(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】CSF-1Rキナーゼ阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20240912BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240912BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240912BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240912BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2022552235
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 CN2021078098
(87)【国際公開番号】W WO2021170078
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】202010128115.4
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522341377
【氏名又は名称】上▲海▼▲潤▼石医▲薬▼科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】522116605
【氏名又は名称】中国科学院上▲海▼▲薬▼物研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲アオ▼
(72)【発明者】
【氏名】耿 美玉
(72)【発明者】
【氏名】艾 ▲菁▼
(72)【発明者】
【氏名】王 彩霞
(72)【発明者】
【氏名】彭 霞
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】丁 健
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512011(JP,A)
【文献】Manman WEI et al.,“Design, synthesis and biological evaluation of a series of novel 2-benzamide-4-(6-oxy-N-methyl-1-naphthamide)-pyridine derivatives as potent fibroblast growth factor receptor (FGFR) inhibitors”,European Journal of Medicinal Chemistry,2018年06月,Vol. 154,p.9-28,DOI: 10.1016/j.ejmech.2018.05.005
【文献】Xi-fei JIANG et al.,“SOMCL-085, a novel multi-targeted FGFR inhibitor, displays potent anticancer activity in FGFR-addicted human cancer models”,Acta Pharmacologica Sinica,2017年09月14日,Vol. 39, No. 2,p.243-250,DOI: 10.1038/aps.2017.96
【文献】Sangeetha PALAKURTHI et al.,“The Combined Effect of FGFR Inhibition and PD-1 Blockade Promotes Tumor-Intrinsic Induction of Antitumor Immunity”,Cancer Immunology Research,2019年09月01日,Vol. 7, No. 9,p.1457-1471,DOI: 10.1158/2326-6066.CIR-18-0595
【文献】がん情報サイト「オンコロ」「免疫チェックポイント阻害薬」[online],2020年02月12日,検索日:2024年2月28日、インターネット<URL:https://oncolo.jp/dictionary/immunecheckpintinhibitor>
【文献】Xia PENG et al.,“Preclinical evaluation of 3D185, a novel potent inhibitor of FGFR1/2/3 and CSF-1R, in FGFR-dependent and macrophage-dominant cancer models”,Journal of Experimental & Clinical Cancer Research,2019年08月22日,Vol. 38, No. 1,DOI: 10.1186/s13046-019-1357-y
【文献】Jinho KANG et al.,“A Selective FGFR inhibitor AZD4547 suppresses RANKL/M-CSF/OPG-dependent ostoclastogenesis and breast cancer growth in the metastatic bone microenvironment”,Scientific Reports,2019年06月19日,Vol. 9, No. 1,DOI: 10.1038/s41598-019-45278-w
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患の治療のために使用される、式(I):
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物であって、
前記CSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患は、CSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍、TAMs富化腫瘍、過形成、免疫疾患、および炎症性疾患からなる群から選ばれ、
前記CSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍は、CSF-1/CSF-1R依存性の白血病および腱滑膜巨細胞腫からなる群から選ばれ、
ならびに前記TAMs富化腫瘍は、TAMs富化結腸直腸癌である、
医薬組成物。
【請求項2】
免疫調節のために使用される、式(I):
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物であって、
前記免疫調節は、免疫増強であり、あるいは
前記免疫調節は、腫瘍免疫抑制状態の改善となる免疫増強であり、あるいは
前記免疫調節は、M2型偏りのマクロファージの生存を阻害すること、マクロファージのM2偏りの極性化表現型、およびマクロファージのM2偏りの極性化表現型がCD8
+T細胞に及ぼす抑制効果を逆転させること、生体免疫抑制性微小環境を再構築することである腫瘍免疫抑制状態の改善となる免疫増強である、
医薬組成物。
【請求項4】
免疫チェックポイント薬剤との組み合わせにおける腫瘍の治療または阻害のために使用される、式(I):
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物
であって、
前記免疫チェックポイント薬剤は、anti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体である、
医薬組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の医薬組成物であって、
前記腫瘍は、前記免疫チェックポイント薬剤に対する感受性の低い腫瘍である、
医薬組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載の医薬組成物であって、
前記腫瘍は結腸癌または結腸直腸癌である、
医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、経口投与、腫瘍内投与、直腸投与、非経口投与または局所投与のために製剤される、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2020年02月28日に中国国家知識産権局に提出された出願番号が202010128115.4で、発明名称が「CSF-1Rキナーゼ阻害剤の使用」である先行発明特許出願の優先権を請求する。この先願の全文は援用により本願に完全に組み込まれている。
【0002】
本発明は、医薬分野に属し、具体的には、CSF-1Rキナーゼ阻害剤の、CSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患の治療または腫瘍免疫抑制状態の改善のための医薬の製造における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
機能全体、分割不可能な腫瘍微小環境としては、腫瘍進行に重要な役割を果たしている。微小環境中の多数の間質細胞、例えば腫瘍関連マクロファージ、樹状細胞(DC)、調節性T細胞(Treg)、線維芽細胞、殺傷性T細胞(キラーT細胞)など、腫瘍細胞と相互作用することにより腫瘍の進行を促進する。
【0004】
ここで、腫瘍関連マクロファージ、(tumor-associated macrophages:TAMs)は、重要な微小環境間質細胞であり、一部の腫瘍組織中のマクロファージの割合は50%に達することができ、通常TAMsは腫瘍中の大量浸潤は腫瘍患者の予後不良の重要な指標と考えられている。TAMsはエフェクターT細胞の殺傷効果を直接阻害し、協調的に腫瘍免疫抑制性微小環境を促進するだけでなく、腫瘍内血管形成を促進することによって、多環節的に腫瘍細胞の増殖と転移を促進する。TAMsに腫瘍抑制効果を有するのはM1型偏りのマクロファージであり、M2型偏りのマクロファージは腫瘍促進効果を有すると、一般的に考えられている。コロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)はマクロファージに発現し、腫瘍関連マクロファージ(TAMs)のM2極性化表現型(M2 polarization phenotype)への分化、TAMの維持、生存、増殖に重要である。このため、CSF-1R軸線を標的とし、TAMのM2偏りの腫瘍促進表現型を阻害し、生体免疫抑制性微小環境を再構築し、殺傷性T細胞を有効に活性化することは、すでに重要な抗腫瘍標的化戦略となり、膵臓癌、肺癌、結腸癌、乳癌などの様々な難治性や多発性腫瘍タイプへの応用に重要なポテンシャルを持っている。
【0005】
日本製薬企業第一三共株式会社が開発した最初のCSF-1R標的治療薬であるペキシダルチニブ(Pexidartinib、PLX3397、商品名:TURALIO)は、2019年8月3日に米国で発売され、成人患者の稀少疾患である腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の治療に承認された。しかし、当該医薬は毒性副作用が比較的大きく、医薬ラベルの中に黒い枠付き警告が添付されており、この医薬は深刻で潜在的な致命的肝障害のリスクがあることを示している。見られるように、多発性固形腫瘍を治療するための安全で有効なCSF-1R標的の薬剤の開発にはまだ成功していない。そのため、臨床ニーズを満たすための更なる研究が必要である。
【0006】
WO2017140269A1には、式(A)の化合物、特に式(I)で表される構造を有する化合物が開示されている。
【化1】
【0007】
これらの化合物は優れた活性を有するFGFR阻害剤であり、腫瘍細胞増殖を直接抑制することができる。本出願の発明者は研究開発の過程において、化合物IはCSF-1Rキナーゼの強力な阻害剤でもあり、腫瘍関連マクロファージがM2偏りの腫瘍促進表現型を抑制でき、活性化CD8+T細胞を活性化し、腫瘍免疫抑制性微小環境に拮抗し、免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍薬効を増強し、複数のマウス由来細胞の皮下移植腫瘍モデルと遺伝子組換えモデルに顕著な薬効を示すことを驚くべきことに発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
CTLA-4抗体、anti-PD-1/anti-PD-L1抗体をはじめとする免疫チェックポイント薬剤は、過去10年間の癌治療において最も重要な進展であり、このような免疫療法は抗腫瘍免疫力を修復させ、免疫脱出を逆転させ、腫瘍細胞死を促進し、その適応症は拡大しつつあり、従来の多くの標準治療法を再構築してきた。しかし、免疫系が過度に活性化される可能性があり、免疫関連の有害事象が増加していることは無視できない。報告によれば、抗CTLA-4抗体であるYervoyで治療した患者の60%高くのが免疫関連の有害事象を経験することが報告されており、そのうちの10~30%が重症(3~4級)の免疫関連有害事象であって用量依存性であった。anti-PD-1抗体で治療した患者の約10%は、疲労、頭痛、関節痛、皮疹、かゆみ、肺炎、下痢および/又は大腸炎、肝炎および内分泌疾患を含む3級以上(≧3級)の免疫関連有害事象を経験した。抗CTLA-4抗体とanti-PD-1抗体の併用投与は免疫関連の有害事象の発生率と重症度を増加させた。anti-PD-L1抗体Bavencio治療を受けている患者の一部には、主に1~3級の重症度である輸液関連反応を経験した。通常、これらの副作用は用量と関連があり、用量を低下させると副作用を低減または軽減することができるが、同時に抗腫瘍効果の低下をもたらすことも多い。したがって、どのように免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍効果を増強するか、または低用量条件下で抗腫瘍作用を発揮させるかは解決すべき緊急の技術的課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩の、CSF-1R阻害剤医薬の製造における使用を提供する。
【化2】
【0011】
[式中、Xは、CHおよびNからなる群から選ばれ、
環Aは置換もしくは非置換の6~10員のアリール、および置換もしくは非置換の5~12員のヘテロアリールからなる群から選ばれてもよく、ここで、前記の置換とは、基上の1つ以上の水素原子がC1-C8アルキル、C1-C8アルコキシル、C1-C8アルキルアミノ、ハロゲン、およびハロC1-C8アルキルからなる群から選ばれる置換基で置換されていることを意味し、
R1は-CONHR3および-COOR3からなる群から選ばれ、
R2は、置換もしくは非置換のC1-C8アルキル、置換もしくは非置換のC1-C8アルコキシル、置換もしくは非置換の4~10員のヘテロシクロ基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のC1-C8アルキルアミノ基、および-NHCOR3からなる群から選ばれ、ここで、前記の置換とは、基をさらにC1-C8アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシルC1-C8アルキル、-COOR3、アミノ置換C3-C10シクロアルキル、非置換または1つ以上のハロゲン原子、およびヒドロキシルもしくはC1-C8アルキルで置換された4~10員のヘテロシクロアルキルからなる群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていることを意味し、
R3は、水素、C1-C8アルキル、およびC2-C10アルケニルからなる群から選ばれる。]。
【0012】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、環Aは、置換もしくは非置換の6~10員のアリール、および置換もしくは非置換の5~10員のヘテロアリールからなる群から選ばれる。
【0013】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、環Aは、置換もしくは非置換の6~10員のアリール、および置換もしくは非置換の5~6員のヘテロアリールからなる群から選ばれる。
【0014】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、環Aは、置換もしくは非置換の基であるベンゼン環、ナフタリン環、ピリジン環、ピラジン環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、インドール環、ピリミジン環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、およびイソキノリン環からなる群から選ばれる。
【0015】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、環Aは、置換もしくは非置換のベンゼン環、置換もしくは非置換チアゾール環、置換もしくは非置換のオキサゾール環、および置換もしくは非置換のピリミジン環からなる群から選ばれる。
【0016】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、R2は、置換もしくは非置換のC1-C4アルキル、置換もしくは非置換のC1-C4アルコキシル、置換もしくは非置換の5~6員のヘテロシクロ基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のC1-C4アルキルアミノ基、および-NHCOR3からなる群から選ばれ、ここで、前記の置換とは、基をさらに、C1-C8アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシルC1-C8アルキル、-COOR3、アミノ置換C3-C10シクロアルキル、非置換または1つ以上のハロゲン原子、およびヒドロキシルもしくはC1-C8アルキルで置換された4~10員のヘテロシクロアルキルからなる群から選ばれる1つ以上の置換基で置換されていることを指す。
【0017】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、R3は、水素、C1-C6アルキル、およびC2-C6アルケニルからなる群から選ばれる。
【0018】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、R3は、水素、C1-C4アルキル、およびC2-C4アルケニルからなる群から選ばれる。
【0019】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物において、R3は、水素、メチル、ビニルからなる群から選ばれる。
【0020】
一実施形態において、前記の式(A)の化合物は、好ましくは、以下の式(I)で表される化合物(本明細書において化合物Iともいう)である。
【化3】
【0021】
本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の、CSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患を治療する医薬の製造における使用を提供する。
【0022】
本発明に係るCSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患は、癌または腫瘍、過形成、免疫疾患、炎症などを含み、好ましくは、癌または腫瘍である。本発明に係る癌または腫瘍は、好ましくはCSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍、TAMs富化腫瘍である。好ましくは、前記CSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍は、CSF-1/CSF-1R依存性の白血病、腱滑膜巨細胞腫などを含む。好ましくは、TAMs富化腫瘍は、結腸癌または結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0023】
一態様によれば、本発明は、上記の式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の、免疫調節剤(免疫調節用医薬)の製造における使用を提供し、前記免疫調節は、好ましくは免疫増強である。前記免疫増強は、例えば腫瘍免疫抑制状態の改善であってもよい。前記腫瘍免疫抑制状態の改善は、好ましくはM2型偏りのマクロファージの生存を阻害すること、マクロファージのM2型偏りの極性化表現型およびマクロファージのM2偏りの極性化表現型がCD8+T細胞に及ぼす抑制効果を逆転させること、生体免疫抑制性微小環境を再構築することである。
【0024】
一態様によれば、本発明は、上記の式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の、M2型偏りの極性化表現型マクロファージの増殖を抑制するための医薬の製造における使用を提供する。
【0025】
一態様によれば、本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の、腫瘍を治療または抑制するための医薬の製造における使用をさらに提供し、好ましくは、前記腫瘍は免疫チェックポイント薬剤に非感受性である。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などであり、前記腫瘍は結腸癌および結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0026】
一態様によれば、本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の、免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍効果を増強するための医薬の製造における使用をさらに提供する。ここで、前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくはanti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体である。
【0027】
一態様によれば、本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント薬剤の組み合わせの、抗腫瘍医薬の製造における使用をさらに提供する。ここで、前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくはanti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体である。
【0028】
一態様によれば、本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の、免疫チェックポイント薬剤との組み合わせの抗腫瘍医薬の製造における使用をさらに提供する。ここで、前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくはanti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体である。
【0029】
さらに、上記の使用において、前記医薬には、治療有効量の式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩、および任意に選択的な薬学的に許容される賦形剤または担体を含む。
【0030】
本発明に係る医薬の投与方式は特に限定されず、代表的な投与方式としては、経口投与、腫瘍内投与、直腸投与、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与)および局所投与などが挙げられるが、これらに限定されない。それに応じて、本発明に係る医薬は、経口投与剤形、注射剤形、局所投与剤形または外用剤形などを含む臨床的に許容される各種の剤形に製剤化することができる。
【0031】
好ましくは、本発明に係る式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩は、臨床的に単独で使用してもよく、他の治療成分と組み合わせて使用してもよい。前記他の治療成分は、抗腫瘍医薬または免疫調節剤から選ばれ、例えば、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などを含む免疫チェックポイント薬剤と組み合わせて使用してもよい。臨床上の使用の便宜上、本発明に係る化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩は、他の治療成分と組み合わせて複合医薬を製造することができる。前記の他の治療成分は、好ましくは抗腫瘍医薬または免疫調節剤であり、例えば免疫チェックポイント薬剤であり、前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくはanti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体などである。
【0032】
本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント薬剤を含む医薬組成物さらに提供する。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などである。
【0033】
本発明は、治療有効量の本発明に係る化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩を、治療を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与することを含む前記医薬の使用方法をさらに提供する。
【0034】
本発明は、治療有効量の本発明に係る式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩を、前記疾患の治療を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与するステップを含むCSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患の治療方法を提供する。本発明に係るCSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患は、癌または腫瘍、過形成、免疫疾患、炎症などを含み、好ましくは、癌または腫瘍である。上記の癌または腫瘍は、好ましくはCSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍、TAMs富化腫瘍である。前記CSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍は、CSF-1/CSF-1R依存性の白血病、腱滑膜巨細胞腫などを含む。TAMs富化腫瘍は、結腸癌または結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0035】
本発明は、治療有効量の本発明に係る式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩を、免疫調節を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与するステップを含む免疫調節の方法をさらに提供する。前記免疫調節は、好ましくは免疫増強であり、前記免疫増強は、例えば腫瘍免疫抑制状態の改善であってもよい。前記腫瘍免疫抑制状態の改善は、好ましくはM2型偏りのマクロファージの生存を阻害すること、マクロファージのM2型偏りの極性化表現型、およびマクロファージのM2偏りの極性化表現型がCD8+T細胞に及ぼす抑制効果を逆転させること、生体免疫抑制性微小環境を再構築することである。
【0036】
本発明は、治療有効量の本発明に係る式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩を、腫瘍の治療または抑制を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与するステップを含む腫瘍の治療または抑制方法をさらに提供し、好ましくは、前記腫瘍は免疫チェックポイント薬剤に非感受性である。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などであり、前記腫瘍は結腸癌および結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0037】
本発明は、本発明に係る式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩と、免疫チェックポイント薬剤との組み合わせを、腫瘍の治療または抑制を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与するステップを含む免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍薬効の増強方法をさらに提供する。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などである。
【0038】
本発明は、治療有効量の本発明に係る式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩と、免疫チェックポイント薬剤との組み合わせを、腫瘍の治療または抑制を必要とする哺乳類(例えば、ヒト)に投与するステップを含む腫瘍の治療または抑制方法さらに提供する。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などであり、前記腫瘍は結腸癌および結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書に記載の「治療有効量」とは、薬学的に有効な投与用量、すなわち重篤な副作用を起こさずに症状を有意に改善するのに活性化合物(すなわち式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩)の十分な量を指す。体重60kgのヒトに対しては、式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩の1日投与量は、通常0.01~2,000mgであり、好ましくは0.5~500mg、または1~500mgであり、または0.5~250mg、または0.5~200mg、または0.5~150mg、または0.5~100mg、または0.5~50mg、または0.5~40mg、または0.5~30mgであり、最も好ましくは0.5~25mgである。例示的な有効投与量は、例えば、0.5mg、0.75mg、0.87mg、1mg、1.25mg、1.5mg、1.75mg、2mg、2.5mg、2.75mg、3mg、3.25mg、3.5mg、3.75mg、4mg、4.25mg、4.5mg、4.75mg、5mg、5.25mg、5.5mg、5.75mg、6mg、6.25mg、6.5mg、6.75mg、7mg、7.25mg、7.5mg、7.75mg、7.87mg、8mg、8.25mg、8.5mg、8.75mg、9mg、9.25mg、9.5mg、9.75mg、10mg、10.5mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、22mg、25mgが挙げられる。好ましくは、上記の1日投与量は、一般式(A)の化合物、特に、化合物Iに基づく量である。一日一回の単回投与し、1日に複数回投与し、間隔をおいて投与することができる。anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体の投与用量は、具体的な抗体の種類、癌の種類、および癌の進行段階などの状況に依存する。各投与用量は、0.5mg/kg~30mg/kg、好ましくは1~20mg/kgとすることができる。例えば、体重60kgのヒトに対しては、各投与用量は、通常1mg~1800mg、例えば、50mg~1200mg、または100mg~900mg、150mg~600mg、または200mg~500mgとすることができる。各投与の例示的な用量は、例えば、60mg、100mg、120mg、150mg、180mg、210mg、240mg、270mg、300mg、330mg、360mg、400mg、500mg、600mg、900mg、1200mgなどである。間隔投与において、投与頻度は、例えば、3~7日に1回投与、または1~6週間に1回投与、例えば、3日に1回投与、5日に1回投与、1週間に1回投与、10日に1回投与、2週間に1回投与、3週間に1回投与、4週間に1回投与、6週間に1回投与などをした。具体的な投与用量および投与頻度は、投与経路や患者の健康状態などの要因を考慮に入れるべきであり、これらのすべては、従来のスキルに従って熟練した医師によって決定することができる。前記投与方式は特に限定されず、代表的な投与方式としては、経口投与、腫瘍内投与、直腸投与、非経口投与(静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与)、および局所投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明は、前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、CSF-1R阻害剤として使用するための化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0041】
本発明は、癌または腫瘍、過形成、免疫疾患、炎症などを含む、好ましくは癌または腫瘍を含むCSF-1Rキナーゼシグナル伝達経路に関連する疾患を治療するための前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。本発明に係る癌または腫瘍は、好ましくはCSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍、TAMs富化腫瘍である。好ましくは、前記CSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍は、CSF-1/CSF-1R依存性の白血病、腱滑膜巨細胞腫などを含む。好ましくは、TAMs富化腫瘍は、結腸癌または結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0042】
本発明は、生体の免疫調節に使用するための前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。前記生体の免疫調節は、好ましくは、免疫増強である。前記免疫増強は、例えば腫瘍免疫抑制状態の改善であってもよい。前記腫瘍免疫抑制状態の改善は、好ましくは、M2型偏りのマクロファージの生存を阻害すること、マクロファージのM2型偏りの極性化表現型、およびマクロファージのM2偏りの極性化表現型がCD8+T細胞に及ぼす抑制効果を逆転させること、生体免疫抑制性微小環境を再構築することである。
【0043】
本発明は、M2型偏りの極性化表現型マクロファージの増殖を阻害するための前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。
【0044】
本発明は、腫瘍を治療または阻害するための前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。好ましくは、前記腫瘍は免疫チェックポイント薬剤に非感受性である。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などであり、前記腫瘍は結腸癌および結腸直腸癌を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明は、免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍薬効を増強するための前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。そのうち前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくはanti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体である。
【0046】
本発明は、哺乳類(例えば、ヒト)における腫瘍を治療または阻害するための、免疫チェックポイント薬剤と組み合わせて使用される前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩をさらに提供する。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくは、anti-PD-1抗体、anti-PD-L1抗体などである。
【0047】
一態様によれば、本発明は、哺乳類(例えば、ヒト)における腫瘍を治療または阻害するための前記式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩および免疫チェックポイント薬剤を含む医薬組成物をさらに提供する。前記免疫チェックポイント薬剤は、好ましくはanti-PD-1抗体、またはanti-PD-L1抗体である。
【0048】
本明細書に記載のCSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍とは、CSF-1/CSF-1Rの高発現または高活性化の癌または腫瘍を指す。前記CSF-1/CSF-1Rの高発現または高活性化は、当業者が当該技術分野の通常の測定方法(酵素免疫、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、組織チップ、遺伝子検出などの方法を含むが、これらに限定されない)を用いて癌または腫瘍の組織および/または細胞におけるCSF-1/CSF-1Rの発現レベルまたは活性化レベルを検出し、その発現レベルまたは活性化レベルは正常レベルの130%以上、より好ましくは150%以上、好ましくは175%以上、さらに好ましくは200%以上、特に好ましくは250%以上、最も好ましくは300%以上である。前記正常レベルは、正常集団に相応する組織および/または細胞におけるCSF-1/CSF-1Rの発現レベルまたは活性化レベルであってもよく、同じ患者の癌周組織および/または細胞におけるCSF-1/CSF-1Rの発現レベルまたは活性化レベルであってもよい。
【0049】
本明細書に記載のTAMs富化腫瘍とは、腫瘍組織においてTAMs浸潤が豊富である腫瘍を指し、当業者が当該技術分野の通常の測定方法(酵素免疫、免疫組織化学、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、組織チップ、遺伝子検出などの方法を含むが、これらに限定されない)を用いてTAMsの表面マーカーを検出しまたはTAMs計数を行い、腫瘍組織におけるTAMsの表面マーカーの発現レベルと癌周組織における対応の表面マーカーの発現レベルとが異なるか、または腫瘍組織におけるTAMs計数は、癌周組織におけるTAMの発現レベルの130%以上、好ましくは150%以上、より好ましくは175%以上、さらに好ましくは200%以上、特に好ましくは250%以上、最も好ましくは300%以上である。TAMs浸潤が豊富であると認定することができ、前記腫瘍はTAMs富化腫瘍と認定することができる。前記TAMsの表面マーカーには、一般的なTAMs表面マーカー、腫瘍促進マクロファージの表面マーカー、腫瘍抑制マクロファージの表面マーカーを含むが、これらに限定されない。前記一般的なTAMs表面マーカーは、CD14、CD11c、CD68および/またはCD11bなどを含むが、これらに限定されなく、好ましくはCD68および/またはCD11bである。前記腫瘍促進マクロファージの表面マーカーは、CSF1R、CSF1、CD115、CD206、PPARG、ARG1、CD163、CD301、Dectin-1、PDL2、Fizz1、CD204、PD-L1、Arginase-I、YM1、MGL2、Osteopontin、MMPs、またはCCR2などを含むがこれらに限定されなく、好ましくはCD206である。前記腫瘍抑制マクロファージの表面マーカーは、IL1a、IL1b、IL6、NOS2、TLR2、TLR4、CD80、CD86、MHC-II、CD38、CD40、CD64、HLA-DR(CD74)またはCD169などを含むがこれらに限定されなく、好ましくはCD86および/またはMHC-IIである。前記表面マーカーの発現レベルが異なることは、以下のようなことを指す。前記表面マーカーが一般的なTAMsの表面マーカーである時に、腫瘍組織における前記の表面マーカーの発現レベルが癌周組織における対応の表面マーカーの発現レベルの130%以上、好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上であり、前記表面マーカーが腫瘍促進マクロファージの表面マーカー(例えば、CD206など)である時に、腫瘍組織における前記の表面マーカーの発現レベルは、癌周組織における対応の表面マーカーの発現レベルの130%以上、好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上である。好ましくは、前記表面マーカーは、腫瘍抑制マクロファージの表面マーカー(例えば、CD86および/またはMHC-IIなど)を含む時に、腫瘍組織における前記の腫瘍抑制マクロファージの表面マーカーの発現レベルは、癌周組織における対応の表面マーカーの発現レベルの80%以下、好ましくは50%以下である。
【0050】
本明細書の文脈において、前記腫瘍が免疫チェックポイント薬剤に非感受性であるということは、前記腫瘍が通常用量の免疫チェックポイント薬剤を用いて治療する時に腫瘍抑制率が50%未満であることを指す。好ましくは、通常用量範囲の下限量の免疫チェックポイント薬剤を用いて治療する時に腫瘍抑制率が30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満である。本発明に係る実施形態において、前記腫瘍抑制率は、腫瘍増殖抑制率TGI(%)で表し、計算式:TGI(%)=100×{1-[(VTreatedFinalday-VTreatedDay0)/(VControlFinalday-VControlDay0)]、そのうちVは腫瘍体積であり、計算式:V=1/2×a×b2、そのうちa、bは、それぞれ腫瘍の長さと幅である。
【0051】
本明細書の文脈において、前記anti-PD-1抗体には、例えば、CD279、nivolumab、pembrolizumab、toripalimab、sintilimab、Camreizumab、tislelizumabなどが挙げられる。前記anti-PD-L1抗体には、例えば、CD274、durvalumab、atezolizumabなどが挙げられる。
【0052】
本発明に記載の数値または数値範囲は、当該技術分野に許容される範囲内で上下に変動させることができ、例えば、前記数値または数値範囲に基づく±10%、または±9%、または±8%、または±7%、または±6%、または±5%、または±4%、または±3%、または±2%、または±1%である。
【0053】
本明細書に記載の式(A)の化合物またはその薬学的に許容される塩、特に化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩は、特に限定されず、好ましくは、無機酸塩、有機酸塩、アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩を含む。前記無機酸塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などを含む。前記有機酸塩には、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などを含む。前記アルキルスルホン酸塩は、メタンスルホン酸塩、エチル基スルホン酸塩などを含む。前記アリールスルホン酸塩には、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などを含む。
【0054】
本明細書の文脈において、用語「ヘテロ環基(複素環基)」は、O、NおよびSからなる群から選ばれる1、2、3、4または5個のヘテロ原子を有する環状基である。
【0055】
本明細書に係るアルキルは、脂肪族アルキルであることが好ましく、直鎖アルキル、分岐鎖状アルキル、スピロシクロアルキル、架橋シクロアルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アルコキシアルキル、アルコキシアシルアルキル、シクロアルキルアルキルであってもよく、非限定的にはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、(tert-ブチル)、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アリル、プロパルギル、シクロブテニル、シクロヘキセニルを含む。「C1-C8」というような用語は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有する対応の基を意図しており、例えば、「C1-C8アルキル」とは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有するアルキルを示し、「C2-C10アルケニル」とは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の炭素原子を有するアルケニルである。
【0056】
本明細書において、前記アルケニルは、ビニル、アクリル、ブテノイル、スチリル、フェニルプロペニル、または類似の基であることが好ましい。
【0057】
本明細書において、前記シクロアルキルは飽和または部分不飽和の単環または多環の環式炭化水素置換基であってもよく、そのうち、シクロアルキルは3~20個の炭素原子を含み、好ましくは3~12個の炭素原子を含み、さらに好ましくは3~10個の炭素原子を含む。単環のシクロアルキルの非限定実施例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどが挙げられる。多環シクロアルキルは、スピロ環、縮合環および架橋環のシクロアルキルが挙げられる。
【0058】
前記ヘテロ環基とは、飽和または部分飽和の単環または多環の環式置換基を指し、そのうち4~10員のヘテロシクロ基を含み、かつ前記のヘテロ環基は、そのうち1個以上のヘテロ原子(窒素、酸素、硫黄)を含有する飽和または不飽和の単環、二環、スピロ環、縮合環、架橋環などである。本明細書に記載のヘテロ環基は、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、N-アルキルまたはアシル置換ピペラジン環、ホモピペリジン環、N-アルキルまたはアシル置換ホモピペリジン環、ピロール、テトラヒドロピロール、7H-プリンなどからなる群から選ばれる基を含むがこれらに限定されない。
【0059】
前記アリールとは、例えばフェニルおよびナフチルなどの共役π電子系を持つ、6~10員の全炭素単環または縮合多環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を指す。前記アリール環は、ヘテロ環基、ヘテロアリールまたはシクロアルキル環と縮合可能であり、非限定的な実施例には、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾピラゾール、キノリン、ベンゾインドール、ベンゾジヒドロフランを含む。
【0060】
前記ヘテロアリールとは、1~4個のヘテロ原子、5~14個の環原子を含むヘテロ芳香族系であり、そのうちヘテロ原子には、酸素、硫黄および窒素を含む基を指す。ヘテロアリールとしては、例えば、フラニル、チエニル、ピリジニル、ピロリル、N-アルキルピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、イミダゾリル、テトラゾリルなどの5員または6員の基であることが好ましい。前記ヘテロアリールとは、アリール、ヘテロ環基またはシクロアルキル環上に縮合可能であり、そのうち親構造と結合している環はヘテロアリール環である。
【0061】
特に断らない限り、本発明に記載の構造式は、すべての互変異性体、光学異性体および立体異性体形式(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何異性体または立体配座異性体)、例えば、不斉中心を有するR、S配置,二重結合の(Z)、(E)異性体および(Z)、(E)の配座異性体を含むことを指す。したがって、本発明に係る化合物の単一の立体化学的異性体、互変異性体またはエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体または配座異性体または互変異性体の混合物のいずれも、本発明に係る範囲に属する。
【0062】
用語「互変異性体」とは、異なるエネルギーをもつ構造異性体が低エネルギー障壁を超えて相互に相互変換できることを指す。例えば、プロトン互変異性体(すなわち、プロトン移動)には、例えば1H-インダゾールと2H-インダゾール、1H-ベンゾ[d]イミダゾールと3H-ベンゾ[d]イミダゾールなどのプロトン移動による相互変換が含まれる。原子価(価電子)互変異性体は、いくつかの結合形成電子再結合による相互変換が含まれる。
【0063】
インビボ、インビトロの研究によれば、以下の効果が認められた。
(1)本発明の化合物Iは、インビトロでCSF-1Rキナーゼ活性を有意に阻害した。
(2)本発明に係る化合物Iは、CSF-1/CSF-1R駆動のマウス骨髄性白血病細胞株の増殖を有意に阻害することができ、市販の医薬Pexidartinibよりも優れた効果を持ち、化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩は、CSF-1/CSF-1R依存性疾患、例えば、CSF-1/CSF-1R依存性の白血病、腱滑膜巨細胞腫などを治療するために使用できることが示唆された。
(3)本発明の化合物Iは、CSF-1により誘導されたマクロファージの生存をインビトロで阻害し、マクロファージのM2偏りの極性化表現型を逆転させ、市販の医薬Pexidartinibよりも優れた効果を持つ。TAMs富化腫瘍モデル(MC38モデル)において、化合物IはM2型偏りのTAMs浸潤を有意に減少させ、M2型偏りのマクロファージのCD8+T細胞に対する抑制効果を逆転させ、腫瘍免疫抑制性微小環境に拮抗し、有意な抗腫瘍効果を奏すことが示された。
(4)CT-26移植腫瘍モデルについては、anti-PD-1抗体(10mg/kg、3日1回経口投与し)単独投与の時に、腫瘍抑制率は6.7%であった。化合物I5mg/kg(1日1回経口投与し)の腫瘍抑制率は45.8%であり、anti-PD-1抗体(10mg/kg、3日1回経口投与し)を化合物Iと併用した場合、1日1回5mg/kgの用量で投与し、腫瘍抑制率は80.8%に達した。化合物Iは免疫チェックポイント薬剤に非感受性の腫瘍に対して抑制効果があるだけでなく、かつ免疫チェックポイント薬剤と併用した場合に有意な相乗効果を奏すことが示された。
【0064】
研究結果によれば、本発明に記載の化合物Iもしくはその薬学的に許容される塩は、腫瘍微小環境を再構築することにより、腫瘍免疫抑制状態を改善し、抗腫瘍治療効果を発揮し、免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍効果を増強することができ、良好な臨床応用の見通しがある。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】化合物Iがマウス由来のBMDMのM2偏り極性化表現型を逆転させたことを示す図である。そのうち、
図1のAは、化合物IがM2型マクロファージの表面マーカーCD206の発現を下方制御し、M2型偏りのマクロファージの極性化表現型を阻害することを示し、
図1のBは、化合物IがM1型マクロファージの表面マーカーCD86の発現を増強することを示し、
図1のCは、化合物IがM1型マクロファージの表面マーカーMHC-IIの発現を増強し、M1型偏りのマクロファージの極性化表現型を促進することを示した。
【
図2】化合物IがCSF-1により誘導されたBMDMのCD8
+T細胞に対する増殖抑制効果を逆転させ、CSF-1により誘導されたBMDMのCD8
+T細胞活性化に対する抑制効果を逆転させたことを示す図である。そのうち、
図2のA(パネル)は、化合物IがCSF-1により誘導されたBMDMのCD8
+T細胞の増殖抑制効果を解除させたことを示し、
図2のBは、代表的なフローサイトメトリーの結果を示しており、
図2のCは、化合物I解除CSF-1により誘導されたBMDMのCD8
+T細胞Granzyme B発現に対する抑制効果を解除させたことを示し、
図2のDは、化合物IがCSF-1により誘導されたBMDMのCD8
+T細胞IFNγ発現に対する抑制効果を解除させたことを示した。
【
図3】化合物Iが結腸癌MC38マウス移植腫瘍モデルにおける免疫細胞浸潤を再構築することを示す図である。そのうち、
図3のAは、化合物IがTAMの浸潤を有意に阻害することを示し、
図3のBは、化合物IがTAMにおけるCD206
+のマクロファージの割合を下方制御したことを示し、
図3のCは、化合物IがTreg細胞の浸潤を阻害したことを示し、
図3のDは、化合物IがCD8
+T細胞浸潤に対する影響を示し、
図3のEは、化合物IがCD8
+TにおけるGranzyme B
+T細胞の浸潤を増強したことを示し、
図3のFは、化合物IがIFNγ
+CD8
+T細胞浸潤に対する影響を示した。
【
図4】マウスの皮下移植腫瘍MC38に対する化合物Iの増殖抑制効果を示す図である。
【
図5】化合物Iがマウス皮下移植腫瘍CT-26増殖に対するanti-PD-1抗体の抑制効果を増強することを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、具体実施例を参照してさらに本発明を説明する。これらの実施例は、単に本発明を説明するために過ぎず、本発明に係る範囲を限定することを意図したものではないことを理解すべきである。以下の実施例において具体的な条件を明記しない実験方法は、通常従来的な条件またはメーカーが提案した条件に従う。特に断らない限り、百分率(パーセント)および部は、重量によるものである。
【実施例】
【0067】
[実施例1]CSF-1Rキナーゼ活性に対する化合物Iの影響
1.試験方法:Z’-LYTETM Kinase Assay
検出は、Z’-LYTETM Kinase Assay kit(PV3190,ThermoFisher)の取扱説明書を参照して、具体的に次のステップで行った。Z’-LYTE TM Tyrosine 1 Peptide Substrate、Phospho-peptide、5X Kinase Buffer、ATP、Development Reagent B、Development Buffer、Stop Reagentそれぞれの試薬を室温に平衡化させ、順次添加した。CSF-1Rキナーゼ(PR4598A,ThermoFisher)活性に対する種々の濃度化合物の影響を検出し、濃度ごとに二重ウェルを取り、4%のDMSOを共溶媒として用いた。反応終了後、すべての反応ウェルに、Development Bufferで(1:256)希釈したDevelopment Reagent B 5μLを加え、室温で1時間反応した後、すべての反応ウェルにStop Reagent 5μLを加えて反応を停止させ、Synergy 2 Microplate Readerで蛍光シグナル(励起光波長は400nm、発光光波長は445nm、520nm)を検出した。
【0068】
全活性ウエルおよび対照シグナルウエルから各ウェルの抑制率を計算し、データ分析方法は次の通りである。
【数1】
蛍光強度比=「供給体」蛍光分子クマリン蛍光強度(445nm)および「受容体」蛍光分子フルオレセイン蛍光強度(520nm)の比(S445/S520)
【0069】
C100%=100%リン酸化対照ウェル「供給体」蛍光分子クマリンの平均蛍光強度
C0%=0%リン酸化対照ウェル「供給体」蛍光分子クマリンの平均蛍光強度
F100%=100%リン酸化対照ウェル「受容体」蛍光分子フルオレセインの平均蛍光強度
F0%=0%リン酸化対照ウェル「受容体」蛍光分子フルオレセインの平均蛍光強度
【0070】
2.実験結果
化合物IはCSF-1Rキナーゼを阻害したIC50は15.0±3.2nMであり、市販薬Pexidartinib(PLX3397)に相当する。化合物IがCSF-1Rキナーゼの活性を阻害でき、したがって、CSF-1/CSF-1Rキナーゼ阻害剤として使用でき、それはCSF-1/CSF-1R依存性の癌または腫瘍に対して抑制効果を有する可能であると示されている。
【0071】
CSF-1Rキナーゼ阻害剤Pexidartinib(PLX3397、商品名:Turalio)は、2019年8月3日に米国で販売され、成人患者に対して稀な疾患である腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の治療が承認された。化合物IのCSF-1Rに対する活性阻害がPexidartinibに相当し、化合物Iが治療腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の治療効果を有することが示唆された。
【0072】
同時に、CSF-1Rキナーゼは、腫瘍関連マクロファージの重要な標的である。化合物Iは、CSF-1Rキナーゼ活性に有意な抑制効果があり、腫瘍微小環境を再構築し、腫瘍に拮抗する潜在性も示唆した。
【0073】
【表1】
備考:
*a化合物I:IC
50値を独立に3回繰り返して測定し、
*bPLX3397:IC
50値を独立に2回繰り返して測定し、平均値±SDで表す。
【0074】
[実施例2]CSF-1R媒介性の細胞増殖および初代マクロファージ生存に対する化合物Iの影響
【0075】
1.試験方法
1.1 CSF-1R高活性化マウス骨髄性白血病細胞M-NFS-60の増殖に対する化合物Iの影響
対数増殖期のCSF-1R高活性化マウス骨髄性白血病細胞株M-NFS-60細胞を、適切な密度(90μL/ウェル)で96ウェルプレート(M-NFS-60細胞の培地において62ng/mLヒト組換えマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)を含む)に播種し、一晩培養した後、異なる濃度の化合物Iを加えて72時間インキュベートした。溶媒対照群(陰性対照)を設定した。化合物が細胞を72時間作用した後、ウェル当たりCCK-8試薬10μLを加え、37℃のインキュベーターに2~4時間入れた後、全波長マイクロプレートリーダーで読み取った(測定波長:450nm)。
【0076】
1.2 CSF-1により誘導されたマウス由来マクロファージ生存に対する化合物Iの影響
【0077】
BALB/cマウス(雌、6週間齢、健常)を犠牲させ、骨髄細胞を大腿骨と脛骨から採取し、赤血球溶解処理後適切な密度(90μL/ウェル)で96ウェルプレートに播種し、ウェル当たり100ng/mLのCSF-1因子誘導マクロファージ(Bone marrow-derived macrophages:BMDM)を加え、同時に異なる濃度の化合物を加えてプレートを7日間インキュベートし、溶媒対照群(陰性対照)を設定した。化合物を7日間細胞に作用させた後、ウェル当たりCCK-8試薬10μLを加え、37℃のインキュベーターに2~4時間入れた後、全波長マイクロプレートリーダーで読み取った(測定波長:450nm)。
【0078】
1.3 CSF-1により誘導されたヒト由来マクロファージの生存に及ぼす化合物Iの影響
【0079】
凍結保存されたヒト由来の末梢血(健常人の末梢血に由来する)単核細胞(Peripheral blood mononuclear cell,PBMC)を、液体窒素から取り出して蘇生させた後running bufferで5×107個の細胞/mLで再懸濁し、最終濃度100μg/mLでDNA酵素Iを加え、室温で15分間インキュベートした。300gで5分間遠心分離した後、上清を捨て、running bufferで再度5×107個の細胞/mLで再懸濁した後、70μMの濾過網でフローチューブに濾過し、STEMCELL社のCD14+単球陰性選別ビーズ選別キットを使用して選別し、その取扱説明書の具体的な実験手順は以下の通りであった。
【0080】
細胞を5×107個の細胞/mLで再懸濁した後、1mL当たりの試料に50μLのcocktailを加え、試料は室温で5分間インキュベートした。磁気ビーズを30秒間ボルテックスし、試料に加えて再度5分間インキュベートした。試料体積を2.5mLまで補充し、磁気フレーム(STEMCELL,#18000)上に2.5分間置いた。上清を遠心管に移し、300gで5分間遠心分離した。細胞は1640培養液で適切な体積まで再懸濁した。実験の必要に応じてCSF-1因子100ng/mLを細胞懸濁液に加えた。96ウェルプレートに細胞を一定の密度で播種し、ウェル当たり90μLを加えて細胞の状態が安定した後、異なる濃度の化合物を加えてプレートを7日間インキュベートし、空白溶媒対照群(無溶媒対照群)を設定した。作用させた後、96ウェルプレートにおいてウェル当たりCCK-8試薬10μLを加え、37℃のインキュベーターに2~4時間入れた後、可変波長マイクロプレートリーダーで読み取った(測定波長:450nm)。
【0081】
2.実験結果
化合物Iは用量依存的にCSF-1媒介性のM-NFS-60の細胞増殖を抑制し、その増殖阻害のIC50は1.2±0.5nMであった。
【0082】
化合物Iは用量依存的にCSF-1により誘導されたマクロファージの生存を阻害し、そのマウス由来マクロファージ生存阻害のIC50は、10.2±0.8nMであり、そのヒト由来マクロファージ生存阻害のIC50は30.5±5.1nMであった。
【0083】
注目すべきことは、本発明の化合物Iは、CSF-1Rキナーゼ活性の抑制効果は、市販の医薬Pexidartinib(PLX3397)に相当するが、細胞試験において、化合物IがCSF-1R高活性化白血病細胞M-NFS-60およびCSF-1により誘導されたマクロファージ生存に対していずれもより強力な抑制効果を示し、IC50はPLX3397の約1/5~1/50であり、当業者の期待をはるかに超えている。化合物Iは、より良い細胞活性を有し、臨床使用においてPexidartinib(PLX 3397)よりも優れた治療効果を達成する可能性があると示唆されている。化合物Iがより優れた細胞活性を持ち、臨床に使用する場合にPexidartinib(PLX 3397)よりも優れた治療効果を達成する可能性があると示唆されている。
【0084】
【表2】
備考:化合物IおよびPLX3397は、それぞれM-NFS-60細胞に3日間に作用し、細胞増殖に対する阻害のIC
50は、独立に3回繰り返して平均値±SDで示した。化合物IおよびPLX3397は、それぞれBMDMおよびPBMC細胞に7日間作用し、細胞生存に対する阻害のIC
50は、2回繰り返して平均値±SDで示した。
【0085】
[実施例3]化合物IがマクロファージのM2型偏りの極性化表現型を逆転させる
1.試験方法
BALB/cマウス(雌、6週間齢、健常)を犠牲させ、骨髄細胞を大腿骨と脛骨から採取し、赤血球溶解処理後適切な密度(2mL/ウェル)で6ウェルプレートに播種し、CSF-1因子誘導マクロファージ(Bone marrow-derived macrophages:BMDM)をウェル当たり100ng/mLで加えた。誘導7日間後、細胞培養液を交換し、上記と同じ濃度のCSF-1因子を加えたと共に10ng/mLのIL4および10ng/mLのIL13でマクロファージM2型極性化を誘導した。極性化(分極)を誘導しながら、適切な濃度の化合物を試験ウェルおよび陰性対照ウェルを加え、48時間後、細胞を採取してフローサイトメトリー分析を行った。
【0086】
良好な状態の細胞を収集し、まずPBSで2回洗浄した。洗浄後、PBS 100μLで各試料を再懸濁し、取扱説明書に従って調製した死細胞と生細胞を識別するための蛍光抗体0.5μLを加えて4℃、暗所で30分間染色した。30分後、1mLのrunning bufferで2回洗浄し、4℃で300gで5分間遠心分離した。running bufferを用いて100μLごとにブロッキング抗体TruStain fcXTM(anti-mouseCD16/32)2μLを加えてブロッキング抗体希釈液を調製し、各試料100μL系に基づいてブロッキングを加えて10分間ブロッキングした後、抗体の取扱明細書により表面タンパク質に対応する蛍光抗体を試料に加え、4℃で30分間インキュベートした。その後、単一染色対照チューブおよびFMO対照チューブを設定した後に、running buffer 1mLで2回洗浄し、4℃で300gで5分間遠心分離した。
【0087】
表面タンパク質のみを調べたところ、遠心分離した後、試料を300μLのPBSで再懸濁し、直ちに機器に入れ、あるいは4%のパラホルムアルデヒドで15分間固定した後、500gで7分間遠心分離し、上清を捨て、PBSで再懸濁し、さらに機器で分析するために貯蔵した。
【0088】
同時に細胞内因子を調べたところ、遠心後に上清を捨てた場合にも、100μLの再懸濁試料が保持されていた。さらにIntracellular Fixation&Permeabilization Buffer SetにおけるICfixation solutionを用いて100μLで各試料に加え、4℃で30分間固定し、固定終了後、500gで7分間遠心分離し、三重蒸留水(tri-distilled water:TDW)で10×Permeabilization Buffer(浸透圧緩衝液)を1×膜破壊溶液に調製した。遠心分離後、各試料2mLに1×膜破壊溶液を加えて試料を再懸濁し、500gで7分間遠心分離し、2回繰り返し、1×膜破壊溶液を用いて抗体説明書に推奨されるように細胞内蛍光抗体を調製した。ウェル当たり100μLの体系に細胞を再懸濁し、4℃で30分間染色した。この手順では、単一染色対照チューブおよびFMO対照チューブを設定した後に、500gで7分間遠心分離し、かつ1×膜破壊溶液2mLで2回洗浄し、最後に試料を300μLのPBSで再懸濁し、機器分析のために用意した。
【0089】
2.実験結果
実験結果は、マウス由来のBMDM実験系において、化合物Iは用量25nM、50nM、100nMのいずれにおいてもM2型マクロファージの表面マーカーCD206分子の発現レベルを有意に抑制した(
図1のA)。これと共に、化合物IはM1型マクロファージの表面マーカーCD86およびMHC-II分子の発現を有意に増強できた(
図1のB、
図1の1C)。化合物IはIL4、IL13により誘導されたM2型偏りのマクロファージの分化を逆転させることができ、M2型偏りのマクロファージの割合を下方制御し、M1型偏りのマクロファージの浸潤を上方制御することができた。
【0090】
[実施例4]化合物IのマクロファージのCD8+T細胞に対する抑制効果を逆転させる
1.試験方法
BALB/cマウス(雌、6週間齢、健常)から無傷の脾臓を分離し出し、脾臓をrunning buffer中で均質化した後、300gで5分間遠心分離し、その後細胞を赤血球溶解液に入れて赤血球溶解させた。脾臓細胞を得た後PBSで2回洗浄し、毎回300gで5分間遠心分離し、その後細胞を2×107個の細胞/mLまで再懸濁し、最終濃度5mMのCFSEを加えて15分間染色した後、9倍体積のPBSを加えてスピード400gで5分間遠心分離し、さらに正常培養液10mLで1回洗浄し、最終的に得られた脾臓細胞にαCD3/αCD28およびIL-2を加えて刺激し、因子を加えていない細胞を陰性対照とし、因子を加えた細胞を陽性対照とした。他の細胞は、化合物および溶媒対照で前処理されたCSF-1により誘導されたBMDM(100,000/ウェル)と共培養した。前処理したBMDMと全脾臓細胞とが1:30の割合で共培養した。αCD3/αCD28/IL2活性化T細胞を加えて72時間共培養した。72時間後、1:500の割合でeBioscience TM Cell Stimulation Cocktail(plus protein transport inhibitors)(500X)を加えて4時間インキュベーションした後、脾臓細胞を収集した。かつ、CD8+T細胞サブセットの増殖および活性化CD8+T細胞(IFNγ+CD8+T、GranzymeB+CD8+T)の割合を、フローサイトメトリーで分析した。
【0091】
2.実験結果
その結果は、αCD3/αCD28/IL2を加えてCD8
+T細胞の増殖を活性化することができ、CSF-1により誘導されたBMDMを加えた後、そのような増殖作用が有意に阻害されることが示された。CSF-1により誘導されたBMDMを化合物Iでプレインキュベーション(前培養)した後、上記の増殖抑制効果を解除することができ(
図2のA、
図2のB)、CD8
+T細胞増殖は溶媒対照群に比べて有意に上昇した。
【0092】
活性化されたCD8
+T細胞は、IFNγおよびグランザイムB(Granzyme B)を高く発現していた。IFNγ
+CD8
+TおよびGranzymeB
+CD8
+T細胞の割合の検出結果は、溶媒対照群に比べて、化合物I前処理のBMDMとCD8
+T細胞との共培養系において、グランザイムBおよびIFNγ陽性のCD8
+Tの割合が有意に上昇することが示されており(
図2C、2D)、化合物Iは、CSF-1により誘導されたBMDMが活性化のCD8
+T細胞に対する免疫抑制効果を解除したことが示された。
【0093】
[実施例5]結腸直腸癌MC38移植腫瘍モデルにおける免疫微小環境に対する化合物Iの影響
1.試験方法
良好な状態のMC38細胞を、2.5×107個の細胞/mLまで再懸濁し、各匹のマウスにそれぞれ細胞懸濁液200μLをマウス右側腋窩皮下に播種し、腫瘍細胞がマウス体内において皮下移植腫瘍を形成し、平均約100mm3程度までに成長した場合に、マウスを無作為に投与群および対照群に分けた。被検化合物は所望の濃度で配合し、対応する等量の溶媒を用いて溶媒対照とした。薬物は経口投与し、1日1回で24日間連続投与した。
【0094】
(1)腫瘍組織免疫細胞亜集団のスキャン実験:
投与期間中、マウス移植腫瘍体積の測定とマウス体重の秤量を2~4日ごとに1回行った。MC38皮下移植腫瘍の溶媒対照群を700~800mm3までに成長した場合に、実験を停止し、マウスから摘出した新鮮な腫瘍はハサミで2mm3以下の断片に剪断した。消化酵素は、Tumor Dissociation Kit(腫瘍解離キット)の取扱説明書に従って調製した。調製した酵素溶液2.5mLで腫瘍組織塊を再懸濁し、gentleMACSTM Dissociator機器に入れ、選択されたプログラムで腫瘍を解離させた。解離終了後、懸濁液を70μMのろ過スクリーンでろ過して細胞懸濁液を得た。細胞懸濁液を赤血球溶解液で10分間赤血球溶解し、300gで5分間遠心分離し、PBSで再懸濁した。細胞計数後所望量の細胞を取り出した。まずPBSで細胞を2回洗浄した。洗浄完了後、各試料を100μLのPBSで再懸濁し、取扱明細書に従って調製した死細胞と生細胞を識別する蛍光抗体0.5μLを加えて4℃で30分間暗所で染色した。30分間後、1mLのrunning bufferで2回洗浄し、4℃で300g、5分間遠心分離した。running bufferを用いて100μLごとにブロッキング抗体TruStainfcXTM(anti-mouseCD16/32)2μLを加えてブロッキング抗体希釈液を調製し、各試料100μL系を加え、10分間ブロッキングした後、抗体説明書に従って表面タンパク質に対応する蛍光抗体を試料に加え、4℃で30分間インキュベートした。この手順では単一染色対照チューブおよびFMO対照チューブを設定した後、同様に1mLのrunning bufferで2回洗浄し、毎回に4℃、300gで5分間遠心分離した。
【0095】
表面タンパク質のみを調べてみると、遠心分離後300μLのPBSで再懸濁し、直ちに機器に入れて操作したり、または4%パラホルムアルデヒドで再懸濁して15分間固定したりした後、500gで7分間遠心分離して上清を捨て、PBSで再懸濁し、機器分析のために用意した。
【0096】
細胞内因子も同時に調べる必要がある場合、遠心後に上清を捨てたところ、再懸濁試料100μLが残っており、さらにIntracellular Fixation&Permeabilization Buffer Set(細胞内固定および浸透圧緩衝液セット)におけるICfixation solutionを用いて各試料に100μL加え、4℃で30分間固定した。固定完了後、500gで7分間遠心分離し、三重蒸留水で10×Permeabilization Buffer(浸透圧緩衝液)を1×膜破壊溶液に調製し、遠心分離後、各試料に2mLの1×膜破壊溶液を加えて試料を再懸濁し、500gで7分間遠心分離し、このように2回繰り返し、1×膜破壊溶液で抗体の取扱説明書で推奨されるように細胞内蛍光抗体を調製し、細胞をウェル当たり100μLの体系に再懸濁し、4℃で30分間染色した。この手順では、単一染色対照チューブおよびFMO対照チューブを設定した後、試料を500gで7分間遠心分離し、2mLの1×膜破壊溶液で2回洗浄した。最後に試料を300μLのPBSで再懸濁し、このように機器分析のために用意した。
【0097】
核内タンパク質を同時に染色する必要がある場合、遠心分離後、Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(転写因子染色緩衝液セット)における固定液で固定し、各試料に200μLを加え、4℃で30分間固定した。固定完了後、500gで7分間遠心分離し、三重蒸留水で10×Permeabilization Buffer(浸透圧緩衝液)を1×膜破壊溶液に調製し、遠心分離後、各試料に2mLの1×膜破壊溶液を加えて試料を再懸濁し、500gで7分間遠心分離し、このように2回繰り返し、1×膜破壊溶液で抗体の取扱説明書で推奨されるように細胞内蛍光抗体を調製し、細胞をウェル当たり100μLの体系に再懸濁し、4℃で30分間染色した。この手順では、単一染色対照チューブおよびFMO対照チューブを設定した後、試料を500gで7分間遠心分離し、2mLの1×膜破壊溶液で2回洗浄した。最後に試料を300μLのPBSで再懸濁し、このように機器分析のために用意した。
【0098】
(2)薬効学的実験:
投与期間中、マウス移植腫瘍体積の測定とマウス体重の秤量を2~4日ごとに1回行った。投与24日間後実験を終了した。
腫瘍体積(TV)は、計算式TV=1/2×a×b2で算出され、そのうちa、bは、それぞれ移植腫瘍の長さと幅である。
【0099】
抗腫瘍活性の評価指数は、腫瘍増殖抑制率TGI(%)であり、計算式TGI(%)=100×{1-[(VTreatedFinalday-VTreatedDay0)/(VControlFinalday-VControlDay0)]で算出される。統計的検定はt検定を用い、p≦0.05は有意差であった。
【0100】
2.実験結果
本発明者らは、結腸直腸癌モデルにおいてマクロファージ浸潤が豊富なMC38マウス皮下移植腫瘍モデルを選択し、腫瘍免疫微環境に対する化合物Iの影響を調べた。研究によれば、殺傷性CD8+T細胞は、免疫細胞において重要なエフェクターであることが示された。腫瘍における殺傷性T細胞の浸潤と殺傷能は、抗腫瘍効果の肝心な要素であり、活性化T細胞は、IFNγ、GranzymeBなどを分泌することにより、抗腫瘍機能を発揮することができる。M2型偏りのTAMsは、殺傷性CD8+T細胞の増殖を抑制し、腫瘍免疫抑制状態をもたらす。腫瘍増殖において、調節性T細胞(Regulatory T cells,Treg)と複数種類の免疫細胞と相互作用して抑制性サイトカインを産生し、免疫抑制の腫瘍微小環境を促進し、腫瘍増殖を促進し、治療に対する腫瘍の応答を阻害する。MC38マウス移植腫瘍モデルにおけるマクロファージの重要な役割を考慮した上で、発明者らはマクロファージの浸潤およびM2型偏りの極性化とリンパ球相におけるT細胞の浸潤および活性化の検出を行った。
【0101】
結果は、化合物Iの各用量群では、腫瘍組織全体のTAMsの浸潤が溶媒対照群に比べて有意に低下し、かつ、TAMsにおけるCD206
+M2型偏りのマクロファージの浸潤をさらに下方制御していることが示された(
図3のA、
図3のB)。Treg細胞の浸潤は、化合物Iの作用下で有意に減少した(
図3のC)。発明者らは、T細胞におけるCD8
+T細胞の浸潤をさらに分析し、溶媒対照群に比べて、化合物I投与群ではCD8
+T細胞浸潤およびIFNγ
+のCD8
+T細胞浸潤の程度に有意な変化はなかったが、Granzyme B
+のCD8
+T細胞浸潤は有意に増加した(10mg/kg群)ことを見出した(
図3のD、
図3のE、
図3のF)。
【0102】
さらに、インビボでの抗腫瘍活性評価結果によれば、化合物Iは、CSF-1Rを標的としてマウス体内マクロファージの浸潤、特にM2型マクロファージの浸潤を抑制し、Tregの浸潤を下方制御し、活性化CD8
+T細胞(とりわけ、Granzyme B
+のCD8
+T細胞)の浸潤を増強し、腫瘍微小環境全体を再構築し、腫瘍免疫抑制状態を逆転させ、腫瘍拮抗作用を発揮し、マウス結腸癌MC38細胞移植腫瘍増殖を有意に抑制したことが示された(表3、
図4)。
【0103】
【0104】
[実施例6]化合物I増感免疫チェックポイント薬剤の抗腫瘍効果
1.試験方法
各BALB/cマウスに対しては、それぞれCT-26細胞を5×106個の細胞でマウスの右側腋窩皮下に播種し、腫瘍細胞がマウス体内に皮下移植腫瘍を形成し、平均約100mm3程度に達した時点でマウスを無作為に投与群および対照群に分配した。anti-PD-1単独投与群:anti-PD-1(Bio X Cell社、InVivoMAb anti-mouse PD-1(CD279)(catalog:BE0273))10mg/kgで3日1回経口投与し、12日間連続投与した。対照群には、同量のanti-PD-1のアイソタイプ対照Hamster Ig(Rat lgG2a)を投与し、投与の経路、用量および頻度はanti-PD-1群と同様にした。化合物I単独投与群(化合物I+Rat lgG2a):化合物I 5mg/kg、1日1回経口投与し、12日間連続投与すると共にRat lgG2aを投与した(投与方式は対照群と同じ)。また、anti-PD-1(10mg/kg、3日1回経口投与し)と化合物I(5mg/kg、1日1回経口投与し)との併用投与群を設定した。実験の過程全体において、週2回に移植腫瘍体積を測定し、同時にマウス体重を秤量した。
【0105】
腫瘍体積(TV)は、計算式TV=1/2×a×b2で算出され、そのうち、aおよびbは、それぞれ移植腫瘍の長さと幅である。
測定の結果に基づいて下記の計算式で相対腫瘍体積(relative tumor volume:RTV)が算出された。
RTV=Vt/V0
そのうち、V0は投与開始時(すなわち、籠で分けて最初投与の時、d0)に測定された腫瘍体積であり、Vtは毎回測定時の腫瘍体積である。
【0106】
抗腫瘍活性の評価指数は、腫瘍増殖抑制率TGI(%)であり、次の計算式で算出された。
TGI(%)=100×{1-[(VTreatedFinalday-VTreatedDay0)/(VControlFinalday-VControlDay0)]。
統計的検定は、t検定を用いて行い、p≦0.05は有意差を示した。
【0107】
2.実験結果
この実験結果では、anti-PD-1抗体単独(10mg/kg、3日1回経口投与し)の腫瘍抑制率は6.7%であり、化合物I単独(5mg/kg)の腫瘍抑制率は45.8%であったことが示された。anti-PD-1抗体(すなわち、3日1回経口投与し、毎回投与用量10mg/kg)を使用した上で化合物Iと組み合わせて1日1回5mg/kgの用量で投与し、腫瘍抑制率は80.8%に達した(表4、
図5)。このことから、化合物Iの併用では、anti-PD-1抗体のCT-26モデルにおける腫瘍抑制効果を増強できることが示された。
【0108】
【0109】
本発明で使用される英語の略語の全称およびその対応日本語の名称は次の通りである。
CSF-1R:Receptor tyrosine kinase colony-stimulating factor 1 receptor、マクロファージコロニー刺激因子受容体
CSF-1:Receptor tyrosine kinase colony-stimulating factor 1、マクロファージコロニー刺激因子。
TAM:Tumor-associated macrophages、腫瘍関連マクロファージ。
Treg:Regulatory T cells、調節性T細胞。
DC:Dendritic cells、樹状細胞。
PBMC:Peripheral blood mononuclear cell、末梢血単核細胞。
BMDM:Bone marrow-derived macrophages、骨髄由来マクロファージ。
anti-PD-1:Programmed cell death protein 1、プログラム細胞死受容体-1。
FMO:Fluorescence Minus One、1を引いた蛍光対照(マルチカラー測定時の蛍光補正のコントロールサンプル)。