(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】増加したチキソトロピー指数を有する硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240912BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240912BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240912BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240912BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/06
C08K3/013
C09K5/14 Z
(21)【出願番号】P 2022560855
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(86)【国際出願番号】 CN2020088737
(87)【国際公開番号】W WO2021223095
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バーグワーガー、ドラブ
(72)【発明者】
【氏名】カオ、チョンウェイ
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-077845(JP,A)
【文献】特開2005-325211(JP,A)
【文献】特開2016-084378(JP,A)
【文献】特開2006-274155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ビニル官能性ポリシロキサンと、
(b)分子当たり平均で少なくとも2個のシリルヒドリド基を有する、シリルヒドリド官能性ポリシロキサンと、
(c)60~92重量パーセントの熱伝導性充填剤と、
(d)白金ヒドロシリル化触媒と、
(e)0.05~2.0重量パーセントのトリアルコキシ官能性ポリシロキサンと、を含む組成物であって、
前記トリアルコキシ官能性ポリシロキサンが、分子当たり2個以上のトリアルコキシ官能基及び1200以上の数平均分子量を有し、重量パーセントが前記組成物の重量に対するものであ
り、
前記組成物が、別個の第1液と第2液とを含む2液組成物であり、
(a)前記第1液が、
(i)7~35重量パーセントのビニル官能性ポリシロキサンと、
(ii)60~92重量パーセントの熱伝導性充填剤と、
(iii)0.05~2.0重量パーセントのトリアルコキシ官能性ポリシロキサンと、
(iv)第1液100万重量部当たり、1~1000重量部の白金ヒドロシリル化触媒と、
(v)0.1~2.0重量パーセントの処理剤と、を含み、
(b)前記第2液が、
(i)10~15重量パーセントのビニル官能性ポリシロキサンと、
(ii)分子当たり平均で少なくとも2個のシリルヒドリド基を有する、2~5重量パーセントのシリルヒドリド官能性ポリシロキサンと、
(iii)60~92重量パーセントの熱伝導性充填剤と、
(iv)0.025~2.0重量パーセントのトリアルコキシ官能性ポリシロキサンと、
(v)0~1重量パーセントの顔料添加剤と、
(vi)0~0.01重量パーセントの白金硬化阻害剤と、を含み、
ただし、重量パーセントの値は、成分が存在する前記液の重量に対するものであり、
前記シリルヒドリド官能性ポリシロキサンは、以下の一般分子構造:
R
3-h
H
h
SiO-(HRSiO)
a
-(R
2
SiO)
b
-SiH
h’
R
3-h’
(II)
〔式中、Rは独立して、それぞれの場合で、1~6個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から選択され、Hは、水素であり、下付き文字h及びh’は、分子のそれぞれの末端の末端水素の平均数を指し、0であり、下付き文字aは、分子当たりの(HRSiO)基の平均数であり、下付き文字bは、分子当たりの(R
2
SiO)基の平均数であり、下付き文字aは、下付き文字aとbの合計の5%~50%であり、シリルヒドリド官能性ポリシロキサンは、1000~5000の分子量を有する。〕
を有し、
前記トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、以下の分子構造(III)、(IIIb)、(IV)、及び(V):
(RO)
3
Si-(OSiR
2
)
c
-O-Si(OR)
3
(III)
〔式中、Rは、独立して、それぞれの場合で、1~6個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から選択され、下付き文字cは分子当たりの(OSiR
2
)シロキサン単位の平均数であり、13~2000である。〕;
(RO)
3
Si-R”-SiR
2
-(OSiR
2
)
c
-R”-Si(OR)
3
(IIIb)
〔式中、R、下付き文字cは、分子構造(III)について上記で定義したとおりであり、R”は、1~6個の炭素原子を有する二価炭化水素である。〕;
R
3
SiO-(SiR
2
O)
m
-(SiRAO)
n
-SiR
3
(IV)
〔式中、各Rは、独立して、それぞれの場合で、1~6個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から選択され、下付き文字mは、分子当たりの (SiR
2
O)単位の平均数であり、13~2000であり、下付き文字nは、分子当たりの(SiRAO)単位の平均数であり、2以上であり、Aは、構造:-R”Si(OR)
3
(
式中、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から選択され、R”は、1~6個の炭素原子を有する二価炭化水素である。)を有する。〕;及び
Si[-(OSiR
2
)
p
-R”-Si(OR)
3
]
4
(V)
〔式中、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から選択され、R”は、1~6個の炭素原子を有する二価炭化水素であり、下付き文字pは、分子当たりの(OSiR
2
)シロキサン単位の平均数であり、20~100である。〕
を有するものから選択される
、組成物。
【請求項2】
前記トリアルコキシ官能性ポリシロキサンの濃度が、前記組成物の重量の0.05~0.75重量パーセントの範囲である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエーテル、シリカ充填剤、及びシラノール官能性ポリジメチルシロキサンを含まない、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物の全ての成分を互いに加え合わせる工程と、(b)必要に応じて加熱する工程と、(c)前記ビニル官能性ポリシロキサンと前記シリルヒドリド官能性ポリシロキサンとをヒドロシリル化硬化させて硬化組成物を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項5】
工程(a)の後に前記組成物を基材に適用し、基材上に前記硬化組成物を含む物品を生成すること、をさらに含む、請求項
4に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(a)の後でかつ工程(b)の前に、前記組成物を基材と第2の要素の両方と接触させて、前記プロセスに加熱が含まれる場合、基材と第2の要素との間に熱接触して前記硬化組成物を含む物品を形成すること、をさらに含む、請求項
4に記載のプロセス。
【請求項7】
請求項
5又は
6に従って調製された基材と接触している硬化組成物を含む、物品。
【請求項8】
電子部品である、請求項
7に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化硬化させることができるポリシロキサン組成物に関する。
【0002】
序
硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物は、電子産業において、熱源とヒートシンクとの間など、要素間の熱架橋を与えるのに有用である。熱グリースとは異なり、硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物は硬化性であり、これは、これらの組成物が反応して熱伝導性充填剤を含む架橋ポリシロキサンマトリックスを形成することができることを意味する。概して、硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物は、基材及び概ね少なくとも1つの他の要素と熱接触するように基材に適用され、次いで硬化されて、硬化組成物と接触している基材と任意の他の要素との間に熱架橋として機能する硬化組成物を形成する。
【0003】
熱伝導性シリコーン組成物は、典型的には、ポリシロキサンマトリックス中に比較的高濃度の伝導性充填剤を含む。熱伝導性充填剤は、60重量パーセント(重量%)以上の濃度で存在しやすく、90重量%以上のポリシロキサン組成物の濃度で存在させることができる。熱伝導性ポリシロキサン組成物は、使用前に組成物が貯蔵されている間、均質に維持されるように、中に熱伝導性充填剤が存在するポリシロキサンマトリックスからの熱伝導性充填剤の沈降又は分離に対して安定であることが重要である。充填剤の沈降に対する安定性を改善する1つの方法は、貯蔵される際の組成物の粘度を増加させることである。しかしながら、組成物の粘度を増加させることはまた、組成物を基材に適用するうえで困難を生じる。典型的には、熱伝導性ポリシロキサン組成物を適用するには、組成物をオリフィスから押し出して基材上に配置する必要がある。組成物の粘度が高すぎる場合、基材上への適用時に押し出すことが困難となる。したがって、沈降から充填剤を安定させるための高粘度と、組成物の基材への適用を促進するための低粘度との間で伝導性シリコーン組成物の粘度のバランスを取ることが課題である。
【0004】
熱伝導性ポリシロキサン組成物の粘度の課題に対処するためのアプローチとして、剪断減粘挙動を組成物に誘導することがある。チキソトロピー剤を組成物に添加して剪断減粘挙動を実現するための多くのアプローチが文献で知られている。熱伝導性ポリシロキサン組成物は、高濃度の熱伝導性充填剤のために固体充填剤-充填剤相互作用によって粘度が影響される環境が作り出され、充填剤表面へのチキソトロピー剤のあり得る吸着によって、剪断減粘挙動を組成物全体に誘導するチキソトロピー剤の効果が低くなり得ることから、このアプローチに固有の課題をもたらす。さらに、高度に充填された熱伝導性ポリシロキサン組成物に剪断減粘挙動を誘導するだけでなく、組成物の低剪断粘度を高剪断粘度に優先的に増加させることによってチキソトロピー添加剤を含まない組成物と比較して少なくとも50パーセント(%)高いチキソトロピー指数を与えることによって剪断減粘挙動を誘導する、チキソトロピー剤を特定することが特に望ましい場合がある。
【0005】
この課題は、2液硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物との関連でさらに困難となる。2液硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物の各液は、互いに化学的に異なるが、熱伝導性充填剤で高度に充填されている。2液組成物の各液は剪断減粘性であることが望ましいことから、それぞれ、別々である場合には充填剤の沈降に対して安定であるが容易に混合して分配される。各液は2液が混合される際にチキソトロピー剤同士が相溶性であるように同じチキソトロピー剤を含むことがさらにより望ましい。
【0006】
したがって、チキソトロピー添加剤を含まない組成物に対して少なくとも50%、好ましくは75%以上、さらには100%以上のチキソトロピー指数の増加が得られるように、組成物の低剪断粘度を高剪断粘度に対して優先的に増加させることによって、熱伝導性ポリシロキサンに剪断減粘特性を誘導するチキソトロピー剤を特定することが望ましく、また、当該技術分野における進歩となるものと考えられる。そのようなチキソトロピー剤が、2液硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物の各液でそのような形で機能すればさらにより望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、組成物の低剪断粘度を高剪断粘度に対して優先的に増加させることで、チキソトロピー添加剤を含まない組成物と比較して少なくとも50%高い、好ましくは少なくとも75%高い、場合により100%以上高いチキソトロピー指数を得ることによって、熱伝導性ポリシロキサンに剪断減粘性特性を誘導するチキソトロピー剤を含む熱伝導性ポリシロキサンを提供する。さらに、熱伝導性ポリシロキサンは、チキソトロピー剤が2液の各々でそのように機能する2液硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物とすることができる。
【0008】
本発明は、分子当たり2個以上のトリアルコキシ官能基、好ましくはトリメトキシ官能基を有し、1200を超える、好ましくは2000以上の数平均分子量を有するトリアルコキシ官能性ポリシロキサンが、組成物の低剪断粘度を高剪断粘度に対して優先的に増加させることでチキソトロピー添加剤を含まない組成物に対して少なくとも50%、75%以上、さらには100%以上のチキソトロピー指数の増加を得ることによって、熱伝導性ポリシロキサン中で、さらには2液硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物の各成分中で、チキソトロピー剤として作用し得ることを発見した結果としてもたらされたものである。しかしながら、驚くべきことに、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、組成物の重量の2.0重量%以下で、かつ同時に概ね0.05重量%以上で存在する必要がある。過剰なトリアルコキシ官能性ポリシロキサンによってもたらされるチキソトロピー指数の増加は実際には50%未満である。
【0009】
第1の態様では、本発明は、(a)ビニル官能性ポリシロキサンと、(b)分子当たり平均で少なくとも2個のシリルヒドリド基を有する、シリルヒドリド官能性ポリシロキサンと、(c)60~92重量パーセントの熱伝導性充填剤と、(d)白金ヒドロシリル化触媒と、(e)0.05~2.0重量パーセントのトリアルコキシ官能性ポリシロキサンと、を含む組成物であって、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンが、分子当たり2個以上のトリアルコキシ官能基及び1200以上の数平均分子量を有し、ただし、重量パーセントは、組成物の重量に対するものである、組成物である。
【0010】
第2の態様では、本発明は、(a)第1の態様の組成物の成分のすべてを互いに加え合わせる工程と、(b)必要に応じて加熱する工程と、(c)ビニル官能性ポリシロキサンとシリルヒドリド官能性ポリシロキサンとをヒドロシリル化硬化させて硬化組成物を形成する工程と、を含む、プロセスである。
【0011】
第3の態様では、本発明は、第2の態様のプロセスに従って調製された基材と接触している硬化組成物を含む、物品である。
【0012】
本発明の組成物は、電子デバイスなどのデバイスにおける熱架橋材料として使用することができる硬化型熱伝導性ポリシロキサン組成物として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。以下の試験方法の略語及び識別名が本明細書に適用される:ASTMは米国試験材料協会(American Society for Testing and Materials)を指し、ENは、欧州規格(European Norm)を指し、DINは、ドイツ規格協会(Deutsches Institut fur Normung)を指し、ISOは、国際標準化機構(International Organization for Standards)を指し、ULは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratory)を指す。
【0014】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日において、それらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0015】
「複数の」とは、2つ以上を意味する。「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、端点を含む。特に明記しない限り、全ての重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものであり、全ての体積パーセント(体積%)の値は組成物の体積に対するものである。
【0016】
「ポリシロキサン」と「シロキサン」は互換可能であり、複数のSi-O-Si結合を有する分子を指す。
【0017】
組成物の「チキソトロピー指数」とは、低剪断下での組成物粘度と高剪断下での組成物の粘度との比を指す。本明細書では、ポリシロキサン及び組成物の粘度を、CP52番スピンドルを備えた円錐円板型レオメータを、低剪断粘度の測定には0.1回転/分(剪断速度0.2(s-1)で、高剪断粘度の測定には10回転/分の速度(剪断速度20s-1)で使用して測定する。特に断らない限り、粘度はミリパスカル・秒(mPa・s)である。
【0018】
「分子量」は、特に断らない限り、ダルトンで表される数平均分子量を指す。三重検出器ゲル浸透クロマトグラフィ(光散乱、屈折率及び粘度検出器)及び単一のポリスチレン標準を用いて分子量を測定する。
【0019】
本発明の組成物は、ビニル官能性ポリシロキサンを含む。望ましくは、ビニル官能性ポリシロキサンは、平均で、分子当たり2個以上のビニル官能基を含む。ビニル官能基は、ビニル官能性ポリシロキサン上に、ペンダント基として、末端基として、又はペンダント基及び末端基の両方として存在することができる。望ましくは、ビニル官能性ポリシロキサンは、以下の分子構造(I)を有する直鎖状ポリシロキサンである:
RxVi(3-x)SiO-(R2SiO)d-SiRyVi(3-y)(I)
式中、Rは、独立して、それぞれの場合で、1~6個の炭素原子を有するアルキル及びアリール基から選択され、Viは、ビニル基(-CH=CH2)であり、x及びyは、直鎖状ポリシロキサンの各末端の末端R基の平均数を示し、それぞれ独立して、0~2、好ましくは1~2の範囲の数から選択され、望ましくはx=yであり、(3-x)及び(3-y)は、直鎖状ポリシロキサンの各末端上の末端Vi基の平均数を示し、dは、直鎖状ポリシロキサン中の(R2SiO)基の平均数であり、典型的には10以上、好ましくは50以上、かつ1000以下、好ましくは500以下である。望ましくは、Rはそれぞれの場合でメチルである。同時に、x及びyはそれぞれ2であることが全般的に望ましい。
【0020】
適当なビニル官能性ポリシロキサンの例としては、DMS-V21(構造(I)において、各Rがメチル、x=y=2、dがおよそ78であり、粘度100センチストークス及び分子量6000の分子を与える)及びDMS-V25(構造(I)において、各Rがメチル、x=y=2、dがおよそ230であり、粘度500センチストークス及び分子量17200の分子を与える)の名称でGelestから入手可能な、また、DOWSIL(商標)SFD-119 Fluid(構造(I)において、各Rがメチル、x=y=2、dがおよそ162であり、粘度450センチストークス及び分子量12000の分子を与える)、及びDOWSIL(商標)SFD-117 Fluid(構造(I)において、各Rがメチル、x=y=2、dがおよそ324であり、粘度2000センチストークス及び分子量24000の分子を与える)の名称でThe Dow Chemical Companyから入手可能な、ビニル末端ポリジメチルシロキサンが挙げられる。DOWSILは、The Dow Chemical Companyの商標である。
【0021】
典型的には、組成物中のビニル官能性ポリシロキサンの濃度は、組成物の重量に基づいて5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、さらには20重量%以上であり、同時に典型的には、35重量%以下であり、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、又はさらには15重量%以下であってよい。ビニル官能性ポリシロキサンの濃度は、典型的には組成物の所望の熱伝導特性に基づいて選択される、組成物中の熱伝導性充填剤の量に応じてこれらの範囲内で通常、変動する。
【0022】
本発明の組成物は、分子当たり平均少なくとも2個のシリルヒドリド基を有する、シリルヒドリド官能性ポリシロキサンを含む。誤解を避けるため、シリルヒドリド基とはSiH基である。シリルヒドリド官能性ポリシロキサンは、組成物中の架橋剤と呼ばれる場合もある。望ましくは、シリルヒドリド官能性ポリシロキサンは、以下の一般分子構造を有する直鎖状ポリシロキサンである:
R3-hHhSiO-(HRSiO)a-(R2SiO)b-SiHh’R3-h’ (II)
[式中、Rは上記のとおりであり、Hは、水素であり、下付き文字h及びh’は、分子のそれぞれの末端の末端水素の平均数を指し、0、1、2、又は3の値(好ましくは、0、1、又は2、より好ましくは0又は1、最も好ましくは0)を有し、下付き文字aは、分子当たりの(HRSiO)基の平均数であり、全般的には、下付き文字bは、分子当たりの(R2SiO)基の平均数である。]下付き文字a又は下付き文字bは0であってもよいが、下付き文字a及びbが両方とも0であることはない。好ましくは、下付き文字aは、1以上であり、5以上、さらには10以上であってよく、同時に典型的には50以下であり、40以下、30以下、又はさらには20以下であってよい。下付き文字bは、望ましくは0以上であり、1以上、2以上、3以上、4以上、さらには5以上であってよく、同時に典型的には150以下、好ましくは100以下である。同時に、下付き文字aは、下付き文字aとbの合計の望ましくは5パーセント(%)以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、さらには30%以上であり、同時に典型的には50%以下、45%以下、40%以下、又は35%以下であり、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、さらには10%以下であってよい。シリルヒドリド官能性ポリシロキサンは、典型的には1000以上、1500以上、1900以上、2000以上、同時に典型的には5000以下、4000以下、3000以下、2500以下、又はさらには2000以下の分子量を有する。
【0023】
適当なシリルヒドリド官能性ポリシロキサンの例としては、HMS-071(構造(II)において、Rはメチルであり、aはaとbの合計の6~7%であり、数平均分子量1900~2000、粘度19mPa・sである)、HMS-301(構造(II)において、Rはメチルであり、aはaとbの合計の25~35%であり、数平均分子量1900~2000、粘度14mPa・sである)及びDMS-H11(末端水素を有する構造(II)、粘度7~10mPa・s及び数平均分子量1000~1100である)の名称でGelestから入手可能なトリメチルシロキシ末端ヒドリド官能性ポリマーが挙げられる。
【0024】
典型的には、組成物中のシリルヒドリド官能性ポリシロキサンの濃度は、組成物の重量に基づいて、0.2重量%以上であり、0.5重量%以上、1.0重量%以上、2.0重量%以上、さらには3.0重量%以上であってよく、同時に典型的には、8重量%以下であり、5重量%以下であってよい。組成物中のシリルヒドリド官能性ポリシロキサン及びビニル官能性ポリシロキサンの濃度は、好ましくは、総シリルヒドリド基とビニル基とのモル比(SiH/Vi比)が0.5以上、さらには1.0以上であり、同時に典型的には、3.0以下、さらには2.0以下となるようなものである。
【0025】
組成物は熱伝導性充填剤を含む。本発明の最も広い範囲では、熱伝導性充填剤の組成は、ポリシロキサンよりも高い熱伝導性を有する任意の組成とすることができる。例えば、熱伝導性充填剤は、それぞれ独立して、アルミニウム、銅、銀、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェン、グラファイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ、アルミニウム3水和物、酸化亜鉛、酸化ベリリウム及び酸化マグネシウムからなる群から選択される材料の粒子とすることができる。熱伝導性充填剤は、アルミナ粒子を含むか、又はさらにはアルミナ粒子からなることが望ましい。
【0026】
充填剤粒子は、熱伝導性組成物で一般的に使用される任意の典型的な粒径又は粒径の組み合わせのものであってよい。概ね、熱伝導性粒子は、0.2マイクロメートル以上のメジアン粒径を有することが望ましく、0.5マイクロメートル以上、1.0マイクロメートル以上、1.5マイクロメートル以上、2.0マイクロメートル以上、4.0マイクロメートル以上、8.0マイクロメートル以上、10.0マイクロメートル以上、15マイクロメートル以上、20マイクロメートル以上、25マイクロメートル以上、さらには30マイクロメートル以上のメジアン粒径を有してよく、同時にメジアン粒径は、典型的には、50.0マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、15マイクロメートル以下、10.0マイクロメートル以下、9.0マイクロメートル以下、8.0マイクロメートル以下、7.0マイクロメートル以下、6.0マイクロメートル以下、5.0マイクロメートル以下、4.0マイクロメートル以下、3.0マイクロメートル以下、さらには2.0マイクロメートル以下である。HELOS Instrument,Sympatec GmbH(Clausthal-Zellerfeld,Germany)を用いたレーザ回折粒径分析によって、充填剤のメジアン粒径を測定する。
【0027】
組成物は、2以上、さらには3以上の異なるメジアン粒径を有する熱伝導性充填剤粒子を含んでもよく、また、こうした熱伝導性充填剤粒子を含むことが望ましい。異なる粒径の熱伝導性充填剤粒子を組み合わせることにより、組成物は、全体的な粘度を増加させることなく、その同じ添加量において全ての熱伝導性充填剤粒子が同じ粒径のものであるのと同様にして、より高い添加量の熱伝導性充填剤粒子を含有することができる。例えば、組成物は、比較的小さい粒径の熱伝導性充填剤(1.0~5.0マイクロメートルの範囲のメジアン粒径)と、より大きな粒径の熱伝導性充填剤(5.0マイクロメートル超、好ましくは6.0マイクロメートル以上、さらには8.0マイクロメートル以上、かつ同時に10.0マイクロメートル以下の範囲のメジアン粒径)との組み合わせを含むことができる。組成物の別の選択肢は、3つの異なるメジアン粒径を有する熱伝導性充填剤を含むことである。熱伝導性充填剤は、小さい粒子、中間の粒子、及び大きい粒子の組み合わせであって、小さい粒子が、0.1マイクロメートル以上、好ましくは0.2マイクロメートル以上、かつ同時に1.0マイクロメートル以下、好ましくは0.8マイクロメートル以下のメジアン粒径を有し、0.6マイクロメートル以下、0.5マイクロメートル以下、さらには0.4マイクロメートル以下であってよく、中間の粒子が、1.1マイクロメートル以上、好ましくは2マイクロメートル以上、かつ同時に典型的には5.0マイクロメートル以下、好ましくは4.5マイクロメートル以下のメジアン粒径を有し、4.0マイクロメートル以下、3.5マイクロメートル以下、2.5マイクロメートル以下、さらには2マイクロメートル以下であってよく、大きな粒子が、5.1マイクロメートル以上、6.0マイクロメートル以上、7.0マイクロメートル以上、さらには8.0マイクロメートル以上の粒径を有する一方で、同時に典型的には50マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、20マイクロメートル以下、又はさらには10マイクロメートル以下、9マイクロメートル以下、又は8マイクロメートル以下である、組み合わせを含むことができる。
【0028】
全ての熱伝導性充填剤を合わせた濃度は、重量%が組成物の重量に対するものとして、典型的には60重量%以上であり、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、さらには90重量%以上であってよく、かつ同時に典型的には92重量%以下であり、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、又はさらには65重量%以下であってよい。熱伝導性充填剤が2つの異なる粒径の充填剤の組み合わせ(例えば、上記に述べた比較的小さい粒径の充填剤と比較的大きい粒径の充填剤)からなる場合、より大きな粒径の充填剤がより小さい粒径の充填剤よりも高い重量%で存在することが望ましく、より大きい粒径の充填剤がより小さい粒径の充填剤の約2倍の重量%で存在することが好ましい。
【0029】
組成物は、白金ヒドロシリル化触媒を含む。白金ヒドロシリル化は、単一の触媒又は複数の触媒の組み合わせであってよい。適当なヒドロシリル化触媒としては、白金金属、並びに白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(カルステット触媒)、H2PtCl6、ジ-.μ.-カルボニルジ-.π.-シクロペンタジエニルジニッケル、白金-カルボニル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金アセチルアセトナート(acac)、白金黒、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物などの白金化合物、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、白金ビス(エチルアセトアセテート)、白金ビス(アセチルアセトナート)、二塩化白金、及び白金化合物とオレフィン若しくは低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体又はマトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金化合物などの白金化合物及び錯体が挙げられる。ヒドロシリル化触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含む、白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体を含む溶液の一部であり得る。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されていてもよい。触媒は、白金との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体であり得る。適当なヒドロシリル化触媒としては、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号に記載されるものが挙げられる。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びこれらの調製方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されている。
【0030】
組成物が、各成分が単一の混合物中に一緒に存在する1液系である場合、白金触媒は、貯蔵安定性が得られるようにマトリックス又はコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金化合物から選択されることが望ましい。概して、1液系を加熱すると、白金触媒がその封入剤から放出されて反応を誘発する。
【0031】
白金ヒドロシリル化触媒は、ppmが組成物の重量部に基づいたものとして、典型的には1重量百万分率(ppm)以上、好ましくは5ppm以上、10ppm以上、20ppm以上、30ppm以上、50ppm以上、75ppm以上、100ppm以上の濃度で存在し、同時に、典型的には200ppm以下、100ppm以下、又はさらには50ppm以下である。
【0032】
組成物は、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンを含む。望ましくは、「アルコキシ」は、1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基から選択され、トリエトキシ官能性及びトリメトキシ官能性ポリシロキサンから選択されることがより望ましい。さらにより望ましくは、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、トリメトキシ官能性シロキサンである。
【0033】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、分子当たり2個以上のトリアルコキシ官能基を有している。典型的には、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、分子当たり2個以上、3個以上、さらには4個以上のトリアルコキシ官能基を有し、同時に典型的には分子当たり平均20個以下のトリアルコキシ官能基を有し、10個以下、又はさらには5個以下のトリアルコキシ官能基を有することができる。トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、ポリシロキサン鎖に対して直鎖状、分岐状、又は直鎖状と分岐状とのブレンドであり得る。直鎖状ポリシロキサンは、0~3モルパーセント(mol%)の合計濃度の-R’SiO3/2及びSiO4/2シロキサン単位を有し、式中、R’は、水素、アリール、及びアルキル基から選択される。分岐状トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、3mol%超、典型的には10mol%以上、25mol%以上、又はさらには50mol%以上のR’SiO3/2及びSiO4/2シロキサン単位を含む。例えば、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、後述するような分子構造(III)~(V)を有するものから選択することができる。
【0034】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンが直鎖状である場合、トリアルコキシ官能基は、末端、ペンダント、又は末端及びペンダントの両方であり得る。末端官能基が直鎖状ポリマーの末端に位置するのに対して、ペンダント官能基は2つの末端間のポリマー鎖から延びる。例えば、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、末端トリアルコキシ官能基を有する分子構造(III)を有する直鎖状ポリシロキサンであるか、又はこれを含むことができる。
(RO)3Si-(OSiR2)c-O-Si(OR)
3(III)
式中、Rは上記で定義したとおりであり(かつ好ましくはメチル)、下付き文字cは分子当たりの(OSiR2)シロキサン単位の平均数であり、概ね、13以上、20以上、30以上、40以上、50以上、75以上、100以上、150以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、さらには650以上の値を有し、同時に、概ね2000以下、1000以下、900以下、800以下、700以下、650以下、さらには645以下である。
【0035】
あるいは、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、以下の関連する分子構造(IIIb)を有してもよい。
(RO)3Si-R”-SiR2-(OSiR2)c-R”-Si(OR)
3 (IIIb)
式中、R、下付き文字cは、分子構造(III)について上記で定義したとおりであり、R”は、1~6個の炭素を有する二価炭化水素であり、好ましくは-CH2CH2-である。
【0036】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、ペンダントトリアルコキシ官能基を有する分子構造(IV)を有する直鎖状ポリシロキサンであるか、又はこれを含むことができる。
R3SiO-(SiR2O)m-(SiRAO)n-SiR3 (IV)
式中、各Rは、独立して、上記で定義したとおりであり(かつ好ましくはメチル)、下付き文字mは、分子当たりの (SiR2O)の平均数であり、典型的には、分子構造(III)の下付き文字cについて述べた値を有し、下付き文字nは、分子当たりの(SiRAO)単位の平均数であり、2以上であり、好ましくは概ね分子構造(III)の下付き文字cについて述べた値を有し、Aは、以下の構造を有する。
-R”Si(OR)
3
式中、Rは上記に述べたとおりであり(かつ好ましくはメチルである)、R”は、分子構造(IIIb)について上記で定義したとおりである。
【0037】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、分子構造(V)を有する分岐ポリシロキサンであるか、又はこれを含むことができる。
Si[-(OSiR2)p-R”-Si(OR)
3
]4 (V)
式中、R及びR”は上記に述べたとおりであり、Rは好ましくはメチルであり、R’’は好ましくは-CH2CH2-であり、下付き文字pは、分子当たりの(OSiR2)シロキサン単位の平均数であり、典型的には20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、さらに50以上であり、同時に、典型的には100以下、75以下、60以下、50以下、さらに40以下である。
【0038】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、1200以上の数平均分子量を有し、1400以上、1500以上、1600以上、1700以上、1800以上、1900以上、2000以上、3000以上、4000以上、5000以上、6000以上、7000以上、8000以上、9000以上、10000以上、11000以上、さらには12000以上の数平均分子量を有してよく、同時に典型的には100000以下、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、50000以下、40000以下、30000以下、20000以下、さらには15000以下の数平均分子量を有することができる。
【0039】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンが有するシリルヒドリド(-SH)基は1個以下であることが望ましく、シリルヒドリド(-SH)基を含まないことが好ましい。
【0040】
トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、重量%が組成物の重量に対するものとして、0.025重量%以上、0.05重量%以上、好ましくは0.10重量%以上、0.15重量%以上、0.20重量%以上、0.25重量%以上の濃度で存在することが望ましく、0.30重量%以上、0.40重量%以上、0.50重量%以上、0.60重量%以上、さらには0.70重量%以上の濃度で存在してよく、同時に、2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、1.0重量%以下、0.75重量%以下、0.60重量%以下、0.55重量%以下、0.50重量%以下の濃度で存在することができる。驚くべきことに、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンが2.0重量%超の濃度で存在する場合には、組成物のチキソトロピー指数の増加が50%未満であることが見出された。驚くべきことに、より低い濃度では、組成物のチキソトロピー指数がより劇的に増加することが見出された。例えば、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンが0.05重量%以上、かつ同時に0.75重量%以下、さらには0.60重量%以下、又は0.55重量%以下の濃度で存在する場合に、予想外にも、チキソトロピー指数が100%以上、増加する。トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、組成物の低剪断粘度を高剪断粘度に対して優先的に増加させることによってチキソトロピー指数の増加を誘導する。
【0041】
組成物は、1つの処理剤又は複数の処理剤の組み合わせをさらに含んでもよく、また、含むことが好ましい。処理剤は、充填剤の凝集及び充填剤-充填剤相互作用を低減することによって他の成分中への充填剤の分散性を改善し、充填剤表面のウェットアウトを改善し、組成物の粘度を低下させ、充填剤表面の反応性基をキャップして、組成物の貯蔵寿命を損なう可能性のある充填剤との反応を防ぐ機能を有する。処理剤は、アルキルトリアルコキシシラン及びモノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンの一方又は両方を含むか又はこれらからなる。
【0042】
アルキルトリアルコキシシランは、一般式:(R1)(R2O)3Siのものであり、式中、R1は、望ましくは分子当たり平均で、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、さらには16個以上の炭素原子を有するアルキルであり、かつ同時に典型的には18個以下の炭素原子を有し、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、又はさらには10個以下の炭素原子を有してもよく、R2は、望ましくは、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、さらには6個以上の炭素原子を有するアルキルであり、かつ同時に典型的には10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、さらには2個以下の炭素原子を有する。望ましくは、アルキルトリアルコキシシランは、上記のアルキル基を有するアルキルトリメトキシシランである。望ましいアルキルトリアルコキシシランの一例は、n-デシルトリメトキシシランである。アルキルトリアルコキシシランの濃度は、組成物の重量に基づいて概ね、0重量%以上、0.05重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.22重量%以上、0.24重量%以上であり、かつ同時に、概ね0.30重量%以下、好ましくは0.28重量%以下、0.26重量%以下、又は0.24重量%以下であり、0.22重量%以下であってもよい。
【0043】
モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、概ね以下の分子構造(VI):
R3SiO-(R2SiO)h-[(CH2)e((CH3)2SiO)f]g-(CH2)e-Si(OR2)3 (VI)
を有し、式中、R及びR2は各々独立して、各々の場合で、上記で定義されたとおりであり、下付き文字hは、分子当たりの(R2SiO)単位の平均数であり、典型的には10以上、15以上、20以上、25以上、さらには30以上の値を有し、かつ同時に、概ね150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又はさらには30以下であり、下付き文字eは独立して、それぞれの場合で0以上、1以上、さらには2以上の値を有し、かつ同時に通常、4以下、3以下、又はさらには2以下であり、下付き文字fは、典型的には0以上、1以上、2以上、3以上の値を有し、同時に概ね、6以下、5以下、4以下、3以下、又はさらには2以下であり、下付き文字gは、典型的には0以上、1以上、2以上、3以上、さらには4以上の値を有し、同時に概ね、6以下、さらには5以下、4以下、又は3以下の値を有する。
【0044】
望ましくは、モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、一般分子構造(VII):
(CH3)3SiO-((CH3)2SiO)t-Si(OR2)3 (VII)
を有する。
【0045】
1つの特に望ましいトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノポリシロキサンは、R2がメチルに等しく、下付き文字tが、130以下、好ましくは120以下、好ましくは110以下、より好ましくは110以下又は100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下、又は30以下、かつ同時に20超、好ましくは30以上の値に等しい、式(VII)の組成を有することで末端トリメトキシ官能化ケイ素原子を形成する。
【0046】
モノトリアルコキシシロキシ末端ジオルガノシロキサンの濃度は、組成物の重量に基づいて典型的には0重量%以上、0.10重量%以上、0.20重量%以上、0.30重量%以上、0.40重量%以上、0.50重量%以上、0.75重量%以上、さらには1.0重量%以上又は2.0重量%以上であり、かつ同時に、概ね3.0重量%以下、2.0重量%以下、1.20重量%以下、1.15重量%以下、又はさらには1.10重量%以下である。
【0047】
組成物は、複数の追加成分のうちのいずれか1つ若しくは任意の組み合わせをさらに含んでもよい(又は含まなくてもよい)。そのような追加成分の例としては、硬化阻害剤、酸化防止剤 安定剤、顔料、粘度調整剤、シリカ充填剤、及びスペーサー添加剤が挙げられる。誤解を避けるため、組成物は、このような追加成分のいずれか1つ又は任意の組み合わせ又は複数のものを含まなくてもよい。例えば、組成物は、シリカ充填剤を含まなくてもよい。「シリカ充填剤」とは、天然シリカ(結晶石英、粉砕石英、及び珪藻土シリカなど)、並びに合成シリカ(ヒュームドシリカ、溶融シリカ、シリカゲル、及び沈降シリカ)を含む、シリカを含む固体微粒子を指す。上記に加え、又は上記に代えて、本発明の組成物は、ポリエーテル及び/又はシラノール官能性ポリジメチルシロキサンを含まなくてもよい。
【0048】
硬化阻害剤の一例としては、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シランがある。存在する場合、阻害剤は、典型的には組成物の重量に基づいて0.0001重量%以上又は0.001重量%以上の濃度で存在し、同時に、概ね5重量%以下、又はさらには1重量%以下、さらには0.5重量%以下の濃度で存在する。
【0049】
酸化防止剤は、存在する場合、典型的には組成物の重量の0.001~1重量%の濃度で含まれてもよい。酸化防止剤は、単独で、又は安定剤と組み合わせて存在してもよい。酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤が挙げられ、安定剤としては有機リン誘導体が挙げられる。
【0050】
顔料の例としては、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、及び銅フタロシアニンが挙げられる。存在する場合、顔料は、組成物の重量に基づいて0.0001~1重量%の濃度で存在しやすい。
【0051】
スペーサー添加剤は非熱伝導性充填剤であり、50~250マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。スペーサーの例としては、ガラス及びポリマービーズが挙げられる。
【0052】
本発明の組成物は、一成分又は二成分ヒドロシリル化硬化性組成物であり得る。
【0053】
一成分ヒドロシリル化硬化性組成物は、ビニル官能性ポリシロキサンとシリルヒドリド官能性ポリシロキサンとを単一の混合物中に一緒に含む。一成分ヒドロシリル化硬化性組成物が早期硬化に対する貯蔵安定性を実現するため、白金触媒は概してカプセル化されるか、又は他の形でヒドロシリル化反応の活性化を阻害する。白金触媒を加熱又はそうでなければ放出することは、その活性及び組成物のヒドロシリル化硬化を誘発する。
【0054】
二成分ヒドロシリル化硬化性組成物は、ビニル官能性ポリシロキサンを含む第1液と、シリルヒドリド官能性ポリシロキサンを含む第2液の2つの別個の液を含む。白金ヒドロシリル化触媒は、典型的には、ビニル官能性ポリシロキサンを含む第1液に含まれる。本発明の有益な一態様では、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは二成分ヒドロシリル化硬化性組成物の両方の液に存在してよく、各液の低剪断粘度を高剪断粘度に対して優先的に増加させることで各液のチキソトロピー指数の50%以上の増加、さらには100%以上の増加を実現することができる。熱伝導性充填剤は両方の液中に存在してよく、その場合、トリアルコキシ官能性ポリシロキサンは、低剪断粘度の優先的な増加のために各液中の充填剤の安定性が高くなるとともに、各液のチキソトロピー指数の増加に反映された相対的に低い高剪断粘度のために高剪断下で各液を圧送及び混合できる能力が維持されるように各液に影響を及ぼすことができる。さらにより有益な点として、チキソトロピー指数の増加及び優先的な低剪断粘度の増加を実現するために同じ添加剤が各液中に使用されるため、添加剤が同じであるので添加剤同士は相溶性であることから、2つの液が混合されると組成物が硬化する際にこの特性は維持される。2液組成物は、概して、第1液と第2液とを互いに混合して、ビニル官能性ポリシロキサンとシリルヒドリド官能性ポリシロキサンとを白金触媒の存在下で一緒にすることによって硬化される。硬化は、典型的には加熱を全く行わずに起きるが、加熱は通常、硬化反応を速める。
【0055】
本発明の2液組成物の一例は、以下の別個の(別々に分離されていることを意味する)第1液と第2液とを含み、(1)第1液は、(a)7~35重量パーセントのビニル官能性ポリシロキサンと、(b)60~92重量パーセントの熱伝導性充填剤と、(c)0.05~2.0重量パーセントのトリアルコキシ官能性ポリシロキサンと、(d)第1液100万重量部当たり1~100重量部の白金ヒドロシリル化触媒と、(e)0.1~2.0重量パーセントの処理剤と、を含み、(2)第2液は、(a)10~15重量パーセントのビニル官能性ポリシロキサンと、(b)分子当たり平均で少なくとも2個のシリルヒドリド基を有する、2~5重量パーセントのシリルヒドリド官能性ポリシロキサンと、(c)60~92重量パーセントの熱伝導性充填剤と、(d)0.05~2.0重量パーセントのトリアルコキシ官能性ポリシロキサンと、(e)0~1重量パーセントの顔料添加剤と、(f)0~0.01重量パーセントの白金硬化阻害剤と、を含み、ただし、重量パーセントの値は、成分が存在する液の重量に対するものである。
【0056】
本発明は、本発明の組成物を硬化させるためのプロセスであって、(a)上記のいずれか1項に記載の組成物の全ての成分を互いに加え合わせる工程と、(b)必要に応じて加熱する工程と、(c)ビニル官能性ポリシロキサンとシリルヒドリド官能性ポリシロキサンとをヒドロシリル化硬化させて硬化組成物を形成する工程と、を含む、プロセスを含む。加熱は、特に2成分組成物では概して必要ではないが、典型的には組成物の硬化を加速する。
【0057】
組成物を硬化させるためのプロセスは、望ましくは、工程(a)で成分同士を加え合わせた後でかつ工程(b)の前に組成物を基材に適用して、プロセスに加熱が含まれる場合、硬化組成物を含む物品を基材上に形成すること、を含む。プロセスは、組成物を基材に適用した後でかつ工程(b)の前に、組成物を第2の要素と接触させて、プロセスに加熱が含まれる場合、基材と第2の要素との間に熱接触した硬化組成物を含む物品を形成すること、をさらに含むことができる。
【0058】
本発明は、本発明のプロセスによって調製された、物品も含む。そのような物品の例としては、電子部品が挙げられる。本発明の硬化組成物は、物品内の熱源とヒートシンクとを熱的に接続し、それらの間の熱架橋として機能することができる。
【実施例】
【0059】
表1に、以下の実施例で使用するための材料を示す。「V-P」は、「ビニル官能性ポリシロキサン」を指す。「SH-P」は、「シリルヒドリド官能性ポリシロキサン」を指す。「TM-PS」は、「トリメトキシ官能性ポリシロキサン」を指す。「TCF」は、「熱伝導性充填剤」を指す。「TA」は、「処理剤」を指す。
【表1】
SYL-OFFは、The Dow Chemical Companyの商標である。
SILASTICはDow Corning Corporationの商標である。
SILMERはThe Siltech Corporationの商標である。
【0060】
TM-PS1の合成
90.82重量%のヒドロキシ末端ジメチルシロキサン(Aldrich)、9.1重量%のオルトケイ酸メチル(Aldrich)、及び0.08重量%の氷酢酸(Aldrich)を反応器(例えば、丸底フラスコ)に充填し、混合した後、120~130℃に加熱して4時間混合し続ける。真空下、150℃で5時間、酢酸、メタノール、及び過剰のオルトケイ酸メチルを除去する。得られた生成物はTM-PS1である。
【0061】
TM-PS3の合成
100gのジメチル環状物を、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン(0.9重量%のビニル含有量、Skyran Industrial Co.,Ltd.から入手可能なCAS316374-82-0)及び9.42gの1(-2-(トリメトキシシリル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(Gleader Advanced Material Co.,Ltdから入手可能)と共に丸底フラスコに充填する。0.06gの白金触媒IIを添加する。90℃で3時間混合する。濾過により白金残渣を除去してTM-PS3を得る。
【0062】
試料組成物
第1液(A液)と第2液(B液)を含む2液硬化型組成物として、試料組成物を調製する。
【0063】
A液の組成物
各A液試料の配合を表2に示す。VF-P成分を10LのTurelloミキサーの容器に充填し、0.4立方メートル/時の窒素流下、毎分20回転(RPM)で5分間混合する。TCF成分を添加し、15分間撹拌を続ける。混合物を真空下(約0.1メガパスカル)で120℃に1時間加熱する。22℃に冷却し、白金触媒I成分を添加し、窒素パージ下、750RPMで15分間混合する。
【0064】
B液の組成物
各B液試料の配合を表3に示す。VF-P成分、カーボンブラック、及びTA成分を10LのTurelloミキサーの容器に充填し、0.4立方メートル/時の窒素流下、20RPMで5分間混合する。TCF成分を添加し、15分間撹拌を続ける。混合物を真空下(約0.1メガパスカル)で120℃に1時間加熱する。22℃に冷却し、硬化阻害剤、SHF-P成分、及びTM-PS成分を添加し、窒素パージ下、750RPMで15分間混合する。
【0065】
表4は、A液及びB液の各試料の低剪断粘度、高剪断粘度、及びチキソトロピー指数を示す。本明細書で上記に述べたように、低剪断粘度及び高剪断粘度並びにチキソトロピー指数を測定する。
【表2】
【表3】
【表4】
【0066】
表4のデータにより、特許請求される本発明の組成物が、分子量1200以上のトリメトキシ官能性ポリシロキサンが組成物の重量に基づいて0.05~2.0重量%の濃度で添加される場合に、低剪断粘度の優先的増加と、50%以上、75%以上、及び多くの場合でさらには100%以上のチキソトロピー指数の増加を示すことが明らかとなった。
【0067】
参照(Ref)試料は、トリメトキシ官能性ポリシロキサンを含まない組成物を示し、参照組成物としての役割を有する。
【0068】
試料5の組成物は、2.00重量%超のトリメトキシ官能性ポリシロキサンを有し、そのデータは、参照組成物に対してチキソトロピー指数の増加が50%未満の増加であるのに対して、試料1~4は、2.00重量%未満の同じトリメトキシ官能性ポリシロキサンを含む同じ組成物がいずれも50%よりも大きいチキソトロピー指数の増加を示すことを示している。
【0069】
試料12及び13は、TM-PS1と同様であるがポリシロキサンではないトリメトキシ官能性直鎖状分子を示す。これらの試料もまた、TM-PS1が100%を越えるチキソトロピー指数の増加を示す添加量においてであっても、50%以上のチキソトロピー指数の増加を示していない。
【0070】
試料14及び15は、約1100の分子量を有する点以外はTM-PS1と同様の直鎖状のトリメトキシ官能性ポリシロキサンを含む。これらの試料もまた、TM-PS1が100%を超えるチキソトロピー指数の増加を引き起こすような添加量で、組成物のチキソトロピー指数を50%以上増加させることができない。
【0071】
試料1~15は、2液硬化型組成物である。各試料のA液及びB液の組成物を互いに混合すると、ブレンドされた組成物はヒドロシリル化硬化反応を起こして、硬化組成物を生じる。各液の組成は、同じトリメトキシ官能化ポリシロキサンで改変されており、トリメトキシ官能化ポリシロキサンの存在による優先的な低剪断粘度の増加によってチキソトロピー指数の50%以上の増加を実現している。これらの組成物が、触媒の周囲の封入物質のアンブロッキング(例えば、ブロッキング剤のUV照射による放出又は熱放出)又は融解によって放出される阻害された触媒(例えば、ブロックされた触媒又は封入された触媒)を使用することによって硬化が阻害される1液硬化型組成物である場合、同様の結果が予想される。