(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/06 20060101AFI20240912BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A61K36/06 Z
A61P19/06
(21)【出願番号】P 2023186027
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】202310677580.7
(32)【優先日】2023-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC CCTCC M 2012255
【微生物の受託番号】CCTCC CCTCC M 2019086
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523412108
【氏名又は名称】臨沂大学
(74)【代理人】
【識別番号】100188776
【氏名又は名称】岩崎 吉男
(72)【発明者】
【氏名】王能飛
(72)【発明者】
【氏名】李雪梅
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104804007(CN,A)
【文献】特開2009-249341(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0031480(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110169485(CN,A)
【文献】Journal of Food Science,2020年,Vol.85, No.10,pp.3061-3071,doi: 10.1111/1750-3841.15443
【文献】Acta Bioquimica Clinica Latinoamericana,2005年,Vol.39, No.4,pp.429-434
【文献】J Food Sci Technol,2015年,Vol.52, No.3,pp.1434-1443,DOI 10.1007/s13197-013-1191-8
【文献】Chinese Journal of Physiology,2017年,Vol.60, No.3,pp.158-165,DOI: 10.4077/CJP.2017.BAF452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用であって、前記南極赤色素は
、真菌であるGeomyces sp. wnf-18CまたはGeomyces sp.wnf-15Aの発酵産物
に由来する
ものであり、
前記Geomyces sp. wnf-18Cが中国典型培養物保蔵センター(China Center for Type Culture Collection、CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:M2019086であり、
前記Geomyces sp.wnf-15Aが中国典型培養物保蔵センター(China Center for Type Culture Collection、CCTCC)に寄託され、受託番号がCCTCC NO:M2012255である、ことを特徴とする高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用。
【請求項2】
前記高尿酸血症は高プリン及び/又は酵母フルクトースで誘導されることを特徴とする請求項1に記載の高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオ技術分野に属し、具体的に、高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症は、血液中の尿酸の濃度が高過ぎる(男性>7.0mg/dL、女性>6.0mg/dL)症状であり、主に尿酸が体内で過剰に生成したり、体外にタイムリに排出できなかったりすることによって引き起こされる。高尿酸血症は原発性と続発性に分けられる。原発性高尿酸血症ははしばしば遺伝的欠陥によって引き起こされる。HGPRT遺伝子に欠陥があると、体内の尿酸生成が増加する。尿酸排泄の減少は、原発性高尿酸血症の主な原因である。糸球体による尿酸濾過が減少したり、腎尿細管による尿酸排泄が減少したり、重吸収が増加したりすると、高尿酸血症が発生する。続発性の高尿酸血症は薬物使用や食生活などと密接な関係があり、高プリン食物の摂取や飲酒は高尿酸血症を誘発しやすい。痛風を引き起こすることに加えて、高尿酸血症はしばしば非アルコール性脂肪肝、糖尿病、心血管疾患と併発することが多い。高尿酸血症の症状がないか、尿酸レベルがコントロールできる範囲にあると、主に運動、飲食のコントロール、禁酒などの方式で介入する。尿酸レベルが高い場合や痛風症状がある場合、薬物治療が必要である。薬物の作用方式は尿酸の生成を阻害したり、尿酸の排出を促進したりすることである。例えばアロプリノール、フェブキソスタットは主に尿酸の生成の重要な酵素であるキサンチンオキシダーゼの活性を阻害することによって尿酸の生成を阻害し、ベンズブロマロン、プロベネシドは腎尿細管による尿酸の重吸収を阻害することによって尿酸排出を促進する役割を果たす。これらの薬物が臨床的に使用されるとき、アレルギー、肝腎機能異常など明らかな副作用が存在することが多い。
【0003】
発明特許番号が2015101171967、特許の名称が南極真菌発色化合物である特許発明には、南極の土壌から単離された真菌Geomyces sp.wnf-15A(phy)が開示されており、該菌株を発酵させて南極赤色素を生産することができ、発明特許番号が2019101866038、特許の名称が地糸カビ変異株及びその使用である特許発明には、菌株Geomyces sp.wnf-15A(phy)の変異体が開示されており、前記変異体によって生産された赤色素色素の能力が向上し、前記南極赤色素の色価が高く、着色能力が良く、安全性が高く、ひいては抗酸化ヘルスケア機能をも備え、食品業界で食品添加物として使用できる。しかし、該化合物の医薬的価値は発見されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的問題は、高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のような技術的手段によって実現される。
【0006】
高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用であって、前記南極赤色素は真菌Geomyces sp. wnf-18CまたはGeomyces sp.wnf-15Aの発酵産物に由来する。
【0007】
さらに、前記高尿酸血症は高プリン及び/又は酵母フルクトースで誘導される。
【0008】
本発明は、高プリンと酵母フルクトースで誘導される高尿酸血症を治療または予防するための前記南極赤色素を含む薬物をさらに提供し、前記南極赤色素は真菌Geomyces sp. wnf-18CまたはGeomyces sp.wnf-15Aの発酵産物から由来する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は従来の技術と比べて、有益な効果は、以下の通りである。
【0010】
本発明の南極赤色素は高プリンで誘導される高尿酸血症に対して良好な治療効果を有するため、該色素は高プリンで誘導される高尿酸血症薬物の製造に使用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】高尿酸血症マウスの生存率に対する南極赤色素の影響の棒グラフである。
【
図2】高尿酸血症マウスの生存率に対する南極赤色素の影響の線状図である。
【
図3】フルクトース+酵母パウダーで誘導される高尿酸血症マウスの14日間の尿酸レベルに対する南極赤色素の影響図である。
【
図4】フルクトース+酵母パウダーで誘導される高尿酸血症マウスの21日間の尿酸レベルに対する南極赤色素の影響図である。
【
図5】フルクトース+酵母パウダーで誘導される高尿酸血症マウスの28日間の尿酸レベルに対する南極赤色素の影響図である。
【
図6】フルクトース+酵母パウダーで誘導される高尿酸血症マウスの35日間の尿酸レベルに対する南極赤色素の影響図である
。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を通じて図面を参照して本発明の技術的解決手段をさらに解釈するが、本発明の保護範囲は実施例のいかなる形式にも制限されない。
【0013】
以下の実施例で用いられる南極赤色素は、出願番号がCN201910186603.8(公開番号がCN110257253A)で、発明の名称が地糸カビ変異株及びその使用である発明に開示された方法によって製造され、該発明の変異株は、原始菌株に基づいて変異されたものであり、出願番号がCN201510117196.7(公開番号がCN104804007A)で、発明の名称が南極真菌発色化合物である発明には原始菌株が開示されており、そして、南極赤色素が開示されている。
【0014】
実施例1:南極赤色素の毒性実験
【0015】
1、サンプルの性状及び処理について、
南極赤色素サンプルであり、赤粉末で、4~8℃で、光を避けて保存する。
【0016】
2、実験動物及び試薬について
2.1 実験用ICRマウスは浙江省実験動物センターから提供され、SPFレベルである。実験動物生産許可証番号はSCXK(浙)2019-0002、実験動物使用許可証番号がSYXK(浙)2019-0011である。実験動物飼料は浙江省実験動物センターから提供される。検出環境条件は、温度範囲が20~25℃、相対湿度範囲が40~70%である。
2.2 実験用SDラットは浙江省実験動物センターから提供され、SPFレベルである。実験動物生産許可証番号はSCXK(浙)2019-0002、実験動物使用許可証番号はSYXK(浙)2016-0022である。実験動物飼料は浙江省実験動物センターから提供される。検出環境条件は、温度範囲が20~25℃、相対湿度範囲が40~70%である。
2.3 実験試薬:2-アセトアミノフルオレン:Sigma-Aldrich社、ロット番号:STBF2332V;1,8-ジヒドロキシアントラキノン:Sigma-Aldrich社、ロット番号:WXBC4791V;アジ化ナトリウム:北京鼎国生物技術有限責任会社、ロット番号:81G10150;フェナミノスルフ:Chemservice社、ロット番号:285-75B;マイトマイシンC:Roche社、ロット番号:M0308A;シクロホスファミド:Sigma-Aldrich社、ロット番号:WXBC5093V。
【0017】
3、動物実験について
3.1 マウスの毒性実験:健康、成熟、体重18~22gのICRマウス20匹を選択し、雌雄は半々である。投与量と投与方法:限定法に従って10.0g/kgBWの投与量群を設定する。サンプル100gを秤量し、蒸留水を溶媒としてサンプル液200mLを調製する。マウスは胃内投与前に6時間断食(禁水なし)し、20mL/kgBWの胃内投与容量で1回胃内投与し、2時間後に動物は自由に食べる。
胃内投与後、マウスの一般的な状態、中毒症状及び死亡状況を観察する。観察期間は14日間であり、マウス実験の開始時及び終了時の体重を記録し、試験の終わりにマウスを殺し、肉眼解剖学的検査を行い、マウスの肉眼的病理学の変化を記録する。
3.2 ラット試験:健康、成熟、体重180~220gのSDラット20匹を選択し、雌雄は半々である。限定法に従って10.0g/kgBWの投与量群を設定する。サンプル100gを秤量し、蒸留水を溶媒として200mLのサンプル液を調製する。ラットは胃内投与前に16時間断食(禁水なし)し、20mL/kgBWの胃内投与容量で1回胃内投与し、3時間後に動物は自由に食べる。
胃内投与後、ラットの一般的な状態、中毒症状及び死亡状況を観察する。観察期間は14日間であり、ラット実験の開始時及び終了時の体重を記録し、試験の終わりにラットを殺し、肉眼解剖学的検査を行い、ラットの肉眼的病理学の変化を記録する。
3.3 哺乳類動物の赤血球小核試験:健康、成熟、体重25~30gのマウス50匹を選択し、雌雄は半々である。マウスをランダムに5つのグループに分け、各グループに10匹であり、雌雄は半々である。実験では1.25、2.5、5.0g/kgBWの3つの投与量群を設定し、それぞれサンプル2.5、5.0、10.0gを秤量し、蒸留水を溶媒としてそれぞれ40mLのサンプル液を調製する。1つの陰性対照群(蒸留水)と1つの陽性対照群(シクロホスファミド40mg/kgBW、シクロホスファミド80mgを秤量し、滅菌生理食塩水を加え、後で使用するために40mLに溶解する)を別途に設定する。マウスを20mL/kgBWの胃内投与容量で経口的に試験対象物を胃内投与し、24時間の間隔で2回胃内投与する。2回目の胃内投与から6時間後に頸部脱臼により動物を屠殺し、胸骨骨髄を採取して骨髄錠剤を作製し、メタノールで固定し、Giemsaで染色する。
観察指標:各動物の骨髓に200個の赤血球を少なくとも観察し、総赤血球(RBC)における多染性赤血球(PCE)の割合をカウントする。各動物に2000個の多染性赤血球を観察して小核多染性赤血球頻度、即ち小核含有細胞率をカウントし、千分率で示す。動物性別にそれぞれ各グループの小核含有細胞率の平均数と標準偏差を統計したところ、Poisson分布を用いて被試験サンプルの各投与量群と陰性対照群の小核含有細胞率を比較する。
【0018】
4、実験結果について
急性経口毒性試験:実験の間、各ラット、マウスに明らかな中毒症状がなく、死亡もなく、肉眼解剖によってラット、マウスの各臓器に病理的な変化がなかった。南極赤色素サンプル(乾燥粉末)は雌雄のラット、マウスの経口LD50でいずれも10.0g/kgBWを超え、実際の無毒レベルである。
哺乳動物赤血球小核試験:雌雄の各投与量群のPCE/RBC比はいずれも陰性対照群の20%以上であり、南極赤色素は細胞毒性がない。陰性対照群と比較し、雌雄の各投与量群の小核含有細胞率はいずれも有意差がなく(P>0.05)、陽性対照群の小核率は陰性対照群より顕著に高く、その差異は顕著な意義がある(P<0.01)。本試験条件では、南極赤色素がマウス骨髓赤血球の小核含有細胞率に顕著な影響を及ぼすことは見られず、今回の検出結果は陰性であった。
【0019】
実施例2 南極赤色素の催奇形性実験
1.1 試験対象物:南極赤色素サンプル、赤色粉末。
1.2 実験動物:浙江省実験動物センターから提供されたSPFレベルである健康、体重180~220gの雌性SDラット100匹、雄性ラット30匹を選択する。実験動物生産許可証番号はSCXK(浙)2019-0002、実験動物使用許可証番号はSYXK(浙)2016-0022である。試験前に3日間適応する。
1.3 動物飼育環境は室温20~25℃、相対湿度40~70%である。ステンレスケージで飼育する。
1.4 動物飼料:浙江省実験動物センターから提供される。
1.5 試験方法:経口的胃内投与。サンプルを異なる投与量需要に応じて蒸留水で異なる濃度に調製し、妊娠中のラットは10mL/kgBWの胃内投与容量で妊娠6~15日目の毎日午前中に1回投与し、対照群に対応する容量の蒸留水を投与する。南極赤色素0.125g/kgBW、0.25g/kgBW、0.5g/kgBWの3つの投与量群を設定し、対照群を別途に設定する。
対照群:蒸留水。
低投与量群:南極赤色素3.75gを秤量し、蒸留水300mLを加えて4℃の冷蔵庫でよく混ぜて保存し、毎週調製する。
中投与量群:南極赤色素7.5gを秤量し、蒸留水300mLを加えて4℃の冷蔵庫でよく混ぜて保存し、毎週調製する。
高投与量群:南極赤色素15gを秤量し、蒸留水300mLを加えて4℃の冷蔵庫でよく混ぜて保存し、毎週調製する。
【0020】
2、動物グループ分けとテスト指標:雌性ラットと雄性ラットを2:1の割合で同じケージに一晩過ごし、毎朝膣の塗抹標本片に精子を見たものを受精ラットと判断し、当日は受胎0日と確定し、体重を記録してランダムに4グループに分け、各グループは19匹以上である。その催奇形性効果を評価するための十分な胎児を得るために、ラットの投与量群当たりの妊娠動物数は16匹以上である。実験ラットは自由に食べたり、飲んだりし、動物の一般症状、行動、中毒徴候及び死亡などの状況を観察して記録する。受胎の6~15日目に、毎日試験対象物を経口的に胃内投与する。ラット妊娠の0、6、9、12、15、20日目に体重を記録する。妊娠の20日目に母鼠を殺し、開腹して子宮を取り出して重量を量り、黄体数、生胎数、吸収胎及び死胎数を検査して記録する。生胎子の体長、尾長、体重及び性別を逐一に記録し、外観奇形の有無を検査する。巣ごとに半分のラット胎児を取って95%エタノールに浸して3週固定し、シャワーを浴びた後2%水酸化カリウムで3日間透明にし、透明にしてから取り出して、アリザリンレッド染色液に浸して染色し、染色効果を定期的に観察し、最後に骨骼奇形を観察し、残りの半分はBouins液(ホルムアルデヒド-酢酸-ピクリン酸溶液)に浸して2週固定し、内臓奇形を観察する。
【0021】
3、データ処理:各観察指標の平均数、標準偏差、発生率などを計算し、PSS13.0統計ソフトウェアパッケージを使用して方差分析、カイ二乗検定を行う。
【0022】
4、実験結果:試験の間、各グループの妊娠中のラットの摂食、飲水に異常は見られず、体重の増加は良好で、中毒症状と徴候も見られず、死亡もなかった。南極赤色素の妊娠中のラットの体重増加に及ぼす影響:結果を表1に示す。
【0023】
各グループに受精ラットを少なくとも19匹割り当て、未妊娠受精ラットを16匹以上除去し、妊娠中のラットのすべての指標が試験統計範囲に入った。各投与量群の妊娠中のラット体重増加の状況が良好であり、受胎ラットの0日目、6日目、9日目、12日目、15日目、20日目の体重、体重増加及び正味体重増加は対照群と比較して統計学的意義がなかった(P>0.05)。
【0024】
【0025】
南極赤色素が妊娠中のラットの生殖機能に及ぼす影響:結果を表2に示す。各投与量群の妊娠中のラットの着床、吸収胎、生胎、死胎、着床前死亡率などの指標は対照群に近く、差別がいずれも統計学的意義がなかった(P>0.05)。本試験条件下で南極赤色素が妊娠中のラットの生殖機能に及ぼす影響が見られない。
【0026】
【0027】
4.1 南極赤色素がラット胎児の成長発育に及ぼす影響:結果を表3に示す。
各投与量群のラット胎児の体長(身長+尾長)、体重及び性別比の指標は対照群と比較して、差別が統計学的意義がなかった(P>0.05)。本試験条件下で妊娠中のラットに南極赤色素を投与しても、ラット胎児の成長発育に及ぼす影響が見られない。
【0028】
【0029】
4.2 南極赤色素がラット胎児奇形に及ぼす影響:結果を表4、5、6に示す。各投与量群と対照群ではラット胎児に外観奇形が発生するのを観察しなく、本試験条件下で、南極赤色素がラット胎児の外観奇形の発生に及ぼす影響が見られない。
【0030】
【0031】
対照群、各投与量群ラット胎児ともに、一部のラット胎児に胸骨欠損、泉門増大の現象が発生するのを観察した。各投与量群の胸骨欠損、泉門増大は対照群と比較して統計学的意義がなかった(P>0.05)。本試験条件下で、南極赤色素がラット胎児骨骼奇形の発生に及ぼす影響が見られない。
【0032】
【0033】
対照群と各投与量群では内臓奇形の発生を観察したラット胎児がなく、本試験条件下で、南極赤色素がラット胎児の内臓奇形の発生に及ぼす影響が見られない。
【0034】
【0035】
5、結論:南極赤色素によるラット催奇形性試験では、南極赤色素0.125g/kgBW、0.25g/kgBW、0.5g/kgBWの3つの投与量群を設定する。受胎ラットに中毒徴候が見られなく、南極赤色素がその体重増加、受胎率、生胎率、吸収胎及び死胎率、着床前死亡率及び巣平均生胎数などにいずれも明らかな損害性の影響がない。各投与量群のラット胎児の体重、体長、性別比は対照群と比較して、差別は統計学的意義がなかった(P>0.05)。本試験では、ラット胎児に外観奇形と内臓奇形が観察されなく、各投与量群のラット胎児の胸骨欠損、泉門増大は対照群と比較して、差別は統計学的意義がなかった(P>0.05)。南極赤色素サンプルは本試験条件下でSDラットに催奇形性効果がない。
【0036】
実施例3 南極赤色素が高プリンで誘導される高尿酸血症モデルに及ぼす影響
【0037】
1、実験動物:Balb/c雄性マウス、6~8週齢、体重16~18g、斯貝福(北京)生物技術有限会社から購入する。青島大学実験動物センターで飼育され、すべてのマウスは病原体のない施設に置かれ、適切な温度と相対湿度を保ち、12時間の光、暗周期であり、自由に飲食と飲水し、毎日きれいなマットを交換する。
【0038】
2、実験薬物:マックリン生化科技有限会社から購入された酵母含浸粉末(Y820625)、アロプリノール(A800424)及びオキソン酸カリウム(P831461)、南極赤色素。
【0039】
3、高尿酸血症モデルの確立とグループ分け:25匹の健康的なBalb/c雄性マウスを無処理対照群、高尿酸血症モデル群、高投与量南極赤色素治療群、低投与量南極赤色素治療群及びアロプリノール治療群にランダムに分け、各グループに5匹となる。南極赤色素、プリン醇、酵母含浸粉末をそれぞれ0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム(0.5%CMC-Na)溶液に均一に混合する。高投与量南極赤色素治療群のマウスに100mg/kg体重比で南極赤色素を胃内投与し、低投与量南極赤色素治療群のマウスに25mg/kg体重比で南極赤色素を胃内投与し、3日間連続して、他のグループは処理せず、無処理群を除いて、残りの4グループにそれぞれ20g/kg体重比で酵母含浸粉末懸濁液(0.4g/匹)を投与し、同時に、高投与量南極赤色素治療群のマウスに100mg/kg体重比で南極赤色素を胃内投与し、低投与量南極赤色素治療群のマウスに25mg/kg体重比で南極赤色素を胃内投与し、アロプリノール治療群に20mg/kg体重比でアロプリノールを胃内投与し、無処理群に等体積の0.5%CMC-Naを胃内投与し、このとき、Day1となり、7日間連続する。Day5からDay7まで、無処理対照群を除いて、残りの4グループにそれぞれオキソン酸カリウム0.1ml(6mg/匹)腹腔内注射する。
【0040】
4、結果から分かるように、無処理対照群とアロプリノール治療群ではマウスの死亡がなく、高尿酸血症モデル群ではマウスが4匹死亡し、低投与量南極赤色素治療群ではマウスが2匹死亡し、高投与量南極赤色素治療群ではマウスが3匹死亡する(
図1)。これから分かるように、南極赤色素の治療後に高尿酸血症マウスの生存率を大幅に向上させることができ、高尿酸血症に一定の改善効果がある。(
図2)。
【0041】
実施例4 南極赤色素がフルクトース+酵母飲食で誘導される高尿酸血症モデルに及ぼす影響
【0042】
1、実験動物:6~8週齢、体重16~18gであるBalb/c雄性マウスは、斯貝福(北京)生物技術有限会社から購入する。青島大学実験動物センターで飼育され、すべてのマウスは病原体のない施設に置かれ、適切な温度と相対湿度を保ち、12時間の光、暗周期であり、自由に飲食と飲水し、毎日きれいなマットを交換する。
【0043】
2、実験試薬及び消耗品:試薬:アロプリノール(A800424、MACKLIN、マックリン)、フルクトース(D809612、MACKLIN、マックリン)、血糖計(950B、yuwell魚躍)、血糖試験紙(591146、yuwell魚躍)、尿酸試薬キット(C012-2-1、南京建成生物工程研究所)。
【0044】
3、モデル化方法:36匹のBalb/c雄性マウスを6グループに分け、各グループに6匹となり、それぞれ無処理群(通常の飲食飲水)、高尿酸モデル群(酵母飲食+10%フルクトース飲水)、高尿酸モデル+アロプリノール群(酵母飲食+10%フルクトース飲水+20mg/kgアロプリノール)、高尿酸モデル+低濃度色素群(酵母飲食+10%フルクトース飲水+10mg/kg南極赤色素)、高尿酸モデル+中濃度色素群(酵母飲食+10%フルクトース飲水+20mg/kg南極赤色素)、高尿酸モデル+高濃度色素群(酵母飲食+10%フルクトース+40mg/kg南極赤色素)である。
【0045】
アロプリノール、南極赤色素を二重蒸留水にそれぞれ溶解して、均一に混合し、0日目から、南極赤色素治療群にそれぞれ10mg/kg、20mg/kg、40mg/kg胃内投与し、アロプリノール治療群に20mg/kg胃内投与し、高尿酸モデル群に等量の二重蒸留水を胃内投与し、毎日1回、35日連続する。0日目から各グループのマウスの体重を記録する。
【0046】
4、血糖記録:0、7、14、21、28、35日目に、マウスを12h断食した後の午後8時に、マウス眼窩後静脈叢からマウスの血液サンプルを採取して血糖検出を行い、各グループのマウスの血糖値を記録する。
【0047】
5、尿酸検出:14、21、28、35日目に、朝8時、マウスを12h断食した後にマウス眼窩後静脈叢からマウスの血液サンプルを採取して尿酸検出を行い、マウス血液の収集が完了した後、室温で1時間静止した後に3000rpmの回転速度で5分間遠心分離し、淡黄色の上層血清を取得し、尿酸試薬キット(C012-2-1、南京建成生物工程研究所)によって検出し、データを
尿酸濃度(μmol/L)={(A測定-A無処理)/(A標準-A無処理)}*C標準品の式によって分析する。
【0048】
6、結果:各グループのマウスの血清尿酸レベル変化分析結果から分かるように(
図3-6参照)、実験を14日行った後、高尿酸モデル群、高尿酸モデル+アロプリノール群、高尿酸モデル+高/中/低濃度色素群のマウスの尿酸レベルはそれぞれ275.1±16.18μmol/L、191.5±21.95μmol/L、192.9±17.05/209.6±29.68/236.4±12.59μmol/Lに達し、対照群と比べていずれも顕著に上昇し(P<0.05)、それぞれ79.10%、24.67%、25.59%、36.46%、53.91%上昇し、モデル化に成功したことを示す。高尿酸モデル+アロプリノール群、高尿酸モデル+高/中/低濃度色素群の尿酸レベルは高尿酸モデル群よりもそれぞれ30.39%、29.88%、23.81%、14.07%降下し、南極赤色素の治療効果があることを示す。
【0049】
21日目に、高尿酸モデル+アロプリノール群、高尿酸モデル+中/低濃度色素群は高尿酸モデル群と比べて、尿酸レベルが顕著に降下し(P<0.05)、それぞれ247.2±48.98μmol/L、249.6±27.02μmol/L、215.9±13.12μmol/Lに降下し、高濃度色素群が293.6±45.2μmol/Lに増加する。
【0050】
28日目に、高尿酸モデル+アロプリノール群、高尿酸モデル+高/中/低濃度色素群は高尿酸モデル群と比べて尿酸レベルが顕著に降下し(P<0.05)、それぞれ264.9±54.87μmol/L、324.8±26.57μmol/L、258.2±15.54μmol/L、239.2±16.63μmol/Lに降下する。35日目に、高尿酸モデル+アロプリノール群(215.8±37.132μmol/L)、高尿酸モデル+高(236.6±37.1μmol/L)/中(241.5±23.98μmol/L)/低(215.7±38.43μmol/L)濃度色素群は高尿酸モデル群と比べて尿酸レベルが顕著に降下し(P<0.05)、高濃度と中濃度色素群の2グループの間の尿酸レベルに有意差がない。低濃度色素は酵母フルクトースによる高尿酸を顕著に降下することができる。
【要約】 (修正有)
【課題】高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における南極赤色素の使用を提供する。
【解決手段】高尿酸血症の治療と予防のための薬物の製造における、真菌Geomyces sp. wnf-18CまたはGeomyces sp.wnf-15Aの発酵産物から由来する南極赤色素の使用である。前記高尿酸血症は高プリン及び/又は酵母フルクトースで誘導される、前記使用である。
【選択図】
図1