(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】粘着性偏光フィルム及び画像表示装置用積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240912BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240912BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240912BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240912BHJP
C09J 155/02 20060101ALI20240912BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J155/02
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2022550522
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033283
(87)【国際公開番号】W WO2022059609
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2020156526
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000202350
【氏名又は名称】綜研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】紺野 雄太
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187140(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/141383(WO,A1)
【文献】特開2015-203064(JP,A)
【文献】特開2015-205974(JP,A)
【文献】国際公開第2016/111277(WO,A1)
【文献】特開2008-032852(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030936(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0194970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層と偏光フィルムが積層されて構成された粘着性偏光フィルムにおいて、
前記粘着剤層は、粘着剤と、導電性高分子とを含有する粘着剤組成物より形成され、
前記導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であり、
前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率(G')が20~1000kPaである、粘着性偏光フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着性偏光フィルムであって、
前記粘着剤が、アクリル系粘着剤であり、
前記アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含み、
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー混合物の重合体であり、
前記モノマー混合物は、第1モノマーの含有量が0.05~10質量%であり、第2モノマーの含有量が51~99.5質量%であり、
第1モノマーは、架橋性官能基含有モノマーであり、
第2モノマーは、第1モノマーでなく、ホモポリマーのガラス転移温度が-60~20℃である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ホモポリマーのガラス転移温度が-60~20℃である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルから選択される少なくとも1種であり、
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が60万以上である、粘着性偏光フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の粘着性偏光フィルムであって、
前記粘着剤は、ゴム系粘着剤であり、
前記ゴム系粘着剤は、水添ブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤とを含み、
前記水添ブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体の重合体成分から構成されるセグメントと、共役ジエン単量体の重合体成分から構成されるセグメントとを有し、
前記粘着付与樹脂は、軟化点が80℃以上であり、
前記軟化剤は、23℃において液体である、粘着性偏光フィルム。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載の粘着性偏光フィルムであって、
前記導電性高分子は、化学式(1)又は(2)で表される構成単位の少なくとも1つを有する、粘着性偏光フィルム。
【化1】
【化2】
(R
1は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、繰り返し単位が1~50の炭素数1~12のアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよい縮合環基を表し、R
2は、それぞれ酸素原子又は硫黄原子であり、R
3は、それぞれ、水素原子又は有機基である。A
-は、ドーパント由来のモノアニオンである。nは、2以上300以下である。)
【請求項5】
請求項4に記載の粘着性偏光フィルムであって、
前記導電性高分子のR
1が、エステル結合を有する、粘着性偏光フィルム。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の粘着性偏光フィルムであって、
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤を含有する、粘着性偏光フィルム。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1つに記載の粘着性偏光フィルムであって、
前記粘着性偏光フィルムの粘着面を10mm×10mmの面積でガラス板に貼付し、80℃環境下でせん断方向に800gの荷重を加えた場合に、荷重付加開始から1時間後のガラス板に対する粘着剤層のずれが2.0mm以下である、粘着性偏光フィルム。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1つに記載の粘着性偏光フィルムが画像表示素子に貼り付けられて構成された画像表示装置用積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体であって、
下記式(1)を満たす、積層体。
((Xs-Ys)/Xs)×100<3・・・(1)
(Xsは、前記積層体を23℃50%RH環境下に放置した後の状態での前記積層体中の前記偏光フィルムの延伸軸方向の寸法(単位は、m)であり、Ysは、前記積層体を80℃環境下に72時間放置後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷した後の、前記積層体中の前記偏光フィルムの延伸軸方向の寸法(単位は、m)である。)
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の積層体であって、
Xr及びYrが何れも1.0×10
12未満である、積層体。
(Xrは、前記積層体を23℃50%RH環境下に放置した後に前記粘着性偏光フィルムを前記積層体から剥がして露出させた前記粘着剤層の表面抵抗率(単位は、Ω/□)であり、Yrは、前記積層体を80℃環境下に72時間放置後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷した後に前記粘着性偏光フィルムを前記積層体から剥がして露出させた前記粘着剤層の表面抵抗率(単位は、Ω/□)である。)
【請求項11】
請求項10に記載の積層体であって、
下記式(2)を満たす、積層体。
Yr/Xr<10・・・(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性偏光フィルム及び画像表示装置用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているような画像表示部材は複数の部材から構成されるものであり、従来から、各部材の貼り合わせには粘着剤(粘着剤層)が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示部材においては、静電気が各種部材に蓄積することによる画像表示異常が課題となっており、静電気蓄積防止のため、画像表示部材を貼り合わせる粘着剤が低抵抗値であることが求められている。粘着剤(粘着剤層)を低抵抗値化する方法として、導電性高分子等の導電材を粘着剤に配合する方法がある。
【0005】
画像表示部材は、高温または高温・高湿環境下に晒されることがあるが、前記環境下においては、画像表示部材を構成する部材の収縮が発生する。部材の収縮に伴い、部材の貼り合わせに使用される粘着剤層も収縮すると、導電性高分子の粘着剤層中での配置が崩れ、粘着剤層の表面抵抗率が上昇する問題があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、高温環境下での粘着剤層の表面抵抗率の上昇を抑制可能な、粘着性偏光フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、粘着剤層と偏光フィルムが積層されて構成された粘着性偏光フィルムにおいて、前記粘着剤層は、粘着剤と、導電性高分子とを含有する粘着剤組成物より形成され、前記粘着剤層の80℃における貯蔵弾性率(G')が20~1000kPaである、粘着性偏光フィルムが提供される。
【0008】
本発明の粘着性偏光フィルムでは、粘着剤層が80℃という高温環境下においても比較的高い貯蔵弾性率を有しているために、熱によって偏光フィルムが収縮しようとした場合でも、粘着剤層が収縮することが抑制され、その結果、粘着剤層の収縮に起因する表面抵抗率の上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の粘着性偏光フィルム1の層構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態の画像表示装置用積層体5の層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
1.粘着性偏光フィルム
図1に示すように、本発明の一実施形態の粘着性偏光フィルム1は、粘着剤層2と偏光フィルム3が積層されて構成される。粘着性偏光フィルム1の粘着面1aには、粘着面1aを保護するための剥離フィルム4が設けられることが好ましい。剥離フィルム4は、PETなどの構成することができる。
以下、各構成について説明する。
【0012】
1-1.粘着剤層2
粘着剤層2は、粘着剤と、導電性高分子とを含有する粘着剤組成物より形成される。導電性高分子によって粘着剤層2に導電性が付与されて、粘着剤層2の表面抵抗率が低減される。
【0013】
粘着剤層2の80℃における貯蔵弾性率(G')が20~1000kPaである。以下、別段の記載がない限り、貯蔵弾性率は、80℃における貯蔵弾性率(G')を意味し、貯蔵弾性率の測定周波数は1Hzとする。貯蔵弾性率がこのような範囲内であることによって、高温環境下での粘着剤層2の収縮に起因する表面抵抗率の上昇が抑制される。この貯蔵弾性率は、例えば、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000kPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。粘着剤層2の貯蔵弾性率は、粘着剤の組成を変更することによって調整することができる。
【0014】
粘着剤層2の厚さは、乾燥膜厚で通常5~75μm、好ましくは10~50μmである。
【0015】
1-2.粘着剤
粘着剤は、導電性高分子を分散可能な任意の粘着剤で構成される。粘着剤としては、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤が挙げられる。
【0016】
1-2-1.アクリル系粘着剤
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含む粘着剤である。(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系の単位構造からなる繰り返し構造を含むポリマーである。(メタ)アクリル系の単位構造としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位構造が挙げられる。
【0017】
粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、粘着剤層2の貯蔵弾性率は、20~200kPaであることが好ましい。貯蔵弾性率が高すぎると粘着力が低くなりすぎる場合があるからである。この貯蔵弾性率は、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200kPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
粘着剤がアクリル系粘着剤である場合、(メタ)アクリル系ポリマー単独での貯蔵弾性率を変更したり、架橋剤の含有量を変更したりすることによって、粘着剤層2の貯蔵弾性率を調整することができる。
【0019】
<(メタ)アクリル系ポリマー>
(メタ)アクリル系ポリマー単独での貯蔵弾性率は、20~200kPaが好ましく、30~100kPaがさらに好ましい。この貯蔵弾性率は、具体的には例えば、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200kPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
ポリマー単独での貯蔵弾性率が低い場合でも架橋剤の添加量を増やすことによって、粘着剤層2の貯蔵弾性率を高くすることができるが、その場合には、ポリマーの靭性が低下してしまう場合があるので、ポリマー単独での貯蔵弾性率が上記範囲であることが好ましい。
【0021】
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量Mwは、例えば、40万~300万であり、60万~250万が好ましく、100万~200万がさらに好ましい。この場合に、(メタ)アクリル系ポリマーの貯蔵弾性率が好ましい値になりやすい。このMwは、具体的には例えば、40万、50万、60万、70万、80万、90万、100万、110万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、200万、250万、300万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される。
【0022】
(メタ)アクリル系ポリマーの分子量分布(Mw/Mn;Mnは数平均分子量)は、例えば1~15であり、5~10が好ましい。この値は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。Mnは、Mwと同様にGPC法により測定する。
【0023】
(メタ)アクリル系ポリマーは、第1及び第2モノマーを含むモノマー混合物の重合体であることが好ましい。モノマー混合物全体を100質量%とすると、第1モノマーの含有量が0.05~10質量%であり、第2モノマーの含有量が51~99.5質量%であることが好ましい。モノマー混合物は、第3モノマーを含有してもよい。第3モノマーの含有量は、100質量%から第1及び第2モノマー含有量を引いた残りである。このような配合のモノマー混合物を用いて(メタ)アクリル系ポリマーを形成すると、(メタ)アクリル系ポリマーの貯蔵弾性率が好ましい値になりやすい。
【0024】
第1モノマーの含有量は、好ましくは、1~5質量%である。この含有量は、具体的には例えば、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
第2モノマーの含有量は、好ましくは、60~99.5質量%である。この含有量は、具体的には例えば、具体的には例えば、51、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、99.5質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
・第1モノマー
第1モノマーは、架橋性官能基含有モノマーである。
【0027】
「架橋性官能基」とは、重合成分としてポリマー鎖に取り込まれ、その後、粘着剤層を構成する際に、当該官能基と他のポリマー鎖中の官能基との反応により、又は当該官能基と架橋剤との反応により、粘着剤層の系内でポリマー鎖同士の三次元架橋を形成し得る官能基のことを指す。このような架橋性官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基などが挙げられる。
【0028】
架橋性官能基として水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、このうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
架橋性官能基としてアミノ基を有するモノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N'-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N'-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリルアミドなどが挙げられ、このうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
架橋性官能基としてカルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられ、このうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
架橋性官能基を有するモノマーの中でも、粘着剤層の系内で三次元架橋構造を形成しやすい点から、水酸基を有するモノマーが好ましく、より具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
・第2モノマー
第2モノマーは、第1モノマーでなく、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が-60~20℃である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ホモポリマーのガラス転移温度が-60~20℃である(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルから選択される少なくとも1種である。ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、Polymer Handbook Fourth Edition(Wiley-Interscience 1999)に記載された値を採用する。
【0033】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、ブチルアクリレート(-50℃)、メチルアクリレート(8℃)、オクチルメタクリレート(-20℃)、イソオクチルメタクリレート(-45℃)、2-エチルへキシルメタクリレート(-10℃)、イソデシルメタクリレート(-41℃)、イソステアリルメタクリレート(-18℃)が挙げられる。このような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、2-メトキシエチルアクリレート(-50℃)、メトキシ-トリエチレングルコールアクリレート(-50℃)が挙げられる。第2~第3モノマーについての括弧内の温度は、ホモポリマーのTgである。
【0034】
第2モノマーのTgは、具体的には例えば、-60、-50、-40、-30、-20、-10、0、10、20℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0035】
・第3モノマー
第3モノマーは、第1及び第2モノマーの何れでもないモノマーである。このようなモノマーとしては、Tgが第2モノマーで規定した範囲外である(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルや、その他の(メタ)アクリル酸エステルや、その他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーである。
【0036】
・重合方法
上記モノマー混合物を、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の各種公知の方法により重合することで(メタ)アクリル系ポリマーが得られる。粘着剤の接着力、保持力等の特性のバランスや、コスト等の観点から、溶液重合法が好ましい。溶液重合の溶媒としては、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。溶液濃度は通常20~80重量%程度である。重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系等の各種公知のものを使用できる。分子量を調整するために、連鎖移動剤が用いられていてもよい。反応温度は通常50~80℃、反応時間は通常1~8時間である。
【0037】
<架橋剤>
粘着剤に適度の凝集力を持たせる観点から、(メタ)アクリル系ポリマーには架橋構造が導入されることが好ましい。例えば、(メタ)アクリル系ポリマーを重合後の溶液に架橋剤を添加し、必要に応じて加熱を行うことにより、架橋構造が導入される。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマー中に導入された架橋性官能基と反応して架橋構造を形成する。
【0038】
加熱により(メタ)アクリル系ポリマーに架橋構造を導入可能であることから、架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート系架橋剤としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(例えば、東ソー製「コロネートHL」)、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(例えば、三井化学製「タケネートD110N」、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(例えば、東ソー製「コロネートHX」、綜研化学製「Y-75」)等のイソシアネート付加物等が挙げられる。
【0039】
架橋剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマーの100質量部に対し、例えば0.005~2質量部であり、0.01~1質量部が好ましく、0.05~0.15がさらに好ましい。粘着剤層2の貯蔵弾性率が好ましい値になりやすい。この配合量は、具体的には例えば、0.005、0.01、0.05、0.10、0.15、0.20、0.50、1.0、2.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0040】
1-2-2.ゴム系粘着剤
ゴム系粘着剤としては、天然ゴムや合成ゴムをポリマーとするゴム系粘着剤組成物が挙げられ、水添ブロック共重合体と、粘着付与樹脂と、軟化剤を含むことが好ましい。
【0041】
<水添ブロック共重合体>
ブロック共重合体は、芳香族ビニル単量体の重合体成分から構成されるセグメント(ハードセグメント)と、共役ジエン単量体の重合体成分から構成されるセグメント(ソフトセグメント)とを有する熱可塑性エラストマーである。ここで、より具体的には、芳香族ビニル化合物はスチレン、α-メチルスチレンであることが好ましく(より好ましくはスチレン)、共役ジエン化合物はブタジエン、イソプレンであることが好ましい。
【0042】
水添ブロック共重合体の具体例としては、例えば、スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEPS)(スチレン-イソプレン-スチレン型ブロック共重合体(SIS)の水素添加物)、スチレン-(ブタジエン-ブチレン)-スチレン型ブロック共重合体(SBBS)の水素添加物、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEBS)(スチレン-ブタジエン-スチレン型ブロック共重合体(SBS)の水素添加物)、スチレン-(エチレン-プロピレン)型ブロック共重合体(SEP)(スチレン-イソプレン型ブロック共重合体(SI)の水素添加物)、スチレン-(エチレン-ブチレン)型ブロック共重合体(SEB)(スチレン-ブタジエン型ブロック共重合体(SB)の水素添加物)などが挙げられる。なかでも、粘着付与樹脂との相溶性に優れている観点から、水添ブロック共重合体は、スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEPS)、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEBS)等のABA型水添ブロック共重合体が特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂は、水添ブロック共重合体を構成するハードセグメントに相溶する性質を有する。粘着付与樹脂は、例えば、芳香族系粘着付与樹脂であることができる。粘着付与樹脂として用いられる芳香族系粘着付与樹脂は、相溶性の観点からは分子量5,000以下であるのが好ましい。
【0044】
粘着付与樹脂は、軟化点が80℃以上であることが好ましい。この軟化点は、例えば、80~200℃であり、具体的には例えば、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
粘着付与樹脂として使用可能な芳香族系粘着付与樹脂としては、例えば、芳香族石油樹脂、スチレン系重合体、α-メチルスチレン系重合体、スチレン-(α-メチルスチレン)系共重合体、スチレン-脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン-(α-メチルスチレン)-脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン-芳香族炭化水素系共重合体などがあげられる。より具体的には、例えば市販のスチレン-芳香族炭化水素系共重合体としてのFMR-0150(軟化点145℃、三井化学製)、スチレン-脂肪族炭化水素系共重合体としてのFTR-6100(軟化点100℃、三井化学製)、FTR-6110(軟化点110℃、三井化学製)およびFTR-6125(軟化点125℃、三井化学製)、スチレン-(α-メチルスチレン)-脂肪族炭化水素系共重合体としてのFTR-7100(軟化点100℃、三井化学製)、スチレン系重合体としてのFTR-8120(軟化点120℃、三井化学製)およびSX-100(軟化点100℃、ヤスハラケミカル製)、α-メチルスチレン系重合体としてのFTR-0100(軟化点100℃、三井化学製)、スチレン-(α-メチルスチレン)系共重合体としてのFTR-2120(軟化点120℃、三井化学製)、FTR-2140(軟化点145℃、三井化学製)、クリスタレックス3100(軟化点100℃、イーストマンケミカル製)、クリスタレックス3085(軟化点85℃、イーストマンケミカル製)、クリスタレックス5140(軟化点140℃、イーストマンケミカル製)、クリスタレックス1120(軟化点120℃、イーストマンケミカル製)、クリスタレックスF85(軟化点85℃、イーストマンケミカル製)、クリスタレックスF100(軟化点100℃、イーストマンケミカル製)およびクリスタレックスF115(軟化点115℃、イーストマンケミカル製)、などを使用することもできる。
【0046】
<軟化剤>
軟化剤は、水添ブロック共重合体を構成するソフトセグメントに相溶する性質を有する。軟化剤は、23℃において液体である。
【0047】
軟化剤として、ポリブテン系化合物、ポリイソブチレン系化合物、ポリイソプレン系化合等の脂肪族炭化水素等が挙げられ、より具体的には、市販の軟化剤、例えばポリブテン系化合物として日石ポリブテンLV-7、LV-50、LV-100、HV-15、HV-35、HV-50、HV-100、HV-300、HV-1900およびSV-7000(いずれもJXTGエネルギー製)、ポリイソブチレン系化合物としてテトラックス3T、4T、5Tおよび6T、ハイモール4H、5H、5.5Hおよび6H(いずれもJXTGエネルギー製)、ポリイソプレン系化合物としてクラプレンLIR-290(クラレ製)などが挙げられる。
【0048】
1-3.導電性高分子
本発明の導電性高分子は、粘着剤組成物に導電性を付与して、粘着剤組成物の帯電防止に寄与する。
【0049】
導電性高分子は、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば本発明の効果を有する限り特に制限されず、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0050】
この導電性高分子は、化学式(1)又は(2)で表される構成単位の少なくとも1つを有することが好ましい。この導電性高分子に含まれるπ共役系高分子は、R1を有することによって骨格が歪み易く、フレキシブル性が向上する。そのため、溶剤や粘着剤への分散性が良好であり、その他のπ共役系の高分子種と比較し、粘着剤組成物の導電性を最も向上させることができる。
【0051】
粘着剤組成物中での導電性高分子の配合量は、粘着剤100質量部に対して、0.01~35質量部が好ましく、0.05~30質量部がさらに好ましく、0.5~20質量部がさらに好ましい。この配合量は、具体的には例えば、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0052】
R1がシリコーン基を含む場合、導電性高分子の配合量は、粘着剤100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましく、0.01~10質量部がさらに好ましい。R1において、シリコーン基部分の割合を調整することで、配合量が少ない場合でも、分散性と導電性を両立することができる。
【0053】
R1がアルキル基を含む場合、導電性高分子の配合量は、粘着剤100質量部に対して、0.01~35質量部が好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。
【0054】
【0055】
【0056】
R1は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、繰り返し単位が1~50の炭素数1~12のアルキレンオキサイド基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよい縮合環基を表し、R2は、それぞれ酸素原子又は硫黄原子であり、R3は、それぞれ、水素原子又は有機基である。A-は、ドーパント由来のモノアニオンである。nは、2以上300以下である。
【0057】
前記炭素数1以上12以下のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状等のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等であってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基等があげられる。
【0058】
前記炭素数1以上12以下のアルコキシ基としては、直鎖状、分岐状、環状等のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等である。
【0059】
前記炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基としては、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等があげられる。
【0060】
前記複素環基としては例えば、シロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンズイミダゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、チエノチオフェン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環(カルバゾール環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わったものを表す)、ジベンゾシロール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾチオフェン環やジベンゾフラン環を構成する炭素原子の任意の一つ以上が窒素原子で置き換わった環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、アクリジン環、ベンゾキノリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、ジベンゾカルバゾール環、インドロカルバゾール環、ジチエノベンゼン環、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε-カプロラクトン環、ε-カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3-ジオキサン環、1,4-ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン-1,1-ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]-オクタン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、オキサントレン環、チオキサンテン環、フェノキサチイン環から導出される1価の基等があげられる。
【0061】
縮合環基としては、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環等があげられる。
【0062】
置換基としては例えば、炭素数1以上12以下のアルキル基、前記炭素数1以上12以下のアルキルエーテル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン、アルデヒド基、アミノ基、炭素数3以上8以下のシクロアルキル基等があげられ、ヒドロキシ基、カルボキシル基が好ましい。
【0063】
R1は、置換基を有していてもよいアルキル基と、シリコーン基の少なくとも一方を含むことが好ましく、シリコーン基を含むことが好ましい。シリコーン基は自由エネルギーが低いので、R1がシリコーン基を含むと、粘着剤組成物中において導電性高分子が表面近傍に集まりやすくなり、表面抵抗が低減されやすくなる。
【0064】
アルキル基としては、炭素数1以上12以下のアルキル基が挙げられる。このアルキル基としては、上述したものが挙げられる。
【0065】
シリコーン基は、結合の主骨格がケイ素と酸素が交互に結びついたシロキサン結合に有機基が結合した基である。有機基は、芳香族基や炭素数1以上12以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基が好ましい。
【0066】
R1は、エステル結合を有することが好ましい。R1のエステル結合としては、カルボン酸エステル結合、リン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合などが挙げられ、カルボン酸エステル結合が好ましい。R1がエステル化されていない酸基(カルボキシル基等)を有する場合、導電性高分子の極性が高くなりすぎて、粘着剤組成物中での導電性高分子の凝集性が低くなる。酸基をエステル化すると極性が低くなり、粘着剤組成物中での分散性が向上する。
【0067】
R
1は、好ましくは、化学式(3)で表される構造を有する。
【化3】
(化学式(3)中、*は、結合部であり、R
4は、直接結合又は有機基であり、R
5は、有機基とシリコーン基の少なくとも一方を含む。)
【0068】
R3、R4又はR5の有機基として、置換基を有していてもよい、炭素数1以上12以下のアルキル基、炭素数1以上12以下のアルキルエーテル基、炭素数1以上12以下のアルコキシ基、炭素数1以上12以下のアルキレンオキサイド基、芳香族基、複素環基等が挙げられる。R5は、β位に水酸基を有することが好ましい。
【0069】
ここでのアルキル基、アルコキシ基、アルキレンオキサイド基、複素環基の説明は、上述したものと同じである。
【0070】
前記炭素数1以上12以下のアルキルエーテル基は、直鎖状、分岐状、環状等のいずれでもよく、例えば、炭素数1以上8以下、炭素数1以上6以下、炭素数1以上4以下等である。
【0071】
前記芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基等の他にも各種の縮合環基をあげることができる。縮合環基としては、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環等があげられる。
【0072】
ドーパントとしては、π共役系高分子に導電性を付与可能で、かつモノアニオンとなる任意の化合物が挙げられる。ドーパントとしては、ビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸等のスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、トリフルオロ酢酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフルオロメタンスルホンイミド、ナフタレンスルホン酸等の一価酸、又はそのアルカリ金属塩等が挙げられる。モノアニオンとなるドーパントを用いると導電性高分子の導電率が向上しやすい。ドーパントの構造は粘着剤組成物中の分散性に影響を及ぼすが、これらの中で、導電性と分散性のバランスの観点からドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0073】
導電性高分子が有する構成単位(1)及び(2)の数としては特に制限されないが、好ましくは2以上300以下である。具体的には例えば、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200又は300であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0074】
導電性高分子中に含まれる構成単位(1)及び(2)の含有割合は、化学式(4)で表されるチオフェン誘導体とアルデヒドの添加量の比によって調整することができる。チオフェン誘導体とアルデヒドの添加量のモル比(チオフェン誘導体/アルデヒド)は、例えば1/1、2/1、3/1、4/1、5/1等であり、これらの数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよいが、可溶性と導電性のバランスの観点から1/1~4/1の比が好ましく、1/1~2/1の比がより好ましい。
【0075】
【0076】
化学式(4)中、R2及びR3は、それぞれ、化学式(1)及び(2)のR2及びR3と同様に定義される。
【0077】
導電性高分子を合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、チオフェン誘導体とアルデヒドに、ドーパントと酸化剤を加え不活性ガス雰囲気下の溶媒中で、加熱撹拌して重合することで得ることができる。また、酸化剤の分解促進剤を加えても良い。
【0078】
アルデヒドとしては、酸基を有するものを用いてもよく、エステル結合を有するものを用いてもよい。酸基を有するアルデヒドとしては、フタルアルデヒド酸などが挙げられる。エステル結合を有するアルデヒドとしては、酸基を有するアルデヒドの酸基をエステル化したものが挙げられる。エステル化は、例えば、酸基と、エポキシ基含有化合物(例:エポキシアルキル、片末端エポキシシリコーン)のエポキシ基を反応させることによって行うことができる。酸基を有するアルデヒドを用いた場合、分子間の相互作用が強くなるため、導電性が高くなりやすい。
【0079】
チオフェン誘導体に対するドーパントのモル比(ドーパント/チオフェン誘導体)は、例えば0.01~0.5であり、好ましくは0.1~0.5である。このモル比は、具体的に例えば、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このモル比が小さすぎると導電性高分子の導電性が低くなりすぎる場合がある。
【0080】
酸化剤としては、特に限定されないが、重合反応が進行する酸化剤であればよく、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、水酸化鉄(III)、テトラフルオロホウ酸鉄(III)、ヘキサフルオロリン酸鉄(III)、硫酸銅(II)、塩化銅(II)、テトラフルオロホウ酸銅(II)、ヘキサフルオロリン酸銅(II)およびオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイルなどの有機過酸化物等があげられる。
【0081】
溶媒としては、特に限定されないが、ヘテロ環化合物とアルデヒド誘導体の反応が進行する溶媒であればよく、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、アニソール、ヘプタン、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸系溶媒等があげられる。酸化剤の効率から、非プロトン性溶媒であることが好ましい。
【0082】
1-4.溶媒
本発明の粘着剤組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒は、導電性高分子を溶解又は分散可能なものであれば特に限定されず、有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル等のグリコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸系溶媒、トルエン、アニソール、酢酸エチル、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、トルエン、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、メタノール、ベンジルアルコール等があげられるが、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、トルエン、アニソール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、メタノール、ベンジルアルコール等が特に好ましい。有機溶媒は、複数の溶媒を組み合わせて用いてもよく、導電性高分子の合成に用いる溶媒と同じであっても異なっていてもよい。
【0083】
導電性高分子を水に分散安定させるには、ドープに寄与しない余剰スルホン酸が必要であるが、導電性高分子組成物が有機溶媒を含む場合、余剰スルホン酸が少ない量でも、導電性高分子を有機溶媒中に安定的に溶解又は分散させることが可能である。
【0084】
導電性高分子組成物のうち、有機溶媒を除いた不揮発分は、特に制限されないが、例えば0.1質量%以上20.0質量%以下である。具体的には、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5.0、10.0、15.0、20.0質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0085】
導電性高分子組成物の溶媒は、上記有機溶媒以外に水を含んでも良いが、基材密着性の観点から含水率は溶媒に対して50%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましい。
【0086】
1-5.その他の成分
本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤、シリコーンレジン、白金触媒、光重合開始剤等の成分を含んでもよい。また、本発明の粘着剤組成物は、溶媒、粘着付与樹脂、増感剤、充填剤、難燃剤、フィラー、オルガノポリシロキサン化合物、イオン性化合物、可塑剤、硬化補助触媒、分散剤、顔料/染料、粘度調整剤、滑剤、沈降防止剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、耐光性付与剤、酸化防止剤、撥水剤、消泡剤などを適宜配合してもよい。
【0087】
〔シランカップリング剤〕
シランカップリング剤は、各種被着体との間で化学的結合などの結合を形成し、基材と被着体との接着性を高める。特にガラス基板との接着に有効である。
【0088】
前記シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン,ビニルトリエトキシシラン及びメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン,N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;並びに3-クロロプロピルトリメトキシシラン;オリゴマー型シランカップリング剤等が挙げられる。
【0089】
シランカップリング剤の配合量は、粘着剤100質量部に対して、通常0.01~0.3質量部であり、好ましくは0.05~0.25質量部である。またシランカップリング剤は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
1-6.偏光フィルム3
偏光フィルム3は、偏光子3aを備え、偏光子保護膜3bを備えてもよい。偏光子3aは、粘着剤層2と偏光子保護膜3bの間に配置される。
【0091】
偏光子3aとしては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムに偏光成分を含有させて、延伸することにより得られる延伸フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、エチレン-酢酸ビニル共重合体の鹸化物が挙げられる。偏光成分としては、例えば、ヨウ素または二色性染料が挙げられる。
【0092】
偏光子保護膜3bとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの樹脂から選択される2種以上の混合物が挙げられる。
【0093】
偏光フィルム3の厚さは、通常10~200μm、好ましくは30~100μmである。本発明では、偏光子3a上に形成される偏光子保護膜3bを省略することができるため、偏光フィルム3を薄型化することができる。
【0094】
ところで、偏光フィルム3は、高温環境下で収縮しやすい性質を有する場合がある。この場合、偏光フィルム3の収縮に伴って粘着剤層2が収縮しやすいので、上述したように、粘着剤層2の80℃における貯蔵弾性率を所定の範囲内にすることの技術的意義が特に顕著である。
【0095】
ここで、偏光フィルム3の単独収縮率P(%)=((Xp-Yp)/Xp)×100と定義する。Xpは、偏光フィルム3を単独で23℃50%RH環境下に放置した後の状態での偏光フィルム3の延伸軸方向の寸法であり、Ypは、偏光フィルム3を単独で80℃環境下に72時間放置後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷した後の、偏光フィルム3の延伸軸方向の寸法である。
【0096】
単独収縮率Pは、例えば0.01~10%であり、1~8%が好ましい。単独収縮率Pは、具体的には例えば、0.01、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0097】
1-7.高温保持力
粘着性偏光フィルム1は、高温での保持力が優れていることが好ましい。具体的には、粘着性偏光フィルム1の粘着面1aを10mm×10mmの面積でガラス板(好ましくは無アルカリガラス板)に貼付し、80℃環境下でせん断方向に800gの荷重を加えた場合に、荷重付加開始から1時間後のガラス板に対する粘着剤層のズレ量が2.0mm以下であることが好ましい。この場合、
図2に示すように、粘着性偏光フィルム1を画像表示素子6に貼り付けたときに、粘着性偏光フィルム1が画像表示素子6からずれることが抑制される。このズレは、例えば0~2.0mmであり、具体的には例えば、0、0.5、1.0、1.5、2.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0098】
2.画像表示装置用積層体
図2に示すように、本発明の一実施形態の画像表示装置用積層体5は、粘着性偏光フィルム1が画像表示素子6に貼り付けられて構成される。
【0099】
粘着性偏光フィルム1は、剥離フィルム4を剥がして粘着面1aを露出させた状態で、粘着面1aが画像表示素子6に接触するように、画像表示素子6に貼着することができる。
【0100】
画像表示素子6は、画像を表示するための素子である。画像表示素子6は、粘着性偏光フィルム1を貼り付ける面にガラス板を有する素子であることが好ましい。ガラス板は、無アルカリガラス板であることが好ましい。このような画像表示素子6としては、液晶セルが挙げられる。
【0101】
液晶セルは、好ましくは、インセルまたはオンセル方式のタッチパネル式入出力装置を構成する液晶セルである。インセルとは、タッチパネル機能を液晶の画素の中に組み込む方式である。オンセルとは、タッチパネル機能をカラーフィルタ基板と偏光フィルムの間に作り込む方式である。
【0102】
このような方式は、カバーガラス付近で発生した静電気により、タッチセンサーが正常に働かない、タッチ不良がしばしば生じる。そこで、本発明の導電性高分子を粘着剤組成物に配合した、表面抵抗率が低い粘着剤組成物を用いることにより、カバーガラス付近に発生した静電気を、粘着剤層が中和、分散することができ、タッチ不良を抑制することが可能である。
【0103】
ガラス板の厚さは、例えば0.3~3mmであり、具体的には例えば、0.3、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0104】
画像表示素子6の厚さは、例えば、0.5~6mmであり、具体的には例えば、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0105】
ここで、積層体5中の偏光フィルム3の積層体収縮率S(%)=((Xs-Ys)/Xs)×100と定義する。Xsは、積層体5を23℃50%RH環境下に放置した後の状態での積層体5中の偏光フィルム3の延伸軸方向の寸法であり、Ysは、積層体5を80℃環境下に72時間放置後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷した後の、積層体5中の偏光フィルム3の延伸軸方向の寸法である。
【0106】
Sは、3未満である好ましい。つまり、以下の式(1)が充足されることが好ましい。
((Xs-Ys)/Xs)×100<3・・・(1)
【0107】
この場合、収縮率Sが大きくないので、偏光フィルム3の収縮に起因する粘着剤層2の表面抵抗率上昇が抑制される。
【0108】
積層体収縮率Sは、例えば、0.01~2.99であり、0.01~2.9が好ましく、0.01~2.0がさらに好ましい。収縮率Sは、具体的には例えば、0.01、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、2.99であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0109】
積層体5を23℃50%RH環境下に放置した後に粘着性偏光フィルム1を積層体5から剥がして露出させた粘着剤層2の表面抵抗率をXrとし、積層体5を80℃環境下に72時間放置後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷した後に粘着性偏光フィルム1を積層体5から剥がして露出させた粘着剤層2の表面抵抗率をYrとすると、Xr及びYrが何れも1.0×1012未満であることが好ましい。この場合、常温・高温の何れにおいても、表面抵抗率が十分に低い粘着剤層2を有する積層体5が得られる。
【0110】
Xr及びYrは、それぞれ、5.0×1011未満がさらに好ましく、1.0×1011未満がさらに好ましく、5.0×1010未満がさらに好ましく、1.0×1010未満がさらに好ましく、5.0×109未満がさらに好ましく、1.0×109未満がさらに好ましい。
【0111】
Xr,Yrは、下記式(2)を満たすことが好ましい。
Yr/Xr<10・・・(2)
【0112】
この場合、高温環境下での表面抵抗率の上昇が抑制される。Yr/Xrの値は、例えば、0.5~9.9であり、1~5がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、9.9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【実施例】
【0113】
実施例において本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例によって限定されるものではない。
【0114】
1.導電性高分子の製造
以下に示す方法で、導電性高分子C1~C5を製造した。
【0115】
・製造例C1(導電性高分子C1の製造)
1Lフラスコにプロピレンカーボネート500g、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.4g、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)3.0gを仕込み、0.25時間撹拌した。次いで、窒素パージ下、トリスパラトルエンスルホン酸鉄(III)(Fe(PTS)3)0.04g、フタルアルデヒド酸(PAA)1.8g、過酸化ベンゾイル6.75g、プロピレンカーボネート100gを加え40℃にて4時間攪拌した。さらにDBS1.25gを添加して、60℃にて2時間撹拌した。プロピレンカーボネートで置換したアニオン交換樹脂(レバチットMP62WS ランクセス社製)を30g添加して24時間攪拌後、アニオン交換樹脂を除去し、超音波ホモジナイザーにて処理し、プロピレンカーボネートで調液し、化学式(1)で表される構成単位を主に含む導電性高分子C1のプロピレンカーボネート分散液(不揮発分1.0質量%)を得た。
【0116】
導電性高分子C1のR
1は、化学式(5)で表される。
【化5】
【0117】
・製造例C2(導電性高分子C2の製造)
製造例C1で得られたプロピレンカーボネート分散液にエポキシヘキシル1.2gを添加し、80℃にて6時間撹拌し、導電性高分子のカルボキシル基とエポキシヘキシルのエポキシ基を反応させ、アルキル変性された導電性高分子C2の分散液を得た。
【0118】
導電性高分子C2のR
1は、化学式(6)で表される。
【化6】
【0119】
・製造例C3(導電性高分子C3の製造)
製造例C2において変性に用いられるエポキシヘキシル1.2gを、片末端エポキシシリコーン(信越化学工業社製「X-22-173DX」)56.4gに変更した以外は、製造例C2と同様の方法で導電性高分子C3の分散液を得た。導電性高分子C3は、変性前の導電性高分子のカルボキシル基がX-22-173DXのエポキシ基と反応してシリコーン変性されている。
【0120】
導電性高分子C3のR
1は、化学式(7)で表される。
【化7】
【0121】
・製造例C4(導電性高分子C4の製造)
1Lフラスコに、片末端エポキシオルガノシロキサン(信越化学工業製 X-22-173BX)30g、2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム1.98g、イソプロピルアルコール23g、トリエチルアミン0.3gを仕込んで混合し、加熱還流下15時間反応させた。反応物に水を加え減圧留去によりイソプロピルアルコールを除去することで酸変性シリコーン化合物の乳化液(不揮発分12.6%)を得た。
【0122】
次に、反応装置に、前記酸変性シリコーン化合物の乳化液142.5g、濃塩酸1.6gエチレンジオキシチオフェン(EDOT)3.2g、硫酸鉄0.09gをそれぞれ混合し、30℃で30分攪拌した。その後、上記混合物に、過硫酸アンモニウム5.9gをイオン交換水50gに溶かした水溶液を1時間かけて滴下した。その後、30℃の状態を保ち5時間反応させた。得られた反応液を固液分離することで導電性高分子C4の湿体品を得た。該湿体品を24時間、0℃で凍結乾燥し、導電性高分子C4の乾燥粉末を得た。次に、導電性高分子C4の乾燥粉末を、メチルエチルケトンに対して不揮発分が1.5%になる比率で混合し、プローブ型超音波ホモジナイザーで処理を行い、導電性高分子C4の有機溶剤分散液を得た。
【0123】
・製造例C5(導電性高分子C5の製造)
2Lフラスコに、2-ソジウムスルホエチルメタクリレート(2-NaSEMA)50g、ベンジルメタクリレート(BzMA)55g、2-エチルヘキシルメタクリレート(2-EHA)47g、水150gおよびイソプロピルアルコール300gを仕込み、リフラックス温度まで昇温後、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.7g添加して、リフラックス状態のまま18時間重合反応を行った。反応終了後、常温まで冷却し、重合液を得た。
【0124】
次に、前記重合液が入った2Lフラスコにヘキサン500gを添加し、混合液を得た。分液ロートを用い、前記混合液を分液抽出により油層の不純物を除去した。分液後の水層に、1kgのメタノールを1時間かけて滴下して固形分を析出させ、固形分を濾別した。得られた固形物を減圧下、100℃で24時間乾燥した後、乳鉢で粉砕して高分子化合物の粉体を得た。
【0125】
次に、前記高分子化合物16.1g、イオン交換水200gおよび35%塩酸水溶液6gを1フラスコに秤り取り、60℃で加熱攪拌を行い、均一な高分子化合物水溶液を得た。前記高分子化合物水溶液を冷却後、アニリン4.65gを秤量し加えた。この混合物を攪拌・溶解したところ、均一な乳化液となった。別に、水30g、ペルオキソ二硫酸アンモニウム10gを計量、混合し、この混合物を0℃で2時間かけて乳化液の入ったフラスコ中に滴下した。滴下終了後、室温(25℃)に戻し、48時間攪拌を行った。
【0126】
反応終了後の重合溶液を濾別し、得られた結晶を水に再分散して洗浄を行い、再度濾別を行った。前記洗浄を4回繰り返して得た水を含んだ固形物を取り出し、減圧下40℃にて96時間乾燥して導電性高分子C5の乾燥粉末を得た。
導電性高分子C5の乾燥粉末を、メチルエチルケトンに対して不揮発分が1.5%になる比率で混合し、プローブ型超音波ホモジナイザーで処理を行い、導電性高分子C5の有機溶剤分散液を得た。
【0127】
2.(メタ)アクリル系ポリマーの製造
・製造例A1((メタ)アクリル系ポリマーA1の製造)
撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応装置に、アクリル酸ブチル:96.8質量部、アクリル酸:0.2質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル:3質量部を仕込み、次に酢酸エチルをモノマー濃度が50質量%になる配合量にて仕込んだ。次いで、モノマー成分の合計100質量部に対して2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換しながら攪拌を行い60℃に昇温した後、4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、(メタ)アクリル系ポリマーA1の溶液(不揮発分15%)を得た。(メタ)アクリル系ポリマーA1の重量平均分子量(Mw),Mw/Mn,80℃におけるポリマー単独の貯蔵弾性率は、表1に示す通りであった。
【0128】
・製造例A2~A9((メタ)アクリル系ポリマーA2~A9の製造)
モノマーの組成比を表1に示すように変更した以外は、製造例A1と同様の方法で(メタ)アクリル系ポリマーA2~A9を重合し、以下に示す方法でMw、Mw/Mn、80℃貯蔵弾性率の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0129】
【0130】
表中の略称の意味は、以下の通りである。
BA:アクリル酸ブチル
MEA:アクリル酸2-メトキシエチル
MA:アクリル酸メチル
BzA:アクリル酸ベンジル
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
AA:アクリル酸
2HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0131】
<Mw,Mn>
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により、下記条件で求めた。
・測定装置:HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
・GPCカラム構成:以下の4連カラム(すべて東ソー株式会社製)
(1)TSKgel HxL-H(ガードカラム)
(2)TSKgel GMHxL
(3)TSKgel GMHxL
(4)TSKgel G2500HxL
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・サンプル濃度:1.5%(w/v)(テトラヒドロフランで希釈)
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・標準ポリスチレン換算
【0132】
<80℃貯蔵弾性率>
表中の80℃貯蔵弾性率は、以下の方法で測定した。
剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるように測定用サンプル(ここでは、(メタ)アクリル系ポリマー)を、ドクターブレードを用いて液温25℃で塗布し、90℃で3分間乾燥させ、粘着シートを得た。前記粘着シートから得られる粘着剤層のみを複数用意し、これを積層することで、1mm厚の試験片を作製した。この試験片を用いて、アントンパール(AntonPaar)社製のモジュラーコンパクトレオメーターMCR300を用い、80℃における貯蔵弾性率を測定した。なお、測定周波数は1Hzとした。
【0133】
3.粘着剤組成物の製造
表2~表5に示す配合(質量部)で、表2~表5に示す各種成分を混合して評価用の粘着剤組成物を製造した。導電性高分子及び(メタ)アクリル系ポリマーは、上記製造例で得られた分散液又は溶液の状態で混合した。導電性高分子及び(メタ)アクリル系ポリマーの配合量は、分散液又は溶液中の固形分の量を示す。
【0134】
4.粘着性偏光フィルムの製造
「3.粘着剤組成物の製造」で得られた粘着剤組成物を、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に乾燥後の膜厚が25μmとなるように、ドクターブレードを用いて液温25℃で塗布し、90℃で3分間乾燥させ、粘着シートを得た。
【0135】
次に、得られた粘着シートと、表2~表5に示す偏光フィルムとを、前記塗膜と偏光フィルムとが接するように貼り合わせ、23℃/50%RHの条件で7日間静置し、実施例・比較例の粘着性偏光フィルムを得た。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
上記表中に記載の成分及び部材の詳細は、以下の通りである。
【0141】
((メタ)アクリル系ポリマー)
・(メタ)アクリル系ポリマーA1~A9:製造例A1~A9で製造したもの
【0142】
(導電性高分子)
・導電性高分子C1~C5:製造例C1~C5で製造したもの
【0143】
(水添ブロック共重合体)
ゴム系ポリマー1及び2の詳細は、以下の通りである。Mw及び80℃貯蔵弾性率は、「2.(メタ)アクリル系ポリマーの製造」で説明した方法で測定した。
・ゴム系ポリマー1(SEPS50質量%とSEP50質量%との混合物、水添率90%超、スチレン含有量15質量%、Mw:13万、80℃貯蔵弾性率:720kPa)
・ゴム系ポリマー2(SEPS50質量%とSEP50質量%との混合物、水添率90%超、スチレン含有量20質量%、Mw:15万、80℃貯蔵弾性率:920kPa)
【0144】
(粘着付与樹脂)
・FMR-0150(軟化点145℃の芳香族系粘着付与樹脂:三井化学製)
・TH-130(軟化点130℃テルペンフェノール型粘着付与樹脂:ヤスハラケミカル製)
・FTR-6100(軟化点95℃の芳香族系粘着付与樹脂:三井化学製)
【0145】
(軟化剤)
・LV-100(Mn500のポリブテン:ENEOS製)
・HV-300(Mn1400のポリブテン:ENEOS製)
【0146】
(その他の成分)
・架橋剤:東ソー社製「コロネートL」
・シランカップリング剤:信越化学工業社製「KBM-403」
・酸化防止剤:アデカスタブAO-330(ヒンダードフェノール系酸化防止剤:ADEKA製)
【0147】
(偏光フィルム)
偏光フィルムは、表6に示す構成のものを用いた。
【0148】
【0149】
保護層部材の略称の意味は、以下の通りである。
COP:シクロオレフィンポリマー
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PET:ポリエチレンテレフタレート
TAC:トリアセチルセルロース
【0150】
偏光フィルムの単独収縮率は、以下の方法で測定した。
偏光フィルム160mm(MD方向)×25mm(TD方向)の大きさに裁断して試験片を作成した。この試験片を単独で23℃50%RHの環境下に10分間放置し、その後、試験片の長辺方向の寸法(Xp)を測定した。次に、前記試験片を単独で80℃の条件下で72時間放置した後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷し、偏光フィルムの長辺方向の寸法(Yp)を測定した。
得られたXp、Ypから単独収縮率(((Xp-Yp)/Xp)×100)を計算した。
【0151】
5.試験用の積層体の作成
粘着性偏光フィルムを160mm(MD方向)×25mm(TD方向)の大きさに裁断して試験片を作成した。前記試験片からPETフィルムを剥離し、ラミネーターロールを用いて、粘着性偏光フィルムを厚さ2mmの無アルカリガラス板をガラス基板として有する液晶パネルの片面に、粘着剤層と無アルカリガラス板とが接するように貼着したものを50℃/5気圧に調整されたオートクレーブ中に20分間保持して、試験用の積層体を作成した。
【0152】
6.評価
以下の基準に従って、各種評価を行った。その結果を表2~表5に示す。
【0153】
実施例・比較例を比較すると、実施例の積層体は、比較例の積層体に比べて、積層体収縮率、Xr,Yr,Yr/Xrが小さく、80℃dry耐熱耐久性に優れていることが分かる。
【0154】
<粘着剤層の80℃貯蔵弾性率>
粘着剤層の80℃貯蔵弾性率は、測定用サンプルとして、粘着剤層を構成する粘着剤組成物を用い、「2.(メタ)アクリル系ポリマーの製造」で説明した方法で測定した。
【0155】
<粘着剤層の80℃ズレ量>
粘着性偏光フィルムを幅10mm×長さ100mmにカットし、PETフィルムを剥がして無アルカリガラス上に、粘着剤層が前記ガラスに接するように、かつ10mm×10mmの貼り合わせ面積となるように貼り合わせ、測定用試験片を得た。
【0156】
前記測定用試験片を、50℃/5気圧に調整されたオートクレーブ中に20分間保持し、23℃50%RH環境下で1時間静置した。次に前記試験片を、微少クリープ測定機(英弘精機(株)社製 機種名:TA.TX.PLUS)のチャンバーBOX内に固定用チャック部分の長さ15mmにてセットした。
【0157】
前記チャンバーBOX内を80℃まで加熱して、測定温度にて40分間静置後に、引張荷重800g、引張時間1時間にて、前記試験片における前記粘着性偏光フィルムを、該偏光フィルムと前記ガラスとの接着面に平行にかつ前記偏光フィルムの長さ方向に引っ張り、 前記試験片における前記ガラスと偏光フィルムとの貼り合わせ部分のズレ量(μm)を測定した。
【0158】
<積層体収縮率>
試験用の積層体を23℃50%RHの環境下で10分間放冷し、積層体中の偏光フィルムの長辺方向の寸法(Xs)を測定した。次に、積層体を、80℃の条件下で72時間放置した後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷し、積層体中の偏光フィルムの長辺方向の寸法(Ys)を測定した。得られたXs、Ysから積層体収縮率(((Xs-Ys)/Xs)×100)を計算した。
【0159】
<表面抵抗率>
試験用の積層体を23℃50%RHの環境下で10分間放冷し、液晶パネルから粘着性偏光フィルムを剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥がして露出させた粘着剤層の表面抵抗率(Xr)を、抵抗率計(ハイレスタUX MCP-HT800、三菱化学アナリティック)を用い、印加電圧1000Vで、JIS-K-6911に準じて行った。
【0160】
また、前記積層体を、80℃の条件下で72時間放置した後、23℃50%RHの環境下で10分間放冷し、液晶パネルから粘着性偏光フィルムを剥離角度90°、剥離速度300mm/minで剥がした以外は表面抵抗率(Xr)と同様にして、表面抵抗率(Yr)を測定した。
【0161】
<80℃dry耐熱耐久性>
試験用の積層体を温度80℃dryの条件下で500時間放置した後の積層体の状態を目視で観察し、積層体の80℃dry耐熱耐久性を以下の基準で評価した。
○:粘着剤層にシワ・発泡・剥がれが何れも存在しない
△:粘着剤層にシワが存在するが、発泡・剥がれは何れも存在しない
×:粘着剤層に発泡又は剥がれが存在する