(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】有機光電素子及びイメージセンサ並びに電子装置
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20240912BHJP
H10K 30/30 20230101ALI20240912BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240912BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20240912BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240912BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20240912BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/30
H01L27/146 E
H10K39/32
H10K85/60
H10K101:40
(21)【出願番号】P 2023006043
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2021182155の分割
【原出願日】2015-02-10
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2014-0089914
(32)【優先日】2014-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 敬 培
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜一
(72)【発明者】
【氏名】李 啓 滉
(72)【発明者】
【氏名】李 光 熙
(72)【発明者】
【氏名】林 東 ソク
(72)【発明者】
【氏名】陳 勇 完
(72)【発明者】
【氏名】八木 弾生
(72)【発明者】
【氏名】許 哲 準
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/082006(WO,A1)
【文献】特開2014-022525(JP,A)
【文献】特開2012-191222(JP,A)
【文献】国際公開第2014/085639(WO,A1)
【文献】特開2014-053310(JP,A)
【文献】特開2011-204802(JP,A)
【文献】特開2012-231149(JP,A)
【文献】特開2003-332551(JP,A)
【文献】特開2008-218445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
H01L 31/00-31/0392
H01L 31/08-31/119
H01L 31/18-31/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の一面に配置され、第1p型吸光物質及び第1n型吸光物質を含む吸光層と、
前記吸光層の前記第1電極と接する面と対向する一面に接して配置され、前記吸光層より小さい半値幅を有する第2p型吸光物質を含む吸光補助層と、
前記吸光補助層の前記吸光層と接する面と対向する一面に配置される電荷補助層と、
前記電荷補助層の前記吸光補助層と接する面と対向する一面に配置される第2電極とを有し、
前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであり、
前記第2電極の側から光が入射され、前記吸光補助層は、前記吸光層よりも光が入射される前記第2電極の近くに配置されることを特徴とする有機光電素子。
【請求項2】
前記第2p型吸光物質は、前記吸光層の半値幅より5nm以上小さい半値幅を有することを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項3】
前記第2p型吸光物質の最大吸収波長(λmax)における外部量子効率(EQE)は、前記吸光層の最大吸収波長(λmax)における外部量子効率(EQE)と同じか又は高いことを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項4】
前記吸光層の半値幅は、前記第1p型吸光物質又は前記第1n型吸光物質の半値幅より広いことを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項5】
前記第2p型吸光物質は、前記第1p型吸光物質と同じか又は異なり、
前記第2p型吸光物質は、下記の化学式1で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【化1】
(上記化学式1で、
R
a~R
lは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基またはこれらの組み合わせであり、
Xは、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC1~C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC1~C30アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC1~C30ヘテロアリールオキシ基、置換もしくは非置換のシリルオキシ基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。)
【請求項6】
前記第1p型吸光物質は、下記の化学式2で表されることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【化2】
(化学式2で、
R
m~R
xは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基またはこれらの組み合わせであり、
Yは、ハロゲン原子である。)
【請求項7】
前記第1p型吸光物質は、下記に示す化学式1aで表される化合物であり、
前記第2p型吸光物質は、下記化学式1bで表される化合物であることを特徴とする請求項6に記載の有機光電素子。
【化1a】
【化1b】
【請求項8】
前記第1n型吸光物質は、フラーレン(C60)であることを特徴とする請求項7に記載の有機光電素子。
【請求項9】
前記吸光層及び前記吸光補助層は、緑色波長領域の光を選択的に吸収
し、
前記緑色波長領域の最大吸収波長(λ
max
)は、500nm~600nmであることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項10】
前記吸光補助層は、90nm以下の半値幅を有することを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項11】
前記電荷補助層は、可視光線領域の光を吸収しないことを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項12】
前記第1電極と前記第2電極は、それぞれ透明電極であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の有機光電素子を有することを特徴とするイメージセンサ。
【請求項14】
青色波長領域の光を感知する複数の第1光感知素子及び赤色波長領域の光を感知する複数の第2光感知素子が集積されている半導体基板をさらに有し、
前記有機光電素子は、前記半導体基板の上部に配置され、緑色波長領域の光を選択的に吸収することを特徴とする請求項13に記載のイメージセンサ。
【請求項15】
前記半導体基板と前記有機光電素子との間に位置し、青色波長領域の光を選択的に吸収する青色フィルタと、赤色波長領域の光を選択的に吸収する赤色フィルタとを含む色フィルタ層をさらに有することを特徴とする請求項14に記載のイメージセンサ。
【請求項16】
前記第1光感知素子と前記第2光感知素子は、積層されていることを特徴とする請求項14に記載のイメージセンサ。
【請求項17】
前記有機光電素子である緑色光電素子と、青色波長領域の光を選択的に吸収する青色光電素子と、赤色波長領域の光を選択的に吸収する赤色光電素子は、積層されていることを特徴とする請求項13に記載のイメージセンサ。
【請求項18】
請求項13に記載のイメージセンサを有することを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電素子及びイメージセンサに関し、特に、分光特性を改善して波長選択性を高めることができるに有機光電素子及びイメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
光電素子とは、光と電気信号を変換させる素子であって、光ダイオード及び光トランジスターなどを含み、イメージセンサ、太陽電池などに適用され得る。
光ダイオードを含むイメージセンサは、日増しに解像度が高くなっており、それに伴って画素の大きさが小さくなっている。
【0003】
しかしながら、現在主に使用するシリコン光ダイオードの場合、画素の大きさが小さくなりながら吸収面積が減るため、感度低下が発生する恐れがあるという問題がある。
これによって、シリコンを代替できる有機物質が研究されている。
有機物質は、吸光係数が大きく、分子構造に応じて特定の波長領域の光を選択的に吸収することができることから、光ダイオードと色フィルタを同時に代替できるため、感度改善及び高集積に非常に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来のイメージセンサにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、分光特性を改善して波長選択性を高めることができる有機光電素子及びそれを含むイメージセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明による有機光電素子は、第1電極と、前記第1電極の一面に配置され、第1p型吸光物質及び第1n型吸光物質を含む吸光層と、前記吸光層の前記第1電極と接する面と対向する一面に接して配置され、前記吸光層より小さい半値幅を有する第2p型吸光物質を含む吸光補助層と、前記吸光補助層の前記吸光層と接する面と対向する一面に配置される電荷補助層と、前記電荷補助層の前記吸光補助層と接する面と対向する一面に配置される第2電極とを有し、前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであり、前記第2電極の側から光が入射され、前記吸光補助層は、前記吸光層よりも光が入射される前記第2電極の近くに配置され配置されることを特徴とする。
【0006】
前記第2p型吸光物質又は前記第2n型吸光物質は、前記吸光層の半値幅より5nm以上小さい半値幅を有することが好ましい。
前記第2p型吸光物質又は前記第2n型吸光物質の最大吸収波長(λmax)における外部量子効率(EQE)は、前記吸光層の最大吸収波長(λmax)における外部量子効率(EQE)と同じか又は高いことが好ましい。
前記吸光層の半値幅は、前記第1p型吸光物質又は前記第1n型吸光物質の半値幅より広いことが好ましい。
前記第2p型吸光物質は、前記第1p型吸光物質と同じか又は異なり、
前記第2p型吸光物質又は前記第2n型吸光物質は、下記の化学式1で表されることが好ましい。
【化1】
(前記化学式1で、R
a~R
lは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基またはこれらの組み合わせであり、Xは、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC1~C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC1~C30アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC1~C30ヘテロアリールオキシ基、置換もしくは非置換のシリルオキシ基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のアリールアミン基又はこれらの組み合わせである。)
【0007】
前記第2p型吸光物質は、前記第1p型吸光物質と同じか又は異なり、前記第2n型吸光物質は、前記第1n型吸光物質と同じか又は異なることが好ましい。
前記第1p型吸光物質又は前記第1n型吸光物質は、下記の化学式2で表されることが好ましい。
【化2】
(前記化学式2で、R
m~R
xは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基又はこれらの組み合わせであり、Yは、ハロゲン原子である。)
前記第1p型吸光物質は、下記に示す化学式1aで表される化合物であり、
前記第2p型吸光物質は、下記化学式1bで表される化合物であることが好ましい。
【化1a】
【化1b】
前記第1n型吸光物質は、フラーレン(C60)であることが好ましい。
前記吸光層及び前記吸光補助層は、緑色波長領域の光を選択的に吸収することが好ましい。
前記吸光補助層は、90nm以下の半値幅を有することが好ましい。
前記電荷補助層は、可視光線領域の光を実質的に吸収しないことが好ましい。
前記第1電極と前記第2電極は、それぞれ透明電極であることが好ましい。
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明によるイメージセンサは、前記有機光電素子を含むイメージセンサを有することを特徴とする。
【0009】
青色波長領域の光を感知する複数の第1光感知素子及び赤色波長領域の光を感知する複数の第2光感知素子が集積されている半導体基板をさらに有し、前記有機光電素子は、前記半導体基板の上部に配置され、緑色波長領域の光を選択的に吸収することが好ましい。
前記半導体基板と前記有機光電素子との間に位置し、青色波長領域の光を選択的に吸収する青色フィルタと、赤色波長領域の光を選択的に吸収する赤色フィルタとを含む色フィルタ層をさらに有することが好ましい。
前記第1光感知素子と前記第2光感知素子は、積層されていることが好ましい。
前記有機光電素子である緑色光電素子と、青色波長領域の光を選択的に吸収する青色光電素子と、赤色波長領域の光を選択的に吸収する赤色光電素子は、積層されていることが好ましい。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による電子装置は、前記イメージセンサを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る有機光電素子及びイメージセンサ並びに電子装置によれば、有機光電素子の波長選択性を高めることができるという効果がある。
これによって、有機光電素子を適用したイメージセンサのクロストークを減らして感度を改善することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機光電素子を概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る有機CMOSイメージセンサを概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2の有機CMOSイメージセンサの部分的な断面図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係る有機CMOSイメージセンサを概略的に示す断面図である。
【
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る有機CMOSイメージセンサを概略的に示す斜視図である。
【
図6】実施例1と比較例1による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【
図7】実施例2と比較例2による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【
図8】実施例3と比較例3による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る有機光電素子及びイメージセンサ並びに電子装置を実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0014】
本明細書で別途の定義がない限り、「置換」とは、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Br、Cl又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1~C20アルキル基、C2~C20アルケニル基、C2~C20アルキニル基、C6~C30アリール基、C7~C30アリールアルキル基、C1~C20アルコキシ基、C1~C20ヘテロアルキル基、C3~C20ヘテロアリールアルキル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C15シクロアルケニル基、C6~C15シクロアルキニル基、C2~C20ヘテロシクロアルキル基、及びこれらの組み合わせから選ばれた置換基で置換されたものを意味する。
また、本明細書で別途の定義がない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S及びPから選ばれたヘテロ原子を1~3つ含有したものを意味する。
【0015】
図面において、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。明細書全体にわたって類似する部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという時には、中間にさらに他の部分がないことを意味する。
図面において、本実施形態を明確に説明するために説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一又は類似する構成要素については同一の図面符号を使用した。
以下で「組み合わせ」とは、混合又は/又は2以上の積層構造を含む。
【0016】
次に、図面を参照して本発明の一実施形態に係る有機光電素子を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機光電素子を概略的に示す断面図である。
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る有機光電素子100は、第1電極10、第1電極10の一面に配置される吸光層30、吸光層30の一面に配置される吸光補助層35、吸光補助層35の一面に配置される電荷補助層40、及び電荷補助層40の一面に位置する第2電極20を含む。
【0017】
第1電極10と第2電極20のいずれか一つはアノード(anode)であり、他の一つはカソード(cathode)である。
第1電極10と第2電極20の少なくとも一つは透光電極であり、透光電極は、例えばインジウムティンオキサイド(indium tin oxide、ITO)又はインジウムジンクオキサイド(indium zinc oxide、IZO)のような透明導電体、又は薄い厚さの単一層又は複数層の金属薄膜で作られ得る。
第1電極10と第2電極20のうちの一つが不透光電極である場合、例えばアルミニウム(Al)のような不透明導電体で作られ得る。
一例として、第2電極20は、透光電極であり得る。
一例として、第1電極10と第2電極20は、全て透光電極であり得る。
【0018】
吸光層30は、第1p型吸光物質及び第1n型吸光物質を含み、外部から光を受けてエキシトン(exciton)を生成した後、生成されたエキシトンを正孔と電子に分離する層である。
第1p型吸光物質及び第1n型吸光物質のうちの少なくとも一つは有機物であり、一例として第1p型吸光物質と第1n型吸光物質が全て有機物であり得る。
【0019】
吸光層30は、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質を全て含む真性層(intrinsic layer)を含むことができ、真性層は、例えば共蒸着などの方法で形成され得る。
真性層は、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質がバルクへテロ接合(bulk heterojunction)を形成する。
真性層は、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質が、約1:100~約100:1の厚さ比で含まれ得る。
上記範囲内で、約1:50~50:1の厚さ比で含まれてもよく、上記範囲内で約1:10~約10:1の厚さ比で含まれてもよく、上記範囲内で約1:1の厚さ比で含まれてもよい。
第1p型吸光物質と第1n型吸光物質が上記範囲内の組成比を有することによって効果的なエキシトンの生成及びpn接合の形成により効果的になる。
【0020】
吸光層30は、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質を含む複数層で形成することができ、例えばp型層/n型層、p型層/真性層、真性層/n型層、p型層/真性層/n型層など多様な組み合わせであり得る。
p型層は、第1p型吸光物質を含み、n型層は、第1n型吸光物質を含む。
【0021】
第1p型吸光物質と第1n型吸光物質は、可視光線領域の光を吸収し、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質のうちの少なくとも一つは、可視光線領域中の特定の波長領域の光を選択的に吸収する。
一例として、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質のうちの少なくとも一つは、緑色波長領域の光を選択的に吸収し、緑色波長領域の光の最大吸収波長(λmax)は、約500nm~600nmであり得る。
【0022】
吸光層30で特定の波長領域の光を選択的に吸収できる尺度として半値幅(full width at half maximum、FWHM)を用いることができる。
半値幅は、波長に対する外部量子効率(EQE)グラフにおいて最大外部量子効率(EQE)地点の半分(half)に対応する波長の幅(width)であり、半値幅が小さければ狭い波長領域の光を選択的に吸収して波長選択性が高いことを意味し、半値幅が大きければ広い波長領域の光を吸収して波長選択性が低いことを意味する。
【0023】
第1p型吸光物質と第1n型吸光物質は、分光プロファイル(spectrum profile)が異なるため、それぞれ異なる半値幅を有し、吸光層30は、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質の各分光プロファイルを組み合わせた分光プロファイルを有するため、吸光層30の半値幅は第1p型吸光物質又は第1n型吸光物質より広くなり得る。
【0024】
第1p型吸光物質又は第1n型吸光物質は、例えば下記の化学式2で表される化合物であり得るが、これに限定されない。
【化3】
(化学式2で、
R
m~R
xは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基またはこれらの組み合わせであり、
Yは、ハロゲン原子である。)
Yは、例えばフッ素原子又は塩素原子であり得る。
【0025】
一例として、化学式2で表される化合物が第1p型吸光物質として用いられる場合、第1n型吸光物質は、例えばジシアノビニル-テルチオフェン(dicyanovinyl-terthiophene、DCV3T)のようなチオフェン誘導体、フラーレン、フラーレン誘導体、ペリレンジイミド(perylene diimide)のようなイミド化合物であり得るが、これに限定されない。
【0026】
一例として、化学式2で表される化合物が第1n型吸光物質として用いられる場合、第1p型吸光物質は、例えばN,N’-ジメチルキナクリドン(N,N’-dimethylquinacridone、DMQA)、N,N’-ジメチル-2,9-ジメチルキナクリドン(N,N’-dimethyl-2,9-dimethylquinacridone、DMMQA)などであり得るが、これに限定されない。
【0027】
吸光層30は、本実施形態では、緑色波長領域の光を選択的に吸収する。
吸光層30は、約1nm~500nmの厚さを有することができる。
上記範囲内で約5nm~300nmの厚さを有することが好ましい。上記範囲内の厚さを有することによって光を効果的に吸収し、正孔と電子を効果的に分離及び伝達することによって光電変換効率を効果的に改善することができる。
【0028】
吸光補助層35は、吸光層30と接しており、第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質を含む。
例えば、第1電極10がカソードであり、第2電極20がアノードである場合、吸光補助層35は、第2p型吸光物質を含み、第1電極10がアノードであり、第2電極20がカソードである場合、吸光補助層35は第2n型吸光物質を含む。
第2p型吸光物質は、第1p型吸光物質と同じか又は異なっていてもよく、第2n型吸光物質は、第1n型吸光物質と同じか又は異なっていてもよい。
第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質は、吸光層30より小さい半値幅を有する物質から選ばれ得る。
【0029】
上述のように、吸光層30は、第1p型吸光物質と第1n型吸光物質の各分光プロファイルを組み合わせた分光プロファイルを有するため、吸光層30の半値幅は第1p型吸光物質又は第1n型吸光物質より広くなり得、これによって、吸光層30は第1p型吸光物質又は第1n型吸光物質より波長選択性が劣り得る。
本実施形態では、吸光層30より小さい半値幅を有する第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質からなる吸光補助層35を吸光層30よりも光が入射される電極に近く配置することによって吸光層30の波長選択性を補完することができる。
【0030】
例えば、第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質は、吸光層30の半値幅より約5nm以上小さい半値幅を有する。上記範囲内で第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質は、吸光層30の半値幅より約5nm~約50nm小さい半値幅を有することが好ましく、そのうち約10nm~約50nm小さい半値幅を有することがさらに好ましく、そのうち約10nm~約30nm小さい半値幅を有することがさらに好ましい。
【0031】
吸光補助層35は、例えば最大吸収波長(λmax)で約100,000cm-1以上の吸光係数を有し、そのうち、例えば約120,000~200,000cm-1の吸光係数を有することが好ましい。
吸光補助層35は、例えば約90nm以下の半値幅を有する外部量子効率グラフを示し、そのうち、例えば約30nm~90nmの半値幅を有する外部量子効率グラフを示すことが好ましく、そのうち、例えば約50nm~90nmの半値幅を有する外部量子効率グラフを示すことがさらに好ましい。
【0032】
又、吸光補助層35は、吸光層30の光電変換効率を維持又は改善することができ、これによって、第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質の最大外部量子効率(EQEmax)は、吸光層30の最大外部量子効率(EQEmax)と同じか又は高くなり得る。
例えば、第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質の最大外部量子効率(EQEmax)は、吸光層30の最大外部量子効率(EQEmax)と比較して0~30%高くなり得、例えば約0.1~30%高くなり得、例えば約1~30%高くなり得る。
【0033】
例えば、第2p型吸光物質又は第2n型吸光物質は、下記の化学式1で表され得るが、これに限定されない。
【化4】
(上記化学式1で、
R
a~R
lは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC3~C30ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ハロゲン含有基またはこれらの組み合わせであり、
Xは、ハロゲン原子、ハロゲン含有基、置換もしくは非置換のC1~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC1~C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC1~C30アリールオキシ基、置換もしくは非置換のC1~C30ヘテロアリールオキシ基、置換もしくは非置換のシリルオキシ基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のアリールアミン基またはこれらの組み合わせである。)
【0034】
一例として、下記の表1は、化学式1で、R
a~R
lはそれぞれ独立して水素であり、Xは下記の表1に羅列した基である時、吸光係数及び半値幅を示す。
【表1】
【0035】
吸光補助層35は、本実施形態では、緑色波長領域の光を選択的に吸収する。
吸光補助層35は、約1nm~200nmの厚さを有する。上記範囲内で約5nm~100nmの厚さを有することが好ましく、上記範囲内で約5nm~70nmの厚さを有することがさらに好ましい。
【0036】
電荷補助層40は、第2電極20と吸光補助層35との間に位置して吸光層30で分離された正孔と電子が第2電極20側に容易に移動できるようにする。
電荷補助層40は、可視光線領域の光を実質的に吸収しなく、これによって、第2電極20から吸光補助層35及び吸光層30に入射される可視光線領域の光の吸収を妨害しなくなる。
【0037】
例えば、第1電極10がカソードであり、第2電極20がアノードである場合、電荷補助層40は、正孔の注入を容易にする正孔注入層(hole injecting layer、HIL)、正孔の輸送を容易にする正孔輸送層(hole transporting layer、HTL)、及び電子の移動を阻止する電子遮断層(electron blocking layer、EBL)のうちの少なくとも一つであり、第1電極10がアノードであり、第2電極20がカソードである場合、電荷補助層40は、電子の注入を容易にする電子注入層(electron injecting layer、EIL)、電子の輸送を容易にする電子輸送層(electron transporting layer、ETL)、及び正孔の移動を阻止する正孔遮断層(hole blocking layer、HBL)から選ばれた少なくとも一つである。
【0038】
電荷補助層40は、例えば、有機物、無機物又は有機無機混合物を含むことができる。
有機物は、正孔又は電子特性を有する有機化合物であり、無機物は、例えばモリブデン酸化物、タングステン酸化物、ニッケル酸化物のような金属酸化物であり得る。
【0039】
正孔輸送層(HTL)は、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、PEDOT:PSS)、ポリアリールアミン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(poly(N-vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン(N,N,N’,N’-tetrakis(4-methoxyphenyl)-benzidine、TPD)、4-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(4-bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl-amino]biphenyl、α-NPD)、m-MTDATA、4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)-トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N-carbazolyl)-triphenylamine、TCTA)、及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0040】
電子遮断層(EBL)は、例えば、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4-ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、PEDOT:PSS)、ポリアリールアミン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(poly(N-vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’ ,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ベンジジン(N,N,N’,N’-tetrakis(4-methoxyphenyl)-benzidine、TPD)、4-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(4-bis[N-(1-naphthyl)-N-phenyl-amino]biphenyl、α-NPD)、m-MTDATA、4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)-トリフェニルアミン(4,4’,4”-tris(N-carbazolyl)-triphenylamine、TCTA)、及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0041】
電子輸送層(ETL)は、例えば、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride、NTCDA)、バトクプロイン(bathocuproine、BCP)、LiF、Alq3、Gaq3、Inq3、Znq2、Zn(BTZ)2、BeBq2、及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0042】
正孔遮断層(HBL)は、例えば、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride、NTCDA)、バトクプロイン(BCP)、LiF、Alq3、Gaq3、Inq3、Znq2、Zn(BTZ)2、BeBq2、及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0043】
有機光電素子100は、第1電極10及び/又は第2電極20側から光が入射されて吸光層30及び吸光補助層35が所定の波長領域の光を吸収すれば内部でエキシトンが生成され得る。
エキシトンは、吸光層30及び吸光補助層35で正孔と電子に分離され、分離された正孔は第1電極10と第2電極20のうちの一つであるアノード側に移動し、分離された電子は第1電極10と第2電極20のうちの他の一つであるカソード側に移動して有機光電素子に電流が流れるようになる。
【0044】
有機光電素子は、太陽電池、イメージセンサ、光検出器、光センサ、及び有機発光ダイオードなどに適用され得るが、これに限定されない。
次に、有機光電素子を適用したイメージセンサの一例について図面を参照して説明する。
ここではイメージセンサの一例として有機CMOSイメージセンサについて説明する。
【0045】
図2は、本発明の一実施形態に係る有機CMOSイメージセンサを概略的に示す斜視図であり、
図3は、
図2の有機CMOSイメージセンサの部分的な断面図である。
図2及び
図3を参照すると、本発明の一実施形態に係る有機CMOSイメージセンサ300は、青色光感知素子50B、赤色光感知素子50R、伝送トランジスタ(図示せず)及び電荷貯蔵所55が集積されている半導体基板110、下部絶縁層60、色フィルタ層70、上部絶縁層80、及び有機光電素子100を含む。
【0046】
半導体基板110は、シリコン基板であり、青色光感知素子50B、赤色光感知素子50R、伝送トランジスタ(図示せず)、及び電荷貯蔵所55が集積されている。
青色光感知素子50B、赤色光感知素子50Rは光ダイオードであってもよい。
青色光感知素子50B、赤色光感知素子50R、伝送トランジスタ及び/又は電荷貯蔵所55は、各画素ごとに集積されており、一例として
図2、3に示すように青色光感知素子50Bは青色画素に含まれ、赤色光感知素子50Rは赤色画素に含まれる。
電荷貯蔵所55は緑色画素のみに示したが、青色画素及び赤色画素も青色光感知素子50Bと連結される電荷貯蔵所、及び赤色光感知素子50Rと連結される電荷貯蔵所をそれぞれ含むことができる。
【0047】
青色光感知素子50B、赤色光感知素子50Rは、光をセンシングし、センシングされた情報は伝送トランジスタにより伝達され、緑色画素の電荷貯蔵所55は後述する有機光電素子100と電気的に連結されており、電荷貯蔵所55の情報は伝送トランジスタにより伝達される。
半導体基板110の上には、さらに金属配線(図示せず)及びパッド(図示せず)が形成される。金属配線及びパッドは、信号遅延を減らすために低い比抵抗を有する金属、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(g)、及びこれらの合金で作られ得るが、これに限定されない。しかし、上記構造に限定されず、金属配線及びパッドが光感知素子(50B、50R)の下部に位置することもできる。
【0048】
金属配線及びパッドの上には下部絶縁層60が形成される。
下部絶縁層60は、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素のような無機絶縁物質又はSiC、SiCOH、SiCO、及びSiOFのような低誘電率(low K)物質で作られ得る。
下部絶縁層60は、電荷貯蔵所55を露出するトレンチを有する。トレンチは充填材で満たされ得る。
下部絶縁層60の上には、色フィルタ層70が形成される。
色フィルタ層70は、青色画素に形成される青色フィルタ層70Bと赤色画素に形成される赤色フィルタ層70Rとを含む。本実施形態では緑色フィルタを備えていない例を説明するが、場合によって緑色フィルタを備えることもできる。
【0049】
色フィルタ層70の上には上部絶縁層80が形成される。
上部絶縁層80は、色フィルタ層70による段差を除去して平坦化する。
上部絶縁層80及び下部絶縁層60は、パッドを露出する接触口(図示せず)と緑色画素の電荷貯蔵所55を露出する貫通口85を有する。
【0050】
上部絶縁層80の上には前述した有機光電素子100が形成される。
有機光電素子100は、前述のように第1電極10、吸光層30、吸光補助層35、電荷補助層40、及び第2電極20を含む。
第1電極10と第2電極20は全て透明電極であってもよく、吸光層30、吸光補助層35、及び電荷補助層40は前述したとおりである。
吸光層30及び吸光補助層35は、緑色波長領域の光を選択的に吸収することができ、緑色画素の色フィルタを代替する。
第2電極20側から入射された光は、吸光層30及び吸光補助層35で緑色波長領域の光が主に吸収されて光電変換され、残りの波長領域の光は、第1電極10を通過して光感知素子(50B、50R)によりセンシングされ得る。
【0051】
上述のように緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子が積層された構造を有することによってイメージセンサの大きさを減らして小型化イメージセンサを具現することができる。
また、上述のように有機光電素子100は、吸光補助層35により緑色波長選択性を高めることによって緑色以外の波長領域の光を不要に吸収して発生するクロストークを減らし、感度を高めることができる。
【0052】
図4は、本発明の他の実施形態に係る有機CMOSイメージセンサを概略的に示す断面図である。
本実施形態に係る有機CMOSイメージセンサ300は、上述した実施形態と同様に、光感知素子(50B、50R)、伝送トランジスタ(図示せず)、及び電荷貯蔵所55が集積されている半導体基板110、上部絶縁層80、及び有機光電素子100を含む。
【0053】
しかし、本実施形態に係る有機CMOSイメージセンサ300は、前述した実施形態とは異なり、青色光感知素子50Bと赤色光感知素子50Rとは垂直方向に積層されており、色フィルタ層70が省略される。
青色光感知素子50Bと赤色光感知素子50Rは、電荷貯蔵所(図示せず)と電気的に連結されており、伝送トランジスタにより伝達され得る。青色光感知素子50Bと赤色光感知素子50Rとは、積層深さに応じて各波長領域の光を選択的に吸収することができる。
【0054】
上述のように緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子が積層された構造を有し、赤色光感知素子と青色光感知素子とが積層された構造を有することによって、イメージセンサの大きさをさらに減らして小型化イメージセンサを具現することができる。
又、上述のように、有機光電素子100は、吸光補助層35により緑色波長選択性を高めることによって緑色以外の波長領域の光を不要に吸収して発生するクロストークを減らし、感度を高めることができる。
【0055】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る有機CMOSイメージセンサを概略的に示す斜視図である。
本実施形態に係る有機CMOSイメージセンサは、緑色波長領域の光を選択的に吸収する緑色光電素子と、青色波長領域の光を選択的に吸収する青色光電素子と、赤色波長領域の光を選択的に吸収する赤色光電素子とが積層される構造である。
図5においては、赤色光電素子、緑色光電素子、及び青色光電素子が順次に積層された構造を示したが、これに限定されず、積層順序は多様に変り得る。
【0056】
緑色光電素子は、前述した有機光電素子100であり得、青色光電素子は、互いに向き合う電極と、その間に介在する青色波長領域の光を選択的に吸収する有機物質を含む吸光層とを含み、赤色光電素子は、互いに向き合う電極と、その間に介在する赤色波長領域の光を選択的に吸収する有機物質を含む吸光層とを含む。
【0057】
前述のように緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子と、緑色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子と、青色波長領域の光を選択的に吸収する有機光電素子とが積層された構造を有することによって、イメージセンサの大きさをさらに減らして小型化イメージセンサを具現することができると共に、感度を高め、クロストークを減らすことができる。
イメージセンサは、多様な電子装置に適用され、例えばモバイルホン、デジタルカメラなどに適用され得るが、これに限定されない。
【0058】
次に、実施例を通じて上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。
ただし下記の実施例は、単に説明の目的のためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【0059】
<有機光電素子の製作>
(実施例1)
ガラス基板上にITOをスパッタリングで積層して100nm厚さの下部電極を形成する。
次に、下部電極上にモリブデン酸化物(MoOx、0<x≦3)とアルミニウム(Al)を1:1(wt/wt)の比率に熱蒸着した5nm厚さの電子輸送層を形成する。
次に、電子輸送層上にp型吸光物質として下記の化学式1aで表される化合物(Lumtec社製)とn型吸光物質としてジシアノビニル-テルチオフェン(DCV3T)を1:1の厚さ比で共蒸着して吸光層を形成する。
続いて、吸光層上に下記の化学式1aで表される化合物を熱蒸着して吸光補助層を形成し、その上にモリブデン酸化物(MoOx、0<x≦3)を熱蒸着して電荷補助層を形成する。
続いて、電荷補助層上にITOをスパッタリングで積層して100nm厚さの上部電極を形成して有機光電素子を製作する。
【化5】
【0060】
(実施例2)
吸光層のn型吸光物質としてジシアノビニル-テルチオフェン(DCV3T)の代わりにフラーレン(C60)を用いたことを除いては、実施例1と同様な方法で有機光電素子を製作する。
【0061】
(実施例3)
吸光層のn型吸光物質としてジシアノビニル-テルチオフェン(DCV3T)の代わりにフラーレン(C60)を用い、吸光補助層の前記化学式1aで表される化合物の代わりに下記の化学式1bで表される化合物を用いたことを除いては、実施例1と同様な方法で有機光電素子を製作する。
【化6】
【0062】
化学式1bで表される化合物は次のような方法で合成する。
ボロンサブフラロシアニンクロライド(Aldrich社製)20.0g、トリフェニルシラノール(東京化成社製)32.0g、及びトリフルオロメタンスルホン酸銀(東京化成社製)14.8gを乾燥トルエン150mlで15時間加熱還流する。
ここに塩化メチレン200mlを加えて濾過した後、濾過された溶液を減圧濃縮させてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して化学式1bで表される化合物を得る。
【0063】
(比較例1)
吸光補助層を形成しないことを除いては、実施例1と同様な方法で有機光電素子を製作する。
(比較例2)
吸光補助層を形成しないことを除いては、実施例2と同様な方法で有機光電素子を製作する。
(比較例3)
吸光補助層を形成しないことを除いては、実施例3と同様な方法で有機光電素子を製作する。
【0064】
<評価>
(評価1:外部量子効率(EQE)及び半値幅)
実施例1~3と比較例1~3による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)および半値幅を評価する。
外部量子効率は、IPCE measurement system(McScience社製、韓国)設備を用いて測定する。
まず、Si光ダイオード(Hamamatsu社製、日本)を用いて設備を補正(calibration)した後、実施例1~3及び比較例1~3による有機光電素子を設備に装着し、波長範囲約350~750nm領域で外部量子効率を測定する。
半値幅は、外部量子効率(EQE)グラフにおいて最大外部量子効率(EQEmax)地点の半分(half)に対応する波長の幅(width)で計算する。
【0065】
その結果は、
図6~
図8と表2のとおりである。
図6は、実施例1と比較例1による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフであり、
図7は、実施例2と比較例2による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフであり、
図8は、実施例3と比較例3による有機光電素子の波長に応じた外部量子効率(EQE)を示すグラフである。
【表2】
【0066】
図6~
図8と表2を参照すると、実施例1による有機光電素子は、比較例1による有機光電素子と比較して同等又はそれより改善された外部量子効率を有すると同時に、半値幅が狭くなって波長選択性が改善されたことを確認できる。
同様に、実施例2による有機光電素子は、比較例2による有機光電素子と比較して同等又はそれより改善された外部量子効率を有すると同時に、半値幅が狭くなって波長選択性が改善されたことを確認でき、実施例3による有機光電素子は、比較例3による有機光電素子と比較して同等又はそれより改善された外部量子効率を有すると同時に、半値幅が狭くなって波長選択性が改善されたことを確認できる。
【0067】
(評価2:クロストーク)
実施例1と比較例1による有機光電素子のクロストークを評価する。
クロストーク評価は、LUMERRICAL(3D)プログラムを用いてシミュレーション評価する。
この時、波長領域をそれぞれ440~480nm(青色)、520~560nm(緑色)、590~630nm(赤色)の3領域に分割してそれぞれの領域に異なる色の光変換素子がどれくらい光学的に干渉するかを評価する。
【0068】
つまり、440~480nmにおいては青色素子領域の感度曲線の積分値を100にし、赤色素子及び緑色素子の感度曲線の440~480nmにおける相対積分値を求めた。
この値が440~480nmにおける赤色素子及び緑色素子の青色領域に対するクロストーク値である。
同様に、520~560nmにおいては緑色領域の感度曲線の積分値を100にし、赤色素子及び青色素子の感度曲線の520~560nmにおける相対積分値を求めた。
この値が520~560nmにおける赤色素子及び青色素子の緑色領域に対するクロストーク値である。
同様に、590~630nmにおいては赤色領域の感度曲線の積分値を100にし、青色素子及び緑色素子の感度曲線の520~560nmにおける相対積分値を求めた。
この値が520~560nmにおける青色素子及び緑色素子の赤色領域に対するクロストーク値である。
【0069】
最後に、上記クロストーク値の平均値を求めて平均クロストーク値を得た。
その結果は下記の表3のとおりである。
【表3】
【0070】
表3を参照すると、実施例1による有機光電素子を適用した場合、比較例1による有機光電素子を適用した場合と比較して約20%以上平均クロストークが減少したことを確認できる。
【0071】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 第1電極
20 第2電極
30 吸光層
35 吸光補助層
40 電荷補助層
50(R、B) (赤色、青色)光感知素子
60 下部絶縁層
70(R、B) (赤、青)色フィルタ層
80 上部絶縁層
85 貫通口
100 有機光電素子
110 半導体基板
300 有機CMOSイメージセンサ