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特許7554815極性ポリオレフィン分散体ベースの種子コーティング組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】極性ポリオレフィン分散体ベースの種子コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   A01C 1/06 20060101AFI20240912BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 123/00 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20240912BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 123/08 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 123/14 20060101ALI20240912BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240912BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240912BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20240912BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20240912BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20240912BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
C09D5/02
C09D123/00
C09D7/40
C09D133/02
C09D123/08
C09D123/14
C09D7/61
C09D7/63
A01N51/00
A01N25/00 102
A01N25/10
A01P7/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022509615
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 CN2019103571
(87)【国際公開番号】W WO2021035665
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チー、チン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シュエ
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ポン
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-513743(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0030306(US,A1)
【文献】特開平11-236469(JP,A)
【文献】特開2007-204671(JP,A)
【文献】特表2019-522636(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052139(WO,A2)
【文献】特開昭52-029844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 1/06
C09D 5/02
C09D 123/00
C09D 7/40
C09D 133/02
C09D 123/08
C09D 123/14
C09D 7/61
C09D 7/63
A01N 51/00
A01N 25/00
A01N 25/10
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた種子であって、
種子と、
極性ポリオレフィン分散体を含む、種子上にコーティングされたコーティング組成物であって、
1)極性ポリオレフィンと、
2)中和塩基と、を含む、コーティング組成物と、を含み、
前記極性ポリオレフィンが、1つ以上の極性基を含有するオレフィンコポリマーであり、前記極性基が、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分からなる基から選択され、
前記中和塩基が、トリエタノールアミン(TEA)であり、前記極性基を構成する酸基の60~90モルパーセントが、中和塩基によって修飾される、コーティングされた種子。
【請求項2】
前記極性ポリオレフィンが、オレフィンと、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであり、前記極性基が、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分からなる基から選択される、請求項1に記載のコーティングされた種子。
【請求項3】
前記オレフィンが、線状または分枝状のC2~C6α-オレフィンであり得、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸、フマル酸無水物、イタコン酸無水物からなる群から選択される、請求項2に記載のコーティングされた種子。
【請求項4】
前記極性ポリオレフィンが、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマー、プロピレン/アクリル酸コポリマー、およびプロピレン/メタクリル酸コポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティングされた種子。
【請求項5】
有効成分、栄養素、充填剤、または他の添加物をさらに含む、請求項1に記載のコーティングされた種子。
【請求項6】
前記他の添加剤が、湿潤剤、着色剤、レオロジー調整剤、分散剤、消泡剤、不凍剤、界面活性剤、肥料、および増粘剤からなる群から選択される、請求項5に記載のコーティングされた種子。
【請求項7】
前記カルボン酸基または前記カルボン酸無水物基の60~80モルパーセントが、中和塩基によって修飾される、請求項1に記載のコーティングされた種子。
【請求項8】
前記種子コーティング組成物中の前記中和塩基と一緒の前記極性ポリオレフィンコポリマーの含有量が、前記種子コーティング組成物の総重量に基づいて0.2~10重量%である、請求項1に記載のコーティングされた種子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、種子コーティング組成物、および種子コーティング組成物でコーティングされた種子に関する。
【0002】
序論
植物成長刺激剤および植物を昆虫、病気、および真菌の攻撃から保護するのを助ける他の有効成分の送達メカニズムとしての種子コーティングの使用は、食物供給を増加させる手段として成長し続けている。より多くの添加物が種子コーティングに適用されるにつれて、人々は、活性物質を含有する改良された種子コーティングおよびポリマーを開発するように駆り立てられ、それにより作物の能力を改善する。一般に、そのような種子コーティング配合物は、種子処理のために流動性濃縮物を利用する。流動性濃縮物組成物は、植えられる前に種子上にフィルムコーティングを形成するために種子に適用される水中の成分の懸濁液または分散体である。種子コーティング配合物は、典型的には、種子が処理されたことを示す着色剤とともに、コーティングを種子表面に結合するのを助ける添加剤(例えば、フィルム形成剤)を含む。種子コーティング配合物は、種子表面全体に均一に分布される有効成分も含む。種子コーティング配合物の他の構成要素には、湿潤剤、分散剤、増粘剤などが含まれてもよい。
【0003】
今日まで、ポリアクリレートベースの種子コーティング配合物が依然としてこの市場を支配している。しかしながら、ポリアクリレートベースの種子コーティング配合物に関連するいくつかの重大な問題がまだある。例えば、ポリアクリレートコーティング配合物で形成される種子コーティングは、低い耐水性を有することが知られており、その結果、コーティングされた種子が水に浸漬されると、活性成分が失われる。さらに、ポリアクリレートなどの皮膜形成剤は通常、接着強度が低く、摩耗によりコーティングが大幅に失われる。最後に、一部のコーティングは、効果的な種子の発芽に悪影響を及ぼすことがあり、これは、資源の浪費につながる。したがって、当技術分野では、有効成分の損失を防ぐための耐水性、摩耗によるコーティングの損失の低減、および/またはコーティングされた種子の発芽に悪影響を及ぼさないコーティングを提供する種子コーティング組成物が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、種子コーティング組成物、および種子コーティング組成物でコーティングされた種子を提供する。
【0005】
第1の態様では、本開示は、コーティングされた種子を提供し、それは、
種子と、
極性ポリオレフィン分散体を含む、種子上にコーティングされたコーティング組成物であって、
1)極性ポリオレフィンと、
2)中和塩基と、を含む、コーティング組成物と、を含み、
極性ポリオレフィンは、1つ以上の極性基を含有するオレフィンコポリマーであり、極性基は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分からなる基から選択され、
中和塩基は、ポリマーの前記カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分の少なくとも一部を修飾して、極性ポリオレフィンと安定した水性分散体を形成する塩基である。
【0006】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求されるように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】摩耗率の分類を示す。
図2】耐水性の分類を示す。
図3】7日後の種子発芽を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書に記載されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0009】
本明細書に開示されるように、「組成物」、「配合物」、または「混合物」という用語は、物理的手段によって異なる成分を単に混合することによって得られる、異なる成分の物理的なブレンドを指す。
【0010】
本開示のコーティングされた種子は、
種子と、
極性ポリオレフィン分散液を含む、種子上にコーティングされたコーティング組成物であって、
1)極性ポリオレフィンと、
2)中和塩基と、を含む、コーティング組成物と、を含み、
極性ポリオレフィンは、1つ以上の極性基を含有するオレフィンコポリマーであり、極性基は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分からなる基から選択され、
中和塩基は、ポリマーの前記カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分の少なくとも一部を修飾して、極性ポリオレフィンと安定した水性分散体を形成する塩基である。
【0011】
極性ポリオレフィン
極性ポリオレフィンは、1つ以上の極性基を含むオレフィンコポリマーであり、極性基は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分を含み、好ましくは、1つ以上の極性基を含有するオレフィンコポリマーであり、極性基は、カルボン酸基である。
【0012】
より具体的には、極性ポリオレフィンは、オレフィンと、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであり、極性基は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分を含み、好ましくは、オレフィンと、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであり、極性基は、カルボン酸基である。好ましくは、オレフィンは、線状または分枝状のC2~C6α-オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブチレン、イソブチレンなどであり得る。1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、好ましくはアクリル酸またはメタアクリル酸であり得る。好ましくは、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸である。
【0013】
例示的な極性ポリオレフィンには、これらに限定されないが、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマー、プロピレン/アクリル酸コポリマー、またはプロピレン/メタクリル酸コポリマー、例えば、SK Global Chemical CompanyからPRIMACORの商標で、The Dow Chemical CompanyからNUCRELの商標で、およびExxonMobil Chemical CompanyからESCORの商標で市販されているものが含まれる。
【0014】
例示的な極性ポリオレフィンには、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、例えば、AMPLIFY GRの商標でThe Dow Chemical Companyから入手可能なものなどのも含まれる。
【0015】
例示的な極性ポリオレフィンには、エチレン/無水マレイン酸およびプロピレン/無水マレイン酸コポリマー、例えば、LICOCENEの商標でClariant International Ltd.から入手可能なものがさらに含まれる。
【0016】
中和塩基
例示的な中和塩基は、無機塩基または有機塩基であり得、これらに限定されないが、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、または有機アミンを含むことができる。一例では、中和剤は、強塩基または弱塩基である。例えば、中和剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、またはアミン、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、またはジメチルアミノエタノール(DMEA)であり得る。好ましくは、中和塩基は、アンモニアまたはアミンである。より好ましくは、中和塩基は、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、およびジメチルアミノエタノールからなる群から選択される。
【0017】
一例では、ポリマーのカルボン酸基の5~100モルパーセントが中和塩基によって修飾される。別の例では、ポリマーのカルボン酸基またはカルボン酸無水物基の10~95モルパーセントが中和塩基によって修飾される。別の例では、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基の20~90モルパーセントが中和塩基によって修飾される。さらに別の例では、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基の40~85モルパーセントが中和塩基によって修飾される。さらに別の例では、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基の50~80モルパーセントが中和塩基によって修飾される。さらに別の例では、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基の60~80モルパーセントが中和塩基によって修飾され、好ましくは、中和塩基は、アミン、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、ジメチルアミノエタノール、またはそれらの混合物である。
【0018】
種子コーティング組成物は、有効成分、栄養素、充填剤、または他の添加剤をさらに含むことができる。
【0019】
有効成分
有効成分には、農薬、殺虫剤、殺シロアリ剤、防カビ剤、カビ除去剤、除草剤、植物成長調節剤、作物乾燥剤、殺生物剤、殺菌剤、静菌薬、および防虫剤が含まれるが、これらに限定されない。好適な農薬には、例えば、トリアジン系除草剤、スルホニル尿素系除草剤、ウラシル、尿素系除草剤、アセトアニリド除草剤、ならびにグリホサート塩およびエステルなどの有機ホスホン酸系除草剤が含まれる。好適な防カビ剤には、例えば、ニトリルオキシム防カビ剤、イミダゾール系防カビ剤、トリアゾール系防カビ剤、スルフェンアミド防カビ剤、ジチオカルバメート系防カビ剤、クロロネート芳香族、およびジクロロアニリン防カビ剤が含まれる。好適な殺虫剤には、例えば、カルバメート系殺虫剤、有機チオリン酸殺虫剤、メトキシクロルなどの過塩素化有機殺虫剤、およびチアメトキサムなどのネオニコチノイド殺虫剤が含まれる。好適なダニ駆除剤には、例えば、亜硫酸プロピニル、トリアザペンタジエンダニ駆除剤、テトラジファンなどの塩素化芳香族ダニ駆除剤、ビナパクリルなどのジニトロフェノールダニ駆除剤が含まれる。
【0020】
栄養素
種子コーティング組成物はまた、微量栄養素または主要栄養素などの栄養素を含むことができる。本明細書で使用される「栄養素」は、それぞれ、植物、草、および低木の成長のために、植物、草、および低木によって利用される添加物または物質を指すことができる。主要栄養素は、微量栄養素に対して相対的に大きい量で、植物および草などによって大量に利用することができる。栄養素には、マンガン、ホウ素、銅、鉄、塩素、モリブデン、および亜鉛、とりわけ、カリウム、窒素、カルシウム、リン、および硫黄が含まれるが、これらに限定されない。本発明の組成物は、個々の主要栄養素の様々な組み合わせ、およびそれらの相対量を含むことができる。
【0021】
充填剤
種子コーティング組成物はまた、少なくとも1つの充填剤を含むことができる。一実施形態では、充填剤は、木粉、粘土、活性化炭素、炭水化物、糖、デキストリン、マルトデキストリン、珪藻土、穀物粉、小麦粉、オート麦粉、大麦粉、細粒無機固形物、炭酸カルシウム、カルシウムベントナイト、カオリン、チャイナクレイ、タルク、パーライト、マイカ、バーミキュライト、シリカ、石英粉末、モンモリロナイト、またはそれらの混合物などの非限定的な例から選択される。
【0022】
他の添加剤
他の添加剤には、湿潤剤、着色剤、レオロジー調整剤、分散剤、消泡剤、不凍剤、界面活性剤、肥料、増粘剤などが含まれるが、これらに限定されない。界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性であり得る。
【0023】
分散体
分散体は、さらに水を含む。
【0024】
分散体の固形分は、分散体の総重量に基づいてポリマーと中和塩基の合計重量の約1~約75重量パーセント、好ましくは、分散体の総重量に基づいてポリマーと中和塩基の合計重量の約5~約60重量パーセント、より好ましくは、分散体の総重量に基づいてポリマーと中和塩基の合計重量の約10~約50重量パーセント、さらにより好ましくは、分散体の総重量に基づいてポリマーと中和塩基の合計重量の約20~約40重量パーセントである。
【0025】
種子コーティング組成物中の中和塩基と一緒の極性ポリオレフィンコポリマーの許容範囲は、種子コーティング組成物の総重量に基づいて約0.2~10重量%、より好ましくは約1~5重量%、さらにより好ましくは約2~4重量%であるべきである。
【0026】
コーティング技術
好適なコーティング技術を利用して、本明細書に記載の種子コーティング組成物によって種子または種子の凝集をコーティングすることができる。コーティングに利用される機器には、これらに限定されないが、ドラムコーター、ロータリーコーター、タンブリングドラム、流動床および噴流床が含まれ得るが、任意の好適な機器または技術を使用することができる。種子は、バッチまたは連続コーティングプロセスを介してコーティングすることができる。
【0027】
一実施形態では、ふるいなどの機械的手段を利用するコーティングの前に、種子を分離することができる。次に、分離された種子は、種子貯蔵器を有するコーティング機に導入することができる。一実施形態では、ミキシングボウル内の種子は、本明細書に記載のコーティングのうちの1つ以上と組み合わされる。
【0028】
プロセスの一実施形態では、本明細書に記載されるような1つ以上の層を添加して、種子または凝集物をコーティングすることができる。
【0029】
別の実施形態では、凝集器または凝集デバイスも利用することができる。コーティングは、回転チャンバー内に種子を配置することによってロータリーコーター内で行われ、それは、種子をチャンバーの内壁に押し付ける。遠心力およびコーター内に配置されたミキシングバーは、種子を回転させ、コーティング層と混合させる。種子コーティング組成物は、コーターの近接中心へ、コーティングチャンバーとともに回転するアトマイザーディスク上にポンプで送ることができる。アトマイザーディスクに当たると、液体接着剤が種子上に小さな滴で外側に向けられる。
【0030】
一実施形態では、種子コーティング技術は、例えば、回転パンまたはドラム内の種子を含む。次に、種子に水または他の液体を噴霧し、次に微細な不活性粉末、例えば、珪藻土をコーティングパンに徐々に添加する。噴霧された各種子は、徐々にサイズが大きくなる粉末、層、またはコーティングの塊の中心になる。次に、塊は、ビーチの小石のように、パン内のタンブリング動作によって丸められ、滑らかになる。コーティング層は、パン内の材料の重量からの圧縮によって圧縮される。結合剤は、多くの場合、塊の外層を硬化させるために、コーティングプロセスの終わり近くに組み込まれる。結合剤はまた、取り扱い、輸送、および播種の際に完成品によって生成されるほこりの量を減らすことができる。頻繁なハンドスクリーニングなどのスクリーニング技術は、ブランクまたはダブルを排除し、均一なサイズを確保するためにしばしば利用される。例えば、本明細書に記載の種子コーティング組成物の許容差は、±1/64インチ(0.4mm)であり得、これは、コーティングが導入されるかなり前に確立された、サイズ決定に関する米国の種子取引基準である。例えば、コーティングされたレタスの種子は、最も頻繁に、ベルトにある直径13/64インチの丸い穴を通してベルトプランターで播種される。この穴のサイズは、レタス種子を含む種子コーティング組成物が、7.5/64インチのスクリーン以上で、8.5/64インチのスクリーンを通してサイズ決定され得ることを必要とする。
【0031】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載の種子コーティング組成物および方法は、「インサイチュコーティング」を含む。インサイチュコーティングとは、一実施形態では、未加工またはコーティングされていない種子が地面の穴、空洞、またはくぼみのある領域に埋め込まれ、その直後またはすぐに、コーティング組成物が穴、空洞、またはくぼみに直接噴霧または適用されて、種子を囲むか、または部分的に囲むことを意味する。典型的には、種子の適用およびコーティング組成物の適用は機械的に行われるが、参照される適用のいずれかまたは両方を手動で行うこともできると理解されている。
【0032】
本明細書に明示的に記載されているもの以外の実施形態は、本特許請求の範囲の要旨および範囲内にあることが理解される。したがって、本明細書に記載の発明は、上記の説明によって定義されるのではなく、任意およびすべての同等の組成物および方法を包含するように、特許請求の範囲の全範囲にふさわしい。
【実施例
【0033】
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例においてここに記載され、すべての部およびパーセンテージは、他に特定されない限り、重量による。
【0034】
1.ポリオレフィン分散体の調製
ポリオレフィン分散体は次のように調製した。
1.1 本発明の実施例のポリオレフィン分散体の調製:
フィルム形成剤として使用される7つの極性ポリオレフィン分散体(実施例1~7)は、一般的な手順に従って調製した。脱イオン水(77g)、極性ポリオレフィン樹脂(PRIMACOR 5980iは、SK Global Chemical製)(22g)、および中和塩基(NaOH、TEA、またはアンモニア、NaOH、TEAまたはアンモニアの前のパーセンテージは、ポリマー中のカルボン酸のパーセンテージがNaOH、TEA、またはアンモニアによって中和されたことを意味する)を目標の中和レベルで1000mlのparr反応器に充填した。反応器は、均一な分散体が得られるまで、300RPMで4時間混合しながら110℃に加熱した。組成物を表1に列挙する。
【0035】
上記処理後の固形分は、23±1重量%であった。
【0036】
1.2 比較例のポリオレフィン分散体の調製:
供給元から購入した比較例Aも比較として評価した。種子コーティングレシピにいかなるポリマーをも含まないが、他の構成要素を有する比較例Bも評価した。
【表1】
【0037】
2.実験方法
2.1 種子コーティング配合物の調製:
以下の手順を使用して、表2に示されるレシピを使用して30%のチアメトキサム種子コーティング配合物を調製した。
【0038】
水、湿潤剤、および分散剤をステンレス製ジャー(GERUISI(登録商標)、タイプ:SMJ-2-180)に加え、完全に溶解するまで混合した。消泡剤を溶液に加え、よく混合した後、チアメトキサムを溶液に加えた。まず、ガラス棒で混合した後、高速ホモジナイザー(IKA(登録商標)T25デジタル)により4,000rpmで5分間混合して、均一な初期農薬スラリーを形成した。50gの粉砕ビーズ(Φ=2mm)をスラリーに加え、粉砕を3時間続けた。粉砕後、農薬配合物を100メッシュのこし器でろ過して、ビーズおよび大きな有効成分粒子を除去し、初期配合物を得た。顔料スラリー、KATHON(登録商標)LX150、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、2重量%のキサンタンガム、および不凍剤を配合物に加え、高速ホモジナイザーにより4,000rpmで15分間混合して、ストック配合物を得た。ストック配合物をいくつかの部分に分けた。各極性ポリオレフィン分散体の例を各部分に加え、次によく混合した。
【表2】
【0039】
2.2 トウモロコシ種子コーティング:
以下の手順を使用して、トウモロコシの種子を30%のチアメトキサム種子コーティング配合物でコーティングした。
【0040】
フィルム形成剤とともに1gの種子コーティング配合物を200mlのプラスチックボトルに加えた。50gのトウモロコシの種子をペットボトルに入れ、すぐに蓋を閉めた。ペットボトルを1秒に2回の頻度で、手で振とうし、1分間振とうを続けた。振とう後、トウモロコシの種子をろ紙に流し込んで、乾燥させた。
【0041】
2.3 種子コーティングの性能試験:
この調査では、次の試験を実行した。
2.3.1 摩耗率
10gのコーティングされた種子を250mLの三角フラスコに入れ、蓋をした。次にフラスコをIKA(登録商標)回転振とう機、タイプKS501に置いた。200r/分の速度で10分間振とうした後、種子を注意深く取り出し、目視で観察した。
【0042】
種子の外観は、図1に示されるように3つのグレードに分類した。グレード3が最も悪く、グレード1が最も良い。種子は、グレード1、グレード2、およびグレード3の指定に基づいて評価した(以下の表3を参照)。許容できる摩耗率は、グレード1および2である。
【0043】
2.3.2 耐水性
コーティングされた3つの種子をペトリ皿に入れ、種子を丁度覆うように水を加えた。24時間後、皿を視覚的に観察した。
【0044】
図2に示されるように、耐水性は、5つのグレードとして分類する。グレード5が最も悪く、グレード1が最も良い。種子は、グレード1、グレード2、グレード3、グレード4、およびグレード5の指定に基づいて評価した(以下の表3を参照)。許容される耐水性は、グレード1およびグレード2である。
【0045】
2.3.3 発芽率
20個のコーティングされた種子を発芽プレートに入れた。プレートに水を加えて、種子の周りに湿度の高い環境を確保した。種子に2時間に1回水を噴霧し、プレートを覆う(室温23±2℃、相対湿度50±5%)。7日後、種子を観察して、発芽した種子の数を確認した。許容される発芽率は、コーティングされていない種子と同じか、またはそれよりも良好である。
【0046】
2.3.4 苗の高さ
発芽後、7日後の苗の高さも測定して、種子コーティング配合物が植物の成長に与える影響を評価した。
【0047】
3.結果
どのポリマータイプがうまく機能し、許容できる耐水性、摩耗率、および種子発芽率を提供するかを検証するために、実施例1~7ならびに比較例AおよびBを種子コーティングレシピに加え、上記の手順に従ってトウモロコシ種子にコーティングした。耐水性、摩耗率、および発芽率の実験を行い、結果を表3および図3に示す。
【表3】
【0048】
表3および図3に示されるように、一般に、実施例1~7は、比較例A(エチレン-酢酸ビニルポリマー)および比較例B(ポリマーなし)と比較して、はるかに優れた耐水性および摩耗率を示した。発芽および植物成長能力については、それぞれ100%のNHで中和、および80%TEAで中和された本発明の実施例#4および#6は、比較例Aと同様の発芽率および平均苗高を示した。しかし、60%のTEAで中和された本発明の実施例#5は、比較例Aと比較して、優れた発芽率および平均苗高を示した。種子コーティング配合物にポリマーが含まれていない場合(比較例B)、予想どおり、耐水性は、非常に悪く、これは、有効成分(例えば、農薬など)が土壌中で容易に失われることを示した。実施例#5は、比較例Bよりも優れた発芽率およびより高い平均苗高を依然として有し、これは、ポリオレフィンまたは中和塩基(TEA)のいずれかが栄養などの追加の利益を種子にもたらしたことを示した。
【0049】
4.結論
種子コーティング構成要素としての7つの実験例および2つの比較例の研究に基づいて、種子コーティング配合物にはフィルム形成ポリマーが必要である。市販のエチレン-酢酸ビニルベースの種子コーティングと比較して、TEAまたはアンモニアによって中和された極性ポリオレフィン分散体により改善された性能が得られた。
本発明は以下の態様を包含する。
[1]
コーティングされた種子であって、
種子と、
極性ポリオレフィン分散体を含む、種子上にコーティングされたコーティング組成物であって、
1)極性ポリオレフィンと、
2)中和塩基と、を含む、コーティング組成物と、を含み、
前記極性ポリオレフィンが、1つ以上の極性基を含有するオレフィンコポリマーであり、前記極性基が、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分からなる基から選択され、
前記中和塩基が、ポリマーの前記カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分の少なくとも一部を修飾して、前記極性ポリオレフィンと安定した水性分散体を形成する塩基である、コーティングされた種子。
[2]
前記極性ポリオレフィンが、オレフィンと、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーとのコポリマーであり、前記極性基が、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸塩部分からなる基から選択される、[1]に記載のコーティングされた種子。
[3]
前記オレフィンが、線状または分枝状のC2~C6α-オレフィンであり得、1つ以上の極性基を含有するエチレン性不飽和モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、無水マレイン酸、フマル酸無水物、イタコン酸無水物からなる群から選択され、好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸である、[2]に記載のコーティングされた種子。
[4]
前記極性ポリオレフィンが、エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマー、プロピレン/アクリル酸コポリマー、およびプロピレン/メタクリル酸コポリマーからなる群から選択される、[1]に記載のコーティングされた種子。
[5]
前記中和塩基が、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、または有機アミンからなる群から選択される、[1]に記載のコーティングされた種子。
[6]
前記中和塩基が、モノエタノールアミン(MEA)、トリエタノールアミン(TEA)、およびジメチルアミノエタノール(DMEA)からなる群から選択される、[1]に記載のコーティングされた種子。
[7]
有効成分、栄養素、充填剤、または他の添加物をさらに含む、[1]に記載のコーティングされた種子。
[8]
前記他の添加剤が、湿潤剤、着色剤、レオロジー調整剤、分散剤、消泡剤、不凍剤、界面活性剤、肥料、および増粘剤からなる群から選択される、[7]に記載のコーティングされた種子。
[9]
前記ポリマーの前記カルボン酸基または前記カルボン酸無水物基の約5~約100モルパーセントが、中和塩基によって修飾される、[1]に記載のコーティングされた種子。
[10]
前記カルボン酸基または前記カルボン酸無水物基の約50~約80モルパーセントが、中和塩基によって修飾される、[1]に記載のコーティングされた種子。
[11]
前記種子コーティング組成物中の前記中和塩基と一緒の前記極性ポリオレフィンコポリマーの含有量が、前記種子コーティング組成物の総重量に基づいて約0.2~10重量%である、[1]に記載のコーティングされた種子。
図1
図2
図3