(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】反射防止積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 1/111 20150101AFI20240912BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240912BHJP
G02B 1/16 20150101ALI20240912BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
G02B1/16
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2022515275
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021013132
(87)【国際公開番号】W WO2021210371
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2020072175
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 美帆
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-060855(JP,A)
【文献】特開2006-206832(JP,A)
【文献】特開平03-256003(JP,A)
【文献】特開平04-191801(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018187(WO,A1)
【文献】特開2006-343495(JP,A)
【文献】特開2016-177185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/111
G02B 1/14
G02B 1/16
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(B)、ハードコート層(HC)および反射防止層(AR)をこの順序に含む反射防止積層体であって、
前記反射防止層(AR)は、
屈折率が1.450以下で、膜厚が70~130nmの低屈折率層(L)と、
屈折率が1.700~1.850で、膜厚が10~250nmの高屈折率層(H)と、
屈折率が1.550~1.810で、膜厚が20~150nmの中屈折率層(M)と、
屈折率が1.500~1.650で、膜厚が10~230nmの中低屈折率層(ML)とを含み、
前記反射防止層(AR)の前記各層の屈折率が、RI(L)<RI(ML)<RI(M)≦RI(H)の条件を満たし、
ここで、
RI(L)は、低屈折率層(L)の屈折率、
RI(ML)は、中低屈折率層(ML)の屈折率、
RI(M)は、中屈折率層(M)の屈折率、
RI(H)は、高屈折率層(H)の屈折率を表す、
かつ、前記各層がハードコート層(HC)側から、中低屈折率層(ML)、中屈折率層(M)、高屈折率層(H)、低屈折率層(L)の順に配置され、
波長380~780nmにおける両面の視感平均反射率が0.6%以下である前記反射防止積層体。
【請求項2】
前記中低屈折率層(ML)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物、(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(iii)電離放射線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化1】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化2】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
金属酸化物粒子を40~500質量部、金属キレート化合物を10質量部以下含む組成物の硬化物からなる請求項1に記載の反射防止積層体。
【請求項3】
前記中屈折率層(M)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化3】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化4】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
金属酸化物粒子を40~500質量部、金属キレート化合物を1~20質量部含む組成物の硬化物からなる請求項1に記載の反射防止積層体。
【請求項4】
前記高屈折率層(H)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化5】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化6】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
金属酸化物粒子を300~500質量部、金属キレート化合物を10~20質量部含む組成物の硬化物からなる請求項1に記載の反射防止積層体。
【請求項5】
前記低屈折率層(L)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化7】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化8】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
シリカ粒子を100~200質量部、金属キレート化合物を5~15質量部含む組成物の硬化物からなる請求項1に記載の反射防止積層体。
【請求項6】
前記金属酸化物粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化ニオブ、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム-酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)および五酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子である
請求項2~4のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【請求項7】
前記反射防止層(AR)の上に、保護層(C)を有し、前記保護層(C)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化9】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化10】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
シリカ粒子を10~30質量部、金属キレート化合物を5~15質量部含む組成物の硬化物からなる請求項1に記載の反射防止積層体。
【請求項8】
波長380~780nmにおける視感平均透過率が、95%以上である請求項1~7のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【請求項9】
波長900nmにおける赤外線透過率が、85%以上である請求項1~8のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓やディスプレイなどの表面に外光が反射することを防止するために設けられる反射防止積層体に関する。特に本発明は、LEDディスプレイ(LED、OLED)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマデイスプレイ(PDP)などの光表示装置の前面パネルに設けられる反射防止積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、透光性を有する基板上にコーティングにより形成された3層からなる反射防止膜であって、各層を所定の膜厚にした反射防止膜が提案されている。しかし、この反射防止膜の、反射率の最小値は波長600nmで0.5%程度であり、380~780nmの可視光の範囲の平均反射率は、数%を超えるものと推定される。従って、近年の光表示装置に要求される視感平均反射特性を満足するためには更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の目的は、反射防止性、光透過性に優れた反射防止積層体を提供することにある。
本発明者らは、低屈折率層(L)と、高屈折率層(H)と、中屈折率層(M)から構成される3層の反射防止層にさらに、低屈折率層(L)の屈折率と中屈折率層(M)の屈折率の中間の屈折率を有する中低屈折率層(ML)を設けることにより、波長380~780nmにおける両面の視感平均反射率に優れ、かつ波長380~780nmにおける視感平均透過率に優れた反射防止積層体が得られることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
1.基材(B)、ハードコート層(HC)および反射防止層(AR)をこの順序に含む反射防止積層体であって、
前記反射防止層(AR)は、
屈折率が1.450以下で、膜厚が70~130nmの低屈折率層(L)と、
屈折率が1.700~1.850で、膜厚が10~250nmの高屈折率層(H)と、
屈折率が1.550~1.810で、膜厚が20~150nmの中屈折率層(M)と、
屈折率が1.500~1.650で、膜厚が10~230nmの中低屈折率層(ML)とを含み、
前記反射防止層(AR)の前記各層の屈折率が、RI(L)<RI(ML)<RI(M)≦RI(H)の条件を満たし、
ここで、
RI(L)は、低屈折率層(L)の屈折率、
RI(ML)は、中低屈折率層(ML)の屈折率、
RI(M)は、中屈折率層(M)の屈折率、
RI(H)は、高屈折率層(H)の屈折率を表す、
かつ、前記各層がハードコート層(HC)側から、中低屈折率層(ML)、中屈折率層(M)、高屈折率層(H)、低屈折率層(L)の順に配置され、
波長380~780nmにおける両面の視感平均反射率が0.6%以下である前記反射防止積層体。
【0006】
2.前記中低屈折率層(ML)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物、(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(iii)電離放射線硬化樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化1】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化2】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
金属酸化物粒子を40~500質量部、金属キレート化合物を10質量部以下含む組成物の硬化物からなる前項1に記載の反射防止積層体。
【0007】
3.前記中屈折率層(M)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化3】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化4】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
金属酸化物粒子を40~500質量部、金属キレート化合物を1~20質量部含む組成物の硬化物からなる前項1に記載の反射防止積層体。
【0008】
4.前記高屈折率層(H)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化5】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化6】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
金属酸化物粒子を300~500質量部、金属キレート化合物を10~20質量部含む組成物の硬化物からなる前項1に記載の反射防止積層体。
【0009】
5.前記低屈折率層(L)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化7】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化8】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
シリカ粒子を100~200質量部、金属キレート化合物を5~15質量部含む組成物の硬化物からなる前項1に記載の反射防止積層体。
【0010】
6.前記金属酸化物粒子が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化ニオブ、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム-酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)および五酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子である前項2~4のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【0011】
7.前記反射防止層(AR)の上に、保護層(C)を有し、前記保護層(C)は、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分100質量部に対して、
【化9】
(式中、Rはアルキレン基であり、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。)
【化10】
(式中、R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。nは1または2である。)
シリカ粒子を10~30質量部、金属キレート化合物を5~15質量部含む組成物の硬化物からなる前項1に記載の反射防止積層体。
【0012】
8.波長380~780nmにおける視感平均透過率が、95%以上である前項1~7のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
9.波長900nmにおける赤外線透過率が、85%以上である前項1~8のいずれか一項に記載の反射防止積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の反射防止積層体は、反射防止性および光透過性に優れる。本発明の反射防止積層体は、波長380~780nmの広い波長の範囲において、低い反射率を有する。その結果、本発明の反射防止積層体の両面の視感平均反射率は0.6%以下である。
更に、本発明の反射防止積層体は、900nmの波長の光、即ち赤外線の透過率が少なくとも85%以上、高い場合は96%であり、赤外線の透過性に優れている。従って、赤外線カメラや赤外線レーザーを使った安全センサーの前面パネルやカバー材、或いは自動車のインストルメントパネルやタッチパネルとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の反射防止積層体の層構成の一例を示す図である。
【
図2】実施例1の反射防止積層体の反射率分布図である。
【
図3】比較例1の反射防止積層体の反射率分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<基材(B)>
基材(B)は、耐衝撃強度に優れ視野性の障害にならない透明樹脂で形成されていることが好ましい。基材(B)の波長380~780nmでの全光線透過率は、好ましくは88%以上、より好ましくは89%以上、さらに好ましくは92%以上である。透明性および耐衝撃強度の観点から、基材(B)は、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびトリアセチルセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂により形成されていることが好ましい。これらの樹脂を積層した積層基材でもよい。例えば、ポリカーボネート樹脂とポリメチルメタクリレート樹脂との積層基材でもよい。
基材(B)の厚みは、要求される透明度や耐衝撃強度から適宜選択して設計されるが、通常、0.2~2.0mmの範囲である。基材(B)の厚みの上限は、好ましくは1.0mm、より好ましくは1.5mm、さらに好ましくは2mmである。
【0016】
<ハードコート層(HC)>
ハードコート層(HC)は、3官能以下のウレタンアクリレートと4官能以上のウレタンアクリレートとを硬化させてなる樹脂成分を含有する層であることが好ましい。
ハードコート層(HC)の厚みは、1~3μmであることが好ましい。即ち、この厚みが薄すぎると、ハードコート層(HC)の基本的な物性(例えば、硬度や強度)等を確保することが困難となり、また、過度に厚いと、基材(B)との物性差(例えば柔軟性や伸び)が大きくなり、この結果、割れ等の成形不良を生じ易くなってしまうからである。ハードコート層(HC)の厚みは、好ましくは1.2~2.5μm、より好ましくは1.5~2μmである。
ハードコート層(HC)は、3官能以下のウレタンアクリレートと4官能以上のウレタンアクリレートとを硬化させてなる樹脂成分、シランカップリング成分、シリカ粒子および金属キレート化合物を含有することが好ましい。
【0017】
(樹脂成分)
樹脂成分は、ハードコート層(HC)を形成するバインダーとしての機能を有する。かかるバインダーとして、3官能以下のウレタンアクリレートと4官能以上のウレタンアクリレートとを併用することが好ましい。即ち、3官能以下のウレタンアクリレートは硬化により比較的柔軟性に富んだ部分を形成し、4官能以上のウレタンアクリレートは硬化により硬質の部分を形成するものであり、両者を併用することにより、適度に緻密で硬度の高い膜を形成することができる。
尚、ウレタンアクリレートは、多価イソシアネート化合物と複数の水酸基を有するポリオール化合物とを反応して得られる末端イソシアネート化合物に、さらに水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるものであり、ウレタンアクリレート中の(メタ)アクリロイル基が官能基であり、例えば(メタ)アクリロイル基を2個有するウレタンアクリレートは2官能であり、3個有するものは3官能である。
【0018】
従って、3官能以下のウレタンアクリレートとは、(メタ)アクリロイル基を多くて3個まで有しているものであり、例えば、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートに末端イソシアネート化合物を反応させ、両末端のそれぞれに1個の(メタ)アクリロイル基が導入されているウレタンアクリレートは、2官能のウレタンアクリレートとして使用される。
また、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートとペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートとを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の一方の末端に1個の(メタ)アクリロイル基を導入し、且つ他方の末端に2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものは、3官能のウレタンアクリレートとして使用される。
【0019】
さらに、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の両末端に、それぞれ2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものは、4官能のウレタンアクリレートとして使用される。
勿論、上記の例は一例であり、3官能以下である限り、他のウレタンアクリレートも使用することができる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、および3価以上の多価アルコールの(メタ)アクリル酸のモノエステル、ジエステル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを使用し、所望の数の(メタ)アクリロイル基を導入することにより、3官能以下のウレタンアクリレートを得ることもできる。
【0020】
4官能以上のウレタンアクリレートも同様であり、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに、両末端イソシアネート(例えばトリヘキサジエチレンジイソシアネート)を反応させることにより、分子鎖末端のそれぞれに3個の(メタ)アクリロイル基を有する6官能のウレタンアクリレートを得ることができる。
【0021】
本発明において、上記の3官能以下のウレタンアクリレートと4官能以上のウレタンアクリレートとは、2/98~70/30、特に10/90~60/40の重量比で使用されていることが好ましい。3官能以下のウレタンアクリレートの使用量が多すぎると、得られるハードコート層(HC)の硬度が損なわれ、ハードコート層(HC)としての基本的な性能が低下するおそれがある。
【0022】
(シランカップリング成分)
ハードコート層(HC)は、シランカップリング成分を含有することが好ましい。シランカップリング成分は、このハードコート層(HC)に後述するシリカ粒子を脱落することなく安定に分散して保持すると同時に、反射防止層(AR)との密着性を確保するために使用される成分である。
【0023】
即ち、シランカップリング成分は、下記式で表される化合物(シランカップリング剤)またはその加水分解物であることが好ましい。
R3
n-Si(OR1)4-n
(式中、R3は、アルキル基またはアルケニル基であり、R1は、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子であり、nは1または2の数である。)
前記式における基R3としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基が挙げられ、このアルキル基は、塩素等のハロゲン原子、メルカプト基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、オキシラン環含有基等の官能基で置換されていてもよい。
また、基R1は、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子であり、ケイ素原子に結合している基OR1は加水分解性の基となっている。
【0024】
上記のようなシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-(N-スチリルメチル-β-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等を挙げることができる。
このようなシランカップリング剤の加水分解物は、加水分解と同時に重縮合し、Si-O-Si結合によりネットワーク状に連なった重合物を形成する。従って、このようなシランカップリング剤の加水分解物の使用により、ハードコート層(HC)を緻密なものとすることもできる。
【0025】
本発明において、ハードコート層(HC)中の上記化合物またはその加水分解物の含有割合は、前述したウレタンアクリレートから形成された樹脂成分100質量部当り、好ましくは1~30質量部、より好ましくは5~20質量部の範囲に設定される。
【0026】
(中実シリカ粒子)
ハードコート層(HC)は、中実シリカ粒子を含有することが好ましい。ハードコート層(HC)中の中実シリカ粒子としては、粒径が5~500nmで屈折率が1.44~1.5の範囲にあるものが好ましい。即ち、このような酸化物微粒子を使用することにより、ハードコート層(HC)の全体にわたって硬度等の基本的な特性を均一に付与することができる。
【0027】
このような中実シリカ粒子の含有量は、前述したウレタンアクリレートから形成される樹脂成分100質量部当り、好ましくは10~80質量部、さらに好ましくは20~60質量部である。かかるシリカ粒子が、このような範囲でハードコート層(HC)中に含まれていることにより、ハードコート層(HC)の基本特性を維持しつつ、反射防止層(AR)との密着性を高め、割れ等を有効に防止することができる。
【0028】
(金属キレート化合物)
ハードコート層(HC)は、金属キレート化合物を含有することが好ましい。金属キレート化合物は、ハードコート層(HC)中に架橋構造を導入し、ハードコート層(HC)をより緻密なものとするために使用される。即ち、前述したウレタンアクリレートによる樹脂成分でも架橋構造は形成されているが、柔軟性を付与するために低官能性のウレタンアクリレートの使用により、その緻密性は低下している。即ち、金属キレート化合物は、ハードコート層(HC)の柔軟性を損なわずに、その緻密性の低下を補うために、換言すると、膜の緻密性に影響される硬度等の機械的特性を調整するために、使用されるものである。また、このような金属キレート化合物は、反射防止層(AR)にも含まれているため、金属キレート化合物の使用により、ハードコート層(HC)と反射防止層(AR)との密着性がより高められ、成形時の割れ等を有効に防止することができる。
【0029】
このような金属キレート化合物としては、二座配位子を含むチタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズ、ニオブ、タンタル或いは鉛の化合物が好適である。
二座配位子とは、配位座数が2、すなわち金属に配位しうる原子数が2であるようなキレート剤であり、一般にO、N、S原子によって、5乃至7員環を形成して、キレート化合物を形成する。これらの二座配位子の例として、アセチルアセトナート、エチルアセトアセテート、ジエチルマロナト、ジベンゾイルメタナト、サリチラト、グリコラト、カテコラト、サリチルアルデヒダト、オキシアセトフェノナト、ビフェノラト、ピロメコナト、オキシナフトキノナト、オキシアントラキノナト、トロポロナト、ビノキチラト、グリシナト、アラニナト、アントロニナト、ピコリナト、アミノフェノラト、エタノールアミナト、メルカプトエチルアミナト、8-オキシキノリナト、サリチルアルジミナト、ベンゾインオキシマト、サリチルアルドキシマト、オキシアゾベンゼナト、フェニルアゾナフトラト、β-ニトロソ-α-ナフトラト、ジアゾアミノベンゼナト、ビウレタト、ジフェニルカルバゾナト、ジフェニルチオカルバゾナト、ビグアニダト、ジメチルグリオキシマトなどを挙げることができる。
【0030】
本発明において、好適に使用される金属キレート化合物は、下記式:
M(Li)k(X)m-k
式中、Mは、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、スズ、ニオブ、タンタル或いは鉛であり、
Liは二座配位子であり、
Xは、1価の基、好適には加水分解可能な基であり、
mは、金属Mの原子価であり、
kは、金属Mの原子価を超えない範囲で1以上の数である、
で表される。
【0031】
これらの中でも、金属Mとしては、チタン、ジルコニウム、アルミニウムが好ましく、基Xとしては、アルコキシ基が好ましい。このような金属キレート化合物の具体例としては、以下のTiキレート化合物、Zrキレート化合物およびAlキレート化合物を例示することができる。
【0032】
Tiキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン
トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン
トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン
トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン
トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン
トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン
ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン
ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン
ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン
ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン
ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン
ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン
モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン
モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン
モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン
モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン
モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン
モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン
テトラキス(アセチルアセトナート)チタン
トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン
トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン
トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン
トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン
トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン
トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン
ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン
ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン
ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン
ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン
ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン
ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン
モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン
モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン
モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン
モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン
モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン
モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン
テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン
モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン
ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン
トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン
【0033】
Zrキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム
トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム
トリ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム
トリ-n-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム
トリ-sec-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム
トリ-t-ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム
ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
ジ-n-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
ジ-n-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
ジ-sec-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
ジ-t-ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
モノ-n-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
モノ-i-プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
モノ-n-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
モノ-sec-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
モノ-t-ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム
トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
トリ-n-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
トリ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
トリ-n-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
トリ-sec-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
トリ-t-ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ジ-n-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ジ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ジ-n-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ジ-sec-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ジ-t-ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノ-n-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノ-i-プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノ-n-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノ-sec-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノ-t-ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム
【0034】
Alキレート化合物;
ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム
モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム
ジ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム
モノ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム
モノ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム
モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム
ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム
ジ-i-プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム
ビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム
【0035】
上述した金属キレート化合物は、ウレタンアクリレートから形成される樹脂成分100質量部当り、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~15質量部の量で使用される。この範囲内で金属キレート化合物が使用されることにより、このハードコート層(HC)上に形成される反射防止層(AR)との間の密着性を向上することができる。
【0036】
(ハードコート層(HC)の形成)
ハードコート層(HC)は、樹脂成分形成用のモノマーまたはオリゴマーを含む塗液を基材(B)上に塗布し、基材(B)上に塗膜を形成し、該塗膜に対し、必要に応じて乾燥をおこない、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより樹脂成分形成用のモノマーまたはオリゴマーの硬化反応をおこなうことにより、ハードコート層(HC)とすることができる。
【0037】
<反射防止層(AR)>
反射防止層(AR)は、低屈折率層(L)と、高屈折率層(H)と、中屈折率層(M)と、中低屈折率層(ML)とを含む。各層は、ハードコート層(HC)側から、中低屈折率層(ML)、中屈折率層(M)、高屈折率層(H)、低屈折率層(L)の順に配置される。
反射防止層(AR)は、各層の屈折率が、RI(L)<RI(ML)<RI(M)≦RI(H)の条件を満たす。
ここで、
RI(L)は、低屈折率層(L)の屈折率、
RI(ML)は、中低屈折率層(ML)の屈折率、
RI(M)は、中屈折率層(M)の屈折率、
RI(H)は、高屈折率層(H)の屈折率を表す。
本発明では、RI(M)=RI(H)を満たす態様と、RI(M)<RI(H)を満たす態様とがある。
【0038】
〔中低屈折率層(ML)〕
中低屈折率層(ML)の屈折率は1.500~1.650である。屈折率の下限は、好ましくは1.51、より好ましくは1.55である。屈折率の上限は、好ましくは1.61、より好ましくは1.60である。
中低屈折率層(ML)の膜厚は10~230nmである。膜厚の下限は、好ましくは15nm、より好ましくは45nmである。膜厚の上限は、好ましくは190nm、より好ましくは175nmである。
中低屈折率層(ML)は、バインダー成分および金属酸化物粒子を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。また中低屈折率層(ML)は、バインダー成分、金属酸化物粒子および金属キレート化合物を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。中低屈折率層(ML)は、バインダー成分100質量部に対して、金属酸化物粒子を40~500質量部、金属キレート化合物を10質量部以下含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0039】
(バインダー成分)
バインダー成分として、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物、(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物、また(iii)電離放射線硬化樹脂が挙げられる。
【0040】
(式(1))
バインダー成分として、(i)下記式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物が挙げられる。
【化11】
式中、Rはアルキレン基である。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
R
1はアルキル基、アルコキシアルキル基、アシルオキシ基またはハロゲン原子である。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基、ブチル基、テトラメチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アルコキシアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アルコキシアルキル基のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。アルコキシアルキル基のアルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基、ブチル基、テトラメチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アシルオキシ基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アシルオキシ基として、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。
ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。
【0041】
(式(2))
バインダー成分として、(ii)下記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物が挙げられる。
【化12】
式(2)中、R
1は式(1)と同じである。nは1または2である。
R
2はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシアルキル基である。
アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基、ブチル基、テトラメチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アルケニル基として、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンニル基、ヘキセニル基などが挙げられる。
アルコキシアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1~9、より好ましくは1~5である。アルコキシアルキル基のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。アルコキシアルキル基のアルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基、ブチル基、テトラメチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
【0042】
(電離放射線硬化樹脂)
バインダー成分として、(iii)電離放射線硬化樹脂が挙げられる。電離放射線硬化樹脂として、ウレタンアクリレートが挙げられる。ウレタンアクリレートは、多価イソシアネート化合物と複数の水酸基を有するポリオール化合物とを反応して得られる末端イソシアネート化合物に、さらに水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるものである。ウレタンアクリレート中の(メタ)アクリロイル基が官能基であり、例えば(メタ)アクリロイル基を2個有するウレタンアクリレートは2官能であり、3個有するものは3官能である。ウレタンアクリレートとして、2官能から6官能のウレタンアクリレートが挙げられる。
2官能のウレタンアクリレートとして、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートに末端イソシアネート化合物を反応させ、両末端のそれぞれに1個の(メタ)アクリロイル基が導入したものが挙げられる。
【0043】
3官能のウレタンアクリレートとして、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートとペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートとを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の一方の末端に1個の(メタ)アクリロイル基を導入し、且つ他方の末端に2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものが挙げられる。
4官能のウレタンアクリレートとして、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の両末端に、それぞれ2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものが挙げられる。
6官能のウレタンアクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに、両末端イソシアネート(例えばトリヘキサジエチレンジイソシアネート)を反応させることにより、分子鎖末端のそれぞれに3個の(メタ)アクリロイル基を導入したものが挙げられる。
また、エチレングリコール、ジエチレングリコール、または3価以上の多価アルコールの(メタ)アクリル酸のモノエステル、ジエステル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルに、所望の数の(メタ)アクリロイル基を導入したウレタンアクリレートが挙げられる。
3官能以下のウレタンアクリレートと4官能以上のウレタンアクリレートとを併用することもできる。3官能以下のウレタンアクリレートと4官能以上のウレタンアクリレートとは、2/98~70/30、特に10/90~60/40の重量比で使用することが好ましい。
【0044】
(金属酸化物粒子)
金属酸化物粒子は、屈折率が1.50以上のものを用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化ニオブ、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム-酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)および五酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子であることが好ましい。
さらに具体的には、金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム粒子(屈折率=2.40)、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素等の他の酸化物とを分子レベルで複合化させて屈折率を調整した複合ジルコニウム金属酸化物粒子、酸化チタニウム粒子(屈折率=2.71)、酸化チタニウムと酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の他の酸化物とを分子レベルで複合化させて屈折率を調整した複合チタニウム金属酸化物粒子などが使用される。これらの金属酸化物粒子を適宜組み合わせて、所望の屈折率の層に調整する。このような粒子はそれ自体公知であり、市販されている。
金属酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは1~100nm、より好ましくは1~70nmである。金属酸化物粒子の屈折率は、好ましくは1.70~2.80、より好ましくは1.90~2.50である。
中低屈折率層(ML)形成用溶液中の金属酸化物粒子の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは40~500質量部である。
【0045】
(帯電防止機能)
中低屈折率層(ML)に、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム-酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)および五酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の導電粒子を含有させると、中低屈折率層(ML)に帯電防止機能を付与することができる。
この場合、導電粒子の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは100~500質量部、より好ましくは200~500質量部、さらに好ましくは300~500質量部である。導電粒子の平均粒径は、好ましくは1~50nm、より好ましくは1~30nmである。
中低屈折率層(ML)に帯電防止機能を付与する場合、中低屈折率層(ML)の膜厚は好ましくは10~50nmである。膜厚の下限は、好ましくは15nm、より好ましくは20nmである。膜厚の上限は、好ましくは50nm、より好ましくは48nmである。
【0046】
中低屈折率層(ML)に帯電防止機能が不必要な場合は、酸化チタン、酸化ジルコニウムおよび五酸化ニオブからなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物粒子を含有させることもできる。この場合、金属酸化物粒子の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは10~100質量部、より好ましくは20~60質量部、さらに好ましくは30~60質量部である。金属酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは10~100nm、より好ましくは20~80nmである。
中低屈折率層(ML)の膜厚は、好ましくは50~200nmである。膜厚の下限は、好ましくは60nm、より好ましくは80nmである。膜厚の上限は、好ましくは200nm、より好ましくは180nmである。
【0047】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物は、層の緻密性や強度、更には硬度を高める目的で含有させる。該金属キレート化合物は、二座配位子を代表例とするキレート剤が、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの金属に配位した化合物である。
【0048】
具体的には、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;
ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物が挙げられる。
【0049】
中低屈折率層(ML)形成用溶液中の金属キレート化合物の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下である。含有量の下限は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは1質量部、より好ましくは3質量部である。含有量の上限は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは8質量部、より好ましくは6質量部である。
中低屈折率層(ML)に、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム-酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)および五酸化アンチモンからなる群より選ばれる少なくとも一種の導電粒子を含有させ、帯電防止機能を付与する場合には、金属キレート化合物を含有させなくても良い。
【0050】
(中低屈折率層(ML)の形成)
中低屈折率層(ML)は、上記各成分を特定量、更には任意成分を、粘度調整や易塗布性の目的で、下記溶剤に溶解して中低屈折率層(ML)用コーティング溶液とし、この溶液をハードコート層(HC)に塗布した後、乾燥し、次いで加熱、硬化させて形成される。硬化は、紫外線(UV)、電子線(EB)といった電離放射線を照射することにより行うことが出来る。
【0051】
中低屈折率層(ML)用コーティング溶液に使用される溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール等のケトン化合物等が適している。その他、メチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、更にはメチルセロソルブやエチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ化合物などの溶剤も使用できる。
中低屈折率層(ML)用コーティング溶液を構成する上記各成分は、通常、室温付近で任意に混合攪拌されて溶液とされる。なお、市販の粒子分散体を使用した時は、分散媒である溶媒が溶液中に必然的に混入することになる。中低屈折率層(ML)用コーティング溶液中の溶媒並びに別途配合される溶剤は、前記乾燥並びに硬化工程において除去される。
【0052】
溶液のハードコート層(HC)上への塗工方法は特に制限されず、ディップコート法、ロールコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレー法等の方法が採用されるが、外観品位や膜厚制御の観点からディップコート法が好適である。その後、乾燥し、次いで加熱し、熱硬化させて中低屈折率層(ML)を形成することができる。また、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより硬化反応を行うことにより、中低屈折率層(ML)を形成することができる。
【0053】
〔中屈折率層(M)〕
中屈折率層(M)の屈折率は、1.550~1.810である。屈折率の下限は、好ましくは1.550、より好ましくは1.580である。屈折率の上限は、好ましくは1.800、より好ましくは1.770である。
中屈折率層(M)の膜厚は20~150nmである。膜厚の下限は、好ましくは25nm、より好ましくは50nmである。膜厚の上限は、好ましくは130nm、より好ましくは110nmである。
RI(M)<RI(H)、すなわち中屈折率層(M)の屈折率が、高屈折率層(H)の屈折率より小さい場合、中屈折率層(M)の屈折率の下限は、好ましくは1.550、より好ましくは1.580である。中屈折率層(M)の屈折率の上限は、好ましくは1.730、より好ましくは1.710、さらに好ましくは1.700である。
RI(M)=RI(H)、すなわち中屈折率層(M)の屈折率が、高屈折率層(H)の屈折率と同じ場合、中屈折率層(M)の屈折率の下限は、好ましくは1.750、より好ましくは1.760である。中屈折率層(M)の屈折率の上限は、好ましくは1.810、より好ましくは1.790、さらに好ましくは1.770である。
【0054】
中屈折率層(M)は、バインダー成分、金属酸化物粒子および金属キレート化合物を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。また中屈折率層(M)は、バインダー成分100質量部に対して、金属酸化物粒子を40~500質量部、金属キレート化合物を1~20質量部含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0055】
(バインダー成分)
バインダー成分は、(i)式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分であることが好ましい。式(1)および式(2)は、中低屈折率層(ML)の項で説明した通りである。
【0056】
(金属酸化物粒子)
中屈折率層(M)に用いられる金属酸化物粒子は、中低屈折率層(ML)の形成に用いられる金属酸化物粒子と同じ種類の粒子を用いることができ、この中から選択して用いることができる。
【0057】
(金属キレート化合物)
中屈折率層(M)に用いられる金属キレート化合物は、中低屈折率層(ML)の形成に用いられる金属キレート化合物と同じ種類のものを用いることができ、この中から選択して用いることができる。
【0058】
(中屈折率層(M)の形成)
中屈折率層(M)は、上記の各成分を特定量、更には任意成分を、溶剤に溶解して中屈折率層(M)用溶液とし、この溶液を中低屈折率層(ML)に塗布した後、乾燥し、次いで加熱、熱硬化させて形成することができる。
中屈折率層(M)用コーティング溶液に用いる溶剤は、中低屈折率層(ML)用コーティング溶液に使用される溶剤と同じである。該層の厚みは、反射防止性能の観点から、20~150nmの範囲に設定される。中屈折率層(M)用溶液を構成する上記各成分の混合順序や混合条件、更には、中低屈折率層(ML)上への塗工方法は特に制限されない。
【0059】
〔高屈折率層(H)〕
反射防止層(AR)は、極めて高い反射防止効果を発現させるために、中屈折率層(M)と低屈折率層(L)との間に高屈折率層(H)を有する。
高屈折率層(H)の屈折率は、1.700~1.850である。屈折率の下限は、好ましくは1.710、より好ましくは1.730である。屈折率の上限は、好ましくは1.830、より好ましくは1.810である。
高屈折率層(H)の膜厚は、10~250nmである。膜厚の下限は、好ましくは15nm、より好ましくは50nmである。膜厚の上限は、好ましくは210nm、より好ましくは150nmである。
高屈折率層(H)は、バインダー成分、金属酸化物粒子および金属キレート化合物を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。高屈折率層(H)は、バインダー成分100質量部に対して、金属酸化物粒子を300~500質量部、金属キレート化合物を10~20質量部含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0060】
(バインダー成分)
バインダー成分は、(i)式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分であることが好ましい。式(1)および式(2)は、中低屈折率層(ML)の項で説明した通りである。
【0061】
(金属酸化物粒子)
高屈折率層(H)に用いられる金属酸化物粒子は、中低屈折率層(ML)の形成に用いられる金属酸化物粒子と同じ種類の粒子を用いることができ、この中から選択して用いることができる。
【0062】
(金属キレート化合物)
高屈折率層(H)に用いられる金属キレート化合物は、中低屈折率層(ML)の形成に用いられる金属キレート化合物と同じ種類のものを用いることができ、この中から選択して用いることができる。
【0063】
(高屈折率層(H)の形成)
高屈折率層(H)は、各成分を、更には任意成分を、中低屈折率層(ML)形成時に用いた各種溶剤に溶解して高屈折率層(H)用コーティング溶液とし、この溶液を中屈折率層(M)に塗布した後乾燥し、次いで加熱、硬化させて形成することができる。該層の厚みは、反射防止性能の観点から、10~250nmの範囲に設定される。
高屈折率層(H)用コーティング溶液を構成する上記各成分の混合順序や混合条件、更には、中屈折率層(M)上への塗工方法は特に制限されず、中低屈折率層(ML)形成時の方法を採用できる。
上記溶液状態のコーティング溶液を使用した、いわゆる湿式法によって塗工し、次いで硬化して形成された反射防止層(中低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層および低屈折率層)は、乾式法で形成された反射防止層に比べて、赤外線の透過性に優れる。その理由については以下の通りと考える。
湿式法の高屈折率層はバインダー成分が存在するため乾式法と比べると屈折率の値は低くなり、その結果、可視域の低反射設計で可視光外域において急激な反射率上昇を抑えることができる。この結果、湿式法では、可視光域および可視光外域の広い範囲で低反射となり、赤外域も比較的高い透過率となる。
【0064】
〔低屈折率層(L)〕
低屈折率層(L)の屈折率は1.450以下である。屈折率の下限は、好ましくは1.300、より好ましくは1.320である。屈折率の上限は、好ましくは1.440、より好ましくは1.430である。
低屈折率層(L)の膜厚は70~130nmである。膜厚の下限は、好ましくは75nm、より好ましくは80nmである。膜厚の上限は、好ましくは120nm、より好ましくは110nmである。
低屈折率層(L)は、バインダー成分、シリカ粒子および、金属キレート化合物を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。低屈折率層(L)は、バインダー成分100質量部に対して、シリカ粒子を100~200質量部、金属キレート化合物を5~15質量部含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0065】
(バインダー成分)
バインダー成分は、(i)式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分であることが好ましい。式(1)および式(2)は、中低屈折率層(ML)の項で説明した通りである。
【0066】
(シリカ粒子)
シリカ粒子は、反射防止効果を発現させる観点から、内部に空間を有する中空シリカ粒子を用いるのが好ましい。平均粒径は、好ましくは10~150nmである。中空シリカ粒子は、内部が空洞の粒子であるため、他のシリカ粒子に比べて、その密度は低く、例えば、通常1.5g/cm3以下である。
このような中空シリカ粒子は、それ自体公知であり、例えば、テンプレートとなる界面活性剤の存在下にシリカを合成し、最後に焼成を行って界面活性剤を分解除去することにより製造され、市販されている。なお、このような市販品は、中空シリカ粒子が水やアルコールなどの溶媒分散体を用いるので、低屈折率層(L)を形成させるために調製される低屈折率層(L)形成用溶液中には、これらの溶媒が必然的混入する。しかし、コーティング後の乾燥、および硬化過程で、コーティング溶液とするために別途配合される溶剤ともどもこれら溶媒は揮発、除去される。
中空シリカ粒子を用いることが好ましいが、内部に空洞を有していない中実シリカ粒子を用いることもできる。
【0067】
低屈折率層(L)形成用溶液中のシリカ粒子の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは100~200質量部、より好ましくは110~190質量部、さらに好ましくは120~185質量部である。
【0068】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物は、層の緻密性や強度、更には硬度を高める目的で含有させる。該金属キレート化合物は、二座配位子を代表例とするキレート剤が、チタン、ジルコニウム、アルミニウムなどの金属に配位した化合物である。
【0069】
具体的には、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ-n-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;
ジエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ-i-プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ-i-プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ビス(エチルアセトアセテート)モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物が挙げられる。
【0070】
低屈折率層(L)形成用溶液中の金属キレート化合物の含有量は、バインダー成分100質量部に対して、好ましくは5~15質量部、より好ましくは5~13質量部、さらに好ましくは5~10質量部である。
【0071】
(低屈折率層(L)の形成)
低屈折率層(L)は、上記各成分を特定量、更には任意成分を、粘度調整や易塗布性の目的で、下記溶剤に溶解して低屈折率層(L)用コーティング溶液とし、この溶液をハードコート層(HC)に塗布した後、乾燥し、次いで加熱し、熱硬化させて形成することができる。
【0072】
低屈折率層(L)用コーティング溶液に使用される溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジアセトンアルコール等のケトン化合物等が適している。その他、メチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、更にはメチルセロソルブやエチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ化合物などの溶剤も使用できる。
低屈折率層(L)用コーティング溶液を構成する上記各成分は、通常、室温付近で任意に混合攪拌されて溶液とされる。なお、市販の粒子分散体を使用した時は、分散媒である溶媒が溶液中に必然的に混入することになる。低屈折率層(L)用コーティング溶液中の溶媒並びに別途配合される溶剤は、前記乾燥並びに硬化工程において除去される。
溶液の高屈折率層(H)上への塗工方法は特に制限されず、ディップコート法、ロールコート法、ダイコート法、フローコート法、スプレー法等の方法が採用されるが、外観品位や膜厚制御の観点からディップコート法が好適である。
【0073】
<保護層(C)>
本発明の反射防止積層体は、反射防止層(AR)の上に、保護層(C)を有することができる。
保護層(C)の屈折率は好ましくは1.450~1.550である。屈折率の下限は、好ましくは1.460、より好ましくは1.470である。屈折率の上限は、好ましくは1.530、より好ましくは1.520である。
【0074】
保護層(C)の膜厚は5~50nmである。膜厚の下限は、好ましくは10nm、より好ましくは15nmである。膜厚の上限は、好ましくは40nm、より好ましくは30nmである。
保護層(C)は、バインダー成分、シリカ粒子および金属キレート化合物を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。保護層(C)は、バインダー成分100質量部に対して、中実シリカ粒子を10~30質量部、金属キレート化合物を5~15質量部含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
【0075】
(バインダー成分)
バインダー成分は、(i)式(1)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物および(ii)式(2)で表されるアルコキシシラン化合物またはその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種のバインダー成分であることが好ましい。式(1)および式(2)は、中低屈折率層(ML)の項で説明した通りである。
【0076】
(中実シリカ粒子)
保護層(C)は、中実シリカ粒子を含有することが好ましい。保護層(C)中の中実シリカ粒子としては、粒径が5~500nmで屈折率が1.44~1.5の範囲にあるものが好ましい。即ち、このような酸化物微粒子を使用することにより、保護層(C)の全体にわたって硬度等の基本的な特性を均一に付与することができる。
【0077】
(金属キレート化合物)
保護層(C)に用いられる金属キレート化合物は、中低屈折率層(ML)の形成に用いられる金属キレート化合物と同じ種類のものを用いることができ、この中から選択して用いることができる。
【0078】
(保護層(C)の形成)
保護層(C)は、各成分を、更には任意成分を、中低屈折率層(ML)形成時に用いた各種溶剤に溶解して保護層(C)用コーティング溶液とし、この溶液を低屈折率層(L)に塗布した後乾燥し、次いで加熱、硬化させて形成される。該層の厚みは、反射防止性能の観点から、好ましくは5~100nm、より好ましくは20~70nm、さらに好ましくは30~50nmである。
【0079】
保護層(C)用コーティング溶液を構成する上記各成分の混合順序や混合条件、更には、低屈折率層(L)上への塗工方法は特に制限されず、中低屈折率層(ML)形成時の方法を採用できる。
【0080】
<帯電防止層(AS)>
本発明の反射防止積層体は、ハードコート層(HC)と中低屈折率層(ML)との間に、帯電防止層(AS)を有していても良い。
帯電防止層(AS)は、バインダー成分、および導電粒子を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。帯電防止層(AS)は、バインダー成分100質量部に対して、導電粒子を100~500質量部含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
帯電防止層(AS)の厚みは、好ましくは10~200nm、より好ましくは20~150nm、さらに好ましくは30~100nm、さらにより好ましくは40~80nmである。
【0081】
(導電粒子)
導電粒子としては、酸化インジウム、酸化インジウム-酸化スズ(ITO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)などを好適に用いることができる。
なかでも酸化スズ系の導電粒子は、波長に対して正の相関の吸収を有しており、形成される反射防止積層体の光透過吸収損失をQ450<Q550<Q650と容易にすることができる。
帯電防止層(AS)は、酸化インジウム-酸化スズ(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、リンドープ酸化スズ(PTO)およびフッ素ドープ酸化スズ(FTO)からなる群より選ばれる少なくとも一種の導電粒子を含有することが好ましい。有機系導電粒子を用いることもできる。
【0082】
導電粒子の含有量はバインダー成分100質量部に対して、好ましくは200~500質量部、より好ましくは300~500質量部である。導電粒子の粒径は、好ましくは1nm~100nmである。粒径は、好ましくは1~50nm、より好ましくは1~30nm、さらに好ましくは1~15nmである。
【0083】
(バインダー成分)
帯電防止層(AS)のバインダー成分は、4官能以上のウレタンアクリレートを硬化させてなることが好ましい。
4官能以上のウレタンアクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに、両末端イソシアネート(例えばトリヘキサジエチレンジイソシアネート)を反応させた、分子鎖末端のそれぞれに3個の(メタ)アクリロイル基を有する6官能のウレタンアクリレートを挙げることができる。
【0084】
バインダー成分となるモノマーまたはオリゴマーとしては、4官能以上のウレタンアクリレートが好ましい。4官能のウレタンアクリレートとして、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートを、末端イソシアネート化合物と反応させ、イソシアネート化合物の両末端に、それぞれ2個の(メタ)アクリロイル基を導入したものが挙げられる。6官能のウレタンアクリレート(a2)として、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートに、両末端イソシアネート(例えばトリヘキサジエチレンジイソシアネート)を反応させることにより、分子鎖末端のそれぞれに3個の(メタ)アクリロイル基を導入したものが挙げられる。
【0085】
塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n-ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロペンタノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
【0086】
(帯電防止層(AS)の形成)
帯電防止層(AS)は、導電粒子とバインダー成分形成用のモノマーまたはオリゴマーを含む塗液を基材(B)上に塗布し、基材(B)上に塗膜を形成し、該塗膜に対し、必要に応じて乾燥をおこない、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより樹脂成分形成用のモノマーまたはオリゴマーの硬化反応をおこなうことにより、帯電防止層(AS)とすることができる。
【0087】
塗液の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0088】
また、帯電防止層(AS)を形成するための塗液を紫外線により硬化させる場合にあっては、帯電防止層(AS)形成用塗液に光重合開始剤を添加することが好ましい。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、4官能以上のウレタンアクリレート100質量部に対して、好ましくは1~10質量部、より好ましくは1~7質量部である。
【0089】
<防汚層(AF)>
用途に応じて最表面に防汚層(AF)を積層しても良い。防汚層を設けると、反射防止積層体に付着した汚れ(ヒトの指紋等)を落としやすくなる。防汚層は、その機能を十分に発揮するために、機能層の最表面を構成する層であることが好ましい。
防汚層(AF)は、フッ素樹脂系の防汚剤をコーティングすることにより形成することができる。フッ素樹脂系の化合物としては、例えば、ポリフルオロポリエーテル基、ポリフルオロアルキレン基、およびポリフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有する有機ケイ素化合物を挙げることができる。ポリフルオロポリエーテル基とは、ポリフルオロアルキレン基とエーテル性酸素原子とが交互に結合した構造を有する2価の基のことである。
防汚剤として具体的には、AGC社製の「SURECO(登録商標)AF」シリーズ、信越化学工業社製の「SHIN-ETSU SUBELYN(登録商標)」シリーズ、ダイキン工業社製の「オプツール」シリーズ、フロロテクノロジー社製「フロロサーフ(登録商標)」シリーズ、ハーベス社製「DURASURF」シリーズ、ネオス社製「フタージェント」シリーズが市販され、容易に入手することができる。
防汚層(AF)の厚みは、好ましくは2~20nm、より好ましくは2~15nm、さらに好ましくは2~10nmである。
【0090】
<本発明の反射防止積層体の層構成>
本発明の反射防止積層体は、基材(B)/ハードコート層(HC)/中低屈折率層(ML)/中屈折率層(M)/高屈折率層(H)/低屈折率層(L)の順に配置される。低屈折率層(L)の基材(B)側とは反対側の面に保護層(C)を有していても良い。また
ハードコート層(HC)と中低屈折率層(ML)との間に帯電防止層(AS)を有していても良い。本発明の反射防止積層体は、最表層に防汚層(AF)を有していても良い。
本発明においては、各層は以下の特徴を有する。
特徴1:中低屈折率層(ML)に帯電防止機能を有する。
特徴2:中低屈折率層(ML)が帯電防止機能を有さない。
特徴3:中屈折率層(M)の屈折率<高屈折率層(H)の屈折率
特徴4:中屈折率層(M)の屈折率=高屈折率層(H)の屈折率
特徴5:保護層を有する。
特徴6:帯電防止層を有する。
実施例で示す反射防止積層体は、以下の特徴を有する。
実施例1~18:特徴1+特徴3
実施例19~20:特徴2+特徴3
実施例21:特徴1+特徴3+特徴5
実施例22:特徴2+特徴3
実施例23:特徴2+特徴4
実施例24:特徴2+特徴3+特徴6
実施例25:特徴2+特徴4+特徴6
実施例26:特徴2+特徴4
【0091】
<反射防止積層体の特性>
〔両面の視感平均反射率〕
本発明の反射防止積層体表面の、波長380~780nmにおける両面の視感平均反射率は、0.6%以下である。該視感平均反射率は、好ましくは0.55%以下、より好ましくは0.5%以下である。
図2に示す実施例1の反射防止積層体の反射率の分布と、
図3に示す比較例1の反射防止積層体の反射率の分布とを対比すれば明らかなように、本発明の反射防止積層体は、広い波長の範囲で、低い反射率を示す。
【0092】
〔視感平均透過率〕
本発明の反射防止積層体の波長380~780nmにおける視感平均透過率は、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上である。
〔赤外線透過率〕
本発明の反射防止積層体の波長900nmにおける透過率は、好ましくは85%以上、より好ましくは87%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【実施例】
【0093】
実施例の表の番号において例えば、[表2-1]と[表2-2]とがあるのは、これらは[表2]を分割したもので、共に[表2]と呼ぶことがある。
<特性>
反射防止積層体の特性は以下の方法で測定した。
(両面の視感平均反射率)
両面の視感平均反射率は、以下の方法で測定した。日本分光(株)製 紫外可視分光光度計:V-650を使用し、380nm~780nmで測定し、重価係数を掛けることで算出した。
(視感平均透過率)
視感平均透過率は、以下の方法で測定した。日本分光(株)製、紫外可視分光光度計:V-650を使用し、380nm~780nmで測定し、重価係数を掛けることで算出した。
(赤外線透過率)
赤外線域の透過率は、以下の方法で測定した。日本分光(株)製、紫外可視近赤外分光光度計:V-570にPbS検出器を取り付けて使用し、380~1000nmの透過率を測定した。得られた透過率の値から、波長900nmにおける透過率の値を赤外線透過率とした。なお、得られた透過率の値とは1nm毎の各波長の透過率である。
(各層の屈折率)
各層の屈折率は、以下の方法で測定した。アクリル基材に各層をコーティングし、日本分光(株)製 紫外可視分光光度計:V-650を使用し、ピークまたはボトムの値を測定した。また、その値を用いて、各層屈折率を算出した。
【0094】
<ハードコート層形成用溶液>
下記表1に示す各成分を混合してハードコート層形成用溶液を調製した。
【表1】
【0095】
<反射防止層(AR)形成用溶液>
(中低屈折率層(ML)形成用溶液)
下記表2に示す成分を表2に示す配合量で混合して中低屈折率層(ML)形成用溶液(ml-1からml-6およびco-ml-1からco-ml-2)を調製した。
(中屈折率層(M)形成用溶液)
下記表3に示す各成分を表3に示す配合量で混合して中屈折率層(M)形成用溶液(m-1からm-7およびco-m-1からco-m-2)を調製した。
【0096】
(高屈折率層(H)形成用溶液)
下記表4に示す各成分を表4に示す配合量で混合して高屈折率層(H)形成用溶液(h-1からh-4およびco-h-1)を調製した。
(低屈折率層(L)形成用溶液)
下記表5に示す各成分を表5に示す配合量で混合して低屈折率層(L)形成用溶液(l-1からl-6およびco-l-1)を調製した。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
<実施例1>
厚み1mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)基材(B)に、ハードコート層(HC)および反射防止層(AR)を、この順序に、以下の方法で形成した。膜厚は、ディップした層形成用溶液からの引き上げ速度により調整した。各層の組成、膜厚、屈折率、波長380~780nm視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率を表6に示す。
【0105】
〔ハードコート層(HC)の形成〕
ハードコート層形成用溶液に、基材(B)をディップした後、80℃で、10分間乾燥し、条件500mJでUV硬化して、基材(B)上に、厚み2μmのハードコート層(HC)が形成された積層体(HC)を得た。
【0106】
〔反射防止層(AR)の形成〕
積層体(HC)上に、以下の手順で、中低屈折率層(ML)、中屈折率層(M)、高屈折率層(H)、低屈折率層(L)を形成した。
(中低屈折率層(ML)の形成)
積層体(HC)を中低屈率層形成用溶液(ml-1)にディップした後80℃で10分間乾燥し、条件500mJでUV硬化して、中低屈折率層(ML)を形成した積層体(ML)を得た。
(中屈折率層(M)の形成)
積層体(ML)を、中屈折率層形成用溶液(m-1)にディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、中屈折率層(M)を形成した積層体(MLM)を得た。
(高屈折率層(H)の形成)
次いで積層体(MLM)を、高屈折率層形成用溶液(h-1)にディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、高屈折率層(H)を形成した積層体(MLMH)を得た。
(低屈折率層(L)の形成)
続いて積層体(MLMH)を、低屈折率層形成用溶液(l-1)にディップした後、100℃で、120分間、加熱処理して、低屈折率層(L)を形成した積層体(AR)を得た。
図2に視感平均反射率の分布を示す。
【0107】
<実施例2>
各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0108】
<実施例3>
各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0109】
<実施例4~7>
各層の膜厚を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0110】
<実施例8>
各層の膜厚を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0111】
<実施例9>
各層の膜厚を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0112】
<実施例10>
低屈折率層形成用溶液としてl-2を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0113】
<実施例11>
低屈折率層形成用溶液としてl-3を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0114】
<実施例12>
高屈折率層形成用溶液としてh-2を、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0115】
<実施例13>
高屈折率層形成用溶液としてh-3を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0116】
<実施例14>
中屈折率層形成用溶液としてm-2を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0117】
<実施例15>
中屈折率層形成用溶液としてm-3を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0118】
<実施例16>
中低屈折率層形成用溶液としてml-2を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0119】
<実施例17>
中低屈折率層形成用溶液としてml-3を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0120】
<実施例18>
中低屈折率層形成用溶液としてml-4を、中屈折率層形成用溶液としてm-4を、低屈折率層形成用溶液としてl-4を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0121】
<実施例19>
中低屈折率層形成用溶液としてml-5をディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、中低屈折率層(ML)を形成した積層体(ML)を得た。中屈折率層形成用溶液としてm-5を、高屈折率層形成用溶液としてh-4を、低屈折率層形成用溶液としてl-5を使用し、各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0122】
<実施例20>
中低屈折率層形成用溶液としてml-5をディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、中低屈折率層(ML)を形成した積層体(ML)を得た。各層の膜厚と屈折率を表6に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
実施例1~20の各層の組成、膜厚、屈折率、波長380~780nmにおける視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率を表6に示す。表中の略号は以下の通りである。
γ-GPS:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ATAA:アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)
PEA:ペンタエリスリトールアクリレート
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
<実施例21>保護層付き
(保護層形成用溶液)
保護層形成用溶液として表7に示す組成のc-1を調製した。
【0129】
【表7】
厚み1mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)基材(B)に、ハードコート層(HC)、反射防止層(AR)および保護層(C)を、この順序に、以下の方法で形成した。膜厚は、ディップした層形成用溶液からの引き上げ速度により調整した。
【0130】
〔ハードコート層(HC)の形成〕
ハードコート層形成用溶液に、基材(B)をディップした後、80℃で、10分間乾燥し、条件500mJでUV硬化して、基材(B)上に、厚み2μmのハードコート層(HC)が形成された積層体(HC)を得た。
〔反射防止層(AR)の形成〕
低屈折率層形成用溶液としてl-6を使用し、各層の膜厚と屈折率を表8に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で積層体(AR)を作製した。
〔保護層(C)の形成〕
積層体(AR)を、保護層形成用溶液(c-1)にディップした後、100℃、120分間、加熱処理して、積層体(AR)上に保護層(C)を形成させた積層体(C)を作製した。
【0131】
<実施例22>
中低屈折率層形成用溶液としてml-6をディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、中低屈折率層(ML)を形成した積層体(ML)を得た。中屈折率層形成用溶液としてm-6を、高屈折率層形成用溶液としてh-4を、低屈折率層形成用溶液としてl-6を使用し、各層の膜厚と屈折率を表8に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0132】
<実施例23>中屈折率層(M)=高屈折率層(H)
中低屈折率層形成用溶液としてml-6を用い、中低屈折率層(ML)を形成し、中屈折率層形成用溶液としてm-7を用い、中屈折率層(M)を形成し、その上にさらに高屈折率層形成用溶液h-4を用い、層を形成し高屈折率層(H)とした。即ち、中屈折率層(M)と高屈折率層(H)とは、全く同じ層とした。なお中屈折率層形成用溶液m-7と、高屈折率層形成用溶液h-4とは溶媒以外は同じ組成である。さらに、低屈折率層形成用溶液としてl-6を使用し、低屈折率層(L)を形成した。各層の膜厚と屈折率を表8に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
実施例21~23の各層の組成、膜厚、屈折率、波長380~780nmにおける視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率を表8に示す。表8中の略号は以下の通りである。
γ-GPS:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ATAA:アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)
PEA:ペンタエリスリトールアクリレート
【0133】
【0134】
<実施例24>帯電防止層(AS)付き
(帯電防止層形成用溶液)
下記表9に示す各成分を混合して帯電防止層形成用溶液as-1を調製した。
【0135】
【表9】
厚み1mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)基材(B)に、ハードコート層(HC)、帯電防止層(AS)、反射防止層(AR)を、この順序に、以下の方法で形成した。膜厚は、ディップした層形成用溶液からの引き上げ速度により調整した。
【0136】
〔ハードコート層(HC)の形成〕
ハードコート層形成用溶液に、基材(B)をディップした後、80℃で、10分間乾燥し、条件500mJでUV硬化して、基材(B)上に、厚み2μmのハードコート層(HC)が形成された積層体(HC)を得た。
〔帯電防止層(AS)の形成〕
得られた溶液に、積層体(HC)をディップした後、80℃で、10分間、加熱処理して、積層体(HC)上に厚み50nmの帯電防止層(AS)が形成された積層体(AS)を得た。
〔反射防止層(AR)の形成〕
積層体(AS)を、中低屈折率層形成用溶液(ml-6)にディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、中低屈折率層(ML)を形成した積層体(ASML)を得た。
中屈折率層形成用溶液(m-6)にディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、中屈折率層(M)を形成した積層体(ASMLM)を得た。
次いで、高屈折率層形成用溶液(h-4)に積層体(ASMLM)をディップした後、100℃で、60分間、加熱処理して、高屈折率層(H)を形成した積層体(ASMLMH)を得た。
続いて、低屈折率層形成用溶液(l-6)に積層体(ASMLMH)をディップした後、100℃で、120分間、加熱処理して、低屈折率層(L)を形成した積層体(ASAR)を得た。
【0137】
<実施例25>帯電防止層(AS)付き、中屈折率層(M)=高屈折率層(H)
中低屈折率層形成用溶液としてml-6を用い、中低屈折率層(M)を形成し、中屈折率層形成用溶液としてm-7を用い、中屈折率層(M)を形成し、その上にさらに高屈折率層形成用溶液h-4を用い、層を形成し高屈折率層(H)とした。即ち、中屈折率層(M)と高屈折率層(H)とは、全く同じ層とした。なお中屈折率層形成用溶液m-7と、高屈折率層形成用溶液h-4とは溶媒以外は同じ組成である。さらに、低屈折率層形成用溶液としてl-6を使用し、低屈折率層(L)を形成した。各層の膜厚と屈折率を表10に示すようにした以外は、実施例24と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
【0138】
実施例24~25の各層の組成、膜厚、屈折率、波長380~780nmにおける視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率を表10に示す。表10中の略号は以下の通りである。
γ-GPS:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ATAA:アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)
PEA:ペンタエリスリトールアクリレート
【0139】
【0140】
<実施例26>中屈折率層(M)=高屈折率層(H)
中低屈折率層形成用溶液としてml-6を用い、中低屈折率層(ML)を形成し、中屈折率層形成用溶液としてm-7を用い、中屈折率層(M)を形成し、その上にさらに高屈折率層形成用溶液h-1を用い、層を形成し高屈折率層(H)とした。中屈折率層(M)と高屈折率層(H)は、全く同じ屈折率と膜厚とした。さらに、低屈折率層形成用溶液としてl-6を使用し、低屈折率層(L)を形成した。各層の膜厚と屈折率を表8に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。
実施例26の各層の組成、膜厚、屈折率、波長380~780nmにおける視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率を表8に示す。
【0141】
<比較例1>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。低屈折率層(L)の膜厚を大きくした例である。
図3に視感平均反射率の分布を示す。
【0142】
<比較例2>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。低屈折率層(L)の膜厚を小さくした例である。
【0143】
<比較例3>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。高屈折率層(H)の膜厚を大きくした例である。
【0144】
<比較例4>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。高屈折率層(H)の膜厚を小さくした例である。
【0145】
<比較例5>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中屈折率層(M)の膜厚を大きくした例である。
【0146】
<比較例6>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中屈折率層(M)の膜厚を小さくした例である。
【0147】
<比較例7>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中低屈折率層(ML)の膜厚を大きくした例である。
【0148】
<比較例8>
各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中低屈折率層(ML)の膜厚を小さくした例である。
【0149】
<比較例9>
低屈折率層形成用溶液としてco-l-1を使用し、各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。低屈折率層(L)の屈折率を大きくした例である。
【0150】
<比較例10>
高屈折率層形成用溶液としてco-h-1を使用し、各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。高屈折率層(H)の屈折率を小さくした例である。
【0151】
<比較例11>
中屈折率層形成用溶液としてco-m-1を使用し、各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中屈折率層の屈折率を大きくした例である。
【0152】
<比較例12>
中屈折率層形成用溶液としてco-m-2を使用し、各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中屈折率層の屈折率を小さくした例である。
【0153】
<比較例13>
中低屈折率層形成用溶液としてco-ml-1を使用し、各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中低屈折率層の屈折率を大きくした例である。
【0154】
<比較例14>
中低屈折率層形成用溶液としてco-ml-2を使用し、各層の膜厚と屈折率を表11に示すようにした以外は、実施例1と同じ方法で、反射防止積層体を製造した。中低屈折率層の屈折率を小さくした例である。
【0155】
比較例1~14の各層の組成、膜厚、屈折率、波長380~780nmにおける視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率を表11に示す。表11中の略号は以下の通りである。
γ-GPS:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
ATAA:アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)
PEA:ペンタエリスリトールアクリレート
【0156】
実施例1~26、比較例1~14の反射防止積層体の波長380~780nmにおける視感平均反射率、波長380~780nmにおける視感平均透過率、波長900nmにおける赤外線透過率、各層の膜厚、屈折率を表12に示す。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明の反射防止積層体は、LEDディスプレイ(LED、OLED)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)などの光表示装置の前面パネル、赤外線カメラや赤外線レーザーを使った安全センサーの前面パネルやカバー材、自動車のインストルメントパネル、カーナビや電化製品のタッチパネルに用いることが出来る。
【符号の説明】
【0165】
L: 低屈折率層
H: 高屈折率層
M: 中屈折率層
ML: 中低屈折率層
HC: ハードコート層
B: 基材