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特許7554822リサイクルされたポリエチレンを用いたスタンドアップパウチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リサイクルされたポリエチレンを用いたスタンドアップパウチ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240912BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022517340
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2020058520
(87)【国際公開番号】W WO2021053492
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】62/903,109
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513269848
【氏名又は名称】ノヴァ ケミカルズ(アンテルナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クレア、ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ギボンズ、イアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】デイビー、アリステア
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511504(JP,A)
【文献】特開2012-229037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339663(US,A1)
【文献】特許第3555279(JP,B2)
【文献】特開2002-120849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料から作製される積層構造体であって、前記積層構造体は、
A)以下を含む外側ウェブ:
A.1)HDPE組成物を含む第1-A層、
A.2)LLDPE、MDPE、及びHDPEから選択されるポリエチレンを含む第2-A層、と、
B)以下を順次含む内側ウェブ:
B.1)前記外側ウェブと接触している第1-B層、ここで、前記第1-B層は、LLDPE及びMDPEから選択されるポリエチレンを含む、
B.2)リサイクルされたポリエチレンを含む、コア層である第2-B層、
B.3)以下を含むシーラント構造体:
B.3.1)ポリエチレンシーラントを含むシーラントスキン層、ここで、前記ポリエチレンシーラントは、0.88~0.915g/ccの密度を有するポリエチレンコポリマー及び0.91~0.93g/ccの密度を有するポリエチレンホモポリマー、から選択される、
B.3.2)ポリエチレンを含む前記シーラントスキン層に隣接し接触している層、ここで、該ポリエチレンの密度は、a)前記ポリエチレンシーラントの密度より高く、b)前記シーラントスキン層に隣接し接触している層と接触しているコア層の密度より低い、
と、を含み、
I)前記外側ウェブは前記内側ウェブに積層され、
II)前記HDPE、MDPE、LLDPE、リサイクルされたポリエチレン、及びポリエチレンシーラントは、合わせて、前記積層構造体を調製するために使用される前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成する、
前記積層構造体。
【請求項2】
ポリマー材料から作製される積層構造体であって、前記積層構造体は、
A)以下を含む外側ウェブ:
A.1)HDPE組成物を含む第1-A層、
A.2)LLDPE、MDPE、及びHDPEから選択されるポリエチレンを含む第2-A層、
A.3)LLDPE、MDPE、及びHDPEから選択されるポリエチレンを含む第3-A層、と、
B)以下を順次含む内側ウェブ:
B.1)前記外側ウェブと接触している第1-B層、ここで、前記第1-B層は、HDPE、LLDPE及びMDPEから選択されるポリエチレンを含む、
B.2)リサイクルされたポリエチレンを含む、コア層である第2-B層、
B.3)以下を含むシーラント構造体:
B.3.1)ポリエチレンシーラントを含むシーラントスキン層、ここで、前記ポリエチレンシーラントは、0.88~0.915g/ccの密度を有するポリエチレンコポリマー及び0.91~0.93g/ccの密度を有するポリエチレンホモポリマー、から選択される、
B.3.2)ポリエチレンを含む前記シーラントスキン層に隣接し接触している層、ここで、該ポリエチレンの密度は、a)前記ポリエチレンシーラントの密度より高く、b)前記シーラントスキン層に隣接し接触している層と接触しているコア層の密度より低い、
と、を含み、
I)前記外側ウェブ及び前記内側ウェブの各々は、A.1とA.3との間に少なくとも1つの追加の層及びB.1とB.3との間に少なくとも1つの追加の層を含み、ここで、追加の層は、HDPE、MDPE、LLDPE、又はそれらの組合せを含むポリエチレン組成物を含み、
II)前記外側ウェブは前記内側ウェブに積層され、
III)前記HDPE、MDPE、LLDPE、リサイクルされたポリエチレン、及びポリエチレンシーラントは、合わせて、前記積層構造体を調製するために使用される前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成する、
前記積層構造体。
【請求項3】
前記シーラントスキン層に隣接する層が、0.917~0.921g/ccの密度を有し、前記ポリエチレンシーラントが、0.88~0.915g/ccの密度を有する、請求項1又は2に記載の構造体。
【請求項4】
前記ポリエチレンシーラントが、0.900~0.914g/ccの密度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項5】
前記内側ウェブが、B.1とB.3との間に、核形成剤を含有するHDPEを含む追加の層をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項6】
前記第2-B層が、核形成剤を含有するHDPEを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項7】
前記外側ウェブが、A.1とA.3との間に、核形成剤を含有するHDPEを含む追加の層をさらに含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項8】
前記内側ウェブが、バリア層をさらに含み、前記バリア層が、前記第1-B層と前記第2-B層との間に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項9】
前記内側ウェブが、リサイクルされたポリエチレンを含む少なくとも1つの層をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項10】
前記内側ウェブが、HDPE、MDPE、又はLLDPEとリサイクルされたポリエチレンとのブレンドを含む少なくとも1つの層をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項11】
前記バリア層が、EVOHを含み、前記バリア層の総重量が、前記EVOHの合計重量及び前記構造体で使用されるポリエチレンの総重量に基づいて、5重量%未満であることをさらに条件とする、請求項に記載の構造体。
【請求項12】
第1のタイ層が、前記バリア層の一方の側に位置し、第2のタイ層が、前記バリア層の他方の側に位置する、請求項に記載の構造体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の構造体から調製されるスタンドアップパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、第1のポリエチレンウェブを第2のポリエチレンウェブに積層することによって調製される積層構造体に関する。この積層構造体は、例えば、スタンドアップパウチ(stand up pouch:SUP)の調製に適している。SUPは、リサイクルされたポリエチレンを用いて作製されており、リサイクル可能である。
【背景技術】
【0002】
スタンドアップパウチ(「SUP」)包装容器は、消費財用の包装として広範に商業的に使用されている。これらのパウチは、消費者にとって魅力的であり、適切に設計されていれば、包装容器を調製するために最小限の量のポリマー材料を非常に効率的に使用することができる。
【0003】
SUP包装容器が最初に生産されたのは、今から30年以上前である。初期の設計では、ポリエチレンテレフタラート(PET)の層とポリエチレン(PE)の層との積層体を使用している。このタイプの設計は、現在も商業的に使用されており、薄い層(約0.5ミル、又は0.12mmの厚さ)のPETと、より厚い層(約3ミル又は0.75mm)のPEと有する典型的な構造体を用いている。
【0004】
このSUP設計の問題点は、パウチを構成する材料が異なるため、パウチをリサイクルするのが難しい点である。
【0005】
ポリエチレンのみを用いて、(又は、多くのリサイクル施設では、少なくとも95%のPEを含む共押出フィルム若しくは積層フィルムを「純粋な」PE材料としてリサイクルすることができるので、少なくとも95%のPEを用いて、)調製される「リサイクル可能な」SUPを調製することが知られている。例えば、米国特許出願公開第2016/0229,157号(NOVA Chemicalsへ)は、少なくとも95重量%のPEを含み、それゆえリサイクル可能である、SUPを記載している。
【0006】
さらなるニーズは、新しいパウチにリサイクルされたポリエチレン(「r.PE」)を使用することである。発明者らは、SUPにr.PEを含めると、SUPを調製するために使用されるフィルム構造体のシーラント層の効果が低下する可能性があることを観察した。発明者らは、2層シーラント系(system)が、この問題を軽減し、シール効果を高めることを発見した。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に開示されるのは、ポリマー材料から作製された積層構造体であり、該積層構造体は、
A)以下を含む外側ウェブ(outer web):
A.1)HDPE組成物を含む第1-A層、
A.2)LLDPE、MDPE、及びHDPEから選択されるポリエチレンを含む第2-A層、と、
B)以下を含む内側ウェブ(inner web):
B.1)前記外側ウェブと接触している第1-B層、ここで、前記第1-B層は、LLDPE及びMDPEから選択されるポリエチレンを含む、
B.2)リサイクルされたポリエチレンを含む第2-B層、
B.3)以下を含むシーラント構造体:
B.3.1)ポリエチレンシーラントを含むシーラントスキン層、
B.3.2)ポリエチレンを含む前記シーラントスキン層に隣接する層、ここで、該ポリエチレンの密度は、a)前記ポリエチレンシーラントの密度より高く、b)前記シーラントスキン層に隣接する前記層と接触しているコア層の密度より低い、
と、を含み、
I)前記外側ウェブは前記内側ウェブに積層され、
II)前記HDPE、MDPE、LLDPE、リサイクルされたポリエチレン、及びポリエチレンシーラントは、合わせて、前記積層構造体を調製するために使用される前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成する。
【0008】
本明細書に開示されるのは、ポリマー材料から作製された積層構造体であり、該積層構造体は、
A)以下を含むウェブ:
A.1)HDPE組成物を含む第1-A層、
A.2)LLDPE、MDPE、及びHDPEから選択されるポリエチレンを含む第2-A層、
A.3)LLDPE、MDPE、及びHDPEから選択されるポリエチレンを含む第3-A層、と、
B)以下を含む内側ウェブ:
B.1)前記外側ウェブと接触している第1-B層、ここで、前記第1-B層は、HDPE、LLDPE及びMDPEから選択されるポリエチレンを含む、
B.2)リサイクルされたポリエチレンを含む第2-B層、
B.3)以下を含むシーラント構造体:
B.3.1)ポリエチレンシーラントを含むシーラントスキン層、
B.3.2)ポリエチレンを含む前記シーラントスキン層に隣接する層、ここで、該ポリエチレンの密度は、a)前記ポリエチレンシーラントの密度より高く、b)前記シーラントスキン層に隣接する前記層と接触しているコア層の密度より低い、
と、を含み、
I)前記外側ウェブ及び前記内側ウェブの各々は、任意選択で、A.1とA.3との間及びB.1とB.3との間に少なくとも1つの追加のポリエチレン層を含み、
II)前記外側ウェブは前記内側ウェブに積層され、
III)前記HDPE、MDPE、LLDPE、リサイクルされたポリエチレン、及びポリエチレンシーラントは、合わせて、前記積層構造体を調製するために使用される前記ポリマー材料の少なくとも95重量%を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、異なる内側ウェブを使用して調製されたシールの特性を示す。
図2図2は、異なる内側ウェブを使用して調製されたシールの特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態では、SUP(stand up pouch:自立袋)を作製するために使用されるポリマー材料は、異なるタイプのポリエチレンを含む。一実施形態では、SUPを作製するために使用されるポリマー材料は、異なるタイプのポリエチレンから本質的になり、すなわち、この実施形態のSUPを作製するために使用される唯一のポリマー材料は、ポリエチレンである。ポリエチレンという用語は、エチレンを含み、任意のコモノマーを含むことができるポリマーを指す。
【0011】
ポリエチレンの適切な例としては、以下のものが挙げられる。
1)高密度ポリエチレン(HDPE):約0.95~約0.97g/ccの密度を有するポリエチレンホモポリマー又はコポリマー;
2)中密度ポリエチレン(MDPE):約0.93~約0.95g/ccの密度を有するポリエチレンコポリマー;
3)直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):約0.915~約0.93g/ccの密度を有するポリエチレンコポリマー;
4)ポリエチレンシーラント:熱成形シールの調製に適したポリエチレン材料、又は例えば、1)約0.88~0.915g/ccの密度を有するポリエチレンコポリマー(「VLDPE」);及び2)高圧低密度ポリエチレン(LD):高圧プロセスにおいてフリーラジカル開始剤を用いて調製され、約0.91~約0.93g/ccの密度を有するポリエチレンホモポリマー、から選択されるポリエチレン。
【0012】
いくつかの実施形態では、外側ウェブだけがHDPE層を含む。別の実施形態では、積層構造体の内側ウェブと外側ウェブの両方が、少なくとも1つの層内にHDPEを含む。HDPE層は、SUPに剛性/硬性(stiffness/rigidity)をもたらす。一実施形態では、これらのHDPE層は、低密度ポリエチレン(LLDPEなど)の少なくとも1つの層によって分離されており、この低密度ポリエチレンは、耐衝撃性及び耐穿刺性をもたらす。さらに、硬質(rigid)HDPEの層を分離することによって、SUPの全体的な硬性及びねじり強度が、単一の層内に同等の量/厚さのHDPEを含む構造体と比較して改善され、これは、「Iビーム」効果と呼ばれることもある(建物の建設に広く使用されている鋼Iビームに類似しているので)。
【0013】
「隣接する」層は、一方の側でシーラントスキン層と接触しており、隣接する層の他方の側で、コア層と接触している。隣接する層は、ポリエチレン組成物を含み、当該ポリエチレン組成物は、接触しているシーラントスキン層の密度よりも高い密度を有するが、接触しているコア層の密度よりも低い密度を有する。一実施形態では、ポリエチレン組成物は、ポリエチレンのブレンドであり、別の実施形態では、ポリエチレン組成物は、単一タイプのポリエチレンを含む。
【0014】
外側ウェブ及び内側ウェブが、A.1とA.3及びB.1とB.3との間に少なくとも1つの追加のポリエチレン層を任意選択で含んでいる実施形態では、追加の層は、HDPE、MDPE、LLDPE、又はそれらの組合せを含むポリエチレン組成物を含む。追加の実施形態では、これらの層は、HDPE、MDPE、LLDPE、又はそれらの組合せからなる。追加の実施形態では、これらの層はリサイクルされたポリエチレンを含む。追加の実施形態では、これらの層はリサイクルされたポリエチレンからなる。
【0015】
多層ライン装置を用いてインフレーション多層フィルムを調製する場合、各層は、単一のラインによって製造されてもよく、又は「層」は、連続した層で同一組成の層を製造する複数の連続したラインから生じてもよいことが、当業者には理解されよう。一例として、5層ラインは、組成A/B/C/D/Eの構造体を製造し、5層フィルムを製造することができる。あるいは、同じ5層ラインを使用して、A/A/B/C/C組成の5層フィルムを作製し、3層フィルムを効果的に製造することもできる。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示の積層構造体は、スタンドアップパウチ(SUP)の調製に適している。
【0017】
SUP包装容器は、周知である。それらは、典型的には、様々な周知の技術及び機械を使用して、「ロールストック」(すなわち、フィルム又は本明細書に開示されるような積層構造体)から調製される。
【0018】
SUPは、多くのサイズで製造されており、典型的に、少量(例えば、約25ミル~2リットル)の消費財を包装するために使用される。SUP包装容器の内容物は、典型的には、「流動性(flowable)」であると説明されており、「流動性」という用語は、粒子状固体(キャンディー、ナッツ、及び朝食用シリアルなど);液体(例えば、飲料);並びにペースト/エマルジョン/ピューレ(ヨーグルトやベビーフードなど)を包含することが意図される。一実施形態では、SUPは、開封された包装容器の内容物が、SUPから容易に流れることができるように(及び/又はSUPから直接消費されることができるように)に設計されている。例えば、SUPの上部には、(飲料用の)一体型のストロー又はペースト、エマルジョン、ピューレなどのための注ぎ口が設けられていてもよい。このような設計は周知であり、一例が、カナダ特許出願第2,612,940(Rogers)に開示されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、SUPは、典型的には、包装容器の上部で開封される。SUPは、開封帯、又は包装容器を再封止することができるフィットメント(若しくはキャップ)、又は当業者に既知の他のキャップ/クロージャなどを用いて開封することができる。
【0020】
一実施形態では、積層構造体は、2つのウェブの間の境界面、すなわち、第1のウェブの内側表面上又は第2のウェブの外側表面上のいずれかに印刷される。
【0021】
続いて、第1の(外側)ウェブの様々な実施形態、第2の(内側)ウェブの様々な実施形態、接着剤の様々な実施形態、及び印刷の様々な実施形態を詳細に説明する。
【0022】
一実施形態では、第1の(外側)ウェブは、積層構造体の外壁を形成する。
【0023】
一実施形態では、積層構造体は、第1のウェブと第2の(内側)ウェブとの間の境界面に印刷される。
【0024】
人は外側ウェブを「透かして(looks through)」印刷を見るので、いくつかの実施形態では、外側ウェブが低いヘイズ値を有することが望ましい場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、多くの消費者が、高光沢仕上げを高品質の指標であると認識するので、高い「光沢」が望ましい場合がある。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態では、積層構造体から作製されたSUPが自立するように、外側層(exterior layer)が、積層構造体に剛性/硬性(stiffness/rigidity)をもたらすことが望ましい。
【0026】
このように、外側ウェブには、良好な光学特性と剛性のバランスが望まれる場合がある。HDPEは、所望の剛性をもたらすことが知られているが、HDPEは、乏しい光学特性を有する可能性があることも知られている。したがって、一実施形態では、HDPEの非常に薄い層が、低密度ポリエチレンの層と共に、外側ウェブのスキン層として使用される。続いて、これらの実施形態をさらに説明する。
【0027】
<多層外側ウェブ、又はウェブA>
一般に、SUPの外側ウェブを形成するために厚い単層HDPEフィルムを使用すると、適切な剛性(stiffness)を有する構造体を提供することができる。しかし、厚いHDPEの層には、光学特性が乏しいという欠点がある。この欠点は、外側ウェブの外側表面(スキン)側を印刷して、不透明なSUPを形成することによって解決することができる。しかし、この設計によれば、印刷が、SUPの輸送や取り扱い中に容易に擦れたり損傷したりしやすいため、乱暴な扱いに対して耐性があまり高くないおそれがある。
【0028】
一実施形態では、本明細書に開示される構造は、少なくとも1つの層(「層A.1」)がHDPEから調製され、少なくとも1つの層(「層A.2」)が低密度ポリエチレン(LLDPE、LD、VLDPEなど)から調製される共押出多層フィルムを外側ウェブに提供することによって、これらの問題を軽減する。
【0029】
一実施形態では、HDPEは、0.1~10(又は、例えば、0.3~3)グラム/10分のメルトインデックスIを有することによって、さらに特徴付けられる。
【0030】
一実施形態では、第1-A層は、核形成剤を含むHDPE組成物である。
【0031】
一実施形態では、LLDPEは、0.1~5(又は、例えば、0.3~3)グラム/10分のメルトインデックスIを有することによって、さらに特徴付けられる。
【0032】
一実施形態では、LLDPEは、シングルサイト触媒(メタロセン触媒など)を用いて調製され、約2~約4の分子量分布(Mw/Mn)(すなわち、重量平均分子量を数平均分子量で割ったもの)を有することによって、さらに特徴付けられる。このタイプのLLDPEは、典型的に、sLLDPEと呼ばれる。
【0033】
一実施形態では、超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、約0.88~0.915g/ccの密度及び約0.5~10g/ccのメルトインデックス(I)を有するエチレンコポリマーである。上記の材料はすべて周知であり、市販されている。
【0034】
低密度ポリエチレンを用いて、多層ウェブの光学系を改善することができる。一実施形態では、多層構造体は、3層のA/B/Aタイプの共押出フィルムであって、AがLLDPE(例えば、シングルサイト触媒によるLLDPE)であり、BがHDPE組成物である。このタイプのフィルムは、優れた光学特性をもたらし、いくつかの実施形態において、これらのフィルムのいくつかは、同じLLDPEで作製された単層フィルムよりも、優れた光学特性を有することが観察されている。
【0035】
別の実施形態では、ウェブAに用いられるLLDPEは、0.2~5、又は例えば、0.2~0.8のメルトインデックスIを有する少量(0.2~10重量%)のLDポリエチレンとブレンドされる。これらのLLDPE及びLLDPEとLDの特定のブレンドは、LLDPE単独(特に、LLDPEがsLLDPEである場合)と比較して、優れた光学特性と優れた剛性を有することが観察されている。
【0036】
いくつかの実施形態では、約0.2~0.8グラム/10分のメルトインデックスを有するLD樹脂の使用が、この目的のために有効であることが観察されている(当業者は、一般にこのタイプのLD樹脂を「フラクショナルメルトLD」と呼ぶ)。
【0037】
別の実施形態では、ウェブAに用いられるLLDPEは、少量(0.2~10重量%)のHDPE樹脂及び核形成剤とブレンドされる。
【0038】
本明細書で使用される「核形成剤」という用語は、有核ポリオレフィン組成物を調製する当業者にその従来の意味を伝えることを意味するものであり、すなわち、ポリマー溶融物が冷却される際に、ポリマーの結晶化挙動を変化させる添加剤を意味する。
【0039】
ポリプロピレン添加剤として市販され、広く使用されている従来の核形成剤の例としては、ジベンジリデンソルビタールエステル(Milliken ChemicalによるMILLAD(登録商標)3988の商標、及びCiba Specialty ChemicalsによるIRGACLEAR(登録商標)の商標の下で販売されている製品など)が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、核形成剤は、ポリエチレン中に十分に分散されるべきである。いくつかの実施形態では、使用される核形成剤の量は比較的少量であり、200~10,000重量ppm(ポリエチレンの重量に基づく)であるため、当業者であれば、核形成剤が十分に分散されることを確認するためにいくらかの注意を払わなければならないことを、理解するであろう。いくつかの実施形態では、混合を容易にするために、ポリエチレンに、細かく分割された形態(50ミクロン未満、又は例えば、10ミクロン未満)の核形成剤を用いる。
【0041】
使用に適している可能性のある核形成剤の例としては、米国特許第5,981,636号に開示されている環状有機構造体(及びそれらの塩、ビシクロ二ナトリウム[2.2.1]ヘプテンジカルボキシレートなど);米国特許第5,981,636号に開示されている構造の飽和型のもの(米国特許第6,465,551号に開示されているようなもの;Zhao他、Millikenへ);米国特許第6,599,971号(Dotson他、Millikenへ)に開示されているようなヘキサヒドロフタル酸構造(又は「HHPA」構造)を有する特定の環状ジカルボン酸の塩;米国特許第5,342,868号に開示され、Asahi Denka KogyoによってNA-11及びNA-21の商品名で販売されているものなどのリン酸エステル及びグリセロールの金属塩(又は例えば、グリセロール酸亜鉛)などが挙げられる。1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩、カルシウム塩(CAS登録番号491589-22-1)は、典型的には、HDPEの核形成に対して良好な結果をもたらす。上記の核形成剤は、(炭素原子と水素原子を含むという意味で)「有機」と表現され、タルクや酸化亜鉛などの無機添加剤と区別される場合がある。タルク及び酸化亜鉛は、(それぞれアンチブロッキングと酸捕捉機能を提供するために、)通常、ポリエチレンに添加され、それらはある程度の限定的な核形成機能を提供する。
【0042】
上記の「有機」核形成剤は、無機核形成剤よりも優れた(しかし、より高価な)核形成剤である可能性がある。一実施形態では、有機核形成剤の量は、200~2000ppm(核形成剤を含む層中のポリエチレンの総重量に基づく)である。
【0043】
いくつかの実施形態において、これらのLLDPE/HDPE/核形成剤ブレンドはまた、100%LLDPEよりも、優れた光学特性及びより高い弾性率(より高い剛性(stiffness))をもたらすことも見出されている。
【0044】
別の実施形態では、外側ウェブは、3層のA/B/Aタイプの共押出フィルムであって、AがHDPEであり、Bが低密度ポリエチレン、例えば、上記のLLDPE組成物(LDとブレンドしたLLDPE組成物、並びにHD及び核形成剤とブレンドしたLLDPE組成物を含む)である。これらのフィルムは、優れた硬性(rigidity)をもたらす。
【0045】
<B. 内側ウェブ(リサイクルされたポリエチレンを用いる);「B」ウェブとも呼ばれ;「シーラント」ウェブとも呼ばれる>
内側ウェブは、積層構造体から作製されたSUPの内側を形成する。
B.1)前記外側ウェブと接触している第1-B層(ここで、前記第1-B層は、HDPE、LLDPE及びMDPEから選択されるポリエチレンを含む)、
B.2)リサイクルされたポリエチレンを含む第2-B層、
B.3)以下を含むシーラント構造体:
B.3.1)ポリエチレンシーラントを含むシーラントスキン層、
B.3.2)ポリエチレンを含む前記シーラントスキン層に隣接する層、ここで、該ポリエチレンの密度は、a)前記ポリエチレンシーラントの密度より高く、b)前記シーラントスキン層に隣接する前記層と接触しているコア層の密度より低い。
【0046】
<B.1 境界面スキン層>
内側ウェブの一方のスキン層は、HDPEよりも低い密度を有するポリエチレン組成物から調製され、HDPEから調製された層と比較して、耐衝撃性及び引裂強度特性が強化された層をもたらす。一実施形態では、この層は、0.3~3グラム/10分のメルトインデックスを有するLLDPE(sLLDPEを含む)から主に作製される。この層はまた、大量のLLDPE(又はsLLDPE)及び少量のLD(例えば、上記のようなフラクショナルメルトLD)又は上記のようなLLDPE+HDPE+核形成剤ブレンドを用いて調製してもよい。
【0047】
別の実施形態では、このスキン層は、MDPE(又はMDPEと少量の別のポリエチレンとのブレンド、例えばLDとのブレンド、及びHDPE及び上記の核形成剤とのブレンド)を用いて調製してもよい。
【0048】
一実施形態では、このスキン層は印刷される。したがって、印刷プロセスを容易にする周知のフィルム改変手段のいずれかを組み込むことは、本開示の範囲内である。例えば、スキン層にコロナ処理を施して、インクの密着性を改善することができる。別の実施形態では、スキン層は、印刷面の外観を改善するために、不透明化剤(タルク、酸化チタン又は酸化亜鉛など)を含んでもよい。
【0049】
<B.2 リサイクルされたポリエチレン(r.PE)を含むコア層>
内側ウェブには、r.PEを含む少なくとも1つの層が含まれている。内側ウェブには、r.PEを含むコア層が含まれている。一実施形態では、コア層は、本質的にr.PEからなる(すなわち、この層で使用されるすべてのポリマーは、r.PEである)。
【0050】
リサイクルされたポリエチレンには、多くの供給源とタイプがあり、これらは本明細書に開示される様々な実施形態に有用である。本明細書で使用される場合、リサイクルされたポリエチレン(又はr.PE)という用語は、その供給源に依存しないリサイクルされたポリエチレンを指す。
【0051】
一例では、リサイクルされたポリエチレンは、少なくとも1回の「熱履歴」にさらされたポリエチレンであり、すなわち、少なくとも1回は溶融、成形、又は押出しされたポリエチレンである。一実施形態では、r.PEは、ポストインダストリアルリサイクル(PIR)であってもよく、これは、製造プロセスで使用されたものの、最終消費者には販売されていないポリエチレンを一般に指す(このようなPIRポリエチレンは、通常、製造プロセスでスクラップ、トリミング、又は仕様外の部品として製造され、同じプロセスで再利用するために回収されるか、あるいは別のプロセスで使用するために他のメーカー/コンバーターに販売される場合がある)。
【0052】
一実施形態では、r.PEは、消費者リサイクル後のポリエチレン(又は「PCR」)である。PCRは、廃棄物の流れから回収され、再利用する前に洗浄される。
【0053】
特定の実施形態では、PCRは、液体(例えば、ミルク又はジュース)用のリサイクルされた容器から調製される。
【0054】
r.PEは、0.910~0.97g/ccの密度、及び0.2~20のメルトインデックスIを有する。
【0055】
一実施形態では、r.PEは、0.93~0.95g/ccの密度、及び0.2~10のメルトインデックスIを有する。
【0056】
他の実施形態では、密度は、0.910~0.930、又は0.930~0.950、又は0.950~0.960である。
【0057】
<B.3 シーラント構造体-シーラント層(B.3.1)及び「隣接する(Adjacent to)」又は「隣の(Next to)」層(B.3.2)>
内側ウェブは、2つの外側層、又は2つの「スキン」層(すなわち、境界面スキン層(上記の層B.1)及び内側スキン層(本明細書ではシーラント層(B.3.1)とも呼ばれる))を有する。シーラント層は、「ポリエチレンシーラント」(すなわち、シール条件にさらされると容易に溶融してシールを形成するタイプのポリエチレン)から調製される。当業者は、2つのタイプのポリエチレン(すなわち、約0.88~0.915g/ccの密度を有するポリエチレンコポリマー、及びLDポリエチレン(前述のとおり))がシーラントとしての使用に好ましいことを認識するであろう。
【0058】
いくつかの実施形態では、低密度ポリエチレンコポリマーを使用することが好ましい。
原則として、これらの低密度ポリエチレンのコストは、密度が低下するにつれて増加するため、「最適な」ポリエチレンシーラント樹脂は、典型的に、十分なシール強度を提供する最高密度のポリエチレンになる。密度が約0.900~0.914g/ccのポリエチレンシーラントは、多くの用途で満足のいく結果をもたらす。
【0059】
ポリエチレンシーラントの他の例としては、エチレン-酢酸ビニル(EVA)及び「アイオノマー」(例えば、エチレンと酸性コモノマーとのコポリマーであり、得られた酸性コモノマーは、例えば、ナトリウム、亜鉛、又はリチウムによって中和されているもの;アイオノマーは、商標SURLYN(登録商標)の下で市販されている)が挙げられる。
【0060】
EVA及び/又はアイオノマーを使用すると、SUPをリサイクルする際に問題を引き起こす可能性があるため、あまり好ましくない(ただし、前述のように、多くのリサイクル施設では、リサイクル用に、最大5%のEVA又はアイオノマーを含むSUPを受け入れている)。
【0061】
<B.3.2 「隣の(Next to)」又は「隣接する(Adjacent to)」層>
発明者らは、内側ウェブ内にr.PEを使用すると、(r.PEの代わりに未使用のHDPEを用いて作製された内側ウェブと比較して、)シール層の効果が低下することを観察している。この理由は、完全には理解されていない。しかし、発明者らは、選択されるポリエチレンを、シーラント層と接触している(又は「隣接する」)層内に使用すると、シール性能が向上することを観察している。明確にするために、(上記の)シーラント層は、SUPをシールするために使用されるスキン層であり、「隣接する」層は、シーラント層に隣接/接触するコア層であり、別のコア層とも接触している。一実施形態では、「隣接する」層は、0.917~0.921g/ccの密度を有する。いくつかの実施形態では、B.3.2シーラント層(隣接する層)は、リサイクルされたポリエチレン単独、又はリサイクルされたポリエチレンと未使用のポリエチレンがブレンドされたものを含んでもよい。これらの実施形態では、選択されるポリエチレン、リサイクルされたポリエチレン、又はこれらの2つのブレンドの密度が、相対密度を満たすことにより、ポリエチレンを有するシーラントスキン層に隣接する層がポリエチレンを有し、当該ポリエチレンの密度が、a)ポリエチレンシーラントの密度より高いこと、b)シーラントスキン層に隣接する前記層と接触しているコア層の密度より低いこと、を許容する。
【0062】
一実施形態では、rLLDPEは、0.927g/cmの密度を有し、0.914g/cmの密度を有するVLDPEとブレンドされる。
【0063】
一実施形態では、rLLDPEは、0.928g/cmの密度を有し、0.912g/cmの密度を有するVLDPEとブレンドされる。
【0064】
<B.5 HDPE>
一実施形態では、内側ウェブはまた、任意選択で核形成剤を含む、HDPE組成物から調製される層を少なくとも含む。
【0065】
一実施形態では、第2-B層は、核形成剤を含むHDPE組成物を含む。
【0066】
HDPEは、一般的な商用アイテムである。市販されているHDPEのほとんどは、少なくとも金属(例えば、クロム又はIV族遷移金属(Ti、Zr、又はHf))を含有する触媒から調製される。
【0067】
Cr触媒から作製されたHDPEは、典型的には、長鎖分岐(LCB)をいくらか含んでいる。IV族金属から作製されたHDPEは、Cr触媒から作製されたHDPEよりも、一般に含まれているLCBが少ない。
【0068】
本明細書で使用される場合、HDPEという用語は、約0.95~0.97グラム/立方センチメートル(g/cc)の密度を有するポリエチレン(又は、文脈によって要求されるようなポリエチレンブレンド組成物)を指す。一実施形態では、HDPEのメルトインデックス(「I」)は、約0.2~10グラム/10分である。
【0069】
一実施形態では、HDPEは、メルトインデックスが少なくとも10倍離れている2つのHDPEを含むブレンド組成物として、提供される。続いて、このHDPEブレンド組成物をさらに詳述する。
【0070】
<HDPEブレンド組成物>
<ブレンド成分>
【0071】
<ブレンド成分a)>
この実施形態で使用されるポリエチレン組成物のブレンド成分a)は、比較的高いメルトインデックスを有するHDPEを含む。本明細書で使用される場合、「メルトインデックス」という用語は、ASTM D1238(190℃で、2.16kgの重量を用いて実施した場合)によって得られる値を指すことを意味する。この用語は、本明細書では「I」(10分間の試験期間中に流れるポリエチレンのグラム、又は「グラム/10分」で表される)とも呼ばれる。当業者には認識されるように、メルトインデックスIは、一般に、分子量に反比例する。一実施形態では、ブレンド成分a)は、ブレンド成分b)と比較して、比較的高いメルトインデックス(又は、言い換えれば、比較的低い分子量)を有する。
【0072】
これらのブレンドにおけるブレンド成分a)のIの絶対値は、一般に、5グラム/10分を超える。しかし、ブレンド成分a)のIの「相対値」が、より重要であり、一般に、ブレンド成分b)のI値よりも少なくとも10倍高くする必要がある[ブレンド成分b)のI値は、本明細書ではI’と呼ばれる]。したがって、例示の目的で、ブレンド成分b)のI’値が1グラム/10分である場合、ブレンド成分a)のI値は、例えば、少なくとも10グラム/10分である。
【0073】
一実施形態では、ブレンド成分a)は、i)0.95~0.97g/ccの密度を有すること、ii)全HDPEブレンド組成物の5~60重量%の量で存在し(ここで、ブレンド成分b)は、全組成物のバランスを形成する)、10~40重量%の量で存在し、又は例えば、20~40重量%の量で存在すること、によって、さらに特徴付けることができる。ブレンド成分a)を形成するために、複数の高密度ポリエチレンを使用することが許容される。
【0074】
分子量分布は、重量平均分子量(Mw)を、数平均分子量(Mn)で割ることによって決定され、ここで、Mw及びMnは、ASTM D6474-99に準拠して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。成分a)のMw/Mnは、例えば2~20、又は例えば2~4である。理論に拘束されることを望まないが、成分a)のMw/Mn値が低い(2~4)ことにより、本開示に従って調製されたインフレーションフィルム及びウェブ構造体の結晶化速度及び全体的なバリア性能を改善することができると考えられている。
【0075】
<ブレンド成分b)>
ブレンド成分b)もまた、0.95~0.97g/cc(例えば0.955~0.968g/cc)の密度を有する高密度ポリエチレンである。
【0076】
ブレンド成分b)のメルトインデックスも、190℃で2.16kgの荷重を用いて、ASTM D1238によって決定される。ブレンド成分b)のメルトインデックス値(本明細書ではI’と呼ばれる)は、ブレンド成分a)のメルトインデックス値よりも低く、これは、ブレンド成分b)が、比較的高い分子量を有することを示している。I’の絶対値は、例えば、0.1~2グラム/10分である。
【0077】
成分b)の分子量分布(Mw/Mn)は、首尾よく実施するために必ずしも重要ではないが、成分b)として、Mw/Mnが2~4のものが例示される。
【0078】
最後に、成分b)のメルトインデックスを、成分a)のメルトインデックスで割った比率は、例えば、10/1より大きい。
【0079】
ブレンド成分b)もまた、複数のHDPE樹脂を含有してもよい。
【0080】
<全体的なHDPEブレンド組成物>
全体的な高密度ブレンド組成物は、ブレンド成分a)とブレンド成分b)を一緒にブレンドすることによって形成される。一実施形態では、この全体的なHDPE組成物は、0.5~10グラム/10分(例えば、0.8~8グラム/10分)のメルトインデックス(ASTM D 1238、190℃で2.16kgの荷重を用いて測定)を有する。
【0081】
ブレンドは、任意のブレンドプロセスによって作製することができる;例えば、1)粒子状樹脂の物理的ブレンド;2)異なるHDPE樹脂の共通の押出機への同時供給;3)溶融混合(任意の従来のポリマー混合装置にて);4)溶液ブレンド;又は5)2つ以上の反応器を利用する重合プロセスである。
【0082】
適切なHDPEブレンド組成物は、以下の2つのブレンド成分を押出機で溶融ブレンドすることによって調製することができる:
10~30重量%の成分a):成分a)は、メルトインデックスIが15~30グラム/10分で密度0.95~0.97g/ccを有するHDPE樹脂であり、
90~70重量%の成分b):成分b)は、メルトインデックスIが0.8~2グラム/10分で密度0.95~0.97g/ccを有するHDPE樹脂である。
【0083】
成分a)に適した市販のHDPE樹脂の例は、商標SCLAIR(登録商標)79Fの下で販売されている。これは、従来のチーグラーナッタ触媒を用いて、エチレンを単独重合することによって調製されるHDPE樹脂である。それは、典型的なメルトインデックス(18グラム/10分)と、典型的な密度(0.963g/cc)と、典型的な分子量分布(約2.7)とを有する。
【0084】
ブレンド成分b)に適した市販のHDPE樹脂の例には、次のものが含まれる(典型的なメルトインデックスと密度の値を括弧内に示す):
SCLAIR(登録商標)19G(メルトインデックス=1.2グラム/10分、密度=0.962g/cc);
MARFLEX(登録商標)9659(Chevron Phillipsから入手可能、メルトインデックス=1グラム/10分、密度=0.962g/cc);及び
ALATHON(登録商標)L5885(Equistarから入手可能、メルトインデックス=0.9グラム/10分、密度=0.958g/cc)。
【0085】
いくつかの実施形態では、HDPEブレンド組成物は、異なる重合条件下で作動する2つの反応器を使用して、溶液重合プロセスによって調製される。これにより、HDPEブレンド成分の均一なその場での(insitu)ブレンドが提供される。このプロセスの例は、米国特許第7,737,220号(Swabey他)に記載されている。
【0086】
一実施形態では、HDPE組成物は、エチレンホモポリマーのみを使用して調製される。このタイプの組成物は、構造体のバリア特性を最適化(最大化)することが望まれる場合に適している。
【0087】
別の実施形態では、HDPE組成物は、コポリマーを使用して調製することができる。これにより、物理的特性、例えば、耐衝撃性のいくらかの改善を可能にするからである。さらに別の実施形態では、少量(30重量%未満)の低密度ポリエチレンを、HDPE組成物にブレンドすることができる(これもまた、耐衝撃性のいくらかの改善を可能にすることができる)。
【0088】
一実施形態では、上記のHDPEブレンド組成物は、HDPEブレンド組成物の重量に基づいて、約300~3000重量ppmの量の有機核形成剤(前述のとおり)と組み合わされる。(前述の)1-2シクロヘキサンジカルボン酸のカルシウム塩、カルシウム塩(CAS491589-22-1)の使用が適切である。いくつかの実施形態では、HDPE組成物が核形成剤を含む場合、IV族遷移金属(例えば、Ti)を用いて調製されるHDPE組成物を使用することが好ましい。
【0089】
このタイプの「有核」コア層は、優れたバリア特性(すなわち、水、ガス、及びグリースの透過率の低下)をもたらすことが観察されており、これは多くの包装容器の用途に望ましいものである。
【0090】
いくつかの実施形態では、核形成剤が存在すると、(同等の厚さの非核形成層と比較して、)HDPE層の弾性率を改善することが観察されている。
【0091】
上記のタイプの有核HDPEブレンド組成物を使用すると、酸素と水の透過に対する「バリア」をもたらす。このバリア層の性能は、多くの商品に適している。しかし、改善された「バリア」性能は、エチレン-ビニルアルコール(EVOH)、アイオノマー及びポリアミドなどの特定の「バリア」ポリマーを使用することによって達成できることが、当業者には認識されるであろう。このような非ポリエチレンバリア樹脂を多量に使用すると、ポリエチレンと非ポリエチレン材料との組合せで作製されたフィルム/構造体/SUPをリサイクルすることが、非常に困難になる可能性がある。しかし、非ポリエチレン材料が少量(10重量%未満、特に5重量%未満)の場合、このような構造体をリサイクルすることは、依然として可能である。
【0092】
いくつかの実施形態では、特定の非ポリエチレンバリア樹脂を使用すると、非ポリエチレンバリア層とポリエチレンの残りの層との間の接着を可能にするために「タイ層(tie layer)」の使用を必要とし得ることも、当業者には認識されるであろう。
【0093】
<印刷プロセス>
前述のように、いくつかの実施形態では、本開示の積層構造体は、2つのウェブの間の境界面で印刷される。適切なプロセスには、周知のフレキソ印刷及びグラビア印刷技術が含まれ、これらは、典型的には、ニトロセルロース又は水系インクを使用する。
【0094】
(上記の)外側ウェブは、SUPの外側を形成し、内側ウェブは、SUPの内側を形成する。当業者は、一般に、外側ウェブを、「印刷」ウェブと呼び、内側ウェブを、「シーラント」ウェブと呼ぶ。
【0095】
<積層/組立てプロセス>
積層構造体の組立てにおける1つの工程では、第1のウェブを第2のウェブに積層することが必要である。積層工程には、多くの市販の技術があり、これらには、液体接着剤(溶剤系、無溶媒系、又は水系であってもよい)、ホットメルト接着剤、及び熱接着の使用が含まれる。
【0096】
上記のSUP包装容器は、積層加工されている。同様のSUPが、(積層SUPと同じ層に同じ材料を用いて)共押出しによって調製され得ることが、当業者によって理解されるであろう。しかしながら、積層SUPは、ウェブ境界面で印刷することができる(一方、coex SUPは、スキン層に印刷される)。したがって、積層SUPの方が、印刷品質(及び耐擦傷性)に優れている。
【0097】
一実施形態では、内側ウェブBは、ウェブAの厚さに等しい総厚さを有する。他の実施形態では、ウェブBは、外側ウェブAの約2倍の厚さから外側ウェブAの5倍の厚さまでであってもよい。
【0098】
一実施形態では、内側ウェブの総厚さは、1.3~6.0ミル、1.8~2.6ミル、又は例えば、2.0~2.5ミルである。
【0099】
一実施形態では、第1層の厚さは、(3つの層の合計の厚さの)10~20%までであり、第2層の厚さは40~70%であり、第3層の厚さは10~15%であり、第4層は10~20%であり、第5層は10~20%である。しかし、当業者であれば、最大9層の装置を使用すると、より多くの層が利用可能であるため、構造のさらなる分割を達成できることを認識するであろう。第1層及び第2層は、シール特性に直接関与しないシーラントウェブの特性を変更するために、成分を追加して複数の層にさらに分割され得ることに留意されたい。このような特性には、水分バリアが含まれてもよく、又はシーラントウェブ全体のPCR含有量を増加させたいという要望が含まれてもよい。総層数の最大数は、(共押出インフレーションフィルムラインとして知られている)押出ユニットで可能な層の数によって制限される。さらに、当業者であれば、例えば、9層を作製することができる各押出ユニットが、より少ない層からなるフィルムを作製するために使用され得ることを認識するであろう
【0100】
別の実施形態では、内側ウェブはバリア層をさらに含み、バリア層は、第1-B層と第2-B層との間に位置する。いくつかの実施形態では、バリア層はEVOHを含み、バリア層の総重量は、EVOHの合計重量及び完全な構造体で使用されるポリエチレンの総重量に基づいて、5重量%未満であることをさらに条件とする。別の実施形態では、第1のタイ層がバリア層の一方の側に位置し、第2のタイ層がバリア層の他方の側に位置するように、2つのタイ層が含まれる。
【0101】
他の実施形態では、外側ウェブAは、約1~約1.4ミルの厚さを有してもよく、内側ウェブは、約2~約3ミルの厚さを有してもよい。
【0102】
別の実施形態では、外側ウェブは、HDPE(例えば、約0.8ミルの厚さを有する)から作製される外側スキン層と、例えば、約0.4ミルの厚さを有するLLDPEの層とを含む。この実施形態では、内側層は、A/B/C構造であってもよく、ここで、層Aは、LLDPE(例えば、約0.4ミルの厚さを有する)から作製され、層Bは、核形成されたHDPE(例えば、約1.5ミルの厚さを有する)であり、層Cは、例えば、約0.3ミルの厚さを有するシーラント樹脂(VLDPEなど)である。
【0103】
上記の厚さは、SUPの物理的特性を変更するために容易に変更され得ることが、当業者によって認識されるであろう。例えば、(より剛性の高いSUPの製造が望まれる場合は、)HDPE層の厚さを増加させることができ、又は耐衝撃性を改善するために、LLDPE層の厚さを増加させることができる。
【0104】
積層構造体(すなわち、外側ウェブ及び内側ウェブ)の合計の厚さは、一実施形態では、約3~約4ミルである。次いで、SUPは、当業者に既知の技術及び機械を使用して、積層構造体から調製される。一実施形態では、積層構造体は、ヒートシールを使用してシールされて、SUPを形成する。別の実施形態では、シールは、超音波シールを使用して形成することができる。
【実施例
【0105】
SUP包装容器の特性を評価するための試験手順を、以下に簡単に説明する。
1. メルトインデックス:「I」は、ASTM D1238に準拠して決定した。[注:I測定は、190℃で2.16kgの重量を用いて行う。]試験結果は、グラム/10分の単位で、又は代わりに、デシグラム/分(dg/分)の単位で報告する。
2. 密度は、ASTM D792に準拠した変位法を使用して決定した。
3. 光沢は、ASTM D2457によって決定した。
4. ヘイズは、ASTM D1003によって決定した。
【0106】
<材料リスト>
以下のポリエチレンを実施例で使用した。
【表1】
【0107】
先頭記号ZNは、ポリエチレンが、チーグラーナッタ触媒系を用いて調製されたことを示す。先頭記号SSCは、ポリエチレンが、シングルサイト触媒系を用いて調製されたことを示す。(nuc)という用語は、樹脂が、核形成剤(目標点1200重量ppmの、Milliken Chemicalsによって商標HYPERFORM(登録商標)20Eの下で販売されている市販の核形成剤)を含有していることを示す。
【0108】
<外側ウェブ>
4枚のインフレーションフィルムを、スタンドアップパウチの外側ウェブの候補として、調製した。これらのフィルムは、従来のインフレーションフィルムラインで調製した。すべてのフィルムの合計の厚さは、2.35ミル(0.059mm)であった。フィルム1.1及び1.4は、1種類の樹脂のみから作製された。フィルム1.2、1.3、及び1.5は、HDPEとMDPE又はLLDPEのいずれかとを含む多層構造であった。これらの各フィルムの縦方向(MD)及び横方向(TD)の剛性値(g/cmで表す)を表1に示す。多層フィルムにおけるZN-1層の厚さは1.15ミルであった。
【0109】
シール試験は、設定された圧力と温度で一定時間、2つのフィルム片を一緒に(シーラント層からシーラント層に)プレスすることによって、完了した。温度を変化させて、指定された/最小のシール強度を提供するために必要な最小シール温度を決定した(シール開始温度として報告される)。(ポリマーの溶融/破損により)シール強度が低下し始めるまで、シール温度を上昇させる。結果を図にプロットする。
【0110】
シール強度は、シールを引き離し、そのために必要な力を記録する機器によって決定される。いくつかのシール特性を決定するための試験方法を、以下に示す。
【0111】
<シール強度>
シール強度試験は、その目的のために設計され、INTSTRUME(商標)5-Head Universal Testerという商品名で販売されている機器で実施した。試験は、機器メーカーが推奨する手順に概ね従って実施した。
【0112】
<ホットタック>
ホットタックは、完全に冷却される前に負荷に耐えるシールの能力の尺度であり、この機能は、フォームフィル及びシール包装にとって重要である。
【0113】
試験は、前記の目的のために設計され、J&B Hot Tack Testerという商品名で販売されている機器を使用して実施した。試験は、機器メーカーが推奨する手順に概ね従って実施した。具体的な条件を以下に要約する。
シール圧力: 0.27N/mm
シール時間: 0.5秒
冷却時間: 0.5秒
クランプ分離速度: 200mm/秒
ピールオフセット: 5mm
試料の幅: 25mm
試料の長さ: 8mm
【0114】
【表2】
【0115】
単一のシーラント層を有する(比較)内側ウェブを、表3に示す。
【表3】
【0116】
2層シーラント系(層3及び層4)を備えた本発明の内側ウェブを、表4に示す。層4はシーラント層(スキン層)であり、層3は「隣接する」層である。
【表4】
【0117】
内側ウェブに適した別の4層フィルムを、表5に示す。ここでも、層4はシーラント層であり、層3は「隣接する」層である。
【表5】
【0118】
内側ウェブに適した5層フィルムを、表6に示す。層5はシーラント層であり、層4は「隣接する」層である。
【表6】
【0119】
内側ウェブの7層フィルムの例を、表7~表9に示す。層7はシーラント層であり、層6は「隣接する」層である)。
【0120】
【表7】
【0121】
【表8】
【0122】
【表9】
【0123】
表8に示す構造は、シール特性とホットタック特性、光学特性と硬性のバランスが非常に良好である。SSC-1をZN-1に置き換えることにより、光学特性を改善(ヘイズを低減)することが可能であるが、これは硬性とMVTRの低下という犠牲を払って行われる。
【0124】
表9に示す構造は、シール特性とホットタック特性、光学特性と硬性のバランスが非常に良好である。SSC-1をZN-1に置き換えることにより、光学特性を改善(ヘイズを低減)することが可能であるが、これは硬性とMVTRの低下という犠牲を払って行われる。
【0125】
図1は、コールドシールプロファイルの強化をグラフで示している。
【0126】
【表10】
【0127】
<完成した積層構造体>
完成した積層構造体は、第1の(外側)ウェブを第2の(内側)ウェブに積層することによって調製される。
表10は、2つの完成した構造体の代表的なデータを示している。
【産業上の利用可能性】
【0128】
ポリエチレンから作製されたスタンドアップパウチ(SUP)には、SUPの製造と使用を改善するためのシール構造が組み込まれている。SUPは、多種多様な消費財を包装するのに有用である。
図1
図2