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特許7554850アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含む肥満関連疾患の予防及び治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含む肥満関連疾患の予防及び治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20240912BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/58 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20240912BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20240912BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240912BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240912BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240912BHJP
【FI】
A61K31/713
A61K9/19
A61K47/60
A61K47/58
A61K47/54
A61K47/59
A61K47/69
A61P3/04
A61K48/00
C12N15/113 Z ZNA
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022569252
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2021054077
(87)【国際公開番号】W WO2021229479
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2020-0057879
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514171197
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BIONEER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】8-11, Munpyeongseo-ro, Daedeok-gu, Daejeon 34302, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】522397709
【氏名又は名称】サーナゲン セラピューティックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SIRNAGEN THERAPEUTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュンホン
(72)【発明者】
【氏名】パク ハンオ
(72)【発明者】
【氏名】ユン スンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム テリム
(72)【発明者】
【氏名】フアン ソヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ソン カン
(72)【発明者】
【氏名】チョン サンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】キム チャンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ ミスン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ソニア
(72)【発明者】
【氏名】ソン スンソプ
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225968(WO,A1)
【文献】ROBIDOUX, J. et al.,Amphiregulin, a new adipogenic growth factor.,Diabetes,2006年,Vol.55, No. Suppl.1,p.A316 1353-P
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
A-X-R-Y-B
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを意味し、
前記親水性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンからなる群から選択されるか、あるいは、
前記親水性物質は、下記の構造式(5)又は構造式(6)の構造を有し、
[構造式(5)]
(A’ -J)
[構造式(6)]
(J-A’
前記構造式(5)又は構造式(6)において、A’は親水性物質モノマー(monomer)を、Jはm個の親水性物質モノマー間又はm個の親水性物質モノマーと二本鎖オリゴヌクレオチドとを互いに連結するリンカー、mは1~15の整数、nは1~10の整数を意味し、
親水性物質単量体A’は、下記の化合物(1)~化合物(3)から選択されるいずれかの化合物であり、リンカー(J)は、-PO -、-SO -及び-CO -からなる群から選択され:
[化合物(1)]
前記化合物(1)において、GはO、S及びNHからなる群から選択され;
[化合物(2)]
[化合物(3)]
前記疎水性物質は、ステロイド誘導体、グリセリド誘導体、グリセロールエーテル、ポリプロピレングリコール、C 12 ~C 50 の不飽和又は飽和炭化水素、ジアシルホスファチジルコリン(diacylphosphatidylcholine)、脂肪酸、リン脂質、リポポリアミン(lipopolyamine)、脂質(lipid)、トコフェロール(tocopherol)及びトコトリエノール(tocotrienol)からなる群から選択されるいずれかである;並びに
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;
からなる群から選択されるいずれかを含むことを特徴とする肥満の予防又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記センス鎖又はアンチセンス鎖は19~31個のヌクレオチドからなることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドはsiRNA、shRNA又はmiRNAであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記センス鎖又はアンチセンス鎖は独立してDNA又はRNAであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記二本鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖又はアンチセンス鎖が化学的修飾(chemical modification)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化学的修飾が、
1つ以上のヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置で水酸化基(-OH)がメチル基(-CH)、メトキシ基(-OCH)、アミン基(-NH)、フッ素(-F)、O-2-メトキシエチル基、O-プロピル基、O-2-メチルチオエチル基、O-3-アミノプロピル基、O-3-ジメチルアミノプロピル基、O-N-メチルアセトアミド基、及びO-ジメチルアミドオキシエチルからなる群から選択されるいずれかに置換される修飾;
ヌクレオチド内の糖構造の酸素が硫黄に置換される修飾;
ヌクレオチド結合がホスホロチオエート(phosphorothioate)結合、ボラノホスフェート(boranophosphate)結合及びメチルホスホネート(methyl phosphonate)結合からなる群から選択されるいずれかの結合となる修飾;並びに
PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)及びUNA(unlocked nucleic acid)形態への修飾;
からなる群から選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の5’末端に1つ以上のリン酸基(phosphate group)が結合していることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(2)の構造を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物:
[構造式(2)]
前記構造式(2)において、S及びASは、それぞれ、請求項1に記載の二本鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖を意味し、A、B、X及びYは、請求項1の定義と同じである。
【請求項9】
前記アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(3)又は構造式(4)の構造を含むことを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物:
[構造式(3)]
[構造式(4)]
前記構造式(3)及び(4)において、A、B、X、Y、S及びASは、請求項8における定義と同じであり、5’及び3’は、それぞれ、二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’及び3’末端を意味する。
【請求項10】
前記アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(7)又は構造式(8)の構造を有することを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物:
[構造式(7)]
(A’-J)-X-R-Y-B
[構造式(8)]
(J-A’-X-R-Y-B。
【請求項11】
前記親水性物質の分子量は200~10,000であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記疎水性物質の分子量は250~1,000であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ステロイド誘導体が、コレステロール、コレスタノール、コール酸、コレステリルホルマート、コレスタニルホルマート及びコレスタニルアミンからなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記グリセリド誘導体は、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドからなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記X及びYで表される共有結合は、非分解性結合又は分解性結合であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記非分解性結合は、アミド結合又はリン酸化結合であることを特徴とする、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記分解性結合は、二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、無水物結合、生分解性結合及び酵素分解性結合からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ナノ粒子は、異なる配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の混合物で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記肥満は糖尿病による内臓脂肪型肥満であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記医薬組成物は、次のいずれか一つ以上の効果を発揮することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物:
(i)体重の減少;
(ii)食餌効率の低下;
(iii)皮下脂肪の減少;
(iv)内臓脂肪の減少;
(v)脂肪細胞面積の減少;及び
(vi)肝脂肪生成の抑制。
【請求項21】
前記医薬組成物は脂肪組織内のアンフィレギュリンの発現を抑制して、肥満の予防又は治療効果を発揮することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の医薬組成物を含む凍結乾燥形態の肥満の予防又は治療用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含む肥満関連疾患の予防及び治療用組成物に関し、より詳しくは、アンフィレギュリン発現を非常に特異的に高効率で妨げることができる二本鎖オリゴヌクレオチド、前記二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子を含む肥満関連疾患の予防及び治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年、GuoとKemphuesは C.elegansでantisenseを用いた遺伝子の発現を抑制するのにantisense RNAと同様にsense RNAも有効であることを発見することにより、その原因を究明するための研究が進められ、1998年、Fireなどが初めてdouble stranded RNA(dsRNA)を注入して、それに対応するmRNAが特異的に分解して遺伝子の発現が抑制される現象を確認し、これをRNA interference(RNAi)と命名した。RNAiは、遺伝子の発現を抑制するために使用される方法であって、簡便かつ少ないコストで遺伝子抑制効果をはっきりと達成することができるので、その技術の応用分野が多様化している。
【0003】
このような遺伝子の発現を抑制する技術は特定遺伝子の発現を調節できるので、特定遺伝子の過剰発現が原因となる癌、遺伝疾患などの標的遺伝子をmRNAレベルで除去できて、疾患治療のための治療剤の開発及び標的検証の重要なツールとして活用することができる。標的遺伝子の発現を抑制する従来の技術としては、標的遺伝子に対する転移遺伝子を導入する技術が開示されているが、プロモーターを基準に逆方向(antisense)に転移遺伝子を導入する方法と、プロモーターを基準に正方向(sense)に移植遺伝子を導入する方法がある。
【0004】
このようなRNAを標的とするRNA治療法は、標的RNAに対するオリゴヌクレオチドを用いて当該遺伝子の機能を除去する方法であって、従来の抗体や化合物(small molecule)のような従来の治療剤が主にタンパク質を標的とするものとは異なる。RNAを標的とする接近法には大きく2つがある。その1つは二重らせんRNAを媒介とするRNAiであり、もう1つはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。現在、様々な疾患でRNAを標的にして臨床が試みられている。
【0005】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide、以下、「ASO」という)は、ワトソン-クリック塩基反応に応じて目的遺伝子に結合するように設計された短い長さの合成DNAであって、遺伝子の特定塩基配列の発現を特異的に抑制することができて、遺伝子の機能を研究し、癌などの疾患を分子レベルで治療することができる治療剤を開発するために利用されてきた。このようなASOは遺伝子の発現を抑制する目標を多様に設定して容易に製作され得る利点があり、発癌遺伝子の発現と癌細胞の成長を抑制するのに活用しようとする研究があった。ASOが特定の遺伝子の発現を抑制する過程は、相補的なmRNA配列と結合してRNase H活性を誘導してmRNAを除去するか、タンパク質翻訳のためのリポソーム複合体の形成及び進行を妨げることによって行われる。さらに、ASOはゲノムDNAと結合してトリプルヘリックス(triple helix)構造を形成することによって遺伝子の転写を抑制するということが報告されている。ASOは上述した潜在的な可能性があるが、それを臨床的に活用するためにはヌクレアーゼ(nuclease)に対する安定性を向上させ、目的遺伝子の塩基配列に特異的に結合するように標的組織や細胞内に効率的に伝達しなければならない。さらに、遺伝子mRNAの二次及び三次構造はASOの特異的な結合に重要な要素であり、mRNAの二次構造が少ない部分がASOが接近するのに非常に有利であるため、ASOを合成する前にmRNAの二次構造が少なく生成される領域を体系的に分析して、生体外だけでなく生体内でも遺伝子特異的な抑制を効果的に達成するために努力してきた。このようなASOは、RNAの種類であるsiRNAよりも非常に安定しており、水や生理食塩水などによく溶解する利点があり、現在3つのASOがFederal Drug Administration(FDA)に承認されている(Jessica,C.,J Postdoc Res,4:35-50,2016)。
【0006】
干渉RNA(RNA interference、以下、「RNAi」という)は、その役割が発見された以来、様々な種類の哺乳動物細胞で配列特異的なmRNAに作用するということがわかった(Barik,S.,J Mol.Med.(2005)83:764-773)。長い鎖のRNA二本鎖が細胞に送達されると、送達されたRNA二本鎖は、Dicerと呼ばれるエンドヌクレアーゼ(endonuclease)によって21~23個の二本鎖(bp:base pair)で処理された短い干渉RNA(small interfering RNA、以下、「siRNA」という)に変換され、siRNAは、RISC(RNA-induced silencing complex)に結合して、ガイド(アンチセンス)鎖が標的mRNAを認識して分解する過程を通じて標的遺伝子の発現を配列特異的に阻害する。SiRNAを用いた遺伝子の発現抑制技術は、標的細胞における標的遺伝子の発現を抑制し、これによる変化を観察することで標的細胞における標的遺伝子の機能を究明する研究に有用に用いられる。特に、感染性ウイルス又は癌細胞などで標的遺伝子の機能を抑制することは、当該疾患の治療方法を開発するのに有用に活用することができ、生体外(in vitro)での研究及び実験動物を用いた生体内(in vivo)研究を行った結果、siRNAによる標的遺伝子の発現抑制が可能であると報告されている。
【0007】
Bertrandの研究陣によると、同じ標的遺伝子に対するsiRNAは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と比較して、生体内及び生体外でのmRNA発現の阻害効果に優れており、その効果は長い間持続するということが明らかになった。また、siRNAの作用機序は標的mRNAと相補的に結合して配列特異的に標的遺伝子の発現を調節するので、既存の抗体ベースの医薬品や化学物質医薬品(small molecule drug)に比べて適用できる対象が画期的に拡大することができるという利点を有する。
【0008】
siRNAの優れた効果及び様々な使用範囲にもかかわらず、siRNAが治療薬として開発されるためには、体内でのsiRNAの安定性の改善及び細胞送達効率の改善を通じて、siRNAが標的細胞に効果的に伝達されなければならない。体内安定性の向上及びsiRNAの非特異的な細胞免疫応答(innate immune stimulation)問題解決のために、siRNAの一部のヌクレオチド又は骨格を核酸分解酵素耐性を有するように修飾(modification)するか、又はウイルス性ベクター(viral vector)、リポソームやナノ粒子などの伝達体を利用するなど、これに対する研究が活発に試みられている。
【0009】
アデノウイルスやレトロウイルスなどのウイルス性ベクターを用いた送達システムは、形質導入効率(transfection efficacy)が高いが、免疫原性(immunogenicity)及び発癌性(oncogenicity)が高い。一方、ナノ粒子を含む非ウイルス性(non-viral)送達システムは、ウイルス性送達システムに比べて細胞伝達効率は低いが、生体内での安定性が高く、標的特異的に伝達が可能であり、内包されているRNAiオリゴヌクレオチドを細胞又は組織に取り込み(uptake)及び内在化(internalization)し、細胞毒性及び免疫誘発がほとんどないという利点を有するので、現在ではウイルス性伝達システムに比べて有力な伝達方法として評価されている。
【0010】
非ウイルス性送達システムのうち、ナノ担体(nanocarrier)を用いる方法は、リポソーム、陽イオン高分子複合体などの様々な高分子を使用することによりナノ粒子を形成し、siRNAをそのようなナノ粒子、すなわち、ナノ担体に担持して細胞に伝達する方法である。ナノ担体を利用する方法のうち、主に活用される方法は、高分子ナノ粒子(polymeric nanoparticle)、高分子ミセル(polymer micelle)、リポプレックス(lipoplex)などがある。そのうち、リポプレックスを用いた方法は陽イオン性脂質で構成されて細胞のエンドソーム(endosome)の陰イオン性脂質と相互作用して、エンドソームの脱安定化効果を引き起こして細胞内に伝達する役割を果たす。
【0011】
また、siRNAパッセンジャー(passenger;センス(sense))鎖の末端部位に化学物質などを連結して増強された薬力学的(pharmacokinetics)特徴を持たせることで生体内で高い効率を誘導することができると知られている(J Soutschek,Nature 11;432(7014):173-8,2004)。このとき、siRNAセンス(sense;パッセンジャー(passenger))又はアンチセンス(antisense;ガイド(guide))鎖の末端に結合した化学物質の性質に応じてsiRNAの安定性が異なる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG:polyethylene glycol)などの高分子化合物が接合した形態のsiRNAは、陽イオン性物質が存在する条件でsiRNAの陰イオン性リン酸基と相互作用して複合体を形成することにより、改善されたsiRNA安定性を持つ伝達体となる。特に、高分子複合体で構成されたミセル(micelle)群は、薬物伝達輸送体として使用される他のシステムである、微小球体(microsphere)やナノ粒子(nanoparticle)などに比べてその大きさが極めて小さいながらも分布が非常に一定で、自発的に形成される構造なので、製剤の品質管理及び再現性の確保が容易であるという利点がある。
【0012】
siRNAの細胞内送達効率を向上させるために、siRNAに生体適合性高分子である親水性物質(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))を単純共有結合又はリンカー媒介共有結合で接合させるsiRNA接合体を通して、siRNAの安定性を確保し、効率的な細胞膜透過性のための技術が開発された(韓国登録特許第883471号)。しかしながら、siRNAの化学的修飾及びポリエチレングリコール(PEG)を接合させる(PEGylation)だけでは、生体内での低い安定性と標的臓器への送達が円滑でないという欠点は依然としてある。これらの欠点を解決するために、オリゴヌクレオチド、特に、siRNAのような二本鎖オリゴRNAに親水性及び疎水性物質が結合した二本鎖オリゴRNA構造体が開発された。前記構造体は疎水性物質の疎水性相互作用によりSAMiRNATM(self assembled micelle inhibitory RNA)と呼ばれる自己組織化ナノ粒子を形成するが(韓国登録特許第1224828号)、SAMiRNATM 技術は既存の伝達技術に比べて非常にサイズが小さいながらも均一なナノ粒子を得ることができるという利点がある。
【0013】
SAMiRNATM 技術の具体例としては、親水性物質としてPEG(polyethyleneglycol)又はHEG(Hexaethylenglycol)が用いられる。PEGは合成ポリマーであり、医薬品、特に、タンパク質の溶解性(solubility)増加及び薬物動態学(pharmacokinetics)の調整によく使用される。PEGは多分散系(polydisperse)物質であり、1バッチ(batch)のポリマーは他の個数の単量体の総和からなり分子量がガウス曲線形態を示し、多分散指数(polydisperse value、Mw/Mn)で物質の同質性の程度を表す。すなわち、PEGが低い分子量(3~5kDa)のときは、約1.01の多分散指数を示し、高分子量(20kDa)の場合は、約1.2という高い多分散指数を示し、高い分子量であるほど物質の同質性が比較的低い特徴を示す。従って、PEGを医薬品に結合させた場合、接合体にPEGの多分散的特徴が反映されて単一物質の検証が容易ではないという欠点があるので、PEGの合成及び精製過程の改善を通じて低い多分散指数を有する物質を生産する傾向である。しかしながら、特に分子量の小さい物質にPEGを結合させた場合、結合が容易になされたか確認が容易でない不便な点があるなど、物質の多分散性の特徴による問題点が存在する。
【0014】
したがって、近年では、既存の自己組織化ナノ粒子であるSAMiRNATM 技術の改良された形態として、SAMiRNATMを構成する二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質を一定の分子量を有する均一な1~15個の単量体と必要に応じてリンカー(linker)を含む基本単位をブロック化し、それを必要に応じて適切な数を使用することにより、既存のSAMiRNATMに比べてより小さいサイズを持ち、また多分散性が劇的に改善された新しい形態の伝達体技術が開発された。さらに、体内にsiRNAを注入した場合、血液中に存在する様々な酵素によってsiRNAが急速に分解されて、標的細胞や組織などへの伝達効率が悪いことが既に知られているように、改良されたSAMiRNATMでも標的遺伝子に応じて安定性及び発現阻害率の偏差が示された。したがって、本発明者らは、改良された自己組織化ナノ粒子であるSAMiRNATMを用いて標的遺伝子をより安定かつ効果的に発現阻害するために、ガイドであるセンス鎖はASOであるDNA配列を、パッセンジャーであるアンチセンス鎖はRNA配列を用いて、DNA-RNAハイブリッド形態の二本鎖オリゴヌクレオチドを適用することにより、標的遺伝子に対する発現阻害効果及び安定性を増強しようとした。
一方、肥満は世界的に重要な健康問題であり、心臓疾患、第2型糖尿病、特定の癌などの多くの合併症がその増加要因となることがある。
【0015】
肥満の主な要因の1つは、体内に内臓脂肪が過度に積み重ねられるためである[Carr DB,Diabetes.2004 Aug;53(8):2087-94; Bouchard C,Int J Obes Relat Metab Disord 1996;20:420-7]。内臓脂肪は体内臓器を取り囲んでいる脂肪をいい、内臓脂肪は主に遺伝的要因[Rosenberg B、Panminerva Med 2005;47:229-44]、人種、物理的活動、生活習慣及び炎症因子[Deurenberg P,Int J Obes Relat Metab Disord 1998;22:1164-71]などによって発生する。さらに、人種に応じてアジア人の場合、内臓脂肪の蓄積の程度がひどく[WHO Expert Consultation.Lancet 2004;363:157-63; Hu FB,N Engl J Med 2001;345:790-7]、過食又は飲酒、身体活動が少なく[Wannamethee SG,Am J Clin Nutr 2003;77:1312-7; Komiya H,Tohoku J Exp Med 2006;208:123-32]、喫煙するほど内臓脂肪を増やすことが知られている[Upadhyaya S,Adipocyte、2014;3(1):39-45]。このような内臓脂肪が蓄積すると、内臓脂肪細胞から分泌されるインターロイキン-6や腫瘍壊死因子-アルファ及び単核球化学誘引物質タンパク質-1などと炎症反応物質が増加して、様々な合併症の原因となる[Despres JP.Ann Med 2001;33:534-41]。
【0016】
内臓脂肪は代謝異常と心血管疾患を引き起こす[Matsuzawa Y,Obes Res 1995;3 Suppl 5:645-7]。内臓脂肪が多く蓄積するほどインスリン抵抗性が高くなり、また皮下脂肪より多い場合、心臓機能に対する部分が減少し、高血圧及び循環系疾患が発生する[Schaffler,Nat Clin Pract Gastroenterol Hepatol 005;2:273-80]。さらに、内臓脂肪は消化器関連疾患を引き起こすが、脂肪肝及び非アルコール性脂肪肝炎の要因として知られている[Busetto L,Diabetes Obes Metab 2005;7:301-6]。このような要因は、アディポネクチンは低くなりつつ抗炎症機序が減少し、肝臓に脂肪肝の形成が促進されて、非アルコール性脂肪肝が発生することになる。さらに、呼吸器系疾患においても、内臓脂肪は多くの問題を引き起こす[Schapira DV、Cancer 1994;74:632-9]。皮下脂肪より内臓脂肪が多いほど、呼気予備量が低くて、制限性肺換気障害が発生すると見られる。また、内臓脂肪は乳癌発生率を増加させると知られている。さらに、前立腺癌[Hsing AW、J Natl Cancer Inst 2001;93:783-9]及び大腸癌[Manson JE,N Engl J Med 1995;333:677-85]の発生増加と関連があることが知られている。
【0017】
内臓脂肪の治療は、主にダイエットの制限、身体運動及び薬物療法で行われますが、その効果はまだ限られた状況である[Diamantis T,Surg Obes Relat Dis,2014; 10(1):177-83; Kelley GA,J Obes,2013; 2013783103; Rhines SD,S D Med, 2013; 66(11):471, 73; Sharma M,Adolesc Health Med Ther,2010; 19-19]。したがって、内臓脂肪を減らすと、心血管疾患、代謝疾患、糖尿病及び他の疾患の発生を減らして合併症を予防することができ、生活の質を改善することができる。
【0018】
本発明者らは、内臓脂肪の減少による肥満治療の研究を進めていたが、アンフィレギュリンを特異的に阻害するアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む構造体を用いる場合、糖尿病動物モデルで皮下脂肪を含む内臓脂肪を有意に減少させることができることを確認した。
【0019】
さらに、本発明者らは、高脂肪食餌誘導による肥満動物モデルにおいて副精巣脂肪におけるアンフィレギュリン発現量が著しく増加することを確認し、当該肥満動物モデルにおいて本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む構造体を用いてアンフィレギュリン発現量を減少させる場合、体重、皮下脂肪、内臓脂肪の重量を著しく減少させ、脂肪組織の細胞サイズの増加を抑制することができ、脂肪組織におけるアンフィレギュリン発現量を減少させ、肝臓での脂肪蓄積を抑制する効能の発揮を確認することにより、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む構造体の抗肥満用途に対する本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、新規な肥満治療又は予防用の医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は、
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを意味;並びに
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかを含むことを特徴とする肥満の予防又は治療用医薬組成物を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、前記医薬組成物を含む凍結乾燥形態の製剤を提供する。
本発明は、また、肥満の予防又は治療を必要とする対象に
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二重鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかを投与する段階を含む肥満の予防又は治療方法を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、肥満の予防又は治療方法に使用するために
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とをアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二重鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、肥満の予防又は治療のための薬物の製造のために
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二重鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかの用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ヒトアンフィレギュリンを標的とする1,257個のSAMiRNAスクリーニングの結果を示す。
図2】選別されたアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴDNA/RNAハイブリッドのナノ粒子のサイズ分布を示し、ここで、(a)はSAMi-AREG#10、(b)はSAMi-AREG#11、(c)はSAMi-AREG#12である。
図3】実施例4のアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示したものであり、本発明の配列番号1~14の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(200又は600nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を示すグラフである。
図4】実施例5のアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示したものであり、本発明の配列番号10の配列をセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(12.5nM、25nM、50nM、100nM、200nM、600nM又は1200nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、(a)アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を分析して(b)SAMiRNAのIC50値を確認したグラフである。
図5】実施例5のアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示したものであり、本発明の配列番号11の配列をセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(12.5nM、25nM、50nM、100nM、200nM、600nM又は1200nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、(a)アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を分析して(b)SAMiRNAのIC50値を確認したグラフである。
図6】実施例5のアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示したものであり、本発明の配列番号12の配列をセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(12.5nM、25nM、50nM、100nM、200nM、600nM又は1200nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、(a)アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を分析して(b)SAMiRNAのIC50値を確認したグラフである。
図7】実施例6のアンフィレギュリン候補配列に対する内在免疫反応実験(Innate immune response test)分析結果を示したものであり、本発明の配列番号10(AR-1)、11(AR-2)、12(AR-3)をセンス鎖として有するアンフィレギュリンSAMiRNA 2.5μMをそれぞれヒト末梢血液単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)に処理し、アンフィレギュリン特異的なSAMiRNAによる内在免疫関連サイトカインのmRNAの相対的な増加量を分析して、ヒト末梢血液単核細胞を用いたin vitro細胞毒性を評価したグラフであり、ここで、(a)はDNA/RNAハイブリッドSAMiRNA、(b)はRNA/RNAハイブリッドSAMiRNAである。
図8】実施例7のアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示すものであり、選別されたアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAを含む二本鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドによるアンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を比較した分析結果であって、本発明の配列番号10(AR-1)、11(AR-2)、12(AR-3)の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(200nM、600nM又は1200nM)肺癌細胞株であるA549に処理し、アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を比較して示すグラフである。
図9】マウスアンフィレギュリンを標的とする237個のSAMiRNAスクリーニングの結果及びそのうち、選別された9個の候補配列の効果を示す。
図10A】実施例8のマウスアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示したものであって、本発明の配列番号19、20、21の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(200又は500nM)Mouse lung fibroblast細胞株であるMLgに処理し、アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を示すグラフである。
図10B】実施例8のマウスアンフィレギュリンmRNA発現量の定量分析結果を示したものであって、本発明の配列番号19、20、21の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを濃度を異にして(200、500又は1000nM)Mouse Lung epithelial細胞株であるLA-4に処理し、アンフィレギュリンmRNAの相対的な発現量(%)を示すグラフである。
図11】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の体重変化を示したグラフである。
図12】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の飼料摂取量の変化を示したグラフである。
図13】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の飲み水摂取量の変化を示したグラフである。
図14】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪比率を示した結果である。
図15】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の内臓脂肪比率を示した結果である。
図16】本発明によるマウス動物モデル実験において本発明による構造体の内臓脂肪減少効果を示した写真である。
図17】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の犠牲前の8週目の全血で空腹時血糖値を示した結果である。
図18】本発明によるマウス動物モデル実験において対照群と実験群の犠牲前の8週目の血清中のグルコース数値を示した結果である。
図19】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において高脂肪飼料を12週間給餌した後、対照群と実験群を犠牲にして副精巣脂肪におけるアンフィレギュリン発現量を確認したグラフである。
図20】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の体重変化を示してグラフである。
図21a】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の飼料摂取量の平均を示したグラフである。
図21b】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の飲み水摂取量の平均を示したグラフである。
図22】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の食餌効率(Food efficiency ratio(%))を示したグラフである。
図23a】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪(SFP:subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(EFP:epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(PFP:Perirenal fat pad)、腸間膜脂肪(MFP:mesenteric fat pad)の重量を示した結果である。
図23b】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪(SFP:subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(EFP:epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(PFP:Perirenal fat pad)、腸間膜脂肪(MFP:mesenteric fat pad)の重量を体重で割ったratio(%)を示した結果である。
図24a】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪重量及び内臓脂肪重量を示した結果である。
図24b】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群におけるマウス全重量に対する各々の皮下脂肪比率及び内臓脂肪比率を示した結果である。
図25】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪及び内臓脂肪の減少効果を比較したMicro-CT写真と体積で示したグラフである。
図26】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪(SFP:subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(EFP:epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(PFP:perirenal fat pad )、腸間膜脂肪(MFP:mesenteric fat pad)減少効果を比較した組織写真と脂肪細胞のサイズを示したグラフである。
図27a】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の肝組織において脂肪蓄積の減少効果を比較した写真である。
図27b】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の肝組織において脂肪蓄積の減少効果を比較した定量グラフである。
図28】本発明による高脂肪食餌肥満マウスモデル実験において対照群と実験群の皮下脂肪(SFP:subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(EFP:epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(PFP:perirenal fat pad )におけるアンフィレギュリンのmRNAレベル減少効果を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野で熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用される命名法は、当技術分野で周知であり、通常使用されるものである。
【0027】
本発明では、第2型糖尿動物モデルを用いてアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を投与する場合、皮下脂肪と内臓脂肪が著しく減少する効果を確認して、当該物質を肥満の治療又は予防用組成物として使用できることを確認した。
【0028】
さらに、本発明では、肥満誘導動物モデルにアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を投与する場合、体重の減少、食餌効率の低下、皮下脂肪の減少、内臓脂肪の減少、脂肪細胞面積の減少、肝脂肪生成の抑制効果が発揮されることを確認した。
【0029】
したがって、本発明は、一つの観点から、
(i)配列番号1~14からなる群、好ましくは、配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする肥満の予防又は治療用医薬組成物に関する。
【0030】
本発明に従って提供される好ましい二本鎖オリゴヌクレオチドに含まれる配列番号10、11及び12の配列は以下の通りである。
5’-CACCTACTCTGGGAAGCGT-3’(配列番号10)
5’-ACCTACTCTGGGAAGCGTG-3’(配列番号11)
5’-CTGGGAAGCGTGAACCATT-3’(配列番号12)
【0031】
本発明による二本鎖オリゴヌクレオチドは、一般的なRNAi(RNA interference)作用を有する全ての物質を含む概念であって、前記アンフィレギュリンタンパク質をコード化するmRNA特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドには、アンフィレギュリン特異的なshRNAなども含むことは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者には明らかである。すなわち、前記オリゴヌクレオチドはsiRNA、shRNA又はmiRNAであることを特徴とすることができる。
【0032】
さらに、アンフィレギュリンに対する特異性が維持される限り、前記配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖又はこれに相補的なアンチセンス鎖において、1つ以上の塩基が置換、欠失又は挿入された配列を含むセンス鎖及びアンチセンス鎖を含むアンフィレギュリン特異的なsiRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチドも本発明の権利範囲に含まれるものであることは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者には明らかである。
【0033】
本発明において、前記センス又はアンチセンス鎖は独立してDNA又はRNAであることを特徴とすることができ、また、センス鎖はDNA、アンチセンス鎖はRNAであるか、センス鎖はRNA、アンチセンス鎖はDNAであるハイブリッド(hybrid)形態を使用することができる。
【0034】
本発明において、前記配列番号10、11及び12はDNA形態として記載されているが、RNA形態が用いられる場合、配列番号10、11及び12の配列はこれに対応するRNA配列、すなわち、TがUに変更された配列を使用することができる。
【0035】
さらに、本発明による二本鎖オリゴヌクレオチドは、アンフィレギュリンに対する特異性が維持される限り、配列のセンス鎖がアンフィレギュリン遺伝子の結合部位と100%相補的な塩基配列である場合、すなわち、完全一致(perfect match)するものだけでなく、一部の塩基配列が一致しない場合、すなわち、不完全一致(mismatch)するものも含む。
【0036】
本発明による二本鎖オリゴヌクレオチドは、一方又は両方の鎖の3’末端に1つ又は複数の非結合(unpaired)ヌクレオチドを含む構造であるオーバーハング(overhang)を含み得る。
【0037】
本発明において、前記センス鎖又はアンチセンス鎖は、好ましくは、19~31個のヌクレオチドから構成されることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0038】
本発明において、配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む二本鎖オリゴヌクレオチドは、アンフィレギュリン(amphiregulin)に特異的であることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0039】
本発明において、前記二本鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖又はアンチセンス鎖は、生体内安定性を向上させるために、又は核酸分解酵素耐性の付与及び非特異的な免疫反応の低減のために、様々な化学的修飾(chemical modification)を含むことを特徴とすることができ、化学的修飾はヌクレオチド内の糖(sugar)構造の2’炭素位置で水酸化基(-OH)がメチル基(-CH)、メトキシ基(-OCH)、アミン基(-NH)、フッ素(-F)、O-2-メトキシエチル基、O-プロピル基、O-2-メチルチオエチル基、O-3-アミノプロピル基、O-3-ジメチルアミノプロピル基、O-N-メチルアセトアミド基及びO-ジメチルアミドオキシエチルからなる群から選択されるいずれかに置換される修飾;ヌクレオチド内の糖構造の酸素が硫黄に置換される修飾;ヌクレオチド結合がホスホロチオエート(phosphorothioate)結合、ボラノホスフェート(boranophosphate)結合及びメチルホスホネート(methyl phosphonate)結合からなる群から選択されるいずれかの結合となる修飾;及びPNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)及びUNA(unlocked nucleic acid)形態への修飾;DNA-RNAハイブリッド形態への修飾;からなる群から選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とすることができるが(Ann.Rev.Med.55,61-65 2004; US 5,660,985; US 5,958,691; US 6,531,584; US 5,808,023; US 6,326,358; US 6,175,001; Bioorg.Med.Chem.Lett.14:1139-1143,2003; RNA,9:1034-1048,2003; Nucleic Acid Res.31:589-595,2003; Nucleic Acids Research,38(17)5761-773、2010; Nucleic Acids Research,39(5):1823-1832,2011)、これに限定されない。
【0040】
本発明において、二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の5’末端に1つ以上のリン酸基(Phosphate group)が結合していることを特徴とすることができ、好ましくは、1~3個のリン酸基が結合していることを特徴とすることができる。
【0041】
本発明は、他の観点から、下記の構造式(1)の構造を含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体に関し、下記の構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは二本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0042】
好ましい一具体例として、本発明によるアンフィレギュリン特異的な配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、構造式(1)のような構造を有することが好ましい。

A-X-R-Y-B 構造式(1)

前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rはアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0043】
本発明による二本鎖オリゴヌクレオチドの形態としては、DNA-RNAハイブリッド、siRNA(short interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)及びmiRNA(microRNA)などが好ましいが、これらに限定されるものではなく、miRNAに対する拮抗剤(antagonist)役割を果たすことができる一本鎖のmiRNA阻害剤も含まれる。
【0044】
以下、本発明による二本鎖オリゴヌクレオチドはRNAを中心に説明するが、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドと同じ特性を有する他の二本鎖オリゴヌクレオチドにも適用可能なのは当業界の通常の技術者にとって明らかである。
【0045】
より好ましくは、本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(2)の構造を有する。

A-X-S-Y-B
AS 構造式(2)
【0046】
前記構造式(2)において、A、B、X及びYは前記構造式(1)における定義と同一であり、Sはアンフィレギュリン特異的なヌクレオチド配列のセンス鎖、ASはアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖を意味する。
【0047】
より好ましくは、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(3)又は(4)の構造を有する。
【0048】
構造式(3)及び構造式(4)において、A、B、S、AS、X及びYは、前記構造式(2)における定義と同じであり、5’及び3’は、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’末端及び3’末端を意味する。
【0049】
前記親水性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンからなる群から選択されることを特徴とすることができるが、これらに限定されない。
【0050】
前記構造式(1)~構造式(4)における前記アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、アンチセンス鎖の5’末端にリン酸基(phosphate group)が1~3個結合することができ、RNAの代わりにshRNAを使用できることは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとっては明らかである。
【0051】
前記構造式(1)~構造式(4)における親水性物質は、分子量が200~10,000の高分子物質であることが好ましく、より好ましくは、1,000~2,000の高分子物質である。例えば、親水性高分子材料としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどの非イオン性親水性高分子化合物を用いることが好ましいが、必ずしもこれに限定されることではない。
【0052】
特に、構造式(1)~構造式(4)における親水性物質(A)は、下記の構造式(5)又は構造式(6)のような形態の親水性物質ブロック(block)の形態として用いることができるが、このような親水性物質ブロックを必要に応じて適切な数(構造式(5)又は構造式(6)におけるn)を用いることにより、一般合成高分子物質などを用いる場合に発生し得る多分散性による問題点を著しく改善することができる。

(A’-J) 構造式(5)
(J-A’ 構造式(6)
【0053】
前記構造式(5)において、A’は親水性物質単量体(monomer)、Jはm個の親水性物質単量体間又はm個の親水性物質単量体とオリゴヌクレオチドとを連結するリンカー、mは1~15の整数、nは1~10の整数を意味し、(A’-J)又は(J-A’)で表される繰り返し単位が親水性物質ブロックの基本単位に相当する。
【0054】
前記構造式(5)又は構造式(6)のような親水性物質ブロックを有する場合、本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(7)又は構造式(8)のような構造を有することができる。

(A’-J)-X-R-Y-B 構造式(7)
(J-A’-X-R-Y-B 構造式(8)
【0055】
前記構造式(7)及び構造式(8)において、X、R、Y及びBは構造式(1)における定義と同じであり、A’、J、m及びnは構造式(5)及び構造式(6)における定義と同じである。
【0056】
前記構造式(5)及び構造式(6)において、親水性物質単量体(A’)は、非イオン性親水性高分子の単量体のうち、本発明の目的に適合するものであれば制限なく使用が可能であり、好ましくは、表1に記載の化合物(1)~化合物(3)から選択される単量体、より好ましくは、化合物(1)の単量体を使用することができ、化合物(1)において、Gは、好ましくは、O、S及びNHから選択されることができる。
【0057】
特に、親水性物質単量体のうち、特に、化合物(1)で表される単量体は様々な機能基を導入することができ、生体内の親和性が良く免疫反応を少なく誘導するなど生体適合性(bio-compatibility)に優れるだけでなく、構造式(7)又は構造式(8)による構造体内に含まれる二本鎖オリゴヌクレオチドの生体内の安定性を高め、送達効率を向上させ得るという利点があり、本発明による構造体の製造に非常に適している。
【0058】
<表1>
本発明における親水性物質単量体の構造
【0059】
前記構造式(5)~(8)における親水性物質は、総分子量が1,000~2,000の範囲内であることが特に好ましい。したがって、例えば、構造式(7)及び構造式(8)において、化合物(1)によるヘキサエチレングリコール(Hexaetylene glycol)、すなわち、GがOであり、mが6である物質が使用される場合、ヘキサエチレングリコールスペーサー(spacer)の分子量が344であるため、繰り返し回数(n)は3~5であることが好ましい。特に、本発明は、必要に応じて、前記構造式(5)及び構造式(6)において、(A’-J)又は(J-A’で表される親水性グループの繰り返し単位、すなわち、親水性物質ブロックがnで表される適切な数として使用され得ることを特徴とする。前記各親水性物質ブロック内に含まれる親水性物質単量体AとリンカーJは独立して各親水性物質ブロック間で同じであっても異なっていてもよい。すなわち、三つの親水性物質ブロックが使用される場合(n=3)、第1のブロックには化合物(1)による親水性物質単量体、第2のブロックには化合物(2)による親水性物質単量体、第3のブロックには化合物(3)による親水性物質単量体を使用するなど、全ての親水性物質ブロックごとに異なる親水性物質単量体を使用することができ、全ての親水性物質ブロックに化合物(1)~化合物(3)による親水性物質単量体から選択されたいずれかの親水性物質単量体を同様に使用することができる。同様に、親水性物質単量体の結合を媒介するリンカーも、各親水性物質ブロックごとに同じリンカーを使用することができ、各親水性物質ブロックごとに異なるリンカーを使用することもできる。さらに、親水性物質単量体の数mも、各親水性物質ブロック間で同じであっても異なっていてもよい。すなわち、第1の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が3個連結(m=3)され、第2の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が5個(m=5)、第3の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が4個連結(m=4)されるなど、相異なる数の親水性物質単量体が使用されてもよく、全ての親水性物質ブロックにおいて同じ数の親水性物質単量体が使用されてもよい。
【0060】
さらに、本発明において、前記リンカー(J)は、-PO -、-SO-及び-CO-からなる群から選択されることが好ましいが、これに限定されることではなく、使用される親水性物質の単量体などによって本発明の目的に適合する限り、いずれのリンカーも使用できることは通常の技術者にとっては明らかである。
【0061】
前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)における疎水性物質(B)は、疎水性相互作用を通じて構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体からなるナノ粒子を形成する役割を果たす。前記疎水性物質は分子量が250~1,000であることが好ましく、ステロイド(steroid)誘導体、グリセリド(glyceride)誘導体、グリセロールエーテル(glycerol ether)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、C12~C50の不飽和又は飽和炭化水素(hydrocarbon)、ジアシルホスファチジルコリン(diacyl phosphatidylcholine)、脂肪酸(fatty acid)、リン脂質(phospholipid)、リポポリアミン(lipopolyamine)などが使用され得るが、これらに限定されず、本発明の目的に適合するものなら、いかなる疎水性物質も使用可能であることは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとっては明らかである。
【0062】
前記ステロイド誘導体は、コレステロール、コレスタノール、コール酸、コレステリルホルマート、コレスタニルホルマート及びコレスタニルアミンからなる群から選択されることができ、前記グリセリド誘導体はモノ-、ジ-及びトリ-グリセリドなどから選択され得る。この場合、グリセリドの脂肪酸は、C12~C50の不飽和又は飽和脂肪酸が好ましい。
【0063】
特に、前記疎水性物質のうち、飽和又は不飽和炭化水素やコレステロールが本発明による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の合成段階で容易に結合できる利点を有するという点で好ましく、C24炭化水素、特に、ジスルフィド結合(disulfide bond)を含む形態が最も好ましい。
前記疎水性物質は親水性物質の反対側の末端(distal end)に結合し、siRNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれの位置に結合してもよい。
【0064】
本発明による構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)における親水性物質又は疎水性物質とアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドは、単純共有結合又はリンカー媒介共有結合(X又はY)によって結合される。前記共有結合を媒介するリンカーは、親水性物質又は疎水性物質とアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドの末端で共有結合し、必要に応じて、特定の環境で分解可能な結合を提供する限り、特に限定されない。したがって、前記リンカーは、本発明による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造過程において、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド及び/又は親水性物質(又は疎水性物質)を活性化するために結合するいかなる化合物も使用することができる。前記共有結合は、非分解性結合又は分解性結合のいずれであっても構わない。このとき、非分解性結合としてはアミド結合又はリン酸化結合があり、分解性結合としては二硫化結合、酸分解性結合、エステル結合、無水物結合、生分解性結合又は酵素分解性結合などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
さらに、前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)におけるR(又はS及びAS)で表されるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドは、アンフィレギュリンのmRNAと特異的に結合可能な特性を有する二本鎖オリゴヌクレオチドであれば、いずれも制限なく使用可能である。好ましくは、本発明では、配列番号10、11及び12から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖からなる。
【0066】
本発明は、また、本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体において、前記構造体内の親水性物質のオリゴヌクレオチドと結合した反対側の末端部位にアミン基又はポリヒスチジン(polyhistidine)グループをさらに導入することができる。
【0067】
これは、本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の送達体の細胞内導入とエンドソームの脱出を容易にするためのことであり、既にQuantum dot、Dendrimer、liposomeなどの送達体の細胞内導入とエンドソームの脱出を容易にするためにアミングループの導入とポリヒスチジングループを利用できるという点及びその効果が報告されている。
【0068】
具体的には、伝達体の末端又は外側に修飾された一次アミン基は、生体内pHで陽子化しながら、負電荷を示す遺伝子と静電気的相互作用によって結合体を形成し、細胞内流入後にエンドソームの低いpHで緩衝効果を有する内部3級アミンによりエンドソームの脱出が容易になるにつれて、リソソームの分解から伝達体を保護できることが知られており(高分子ベースのハイブリッド物質を用いた遺伝子送達及び発現抑制、Polymer Sci.Technol., Vol.23,No.3,pp254-259)、非必須アミノ酸の一つであるヒスチジンは、残基(-R)にイミダゾリン(pKa3 6.04)を有するので、エンドソームとリソソームで緩衝能力(buffering capacity)を増加させる効果があり、リポソームをはじめとする非ウイルス性遺伝子伝達体からのエンドソームの脱出効率を高めるためにヒスチジン修飾を利用できることが知られている(Novel histidine-conjugated galactosylated cationic liposomes for efficient hepatocyte selective gene transfer in human hepatoma HepG2 cells.J.Controlled Release 118,pp262-270)。
【0069】
前記アミン基又はポリヒスチジングループは、1つ以上のリンカーを通じて親水性物質又は親水性物質ブロックと連結することができる。
本発明の構造式(1)による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質にアミン基又はポリヒスチジングループが導入される場合には、構造式(9)のような構造を有することができる。

P-J-J-A-X-R-Y-B 構造式(9)
【0070】
前記構造式(9)において、A、B、R、X及びYは、構造式(1)における定義と同じであり、Pはアミン基又はポリヒスチジングループを意味し、J及びJはリンカーであり、J及びJは独立して単純共有結合、PO 、SO、CO、C2-12アルキル、アルケニル、アルキニルから選択されることができるが、これらに限定されず、使用される親水性物質に応じて、本発明の目的に適合するJ及びJはいかなるリンカーでも使用できることは、通常の当業者にとっては明らかである。
【0071】
好ましくは、アミン基が導入された場合、Jは単純共有結合又はPO 、JはCアルキルであることが好ましいが、これらに限定されない。
さらに、ポリヒスチジングループが導入された場合には、構造式(9)において、Jは単純共有結合又はPO 、Jは化合物(4)が好ましいが、これに限定されない。
化合物(4)
【0072】
また、構造式(9)による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質が構造式(5)又は構造式(6)による親水性物質ブロックであり、これにアミン基又はポリヒスチジングループが導入される場合には、構造式(10)又は構造式(11)のような構造を有することができる。

P-J-J-(A’-J)-X-R-Y-B 構造式(10)
P-J-J-(J-A’-X-R-Y-B 構造式(11)
【0073】
前記構造式(10)及び構造式(11)において、X、R、Y、B、A’、J、m及びnは構造式(5)又は構造式(6)における定義と同じであり、P、J及びJは構造式(9)における定義と同じである。
【0074】
特に、前記構造式(10)及び構造式(11)において、親水性物質は、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の3’末端に結合した形態であることが好ましく、この場合、前記構造式(9)~構造式(11)は、次の構造式(12)~構造式(14)の形態を有することができる。
【0075】
前記構造式(12)~構造式(14)において、X、R、Y、B、A、A’、J、m、n、P、J及びJは前記構造式(9)~構造式(11)における定義と同じであり、5’及び3’はアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’末端及び3’末端を意味する。
【0076】
本発明で導入することができるアミン基としては、 第1級~第3級のアミン基を用いることができ、第1級のアミン基を用いることが特に好ましい。前記導入されたアミン基はアミン塩として存在することもできる。例えば、第1級のアミン基の塩はNH の形態として存在することができる。
【0077】
また、本発明で導入することができるポリヒスチジングループは、3~10個のヒスチジンを含むことが好ましく、特に好ましくは、5~8個、最も好ましくは、6個のヒスチジンを含むことができる。さらに、ヒスチジンに加えて、1つ以上のシステインを含めることができる。
【0078】
一方、本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びこれから形成されたナノ粒子にターゲティング部分が設けられると、効率的に標的細胞への伝達を促進して、比較的低い濃度の投与量でも標的細胞に送達されて、高い標的遺伝子発現調節機能を示すことができ、他臓器及び細胞への非特異的なアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドの送達を防止することができる。
【0079】
これにより、本発明は、前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)による構造体にリガンド(L)、特に、受容体媒介内包作用(RME:receptor-mideated endocytosis)を通じて標的細胞内在化(internalization)を増強する受容体と特異的に結合する特性を有するリガンド(ligand)が付加的に結合された二本鎖オリゴRNA構造体を提供し、例えば、構造式(1)による二本鎖オリゴRNA構造体にリガンドが結合した形態は、次の構造式(15)のような構造を有する。

(L-Z)-A-X-R-Y-B 構造式(15)
【0080】
前記構造式(15)において、A、B、X及びYは前記構造式(1)における定義と同じであり、Lは受容体媒介内包作用(REM)を通じて標的細胞内在化を増強する受容体に特異的に結合する特性を有するリガンドを意味し、iは1~5の整数、好ましくは、1~3の整数である。
【0081】
前記構造式(15)におけるリガンドは、好ましくは、標的細胞特異的に細胞内在化を増強するRME特性を有する標的受容体特異的抗体、アプタマー、ペプチド;又は葉酸(Folate、一般にfolateとfolic acidは交互に使用されており、本発明における葉酸は自然状態又は人体で活性化状態であるfolateを意味する)、N-アセチルガラクトサミン(NAG:N-acetyl Galactosamine)などのヘキソアミン(hexoamine)、グルコース(glucose)、マンノース(mannose)のような糖や炭水化物(carbohydrate)などの化学物質などから選択することができるが、これに限定されない。
【0082】
さらに、前記構造式(15)における親水性物質Aは、構造式(5)及び構造式(6)による親水性物質ブロックの形態として用いることができる。
本発明の他の態様として、本発明は、アンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する方法を提供する。
【0083】
本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造方法は、例えば、
(1)固形支持体(solid support)を基にして親水性物質を結合する段階;
(2)前記親水性物質が結合した固形支持体を基にしてオリゴヌクレオチド一本鎖を合成する段階;
(3)前記オリゴヌクレオチド一本鎖5’末端に疎水性物質を共有結合させる段階;
(4)前記オリゴヌクレオチド一本鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖を合成する段階;
(5)合成が完了したら、固形支持体からオリゴヌクレオチド-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド一本鎖を分離精製する段階;及び
(6)製造されたオリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖のアニーリングを通じて二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する段階;を含んでなることができる。
【0084】
本発明における固形支持体は、CPG(Controlled Pore Glass)が好ましいが、これに限定されるものではなく、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)シリカゲル、セルロースペーパーなどを用いることができる。CPGの場合、直径は40~180μmであることが好ましく、500~3000Aの空隙のサイズを有することが好ましい。前記段階(5)以降、製造が完了すると、精製されたRNA-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド一本鎖は、MALDI-TOF質量分析機で分子量を測定して、所望のオリゴヌクレオチド-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド一本鎖が製造されたかを確認することができる。前記製造方法において、(2)段階で合成されたオリゴヌクレオチド一本鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖を合成する段階(4)は、(1)段階前又は(1)段階~(5)段階のうちいずれの過程で行われても構わない。
【0085】
さらに、(2)段階で合成されたオリゴヌクレオチド一本鎖と相補的配列を含むオリゴヌクレオチド一本鎖は、5’末端にリン酸基が結合した形態として用いられたことを特徴とする製造方法も可能である。
【0086】
一方、本発明のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体にさらにリガンドが結合した二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造方法を提供する。
【0087】
リガンドが結合したアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する方法は、例えば、
(1)官能基が結合している固形支持体に親水性物質を結合させる段階;
(2)官能基-親水性物質が結合している固形支持体に基づいてオリゴヌクレオチド一本鎖を合成する段階;
(3)前記オリゴヌクレオチド一本鎖の5’末端に疎水性物質を共有結合させる過程により合成する段階;
(4)前記オリゴヌクレオチド一本鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖を合成する段階;
(5)合成が完了したら、固形支持体から官能基-オリゴヌクレオチド-高分子構造及び相補的配列のオリゴヌクレオチド一本鎖を分離する段階;
(6)前記官能基を用いて親水性物質末端にリガンドを結合して、リガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体一本鎖を製造する段階;及び
(7)製造されたリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖のアニーリングにより、リガンド-二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する段階;を含んでなることができる。
【0088】
前記(6)段階以後、製造が完了したら、リガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖を分離精製した後、MALDI-TOF質量分析機で分子量を測定して所望のリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的なオリゴヌクレオチドが製造されたかを確認することができる。製造されたリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖のアニーリングにより、リガンド-二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造することができる。前記製造方法において、(3)段階で合成されたオリゴヌクレオチド一本鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド一本鎖を合成する段階(4)は独立した合成過程であって、(1)段階前又は(1)段階~(6)段階のうちいずれの過程で行われても構わない。
【0089】
本発明は、さらに他の観点から、本発明による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子に関する。本発明による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の場合、疎水性物質の疎水性相互作用により自己組織化ナノ粒子を形成するが(韓国登録特許公報第1224828号)、このようなナノ粒子は体内への伝達効率及び体内における安定性が極めて優れるだけでなく、粒径の均一性に優れてQC(Quality Control)が容易なので、薬物としての製造工程が簡単である。
【0090】
本発明において、前記ナノ粒子は、異なる配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の混合物で構成されることを特徴とすることができる。例えば、前記ナノ粒子は配列番号10~12から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む一種のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを含むことができるが、さらに他の態様として、配列番号10~12から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む異なる種類のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを一緒に含み得、本発明に開示されていないアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドも一緒に含むことができる。
【0091】
本発明の組成物は、投与のために前記記載の有効成分に加えてさらに薬学的に許容可能な担体を一種以上含むことによって製造されることができる。薬学的に許容可能な担体は、本発明の有効成分と適合性がなければならず、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1つ又は2つ以上の成分を混合して使用することができ、必要に応じて、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。さらに、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を追加的に添加して、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形に製剤化することができる。特に、凍結乾燥された形態の剤形に製剤化して提供することが好ましい。凍結乾燥剤形の製造のために、本発明が属する技術分野で通常知られている方法を使用することができ、凍結乾燥のための安定化剤を添加することができる。また、当技術分野の適当な方法で又はレミントン薬科学(Remington’s pharmaceutical Science,Mack Publishing company, Easton PA)に開示されている方法を使用して、各疾患又は成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0092】
本発明の組成物は、通常の患者の症状及び疾患の重症度に基づいて、当技術分野の通常の専門家によって決定され得る。さらに、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、軟膏剤、シロップ剤などの様々な形態として製剤化することができ、単位投与量又は多投与量容器、例えば、密封アンプル及びボトルなどとして提供することができる。
【0093】
本発明の組成物は、経口又は非経口投与が可能である。本発明による組成物の投与経路はこれらに限定されないが、例えば、口腔、吸入用、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、腸管、舌下又は局所投与が可能である。本発明による組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、方法、排泄率又は疾患の重症度等に応じてその範囲が多様であり、本技術分野の通常の専門家が容易に決めることができる。さらに、臨床投与のために公知の技術を用いて、本発明の組成物を適切な剤形に製剤化することができる。
【0094】
本発明は、他の観点から、本発明による医薬組成物を含む凍結乾燥形態の剤形に関する。
本発明は、さらに他の観点から、肥満の予防又は治療を必要とする対象に
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかを投与する段階を含む肥満の予防又は治療方法に関する。
【0095】
本発明は、さらに他の観点から、肥満の予防又は治療方法に使用するために
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的二重鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする医薬組成物に関する。
【0096】
本発明は、さらに他の観点から、
(i)配列番号10、11及び12からなる群から選択されるいずれかの配列を含むセンス鎖(sense strand)とそれに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド;
(ii)下記の構造式1の構造を含むアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
[構造式(1)]
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYはそれぞれ独立して単純共有結合又はリンカー媒介共有結合を意味し、Rは前記(i)のアンフィレギュリン特異的な二重鎖オリゴヌクレオチドを意味;及び
(iii)前記(ii)のアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子;からなる群から選択されるいずれかの肥満の予防又は治療のための薬物の製造のための用途に関する。
【0097】
本発明において、前記肥満は糖尿病による内臓脂肪型肥満であることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0098】
本発明において、本発明によるアンフィレギュリン特異的な二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、次のいずれか1つ以上の効果を発揮することを特徴とすることができるが、これらに限定されない:
(i)体重の減少;
(ii)食餌効率の低下;
(iii)皮下脂肪の減少;
(iv)内臓脂肪の減少;
(v)脂肪細胞面積の減少;及び
(vi)肝脂肪生成の抑制。
【0099】
本発明において、前記効果は脂肪組織内のアンフィレギュリン発現を抑制して発揮されることを特徴とすることができるが、前記効果が発揮されるメカニズムはこれに限定されない。
【0100】
以下、実施例により本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されると解釈されないことは当技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0101】
本発明においては、アンフィレギュリンの発現を阻害し得る3つの特異的な配列を同定し、これらがアンフィレギュリンを暗号化するmRNAと相補的に結合してアンフィレギュリンの発現を効果的に抑制することにより、肥満関連疾患を効果的に治療できることを確認した。
【実施例
【0102】
実施例1.アンフィレギュリンを標的とするSAMiRNAスクリーニングのためのアルゴリズムと候補配列の選定
SAMiRNAベースの治療剤の高速大量処理スリーニング(SAMiRNA based drug high-throughput screening)は、mRNA全体に対して1-塩基(1-base)又は2-塩基(2-base)スライディングウィンドウアルゴリズムを適用して可能な全ての候補配列を生成し、相同性フィルタリング(homology filtering)を進行して不要な候補配列を除去し、最終的に選別された全てのSAMiRNAについて該当遺伝子発現阻害程度を確認する方法である。
【0103】
まず、アンフィレギュリンに対するSAMiRNA候補配列の設計過程は、ヒトアンフィレギュリンmRNAであるNM_001657.3(1290bp)に対して1-塩基スライディングウィンドウアルゴリズム(2-base sliding window algorithm)を適用して19個の塩基からなる1,257個のSAMiRNA候補配列を最終選別してアンフィレギュリン阻害程度の実験を行った。
【0104】
実施例2.二本鎖オリゴRNA構造体の合成
本発明で製造された二本鎖オリゴRNA構造体(SAMiRNA)は、下記の構造式のような構造を有する。

24-5’S 3’-(ヘキサエチレングリコール-PO -ヘキサエチレングリコール
AS 5’-PO4
【0105】
monoSAMiRNA(n=4)二本鎖オリゴ構造体のセンス鎖は、3,4,6-トリアセチル-1-ヘキサ(エチレングリコール)-N-アセチルガラクトサミン-シフィジ(3,4,6-triacetyl-1-Hexa(Ethylene Glycol)-N-Acetyl Galactosamine-CPG)を支持体として、親水性物質単量体であるDMTヘキサエチレングリコールホスホアミダイト(Demethoxytrityl hexaethylene glycol phosphoramidate)3つを前記反応を通じて連続的に結合した後、RNA又はDNA合成を進行させた後、さらに5’末端部位に疎水性物質である二硫化結合を含むC24(C-S-S-C18)を結合させて、3’末端にNAG-ヘキサエチレングリコール-(-PO-ヘキサエチレングリコール)が結合しており、5’末端にC24(C-S-S-C18)が結合しているmonoSAMiRNA(n=4)のセンス鎖を作成した。
【0106】
合成が完了したら、60℃の温湯器(water bath)で28%(v/v)アンモニアを処理して合成されたRNA一本鎖及びオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体をCPGから取り出した後、脱保護(deprotection)反応によって保護残基を除去した。保護残基が除去されたRNA一本鎖及びオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体は、70℃のオーブンでN-メチルピロリドン(N-methylpyrolidon)、トリエチルアミン(triethylamine)及びトリエチルアミントリヒドロフルオリド(triethylamine trihydrofluoride)を体積比10:3:4の割合で処理して、2’TBDMS(tert-butyldimethylsilyl)を除去した。前記反応物から高速液体クロマトグラフィー(HPLC:High Performance Liquid Chromatography)でRNA一本鎖、オリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体及びリガンドが結合したオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体を分離し、これをMALDI-TOF質量分析器(MALDI TOF-MS、SHIMADZU、日本)で分子量を測定して、合成しようとする塩基配列及びオリゴ-高分子構造体と適合するかを確認した。その後、各々の二本鎖オリゴ構造体を製造するためにセンス鎖とアンチセンス鎖を同量混合して1X アニーリングバッファー(30mM HEPES、100mM カリウムアセテート(Potassium acetate)、2mM マグネシウムアセテート(pH7.0~7.5)に入れ、90℃の恒温水槽で3分間反応させた後、再び37℃で反応させて、所望のSAMiRNAを製造した。製造された二本鎖オリゴRNA構造体は電気泳動によってアニーリングを確認した。
【0107】
実施例3.ヒト(Human)アンフィレギュリンを標的としてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子の高速大量スクリーニング(HTS)
【0108】
3.1 SAMiRNAナノ粒子の製造
実施例2で合成したアンフィレギュリン配列を標的とする1,257種のSAMiRNAを1XDulbecco’s Phosphate Buffered Saline(DPBS)(WELGENE、韓国)に溶かして、凍結乾燥機(LGJ-100F、CN)で5日間凍結乾燥した。凍結乾燥されたナノ粒子粉末を脱塩蒸留水(Bioneer、韓国)1.429mlに溶かして均質化して本発明のための実験に使用した。
【0109】
3.2 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
アンフィレギュリンの発現を抑制するSAMiRNAの発掘のために、ヒト由来肺癌細胞株であるA549(ATCC(R) CCL-185TM、Manassas、VA、USA)を用い、A549細胞株は10% Fetal Bovine Serum(Hyclone、US)及び1% Penicillin-Streptomycin(Hyclone、US)を含むGibcoTM Ham’s F-12K(Kaighn’s)培地(Thermo、US)を用いて37℃、5%のCO条件で培養した。前記と同じ培地を用いてA549細胞株を96-ウェルプレート(Costar、US)に2X10cells/wellの条件で分株し、翌日前記実施例3.1で脱塩蒸留水で均質化したSAMiRNAを1X DPBSで希釈して細胞に対して500nM又は1000nMとなるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間毎に1回ずつ処理する条件で合計4回処理し、37℃、5%のCO条件で培養した。
【0110】
3.3 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNA発現抑制効能分析によるSAMiRNAスクリーニング
実施例3-2でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出してcDNAを製造した後、リアルタイムPCRを用いてアンフィレギュリン遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0111】
アンフィレギュリン遺伝子のmRNA発現量分析のために、AccuPower (登録商標)Dual-HotStart RT-qPCRキット(Bioneer、韓国)の各ウェルにAREG forward primer 300nM、AREG reverse primer 300nM、AREG probe 300nM、RPL13A forward primer 300nM、RPL13A reverse primer 300nM、RPL13A probe 300nM、TBP forward primer 400nM、TBP reverse primer 400nM、TBP probe 300nMが添加されて乾燥製造された(表2、高速大量スクリーニング(HTS:High-throughput screening)実験に使用されたprimer及びhydrolysis probe配列)。製造されたキットの性能は、A549 cell total RNAを用いて検量曲線を作成して、PCR増幅効率(表3)で判定した。RT-qPCRは、95℃、5min(95℃、5sec、58℃、15sec)×45サイクルで反応を行い、各サイクルごとに蛍光値が検出されるプロトコルを用いた。
【0112】
SAMiRNA処理された96-ウェルプレート(Costar、US)に対して、全RNA抽出からRT-qPCRまで、自動化装置であるExiStationTM HT KoreaにHT DNA/RNA抽出キット(Bioneer、韓国)とアンフィレギュリン分析のためのprimer及びprobeを含んで別々に製造されたAccuPower(登録商標)Dual-HotStart RT-qPCRキット(Bioneer、韓国)を用いて自動化プログラムに従って全RNA抽出及びone-step RT-qPCRが行われた。
【0113】
qPCRアレイ(array)後に導出される2つの遺伝子のCt値を2(-Delta Delta C(T)) Method[Livak KJ,Schmittgen TD.2001.Analysis of relative gene expression data using real-time quantitative PCR and the 2(-Delta Delta C(T))Method.Methods.Dec;25(4):4 02-8]を用いて相対定量分析により、対照群対比実験群であるアンフィレギュリンmRNAの相対量(%)を計算した。
【0114】
<表2>
高速大量スクリーニング(HTS)実験に使用したprimer及びhydrolysis probe配列
【0115】
<表3>
3-plex RT-qPCR増幅効率
【0116】
高効率のSAMiRNAを選別するために、最終濃度500nM又は1000nMの濃度でのアンフィレギュリンmRNAの発現量が対照群と比較して発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、配列番号1~14の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNA 14種を選別した。
【0117】
図1に示したように、アンフィレギュリンを標的とする1,257種のSAMiRNAから、アンフィレギュリン遺伝子発現を最も効果的に抑制するSAMiRNA 14種を最終選別した。当該SAMiRNAの配列情報は下記の表4の通りである。
【0118】
<表4>
1-塩基スライディングウインドウスクリーニング(1 base sliding window screening)及び高速大量スクリーニング(HTS)により選別されたアンフィレギュリン特異的なSAMiRNA候補配列
【0119】
実施例4.ヒト(Human)アンフィレギュリンを標的としてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子スクリーニング
実施例3で選別された配列番号1~14の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを用いて肺癌細胞株であるA549に処理し、前記細胞株におけるアンフィレギュリンmRNAの発現様相を分析した。
【0120】
4.1 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
アンフィレギュリンの発現を抑制するSAMiRNAの発掘のためにヒト由来肺癌細胞株であるA549を用い、A549細胞株は10% Fetal Bovine Serum(Hyclone、US)及び1% Penicillin-Streptomycin(Hyclone、US)を含むGibcoTM Ham’s F-12K(Kaighn’s)培地(Thermo、US)を用いて37℃、5%のCO条件で培養した。前記と同じ培地を用いてA549細胞株を12-ウェルプレート(Costar、US)に8X10cells/wellの条件で分株し、翌日前記実施例3.1で脱塩蒸留水で均質化したSAMiRNAを1X DPBSで希釈して細胞に対して200nM又は600nMとなるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間毎に1回ずつ処理する条件で合計4回処理し、37℃、5%のCO条件で培養した。
【0121】
4.2 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNA発現阻害効能分析によるSAMiRNAスクリーニング
実施例4-1でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出してcDNAを製造した後、リアルタイムPCRを用いてアンフィレギュリン遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0122】
4-2-1 SAMiRNA処理細胞からのRNA分離及びcDNAの製造
RNA抽出キット(AccuPrep Cell total RNA extraction kit、Bioneer、韓国)を用いて、前記実施例4-1でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出し、抽出されたRNAはRNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標)RocketScriptTM Cycle RT Premix with oligo(dT)20、Bioneer、韓国)を用いて、以下の方法でcDNAを製造した。具体的には、0.25mlのエッペンドルフチューブに収められたAccuPower(登録商標)RocketScriptTMCycle RT Premix with oligo(dT)20(Bioneer、韓国)に1チューブあたり抽出された1μgずつのRNAを入れ、総体積が20μlになるようにDEPC(diethyl pyrocarbonate)処理された蒸留水を加えた。これを遺伝子増幅器(MyGenieTM96 Gradient Thermal Block、Bioneer、韓国)で37℃で30秒間RNAとプライマーをハイブリダイズさせ、48℃で4分間cDNAを製造する2つの過程を12回繰り返した後、95℃で5分間酵素を不活性化させて増幅反応を終了した。
【0123】
4-2-2 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNAの相対定量分析
実施例4-2-1で製造されたcDNAを鋳型として、SYBRグリーン方式のリアルタイムqPCRを通じてSAMiRNA制御サンプル対比アンフィレギュリンmRNAの相対的発現率を以下の方法で分析した。96-ウェルプレートの各ウェルに前記実施例4-2-1で製造したcDNAを蒸留水で5倍希釈し、アンフィレギュリンmRNA発現量分析のために希釈したcDNA 3μlとAccuPower(登録商標)2X GreenStarTM qPCR MasterMix(Bioneer、韓国)を25μl、蒸留水19μl、アンフィレギュリンqPCRプライマー(配列番号17及び18(表5);10 pmole/μl、それぞれ、Bioneer、韓国)を3μl入れて混合液を作製した。一方、アンフィレギュリンmRNAの発現量を正規化するためにハウスキーピング遺伝子(housekeeping gene、以下、HK遺伝子という)であるGAPDH(Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase)を標準遺伝子とした。前記混合液を含む96-ウェルプレートを、ExicyclerTM Real-Time Quantitative Thermal Block(Bioneer、韓国)を用いて以下の反応を行った:95℃で15分間反応して酵素の活性化及びcDNAの二次構造をなくした後、94℃で30秒間変性(denaturing)、58℃で30秒間アニーリング(annealing)、72℃で30秒間延長(extension)、SYBRグリーンスキャン(SYBR green scan)の4つの過程を42回繰り返し行い、72℃で3分間最終延長を行った後、55℃で1分間温度を維持し、55℃から95℃までのメルティングカーブ(melting curve)を分析した。
【0124】
PCRが終了した後、それぞれ得られた標的遺伝子のCt(threshold cycle)値はGAPDH遺伝子を通じて補正された標的遺伝子のCt値を求めた後、遺伝子発現阻害を起こさないコントロール配列であるSAMiRNA(SAMiCONT)が処理された実験群を対照群としてΔCt値の差を求めた。前記ΔCt値と計算式2(-ΔCt)×100を用いて、アンフィレギュリン特異的なSAMiRNAが処理された細胞の標的遺伝子の発現量を相対定量した。
【0125】
高効率のSAMiRNAを選別するために、最終濃度200nM又は600nMの濃度でアンフィレギュリンmRNA発現量が対照群対比発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、配列番号10、11及び12の配列をそれぞれセンス鎖として有する3種のSAMiRNAを選別した。
【0126】
図3に示したように、アンフィレギュリンを標的とする14種のSAMiRNAから、アンフィレギュリン遺伝子発現を最も効果的に抑制する3種のSAMiRNAを最終選別した。当該SAMiRNAの配列情報を次の表6に示す。
【0127】
<表5>
qPCR用のプライマー配列情報
(Fは正方向(forward)プライマー、Rは逆方向(reverse)プライマーをそれぞれ意味する)
【0128】
<表6>
アンフィレギュリン発現を効果的に抑制するSAMiRNA配列
【0129】
実施例5.肺癌細胞株(A549)から選別されたSAMiRNAを用いたヒト(Human)アンフィレギュリンの発現抑制
実施例4で選別された配列番号10、11及び12の配列をそれぞれセンス鎖として有するSAMiRNAを用いて肺癌細胞株であるA549に処理し、前記細胞株におけるアンフィレギュリンmRNAの発現態様を分析してSAMiRNAのIC50値を確認した。
【0130】
5.1 SAMiRNAナノ粒子の製造及び粒度分析
実施例2で合成したアンフィレギュリン配列を標的とする3種のSAMiRNAを1×Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline(DPBS)(WELGENE、韓国)に溶かして、凍結乾燥機(LGJ-100F、CN)で5日間凍結乾燥した。凍結乾燥されたナノ粒子粉末を脱塩蒸留水(Bioneer、韓国)2mlに溶かして均質化して、本発明の実験に使用した。製造されたSAMiRNAナノ粒子の粒度分析のために、Zetasizer Nano ZS(Malvern、UK)を用いてSAMiRNAのサイズ及び多分散指数を測定した結果、選別されたSAMiRNAに対するナノ粒子のサイズ及び多分散指数は次の表7の通りであり、グラフは図2のように測定された。
【0131】
<表7>
アンフィレギュリン特異的なSAMiRNAのナノ粒子のサイズ及び多分散指数
【0132】
5.2 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
アンフィレギュリンの発現を抑制する選別されたSAMiRNA効果を確認するために、ヒト由来肺癌細胞株A549を使用し、A549細胞株は、10% Fetal Bovine Serum(Hyclone、US)及び1% Penicillin-Streptomycin(Hyclone、US)を含むGibcoTM Ham’s F-12K(Kaighn’s)培地(Thermo、US)を用いて37℃、5%のCO条件で培養した。前記と同じ培地を用いてA549細胞株を12-ウェルプレート(Costar、US)に8X10cells/wellの条件で分株し、翌日前記実施例5.1で脱塩蒸留水で均質化したSAMiRNAを1X DPBSで希釈して細胞に対して12.5nM、25nM、50nM、100nM、200nM、600nM、又は1200nMとなるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間毎に1回ずつ処理する条件で合計4回処理し、37℃、5%のCO条件で培養した。
【0133】
5.3 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNA発現抑制効能分析によるSAMiRNA IC50の確認
実施例5-2でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出してcDNAを製造した後、リアルタイムPCRを用いてアンフィレギュリン遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0134】
5-3-1 SAMiRNA処理細胞からのRNA分離及びcDNAの製造
RNA抽出キット(AccuPrep Cell total RNA extraction kit、Bioneer、韓国)を用いて、前記実施例5-2でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出し、抽出されたRNAはRNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標)RocketScriptTM Cycle RT Premix with oligo(dT)20、Bioneer、韓国)を用いて、次のような方法でcDNAを製造した。具体的には、0.25ml エッペンドルフチューブに含まれるAccuPower(登録商標)RocketScriptTM Cycle RT Premix with oligo(dT)20(Bioneer、韓国)に1チューブあたり抽出された1μgずつのRNAを入れ、総体積が20μlになるようにDEPC(diethyl pyrocarbonate)処理した蒸留水を加えた。これを遺伝子増幅器(MyGenieTM96 Gradient Thermal Block、Bioneer、韓国)で37℃で30秒間RNAとプライマーをハイブリダイズさせ、48℃で4分間cDNAを製造する2つの過程を12回繰り返した後、95℃で5分間酵素を不活性化させて増幅反応を終了した。
【0135】
5-3-2 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNAの相対定量分析
実施例5-3-1で製造したcDNAを鋳型として、SYBRグリーン方式のリアルタイムqPCRを通じてSAMiRNA制御サンプル対比アンフィレギュリンmRNAの相対的発現率を次の方法で分析した。96-ウェルプレートの各ウェルに前記実施例5-3-1で製造したcDNAを蒸留水で5倍希釈し、アンフィレギュリンmRNA発現量の分析のために希釈されたcDNA 3μlとAccuPower(登録商標)2X GreenStarTM qPCR MasterMix(Bioneer、韓国)を25μl、蒸留水19μl、アンフィレギュリンqPCRプライマー(配列番号17及び18(表5);10 pmole/μl、それぞれ、Bioneer、韓国)を3μl入れて混合液を作製した。一方、アンフィレギュリンmRNAの発現量を正規化するためにハウスキーピング遺伝子(HK遺伝子)であるGAPDH(Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase)を標準遺伝子とした。前記混合液を含む96-ウェルプレートを、ExicyclerTM Real-Time Quantitative Thermal Block(Bioneer、韓国)を用いて以下のような反応を行った:95℃で15分間反応して酵素の活性化及びcDNAの二次構造をなくした後、94℃で30秒間変性、58℃で30秒間アニーリング、72℃で30秒間延長、SYBRグリーンスキャンの4つの過程を42回繰り返し行い、72℃で3分間最終延長を行った後、55℃で1分間温度を維持し、55℃から95℃までのメルティングカーブを分析した。
【0136】
PCRが終了した後、それぞれ得られた標的遺伝子のCt(threshold cycle)値はGAPDH遺伝子を通じて補正された標的遺伝子のCt値を求めた後、遺伝子発現阻害を起こさないコントロール配列であるSAMiRNA(SAMiCONT)が処理された実験群を対照群としてΔCt値の差を求めた。前記ΔCt値と計算式2(-ΔCt)×100を用いて、アンフィレギュリン特異的なSAMiRNAが処理された細胞の標的遺伝子の発現量を相対定量した。
【0137】
その結果、配列番号10、11及び12の配列をそれぞれセンス鎖として有するアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAは、いずれも100nMの低濃度でも50%以上のアンフィレギュリンmRNA発現量の減少を示し、非常に高効率でアンフィレギュリンの発現を阻害する効果を示すことを確認した。各々のIC50は、配列番号10の配列をセンス鎖として有するアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAの場合、図4に示したように、28.75nM、配列番号11の配列をセンス鎖として有するアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAの場合。図5に示したように、26.04nM、配列番号12の配列をセンス鎖として有するアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAの場合、図6に示したように、12.07nMと確認した。特に、配列番号12の配列をセンス鎖として有するアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAの場合、図6に示したように、25nMの低濃度でも50%以上のアンフィレギュリンmRNA発現量の減少を示して、選別された3種の配列のうち最も効果的にアンフィレギュリン遺伝子の発現を阻害する効果を示すことを確認した。
【0138】
実施例6.ヒト末梢血液単核細胞(PBMC:peripheral blood mononuclear cell)を用いたin vitro細胞毒性評価
SAMi-hAREGによる内在免疫関連サイトカインのmRNA増加量を確認するために10% FBS(fetal bivine serum;HycloneTM)を含むRPMI1640(HycloneTM)培地にePBMC(登録商標)Cryopreserved Human PBMC(ヒト末梢血液単核細胞、Cellular Technology Limited、USA)を12-ウェルプレート(Costar(登録商標)USA)に1ウェルあたり5×10セルになるように分株した。細胞を安定化させるために37℃、5%のCO培養器に1時間培養した後、分株したPBMCにSAMi-CON(DNA/RNA)、SAMi-hAREG#10(DNA/RNA)、SAMi-hAREG#11(DNA/RNA)、SAMi-hAREG#12(DNA/RNA)、SAMi-CON(RNA/RNA)、SAMi-hAREG#10(RNA/RNA)、SAMi-hAREG#11(RNA/RNA)、SAMi-hAREG#12(RNA/RNA)を2.5μMとなるようにそれぞれ処理して、6時間37℃、5%のCO培養器に培養した。陽性対照群として、20μg/mlのConcanavalin A(Sigma Aldrich、USA)を使用した。
【0139】
次いで、全ての細胞を回収して、RNA抽出キット(RNeasy Mini Kit、Qiagen、Germany)とRNase-Free DNase Set(Qiagen、Germany)で製造社提供プロトコルに従って全RNAを抽出した。
【0140】
抽出されたRNA 200ngとDeionized sterile DW(Bioneer、韓国)、そしてRNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標)RocketScriptTM Cycle RT Premix with oligo(dT)20、Bioneer、韓国)を混合して、これを遺伝子増幅器(MyGenieTM96 Gradient Thermal Block、Bioneer、韓国)を用いて(37℃ 30sec、48℃ 4min、55℃ 30sec)×12サイクル、95℃ 5minのような条件で反応して、合計20μlのcDNAを合成した。
【0141】
合成されたcDNAを、RPL13A、I L1B、IL6、IFNG、TNF、IL12B遺伝子に対するqPCRプライマーと混合した後、ExicyclerTM96 Real-Time Quantitative Thermal Block(Bioneer、韓国)を用いて95℃ 5min,(95℃ 5sec、58℃ 15sec)×45サイクルの条件で増幅した。
【0142】
qPCRアレイ後に導出される2つの遺伝子のCt値を2(-Delta Delta C(T)) Method[Livak KJ,Schmittgen TD.2001.Analysis of relative gene expression data using real-time quantitative PCR and the 2(-Delta Delta C(T)) Method.Methods.Dec;25(4):402-8]を介して相対定量分析により、対照群と比較して実験群のmRNAの相対量(%)を計算した。
【0143】
その結果、図7に示したように、ヒト末梢血単核細胞(human PBMC:human peripheral blood mononuclear cell)におけるアンフィレギュリン特異的なSAMiRNA#10、SAMiRNA#11及びSAMiRNA#12による内在免疫関連サイトカインが発現されないことが確認された。
【0144】
実施例7.選別された配列番号10、11及び12の配列をセンス鎖として含むDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドSAMiRNAによるヒト(Human)アンフィレギュリンの発現抑制比較分析
実施例4で選別された配列番号10、11及び12の配列をそれぞれセンス鎖として有するアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAを含む二本鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドを用いて肺癌細胞株であるA549に対して処理し、前記細胞株におけるアンフィレギュリンmRNAの相対発現量(%)を比較分析した。
【0145】
7.1 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
アンフィレギュリンの発現を抑制するSAMiRNAの発掘のためにヒト由来肺癌細胞株であるA549を用い、A549細胞株は10% Fetal Bovine Serum(Hyclone、US)及び1% Penicillin-Streptomycin(Hyclone、US)を含むGibcoTM Ham’s F-12K(Kaighn’s)培地(Thermo、US)を用いて37℃、5%のCO条件で培養した。前記と同じ培地を用いてA549細胞株を12-ウェルプレート(Costar、US)に8X10cells/wellの条件で分株し、翌日前記実施例3.1で脱塩蒸留水で均質化したSAMiRNAを1X DPBSで希釈して細胞に対して200nM、600nM、又は1200nMとなるように処理した。SAMiRNAの処理は、12時間毎に1回ずつ処理する条件で合計4回処理し、37℃、5%のCO条件で培養した。
【0146】
7.2 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNAの発現抑制効能分析によるSAMiRNAスクリーニング
実施例7-1でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出してcDNAを製造した後、リアルタイムPCRを用いてアンフィレギュリン遺伝子のmRNA発現量を相対定量した。
【0147】
7-2-1 SAMiRNA処理細胞からのRNA分離及びcDNAの製造
RNA抽出キット(AccuPrep Cell total RNA extraction kit、Bioneer、韓国)を用いて、前記実施例7-1でSAMiRNA処理された細胞株から全RNAを抽出し、抽出されたRNAはRNA逆転写酵素(AccuPower(登録商標)RocketScriptTM Cycle RT Premix with oligo(dT)20、Bioneer、韓国)を用いて、以下の方法でcDNAを製造した。具体的には、0.25ml エッペンドルフチューブに含まれるAccuPower(登録商標)RocketScriptTM Cycle RT Premix with oligo(dT)20(Bioneer、韓国)に1チューブあたり抽出した1μgずつのRNAを入れ、総体積が20μlになるようにDEPC(diethyl pyrocarbonate)処理された蒸留水を加えた。これを遺伝子増幅器(MyGenieTM96 Gradient Thermal Block、Bioneer、韓国)で37℃で30秒間RNAとプライマーをハイブリダイズし、48℃で4分間cDNAを製造する2つの過程を12回繰り返した後、95℃で5分間酵素を不活性化して増幅反応を終了した。
【0148】
7-2-2 ヒト(Human)アンフィレギュリンmRNAの相対定量分析
実施例7-2-1で製造したcDNAを鋳型として、SYBRグリーン方式のリアルタイムqPCRを通じてSAMiRNA制御サンプル対比アンフィレギュリンmRNAの相対的発現率を以下の方法で分析した。96-ウェルプレートの各ウェルに前記実施例7-2-1で製造したcDNAを蒸留水で5倍希釈し、アンフィレギュリンmRNA発現量の分析のために希釈したcDNA 3μlとAccuPower(登録商標)2X GreenStarTM qPCR MasterMix(Bioneer、韓国)を25μl、蒸留水19μl、アンフィレギュリンqPCRプライマー(配列番号17及び18(表5);10 pmole/μl、それぞれ、Bioneer、韓国)を3μl入れて混合液を作製した。一方、アンフィレギュリンmRNAの発現量を正規化するためにハウスキーピング遺伝子(HK遺伝子)であるGAPDH(Glyceraldehyde-3-Phosphate Dehydrogenase)を標準遺伝子とした。前記混合液を含む96-ウェルプレートを、ExicyclerTM Real-Time Quantitative Thermal Block(Bioneer、韓国)を用いて以下の反応を行った:95℃で15分間反応して酵素の活性化及びcDNAの二次構造をなくした後、94℃で30秒間変性、58℃で30秒間アニーリング、72℃で30秒間延長、SYBRグリーンスキャンの4つの過程を42回繰り返し行い、72℃で3分間最終延長を行った後、55℃で1分間温度を維持し、55℃から95℃までのメルティングカーブ(melting curve)を分析した。
【0149】
PCRが終了した後、それぞれ得られた標的遺伝子のCt(threshold cycle)値はGAPDH遺伝子を通じて補正された標的遺伝子のCt値を求めた後、遺伝子発現の阻害を起こさないコントロール配列であるSAMiRNA(SAMiCONT)が処理された実験群を対照群としてΔCt値の差を求めた。前記ΔCt値と計算式2(-ΔCt)×100を用いて、アンフィレギュリン特異的なSAMiRNAが処理された細胞の標的遺伝子の発現量を相対定量した。
【0150】
二本鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドのうち高効率のSAMiRNAを選別するために、最終濃度200nM、600nM、1200nMの濃度でアンフィレギュリンmRNA発現量が対照群に比べて発現量の減少効率が最も良い配列、すなわち、配列番号12の配列をセンス鎖として有するDNA/RNAハイブリッドであるSAMiRNA(90%以上の遺伝子発現を抑制)を最終選別した。
【0151】
図8に示したように、選別された3種のアンフィレギュリン特異的なSAMiRNAを含む二本鎖オリゴDNA/RNAハイブリッド及びRNA/RNAハイブリッドから、アンフィレギュリン遺伝子の発現を最も効果的に抑制するDNA/RNAハイブリッドSAMiRNA 12を最終選別した。
【0152】
実施例8.マウス(Mouse)アンフィレギュリンを標的にしてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子の高速大量スクリーニング(HTS)
siRNA治療剤の場合、相異なる種(Strain)に共に適用可能な最適配列の発掘は困難である。この場合、治療効果を分析する動物モデル(in vivo efficacy test確認)特異的なsiRNA配列(surrogate sequence; mouse gene-specific siRNA)を設計して、当該遺伝子の発現阻害による薬学的効能(pharmacologically active)及び当該遺伝子発現阻害による毒性部分を検証するように米国FDAガイドラインが存在する(presentation by Robert T.Dorsam Ph.D.Pharmacology/Toxicology Reviewer,FDA/CDER)。
【0153】
既存のアルゴリズムベースのsiRNA設計プログラム(自社保有のTurbo-si-designer)を通じて既存発掘したスクリーニングを補完して、SAMiRNAベースの配列発掘高速大量スクリーニング(SAMiRNA based siRNA sequence high-throughput screening)を進めた。標的遺伝子全体を対象に19-mer長のsiRNAを1基スライディングウィンドウスキャニングして(前記ヒトアンフィレギュリン標的スクリーニングと同じ方法)可能なマウスアンフィレギュリン遺伝子(NM_009704.4)フルトランスクリプト配列を対象に合計1190個の候補siRNA配列を生成し、相同性フィルタリング(blast sequence homology filtering)を進行して不要な他の遺伝子の発現に影響を及ぼす候補配列を除去して、最終的に選別された237種のSAMiRNAを合成した後、マウス由来NIH3T3細胞株に10% FBSが存在する細胞培養条件で1uMの濃度で処理して、in vitro発現阻害効果を表8(qPCR用のプライマー配列情報)のプライマーを用いて一次スクリーニングした(図9)。
【0154】
その後、さらなるスクリーニングにより前記NIH3T3細胞株から選別された2種の配列(配列番号19及び20)及び先行マイルストーン研究により発掘した配列番号21のマウスSAMiRNA-アンフィレギュリンについてMouse Lung fibroblast細胞株であるMLg cell line(ATCC(登録商標)CCL-206TM、Manassas、VA、USA)で、10% FBSが存在する細胞培養条件下で200nM及び500nMの処理濃度で処理して、さらなるスクリーニングを行った結果、配列番号20が最も優れた発現阻害効果を確認した(図10A)。
【0155】
さらに、 Mouse Lung epithelial cell lineであるLA-4細胞株(ATCC(登録商標)CCL-196TM、Manassas、VA、USA)に選別された2種の配列(配列番号19及び20)及び先行マイルストーン研究により発掘した配列番号21のマウスSAMiRNA-アンフィレギュリンを10% FBSが存在する細胞培養条件で200nM、500nM及び1000nMの処理濃度で処理してさらなる発現阻害効果を確認した結果、配列番号20が最も優れた発現阻害効果を再確認した(図10B)。
【0156】
図10に示したように、マウスアンフィレギュリンを標的とする237種のSAMiRNAから、アンフィレギュリン遺伝子発現を最も効果的に抑制する2種のSAMiRNAを最終選別した。当該SAMiRNAの配列情報は下記の表9の通りである。 。
【0157】
<表8>
qPCR用のプライマー配列情報
(Fは正方向(forward)プライマー、Rは逆方向(reverse)プライマーをそれぞれ意味する)
【0158】
<表9>
マウスアンフィレギュリン発現を効果的に抑制するSAMiRNA配列
【0159】
実施例9.第2型糖尿病モデルを用いた肥満抑制効果の確認
アンフィレギュリン発現阻害剤の肥満抑制効果を確認するために、アンフィレギュリン発現阻害剤として下記配列で表されるセンス鎖とそれに相補的なアンチセンス鎖とを含むSAMiRNA-AREG(SAMi-mAREG#20)を第2型糖尿病モデルに投与して脂肪減少に対する効果を観察した。8週間、薬物を週3回投与した後にマウスを犠牲にした後、様々な指標を観察した。
【0160】
9-1.動物実験方法
BKS.Cg- +/+ Leprdb/(KRIBB;韓国生命工学研究院)5週齢のマウスの分譲を受けて実験を行った。肥満糖尿群(db/dbマウス)を分譲後、3週間馴化後、8週間齧歯類食餌(Rodent diet、2918C、Harlan、USA)を誘導して、以下の実験条件に従って実験を進行した。比較のために、肥満でない正常対照群(C57BL/6マウス)5週齢のマウスをNARA Biotechから購入して実験を進行し、これも3週間の馴化させ、8週間齧歯類の食餌を誘導した。全てのグループは各6匹ずつ分類して実験を進めた。
【0161】
正常対照群グループにはPBS(C-9011、Bioneer、韓国)100 ulを、肥満糖尿群は3グループに分け、それぞれ、PBS 100ul、SAMiRNA-Cont 5mg/kg 100ul、SAMiRNA-AREG 5mg/kg 100ulずつ週3回皮下注射方式で投与した。飼育環境温度は21±2℃、湿度55±5%、15~17/時間、照度150~300 Lux、12時間周期(点灯 06:00、消灯 18:00)で実験期間中に一定の状態に維持した。8週間、薬物を投与した後、16時間絶食させて犠牲にした。
【0162】
9-2.体重、飼料、飲み水摂取量の測定
体重、飼料及び飲み水摂取量は、測定ごとに一定時間に測定し、週2回測定した。
【0163】
9-2-1.体重の変化
マウスの体重(g)は週2回一定時間ごとに測定した。正常対照群は、時間が経つにつれて徐々に体重が増加する傾向を示し、マウス犠牲時の重量は32.5±1.64であった。肥満糖尿群3グループは、PBS投与時に平均28.9±2.35、SAMiRNA-Cont投与時に平均27.4±3.93、SAMiRNA-AREG投与時に平均29.7±4.12の体重を示した(図11)。8週に体重を観察したところ、各グループ間で統計的に有意な差は見られなかったが、正常対照マウスと比較したとき、肥満糖尿群マウスの全てのグループで微小に体重減少傾向を示し、肥満糖尿群マウスの各グループ間の体重で統計的に有意な差は認められなかった。
【0164】
9-2-2.飼料及び飲み水摂取量の変化
マウス飼料摂取量の測定の結果、正常対照群は1日平均飼料摂取量が約4gであり、肥満糖尿群の全てのグループでは約8gの飼料を摂取して、肥満糖尿群のマウスで飼料摂取量が2倍以上増加することが確認された(図12)。飲み水摂取量も正常対照のマウスでは約5mL/dayであるが、肥満糖尿群のマウスでは20-35mL/dayで摂取量が著しく高かった(図13)。
【0165】
9-3.脂肪重量の変化
脂肪の重量測定のために犠牲にされたマウスから皮下脂肪と内臓脂肪を摘出してその重量を測定し、マウス重量に対する脂肪の割合を評価した。
【0166】
皮下脂肪の場合、正常対照群のマウスでは1.56±0.36、肥満糖尿群のマウスではPBS投与群は4.32±0.73、SAMiRNA-Cont投与群は3.63±1.80、SAMiRNA-AREG投与群は3.15±0.58を示した。これにより、肥満糖尿群のマウスにおける本発明のアンフィレギュリン発現量の減少により、皮下脂肪の重量が有意に減少する効果を確認することができた(図14)。
【0167】
内臓脂肪の場合、正常対照群のマウスでは1.28±0.31、肥満糖尿群のマウスではPBS投与群は1.97±0.25、SAMiRNA-Cont投与群は1.59±0.38、SAMiRNA-AREG投与群は0.76±0.12を示し、特に、肥満糖尿群のマウスで本発明によるアンフィレギュリン発現量の減少により、内臓脂肪の重量が著しく減少する効果が確認できた(図15及び図16)。
【0168】
9-4.空腹時血糖の測定及び血清中のグルコース数値の測定
空腹時血糖の測定(mg/dL)は、マウス犠牲の1週間前に簡易血糖計(Accu-ChekTM Active、Roche、Germany)を通じて測定し、KP&T社に依頼して血清中のグルコース数値を測定した。
【0169】
血液中の血糖の場合、正常対照群のマウスの血糖は153.2±12.07であり、肥満糖尿群のマウスのうちPBS投与群は平均551.8±53.73、SAMiRNA-Cont投与群は平均577.3±40.25、SAMiRNA-AREG投与群は平均555.7±49.15を示した(図17)。
【0170】
血清中のグルコース数値(mg/dL)は、正常対照群のマウスの場合は149.6±20.4、肥満糖尿群のマウスのうちPBS投与群は平均689.1±185.4、SAMiRNA-Cont投与群は平均755.5±89.4、SAMiRNA-AREG投与群は平均874.3±119.4を示した(図18)。
【0171】
したがって、肥満糖尿群のマウスにおける本発明によるアンフィレギュリン発現量の減少は、糖尿病動物モデルにおける空腹時血糖や血清中のグルコース数値の調節に大きな効果はないことが確認された。
【0172】
実施例10.高脂肪食餌肥満モデルを用いた肥満抑制効果の確認
アンフィレギュリン発現抑制剤の肥満抑制効果を確認するために、アンフィレギュリン発現抑制剤としてSAMiRNA-AREG(SAMi-mAREG#20)を高脂肪飼料食餌誘導肥満モデルに投与して脂肪減少に対する効果を観察した。食餌誘導5週間、薬物を週3回投与した後にマウスを犠牲にした後、様々な指標を観察した。
【0173】
10-1.高脂肪飼料食餌誘導によるアンフィレギュリン発現量の確認
C57BL/6(NARA Biotech)5週齢マウスの分譲を受けて実験を行った。分譲後、1週間馴化後、60 kcal% Fat diet(D12492、Research Diets、Inc.)を6週間誘導させた後、副精巣脂肪を摘出してmRNAレベルを確認した。
【0174】
脂肪組織におけるTotal RNA抽出は、QIAzol Lysis Reagent (QIAZEN.,GER)とRNeasy Mini Kit(QIAZEN.,GER)の組み合わせで進行した。100mgの脂肪組織をQIAzol Lysis Reagent 1mlに入れて均質化した後、室温で5分間培養した。4℃、12000gで10分間遠心分離した後、上部のfat monolayerを避けて下部のサンプルを回収した。200μlのクロロフォーム(Sigma-Aldrich、USA)を入れてよく混合して3分間室温に置いた後、4℃、12000gで30分間遠心分離した。分離された3フェーズ(phases)で最も上層を回収した後、Lysate:70% EtOH=1:1の割合で入れてよく混ぜてからRNeasy Mini KitのRNeasy spin columnに入れる。その後、製造社のプロトコルに従って進行した。抽出されたRNAは、スペクトロフォトメーターを用いて定量及び純度を評価した。
【0175】
<表9>
qPCR用のプライマー配列情報
(Fは正方向(forward)プライマー、Rは逆方向(reverse)プライマーをそれぞれ意味する)
その結果、高脂肪飼料食餌誘導により、アンフィレギュリン発現量が正常対照群に比べて12倍増加した(図19)。
【0176】
10-2.動物実験方法
C57BL/6(NARA Biotech)5週齢のマウスを分譲を受けて実験を進行した。分譲後、1週間馴化後、1週間60 kcal% Fat diet(D12492,Research Diets,Inc.)を誘導させた後、次の実験条件に従って実験を進行し、比較のために肥満でない正常対照群も同じ条件で齧歯類の食餌(Rodent diet、2918C、Harlan、USA)を誘導して、以下の実験条件に従って実験を行った。グループは正常対照群(ND+PBS)と試験物質投与群(HFD+SAMi-AREG)はそれぞれ6匹ずつ、陰性対照群(HFD+PBS)は5匹ずつ分類して実験を進行した。
【0177】
正常対照群(ND+PBS)と陰性対照群(HFD+PBS)にはPBS(LB 001-02, WELGENE、韓国)100 ulを、試験物質投与群(HFD+SAMi-AREG)にはSAMiRNA-AREG 5mg/kg 100 ulずつ週3回皮下注射方式で投与した。飼育環境温度は21±2℃、湿度55±5%、15~17/時間、照度150~300 Lux、12時間周期(点灯 06:00、消灯 18:00)で実験期間中に一定の状態に維持した。5週間、薬物を投与した後、16時間絶食させ、犠牲にした。
【0178】
10-3.体重、飼料、飲み水摂取量の測定
体重、飼料及び飲み水摂取量は、測定ごとに一定の時間に測定し、週2回測定した。
【0179】
10-3-1.体重の変化
マウスの体重(g)は週2回一定の時間毎に測定した。陰性対照群は、PBS投与時に時間が経つにつれて高脂肪食餌によって体重が増加する傾向を示し、マウス犠牲時の重量は37.3±1.20であった。正常対照群にPBS投与時に平均26.57±0.36、試験物質投与群にSAMiRNA-AREG投与時に平均33.21±1.16の体重を示した。4週及び5週で体重を観察したところ、陰性対照群に比べて試験物質投与群において統計的に有意な差が観察された。
【0180】
正常対照群のマウスと比較した場合、高脂肪食餌誘導陰性対照群で体重が有意に増加したが、試験物質投与群ではマウスの体重が減少し、統計的に有意な差が観察された(図20)。
【0181】
10-3-2.飼料及び飲み水摂取量の変化
マウス飼料摂取量(g)の測定結果、正常対照群は1日平均飼料摂取量が3.69±0.15であり、陰性対照群は2.76±0.06であり、試験物質投与群では2.55±0.08の飼料を摂取して、正常対照群より高脂肪飼料の摂取量が少なく、陰性対照群と試験物質投与群との有意な飼料摂取量の差はなかった(図21a)。
【0182】
マウス飲み水摂取量(mL)の測定結果、正常対照群は1日平均飲み水摂取量が3.27±0.10であり、陰性対照群は4.00±0.12であり、試験物質投与群では4.22±0.24の飲み水を摂取して、正常対照群より高脂肪食餌マウスの飲み水摂取量が多く、陰性対照群と試験物質投与群との有意な飲み水摂取量の差はなかった(図21b)。
【0183】
10-4.食餌効率(food efficiency ratio(%))
マウスの体重増加量(g/day)を飼料摂取量(g/day)で割って食餌効率を測定した結果、正常対照群は0.02±0.001、陰性対照群は0.12±0.007、試験物質投与群では0.08±0.011であって、陰性対照群と試験物質投与群の両方において正常対照群に比べて食事効率は増加したが、試験物質投与群は陰性対照群に比べて食餌効率が有意に低く観察された(図22)。
【0184】
10-5.脂肪重量の変化
脂肪の重量測定のために犠牲にされたマウスから皮下脂肪(subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(perirenal fat pad)、腸間膜脂肪(mesenteric fat pad)をマウスの犠牲時に摘出してその重量を測定し、マウス重量に対する脂肪重量の割合を評価した。
【0185】
マウス皮下脂肪の重量(g)の場合、正常対照群は0.38±0.02、陰性対照群は1.74±0.12、試験物質投与群は1.05±0.14を示し、副精巣脂肪の重量(g)の場合、正常対照群は0.52±0.03、陰性対照群は2.32±0.09、試験物質投与群は1.79±0.16を示し、腎臓周辺脂肪の重量(g)の場合、正常対照群は0.20±0.02、陰性対照群は0.86±0.04、試験物質投与群は0.67±0.08を示し、腸間膜脂肪の重量(g)の場合、正常対照群は0.25±0.01、陰性対照群は0.66±0.09、試験物質投与群は0.45±0.04を示した(図23a)。
【0186】
マウス皮下脂肪の重量比率(%)の場合、正常対照群は1.39±0.08、陰性対照群は4.65±0.23、試験物質投与群は3.11±0.35を示し、副精巣脂肪の重量比率(%)の場合、正常対照群は1.91±0.10、陰性対照群は6.23±0.09、試験物質投与群は5.36±0.29を示し、腎臓周辺脂肪の重量比率(%)の場合、正常対照群は0.73±0.06、陰性対照群は2.33±0.13、試験物質投与群は2.01±0.17を示し、腸間膜脂肪の重量比率(%)の場合、正常対照群は0.91±0.02、陰性対照群は1.76±0.19、試験物質投与群は1.35±0.07を示した(図23b)。
【0187】
マウスの脂肪を皮下脂肪(subcutaneous fat)と内臓脂肪(epididymal fat、Perirenal fat、mesenteric fat)に分けて重量(g)及び重量比率(%)を示した。
【0188】
マウス皮下脂肪の場合、重量は正常対照群は0.38±0.02、陰性対照群は1.74±0.12、試験物質投与群は1.05±0.14を示し、重量比率は正常対照群は1.39±0.08、陰性対照群は4.65±0.23、試験物質投与群は3.11±0.35を示した。
【0189】
内臓脂肪の場合、重量は正常対照群は0.97±0.06、陰性対照群は3.85±0.18、試験物質投与群は2.92±0.27を示し、重量比率は正常対照群は3.56±0.17、陰性対照群は10.34±0.16、試験物質投与群は8.73±0.50を示した。
【0190】
その結果、正常対照群に比べて陰性対照群において皮下脂肪及び内臓脂肪の重量及び重量比率が有意に増加し、試験物質投与群において陰性対照群におけるこのような増加を有意に減少させる効果を確認することができた(図24a及び図24b)。
【0191】
10-6.Micro CT分析
マウス脂肪のMicro-CT分析(韓国基礎科学支援研究院、光州センター)のために、各グループで体重が中間値を示す動物2匹を選別した。写真撮影後、皮下脂肪及び内臓脂肪の面積をグラフで示した。
【0192】
皮下脂肪の場合、面積(mm)は正常対照群は1661±289.5、陰性対照群は6356±217、試験物質投与群は4040±284.5を示し、内臓脂肪の場合、面積(mm)は正常対照群は1069±90、陰性対照群は3782±7、試験物質投与群は2623±166を示した。
【0193】
その結果、正常対照群に比べて陰性対照群において皮下脂肪及び内臓脂肪の面積が増加し、試験物質投与群において陰性対照群に比べて面積が減少する効果を確認することができた(図25)。
【0194】
10-7.脂肪組織の組織病理学的検査
マウスの皮下脂肪(subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(Perirenal fat pad)、腸間膜脂肪(mesenteric fat pad)を摘出して、10%の中性緩衝ホルマリン(10% neutral buffered formalin、Sigma、HT50-1-640)に24時間以上固定し、エタノールで脱水した後、キシレン(xylene)3段階の透明過程を経た。その後、流動パラフィンで浸透(infilteration)及び包埋(embedding)過程を経てパラフィンブロックを作製した。その後、5μm厚の組織区画を脱パラフィン化及び再水和し、Harris hematoxylin染色溶液で5分間核をまず染色した後、Eosin溶液で対照染色を行った。染色が終わったら、mounting solutionを落とした後、カバーガラスで覆って固まった。保存液で固まった組織スライドを倒立顕微鏡(Nikon eclipse TS2)を用いて200倍率で写真撮影を行い、脂肪細胞の面積を計算した。
【0195】
皮下脂肪の場合、面積(mm)は正常対照群は913.8±129.9、陰性対照群は3575.0±346.7、試験物質投与群は1337.0±211.1を示し、副精巣脂肪の場合、面積(mm)は正常対照群950.6±73.2、陰性対照群は1598.0±99.6、試験物質投与群は1347.0±100.1を示し、腎臓周辺の場合、面積(mm)は正常対照群は1734.0±158.8、陰性対照群は5365.0±190.4、試験物質投与群は2516.0±288.3を示し、腸間膜脂肪の場合、面積(mm)は正常対照群は1552.0±680.3、陰性対照群は3495.0±425.3、試験物質投与群は1436.0±163.3を示した。
【0196】
その結果、正常対照群に比べて陰性対照群において脂肪細胞の面積が増加し、試験物質投与群において陰性対照群に比べて面積が減少する効果を確認することができた(図26)。
【0197】
10-8.肝組織の組織病理学的検査
マウスの肝を摘出してH&E染色及びオイルレッド(Oil red)O分析のために10%の中性緩衝ホルマリン(10% neutral buffered formalin、Sigma、HT50-1-640)に24時間以上固定した後、検査を行った。
【0198】
10-8-1.H&E染色
中性緩衝ホルマリンに固定した後に得られた肝組織の全体的な形態、肝組織内の脂質蓄積の程度を観察するために、H&E(Hematoxylin&Eosin)染色を行った。組織サンプルはパラフィン浸潤法で作製した。エタノールで脱水した後、キシレン3段階の透明過程を経た。その後、流動パラフィンで浸透及び包埋過程を経てパラフィンブロックを作製した。マイクロトーム(microtome)を用いて組織ブロックを5μm厚の切片にし、スライド乾燥機で1時間乾燥させた後、キシレンでパラフィンを除去し、エタノール段階を経て含水させた。Harris hematoxylin染色溶液で5分間核をまず染色した後、Eosin溶液で対照染色を行った。染色が終わったら、mounting solutionを落とした後、カバーガラスで覆って固まった。保存液で固まった組織スライドを顕微鏡を用いて観察した。
【0199】
10-8-2.オイルレッドOの染色
中性緩衝ホルマリンに固定した後に得られた肝組織を30%スクロース(sucrose)溶液に浸潤させた。PBS溶液で水洗した後、水分を除去し、凍結組織包埋剤であるOptical cutting temperature(O.C.T)compound(SAKURA、USA)に固定させて凍結組織ブロックを作製した。固定組織を凍結切片機(Cryostat CM3050 S、Leica)で14 μmの厚さに切片して組織サンプルを作製した。脂質成分に特異的に敏感に反応して赤色を示すことにより脂質蓄積の程度を確認できる特殊染色法であるオイルレッドO染色を用いてAREGの脂質蓄積抑制効果を確認した。10%の中性緩衝ホルマリン(10% neutral buffered formalin、Sigma、HT50-1-640)で10分間固定した後、固定液を除去し、100%のプロピレングリコール(propylene glycol)を用いて洗浄した後、細胞内に生成された脂質液滴(lipid droplet)と特異的に反応するオイルレッドO(Oil red O、O9755、Sigma)溶液を用いて染色した。染色が終わったら、mounting solutionを落とした後、カバーガラスで覆って固まった。保存液で固まった組織スライドを顕微鏡を用いて観察した。
【0200】
10-8-3.肝脂肪の変化
オイルレッドOの分析後に定量分析を行った結果、正常対照群に比べて陰性対照群で6.6倍増加した脂肪が生成され、試験物質投与群の場合は正常対照群に比べて2.8倍増加した脂肪が生成された。したがって、試験物質投与群において肝脂肪生成抑制効果があることがわかった(図27)。
【0201】
10-9.遺伝子発現の分析
マウスの皮下脂肪(subcutaneous fat pad)、副精巣脂肪(epididymal fat pad)、腎臓周辺脂肪(Perirenal fat pad)におけるアンフィレギュリンの発現量を測定した。脂肪組織におけるTotal RNA抽出は、TRI-Reagent(MRC Inc.,US)とUniversal RNA extraction kit(Bioneer、韓国)の組み合わせで行った。100mgの脂肪組織をTri reagent 1mlに入れ、ホモゲン化後、室温で5分間培養した。4℃、12000gで10分間遠心分離した後、上部のfat monolayerを避けて下部のサンプルを回収した。200μlのクロロフォーム(Sigma-Aldrich、USA)を入れてよく混合した後、3分間室温に置いた後、4℃、12000gで30分間遠心分離した。分離された3フェーズで最も上層を回収した後、Lysate:Isopropanol=400:300の割合で入れてよく混ぜた後、Universal RNA extraction kitのAccuPrep(登録商標) Binding Column-IIIに入れる。その後、製造社のプロトコルに従って進行した。抽出されたRNAは、スペクトロフォトメーターを用いて定量及び純度を評価し、RNAゲル電気泳動法(gel-electrophoresis)を通じて分解の程度を判断した。
【0202】
<表10>
qPCR用のプライマー配列情報
(Fは正方向(forward)プライマー、Rは逆方向(reverse)プライマーをそれぞれ意味する)
【0203】
10-9-1.脂肪組織におけるアンフィレギュリンmRNAレベル
マウスの皮下脂肪(subcutaneous fat pad)の場合、正常対照群に比べで陰性対照群では、アンフィレギュリンmRNAレベルが1.8倍増加したが、試験物質投与群では陰性対照群に比べてアンフィレギュリンmRNAレベルが1.6倍減少した。
【0204】
副精巣脂肪(epididymal fat pad)の場合、正常対照群に比べて対陰性対照群では、アンフィレギュリンmRNAレベルが3.2倍増加したが、試験物質投与群では陰性対照 群に比べてアンフィレギュリンmRNAレベルが1.3倍減少した。
【0205】
腎臓周辺脂肪(Perirenal fat pad)の場合、正常対照群に比べて陰性対照群では、アンフィレギュリンmRNAレベルは3.7倍増加したが、試験物質投与群では陰性対照群に比べてアンフィレギュリンmRNAレベルは1.5倍減少した(図28)。
【0206】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に説明したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、この具体的な技術は単なる好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明による医薬組成物は、皮下脂肪、特に、内臓脂肪の減少効果が優れており、内臓脂肪による合併症が問題となる心血管疾患、代謝疾患、糖尿病及び他の様々な疾患の治療及び予防段階において有用に利用されることができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21a
図21b
図22
図23a
図23b
図24a
図24b
図25
図26
図27a
図27b
図28
【配列表】
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