(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵のためのプラント及びプロセス
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20240912BHJP
F01K 3/12 20060101ALI20240912BHJP
F02C 1/05 20060101ALI20240912BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240912BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F01K25/10 Z
F01K3/12
F02C1/05
F25B1/00 396D
F28D20/02 D
F25B1/00 396E
(21)【出願番号】P 2023518174
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 IT2020000068
(87)【国際公開番号】W WO2022064533
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521353506
【氏名又は名称】エナジー ドーム エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】ENERGY DOME S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】スパダチーニ, クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】リッツィ, ダリオ
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0175585(US,A1)
【文献】特開平10-238366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0184590(US,A1)
【文献】特表2013-510257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0192330(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0073802(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333139(US,A1)
【文献】特開平10-238367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0221807(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0058768(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0282840(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108252750(CN,A)
【文献】中国実用新案第203239401(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01K 3/12
F02C 1/05
F25B 1/00
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵のためのプロセスであって、
0℃よりも低い臨界温度(T
c)を有する作動流体を貯蔵するためのベーシン(2)と、前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記臨界温度(T)に近い貯蔵温度(T
s)で貯蔵するためのタンク(3)との間で、まず貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて一方方向に、次いで放電構成/放電ステップにおいて反対方向に、周期的熱力学的変換(TTC)を作動させるステップを含み、前記貯蔵ステップにおいて、前記プロセスが、熱及びポテンシャルエネルギーを圧力の形態で貯蔵し、前記放電ステップにおいてエネルギーを生成し、
前記貯蔵ステップにおいて、前記作動流体を前記少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記貯蔵温度(T
s)で前記タンク(3)に貯蔵するために、まず顕熱及びその後に潜熱が、少なくとも1つの熱媒体を用いて前記作動流体から除去され、
前記放電ステップにおいて、まず潜熱及びその後に顕熱が、前記少なくとも1つの熱媒体を用いて前記作動流体に伝達される、プロセス。
【請求項2】
前記貯蔵ステップが、前記作動流体から前記顕熱及び前記潜熱を除去する前に、前記作動流体を圧縮し、その後、終端圧縮圧力に実質的に等しい又は近い貯蔵圧力において前記作動流体を前記タンク(3)に貯蔵することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記放電ステップが、前記潜熱及び前記顕熱を前記作動流体に伝達した後に、膨張前の圧力のいかなる増大もなく、前記作動流体を膨張させることを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記貯蔵ステップにおいて、前記顕熱が第1の熱媒体により除去され、前記潜熱が第2の熱媒体により除去され、前記放電ステップにおいて、前記潜熱が前記第2の熱媒体により伝達され、前記顕熱が前記第1の熱媒体により伝達される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記作動流体が、単一成分、任意選択で窒素若しくは酸素若しくはメタン、又は混合物、任意選択で空気若しくは天然ガスである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ベーシン(2)が実質的に一定の圧力であり、任意選択で、前記ベーシン(2)が大気である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記作動流体の前記臨界温度(T
c)が、-70℃よりも低く、任意選択で-100℃よりも低く、任意選択で-150℃よりも低く、任意選択で-180℃よりも低く、任意選択で-200℃よりも低い、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
エネルギー貯蔵のためのプラントであって、
0℃よりも低い臨界温度(T
c)を有する作動流体と、 前記作動流体のためのベーシン(2)と、
前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記臨界温度(T
c)に近い貯蔵温度(T
s)で貯蔵するように構成されている少なくとも1つのタンク(3)と、
前記ベーシン(2)と前記タンク(3)との間に動作可能に介設されており、直接及び/又は間接的に前記ベーシン(2)を前記タンク(3)と接続するパイプであり、
前記ベーシン(2)から前記タンク(3)まで延伸する少なくとも1つの貯蔵経路、
前記タンク(3)から前記ベーシン(2)まで延伸する少なくとも1つの放電経路
を画定するパイプと、
前記パイプに沿って配置されており、前記作動流体を膨張させるように構成されている少なくとも1つのエキスパンダ(4)と、
前記パイプに沿って配置されており、前記作動流体を圧縮するように構成されている少なくとも1つのコンプレッサ(5)と、
前記エキスパンダ(4)及び前記コンプレッサ(5)に動作可能に接続されている少なくとも1つの動作/駆動機械(6)と、
前記パイプに沿って配置されており、前記コンプレッサ(5)と前記タンク(3)との間及び前記タンク(3)と前記エキスパンダ(4)との間に動作可能に介設されている少なくとも1つの蓄熱部(8)とを備え、
前記プラント(1)が、前記ベーシン(2)と前記タンク(3)との間で、まず貯蔵構成において一方方向に、次いで放電構成において反対方向に、前記作動流体による周期的熱力学的変換(TTC)を作動させるように構成されており、
前記少なくとも1つの蓄熱部(8)が、前記作動流体を前記少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記貯蔵温度(T
s)で貯蔵するために、前記貯蔵構成において、まず顕熱及びその後に潜熱を前記作動流体から吸収するように構成されており、
前記少なくとも1つの蓄熱部(8)は、前記放電構成において、潜熱及びその後に顕熱を前記作動流体に伝達するように構成されている、プラント。
【請求項9】
いかなるスロットル/膨張部材も前記コンプレッサ(5)と前記蓄熱部(8)との間に介設されることなく、前記コンプレッサ(5)の出口(5b)が前記少なくとも1つの蓄熱部(8)に直接接続されている、請求項8に記載のプラント。
【請求項10】
いかなるポンプも前記蓄熱部(8)と前記エキスパンダ(4)との間に介設されることなく、前記少なくとも1つの蓄熱部(8)が前記エキスパンダ(4)の入口(4a)に直接接続されている、請求項8又は9に記載のプラント。
【請求項11】
前記少なくとも1つの蓄熱部(8)が、
顕熱を前記作動流体に伝達する又は顕熱を前記作動流体から吸収するように構成されている第1のセクションと、
潜熱を前記作動流体に伝達する又は潜熱を前記作動流体から吸収するように構成されている第2のセクションとを備える、請求項8~10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
前記少なくとも1つの蓄熱部(8)が、
前記パイプに沿って配置されており、前記コンプレッサ(5)と前記タンク(3)との間及び前記タンク(3)と前記エキスパンダ(4)との間に動作可能に介設されている少なくとも1つの第1の蓄熱部(9)であって、顕熱を前記作動流体に伝達する又は顕熱を前記作動流体から吸収するように構成されている第1の蓄熱部(9)と、
前記パイプに沿って配置されており、前記第1の蓄熱部(9)と前記タンク(3)との間に動作可能に介設されており、又は少なくとも部分的に前記タンク(3)に一体化されている少なくとも1つの第2の蓄熱部(10)であって、潜熱を前記作動流体に伝達する又は潜熱を前記作動流体から吸収するように構成されている第2の蓄熱部(10)とを備える、請求項8~10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項13】
前記ベーシン(2)が大気であり、前記作動流体が空気である、請求項8~12のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項14】
前記少なくとも1つのエキスパンダ(4)が、圧縮空気ユーザ機械、任意選択で鉄鋼プラントの一部又は空気分離ユニットの一部である、請求項8~13のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項15】
前記作動流体中に存在する二酸化炭素
を回収
するためのデバイス(11)を備える、請求項13に記載のプラント。
【請求項16】
二酸化炭素
を回収
するための前記デバイス(11)が、前記作動流体が流れる前記パイプに動作可能に結合されており、又は、前記少なくとも1つの蓄熱部(8)に動作可能に結合され若しくは一体化され
ている、請求項15に記載のプラント。
【請求項17】
二酸化炭素を回収するための前記デバイス(11)が、前記少なくとも1つの蓄熱部(8)に動作可能に結合され若しくは一体化されている場合、二酸化炭素を回収するための前記デバイス(11)が、前記第1の蓄熱部に動作可能に結合され若しくは一体化されている、請求項12を間接的に引用する請求項16に記載のプラント。
【請求項18】
二酸化炭素
を回収
するための前記デバイス(11)が、前記作動流体のためのタンク(29)と、混合物を冷却し、二酸化炭素を凝固させるように構成されている要素(33、37、38)と、前記タンク(29)において凝固した二酸化炭素を前記タンク(29)から抽出するための、任意選択で機械的な
、システム(35、36、39)とを備える、請求項16
又は17に記載のプラント。
【請求項19】
前記放電経路に動作可能に配置されており、少なくとも前記少なくとも1つの蓄熱部(8)と前記少なくとも1つのエキスパンダ(4)との間に配置されているさらなる熱交換器(16)を備え、前記さらなる熱交換器(16)が外部熱源(17)に動作可能に結合されている、請求項8~
18のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項20】
前記放電経路に動作可能に配置されており、少なくとも前記少なくとも1つの蓄熱部(8)と前記少なくとも1つのエキスパンダ(4)との間に配置されている少なくとも1つの燃焼室(20)を備え、前記作動流体が、前記燃焼室(20)を通って流れ、前記燃焼室(20)において生成された燃焼による熱を受け取る、請求項8~
18のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項21】
エキスパンダ(4)の放出から残留熱を回収するために、「ボトミング」システム(21)が、前記プラント(1)の前記放電経路に、任意選択で前記少なくとも1つのエキスパンダ(4)と前記ベーシン(2)との間に、動作可能に結合されている、請求項8~
20のいずれか一項に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵のためのプラント及びプロセスを対象とする。
【0002】
より正確には、本発明は、供給力が過剰である又は消費量が乏しい期間においてネットワーク又はシステムからの電気エネルギーを吸収/使用することが可能であり、貯蔵したエネルギーを経時的に維持することが可能であり、且つ、それを電気エネルギーに変換し、前記電気エネルギーの要求時にネットワークに再導入することが可能なシステムを対象とする。より詳細には、本発明は、電気エネルギーをポテンシャルエネルギー(圧力)及び熱的/熱力学的エネルギーの形態で貯蔵するためのシステムに関する。本発明は、典型的には数百kW~数十MW(例えば20~25MW)、さらに数百MWまでもの範囲の電力を有し、数百kWh~数百MWh、さらには数GWhまでの範囲の貯蔵容量を有する、陸上及び海上両方の用途のための、中型及び大規模のエネルギー貯蔵システムの分野に位置付けられる。本発明はまた、典型的には数kW~数百kWの範囲の電力を有し、数kWh~数百kWh及び数MWh又は数十MWhまでの範囲の貯蔵容量を有する、定置型並びに陸上輸送(列車、商用車、自動車)及び海上輸送用の、家庭及び商業用途のための、小規模エネルギー貯蔵システムの分野に位置付けられてもよい。
【0003】
本発明はまた、力学的/電気エネルギーの貯蔵及び生産のためのプラントの分野に位置付けられ、本発明は、本特許自体において説明されている様々な構成において、回収熱の使用及び/又はさらなる燃料の燃焼により貯蔵される量よりも大きい量においても、供給力が過剰である又は消費量が乏しい期間においてネットワーク又はシステムからの電気エネルギーを吸収/使用することが可能であり、貯蔵したエネルギーを経時的に維持することが可能であり、且つ、それを電気エネルギーに変換することが可能なシステムを対象とする。
【定義】
【0004】
本説明及び添付の特許請求の範囲において、以下の定義が参照される。
【0005】
熱力学サイクル(CT):点Xから点Yへの熱力学的変換であり、XはYと一致する。CTは、以下で説明するTTC(周期的熱力学的変換)とは異なり、サイクル内に質量貯蔵部(主にエネルギー目的)を有しないが、TTCは典型的に、一方は作動流体の初期状態、他方は最終状態の2つの貯蔵部の間で動作する。
【0006】
周期的熱力学的変換(TTC):必ずしも同じ中間点を通過しない、点Xから点Yへ、及び点Yから点Xへの熱力学的変換である。
【0007】
クローズドCT及び/又はTTC:大気との質量交換(主にエネルギー目的)がないもの。
【0008】
オープンCT及び/又はTTC:大気との質量交換(主にエネルギー目的)があるもの。
【0009】
周期的熱力学的変換(TTC):必ずしも同じ中間点を通過しない、点Xから点Yへ、及び点Yから点Xへの熱力学的変換である。
【0010】
臨界点:それを超えると物質が二相の気液混合物として存在できなくなり、超臨界流体として存在するようになる温度及び圧力の値の特定の対。臨界相に対応する圧力は、超臨界圧力と称され、臨界相に対応する温度は、臨界温度と称される。
【0011】
ベーシン:流体によって占有されている、又は占有されるように構成される空間。
【背景技術】
【0012】
近年、生産のばらつき及び予測不能性を特徴とする再生可能資源、特に風力及び太陽光資源からエネルギーを生産するためのシステムの普及が進み続けていることに起因して、電気エネルギー貯蔵システムが重要性を増し続けている。
【0013】
典型的には高いコスト及び限られた耐用寿命を有する電気化学的原理(バッテリ)、少量の貯蔵エネルギーのみに好適な力学的原理(フライホイール)に従って機能するシステムに加えて、今日用いられている、又は開発中若しくはいずれにせよ既知のシステムは、以下のものを含む。
【0014】
主に用いられているシステムは、現在全世界に設置されている貯蔵容量の90%超をカバーする、揚水発電のための貯蔵システム(揚水蓄電、PHS)である。前記システムは、長期的貯蔵及び短期的貯蔵の両方に好適であり、コストに関して相当の競争力があるが、特定の地形学的条件を有する場所でしか実現することができないという欠点がある。前記PHSシステムは、エネルギーをポテンシャルの形態、特に重力の形態で貯蔵するためのシステムの1つである。重力システムの群にはさらに、英国特許出願公開第2518125号の文献に準拠するシステムがある。
【0015】
用いられている第2のシステムは、CO2などの大気温度に近い臨界温度を有する流体を用いて、大気圧に近い圧力により同流体を臨界圧力に近い圧力まで圧縮して、ポテンシャルエネルギー(圧力)及び(場合により)熱エネルギーへの変換により貯蔵を行うクローズドTTCにより構成される、同じ出願人の名義における国際公開第2020/039416号の文献に記載の知見に準拠するものである。
【0016】
用いられている別のシステムとしては、ポテンシャルエネルギー(圧力)及び(場合により)熱エネルギーへの変換により貯蔵を行うオープンTTCにより構成される、いわゆるシステムCAES(圧縮空気エネルギー貯蔵)がある。そのようなCAESシステムは、基本構成(非断熱)及び最も先進的なAA-CAES(先進断熱CAES、米国特許第4,147,205号、Compressed Air Storage Installationを参照)構成の両方において知られている。既知のCAESシステムは通常、超臨界条件、すなわち、約38barの臨界圧力を超え、周囲温度に近い、したがって約-140℃に等しい空気の臨界温度よりも大幅に高い温度において空気を圧縮することにより動作する。前記システムは、長期的貯蔵及び短期的貯蔵の両方に好適であり、コストに関して相当の競争力があるが、「ラウンドトリップ効率」に関してPHSシステムに対し効率が低く、また、特定の地形学的条件を有する場所でしか経済的競争力をもって形成することができないという欠点がある。
【0017】
CAESシステムはまた、タンク/洞窟の圧力がその充電レベルの変動に伴って変動するというさらなる欠点を有する。これは、TTCの効率、及びそれを実行するターボ機械の効率の両方に影響を及ぼす。
【0018】
CAESシステムのための地下洞窟の存在をなくすためのシステムも知られている。特に、地下洞窟の存在を必要とすることなく、地上タンクへのエネルギーの貯蔵をより経済的に有利にすることを図る解決策が知られている。その一例が、さもなければ前記CAES地上システムのコストを過度に増大させる地上貯蔵タンクのコストの抑制を図るための特別な構造を有するタンクが提案されている、LIGHTSAILによる米国特許出願公開第2011/0204064号において見出される。これらの解決策も、オープンTTCに従って動作するシステムに属する。
【0019】
前出の2つのシステムを組み合わせたシステムも知られており(米国特許第7,663,255号を参照)、ここでは、CAESとPHSとの組み合わせにより、CAESシステムを一定の圧縮圧力で動作させることも可能となる。これらのシステムも、オープンTTCに従って動作する。
【0020】
文献「Novel concept of compressed air energy storage and thermos-electric energy storage」、THESE N.5525(2012)、Ecole Polytechnique Federale de Lousanneは、全てのタイプのCAESエネルギー貯蔵システムを示している。とりわけ、非断熱の、断熱の、等温の、及び、一定の圧縮圧力を可能とするためにPHSと組み合わせた、CAESシステムが提示されている。前記システムは、PHSと組み合わせた定圧CAESと称される。これらも、オープンTTCに従って動作するシステムである。
【0021】
上記の同文献はまた、ABB Corporate Research Centerにより提案されているいわゆるTEES(熱電エネルギー貯蔵)を示している(欧州特許出願公開第2532843号及び欧州特許出願公開第2698506号も参照)。これは、クローズドCTに従って動作するシステムに属し、PHESシステムに属する。PHES(揚水式熱電気貯蔵)システムは、例えばCTランキン、ブレイトン又はカリーナを用いた熱エネルギーへの変換により電気/力学的エネルギーを貯蔵するためのシステムである。
【0022】
CO2又は他の流体による遷臨界及び超臨界サイクルを用い、したがって可逆的な遷・超臨界ランキンサイクルを用いることを可能とする上記のシステムに加えて、典型的には空気又はアルゴンを用いる、ブレイトンサイクルによるPHESシステムが知られている(Isoentropicの欧州特許第2220343号及び米国特許出願公開第2010/0257862号及びLaughlinの米国特許出願公開第2016/0298455号を参照)。これは、クローズドCTに従って動作するシステムに属し、PHESシステムに含まれ得る。
【0023】
PHES/TEESシステムに含まれる別のシステムとしては、充電段階及び放電段階のための2つの異なるサイクルを組み合わせ、特に、蓄熱タンクを高温で充電するステップのための電気加熱要素によるブレイトンサイクル又は単純な放散、及び電気エネルギーを放電/生産するステップのための蒸気ランキンサイクルを実現する、Siemens-Gamesaシステム(米国特許出願公開第2014/0223910号及び米国特許第8,991,183号及び米国特許第8,966,902号を参照)がある。このソリューションのタイプは、PHESシステムに含まれる。これは、多重式のオープンCT及び/又はクローズドCTにより実現される。
【0024】
TEESとも称されるPHESシステムは全て、「クローズド」且つ可逆的な熱力学サイクルの原理に基づくことを認識されたい。提案されている様々な解決策によっては、「クローズド」のランキンサイクル又はブレイトンサイクルがあり得るが、いずれの場合も、略可逆的な熱モータ/ポンプの作動流体が、必要な貯蔵容量に関連したサイズの中間貯蔵部がない「クローズド」の熱力学サイクルに従った変換を実行する。
【0025】
全てのタイプの全てのCAESシステムは代わりに、オープンTTCに従って、まず一方方向に、次いで他方方向に、すなわち大気との空気の取り込み及び返還を行うことにより、実行するシステムである。
【0026】
別の既知のエネルギー貯蔵方法としては、いわゆるLAES(液化空気エネルギー貯蔵、米国特許出願公開第2009/0282840号を参照)システムがある。この方法LAESは、「オープン」な熱力学サイクルに従った、すなわち大気との空気の取り込み及び返還による変換を行う。加えて、そのようなシステムは、大きな技術的困難を伴う-200℃に近い低温において動作する。これも、充電ステップ中ではあるが、オープンTTCに従って動作するシステムに属する。この変換は、点Xから点Yへと移動されるのみでなく、クロード又はリンデ・ハンプソンサイクルとしても知られる熱力学サイクルも実行する。より具体的には、上記の米国特許出願公開第2009/0282840号に準拠するLAESシステムは、「クロード及び/又はリンデ・ハンプソン」と称されるサイクルに従って動作し、液体含有量の高い気液(又は湿り蒸気)混合物を形成するようにスロットルバルブ又はエキスパンダを用いて予め冷却された圧縮空気の圧縮、冷却、再循環及びスロットル/膨張のプロセスにより、約-195℃で大気圧に近い低圧において液体空気を生成する。前記液体は次いで、低圧で液体空気用の好適なタンクに貯蔵され、蒸気は空気冷却交換器に供給される。前記液化プロセスは、放電ステップ中に充電される冷熱エネルギー貯蔵部を利用することもできる。
【0027】
その後の放電ステップにおいて、低圧に置かれた液体空気が、ポンプを用いて圧送され、その後、冷熱エネルギー貯蔵部に熱を伝達することにより加熱される。前記冷熱エネルギー貯蔵システムは、米国特許第9890712号及び米国特許第10550732号においてより容易に特定可能である。
【0028】
米国特許第9890712号及び米国特許第10550732号の文献に準拠するシステムはまた、一連のコンプレッサ及びコンパンダ(コンプレッサ/低温エキスパンダ)による、クロード又はリンデ・ハンプソンサイクル等に従った前出のものと同様のシステムを用いた、約-195℃及び略大気圧での液体空気の生成を伴うLAESシステムを示す。上記のシステムは両方、一事例においては間接的な交換・貯蔵システム、別の事例においてはエキスパンダの下流の貯蔵システムによる、ポンプを用いた液体空気の圧縮及び冷熱エネルギーの回収による放電ステップを行う。
【0029】
Guizzi、Manno、Tolomei、Vitaliによる文献、Thermodynamic analysis of a Liquid Air Energy Storage Systemは、上述のようなLAESタイプのプロセスの最適化パラメータについて記載しており、50~55%程度のRTEに接近することを可能とするために、前記サイクルが150~200bar程度の圧力に達する必要があることを示している。
【0030】
LAESシステムの変形例が、米国特許第9217423号/欧州特許第2500565号及び米国特許出願公開第202000182542号に記載されている。ここで著者らは、彼らのシステムをSC-CAES、すなわち超臨界CAESと称しているが、これは、Gou、Xu、Chen、Zhouによる、同じ著者らによる論文「Thermodynamic characteristics of a novel supercritical compressed air energy storage system」においても示されている。前記システムは、前述のLAESシステムとは異なり、約-195℃及び略大気圧までの同じ空気の液化を、しかし多段階圧縮を用いて、すなわち中間冷却熱の貯蔵により中間冷却して働かせる。
【0031】
しかしながら、結果として生じる蒸気の再循環及びコンプレッサよりも大幅に低い圧力(コンプレッサ送達の約100bar以上に対して約1bar又は数bar)での略大気条件の貯蔵を伴うバルブ/エキスパンダを用いた液化プロセスは不変のままであり、加えて、システムのRTEを50~55%に近い、したがって許容可能なレベルまで増大させるために、加熱及びその後の膨張の前に液体空気の圧力を増大させるためのポンプも必要なままである。
【0032】
先ほどのSC_CAESと称されるが実際にはLAESシステムであるものを含む、上記のLAESシステム全てに共通のさらなる特徴は、スロットルバルブ/低温エキスパンダの前のコンプレッサの最大送達圧力、低圧の液体空気をタンクから吸引する最大ポンプ送達圧力が、典型的には超臨界、すなわち約37barよりも高い圧力であることである。
【0033】
米国特許出願公開第202000182542号の文献も同様に、バルブ/エキスパンダ及びポンプを示している。
【0034】
PCAESと称されるさらなる変形例が、Kim及びChangによる「Pressurised cryogenic air energy storage for efficiency improvement of liquid air energy storage」に示されている。
【0035】
前記システムにおいては、前出のものと異なり、液体空気が約-195℃及び約大気圧で生成される代わりに、超臨界の低温空気が約40bar及び約-140℃で生成される。そのようなシステムには常に、コンプレッサの送達圧力(負荷損失を除く、約120barで示される)から臨界圧力よりもわずかに高い貯蔵圧力(すなわち、37.8barよりもわずかに高い約40bar)に減圧する減圧システム(貯蔵の前のエキスパンダ)が存在する。向上したRTEを得るために、放電ステップの蒸発及び膨張の前に流体を加圧する、貯蔵システムの下流の同じポンプも存在する。前記加圧は大きく、文献では、貯蔵の約40barを開始点として70barで示されている。
【0036】
前記システムは、前出のシステムと同様に、貯蔵の圧力よりも高い圧力での圧縮のステップ、この場合は約臨界圧力まで、他の場合には約大気圧までの減圧、及びその後の低温ポンプを用いた貯蔵の下流の加圧、並びに冷熱エネルギーの回収及び貯蔵による加熱及びその後の膨張を行う。
【0037】
先述の場合(PCAES)においても、貯蔵圧力は超臨界であり、このため、充電ステップにおける蒸気再循環がない。
【0038】
いずれの場合も、上記のシステムのいずれもが、空気の凝結の潜熱の貯蔵を行わない。換言すると、充電中において、アンドリューズ曲線を横断すること、すなわち、前記熱を貯蔵するための手段を用いた空気の熱交換による凝結は決して行われない。
【0039】
Kim及びChangによる「Pressurised cryogenic air energy storage for efficiency improvement of liquid air energy storage」の表2は、提案されている2つのシステムの特性パラメータを示している。
【0040】
加えて、Wang、Xue、Zhang、Guo、Zhou、Wangによる文献「The Application of Cryogens in liquid fluid energy storage system」は、窒素及びCO
2などの他の流体による上述と同じLAESプロセスを説明している。同文献の
図2に示されているように、窒素又はCO
2による提案のシステムは常に、充電ステップにおいてクロード又はリンデ・ハンプソンサイクル等に従って動作し、また常に、放電ステップにおいてポンプを用いた加圧を有する(Wang、Xue、Zhang、Guo、Zhou、Wangによる「The Application of Cryogens in liquid fluid energy storage system」の
図2を参照)。
【0041】
米国特許出願公開第20170058768号及び米国特許第7821158号及び米国特許第6920759号の文献もまた、内部燃焼を行う第1の機械からの熱回収と組み合わせた場合、及び他の特定の構成における、同じLAESシステムの特定の構成を示している。
【0042】
国際公開第2015138817号の文献も、低温貯蔵の上流に配置されたエキスパンダを用いた減圧、及びその後の、放出膨張の前且つ低温貯蔵の下流のポンプを用いた圧送を行う。
【0043】
総じて、従来技術を構成する上記で示したシステムの全てを、添付の
図1に図式化することができる。
【0044】
そのような
図1(従来技術)において、以下の要素が明らかである。
1.後続の減圧手段102(スロットルバルブ又は低温エキスパンダ)と接続し、冷熱エネルギー及び場合により熱エネルギーを貯蔵するための1つ又は複数のシステム103と熱的/流体的に接続している、単一の流れを有するが内部再循環も有する、少なくともコンプレッサ101を備え、場合によっては他のコンプレッサ、交換器、エキスパンダ、コンパンダ等も備える充電システム100。
2.減圧システム102(スロットルバルブ/エキスパンダ)。
3.液体若しくは超臨界空気、低温空気、又は、略断熱状態の空気を、すなわち(固体媒体及び/若しくは液体媒体を用いた、並びに/又は相変化媒体及び/若しくは化学媒体における)熱の直接的又は間接的な貯蔵なしで貯蔵するためのシステム104。
4.加圧システム105(ポンプ又はコンプレッサ)。
5.貯蔵システム103と熱的に接続(蓄熱)している交換器、エキスパンダ107等を備える放電システム106。
【発明の概要】
【0045】
出願人は、現行のエネルギー貯蔵/蓄積システムが、様々な状況においてその経済的に好都合な使用を可能とする特性を有しないことを認識している。
【0046】
特に、一部の場合(例えばPHS及びCAES)において、それらのシステムは、非常に特殊且つ見つけるのが困難な地形学的状況を必要とする。一部の場合(例えばPHS)において、前記システムの実現には、大きな環境インパクトを伴う人工ベーシンが必要となる。
【0047】
他の場合(AA-CAES)において、熱エネルギー貯蔵システムの実現には、低コストで解決するのが困難な課題があり、加えて、好適な地下洞窟を見つける必要性が残る。これにはまた、十分なラウンドトリップ効率(RTE)を得る困難が伴う。いずれの場合にも、コストの及び適正な地質学的条件を特定するためのさらなる複雑化が明白な、PHSシステムとのCAESシステムの組み合わせを行うことなく、貯蔵タンク内の可変圧力と共に動作することの課題が残る。
【0048】
出願人はさらに、表層CAESシステムを形成する試みが、システム自体の実現性を可能とするために、加圧空気貯蔵タンクのコストを競争力のあるものにすることが実際的に不可能であることに起因する困難に直面していることを認識している。
【0049】
出願人はさらに、LAESシステムを形成する試みが、上記で詳細に説明したように、現在までに知られている全ての低温システムに特有の高圧にも関連して、低温条件において動作することの内在的課題にも起因して、経済的に好都合なシステムの開発を可能としていないことを認識している。好適なタンク及び他の高コストな手段における、低温流体の、加えて低温エネルギーの加圧及び高圧での熱交換並びにその後の減圧及び貯蔵のプロセスによって低温流体を生成することの課題は、技術をコストに関して最適化することを困難にしている。加えて、プロセスに設けられる低温エキスパンダは、生産が難しい構成要素である。
【0050】
出願人はさらに、ラウンドトリップ効率(RTE)は装置内の温度差に関連するため、略可逆的ランキンサイクルによるPHESシステムを形成する試みには、十分な(すなわち60%よりも高い)RTEを得ること、及び、同時に妥当なコストを有することに関して多大な困難があることを認識している。
【0051】
同様に、ブレイトンサイクルに基づくPHESシステムは、前記システムが充電及び放電両方の各サイクルにコンプレッサ及びタービンを用いることによる困難に直面している。これは、より大きな投資を伴う上に、高温貯蔵と低温貯蔵との間の非常に高い温度差を維持することのみにより高いRTEを得ることによって補償され得る、より大きい不可逆性も伴う。
【0052】
そのような背景の中、出願人は、エネルギー貯蔵のためのプロセス及びプラント、すなわち「エネルギー貯蔵」システムを想到し実現した。これは(目的)、
様々な地形学的状況において実現可能であり、実現のために特定の地理的又は地域的条件を必要とせず、場合によっては、特定のサイズにおいて、海上/沖合用途にも利用可能であり、
m2/kWh storedを単位とした土地使用量がより小さく、
いずれの場合にも70%よりも高く、75%までもの高いRTEを得ることが可能であり、
貯蔵タンク内の調節可能な圧力と共に動作することが可能であり、
好ましくは100USD/kWhよりも低い実現コストを有することを目標として、単純且つ安価であり、特に圧力下且つ(kWhstored/m3
storageを単位とした)高エネルギー密度での貯蔵を可能とし、
安全且つ環境に適応可能であり、例えば特に危険性の高い流体を使用せず、
モジュール式であり、
小型であり、
30年までもの向上した耐用寿命を有する耐久性があり、
エネルギー回収システムと組み合わせることが可能であり、
フレキシブルなエネルギー生産システムを実現するために、燃焼によりエネルギーを生産するためのシステムと組み合わせることが可能であり、
フレキシブルであり、且つ動作を迅速に開始することが可能であり、
容易に且つ安価に維持することが可能であり、
(特に海上用途のために)耐食性があり、
低レベルの振動及びノイズを有する。
【0053】
出願人は、上記に示した目的及びさらに他の目的が、一方(より低圧のもの)が大気条件又は圧力下にあり、貯蔵温度が作動流体の臨界温度に近く、そのような臨界温度が0℃よりも低い、2つの別個の環境/タンクにおける作動流体の2つの貯蔵部の間で、まず一方方向に、次いで反対方向に、周期的熱力学的変換(TTC)により動作するエネルギーを貯蔵する(エネルギー貯蔵)ためのシステムによって実現可能であることを見出した。
【0054】
1つの独立態様において、本発明は、エネルギー貯蔵のためのプロセスであって、
0℃よりも低い臨界温度を有する作動流体を貯蔵するためのベーシンと、前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において臨界温度に近い貯蔵温度で貯蔵するためのタンクとの間で、まず貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて一方方向に、次いで放電構成/放電ステップにおいて反対方向に、周期的熱力学的変換を作動させるステップを含み、貯蔵ステップにおいて、プロセスが、熱及びポテンシャルエネルギーを圧力の形態で貯蔵し、放電ステップにおいてエネルギーを生成し、
貯蔵ステップにおいて、前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記貯蔵温度でタンクに貯蔵するために、まず顕熱及びその後に潜熱が、少なくとも1つの熱媒体を用いて作動流体から除去され、
放電ステップにおいて、まず潜熱及びその後に顕熱が、前記少なくとも1つの熱媒体を用いて作動流体に伝達される、
エネルギー貯蔵のためのプロセスに関する。
【0055】
1つの独立態様において、本発明は、エネルギー貯蔵のためのプラントであって、
0℃よりも低い臨界温度を有する作動流体と、
作動流体のためのベーシンと、
前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において臨界温度に近い貯蔵温度で貯蔵するように構成されている少なくとも1つのタンクと、
ベーシンとタンクとの間に動作可能に介設されており、直接及び/又は間接的にベーシンをタンクと接続するパイプであり、ベーシンからタンクまで延伸する少なくとも1つの貯蔵経路、タンクからベーシンまで延伸する少なくとも1つの放電経路を画定するパイプと、
パイプに沿って配置されており、作動流体を膨張させるように構成されている少なくとも1つのエキスパンダと、
パイプに沿って配置されており、作動流体を圧縮するように構成されている少なくとも1つのコンプレッサと、
エキスパンダ及びコンプレッサに動作可能に接続されている少なくとも1つの動作/駆動機械と、
パイプに沿って配置されており、コンプレッサとタンクとの間及びタンクとエキスパンダとの間に動作可能に介設されている少なくとも1つの蓄熱部と
を備え、
プラントは、前記ベーシンと前記タンクとの間で、まず貯蔵構成において一方方向に、次いで放電構成において反対方向に、作動流体による周期的熱力学的変換を作動させるように構成されており、
前記少なくとも1つの蓄熱部は、前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記貯蔵温度で貯蔵するために、貯蔵構成において、まず顕熱及びその後に潜熱を作動流体から吸収するように構成されており、
前記少なくとも1つの蓄熱部は、放電構成において、潜熱及びその後に顕熱を作動流体に伝達するように構成されている、
エネルギー貯蔵のためのプラントに関する。
【0056】
出願人は、本発明により上記で挙げた目的を達成することが可能となることを検証した。
【0057】
本発明の態様を以下に挙げる。
【0058】
一態様において、前出の態様に係る又は以下の態様のうちの1つ又は複数に係るプラントは、前出の態様に係る又は以下の態様のうちの1つ又は複数に係るプロセスを作動させるように構成される。
【0059】
一態様において、前出の態様に係る又は以下の態様のうちの1つ又は複数に係るプロセスは、前出の態様に係る又は以下の態様のうちの1つ又は複数に係るプラントにより作動させられるように構成される。
【0060】
一態様において、貯蔵ステップは、前記作動流体から顕熱及び潜熱を除去する前に、作動流体を圧縮し、その後、終端圧縮圧力に実質的に等しい又は近い貯蔵圧力において作動流体をタンクに貯蔵することを含む。
【0061】
一態様において、放電ステップは、潜熱及び顕熱を前記作動流体に伝達した後に、膨張前の圧力のいかなる増大もなく、作動流体を膨張させることを含む。
【0062】
一態様において、貯蔵ステップにおいて、顕熱が第1の熱媒体により除去され、潜熱が第2の熱媒体により除去され、放電ステップにおいて、潜熱が第2の熱媒体により伝達され、顕熱が第1の熱媒体により伝達される。
【0063】
一態様において、作動流体は、単一成分、任意選択で窒素若しくは酸素若しくはメタン、又は混合物、任意選択で空気若しくは天然ガスである。
【0064】
一態様において、ベーシンは実質的に一定の圧力であり、任意選択で、ベーシンは大気である。
【0065】
一態様において、作動流体の臨界温度は、-70℃よりも低く、任意選択で-100℃よりも低く、任意選択で-150℃よりも低く、任意選択で-180℃よりも低く、任意選択で-200℃よりも低い。
【0066】
一態様において、いかなるスロットル/膨張部材もコンプレッサと蓄熱部との間に介設されることなく、コンプレッサの出口が前記少なくとも1つの蓄熱部に直接接続されている。
【0067】
一態様において、いかなるポンプも蓄熱部とエキスパンダとの間に介設されることなく、前記少なくとも1つの蓄熱部がエキスパンダの入口に直接接続されている。
【0068】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部は、
顕熱を作動流体に伝達する又は顕熱を作動流体から吸収するように構成されている第1のセクションと、
潜熱を作動流体に伝達する又は潜熱を作動流体から吸収するように構成されている第2のセクションと
を備える。
【0069】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部は、パイプに沿って配置されており、コンプレッサとタンクとの間及びタンクとエキスパンダとの間に動作可能に介設されている少なくとも1つの第1の蓄熱部であって、顕熱を作動流体に伝達する又は顕熱を作動流体から吸収するように構成されている第1の蓄熱部を備える。
【0070】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部は、パイプに沿って配置されており、第1の蓄熱部とタンクとの間に動作可能に介設されており、又は少なくとも部分的にタンクに一体化されている少なくとも1つの第2の蓄熱部であって、潜熱を作動流体に伝達する又は潜熱を作動流体から吸収するように構成されている第2の蓄熱部を備える。
【0071】
一態様において、ベーシンは大気であり、作動流体は空気である。
【0072】
一態様において、前記少なくとも1つのエキスパンダは、圧縮空気ユーザ機械、任意選択で鉄鋼プラントの一部又は空気分離ユニット(ASU)の一部である。
【0073】
一態様において、プラントは、作動流体中に存在する二酸化炭素回収のためのデバイスを備える。
【0074】
一態様において、二酸化炭素回収のための前記デバイスは、作動流体が流れるパイプに動作可能に結合されている。
【0075】
一態様において、二酸化炭素回収のための前記デバイスは、前記少なくとも1つの蓄熱部に動作可能に結合され若しくは一体化されており、任意選択で、前記二酸化炭素回収のためのデバイスは、第1の蓄熱部に結合され若しくは一体化されている。
【0076】
一態様において、二酸化炭素回収のためのデバイスは、作動流体のためのタンクを備える。
【0077】
一態様において、作動流体のためのタンクは、パイプと流体接続する。
【0078】
一態様において、作動流体のためのタンクは、第1の蓄熱部の一部である。
【0079】
一態様において、二酸化炭素回収のためのデバイスは、混合物を冷却し、二酸化炭素を凝固させるように構成されている要素を備える。
【0080】
一態様において、二酸化炭素回収のためのデバイスは、前記タンクにおいて凝固した二酸化炭素をタンクから抽出するための、任意選択で機械的なシステムを備える。
【0081】
一態様において、前記少なくとも1つのエキスパンダは、単一のエキスパンダ又は複数のエキスパンダを備える。
【0082】
一態様において、エキスパンダは、少なくとも1つのタービン又は複数のタービンを備える。
【0083】
一態様において、エキスパンダは、複数の中間加熱エキスパンダを備える。
【0084】
一態様において、前記少なくとも1つのコンプレッサは、単一のコンプレッサ又は複数のコンプレッサを備える。
【0085】
一態様において、コンプレッサは、少なくとも1つのターボコンプレッサを備える。
【0086】
一態様において、前記少なくとも1つのコンプレッサは、複数の中間冷却コンプレッサを備える。
【0087】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部は、パイプ又は作動流体に動作可能に結合されている少なくとも1つの熱交換器を備える。
【0088】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部は、作動流体に直接的又は間接的に結合されている又は結合可能な少なくとも1つの熱媒体を備える。
【0089】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部、任意選択で前記第2の蓄熱部は、タンクに収容されている熱媒体を備える。
【0090】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部、任意選択で前記第1の蓄熱部は、貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて1つの圧縮と次の圧縮との間で作動流体から熱を吸収するための、前記少なくとも1つのコンプレッサの連続するコンプレッサ又は連続する圧縮段階の間に動作可能に介設されている交換器をさらに備える。
【0091】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部、任意選択で前記第1の蓄熱部は、放電構成/放電ステップにおいて1つの膨張と次の膨張との間で作動流体に熱を伝達するための、前記少なくとも1つのエキスパンダの連続するエキスパンダ又は連続する膨張段階の間に動作可能に介設されている交換器をさらに備える。
【0092】
一態様において、前記少なくとも1つの動作/駆動機械は、力学的エネルギーを前記少なくとも1つのコンプレッサに供給する、すなわちコンプレッサを作動させる駆動機械を備える。
【0093】
一態様において、駆動機械は電気式である。
【0094】
一態様において、貯蔵ステップにおいて、駆動機械は、電気エネルギーを吸収し、前記少なくとも1つのコンプレッサを作動させるモータとして機能する。
【0095】
一態様において、圧縮は、断熱である又は中間冷却される。
【0096】
一態様において、終端圧縮圧力は、作動流体の臨界圧力の15%~130%の間、任意選択で臨界圧力の30%~80%の間に含まれる。
【0097】
一態様において、作動流体からの顕熱の除去により、前記作動流体は、対応する圧力において飽和温度に近い温度まで冷却される。
【0098】
一態様において、作動流体から除去された顕熱が貯蔵される。
【0099】
一態様において、作動流体からの顕熱の除去は、前記少なくとも1つの熱媒体との直接的又は間接的な交換により作動させられる。
【0100】
一態様において、作動流体からの潜熱の除去により、前記作動流体が凝結する。
【0101】
一態様において、貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて、凝結は、一定圧力又は可変圧力で生じる。
【0102】
一態様において、作動流体から除去された潜熱が貯蔵される。
【0103】
一態様において、作動流体からの潜熱の除去は、前記少なくとも1つの熱媒体との直接的又は間接的な交換により作動させられる。
【0104】
一態様において、前記少なくとも1つの蓄熱部は、直接的又は間接的な熱交換を伴うタイプのものである。
【0105】
一態様において、第1の蓄熱部及び/又は第2の蓄熱部は、直接的又は間接的な熱交換を伴う。
【0106】
一態様において、作動流体は、完全に液相でタンクに貯蔵される。
【0107】
一態様において、作動流体は、部分的にのみ液相でタンクに貯蔵される。
【0108】
一態様において、少なくとも部分的に液相又は超臨界相での作動流体の貯蔵は、圧縮の後のスロットルが存在しない場合に生じる。
【0109】
一態様において、圧縮は、前記作動流体の臨界圧力よりも低い作動流体の圧力で開始する。
【0110】
一態様において、貯蔵圧力が臨界圧力よりも低い場合、作動液の凝結は、潜熱の除去を経てのみ生じる。
【0111】
一態様において、最終貯蔵圧力が臨界圧力よりも高く、任意選択で前記臨界圧力の約1.3倍よりも低い場合、凝結は、タンク一杯の少なくとも70%~90%までの潜熱の伝達により生じ、代わりに、最終充電過渡ステップのみにおいて小さい温度差との交換を行うが、潜熱の交換が依然として支配的である。
【0112】
一態様において、貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて、環境とタンクとの間における作動流体の再循環はなく、単一の流れが存在する。
【0113】
一態様において、放電ステップは、前記作動流体の蒸発及び/又は過熱を行うための、前記少なくとも1つの熱媒体による熱の伝達及び作動流体による潜熱の吸収を含む。
【0114】
一態様において、放電構成/放電ステップにおいて、作動流体の蒸発は、一定圧力又は可変圧力で生じる。
【0115】
一態様において、貯蔵構成/放電ステップにおいて、作動流体の凝結は、一定圧力又は可変圧力で生じる。
【0116】
一態様において、作動流体の蒸発は、貯蔵圧力よりも低い圧力までで生じる。
【0117】
一態様において、放電ステップは、前記作動流体を加熱するための、前記少なくとも1つの熱媒体による熱の伝達及び作動流体による顕熱の吸収を含む。
【0118】
一態様において、放電ステップにおいて、駆動機械はエキスパンダにより作動され、発電機として機能し、力学的エネルギー又は電気エネルギーを生産する。
【0119】
一態様において、貯蔵ステップにおける圧縮前の作動流体の圧力は、放電ステップにおける膨張の終了時の作動流体の圧力に等しい又は実質的に等しい。
【0120】
一態様において、貯蔵ステップにおける貯蔵圧力は、放電ステップにおける貯蔵圧力よりも高い。
【0121】
一態様において、貯蔵ステップにおける貯蔵圧力と放電ステップにおける貯蔵圧力との差は、2bar~20barの間に含まれる。
【0122】
一態様において、タンクからエキスパンダの入口までの放電ステップにおいて、作動流体の圧力は、コンプレッサの出口からタンクまでの貯蔵ステップにおける作動流体の圧力よりも低い。
【0123】
一態様において、放電ステップにおいて作動流体により吸収される潜熱及び/又は顕熱は、貯蔵ステップにおいて作動流体により伝達される潜熱及び/又は顕熱よりも高い、又はそれに等しい。
【0124】
一態様において、蒸発中における作動流体の蒸発圧力は、凝結圧力の99%~20%の間、任意選択で90%~70%の間に含まれる。
【0125】
一態様において、放電構成/放電ステップにおいて、タンクと環境との間における作動流体の再循環はなく、単一の流れが存在する。
【0126】
一態様において、作動流体が混合物である場合、前記作動流体は、少なくとも放電ステップ中において、経時的に可変な組成を有する。
【0127】
一態様において、前記少なくとも1つの熱媒体は、液体タイプ、固体タイプ、相変化あり、化学的タイプのものであってもよい。
【0128】
一態様において、貯蔵ステップにおける、作動流体からの潜熱の除去の直前の作動流体の温度は、放電ステップにおける、前記作動流体への潜熱の伝達の終了時の前記作動流体の温度よりも高い、又はそれに等しい。
【0129】
一態様において、貯蔵ステップの終了時のタンクにおける作動流体の温度は、放電ステップの開始時のタンクにおける作動流体の温度よりも高い。
【0130】
一態様において、放電ステップにおいて、前記作動流体を膨張させる前に、さらなる熱を作動流体に伝達することが行われる。
【0131】
一態様において、さらなる熱は、内部熱源又は外部熱源により供給される。
【0132】
一態様において、さらなる熱交換器が、放電経路に動作可能に配置されており、前記少なくとも少なくとも1つの蓄熱部と前記少なくとも1つのエキスパンダとの間に配置されており、さらなる熱交換器は、外部熱源に動作可能に結合されている。
【0133】
一態様において、さらなる熱交換器が、連続するエキスパンダ又は連続する膨張段階の間に動作可能に介設されている。
【0134】
一態様において、少なくとも1つの燃焼室が、放電経路に動作可能に配置されており、少なくとも前記少なくとも1つの蓄熱部と前記少なくとも1つのエキスパンダとの間に配置されており、作動流体が、燃焼室を通って流れ、前記燃焼室において生成された燃焼による熱を受け取る。
【0135】
一態様において、燃焼室が、連続するエキスパンダ又は連続する膨張段階の間に動作可能に介設されている。
【0136】
一態様において、膨張の前に作動流体を予め加熱するために、放電ステップは復熱式である。
【0137】
一態様において、膨張の前に作動流体を予め加熱するために、復熱器が、前記少なくとも1つの蓄熱部と前記少なくとも1つのエキスパンダとの間に配置されている放電経路の第1の部分を、前記少なくとも1つのエキスパンダとベーシンとの間に配置されている放電経路の第2の部分と動作可能に結合する。
【0138】
一態様において、エキスパンダの放出から残留熱を回収するために、サイクル「ボトミング」システムが、放電ステップにおけるプロセスに、任意選択で膨張の後に、又はプラントの放電経路に、任意選択で前記少なくとも1つのエキスパンダとベーシンとの間に、動作可能に結合されている。
【0139】
一態様において、放電ステップにおいて、膨張の前に、任意選択で中間冷却再圧縮により、作動流体を再圧縮することが行われる。
【0140】
一態様において、任意選択で中間冷却される、少なくとも1つの補助コンプレッサが、膨張の前に作動流体を再圧縮するために、放電経路に、前記少なくとも1つのエキスパンダの上流に配置されている。
【0141】
さらなる特徴及び利点が、本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラント及びプロセスの好適であるが限定的でない実施形態の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0142】
そのような説明を、単に非限定的な例として提供されている添付の図面を参照して、以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【
図2】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの概略図である。
【
図3】本発明のエネルギー貯蔵のためのプロセスに係る変換を示すT-S図である。
【
図6】
図2のプラントの第1の蓄熱部における熱交換を示すT-Q図である。
【
図7】
図2のプラントの第2の蓄熱部における熱交換を示すT-Q図である。
【
図8】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図9】
図8のプラントに関するT-S図を示す図である。
【
図10】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図12】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図14】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図16】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図18】本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図20】本発明に係るプラントの一部分の例を示す図である。
【
図21】本発明に係るプラントの一部分の例を示す図である。
【
図22】本発明に係るプラントのデバイスの一実施形態を示す図である。
【
図23】本発明に係るプラントのデバイスの一実施形態を示す図である。
【
図24】本発明に係るプラントのデバイスの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
図2から同添付の図面を参照して、参照番号1は総じて、本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプラントを示す。
【0145】
プラント1は、一定又は実質的に一定の圧力の作動流体が存在する又は貯蔵され得るベーシン2を備える。
図2において矩形として模式的に示されているベーシン2は、閉環境であってもよく、又は地球大気であってもよい。作動流体は、プラント1の一部であり、大気又は異なる流体、窒素若しくは酸素若しくはメタンなどの単一成分又は天然ガスなどの混合物であってもよい。上記の作動流体の特有の特性は、0℃よりも低い臨界温度T
cを有することである。例えば、作動流体が空気である場合、臨界温度T
cは約-140℃(0℃の下140℃)であり、作動流体がメタンである場合、臨界温度T
cは約-83℃(0°の下83℃)であり、作動流体がアルゴンである場合、臨界温度T
cは約-122℃(0°の下122℃)である。
【0146】
プラント1は、作動流体を、少なくとも部分的に液相又は超臨界相において、その臨界温度Tcに近い貯蔵温度で貯蔵するように構成されるタンク3を備える。
【0147】
例えば別の方式により作製される管及び/又は導管により画定されるパイプが、ベーシン2とタンク3との間に動作可能に介設され、直接的及び/又は間接的にベーシン2をタンク3と接続する。そのようなパイプは、ベーシン2からタンク3まで延伸する貯蔵経路及びタンク3からベーシン2まで延伸する放電経路を画定する。
【0148】
プラント1は、エキスパンダ4、コンプレッサ5、及び、エキスパンダ4及びコンプレッサ5に動作可能に接続される電動発電機として
図2に示されている動作/駆動機械6を備える。エキスパンダは、作動流体を膨張させるように構成され、コンプレッサ5は、作動流体を圧縮するように構成される。
図2において、コンプレッサ5はターボコンプレッサとして示されており、エキスパンダ4はタービンである。実施形態の変形例において、エキスパンダ4は、任意の1つの圧縮空気ユーザ機械、例えば、鉄鋼プラントの一部又は空気分離ユニット(ASU)の一部であってもよい。実施形態の変形例において、動作機械及び駆動機械は、別個の機械であってもよい。駆動機械は、コンプレッサ5に機械的に接続され、コンプレッサ5を作動させる。動作機械は、エキスパンダ4に機械的に接続され、エキスパンダ5により作動されて、力学的エネルギー及び/又は電気エネルギーを生産する。
【0149】
ベーシン2は、パイプを介して、コンプレッサ5の入口5aと流体連通する。ベーシン2はまた、パイプを介して、エキスパンダ4の出口4bと流体連通する。電動発電機6は、コンプレッサ5及びエキスパンダ4の回転シャフトにそれぞれのクラッチ7a、7bを介して機械的に接続される/接続可能である。
【0150】
プラント1は、パイプに沿って配置され、コンプレッサ5とタンク3との間及びタンク3とエキスパンダ4との間に動作可能に介設される蓄熱部8を備える。
図2に示すものによれば、蓄熱部8は、直列配置される第1の蓄熱部9及び第2の蓄熱部10を備える。第1の蓄熱部9は、パイプを介して、コンプレッサ5の出口5b及びエキスパンダ4の入口4aと流体連通する。第2の蓄熱部10は、パイプを介して、第1の蓄熱部9と流体連通し、その下流に配置される。
【0151】
第2の蓄熱部10は、物理的にタンク3の上流に配置され、又は、少なくとも部分的に前記タンク3に一体化される。
【0152】
第1の蓄熱部9は、プラント1の動作構成に応じて、吸収された熱を貯蔵するため、及び作動流体に顕熱を新たに伝達するために、作動流体と顕熱を交換する、特に作動流体から顕熱を吸収するように構成される。
【0153】
第2の蓄熱部10は、プラント1の動作構成に応じて、吸収された熱を貯蔵するため、及び作動流体に潜熱を新たに伝達するために、作動流体と潜熱を交換する、特に作動流体から潜熱を吸収するように構成される。
【0154】
可能な実施形態の変形例においては、1つの蓄熱部のみが存在するが、これは、複数の別個のセクション、すなわち、顕熱を作動流体に伝達する又は顕熱を作動流体から吸収するように構成されている第1のセクションと、潜熱を作動流体に伝達する又は潜熱を作動流体から吸収するように構成されている第2のセクションとを有する。
【0155】
本発明に係るエネルギー貯蔵のためのプロセスによれば、プラント1は、まず貯蔵構成においてベーシン3からタンク2への一方方向に、次いで放電構成においてタンク3からベーシン2への反対方向に、作動流体による周期的熱力学的変換TTCを作動させるように構成される。
【0156】
貯蔵構成において、プラント1は、前記作動流体を少なくとも部分的に液相又は超臨界相において前記作動流体の(0°よりも低い)臨界温度に近い貯蔵温度でタンク3に貯蔵するために、まず顕熱及びその後に潜熱を作動流体から吸収するように構成される。放電構成において、プラント1は、潜熱及びその後に顕熱を作動流体に伝達するように構成される。貯蔵ステップにおいて、プロセス/プラント1は、熱及びポテンシャルエネルギーを圧力の形態で貯蔵し、放電ステップにおいてエネルギーを生成する。
【0157】
より詳細には、
図2、
図3及び
図4を参照して、貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて、ベーシン2(点I)に存在する作動流体、例えば大気が、コンプレッサ5により吸引され、圧縮され(IからII)、第1の蓄熱部9に送出される。
【0158】
コンプレッサ5の入口5aにおいて、添付図面では不図示のフィルタのシステム及び空気浄化システムが存在してもよい。
【0159】
終端圧縮圧力、すなわちコンプレッサ5の出口における作動流体の圧力は、例えば臨界圧力の30%~80%の間に含まれる。コンプレッサ5を動かす力学的エネルギーは、電動機として機能し、電気エネルギーを吸収する電動発電機6により供給される。圧縮は、断熱であってもよく、又は中間冷却されてもよい。
【0160】
第1の蓄熱部9において、圧縮された作動流体は、第1の蓄熱部9に属する又は第1の蓄熱部9に動作可能に結合される第1の熱媒体と熱を交換する。例えば、第1の蓄熱部9は、パイプ又は作動流体及び第1の熱媒体に動作可能に結合される熱交換器を備える。第1の熱媒体は、作動流体に直接的又は間接的に結合されてもよい。換言すると、作動流体からの顕熱の除去は、第1の熱媒体との直接的又は間接的な交換により作動させられてもよい。第1の熱媒体は、液体タイプ、固体タイプ、相変化あり、化学的タイプ等のものであってもよい。
【0161】
作動流体は次いで、前記作動流体からの顕熱の除去により冷却され(IIからIII)、そのような熱は、第1の蓄熱部9に貯蔵され、例えば同じ第1の熱媒体に貯蔵される。作動流体からの顕熱の除去により、作動流体は、対応する圧力において飽和温度に近い温度まで冷却される。
【0162】
冷却された作動流体は、第2の蓄熱部10及びタンク3に向かって流れる。第2の蓄熱部10において、作動流体は、第2の熱媒体に、潜熱を伝達し、又は部分的に顕熱及び部分的に潜熱を伝達し(IIIからIV)、タンク3に貯蔵される。作動流体から除去された熱は、第2の蓄熱部10に貯蔵される。
【0163】
第2の蓄熱部10は、直接的又は間接的な熱交換を伴うタイプのものであってもよく、その結果、作動流体からの潜熱の除去が前記第2の熱媒体との直接的又は間接的な交換により作動させられる。例えば、第2の蓄熱部9は、パイプ又は作動流体及び第2の熱媒体に動作可能に結合される少なくとも1つの熱交換器を備える。
【0164】
第2の蓄熱部10は、少なくとも部分的に前記タンク3に一体化されてもよい。一実施形態において、第2の蓄熱部10は例えば、タンク3に挿入される熱交換器を備える。熱交換器は、第2の熱媒体、及びタンク3に格納された作動流体に動作可能に結合される。異なる実施形態においては、第2の熱媒体がタンク3に直接収容される。第2の熱媒体は、液体タイプ、固体タイプ、相変化あり、化学的タイプ等のものであってもよい。
【0165】
除去された潜熱は、第2の蓄熱部10に貯蔵され、例えば同じ第2の熱媒体に貯蔵される。
【0166】
貯蔵構成において、作動流体の再循環のない単一の流れが、環境2からタンク3へと流れる。
【0167】
特定のプロセス及び/又は作動流体の特性の動作パラメータに応じて、作動流体は、完全に液相で、部分的に液相(すなわち作動流体が少なくとも部分的に凝結している状態)で、又はわずかに超臨界相で、タンク3に貯蔵されてもよい。わずかに超臨界相での貯蔵の場合、臨界点に近いため、温度変動に伴う熱の伝達が、ただし非常に高いCpで生じる。
【0168】
貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて、凝結は、一定圧力又は可変圧力で生じてもよい。
【0169】
よって、第2の蓄熱部10による熱エネルギーの貯蔵は、超臨界の場合においても、「潜」熱の除去を経て生じ、貯蔵タンク3内の一定圧力において動作することが望ましい場合であっても、必然的にタンクの装填の完了まで、初期圧力はわずかに亜臨界であり、したがって熱の除去は、いずれの場合にも主に潜熱タイプのものである。換言すると、より高い温度ジャンプを利用することにより超臨界条件で終端するために、亜臨界条件から開始する。これにより、第2の蓄熱部10の寸法を低減することが可能となる。
【0170】
貯蔵圧力が臨界圧力よりも低い場合、作動液の凝結は、潜熱の除去を経てのみ生じる。最終貯蔵圧力が臨界圧力よりも高く、任意選択で前記臨界圧力の約1.3倍よりも低い場合、凝結は、タンク3一杯の少なくとも70%~90%までの潜熱の伝達により生じ、代わりに、最終充電過渡ステップのみにおいて小さい温度差との交換を行う。
【0171】
コンプレッサ5の出口5bは、第1の蓄熱部9に直接接続され、コンプレッサ5とタンク3との間にはスロットルバルブがなく、そのため、タンク3における貯蔵圧力は、終端圧縮圧力に実質的に等しい又は近い。
【0172】
放電構成/放電ステップ(
図2、
図3及び
図4)において、タンク3に存在する作動流体の圧力は、IVからVへと低減する。作動流体は、第2の蓄熱部10の第2の熱媒体に貯蔵された熱、すなわち潜熱又は主に潜熱を吸収する。作動流体は、貯蔵圧力よりも低い圧力に蒸発する、及び/又は過熱される(点VI)。放電構成/放電ステップにおいて、作動流体の蒸発は、一定圧力又は可変圧力で生じてもよい。作動流体が空気などの混合物である場合、前記作動流体は、放電ステップ中において経時的に可変の組成を有していてもよい。これは、混合物のうちモル質量に関してより軽い成分が、「先に」又はより高い割合で蒸発する傾向があるためである。
【0173】
作動流体は、第1の蓄熱部9を通過し、ここで第1の熱媒体から顕熱を吸収し、点VIIまで加熱され、次いで、点VIIから点VIIIへの作動流体のエンタルピージャンプを利用するエキスパンダ4を通過する。エキスパンダ4は、発電機として動作し力学的エネルギーを電気エネルギーに変換する電動発電機6を作動させる。
【0174】
放電構成/放電ステップにおいて、作動流体の再循環のない単一の流れが、タンク3から環境2と流れる。
【0175】
エキスパンダ4の入口4aは、いかなるポンプも間に介設されることなく、第1の蓄熱部9に直接接続され、そのため、放電ステップにおけるタンク3とエキスパンダ4との間での圧力の増大がない。
【0176】
図4において、開始貯蔵ステップの初期条件(点A)から開始し、終端貯蔵における最終条件(点B)に達する第2の熱媒体を示す線A-Bが観察される。放電ステップ中には、その反対のことが生じる。
【0177】
以下のことが観察される。
・貯蔵ステップにおける圧縮前の作動流体の圧力は、放電ステップにおける膨張の終了時の作動流体の圧力に等しい又は実質的に等しい。
・貯蔵ステップにおけるタンク3内の貯蔵圧力は、放電ステップにおけるタンク3内の貯蔵圧力よりも高い。例えば、貯蔵ステップにおける貯蔵圧力と放電ステップにおける貯蔵圧力との差は、例えば0.1bar~30barの間、任意選択で0.5bar~3barの間に含まれる。
・放電ステップにおいて、タンクからエキスパンダの入口まで、作動流体の圧力は、コンプレッサの出口からタンクまでの貯蔵ステップにおける作動流体の圧力よりも低い。放電ステップにおける圧力は貯蔵ステップにおける圧力よりも低いが、プラント/プロセスのラウンドトリップ効率(RTE)を最適化するために、可能な限り互いに近いことが示されている。例えば、貯蔵ステップにおける圧力と放電ステップにおける圧力との差は、例えば0.5bar~20barの間、任意選択で0.5bar~5barの間に含まれる。
・蒸発中における作動流体の蒸発圧力は、凝結圧力の99%~20%の間、任意選択で90%~70%の間に含まれる。
・貯蔵ステップにおける、作動流体からの潜熱の除去の直前(点III)の作動流体の温度は、放電ステップにおける、前記作動流体への潜熱の伝達の終了時(点VI)の前記作動流体の温度よりも高い、又はそれに等しい。
・貯蔵ステップの終了時(点IV)のタンクにおける作動流体の温度は、放電ステップの開始時(点V)のタンクにおける作動流体の温度よりも高い。
・放電ステップにおいて作動流体により吸収される潜熱及び/又は顕熱は、貯蔵ステップにおいて作動流体から伝達される潜熱及び/又は顕熱よりも高い、又はそれに等しい。そのため、周期的熱力学的変換TTCは冷却サイクルとして振る舞うことが導き出される。
【0178】
観察できるように、作動流体は、互いに異なる流体の混合物である空気であるため、凝結及び蒸発の線は、水平(すなわち一定温度)ではない。作動流体が「純粋」であった場合、凝結及び蒸発の線は水平になり、凝結/蒸発は一定温度で生じることになる。
【0179】
図5は、それぞれ終端貯蔵ステップ及び開始放電ステップにおける点IV及びVが完全液化状態でない、プロセスの変形例を示す。この変形例は、タンク3の容積と、潜熱の貯蔵に必要な材料(液体、固体、相変化あり、化学的等)(すなわち第2の蓄熱部10における第2の熱媒体)の量との間の比(同じ貯蔵エネルギーとした場合)を最適化する目的で、有用であり得る。実際、タンク3において二相状態で充電を完了することにより、圧力下での作動流体の貯蔵に必要な容積は増大するが、除去すべき潜熱の低減が得られる。
【0180】
図6は、貯蔵ステップ及び放電ステップ中に第1の蓄熱部9により働かされる熱交換に関するT-Q図を示す。
【0181】
貯蔵ステップにおいて、作動流体は、顕熱を伝達しながら点IIから点IIIまで冷却され、一方で顕熱を貯蔵するために用いられる第1の熱媒体は、点Cから点Dまで、全体的又は部分的に加熱される。
【0182】
放電ステップにおいて、作動流体は、加熱されながら顕熱を吸収しつつ点VIから点VIIまで進み、一方で第1の熱媒体は、冷却されながら点Dから点Cまで進む。プロセスを実現可能とするために、VIにおける温度は、IIIにおける温度よりも低い又は高々それに等しいものでなければならず、したがって、放電ステップにおける圧力は、貯蔵ステップにおける圧力よりも低い又はそれに等しいものでなければならない。
【0183】
上記で既に述べたように、第1の蓄熱部9における熱交換は、間接的熱交換又は直接的熱交換を含む様々なモードで行うことができる。
【0184】
間接的な熱交換システムは、例えば、作動流体と、第1の熱媒体及び/又は貯蔵部として用いられる流体との間に介設される熱交換器を備えてもよい。第1の熱媒体は、点C(貯蔵ステップの開始時)と対応する条件から、点D(貯蔵ステップの終了時)と対応する条件までにおいて貯蔵される。間接的な熱交換システムは、第1の熱媒体の貯蔵のための1つ(この場合、これは水温躍層として機能する)又は複数のタンク、及び/又は、代替的に、第1の熱媒体の流体を最小限にし、タンクの寸法を低減して、熱エネルギー貯蔵容量を増大させる目的で、直接的交換貯蔵システム、すなわち、第1の熱媒体が熱を伝達/吸収する固体材料が内部に存在する水温躍層を備える。
【0185】
直接的熱交換のシステムは、コンテナ/圧力容器、プロセスに接続される接続システム/システムの他の部分とのインターフェース、圧力容器内に挿入される第1の熱媒体を構成する充填材料により実現することができる。充填材料は、貯蔵ステップ及び放電ステップ中に、それぞれ熱を吸収及び伝達するように機能する。
【0186】
図7は、貯蔵ステップ及び放電ステップ中に第2の蓄熱部10により働かされる熱交換に関するT-Q図を示す。
【0187】
貯蔵ステップにおいて、作動流体は、潜熱を伝達しながら点IIIから点IVまで冷却され、一方で潜熱を貯蔵するための第2の熱媒体は、点Aから点Bまで加熱される。放電ステップにおいて、作動流体は、潜熱を吸収することにより加熱されながら点Vから点VIまで進み、一方で第2の熱媒体は、冷却されながら点Bから点Aに近い点まで進む。放出圧力、すなわち蒸発圧力を適当に調節することにより、放電ステップ中に作動流体を蒸発させるために吸収される潜熱が、貯蔵ステップ中に作動流体から第2の熱媒体に伝達される潜熱よりも大きい又はそれに等しいことを確実にすることができる。
【0188】
上記で既に述べたように、第2の蓄熱部10における熱交換も、間接的熱交換又は直接的熱交換を含む様々なモードで実現することができる。
【0189】
潜熱が第2の熱媒体から間接的に除去される場合、例えば、作動流体と、第2の熱媒体及び/又は貯蔵部として用いられる流体との間に介設される熱交換器を備えるシステムが存在してもよい。そのような第2の熱媒体は、点A(貯蔵ステップの開始時)と対応する条件から、点B(貯蔵ステップの終了時)と対応する条件までにおいて貯蔵される。間接的交換システムは、第2の熱媒体の貯蔵のための1つ(この場合、これは水温躍層として機能する)又は複数のタンク、及び/又は、代替的に、第2の熱媒体の流体を最小限にし、タンクの寸法を低減して、熱エネルギー貯蔵容量を増大させる目的で、直接的交換貯蔵システム(「改変された」水温躍層)、すなわち、第2の熱媒体が熱を伝達/吸収する固体材料が内部に存在する水温躍層を備える。
【0190】
潜熱が第2の熱媒体から直接的に除去される場合、コンテナ/圧力容器、プロセスに接続される接続システム/システムの他の部分とのインターフェース、圧力容器内に挿入される(第2の交換/蓄熱媒体を構成する)不活性充填材料を備えるシステムが存在してもよい。作動流体を液相で貯蔵するためのタンク3は、同じく充填材料を含むものであってもよい。そのような場合、作動流体は、重力により、充填材料により画定される間隙及び固体材料により占有されていない容積を占有し、又は、タンク3内におけるそのような目的で空のままにされている容積を占有する。代替的に、タンク3及びコンテナ/圧力容器は、別個の要素であってもよい。
【0191】
第2の熱媒体の量(及び相対的コスト)を抑制するために、2つのルートを経由することができる。
【0192】
第1のルートによれば、凝結及び蒸発のステップ中の圧力を一定に維持し、蒸発圧力をさらに低減することにより、点Aと点Bとの間のエンタルピー差を増大させることができる。実際、凝結と蒸発との間の圧力差を増大させる(それらの比を低減する)ことにより、温度差の増大が得られる。
【0193】
第2のルートによれば、凝結(及び蒸発)のステップ中の可変圧力、特に、貯蔵すべき作動流体の質量の増大に伴って増大する圧力を可能とすることにより、第2の熱媒体(又は潜在エネルギーの貯蔵のため)の必要な質量を低減し、よって第2の蓄熱部のサイズを低減することができる。実際、質量を低減し、一方で貯蔵ステップ中の圧力を増大させることにより、放電ステップにおいて、効率に悪影響を及ぼすことなく、凝結の圧力に近い蒸発圧力を維持することができる。貯蔵ステップは、例えば臨界圧力の30%から開始して臨界圧力の80%で完了し、一方で放電ステップは、臨界圧力の75%から開始して臨界圧力の28%で完了し、したがって、放電ステップは、約0.9~0.95の比で相対的な貯蔵の点よりも低い圧力の点を通過する。加えて、より高い圧力についての特定の潜熱の低減に起因して、点IIIと点IVとの間での作動流体のエンタルピー差も低減し、凝結媒体に必要な質量の低減に寄与する。
【0194】
プラント1は、作動流体として空気を用いる場合、大気中の二酸化炭素CO2の回収のためのデバイス11に含まれ又は結合されてもよい。そのようなデバイス11は、貯蔵経路及び/又は放電経路と流体連通するという意味で、パイプに動作可能に結合される。そのようなデバイス11は、蓄熱部8に動作可能に結合されてもよい。
【0195】
大気が用いられる場合、さもなければ貯蔵ステップ中に凝固点に達して貯蔵プロセスに問題を生じさせる水分(H2O)及び二酸化炭素CO2を回収し除去するためのデバイスが存在してもよい。
【0196】
例えば、水、二酸化炭素、及び他の残留不純物のほとんどが取り除かれるモレキュラーシーブが用いられてもよい。2つのモレキュラーシーブが存在し、それらが交互に動作する。すなわち、一方が、典型的には低圧における第1のコンプレッサの中間冷却された出口において、空気を浄化するために動作しているとき、他方が再生される。モレキュラーシーブの反転及び再生は、完全に自動化することができる。
【0197】
二酸化炭素回収CO2のためのデバイス11は、先進的なエネルギーシステムにおいて、例えば固体形態で、回収された二酸化炭素CO2を再利用するように構成されてもよい。
【0198】
一実施形態において、そのような二酸化炭素CO
2回収のためのデバイス11は、
図2に模式的に示すように、顕熱を貯蔵する第1の蓄熱部9に一体化される。第1の蓄熱部9は、0℃よりも低い温度において動作し、動作圧力におけるCO
2の凝固点の通過を利用する。実際、分圧の法則が成り立つため、空気中のCO
2含有量は約0.04%に等しいので、第1の蓄熱部9内において、気体状態から固体状態への二酸化炭素CO
2の推移が生じ、二酸化炭素CO
2は次いで、気体状態のままである混合物の他の成分から分離され、抽出される。よって、そのようなデバイスは、CO
2を凝固させ、空気の混合物からCO
2を分離し、凝固したCO
2(ドライアイス)をデバイスから抽出するように構成される。
【0199】
図8は、直列に流体接続された複数のターボコンプレッサ5及び直列に流体接続された複数のタービン4を備えるプラント1の実施形態を示す。
【0200】
第1の蓄熱部9は、2つの連続するターボコンプレッサ5の間に介設され、貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて連続する圧縮の間で作動流体から顕熱を吸収するように構成される熱交換器12が設けられた第1の部分9aを備える。したがって、ターボコンプレッサ及び相対的圧縮は、中間冷却される。第1の部分9aは、放電構成/放電ステップにおいて1つの膨張と次の膨張との間で作動流体に熱を伝達するための、2つの連続するタービン4の間に介設された熱交換器13をさらに備える。したがって、タービン4及び相対的膨張は、中間加熱される。第1の蓄熱部9は、好適な回路を介して熱交換器12、13と流体接続する、第1の熱媒体(例えば液体)の貯蔵タンク14、15をさらに備える。第1の蓄熱部9の第1の部分9aは、顕熱を貯蔵することに加え、中間冷却及び中間加熱の動作を働かせる。
【0201】
第1の蓄熱部9は、貯蔵構成/貯蔵ステップにおいて第1の部分9aの下流に配置され、放電構成/放電ステップにおいて第1の部分9aの上流に配置される第2の部分9bを備える。
【0202】
図9は、中間冷却圧縮(点IからII)及び中間加熱膨張(点VIIから点VIII)が観察される、T-S図における
図8のプラントの変換を示す。
【0203】
図10のプラント1の実施形態は、放電経路に動作可能に配置され、第1の蓄熱部9と中間加熱されない単一のタービン4との間に配置されるさらなる熱交換器16を備えるため、
図8のものとは異なる。さらなる熱交換器16は、タービン4において動作される、放電ステップにおいて作動流体の膨張の前にさらなる熱を作動流体に伝達する外部熱源17に動作可能に結合される。加えて、
図8の実施形態と異なり、2つの連続するターボコンプレッサ5の間に介設される熱交換器12は、第1の蓄熱部9とは異なる、熱を除去するためのシステム18に結合される。
【0204】
不図示の変形例において、2つの連続するターボコンプレッサ5の間に介設された熱交換器12のうちの一方が、第1の蓄熱部9に動作可能に結合され、他方の熱交換器12が、熱を除去するためのシステム18に動作可能に結合される。熱を除去するためのシステム18は、そのような場合、より下流に配置されるコンプレッサへの入口における一定の温度を確実にするために、第1の蓄熱部9に貯蔵された残留熱を除去するように働くことができる。
【0205】
図11は、外部からのさらなる熱Qの導入(点VIIから点VII’)を示す、T-S図における
図10のプラントの変換を示す。
【0206】
図12のプラント1の実施形態は、プラント1が(放電ステップにおいて中間加熱される)2つの連続するタービン4の間に動作可能に介設されるさらなる追加の熱交換器16’を備え、外部熱源17が前記さらなる追加の熱交換器16’にも動作可能に結合されるため、
図10のものとは異なる。加えて、膨張の前に作動流体を予め加熱するために、第1の蓄熱部9と第1のタービン4との間に配置される放電経路の第1の部分を、第2のタービン4と、
図12では不図示のベーシン2との間に配置される放電経路の第2の部分と動作可能に結合する復熱器19が存在する。
【0207】
図13は、熱の回収(VII~VII’’及びVIII’~VIII)が、外部からのさらなる熱Q’、Q’’の二重導入(点VII’’から点VII’及び点VII’’’から点VII’’’’)と共に観察される、T-S図における
図12のプラントの変換を示す。
【0208】
図14のプラント1の実施形態は、さらなる熱交換器16及び外部熱源17に代えて燃焼室20、すなわち内部熱源が存在するため、
図8のものとは異なる。燃焼室20は、放電経路に動作可能に配置され、第1の蓄熱部9とタービン4との間に配置される。燃料Fが、作動流体中に存在する支燃物(comburent)(例えば空気の酸素)との燃焼を生じさせて熱を生成するために、燃焼室に導入される。作動流体は、燃焼室20を通って流れ、燃焼室20自体において生成された燃焼から熱を受け取る。
【0209】
図15は、燃焼によるさらなる熱Qの導入(点VIIから点VII’)が観察される、T-S図における
図14のプラントの変換を示す。
【0210】
図16のプラント1の実施形態は、さらなる熱交換器16、16’に代えて燃焼室20及びさらなる燃焼室20’を有するため、
図12のものとは異なる。加えて、「ボトミング」サイクル又はシステム21が存在する。「ボトミング」システム21は、第2のタービン4の出口/放出部4bから残留熱を回収するために、放電経路において、第2のタービン4と、
図16では不図示のベーシン2との間に配置される交換器22を介して、プラント1に動作可能に結合される。例えば、「ボトミング」システム21は、追加の電力を生成してもよく、又は、熱の使用者(例えば、地域熱供給、都市テレヒーティング、産業プロセス)のための供給源であってもよい。
図17は、
図13のものと類似し、追加の電力Pwの生成を伴う「ボトミング」サイクルを追加的に示す、T-S図における
図16のプラントの変換を示す。
【0211】
図18のプラント1の実施形態は、「ボトミング」システム21がなく、また、第1の蓄熱部9とタービン4との間、特に第1の蓄熱部9と復熱器19との間において放電経路に配置される一対のさらなる中間冷却コンプレッサ22を備えるため、
図16のものとは異なる。中間冷却は、2つのさらなるコンプレッサ22の間に配置され、熱除去システム18に動作可能に接続される交換器23により働かされる。
【0212】
図19は、
図17のものと類似し、放電ステップにおいて中間冷却される二重圧縮(VIIとVII’’との間)を追加的に示す、T-S図における
図18のプラントの変換を示す。
【0213】
図20は、第1の蓄熱部9及び第2の蓄熱部10を備える蓄熱部8の一実施形態を示す。第2の蓄熱部10は、タンク3に一体化される。
【0214】
第1の蓄熱部9は、「充填層」タイプのものであり、例えば砂利又は金属球体又はセラミック球体などの不活性材料により画定される熱質量24を含む、例えばステンレス鋼から作製された液槽を備える。熱質量24は、第1の熱媒体を画定する。第1の蓄熱部9を通って流れる作動流体は、熱質量において画定される間隙を充填し、ばら材料に当たって顕熱を交換する。
【0215】
第2の蓄熱部10も、「充填層」タイプのものであり、例えば砂利又は金属球体又はセラミック球体などの不活性材料により画定される熱質量を含む、例えばステンレス鋼から作製された液槽を備える。熱質量は、第2の熱媒体を画定する。熱質量と接触する作動流体は凝結し、液槽に貯蔵される。したがって、この液槽はまた、タンク3を画定する。
【0216】
図21は、第1の蓄熱部9が前出の
図20のものと同一であり、一方で第2の蓄熱部10がタンク3とは別個である、異なる蓄熱部8の実施形態を示す。第2の蓄熱部10は、第1の蓄熱部9とタンク3との間に配置される熱交換器25、及び、不活性材料により画定される対応する熱質量27を格納する液槽26を備える。ポンプ28が設けられた回路が、液槽26を交換器25と接続し、キャリア流体を格納する。キャリア流体及び熱質量27は、第2の熱媒体を画定する。作動流体は、交換器25においてキャリア流体と潜熱を交換し、キャリア流体は、キャリア流体が接触する熱質量と共に、そのような熱を貯蔵する。交換器25において、作動流体は凝結し、よってタンク3に流れ、そこで次の放電ステップまで貯蔵される。
【0217】
二酸化炭素回収CO
2のためのデバイス11の一例を、
図22に示す。デバイス11は、加圧空気を格納するためのタンク29を備える。タンク29は、空気のための入口30と、二酸化炭素が除去された空気の混合物のための出口31と、空気から分離した二酸化炭素のための出口32とを有する。第1の貯蔵部9は、混合物を冷却し二酸化炭素を凝固させるように構成される要素33と、凝固した二酸化炭素をタンク29から抽出するためのシステムとを備える。例示の実施形態において、混合物を冷却しCO
2を凝固させるための要素33は、CO
2自体の凝固に必要な温度よりも低い温度まで(TTCサイクルの放電ステップにおいて)予め冷却された複数の固定プレート34及び/又は移動プレートを備える。凝固したCO
2を分離するために、プレート34自体の壁で凝固したCO
2をプレート34から除去することがまず行われ、次いで、プレート34から既に除去された固体CO
2を混合物から分離することが行われる。そのような目的で、摩擦により動作する機械的システムが用いられる。例示の実施形態において、摩擦システムは、二重の機能、すなわち、乾燥CO
2をプレートから分離する第1の機能、及び、より高い密度を有するCO
2粒子が落下するように、混合物からCO
2を分離するためのシステムに向かってCO
2の固体粒子を重力により移動させる第2の機能を有する、対応するモータ35aにより動かされる回転ブレード35を備える。ブレード35は、重力により固体粒子を分離ゾーンに移送するために、遠心放射方向又は求心放射方向の固体粒子の移動を生じさせるような形状を有してもよい。機械的抽出システム36、例えば対応するモータ36aにより動かされるスクリューが、出口32を通したCO
2の固体粒子の抽出を可能とする。
【0218】
二酸化炭素CO
2回収のためのデバイス11の異なる実施形態を、
図23に示す。
図22のデバイス11と共通の要素は、同じ参照番号を有する。
図23のデバイス11は、熱交換器38、例えば、「冷却機」のキャリア流体が管内を通過する管状交換器に接続される、「冷却機」などの、混合物から熱を抽出するための外部ユニット37を備える。管の外側において、CO
2が凝固する。後続のステップにおいて、例えば、管のハンマリングにより、又は、対応するモータ40により管に平行に移動され管に沿って摺動するプレート39の往復移動により、CO
2を機械的に除去し回収することができる。そのようなプレート39は、管の通過のための孔を有し、熱交換器38の「バッフル」の機能を有していてもよい。分離されたCO
2粒子は、重力により、またタンク29の通過における混合物の流れを利用することにより、分離・捕集ゾーンに向かって移送される。
【0219】
二酸化炭素CO
2回収のためのデバイス11のさらなる実施形態を、
図24に示す。
図22及び
図23のデバイス11と共通の要素は、同じ参照番号を有する。そのようなデバイス11は、対応する「冷却機」37及び管状熱交換器38が各々に設けられた2つのタンク29を備える。2つのタンク29は、混合物のための入口30及び出口32と並列に接続され、各々がCO
2のための対応する出口を有する。入口30における第1のバルブ40、出口31における第2のバルブ41、及びCO
2のための出口32におけるスロットルバルブ42により、2つのタンク29及び2つの「冷却機」37及び熱交換器38を代わる代わる動作させることが可能となる。混合物は2つのタンク29のうちの一方を通って流れ、対応する出口31から出て(第1及び第2のバルブ40、41は開き、スロットルバルブ42は閉じている)、固体CO
2が対応する熱交換器38の管に形成され、他方のタンク29(第1及び第2のバルブ40、41は閉じ、スロットルバルブ42は開いている)から、前に管に形成されたCO
2が、新たに気相へと進み、待機状態のタンク29の減圧によりタンク29から出る。
【0220】
数値例
実施形態の一例において、プラント1は、
図2のもののように図式化することができる。作動流体は大気であり、略一定圧力のベーシンは環境である。
【0221】
プラント1は、電気エネルギーを吸収し、それを熱エネルギー及びポテンシャルエネルギーに変換するための電動機に接続される、12~24の間に含まれる圧縮比で略一定の送達圧力において(固定回転数で)動作するターボガスタイプの1つのみの軸流コンプレッサ5を備える(
図3における点Iから点II)。単一の軸流タービン4が、
図3における点VIIから点VIIIへのジャンプを利用することにより、ポテンシャルエネルギー及び熱エネルギーを電気エネルギーに変換するために、発電機に接続される。
【0222】
プラント1は、貯蔵ステップ中において、コンプレッサ5の最高送達温度(点II)と空気の最も近い凝結温度との間で、負荷損失を除くコンプレッサ5の送達に等しい圧力(点III)において空気から顕熱を吸収する、「充填層」タイプの第1の蓄熱部9(TES)を備える。一方、放電ステップ中において、第1の蓄熱部9は、熱を伝達しながら、点VIから点VIIまで空気の蒸発に近い温度から空気を加熱する。
【0223】
プラント1は、空気を凝結させるために、空気の凝結の最高温度と最低温度との間で、負荷損失を除くコンプレッサ5の送達に等しい圧力において、すなわち貯蔵ステップにおける点IIIから点IVまでにおいて、潜熱を吸収する、「充填層」タイプの潜熱のための第2の蓄熱部10(TES)を備える。放電ステップ中において、第2の蓄熱部10は、凝結圧力よりも低い圧力で動作し、潜熱を伝達することにより空気を蒸発させ、すなわち、点Vと点VIとの間で動作する。第2の蓄熱部10は、タンク3を一体化し、すなわち、(蓄熱の目的で有用な)第2の熱媒体を画定する不活性材料の格納及び液化空気の格納の両方の目的を有する、ステンレス鋼から作製された単一のタンク、又は一組の同一のタンクにより構成される。
【0224】
上記の動作点(IからVIII)の特性値を以下の表に要約する。
【表1】
注記 点Iにおいて、Patm及びTambは、設置場所に依存するパラメータである。後続の点における圧力及び温度は、点Iの基準値から開始して算出される。