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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】測定器
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023076562
(22)【出願日】2023-05-08
【審査請求日】2024-03-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】山田 計
(72)【発明者】
【氏名】大島 良太
(72)【発明者】
【氏名】長塩 拓馬
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-021747(JP,U)
【文献】特開2005-134220(JP,A)
【文献】特開2013-140129(JP,A)
【文献】特開2021-135104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
G01L 1/00-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象軸に固定される測定器であって、
起歪体と、当該起歪体の両端にそれぞれ連結する第1固定部と第2固定部とを備えた起歪部と、
前記起歪体に固定された歪ゲージと、
前記第1固定部と前記第2固定部とを、前記測定対象軸の軸方向に相互に離れた位置に対して、前記起歪体が前記測定対象軸に接しない形態で固定する固定器具とを備え、
前記起歪体は、前記第1固定部と前記第2固定部の間の中途位置において2回以上折り返す屈曲した形状を有することを特徴とする測定器。
【請求項2】
測定対象軸に固定される測定器であって、
起歪体と、当該起歪体の両端にそれぞれ連結する第1固定部と第2固定部とを備えた起歪部と、
前記起歪体に固定された歪ゲージと、
前記第1固定部と前記第2固定部とを、前記測定対象軸の軸方向に相互に離れた位置に対して、前記起歪体が前記測定対象軸に接しない形態で固定する固定器具とを備え、
前記起歪体は、前記第1固定部側の部分である第1部分と、前記第2固定部側の部分である第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の中央部分を有し、前記第1部分と前記第2部分は、平等強さの梁の形状を有することを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項1または2記載の測定器であって、
前記起歪体は、前記測定対象軸の軸方向に延びる第1の辺と、当該第1の辺より前記測定対象軸に近い位置で前記測定対象軸の軸方向に延びる第2の辺との間の面である側面を有し、前記歪ゲージは前記起歪体の前記側面に固定されていることを特徴とする測定器。
【請求項4】
測定対象軸に固定される測定器であって、
前記測定対象軸の軸方向に延びる第1の辺と、当該第1の辺より前記測定対象軸に近い位置で前記測定対象軸の軸方向に延びる第2の辺との間の面である側面を有する起歪体と、当該起歪体の両端にそれぞれ連結する第1固定部と第2固定部とを備えた起歪部と、
前記起歪体の前記側面に固定された歪ゲージと、
前記第1固定部と前記第2固定部とを、前記測定対象軸の軸方向に相互に離れた位置に対して、前記起歪体が前記測定対象軸に接しない形態で固定する固定器具とを備え、
前記第1固定部と前記第2固定部とが前記測定対象軸に対して固定された状態における前記起歪体の前記測定対象軸の軸方向と垂直な断面は、前記測定対象軸に近づくほど幅が小さくなる形状を備えていることを特徴とする測定器。
【請求項5】
請求項4記載の測定器であって、
前記起歪体の前記側面は、前記第1固定部と前記第2固定部とが前記測定対象軸に対して固定された状態において当該側面の各部分が測定対象軸の周方向と直交する平面であることを特徴とする測定器。
【請求項6】
測定対象軸に固定される測定器であって、
第1ブロックと第2ブロックとを備え、前記第1ブロックと前記第2ブロックと前記測定対象軸を間に挟んで締結することにより前記測定対象軸に固定される第1把持部と、
第3ブロックと第4ブロックとを備え、前記第3ブロックと前記第4ブロックと前記測定対象軸を間に挟んで締結することにより、前記第1把持部と前記測定対象軸の軸方向に離れた位置において前記測定対象軸に固定される第2把持部と、
前記第1ブロックと前記第3ブロックとを前記測定対象軸の軸方向に連結する第1起歪部と、
前記第2ブロックと前記第4ブロックとを前記測定対象軸の軸方向に連結する連結する第2起歪部と、
前記第1起歪部と前記第2起歪部の少なくとも一方に固定された歪ゲージとを備え、
前記第1把持部と前記第2把持部を前記測定対象軸に固定することにより、当該測定器は前記測定対象軸に固定され、
前記第1ブロックと前記第2ブロックと前記第3ブロックと前記第4ブロックの、当該測定器が前記測定対象軸に固定されたときに当該測定対象軸と当接する面は、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該測定対象軸の軸方向と当該測定対象軸の当該面に向かう径方向との双方に直交する方向からみて、前記軸方向の中央部が前記測定対象軸の方向に膨らんだ曲面となっていることを特徴とする測定器。
【請求項7】
請求項6記載の測定器であって、
前記第1ブロックと前記第3ブロックとを連結する少なくとも2つの前記第1起歪部と、
前記第2ブロックと前記第4ブロックとを連結する少なくとも2つの前記第2起歪部とを備え、
前記歪ゲージは、前記2つの第1起歪部と前記2つの第2起歪部のうちの少なくともいずれか一つに固定され、
前記2つの第1起歪部は、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第1起歪部が前記測定対象軸の軸方向に平行して延び、
前記2つの第2起歪部は、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第2起歪部が前記測定対象軸の軸方向に平行して延びることを特徴とする測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、回転軸のトルクを測定する測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転軸のトルクを計測する測定器としては、図10に示す測定器が知られている(たとえば、特許文献1)。
図10aは回転軸の軸方向と直交する方向に見た測定器の構成を、図10bは回転軸の軸方向に見た測定器の構成を示しており、この測定器は、回転軸1000を挟持する2分割された第1上台座1011と第1下台座1012よりなる第1取付台座1013と、第1取付台座1013による挟持面から軸方向に所定距離だけ離隔された位置で回転軸1000を挟持する2分割された第2上台座1021と第2下台座1022よりなる第2取付台座1023と、第1取付台座1013と第2取付台座1023のそれぞれに両端が固定される梁状の起歪部1030と、起歪部1030の側面の中間部に添着した歪ゲージ1031を備えており、歪ゲージ1031で検出した起歪部1030の曲げ歪み量より、回転軸1000のトルクを検出している。
【0003】
また、本発明に関する技術としては、形状によって梁に加わる曲げ応力を均一化する平等強さの梁の各種形状が知られている(たとえば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実登3029548号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hitopedia、”平等強さの片持ちはり”、[online]、[令和5年3月23日検索],インターネット <URL:https://hitopedia.net/%E5%B9%B3%E7%AD%89%E5%BC%B7%E3%81%95%E3%81%AE%E7%89%87%E6%8C%81%E3%81%A1%E3%81%AF%E3%82%8A/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10に示した測定器によれば、回転軸100の捻れを梁状の起歪部1030の曲げ歪みに変換し、曲げ歪み量から回転軸のトルクを検出する構成となっているが、回転軸に捻れが発生したときに1030に加わる力の大きさや、歪ゲージ1031を添着した面に対する方向が、内周側と外周側とで異なるため、実際には起歪部1030が捻れるように変形する。そして、この影響によって、精度良くトルクを検出できなくなることがある。
【0007】
また、図10に示した測定器によれば、起歪部1030の剛性が大きいと、起歪部1030を介して加わる力により、第1取付台座1013や第2取付台座1023が回転軸1000に対して滑動してしまい、精度良くトルクを検出できなくなることがある。
一方で、起歪部1030の剛性を小さくして変形しやすくすることができるならば、曲げ応力が低減されるためトルク検出のレンジの上限を大きく設定することができ、変形量が限界を超えるとことで発生する起歪部1030の破損が回避可能となると共に、第1取付台座1013や第2取付台座1023の滑動を抑止できるが、トルク検出の感度は低くなる。
【0008】
そこで、本発明は、回転軸のトルクをより精度良く計測できる測定器を提供することを課題とする。
また、併せて、本発明は、回転軸のトルクを計測する測定器の、所要のトルク検出の感度とレンジの上限の最適化に適した構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、測定対象軸に固定される測定器に、起歪体と、当該起歪体の両端にそれぞれ連結する第1固定部と第2固定部とを備えた起歪部と、前記起歪体に固定された歪ゲージと、前記第1固定部と前記第2固定部とを、前記測定対象軸の軸方向に相互に離れた位置に対して、前記起歪体が前記測定対象軸に接しない形態で固定する固定器具とを備えたものである。
【0010】
ここで、前記起歪体は、前記第1固定部と前記第2固定部の間の中途位置において2回以上折り返す屈曲した形状を備えている。
このように測定器を構成することにより、起歪体の実質的な長さを拡張して、起歪体に加わる応力を小さくすることが可能となる。したがって、起歪体の長さを適当に設定するだけで、トルク検出の感度とレンジの上限のトレードオフの関係を、目的に応じたものに最適化することができる。
【0011】
または、前記起歪体は、前記第1固定部側の部分である第1部分と、前記第2固定部側の部分である第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間の中央部分を有し、前記第1部分と前記第2部分は、平等強さの梁の形状を有するものである。
このように測定器を構成することにより、起歪体の全体の見かけの剛性を変えることなく、ウイークポイントとなる両端の第1部分と第2部分において曲げ応力が1箇所に集中しないように分散することで起歪体の両端部の破損を抑制でき、結果、検出レンジの上限を大きく設定できる。また、この両端の第1部分と第2部分において曲げ応力は一様となるので、歪ゲージを両端部内において任意の位置に設置することができるようになる。
【0012】
または、前記起歪体を、前記測定対象軸の軸方向に延びる第1の辺と、当該第1の辺より前記測定対象軸に近い位置で前記測定対象軸の軸方向に延びる第2の辺との間の面である側面を備えたものとし、前記起歪体の前記側面に前記歪ゲージを固定すると共に、前記第1固定部と前記第2固定部とが前記測定対象軸に対して固定された状態における前記起歪体の前記測定対象軸の軸方向と垂直な断面を、前記測定対象軸に近づくほど幅が小さくなる形状としたものである。
【0013】
このように測定器を構成することにより、内周側と外周側に加わる力の相違によって生じる歪みを歪ゲージの感度がない方向の歪みにし、歪ゲージの検出精度の低下を抑制できる。
また、この場合には、前記起歪体の前記側面を、前記第1固定部と前記第2固定部とが前記測定対象軸に対して固定された状態において当該側面の各部分が測定対象軸の周方向と直交する平面としてよい。
なお、前記起歪体を屈曲した形状として測定器や、前記起歪体の前記第1部分と前記第2部分を平等強さの梁の形状とした測定器においても、前記起歪体を、前記測定対象軸の軸方向に延びる第1の辺と、当該第1の辺より前記測定対象軸に近い位置で前記測定対象軸の軸方向に延びる第2の辺との間の面である側面を備えたものとし、前記起歪体の前記側面に前記歪ゲージを固定してよい。
【0014】
また、前記課題達成のために、本発明は、測定対象軸に固定される測定器に、第1ブロックと第2ブロックとを備え、前記第1ブロックと前記第2ブロックとで前記測定対象軸を間に挟んで締結することにより前記測定対象軸に固定される第1把持部と、第3ブロックと第4ブロックとを備え、前記第3ブロックと前記第4ブロックとで前記測定対象軸を間に挟んで締結することにより、前記第1把持部と前記測定対象軸の軸方向に離れた位置において前記測定対象軸に固定される第2把持部と、前記第1ブロックと前記第3ブロックとを連結する少なくとも2つの第1起歪部と、前記第2ブロックと前記第4ブロックとを連結する少なくとも2つの第2起歪部と、前記2つの第1起歪部と前記2つの第2起歪部のうちの少なくともいずれか一つに固定された歪ゲージとを備えたものである。
【0015】
ここで、前記第1把持部と前記第2把持部を前記測定対象軸に固定することにより、当該測定器は前記測定対象軸に固定され、前記2つの第1起歪部は、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第1起歪部は、前記測定対象軸の軸方向に平行して延び、前記2つの第2起歪部は、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該2つの第2起歪部が前記測定対象軸の軸方向に平行して延びる。
【0016】
このように測定器を構成することにより、第1把持部や第2把持部が測定対象軸の中心軸と直交する軸まわりに回転してしまう挙動の発生を抑制できる。
または、本発明は、前記第1起歪部と前記第2起歪部の数を任意とし、前記第1ブロックと前記第2ブロックと前記第3ブロックと前記第4ブロックの、当該測定器が前記測定対象軸に固定されたときに当該測定対象軸と当接する面を、当該測定器が前記測定対象軸に固定された状態において、当該測定対象軸の軸方向と当該測定対象軸の当該面に向かう径方向との双方に直交する方向からみて、前記軸方向の中央部が前記測定対象軸の方向に膨らんだ曲面としたものである。
【0017】
このように測定器を構成することにより、前記第1ブロックと前記第2ブロックと前記第3ブロックと前記第4ブロックと測定対象軸の接触を点接触として、第1把持部や第2把持部が測定対象軸の中心軸と直交する軸まわりに回転してしまうときの回転中心を固定化できる。そして、これにより、測定対象軸の捻れによって回転してしまった第1把持部や第2把持部が、当該捻れが無くなったあとに、元の状態に復帰することが期待できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、測定器において、回転軸のトルクをより精度良く計測できる。
また、所要のトルク検出の感度とレンジの上限の最適化を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る測定器の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る測定器の使用形態を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る測定器の作用を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る測定器の他の構成例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る測定器の他の構成例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る測定器の他の構成例を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る測定器の他の構成例を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る測定器の他の構成例を示す図である。
図9】本発明の実施形態に係る測定器の他の構成例を示す図である。
図10】公知の測定器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1aに本実施形態に係る測定器を示す。
便宜上、図中に示すように測定器の前後上下左右を定めるものとして、測定器は、前後方向を高さ方向とする中空筒形状の第1把持部1と、前後方向を高さ方向とする中空筒形状の第2把持部2と、第1把持部1と第2把持部2を上下のそれぞれにおいて連結する2本の起歪部3を有する。
【0021】
第1把持部1は、中空円筒形状を2分割した上側部分の形状と下側部分の形状を、それぞれ概ね有する第1上部ブロック11と第1下部ブロック12とを、ボルト4で上下に連結した構造を有し、第2把持部2は、中空円筒形状を2分割した上側部分の形状と下側部分の形状を、それぞれ概ね有する第2上部ブロック21と第2下部ブロック22とを、ボルト4で上下に連結した構造を有する。
【0022】
第1上部ブロック11、第1下部ブロック12、第2上部ブロック21、第2下部ブロック22は同じ形状を有し、測定器に組み込む向きのみが異なる。
そこで、図1bに、第1上部ブロック11を代表にとり各ブロックの構成を示す。
図1b1は第1上部ブロック11の前面を、図1b2は第1上部ブロック11の上面を、図1b3は第1上部ブロック11の下面を、図1b4は第1上部ブロック11の左面を、図1b5は第1上部ブロック11の右面を表す。なお、第1上部ブロック11の後面は前面と同様に表れる。
【0023】
図示するように、第1上部ブロック11の下面の上下左右方向の中央部はV字溝状に上方向に凹んでいる。また、第1上部ブロック11の上面の左右方向中央の位置には、前後方向に通った起歪部3の拘束用の溝111が設けられている。
また、第1上部ブロック11の左右外側の位置に第1下部ブロック12との連結用のボルト4のための上下方向に貫通したボルト穴112とネジ穴113が設けられ、第1上部ブロック11の上面の溝111には、起歪部固定用のネジのネジ穴114が設けられている。
【0024】
次に、2本の起歪部3は、同じ構成を備えている。
便宜上、図1a中の中心軸CXの方向を起歪部3の軸方向、中心軸CXを、中心を通る法線とする円の径方向であって中心軸CXに近づく方向を起歪部3の内方向、当該円の径方向であって中心軸CXから遠ざかる方向を起歪部3の外方向、軸方向および内外方向と直交する方向(当該円の起歪部3の中心角の間の弧の弦の方向)を起歪部3の弦方向として、起歪部3の構成を6面図によって図1cに示す。
【0025】
図示するように起歪部3は、軸方向の両端に設けた2つの固定部31と、2つの固定部31を連結する固定部31より弦方向に対し肉薄である梁状の起歪体32とを有する。
固定部31の内側は起歪部3の拘束用の溝111に嵌まり込む形状を有する。また、固定部31の弦方向の左右の位置には、起歪部固定用のネジを通すボルト穴33が設けられている。
図1cの断面線A-Aによる断面を図1dに示すように、軸方向に見たときの起歪部3の起歪体32の断面は、内側程、弦方向の厚さが中央部に向かって薄くなる楔状の形状を有している。
次に、起歪体32の弦方向の側面には、歪ゲージ34が、1または複数、接着などにより固定される。歪ゲージ34は、図1eに示す内外方向の軸まわりの曲げ歪みを検出するように配置する。また、歪ゲージ34は、望ましくは起歪体32の軸方向の端部よりの位置に配置する。
【0026】
このような、歪ゲージ34としては、たとえば、図1fに示す1素子、単軸の歪ゲージ34を用いることができる。
ここで、図示は省略したが、測定器には、歪ゲージ34を用いた検出回路や、検出回路で検出した値を外部に無線送信する無線通信部や、これらに電力を供給するバッテリなども内蔵されている。
次に、測定器の使用法について説明する。
使用時には、図2aに示すように、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上面の起歪部3の拘束用の溝111に、起歪部3の固定部31を、起歪部3が第1上部ブロック11と第2上部ブロック21を連結するように嵌め込み、嵌め込んだ起歪部3を、ネジ穴114とボルト穴33を用いて、起歪部固定用ネジ5で固定する。また、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の起歪部3の拘束用の溝111に、起歪部3の固定部31を、起歪部3が第1下部ブロック12と第2下部ブロック22を連結するように嵌め込み、嵌め込んだ起歪部3を、ネジ穴114とボルト穴33を用いて、起歪部固定用ネジ5で固定する。
【0027】
そして、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12の間と、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22の間に測定対象の回転軸100が位置するように、各ブロックを配置した上で、図2b1、b2、b3に示すように、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22を、ボルト穴112とネジ穴113を用いて、ボルト4で締結し、測定器を回転軸100に固定する。ここで、測定対象の回転軸100は、たとえば、自動車のドライブシャフトとすることができる。
【0028】
ここで、図2b1は、測定器の上方向からみた測定器と回転軸100の関係を、b2は測定器の左方からみた測定器と回転軸100の関係を、b3は測定器の前方からみた測定器と回転軸100の関係を示している。
上述のように起歪体32の断面は楔状の形状を有しており、図2b1の断面線A-Aによる断面を図2cに示すように、前後方向に見たときに、およそ、起歪体32の左右の面は回転軸100の周方向と垂直な平面であり、左右の面を延長した線は回転軸100の中心を通る。
【0029】
さて、このように測定器を回転軸100に固定した状態で、図3aに示すようにトルクが負荷され回転軸100が捻れると、回転軸100に固定されている各起歪部3の両端の固定部31間に捻れ角の差が発生し、捻れ角の差に応じた歪みが起歪体32に発生する。
この歪みは、図3bに起歪体32の弦方向を横切る側面の変形のようすを誇張して示すように、起歪部3の内外方向の軸まわりの曲げ歪みとして表れ、この曲げ歪みが、各歪ゲージ34を用いた検出回路で検出される。そして、検出された値は、無線通信装置により外部に無線送信され、外部の装置において検出された値をトルクに変換することによりトルクの測定が行われる。ただし、外部の装置は、各歪ゲージ34を用いた検出回路で検出された値より、回転軸100の歪みや応力を測定するものとしてもよい。
【0030】
ここで、回転軸100に捻れが生じたとき、起歪体32の両端部には周方向の力が加わり、この力の大きさは内周側と外周側で異なるものとなる。
また、図3c1に示すように、起歪体32の断面を長方形とした場合には起歪体32の両端部に加わる力の起歪体32の面に対する方向も内周側と外周側で異なるものとなり、力の大きさと方向の相違によって起歪体32の複雑な捻れが発生し、歪ゲージ34を用いた検出の精度が低下する要因となる。
【0031】
一方、本実施形態では、図3c2に示すように、起歪体32の断面を起歪体32の左右の面が回転軸100の周方向とおよそ垂直となる楔状の形状としているので、起歪体32の左右の面に対して加わる力の方向は内周側と外周側でおよそ同じ方向となる。したがって、内周側と外周側での力の大きさの相違は、歪ゲージ34で検出する起歪体32の内外方向の軸まわりの曲げ歪みと垂直な方向の曲げ(周方向のたわみ)を発生させる。そして、この垂直な方向の曲げ歪に対して歪ゲージ34は感度がないので、この方向の曲げ歪みは、歪ゲージ34の検出に影響を与えない。
【0032】
よって、本実施形態によれば、起歪体32に加わる力の内周側と外周側での方向の相違による歪ゲージ34の検出精度の低下を抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態では、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上部を連結する一つの起歪部3と、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の下部を連結する一つの起歪部3との、2つの起歪部3を用いたが、これは、図4a1、a2に示すように、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上部を平行する2つの起歪部3で連結し、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の下部を平行する2つの起歪部3で連結してもよい。
【0033】
また、この場合にも、図4a1の断面線A-Aによる断面を図4a3に示すように、起歪部3の起歪体32の断面形状を左右の面が回転軸100の周方向とおよそ垂直となる楔状としてよい。
このように、各ブロック間を平行に連結するように設けた2本の起歪部3は、平行リンク的に作用し、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の向きを平行に保ち、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の向きを平行に保つ働きをする。
したがって、図4b1に第1上部ブロック11と第2上部ブロック21、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22をそれぞれ1本の起歪部3で連結した場合について示したように、回転軸100の捻れによって、第1把持部1や第2把持部2が回転軸100の中心軸と直交する軸まわりに回転してしまう挙動の発生を、図4b2に示すように抑制することができる。
【0034】
または、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上部を連結する2つの起歪部3や、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の下部を連結する2つの起歪部3を図4a1、a2のように用いることに代えて、2つの起歪部3を一体化した起歪部3を2つ用いてもよい。
【0035】
すなわち、たとえば、図5aの6面図に示すような、起歪部3の両端の固定部31に、平行となるように2つの起歪体32の各端をそれぞれ連結した起歪部3を用い、図5bに示すように、この起歪部3を2つ用いて、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上部と、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の下部とを連結する。
【0036】
なお、この場合にも、図5bの断面線A-Aによる断面を図5cに示すように、起歪部3の起歪体32の断面形状を左右の面が回転軸100の周方向とおよそ垂直となる楔状としてよい。
または、以上の実施形態において、起歪部3として、図6aの6面図に示すような、両端の固定部31の間の中途位置において2回以上折り返す屈曲した形状を有する起歪体32を備えた起歪部3を二つ用いて、図6bに示すように第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上部と、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の下部とをそれぞれ連結してもよい。
【0037】
このような屈曲した形状を有する起歪体32を備えた起歪部3を用いることにより、起歪体32の実質的な長さを拡張して、回転軸100の捻れが発生したときに、起歪体32に加わる応力を小さくすることが可能となる。したがって、起歪体32の長さを適当に設定するだけで、トルク検出の感度とレンジの上限のトレードオフの関係を、目的に応じたものに最適化することができる。
【0038】
なお、この場合にも、図6bの断面線A-Aによる断面を図6cに示すように、起歪部3の起歪体32の断面形状を左右の面が回転軸100の周方向とおよそ垂直となる楔状としてよい。
また、このように屈曲した形状を有する起歪体32を備える場合の起歪体32の形状は、一方の固定部31から他方の固定部31に至るまでに、トータルで0度となるように折れ曲がる形状であれば、図6a、bに示した形状以外としてよい。
たとえば、図6dに示すように、起歪体32と両端の固定部31との連結位置を弦方向について揃えるようにしてもよいし、折返しの回数を3回以上としてもよい
または、以上の実施形態において、起歪部3として、図7aの6面図に示すような、起歪体32の両端部分を平等強さの梁の形状としたものを用いてもよい。
【0039】
図7bは、起歪体32を抜き出して、その形状を示したものであり、この起歪体32の両端の軸方向範囲701の部分である端部の形状は、力Fが加わる方向を高さ方向とする高さ一定の平等強さの梁の形状となっている。また、この起歪体32の両端部の間の軸方向範囲702の部分である中央部は直方体の形状を備えている。
【0040】
起歪体32の全体に渡って、起歪部3の弦方向(高さ方向)の厚みは一定である。また、中央部の内外方向の厚みは一定である。そして、両端部は、内外方向の厚みが、固定部31との連結箇所で中央部の厚みより大きく、連結箇所から離れるほど中央部の厚みまで小さくなる形状を備えている。
【0041】
この両端部の形状は、曲げ応力が均一化する平等強さの梁の形状であり、両端部内において曲げ応力は均一化される。
一方、起歪体32は、一方の固定部31との連結箇所を支持点、梁の中央を力点とする仮想的に二分割した片持ち梁と捉えることができ、起歪体32が直方体などの一様な形状を備えている場合、固定部31との固定点付近で曲げ応力が最大となり、固定部31との固定部31との中間的付近では曲げ応力は小さくなる。併せて、大きく形状変化する起歪体32と固定部31との連結箇所にて応力集中が発生する。したがって、起歪体32の両端部が最も破損の可能性が大きい部分となる。
【0042】
一方、本実施形態では、起歪体32の両端部の形状を平等強さの梁の形状としているので、起歪体32の全体の剛性を大きくすることなく、曲げ応力が1箇所に集中しないように両端部内において分散して起歪体32の両端部の破損を抑制でき、結果、検出レンジの上限を大きく設定できる。また、この両端部内において曲げ応力は一様となるので、歪ゲージ34を両端部内において任意の位置に設置することができるようになる。
【0043】
なお、起歪部3の起歪体32の形状としては、両端部分を平等強さの梁の形状としたものであれば、図7a、bに示した形状以外の形状を用いることができる。
たとえば、図7cに起歪部3の6面図を、図7dに起歪体32の形状を示すように、起歪体32の形状として、力Fが加わる方向と軸方向とに垂直な方向を幅方向とする幅一定の平等強さの梁の形状を用いることもできる。
この形状は起歪体32の全体に渡って、起歪部3の内外方向(幅方向)の厚みは一定である。また、中央部の弦方向の厚みは一定である。そして、両端部は、弦方向の厚みが、固定部31との連結箇所で中央部の厚みより大きく、連結箇所から離れるほど中央部の厚みまで小さくなる形状を備えている。
【0044】
また、以上の実施形態において、第1上部ブロック11、第1下部ブロック12、第2上部ブロック21、第2下部ブロック22の内周側のV字溝状の凹みの回転軸100と接する面を、図8a1の前面図や、図8a1の断面線A-Aによる断面を示した図8a2に示すように、前後方向の中央部が内側に膨らんだ曲面801としてもよい。
【0045】
このような曲面801とすることにより、図8bに黒丸で示すように、第1上部ブロック11、第1下部ブロック12、第2上部ブロック21、第2下部ブロック22と回転軸100の接触を、ほぼ点接触とすることができる。
なお、V字溝状の凹みの回転軸100と接する面の形状としては、前後方向の中央部が内側に膨らんだ曲面801となる形状であれば、球面の一部となる曲面などの他の曲面の形状を用いてよい。
ここで、図8c1に黒塗り潰しの四角形で示すように、V字溝状の凹みの回転軸100と接する面を平面とした場合には、第1上部ブロック11、第1下部ブロック12、第2上部ブロック21、第2下部ブロック22と回転軸100の接触は線状の面接触となる。
そして、このような面接触である場合には、図8c2に示すように、第1把持部1や第2把持部2が回転軸100の中心軸と直交する軸まわりに回転する際の回転中心が定まらず、回転軸100の捻れによって第1把持部1や第2把持部2が回転してしまった場合に、当該捻れが無くなったあとに、第1把持部1や第2把持部2が元の状態に復帰できなくなる。
【0046】
一方、本実施形態によれば、接触はほぼ点接触であるので回転中心は固定となり、回転軸100の捻れによって第1把持部1や第2把持部2が回転してしまった場合でも、当該捻れが無くなったあとに、第1把持部1や第2把持部2が元の状態に復帰できることが期待できる。
【0047】
また、以上の実施形態では、起歪部3を、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の上部と、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の下部とに連結することにより、起歪部3の両端の固定部31を回転軸100に対して固定したが、この固定は起歪部3の固定部31を回転軸100に押圧することにより行ってもよい。
【0048】
たとえば、図9a、bに示すように、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12の内周面に設けた固定用溝901に2つの起歪部3の一方の端部の固定部31を嵌め込み、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22の内周面に設けた固定用溝901に2つの起歪部3の他方の端部の固定部31を嵌め込んだ上で、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12を締結し、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22を締結することにより、第1上部ブロック11と第1下部ブロック12で2つの起歪部3の一方の端部の固定部31を回転軸100との間に挟みこみ、第2上部ブロック21と第2下部ブロック22で2つの起歪部3の他方の端部の固定部31を回転軸100との間に挟みこんで、4つの起歪部3の固定部31を回転軸100に対して固定するようにしてもよい。
【0049】
起歪部3の6面図を図9cに示すように、起歪部3の固定部31は、固定部31が、各ブロックの内周面に設けた固定用溝901と回転軸100との間に挟み込まれて固定されたときに、各ブロックの内周面と起歪体32よりも、内周側に突出する形状を備えており、起歪部3の固定部31を回転軸100に対して固定した状態において、各ブロックや起歪体32は回転軸100と接触しない。
【0050】
なお、この場合にも、図9bの断面線A-Aによる断面を図9dに示すように、起歪部3の起歪体32の断面形状を左右の面が回転軸100の周方向とおよそ垂直となる楔状としてよい。
また、図9a、bでは、図4a1、a2と同様に、第1上部ブロック11と第2上部ブロック21の間に平行する2つの起歪部3を設け、第1下部ブロック12と第2下部ブロック22の間に平行する2つの起歪部3を設けた場合について示したが、起歪部3の数は任意としてよい。
【0051】
また、起歪部3の起歪体32としては、図1c、図5a、図6a、図7a、図7cに示したものを用いるようにしてよい。
【符号の説明】
【0052】
1…第1把持部、2…第2把持部、3…起歪部、4…ボルト、5…起歪部固定用ネジ、11…第1上部ブロック、12…第1下部ブロック、21…第2上部ブロック、22…第2下部ブロック、31…固定部、32…起歪体、33…ボルト穴、34…歪ゲージ、100…回転軸、111…溝、112…ボルト穴、113…ネジ穴、114…ネジ穴、801…曲面、901…固定用溝、1000…回転軸、1011…第1上台座、1012…第1下台座、1013…第1取付台座、1021…第2上台座、1022…第2下台座、1023…第2取付台座、1030…起歪部、1031…歪ゲージ。
【要約】
【課題】回転軸のトルクを計測する測定器のトルク検出の感度と検出レンジ上限の最適化を容易とする。
【解決手段】
起歪部3は、両端に設けた2つの固定部31と、2つの固定部31を連結する梁状の起歪体32とを有する。起歪体32には歪ゲージ34が固定されており、起歪部3の両端の固定部31は、回転軸100に対して後付けされる器具を用いて、回転軸100の軸方向に離れた位置に対して固定される。起歪体32の形状を、両端の固定部31の間の中途位置において2回以上折り返す屈曲した形状として、起歪体32の実質的な長さを拡張して、起歪体32に加わる応力が過大となるのを抑制する。
【選択図】図6
図1
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図10