(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】風力タービンのギヤ組立体の組立又は分解
(51)【国際特許分類】
F03D 80/50 20160101AFI20240912BHJP
F03D 15/00 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
F03D80/50
F03D15/00
(21)【出願番号】P 2022523873
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 DK2020050267
(87)【国際公開番号】W WO2021078341
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-13
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ヤンベー ヤンバハ,ノエル
(72)【発明者】
【氏名】ルビアン ベレコ,ショセ
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178326(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0036609(US,A1)
【文献】特開2000-337245(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103711656(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102004004351(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
F03D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(10)のギヤ組立体(20)を組立又は分解する方法であって、
前記ギヤ組立体(20)は、第1ヘリカルギヤ(28)と、前記第1ヘリカルギヤ(28)と回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤ(24)とを備え、
前記方法は
、
前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転軸に沿った、前記第2ヘリカルギヤ(24)に対する軸方向速度での前記第1ヘリカルギヤ(28)の軸方向移動と、
前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記回転軸を中心とした前記第2ヘリカルギヤ(24)に対する第1回転速度での前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転と、
を
発生させる制御信号であって、前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記軸方向移動及び回転を同時に発生させて、前記第1ヘリカルギヤ(28)と前記第2ヘリカルギヤ(24)の係合又は係合解除をする制御信号を送信するステップを有し、
前記軸方向速度及び前記第1回転速度の一方は所定の速度であり、前記軸方向速度及び前記第1回転速度の他方は前記所定の速度に応じて決定され、
前記制御信号は、
前記制御信号に依存して、前記第1ヘリカルギヤ(28)の軸方向移動を発生させるように構成された第1アクチュエータ(54)、及び、前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転を発生させるように構成された第2アクチュエータ(78)に送信されることを特徴とする風力タービン(10)のギヤ組立体(20)を組立又は分解することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1回転速度は、前記第1ヘリカルギヤ(28)及び/又は第2ヘリカルギヤ(24)の幾何学的パラメータに依存して決定される、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記幾何学的パラメータは、歯幅、らせん角、チルト角、ピッチ直径の内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御信号は、前記第1ヘリカルギヤ(28)の軸方向移動及び回転を実質的に同時に開始させる、ことを特徴とする請求項1から
3までのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ギヤ組立体(20)と係合し、前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記軸方向移動及び回転を
発生させるように制御されるように構成された
係合部(48)を備える昇降ツール(40)を提供し、
前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記軸方向移動及び回転に先立って、前記第2ヘリカルギヤに対
し前記
第1ヘリカルギヤ(28)を軸方向に整列するように制御信号を送信することを特徴とする請求項1から
4までのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ギヤ組立体を組み立てる際に、前記第2ヘリカルギヤ(24)に対する前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記軸方向移動及び回転の前に、前記第1ヘリカルギヤ(28)の溝を前記第2ヘリカルギヤ(24)の歯に位置合わせすることを含むことを特徴とする請求項1から
5までのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ギヤ組立体(20)は、
前記第1ヘリカルギヤ(28)を遊星ギヤとして支持するキャリアに太陽ギヤとして連結された第3ヘリカルギヤ(32)と、前記第3ヘリカルギヤ(32)と回転可能に係合するように構成された第4ヘリカルギヤとを備え
、
前記第3ヘリカルギヤ(32)の回転軸に沿った前記第4ヘリカルギヤに対する軸方向速度での前記第3ヘリカルギヤ(32)の軸方向移動と、
前記第3ヘリカルギヤ(32)の回転軸を中心とした前記第4ヘリカルギヤに対する第3回転速度での前記第3ヘリカルギヤ(32)の回転であって、前記第3回転速度は
前記第1回転速度とは異なり前記所定の速度に応じて決定され
る回転と、
を
発生させる前記制御信号を送信するステップを有し、
前記制御信号は、前記第3ヘリカルギヤ(32)の前記軸方向移動及び回転を、前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記軸方向移動及び回転と同時に発生させて、前記第3ヘリカルギヤ及び前記第4ヘリカルギヤを係合又は係合解除することを特徴とする請求項1から
6までのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ギヤ組立体(20)は、前記第1ヘリカルギヤ(28)を支持し、前記第3ヘリカルギヤ(32)に結合される遊星キャリア(30)を含み、前記方法が、前記制御信号を送信して、前記遊星キャリアの回転を
発生させ、前記回転軸を中心とする前記第3ヘリカルギヤ(32)の回転を
発生させることを含むことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
風力タービン(10)のギヤ組立体(20)を組立又は分解するためのコントローラであって、前記ギヤ組立体(20)は、第1ヘリカルギヤ(28)と、前記第1ヘリカルギヤ(28)と回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤ(24)と
、前記第1ヘリカルギヤ(28)を第2ヘリカルギヤ(24)に対して軸方向に移動させる第1アクチュエータ(54、56)と、前記第2ヘリカルギヤ(24)に対し前記第1ヘリカルギヤ(28)を回転させる第2アクチュエータ(78)とを含み、
前記コントローラ(100)は、
前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転軸に沿った前記第2ヘリカルギヤ(24)に対する前記第1ヘリカルギヤ(28)の軸方向速度と、前記第2ヘリカルギヤ(24)に対する前記第1ヘリカルギヤ(28)の第1回転速度の一方を示すデータを受信し、
受信した前記データに応じて前記軸方向速度と前記第1回転速度の他方を決定し、
前記第1ヘリカルギヤ(28)を前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転軸に沿って前記軸方向速度で軸方向移動させ、前記第1ヘリカルギヤ(28)を前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記回転軸を中心として前記第2ヘリカルギヤ(24)に対して相対的に前記第1回転速度で回転させる制御信号を
前記第1及び第2のアクチュエータに送信する
ように構成され、
前記制御信号は、前記第1ヘリカルギヤ(28)の前記軸方向移動及び回転を同時に発生させて、前記第1ヘリカルギヤ(28)及び前記第2ヘリカルギヤ(24)を係合又は係合解除するように構成されていることを特徴とするコントローラ。
【請求項10】
風力タービン(10)のギヤ組立体(20)を組立又は分解するための昇降ツールであって、
前記ギヤ組立体は、第1ヘリカルギヤ(28)と、前記第1ヘリカルギヤ(28)と回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤ(24)とを含み、
前記昇降ツール(40)は、
支持フレーム(42)と、前記ギヤ組立体(20)と係合するように構成された係合手段(48)とを有する支持フレーム(42)と、
前記ギヤ組立体(20)のハウジング(26)に取り付けられ、前記支持フレーム(42)と係合するように配置されたガイド組立体(50)と、
前記ガイド組立体(50)によってガイドされる前記支持フレーム(42)の軸方向移動を引き起こすように構成された第1アクチュエータ(54)と、
前記支持フレーム(42)に対して前記係合手段(48)を回転させるように構成された第2アクチュエータ(78)と、
を有し、
前記係合手段(48)が前記ギヤ組立体(20)と係合しているときに、前記第1アクチュエータ(54)は、前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転軸に沿って、前記第2ヘリカルギヤに対して相対的な軸方向速度で前記支持フレーム(42)及び前記第1ヘリカルギヤを軸方向移動させるように制御可能であり、前記第2アクチュエータ(78)は、前記第1ヘリカルギヤ(28)の回転軸を中心として、前記第2ヘリカルギヤ(24)に対して相対的な第1回転速度で、前記係合手段(48)及び前記第1ヘリカルギヤ(28)を回転させるように制御可能であり、
前記軸方向速度及び前記第1回転速度の一方は所定の速度であり、前記軸方向速度及び前記第1回転速度の他方は前記所定の速度に依存して決定され、前記第1及び第2アクチュエータ(54、78)は、それぞれの軸方向移動及び回転を同時に発生させて前記第1及び第2ヘリカルギヤ(28、24)を係合又は係合解除するように制御可能であることを特徴とする昇降ツール。
【請求項11】
前記ギヤ組立体(20)は、第3ヘリカルギヤ(32)と、前記第3ヘリカルギヤ(32)と回転可能に係合するように構成された第4ヘリカルギヤとを備え、
前記係合手段(48)は、前記第1ヘリカルギヤ(28)に係合するように配置された第1ヘリカルギヤ係合部(74)と、前記第3ヘリカルギヤ(32)に係合するように配置された第3ヘリカルギヤ係合部(76)とを備え、前記第2アクチュエータ(78)は、前記第1ヘリカルギヤ係合部(74)を回転させるように配置され、前記昇降ツール(40)は、前記第3ヘリカルギヤ係合部(76)を回転させるように配置された第3アクチュエータ(92)を備え、
前記第3アクチュエータ(92)は、前記第3ヘリカルギヤ(32)の回転軸の回りで前記第4ヘリカルギヤに対して相対的な第3回転速度で前記第3ヘリカルギヤ(32)を回転させるように制御可能であり、前記第3回転速度は前記所定の速度に応じて決定され、
前記第3アクチュエータ(92)は、前記第3及び第4ヘリカルギヤと係合又は係合解除するために、前記第1及び第2アクチュエータ(54、78)の少なくとも一方と同時に動作するように制御可能であることを特徴とする請求項
10に記載の昇降ツール。
【請求項12】
前記第1ヘリカルギヤ(28)は、前記ギヤ組立体(20)の第1ギヤセット(22)の遊星ギヤであり、前記第2ヘリカルギヤ(24)は、前記第1ギヤセット(22)のリングギヤであり、前記第3ヘリカルギヤ(32)は、前記ギヤ組立体(20)の第2ギヤセットの太陽ギヤであり、前記第4ヘリカルギヤは、前記第2ギヤセットの遊星ギヤであり、前記ギヤ組立体(20)は、前記第1ギヤセット(12)の遊星ギヤを支持し、前記第2ギヤセットの太陽ギヤに連結された遊星キャリア(30)を含み、
前記第1ヘリカルギヤ係合部(74)は、前記第1ギヤセット(22)の前記遊星ギヤ(28)と係合するように配置されたダミー太陽ギヤを含み、前記第3ヘリカルギヤ係合部(76)は、前記遊星キャリア(30)と回転可能に係合して前記第2ギヤセットの前記太陽ギヤ(32)を回転させるように構成されることを特徴とする請求項
11に記載の昇降ツール。
【請求項13】
前記昇降ツールは、前記昇降ツール(40)を前記昇降ツール(40)を所定の位置に移動させるためのクレーンに連結するために、前記支持フレーム(40)に取り付けられた連結手段(60)を含み、
前記連結手段(60)は、前記支持フレーム(40)に取り付けられるように配置され、前記支持フレーム(40)を前記連結手段に対して移動させるように配置された取り付け部材を含み、前記昇降ツール(40)は、前記支持フレーム(40)の長手方向軸に沿って前記支持フレーム(40)を前記連結手段(60)に対して移動させて前記昇降ツール(40)のチルト角を調整するように配置された第4アクチュエータ(68)を含むことを特徴とする請求項
10から
12までのいずれか一項に記載の昇降ツール。
【請求項14】
第1ヘリカルギヤ(28)と、前記第1ヘリカルギヤ(28)と回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤ(24)とを有するギヤ組立体(20)を含む風力タービン(10)と、
前記ギヤ組立体(20)を組立又は分解するための請求項
10から
13までのいずれか一項に記載の昇降ツール(40)と、
前記昇降ツール(40)を前記ギヤ組立体(20)に対して所定の位置に移動させるためのクレーンを有することを特徴とする風力タービン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、風力タービンのギヤ組立体の組立又は分解に関し、特に、ヘリカルギヤを有するギヤ組立体の組立又は分解に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用の風力発電機は、従来から広く知られている。発電容量を増大させるために、風車のサイズと規模の大型化が進んでいる。典型的な風力タービンは、ナセルを支持するタワー、ロータハブ、及びロータハブに接続された複数のロータブレードを有する。
【0003】
多くの風力タービンは、ナセルに収容されたギヤ組立体を含むギヤボックスを有する。特に、ギヤ組立体は、ロータハブと風力タービンの発電機との間に位置し、ギヤ組立体は、ロータ及びロータブレードに連結された主軸の比較的低い回転速度を、発電機に連結された発電機シャフトの比較的高い回転速度に上げるように作用する。
【0004】
風力タービンのギヤ組立体は、通常、いくつかの構成部品を含む。例えば、ギヤ組立体は、太陽ギヤ、複数の遊星ギヤ及びリングギヤをそれぞれ含む1つ以上の遊星ギヤ装置を含むことができ、これらのギヤは、互いに回転可能に係合するように構成されたヘリカルギヤである。
【0005】
ギヤ組立体は、「アップタワー」、つまり、ギヤ組立体がナセルの風力タービンタワーの上部の位置にある状態で、組み立て又は分解する必要がある場合がある。例えば、ギヤ組立体又は風力タービンの他の部分のメンテナンスを実施するため、又はギヤ組立体の特定の構成部品を交換するために、ギヤ組立体の構成部品を互いに係合又は係合解除する必要がある場合がある。
【0006】
ギヤボックス組立体全体をナセルから取り外すことなく特定のギヤ構成部品を取り外すことによって、取り外しを実施するためのより小さなクレーンを使用することができ、これによりメンテナンスを実施するコストを低減することができる。しかしながら、特定のギヤ構成要素、例えば、ヘリカルギヤを互いに係合解除することは、構成要素に生じる損傷を防止するための精度を必要とする。たとえば、1つのヘリカルギヤを回転させずに別のヘリカルギヤから取り外すことは困難である。風力タービンの上部にある比較的大きく重い部品のこのような精密な制御は、単にギヤの重量を支持するように設計されたクレーン及び/又はツールを使用する熟練オペレータによるギヤの手動制御を必要とする。ギヤに生じる損傷を防止するために、このような手動操作は、典型的には、オペレータが、ギヤが互いに分離されるまで、ギヤに小さな交互の回転及び並進調整を行うことを含み、これには時間がかかることがある。
【0007】
風力タービン上でギヤ組立体を組み立てたり分解したりするための公知の方法及びツールは、必要な精蜜さ、精度及び制御の程度を提供していない。
【0008】
本発明はこのような背景に対してなされたものである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、風力タービンのギヤ組立体を組立又は分解する方法を提供する。ギヤ組立体は、第1ヘリカルギヤと、前記第1ヘリカルギヤと回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤとを備える。本発明の方法は、制御信号を送信して、第1ヘリカルギヤの回転軸に沿って、第2ヘリカルギヤに対して軸方向速度で第1ヘリカルギヤの軸方向移動と、前記第1ヘリカルギヤの回転軸を中心とした前記第2ヘリカルギヤに対する第1回転速度での前記第1ヘリカルギヤの回転を引き起こす。前記軸方向速度及び前記第1回転速度の一方は所定の速度であり、前記軸方向速度及び前記第1回転速度の他方は前記所定の速度に依存して決定される。前記制御信号は、前記第1ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転を同時に発生させて前記第1ヘリカルギヤ及び前記第2ヘリカルギヤを係合又は係合解除することを特徴とする。
【0010】
回転速度及び軸方向速度は、第1ヘリカルギヤのそれぞれの軸方向移動及び回転を同時に発生させて、第1ヘリカルギヤ及び第2ヘリカルギヤを滑らかに、速く、かつ制御された方法で係合又は係合解除するように制御することができる。これは、回転及び軸方向移動が別々の連続した段階で行われることを必要とするギヤ組立体を組み立てる又は分解する公知の方法とは対照的である。
【0011】
制御信号は、制御信号に依存して第1ヘリカルギヤのそれぞれの軸方向移動及び回転を引き起こすように構成された第1及び第2アクチュエータに伝達され得る。制御信号は、予め定められた分解方法のアセンブリに従ってアクチュエータを制御することができる。各アクチュエータは、ステップモータ、例えばブラシレスDC電気モータを備えてもよく、このステップモータは、360度の回転を多数の等しいステップに分割し、これにより、回転方向及び軸方向の両方における第1ヘリカルギヤの速度及び相対位置を高精度に制御することができる。
【0012】
第1回転速度は、第1及び/又は第2ヘリカルギヤの幾何学的パラメータに依存して決定することができる。このような幾何学的パラメータは、ヘリカルギヤのねじれ角を規定し、これにより、ギヤ組立体の組立又は分解中に第2ヘリカルギヤと接触しないように第1ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転を制御することができる。幾何学的パラメータは、歯幅、らせん角、チルト角、そして、ピッチ直径の少なくとも1つを含むことができる。
【0013】
制御信号は、第1ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転を実質的に同時に開始させることができる。各アクチュエータは、軸方向及び回転方向の両方で第1ヘリカルギヤの瞬間的かつ同時の動きを引き起こすように制御されてもよい。
【0014】
この方法は、ギヤ組立体と係合し、第1ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転を引き起こすように制御されるように構成された昇降ツールを提供すること、及び、第1ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転の前に、第2ヘリカルギヤに対する昇降ツールのチルト角を調整させるように制御信号を送信することを含むことができる。昇降ツールのチルト角、したがってギヤ組立体を制御することは、組立又は分解プロセスの間に第1及び第2ヘリカルギヤを都合よく整列させ、それによってギヤ組立体のヘリカル機構への損傷を防止する。
【0015】
この方法は、ギヤ組立体を組み立てる際に、第2ギヤヘリカルギヤに対する第1ヘリカルギヤの軸方向及び回転方向の移動の前に、第1ヘリカルギヤの溝を第2ヘリカルギヤの歯に位置合わせするステップを含むことができる。あるいは、第2ヘリカルギヤの溝を第2ヘリカルギヤの歯と位置合わせしてもよい。この第1、第2ヘリカルギヤの螺旋パターンの初期位置ずれにより、各螺旋パターンの歯同士の当接が防止され、組立工程における歯の損傷が防止される。
【0016】
ギヤ組立体は、第3ヘリカルギヤと、第3ヘリカルギヤと回転可能に係合するように構成された第4ヘリカルギヤとを含むことができる。この方法は、制御信号を送信して、第3ヘリカルギヤの回転軸に沿って、第4ヘリカルギヤに対して軸方向速度で第3ヘリカルギヤを軸方向に移動させ、及び、前記第3ヘリカルギヤの回転軸を中心とした前記第4ヘリカルギヤに対する第3回転速度で前記第3ヘリカルギヤを回転させる。前記第3回転速度は前記所定速度に応じて決定され、前記第3回転速度は前記第1回転速度とは異なる。前記制御信号は、前記第3ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転を前記第1ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転と同時に発生させて、前記第3ヘリカルギヤと前記第4ヘリカルギヤを係合又は係合解除する。
【0017】
有利には、本方法は、同じギヤ組立体内の2つのギヤ対の円滑な係合及び/又は解除を提供する。特に、第1ヘリカルギヤ及び第3ヘリカルギヤの回転速度(すなわち、第1及び第2回転速度)と軸方向速度とを互いに独立して制御することができ、ギヤ組立体の組立又は分解を同時に行うことができる。
【0018】
ギヤ組立体の別の例示的な構成では、第1及び第3ヘリカルギヤは、それらが異なる軸方向速度で並進され得るように配置されてもよい。したがって、第1ヘリカルギヤの第2ヘリカルギヤに対する軸方向速度は、第4ヘリカルギヤに対して定義された第3ヘリカルギヤの軸方向速度と異なっていてもよいことが理解されよう。
【0019】
ギヤ組立体は、第1ヘリカルギヤを支持し、かつ第3ヘリカルギヤに結合された遊星キャリアを含むことができる。この方法は、遊星キャリアの回転を生じさせるために制御信号を送信し、その回転軸の周りに第3ヘリカルギヤの回転を生じさせることを含む。この例示的な構成によれば、第3及び第1ヘリカルギヤは、第3ヘリカルギヤの軸方向速度が第1ヘリカルギヤの軸方向速度と同じになるように、ギヤ組立体の取り外し可能な単一の部分として一緒に配置される。
【0020】
本発明のさらに別の態様によれば、風力タービンのギヤ組立体を組立又は分解するためのコントローラが提供される。ギヤ組立体は、第1ヘリカルギヤと、第1ヘリカルギヤと回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤとを備える。前記コントローラは、第1のヘリカルギヤの回転軸に沿った第2ヘリカルギヤに対する第1ヘリカルギヤの軸方向速度と、第2ヘリカルギヤに対する第1ヘリカルギヤの第1回転速度とのうちの1つを示すデータを受信し、受信したデータに応じて軸方向速度と第1回転速度の一方を決定し、及び、制御信号を送信して、第1ヘリカルギヤの回転軸に沿った軸方向速度で第1ヘリカルギヤの軸方向を生じさせ、第1ヘリカルギヤの回転軸を中心に、第2ヘリカルギヤに対して第1回転速度で第1ヘリカルギヤの回転を生じさせるように構成される。制御信号は、第1ヘリカルギヤの軸方向及び回転を同時に生じさせて、第1ヘリカルギヤ及び第2ヘリカルギヤを係合又は係合解除するように構成される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、風力タービンのギヤ組立体を組み立て又は分解するための昇降ツールが提供される。このギヤ組立体は、第1ヘリカルギヤと、第1ヘリカルギヤと回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤとを備える。この昇降ツールは、支持アームと、このギヤ組立体と係合するように構成された係合手段とを有する支持フレームと、ギヤ組立体のハウジングに取り付けられ、支持アームと係合するように配置されたガイド組立体と、ガイド組立体によって案内される支持フレームの軸方向移動を引き起こすように構成された第1アクチュエータと、支持アームに対する係合手段の回転を引き起こすように構成された第2アクチュエータを備える。前記係合手段が前記ギヤ組立体と係合しているときに、前記第1アクチュエータは、前記第1ヘリカルギヤの回転軸に沿って前記第2ヘリカルギヤに対して相対的な軸方向速度で前記支持フレーム及び前記第1ヘリカルギヤの軸方向移動を生じさせるように制御可能であり、前記第2アクチュエータは、前記第1ヘリカルギヤの回転軸を中心とする前記第2ヘリカルギヤに対して相対的な第1回転速度で前記係合手段及び前記第1ヘリカルギヤの回転移動を生じさせるように制御可能である。前記軸方向速度と前記第1回転速度の一方は所定の速度であり、前記軸方向速度と前記第1回転速度の他方は前記所定の速度に応じて決定される。前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータは、前記第1ヘリカルギヤと前記第2ヘリカルギヤとの係合又は係合解除のためにそれぞれの軸方向及び回転移動を同時に生じさせるように制御可能である。
【0022】
ギヤ組立体は、第3ヘリカルギヤ及び前記第3ヘリカルギヤと回転可能に係合するように構成された第4ヘリカルギヤを含むことができる。前記係合手段は、第1ヘリカルギヤと係合するように構成された第1ヘリカルギヤ係合部と、ギヤ組立体の第3ヘリカルギヤと係合するように構成された第3ヘリカルギヤ係合部とを含み、前記第2アクチュエータは第1ヘリカルギヤ係合部の回転を引き起こすように構成され、前記昇降ツールは第3ヘリカルギヤ係合部の回転を引き起こすように構成された第3アクチュエータを含む。前記第3アクチュエータは、前記第3ヘリカルギヤの回転軸を中心に、前記第4ヘリカルギヤに対する第3回転速度で前記第3ヘリカルギヤの回転を生じさせるように制御可能であり、前記第3回転速度は前記所定の速度に依存して決定され、前記第3アクチュエータは、前記第1及び第2アクチュエータと同時に動作して、前記第3及び第4カルギヤを係合又は係合解除するように制御可能である。
【0023】
第1ヘリカルギヤは、ギヤ組立体の第1ギヤセットの遊星ギヤであってもよく、第2ヘリカルギヤは、第1ギヤセットのリングギヤであり、第3ヘリカルギヤは、ギヤ組立体の第2ギヤセットの太陽ギヤであり、第4ヘリカルギヤは、第2ギヤセットの遊星ギヤである。ギヤ組立体は、前記第1ギヤ組立体の前記遊星ギヤを支持し、前記第2ギヤセットの太陽ギヤに連結される遊星キャリアを含む。前記第1ヘリカルギヤ係合部は、前記第1ギヤセットの前記遊星ギヤと係合するように配置されたダミー太陽ギヤを含み、前記第3ヘリカルギヤ係合部は、前記遊星キャリアと回転可能に係合して前記第2ギヤセットの前記太陽ギヤを回転移動させるように構成されている。
【0024】
昇降ツールは、昇降ツールを所定の位置に移動させるためのクレーンに昇降ツールを結合するために支持フレームに取り付けられた結合手段を含む。結合手段は、支持フレームに取り付けられるように配置され、結合手段に対する支持フレームの移動を可能にするように配置された取り付け部材を含む。昇降ツールは、支持フレームの長手方向軸に沿った結合手段に対する支持フレームの移動を可能にし、昇降ツールのチルト角を調節するように配置された第4アクチュエータを含む。
【0025】
本発明のさらに別の態様によれば、第1ヘリカルギヤと該第1ヘリカルギヤと回転可能に係合するように構成された第2ヘリカルギヤとを有するギヤ組立体と、ギヤ組立体の組立て又は分解のための前出の段落に記載の昇降ツール、及び、昇降ツールを前記ギヤ組立体に対して所定の位置に移動させるためのクレーンを含む風力タービンが提供される。
【0026】
上記は、含まれてもよい昇降ツール制御装置の特定のサブシステム、及び制御装置とのこれらのサブシステムの構成に関する可能性の一部のみを表していることが理解されよう。従って、他の又は追加のサブシステム及びサブシステム構成を含む昇降ツール制御システムの実施形態は、本発明の範囲内にとどまることがさらに理解されよう。追加のサブシステムは、例えば、風力タービン発電機の操作に関連するシステムを含むことができる。
【0027】
上述の命令のセット(又は方法ステップ)は、限定されるものではないが、磁気記憶媒体(例えばフロッピーディスク)、光学記憶媒体(例:CD-ROM)、磁気光学記憶媒体、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能プログラマブルメモリ(例:EPROM、EEPROM)、フラッシュメモリ、又はそのような情報/命令を保存するための電気又はその他のタイプの媒体を含む、機械又は電子プロセッサ/計算装置によって読み取り可能な形式で情報を記憶するための任意の機構を含むことができるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えば、固定記憶媒体)に埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【
図1】ナセル及び複数のロータブレードを含む風力タービンを示す図である。
【
図2】
図1のナセルに収容されたギヤ組立体と、ギヤ組立体の取り外し可能な部分に取り付けられた昇降ツールを示す図である。ギヤ組立体は分解された状態で示されている。
【
図3】(a)及び(b)は、それぞれ、ギヤ組立体の取り外し可能な部分に取り付けられ、ギヤ組立体の残りの部分から切り離された、
図2の昇降ツールの斜視図及び側面図である。
【
図4】(a)及び(b)は、ギヤ組立体が組み立てられた構成にある場合の、
図2のギヤ組立体及び昇降ツールの斜視図及び側面図である。
【
図5】
図2の昇降ツールの一部を示し、特に、昇降ツールの支持アーム及び係合部分を示す図である。
【
図6】(a)及び(b)は、
図5の昇降ツール係合部分の斜視図である。
【
図7】ギヤ組立体に取り付けられた
図2の昇降ツールの一部の斜視図である。
【
図8】昇降ツールをクレーンに連結するための
図2の昇降ツールの連結部材を示す図である。
【
図9】
図2の昇降ツールの動作を制御するためのコントローラを示す図である。
【
図10】
図9のコントローラによって実行される方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
図1は、タワー12を含む風力タービン10と、タワー12の上部に回転可能に結合されたナセル14と、ナセル14に取り付けられたロータハブ16を含むロータと、ロータハブ16に結合された複数の風力タービンロータブレード18(上述の例では3つのロータブレード)とを示す。ナセル14及びロータブレード18は、ヨー・システムによって風向に向けられる。ナセル14は、発電機、ギヤボックス、ドライブトレイン、及びブレーキ組立体などの風力タービン10の発電用部品(図示せず)と、電力網に供給するために風の運動エネルギーを電気的なエネルギーに変換する変換装置とを収容している。風力タービン10は、運転に適した完全装備の状態で示されている。特に、ロータハブ16はナセル14に取り付けられ、各ブレード18はロータハブ16に取り付けられる。
【0030】
図2は、風力タービン10のギヤ組立体20を示す。このギヤ組立体は、ナセル14に収容されている。特に、ギヤ組立体20は遊星ギヤボックスのサブアセンブリであり、具体的には、ギヤ組立体20は二つの遊星ギヤセットを含む。前記ギヤセットのうちの第1のもの22は、ギヤ組立体20のハウジング26によって画定されるリングギヤ24と、リングギヤ24と係合するための複数の―この例では3つの―遊星ギヤ28と、遊星ギヤ28を支持又は担持する(遊星ギヤキャリアとも呼ばれる)遊星キャリア30と、遊星キャリア30内に収容され、遊星ギヤ28と係合するための太陽ギヤ(図示せず)とを含む。
図2において、遊星ギヤ28及び遊星キャリア30は、リングギヤ24から係合解除されている。
【0031】
ギヤセットのうちの第2のものは、第1ギヤセット22の遊星キャリア30に連結された太陽ギヤ32を含む。
図2において、太陽ギヤ32は、ハウジング26内にある第2ギヤセット(図示せず)の残り部分から外れている。特に、太陽ギヤ32は、第2ギヤセットの複数の遊星ギヤと係合するためのものである。
【0032】
第1ギヤセット22の遊星ギヤ28及び遊星キャリア30、及び第2ギヤセットの太陽ギヤ32の構成は、ギヤ組立体20の残りの部分から分離されたギヤを示す
図3(a)及び
図3(b)に示されている。
図4(a)及び
図4(b)において、ギヤ組立体20は、複数の遊星ギヤ28が第1ギヤセット22の対応するリングギヤ24と係合し、太陽ギヤ32が第2ギヤセットの複数の遊星ギヤと係合する組み立てられた構成で示されている。
【0033】
第1及び第2ギヤセットのギヤ24、28、32は、ヘリカルギヤの形態であり、すなわち、各ギヤは、螺旋角度を規定する一連の係合歯及び溝を含む。各ギヤのねじれ角は、少なくとも部分的に、ねじれ角の「値」及び「方向」によって定義される。
【0034】
ねじれ角の値は、ねじれの長手方向(すなわち、らせんギヤの歯又は溝の1つ)に対する接線とギヤの回転軸との間で測定されます。ねじれ角の方向は、ねじれ角のカット方向が右回りか左回りかによって定義されます。互いにかみ合うギヤのねじれ角は、互いに「対応する」ように配置される。すなわち、例えば2つの外ギヤが噛み合っている場合には、噛み合っているギヤのねじれ角の値は同じであるが、反対のねじれ角の方向を有しており、一方、例えば内ギヤと外ギヤが噛み合っている場合には、噛み合っているギヤのねじれ角の方向は同じである。
【0035】
図2、
図3(a)及び
図3(b)は、リングギヤ24のねじれ角34のねじれ角方向が遊星ギヤ28のねじれ角36のねじれ角方向と等しく、これらのねじれ角34、36が同じ角度値を有することを示している。このようにして、リングギヤ24のねじれ角34は、遊星ギヤ28のねじれ角36に対応し、遊星ギヤ28(第1ギヤ28とも呼ばれる)は、リングギヤ24(第2ギヤ24とも呼ばれる)と回転可能に係合することができる。
【0036】
第1ギヤセット22の太陽ギヤ(図示せず)は、リングギヤのねじれ角34及び遊星ギヤ28のねじれ角36の方向とは逆のねじれ角方向を有する。リングギヤ24のねじれ角34及び遊星ギヤ28のねじれ角36は、右回りの方位を有するものとして定義される。第1ギヤセット22の遊星ギヤ、リングギヤ、及び太陽ギヤのねじれ角はすべて、例示的な実施形態では8度である同じねじれ角値を有する。螺旋ギヤは、本発明の異なる例示的な構成に従って、異なる螺旋角度を含むことができることが理解されよう。
【0037】
同様に、第2ギヤセットでは、太陽ギヤ32のねじれ角38は、遊星ギヤ(図示せず)のねじれ角に対応し、太陽ギヤ32は、第3ギヤ32とも呼ばれ、第2ギヤセットの遊星ギヤ(第4ギヤとも呼ばれる)と回転可能に係合することができる。したがって、太陽ギヤ32のねじれ角38の向きは、遊星ギヤのねじれ角の向きとは反対であるが、同じねじれ角の値で構成されている。
【0038】
さらに、第1ギヤセット22のリングギヤ24及び遊星ギヤ28のねじれ角34、36は、第2ギヤセットの太陽ギヤ32のねじれ角38と異なる。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、第1及び第2ギヤセットのヘリカルギヤは、対応する螺旋角度で構成することができることが理解されよう。
【0039】
ここに記載される例示的な配置によれば、第1ギヤセット22のヘリカルギヤ24、28は、第2ギヤセットのヘリカルギヤ32のものとは異なるピッチ直径及び歯/溝幅で配置される。しかしながら、第1及び第2ギヤセットのヘリカルギヤは、本発明の範囲から逸脱することなく、実質的に同じピッチ直径及び歯/溝幅で構成することができることが理解されよう。
【0040】
引き続き
図2、
図3(a)、
図3(b)、
図4(a)及び
図4(b)を参照し、さらに
図5を参照すると、ギヤ組立体20を組み立て又は分解するために、昇降ツール40が提供される。すなわち、昇降ツール40は、ギヤ組立体20の少なくとも一部を、(
図2に示す)非係合構成から(
図4(a)及び
図4(b)に示す)係合構成へ、又はその逆へ移動させるためのものである。
【0041】
昇降ツール40は、垂直アーム44と水平アーム46とを有する支持フレーム42を備え、垂直アーム44の上端が水平アーム46に連結されている。支持フレーム42の垂直アーム44は、その下端部が支持フレーム42の係合部48に接続又は取り付けられ、係合部48はギヤ組立体20と係合するためのものである。
【0042】
特に
図2、
図4(a)及び
図4(b)を参照し、さらに
図7を参照すると、昇降ツール40は、ギヤ組立体20のハウジング26に取り付けられたガイド組立体50を含む。ガイド組立体50は、支持フレーム42と結合するためのガイド部品52を有する。特に、ガイド構成要素52は、支持フレーム42の一部がそれを通して受容されて、支持アーム42とガイド構成要素52との間で、ギヤ組立体20の軸方向、すなわち、ギヤ24、28、32のうちの一つ以上の回転軸に実質的に平行な相対的摺動可能な移動を可能にするスロットを形成する。
【0043】
昇降ツール40は、第1アクチュエータ54とも呼ばれる軸方向アクチュエータ54を含み、これにより、ギヤ組立体20のガイド構成要素52及びハウジング26に対する支持フレーム42の軸方向移動を引き起こす。記載の例では、軸方向アクチュエータ54は、ロッド58に結合された回転可能なモータ56を含む。ロッド58は支持フレーム42に連結されており、モータ56の回転はロッドの並進運動を生じさせ、これは支持フレーム42を移動させる。ロッド58は、ガイド構成要素52のスロットを通って延び、ロッド58、したがって支持フレーム42の移動方向を維持する。
【0044】
図2、3(a)、3(b)、4(a)、4(b)、及び
図8に示すように、昇降ツール40は、昇降ツール40をクレーン(図示せず)に連結し、昇降ツール40をハウジング26を含むギヤ組立体20に対して所定の位置に移動させる連結装置60を含む。例えば、昇降ツール40のガイド組立体50は、最初にギヤ組立体ハウジング26に取り付けられてもよく、次いで、昇降ツール40の残りの部分は、クレーンによって所定の位置に持ち上げられてもよく、特に、支持アーム42をガイド構成要素52と摺動可能な取り付けにする。
【0045】
特に
図8を参照すると、連結装置60は、クレーンのフックを受けて係合する連結リング62を含む。連結装置60はまた、連結リング62に連結され、支持フレーム42の水平アーム46に摺動可能に連結された取り付け部材又は調節可能なヨーク64を含む。特に、取り付け部材64は、水平アーム46の長さに沿って延びる水平アーム46のスロット66内に受け入れられる。これにより、連結装置60と支持フレーム42との間でギヤ組立体20の実質的に軸方向に相対的に移動することができる。具体的には、支持フレーム42は、支持フレーム42及び係合部48のチルト角を調整するために、連結装置60に対して移動され得る。これは、昇降ツール40の係合部48がギヤ組立体20のチルト角に対応する適切な量だけ傾くことを確実にするために使用され得る。支持フレーム42のチルト角とは、水平アーム46の長手方向軸が水平からずれる角度である。同様に、ギヤ組立体20のチルト角は、第1ヘリカルギヤ28の回転軸が水平からずれる角度を規定する。
【0046】
ギヤ組立体20のチルト角を制御することにより、第1及び第2ヘリカルギヤ28、24は、それらの組立又は分解の前に軸方向に整列され、ギヤの螺旋形状への損傷を防止する。例えば、第1ギヤセット22のリングギヤ24は、その回転軸が6度上向きになるようにハウジング26内に取り付けられる。したがって、遊星ギヤ28の先端は、リングギヤ24と係合するために6度だけ下方に傾斜していなければならない。
【0047】
昇降ツール40は、連結装置60に対して支持フレーム42を移動させるチルト角アクチュエータ68をさらに含む。軸方向アクチュエータ54と同様に、説明した例では、チルト角アクチュエータ68は、ロッド72に結合された回転可能モータ70を含む。ロッド72は、調整可能なヨーク64に接続され、モータ70の回転は、ロッド72の並進運動を生じさせ、これは、支持フレーム42を移動させる。ロッド72は、水平部材46のスロット66を通って延び、ロッド72の向き及び位置を維持する。
【0048】
チルト角は、連結装置60に対する懸架質量(すなわち、ギヤ組立体20と支持フレーム42との合計質量)の配向の影響を受ける。連結装置60を支持フレーム42に対して移動させると、連結装置は取り付け部材64を中心に回転し、それによってギヤ組立体20のチルト角が変化する。
【0049】
ギヤ組立体の懸架部分の質量は、全体にわたってクレーンによって支持される。ギヤ装置20の組立又は分解の間のある時点で、ギヤ組立体20と昇降ツール40を組み合わせた重心は、支持フレーム42の水平アームの長手方向に沿って(すなわち、ギヤ組立体のギヤの回転軸と平行である)移動するようにされる。例えば、ギヤ組立体20の組立中のある時点で、支持アーム42が連結装置60を中心に傾斜すると、懸架ギヤ組立体の先端が立ち上がり、それによってチルト角が変化する。
【0050】
この傾斜移動に対抗するために、チルト角アクチュエータ68は、ギヤ組立体20のチルト角を維持するように、取り付け部材64を水平アーム46の後端(すなわち、チルト角アクチュエータ68に向かって)に向けて平行移動させるように制御される。また、チルト角アクチュエータ68は、ギヤ組立体20の分解中に、ギヤ組立体の懸架部分が静止部分に向かって移動するときに、取り付け部材64を水平アーム46の先端に向かって(すなわち、アクチュエータ68から離れるように)移動させることによって、連結装置60の構成を調整するように制御されてもよい。クレーンはまた、チルト角アクチュエータ68と関連して制御され、ギヤ組立体のチルト角を所望のレベルに維持するように連結装置60の高さを調整する。
【0051】
本発明の別の実施形態によれば、ギヤ組立体の懸架部分は、組立/分解プロセス中のある時点で、ギヤ組立体の静止部分によって少なくとも部分的に支持されてもよい。例えば、水平アーム46をガイド組立体50上に静止させることができる。これにより、支持アーム42が連結装置60を中心に傾斜すると、懸架ギヤ組立体の先端が立ち上がり、それによってチルト角が変化する。このような状況では、チルト角アクチュエータ68及びクレーンを制御して、上述したように昇降ツール40の傾斜を調整することができる。
【0052】
図5、
図6(a)及び
図6(b)を参照すると、以下により詳細に説明するように、昇降ツール40の係合部48は、ギヤ組立体20の遊星ギヤ28と係合するためのダミー太陽ギヤ74(第1ヘリカルギヤ係合部74とも呼ばれる)を含む。ダミー太陽ギヤ74のねじれ角75は、遊星ギヤ28のねじれ角36に対応して配置されている。したがって、ねじれ角75は、リングギヤ24、遊星ギヤ28のねじれ角34、36と同じねじれ角値を有する。ダミー太陽ギヤのねじれ角75は、遊星ギヤのねじれ角36及びリングギヤのねじれ角34の方向と対向するねじれ角方向を有する。
【0053】
係合部48はまた、第1ギヤセット22の遊星キャリア30と係合する遊星キャリア係合部76を含み、第2ギヤセットの太陽ギヤ32に連結される。したがって、遊星キャリア係合部76は、昇降ツール40の第3ヘリカルギヤ係合部76を規定する。
【0054】
遊星キャリア係合部76は、遊星キャリア30と係合して、昇降ツール40の支持フレーム42に対して遊星キャリア30を回転させるように構成された軸受組立体を含む。軸受組立体の外側リング80は、支持フレーム42の垂直アーム44の下端に固定的に取り付けられた円筒形ハウジングによって画成される。軸受組立体の内側リング82は、外側リング80内に回転可能に取り付けられ、内側リング82と外側リング80との間に設けられた軸受によってその中に支持される。このようにして、内側リング82及び外側リング80は、ギヤ組立体20が昇降ツール40に取り付けられたときに、それぞれの軸が遊星キャリア30の回転軸と一致するように配置される。
【0055】
内側リング82の内側に向いた端部は、内側リング82と外側リング80との間に遊星キャリア係合部76のベアリングセットをクランプするように配置されたクランプ板84を画定する。内側リング82は、使用時に遊星キャリア30と係合するように構成された取り付けリング83をさらに備える。取り付けリング83は、遊星キャリア30の一部が少なくとも部分的に内輪82を介して受け入れられ、取り付けリング83と係合するように、内側リング82の外向きの端部に配置される。取り付けリング83は、内側リング82の周囲に配置された対応する一組のボルト穴85によって支持され、遊星キャリア30を取り付けリング83に結合するように構成された複数の取り付けボルト(図示せず)を含む。
【0056】
遊星キャリア回転ギヤ86は、支持フレーム42に対して内側リング82と共に回転するように、内側リング82の外向き端部に固定的に取り付けられている。ダミー太陽ギヤアクチュエータ78は、第2アクチュエータ78とも呼ばれ、遊星キャリア回転ギヤ86に取り付けられ、支持フレーム42に対して、ダミー太陽ギヤ74をその軸回りに回転させるように構成される。ダミーギヤ軸88は、一端において、回転ギヤ86の軸心に固定的に取り付けられたダミー太陽ギヤアクチュエータ78の回転可能なモータ90の外向きの表面に連結されている。遊星キャリア回転ギヤ86は、内側リング82に直接機械加工される。あるいは、回転ギヤ86は、内側リング82に固定的に取り付けられる別のギヤとして設けられてもよい。
【0057】
ダミー太陽ギヤ軸88は、ダミー太陽ギヤアクチュエータ78から遊星キャリア回転ギヤ86を通って延び、その反対端でダミー太陽ギヤ74に結合される。ダミー太陽ギヤ軸88は、ダミー太陽ギヤ74が遊星キャリア係合部76に対して回転可能となるように、回転ギヤ86の軸受配置によって支持されている。ダミー太陽ギヤ軸88は、アクチュエータ78のギヤボックスの出力軸に回転自在に取り付けられており、使用時にはアクチュエータ78によって駆動されるようになっている。
【0058】
引き続き
図5、
図6(a)及び
図6(b)を参照すると、昇降ツール40は、遊星キャリア係合部76の外側リング80上に配置され、支持フレーム42に対して遊星キャリア30の回転を引き起こすように構成された、第3アクチュエータ92とも呼ばれる遊星キャリアアクチュエータ92を含む。軸方向アクチュエータ54と同様に、説明した例では、遊星キャリアアクチュエータ92は、モータ94の回転が遊星キャリア回転ギヤ86の回転を引き起こし、次に遊星キャリア30を動かすように、従動ギヤ96によって遊星キャリア回転ギヤ86に回転可能に結合された回転可能なモータ94を含む。
【0059】
昇降ツール40の特別な利点は、各遊星ギヤ28及びリングギヤ24のヘリカル角を係合又は係合解除するために、ギヤ組立体20の各ヘリカルギヤを軸方向及び回転方向に同時に移動させることができることである。ギヤ組立体20の係合又は係合解除の間、軸方向アクチュエータ54は、リングギヤ28に対して軸方向速度で支持フレーム42及び遊星ギヤ24の軸方向移動を引き起こすように制御可能である。同時に、ダミーギヤアクチュエータ78は、ダミー太陽ギヤ74を回転させて遊星ギヤ28を遊星ギヤ回転速度(第1回転速度とも呼ばれる)で回転させるように構成可能である。したがって、回転速度及び軸方向速度を制御して、それぞれの軸方向移動及び回転を同時に発生させて、遊星ギヤ28及びリングギヤ24を滑らかに、速く、かつ制御された方法で係合又は係合解除することができる。
【0060】
上述の例では、昇降ツール40は、遊星ギヤ28をギヤ組立体20の残りの部分と係合又は係合解除するために、リングギヤ24に対して三つの遊星ギヤ28を同時に軸方向及び回転移動させるように構成されている。しかしながら、昇降ツール40は、ギヤ組立体20の任意の数のヘリカルギヤの軸方向及び回転方向の同時移動を引き起こすように構成されてもよいことが理解されよう。例えば、上記構成では、リングギヤ24は、ギヤ組立体20のハウジング26内で静止したままであり、遊星ギヤ28は、リングギヤ24に対して移動可能である。別の構成では、昇降ツール40は、ハウジング26内に取り付けられた複数の静止遊星ギヤ28に対するリングギヤ24の軸方向移動及び回転を引き起こすように構成されてもよい。あるいは、昇降ツール40は、第2ギヤセットの遊星ギヤに対して太陽ギヤ32を係合又は係合解除するように構成されてもよい。このようにして、本発明による第1及び第2ヘリカルギヤは、互いに係合又は係合解除されるギヤ組立体20の任意の二つのヘリカルギヤを規定することができる。
【0061】
有利には、昇降ツール40の係合部48は、遊星キャリア30及び遊星ギヤ28が、互いに独立してそれぞれの回転軸を中心に回転することを可能にするようにさらに構成される。したがって、遊星ギヤ28及び遊星キャリア30は、第1ギヤセット22の遊星ギヤ28がリングギヤ24と係合することを可能にし、同時に太陽ギヤ32が第2ギヤセットの遊星ギヤと係合することを可能にするために、必要な回転速度で回転することができる。従って、昇降ツール40は、同じギヤ組立体20内の二つのギヤ組の円滑な係合及び/又は解除を提供する。
【0062】
別個のギヤセット間の上述の調整を達成するために、遊星キャリアアクチュエータ92は、遊星キャリア30を回転させて太陽ギヤ32を遊星キャリア回転速度(第2回転速度とも呼ばれる)で回転させるように構成可能である。同時に、軸方向アクチュエータ54は、支持フレーム42及び太陽ギヤ32(遊星キャリア30に連結されている)を、第2ギヤセットの遊星ギヤに対して軸方向速度で軸方向移動させるように制御可能である。太陽ギヤ32及び遊星ギヤ28は、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ギヤ組立体20の単一の取り外し可能部分として一緒に配置されるので、太陽ギヤ32の軸方向速度は、遊星ギヤ28の軸方向速度と同じである。したがって、遊星ギヤ28及び太陽ギヤ32(すなわち、第1及び第2回転速度)の回転速度及び軸方向速度は、ギヤ組立体20の同時係合又は同時係合解除を提供するように、互いに独立して制御することができる。
【0063】
昇降ツール40は、
図9に示すように、ユーザと昇降ツール40の種々のアクチュエータとの間の指令及び制御インターフェースとして動作可能なコントローラ100に接続されている。昇降ツール40の動作中、コントローラ100は、以下により詳細に説明するように、ギヤ組立又は分解制御方法に従ってアクチュエータを制御するように構成される。
【0064】
コントローラ100は、電源(図示せず)に接続され、それによって、アクチュエータへの電力の流れを制御して、それらの動作を制御するように構成される。特に、コントローラは、各アクチュエータが動作する速度を制御するように構成される。コントローラ100はまた、クレーンの動作を制御して、昇降ツール40のギヤ組立体20に対する所定の位置への移動を制御するように構成されてもよい。
【0065】
コントローラ100は、ギヤ組立体20の組立及び分解に関連する入力及び出力をそれぞれ受信及び送信するための入力部102及び出力部104を含む。コントローラ100はまた、プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)又はプロセッサ116を含み、これは入力、フィードバック信号及び出力を処理するように構成され、これらは適切に規定された制御方法に従って昇降ツール40のアクチュエータを動作させるように構成される。
【0066】
入力部102は、ギヤ組立体20の幾何学的パラメータを示すデータを受け取るように構成されており、このデータは、ヘリカルギヤのねじれ角を定義するピッチ直径、歯幅/溝幅、及びねじれ角を含み得る。入力データは、昇降ツール40によって支持されているギヤ組立体20の質量を示すデータをさらに含むことができる。あるいは、幾何学的パラメータに関する情報は、コントローラ100のメモリ装置に記憶され、プロセッサ116によってアクセス可能であってもよい。入力部102はまた、昇降ツール40の動作パラメータを示すデータを受け取り、このデータは、アクチュエータ54、68、78、92の各々の現在の動作状態、例えば、各アクチュエータの現在の動作速度を含むことができる。
【0067】
動作パラメータデータは、ギヤ組立体20のヘリカルギヤの軸方向及び回転位置に関連する。例えば、動作パラメータデータは、互いに係合又は係合解除される2つのヘリカルギヤ間の相対的な軸方向距離を、それぞれの回転方向と共に含んでもよい。
【0068】
入力部102はまた、ギヤ組立体20の組立及び/又は分解に関するユーザコマンドを受信するように構成される。例えば、ユーザは、所望の速度及び時間でギヤ組立体20を組み立てることに向けられた制御方法を開始するためのコマンドを入力することができる。入力部102は、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)に接続されており、このヒューマン・マシン・インターフェースを介して、昇降ツール40のオペレータは、ギヤ組立体20に関する様々な物理的及び動作パラメータを入力することができる。HMIは、ユーザ操作コマンドを受信することもできます。あるいは、入力の各々は、コントローラ100に予めプログラムされていてもよい。例えば、幾何学的パラメータ及び動作パラメータは、ルックアップテーブル又は一連のルックアップテーブルとしてコンピュータ可読記憶媒体上に記憶されてもよい。
【0069】
プロセッサ116は、所定の制御方法に従って、アクチュエータ54、68、78、92、及び任意選択的に昇降クレーンを制御するための制御信号を決定するように構成された多数の決定モジュールを含むことができる。各決定モジュールは、受け取った入力パラメータのうちの一つ以上に依存して、昇降ツール40又はクレーンのアクチュエータのうちの少なくとも一つを制御するための制御信号を計算するように構成される。
【0070】
軸方向移動モジュール110は、ギヤ組立体の遊星ギヤ28及び/又は太陽ギヤ32の軸方向速度に対応する軸方向制御信号を決定するように構成される。あるいは、軸方向制御信号は、遊星ギヤ28及び太陽ギヤ32の少なくとも一方の所望の軸方向速度に依存して決定されてもよい。「所望の軸方向速度」は、制御方法の所定の速度を表し、第1及び第3ヘリカルギヤ28、32が並進する速度を規定する。この例では、軸方向速度は、コントローラ100が軸方向アクチュエータ54を制御して、第2及び第4のヘリカルギヤに対してそれぞれ昇降ツール42を移動させる目標速度を規定する。
【0071】
ギヤ組立体20の別の例示的な配置では、第1及び第3ヘリカルギヤ28、32は、それらが異なる軸方向速度で並進され得るように配置され得る。したがって、第1ヘリカルギヤ28の第2ヘリカルギヤ24に対する軸方向速度は、第3ヘリカルギヤ32の第4ヘリカルギヤに対する軸方向速度と異なっていてもよいことが理解されよう。
【0072】
遊星ギヤ回転モジュール108は、遊星ギヤ回転速度に対応する遊星ギヤ回転制御信号を決定するように構成され、遊星ギヤ回転制御信号は、遊星ギヤ28の所望の軸方向速度に依存して決定される。遊星キャリアの回転は、遊星キャリアに支持された遊星ギヤ28の位置に影響を与えるため、遊星キャリア30の回転速度に依存して遊星ギヤ回転制御信号を決定することもできる。
【0073】
遊星キャリア回転モジュール106は、遊星キャリア30及び太陽ギヤ32の回転速度に対応する遊星キャリア回転制御信号を決定するように構成され、遊星キャリア回転制御信号は太陽ギヤ32の軸方向速度に依存して決定される。遊星キャリア回転制御信号は、遊星キャリアの回転が遊星キャリア30に支持された遊星ギヤ28の位置に影響を与えるので、遊星ギヤ28の回転速度に依存して決定されてもよい。
【0074】
チルト角モジュール112は、遊星ギヤ28の軸方向移動及び回転の前に、リングギヤ24に対する昇降ツール40のチルト角の調整を引き起こすチルト角制御信号を決定するように構成される。チルト角は、第1ヘリカルギヤ28の回転軸が第2ヘリカルギヤ24の軸と一致したままであることを確実にするために、組立/分解プロセス中に動的に調節又は維持され得る。
【0075】
また、チルト角モジュール112の機能は、遊星ギヤ28のチルト角をリングギヤ24に対して相対的に調整するだけでなく、遊星キャリア30のチルト角も同時に調整するように構成されている。したがって、遊星ギヤ28及び太陽ギヤ32は、遊星キャリア30によって互いに連結されているので、少なくとも、遊星ギヤ28及び太陽ギヤ32の両方が、同一のギヤ組立体22の一部として一緒に組み立てられたときに同時に取り付けられる場合には、それらは、各々、同一のチルト角を共有することになる。
【0076】
昇降モジュール114は、遊星ギヤ28の軸方向及び回転方向の移動に先立って、昇降ツール40及びギヤ組立体20を所定位置に移動させるための昇降コントロール信号を決定するように構成される。ギヤ組立体20の組立中に、軸方向アクチュエータ54が次の係合手順の間に昇降ツール40の軸方向移動を制御するために、昇降クレーンをコントローラ100によって操作して、昇降ツールを開始位置に移動させて、ガイド組立体50を支持フレーム42に接続することができるようにしてもよい。あるいは、昇降クレーンは、クレーンオペレータ又は専用クレーンコントローラによって手動で操作されてもよい。
【0077】
決定モジュールによる制御信号の決定に続いて、出力部104は、昇降ツール40の動作を制御するために、各制御信号を各アクチュエータのモータに送信するように構成される。決定された制御信号は、それぞれのアクチュエータモータの開始位置、開始時間、及び動作速度を制御するための位置、タイミング、及び速度成分を含む。これを達成するために出力される制御信号は、当業者に容易に理解されるように、適切な電流/電圧パラメータを含むように構成される。
【0078】
次に、コントローラ100によって実行される例示的な制御方法120を、
図10を参照して説明する。制御方法120は、主として、ギヤ組立体20を組み立てるか、又は分解するために、昇降ツール40を制御することに向けられる。
【0079】
制御方法120は、第1ステップ121で開始し、コントローラ100は、所望の軸方向速度でギヤ組立体20を組み立て又は分解する要求を示す信号を受信する。所望の軸方向速度は、その速度で係合又は解放されるリングギヤ24に対する遊星ギヤ28の相対軸方向移動に対応する。
【0080】
第2ステップ122aにおいて、コントローラ100は、遊星ギヤ28がリングギヤ24と所望の軸方向速度で係合又は係合解除されることを可能にする遊星ギヤ28(すなわち、最初の回転速度)の回転速度を決定する。同時に、ステップ122bにおいて、コントローラ100は、太陽ギヤ32が第2ギヤセットの遊星ギヤと所望の軸方向速度で係合又は係合解除することを可能にする遊星キャリア30(すなわち、第2回転速度)の回転速度を決定する。
【0081】
決定された回転速度は、それぞれ、所望の軸方向速度と、ギヤ組立体20の予め定義された一連の幾何学的パラメータとに基づいて計算される。さらに、ステップ122cでは、制御装置100は、連結装置60の構成も決定し、これにより、支持フレーム42とギヤ組立体20のチルト角が、係合又は係合解除を行うことができるように十分に整列された状態を維持する。
【0082】
第3ステップ123aでは、ダミー太陽ギヤアクチュエータ78に回転制御信号を送信して遊星ギヤ28を第1回転速度で回転させる。同時に、ステップ123bにおいて、遊星キャリア回転制御信号が遊星キャリアアクチュエータ92に送信され、遊星キャリア30及び太陽ギヤ32を第2回転速度で回転移動させる。さらに、チルト角制御信号がチルト角アクチュエータ68に送信され、支持フレーム42に対する調節可能なヨークの位置を調整する。同時に、ステップ123dにおいて、軸方向制御信号が軸方向アクチュエータ54に送信され、遊星ギヤ28及び太陽ギヤ32を所望の軸方向速度で軸方向に移動させる。これらの制御信号の組み合わせにより、太陽ギヤ24に対して遊星ギヤ28が軸方向及び回転方向に同時に移動し、その結果、ギヤ組立体20の必要な組立又は解が生じる。
【0083】
同じ所望の軸方向速度に依存して軸方向及び回転制御信号を決定することによって、コントローラ100は、同時にギヤの螺旋形状への損傷を防止しながら、ギヤ組立体を組み立てるか又は分解するように昇降ツール42を制御することができる。
【0084】
添付の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、上述の実施例に多くの修正を加えることができる。例えば、別の制御方法によれば、各ヘリカルギヤの軸方向移動及び回転は、第1及び第3ヘリカルギヤのうちの1つの所望の回転速度に依存して制御される。このような例示的な構成では、コントローラ100は、第1及び第3ヘリカルギヤ28、32の少なくとも一方に対応する所望の回転速度を受けるように構成される。このようにして、受信された回転速度値は、制御方法の決定された速度を規定する。次いで、コントローラ100は、所定の速度に基づいて、必要な対応する軸方向及び回転制御信号を決定するように構成される。
【0085】
一方の対のヘリカルギヤのみが互いに係合又は係合解除される状況では、その対のヘリカルギヤに対応する回転アクチュエータのみがコントローラ100によって制御される。
【0086】
アクチュエータモータ56、70、90、94の各々は、ステップモータ、例えば、360度の回転を複数の等しいステップに分割するブラシレスDC電気モータである。さらに、コントローラモジュール106,108,110,112,114の各々は、コントローラ100のプロセッサ116上にアルゴリズムインスタンスとして提供される。プロセッサ116は、適切な要求又は命令に応答して各モジュールの機能を実行するように構成される。あるいは、制御装置のモジュール106,108,110,112,114の各々は、当業者に容易に理解されるように、任意の数の別個の物理的処理ユニットを備えることができる。
【0087】
また、コントローラ100と昇降ツール40の種々のアクチュエータとを相互接続するために、適切な接続装置を設けることができることも理解されよう。相互接続は、直接接続、すなわち、「ポイントツーポイント」接続であってもよく、あるいは適切なプロトコル(例えば、CANバス又はイーサネット)の下で動作するローカルエリアネットワーク(LAN)の一部であってもよい。また、ケーブル配線を使用するよりもむしろ、制御コマンドは、例えば、WiFi(登録商標)規格、又は、ZigBee(登録商標)規格(それぞれIEEE802.11、IEEE802.15.4)の下で動作する、適切な無線ネットワークを介して無線送信されてもよいことを理解されたい。
【符号の説明】
【0088】
機能リスト
風力タービン 10
タワー 12
ナセル 14
ロータハブ 16
ロータブレード 18
ギヤ組立体 20
第1ギヤセット 22
リングギヤ 24
ハウジング 26
遊星ギヤ 28
遊星キャリア 30
太陽ギヤ 32
リングギヤねじれ角 34
遊星ギヤのねじれ角 36
太陽ギヤねじれ角 38
昇降ツール 40
支持フレーム 42
垂直アーム 44
水平アーム 46
係合部 48
ガイド組立体 50
ガイドコンポーネント 52
軸方向アクチュエータ 54
軸方向アクチュエータ回転可能モータ 56
軸方向アクチュエータロッド 58
連結装置 60
連結リング 62
調節式ヨーク 64
水平アームスロット 66
傾斜角アクチュエータ 68
傾斜角アクチュエータ回転可能モータ 70
傾斜角アクチュエータロッド 72
ダミー太陽ギヤ 74
遊星キャリア係合部 76
ダミー太陽ギヤアクチュエータ 78
外側リング 80
内側リング 82
アタッチメントリング 83
クランピングプレート 84
ボルト穴 85
遊星キャリア回転ギヤ 86
ダミーの太陽ギヤシャフト 88
ダミー太陽ギヤアクチュエータ回転可能モータ 90
遊星キャリアアクチュエータ 92
遊星キャリアアクチュエータ回転可能モータ 94
被駆動ギヤ 96
コントローラ 100
入力部 102
出力部 104
遊星キャリア回転モジュール 106
遊星ギヤ回転モジュール 108
軸方向モジュール 110
チルト角モジュール 112
昇降モジュール 114
プロセッサ 116
管理方法 120