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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】スロットダイコーター
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B05C5/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023537693
(86)(22)【出願日】2022-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2022017292
(87)【国際公開番号】W WO2023096211
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0166218
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0068483
(32)【優先日】2022-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユン-ジュン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ソン-ジェ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】テク-ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ヒュク・チェ
(72)【発明者】
【氏名】シン-ウク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】サン-フン・チェ
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04259055(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第03834950(EP,A1)
【文献】特許第6937999(JP,B1)
【文献】特開2021-100753(JP,A)
【文献】特開2021-010867(JP,A)
【文献】国際公開第2015/009033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下ダイブロックと上ダイブロックと、
前記下ダイブロックと前記上ダイブロックとの間に配備されてスロットを形成するシムプレートと、
前記下ダイブロックに配備され、コーティング液を収容するマニホールドと、
を含んで、
前記スロットと連通した吐出口を介して前記コーティング液を基材の上に吐き出して塗布するスロットダイコーターであって、
前記シムプレートは、前記基材の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部を備える板状部材と、前記板状部材の終端部から突出して、前記マニホールドと接触される部位において、前記マニホールドの内部に挿入される構造物と、を含む、スロットダイコーター。
【請求項2】
前記構造物は、前記板状部材と一体である、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項3】
前記マニホールドの後側と前側において前記上ダイブロックの下面と前記シムプレートの上面とが互いに隙間なしに結合し、前記下ダイブロックの上面と前記シムプレートの下面とが互いに隙間なしに結合する、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項4】
前記シムプレートの上面はフラットであり、前記シムプレートの下面の一部に前記構造物が突出している、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項5】
前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延びる、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項6】
下ダイブロックと上ダイブロックと、
前記下ダイブロックと前記上ダイブロックとの間に配備されてスロットを形成するシムプレートと、
前記下ダイブロックに配備され、コーティング液を収容するマニホールドと、
を含んで、
前記スロットと連通した吐出口を介して前記コーティング液を基材の上に吐き出して塗布するスロットダイコーターであって、
前記シムプレートは、前記基材の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部を備える板状部材と、前記板状部材から突出して前記マニホールドの内部に挿入される構造物と、を含み、
前記構造物は、前記板状部材の両終端に前記マニホールドと接触される部位に前記マニホールドの両終端に挿入されて前記シムプレートの位置再現性を確保するサイド構造物であるスロットダイコーター。
【請求項7】
前記サイド構造物は、前記マニホールドの断面の形状と同じ形状を有し前記マニホールドの底面を含む前記マニホールド内に嵌め込まれる、請求項6に記載のスロットダイコーター。
【請求項8】
前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延び、前記サイド構造物は、前記第2部分において前記マニホールドに近い内側の側壁から下方へと延びて突出している、請求項6に記載のスロットダイコーター。
【請求項9】
下ダイブロックと上ダイブロックと、
前記下ダイブロックと前記上ダイブロックとの間に配備されてスロットを形成するシムプレートと、
前記下ダイブロックに配備され、コーティング液を収容するマニホールドと、
を含んで、
前記スロットと連通した吐出口を介して前記コーティング液を基材の上に吐き出して塗布するスロットダイコーターであって、
前記シムプレートは、前記基材の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部を備える板状部材と、前記板状部材から突出して前記マニホールドの内部に挿入される構造物と、を含み、
前記構造物は、前記板状部材の中央部から前記吐出口に向かって延び、前記マニホールドの内部に挿入される厚さを有するように前記板状部材よりも厚く拡張された板膜構造物であるスロットダイコーター。
【請求項10】
前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延び、前記板膜構造物は、前記第1部分の中央部から前記第2部分と同じ方向に延び、下方に延びて突出している、請求項9に記載のスロットダイコーター。
【請求項11】
下ダイブロックと上ダイブロックと、
前記下ダイブロックと前記上ダイブロックとの間に配備されてスロットを形成するシムプレートと、
前記下ダイブロックに配備され、コーティング液を収容するマニホールドと、
を含んで、
前記スロットと連通した吐出口を介して前記コーティング液を基材の上に吐き出して塗布するスロットダイコーターであって、
前記シムプレートは、前記基材の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部を備える板状部材と、前記板状部材から突出して前記マニホールドの内部に挿入される構造物と、を含み、
前記構造物は、前記マニホールドの底面に形成された注入口から出てくるコーティング液を二股に分岐させる分岐用構造物であり、
前記分岐用構造物は、前記マニホールドの側壁に沿って下方に延びた延在部と、前記延在部に接続され、前記マニホールドの底面に沿って置かれる底面部と、を備える、スロットダイコーター。
【請求項12】
前記分岐用構造物は、前記底面部に複数のシム注入口をさらに含む、請求項11に記載のスロットダイコーター。
【請求項13】
前記複数のシム注入口は、中心部からサイドに向かって進むにつれて次第に直径が大きくなる、請求項12に記載のスロットダイコーター。
【請求項14】
前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延び、前記延在部は、前記第1部分から下方へと延びて突出し、前記底面部は、前記延在部の下端と一体に接続されている、請求項11に記載のスロットダイコーター。
【請求項15】
前記底面部に中心部からサイドに向かって進むにつれて次第に直径が大きくなる複数のシム注入口をさらに含み、前記シム注入口は円形である、請求項14に記載のスロットダイコーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットダイコーターに関し、特に、改善されたシムプレートを含むスロットダイコーターに関する。
【0002】
本出願は、2021年11月26日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0166218号及び2022年6月3日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0068483号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近のモバイル機器に対する技術の開発と需要の増加には目を見張るものがあり、これに伴い、エネルギー源としての二次電池へのニーズが急激に伸びている。かような二次電池は、発電要素である電極組立体を必須的に含んでいる。電極組立体は、正極と、セパレータ―及び負極が少なくとも1回以上積層された形態を有し、正極と負極は、それぞれアルミニウム箔と銅箔からなる集電体に正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーが塗布及び乾燥されて製造される。かような二次電池は、一般に、正極活物質として、層状結晶構造のリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)と、層状結晶構造のLiMnO、スピネル結晶構造のLiMnなどのリチウム含有マンガン酸化物と、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)を用いる。また、負極活物質として炭素系の物質が主として用いられ、最近には、高エネルギーリチウム二次電池へのニーズの増加により、炭素系物質よりも10倍以上の有効容量を有するシリコン系物質、シリコン酸化物系物質との混合使用が考えられている。二次電池の充放電特性を均一にするためには、このような正極活物質スラリー及び負極活物質スラリーが集電体に一様にコーティングされていなければならず、従来よりスロットダイコーターが利用されている。
【0004】
図1は、従来のスロットダイコーターを用いたコート方法の一例を示す。図2は、図1のII-II’断面図であって、MD方向(集電体の走行方向)に沿ったスロットダイコーターの断面図である。
【0005】
図1図2を参照すると、スロットダイコーター30を用いた電極の製造方法においては、コーティングロール10により搬送される集電体20の上にスロットダイコーター30から吐き出された電極活物質スラリーを塗布することになる。スロットダイコーター30から吐き出された電極活物質スラリーは、集電体20の片面に広く塗布されて電極活物質層を形成する。スロットダイコーター30は、2つのダイブロック32、34を含み、2つのダイブロック32、34の間にスロット36を形成したものであって、マニホールド38には、フィード部(図示せず)から供給される電極活物質スラリーが収容されていて、スロット36と連通した吐出口40を介して電極活物質スラリーが吐き出されて電極活物質層を形成することができるのである。参照番号42と44は、ダイブロック32、34の先端部であるダイリップをそれぞれ示し、参照番号46はランド部である。
【0006】
集電体20の上にコートされる電極活物質層のコーティング幅は、スロット36の幅により決定される。コーティング幅の変更が必要である場合、マニホールド38の内部空間及びスロット36の幅を決定するシムプレート50を変更して様々なコーティング幅を実現することができる。
【0007】
図3は、従来のシムプレートを示す図である。
【0008】
ダイブロック32内のマニホールド38の上にシムプレート50を配置して用いる。シムプレート50は、スロットギャップを限定する厚さを有するシート状の部材である。普通は、図3に示すように、シムプレート50の終端をダイリップ42に位置合わせして用いている。参照番号60は、フィード部から電極活物質スラリーが供給される注入口であり、概してマニホールド38の底面のセンター部に形成されている。
【0009】
図4は、従来のシムプレートのオフセットを示す図である。
【0010】
シムオフセットOの制御は、ダイブロック32の先端部であるダイリップ42に対してシムプレート50の終端が後進するようにすることである。シムオフセットOの制御は、スラリーの吐出圧力などを考慮したコーティング幅、ローディング工程能力に欠かせない必須要素であるが、従来には、シムオフセットOを精度よく制御し難く、しかも、再現性を確保し難い。
【0011】
図5は、従来の板膜シムを示す図である。
【0012】
図3のシムプレート50を変更して、ダイブロック32のマニホールド38において、ランド部46の進入流路を塞いで幅方向のローディングプロファイルを制御する板膜シム50’を用いる場合もある。板膜シム50’は、シムプレート50の中心部にシート状の板膜部52をさらに含む。しかしながら、既存の板膜シム50’によるローディングプロファイルの制御には限界がある。
【0013】
ダイブロック32のマニホールド38の形状は、最初の成形後に変更され難いため、シムプレート50を改善して、シムオフセットの制御やローディングプロファイルの制御などの問題を解決することが望ましいものといえる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであって、本発明の目的は、改善されたシムプレートを含むスロットダイコーターを提供することである。
【0015】
但し、本発明が解決しようとする技術的課題は、上述した課題に何ら制限されるものではなく、言及されていない他の課題は、下記に記載されている発明の説明から当業者にとって明らかに理解できる筈である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成するための本発明のスロットダイコーターは、下ダイブロック及び上ダイブロックと、前記下ダイブロックと上ダイブロックとの間に配備されてスロットを形成するシムプレートと、前記下ダイブロックに配備され、コーティング液を収容するマニホールドと、を含んで、前記スロットと連通した吐出口を介して前記コーティング液を基材の上に吐き出して塗布するスロットダイコーターであって、前記シムプレートは、前記基材の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部を備える板状部材と、前記板状部材から突出して前記マニホールドの内部に挿入される構造物と、を含む。
【0017】
前記構造物は、前記板状部材と一体形に設計されてもよい。
【0018】
前記マニホールドの後側と前側において前記上ダイブロックの下面と前記シムプレートの上面とが互いに隙間なしに結合し、前記下ダイブロックの上面と前記シムプレートの下面とが互いに隙間なしに結合してもよい。
【0019】
前記シムプレートの上面はフラットであり、前記シムプレートの下面の一部に前記構造物が突出しているものであってもよい。
【0020】
前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延びるものであってもよい。
【0021】
前記構造物は、前記板状部材の両終端に前記マニホールドと接触される部位に前記マニホールドの両終端に挿入されて前記シムプレートの位置再現性を確保するサイド構造物であってもよい。
【0022】
前記サイド構造物は、前記マニホールドの断面の形状と同じ形状を有し前記マニホールドの底面を含む前記マニホールド内にぴったり合うように嵌め込まれるものであってもよい。
【0023】
一例を挙げると、前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延び、前記サイド構造物は、前記第2部分において前記マニホールドに近い内側の側壁から下方へと延びて突出していてもよい。
【0024】
前記構造物は、前記板状部材の中央部から前記吐出口に向かって延び、前記マニホールドの内部に挿入される厚さを有するように前記板状部材よりも厚く拡張された板膜構造物であってもよい。
【0025】
具体的に、前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延び、前記板膜構造物は、前記第1部分の中央部において前記第2部分と同じ方向に延び、下方に延びて突出しているものであってもよい。
【0026】
前記構造物は、前記マニホールドの底面に形成された注入口から出てくるコーティング液を二股に分岐させる分岐用構造物であってもよい。
【0027】
前記分岐用構造物は、前記マニホールドの側壁に沿って下方に延びた延在部と、前記延在部に接続され、前記マニホールドの底面に沿って置かれる底面部と、を備えていてもよい。
【0028】
前記分岐用構造物は、前記底面部に複数のシム注入口をさらに含んでいてもよい。
【0029】
前記複数のシム注入口は、中心部からサイドに向かって進むにつれて次第に直径が大きくなるものであってもよい。
【0030】
他の例を挙げると、前記板状部材は、ベースとなる第1部分と前記第1部分から延びる少なくとも2つの第2部分を含み、前記第2部分は、前記第1部分の同じ側に接続され、同じ方向に延び、前記延在部は、前記第1部分から下方へと延びて突出し、前記底面部は、前記延在部の下端と一体に接続されているものであってもよい。
【0031】
このとき、前記底面部に中心部からサイドに向かって進むにつれて次第に直径が大きくなる複数のシム注入口をさらに含み、前記シム注入口は円形であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一側面によれば、スロットダイコーターにシムプレートを組み付けるとき、シムオフセットに再現性を確保することができる。
【0033】
本発明の他の側面によれば、幅方向のローディングプロファイルを制御し易くなる。
【0034】
マニホールドの形状は、最初の成形後に変更され難い。本発明のさらに他の側面によれば、マニホールドを変えなくても、シムプレートの形状を用いて、スロットダイコーターのマニホールド領域まで再構成することができる。
【0035】
このように、本発明によれば、従来、シート状の部材であるシムプレートでは不可能であったコーティング液の流動構造の形成とコーティング幅、ローディング工程能力の改善の可能性がある。
【0036】
本発明は、単にシート状の部材ではなく、板状部材の上下に新たな機能的構造物を含めたシムプレートを含むスロットダイコーターを提供する。好ましくは、シムプレートの下部のマニホールド構造を活用するように板状部材の下に新たな機能的構造が含まれる。
【0037】
当該機能的構造は、主としてマニホールドと関係していて、シムプレートそれ自体の位置再現性を確保したり、マニホールド内の流動構造を再構成したりして、従来、シート状の部材では不可能であった流動構造の形成とともに、コーティング幅、ローディング工程能力の品質の改善の可能性を確保する。
【0038】
本発明によるスロットダイコーターを用いると、安定的に電極活物質層を形成することができる。
【0039】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示するものであり、後述する発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるため、本発明はそのような図面に記載された事項のみに限定されて解釈されてはいけない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】従来のスロットダイコーターを用いたコート方法の一例を示す。
図2図1のII-II’断面図であって、MD方向(集電体の走行方向)に沿ったスロットダイコーターの断面図である。
図3】従来のシムプレートを示す図である。
図4】従来のシムプレートのオフセットを示す図である。
図5】従来の板膜シムを示す図である。
図6】本発明の一実施形態によるスロットダイコーターの断面図である。
図7】本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートの一例を示す底面斜視図である。
図8図7のシムプレート及び下ダイブロックの斜視図である。
図9図7のシムプレートが配備された下ダイブロックの側面図である。
図10】本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートの他の例を示す底面斜視図である。
図11図10のシムプレート及び下ダイブロックの斜視図である。
図12】本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートのさらに他の例を示す底面斜視図である。
図13図12のシムプレート及び下ダイブロックの斜視図である。
図14】本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートのさらに他の例と下ダイブロックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを表すものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解されたい。
【0042】
同じ図面符号は、同じ構成要素を指し示す。また、図中、構成要素の厚さ、比率、及び寸法は、技術的内容の効果的な説明のために誇張されたものである。
【0043】
本発明のスロットダイコーターは、スロットを備え、スロットを介して基材の上にコーティング液をコートする装置である。以下で説明する「基材」は集電体であり、「コーティング液」は電極活物質スラリーである。但し、本発明の権利範囲がこれに必ずしも制限されるとは限らない。例えば、前記基材は、セパレータ―を構成する多孔性支持体であり、コーティング液は有機物であってもよい。すなわち、薄膜コートが求められる場合であれば、前記基材とコーティング液はいなかるものであっても構わない。本明細書において、「前」は吐出口側の方向を示し、「後ろ」はその反対の方向を示す。
【0044】
本発明は、スロットダイコーターのシムオフセットに再現性を確保するものである。シムプレートの形状を用いて、スロットダイコーターのマニホールド領域まで再構成して、従来、シート状の部材であるシムプレートでは不可能であった流動構造の形成とコーティング幅、ローディング工程能力の改善の可能性がある。
【0045】
本発明は、単にシート状の部材ではなく、板状部材の上下に新たな機能的構造を含めたシムプレートを提案する。好ましくは、シムプレートの下部のマニホールド構造を活用するように板状部材の下に新たな機能的構造が含まれる。
【0046】
当該機能的構造は、主としてマニホールドと関係していて、シムプレートそれ自体の位置再現性を確保したり、マニホールド内の流動構造を再構成したりして、従来、シート状の部材では不可能であった流動構造の形成とともに、コーティング幅、ローディング工程能力の品質の改善の可能性を確保する。
【0047】
図6は、本発明の一実施形態によるスロットダイコーターの断面図である。
【0048】
本発明のスロットダイコーター100は、下ダイブロック110と上ダイブロック120を含む。シムプレート130は、下ダイブロック110と上ダイブロック120との間に配備されてスロット101を形成する。
【0049】
下ダイブロック110には、マニホールド115が配備されている。マニホールド115は、コーティング液150を収容する。スロットダイコーター100は、スロット101と連通した吐出口101aを介してコーティング液150を基材190の上に吐き出して塗布する。
【0050】
スロットダイコーター100は、下ダイブロック110と上ダイブロック120の他に、ダイブロックをさらに含んでいてもよい。2つのダイブロックの間ごとにシムプレート130を含めてスロットを2本以上形成してもよいのである。下ダイブロック110と上ダイブロック120は、シムプレート130を基準として指し示したものであり、ダイブロックがさらに多くなる場合、下ダイブロック110や上ダイブロック120は、中間ダイブロックになることもある。
【0051】
一方、図6において、スロットダイコーター100は、コーティング液である電極活物質スラリーを吐き出す方向(X方向)を略水平にして配設されている(略:±5°)。しかしながら、ここで例として挙げた形態に限定されなければならないというわけではなく、例えば、電極活物質スラリーを吐き出す方向を上(Y方向)にする垂直ダイとして構成してもよい。
【0052】
スロット101は、2つのダイブロック110、120が互いに対面するところの間に形成される。ここにシムプレート130が介在してこれらの間に隙間が設けられることにより、コーティング液150が流動可能な通路に相当するスロット101が形成されるのである。シムプレート130の厚さは、スロット101の上下の幅(Y方向、スロットギャップ)を決定する。
【0053】
シムプレート130は、基材190の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部を備える板状部材と、前記板状部材から突出してマニホールド115の内部に挿入される構造物と、を含むというところに本発明の特徴があり、前記構造物は、前記板状部材と一体形に設計されてもよい。前記構造物の詳細に関しては後述する。
【0054】
シムプレート130は、1つの領域が切り抜かれて開放部を備え、ダイブロック110、120のそれぞれの対向面の周縁領域のうちの一方の側を除いた残りの部分に介在してもよい。このため、コーティング液150が外部に吐き出し可能な吐出口101aは、ダイブロック110、120の各先端部であるダイリップ111、131の間に形成される。吐出口101aは、ダイリップ111、131同士が離れ合うことにより形成されたところであるといえる。
【0055】
参考までに、シムプレート130は、吐出口101aが形成される領域を除いては、2つのダイブロック110、120の間の隙間にコーティング液150が漏れ出ないようにするガスケット(gasket)としての機能を兼ねるため、密封性を有する材質からなることが好ましい。
【0056】
2つのダイブロック110、120のうちのどちらか一方は、所定の深さを有し、スロット101と連通するマニホールド115を備える。この実施形態においては、マニホールド115が下ダイブロック110に配備される場合を例として挙げている。図示はしないが、このようなマニホールド115は、外部に配設されたコーティング液供給チャンバー(図示せず)と供給管により接続されてコーティング液150の供給を受ける。マニホールド115内にコーティング液150がいっぱいになると、コーティング液150の流れがスロット101に沿って誘導され、吐出口101aを介して外部に吐き出されることになる。
【0057】
マニホールド115の後側において上ダイブロック120の下面とシムプレート130の上面とが互いに隙間なしに結合し、下ダイブロック110の上面とシムプレート130の下面とが互いに隙間なしに結合することができる。マニホールド115の前側においても、上ダイブロック120の下面とシムプレート130の上面とが互いに隙間なしに結合し、下ダイブロック110の上面とシムプレート130の下面とが互いに隙間なしに結合することができる。これにより、コーティング液150は、シムプレート130により限定されたスロット101内においてしか流動しなくなる。
【0058】
このような構成を有するスロットダイコーター100によれば、回転自在に設けられるコーティングロール180をスロットダイコーター100の前方に配置し、コーティングロール180を回転させることにより、コートされるべき基材190を走行させながら、コーティング液150を吐き出して連続して基材190の表面に接触させて基材190に塗布することができる。あるいは、コーティング液150の供給及び中断を交互に行って基材190の上に間欠的にパターンコーティングを行うこともできる。
【0059】
ここで、シムプレート130は、基材190の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するものであり、本発明により、板状部材と構造物を含むところに特徴がある。構造物の実施形態として、図7から図14を参照して説明するようなものが採用可能である。図7から図14は、本発明のスロットダイコーターに含まれ得る様々な実施形態によるシムプレートを説明するための図である。前記構造物は、以上で述べた機能的構造を実現するためのものであり、種類は、図7図10図12に例として挙げたように、3種類であり得、このような構造物を単独でまたは種々に組み合わせて用いることができる。例えば、図14は、このような3種類の構造物をいずれも組み合わせたものである。
【0060】
既存のシムプレートがシート状の部材であるため2次元平面状の構造に相当するとみなせば、本発明は、シムプレートの基準となる板状部材の上及び/又は下に、好ましくは、マニホールド内に拡張される構造物をさらに含むため3次元立体状の構造を有するという点で相違点がある。特に、3次元立体状の構造は、2次元平面状の構造のシムプレートに対して一部分の歪み(変形)をさらに引き起こして歪み力が印加されている間にのみ3次元立体状の構造を有し、歪み力が除去されれば、再び2次元平面状の構造に戻る場合とは異なるのである。シムプレートそれ自体の形状により3次元立体状の構造が設けられ、シムプレートのスロットダイコーターへの締め付けの前後にシムプレートの歪みがない。
【0061】
シムプレート130は、プラスチック製または金属製のものであってもよいが、本発明がこれに制限されるものではない。シムプレート130は、例えば、テフロン(登録商標)、ポリエステルなどの樹脂シート、または銅、アルミニウムなどの金属シートであってもよい。シムプレート130は、例えば、ねじを介して2つのダイブロック110、120のうちの少なくともどちらか一方と結合固定されてもよいが、本発明がこれに制限されるものではない。
【0062】
まず、図7は、本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートの一例を示す底面斜視図である。図8は、図7のシムプレート及び下ダイブロックの斜視図である。図9は、図7のシムプレートが配備された下ダイブロックの側面図である。
【0063】
図7から図9を参照すると、シムプレート130は、基材190の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部130aを備える板状部材132と、前記板状部材132から突出してマニホールド115の内部に挿入されるサイド構造物134と、を含む。シムプレート130の上面、つまり、上ダイブロック120と対面する面はフラットであり、シムプレート130の下面、つまり、下ダイブロック110と対面する面のうちの一部にサイド構造物134が突出していてもよい。
【0064】
サイド構造物134は、シムプレート130それ自体の位置再現性を確保するものである。参照番号117は、フィード部から電極活物質スラリーが供給される注入口であり、マニホールド115の底面のセンター部に形成されている。
【0065】
サイド構造物134は、板状部材132の両終端にマニホールド115と接触される部位にマニホールド115の両終端に挿入されてシムプレート130の位置再現性を確保することができる。サイド構造物134は、板状部材132の両終端にマニホールド115と接触される部位において板状部材132から出張ってマニホールド115の両終端に挿入されることができる。
【0066】
板状部材132は、ベースとなる第1部分132aと前記第1部分132aから延びる少なくとも2つの第2部分132bを含んでいてもよい。第1部分132aは、シムプレート130においても下ダイブロック110の後方部に置かれる部分である。シムプレート130が上ダイブロック120と下ダイブロック110のそれぞれの対向面の周縁領域のうちの一方の側を除いた残りの部分に介在するようにするために、第2部分132bは、少なくとも2つである。この実施形態において、第2部分132bは2つである場合を例にとって開示している。隣り合う2つの第2部分132bの間が開放部130aとなる。第2部分132bの数がさらに増えると、基材190の上に2つ以上のコーティング層を互いに並ぶように横に形成することができる。すなわち、ストライプパターンのコートを行うことができる。本発明が第2部分132bの数により制限されるものではない。
【0067】
第2部分132bは、第1部分132aの同じ側に接続され、同じ方向に延びる。第2部分132bは、シムプレート130においても下ダイブロック110の前方部へ向かうように延びる部分である。サイド構造物134は、第2部分132bにおいてマニホールド115に近い内側の側壁から下方へと延びて突出している。第2部分132bとサイド構造物134とは、一体に形成されていてもよい。すなわち、第2部分132bとサイド構造物134との間には隙間や遊びがない。したがって、サイド構造物134と第2部分132bとの間に余計にコーティング液が流動することを防ぐことができる。
【0068】
例えば、板状部材132は、逆「コ」字状の板状部材であって、図3において説明した既存のシムプレートと略同じ形状であってもよい。本発明のシムプレート130は、このような板状部材132に、シムプレート130の下部のマニホールド115内に挿入できるように、板状部材132から下方へと突出したサイド構造物134をマニホールド115の両側壁(スロットダイコーターの幅方向に両サイドに置かれる部分)に近い位置にさらに含んでいる。マニホールド115内にこのようなサイド構造物134が挿入されることにより、シムプレート130の組み付けに際して組み付けの正確性が増加する。なお、シムプレート130の終端がダイリップ111に比べてオフセットされるように設計した場合であれば、常にシムプレート130が置かれる位置が一定しているため、当初設計された大きさのオフセットに見合う分だけ常に保持できるという効果がある。したがって、スロットダイコーター100にシムプレート130を組み付けるとき、シムオフセットに再現性を確保することができる。
【0069】
サイド構造物134は、マニホールド115の断面の形状と同じ形状を有しマニホールド115の底面を含むマニホールド115内にぴったり合うように嵌めこまれて位置固定されてもよく、サイド構造物134の周りに余計なコーティング液の流動が生じないようにすることができる。例えば、マニホールド115の断面が半円形状を呈すると、サイド構造物134もまたそれに対応して半円形状を呈することができる。他の例を挙げると、マニホールド115の断面が台形を呈すると、サイド構造物134もまたそれに対応して台形を呈することができる。
【0070】
板状部材132とサイド構造物134は、互いに一体形の構造であってもよい。すなわち、サイド構造物134は、板状部材132に別の部材をさらに継ぎ足したり接着したりして形成するのではなく、シムプレート130の作製に際して最初から一体形に形成されてもよい。板状部材132とサイド構造物134は、継ぎ目なしにシームレスで継ぎ合わされるのである。このようにすれば、製造工程も煩雑ではなく、板状部材132とサイド構造物134がそれぞれ別々の構造である場合に考慮すべき両者間の結合力を考慮及び管理しなくても済むというメリットがあり、構造的にも強固である。のみならず、板状部材132とサイド構造物134との間にスラリーが余計に挟まれるという問題を防ぐことができる。
【0071】
図10は、本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートの他の例を示す底面斜視図である。図11は、図10のシムプレート及び下ダイブロックの斜視図である。
【0072】
図10及び図11において説明しようとする構造物は、板状部材の下に拡張された板膜構造物である。
【0073】
図10及び図11を参照すると、シムプレート130は、基材190の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部130aを備える板状部材132と、前記板状部材132から突出してマニホールド115の内部に挿入される板膜構造物136と、を含む。板膜構造物136は、板状部材132の中央部から吐出口101aに向かって延び、マニホールド115の内部に挿入されるのに十分な厚さを有する。特に、板膜構造物136は、板状部材132よりも厚い。図5を参照して説明した既存の板膜シム50’の形状に比べて、マニホールド115の内部に板膜をさらに拡張させて所定の厚さを有するように強化させるため、板膜構造物136は、強化板膜シムとも呼ぶことができる。
【0074】
図7を参照して説明した場合と同様に、板状部材132は、ベースとなる第1部分132aと前記第1部分132aから延びる第2部分132bを含む。板膜構造物136は、前記第1部分132aの中央部から前記第2部分132bと同じ方向に延び、下方に延びて突出している。第1部分132aと板膜構造物136とは、一体に形成されていてもよい。すなわち、第1部分132aと板膜構造物136との間には隙間や遊びがない。したがって、板膜構造物136と第1部分132aとの間において余計なコーティング液の流動が生じることを防ぐことができる。
【0075】
既存の板膜シム50’は、シムプレート50とシート状の板膜部52とが同じ厚さである。すなわち、板膜シム50’の上面や下面が両方ともフラットである。板膜シム50’は、単にローディング量の制御のためにスラリーの流れを変える用途に過ぎないものである。これに比べて、本発明のシムプレート130に配備される板膜構造物136は、板状部材132から突出できるように板状部材132よりもさらに厚く、これにより、比較的にさらに大きな質量を有することができる。したがって、板膜構造物136の強度は従来よりも増加し、マニホールド115の爪に引っかかる段差を含む構造となるため、たとえ板膜構造物136が任意の方向に力を受ける状況に置かれるとしても、簡単に歪んだり破損したりせず、位置固定の効果もある。このように、板膜構造物136は、より一層優れた構造的強度を持たせるという効果がある。
【0076】
板膜構造物136は、シムプレート130に流量調整機能を与える。板膜構造物136は、図示のごとく、中央部が吐出口101aに向かって最も多く出張っている形状であってもよい。板膜構造物136の中央部を基準として両側の周縁部の流路に比べて、中央部の流路が狭くなれるのである。すると、コーティング液150がシムプレート130を通過する過程において中央部の圧力が増加し、コーティング液150は、板膜構造物136に沿って両側の周縁部に移動することになる。板膜構造物136は、図示のごとく、傾斜付き多角形の構造を有していてもよく、緩やかな丸み形状を帯びた構造を有していてもよく、コーティング液の物性及び工程条件に応じてその形状は種々に調整可能である。このような板膜構造物136を含むシムプレート130によれば、幅方向のローディングプロファイルを制御し易くなる。
【0077】
板状部材132と板膜構造物136は、互いに一体形の構造を有していてもよい。すなわち、板膜構造物136は、板状部材132に別の部材をさらに継ぎ足したり接着したりして形成するのではなく、シムプレート130の製作に際して最初から一体形に形成されてもよい。板状部材132と板膜構造物136は、継ぎ目なしにシームレスで継ぎ合わされるのである。このようにすれば、製造工程も煩雑ではなく、板状部材132と板膜構造物136がそれぞれ別々の構造である場合に考慮すべき両者間の結合力を考慮及び管理しなくても済むというメリットがあり、構造的にも強固である。のみならず、板状部材132と板膜構造物136との間にスラリーが余計に挟まれるという問題を防ぐことができる。
【0078】
図12は、本発明のスロットダイコーターに含まれ得るシムプレートのさらに他の例を示す底面斜視図であり、図13は、図12のシムプレート及び下ダイブロックの斜視図である。図12及び図13において説明しようとする事項は、マニホールドの全面的な流路の再構成に相当する。
【0079】
図12及び図13を参照すると、シムプレート130は、基材190の上に塗布されるコーティング層のコーティング幅を決定するように少なくとも1つの領域が切り抜かれて開放部130aを備える板状部材132と、前記板状部材132から突出してマニホールド115の内部に挿入される分岐用構造物138と、を含む。分岐用構造物138は、マニホールド115の底面に形成された注入口117から出てくるコーティング液を二股に分岐させる。
【0080】
図3から図5に示すように、従来のマニホールド38内には、注入口60が底面のセンター部に配備されている。このような注入口60の位置のため、従来には、真ん中の部分のローディング量が高い場合がほとんどである。本発明においては、これを解決するために、マニホールド115の内部に拡張されて注入口117から出てくるコーティング液を二股に分岐させてこの分岐用構造物138に沿ってコーティング液が移動するように誘導していずれか片側のローディング量が高くならないように制御することができる。
【0081】
分岐用構造物138は、マニホールド115の側壁に沿って下方に延びた延在部138aと、延在部138aに接続され、マニホールド115の底面に沿って置かれる底面部138bと、を備える。底面部138bには、中心部からサイドに向かって進むにつれて直径が次第に大きくなる複数のシム注入口139a、139b、139c、139dを含む。
【0082】
図7を参照して説明した場合と同様に、板状部材132は、ベースとなる第1部分132aと前記第1部分132aから延びる第2部分132bを含む。延在部138aは、前記第1部分132aから下方へと延びて突出し、底面部138bは、延在部138aの下端と一体に接続されていてもよい。シム注入口139a、139b、139c、139dは、例えば、円形であってもよい。
【0083】
第1部分132aと延在部138aとは、一体に形成されていてもよい。すなわち、第1部分132aと延在部138aとの間には隙間や遊びがない。したがって、延在部138aと第1部分132aとの間において余計なコーティング液の流動が生じることを防ぐことができる。
【0084】
既存の注入口117から新たなシム注入口139a、139b、139c、139dへとコーティング液を移動させるようにして、注入口117に近いセンター部に流量が集中するという現象を改善することができる。マニホールド115の構造を変更せずとも、単にシムプレート130を調整することで流路を再構成するという顕著な効果があり、かつ、このような分岐用構造物138がマニホールド115内に挿入されることにより、シムプレート130の位置固定力がより一層改善されるという効果も奏することができる。
【0085】
マニホールド115の形状は、最初の成形後に変更され難い。本発明によれば、マニホールド115を変えなくても、分岐用構造物138を含むシムプレート130を用いて、スロットダイコーター100のマニホールド115領域まで再構成することができるという効果がある。
【0086】
図14は、以上で説明した3種類の構造物134、136、138のすべてを含むシムプレート130を示すものである。必要に応じては、図7のサイド構造物134と図12の分岐用構造物138とを組み合わせて、あるいは、図7のサイド構造物134と図10の板膜構造物136とを組み合わせて、あるいは、図10の板膜構造物136と図12の分岐用構造物138とを組み合わせて、シムプレート130を設けることもできる。
【0087】
以上で説明したスロットダイコーター100及びその変形例を用いて安定的に電極活物質層を形成することができる。例えば、正極活物質スラリーをコートすることにより、二次電池の正極の製造に適用されることが可能である。
【0088】
正極は、集電体及び前記集電体の表面に形成された正極活物質層を含む。集電体は、Al、Cuなど電気伝導性を示すものであって、二次電池の分野において公知の集電体電極の極性に応じて適宜なものが使用可能である。前記正極活物質層は、複数の正極活物質粒子、導電材及びバインダーのうちのいずれか1つ以上をさらに含んでいてもよい。なお、前記正極は、電気化学的な特性の補完や改善の目的で様々な添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0089】
活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば、特定の成分に何ら限定されるものではない。この非制限的な例には、リチウムマンガン複合酸化物(LiMn、LiMnOなど)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や1つまたはそれ以上の転移金属に置換された化合物と、一般式Li1+xMn2-x(ここで、xは0~0.33である。)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物と、リチウム銅酸化物(LiCuO)と、LiV、LiV、V、Cuなどのバナジウム酸化物と、一般式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaであり、x=0.01~0.3である。)で示されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物と、一般式LiMn2-x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、x=0.01~0.1である。)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである。)で示されるリチウムマンガン複合酸化物と、一般式のLiの一部がアルカリ土金属イオンに置換されたLiMnと、ジスルフィド化合物、及びFe(MoOのうちの1種または2種以上の混合物が含まれ得る。本発明において、前記正極は、固体電解質材料として、高分子系固体電解質、酸化物系固体電解質及び硫黄化物系固体電解質のうちのいずれか1種以上を含んでいてもよい。
【0090】
導電材は、通常、活物質を含む混合物の全重量を基準として1wt%~20wt%にて添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的な変化を誘発させないつつも、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末と、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカーと、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、及びポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選ばれた1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0091】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助力する成分であれば、特に制限されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などが挙げられる。前記バインダーは、通常、電極層100wt%に基づいて、1wt%~30wt%、または1wt%~10wt%の範囲にて含まれ得る。
【0092】
本発明のスロットダイコーター100を用いて負極活物質スラリーをコーティングすることにより、二次電池の負極の製造に適用されることも可能である。前記負極は、集電体及び前記集電体の表面に形成された負極活物質層を含む。前記負極活物質層は、複数の負極活物質粒子、導電材及びバインダーのうちのいずれか1つ以上をさらに含んでいてもよい。なお、前記負極は、電気化学的な特性の補完や改善の目的で様々な添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0093】
前記負極活物質としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンドライクカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどの炭素材料やリチウム金属材料、シリコンやスズなどの合金系材料、Nb、LiTi12、TiOなどの酸化物系材料、もしくはこれらの複合物が利用可能である。負極に対して導電材、バインダー及び集電体に対しては正極について記載した内容を参照されたい。
【0094】
このような正極活物質や負極活物質を含む活物質スラリーは、粘度が非常に高い。例えば、粘度は、1000cps以上であってもよい。二次電池の電極を形成するための用途の活物質スラリーの粘度は、2000cps~30000cpsであってもよい。例えば、負極活物質スラリーは、粘度が2000cps~4000cpsであってもよい。正極活物質スラリーは、粘度が8000cps~30000cpsであってもよい。粘度1000cps以上のコーティング液をコーティングできるものでなければならないため、本発明のスロットダイコーター100は、これよりも低い粘度のコーティング液、例えば、写真感光乳剤液、磁性液、反射防止や防弦性などを与える液、視野角の拡大効果を与える液、カラーフィルター用顔料液など普通の樹脂液を塗布する装置の構造とは違いがあり、それを変更して想到できる装置ではない。本発明のスロットダイコーター100は、例えば、平均粒径が10μm前後の粒子径を有する活物質を含み得る活物質スラリーを塗布するためのものであるため、このような粒子径の粒子を含まない他のコーティング液を塗布する装置の構造とも違いがあり、それを変更して想到できる装置ではない。本発明のスロットダイコーター100は、電極製造用コーターとして最適化されている。
【0095】
以上、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で様々な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0096】
100 スロットダイコーター
110 下ダイブロック
115 マニホールド
117 注入口
120 上ダイブロック
130 シムプレート
132 板状部材
134 サイド構造物
136 板膜構造物
138 分岐用構造物
138a 延在部
138b 底面部
139a、139b、139c、139d シム注入口
150 コーティング液
180 コーティングロール
190 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14