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特許7554900光回折素子、光演算装置、及び光回折素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】光回折素子、光演算装置、及び光回折素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240912BHJP
   G06E 3/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B5/18
G06E3/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023500679
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003036
(87)【国際公開番号】W WO2022176555
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2021025681
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】九内 雄一朗
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-232345(JP,A)
【文献】国際公開第2016/113931(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/113930(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002691(WO,A1)
【文献】特表2008-532085(JP,A)
【文献】特表2008-523453(JP,A)
【文献】国際公開第2009/133592(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0048569(US,A1)
【文献】特開2002-275224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0050391(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の平面に沿って配置された複数のマイクロセルであって、各々が複数のサブセルを含む複数のマイクロセルを備え、
各サブセルは、前記特定の平面の面内方向のうち少なくとも1方向に対する屈折率が、所定のn種類(nは、2以上の整数)の数値的に類別される屈折率のうち何れかの屈折率であり、
前記各サブセルは、ガイドを含み、
前記ガイドは、
前記特定の平面上の第1の方向に延伸する第1の部材と、
前記特定の平面上の、前記第1の方向と異なる、第2の方向に延伸する第2の部材と、を有する、
ことを特徴とする光回折素子。
【請求項2】
前記第1の部材と前記第2の部材は、互いに長さが異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光回折素子。
【請求項3】
前記光回折素子は、
複数の前記第1の部材と、
前記複数の前記第1の部材と交差する、複数の前記第2の部材と、を備え、
各サブセルの境界は、
互いに隣接する1対の第1の部材と、
互いに隣接する1対の第2の部材と、
によって、規定され、
各サブセルにおいて、
前記1対の第1の部材と前記1対の第2の部材の一方である、1対の部材は、それぞれ切り欠きを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光回折素子。
【請求項4】
少なくとも一部のサブセルにおいて、
前記1対の第1の部材と前記1対の第2の部材の他方である、1対の部材、の一方の部材が切り欠きを有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の光回折素子。
【請求項5】
前記少なくとも一部のサブセルにおいて、
前記1対の部材の他方の部材は連続している、
ことを特徴とする請求項4に記載の光回折素子。
【請求項6】
前記各サブセルは、全てのサブセルの厚みの平均値に対して、±10%の範囲の厚みを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光回折素子。
【請求項7】
前記各サブセルは、
液晶性を有するメソゲン基を含むブロックポリマーにより構成された第1セグメントと、前記メソゲン基を含まないブロックポリマーにより構成された第2セグメントとが交互に接続されており、且つ、少なくとも総セグメント数が2以上である多元ブロックコポリマーと、を含み、
前記ガイドは、前記多元ブロックコポリマーを自己組織化し、
前記各サブセルにおける前記メソゲン基の配向方向は、前記所定のn種類の屈折率とそれぞれ対応する所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光回折素子。
【請求項8】
前記ガイドの表面は、疎水性及び親水性の何れかの極性を有し、
前記多元ブロックコポリマーにおいて、前記第1セグメント及び前記第2セグメントのうち、一方のセグメントは疎水性であり、他方のセグメントは親水性である、
ことを特徴とする請求項7に記載の光回折素子。
【請求項9】
各サブセルは、ポリマーにより構成されたポリマーマトリクスを含有し、
前記ポリマーの一部には、結合された色素と、ナノ粒子とがこの順番で結合されており、
前記ナノ粒子の屈折率は、前記ポリマーマトリクスの屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光回折素子。
【請求項10】
前記ポリマーマトリクスは、各々が1又は複数のブロックポリマーにより構成された第1セグメント及び第2セグメントであって、各々が疎水性及び親水性を有する第1セグメント及び第2セグメントが交互に結合されており、且つ、総セグメント数が3以上である多元ブロックコポリマーにより構成されており、
各多元ブロックコポリマーにおいて、前記第1セグメント又は前記第2セグメントには、色素と、ナノ粒子とがこの順番で結合されており、
前記ナノ粒子の屈折率は、前記ポリマーマトリクスの屈折率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項9に記載の光回折素子。
【請求項11】
前記多元ブロックコポリマーは、総セグメント数が3であるトリブロックコポリマーであり、2つの前記第1セグメントと、当該2つの前記第1セグメントの間に介在する第2セグメントと、により構成されている、
ことを特徴とする請求項10に記載の光回折素子。
【請求項12】
各マイクロセルは、所定の波長λを有する光が入射した場合に当該光の位相を当該マイクロセルの屈折率に応じて変化させる、
ことを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の光回折素子。
【請求項13】
前記各マイクロセルのセルサイズは、波長λ以下である、
ことを特徴とする請求項12に記載の光回折素子。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載の光回折素子をN個(Nは、2以上の整数)備え、
各光回折素子の前記複数のマイクロセルが設けられている領域は、重なっている、
ことを特徴とする光演算装置。
【請求項15】
各々が複数のサブセルを含む複数のマイクロセルを備えた光回折素子の製造方法であって、
各サブセルは、液晶性を有するメソゲン基を含むブロックポリマーにより構成された第1セグメントと、前記メソゲン基を含まないブロックポリマーにより構成された第2セグメントとが交互に接続されており、且つ、少なくとも総セグメント数が2以上である多元ブロックコポリマーと、前記多元ブロックコポリマーを自己組織化するガイドと、を含み、
前記ガイドは、
定の平面上の第1の方向に延伸する第1の部材と、
前記特定の平面上の、前記第1の方向と異なる、第2の方向に延伸する第2の部材と、を有し、
前記各サブセルにおける前記メソゲン基の配向方向が所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向になるように、基板の主面に前記ガイドを設ける工程と、
前記ガイドを覆うように前記多元ブロックコポリマーを形成する工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする光回折素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマイクロセルを含む光回折素子と、そのような光回折素子を複数備えた光演算装置と、そのような光回折素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚み又は屈折率が個別に設定された複数のマイクロセルを有し、各マイクロセルを透過した光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行する光回折構造を基板の一方の主面に形成した光回折素子が知られている。ここで、「マイクロセル」とは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。
【0003】
複数の光回折素子を用いた光演算装置には、プロセッサを用いた電気的な演算装置と比べて高速且つ低消費電力であるという利点がある。特許文献1には、入力層、中間層、及び出力層を有する光ニューラルネットワークが開示されている。上述した光回折素子は、例えば、このような光ニューラルネットワークの中間層として利用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第7847225号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光回折素子において、複数(ここでは200×200)のマイクロセルAの厚みを個別に設定する場合、図15のような構成を採用することができる。
【0006】
図15に示した光回折素子110は、透光性を有する層状部材からなる基板111と、光回折構造112とを備えている。光回折構造112は、基板111の一方の主面1111に形成された複数のマイクロセルAにより構成されている。光回折構造112において、マイクロセルAの底面は、正方形である。したがって、光回折構造112のセルサイズは、底面の一辺の長さLと一致する。
【0007】
光回折構造112においては、複数のマイクロセルAの厚みを個別に設定することによって、各マイクロセルAを透過する各信号光LSの位相変化量を設定する。光回折構造112は、各マイクロセルAの厚みに応じて位相を変化させられる各信号光LSを相互に干渉させる。これにより、光回折素子112は、予め定められた演算を光学的に実行する。なお、図15においては、拡大して図示しているマイクロセルAについてのみ信号光LSを図示している。
【0008】
以上のように、複数のマイクロセルの厚みを個別に設定する方式の光回折素子は知られているものの、複数のマイクロセルの屈折率を個別に設定する方式の光回折素子は知られていない。
【0009】
本発明の目的は、複数のマイクロセルの屈折率を個別に設定する方式の光回折素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光回折素子においては、特定の平面に沿って配置された複数のマイクロセルであって、各々が複数のサブセルを含む複数のマイクロセルを備え、各サブセルは、前記特定の平面の面内方向のうち少なくとも1方向に対する屈折率が、所定のn種類(nは、2以上の整数)の屈折率のうち何れかの屈折率である、構成が採用されている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光演算装置においては、上述した一態様に係る光回折素子をN個(Nは、2以上の整数)備え、各光回折素子の前記複数のマイクロセルが設けられている領域は、重なっている、構成が採用されている。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光回折素子の製造方法は、各々が複数のサブセルを含む複数のマイクロセルを備えた光回折素子の製造方法である。本製造方法においては、各サブセルは、液晶性を有するメソゲン基を含むブロックポリマーにより構成された第1セグメントと、前記メソゲン基を含まないブロックポリマーにより構成された第2セグメントとが交互に接続されており、且つ、少なくとも総セグメント数が2以上である多元ブロックコポリマーと、前記多元ブロックコポリマーを自己組織化するガイドと、を含み、前記各サブセルにおける前記メソゲン基の配向方向が所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向になるように、基板の主面に前記ガイドを設ける工程と、前記ガイドを覆うように前記多元ブロックコポリマーを形成する工程と、を含んでいる、構成が採用されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、複数のマイクロセルの屈折率を個別に設定する方式の光回折素子及び光演算装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る光回折素子における複数のマイクロセルの配置を示す模式図である。(b)は、(a)に示した光回折素子の断面を示す模式図である。
図2図1に示した光回折素子の各マイクロセルにおける複数のサブセルの配置を示す模式図である。
図3】(a)は、図2に示したサブセルの模式図である。(b)は、(a)に示したサブセルに含まれるジブロックコポリマーを示す模式図である。
図4】(a)は、図3の(b)に示したジブロックコポリマーの構造式である。(b)は、(a)に示したジブロックコポリマーの第1セグメントに含まれるメソゲン基の構造式である。
図5】(a)~(d)は、図3の(a)に示すサブセルの第1の変形例を示す模式図である。
図6】(a)~(d)は、図3の(a)に示すサブセルの第2の変形例を示す模式図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る光演算装置の断面を示す模式図である。
図8】(a)は、第1の参考形態に係る構造体の斜視図であり、(b)は、(a)に示した構造体の一部を拡大した模式図であり、(c)は、(a)に示した構造体が含有する2つのトリブロックコポリマーの模式図である。
図9】(a)は、図8の(b)及び(c)に示したトリブロックコポリマーの構造式である。(b)は、図8の(b)及び(c)に示した色素の構造式である。(c)は、図8の(b)及び(c)に示した架橋材の構造式である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る光回折素子の斜視図である。
図11図10に示した光回折素子に含まれるマイクロセルの斜視図である。
図12】本発明の第2の参考形態に係るゲルの模式図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る製造方法のフローチャートである。
図14】(a)~(e)は、図13に示した製造方法に含まれる各工程にけるゲル又は構造体の模式図である。
図15】従来の光回折素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕`
本発明の第1の実施形態に係る光回折素子10について、図1図5を参照して説明する。図1の(a)は、光回折素子10における複数のマイクロセル11ijの配置を示す模式図である。なお、i,jの各々は、それぞれ、1≦i,j≦3を満たす整数である。図1の(b)は、光回折素子10のA-A’断面(図1の(a)参照)を示す模式図である。図2は、マイクロセル11ijにおける複数のサブセルの配置を示す模式図である。図3の(a)は、サブセル1231の模式図である。図3の(b)は、サブセル1231に含まれるジブロックコポリマー12P31を示す模式図である。図4の(a)は、ジブロックコポリマー12Pの構造式である。図4の(b)は、ジブロックコポリマーのセグメントS1に含まれるメソゲン基の一例の構造式である。
【0016】
なお、図1においては、光回折素子10を構成する基板101,102の主面がxy平面と平行になるように、且つ、基板101,102の法線方向がz軸方向となるように直交座標系を定めている。また、xy平面内において、マトリクス状に配置されているマイクロセル11ijの行に平行な方向及び列に平行な方向の各々を、それぞれ、x軸方向及びy軸方向と定めている。また、信号光LS,LS図1の(b)参照)の伝搬方向をz軸正方向と定め、各マイクロセル11ijにおいて列番号及び行列番号の各々が増える方向を、ぞれぞれ、x軸正方向及びy軸正方向と定めている。
【0017】
図2及び図3に示す座標系は、図1に示す座標系と同様である。
【0018】
<光回折素子の概要>
光回折素子10は、各マイクロセル11ijの屈折率を個別に設定することによって、各マイクロセル11ijを透過する各信号光の位相変化量を設定するように構成されている。波長λは、光回折素子の設計段階において、その用途などに応じて、360nm以上1000μm以下の帯域内において適宜定めることができる。この帯域は、可視域(360nm以上830nm未満)、近赤外域(830nm以上2μm未満)、中赤外域(2μm以上4μm未満)、及び、遠赤外域(4μm以上1000μm以下)により構成されている。本実施形態では、信号光LS,LSの波長λとしてλ=400nmを採用している。波長λは、360nm以上1000μm以下の帯域内に含まれる波長のうち少なくとも一部の波長であってもよい。
【0019】
図1の(b)においては、光回折素子10に入射する信号光を一括して信号光LSとし、光回折素子10から出射する信号光を一括して信号光LSとしている。
【0020】
光回折素子10に入射した信号光は、各マイクロセル11ijを透過するときに、各マイクロセル11ijの屈折率に応じてその位相を変化させられる。光回折素子10は、各マイクロセル11ijから出射された各信号光LSであって、位相を変化させられた各信号光LSを相互に干渉させる。これにより、光回折素子10は、予め定められた演算を光学的に実行する。
【0021】
<光回折素子の構成>
図1の(b)に示すように、光回折素子10は、3行3列のマトリクス状に配置された9つのマイクロセル群11であるマイクロセル1111~1113,1121~1123,1131~1133により構成されている。本実施形態において、光回折素子10は、一対の基板101,102と、スペーサ103と、ジブロックコポリマー12Pとを備えている。マイクロセル群11は、基板101,102、スペーサ103、及びジブロックコポリマー12Pを用いて実現されている。
【0022】
(容器)
基板101は、一対の主面である主面1011,1012を有する層状部材である。基板102は、層状部材であり、基板101の構成と同一である。基板102も、一対の主面である主面1021,1022を有する。基板101及び基板102は、近接する側の主面同士である主面1012と主面1021とが対向するように配置されている。図1の(b)においては、基板101がz軸負方向側に配置されており、基板102がz軸正方向側に配置されている。
【0023】
本実施形態においては、基板101,102を構成する材料として、アクリル系樹脂を採用している。ただし、基板101,102を構成する材料は、λ=400nmである信号光LS,LSに対して透光性を有していればよく、アクリル系樹脂に代表される樹脂に限定されない。また、基板101,102を構成する材料は、石英ガラスに代表されるガラス材料であってもよい。
【0024】
主面1011は、光回折素子10に対して信号光LSが入射する入射面を構成し、主面1022は、光回折素子10から信号光LSを出射する主斜面を構成する。
【0025】
基板101と基板102との間には、所定の厚みを有するスペーサ103が設けられている。スペーサ103の厚みは、互いに対向する基板101と基板102との間隔を規定する。
【0026】
基板101,102と、スペーサ103とは、互いに接合されており、密閉空間を形成する(図1の(b)参照)。この密閉空間には、ジブロックコポリマー12Pが充填されている。したがって、基板101,102と、スペーサ103とは、ジブロックコポリマー12Pを収容する容器を構成している。ジブロックコポリマー12Pについては、図3及び図4を参照して後述する。
【0027】
(ガイド及びジブロックコポリマー)
図1の(b)には図示を省略しているものの、基板101の一対の主面のうちジブロックコポリマー12Pが接する主面である主面1012には、ガイド12gが設けられている。ガイド12gは、波長λである光に対して透光性を有する材料により構成されている。ガイド12gは、例えば、電子線リソグラフィ法を用いて、フォトレジストを硬化させることによって所望のパターンにパターニングすることができる。
【0028】
なお、ガイド12gの厚みは、スペーサ103の厚みと一致していてもよいし、スペーサ103の厚みよりも薄くてもよい。後述するように、ジブロックコポリマー12Pは、ガイド12gをきっかけにして自己組織化することにより配向する。したがって、ガイド12gの厚みがスペーサ103の厚みより薄い場合であっても、略全てのジブロックコポリマー12Pを自己組織化することができる。
【0029】
ジブロックコポリマー12Pは、液晶性を有するメソゲン基MGを含む。メソゲン基MGは、ガイド12gの形状に応じてx軸方向及びy軸方向の何れかに沿うように配向する。なお、ジブロックコポリマー12Pの構造及びメソゲン基MGの配向については、図2を参照して後述する。
【0030】
光回折素子10においては、図1の(a)に示すように、信号光が透過する有効領域を3行3列(すなわち9個)に分割した各領域をマイクロセル11ijと称する。図1の(b)には、マイクロセル11ijのうち、2行目のマイクロセルであるマイクロセル1121~1123が図示されている。また、各マイクロセル11ijを4行4列(すなわち16個)に分割した各領域をサブセル12klと称する。なお、k,lの各々は、それぞれ、1≦k,l≦4を満たす整数である。また、全てのサブセル12klをまとめてサブセル群12と称する。
【0031】
したがって、光回折素子10において、各マイクロセル11ijは、特定の平面の一例である主面1012に沿ってマトリクス状に配置されている。各マイクロセル11ijは、複数のサブセル12klを含む。
【0032】
ここで、「マイクロセル」とは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、セルサイズとは、セルの一辺の長さである。セルサイズの下限は、特に限定されないが、例えば1nmである。
【0033】
本実施形態において、各マイクロセル11ijの厚み、及び、各マイクロセル11ijを構成する各サブセル12klの厚みは、何れも基板101と基板102との間隔(すなわちスペーサ103の厚み)で規定される。したがって、各マイクロセル11ijの厚み及び各サブセル12klの厚みは、略等しい。
【0034】
ガイド12gは、主面1012をz軸方向に沿って平面視した場合に、各々が正方形状である各サブセル12klを区切るように、格子状に設けられている(図2参照)。ただし、各サブセル12klを取り囲むガイド12gの一部には、切り欠きgが設けられている。図3の(a)では、サブセル12klの一例としてサブセル1231を用い、切り欠きgとメソゲン基MGの配向方向とについて説明する。なお、本実施形態においては、各サブセル12klの一辺の長さLとしてL=100nmを採用する。ただし、長さLは、これに限定されず、信号光L,Lの波長λ(本実施形態では400nm)と、各マイクロセル11ijにおける屈折率の階調数とに応じて定めればよい。
【0035】
各マイクロセル11ijを透過する場合に生じえる位相変化量を大きくするために、各マイクロセル11ijの一辺の長さは、λ以下であることが好ましく、λ/2以下であることがより好ましい。本実施形態では、各マイクロセル11ijの一辺の長さとして、λ/2である200nmを採用している。
【0036】
また、本実施形態では、各マイクロセル11ijを16個のサブセル12klに分割している。この構成によれば、各マイクロセル11ijの階調数は、17階調になる。このような構成を採用する場合、L=50nmを採用すればよい。なお、各マイクロセル11ijをN行N列(Nは、2以上の整数)のサブセル群12に分割する場合、各マイクロセル11ijの階調数は、N+1階調となる。
【0037】
サブセル1231を規定するガイド12g31には、2箇所の切り欠きgが設けられている。これら2つの切り欠きgは、何れも、x軸方向と平行な辺の中点近傍に設けられている。以下において、正方形状であるサブセル1231の各辺の長さを長さLとし、切り欠きgの長さを長さLとする。この場合、y軸方向と平行なガイド12g31の長さは、2Lであり、x軸方向と平行なガイド12g31の長さは、2(L-L)である。したがって、サブセル1231においては、y軸方向と平行なガイド12g31の長さがx軸方向と平行なガイド12g31の長さを上回る。
【0038】
このように、各サブセル12klにおいては、x軸方向と平行なガイド12g31の長さと、y軸方向と平行なガイド12g31の長さとが異なるように、4辺のうち少なくとも1辺に切り欠きgが設けられている。
【0039】
上述したように、基板101,102とスペーサ103とにより構成された容器内には、ジブロックコポリマー12Pが充填されている。したがって、図3の(a)に示すように、各サブセル12kl図3の(a)においてはサブセル1231)の内部には、ジブロックコポリマー12Pkl図3の(a)においてはジブロックコポリマー12P31)が充填されている。以下では、ジブロックコポリマー12P31を例として、ジブロックコポリマー12Pklについて説明する。なお、各サブセル12klのうち何れのサブセルに含まれているかを区別しなくてよい場合には、単にジブロックコポリマー12Pと記載する。
【0040】
図3の(b)及び図4の(a)に示すように、ジブロックコポリマー12P31に代表されるジブロックコポリマー12Pは、セグメントS1とセグメントS2とが接続され、且つ、総セグメント数が2であるジブロックコポリマーである。ただし、ジブロックコポリマー12Pは、セグメントS1とセグメントS2とが交互に接続されており、総セグメント数が3以上である多元ブロックコポリマーであってもよい。
【0041】
セグメントS1,S2は、それぞれ、第1のセグメント及び第2のセグメントの一例である。セグメントS1を構成するブロックポリマーは、液晶性を有するメソゲン基MGを含む(図4の(a)及び(b)参照)。図4の(b)に示すメソゲン基MGは、最上段から順番に、5CB(4'-Pentyl-4-cyanobiphenyl)、4'-Hexoxy-4-cyanobiphenyl、4-Butoxyphenylbenzoate、及び4-Pnetanoylphenylbenzoateである。
【0042】
これらのメソゲン基MGは、直鎖状に接続された2つのベンゼン環を含む。本実施形態においては、セグメントS1及びセグメントS2の主鎖が延伸されている方向である主鎖方向に対して、メソゲン基MGのベンゼン環が直線状に接続された方向である側鎖方向が略直交するものとする。図3の(b)においては、矢印Dを用いてこの側鎖方向を示している。
【0043】
ただし、ジブロックコポリマー12Pにおける主鎖方向と側鎖方向とのなす角は、限定されない。一方、セグメントS2を構成するブロックポリマーは、メソゲン基MGを含まない。
【0044】
直鎖状に接続された2つのベンゼン環を含むメソゲン基MGは、その屈折率が異方性を有する。具体的には、ベンゼン環が直線状に接続された側鎖方向に対して偏光方向が平行な直線偏光に対して高い屈折率を示し、側鎖方向と直交する方向に対して偏光方向が平行な直線偏光に対して低い屈折率を示す。図3の(b)においては、メソゲン基MGを示す形状として楕円を用いている。メソゲン基MGを示す楕円において、長軸方向は、高い屈折率を示す偏光方向に対応し、短軸方向は、低い屈折率を示す偏光方向に対応する。
【0045】
本実施形態において、セグメントS1を構成するブロックポリマーは、親水性を有し、セグメントS2を構成するブロックポリマーは、疎水性を有する。また、上述したガイド12gは、疎水性を有するようにその表面が処理されている。
【0046】
そのため、疎水性を有するブロックポリマーからなるセグメントS2は、ガイド12g31の近傍に凝集しようとし、親水性を有するブロックポリマーからなるセグメントS1は、ガイド12g31の近傍から離れようとする。その結果、ジブロックコポリマー12P31は、配列することによって自己組織化しようとする力が作用する。
【0047】
ただし、セグメントS1の極性、セグメントS2の極性、及びガイド12gの極性は、上述した組み合わせに限定されない。光回折素子10において、ガイド12gの表面は、疎水性及び親水性の何れかの極性を有し、セグメントS1及びセグメントS2のうち一方のセグメントが疎水性であり、他方のセグメントが親水性であれば、ジブロックコポリマー12Pを自己組織化することができる。
【0048】
上述したように、サブセル1231においては、y軸方向と平行なガイド12g31の長さがx軸方向と平行なガイド12g31の長さを上回る。したがって、セグメントS2は、ガイド12g31のうちy軸方向と平行な部分に凝集する。その結果、サブセル1231においては、図3の(a)及び(b)に示すようにジブロックコポリマー12P31が配向する。なお、図3の(a)においては、サブセル1231の右側半分の領域Rのみを図3の(b)に拡大して示している。ただし、サブセル1231の左側半分の領域にも同様にジブロックコポリマー12P31が配向している。
【0049】
その結果、サブセル1231は、偏光方向がジブロックコポリマー12P31の側鎖方向(矢印Dの方向)と平行な直線偏光を入射した場合に高い屈折率を示す。
【0050】
図2に示すマイクロセル11ijにおいて、サブセル1231に加えて、サブセル1214,1221,1223,1224,1232,1234,1241は、y軸方向と平行なガイド12gの長さがx軸方向と平行なガイド12gの長さを上回るように構成されている。したがって、これらの8個のサブセルにおいては、側鎖方向が矢印Dと略平行になり、矢印Dの方向と平行な直線偏光を入射した場合に高い屈折率を示す。
【0051】
一方、マイクロセル11ijにおいて、サブセル1211,1212,1213,1222,1233,1242,1243,1244は、x軸方向と平行なガイド12gの長さがy軸方向と平行なガイド12gの長さを上回るように構成されている。したがって、これらの8個のサブセルにおいては、側鎖方向が矢印Dに直交する矢印Dと略平行になり、矢印Dの方向と平行な直線偏光を入射した場合に低い屈折率を示す。
【0052】
以上のように、16個の各サブセル12klは、偏光方向が所定の方向(例えば矢印Dと平行な方向)である直線偏光に対して、屈折率が高い状態である状態「1」及び屈折率が低い状態である状態「0」の何れかをとり得る。換言すれば、各サブセル12klにおけるメソゲン基MGの配向方向は、所定の2種類の配向方向(矢印Dの方向及び矢印Dの方向)のうち何れかの配向方向をとるため、各サブセル12klは、xy平面の面内方向のうちの1方向(たとえば矢印Dの方向)に対する屈折率が2種類のうち何れかの屈折率をとる。そのため、各マイクロセル11ijは、0以上16以下の17階調を表現し得る。
【0053】
なお、各マイクロセル11ijを透過する信号光は、波長λ(=400nm)と同程度のサイズ領域にわたる平均的な屈折率の影響をうける。したがって、信号光からみた場合における各マイクロセル11ijの屈折率は、16個の各サブセル12klの屈折率の平均値となる。
【0054】
なお、メソゲン基MGとして図4の(b)の最上段に示す5CB(4-Cyano-4'-pentylbiphenyl)を用いた場合、偏光方向が矢印Dと平行な直線偏光に対する屈折率と、偏光方向が矢印Dと直交した直線偏光に対する屈折率との差Δが0.2程度である(λ=550nmである場合の例)。そのため、最大の階調値である17階調であるマイクロセル11ijにおいて信号光の1波長分(本実施形態においては400nm)だけ位相を遅らせることを想定した場合、各マイクロセル11ij(すなわち各サブセル12kl)の厚みは、3μm以上であることが好ましい。なお、ジブロックコポリマー12Pを構成するセグメントS1及びセグメントS2のセグメントS1のみにメソゲン基MGが結合されている点を考慮すると、各マイクロセル11ij(すなわち各サブセル12kl)の厚みは、6μm以上であることが好ましい。
【0055】
(製造方法)
図1及び図2に示す光回折素子10の製造方法について簡単に説明する。本製造方法は、ガイド12gを設ける工程と、ジブロックコポリマー12Pを充填する工程と、を含んでいる。
【0056】
ガイド12gを設ける工程は、各サブセル12klにおけるメソゲン基MGの配向方向が所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向になるように、特定の平面を構成する基板101の主面1012にガイド12gを設ける工程である。図2には、主面1012に設けられたガイド12gの一例が図示されている。上述したように、ガイド12gは、例えば、電子線リソグラフィ法を用いて、フォトレジストを硬化させることによって所望のパターンにパターニングすることができる。
【0057】
次に、主面1012及びガイド12gを覆うようにジブロックコポリマー12Pの層を形成する。ジブロックコポリマー12Pの層の形成方法はとくに限定されるものではないが、例えば溶媒に溶解させたジブロックコポリマー溶液をスピンコート法やスプレーコート法のような簡便な方法を用いて均一な層とすることができる。この工程を実施することにより、ガイド12gが設けられた主面1012は、ジブロックコポリマー12Pにより覆われる。これにより、各サブセル12klを構成するジブロックコポリマー12Pであって、メソゲン基MGを含むジブロックコポリマー12Pは、ガイド12gにより自己組織化される。したがって、各サブセル12klにおけるメソゲン基MGの配向方向は、所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向を取る。
【0058】
次に、基板101と基板102との間にスペーサ103を挟むことによって、基板101と基板102との間に空洞を形成することができる。このとき、ガイド12gを設けた主面1012が空洞の側にくるように基板101の向きを定める。このスペーサ103は、アライメントマークとしても用いることもできる。
【0059】
なお、スペーサ103の厚みは均一であることが好ましい。スペーサ103の厚みが均一であることにより、基板101と基板102との間隔を均一にすることができる。
【0060】
また、基板101と基板102の間に空隙が必要ない場合には、スペーサ103を省略することができる。この場合、基板101と基板102との間にスペーサ103が直接介在するように、基板101と、スペーサ103と、基板102とを積層すればよい。
【0061】
<サブセルの変形例>
上述した光回折素子10においては、図2に示すように、各サブセル12klは、メソゲン基MGの配向方向が所定の2種類の配向方向(矢印Dの方向及び矢印Dの方向)のうち何れかの配向方向をとるように、すなわち、xy平面の面内方向のうちの1方向(たとえば矢印Dの方向)に対する屈折率が所定のn種類の屈折率のうち何れかの屈折率をとるように構成されていてもよい。
【0062】
図5の(a)~(d)は、サブセル12klの第1の変形例を示す模式図である。第1の変形例において、各サブセル12klは、メソゲン基MGの配向方向が所定の4種類の配向方向(矢印D,D,D,Dの方向)のうち何れかの配向方向をとるように、すなわち、xy平面の面内方向のうちの1方向(たとえば偏光方向Lpの方向)に対する屈折率が所定の4種類の屈折率のうち何れかの屈折率をとるように構成されている。
【0063】
本変形例においては、各サブセル12klの向きを、図5の(a)~(d)に示した4種類の向きから選択することによって、上記の構成を実現する。なお、図5の(a)に示したサブセル12klの状態は、図3の(a)に示したサブセル1231の状態と同じである。また、図5の(b)~(d)に示したサブセル12klの状態は、図3の(a)に示したサブセル1231を30度ずつ時計回りに回転させることによって得られる。なお、図5の(a)~(d)に示す矢印は、メソゲン基MGの配向方向を表す。
【0064】
また、各サブセル12klは、図6の(a)~(d)に示すように、格子状であるガイド12gklの代わりに、ピン状あるいはドット状であるガイド12gklを用いて、メソゲン基MGを配向させるように構成されていてもよい。例えば、A. Tavakkoli K. G. et. al.,"Templating Three-Dimensional Self-Assembled Structures in Bilayer Block Copolymer Films", Science 08 Jun 2012, Vol. 336, Issue 6086, pp. 1294-1298に記載されているように、ピン状あるいはドット状であるガイド12gklをマトリクス状に配置することによって、メソゲン基MGを配向させることができる。なお、図6の(a)~(d)においては、サブセル12klの輪郭を2点鎖線で図示している。
【0065】
図6の(a)に示した状態において、ガイド12gklは、メソゲン基MGの側鎖方向が偏光方向Lpの方向と平行になるように構成されている。また、図6の(b)~(d)に示したサブセル12klの状態は、図6の(a)に示したサブセル12klを30度ずつ時計回りに回転させることによって得られる。なお、図6の(a)~(d)に示す矢印は、メソゲン基MGの配向方向を表す。
【0066】
なお、図6の(b)及び(c)においては、マトリクス状に配置されたガイド12gklの行方向及び列方向が回転していることを分かりやすく示すため、行方向及び列方向とともに正方形状であるサブセル12klの輪郭(2点鎖線)も回転させている。ただし、ピン状あるいはドット状であるガイド12gklを採用する場合、点線で示すように、サブセル12klの輪郭は回転させずに、ガイド12gklの行方向及び列方向を回転させることもできる。この構成によれば、各サブセル12klを密着させた状態で配置させることができる。すなわち、各サブセル12klに生じ得る隙間をなくすことができる。
【0067】
この構成によれば、マイクロセル11ijのとり得る階調数を増やすことができる。
【0068】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る光演算装置1について、図7を参照して説明する。図7は、光演算装置1の断面を示す模式図である。図7に示すように、光演算装置1は、3個の光回折素子10a,10b,10cを備えている。光回折素子10a,10b,10cは、図1に示す光回折素子10と同一に構成されており、それぞれを区別するために符号の末尾にa,b,cを付したものである。
【0069】
光演算装置1において、光回折素子10c,10b,10aは、各々の複数のマイクロセル11ijが設けられている領域が重なった状態で、この順番で重ねられている。図7には、光回折素子10c,10b,10aの各々の複数のマイクロセル11ijのうち、マイクロセル1121,1122,1123のみが図示されている。
【0070】
光回折素子10aの基板102aと、光回折素子10bの基板101bとは、互いに固定されている。光回折素子10bの基板102bと、光回折素子10cの基板101cとは、互いに固定されている。
【0071】
各光回折素子10a,10b,10cは、あらかじめ定められた演算を光学的に実行する。したがって、光演算装置1は、信号光LSに対してあらかじめ定められた演算を順番に実行した結果を表す信号光LSを出力する。
【0072】
なお、本実施形態において、光演算装置1が備えている光回折素子10a,10b,10cの数N(Nは、2以上の整数)は、3個である。ただし、Nは、3に限定されず、演算の目的などに応じて適宜定めることができる。
【0073】
〔第1の参考形態〕
本発明の第1の参考形態に係る構造体20について、図8及び図9を参照して説明する。図8の(a)は、構造体20の斜視図であり、図8の(b)は、構造体20の一部を拡大した模式図であり、図8の(c)は、構造体20が含有する2つのトリブロックコポリマー21の模式図である。図9の(a)は、トリブロックコポリマー21の一具体例の構造式であり、図9の(b)は、構造体20が含有する色素22の一具体例の構造式であり、図9の(c)は、構造体20が含有する架橋材23の一具体例の構造式である。
【0074】
<構造>
本実施形態において、構造体20の形状は、立方体状である(図8の(a)参照)。ただし、構造体20の形状は、これに限定されない。構造体20の形状は、第5の実施形態において後述する製造方法が含む露光工程(図12及び図13の(b)参照)において実施する露光のパターンに応じて、適宜定めることができる。また、構造体20は、図8の(a)に示す様に3次元的な構造に限定されず、2次元的な構造であってもよい。
【0075】
本実施形態の構造体20においては、1辺の長さLとして、500nmを採用している。したがって、構造体20は、ナノメートルスケールの構造であるナノ構造を有する。ただし、構造体20が有する構造は、ナノ構造に限定されず、マイクロスケールの構造であるマイクロ構造であってもよい。ただし、既存のImpFab法を用いて構造体を製造する場合、構造体のサイズが小さくなればなるほど、脱水・焼結工程において生じる収縮に起因して、形状に歪みが生じやすい。したがって、構造体20及び後述する製造方法M20(図13図14参照)により得られる効果は、構造体20の大きさが小さくなればなるほど顕著になる。具体的には、構造体20及び製造方法M20は、パターンの最小幅が10μm未満の場合に好適に用いることができ、パターンの最小幅が1μm未満の場合により好適に用いることができる。なお、ナノメートルスケールの構造とは、パターンの最小幅が1μm未満である構造を指し、マイクロメートルスケールの構造とは、パターンの最小幅が1mm未満である構造を指す。
【0076】
構造体20は、トリブロックコポリマー21と、色素22と、架橋材23とを含有している(図8の(b)参照)。図8の(c)においては、構造体20が含有する2つのトリブロックコポリマー21を拡大して、模式的に図示している。
【0077】
(トリブロックコポリマー)
多元ブロックコポリマーの一例であるトリブロックコポリマー21は、疎水性を有するセグメント211と親水性を有するセグメント212が交互に結合することによって構成されている(図8の(c)参照)。セグメント211は、第1セグメントの一例であり、セグメント212は、第2セグメントの一例である。
【0078】
本実施形態において、セグメント211及びセグメント212の各々は、1つのブロックポリマーにより構成されている。ただし、セグメント211を構成するブロックポリマーは、疎水性を有し、セグメント212を構成するブロックポリマーは、親水性を有する。セグメント211及びセグメント212の一例については、図9の(a)を参照して後述する。ただし、セグメント211は、疎水性を有する複数のブロックポリマーにより構成されていてもよいし、セグメント212は、親水性を有する複数のブロックポリマーにより構成されていてもよい。
【0079】
また、本実施形態において、トリブロックコポリマー21においては、セグメント211、セグメント212、及びセグメント211がこの順番で結合されている。換言すれば、トリブロックコポリマー21は、2つのセグメント211と、これら2つのセグメント211の間に介在するセグメント212と、により構成されている。したがって、トリブロックコポリマー21の総セグメント数は、3である。ただし、総セグメント数は、3に限定されず、3以上であれば適宜定めることができる。このように、構造体20は、トリブロックコポリマーでなく多元ブロックコポリマーであってもよい。なお、総セグメント数は、奇数であることが好ましく、3であることがより好ましい。
【0080】
後述する製造方法M20においては、構造体20を製造するための中間体(以下において、微細構造製造用ゲルとも称する)としてトリブロックコポリマー21を溶媒(製造方法M20においては水)中において膨潤させることによって得られるポリマーゲル(製造方法M20においてはハイドロゲル)を用いる。総セグメント数が奇数であることによって、トリブロックコポリマー21の両端に同じ極性を有するブロックポリマーが位置する。したがって、ポリマーゲルを形成する場合に、複数のトリブロックコポリマー21の端部同士を容易に凝集させることができる。また、総セグメント数が3であることによって、複数のトリブロックコポリマー21の端部以外の部分が凝集することを防ぐことができる。したがって、ポリマーゲルを構成するポリマーマトリクスのピッチを均一にすることが容易になる。
【0081】
なお、本実施形態のトリブロックコポリマー21は、微細構造製造用ゲルを調製する場合に、溶媒として親水性を有する溶媒の一例である水を用いることを想定している。そのため、トリブロックコポリマー21として、両端にセグメント211が位置するトリブロックコポリマーを採用している。ただし、微細構造製造用ゲルを調製する場合に疎水性を有する溶媒を用いる場合には、トリブロックコポリマー21として、両端にセグメント212が位置するトリブロックコポリマーを採用すればよい。
【0082】
(色素及び架橋材)
図8の(b)及び(c)に示すように、複数のトリブロックコポリマー21のうち少なくとも何れかのトリブロックコポリマー21においては、両端の2つのセグメント211の間に介在するセグメント212に色素22が結合されている。そのうえで、色素22同士は、架橋材23により架橋されている。したがって、複数のトリブロックコポリマー21のうち少なくとも一部のトリブロックコポリマー21同士は、色素22を介して架橋されている。
【0083】
なお、トリブロックコポリマー21として、両端にセグメント212が位置するトリブロックコポリマーを採用する場合、色素22は、2つのセグメント212の間に介在するセグメント211に色素22が結合されていればよい。
【0084】
(ブロックポリマー、色素、及び架橋材の具体例)
トリブロックコポリマー21を構成するセグメント211及びセグメント212の各々を構成するブロックポリマーの一例としては、それぞれ、ポリ(ブチルメタクリレート)(PBMA)及びポリ(メタクリル酸)(PMMA)が挙げられる。図9の(a)に示す具体例においては、左側のセグメント211の重合度nは、n=134であり、セグメント212の重合度mは、m=273であり、右側のセグメント211の重合度kは、k=192である。
【0085】
ただし、セグメント211セグメント212の各々を構成するブロックポリマーは、それぞれ、PBMA及びPMMAに限定されない。セグメント211を構成する他のブロックポリマーとしては、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(オクチルメタクリレート)などのアルキル鎖を有するメタクリレート類、アクリレート類などが好適に用いられるが、これに限定されず、脂環式の官能基やフッ化アルキル等、疎水性の側鎖を有するポリマー類を好適に用いることができる。セグメント212を構成する他のブロックポリマーとしては、ポリ(アクリル酸)などカルボン酸基を有するメタクリレート、アクリレート類が挙げられるが、これらに限定されず、所望の色素と反応することができる官能基を含有したポリマーであることができる。
【0086】
色素22が結合されているセグメントであるセグメント212は、GPC測定によりより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(M)とポリスチレン換算の重量平均分子量(M)の比(M/M)である分子量分散が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、さらには1.2以下であることが最も好ましい。分子量分散が狭いほど、ブロックポリマーの鎖長分布が狭い範囲に収まっていることを意味するため、より均一な編み目構造のハイドロゲルを形成することができる。
【0087】
なお、セグメント212の分子量分散は、製造する構造体20が有するマイクロ構造又はナノ構造におけるパターンの最小幅の大小に応じて、適宜定めればよい。パターンの最小幅が小さければ小さいほど、セグメント212の分子量分散を小さくすることが好ましい。なお、セグメント212と同様に、セグメント211の分子量分散も小さいことが好ましい。セグメント211及びセグメント212は、例えばリビングラジカル重合などの精密重合法を用いて製造することができるので、分子量分散を小さくすることができる。
【0088】
また、セグメント212のブロック成分の割合は、13C-NMRで測定した場合に、80%以上100%以下を満たすことが好ましいく、90%以上であることがより好ましい。ブロック成分の割合は、13C-NMR測定におけるTriadでのシーケンス情報から算出することができる。ここで、ブロック成分の割合は以下のように定義されたものであるとする。
(ブロック成分の割合)
=(すべて同じユニットであるフラクション)/(全フラクション)×100 (%)
【0089】
なお、ブロックポリマーが複数のモノマーから成る場合も、Triad成分がすべて同じであれば上記式の分子にカウントするものとする。例えば、A、Bの2種類のモノマーから成るブロックコポリマーの場合、“AAA”のフラクションと“BBB”のフラクション分子にカウントするが、それ以外の“BAB”や“ABA”など異なるユニットを含むフラクションは上記式の分子にはカウントしない。ブロック成分の割合が80%以上であることによって、より構造が制御された編み目構造のゲルを構築することができる。
【0090】
色素22の一例としては、蛍光色素の1つであるフルオレセイン、フルオレセインのカルボキシル基を置換基Rで置換したもの(図9の(b)参照)が挙げられる。また、置換基Rとしては、後述する架橋材23が用いられる。なお、後述する構造体20の変形例のように、トリブロックコポリマー21同士を架橋しない場合には、置換基Rとしてアミノ基(NH)や、チオール基(SH)や、ビオチンなどを用いることができる。
【0091】
架橋材23は、水性樹脂用架橋材であり、その一例としては、水溶性の骨格を持つジアジドである、1,11-ジアジド-3,6,9-トリオキサウンデカンなどが挙げられる(図9の(c)参照)。架橋剤としてジアジド類などを架橋反応に用いる場合は、色素22に導入する置換基は不飽和結合である二重結合や三重結合を有する官能基を導入することが好ましい。
【0092】
<光回折素子>
本発明の第3の実施形態に係る光回折素子20Aについて、図10及び図11を参照して説明する。図10は、光回折素子20Aの斜視図である。図11は、光回折素子20Aに含まれるマイクロセル202の斜視図である。光回折素子20Aは、図8に示した構造体20の変形例とも言える。
【0093】
光回折素子20Aは、構造体20と同様に、ナノ構造を有する。また、光回折素子20Aは、構造体20と同様に、疎水性を有する第1セグメント211及び親水性を有する第2セグメント212が交互に結合されており、且つ、総セグメント数が3であるトリブロックコポリマーを含有する。
【0094】
(マイクロセル)
ただし、光回折素子20Aが含有するトリブロックコポリマーは、構造体20が含有するトリブロックコポリマー21(図8の(b)及び(c))と比較して、色素22に架橋材23ではなくナノ粒子が結合されている点が異なる。本変形例においては、ナノ粒子を含むマイクロセル202について説明する。マイクロセル202は、トリブロックコポリマーの一部であって、色素22にダイヤモンド製のナノ粒子が結合されている領域である。
【0095】
上述したように、光回折素子20Aが含有するトリブロックコポリマーにおいて、セグメント211及びセグメント212のうち一方のセグメントであって、両端の2つのセグメント211の間に介在するセグメント212には、色素22と、ナノ粒子とがこの順番で結合されている。
【0096】
ナノ粒子は、屈折率がセグメント211及びセグメント212を含むポリマーマトリクスの屈折率よりも大きくなるように構成されている。本変形例では、ナノ粒子として、ダイヤモンドのナノ粒子を採用している。ただし、ナノ粒子を構成する材料は、ダイヤモンドに限定されず、金、銀、銅、及び白金であってもよいし、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化チタン、及びシリカであってもよい。また、これらを単体で用いる必要はなく、これらのブレンドやアロイであってもよい。
【0097】
その結果、トリブロックコポリマーのうち、セグメント212に色素22及びナノ粒子が結合された領域の屈折率は、セグメント212に色素22及びナノ粒子が結合されていない領域の屈折率よりも高くなる。以下において、セグメント212に色素22及びナノ粒子が結合されていない領域を低屈折率部201と称し、ナノ粒子に起因して屈折率が低屈折率部201よりも高い領域をマイクロセル202と称する。
【0098】
低屈折率部201を構成するトリブロックコポリマー21の屈折率は、例えば、1.4である。
【0099】
一方、ナノ粒子の材料として採用しているダイヤモンドの屈折率は、2.42である。マイクロセル202の屈折率は、マイクロセル202におけるナノ粒子の密度に依存する。なお、このナノ粒子の密度は、セグメント212に結合されている色素22の密度と、色素22に結合させるナノ粒子の粒径とに依存する。セグメント212に結合されている色素22の密度が高ければ高いほど、マイクロセル202が包含するナノ粒子の数を増やすことができる。また、ナノ粒子の粒径が大きければ大きいほど、ナノ粒子1つ辺りの体積を増やすことができる。なお、図11を参照して後述するように、マイクロセル202において、サブセル20211,20212,20221,20222ごとに屈折率を異ならせる場合、色素22の密度を制御することにより屈折率を制御すればよい。色素22の密度は、図13及び図14に示す露光工程S13における露光量により制御することができる。露光工程S13における露光量が高ければ高いほど、色素22の密度は高くなる。
【0100】
したがって、マイクロセル202の屈折率は、1以上2.42未満である範囲内において適宜定めることができる。換言すれば、光回折素子20Aにおいて、低屈折率部201とマイクロセル202と屈折率差Δは、0≦Δ≦1.02の範囲において適宜定めることができる。
【0101】
図15に示す光回折素子110においては、マイクロセルAを構成する樹脂の屈折率が1.5であるため、マイクロセルAの周囲を取り囲む空気(屈折率1)との屈折率差は、およそ0.5となる。したがって、光回折素子20Aは、光回折素子110と比較して、マイクロセル202の厚みを薄くできる。
【0102】
本実施形態において、低屈折率部201の形状は、直方体状のブロックである。低屈折率部201のサイズは、一対の底壁の各辺の長さが4.5μmであり、厚みが1.5μmである。
【0103】
本実施形態において、各マイクロセル202の形状は、柱状のピラーである。各マイクロセル202のサイズは、一対の底面の各辺の長さLが500nmであり、厚みが550nmである。マイクロセル202は、低屈折率部201の内部に、低屈折率部201の主面に沿って4行4列のマトリクス状に埋設されている。低屈折率部201の主面は、特定の平面の一例である。なお、図10においては、16個のマイクロセル202のうち1つのマイクロセル202のみに符号を付している。
【0104】
(サブセル)
図11に示すように、各マイクロセル202は、2行2列の4つのサブセル20211,20212,20221,20222により構成されている。ただし、各マイクロセル202を構成するサブセルの数は、4つに限定されず、所望の階調数に応じて適宜定めることができる。
【0105】
各サブセル20211,20212,20221,20222は、屈折率が所定の2種類の屈折率である1.4及び2.42の何れかになるように構成されている。なお、本実施形態においては、ナノ粒子の密度に応じて屈折率を制御している。そのため、各サブセル20211,20212,20221,20222の屈折率は、等方的であり、すべての方向に対して1.4又は2.42である。このように構成されたマイクロセル202の階調数は、5階調である。
【0106】
なお、各サブセル20211,20212,20221,20222がとり得る所定の屈折率の種類は、2種類に限定されず複数種類のなかから適宜設定することができる。
【0107】
なお、低屈折率部201、マイクロセル202、及びの形状及びサイズは、本変形例に限定されず、適宜定めることができる。マイクロセル202は、図10に示すように低屈折率部201の内部に埋設されていてもよいし、低屈折率部201の一対の主面から露出していてもよい。低屈折率部201の主面にマイクロセル202が露出している場合、マイクロセル202の厚みは、低屈折率部201の厚みと等しくなる。
【0108】
<光演算装置>
図10に示すように、光回折素子20Aでは、低屈折率部201における単一の層にマトリクス状に配置された複数のマイクロセル202を埋設している。ただし、本発明の一態様においては、低屈折率部201における複数の層の各層にマトリクス状に配置された複数のマイクロセル202を埋設する構成を採用することもできる。この場合、各層における複数のマイクロセル202が設けられている領域は、重なっている。
【0109】
この構成によれば、低屈折率部201の内部に複数のマイクロセル202を埋設する構成を用いて、図7に示した光演算装置と同様の光演算装置を実現することができる。また、この構成によれば、複数のマイクロセル202を空気にさらすことなく光演算装置を製造することができる。
【0110】
〔第2の参考形態〕
本発明の第2の参考形態に係るゲル20Gついて、図12を参照して説明する。図12は、ゲル20Gの模式図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0111】
ゲル20Gは、上述した構造体20又は光回折素子20Aを製造するための微細構造製造用ゲルの一例である。ゲル20Gは、各々が1又は複数のブロックポリマーにより構成された第1セグメント211及び第2セグメント212であって、各々が疎水性及び親水性を有する第1セグメント211及び第2セグメント212が交互に結合されており、且つ、総セグメント数が3であるトリブロックコポリマーと、水とを含有する。なお、トリブロックコポリマーは、上述したように多元ブロックコポリマーであってもよい。
【0112】
ゲル20Gは、セグメント211及びセグメント212を含み、且つ、色素22がセグメント212に結合していないトリブロックコポリマー21を、親水性を有する溶媒の一例である水中に分散させることによって膨潤させることによって得られる。
【0113】
トリブロックコポリマー21は、その両端が疎水性を有するセグメント211により構成されており、セグメント211同士の間に親水性を有するセグメント212が介在するように構成されている。このようなトリブロックコポリマー21を水中に分散させることによって、図12に示すようなポリマーマトリクス24が形成される。ポリマーマトリクス24は、溶媒である水と、セグメント211が凝集することによって形成される擬似的な架橋点241と、2つの架橋点241同士の間に介在するセグメント212と、により構成される。なお、図12においては、ポリマーマトリクスの構成を分かりやすくするためにポリマーマトリクス24を2次元的な構造として図示しているが、実際のポリマーマトリクス24は、3次元的な構造である。
【0114】
トリブロックコポリマー21を構成するセグメント211及びセグメント212は、上述したように、精密重合法を用いて製造可能である。そのため、セグメント211及びセグメント212を構成するブロックポリマーは、小さな分子量分散を有する。セグメント211及びセグメント212のブロックポリマーにおける分子量分散は、例えば、2以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。このように、セグメント211及びセグメント212の各々の重合度が精密に制御されていることによって、ポリマーマトリクス24における架橋点241同士のピッチpにおいて生じ得るばらつきを抑制することができる。
【0115】
なお、本実施形態では、両端にセグメント211が位置し、セグメント211同士の間にセグメント212が介在するトリブロックコポリマーを用いてポリマーマトリクス24を形成しているため、溶媒として親水性を有する溶媒の一例である水を採用している。親水性を有する溶媒の水以外の例としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。
【0116】
また、両端にセグメント212が位置し、セグメント212同士の間にセグメント211が介在するトリブロックコポリマーを用いてポリマーマトリクス24を形成する場合には、溶媒として疎水性を有する溶媒を採用すればよい。疎水性を有する溶媒の一例としては、ノルマルヘキサン及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0117】
〔第4の実施形態〕
本発明の第5の実施形態に係る製造方法M20であって、図10に示した光回折素子20Aの製造に好適な製造方法M20について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、製造方法M20のフローチャートである。図14は、製造方法M20に含まれる各工程におけるゲル20G又は光回折素子20Aの模式図である。図14の(a)は、色素分散工程S12を実施したあとのゲル20Gの模式図であり、図14の(b)は、露光工程S13におけるゲル20Gの模式図であり、図14の(c)は、ナノ粒子添加工程S15を実施したあとのゲル20Gの模式図であり、図14の(d)は、ナノ粒子成長工程S17を実施したあとのゲル20Gの模式図であり、図14の(e)は、脱水・焼結工程S18を実施することによって得られた光回折素子20Aの模式図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。なお、製造方法M20は、非特許文献1に記載されたIpFab法をベースにし、トリブロックコポリマー21を含有するゲル20Gを用いるものである。
【0118】
図13に示すように、製造方法M20は、ゲル化工程S11と、色素分散工程S12と、露光工程S13と、色素洗浄工程S14と、ナノ粒子添加工程S15と、ナノ粒子洗浄工程S16と、ナノ粒子成長工程S17と、脱水・焼結工程S18とを含んでいる。
【0119】
ゲル化工程S11は、第1セグメント211及び第2セグメント212が交互に結合されており、且つ、総セグメント数が3であるトリブロックコポリマー21が水中にいて膨潤したゲル20Gを得る工程である。なお、本実施形態のゲル化工程S11では、トリブロックコポリマー21を用いてゲル20Gを調製するが、トリブロックコポリマー21の代わりに総セグメント数が4以上である多元ブロックコポリマーを用いてもよい。
【0120】
セグメント211及びセグメント212を含むトリブロックコポリマー21(例えば図9の(a)参照)は、市販されているもののなかからセグメント211及びセグメント212の重合度を考慮して適宜購入することができる。また、精密重合法を用いて所望の重合度を有するセグメント211及びセグメント212を製造したうえで、それらを用いてトリブロックコポリマー21を製造してもよい。
【0121】
まず、トリブロックコポリマー21のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を調製する。トリブロックコポリマー21の濃度は、特に限定されないが、例えば20重量%である。その溶液を、所定の形状(本実施形態では直方体状)を有する型(モールド)に充填する。次に、数分間に亘って上記溶液の表面を水蒸気にさらすことによってトリブロックコポリマー21の弱いゲルを得る。次に、この弱いゲルを3日間に亘って水中に浸すことによってゲル20Gを得る。
【0122】
所望のトリブロックコポリマー21を含有するゲル20Gが市販されている場合には、それを購入し、ゲル化工程S11を省略することもできる。
【0123】
色素分散工程S12は、第1の工程の一態様であり、ゲル20Gに色素22を分散させる工程である(図14の(a)参照)。なお、図14においては、トリブロックコポリマー21を構成するセグメント211を二重線で図示し、セグメント212を実線で図示している。また、符号111,112の図示は省略している。なお、本実施形態において用いる色素22は、図9の(b)に示したフルオレセインのカルボキシル基をアミノメチル基で置換したものである。
【0124】
露光工程S13は、第2の工程の一態様であり、色素22が分散されたゲル20Gを構成するトリブロックコポリマー21の所定の領域を露光することによりパターニングする工程である(図14の(b)参照)。図14の(b)に図示した2点鎖線は、露光する領域を模式的に表す。この露光により照射された光のエネルギーを吸収することにより、色素22がセグメント212を構成するブロックポリマーに結合する(図9の(b)参照)。直方体状であるゲル20Gにおいて、3次元的に所望の領域を露光するために、2光子吸収法の露光プロセスが好適である。露光工程S13における露光量を制御することにより、セグメント212に結合する色素22の量を制御することができる。したがって、例えば、図11に示したマイクロセル202のサブセル20211,20212,20221,20222のうち、高い屈折率を有するサブセルに対応する領域においては露光量を高く設定すればよいし、低い屈折率を有するサブセルに対応する領域においては露光量を低く設定すればよい。
【0125】
なお、露光工程S13と、後述するナノ粒子添加工程S15、ナノ粒子洗浄工程S16、ナノ粒子成長工程S17、及び脱水・焼結工程S18とは、IpFab法として知られている工程である。したがって、本実施形態では、これらの工程については、簡単な説明に留める。
【0126】
色素洗浄工程S14は、第3の工程の一態様であり、パターニング後のゲル20Gを洗浄することにより、未反応であり、且つ、ゲル20G内に残存している色素22を除去する工程である。この工程を実施することにより、露光された領域内においてセグメント212に結合した色素22のみが構造体20の内部に残存する。すなわち、露光によりパターニングされた領域内にのみ色素22が残存する。
【0127】
ナノ粒子添加工程S15は、色素22にナノ粒子25(例えば金製)を修飾する工程である(図14の(c)参照)。
【0128】
ナノ粒子洗浄工程S16は、色素22にナノ粒子25を修飾したあとのゲル20Gを洗浄することにより、色素22に結合しておらず、ゲル20G内に残存しているナノ粒子を除去する工程である。
【0129】
ナノ粒子成長工程S17は、色素22を修飾したナノ粒子25を更に成長させることによって、ゲル20Gにおける高屈折率材料の含有量を高める工程である(図14の(d)参照)。図14の(d)においては、ナノ粒子25を破線で示し、成長後の粒子26を実線で示している。
【0130】
脱水・焼結工程S18は、第4の工程の一態様であり、色素22が除去されたトリブロックコポリマー21から水を除去することにより、トリブロックコポリマー21を収縮させ、光回折素子20Aを得る工程である(図14の(e)参照)。この工程を実施することにより、ゲル20Gは、脱水前のゲル20Gと相似な形状を保ったまま縮小される。なお、図14の(e)においては、脱水によりゲル20Gのサイズが1/2になるように縮小率を便宜的に定めている。ただし、実際のゲル20Gにおける脱水に伴う縮小率は、トリブロックコポリマー21の構造と、ゲル20Gにおける水の含有率(換言すれば膨潤の程度)とに依存して定まる。例えば、本実施形態のトリブロックコポリマー21(図9の(a)を参照)においてゲル20Gにおける水の含有率が約83%である場合、脱水に伴う縮小率は、1/10程度になる。
【0131】
このとき、図12に示すようにゲル20Gを構成するポリマーマトリクス24における架橋点241同士のピッチpにおいて生じ得るばらつきが小さいため、ゲル20Gの収縮にともあに生じ得る歪みを抑制することができる。その結果、露光工程S13においてパターニングされた領域(図14の(e)において2点鎖線で図示する領域)も、脱水前のパターニングされた領域と相似な形状を保ったまま縮小される。したがって、製造方法M20を用いて製造された光回折素子20Aにおいては、従来のIpFab法を用いて製造した構造体と比較して、歪みを抑制することができる。
【0132】
また、脱水・焼結工程S18は、ナノ粒子成長工程S17を実施したあとのゲル20Gをオーブン中で加熱することによって実施される。脱水工程の温度は用いるポリマーの耐熱温度や溶媒の沸点よりも低めに設定することが良好な形状維持のためには好ましく、例えば水とアクリル酸系のハイドロゲルの場合は60℃~95℃の温度で30分~120分程度乾燥させることが好ましい。また、ある程度、乾燥および収縮が進んでから真空乾燥させるのも効率的である。焼結温度はナノ粒子の融点よりもやや低い温度で、ナノ粒子の表面だけを溶かすように、できるだけ短時間で加熱するのが好ましい。長時間、高熱にさらすとゲルへのダメージや金属ナノ粒子の酸化などを引き起こす不具合を生じやすい。金属ナノ粒子の酸化を防ぐためには、不活性雰囲気下や真空中での焼結が好ましい。さらには、脱水・焼結工程は複数の加熱条件の組み合わせであってよく、例えば、脱水工程前半では大気圧下にてオーブンの加熱温度を90℃、加熱時間を1時間に設定することによってトリブロックコポリマー21からおおむねの脱水をし、ついで、同温度設定のまま真空ポンプにて真空引きをしながらさらに30分間乾燥させる。続く焼結工程では真空引きを継続したまま、オーブンの加熱温度を400℃、加熱時間を3分に切り替えることでトリブロックコポリマー21に含まれる粒子26同士が焼結される。その結果、トリブロックコポリマー21に含まれる粒子26同士が固着するので、光回折素子20Aにおけるマイクロセル202(図10参照)の強度を高めることができる。また、焼結工程については、加熱方式によるナノ粒子の溶融に限らず、レーザーやフラッシュキセノンランプ等の照射による瞬間的な焼結方法を採用しても良い。
【0133】
(まとめ)
本発明の第1の態様に係る光回折素子においては、特定の平面に沿って配置された複数のマイクロセルであって、各々が複数のサブセルを含む複数のマイクロセルを備え、各サブセルは、前記特定の平面の面内方向のうち少なくとも1方向に対する屈折率が、所定のn種類(nは、2以上の整数)の屈折率のうち何れかの屈折率である、構成が採用されている。
【0134】
各マイクロセルが複数のサブセルにより構成されているため、各マイクロセルの屈折率は、各サブセルの屈折率の平均値により定められる。そのうえで、各サブセルの屈折率を所定のn種類の屈折率のなかから選択することによって、各マイクロセルの屈折率を適宜定めることができる。各マイクロセルは、その屈折率に応じて内部を透過する光の位相を遅らせるため、各マイクロセル屈折率に応じて位相を遅らされた各光を相互に干渉させることによって、予め定められた演算を光学的に実行することができる。したがって、本光回折素子は、複数のマイクロセルの屈折率を個別に設定する方式の光回折素子を提供することができる。
【0135】
また、本発明の第2の態様に係る光回折素子においては、上述した第1の態様に係る光回折素子の構成に加えて、前記各サブセルは、厚みが略均一である、構成が採用されている。
【0136】
本光回折素子においては、各サブセルの厚みが略均一であるため、各マイクロセルの厚みも略均一である。そのため、複数のマイクロセルの厚みを個別に設定する方式の光回折素子と比較して、各マイクロセルのアスペクト比を略均一にすることができる。したがって、本光回折素子は、複数のマイクロセルの厚みを個別に設定する方式の光回折素子を光造形する場合に生じ得るマイクロセルの変形であって、各マイクロセルのアスペクト比がばらついていることに起因するマイクロセルの変形を抑制することができる。
【0137】
なお、各サブセルの厚みが略均一とは、例えば、全てのサブセルの厚みが平均である厚みに対して±10%の範囲内に収まっている場合を指す。
【0138】
また、本発明の第3の態様に係る光回折素子においては、上述した第1の態様又は第2の態様に係る光回折素子の構成に加えて、前記各サブセルは、液晶性を有するメソゲン基を含むブロックポリマーにより構成された第1セグメントと、前記メソゲン基を含まないブロックポリマーにより構成された第2セグメントとが交互に接続されており、且つ、少なくとも総セグメント数が2以上である多元ブロックコポリマーと、前記多元ブロックコポリマーを自己組織化するガイドと、を含み、前記各サブセルにおける前記メソゲン基の配向方向は、所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向である、構成が採用されている。
【0139】
上記の構成によれば、各サブセルにおいて、第1セグメントを構成するブロックポリマーに含まれるメソゲン基は、所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向をとる。メソゲン基の屈折率は、メソゲン基の長軸方向と、サブセルに入射する直線偏光の偏光方向とのなす角に応じて変化する。したがって、本光回折素子に直線偏光を入射させる場合、各サブセルの屈折率は、所定のn種類の屈折率のうち何れかの屈折率をとる。このように、本光回折素子においては、メソゲン基を一方のセグメントに含む多元ブロックポリマーと、ガイドとを用いてサブセルを実現することができる。
【0140】
また、本発明の第4の態様に係る光回折素子においては、上述した第3の態様に係る光回折素子の構成に加えて、前記ガイドの表面は、疎水性及び親水性の何れかの極性を有し、前記多元ブロックコポリマーにおいて、前記第1セグメント及び前記第2セグメントのうち、一方のセグメントは疎水性であり、他方のセグメントは親水性である、構成が採用されている。
【0141】
上記の構成によれば、第1セグメント及び第2セグメントのうち、ガイドの表面と同じ極性を有するセグメントがガイド側に近接し、ガイドの表面と異なる極性を有するセグメントがガイド側から遠ざかるように、多元ブロックコポリマーは、配列する。したがって、確実にメソゲン基の配向方向を揃えることができるので、各サブセルにおける屈折率を確実に制御することができる。
【0142】
また、本発明の第5の態様に係る光回折素子においては、上述した第1の態様又は第2の態様に係る光回折素子の構成に加えて、各サブセルは、ポリマーにより構成されたポリマーマトリクスを含有し、前記ポリマーの一部には、結合された色素と、色素と、ナノ粒子とがこの順番で結合されており、前記ナノ粒子の屈折率は、前記ポリマーマトリクスの屈折率よりも大きい、構成が採用されている。
【0143】
上記の構成によれば、ポリマーに結合させる色素及びナノ粒子の量又は濃度をn種類定めておき、サブセル毎に当該色素及びナノ粒子の量又は濃度をn種類のうちから選択することによって、サブセルの屈折率を所定のn種類の屈折率の何れかに設定することができる。このように、本光回折素子においては、色素及びナノ粒子が結合されたポリマーにより構成されたポリマーマトリクスを用いてサブセルを実現することができる。
【0144】
また、本発明の第6の態様に係る光回折素子においては、上述した第5の態様に係る光回折素子の構成に加えて、前記ポリマーマトリクスは、各々が1又は複数のブロックポリマーにより構成された第1セグメント及び第2セグメントであって、各々が疎水性及び親水性を有する第1セグメント及び第2セグメントが交互に結合されており、且つ、総セグメント数が3以上である多元ブロックコポリマーにより構成されており、各多元ブロックコポリマーにおいて、前記第1セグメント又は前記第2セグメントには、色素と、ナノ粒子とがこの順番で結合されており、前記ナノ粒子の屈折率は、前記ポリマーマトリクスの屈折率よりも大きい、構成が採用されている。
【0145】
上記の構成によれば、ポリマーマトリクスを構成するポリマーとして、多元ブロックコポリマーを採用している。第1セグメント及び第2セグメントの各々を構成するブロックポリマーは、直鎖状の形態を有するが、疎水性、親水性を有するセグメントが交互に結合され、且つ、総セグメント数が3以上であることによって、親水性、または、疎水性の溶媒中に分散させた際に、溶媒とは極性が反対となるセグメント同士が溶媒中で凝集するため、この部位が物理的な架橋点となり、膨潤ゲル形態とすることができる。例えば、疎水性セグメント/親水性セグメント/疎水性セグメントの3セグメントからなるブロックポリマーを水中に分散させた場合には、複数のブロックポリマーの両端にある疎水性のセグメントが集まって凝集し、物理架橋点となることでゲル状形態となることができる。ところで、第1セグメント及び第2セグメントの各々を構成するブロックポリマーは、精密重合法を用いて製造することができるので、第1セグメント及び第2セグメントの各々の分子量分散を小さくすることができる。そのため、溶媒を用いて多元ブロックコポリマーを膨潤させることによって得られるゲルにおいて、ポリマーマトリクスにおける架橋点同士のピッチにおいて生じ得るばらつきを抑制することができる。したがって、本光回折素子は、従来のIpFab法を用いて製造した光回折素子比較して、サブセルに生じ得る歪みを抑制することができる。
【0146】
また、本発明の第7の態様に係る光回折素子においては、上述した第6の態様に係る光回折素子の構成に加えて、前記多元ブロックコポリマーは、総セグメント数が3であるトリブロックコポリマーであり、2つの前記第1セグメントと、当該2つの前記第1セグメントの間に介在する第2セグメントと、により構成されている。
【0147】
上記の構成によれば、多元ブロックコポリマーを膨潤させるための溶媒として親水性を有する溶媒(例えば水)を用いることができる。
【0148】
また、本発明の第8の態様に係る光回折素子においては、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係る光回折素子の構成に加えて、各マイクロセルは、所定の波長λを有する光が入射した場合に当該光の位相を当該マイクロセルの屈折率に応じて変化させ、且つ、前記各マイクロセルのセルサイズは、波長λ以下である、構成が採用されている。
【0149】
上記の構成によれば、各マイクロセルは、波長λを有する光の位相を遅らせることができる。
【0150】
また、本発明の第9の態様に係る光回折素子においては、上述した第8の態様に係る光回折素子の構成に加えて、前記各マイクロセルのセルサイズは、波長λ以下である、構成が採用されている。
【0151】
上記の構成によれば、各マイクロセルは、波長λを有する光の位相を効率良く遅らせることができる。
【0152】
本発明の第10の態様に係る光演算装置においては、上述した第1の態様~第9の態様の何れか一態様に記載の光回折素子をN個(Nは、2以上の整数)備え、各光回折素子の前記複数のマイクロセルが設けられている領域は、重なっている、構成が採用されている。
【0153】
上記の構成によれば、複数のマイクロセルの屈折率を個別に設定する方式の光回折素子を用いて光演算装置を実現することができる。
【0154】
本発明の第11の態様に係る光回折素子の製造方法は、各々が複数のサブセルを含む複数のマイクロセルを備えた光回折素子の製造方法である。本製造方法においては、各サブセルは、液晶性を有するメソゲン基を含むブロックポリマーにより構成された第1セグメントと、前記メソゲン基を含まないブロックポリマーにより構成された第2セグメントとが交互に接続されており、且つ、少なくとも総セグメント数が2以上である多元ブロックコポリマーと、前記多元ブロックコポリマーを自己組織化するガイドと、を含み、前記各サブセルにおける前記メソゲン基の配向方向が所定のn種類の配向方向のうち何れかの配向方向になるように、基板の主面に前記ガイドを設ける工程と、前記ガイドを覆うように前記多元ブロックコポリマーを形成する工程と、を含んでいる、構成が採用されている。
【0155】
上記の構成によれば、上述した第3の態様に係る光回折素子と同様の効果を奏する。
【0156】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0157】
1 光演算装置
10,10a,10b,10c 光回折素子
11 マイクロセル群
11ij マイクロセル
12 サブセル群
12kl サブセル
12g,12gkl ガイド
12P,12Pkl ジブロックコポリマー
S1,S2 セグメント
20 構造体
20A 光回折素子
20G ゲル(微細構造製造用ゲルの一例)
201 低屈折率部
202 マイクロセル
20211,20212,20221,20222 サブセル
21 トリブロックコポリマー(多元ブロックコポリマーの一例)
211,212 セグメント(第1セグメント及び第2セグメントの一例)
22 色素
23 架橋材
24 ポリマーマトリクス
241 架橋点
図1
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