(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】結合体、結合体の製造方法、及び緩衝器
(51)【国際特許分類】
B21D 39/00 20060101AFI20240912BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20240912BHJP
F16B 4/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B21D39/00 B
F16F9/32 N
F16B4/00 N
(21)【出願番号】P 2023541388
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2022028430
(87)【国際公開番号】W WO2023017722
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2021131258
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋熊 真人
(72)【発明者】
【氏名】越坂 敦
(72)【発明者】
【氏名】河原 敬二
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佑
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/139048(WO,A1)
【文献】特開昭53-119763(JP,A)
【文献】特開平10-249476(JP,A)
【文献】特開昭64-087037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/00 - 39/04
F16F 9/32
F16B 4/00
B21J 5/00 ー 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材の結合体であって、該結合体は、
棒状部材と相手部材とを備え、
前記棒状部材の一端部を前記相手部材の嵌合穴に嵌合させ、前記相手部材の材料を加圧して前記棒状部材の周面に設けられた溝内に塑性流動させることで、前記棒状部材と前記相手部材とが結合されており、
前記溝は、前記棒状部材の一端側に設けられる第1溝と、該第1溝に対して軸方向へ離間されて設けられる第2溝と、を有し、
前記第1溝の深さは、前記第2溝の深さよりも大きいことを特徴とする結合体。
【請求項2】
請求項1に記載の結合体であって、
前記第1溝は2つであり、前記第2溝は1つであることを特徴とする結合体。
【請求項3】
2部材の結合体であって、該結合体は、
棒状部材と相手部材とを備え、
前記棒状部材の一端部を前記相手部材の嵌合穴に嵌合させ、前記相手部材の材料を加圧して前記棒状部材の周面に設けられた溝内に塑性流動させることで、前記棒状部材と前記相手部材とが結合されており、
前記溝は、前記棒状部材の一端側に複数設けられる第1溝と、該第1溝に対して軸方向へ離間されて設けられる該第1溝よりも少ない数の第2溝と、を有し、
前記相手部材は、軸方向一側面を加圧することにより前記第1溝の近傍に形成された第1凹部と、軸方向他側面を加圧することにより前記第2溝の近傍に形成された第2凹部と、を有し、
前記第1凹部の体積は、前記第2凹部の体積よりも大きいことを特徴とする結合体。
【請求項4】
請求項3に記載の結合体であって、
前記第1凹部の軸方向深さは、前記第2凹部の軸方向深さよりも深いことを特徴とする結合体。
【請求項5】
2部材の結合体の製造方法であって、
前記結合体は、棒状部材と相手部材とを備え、
前記棒状部材の一端部を前記相手部材の嵌合穴に嵌合させ、前記相手部材の材料を加圧して前記棒状部材の周面に設けられた溝内に塑性流動させることで、前記棒状部材と前記相手部材とが結合されており、
前記結合体の製造方法は、
前記棒状部材の一端から離間した位置に設けられた第2溝に前記相手部材の材料を塑性流動させる第1塑性流動工程と、
前記棒状部材の一端側に前記第2溝の深さよりも大きい深さの溝が設けられた第1溝に前記相手部材の材料を塑性流動させる第2塑性流動工程と、を有することを特徴とする結合体の製造方法。
【請求項6】
緩衝器であって、該緩衝器は、
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダの内部を2室に区画するピストン機構と、
一端部が前記ピストン機構に結合され、他端部が前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドの一端部を前記ピストン機構の嵌合穴に嵌合させ、前記ピストン機構の材料を加圧して前記
ピストンロッドの周面に設けられた溝内に塑性流動させることで形成される結合部と、を備え、
前記溝は、前記ピストンロッドの一端側に設けられる第1溝と、該第1溝に対して軸方向へ離間されて設けられる第2溝と、を有し、
前記第1溝の深さは、前記第2溝の深さよりも大きいことを特徴とする緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性流動結合により結合された結合体、該結合体の製造方法、及び該製造方法により製造された緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピストンロッドの一端部とソレノイドケースとを塑性流動結合法(メタルフロー)により結合させる2部材の結合方法(以下「従来の結合方法」と称する)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の結合方法では、ピストンロッド(棒状部材)の一端部とソレノイドケース(相手部材)とを塑性流動結合法により結合させるとき、ピストンロッドの他端面を治具により受ける。よって、ピストンロッドの他端面(受圧面)には、加工力(金型による加圧力)が作用する。ここで、ピストンロッドにケーブル挿通孔が設けられている場合、加工力によりピストンロッドの他端側開口周縁部(受圧部)が変形する虞がある。
【0005】
本発明は、塑性流動結合法における棒状部材の変形を抑止した結合体、結合体の製造方法、及びこれらを用いた緩衝器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の結合体は、棒状部材の一端部を相手部材の嵌合穴に嵌合させ、前記相手部材の材料を加圧して前記棒状部材の周面に設けられた溝内に塑性流動させることで結合される2部材の結合体であって、前記溝は、前記棒状部材の一端側に設けられる第1溝と、該第1溝に対して軸方向へ離間されて設けられる第2溝と、を有し、前記第1溝の深さは、前記第2溝の深さよりも大きいことを特徴とする。
本発明の結合体の製造方法は、棒状部材の一端部を相手部材の嵌合穴に嵌合させ、前記相手部材の材料を加圧して前記棒状部材の周面に設けられた溝内に塑性流動させることで、前記棒状部材と前記相手部材とが結合されており、前記結合体の製造方法は、前記棒状部材の一端から離間した位置に設けられた第2溝に前記相手部材の材料を塑性流動させる第1塑性流動工程と、前記棒状部材の一端側に前記第2溝の深さよりも大きい深さの溝が設けられた第1溝に前記相手部材の材料を塑性流動させる第2塑性流動工程と、を有することを特徴とする。
本発明の緩衝器は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダの内部を2室に区画するピストン機構と、一端部が前記ピストン機構に結合され、他端部が前記シリンダの外部へ延出されるピストンロッドと、前記ピストンロッドの一端部を前記ピストン機構の嵌合穴に嵌合させ、前記ピストン機構の材料を加圧して前記ピストンロッドの周面に設けられた溝内に塑性流動させることで形成される結合部と、を備える緩衝器であって、前記溝は、前記ピストンロッドの一端側に設けられる第1溝と、該第1溝に対して軸方向へ離間されて設けられる第2溝と、を有し、前記第1溝の深さは、前記第2溝の深さよりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、塑性流動結合法における棒状部材の受圧部の変形を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る緩衝器の軸平面による断面図である。
【
図2】
図1におけるピストン機構を拡大して示す図である。
【
図5】結合体がセットされた結合装置の軸平面による断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る製造方法の説明図であり、加圧前の状態を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る製造方法の説明図であり、第2結合部が形成された状態を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る製造方法の説明図であり、第1結合部が形成された状態を示す図である。
【
図9】ピストンロッド(棒状部材)が受ける反力を低減させる条件を導出するための実験結果を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る製造方法の説明図であり、加圧前の状態を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る製造方法の説明図であり、第2結合部が形成された状態を示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る製造方法の説明図であり、第1結合部が形成された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態) 本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
便宜上、
図1における上下方向をそのまま「上下方向」と称する。
図1に、減衰力調整機構17がシリンダ2に内蔵された、所謂、ピストン内蔵型の減衰力調整式緩衝器1を示す。
【0010】
図1に示されるように、緩衝器1は、シリンダ2の外側に外筒10が設けられた複筒構造をなす。緩衝器1は、ピストン3と減衰力調整機構17とを含むピストン機構140を有する。ピストン3は、シリンダ2内に摺動可能に嵌装され、シリンダ2内をシリンダ上室2A(第1室)とシリンダ下室2B(第2室)との2室に区画する。ピストン機構140には、ピストンロッド141(棒状部材)の下端部143(一端部)が結合される。ピストンロッド141の他端側(
図1における上側)は、シリンダ2の外部へ延出される。
【0011】
シリンダ2と外筒10との間には、リザーバ18が形成される。ピストン3は、上端側がシリンダ上室2Aに開口する伸び側通路19と、下端側がシリンダ下室2Bに開口する縮み側通路20と、を有する。シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ18とを区画するベースバルブ45が設けられる。ベースバルブ45には、シリンダ下室2Bとリザーバ18とを連通する通路46,47が設けられる。
【0012】
通路46には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への油液(作動流体)の流通を許容するチェックバルブ48が設けられる。他方、通路47には、シリンダ下室2B側の油液の圧力が設定圧力に達することで開弁し、シリンダ下室2B側の圧力(油液)をリザーバ18側へ逃がすディスクバルブ49が設けられる。なお、作動流体として、シリンダ2内には油液が封入され、リザーバ18内には油液およびガスが封入される。また、外筒10の下端にはボトムキャップ50が接合される。
【0013】
減衰力調整機構17は、バルブ機構部28とソレノイド90とからなる。
図2に示されるように、バルブ機構部28は、軸部6がピストン3の軸孔4に挿通されるピストンボルト5と、伸び側通路19の作動流体の流れを制御する伸び側バルブ機構21と、縮み側通路20の作動流体の流れを制御する縮み側バルブ機構51と、を有する。
【0014】
伸び側バルブ機構21は、ピストンボルト5の軸部6に取り付けられる有底円筒形の伸び側パイロットケース22を有する。伸び側パイロットケース22は、ピストン3側が開口する円筒部26と、底部27と、を有する。伸び側パイロットケース22のピストン3側には、伸び側メインバルブ23(バルブ部材)が配置される。また、伸び側メインバルブ23の反ピストン側(
図2における「下側」)であって、伸び側メインバルブ23と伸び側パイロットケース22との間には、伸び側背圧室25が形成される。
【0015】
伸び側バルブ機構21は、ピストン3の下端面の外周側に形成されて伸び側メインバルブ23が離着座可能に当接する環状のシート部24(第1シート部)を有する。シート部24は、伸び側通路19の開口の外周側に形成される。伸び側背圧室25は、伸び側パイロットケース22と伸び側メインバルブ23の背面との間に形成される。伸び側背圧室25内の圧力は、伸び側メインバルブ23に対して閉弁方向へ作用する。伸び側メインバルブ23には、弾性体からなる環状のパッキン31が焼き付けられる。伸び側メインバルブ23は、パッキン31が伸び側パイロットケース22の円筒部26の内周面に全周にわたって接触するパッキンバルブである。
【0016】
伸び側背圧室25は、伸び側パイロットケース22の底部27に形成された通路32とサブバルブ30とを介してシリンダ下室2Bに連通される。サブバルブ30は、伸び側背圧室25の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、伸び側背圧室25からシリンダ下室2Bへの作動流体の流れに対して抵抗力を付与する。
【0017】
伸び側背圧室25は、通路32を介して、伸び側パイロットケース22とサブバルブ30との間に形成された第1受圧室172に連通される。第1受圧室172は、伸び側パイロットケース22の下端面(伸び側メインバルブ23側とは反対側の面)に設けられた複数の環状の第1シート部173によって扇形に区画される。複数の第1シート部173の内側には、各々に通路32が開口する。
【0018】
伸び側パイロットケース22には、ピストン3の縮み方向への移動により、シリンダ下室2Bから伸び側背圧室25への作動流体の流れが生じる背圧導入通路171が設けられる。伸び側パイロットケース22の上端面(伸び側メインバルブ23側の面)には、環状のシート部35が設けられる。シート部35は、底部27の内周部の外周に設けられた環状の受圧室174を画定する。
【0019】
伸び側パイロットケース22の下端面には、第1受圧室172と隔絶された第2受圧室177が設けられる。第2受圧室177には、背圧導入通路171が開口する。第2受圧室177は、第2シート部178によって画定される。第2シート部178は、一対の隣接する第1受圧室172間を円弧形に延びる。第2シート部178には、第2受圧室177とシリンダ下室2Bとを連通する第1オリフィス175が設けられる。
【0020】
これにより、伸び側バルブ機構21には、シリンダ下室2Bと伸び側背圧室25とを連通する伸び側連通路(連通路)が形成される。伸び側連通路は、ピストン3の縮み方向への移動により、シリンダ下室2Bの作動流体を、第1オリフィス175、第2受圧室177、背圧導入通路171、受圧室174、及びチェックバルブ33を経て伸び側背圧室25へ導入する。
【0021】
一方、縮み側バルブ機構51は、ピストンボルト5の軸部6に取り付けられる有底円筒形の縮み側パイロットケース52を有する。縮み側パイロットケース52は、ピストン3側が開口する円筒部56と、底部57と、からなる。縮み側パイロットケース52のピストン3側には、縮み側メインバルブ53(バルブ部材)が配置される。また、縮み側メインバルブ53の反ピストン側(
図2における「上側」)であって、縮み側メインバルブ53と縮み側パイロットケース52との間には、縮み側背圧室55が形成される。
【0022】
縮み側バルブ機構51は、ピストン3の上端面の外周側に形成されて縮み側メインバルブ53が離着座可能に当接する環状のシート部54(第1シート部)を有する。シート部54は、縮み側通路20の開口の外周側に形成される。縮み側背圧室55は、縮み側パイロットケース52と縮み側メインバルブ53の背面との間に形成される。縮み側背圧室55内の圧力は、縮み側メインバルブ53に対して閉弁方向へ作用する。縮み側メインバルブ53には、弾性体からなる環状のパッキン61が焼き付けられる。縮み側メインバルブ53は、パッキン61が縮み側パイロットケース52の円筒部56の内周面に全周にわたって接触するパッキンバルブである。
【0023】
縮み側背圧室55は、縮み側パイロットケース52の底部57に形成された通路62とサブバルブ60とを介してシリンダ上室2Aに連通される。サブバルブ60は、縮み側背圧室55の圧力が所定圧力に達したときに開弁し、縮み側背圧室55からシリンダ上室2Aへの作動流体の流れに対して抵抗力を付与する。
【0024】
縮み側背圧室55は、通路62を介して、縮み側パイロットケース52とサブバルブ60との間に形成された第1受圧室182に連通される。第1受圧室182は、縮み側パイロットケース52の上端面(縮み側メインバルブ53側とは反対側の面)に設けられた複数の第1シート部183によって扇形に区画される。複数の第1シート部183の内側には、各々に通路62が開口する。
【0025】
縮み側パイロットケース52には、ピストン3の伸び方向への移動によりシリンダ上室2Aから縮み側背圧室55への作動流体の流れが生じる背圧導入通路181が設けられる。縮み側パイロットケース52の下端面(縮み側メインバルブ53側の面)には、環状のシート部65が設けられる。シート部65は、底部57の内周部の外周に設けられた環状の受圧室184を画定する。
【0026】
縮み側パイロットケース52の上端面には、第1受圧室182と隔絶された第2受圧室187が設けられる。第2受圧室187には、背圧導入通路181が開口する。第2受圧室187は、第2シート部188によって画定される。第2シート部188は、一対の隣接する第1受圧室182間を円弧形に延びる。第2シート部188には、第2受圧室187とシリンダ上室2Aとを連通する第1オリフィス185が設けられる。
【0027】
これにより、縮み側バルブ機構51には、シリンダ上室2Aと縮み側背圧室55とを連通する縮み側連通路(連通路)が形成される。縮み側連通路は、ピストン3の伸び方向への移動により、シリンダ上室2Aの作動流体を、第1オリフィス185、第2受圧室187、背圧導入通路181、受圧室184、及びチェックバルブ63を経て縮み側背圧室55へ導入する。
【0028】
なお、伸び側バルブ機構21及び縮み側バルブ機構51を構成するバルブ部品は、ピストンボルト5の軸部6のねじ部(符号省略)に取り付けられたナット78を締め付けることで、ピストンボルト5の頭部7とワッシャ79との間で加圧されて軸力が発生する。
【0029】
図2に示されるように、ピストンボルト5には、共通通路11が形成される。共通通路11は、スリーブ15の内側(軸孔)に形成された軸方向通路12を有する。スリーブ15は、上端がピストンボルト5の頭部6に開口する孔16に嵌着される。共通通路11は、孔16の下部(スリーブ15の下端よりも下側の部分)に形成された軸方向通路13を有する。共通通路11は、上端が孔16に開口する小径孔からなる軸方向通路14を有する。共通通路11の内径は、軸方向通路13が最も大きく、軸方向通路12、軸方向通路14の順に小さくなる。なお、軸方向通路12は、ピストンボルト5の頭部7の端面9に開口する。
【0030】
伸び側背圧室25は、伸び側パイロットケース22のシート部35に設けられたオリフィス(符号省略)、及び受圧室174、を経て、ピストンボルト5の軸部6に形成された径方向通路34に連通される。径方向通路34は、軸方向通路14に連通される。軸方向通路14は、ピストンボルト5の軸部6に形成された径方向通路39に連通される。
【0031】
径方向通路39は、ピストン3の軸孔4の下端部に形成された環状通路41、ピストン3の内周部に形成された複数個の切欠き42、及びピストン3に設けられたディスクバルブ40を介して、伸び側通路19に連通される。ディスクバルブ40は、ピストン3の、シート部24及び伸び側通路19の開口よりも内周側に設けられた環状のシート部43に離着座可能に当接する。ディスクバルブ40は、径方向通路39から伸び側通路19への作動流体の流れを許容する逆止弁である。
【0032】
縮み側背圧室55は、縮み側パイロットケース52のシート部65に設けられたオリフィス(符号省略)、受圧室184、縮み側パイロットケース52の底部57の内周部に形成された環状通路68、及びピストンボルト5の軸部6に形成された二面幅部77を経て、ピストンボルト5の軸部6に形成された径方向通路64に連通される。径方向通路64は、スリーブ15の側壁に形成された孔66を介して軸方向通路12に連通される。
【0033】
径方向通路64は、二面幅部77、ピストン3の軸孔4の上端部に形成された環状通路71、ピストン3の内周部に形成された複数個の切欠き72、及びピストン3に設けられたディスクバルブ70を介して、縮み側通路20に連通される。ディスクバルブ70は、ピストン3の、シート部54及び縮み側通路20の開口よりも内周側に設けられた環状のシート部73に離着座可能に当接する。ディスクバルブ70は、径方向通路64から縮み側通路20への作動流体の流れを許容する逆止弁である。
【0034】
共通通路11内の作動流体の流れは、パイロットバルブ81(パイロット制御弁)により制御される。パイロットバルブ81は、共通通路11に摺動可能に設けられたバルブスプール82と、孔16の底部の軸方向通路14の開口周縁に形成されたシート部83と、を有する。バルブスプール82は、中実軸からなり、スリーブ15に挿入される摺動部84と、シート部83に離着座可能に当接する弁体85と、を有する。
【0035】
摺動部84の上端には、バルブスプール82の頭部87が形成される。バルブスプール82の頭部7の外周には、第1室130が形成される。頭部87の下端部には、外フランジ形のスプリング受88が形成される。スプリング受88には、弁体85を開弁方向へ付勢するスプリングディスク113の内周部が接続される。これにより、バルブスプール82の頭部87は、ソレノイド90の作動ロッド92の下端面93に当接する(押し付けられる)。
【0036】
ピストンボルト5の頭部7の外周面下部には、上端側が開口する有底円筒形のキャップ121が取り付けられる。キャップ121とピストンボルト5の頭部7との間は環状のシール部材128によってシールされる。これにより、キャップ121とピストンボルト5の頭部7との間には、環状の第2室131が形成される。キャップ121には、ピストンボルト5の軸部6を挿通させる挿通孔123が設けられる。挿通孔123の外周には、複数個(
図2に「2個」表示)の切欠き124が設けられる。切欠き124は、軸部6に形成された二面幅部77に連通する。
【0037】
キャップ121とピストンボルト5の頭部7との間には、頭部7側から順に、スプール背圧リリーフ弁107、スペーサ108、及びリテーナ132が設けられる。スプール背圧リリーフ弁107、スペーサ108、及びリテーナ132は、第2室131内に設けられる。スプール背圧リリーフ弁107は、頭部7に形成された通路29を経由する第1室130から第2室131への作動流体の流れを許容する逆止弁である。スプール背圧リリーフ弁107の外周縁部は、ピストンボルト5の頭部7に形成された環状のシート部109に離着座可能に当接する。リテーナ132の内周縁部には、第2室131を二面幅部77及びキャップ121の切欠き124に連通させる複数個の切欠き133が設けられる。キャップ121とサブバルブ60との間には、サブバルブ60の最大開弁量を定めるリテーナ59が介装される。
【0038】
第1室130には、フェイルセーフバルブ111が構成される。フェイルセーフバルブ111は、バルブスプール82の頭部87のスプリング受88(弁体)が離着座可能に当接するディスク112(弁座)を有する。ディスク112及びスプリングディスク113の外周縁部は、ピストンボルト5の頭部7と、ソレノイド90のコア99との間で保持される。
【0039】
バルブスプール82の弁体85は、軸直角平面による断面が二面幅の切欠き86(
図2に1つのみ表示)を有する円形に形成される。そして、コイル95に対する制御電流が0Aのとき(フェイル時)、バルブスプール82がパイロットバルブ81の開弁方向(
図2における上方向)へ移動し、弁体85が軸方向通路12に嵌合される。これにより、弁体85と軸方向通路12との間には、軸方向通路12,13間を連通する一対のオリフィス114(
図2に1つのみ表示)が形成される。なお、二面幅(切欠き86)を形成する一対の面は、一方の面のみ形成してもよい。この場合、オリフィス114は、1つのみとなる。
【0040】
一方、コイル95への通電時には、バルブスプール82の弁体85がシート部83に着座し、パイロットバルブ81が閉弁される。このパイロットバルブ81の閉弁状態では、バルブスプール82は、弁体85が、軸方向通路14の開口面積と同一面積の円形の受圧面により軸方向通路14側の圧力を受け、他方、摺動部84が、摺動部84の断面積から弁体85の首部(符号省略)の断面積を差し引いた面積と同一面積の環状の受圧面により軸方向通路12側の圧力を受ける。ここで、パイロットバルブ81の開弁圧力は、コイル95への通電を制御することで調節することができる。コイル95への通電の電流値が小さいソフトモード時には、スプリングディスク113の付勢力とプランジャ96が発生する推力とが平衡し、弁体85がシート部83から一定の距離だけ離間した状態となる。
【0041】
ソレノイド90は、ソレノイド機構部91、ソレノイドケース191、及びコイル95(アーマチュアコイル)を有する。ソレノイド機構部91は、作動ロッド92と、作動ロッド92の外周に固定されたプランジャ96(アーマチュア)と、上下に分割されたコア98,99と、を有する。コア98,99は、上下に分割されたホルダ104,105により、同軸に且つ上下方向へ一定間隔をあけて保持される。なお、作動ロッド92は、コア蓋体106に取り付けられたブッシュ100及びコア99に取り付けられたブッシュ110により、上下方向(軸方向)へ案内される。また、作動ロッド92の内側には、ロッド内通路97が形成される。
【0042】
有底円筒形のソレノイドケース191の下端部とコア99との間は、シール部材116によってシールされる。これにより、ピストンボルト5とソレノイドケース191とコア99との間には、環状通路117が形成される。環状通路117は、ピストンボルト5の円筒部8に設けられた通路118を介してシリンダ上室2Aに連通される。ソレノイド90のコア99の内側には、スプール背圧室101が形成される。スプール背圧室101は、作動ロッド92の切欠き(符号省略)、及びロッド内通路97を介してロッド背圧室103に連通される。
【0043】
ソレノイドケース191の底部192(上端部)には、ピストンロッド141の下端部143(一端部)が塑性流動により結合される。即ち、ピストンロッド141の下端部143は、ソレノイドケース191及びピストンボルト5を介してピストン3に連結される。なお、ソレノイドケース191の上端面193には、ピストンロッド141に取り付けられたバンプストッパ120が当接される。
【0044】
図1に示されるように、ピストンロッド141は、シリンダ2及び外筒10の上端側開口部に装着されたロッドガイド135とオイルシール134とに挿通される。ピストンロッド141の外周には、外筒10の上端側を覆うカバー136が取り付けられる。ピストンロッド141は、軸に沿って延びる中空部142が形成された中空軸からなる。
【0045】
図2に示されるように、ピストンロッド141の中空部142には、ケーブル161が挿通される。ケーブル161は、ピストンロッド141の下端面144から突出した側(ピストン3側)の電線163,164が、ソレノイド90のターミナル167,168に接続される。なお、ターミナル167はコイル95の正極端子に接続され、ターミナル168はコイル95の負極端子に接続される。
【0046】
次に、前述した緩衝器1における作動油の流れを説明する。伸び行程時には、シリンダ上室2Aの作動流体が、上流側背圧導入通路、即ち、伸び側通路19、ディスクバルブ40に形成されたオリフィス(符号省略)、ピストン3に形成された切欠き42、ピストン3の軸孔4に形成された環状通路41、径方向通路34、軸方向通路14、径方向通路39、伸び側パイロットケース22に形成された環状通路38、及びチェックバルブ33を経て、伸び側背圧室25へ導入される。
【0047】
また、伸び行程時には、シリンダ上室2A(上流側の室)の作動流体は、縮み側連通路、即ち、第1オリフィス185、第2受圧室187、背圧導入通路181、及びチェックバルブ63を経て、縮み側背圧室55へ導入される。これにより、伸び行程時に、縮み側メインバルブ53がシリンダ上室2Aの圧力によって開弁することが抑止される。
【0048】
伸び行程時に縮み側背圧室55に導入された作動流体は、シート部65に形成されたオリフィス(符号省略)、受圧室184、縮み側パイロットケース52の底部57の内周部に形成された環状通路68、ピストンボルト5の軸部6に形成された二面幅部77、ピストン3の内周部に形成された切欠き72、ディスクバルブ70、及び縮み側通路20を経てシリンダ下室2B(下流側の室)へ流れるので、伸び側メインバルブ23の開弁前、即ち、ピストン速度の低速領域には、オリフィス67によるオリフィス特性及びディスク70によるバルブ特性の減衰力が得られる。
【0049】
一方、縮み行程時には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体が、上流側背圧導入通路、即ち、縮み側通路20、ディスクバルブ70に形成されたオリフィス(符号省略)、ピストン3に形成された切欠き72、ピストン3の軸孔4に形成された環状通路71、ピストンボルト5の軸部6に形成された二面幅部77、縮み側パイロットケース52に形成された環状通路68、及びチェックバルブ63を経て、縮み側背圧室55へ導入される。
【0050】
また、縮み行程時には、シリンダ下室2B(上流側の室)の作動流体は、伸び側連通路、即ち、第1オリフィス175、第2受圧室177、背圧導入通路171(下流側背圧導入通路)、及びチェックバルブ33を経て、伸び側背圧室25へ導入される。これにより、縮み行程時に、伸び側メインバルブ23がシリンダ下室2Bの圧力によって開弁することを抑止することができる。
【0051】
縮み行程時に伸び側背圧室25に導入された作動流体は、シート部35に形成されたオリフィス(符号省略)、受圧室174、伸び側パイロットケース22の底部27の内周部に形成された環状通路38、径方向通路39、軸方向通路14、径方向通路34、ピストン3の軸孔4に形成された環状通路41、ピストン3の内周部に形成された切欠き42、ディスクバルブ40、及び伸び側通路19を経てシリンダ上室2A(下流側の室)へ流れるので、縮み側メインバルブ53の開弁前、即ち、ピストン速度の低速領域には、シート部35に設けられたオリフィス(符号省略)によるオリフィス特性及びディスク40によるバルブ特性の減衰力が得られる。
【0052】
図3は、ピストンロッド141(棒状部材)とソレノイドケース191(相手部材)との結合体190を示す。また、
図4は、
図3におけるA部の拡大図である。結合体190は、ピストンロッド141の下端部143(一端部)を、ピストン機構140のソレノイドケース191の底部192に形成された嵌合穴195に嵌合させ、ソレノイドケース191を局部加圧することにより、ソレノイドケース191の材料をピストンロッド141の下端部143の外周面145に設けられた第1環状溝146,147及び第2環状溝148内に塑性流動させることで製造される。
【0053】
図4に示されるように、ピストンロッド141の下端部143における外周面145の下端側(一端側)には、V形断面を有する2つの第1環状溝146,147が設けられる。第1環状溝147は、第1環状溝146の軸方向直上に位置し、第1環状溝146と同一の軸方向(
図4における「上下方向」)幅W1及び径方向(
図4における「左右方向」)深さD1を有する。他方、ピストンロッド141の下端部143の外周面145の、第1環状溝147に対して軸方向上側に距離Yだけ離間された位置には、第1環状溝146,147の幅W1よりも小さい幅W2及び深さD2を有する第2環状溝148が設けられる。
【0054】
一方、ソレノイドケース191の底部192の下端面194には、ピストンロッド141の第1環状溝146の近傍に形成されたチャンネル形断面の第1環状凹部196(第1凹部)が設けられる。他方、ソレノイドケース191の底部192の上端面193には、ピストンロッド141の第2環状溝148の近傍に形成されたチャンネル形断面の第2環状凹部198が設けられる。第1環状凹部196の径方向幅W3及び軸方向深さD3は、第2環状凹部198の径方向幅W4及び軸方向深さD4よりも大きい。これにより、第1環状凹部196の体積(容積)は、第2環状凹部198の体積よりも大きい。
【0055】
なお、第1実施形態では、第1環状溝146,147の幅W1と第2環状溝148の幅W2との間には、W2≦0.7×W1の関係が成立する。また、第1環状溝147と第2環状溝148との軸方向距離Yと、第1環状溝146,147の幅W1との間には、Y≧2×W1の関係が成立する。さらに、ソレノイドケース191(相手部材)の材料は、ピストンロッド141(棒状部材)の材料よりも軟らかい金属からなる。例えば、ピストンロッド141の材料は機械構造用炭素鋼S45Cであり、ソレノイドケース191の材料は機械構造用炭素鋼S10C(快削鋼)である。
【0056】
図5は、第1実施形態に係る結合体190の製造方法に用いられる結合装置210(プレス型)にピストンロッド141(棒状部材)及びソレノイドケース191(相手部材)がセットされた状態を示す概念図(軸平面による断面図)である。結合装置210は、プレス装置のボルスタ(図示省略)に固定されるベースブロック211を有する。ベースブロック211の中央には、ピストンロッド141の上端部150を挿通させる孔212が設けられる。孔212には、ピストンロッド141の上端面151を受ける、即ち、塑性流動結合法による加圧力の軸方向成分を受ける支持治具213が挿入される。
【0057】
支持治具213上には、軸方向(
図5における「上下方向」)に間隔をあけて配置される一対のリング214,215が設けられる。リング214,215は、ピストンロッド141の材料(本実施形態では「S45C」)よりも軟らかい材料が用いられる。各リング214,215には、ピストンロッド141をセンタリングするための心出し孔216,216が設けられる。一対のリング214,215間には、リング214,215間の間隔を調整するスペーサ217が設けられる。なお、
図5にはスペーサ217が1個のみ表示されているが、スペーサ217は複数個を積層してもよい。また、リング214,215は、必要に応じて3個以上設けてもよい。
【0058】
リング215の内周部218上には、第2パンチ231が設けられる。第2パンチ231は、リング215上に設けられたパンチホルダ232のパンチ取付孔233に挿入される。第2パンチ232には、ピストンロッド141の下端部143を挿通させるロッド挿通孔234が設けられる。第2パンチ231のロッド挿通孔234とピストンロッド141の下端部143との間には、一定のクリアランスC2(
図8参照)が設けられる。
【0059】
図6に示されるように、第2パンチ231の上端面235の、ロッド挿通孔234の開口周縁には、ソレノイドケース191の底部192の上端面193の、嵌合穴195の開口周縁部を局部加圧する第2環状凸部236が形成される。
図5に示されるように、パンチホルダ232上には、ソレノイドケース191の底部192の外周面197を拘束する拘束孔206が形成された拘束治具205が設けられる。なお、拘束治具205の拘束孔206と第2パンチ231の外周面238との間には、クリアランスC2よりも大きい一定のクリアランス(符号省略)が設けられる。
【0060】
第2パンチ231の上方には、第1パンチ221が設けられる。第1パンチ221は、パンチホルダを介してプレス装置のスライダ(図示省略)に取り付けられる。第1パンチ221の下端面222の中央には、ピストンロッド141の下端部143が挿通される凹部223が設けられる。第1パンチ221の下端面222の凹部223の開口周縁には、ソレノイドケース191の底部192の下端面194の、嵌合穴195の開口周縁部を局部加圧する第1環状凸部225が形成される。
【0061】
第1パンチ221の第1環状凸部225及び凹部223と、ピストンロッド141の下端部143の外周面145との間には、一定のクリアランスC1(
図8参照)が設けられる。なお、第1パンチ221の外周面224と、ソレノイドケース191の円筒部199の縮径部200の内周面201との間には、クリアランスC1よりも大きい一定のクリアランス(符号省略)が設けられる。
【0062】
次に、前述した結合装置210の作用を説明する。
ここで、
図6は、プレス装置による加圧が開始される前の状態を示す。この状態では、ソレノイドケース191(相手部材)の底部192の嵌合穴195に、ピストンロッド141(棒状部材)の下端部143(一端部)が嵌合され、結合装置210の拘束治具205の拘束孔206には、ソレノイドケース191の底部192が嵌合されている。また、ソレノイドケース191の底部192の下端面194の、第1環状溝147の近傍に、第1パンチ221の第1環状凸部225の先端面226が当接され、ソレノイドケース191の底部192の上端面193の、第2環状溝1487の近傍には、第2パンチ231の第2環状凸部236の先端面237が当接されている。
【0063】
図6に示される状態から、第1パンチ221を下降させることにより、ソレノイドケース191の底部192の内周部202を第1パンチ221の第1環状凸部225と第2パンチ231の第2環状凸部236とにより局部加圧する。トレスカの変形条件に基づき、まず、ソレノイドケース191の、第2環状溝148に面する部分の材料が、第2環状溝148内へ流れ込むような変形(塑性流動)を起こす。その結果、
図7に示されるように、第2環状溝148にソレノイドケース191の材料が充填され、第2パンチ231の上端面235がソレノイドケース191の底部192の上端面193に接触した時点で、環状の第2結合部243が形成される。
【0064】
第2パンチ231の上端面235が、ソレノイドケース191の底部192の上端面193に接触すると、次に、ソレノイドケース191の、第1環状溝146,147に面する部分の材料が、第1環状溝146,147内へ流れ込むような変形(塑性流動)を起こす。その結果、
図8に示されるように、第1環状溝146,147にソレノイドケース191の材料が充填され、環状の第1結合部241,242が形成された時点で、プレス装置による加圧を完了する。
【0065】
このように、第1実施形態では、ソレノイドケース191(相手部材)を第1パンチ221と第2パンチ231とで局部加圧することで、塑性流動により、ソレノイドケース191の材料が、第2環状溝148に充填されて第2結合部243が形成された後、第1環状溝146,147に充填されて第1結合部241,242が形成される。
【0066】
これにより、第1パンチ221の第1環状凸部225の加圧によりソレノイドケース191の材料が第1環状溝146,147内へ流れ込むとき、ピストンロッド141(棒状部材)に作用する荷重(加工力)の一部を、第2結合部243により受けることが可能であり、ピストンロッド141の上端部150(上端面151)が結合装置210の支持治具213から受ける反力(以下「ピストンロッド141が受ける反力」と称する)を低減することができる。
【0067】
そして、本願発明者は、ピストンロッド141(棒状部材)が受ける反力をより効果的に低減する条件を、自らの実験により求めた。
図9にその実験結果を示す。
図9において、横軸は、第2環状溝148の幅W2(深さ)を第1環状溝146,147の幅W1(深さ)で除した値(以下「W2/W1の値」と称する)であり、縦軸は、ピストンロッド141の上端部150に作用する最大応力σ(MPa)である。
【0068】
なお、本実験では、第1環状溝147と第2環状溝148との軸方向距離Y(
図4参照)と第1環状溝146,147の幅W1とを、Y=2.4×W1に設定した。また、第1環状凹部196の幅W3と第2環状凹部198の幅W4とを、W3=2.0×W4に設定した。
【0069】
図9を参照すると、W2/W1の値が1.0のとき、ピストンロッド141の上端部150に作用する最大応力σは約500(MPa)である。このとき、ピストンロッド141(棒状部材)の材料であるS45Cの降伏点は約450(MPa)であるため、ピストンロッド141の上端部150に変形が発生した。そこで、本願発明者は、
図9に示される実験結果から、ピストンロッド141の上端部150に変形が発生しない条件、即ち、ピストンロッド141が受ける反力を低減する好適な条件を、W2/W1の値が0.7以下とした。
【0070】
ここで、従来の結合方法では、ピストンロッド(棒状部材)の下端部(一端部)とソレノイドケース(相手部材)の底部とを塑性流動結合法により結合させるとき、ピストンロッドに作用する加工力(第1パンチと第2パンチとによる加圧力)をピストンロッドの上端部(他端部)で受けるため、ピストンロッドに中空部(ケーブル挿通孔)が設けられている場合、ピストンロッドに作用する加工力の軸方向成分により、ピストンロッドの上端側開口周縁部(受圧部)が変形する虞がある。
【0071】
これに対し、第1実施形態では、ピストンロッド141の下端部143(一端部)の下端側(一端側)に第1環状溝146,147(第1溝)を設けるとともに、該第1環状溝146,147から軸方向上端側へ離間した位置に第2環状溝148(第2溝)を設け、第1環状溝146,147の幅W1及び深さD1を第2環状溝148の幅W2及び深さD2よりも大きく設定した。
【0072】
第1実施形態によれば、ソレノイドケース191(相手部材)を第1パンチ221の第1環状凸部225と第2パンチ231の第2環状凸部236とで局部加圧することで、塑性流動により、ソレノイドケース191の材料が第2環状溝148に充填されて第2結合部243が形成された後、ソレノイドケース191の材料が第1環状溝146,147に充填されて第1結合部241,242が形成される。
よって、第1パンチ221の第1環状凸部225の加圧によりソレノイドケース191の材料が第1環状溝146,147内へ流れ込むとき、ピストンロッド141(棒状部材)に作用する荷重(加工力の軸方向成分)の一部を、第2結合部243により受けることができる。これにより、ピストンロッド141が受ける反力を低減することが可能であり、ピストンロッド141が受ける反力による、ピストンロッド141の上端部150(他端側開口周縁部)の変形を抑止することができる。
また、第1実施形態では、第1パンチ221の第1環状凸部225及び凹部223と、ピストンロッド141の下端部143の外周面145との間に一定のクリアランスC1を設けるとともに、第2パンチ231のロッド挿通孔234とピストンロッド141の下端部143の外周面145との間に一定のクリアランスC2を設け、さらに、リング214,215に、ピストンロッド141の材料よりも軟らかい材料を用いたので、ピストンロッド141の摺動面に傷が付くことを防止することができる。
さらに、第1実施形態では、従来の結合方法のように、ソレノイドケース191(相手部材)の底部192に、ピストンロッド141(棒状部材)の下端部143(下端面14)を受ける鍔部(内フランジ)を設ける必要がないので、鍔部の厚さの分だけ、結合体109の軸長を短くすることが可能であり、緩衝器1を小型化することができる。
【0073】
なお、第1実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
第1実施形態では、第1環状溝146,147及び第1結合部241,242をピストンロッド141(棒状部材)の下端部143の下端面144側に設け、第2環状溝148及び第2結合部243を第1環状溝146,147及び第1結合部241,242から軸方向上端側へ離間させた位置に設けたが、第2環状溝148及び第2結合部243をピストンロッド141(棒状部材)の下端部143の下端面144側に設け、第1環状溝146,147及び第1結合部241,242を第2環状溝148及び第2結合部243から軸方向上端側へ離間させた位置に設けてもよい。
この場合、第1パンチ221の下端面222に第2環状凸部236を設けるとともに、第2パンチ231の上端面235に第1環状凸部225を設けることで、結合装置210を構成する。
【0074】
(第2実施形態) 次に、
図10乃至
図12を参照して第2実施形態を説明する。
なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用い、重複する説明を省略する。
【0075】
前記第1実施形態では、ソレノイドケース191(相手部材)を第1パンチ221の第1環状凸部225と第2パンチ231の第2環状凸部236とで局部加圧し、ソレノイドケース191の材料を第2環状溝148に充填させて第2結合部243を形成した後、ソレノイドケース191の材料を第1環状溝146,147に充填させて第1結合部241,242を形成した。
【0076】
これに対し、第2実施形態では、
図10に示されるように、ソレノイドケース191の底部192の上端面193の、嵌合穴195の開口周縁に第1環状凸部251を設けるとともに、ソレノイドケース191の底部192の下端面194の、嵌合穴195の開口周縁に第2環状凸部253を設け、ソレノイドケース191の第1環状凸部251を第1パンチ221の平坦な下端面222により加圧するとともに、ソレノイドケース191の第2環状凸部253を第2パンチ231の平坦な上端面235により加圧した。
【0077】
なお、ソレノイドケース191の第1環状凸部251の幅W5は、第1実施形態における結合体190のソレノイドケース191に形成された第1環状凹部196の幅W3(
図4参照)と同等であり、ソレノイドケース191の第2環状凸部253の幅W6は、第1実施形態における結合体190のソレノイドケース191に形成された第2環状凹部198の幅W4(
図4参照)と同等である。また、第1環状凸部251の体積は、第2環状凸部253の体積よりも大きい。
【0078】
第2実施形態では、トレスカの変形条件に基づき、まず、ソレノイドケース191の、第2環状溝148に面する部分の材料が、第2環状凸部253を介する第2パンチ231の加圧力により、第2環状溝148内へ流れ込むような変形(塑性流動)を起こす。その結果、
図11に示されるように、第2環状溝148にソレノイドケース191の材料が充填され、第2パンチ231の上端面235がソレノイドケース191の底部192の上端面193に接触した時点で、環状の第2結合部243が形成される。
【0079】
第2パンチ231の上端面235が、ソレノイドケース191の底部192の上端面193に接触すると、次に、ソレノイドケース191の、第1環状溝146,147に面する部分の材料が、第1環状凸部251を介する第1パンチ221の加圧力により、第1環状溝146,147内へ流れ込むような変形(塑性流動)を起こす。その結果、
図12に示されるように、第1環状溝146,147にソレノイドケース191の材料が充填され、第1パンチ221の下端面222がソレノイドケース191の底部192の下端面194に接触した時点で、環状の第1結合部241,242が形成される。
第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0080】
なお、第2実施形態は、前述した形態に限定されるものではなく、例えば、次のように構成することができる。
第2実施形態では、ソレノイドケース191の底部192の上端面193に第1環状凸部251を設けるとともに、ソレノイドケース191の底部192の下端面194に第2環状凸部253を設けたが、第1環状凸部251と第2環状凸部253とは、いずれか一方を設けるだけでもよい。
例えば、第1環状凸部251のみを設ける場合、第2パンチ231の上端面235に第2環状凸部236を設ける。他方、第2環状凸部253のみを設ける場合、第1パンチ221の下端面222に第1環状凸部225を設ける。
また、第1実施形態同様、第2環状溝148及び第2結合部243をピストンロッド141(棒状部材)の下端部143の下端面144側に設け、第1環状溝146,147及び第1結合部241,242を第2環状溝148及び第2結合部243から軸方向上端側へ離間させた位置に設けてもよい。
【0081】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0082】
本願は、2021年8月11日付出願の日本国特許出願第2021-131258号に基づく優先権を主張する。2021年8月11日付出願の日本国特許出願第2021-131258号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。
【符号の説明】
【0083】
141 ピストンロッド(棒状部材)、143 下端部(ピストンロッドの一端部)、146,147 第1環状溝(第1溝)、148 第2環状溝(第2溝)、191 ソレノイドケース(相手部材)、195 嵌合穴