(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の正極用添加剤、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池の正極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240912BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2023513237
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 KR2021016974
(87)【国際公開番号】W WO2022114670
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0161400
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0156630
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヘ・ジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ボラン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・グ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ビョンチュン・パク
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-513145(JP,A)
【文献】特表2020-522851(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0059115(KR,A)
【文献】特開2012-142156(JP,A)
【文献】特開2011-034943(JP,A)
【文献】特表2020-518967(JP,A)
【文献】特開昭60-160570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆性のリチウム遷移金属酸化物、Li
3PO
4、Li
5AlO
4及びLi
3BO
3を含み、
前記リチウム遷移金属酸化物は、アルミニウムがドーピングされた形態であ
り、
前記リチウム遷移金属酸化物は、添加剤の総重量を基準として75~90重量%で含まれることを特徴とするリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li
2Ni
1-xAl
xO
2
xは0.001~0.005であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項3】
前記Li
3PO
4は、添加剤の総重量を基準として1~10重量%で含まれることを特徴とする請求項1
または2に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項4】
前記Li
5AlO
4は、添加剤の総重量を基準として0.5~5重量%で含まれることを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項5】
前記Li
3BO
3は、添加剤の総重量を基準として0.1~3重量%で含まれることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項6】
前記Li
3BO
3の一部は、リチウム遷移金属酸化物にコーティングされた状態で存在することを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項7】
前記リチウム二次電池の正極用添加剤は、NiOをさらに含むことを特徴とする請求項1から
6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項8】
前記NiOは、添加剤の総重量を基準として5~15重量%で含まれることを特徴とする請求項
7に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法であって、
(1)遷移金属ソース物質、リチウムソース物質、リンソース物質、アルミニウムソース物質及びホウ素ソース物質を混合して混合物を製造する段階、及び
(2)前記混合物を熱処理する段階を含むリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記(1)の段階において、遷移金属ソース物質はNiOであり、リチウムソース物質はLi
2O、LiOHまたはLi
2CO
3であり、リンソース物質は(NH
4)
2HPO
4であり、アルミニウムソース物質はAl(OH)
3であり、ホウ素ソース物質はB(OH)
3であることを特徴とする請求項
9に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法。
【請求項11】
前記(2)の段階において、混合物を300~700℃で10~32時間熱処理することを特徴とする請求項
9または
10に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池の正極用添加剤及び正極活物質を含み、
前記リチウム二次電池の正極用添加剤は、正極活物質100重量部を基準として10~40重量部で含まれることを特徴とするリチウム二次電池の正極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の正極用添加剤、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池の正極に関する。具体的に、本発明は、アルミニウムがドーピングされたリチウム遷移金属酸化物、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含むリチウム二次電池の正極用添加剤、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池の正極に関する。
【0002】
本出願は、2020年11月26日付け韓国特許出願第10-2020-0161400号及び2021年11月15日付け韓国特許出願第10-2021-0156630号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容を本明細書の一部として含む。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池の中で高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率の低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としてはリチウム遷移金属酸化物が用いられており、この中でも作用電圧が高く容量特性に優れたLiCoO2のリチウムコバルト酸化物が主に用いられている。しかし、LiCoO2は、脱リチウムによる結晶構造の不安定化で熱的特性が非常に悪く、かつ高価であるため、電気自動車などの分野の動力源として大量使用するには限界がある。LiCoO2に代わる材料として、リチウムマンガン酸化物(LiMnO2またはLiMn2O4など)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO4など)またはリチウムニッケル酸化物(LiNiO2など)などが開発された。この中でも約200mAh/gの高い可逆容量を持ち、大容量の電池の具現が容易なリチウムニッケル酸化物の研究及び開発が活発に行われた。
【0005】
また、負極活物質についても高容量リチウム二次電池を具現するためにSi系の負極活物質の使用に対する要求が増加したが、Si系の負極活物質の場合、不可逆容量が大きく、電池の効率的な駆動のためには正極でも不可逆容量に対する均衡を取る必要がある。このため、不可逆容量の大きい正極添加剤に関する研究も一緒に進められ、この過程で不可逆容量の大きい正極添加剤として、Li2NiO2、Li2CuO4、Li6CoO4などの様々な添加剤が活用された。
【0006】
Li2NiO2の場合、Li2OとNiOの固相法で合成されるが、合成率が低く、基本的に未反応物としてLi2OとNiOが残るようになる。このようなLi2OとNiOの場合は容量発現が難しく、Li2Oの場合はLiOH及びLi2CO3に変換することができ、それによる電極製造過程中にゲル化現象が発生し、充・放電及び高温貯蔵中にガスが発生する問題がある。
【0007】
このような問題を解決するために、当技術分野ではリチウム二次電池の性能を改善するための正極添加剤の研究が続けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0092739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、リチウム二次電池の正極用添加剤として、遷移金属の一部がアルミニウムでがドーピングされたリチウム遷移金属酸化物と共にLi3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含むことにより、リチウム二次電池に適用時に電池の安定性を改善することができるリチウム二次電池の正極用添加剤、この製造方法及びこれを含むリチウム二次電池の正極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1側面によれば、
本発明は、リチウム遷移金属酸化物、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含み、前記リチウム遷移金属酸化物は、アルミニウムがドーピングされた形態であるリチウム二次電池の正極用添加剤を提供する。
【0011】
本発明の一具体例において、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されるものである。
【0012】
[化学式1]
Li2Ni1-xAlxO2
(ここで、xは0.001~0.005である。)
【0013】
本発明の一具体例において、前記リチウム遷移金属酸化物は添加剤の総重量を基準として75~90重量%で含まれる。
【0014】
本発明の一具体例において、前記Li3PO4は添加剤の総重量を基準として1~10重量%で含まれる。
【0015】
本発明の一具体例において、前記Li5AlO4は添加剤の総重量を基準として0.5~5重量%で含まれる。
【0016】
本発明の一具体例において、前記Li3BO3は添加剤の総重量を基準として0.1~3重量%で含まれる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記Li3BO3の一部は、リチウム遷移金属酸化物にコーティングされた状態で存在する。
【0018】
本発明の一具体例において、前記添加剤はNiOをさらに含む。
【0019】
本発明の一具体例において、前記NiOは添加剤の総重量を基準として5~15重量%で含まれる。
【0020】
本発明の第2側面によれば、
本発明は、前述したリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法であって、(1)遷移金属ソース物質、リチウムソース物質、リンソース物質、アルミニウムソース物質及びホウ素ソース物質を混合して混合物を製造する工程;及び(2)前記混合物を熱処理する段階を含むリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の一具体例において、前記(1)段階において、遷移金属ソース物質はNiOであり、リチウムソース物質はLi2O、LiOHまたはLi2CO3であり、リンソース物質は(NH4)2HPO4であり、アルミニウムソース物質はAl(OH)3であり、ホウ素ソース物質はB(OH)3である。
【0022】
本発明の一具体例において、前記(2)段階において、混合物は300~700℃で10~32時間熱処理される。
本発明の第3側面によれば、
【0023】
本発明は、前述した添加剤及び正極活物質を含み、前記添加剤は、正極活物質100重量部を基準として10~40重量部で含まれるリチウム二次電池の正極を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るリチウム二次電池の正極用添加剤は、リチウム遷移金属酸化物、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含み、前記リチウム遷移金属酸化物はアルミニウムがドーピングされた状態である。
【0025】
前記リチウム遷移金属酸化物と共にLi3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含む添加剤はリチウム二次電池の正極に適用時、電池の安定性を改善することができる機能性を有する。具体的に、一般的なリチウム遷移金属酸化物はリチウム二次電池の正極に適用時、電解液と副反応が起こり、電池内ガスを発生させるなど安定性が落ちる問題が発生することがあるが、前記Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3はリチウム遷移金属酸化物と均一に混合されるか、または一部のコーティング層を形成し、一部のアルミニウムはリチウム遷移金属酸化物にドーピングされ、リチウム遷移金属酸化物が電解液と副反応を引き起こすことを抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明により提供される具体例は、以下の説明によりすべて達成されることができる。以下の説明は本発明の好ましい具体例を記述すると理解されなければならず、本発明が必ずしもこれに限定されないことを理解しなければならない。
【0027】
本明細書に記載された物性について、測定条件及び方法が具体的に記載されていない場合、前記物性は、当該技術分野において通常の技術者が一般的に使用する測定条件及び方法に従って測定される。
【0028】
添加剤及び正極活物質
本発明は、リチウム遷移金属酸化物、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含むリチウム二次電池の正極用添加剤を提供する。
【0029】
前記リチウム遷移金属酸化物は、正極活物質と共に混合されて正極活物質の電極容量などの性能を補完する機能を果たす。前記リチウム遷移金属酸化物において、遷移金属は、CO、Ni、Cu、Mn、Fe及びこれらの組み合わせから選択され、具体的に、リチウム遷移金属酸化物は、一般に正極活物質として用いられるLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-yCoyO2(0<y<1)、LiCo1-yMnyO2、LiNi1-yMnyO2(0<y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNizO4(0<z<2)、LiMn2-zCozO4(0<z<2)及びこれらの組み合わせから選択することができるが、不可逆容量の大きいSi系の負極活物質と共に活用できるようにリチウムを過過量含有するLi2NiO2、Li2CuO4、Li6CoO4などのような不可逆性のリチウム遷移金属酸化物を用いることができる。本発明の一具体例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物はLi2NiO2である。前記Li2NiO2の場合、Li2OとNiOの固相法で合成されるが、合成率が低く、基本的に未反応物としてLi2OとNiOが残るようになる。このようなLi2OとNiOの場合は容量発現が難しく、Li2Oの場合はLiOH及びLi2CO3に変換することができ、それによる電極製造過程中にゲル化現象が発生し、充・放電及び高温貯蔵中にガスが発生する問題がある。本発明の一具体例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物はアルミニウムがドーピングされた形態である。これは、添加剤の製造において、共に添加されるアルミニウムソース物質やリンソース物質などにより影響を受けるからである。アルミニウムがドーピングされたリチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1のように表すことができる。
【0030】
[化学式1]
Li2Ni1-xAlxO2
(ここで、xは0.001~0.005、具体的に0.0015~0.004、より具体的に0.002~0.003である。)
【0031】
本発明において、リチウム二次電池の正極用添加剤としてリチウム遷移金属酸化物と共に含まれるLi3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3は、リチウム遷移金属酸化物にコーティングされ、電解液との副反応を抑制するのに特に優れた効果を有するため、リチウム遷移金属酸化物の中でもLi2NiO2と共に用いる場合、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3の添加によるより優れた電池性能の改善効果が期待できる。
【0032】
本発明の一具体例によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、添加剤の総重量を基準として75~90重量%、好ましくは77~87重量%、より好ましくは80~85重量%で含まれる。リチウム遷移金属酸化物は、正極活物質の電極容量などの性能を補完する機能を有する添加剤で、リチウム二次電池の性能発現のために一定の水準以上の含有量が要求されるが、安定性の問題が発生することがあり、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3の添加物質との比率を適切に調節しなければならない。前記リチウム遷移金属酸化物が添加剤の総重量を基準として75重量%未満で含まれる場合、基本的なリチウム二次電池の性能が落ちることがあり、前記リチウム遷移金属酸化物が添加剤の総重量を基準として90重量%超で含まれる場合、全体的な正極の安定性に問題が発生する可能性がある。
【0033】
本発明に係る添加剤は、製造過程でリンソース物質を添加してLi2Oなどと反応させることにより、Li3PO4を含む。前記リンソース物質は、以下の「添加剤の製造方法」において具体的に記述する。前記Li3PO4はリチウム遷移金属酸化物の安定性を改善し、特にリチウム遷移金属酸化物が電解液と反応して電池内でガスを発生させることを抑制することができる。または、添加剤の製造過程で一定の水準以上のリンソース物質を含む場合、一部のアルミニウムがリチウム遷移金属酸化物にドーピングされて位置することができるように助ける。本発明の一具体例によれば、前記Li3PO4は添加剤の総重量を基準として1~10重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは3~6重量%で含まれる。前記Li3PO4が添加剤の総重量を基準として1重量%未満で含まれる場合、リチウム二次電池の安定性改善効果が微小であり得、前記Li3PO4が添加剤の総重量を基準として10重量%超で含まれる場合、相対的に他の成分含有量が減少し、リチウム二次電池の性能の側面から好ましくない。
【0034】
本発明に係る添加剤は、製造過程でアルミニウムソース物質を添加してLi2Oなどと反応させることにより、Li5AlO4を含む。前記アルミニウムソース物質は、以下の「添加剤の製造方法」において具体的に記述する。前記アルミニウムソース物質により供給されたアルミニウムの一部は、リチウム遷移金属にドーピングされてもよい。アルミニウムがドーピングされると、リチウム遷移金属酸化物は前記化学式1のように表すことができる。アルミニウムは、hインデックス(index)に関連する面にドーピングされると、ピークスプリッティング(peak splitting)を発生させながらNi溶出を低減させることができる。本発明の一具体例によれば、前記Li5AlO4は添加剤の総重量を基準として0.5~5重量%、好ましくは1~4重量%、より好ましくは1.5~3重量%で含まれる。前記Li5AlO4が添加剤の総重量を基準として0.5重量%未満で含まれる場合、リチウム二次電池の安定性改善効果が微小であり得、前記Li5AlO4が添加剤の総重量を基準として5重量%超で含まれる場合、相対的に他の成分含有量が減少し、リチウム二次電池の性能の側面から好ましくない。
【0035】
本発明に係る添加剤は、製造過程でホウ素ソース物質を添加してLi2Oなどと反応させることにより、Li3BO3を含む。前記ホウ素ソース物質は、以下の「添加剤の製造方法」において具体的に記述する。本発明の一具体例によれば、前記Li3BO3の一部はリチウム遷移金属酸化物にコーティングされた状態で存在する。これはホウ素原子の性質に起因する。前記Li3BO3はリチウム遷移金属酸化物の安定性を改善し、特にリチウム遷移金属酸化物が電解液と反応して電池内でガスを発生させることを抑制することができる。本発明の一具体例によれば、前記Li3BO3は、添加剤の総重量を基準として0.1~3重量%、好ましくは0.3~2重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%で含まれる。前記Li3BO3は、他の添加物に比べて相対的に少量でもリチウム二次電池の安定性改善効果に優れる。前記Li3BO3が添加剤の総重量を基準として0.1重量%未満で含まれる場合、リチウム二次電池の安定性改善効果が微小であり得、前記Li3BO3が添加剤の総重量を基準として3重量%超で含まれる場合、相対的に他の成分含有量が減少し、リチウム二次電池の性能の側面から好ましくない。
【0036】
リチウム遷移金属酸化物と共に含まれるLi3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3の添加物質は、1または2種類の物質を同一または多量含有するとしても、3種類の物質を同時に使用するのに比べてリチウム二次電池の安定性において優れる効果がない。3種類の添加物質はそれぞれの個別の機能性を有し、共に使用するときリチウム二次電池の安定性において相乗効果が現れる。
【0037】
本発明に係る添加剤は、リチウム遷移金属酸化物、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3と共にNiOをさらに含むことができる。前記NiOは、添加剤の製造過程で添加される遷移金属ソース物質中の1つであり、これは反応性の小さい安定な化合物であって未反応状態で添加剤中に存在することができる。添加剤において用いられるリチウム遷移金属酸化物の遷移金属の種類によって、NiOでNiはCO、Cu、Mn及びFeなどのような物質に置き換えることができる。本発明の一具体例によれば、前記NiOは添加剤の総重量を基準として5~15重量%、好ましくは7~13重量%、より好ましくは8~11重量%で含まれる。
【0038】
正極活物質は、リチウム二次電池の正極で電子をやり取りする実質的な正極活物質としての機能を果たすもので、当該技術分野において一般的に使用される物質を用いることができる。具体的に、前記正極活物質は、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-yCoyO2(0<y<1)、LiCo1-yMnyO2、LiNi1-yMnyO2(0<y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNizO4(0<z<2)、LiMn2-zCozO4(0<z<2)及びこれらの組み合わせから選択することができる。前記添加剤は、正極活物質の電極容量を補完する役割を果たすため、正極活物質との関係を考慮して、適切に含有量を調節することができる。本発明の一具体例によれば、前記添加剤は、正極活物質100重量部を基準として10~40重量部、好ましくは10~30重量部、より好ましくは10~20重量部で含まれる。前記範囲内に添加剤を投入する場合、正極活物質の性能改善効果に優れる。
【0039】
添加剤の製造方法
本発明は、前述したリチウム二次電池の正極用添加剤の製造方法を提供する。前期製造方法は、(1)遷移金属ソース物質、リチウムソース物質、リンソース物質、アルミニウムソース物質、及びホウ素ソース物質を混合して混合物を製造する段階;及び(2)前記混合物を熱処理する段階を含む。
【0040】
前記(1)段階において、遷移金属ソース物質は、最終正極活物質に含まれるリチウム遷移金属酸化物などに遷移金属を供給する物質であり、一般に遷移金属酸化物であってもよい。本発明の一具体例によれば、前記遷移金属ソース物質はNiOである。前記リチウムソース物質は、最終添加剤に含まれるリチウム遷移金属酸化物、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3などにリチウムを供給する物質であり、一般にリチウム酸化物であってもよい。本発明の一具体例によれば、前記リチウムソース物質はLi2O、LiOHまたはLi2CO3である。前記リンソース物質は、最終添加剤に含まれるLi3PO4などにリンを供給する物質であり、一般にリン酸アンモニウムであってもよい。本発明の一具体例によれば、前記リンソース物質は(NH4)2HPO4である。前記アルミニウムソース物質は、最終添加剤に含まれるLi5AlO4などにアルミニウムを供給する物質であり、一般に水酸化アルミニウムであってもよい。本発明の一具体例によれば、前記アルミニウムソース物質はAl(OH)3である。前記ホウ素ソース物質は、最終添加剤に含まれるLi3BO3などにホウ素を供給する物質であり、一般にホウ酸であってもよい。本発明の一具体例によれば、前記ホウ素ソース物質はB(OH)3である。
【0041】
前記(1)段階において、遷移金属ソース物質、リチウムソース物質、リンソース物質、アルミニウムソース物質及びホウ素ソース物質は、前述した添加剤の構成成分の含有量に合わせて適切な量で投入することができる。本発明の一具体例によれば、前記ソース物質を混合時、NiO及びLi2Oの含有量は、Li2Oのモル/NiOのモルが1.5~2.5、具体的に1.7~2.3、より具体的に1.9~2.1となるように調節することができ、B(OH)3の含有量は、BがNiOとLi2Oの総重量を基準として500~7,000ppm、具体的に750~4,500ppm、より具体的に1,000~2,000ppmとなるように調節することができる。本発明の一具体例によれば、Al(OH)3の含有量は、NiOのモルを基準として0.005~0.05モル%、具体的に0.01~0.04モル%、より具体的に0.01~0.03モル%となるように調節することができ、(NH4)2HPO4の含有量は、PがNiOとLi2Oの総重量を基準として1~7重量%、具体的に1.5~6重量%、より具体的に2~5.5重量%となるように調節することができる。
【0042】
前記(1)段階で製造された混合物を熱処理して添加剤を製造する。熱処理は混合物を焼成して前述した添加剤の構成成分が得られる程度であれば十分であり、本発明の一具体例によれば、前記(2)段階において、混合物は300~700℃、好ましくは300~600 ℃、より好ましくは300~500℃で10~32時間、好ましくは10~26時間、より好ましくは10~20時間熱処理される。
【0043】
リチウム二次電池
本発明は、正極、負極、分離膜及び電解質を含むリチウム二次電池を提供する。前記リチウム二次電池において正極と負極とは対向して位置し、分離膜は正極と負極との間に介在する。正極、負極及び分離膜の電極組立体は電池容器に収納され、電池容器は電解質で満たされる。
【0044】
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体上に形成され、前述した添加剤及び正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0045】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレススチール表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有してもよく、前記正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布など、様々な形態で用いることができる。
【0046】
前記正極活物質層は、前述した添加剤及び正極活物質と共に、導電材及びバインダーを含むことができる。
【0047】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるもので、構成される電池において、化学変化を起こすことなく電子伝導性を有するものであれば特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物を用いることができる。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%含まれてもよい。
【0048】
前記バインダーは、正極活物質の粒子間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物を用いることができる。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して1~30重量%で含まれてもよい。
【0049】
前記添加剤及び正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して60~95重量%で含まれてもよい。
【0050】
前記正極は、前述した添加剤及び正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法によって製造することができる。具体的には、前述した添加剤及び正極活物質と選択的に、バインダー及び導電材を含む正極活物質層の形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することによって製造することができる。このとき、前記添加剤、正極活物質、バインダー、導電材の種類及び含有量は前記説明した通りである。
【0051】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に用いられる溶媒であってもよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうちの1種単独または2種以上の混合物を用いることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布の厚さ、製造収率を考慮して前記添加剤、正極活物質、導電材及びバインダーを溶解または分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さの均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0052】
別の方法として、前記正極は、前記正極活物質層の形成用組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造することもできる。
【0053】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0054】
前記負極活物質層は、負極活物質と共に選択的にバインダー及び導電材を含む。
【0055】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物を用いることができる。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;あるいはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料とを含む複合体などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物を用いることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜を用いてもよい。また、炭素材料は、低結晶炭素及び高結晶性炭素などの両方を用いることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0056】
前記バインダー、導電材及び負極集電体は、前述した正極での構成を参照して選択することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。また、前記負極集電体上に負極活物質層を形成する方法は、正極と同様に公知の塗布方法により特に限定されるものではない。
【0057】
前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、リチウム二次電池において分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子から製造した多孔性高分子フィルムまたはこれら2層以上の積層構造体を用いることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を用いることもできる。また、耐熱性または機械的強度を確保するために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜を用いることもでき、選択的に単層または多層構造で用いることができる。
【0058】
本発明において用いられる電解質としては、リチウム二次電池に製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0059】
具体的に、前記電解質は有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0060】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たすことができるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的に、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(demethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボン(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(Rは、C2~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などを用いることができる。この中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充・放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1~約1:9の体積比で混合して用いることが電解液の性能に優れて示されることができる。
【0061】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく用いることができる。具体的に、前記リチウム塩は、LiN(FSO2)2、LiSCN、LiN(CN)2、LiN(CF3SO2)2、LiN(CF3CF2SO2)2、LiPF6、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiNO3、LiClO4、LiAlO4、LiAlCl4、LiSbF6、LiAsF6、LiBF2C2O4、LiBC4O8、Li(CF3)2PF4、Li(CF3)3PF3、Li(CF3)4PF2、Li(CF3)5PF、Li(CF3)6P、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiCF3CF2SO3、LiCF3CF2(CF3)2CO、Li(CF3SO2)2CH、LiCF3(CF2)7SO3、LiCF3CO2、LiCH3CO2及びこれらの組み合わせを用いることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0062】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量向上などを目的で、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。このとき、前記添加剤は電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれてもよい。
【0063】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れる放電容量、出力特性及び容量維持率を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0064】
これにより、本発明の他の一具体例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0065】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle 、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイス電源として利用することができる。
【0066】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0067】
実施例1
NiO、Li2O、B(OH)3、Al(OH)3及び(NH4)2HPO4を混合した後、製造された混合物を300℃で10時間熱処理して添加剤を製造した。混合時、NiO及びLi2Oの含有量は、Li2Oのモル/NiOのモルが2.03となるように調節し、B(OH)3の含有量は、BがNiOとLi2Oの総重量を基準として1,500ppmとなるように調節した。また、Al(OH)3の含有量は、NiOのモルを基準として0.03モル%となるように調節し、(NH4)2HPO4の含有量は、PがNiOとLi2Oの総重量を基準として5.5重量%となるように調節した。
【0068】
比較例1
実施例1と異なり、B(OH)3を用いず、NiO、Li2O、Al(OH)3及び(NH4)2HPO4を混合した後、製造された混合物を700℃で10時間熱処理して添加剤を製造した。混合時、NiO、Li2O、Al(OH)3及び(NH4)2HPO4の含有量は実施例1と同様に調節した。
【0069】
比較例2
添加剤として、Li2NiO2及びLi5AlO4を含む製品(製造社:ポスコケミカル、製品名:DN20)を準備した。
【0070】
比較例3
添加剤として、Li2NiO2及びLi3PO4を含む製品(製造社:ポスコケミカル、製品名:DN40)を準備した。
【0071】
実験例
実験例1:添加剤の構成成分分析
X線回折計装置(製造社:BRUKER NANO、製品名:Bruker D8 Advance)を用いてX線回折分析法で実施例1と比較例1~3の添加剤の構成成分を分析し、下記表1に示す。
【0072】
【0073】
リチウム二次電池の製造
実施例1及び比較例1~3により製造された添加剤の性能を確認するためにリチウム二次電池を製造した。具体的に、実施例1と比較例1~5のそれぞれの添加剤を正極活物質であるLiNi0.83Co0.11Mn0.06O2と9:1(正極活物質:添加剤)の重量比で混合後、N‐メチルピロリドン溶媒中でカーボンブラック導電材とPVDFバインダーと85:10:5(添加剤+正極活物質:導電材:バインダー)の重量比で混合して正極活物質スラリーを製造し、これをアルミニウム集電体(20μm)の一面に塗布した後(ローディング量:0.2~0.3mg/25cm2)、130℃で20分以上乾燥後、空隙率26%となるように1~2回圧延して正極を製造した。
【0074】
負極は、天然黒鉛と人造黒鉛が5:5で混合された電極を用い、正極と負極との間に多孔性ポリエチレンの分離膜を介在して電極組立体を製造した。前記電極組立体を電池ケースの内部に位置させた後、ケース内部に電解質を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液は、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/EMCの混合体積比=3/7)からなる有機溶媒に0.7M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)と0.3M濃度のリチウムビス(フルオロ)スルホニル)イミド(LiFSI)を溶解させて製造した。
【0075】
製造されたリチウム二次電池は、実験例2及び3の性能評価のために活用された。
【0076】
実験例2:リチウム二次電池のサイクルによるガス発生量の分析
製造されたそれぞれのリチウム二次電池について、45℃で10時間保管後、2.5~4.2V領域で0.1C(Cレート)で充放電して形成した後、SOC0状態で初期形成ガス発生量を測定した。この後、0.33C(Cレート)で10、30、50サイクル毎にセルのガス発生変化量をアルキメデス原理を用いて体積で測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0077】
【0078】
前記表2によれば、本発明に係る添加剤は、リチウム遷移金属酸化物において遷移金属の一部がアルミニウムでドーピングされ、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含むことにより、サイクルが進行するにつれてガス発生量の増加値が徐々に減少することを確認することができる。このようなガス発生量の減少は、50サイクル以上進行する電池の長期的な寿命向上に寄与することができる。
【0079】
実験例3:リチウム二次電池のガス貯蔵量分析
製造されたそれぞれのリチウム二次電池について、45℃で10時間保管後、2.5~4.2V領域で0.1C(Cレート)で充電させてSOC100にセッティングした後、60℃の高温チャンバーで4週間保管し、1週間毎にセルのガス発生変化量をアルキメデスの原理を用いて測定した。測定結果を下記表3に示す。
【0080】
【0081】
前記表3によれば、本発明に係る添加剤は、リチウム遷移金属酸化物において遷移金属の一部がアルミニウムでドーピングされ、Li3PO4、Li5AlO4及びLi3BO3を含むことにより、一定の水準の時間が経過した後にもガス発生量が低く維持されることを確認することができる。本発明に係る添加剤は、サイクルの進行だけでなく時間の流れについてもガス発生量が少なく、電池の長期的な寿命向上に寄与することができる。
【0082】
実験例4:添加剤の含有量によるリチウム二次電池の初期充・放電容量の分析
前述した実施例1の添加剤を用いたリチウム二次電池について、リチウム二次電池の製造時、正極活物質と添加剤の混合重量比を100:0、90:10、80:20、0:100にそれぞれ調節してリチウム二次電池を製造した。製造されたそれぞれのリチウム二次電池について、45℃で10時間保管後、2.5~4.2V領域で0.1C(Cレート)で充・放電時の初期充・放電容量を測定し、下記表4に示す。
【0083】
【0084】
前記表4によれば、実施例1で製造されたLi2NiO2(少量のリチウムがドーピングされた状態)を主成分とする添加剤は、不可逆性のリチウムを過量含有しており、添加剤の含有量が高くなるほど前記不可逆性のリチウムが活用される初期充電容量が増加することが確認することができる。特に、添加剤の含有量が90:10または80:20となる場合、初期放電容量は大きく低下することなく、かつ初期充電容量を有意に増加させることができ、不可逆の負極活物質と効率的に組み合わせて活用することができる。
【0085】
本発明の単なる変形ないし変更はすべて本発明の範囲に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲により明らかになるであろう。