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特許7554876塩素化炭化水素廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】塩素化炭化水素廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/68 20060101AFI20240912BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240912BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20240912BHJP
   C02F 1/58 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
B01D53/68 120
B01D53/46 ZAB
B01D53/72 200
B01D53/77
B01D53/78
B01D53/75
C02F1/58 R
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023094495
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2020542439の分割
【原出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2023113875
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】15/890,586
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、テリス
(72)【発明者】
【氏名】トゥン、ズースン
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-054284(JP,A)
【文献】特表平10-511601(JP,A)
【文献】特開2016-172654(JP,A)
【文献】特表2016-527162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/68
B01D 53/64
B01D 53/46
B01D 53/72
B01D 53/77
B01D 53/78
B01D 53/75
C02F 1/58
C02F 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するためのプロセスであって、
PO、FeCl及び水を含有する廃棄物流を提供する工程と、
前記廃棄物流を酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される塩基に曝露させて、FePO、Fe(OH)、及びCa(POを含む沈殿物を生成する工程と、
前記沈殿物を前記廃棄物流から分離する工程と、
前記廃棄物流から液体を蒸発させる工程と、
固体CaCl を回収する工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記分離工程後の前記廃棄物流が、CaClと、
500ppm未満の鉄イオン、及び
500ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記分離工程後の前記廃棄物流が、CaClと、
10ppm未満の鉄イオン、及び
10ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記曝露させる工程後の前記廃棄物流のpHが、1~8である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記分離工程後の前記廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比が、1~10である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記分離工程後の前記廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比が、1~2である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記分離する工程が、濾過、沈降、凝集、遠心分離、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、前記沈殿物を前記廃棄物流から分離することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するためのプロセスであって、
塩素化炭化水素、リン酸トリブチル(TBP)及び/又はリン酸トリエチル(TEP)、鉄、FeCl及び/又はFeCl、TBP-FeCl錯体及び/又はTBP-FeCl錯体、並びにTEP-FeCl錯体及び/又はTEP-FeCl錯体のうちの少なくとも1つを含有する、有機物を含有する第1の廃棄物流を提供する工程と、
前記第1の廃棄物流に熱酸化を施して、HPO、FeCl及び水を含有する第2の廃棄物流を生成する工程と、
前記第2の廃棄物流を酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される塩基に曝露させて、FePO、Fe(OH)、及びCa(POを含む沈殿物を生成する工程と、
前記沈殿物を前記第2の廃棄物流から分離する工程と、を含む、プロセス。
【請求項9】
前記分離工程後の前記第2の廃棄物流が、CaCl と、
500ppm未満の鉄イオン、及び
500ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記分離工程後の前記第2の廃棄物流が、CaCl と、
10ppm未満の鉄イオン、及び
10ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相である、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記分離工程後に、
前記第2の廃棄物流から液体を蒸発させる工程と、
固体CaCl を回収する工程と、の追加の工程を更に含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
前記曝露させる工程後に、前記第2の廃棄物流は、20重量%未満の総濃度のFeCl 及びFeCl を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
前記曝露させる工程後に、前記第2の廃棄物流は、20重量%未満の総濃度のH PO を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項14】
前記曝露させる工程後に、前記第2の廃棄物流は、40重量%未満のHClを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
前記分離工程後の前記第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比が、1~10である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項16】
前記分離工程後の前記第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比が、1~2である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項17】
前記分離する工程が、濾過、沈降、凝集、遠心分離、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、前記沈殿物を前記第2の廃棄物流から分離することを含む、請求項8に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1.開示の分野
【0002】
本開示は、塩素化炭化水素廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するプロセスに関し、一実施形態では、同時除去に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
【0004】
1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)などの塩素化炭化水素を製造するためのいくつかの商業的プロセスでは、典型的には、鉄粉末、並びにリン酸トリブチル(tributyl phosphate、TBP)及び/又はリン酸トリエチル(triethyl phosphate、TEP)などの触媒が使用される。HCC-240fa及びHCC-250fbを製造するための例示的なプロセスは、米国特許第8,722,946号及び同第8,907,147号に詳述されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
HCC-240faを製造するための1つの例示的なプロセスでは、次の反応(1)に従って、四塩化炭素を塩化ビニルと反応させて、HCC-240faを形成する。
CCl+CH=CHCl→CCl-CH-CHCl(HCC-240fa) (1)
【0006】
HCC-250fbを製造するための1つの例示的なプロセスでは、次の反応(2)に従って、四塩化炭素をエチレンと反応させて、HCC-250fbを形成する。
CCl+CH=CH→CCl-CH-CHCl(HCC-250fb)
(2)
【0007】
前述の反応(1)及び(2)の各々では、鉄粉末及びTBP又はTEPを使用して、反応触媒、すなわちTBP-FeCl又はTEP-FeClの錯体がその場で生成され得る。
【0008】
前述のプロセスの各々では、触媒は、反応中に形成される高沸点有機不純物を除去し、触媒活性を維持するために、定期的にパージする必要がある。しかしながら、触媒除去は、塩素化炭化水素、TBP及び/又はTEP、鉄、FeCl及び/又はFeCl、TBP-FeCl錯体及び/又はTBP-FeCl錯体、並びにTEP-FeCl錯体及び/又はTEP-FeCl錯体のうちの少なくとも1つを含有する流れを生成する。
【0009】
前述の触媒除去流は、廃棄物流とみなされ、廃棄物流中の塩素化炭化水素及びリン含有有機化合物は、典型的には、熱酸化又は焼却によって破壊される。
【0010】
また、焼却後に高濃度の塩化水素(hydrogen chloride、HCl)、FeCl及び
/又はFeCl、並びにHPOを含有する廃棄物水流が生成され、該当する環境規制に準拠するように、典型的には鉄及び/又はリン酸イオン(Fe3+及び/又はPO 3-)は、流れが排出される前に廃棄物水流から除去される必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)を製造するためのプロセスに由来する廃棄物流などの塩素化炭化水素廃棄物流から、鉄イオン及びリン酸イオンを同時に除去するためのプロセスを提供する。廃棄物流は、塩素化炭化水素、リン酸トリブチル(TBP)及び/又はリン酸トリエチル(TEP)、鉄、FeCl及び/又はFeCl、TBP-FeCl錯体及び/又はTBP-FeCl錯体、並びにTEP-FeCl錯体及び/又はTEP-FeCl錯体のうちの少なくとも1つを含有し、これに熱酸化を施して、塩化水素(HCl)、FeCl及び/又はFeCl、HPO、並びに水のうちの少なくとも1つを含有する第2の水性廃棄物流を生成する。第2の廃棄物流を塩基に曝露させて、FePO、Fe(OH)、及びCa(POからなる群から選択される少なくとも1つの不溶性化合物を含む沈殿物を生成し、沈殿物を第2の廃棄物流から分離して、極めて微量の鉄イオン及びリン酸イオンを含む液相を生成する。
【0012】
その一形態では、本発明は、鉄イオン及びリン酸イオンを廃棄物流から除去するためのプロセスであって、塩化水素(HCl)、FeCl、FeCl、HPO、及び水のうちの少なくとも1つを含有する廃棄物流を提供する工程と、廃棄物流を塩基に曝露させて、FePO、Fe(OH)、及びCa(POからなる群から選択される少なくとも1つの不溶性化合物を含む沈殿物を生成する工程と、沈殿物を廃棄物流から分離する工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0013】
分離工程後の廃棄物流は、CaClと、500ppm未満の鉄イオン、及び500ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相であり得る。あるいは、分離工程後の廃棄物流は、CaClと、10ppm未満の鉄イオン、及び10ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相であり得る。
【0014】
プロセスは、分離する工程の後に、廃棄物流から液体を蒸発させる工程と、固体CaClを回収する工程と、の追加の工程を更に含んでもよい。
【0015】
塩基は、水酸化カリウム(potassium hydroxide、KOH)、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide、NaOH)、酸化カルシウム(calcium oxide、CaO)、水酸化カルシウム(calcium hydroxide、Ca(OH))、及びこれらの組み合わせからなる群から
選択することができる。
【0016】
曝露させる工程後の廃棄物流のpHは、1~8であり得る。分離工程後の第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比は、1~10であり得る。あるいは、分離工程後の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比は、1~2であり得る。
【0017】
分離する工程は、濾過、沈降、凝集、遠心分離、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、沈殿物を廃棄物流から分離することを含み得る。
【0018】
それとは別の形態では、本開示は、鉄イオン及びリン酸イオンを廃棄物流から除去するためのプロセスであって、塩素化炭化水素、リン酸トリブチル(TBP)及び/又はリン酸トリエチル(TEP)、鉄、FeCl及び/又はFeCl、TBP-FeCl錯体及び/又はTBP-FeCl錯体、並びにTEP-FeCl錯体及び/又はTEP-FeCl錯体のうちの少なくとも1つを含有する、有機物を含有する第1の廃棄物流を提供する工程と、第1の廃棄物流に熱酸化を施して、塩化水素(HCl)、FeCl、FeCl、HPO、及び水のうちの少なくとも1つを含有する第2の廃棄物流
を生成する工程と、第2の廃棄物流を塩基に曝露させて、FePO、Fe(OH)、及びCa(POからなる群から選択される少なくとも1つの不溶性化合物を含む沈殿物を生成する工程と、沈殿物を第2の廃棄物流から分離する工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0019】
分離工程後の第2の廃棄物流は、CaClと、500ppm未満の鉄イオン、及び500ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相であり得る。あるいは、分離工程後の第2の廃棄物流は、CaClと、10ppm未満の鉄イオン、及び10ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相であり得る。
【0020】
プロセスは、分離する工程の後に、第2の廃棄物流から液体を蒸発させる工程と、固体CaClを回収する工程と、の追加の工程を更に含んでもよい。
【0021】
塩基は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0022】
施す工程後の第2の廃棄物流は、20重量%未満の総濃度のFeCl及びFeClを含み得、第2の廃棄物流は、20重量%未満の総濃度のHPOを含み得、及び/又は第2の廃棄物流は、40重量%未満のHClを含む。
【0023】
分離工程後の第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比は、1~10であり得るか、又は1~2であり得る。
【0024】
分離する工程は、濾過、沈降、凝集、遠心分離、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、沈殿物を第2の廃棄物流から分離することを含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)を製造するためのプロセスに由来する廃棄物流などの塩素化炭化水素廃棄物流から、鉄イオン及びリン酸イオンを同時に除去するためのプロセスを提供する。廃棄物流は、塩素化炭化水素、リン酸トリブチル(TBP)及び/又はリン酸トリエチル(TEP)、鉄、FeCl及び/又はFeCl、TBP-FeCl錯体及び/又はTBP-FeCl錯体、並びにTEP-FeCl錯体及び/又はTEP-FeCl錯体のうちの少なくとも1つを含有し、これに熱酸化を施して、塩化水素(HCl)、FeCl及び/又はFeCl、HPO、並びに水のうちの少なくとも1つを含有する第2の水性廃棄物流を生成する。第2の廃棄物流を塩基に曝露させて、FePO、Fe(OH)、及びCa(POからなる群から選択される少なくとも1つの不溶性化合物を含む沈殿物を生成し、沈殿物を第2の廃棄物流から分離して、極めて微量の鉄イオン及びリン酸イオンを含む液相を生成する。
【0026】
プロセス中に形成される高沸点有機不純物を除去し、触媒活性を維持するために、前述のプロセスの反応から触媒をパージする際の、本明細書では時折第1の廃棄物流と称される廃棄物流は、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(HCC-240fa)及び/又は1,1,1,3-テトラクロロプロパン(HCC-250fb)を製造するためのプロセスに由来する。
【0027】
この第1の廃棄物流は、塩素化炭化水素、リン酸トリブチル(TBP)及び/又はリ
ン酸トリエチル(TEP)、鉄、FeCl及び/又はFeCl、TBP-FeCl錯体及び/又はTBP-FeCl錯体、並びにTEP-FeCl錯体及び/又はTEP-FeCl錯体のうちの少なくとも1つを含有する。
【0028】
第1の廃棄物流がHCC-240fa及び/又はHCC-250fbプロセスから排出された後の、塩素化炭化水素、TBP、TEP、鉄、FeCl、FeCl、TBP-FeCl錯体、TBP-FeCl錯体、TEP-FeCl錯体、及びTEP-FeCl錯体を含む第1の廃棄物流の構成成分は、廃棄物処理ユニットに送られ、例えば焼却などの熱酸化によって破壊される。
【0029】
焼却からの煙道ガスは、例えば、塩化水素(HCl)の大部分が煙道ガス中に残留するように水を添加することによって、一般に40℃~70℃の温度に冷却され得、任意選択的に、煙道ガス自体が他の手段によって回収され得る一方で、一定量のHCl、酸化鉄((Fe及び/又はFeO)、及び五酸化リン(P/P10)が水中で捕捉されて、前述の成分を含む水性流が形成される。水性流中では、Fe及び/又はFeOは、水中のHClと反応してFeCl及び/又はFeClを形成し、P及び/又はP10は水と反応してHPOを形成する。
【0030】
本明細書では時折第2の廃棄物流と称される、水添加後に生成される水性流は、比較的高濃度の塩化第一鉄(FeCl)及び/又は塩化第二鉄(FeCl)、並びにリン酸水素(HPO)を含み、環境規制に起因して、典型的にはこれを容易に廃棄することができない。第2の廃棄物流はまた、塩化水素(HCl)を含み得る。
【0031】
第2の廃棄物流では、塩化第一鉄(FeCl)及び塩化第二鉄(FeCl)の総濃度は、例えば、0重量%、3重量%、5重量%、若しくは7重量%ほど低いか、又は13重量%、15重量%、17重量%、20重量%ほど高い場合があるか、あるいは0重量%~20重量%、3重量%~17重量%、5重量%~15重量%、又は7重量%~13重量%などの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0032】
また、第2の廃棄物流では、リン酸水素(HPO)の総濃度は、例えば、0重量%、3重量%、5重量%、若しくは7重量%ほど低いか、又は13重量%、15重量%、17重量%、20重量%ほど高い場合があるか、あるいは0重量%~20重量%、3重量%~17重量%、5重量%~15重量%、又は7重量%~13重量%などの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0033】
第2の廃棄物流では、HClの濃度は、例えば、0重量%、1重量%、5重量%ほど低いか、又は10重量%、25重量%、若しくは40重量%ほど高い場合があるか、あるいは0重量%~40重量%、1重量%~25重量%、又は5重量%~10重量%などの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0034】
第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比は、例えば、1~10、1~8、3~7、又は1~2であり得る。
【0035】
次いで、第2の廃棄物流は、塩基若しくは塩基性溶液によって処理されるか、又は塩基又は塩基性溶液を施される。塩基は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、又は酸化カルシウム(CaO)などの少なくとも1つの塩基を含む無機塩基であり得る。塩基性溶液のpHは、7超の任意のpHであり得、塩基性溶液で処理後の第2の廃棄物流のpHは、例えば、1、2、若しくは3ほど低いか、又は8、9、若しくは10ほど高い場合があるか、あるいは1~10、2~9、又は3~8などの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内
であり得る。特定の一実施形態では、塩基性溶液で処理後の第2の廃棄物流のpHは、2.5~8である。
【0036】
塩基を用いる第2の廃棄物流の処理を示す例示的な反応を、以下に記載する。
【0037】
CaOが塩基として使用されるときの、以下の反応(3)~(7)は例示的である。
CaO+HO→Ca(OH) (3)
2HCl+Ca(OH)→CaCl+2HO (4)
FeCl+HPO→FePO(s)+3HCl (5)
2FeCl+3Ca(OH)→2Fe(OH)(s)+3CaCl (6)
2HPO+3Ca(OH)→Ca(PO(s)+6HO (7)
【0038】
CaOが第2の廃棄物流に添加されると、CaOは、反応(3)のように水と反応することによってCa(OH)に変換され、Ca(OH)は、反応(4)のように第2の廃棄物流中のHClと反応して可溶性CaClを形成し、第2の廃棄物流のpHが上昇する。HClは、塩素化炭素の熱酸化を介して生成される。第2の廃棄物流中に存在するHPOの大部分は、無機塩基が添加された後にpHが2.5以上に調整されると、反応(5)のようにFeClと反応して、水に不溶性の固体FePOを生成する。過剰なFeClは、反応(6)のようにCa(OH)と反応して、不溶性Fe(OH)を形成する。少量のHPOは、反応(7)のようにCa(OH)と反応して、Ca(POを生成し得、得られるCa(POは、水にいくらかの溶解度を有する。
【0039】
KOH又はNaOHが塩基として使用されるときの、以下の反応(8)~(11)は例示的である。
HCl+KOH/NaOH→KCl/NaCl+HO (8)
FeCl+HPO→FePO(s)+3HCl (9)
FeCl+3KOH/NaOH→Fe(OH)(s)+3KCl/NaCl (10)
PO+3K(OH)/NaOH→KPO/NaPO+3HO (11)
【0040】
KOH又はNaOHが第2の廃棄物流に添加されると、KOH又はNaOHは、反応(8)のように第2の廃棄物流中のHClと反応して、可溶性KCl又はNaClを形成し、廃棄物流のpHが上昇する。第2の廃棄物流中に存在するHPOの大部分は、無機塩基が添加された後にpHが2.5以上に調整されると、反応(9)のようにFeClと反応して、水に不溶性の固体FePOを生成する。過剰なFeClは、反応(10)のようにKOH又はNaOHと反応して、不溶性Fe(OH)を形成する。少量のHPOは、反応(11)のようにKOH又はNaOHと反応して、KPO/NaPOを生成し、水溶性のKPO/NaPOを生じ得る。
【0041】
本プロセスでは、KOH/NaOHが添加され、生成された固体が分離された後の第2の廃棄物流の液相中の残留リン酸イオン濃度は、CaO又はCa(OH)が使用されるときよりも高く、これは、KPO/NaPOの溶解度がCa(POよりもかなり高いためである。
【0042】
塩基を添加して第2の廃棄物流のpHを上記のレベルに調節するミキサー内に、第2の廃棄物流を放出することによって、第2の廃棄物流を塩基で処理してもよい。かかるプロセスの結果として、固体沈殿物が、液相の第2の廃棄物流中に形成され、この沈殿物は、弱酸又は塩基性pH条件下で水に不溶性である、リン酸鉄(FePO)、水酸化鉄(
Fe(OH))、及びリン酸カルシウム(Ca(PO)のうちの1つ以上を含み、したがって固体として第2の廃棄物流から析出する。
【0043】
任意選択的に、第2の廃棄物流中の、リンイオンに対する鉄イオンのモル比を調節するために、所望に応じて前述の塩基処理工程中に、未使用の塩化第一鉄(FeCl)及び/又は塩化第二鉄(FeCl)を添加してもよい。
【0044】
その後、リン酸鉄(FePO)、水酸化鉄(Fe(OH))、及び/又はリン酸カルシウム(Ca(PO)の固体沈殿物は、濾過、物理的及び/若しくは化学的沈降、凝集、遠心分離、又は前述の技法の組み合わせによって、第2の廃棄物流の液体から分離される。
【0045】
前述の分離後の第2の廃棄物流の液相は、比較的大量の塩化カルシウム(CaCl)、並びに有利には極めて微量の第二鉄及び/又は第一鉄イオン(Fe3+及び/又はFe2+)、及びリン酸イオン(PO 3-)を含むであろう。
【0046】
本明細書では残留鉄とも称される、第2の廃棄物流の液相中に残存する鉄イオンの総量は、例えば、ほんのわずか、すなわち0.01ppm、0.1ppm、1ppm未満、又は多い、すなわち10ppm、50ppm、若しくは500ppm未満、又は0.01~500ppm、0.1~50ppm、若しくは1~10ppmなどの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0047】
本明細書ではリン又は残留リンとも称される、第2の廃棄物流の液相中に残存するリン酸イオンの量は、例えば、ほんのわずか、すなわち0.01ppm、0.1ppm、1ppm未満、又は多い、すなわち10ppm、50ppm、若しくは500ppm未満、又は0.01~500ppm、0.1~50ppm、若しくは1~10ppmなどの前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内であり得る。
【0048】
任意選択的に、例えば、CaClを副生成物として濃縮及び回収するために、処理した第2の廃棄物流の液相から、蒸発によって水を除去してもよい。
【実施例
【0049】
(実施例1)
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、30%のNaOH溶液をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを3.0に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(inductively coupled plasma mass spectrometry、ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ12.5ppm及び18.6ppmであった。
(実施例2)
【0050】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、30%のNaOH溶液をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを4.0に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ1.1ppm及び19.9ppmであった。
(実施例3)
【0051】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.2
1)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、30%のNaOH溶液をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを5.0に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.08ppm及び29.0ppmであった。
(実施例4)
【0052】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、30%のNaOH溶液をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを7.0に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.15ppm及び57.4ppmであった。
(実施例5)
【0053】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、30%のNaOH溶液をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを8.0に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.23ppm及び354.8ppmであった。
(実施例6)
【0054】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを3.2に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.05ppm及び0.74ppmであった。
(実施例7)
【0055】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを5.3に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.02ppm及び0.27ppmであった。
(実施例8)
【0056】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを5.9に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.44ppm及び1.1ppmであった。
(実施例9)
【0057】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを7.7に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した
濾液中のPイオン濃度は、0.47ppmであった。
(実施例10)
【0058】
4.0重量%のFeCl及び2.0重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.21)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを9.3に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.01ppm及び0.37ppmであった。
(実施例11)
【0059】
8.35重量%のHCl、1.55重量%のFeCl、及び0.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.23)を含有する300グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを6.5に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、0.59ppmであった。
(実施例12)
【0060】
6.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを5.8に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、0.49ppmであった。目視観察によると、混合物はゲル状の非流動性固体に変化し、濾過が困難であった。
(実施例13)
【0061】
7.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを6.1に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、0.41ppmであった。目視観察によると、混合物はゲル状の非流動性固体に変化し、濾過が困難であった。
(実施例14)
【0062】
8.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを5.7に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、0.61ppmであった。目視観察によると、混合物は流動性であり、濾過可能であった。
(実施例15)
【0063】
10.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを5.8に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、0.65ppmであった。目視観察によると、混合物は流動性であり、濾過可能であった。
(実施例16)
【0064】
15.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを4.4に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、0.86ppmであった。目視観察によると、混合物は流動性であり、濾過可能であった。
(実施例17)
【0065】
15.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを6.2に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、1.9ppmであった。目視観察によると、混合物は流動性であり、濾過可能であった。
(実施例18)
【0066】
15.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを8.0に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、1.3ppmであった。目視観察によると、混合物は流動性であり、濾過可能であった。
(実施例19)
【0067】
20.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを7.3に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のPイオン濃度は、2.0ppmであった。目視観察によると、混合物は流動性であり、濾過可能であった。
(実施例20)
【0068】
15.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを4.3に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ0.21ppm及び0.12ppmであった。
(実施例21)
【0069】
15.0重量%のHCl、9.87重量%のFeCl、及び3.76重量%のHPO(Fe/Pモル比=1.59)を含有する200グラムの水溶液を500mLのガラスビーカーに添加した。撹拌しながら、CaO粉末をゆっくりとビーカーに添加して、溶液pHを9.6に調節した。次いで、混合物を濾過し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって測定した濾液中のFe及びPイオン濃度は、それぞれ141ppm及び4.0ppmであった。
【0070】
本明細書で使用するとき、「前述の値のうちの任意の2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちの任意の2つ
から選択され得ることを意味する。例えば、1対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択されてもよい。
【0071】
本開示を例示的な設計に関するものとして説明したが、本開示は、本開示の趣旨及び範囲内で更に修正され得る。更に、本出願は、本開示が関連する技術分野において既知の又は慣習的な実践に属する本開示からのかかる逸脱を包含することが意図されている。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するためのプロセスであって、
塩化水素(HCl)、FeCl 、FeCl 、H PO 、及び水のうちの少なくとも1つを含有する廃棄物流を提供する工程と、
前記廃棄物流を塩基に曝露させて、FePO 、Fe(OH) 、Ca (PO からなる群から選択される少なくとも1つの不溶性化合物を含む沈殿物を生成する工程と、
前記沈殿物を前記廃棄物流から分離する工程と、を含む、プロセス。
[2]
前記分離工程後の前記廃棄物流が、CaCl と、
500ppm未満の鉄イオン、及び
500ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相である、[1]に記載のプロセス。
[3]
前記分離工程後の前記廃棄物流が、CaCl と、
10ppm未満の鉄イオン、及び
10ppm未満のリン酸イオンのうちの少なくとも1つとを含む液相である、[2]に記載のプロセス。
[4]
前記分離する工程の後に、
前記廃棄物流から液体を蒸発させる工程と、
固体CaCl を回収する工程と、の追加の工程を更に含む、[1]に記載のプロセス。
[5]
前記塩基が、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH) )、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載のプロセス。
[6]
前記曝露させる工程後の前記第2の廃棄物流のpHが、1~8である、[1]に記載のプロセス。
[7]
前記分離工程後の前記第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比が、1~10である、[1]に記載のプロセス。
[8]
前記分離工程後の前記第2の廃棄物流中の、リン酸イオンに対する鉄イオンのモル比が、1~2である、[1]に記載のプロセス。
[9]
前記分離する工程が、濾過、沈降、凝集、遠心分離、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの方法によって、前記沈殿物を前記廃棄物流から分離することを含む、[1]に記載のプロセス。
[10]
廃棄物流から鉄イオン及びリン酸イオンを除去するためのプロセスであって、
塩素化炭化水素、リン酸トリブチル(TBP)及び/又はリン酸トリエチル(TEP)、鉄、FeCl 及び/又はFeCl 、TBP-FeCl 錯体及び/又はTBP-FeCl 錯体、並びにTEP-FeCl 錯体及び/又はTEP-FeCl 錯体のうちの少なくとも1つを含有する、有機物を含有する第1の廃棄物流を提供する工程と、
前記第1の廃棄物流に熱酸化を施して、塩化水素(HCl)、FeCl 、FeCl 、H PO 、及び水のうちの少なくとも1つを含有する第2の廃棄物流を生成する工程と、
前記第2の廃棄物流を塩基に曝露させて、FePO 、Fe(OH) 、及びCa (PO からなる群から選択される少なくとも1つの不溶性化合物を含む沈殿物を生成する工程と、
前記沈殿物を前記第2の廃棄物流から分離する工程と、を含む、プロセス。