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特許7554945非常止め装置用電動作動器の動作確認装置および動作確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】非常止め装置用電動作動器の動作確認装置および動作確認方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/06 20060101AFI20240912BHJP
   B66B 5/16 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B66B5/06 Z
B66B5/16 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023552635
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2021037199
(87)【国際公開番号】W WO2023058199
(87)【国際公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 勇来
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 康司
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晃
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕之
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-130550(JP,A)
【文献】特開2021-042013(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105329737(CN,A)
【文献】特開2011-241018(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110316(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/166144(WO,A1)
【文献】特開平07-002441(JP,A)
【文献】特表2012-520809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ用非常止め装置を駆動する駆動機構を作動させる電動作動器であって、前記駆動機構と機械的に接続される可動子と、前記可動子と対向する電磁石と、モータの回転を前記電磁石の直線的移動に変換する機構部とを備える電動作動器の動作を確認する非常止め装置用電動作動器の動作確認装置において、
前記可動子の位置を検出する位置検出器と、
前記位置検出器からの位置検出信号に基づいて、前記モータの故障を検出するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記電動作動器の待機時に、前記モータの回転を指令し、
次に、前記位置検出信号に基づいて、前記モータの故障を検出することを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非常止め装置用電動作動器の動作確認装置において、
前記可動子は、前記待機時において、前記電磁石に吸着されていることを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認装置。
【請求項3】
請求項1に記載の非常止め装置用電動作動器の動作確認装置において、
前記コントローラは、前記位置検出信号に基づいて、前記可動子が前記待機時の位置に位置していると判定すると、前記コントローラは、前記モータが故障していると判断することを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認装置。
【請求項4】
請求項1に記載の非常止め装置用電動作動器の動作確認装置において、
前記コントローラは、前記位置検出信号に基づいて、前記可動子が前記待機時の位置から移動したと判定すると、前記モータの逆転を指令し、次に、前記位置検出信号に基づいて、前記モータの故障を検出することを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認装置。
【請求項5】
請求項3に記載される非常止め装置用電動作動器の動作確認装置において、
前記位置検出器は、前記可動子の前記待機時の位置に設けられていることを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認装置。
【請求項6】
請求項5に記載される非常止め装置用電動作動器の動作確認装置において、
前記位置検出器は位置検出スイッチからなり、
前記位置検出スイッチは、前記可動子が備えるカム部によって操作されることを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認装置。
【請求項7】
エレベータ用非常止め装置を駆動する駆動機構を作動させる電動作動器であって、前記駆動機構と機械的に接続される可動子と、前記可動子と対向する電磁石と、モータの回転を前記電磁石の直線的移動に変換する機構部とを備える電動作動器の動作を確認する非常止め装置用電動作動器の動作確認方法において、
前記電動作動器の待機時に、前記モータを回転するように制御し、
次に、前記可動子の位置に基づいて、前記モータの故障を検出することを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認方法。
【請求項8】
請求項7に記載の非常止め装置用電動作動器の動作確認方法において、
前記可動子が前記待機時の位置に位置している場合、前記モータが故障していると判断することを特徴とする非常止め装置用電動作動器の動作確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用非常止め装置を駆動する駆動機構を作動させる電動作動器の動作確認装置および動作確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置には、乗りかごの昇降速度を常時監視して、所定の過速状態に陥った乗りかごを非常停止させるために、ガバナおよび非常止め装置が備えられている。一般に、乗りかごとガバナはガバナロープによって結合されており、過速状態を検出すると、ガバナがガバナロープを拘束することで乗りかご側の非常止め装置を動作させ、乗りかごを非常停止するようになっている。
【0003】
このようなエレベータ装置では、昇降路内に長尺物であるガバナロープを敷設するため、省スペース化および低コスト化が難しい。また、ガバナロープが振れる場合、昇降路内における構造物とガバナロープとが干渉しやすくなる。
【0004】
これに対し、ガバナロープを用いず、電動で作動する非常止め装置が提案されている。このような非常止め装置に関する従来技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0005】
本従来技術では、乗りかご上に、非常止め装置を駆動する駆動軸と、駆動軸を作動させる電動作動器が設けられる。電動作動器は、駆動軸に機械的に接続される可動鉄心と、可動鉄心を吸着する電磁石を備えている。駆動軸は、駆動ばねによって付勢されているが、通常時は、電磁石が通電され可動鉄心が吸着されているため、電動作動器によって駆動軸の動きが拘束されている。
【0006】
非常時には、電磁石が消磁されて駆動軸の拘束が解かれ、駆動ばねの付勢力によって駆動軸が駆動される。これにより、非常止め装置が動作して、乗りかごが非常停止する。
【0007】
また、非常止め装置を通常状態に復帰させるときには、非常時に移動した可動鉄心に電磁石を移動して近付ける。電磁石は送りねじ軸に螺合する送りナットを備えており、モータによって送りねじ軸が回転すると、電磁石は可動鉄心に向かって移動する。電磁石が可動鉄心に当接したら、可動鉄心が電磁石に吸着される。さらに、可動鉄心が電磁石に吸着された状態で、電磁石を移動して、可動鉄心および電磁石を通常時の待機位置に戻す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-130550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術による非常止め装置の保全においては、制動子(ウェッジ)などの機械部分だけでなく、電動作動器が備えている電磁石やモータなどの電気機器部についても、異常の有無や劣化状態などの点検を要する。このため、電動で作動する非常止め装置には、電気機器部の保全性の向上という課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、電気機器部の保全性を向上することができる非常止め装置用電動作動器の動作確認装置および動作確認方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明による非常止め装置用電動作動器の動作確認装置は、エレベータ用非常止め装置を駆動する駆動機構を作動させる電動作動器であって、駆動機構と機械的に接続される可動子と、可動子と対向する電磁石と、モータの回転を電磁石の直線的移動に変換する機構部とを備える電動作動器の動作を確認するものであって、可動子の位置を検出する位置検出器と、位置検出器からの位置検出信号に基づいて、モータの故障を検出するコントローラと、を備え、コントローラは、電動作動器の待機時に、モータの回転を指令し、次に、位置検出信号に基づいて、モータの故障を検出する。
【0012】
上記課題を解決するために、非常止め装置用電動作動器の動作確認方法は、エレベータ用非常止め装置を駆動する駆動機構を作動させる電動作動器であって、駆動機構と機械的に接続される可動子と、可動子と対向する電磁石と、モータの回転を電磁石の直線的移動に変換する機構部とを備える電動作動器の動作を確認する方法であって、電動作動器の待機時に、モータを回転するように制御し、次に、可動子の位置に基づいて、モータの故障を検出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モータの動作を迅速かつ的確に確認することができる。したがって、電動で作動する非常止め装置における電気機器部の保全性が向上する。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例であるエレベータ装置の概略構成図である。
図2】電動作動器10の機械部分および電気機器部を示す平面図である(待機状態)。
図3】モータ37の動作を確認する時の電動作動器10の動作状態を示す、電動作動器10の平面図である。
図4】モータ37の動作を確認する時の電動作動器10の動作状態を示す、電動作動器10の平面図である(図3の動作状態に続く動作状態)。
図5】実施例におけるモータの動作確認処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態であるエレベータ装置について、実施例により、図面を用いながら説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0017】
図1は、本発明の一実施例であるエレベータ装置の概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、エレベータ装置は、乗りかご1と、速度センサ(5,6)と、電動作動器10と、駆動機構(12~20)と、引上げロッド21と、非常止め装置2とを備えている。
【0019】
乗りかご1は、建築物に設けられる昇降路内に主ロープ(図示せず)により吊られており、ガイド装置を介してガイドレール4に摺動可能に係合している。駆動装置(巻上機:図示せず)により主ロープが摩擦駆動されると、乗りかご1は昇降路内を昇降する。
【0020】
本実施例における速度センサは、乗りかご1上に備えられ、回転検出器6と、回転検出器6の回転軸に接続されるローラ5を備える。本実施例においては、ローラ5は、ローラ5の回転軸と回転検出器6の回転軸とが同軸になるように、回転検出器6の回転軸に接続されている。回転検出器6として、例えば、ロータリエンコーダが適用できる。
【0021】
ローラ5は、ガイドレール4に接触している。このため、乗りかご1が昇降すると、ローラ5が回転するので、回転検出器6が回転する。回転検出器6が回転に伴って出力する回転位置信号に基づいて、後述する安全コントローラが、乗りかご1の走行速度を監視している。
【0022】
なお、速度センサとして、画像センサが適用されてもよい。この場合、画像センサによって取得されるガイドレール4の表面状態の画像情報に基づいて、乗りかご1の位置および速度が検出される。例えば、所定時間における画像特徴量の移動距離から速度が算出される。
【0023】
電動作動器10は、本実施例では電磁操作器であり、乗りかご1の上部に配置される。電磁操作器は、例えば、ソレノイドもしくは電磁石によって作動する可動片もしくは可動杆を備えるものである。電動作動器10は、速度センサ(5,6)によって乗りかご1の所定の過速状態が検出されるときに作動する。このとき、操作レバー11に機械的に接続されている駆動機構(12~20)により、引上げロッド21が引き上げられる。これにより、非常止め装置2が制動状態となる。
【0024】
なお、駆動機構(12~20)については後述する。
【0025】
非常止め装置2は、乗りかご1の左右に一台ずつ配置される。各非常止め装置2が備える図示しない一対の制動子は、制動位置および非制動位置の間で可動であり、制動位置においてガイドレール4を挟持する。さらに、非常止め装置2は、乗りかご1の下降により、乗りかご1に対して相対的に上昇すると、制動子とガイドレール4との間に作用する摩擦力により制動力を生じる。これにより、非常止め装置2は、乗りかご1が過速状態に陥ったときに作動し、乗りかご1を非常停止させる。
【0026】
本実施例のエレベータ装置は、ガバナロープを用いない、いわゆるロープレスガバナシステムを備えるものであり、乗りかご1の昇降速度が定格速度を超えて第1過速度(例えば、定格速度の1.3倍を超えない速度)に達すると、駆動装置(巻上機)の電源およびこの駆動装置を制御する制御装置の電源が遮断される。また、乗りかご1の下降速度が第2過速度(例えば、定格速度の1.4倍を超えない速度)に達すると、乗りかご1に設けられる電動作動器10が電気的に駆動され、非常止め装置2を作動させて、乗りかご1が非常停止される。
【0027】
本実施例において、ロープレスガバナシステムは、前述の速度センサ(5,6)と、速度センサの出力信号に基づいて乗りかご1の過速状態を判定する安全コントローラとから構成される。この安全コントローラは、速度センサの出力信号に基づいて乗りかご1の速度を計測し、計測される速度が第1過速度に達したと判定すると、駆動装置(巻上機)の電源およびこの駆動装置を制御する制御装置の電源を遮断するための指令信号を出力する。また、安全コントローラは、計測される速度が第2過速度に達したと判定すると、電動作動器10を作動させるための指令信号を出力する。
【0028】
前述のように、非常止め装置2が備える一対の制動子が引上げロッド21によって引き上げられると、一対の制動子がガイドレール4を挟持する。引上げロッド21は、電動作動器10に接続される駆動機構(12~20)によって駆動される。
【0029】
以下、この駆動機構の構成について説明する。
【0030】
電動作動器10の操作レバー11と第1の作動片16が連結され、略T字状の第1リンク部材が構成される。操作レバー11および第1の作動片16はそれぞれT字の頭部および足部を構成する。略T字状の第1リンク部材は、操作レバー11と第1の作動片16の連結部において、第1の作動軸19を介してクロスヘッド50に回動可能に支持される。T字の足部となる第1の作動片16における操作レバー11と第1の作動片16の連結部とは反対側の端部に、一対の引上げロッド21の一方(図中左側)の端部が接続される。
【0031】
接続片17と第2の作動片18が連結され、略T字状の第2リンク部材が構成される。接続片17および第2の作動片18はそれぞれT字の頭部および足部を構成する。略T字状の第2リンク部材は、接続片17と第2の作動片18の連結部において、第2の作動軸20を介してクロスヘッド50に回動可能に支持される。T字の足部となる第2の作動片18における接続片17と第2の作動片18の連結部とは反対側の端部に、一対の引上げロッド21の他方(図中左側)の端部が接続される。
【0032】
筐体30の内部から外部に伸びる操作レバー11の端部と、接続片17の両端部の内、第2の作動軸20よりも乗りかご1の上部に近い端部とが、それぞれ、乗りかご1上に横たわる駆動軸12の一端(図中左側)と他端(図中右側)とに接続される。駆動軸12は、クロスヘッド50に固定される固定部14を摺動可能に貫通している。また、駆動軸12は、押圧部材15を貫通し、押圧部材15は駆動軸12に固定されている。なお、押圧部材15は、固定部14の第2リンク部材(接続片17、第2の作動片18)側に位置する。固定部14と押圧部材15の間に、弾性体である駆動ばね13が位置し、駆動ばね13には駆動軸12が挿通されている。
【0033】
電動作動器10が作動すると、すなわち本実施例では電磁石への通電が遮断されると、駆動ばね13の付勢力に抗して操作レバー11の動きを拘束する電磁力が消失するので、押圧部材15に加わる駆動ばね13の付勢力によって、駆動軸12が長手方向に沿って駆動される。このため、第1リンク部材(操作レバー11、第1の作動片16)が第1の作動軸19の回りに回動するとともに、第2リンク部材(接続片17、第2の作動片18)が第2の作動軸20の回りに回動する。これにより、第1リンク部材の第1の作動片16に接続される一方の引上げロッド21が駆動されて引き上げられるとともに、第2リンク部材の第2の作動片18に接続される他方の引上げロッド21が駆動されて引き上げられる。
【0034】
図2は、本実施例における電動作動器10の機械部分および電気機器部を示す、図1の設置状態における平面図である。なお、図2に示す電動作動器10は、図1においては、筐体30内に格納されている(図3,4も同様)。
【0035】
図2には、電気機器部を制御するための回路構成を併記する(図3,4も同様)。図2において、非常止め装置2(図1)は非制動状態であり、電動作動器10は待機状態である。すなわち、エレベータ装置は、通常の運転状態である。
【0036】
図2に示すように、待機状態においては、操作レバー11に接続される可動部材である可動子(34a,34b,34c)が、コイルが通電されて励磁されている電磁石35a,35bに、電磁力によって吸着されている。これにより、駆動軸12(図1)および操作レバー11を介して可動子に作用する駆動ばね13(図1)の付勢力Fに抗して、可動子の動きが拘束されている。したがって、電動作動器10は、駆動ばね13の付勢力に抗して、駆動機構(12~20:図1)の動きを拘束している。
【0037】
可動子は、電磁石35a,35bの磁極面に吸着される吸着部34aと、吸着部34aに固定され、操作レバー11が接続される支持部34bを有する。操作レバー11は、接続ブラケット38を介して、可動子における支持部34bに回動可能に接続される。電動作動器10において、待機時に可動子の吸着部34aが位置する位置には、可動子検出スイッチ109が設けられる。
【0038】
可動子は、さらに、吸着部34aに固定されるカム部34cを有する。可動子が待機位置に位置するとき、カム部34cによって可動子検出スイッチ109が操作される。可動子検出スイッチ109は、カム部34cによって操作されると、オン状態からオフ状態へ、もしくはオフ状態からオン状態へ、遷移する。したがって、可動子検出スイッチ109の状態に応じて、可動子が待機位置に位置しているか否かを検出できる。本実施例では、安全コントローラ103が、可動子検出スイッチ109の状態に基づいて、可動子が待機位置に位置しているか否かを判定する。
【0039】
本実施例では、可動子(34a,34b,34c)において、少なくとも吸着部34aは、磁性体からなる。磁性体として、好ましくは、低炭素鋼やパーマロイ(鉄・ニッケル合金)などの軟磁性体が適用される。
【0040】
図2中における他の機構部(36,37,39,41)については、後述する。
【0041】
電磁石35a,35bは、直流電源111によって励磁される。電磁石35aの励磁回路において、電磁石35aのコイルの一端は、直列接続される電気接点104a,105a並びにフューズ107aを介して、直流電源111の高電位側に接続され、かつ電磁石35aのコイルの他端は、直流電源111の低電位側に接続される。電磁石35bの励磁回路において、電磁石35bのコイルの一端は、直列接続される電気接点104b,105a並びにフューズ107bを介して、直流電源111の高電位側に接続され、かつ電磁石35bのコイルの他端は、直流電源111の低電位側に接続される。
【0042】
なお、フューズ107a,107bは、それぞれ、電磁石35a,35bの過電流保護のために、励磁回路中に設けられる。
【0043】
電気接点104a,105a,104b,105bは、安全コントローラ103によってオン・オフが制御される。電動作動器10の待機状態では、安全コントローラ103は、電気接点104a,105a,104b,105bの各々を、オン状態に制御する。これにより、電磁石35a,35bのコイルが通電されるので、電磁石35a,35bが電磁力を発生する。
【0044】
なお、電気接点104a,105a,104b,105bの各々は、例えば、電磁リレー、電磁接触器、電磁開閉器などが備える接点から構成される。なお、電磁石35a,35bの各励磁回路において、複数(図2では2個)の電気接点が直列接続されていることにより、後述するように非常止め装置2を作動させるために複数の電気接点をオフ状態に制御する時に一つの接点にオン故障が生じていても、電磁石の通電が遮断される。したがって、電動作動器10の動作の信頼性が向上する。なお、オン故障は、例えば、接点の溶着によって発生する。
【0045】
他の電気機器部(37,112)については、後述する(図3,4)。また、信号線106a,106bは、電磁石35a,35bの各励磁回路からのアンサーバック信号を安全コントローラ103に入力するために用いられる。
【0046】
信号線106aを介して安全コントローラ103に入力されるアンサーバック信号(以下、「アンサーバック信号(106a)」と記す)は、電磁石35aのコイルの両端の内、電気接点104a,105aを介して直流電源111の高電位側に接続される一端の電位を示す。したがって、アンサーバック信号(106a)は、電磁石35aが通電されていれば、直流電源111の高電位側の電位(高電位(HIGH))を示し、電磁石35aが通電されていなけれ、直流電源111の低電位側の電位(低電位(LOW))を示す。このようなアンサーバック信号(106a)が示す電位に基づいて、安全コントローラ103は、電磁石35aの通電状態を検出する。
【0047】
信号線106bを介して安全コントローラ103に入力されるアンサーバック信号(以下、「アンサーバック信号(106b)」と記す)は、電磁石35bのコイルの両端の内、電気接点104b,105bを介して直流電源111の高電位側に接続される一端の電位を示す。したがって、アンサーバック信号(106b)は、電磁石35bが通電されていれば、直流電源111の高電位側の電位(高電位(HIGH))を示し、電磁石35bが通電されていなけれ、直流電源111の低電位側の電位(低電位(LOW))を示す。このようなアンサーバック信号(106b)が示す電位に基づいて、安全コントローラ103は、電磁石35bの通電状態を検出する。
【0048】
次に、非常止め装置2が作動する時における電動作動器10の動作について説明する。
【0049】
安全コントローラ103は、回転検出器6からの回転位置信号に基づいて乗りかご1の所定の過速状態(前述の第2過速度)を検出すると、電気接点104a,105a,104b,105bの各々に対し、オフ指令を出力する。オフ指令により、電気接点104a,105a,104b,105bは、オン状態(図2)からオフ状態に遷移する。このため、電磁石35a,35bの励磁が停止されるので、可動子(34a,34b,34c)に作用する電磁力が消失する。これにより、可動子の吸着部34aが電磁石35a,35bに吸着されることによる可動子の拘束が解けるので、可動子は、駆動ばね13の付勢力(図2におけるF)によって、待機状態における位置(図2)から、駆動ばね13の付勢力の方向(図中の右方向)に移動する。
【0050】
可動子の拘束が解けるのに伴い、駆動軸12の押圧部材15(図1)が受ける、固定部14(図1)から押圧部材(図1)へ向かう方向の、駆動ばね13(図1)の付勢力によって駆動軸12が駆動される。駆動軸12が駆動されると、駆動軸12に接続される第1リンク部材(操作レバー11および第1の作動片16:図1)が第1の作動軸19(図1)の回りに回動する。これにより、第1の作動片16に接続される引上げロッド21(図1)が引き上げられる。また、駆動軸12が駆動されると、駆動軸12に接続される第2リンク部材(接続片17および第2の作動片18:図1)が第2の作動軸20(図1)の回りに回動する。これにより、第2の作動片18に接続される引上げロッド21(図1)が引き上げられる。
【0051】
次に、電動作動器10の復帰動作について説明する。
【0052】
電動作動器10を作動状態から図2に示すような待機状態に復帰させるためには、次に述べるように、図2で説明を省略した機構部(36,37,39,41)および電気機器部(37,112)によって、可動子(34a,34b,34c)を移動位置(図3の位置P)から待機時の位置(図2)に戻す。
【0053】
電動作動器10は、可動子を駆動するために送りねじ36を有する。送りねじ36は、モータ37の回転軸に同軸に接続されるとともに、支持部材41によって回転可能に支持される。電磁石35a,35bは、送りナット部(図示せず)を備える電磁石支持板39に固定されている。電磁石支持板39における送りナット部は送りねじ36と螺合する。送りねじ36は、モータ37によって回転される。モータ37は、モータコントローラ112によって駆動される。
【0054】
モータコントローラ112は、モータ37の駆動回路を備えており、エレベータコントローラ7からの制御指令に応じて、モータ37の回転を制御する。モータ37は、DCモータおよびACモータのいずれでもよい。
【0055】
なお、エレベータコントローラ7は、乗りかご1の通常運転を制御し、乗りかご1の運転状態に関する情報を有している。本実施例では、上述のように、エレベータコントローラ7は、さらに、電動作動器10が備えるモータ37を制御する機能およびモータ37の動作を確認する機能を有する。
【0056】
電動作動器10を待機状態に復帰させるとき、エレベータコントローラ7は、モータコントローラ112に対し、モータ37の回転指令を送出する。モータコントローラ112、回転指令を受けると、モータ37を駆動して送りねじ36を回転させる。回転する送りねじ36と電磁石支持板39が備える送りナット部とによって、モータ37の回転が、送りねじ36の軸方向に沿った電磁石35a,35bの直線的移動に変換される。これにより、電磁石35a,35bは、図3に示す可動子(34a,34b,34c)の移動位置Pに近づき、可動子に当接する。
【0057】
モータコントローラ112は、モータ37の制御のために、モータ電流を監視している。上述のように電磁石35a,35bが可動子に当接すると、モータ37の負荷が増大するので、モータ電流が増加する。モータコントローラ112は、モータ電流が増加して所定値を超えたら、電磁石35a,35bが可動子に当接したと判定する。モータコントローラ112は、この判定結果を、安全コントローラ103およびエレベータコントローラ7に送る。
【0058】
安全コントローラ103は、モータコントローラ112から判定結果を受けると、電気接点104a,105a,104b,105bの各々に対し、オン指令を出力する。オン指令により、電気接点104a,105a,104b,105bは、オフ状態からオン状態に遷移する。このため、電磁石35a,35bが励磁される。可動子における吸着部34aは、励磁された電磁石35a,35bによる電磁力が作用して、電磁石35a,35bに吸着される。
【0059】
エレベータコントローラ7は、モータコントローラ112から前述の判定結果を受けると、モータ37の逆転指令をモータコントローラ112に送る。モータコントローラ112は、逆転指令を受けると、モータ37の回転方向を逆にして、送りねじ36を逆転させる。これにより、電磁石35a,35bに吸着されている可動子は、駆動ばね13の付勢力を受けながら、電磁石35a,35bとともに、待機時の位置(図2)に向けて移動する。
【0060】
可動子が待機位置に到達すると、可動子検出スイッチ109が、可動子が備えるカム部34cによって操作される。可動子検出スイッチ109が操作されると、エレベータコントローラ7は、可動子が待機位置に位置していると判定する。エレベータコントローラ7は、この判定結果に基づき、モータ37の停止指令をモータコントローラ112に送る。モータコントローラ112は、停止指令を受けると、モータ37の回転を停止する。
【0061】
なお、モータ37の出力容量は、電磁石35a,35bおよび可動子の重量に起因する送りねじ36と送りナット部との間の摩擦力や、駆動ばね13の付勢力を考慮して設定される。
【0062】
本実施例においては、電磁石35a,35bの各々は、どちらか一方のみでも、駆動ばね13の付勢力に抗して可動子の動きを拘束するのに十分な電磁力を有している。これにより、電磁石35a,35bの一方が故障しても、非常止め装置2の動作を維持できる。これにより、電動作動器10の動作の信頼性が向上する。
【0063】
次に、電動作動器10が備えるモータ37の動作を確認する手段について説明する。
【0064】
図3は、モータ37の動作を確認する時の電動作動器10の動作状態を示す、図2と同様の電動作動器10の平面図である。
【0065】
エレベータコントローラ7は、モータ37の動作を確認する時、待機状態(図2)においてモータ37の回転指令をモータコントローラ112に送り、モータ37を回転(正転)させる。
【0066】
待機状態であるため、電磁石35a,35bは、通電されており、可動子(34a,34b,34c)を吸着している。したがって、モータ37が正常に回転していれば、可動子(34a,34b,34c)は電磁石35a,35bとともに、図中に示すA方向へ移動する。このため、カム部34cによる可動子検出スイッチ109の操作が解除されるので、可動子検出スイッチ109のオン・オフ状態が、待機時の状態(本実施例ではオン状態)からカム部34cによって操作されないときの状態(本実施例ではオフ状態)に遷移する。
【0067】
そこで、エレベータコントローラ7は、可動子検出スイッチ109のオン・オフ状態を検出し、検出されるオン・オフ状態に基づいて、モータ37の異常の有無を判定する。
【0068】
本実施例では、エレベータコントローラ7は、モータ37の回転指令を送出後、可動子検出スイッチ109のオン・オフ状態を検出する。エレベータコントローラ7は、回転指令を送出後、所定時間経過しても、可動子検出スイッチ109がオン状態のままオフ状態に遷移しない場合、モータ37が故障していると判断する。ここで、所定時間は、少なくとも、モータ37が正常である場合にカム部34cが可動子検出スイッチ109から離れるのに要する時間に設定される。また、所定時間は、モータ37が正常である場合に可動子が非常止め装置2が動作する位置Pまで移動するのに要する時間よりも短い時間に設定される。
【0069】
このように、電磁石35a,35bに可動子を吸着させてモータ37を回転(正転)することにより、可動子の待機時の位置からの移動を検出して、モータ37の故障が判定される。なお、可動子が電磁石35a,35bに吸着されているので、モータ37には、正常時の出力に見合った負荷がかかる。したがって、モータ37の故障を信頼性高く判定できる。
【0070】
可動子検出スイッチ109に代えて、他の位置検出センサ、例えば、光電式位置センサ、磁気式位置センサ、近接センサ(容量型、誘導型)などを適用してもよい。
【0071】
図4は、モータ37の動作を確認する時の電動作動器10の動作状態を示す、図2と同様の電動作動器10の平面図である。図4は、図3に示す電動作動器10の動作状態に続く動作状態を示す。
【0072】
エレベータコントローラ7は、前述(図3)のようにモータ37を回転(正転)させて、モータ37に故障がないと判定すると、モータコントローラ112に送るモータ37の回転指令を更新して、モータ37を逆転させる。これにより、可動子(34a,34b,34c)および電磁石35a,35bを待機時の位置に移動させる。
【0073】
モータ37が正常に回転(逆転)していれば、可動子(34a,34b,34c)は電磁石35a,35bとともに、図中に示すA’方向へ移動して、待機時の位置(図2)に戻る。このため、カム部34cによって可動子検出スイッチ109が操作されるので、可動子検出スイッチ109のオン・オフ状態が、カム部34cによって操作されないときの状態(本実施例ではオフ状態)から待機時の状態(本実施例ではオン状態)に遷移する。
【0074】
そこで、エレベータコントローラ7は、可動子検出スイッチ109のオン・オフ状態を検出し、検出されるオン・オフ状態に基づいて、モータ37の異常の有無を判定する。
【0075】
本実施例では、エレベータコントローラ7は、モータ37の回転指令を更新後、可動子検出スイッチ109のオン・オフ状態を検出する。エレベータコントローラ7は、回転指令を更新後、所定時間経過しても、可動子検出スイッチ109がオフ状態のままオン状態に遷移しない場合、モータ37が故障していると判断する。ここで、所定時間は、モータ37が正常である場合に、回転指令が更新されてから、可動子が待機位置に戻ってカム部34cによって可動子検出スイッチ109が操作されるのに要する時間に設定される。本実施例では、前述の図3の場合の所定時間と同じ時間値に設定される。
【0076】
このように、電磁石35a,35bに可動子を吸着させてモータ37を回転(逆転)することにより、可動子の待機時の位置までの移動を検出して、モータ37の故障が判定される。なお、可動子が電磁石35a,35bに吸着されているので、モータ37には、正常時の出力に見合った負荷がかかる。したがって、モータ37の故障を信頼性高く判定できる。また、モータ37を双方向に回転させて、モータ37の動作を確認することにより、モータ37の故障を信頼性高く判定できる。
【0077】
なお、本実施例では、可動子検出スイッチ109は、上述したように、電動作動器10を作動状態から待機状態に復帰する場合、およびモータ37の動作を確認する場合において用いられる。したがって、エレベータコントローラ7は、位置検出センサを新たに設けることなく、モータ37の動作確認機能を備えることができる。
【0078】
図5は、本実施例におけるモータ37の動作確認処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
本実施例における動作確認処理は、主に、エレベータコントローラ7(図2)によって実行される。なお、本実施例では、エレベータコントローラ7は、マイクロコンピュータのようなコンピュータシステムによって所定のプログラムを実行することによって、動作確認処理を実行する。
【0080】
以下、図2を適宜参照しながら、図5について説明する。なお、図5に示す動作確認処理は、周期的に実行される。また、処理開始時点で電動作動器10は待機状態(図2)にある。
【0081】
なお、図5中では、モータ37を復帰用モータと称す。
【0082】
エレベータコントローラ7は、処理を開始すると、まずステップS1において、所定期間、復帰用モータ(モータ37)が回転されていないかを判定する。ここで、所定期間は、エレベータコントローラ7が復帰用モータの動作確認を実行する時間間隔、例えば、1日(24時間)に設定される。
【0083】
エレベータコントローラ7は、時計手段を備えており、この時計手段を用いて、復帰用モータが回転されずに経過した時間、すなわち復帰用モータの動作確認が実行されずに経過した時間を計測し、計測値が所定期間以上であるかを判定する。
【0084】
エレベータコントローラ7は、所定期間、復帰用モータが回転されていないと判定すると(ステップS1のYES)、次にステップS2を実行し、所定期間内に復帰用モータが回転されていないと判定すると(ステップS2のNO)、一連の処理を終了し、再度、ステップS1からの一連の処理を実行する。
【0085】
ステップS2において、エレベータコントローラ7は、エレベータコントローラ7が有する乗りかご1の運転状態に関するデータに基づいて、乗りかご1が、ドア閉状態で停止中か、すなわち戸閉待機中であるかを判定する。エレベータコントローラ7は、戸閉待機中であると判定すると(ステップS2のYES)、次にステップS3を実行し、戸閉待機中ではないと判定すると(ステップS2のNO)、一連の処理を終了し、再度、ステップS1からの一連の処理を実行する。
【0086】
ステップS3において、エレベータコントローラ7は、乗りかご1の乗場呼びへの応答を禁止する。これにより、乗りかご1が停止し、かつ乗客がいない状態で、復帰用モータの動作を確認できる。エレベータコントローラ7は、ステップS3を実行すると、次に、ステップS4を実行する。
【0087】
ステップS4において、エレベータコントローラ7は、モータコントローラ112に回転指令を送出して、復帰用モータを正転させる。エレベータコントローラ7は、ステップS3を実行すると、次に、ステップS5を実行する。
【0088】
ステップS5において、可動子検出スイッチ109がオン状態(待機状態)からオフ状態に遷移したかを判定する。エレベータコントローラ7は、可動子検出スイッチ109がオフ状態に遷移したと判定すると(ステップS5のYES)、次にステップS8を実行し、オフ状態に遷移しておらずオン状態のままであると判定すると(ステップS5のNO)、次にステップS6を実行する。
【0089】
ステップS6において、エレベータコントローラ7は、ステップS4において復帰用モータを正転させてから所定時間が経過したかを判定する。所定時間は、少なくとも、復帰用モータが正常である場合にカム部34cが可動子検出スイッチ109から離れて、可動子検出スイッチ109がオフ状態に遷移するのに要する時間(例えば、数秒程度)に設定される。
【0090】
エレベータコントローラ7は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS6のYES)、次にステップS7を実行し、所定時間が経過していないと判定すると(ステップS6のNO)、一連の処理を終了し、再度、ステップS1からの一連の処理を実行する。
【0091】
ステップS7において、エレベータコントローラ7は、復帰モータが故障であると判断する。さらに、エレベータコントローラ7は、復帰モータが故障であることを外部(保守事業者など)に発報する。なお、エレベータコントローラ7は、復帰モータが故障に限らず、エレベータの稼働状態に異常が発生したら外部へ異常発報する機能を有している。
【0092】
エレベータコントローラ7は、ステップS7を実行すると、次にステップS13を実行する。
【0093】
ステップS8において、エレベータコントローラ7は、モータコントローラ112への回転指令を更新して、すなわち逆転指令を送出して、復帰用モータを逆転させる。エレベータコントローラ7は、ステップS8を実行すると、次に、ステップS9を実行する。エレベータコントローラ7は、ステップS8を実行する時点では、可動子検出スイッチ109がオフ状態に遷移したと判定している。すなわち、エレベータコントローラ7は、復帰用モータの正転動作は正常と判定している。そのため、エレベータコントローラ7は、次に、ステップS8以降において、復帰用モータの逆転動作を確認する。
【0094】
エレベータコントローラ7は、ステップS8を実行すると、次にステップS9を実行する。
【0095】
ステップS9において、エレベータコントローラ7は、可動子検出スイッチ109がオフ状態からオン状態に遷移したかを判定する。エレベータコントローラ7は、可動子検出スイッチ109がオン状態に遷移したと判定すると(ステップS9のYES)、次にステップS13を実行し、オン状態に遷移しておらずオフ状態のままであると判定すると(ステップS9のNO)、次にステップS10を実行する。
【0096】
ステップS10において、エレベータコントローラ7は、ステップS8において復帰用モータを逆転させてから所定時間が経過したかを判定する。所定時間は、少なくとも、復帰用モータが正常である場合に、可動子が待機位置に戻ってカム部34cによって可動子検出スイッチ109が操作されて、可動子検出スイッチ109がオン状態に遷移するのに要する時間(例えば、数秒程度)に設定される。なお、本実施例では、ステップS6における所定時間と、ステップS10における所定時間は、同じ時間値に設定される。
【0097】
エレベータコントローラ7は、所定時間が経過したと判定すると(ステップS10のYES)、次にステップS11を実行し、所定時間が経過していないと判定すると(ステップS10のNO)、一連の処理を終了し、再度、ステップS1からの一連の処理を実行する。
【0098】
ステップS10において、エレベータコントローラ7は、復帰モータが故障であると判断する。さらに、エレベータコントローラ7は、復帰モータが故障であることを外部(保守事業者など)に発報する。エレベータコントローラ7は、ステップS11を実行すると、次にステップS12を実行する。
【0099】
ステップS12において、エレベータコントローラ7は、エレベータ装置を休止させる。エレベータコントローラ7は、ステップS12を実行すると、一連の処理を終了し、保守作業が終了するまで、エレベータ装置の休止状態を保持する。
【0100】
ステップS13において、エレベータコントローラ7は、復帰用モータの逆転を停止させる。これにより、電動作動器10は、待機状態(図2)になる。エレベータコントローラ7は、ステップS13を実行すると、次にステップS14を実行する。
【0101】
ステップS14において、エレベータコントローラ7は、乗りかご1の乗場呼びへの応答を許可する。これにより、乗りかご1は、通常状態になる。エレベータコントローラ7は、ステップS14を実行すると、一連の処理を終了し、再度、ステップS1からの一連の処理を実行する。
【0102】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0103】
例えば、電動作動器10は、乗りかご1の上方部のほか、下方部や側方部に設けられてもよい。
【0104】
また、エレベータ装置は、機械室を有するものでもよいし、機械室を有しないいわゆる機械室レスエレベータでもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…乗りかご、2…非常止め装置、3…位置センサ、4…ガイドレール、5…ローラ、6…回転検出器、7…エレベータコントローラ、10…電動作動器、11…操作レバー、12…駆動軸、13…駆動ばね、14…固定部、15…押圧部材、16…第1の作動片、17…接続片、18…第2の作動片、19…第1の作動軸、20…第2の作動軸、21…引上げロッド、30…筐体、34a…吸着部、34b…支持部、34c…カム部、35a,35b…電磁石、36…送りねじ、37…モータ、38…接続ブラケット、39…電磁石支持板、41…支持部材、50…クロスヘッド、103…安全コントローラ、104a,105a,104b,105b…電気接点、106a,106b…信号線、107a,107b…フューズ、109…可動子検出スイッチ、111…直流電源、112…モータコントローラ
図1
図2
図3
図4
図5