の各実施例、各比較例及び各従来例のセパレータを用いて作製したアルミニウム電解コンデンサとして、低電圧用の定格電圧6.3Vの固体電解コンデンサと、高電圧用の定格電圧50Vの固体電解コンデンサとを作製した。また、ハイブリッド電解コンデンサとして、低電圧用の定格電圧16Vのコンデンサと、高電圧用の定格電圧80Vのコンデンサとを作製した。なお、比較例3、従来例3及び従来例4のセパレータは、素子巻作製時にセパレータが破断し、素子を巻回することができなかったので、これらのセパレータを用いたコンデンサの特性は測定していない。
【0086】
各コンデンサについて、初期ESR、リフローはんだ付け後のショート不良率及び高温負荷試験後のESR上昇率を測定した。
【0087】
表2に各実施例、各比較例及び各従来例のセパレータの原料と配合、各セパレータ単体の評価結果を示し、表3及び表4に各実施例、各比較例及び各従来例のセパレータを用いた導電性高分子コンデンサの性能評価結果を示す。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
以下、各実施例、各比較例及び各従来例のセパレータ物性、及び各セパレータを用いた導電性高分子コンデンサの評価結果を詳細に説明する。なお、以下の説明では、リフローはんだ付け後のショート不良率を「ショート不良率」、高温負荷試験後のESR上昇率を「ESR上昇率」と表す。
【0092】
実施例1~実施例7のセパレータを用いたコンデンサは、各比較例、各従来例のセパレータを使用したコンデンサに比べて、ショート不良率が低く、ESR上昇率が低かった。 実施例1~実施例7のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率及びESR上昇率が低かったのは、各比較例、各従来例よりも引張強さ低下率が17~89%と低く、熱処理による繊維の分解や溶融といった変化を抑えられているためと考えられる。このことから、セパレータの引張強さ低下率を90%以下とすることで、導電性高分子コンデンサの耐熱性を向上することができることがわかる。
【0093】
実施例1及び実施例4~実施例7のセパレータは、実施例2及び実施例3のセパレータを用いたコンデンサに比べてショート不良率が低かった。実施例1及び実施例4~実施例7のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率が低かったのは、引張強さ低下率が17~78%と低く、熱処理による繊維の分解や溶融といった変化をより抑えられているためと考えられる。このことから、セパレータの引張強さ低下率を80%以下とすることで、導電性高分子コンデンサの耐熱性をより向上させることができることがわかる。
また、実施例1及び実施例4~実施例7のセパレータは、実施例2及び実施例3のセパレータに比べると、熱処理後の引張強さも210~1500N/mと高い。つまり、セパレータが高温に晒されてもセパレータの遮蔽性を保つことができていると考えられる。このことから、セパレータの熱処理後の引張強さを200N/m以上とすることで、導電性高分子コンデンサの耐熱性をさらに向上させることができることがわかる。
さらに、実施例1及び実施例4~実施例7のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維を40~60質量%含有し、フィブリル化合成繊維を40~60質量%含有する。実施例2及び実施例3と実施例1及び実施例4~実施例7との結果から、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維との絡み合いのバランスを制御するには、フィブリル化セルロース繊維の含有量を40~60質量%、フィブリル化合成繊維の含有量を40~60質量%とすることが好ましいことがわかる。
【0094】
実施例6のセパレータは、引張強さ低下率は17%と低いが、調湿後の引張強さが350N/mと低くなっている。そのため、素子を巻回することはできたが、さらに生産性を向上させるには強度が低い。一方で、実施例7のセパレータは、引張強さ低下率が26%、調湿後の引張強さが810N/mであり、実施例6よりも調湿後の引張強さが高い。このことから、素子の巻回に十分な引張強さだけでなく、生産性を向上させるのに必要な引張強さを得るには、引張強さ低下率の上限は20%とすることが好ましいと考えられる。
【0095】
比較例1のセパレータは、厚さ、密度及び調湿後の引張強さは実施例のセパレータと同レベルだが、引張強さ低下率が92%と高く、比較例1のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べて初期ESR、ショート不良率及びESR上昇率が高くなっている。ショート不良率及びESR上昇率が高いのは、引張強さ低下率が92%と高く、さらに熱処理後の引張強さも150N/mと低いことで、高温曝露によって繊維に過剰な変化が起こっていることが理由であると考えられる。比較例1のセパレータは、フィブリル化合成繊維の平均繊維径が12.0μmと細いため、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維との絡み合いのバランスが悪いことが原因で引張強さ低下率及び熱処理後の引張強さが低くなったと考えられる。また、フィブリル化合成繊維の平均繊維径が細いことで、微細な繊維が多くなり初期ESRが高くなったと考えられる。さらに、比較例1のセパレータは、フィブリル化合成繊維の含有量が20質量%と低い。そのため、導電性高分子の含浸性が悪化しやすく、初期ESRが低くなっている一因になっていると考えられる。
以上のことから、フィブリル化合成繊維の平均繊維径を13μm以上とすることで、フィブリル化セルロース繊維との絡み合いのバランスが良好となり、高温曝露時の耐熱性を高めることができることがわかった。また、フィブリル化合成繊維の含有量を30質量%以上、即ちフィブリル化セルロース繊維の含有量を70質量%以下とすることで、両繊維の絡み合いをより制御しやすくなり、調湿後の引張強さを高めながら、コンデンサとした際のESRを低減しやすいことがわかった。
【0096】
比較例3のセパレータは、厚さ、密度は実施例のセパレータと同レベルだが、引張強さ低下率が94%と高く、熱処理後の引張強さも20N/mと低くなっている。比較例3のセパレータは、フィブリル化合成繊維の平均繊維径が22.9μmと太いため、セルロース繊維との絡みが十分でなく、セパレータ中の繊維の分布が不均一になっている。そのため、高温に晒された際の安定性が低くなっていると考えられる。また、比較例3のセパレータは、調湿後の引張強さが320N/mと低く、素子巻回時にセパレータが破断し素子を巻回することができなかった。調湿後の引張強さが低いのは、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維との絡み合いが不十分であることに加えて、フィブリル化合成繊維の配合割合が80質量%と多いことも一つの理由であると考えられる。
以上のことから、フィブリル化合成繊維の平均繊維径を22μm以下とすることで、フィブリル化セルロース繊維との絡み合いのバランスが良好となり、高温曝露時の耐熱性を高めることができることがわかった。また、フィブリル化合成繊維の含有量を70質量%以下、即ちフィブリル化セルロース繊維の含有量を30質量%以上とすることで、両繊維の絡み合いをより制御しやすくなり、調湿後の引張強さを高めながら、コンデンサとした際のESRを低減しやすいことがわかった。
【0097】
比較例2のセパレータは、厚さ、密度は実施例のセパレータと同レベルだが、引張強さ低下率が92%と高く、熱処理後の引張強さも40N/mと低い。比較例2のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べて初期ESRは同レベルであるが、ショート不良率及びESR上昇率が高くなっている。ショート不良率及びESR上昇率が高いのは、引張強さ低下率が92%と高く、また熱処理後の引張強さも40N/mと低いため、高温曝露によって繊維に熱分解や溶融といった過剰な変化が起こっていることが理由であると考えられる。引張強さ低下率や熱処理後の引張強さが悪いのは、実施例と比べてフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径が12.8μmと太く、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維の絡み合いのバランスが悪いことが原因と考えられる。また、素子を巻回することはできたが、実施例に比べると調湿後の引張強さは500N/mと低かった。
以上のことから、フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径を12μm以下とすることで、フィブリル化合成繊維との絡み合いのバランスが良好となり、調湿後の引張強さ及び高温曝露時の耐熱性を高めることができることがわかる。
【0098】
比較例4のセパレータは、厚さ、密度は実施例のセパレータと同レベルだが、引張強さ低下率が93%と高く、熱処理後の引張強さも120N/mと低い。比較例4のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べて初期ESR、ショート不良率及びESR上昇率が高くなっている。ショート不良率及びESR上昇率が高いのは、引張強さ低下率が91%と高く、また熱処理後の引張強さも120N/mと低くなっているため、高温曝露によって繊維に過剰な変化が起こっていることが理由であると考えられる。比較例4のセパレータは、実施例と比べてフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径が5.3μmと細いため、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維との絡み合いのバランスが悪いことが原因で、引張強さ低下率及び熱処理後の引張強さが低くなったと考えられる。また、フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径が細いことで、微細な繊維が多くなり初期ESRが高くなったと考えられる。
以上のことから、フィブリル化セルロース繊維の平均繊維径を6μm以上とすることで、フィブリル化合成繊維との絡み合いのバランスが良好となり、高温曝露時の耐熱性を高めることができることがわかる。さらに、コンデンサとした際のESRを低減しやすいことがわかる。
【0099】
比較例5のセパレータは、厚さ、密度及び調湿後の引張強さは実施例のセパレータと同レベルだが、フィブリル化合成繊維としてフィブリル化アクリル繊維を含有する。比較例5のセパレータを用いたコンデンサは、各実施例と比べてショート不良率及びESR上昇率が高い。ショート不良率及びESR上昇率が高いのは、フィブリル化合成繊維として高温での安定性が低いアクリル繊維を含むことが原因と考えられる。そのため、引張強さ低下率が96%と高く、熱処理後のセパレータにはシワが発生していたと考えられる。
以上のことから、フィブリル化合成繊維として、全芳香族ポリアミド繊維であるアラミド繊維又は全芳香族ポリエステル繊維であるポリアリレート繊維を含む必要があることがわかる。
【0100】
従来例1のセパレータは、厚さ、密度及び調湿後の引張強さは実施例と同レベルだが、従来例1のセパレータを用いたコンデンサは、初期ESRが高く、ショート不良率及びESR上昇率が高かった。ショート不良率及びESR上昇率が高いのは、フィブリル化セルロース繊維のみで構成されており、繊維の熱分解を抑制することができないからであると考えられる。さらに、従来例1のセパレータを用いたコンデンサの初期ESRが高いのは、従来例1のセパレータがフィブリル化セルロース繊維のみからなるセパレータであり、平均繊維径が計測できない程度まで叩解されていることが理由であると考えられる。
このことから、フィブリル化セルロース繊維のみからなるセパレータでは、導電性高分子コンデンサの耐熱性を向上することができず、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とを含むことで、導電性高分子コンデンサの耐熱性を向上することができることがわかる。
【0101】
従来例2のセパレータは、厚さ、密度及び調湿後の引張強さは実施例と同レベルだが、従来例2のセパレータを用いたコンデンサは、ショート不良率及びESR上昇率が高かった。従来例2のセパレータを用いたコンデンサのショート不良率及びESR上昇率が高かったのは、ポリビニルアルコールバインダーを含むことが理由と考えられる。ポリビニルアルコールのようなバインダー繊維は、主体繊維よりも低温度で融解する場合や分解する場合がある。そのため、バインダー繊維を用いたセパレータは、繊維の熱分解や溶融といった変化を抑えることが難しい。このことから、セパレータにはバインダー繊維は含まれない方が良いことがわかる。
また、従来例2のセパレータは、フィブリル化セルロース繊維としてマニラ麻繊維のみを含有し、平均繊維径が実施例よりも太い。マニラ麻繊維は、繊維長も長いため、単独で用いるとフィブリル化合成繊維と合わせた際に、繊維の分布が不均一になりやすい。従来例2と実施例2及び実施例5との結果から、マニラ麻繊維を用いる場合は、繊維径の細い繊維と併せることで、フィブリル化合成繊維と併せても繊維の分布が均一となり、耐熱性を高めたセパレータが得られることがわかる。
【0102】
従来例3及び従来例4のセパレータは、厚さ、密度は実施例と同レベルだが、調湿後の引張強さが低く、素子巻回時にセパレータが破断し、素子を巻回することができなかった。調湿後の引張強さが低いのは、従来例3及び従来例4のセパレータが非フィブリル化繊維とフィブリル化繊維とからなるためであると考えられる。非フィブリル化繊維は、フィブリルが発生していないためフィブリル化繊維と絡みにくく、調湿後の引張強さが低下してしまうと考えられる。さらに、非フィブリル化繊維は、平均繊維径も実施例に比べて太いため、フィブリル化繊維とより絡みにくいと考えられる。
従来例3及び従来例4と各実施例との比較から、セパレータはフィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とからなることが良いことがわかる。
【0103】
以上、説明したように、本実施の形態例によれば、長時間の高温暴露や短時間の急激な高温暴露に対する安定性を備えた、フィブリル化セルロース繊維とフィブリル化合成繊維とからなるアルミニウム電解コンデンサ用セパレータを提供することができる。また、該セパレータを用いることで、高温暴露後もショート不良率が低く、ESRの増大を抑えたアルミニウム電解コンデンサを提供することができる。