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特許7554830経口組成物、風味改善方法、チキンエキス風味改善剤、及び2型コラーゲン加水分解物の使用
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  • 特許-経口組成物、風味改善方法、チキンエキス風味改善剤、及び2型コラーゲン加水分解物の使用 図1
  • 特許-経口組成物、風味改善方法、チキンエキス風味改善剤、及び2型コラーゲン加水分解物の使用 図2A
  • 特許-経口組成物、風味改善方法、チキンエキス風味改善剤、及び2型コラーゲン加水分解物の使用 図2B
  • 特許-経口組成物、風味改善方法、チキンエキス風味改善剤、及び2型コラーゲン加水分解物の使用 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】経口組成物、風味改善方法、チキンエキス風味改善剤、及び2型コラーゲン加水分解物の使用
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/281 20160101AFI20240912BHJP
   A23L 13/30 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
A23L29/281
A23L13/30
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022538867
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020047085
(87)【国際公開番号】W WO2021131995
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10201913605S
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中尾 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】シャンメイ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シャージャン リン
(72)【発明者】
【氏名】シム エリック キアン-シウン
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008682(JP,A)
【文献】特開平11-032692(JP,A)
【文献】特開2002-255846(JP,A)
【文献】国際公開第2007/122179(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/103959(WO,A2)
【文献】特開2000-201649(JP,A)
【文献】特開2007-070316(JP,A)
【文献】特開2017-218409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チキンエキスと2型コラーゲン加水分解物とを含有し、
前記チキンエキスは、スチジンを0.1~1重量%、ルノシンを0.01~0.3重量%、ンセリンを0.05~0.5重量%含有し、
前記2型コラーゲン加水分解物を0.1~5重量%含有し、
飲料である
ことを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
前記2型コラーゲン加水分解物が、トリ軟骨に由来する請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
前記2型コラーゲン加水分解物は重量平均分子量が3000~6000である請求項1又は2に記載の経口組成物。
【請求項4】
前記2型コラーゲン加水分解物は、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の経口組成物。
【請求項5】
前記低分子量ペプチドと前記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3である請求項4に記載の経口組成物。
【請求項6】
前記経口組成物が、健康用組成物及び美容用組成物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1~のいずれか一項に記載の経口組成物。
【請求項7】
チキンエキスを含む組成物に、2型コラーゲン加水分解物を添加する、チキンエキスを含む組成物の風味改善方法であって、
前記組成物は飲料であり、前記組成物中に前記2型コラーゲン加水分解物が0.1~5重量%含有されるように2型コラーゲン加水分解物を添加する方法
【請求項8】
前記チキンエキスは、スチジンを0.1~1重量%、ルノシンを0.01~0.3重量%、ンセリンを0.05~0.5重量%含有する請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記2型コラーゲン加水分解物が、トリ軟骨に由来する請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が3000~6000である請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記2型コラーゲン加水分解物は、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含む請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記低分子量ペプチドと前記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3の範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有効成分として、2型コラーゲン加水分解物を含有するチキンエキス風味改善剤。
【請求項14】
前記2型コラーゲン加水分解物が、トリ軟骨に由来する請求項13に記載のチキンエキス風味改善剤。
【請求項15】
前記2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が3000~6000である請求項13又は14に記載のチキンエキス風味改善剤。
【請求項16】
前記2型コラーゲン加水分解物は、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含む請求項13~15のいずれか一項に記載のチキンエキスの風味改善剤。
【請求項17】
前記低分子量ペプチドと前記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3である請求項16に記載のチキンエキスの風味改善剤。
【請求項18】
チキンエキス風味改善剤の製造のための2型コラーゲン加水分解物の使用。
【請求項19】
厚みが付与された肉エキスを含有する経口組成物製造のための2型コラーゲン加水分解物の使用であって、前記組成物は飲料であり、前記2型コラーゲン加水分解物が0.1~5重量%含有されるように2型コラーゲン加水分解物を添加する使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チキンエキスと2型コラーゲン加水分解物とを含有する経口組成物に関する。本発明はまた、チキンエキスを含む組成物に、2型コラーゲン加水分解物を添加するチキンエキスを含む組成物の風味改善方法に関する。本発明はまた、チキンエキス風味改善剤に関する。本発明はまた、チキンエキスを含む組成物を製造するための2型コラーゲン加水分解物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ゼラチンとして、食品分野で従来から広く用いられている。動物性蛋白質であるコラーゲンは、真皮や結合組織などの主成分であることから、近年、医療分野や美容分野の面からも注目を集めている。一般に、高分子量のコラーゲンを経口で摂取しても、摂取したコラーゲンを体内で効率的に利用することが難しいとされるが、近年は、体内での摂取に適するよう、高分子のコラーゲンを加水分解して低分子量化したコラーゲンペプチドが開発され、コラーゲンペプチド入りのコラーゲンや飲食品も開発されている。
【0003】
また、コラーゲンには、I、II、IIIの3つのタイプがある。タイプI及びタイプIIIは、主に皮膚、腱及び骨にみられるコラーゲンであり、タイプIIは主に軟骨でみられるコラーゲンである。例えば、特許文献1では、加水分解されたII型コラーゲンを調整する方法、並びに、治療薬及び栄養補助食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国公開特許文献6323319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、チキンエキスは、鶏肉が有する「滋養強壮」の本体とされ、例えば、東南アジアでは、食品・食材の範ちゅうを超えたいわゆる「伝承薬」としても用いられている。
チキンエキスに対する消費者の嗜好は高まっており、旨味などのチキンエキスの風味を一層強く感じるチキンエキスの開発が望まれる。また、チキンエキスは、トリ肉、骨、脚、及び皮等のニワトリの部位を原料として、熱水抽出等により得られる成分であるが、トリ肉のチキンエキスには臭み(魚臭)があり、臭みを低減する技術が望まれる。
【0006】
本発明は、チキンエキスを含有し、チキンエキスの風味が改善された経口組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、チキンエキスの風味改善方法を提供することを目的とする。また、本発明は、チキンエキス風味改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、チキンエキスの改善について種々検討を進めた結果、チキンエキスに2型コラーゲン加水分解物を含有させることにより、チキンエキスの臭みを低減することができると共に旨味を増加させ、好適に呈味改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕チキンエキスと2型コラーゲン加水分解物とを含有し、上記チキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンを含有し、上記ヒスチジンを0.1~1重量%、上記カルノシンを0.01~0.3重量%、上記アンセリンを0.05~0.5重量%含有することを特徴とする経口組成物。
〔2〕上記2型コラーゲン加水分解物が、トリ軟骨に由来する上記〔1〕に記載の経口組成物。
〔3〕上記2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が3000~6000である上記〔1〕又は〔2〕に記載の経口組成物。
〔4〕上記2型コラーゲン加水分解物は、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含む上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔5〕上記低分子量ペプチドと上記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3である上記〔4〕に記載の経口組成物。
〔6〕上記経口組成物中に上記2型コラーゲン加水分解物を0.1~5重量%含有する上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔7〕上記経口組成物が、飲料である上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔8〕上記経口組成物が、健康用組成物及び美容用組成物からなる群から選択される少なくとも1種である上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の経口組成物。
〔9〕チキンエキスを含む組成物に、2型コラーゲン加水分解物を添加する、チキンエキスを含む組成物の風味改善方法。
〔10〕上記チキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンを含有し、上記組成物中に、上記ヒスチジンを0.1~1重量%、上記カルノシンを0.01~0.3重量%、上記アンセリンを0.05~0.5重量%含有する上記〔9〕に記載の方法。
〔11〕上記2型コラーゲン加水分解物が、トリ軟骨に由来する上記〔9〕又は〔10〕に記載の方法。
〔12〕上記2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が3000~6000である〔9〕~〔10〕のいずれか一項に記載の方法。
〔13〕上記2型コラーゲン加水分解物が、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含む上記〔9〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕上記低分子量ペプチドと上記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3である上記〔13〕に記載の風味改善方法。
〔15〕上記組成物中に、上記2型コラーゲン加水分解物が0.1~5重量%含有されるように2型コラーゲン加水分解物を添加する上記〔9〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕有効成分として、2型コラーゲン加水分解物を含有するチキンエキス風味改善剤。
〔17〕上記2型コラーゲン加水分解物が、トリ軟骨に由来する上記〔16〕に記載のチキンエキス風味改善剤。
〔18〕上記2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が3000~6000である上記〔16〕又は〔17〕に記載のチキンエキス風味改善剤。
〔19〕上記2型コラーゲン加水分解物が、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含む上記〔16〕~〔18〕のいずれかに記載のチキンエキス風味改善剤。
〔20〕上記低分子量ペプチドと上記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3である上記〔19〕に記載の鶏肉エキスの風味改善剤。
〔21〕チキンエキス風味改善剤の製造のための2型コラーゲン加水分解物の使用。
〔22〕厚みが付与された肉エキスを含有する経口組成物又はチキンエキス風味改善剤の製造のための2型コラーゲン加水分解物の使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チキンエキスを含有する経口組成物において、臭みを低減することができると共に、旨味等のチキンエキスの風味を改善することができる。また、本発明によれば、チキンエキスを含む組成物の風味改善方法を提供することができる。また、本発明によれば、チキンエキス風味改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、2型コラーゲン加水分解物の調製方法を簡略に説明したフローチャートである。
図2図2Aは、実施例2に係る経口組成物に対する風味(官能)評価と、比較例1に係る経口組成物に対する風味(官能)評価とを視覚的に比較した図であり、図2Bは、実施例3に係る経口組成物に対する風味(官能)評価と、比較例1に係る経口組成物に対する風味(官能)評価とを視覚的に比較した図である。図2Cは、実施例4に係る経口組成物に対する風味(官能)評価と、比較例1に係る経口組成物に対する風味(官能)評価とを視覚的に比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<経口組成物>
本発明の経口組成物は、チキンエキスと2型コラーゲン加水分解物とを含有し、上記チキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンを含有する。
【0012】
<チキンエキス>
本発明で用いられるチキンエキスは、ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンを含有する。
カルノシンはβアラニンとヒスチジンのジペプチドでβアラニル・ヒスチジンとなったものである。また、アンセリンはヒスチジン部分がメチル化されβアラニル・1メチルヒスチジンとなったものである。本発明で用いられるチキンエキスは、ヒスチジンを0.1~1重量%、カルノシンを0.01~0.3重量%、アンセリンを0.05~0.5重量%含有することが好ましい。
【0013】
本発明で用いられるチキンエキスが、ヒスチジン、カルノシン及び/又はアンセリンの塩を含有する場合、チキンエキスにおけるヒスチジン、カルノシン及びアンセリンの含有量は、ヒスチジン及びその塩の総含有量のヒスチジン換算値、カルノシン及びその塩の総含有量のカルノシン換算値、及びアンセリン及びその塩の総含有量のアンセリン換算値を意味する。
ヒスチジンの塩、カルノシンの塩及びアンセリンの塩は特に限定されないが、例えば、ナトリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムの水酸化物、炭酸塩、及び重炭酸塩と、アンモニウム等の無機塩;メチルアミン、ジメチルアミン、及びトリエチルアミンの塩等のモノ、ジ、又はトリアルキルアミン塩、モノ、ジ、又はトリヒドロキシアルキルアミン塩、グアニジン塩、及びN-メチルグルコサミンの塩等の有機塩が含まれる。
【0014】
本発明で用いられるチキンエキスとしては、鶏(トリ)を原料として用い、液体中で加熱することにより得られる抽出物等を用いることができ、市販品を用いてもよい。原料に骨、軟骨、脚等が含まれていてもよいが、トリ頭部及び内蔵を含まないことが好ましい。
【0015】
上記チキンエキス(CE)の市販品としては、例えば、「BEC Brand’s Essence of Chicken(サントリー食品アジア社製)」や、「Scotch(登録商標) Essence of Chicken(Scotch Industrial(タイ)製)」、「Quaker Essence of chicken(Standard Foods Corporation(台湾)製)」、「Chicken stock and broth of SWANSON(登録商標)(Campbell Soup Company(NYSE:CPB)製)」、「Drip Chicken Essence(Eu Yan Sang International(シンガポール)製)」、「Boned Chicken Tonic(Eu Yan Sang International(シンガポール)製)」、「Boiled Essence of Chicken(Lao Xie Zhen(台湾)製)」等が挙げられる。いずれの市販品を用いてもよいが、なかでもBEC Brand’s Essence of Chickenを用いることが好ましい。
【0016】
本発明で用いられるチキンエキスを熱水抽出により製造する場合、本分野で用いられている通常の方法により製造することができる。例えば、100℃以上、好ましくは125℃以上の液体を用いた常圧抽出及び/又は加圧抽出を行い、得られた抽出物を膜処理やろ過することにより、チキンエキスを製造することができる。具体的には、抽出物は、(1)鶏(トリ)を液体中にて加熱する前処理工程、及び(2)上記前処理後に液体を交換し、再度加熱する工程により得られる。なお、工程(1)及び工程(2)における加熱処理は、溶媒中で行うのが好ましい。溶媒としては、水、エタノール、又はこれらの混合物等を用いるのが好ましい。
チキンエキスは、上記のような方法で得られる抽出液、その希釈液、濃縮物又は乾燥粉末、及び、これらの精製物を含む。精製物としては、例えばチキンエキスの抽出液を限外ろ過や膜処理、分液操作又は樹脂等による分画処理に供して精製度を上げたものが用いられる。チキンエキスの精製度を上げた後、凍結乾燥や噴霧乾燥等によって粉末化しても良い。
【0017】
本発明の経口組成物中のチキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましく、また、99重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。一態様において、チキンエキス(固形分換算)の含有量は、例えば、該組成物中に0.01~99重量%が好ましく、0.1~90重量%がより好ましい。
【0018】
本発明の経口組成物におけるヒスチジンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、ヒスチジンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0019】
本発明の経口組成物におけるカルノシンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、カルノシンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0020】
本発明の経口組成物におけるアンセリンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001重量%以上が好ましく、0.0001重量%以上がより好ましく、また、10重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましい。一態様において、アンセリンの含有量は、例えば、該組成物中に0.00001~10重量%が好ましく、0.0001~1重量%がより好ましい。
【0021】
組成物中のヒスチジン、カルノシン及びアンセリンの含有量は、本発明の属する技術分野における常法に則り測定することができ、例えば、HPLCで定量することができる。
【0022】
<2型コラーゲン加水分解物>
本発明で用いられる2型コラーゲン加水分解物は、トリ、ブタ、ウシ等の畜産の軟骨から抽出される成分であり、好ましくはトリ軟骨に由来する成分である。トリ軟骨は、高純度の2型コラーゲンを含むためである。
【0023】
2型コラーゲン加水分解物は、2型コラーゲンを酵素などで加水分解することで得ることができる。2型コラーゲンは、トリ、ブタ、ウシ等の軟骨から公知の方法で抽出することができる。また、本発明で用いられる2型コラーゲン加水分解物は、本分野で用いられる通常の技術を用いて畜産(好ましくはトリ)軟骨から調製することができる。例えば、トリ軟骨を酵素処理することにより2型コラーゲン加水分解物を得ることができる。具体的に、(3)トリ軟骨を液体中にて加熱する前処理工程、及び(4)前処理工程後のトリ軟骨を酵素処理する工程により、2型コラーゲン加水分解物を調製ことができる。なお、上記工程(4)で用いられる酵素は、本分野で通常用いられる酵素であればよく、特に限定されないが、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ブロメライン、アクチニジン、フィシン、カテプシン、ペプシン、キモシン、トリプシン、プロテアーゼ、サブチリシン、アミノペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ及びこれらの酵素を混合した酵素製剤等を用いることができる。ただし、2型コラーゲン加水分解物の調製方法は酵素処理方法に限定されるものではない。
【0024】
上記2型コラーゲン加水分解物は、重量平均分子量が3000~6000であることが好ましい。
また、上記2型コラーゲン加水分解物は、分子量が3000未満の低分子量ペプチドと、分子量が3000以上の高分子量ペプチドとを含むことが好ましい。低分子量ペプチドと高分子量ペプチドとを含むことで、2型コラーゲン加水分解物の臭い及び苦味の低減効果を得ることができるためである。
【0025】
本明細書において、上記2型コラーゲン加水分解物の分子量は、例えばユーロフィンHPAEC-PAD法等の本技術分野における常法により得られた分子量分布データを用いて算出することができる。
【0026】
本願における2型コラーゲン加水分解物において、上記低分子量ペプチドと上記高分子量ペプチドとの含有比率が、重量比で、低分子量ペプチド/高分子量ペプチド=85/15~97/3であることが好ましい。低分子量ペプチドと高分子量ペプチドとを特定の配合比で含むことで、2型コラーゲン加水分解物の臭い及び苦味の低減効果を得ることができるためである。上記低分子量ペプチドと上記高分子量ペプチドとの含有比は、90/10~96/4の範囲であることがより好ましい。
【0027】
本発明の経口組成物は、上記経口組成物中に上記2型コラーゲン加水分解物を0.1~5重量%含有することが好ましい。本発明の経口組成物において、チキンエキスの臭みが低減されると共に、旨味及び/又は厚みが、充分に改善されるためである。上記経口組成物中、2型コラーゲン加水分解物は、0.5~5重量%含有されることが好ましい。
本明細書において、風味の一種である「厚み」とは、サンプルの口腔内における保持の程度及び喉越しの程度をいう。
また、上記経口組成物中の上記2型コラーゲン加水分解物は、1.5重量%以上含有されることがより好ましく、2.0重量%以上含有されることが更に好ましく、2.5重量%以上含有されることがより一層好ましい。臭みを低減できると共に、旨味、厚みに加え、トリ肉の風味が充分に改善されるためである。
【0028】
<他の成分等>
本発明の経口組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の成分を1種又は2種以上含んでもよい。
本発明の経口組成物は、ハーブ、香料、甘味料等を含むことが好ましい。ハーブや香料を含有させると、適度な香味を付与することができ、経口組成物がより好ましい風味を呈するものとなる。また、甘味料を含有させると、好ましい味を付与することができ、経口組成物がより好ましい風味を呈するものとなる。ハーブ及び香料は特に限定されず、一般的に用いられるハーブ及び香料を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、甘味料は特に限定されず、糖、糖アルコール、高甘味度甘味料等が挙げられ、1種又は2種を組み合わせて用いることができる。
【0029】
糖として、単糖、二糖、三糖以上の多糖(オリゴ糖を含む)等が挙げられ、具体的には、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース等が挙げられる。糖アルコールとして、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元パラチノース等が挙げられる。中でも、エリスリトールがより好ましい。
【0030】
高甘味度甘味料は、砂糖よりも甘味度の高い甘味料を意味し、その具体例としては、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、サッカリンナトリウム、ネオテーム等が挙げられる。中でも、アセスルファムK、スクラロースが好ましい。
一態様において、本発明の経口組成物は、糖又は糖アルコールと、高甘味度甘味料とを含むことが好ましく、アセスルファムK、スクラロース及びエリスリトールを含むことがより好ましい。このような甘味料を含有すると、経口組成物の風味がより良好となる。
【0031】
本発明の経口組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外に、例えば、酸味料、酸化防止剤、安定剤、保存料、香料、乳化剤、色素類、調味料、pH調整剤、栄養強化剤等を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の経口組成物は、防腐性の観点から、pHが5.0以下であることが好ましく、pH3.0~4.5がより好ましく、pH3.3~4.0がさらに好ましい。本明細書中、pHは、25℃におけるpHである。pHの調整には、酸味料を用いることができる。酸味料としては、飲食品に使用可能な酸又はその塩が好ましく、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、グルコン酸、フィチン酸などの酸又はその塩が挙げられる。酸味料は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。酸味料には、遊離の酸だけを用いてもよいし、その塩だけを用いてもよいし、それらを組み合わせて用いてもよい。経口組成物の風味の観点から、酸味料は、クエン酸又はその塩を含むことが好ましく、クエン酸又はその塩及びリン酸又はその塩を含むことがより好ましい。
【0033】
酸味料の含有量は、酸味料の種類に応じて設定することができる。例えば、経口組成物中に、酸味料として使用する酸又はその塩が、当該酸又はその塩の、遊離酸量に換算した総含有量として100~5000mg/100mLが好ましく、300~3000mg/100mLがより好ましい。上記含有量は、酸味料を複数種用いる場合は、合計含有量を意味する。尚、本明細書において、「遊離酸量に換算した量」、又はこれに類する表現は、ある酸が遊離酸の形態である場合にはその量を、塩の形態である場合には、当該塩のモル数に、対応する遊離酸の分子量を乗じて得られる値を意味する。
【0034】
本発明の経口組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、各成分を混合する工程(混合工程)を含むことが好ましい。また、必要に応じて、組成物のpHを調整するpH調整工程及び/又は組成物の粘度を調整する粘度調製工程等を含むことが好ましい。
混合工程では、各成分に、必要に応じて水性媒体を加えて混合することが好ましい。水性媒体としては、水が好ましく用いられる。各成分を混合する順番は特に限定されず、各成分が均一に混合されればよい。一態様において、揮発性の成分(例えば、香料)や分解しやすい成分(例えば、ビタミンC等)を配合する場合、このような成分は最後に混合することが好ましい。
【0035】
本発明の経口組成物は、飲料(飲料組成物)として好ましく用いられる。
本発明の経口組成物は、容器詰めとすることができる。容器の形態は特に限定されず、ビン、缶、ペットボトル、紙パック、アルミパウチ、ビニールパウチ等の密封容器に充填して、容器入り飲料等とすることができる。
【0036】
上記飲料としては、茶系飲料、コーヒー飲料、アルコール飲料、ノンアルコールビール、炭酸飲料、機能性飲料、果実・野菜系飲料、乳性飲料、豆乳飲料又はフレーバーウォーターが好ましい。
【0037】
本発明の経口組成物は、健康用及び美容用からなる群から選択される少なくとも1種の用途に用いられることが好ましい。健康用は、ロコモーティブシンドロームにおける用途を含む。また、本発明の経口用組成物は、移動用(mobility)として好ましく使用される。
【0038】
<風味改善方法>
本発明は、チキンエキスを含む組成物に、2型コラーゲン加水分解物を添加する、チキンエキスを含む組成物の風味改善方法も包含する。上記チキンエキスを含む組成物に、上記2型コラーゲン加水分解物を添加することにより、上記チキンエキスの臭みを低減させると共に旨味等の風味を増加させ、好適に風味を改善することができる。本発明の一態様において、チキンエキスの風味の一種である旨味及び/又は厚みを改善することができる。本発明の他の態様において、チキンエキスの風味の一種である旨味、厚み及び/又はトリ肉の味わいを改善することができる。なお、上記チキンエキスを含む組成物に、2型コラーゲン加水分解物を添加する方法及びタイミングは特に限定されない。上記チキンエキスを含む組成物が、最終的に2型コラーゲン加水分解物を含んでいればよい。上記チキンエキス、上記2型コラーゲン加水分解物の好ましい態様及び配合量等は、上述した経口組成物におけるものと同じである。さらに、風味改善方法で用いられるチキンエキスを含む組成物においても、上記経口組成物と同様に、チキンエキス及び2型コラーゲン加水分解物とは異なる他の成分を配合してもよい。
【0039】
<風味改善剤>
本発明は、有効成分として、2型コラーゲン加水分解物を含有するチキンエキス風味改善剤も包含する。上記チキンエキスに、上記2型コラーゲン加水分解物を添加することにより、上記チキンエキスの臭みを低減することができると共に旨味等の風味を増加させ、好適に風味を改善することができる。本発明の一態様において、チキンエキスの風味の一種である旨味及び/又は厚みを改善することができる。本発明の他の態様において、チキンエキスの風味の一種である旨味、厚み及び/又はトリ肉の味わいを改善することができる。上記チキンエキス、上記2型コラーゲン加水分解物の好ましい態様及び配合量等は、上述した経口組成物におけるものと同じである。
【0040】
一態様において、本発明は、チキンエキスと2型コラーゲン加水分解物とを混合する工程を有する経口組成物の製造方法であってもよい。この場合、経口組成物の製造方法におけるチキンエキスと2型コラーゲン加水分解物の添加順序は特に限定されない。
また、本発明は、チキンエキスの風味改善剤を製造するための2型コラーゲン加水分解物の使用であってもよい。
また、本発明は、厚みのある肉エキス含む経口組成物、又は、チキンエキスの風味改善剤を製造するための2型コラーゲン加水分解物の使用であってもよい。
上記チキンエキス、上記2型コラーゲン加水分解物の好ましい態様及び配合量等は、上述した経口組成物におけるものと同じである。
【実施例
【0041】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
実施例及び比較例で使用した原料及び試薬等を以下に示す。
【0043】
<2型コラーゲン加水分解物(以下、HCIIともいう。)粉末の調製>
図1に、HCII調製方法を簡略に説明したフロー図を示す。先ず、凍結トリ軟骨を40℃の水で解凍し、40℃の水で洗浄を行った(1時間)。次に、洗浄水を廃棄し、新たな水をトリ軟骨の三倍量となるように1200Lポットに入れ、酵素処理に最適な温度まで昇温し、ここに洗浄後のトリ軟骨を浸漬させ、数時間酵素処理を行った。酵素処理を行った後に、トリ軟骨の入ったポットを90℃以上まで昇温し、30分間90℃以上で保持し、先の酵素処理で用いた酵素を不活化させた。得られた混合物(液体及び酵素処理後のトリ軟骨)をろ過し、トリ軟骨を除去した後、得られた液体を濃縮した。最後に、得られた濃縮液を200℃で噴霧乾燥させ、HCII粉末を調製した。
【0044】
<得られたHCII粉末の分子量の測定>
得られたHCIIの分子量分布をユーロフィンHPAEC-PAD法で測定した。得られたHCIIの分子量分布を下記表1に示す。本分野で用いられている通常の方法で算出されたHCIIの重量平均分子量は、4582であった。
【0045】
【表1】
【0046】
<チキンエキス>
チキンエキス(CE)は、市販品(BEC Brand’s Essence of Chicken(製造元:セレボス・パシフィック・リミテッド)を用いた。なお、CE1ml中のカルノシンの含有量は0.94mg/mlであり、アンセリンの含有量は1.9mg/mlであり、CE100mL中のヒスチジンの含有量は、0.45g/100mlであった。
【0047】
<ヒスチジン、カルノシン及びアンセリンの定量>
チキンエキス中のヒスチジン、カルノシン及びアンセリンの定量は、下記の条件でHPLCにより行った。
<HPLC分析条件>
装置:UV検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(Agilent1100シリーズ、Agilent社製)
カラム:Zorbax300-SCX 4.6mmID×250mm(Agilent社製)
移動相:50mMリン酸二水素カリウム
流速:1.0mL/分
フローチャネル:チャネルA(50mMリン酸二水素カリウム)、チャネルB(アセトニトリル)、チャネルD(脱イオン水)
UV検出波長:210nm
サンプル注入量:10μL
【0048】
<実施例1~4>
下記表2に示す配合で実施例1~4の経口組成物(溶液)を調製した。
具体的には、チキンエキス(CE)68mLに、表2に示す添加量のHCII粉末を添加し、充分撹拌し、実施例1~4の経口組成物溶液を調製した。得られた実施例1~4の経口組成物溶液は、それぞれ試験管に分注され、121℃で8分間殺菌処理された。実施例1~4の経口組成物溶液のHCII濃度は表2に示す通りである。
【0049】
<比較例1>
HCII粉末を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る経口組成物溶液を調製した。
【0050】
【表2】
【0051】
<風味の評価>
専門のパネラー5名が、常温でプラスチックカップに約50mL入った各実施例1~4及び比較例1に係る経口組成物溶液の風味を評価した。評価基準は次の通りである。
【0052】
<評価基準>
下記表3に、官能評価項目(醤油の香り、魚臭、トリの風味、肉の風味、カラメル風味、塩味、旨味、苦味、厚み、渋み)を示す。各評価項目を評価するため評価基準サンプルは次の通り調製した。下記表3に示された項目「参考サンプル及び強度」に示される濃度となるようにサンプルを水に希釈し、これを評価基準サンプルとした。具体的に説明すると、例えば、風味の一種である醤油の香りは、醤油の臭いに関連する香りであると定義づけられており、醤油の含有量が25%の醤油希釈液に対応する評価値は(5)であり、醤油の含有量が50%の醤油希釈液に対応する評価値は(10)であり、これらの数値を評価基準とした。
【0053】
【表3】
【0054】
<専門のパネラー5名の選出とトレーニング>
シンガポールに住む5名のパネラーが本評価に参加した。評価の際の各経口組成物溶液(実施例1~4及び比較例1)間の相違点と類似点に関するグループディスカッションは、パネルリーダーにより取り纏められた。経口組成物溶液の風味(官能特性)を説明する評価項目(官能属性)のリストは、チキンエキスの風味がHCIIにより影響を受けると考えられる項目に焦点を当てて、パネラーによって作成された。パネラーによる実際の評価が実施される前のトレーニングセッションの2時間で、各パネラーは、用語の選定に加え10点評価で各評価項目の強度を評価することを学んだ。例えば、評価項目が「塩味(Salty)」である場合、塩味の評価基準として、塩化ナトリウムの含有量が0.2%の塩化ナトリウム希釈液に対応する評価値は(1)であり、塩化ナトリウムの含有量が0.5%の塩化ナトリウム希釈液に対応する評価値は(5)であり、塩化ナトリウムの含有量が1%である塩化ナトリウム希釈液に対応する評価値は(10)と固定された。トレーニングセッションにおいて、各評価項目は少なくとも2回ずつ試験された。
【0055】
<評価>
5名のパネラーは、実施例1~4及び比較例1に係る経口組成物溶液の風味の評価のために、提供された常温の経口組成物溶液(約50mL)の臭いを嗅いだ後、評価対象の経口組成物溶液を10秒間口の中に保持し、上記表3に記載の香り、味、風味、質感/口当たりを評価した。その後、各評価項目を、10段階で評価した。本試験は、ヘルシンキ宣言の精神に従って、人間の感覚分析を実施し、全てのパネラーからインフォームドコンセントを得ている。
【0056】
<評価結果の分析>
5名のパネラーから得られた風味(官能)評価結果について、GraphPad Prismバージョン5.0(米国カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して、統計分析を実施した。該統計分析の結果を、下記表4に示す。得られた結果は、平均値±標準偏差値として示す。なお、得られた結果を、二元配置分散分析と事後Bonferroni法とを用いて評価した。P値がp<0.05の場合、得られた結果は有意であると見なした。
【0057】
なお、実施例2、3及び4に係る経口組成物溶液に対する風味(官能)評価と、比較例1に係る経口組成物溶液に対する風味(官能)評価とを視覚的に比較した図を図2A図2B及び図2Cとして示す。
【0058】
【表4】
1.データは平均±標準偏差として表される。
2.*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001
【0059】
上記表4の結果から、CEに、0.5gのHCIIを添加した実施例1に係る経口組成物溶液では、官能評価項目の「魚臭」が減少し、「旨味」が向上していることが確認できる。さらに、CEに1gのHCIIを添加した実施例2に係る経口組成物溶液では、評価項目「旨味」の強度が有意に向上し、HCIIを含まない比較例1に係る経口組成物溶液と比較して全体の口当たりが厚くなったことが確認できる。図2Aからも同様の内容を確認できる。さらに、表4、図2B及び図2Cの結果から、CEに、2gのHCIIを添加した実施例3に係る経口組成物溶液、及び、3gのHCIIを添加した実施例4に係る経口組成物溶液においては、旨味の改善と口当たりがより厚くなったことに加えて、CEの肉の風味を有意に増加させたことが確認できる。ただし、CEに対するHCIIの濃度を変更しても、他の評価項目の強度は大きく変化しなかった。
なお、「旨味」の定義は、「MSG(グルタミン酸ナトリウム)のような」だけでなく、一般的な食品(醤油、ストック(骨や肉を水でゆでることによって作る液体で、スープやソースを作るのに用いられる)、熟成チーズ、ロブスターのような甲殻類、ポルチーニ茸のようなキノコ類、カシューナッツ、アスパラガス)において確認される、「グルタミン酸等の化合物が口に広がる感覚、すなわち、おいしい、風味豊かな、出汁のきいた、肉感がある、濃厚、豊かな、複雑な」としても定義されている。したがって、CEに対し、1gのHCIIを添加することで、CEの旨味が強化されたことは、即ち、CEのコクや複雑さなどの他の感覚が強化されたことも意味する。


図1
図2A
図2B
図2C