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7554902温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法
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  • -温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/64 20060101AFI20240912BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B29C49/64
B29C49/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023502443
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2022007285
(87)【国際公開番号】W WO2022181618
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021028430
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】島田 清典
(72)【発明者】
【氏名】土屋 知巳
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 勇也
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-077661(JP,A)
【文献】特開平02-086424(JP,A)
【文献】特開昭48-074562(JP,A)
【文献】特開平06-344427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/64
B29C 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形された有底形状の樹脂製のプリフォームの温度を調整するための温度調整用金型であって、
前記プリフォームの内部に挿入され、前記プリフォームの軸方向に延びるロッド部を備え、
前記ロッド部は、前記ロッド部の径方向に突出し、前記プリフォームの内周面と接触する環状の突起部を有し、
前記ロッド部は、前記プリフォームの底部と接触して前記プリフォームの軸方向の収縮を規制し、
前記突起部は、前記プリフォームの径方向の収縮を規制するとともに、前記ロッド部と前記プリフォームの間で熱を伝導し、前記プリフォームの軸方向の所定部位における温度を調整し、
前記突起部は、前記軸方向の位置を調整可能である
温度調整用金型。
【請求項2】
前記突起部は、前記ロッド部に着脱可能である
請求項に記載の温度調整用金型。
【請求項3】
前記プリフォームを収容し、前記プリフォームを外周側から加熱するキャビティ型をさらに備える
請求項1または請求項2に記載の温度調整用金型。
【請求項4】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形時の保有熱を含んだ前記プリフォームに対して、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の温度調整用金型を用いて、軸方向の温度分布を調整する温度調整部と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、
を備える樹脂製容器の製造装置。
【請求項5】
有底形状の樹脂製のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形時の保有熱を含んだ前記プリフォームに対して、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の温度調整用金型を用いて、軸方向の温度分布を調整する温度調整工程と、
温度調整された前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、
を有する樹脂製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整用金型、樹脂製容器の製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂製容器の製造装置の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形装置が知られている。ホットパリソン式のブロー成形装置は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器をブロー成形する構成であり、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0003】
一般的に、射出成形直後のプリフォームは、容器の賦形に適した温度分布を備えていない。そのため、ホットパリソン式のブロー成形サイクルでは、プリフォームの偏温の抑制や、あるいは容器の賦形に適した所望の温度分布をプリフォームに付与するために、射出成形工程とブロー成形工程の間にプリフォームの温度調整工程が行われる。
【0004】
この種の温度調整工程では、プリフォームの内部形状に倣った温度調整ロッド型をプリフォームの内側に挿入し、プリフォームの内周面と温度調整ロッド型を密着させて温度調整を行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3330677号公報
【文献】特許第3255485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の温度調整ロッド型は、プリフォームの内周面に密着することから軸方向に温度差を付与する温度調整に不向きである。そのため、例えば、プリフォームの収縮変形を規制しつつ、容器の薄肉部に対応する部位をプリフォームの内側から局所的に冷却し、容器の肉厚分布の改善を図ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、射出成形された有底形状の樹脂製のプリフォームの温度を調整するための温度調整用金型である。温度調整用金型は、プリフォームの内部に挿入され、プリフォームの軸方向に延びるロッド部を備える。ロッド部は、ロッド部の径方向に突出し、プリフォームの内周面と接触する環状の突起部を有する。ロッド部は、プリフォームの底部と接触してプリフォームの軸方向の収縮を規制する。突起部は、プリフォームの径方向の収縮を規制するとともに、ロッド部とプリフォームの間で熱を伝導し、プリフォームの軸方向の所定部位における温度を調整する。また、突起部は、軸方向の位置を調整可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、プリフォームの収縮変形を規制しつつ、プリフォームの内側から軸方向の局所的な温度調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
図2】温度調整部の構成例を示す縦断面である。
図3】温度調整部の突起部近傍の横断面図である。
図4図2の変形例を示す図である。
図5図4の変形例を示す図である。
図6図2の他の変形例を示す図である。
図7】ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
図1は、本実施形態のブロー成形装置20の構成を模式的に示す図である。本実施形態のブロー成形装置20は、プリフォーム10を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)の装置である。
【0012】
ブロー成形装置20は、射出成形部21と、温度調整部22と、ブロー成形部23と、取り出し部24と、搬送機構26とを備える。射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23および取り出し部24は、搬送機構26を中心として所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。
【0013】
(搬送機構26)
搬送機構26は、図1の紙面垂直方向の軸を中心に回転するように移動する移送板28(図1では不図示)を備える。移送板28には、プリフォーム10または樹脂製容器(以下、単に容器と称する)の首部を保持するネック型27(図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構26は、移送板28を90度分ずつ移動させることで、ネック型27で首部が保持されたプリフォーム10(または容器)を、射出成形部21、温度調整部22、ブロー成形部23、取り出し部24の順に搬送する。なお、搬送機構26は、昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型27の型開き機構をさらに備え、移送板28を昇降させる動作や、射出成形部21等における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0014】
(射出成形部21)
射出成形部21は、それぞれ図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型を備え、図2に示すプリフォーム10を製造する。射出成形部21には、プリフォーム10の原材料である樹脂材料を供給する射出装置25が接続されている。
【0015】
射出成形部21においては、上記の射出キャビティ型、射出コア型と、搬送機構26のネック型27とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置25から樹脂材料を流し込むことで、射出成形部21でプリフォーム10が製造される。
例えば、プリフォーム10の全体形状は、一端側が開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム10の開口側の端部には、首部が形成されている。
【0016】
また、容器およびプリフォーム10の材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器の用途に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。
【0017】
なお、射出成形部21の型開きをしたときにも、搬送機構26のネック型27は開放されずにそのままプリフォーム10を保持して搬送する。射出成形部21で同時に成形されるプリフォーム10の数(すなわち、ブロー成形装置20で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。
【0018】
(温度調整部22)
温度調整部22は、射出成形部21で製造されたプリフォーム10の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム10の温度をブロー成形に適した温度(例えば約90℃~105℃)かつ賦形される容器形状に適した温度分布に調整する。また、温度調整部22は、射出成形後の高温状態のプリフォーム10を冷却する機能も担う。
【0019】
図2は、温度調整部22の構成例を示す縦断面図である。温度調整部22は、プリフォーム10を収容可能なキャビティ型(温度調整ポット型、加熱ポット型)31と、プリフォームの内側に挿入される金型部材である温度調整ロッド32とを備えている。
【0020】
キャビティ型31は、射出成形部21で製造されたプリフォーム10の外形と略同じ形状の温度調整用の空間を有する。キャビティ型31は、プリフォーム10の軸方向に少なくとも3分割され、上段型31a、中段型31bおよび下段型31cを含む。
【0021】
上段型31aは、プリフォーム10の首部近傍の外周面に臨む(対向する)金型である。中段型31bは、プリフォーム10の胴部の外周面に臨む金型である。下段型31cは、プリフォーム10の底部の外周面に臨む金型である。上段型31aの底面と中段型31bの上面、ならびに中段型31bの底面と下段型31cの上面は、例えば、断熱部材をそれらの間に挟み込むようにして、それぞれインロー構造で係合する。
【0022】
キャビティ型31の上段型31a、中段型31bおよび下段型31cには、バンドヒータ(リング状ヒータ)やロッド状ヒータなどの加熱部材(不図示)がそれぞれ取り付けられている。上段型31a、中段型31bおよび下段型31cは、それぞれ加熱部材により所定の温度に保たれる。そして、キャビティ型31からの熱でプリフォーム10の外周側が加熱されることで、プリフォーム10の温度が調整される。加熱されたプリフォーム10の胴部は、内径側や首部側に収縮変形する。なお、上段型31a、中段型31bおよび下段型31cの加熱部材の温度を変化させることで、プリフォーム10の軸方向の温度分布を変化させることもできる。
【0023】
温度調整ロッド32は、ロッド部(ロッド部材)の一例であって、温度調整部22でプリフォーム10を保持しているネック型27に対して軸方向(図中上下方向)に進退可能に構成される。図2では、温度調整ロッド32がロッド駆動機構(不図示)により図中下側に移動(下降)してネック型27およびプリフォーム10の内部に挿入された状態を示している。
【0024】
温度調整ロッド32の径は、プリフォーム10の内径よりも小さい寸法に設定されている。また、プリフォーム10の内部に挿入された温度調整ロッド32の先端は、プリフォーム10の底部と接触する。温度調整ロッド32の軸方向長さは、射出成形部21から搬出された後に温度調整ロッド32が挿入されるまでのプリフォーム10の収縮量を想定した長さに設定されている。これにより、温度調整ロッド32は、温度調整時にプリフォーム10の軸方向長さを所定の寸法に保持し、プリフォーム10の必要以上の収縮を規制する機能を担う。
【0025】
また、温度調整ロッド32の内部には、軸方向に沿って温度調整媒体の流れる流路(不図示)が形成されている。そのため、温度調整ロッド32は、内部を流れる温度調整媒体により所定の温度に保たれる。本実施形態では、温度調整ロッド32がプリフォーム10よりも低温に設定され、温度調整ロッド32によりプリフォーム10を冷却する場合を説明するが、温度調整ロッド32によりプリフォーム10を加熱することも可能である。
【0026】
また、温度調整ロッド32は、径方向外側に突出する環状の突起部33を有している。図3は、温度調整部22の突起部近傍の横断面図である。なお、図3においても温度調整ロッド32内の流路の図示は省略している。
図2図3に示す突起部33は、温度調整ロッド32に対して着脱可能で、伝熱性の良好な材料で形成された一対の半割リング体34で構成されている。半割リング体34は、外周側に環状の大径部(突起部33)を有するとともに、温度調整ロッド32の軸方向において取付位置を調整可能である。一対の半割リング体34(突起部33)は不図示の固定手段により温度調整ロッド32に固定される。
【0027】
突起部33は、プリフォーム10の軸方向の所定部位に内側から接触して当該所定部位の温度を調整する機能を担う。プリフォーム10の内側で突起部33と接触する部位では、突起部33を介して温度調整ロッド32との間で熱が伝導される。一方、プリフォーム10の内側で突起部33と接触しない部位は、温度調整ロッド32とプリフォーム10の間に空気が介在するので温度調整ロッド32の熱が伝わりにくい。そのため、プリフォーム10の軸方向の温度分布を突起部33の位置で調整することが可能である。
【0028】
また、上記のように突起部33がプリフォーム10の内周と接触することで、プリフォーム10は突起部33よりも内径側に収縮しにくくなる。そのため、突起部33は、温度調整時にプリフォーム10の径方向の寸法を保持し、プリフォーム10の必要以上の収縮を規制する機能も担う。
【0029】
また、突起部33の外径は、プリフォーム10の収縮量に応じた突起部33による温度調整時間を考慮して適宜設定される。突起部33の外径を大きくすると、収縮するプリフォーム10と突起部33が比較的早くに接触し、突起部33との接触による温度調整時間は長くなる。一方、突起部33の外径を小さくすると、突起部33の外径が大きい場合と比べて収縮するプリフォーム10と突起部33の接触が遅くなり、上記の温度調整時間は短くなる。したがって、突起部33の外径を調整することでプリフォーム10の所定部位と突起部33の接触時間が変化し、プリフォーム10の所定部位に対する温度調整時間を調整することが可能である。上記の調整は、例えば、突起部33の外径が異なる半割リング体34を複数種類準備し、製造する容器形状やプリフォーム10の材料等の仕様に応じて半割リング体34を適宜交換して行えばよい。
【0030】
図2では、突起部33が温度調整ロッド32の軸方向中間部に配置され、容器の肩部を形成するプリフォーム10の対応部位を冷却する例を示している。容器の肩部に対応するプリフォーム10の部位を局所的に冷却して保有熱を低下させることで、ブロー成形時に容器の肩部の肉厚を厚くすることができ、容器の肉厚分布を改善することができる。
【0031】
図4は、図2の変形例であって、ネック型27と上段型31aとの境界部近傍(プリフォーム10のネック下の対応部位)を突起部33で冷却する例を示している。図4においても、図2の例と同様に、突起部33は一対の半割リング体34で形成されている。図4の例によれば、ネック下を局所的に冷却して同部位の樹脂の流動性を低下させることで、ネック型27と上段型31aまたはネック型27とブロー型上面の隙間でバリが発生することを抑制できる。
【0032】
図5は、図4の変形例であって、ネック下の位置において、温度調整ロッド32に突起部33が一体的に形成される例を示している。図5の例でも、図4と同様の効果を得ることができる。
【0033】
図6は、図2の他の変形例であって、突起部33を構成する環状のコンタクトリング35と、円筒状のスペーサ36を温度調整ロッド32に被せる構成例を示している。なお、図6のキャビティ型31の構成および機能は図2から図5のものと同様であるため、重複説明を省略する。
【0034】
環状のコンタクトリング35および円筒状のスペーサ36の内径は、温度調整ロッド32が挿通可能な寸法にそれぞれ設定されている。少なくとも1つ以上のコンタクトリング35および少なくとも1つ以上(より好ましくは2つ以上)のスペーサ36は、温度調整ロッド32に挿入され、温度調整ロッド32のロッド本体32bの外周に同心状に配置される。なお、図6では、コンタクトリング35およびスペーサ36をそれぞれ2つずつ温度調整ロッド32に取り付けた例を示している。
【0035】
コンタクトリング35の外径は、スペーサ36の外径よりも大きく設定される。温度調整ロッド32に取り付けられたコンタクトリング35は、スペーサ36よりも外周側に突出してプリフォーム10の内側と接触し、プリフォーム10の熱を温度調整ロッド32に伝導する。そのため、コンタクトリング35は、プリフォーム10の軸方向の所定部位に内側から接触して当該所定部位の温度を調整(冷却)する突起部33の機能を担う。
【0036】
スペーサ36は、コンタクトリング35を軸方向に位置決めするために温度調整ロッド32に取り付けられる。また、スペーサ36は、例えば、プリフォーム10とは接触せず、プリフォーム10の内周との間に空気の層を形成する機能を担う。以上のようにして、プリフォーム10の軸方向の温度分布をコンタクトリング35の位置で調整することが可能である。
【0037】
また、温度調整ロッド32は、先端ピース32aを有している。先端ピース32aは、ロッド本体32bよりも太径で、かつロッド本体32bの先端に着脱可能である。コンタクトリング35およびスペーサ36は、先端ピース32aを取り外した状態でロッド本体32bに挿入される。先端ピース32aは、コンタクトリング35およびスペーサ36がロッド本体32bに挿通された後にロッド本体32bの先端に取り付けられ、コンタクトリング35およびスペーサ36を抜け止めする。より具体的には、温度調整ロッド32の下端(先端)の段付き部を先端ピース32aの上端の凹部に収容後、温度調整ロッド32および先端ピースに各々形成された貫通孔に止めピン(不図示)を挿入し、コンタクトリング35およびスペーサ36を抜け止めする。スペーサ36と先端ピース32aは、コンタクトリング35(突起部33)を温度調整ロッド32に固定する固定手段として機能する。
【0038】
図6の例でも、図2と同様の効果を得ることができる。なお、図6の例において、コンタクトリング35の外径および数や、スペーサ36により規定されるコンタクトリング36の軸方向位置は、コンタクトリング35およびスペーサ36の交換により適宜変更できる。
【0039】
(ブロー成形部23)
図1に戻って、ブロー成形部23は、温度調整部22で温度調整されたプリフォーム10に対して延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
ブロー成形部23は、容器の形状に対応した一対の割型であるブローキャビティ型と、底型と、延伸ロッドおよびエア導入部材(ブローコア型、いずれも不図示)を備える。ブロー成形部23は、プリフォーム10を延伸しながらブロー成形する。これにより、プリフォーム10がブローキャビティ型の形状に賦形されて容器を製造することができる。
【0040】
(取り出し部24)
取り出し部24は、ブロー成形部23で製造された容器の首部をネック型27から開放し、容器をブロー成形装置20の外部へ取り出すように構成されている。
【0041】
(ブロー成形方法の説明)
次に、本実施形態のブロー成形装置20によるブロー成形方法について説明する。
図7は、ブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。本実施形態では、ブロー成形方法の後述の各工程(S101~S104)が実施される前に金型調整工程(S100)が行われる。
【0042】
(ステップS100:金型調整工程)
金型調整工程は、賦形する容器の形状等に応じて、温度調整ロッド32の突起部33の位置を調整する工程である。一例として、金型調整工程では以下の作業が行われる。
【0043】
まず、ブロー成形装置20をテスト運転し、調整前の容器形状の情報を得る。次に、容器形状の情報に基づいて、温度調整ロッド32の突起部33の軸方向位置を調整する。このとき、パーツの変更等により突起部33の外径を変更することで温度調整ロッド32による温度調整時間を変化させてもよい。
【0044】
例えば、容器の軸方向において薄肉部が存在する場合、作業者は、容器薄肉部に対応するプリフォーム10の部位が突起部33と接触するように、温度調整ロッド32の突起部33の位置を調整する。これにより、容器薄肉部に対応するプリフォーム10の部位が突起部33と接触して局所的に冷却され、調整後の容器の肉厚分布が改善されるようになる。
また、例えば、容器のネック下にバリが生じる場合、作業者は温度調整ロッド32の突起部33がネック型27と上段型31aとの境界部近傍(プリフォーム10のネック下の対応部位)に位置するように調整する。これにより、プリフォーム10のネック下の部位が局所的に冷却され、容器のネック下でのバリの発生が抑制されるようになる。
【0045】
上記の金型調整工程が完了すると、以下に示すブロー成形サイクルの各工程が実行される。
【0046】
(ステップS101:射出成形工程)
ステップS101では、射出成形部21において、射出キャビティ型、射出コア型および搬送機構26のネック型27で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置25から樹脂を射出し、プリフォーム10が製造される。
【0047】
ステップS101において、プリフォーム10の射出成形が完了すると、射出成形部21が型開きされてプリフォーム10が射出キャビティ型、射出コア型から離型される。次に、搬送機構26の移送板28が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持されたプリフォーム10は温度調整部22に搬送される。
【0048】
(ステップS102:温度調整工程)
続いて、温度調整部22において、プリフォーム10の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0049】
温度調整工程では、移送板28の下降により、ネック型27に保持されたプリフォーム10がキャビティ型31に収容される。また、温度調整ロッド32が下降することで、プリフォーム10内に温度調整ロッド32が挿入される。
【0050】
温度調整部22では、キャビティ型31によりプリフォーム10が外側から非接触状態で加熱される。これにより、プリフォーム10はブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。また、プリフォーム10の収縮でプリフォーム10の内周面が温度調整ロッド32の突起部と接触することで、プリフォーム10の所定部位が局所的に冷却される。
【0051】
温度調整工程の後、搬送機構26の移送板28が所定角度分回転するように移動し、ネック型27に保持された温度調整後のプリフォーム10がブロー成形部23に搬送される。
【0052】
(ステップS103:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部23において、容器のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型を型閉じしてプリフォーム10を型空間に収容し、エア導入部材(ブローコア)を下降させることで、プリフォーム10の首部にエア導入部材が当接される。そして、延伸ロッド(縦軸延伸部材)を降下させてプリフォーム10の底部を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行いつつ、エア導入部材からブローエアを供給することで、プリフォーム10を横軸延伸する。これにより、プリフォーム10は、ブローキャビティ型の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器にブロー成形される。なお、底型は、ブローキャビティ型の型閉じ前はプリフォーム10の底部と接触しない下方の位置で待機し、型閉前または型閉後に成形位置まで素早く上昇する。
【0053】
(ステップS104:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型および底型が型開きされる。これにより、ブロー成形部23から容器が移動可能となる。
続いて、搬送機構26の移送板28が所定角度回転するように移動し、容器が取り出し部24に搬送される。取り出し部24において、容器の首部がネック型27から開放され、容器がブロー成形装置20の外部へ取り出される。
【0054】
以上で、ブロー成形サイクルの一連の工程が終了する。その後、搬送機構26の移送板28を所定角度回転するように移動させることで、上記のS101からS104の各工程が繰り返される。ブロー成形装置20の運転時には、1工程ずつの時間差を有する4組分の容器の製造が並列に実行される。
【0055】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。
本実施形態の温度調整ロッド32は、径方向に突出し、プリフォーム10の内周面と接触する環状の突起部33を有している。突起部33は、温度調整ロッド32とプリフォーム10の間で熱を伝導する。これにより、本実施形態では、プリフォーム10の軸方向の所定部位を突起部33で内側から冷却して温度を調整することができ、ブロー成形される容器の肉厚分布を改善できる。
【0056】
また、温度調整ロッド32の先端は、プリフォーム10の底部と接触してプリフォーム10の軸方向の収縮を規制する。そして、突起部33は、プリフォーム10の内周面と接触してプリフォーム10の径方向の収縮を規制する。これにより、温度調整時におけるプリフォーム10の形状のばらつきが抑制され、各ブロー成形サイクルでプリフォーム10に適切な温度分布を付与することが容易となる。
【0057】
また、本実施形態の突起部33は、温度調整ロッド32に着脱可能な半割リング体34またはコンタクトリング35に設けられ、軸方向の位置調整が可能である。これにより、容器の仕様等に応じてプリフォーム10の温度調整を行う位置を容易に調整できる。
また、半割リング体34またはコンタクトリング35の交換により突起部33の径方向の突出量を変更することもできる。これにより、収縮するプリフォーム10と突起部33が接触するタイミングを変化させて、突起部33による温度調整時間を調整できる。
【0058】
ここで、プリフォーム10の材料がポリエチレン(PE)や高密度ポリエチレン(HDPE)の場合、PETなどと比べて熱収縮率が高く、温度調整時にプリフォーム10が収縮変形しやすい。しかも、これらの材料はPETなどと比べてヒズミ硬化特性がなく、ブロー成形時における肉厚調整が難しいことが知られている。ヒズミ硬化特性とは、ブロープロセスの間、まずプリフォームの最も弱い部分(通常、最も高温の部分)が降伏点に達し、次に弱い部分が伸び始めるという形で、肉厚が均一化するまで、分子配向によりその強度を増す特性をいう。そのため、PEやHDPEのプリフォームをブロー成形する場合、プリフォームの収縮変形を抑制しつつ、ブロー前に適切な温度調整をすることが非常に重要となる。本実施形態によれば、PEやHDPEの容器成形に適したプリフォームの温度調整を容易に行うことができる。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
例えば、上記実施形態において、温度調整ロッド32の軸方向に突起部33を複数設けてもよい。
【0060】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10…プリフォーム、20…ブロー成形装置、21…射出成形部、22…温度調整部、23…ブロー成形部、31…キャビティ型、32…温度調整ロッド、33…突起部、34…半割リング体

図1
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図7