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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】灰押出装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 1/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
F23J1/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024010900
(22)【出願日】2024-01-29
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常泉 慎也
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-230914(JP,A)
【文献】特開2000-081208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰が導入される導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する矩形状の排出口を備えるとともに、前記導入口の下方から前記排出口へ向かって上り傾斜をなす第一底板を備えた冷却槽と、
前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置された駆動室に設置され、スクレーパを前記排出口に向けて往復動作させる駆動装置と、
前記冷却槽の外側に配置され、前記排出口に接続された互いに対向する2つの側壁を少なくとも備えたシュートと、
前記2つの側壁の間に支持される第二底板と
を有し、
前記第二底板は、前記冷却槽の外側且つ前記上り傾斜に沿った延長線上に、前記第一底板から連続的に配置され
前記第一底板及び前記第二底板により形成される水切領域の長さを調整可能である灰押出装置。
【請求項2】
前記2つの側壁には、それぞれ、第一レールが前記延長線上に固定され、または、前記第一レールよりも短い複数の第二レールが前記延長線上に断続的に固定され、または、複数の金具が前記延長線上に断続的に固定され、
前記第二底板は、前記固定された前記第一レール、または、前記固定された前記第二レール、または、前記固定された前記金具のいずれかに載置されることで前記2つの側壁の間に支持される請求項1に記載の灰押出装置。
【請求項3】
前記第二底板の形状は、矩形状であり、
前記第一レール、前記第二レール、または前記金具に載置し固定される前記第二底板の枚数が選択されることで、前記水切領域の長さを調整可能にする請求項2に記載の灰押出装置。
【請求項4】
前記第一レール、前記第二レール、または前記金具は、断面が略L字型であるとともに、前記側壁に沿う立面と前記立面に対して略垂直をなす載置面とを有し、前記載置面に前記第二底板を載置して固定する請求項3に記載の灰押出装置。
【請求項5】
前記排出口よりも下方に配置された搬送装置をさらに有し、
前記シュートは、前記排出口から前記搬送装置まで前記焼却灰を導く密閉筒状の形状である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の灰押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を冷却して排出する灰押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ等の被焼却物を焼却するプラントとして焼却炉プラントが知られている。このプラント内の焼却炉(例えば、ストーカ炉)では、被焼却物を燃焼することで生成された灰(焼却灰)が灰シュートから導入口を介して灰押出装置へ落とされ、灰押出装置の冷却槽内の貯留水で冷却された後に灰押出装置の排出口から搬送装置へ排出される。灰押出装置には、貯留水で冷却された焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパ(「プッシャー」とも呼ばれる)が設けられる。スクレーパは、駆動装置により、排出口側に向かう前進方向と、これとは逆の後進方向とに往復動作して貯留水内の焼却灰を排出口へ押し出す。焼却灰が押し出されて排出される際、焼却灰は水分を含んだ状態で排出される。
【0003】
ところで、焼却される廃棄物の種類によって焼却灰の性状は異なる。例えば、硬さがありスクレーパで押し出して排出しやすい焼却灰もあれば、軟らかいためスクレーパで押し出して排出しにくい焼却灰もある。
そこで、スクレーパで押し出しやすい硬さに焼却灰を加圧(圧密)して含水率を低下させる灰加圧装置が開発された(特許文献1)。この灰加圧装置には、焼却灰の押出方向と直交する方向の水平ピンを介して揺動自在に支持された抵抗板が設けられおり、抵抗板により焼却灰を加圧するようになっている。当該抵抗板を付勢する手段としては、抵抗板自身の自重を利用するほか、ばねやシリンダ装置を付設してもよいとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-55341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の灰加圧装置のように、抵抗板を揺動自在に支持して焼却灰を加圧する構造では、その設置費用が高価であるのみならず、メンテナンス費用が増加するおそれがある。すなわち、このように複雑な構造の灰加圧装置を採用した灰押出装置には、諸費用の増加が避けられないという課題がある。
本発明は、当該課題に鑑みてなされたもので、単純な構造で焼却灰の含水率を低下させ且つ焼却灰の排出性を向上するとともに製造費用やメンテナンス費用を低減することができる、すなわち費用対効果を高めることが可能な灰押出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灰押出装置は、焼却灰が導入される導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する矩形状の排出口を備えるとともに、前記導入口の下方から前記排出口へ向かって上り傾斜をなす第一底板を備えた冷却槽と、前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置された駆動室に設置され、スクレーパを前記排出口に向けて往復動作させる駆動装置と、前記冷却槽の外側に配置され、前記排出口に接続された互いに対向する2つの側壁を少なくとも備えたシュートと、前記2つの側壁の間に支持される第二底板とを有する。
そして、前記第二底板は、前記冷却槽の外側且つ前記上り傾斜に沿った延長線上に、前記第一底板から連続的に配置され、前記第一底板及び前記第二底板により形成される水切領域の長さを調整可能にする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の灰押出装置によれば、第二底板は、冷却槽の外側に配置されるシュートが備える少なくとも2つの側壁によって支持されるとともに、冷却槽内部において上り傾斜で排出口へ向かう第一底板の当該上り傾斜に沿った延長線上に連続的に配置され、第一底板及び第二底板により形成される水切領域の長さを調整可能にする。すなわち、第一底板の傾斜に沿って第二底板を冷却槽の外側に連続的に配置するので、第一底板をあたかも冷却槽の外側へ延長したような構成となり、第一底板及び第二底板により形成される水切領域の長さが調整可能になる。
当該延長させた分、すなわち第二底板を設置した分だけ、焼却灰の自重で加圧して含水率を低下させるための水切領域が増加する。その結果、スクレーパ近傍の焼却灰の硬さが増し、スクレーパで押し出しやすくなる。例えば、水切領域の長さが一定である従来の灰押出装置では焼却灰の排出が容易でない場合があったが、本発明の灰押出装置によれば水切領域の長さが調整可能であるため、水切領域の長さを適切な長さに容易に調整且つ変更することができ、焼却灰の含水率を低下させ且つ焼却灰の優れた排出性能を示すことができる。
また、第二底板は、シュートの両側壁の間に支持され、第一底板から連続的に配置されるという単純な構造であるため安価であり、設置費用やメンテナンス費用の増加を抑制することができる。
よって、単純な構造で焼却灰の含水率を低下させ且つ焼却灰の排出性を向上するとともに製造費用やメンテナンス費用を低減することができる灰押出装置、すなわち費用対効果を高めることが可能な灰押出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る灰押出装置の断面図である。
図2図1の灰押出装置のA-A線矢視断面図である。
図3図2の灰押出装置のB-B線矢視断面図である。
図4】灰押出装置に用いる第一レールの斜視図である。
図5】変形例1の灰押出装置における第二レールの断面図である。
図6】変形例2の灰押出装置における金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を用いて、本発明の実施形態である灰押出装置を説明する。図1においては、説明の簡便のため、適宜、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いて説明する。
実施形態はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明に必須の構成を除き、実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択したり、種々変形したりして実施することができる。
【0010】
図1乃至図4を用いて、実施形態の灰押出装置1について説明する。
灰押出装置1は、焼却灰が導入される導入口2及び冷却された焼却灰を排出する矩形状の排出口3を備えるとともに、導入口2の下方から排出口3へ向かって上り傾斜をなす底板8A(第一底板)を備えた冷却槽4と、導入口2に対し排出口3と逆側に配置された駆動室4aに設置され、スクレーパ5を排出口3へ向けて往復動作させる駆動装置6と、冷却槽4の外側に配置され、排出口3に接続された互いに対向する2つの側壁7aを少なくとも備えたシュート7と、当該2つの側壁の間に支持される第二底板16とを少なくとも有する。
そして、第二底板16は、冷却槽4の外側であって、冷却槽4内で上り傾斜に配置された第一底板8Aの当該傾斜に沿った延長線上に、第一底板8Aから連続的に配置される。従来、水切領域は冷却槽内のみに形成されるが、本実施形態の灰押出装置1では、第二底板16がこのように設置されることで、冷却槽4の外側にまで水切領域8dを拡大することができる。
以下、灰押出装置1を構成する冷却槽4、駆動装置6、スクレーパ5、シュート7の順に説明し、その後、第二底板16について詳述する。
【0011】
まず、冷却槽4について説明する。
冷却槽4の導入口2は、筒状(例えば、矩形筒状)の壁面9で形成される。この筒状の壁面9は、図示しない灰シュートと直結される。なお、灰シュートの上端は、図示しない焼却炉(例えば、ストーカ炉の後燃焼段)に接続される。そして、焼却炉で発生した焼却灰は、導入口2から冷却槽4内に導入される。
冷却槽4には、焼却灰を冷却するための貯留水が基準水位(図1の破線)に貯留されている。いわゆる「水封」の構成とするために、壁面9の下端は、冷却槽4内の貯留水の基準水位よりも下方に位置する。
【0012】
冷却槽4の底板8は、導入口2の直下から矩形状の排出口3の下縁3a(具体的には、排出口3における鉛直方向且つ下方の端部)に向かって上り傾斜となる第一傾斜面8aと、導入口2の直下から第一傾斜面8aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面8bとを備える。なお、第一傾斜面8aを形成する底板8の一部を「第一底板8A」という。
冷却槽4では、導入口2の直下の底板部分(以下、「最下面8c」という)が最も低く、底板8は、下に凸の曲面状となっている。冷却槽4の断面形状は幅方向(Z軸方向)に一様であり、第一傾斜面8a、最下面8c及び第二傾斜面8bの各幅寸法(図1の紙面に直交するZ軸方向の寸法)は全て同一である。
冷却槽4には、導入口2に対し排出口3の逆側に、駆動装置6が配置される駆動室4aが配置される。
【0013】
次に、駆動装置6およびスクレーパ5について説明する。
駆動装置6は、スクレーパ5を駆動する装置であり、第二傾斜面8bの上方であって、貯留水に浸からない位置(「基準水位」よりも上方)に配置される。そして、駆動装置6は、二方向に回動可能な駆動軸6aと、スクレーパ5と駆動軸6aとを接続するアーム6bとを備える。駆動装置6は、駆動軸6aを回動させることでアーム6bを駆動し、結果としてアーム6bに接続されたスクレーパ5に前進及び後進の往復動作をさせる。
【0014】
スクレーパ5は、貯留水で冷却された焼却灰を排出口3側へ押し出す装置である。スクレーパ5は、上方を向く上板5aと排出口3側を向く押出板5bと、上板5aと押出板5bとに接続した両側板とを備える(図1には、当該両側板のうちの一方の側板5cを図示する)。上板5aに対応する下板は配置しないので、スクレーパ5は、冷却槽4の底板8側に開放した箱型の形状である。
スクレーパ5は、アーム6bが駆動することで、押出板5bの下端(すなわちスクレーパ5の先端5d)が冷却槽4の底板8の全幅に亘って接しながら底板8に沿って前進及び後進する。
ここで、スクレーパ5の「前進」とは、スクレーパ5が焼却灰を排出口3側へ押し出す方向(図1の+X軸方向)に動くことを意味する。また、スクレーパ5の「後進」とは、スクレーパ5が、「前進」の逆方向(図1の-X軸方向)に動くことを意味する。さらに、冷却槽4の底板8の「全幅」とは、冷却槽4の内部の幅方向(Z軸方向)の寸法を意味する。
【0015】
なお、駆動室4aには、冷却槽4内の貯留水の水位を検出する水位計10と、水位計10で検出された水位に基づいて、冷却槽4内に水を供給する供給管11とを備える。具体的には、水位計10及び供給管11は、駆動室4aにおいて第二傾斜面8bの上方且つ駆動装置6の上方に配置された駆動室天井板12を貫通して配置され、駆動室天井板12に固定される。
水位計10は、冷却槽4に貯留された水の水位を計測し、制御装置14へ計測データを送信する。
供給管11は、図示しない水源、例えば貯水タンクなどに接続されるとともに、先端にノズル11aを備えており、冷却槽4に水を供給(給水)する。供給管11には、図示しない水源とノズル11aとの間に電磁弁11bが設けられており、供給管11からの給水の有無は電磁弁11bの開閉で制御される。
【0016】
電磁弁11bの開閉制御は、水位計10の計測データに基づき、制御装置14が行う。制御装置14は、例えば、当該計測データが基準水位未満の水位に相当する場合に、電磁弁11bを開弁し、供給管11から冷却槽4へ注水する。そして、当該計測データが基準水位以上の水位に相当する場合に、電磁弁11bを閉弁し、供給管11から冷却槽4への注水を停止する。
また、駆動室4aには、貯留水の水位が基準水位を超えた場合に自動的に貯留水を排水するための排水管13が配備されている。排水管13の上端の開口の位置(オーバーフローレベル)は、基準水位よりも上方(例えば基準水位より約10cm程度上方)に配置される。これにより、過剰な貯留水は自動的に越流して排水管13から排出される。
【0017】
次に、シュート7について説明する。
シュート7は、冷却槽4の外側に配置されており、矩形状の排出口3の幅方向(Z軸方向)の2つの側縁3bにそれぞれ対応して接続された互いに対向する2つの側壁7aを少なくとも備える。2つの側壁7aの幅方向(Z軸方向)の間隔は、矩形状の排出口3の幅方向の間隔と同一にするのが望ましい。
シュート7は、第二底板16が設置されない場合には排出口3から搬送装置15まで、また、水切領域8dを拡大するために第二底板16が設置された場合にはシュート7内で最も+X軸方向に配置された第二底板16の+X軸方向から搬送装置15まで、焼却灰を自重で搬送装置15へ落下させるよう導く。搬送装置15は、排出された焼却灰を灰押出装置1の外部へ搬送する装置であり、例えばコンベヤである。
実施形態の灰押出装置1では、2つの側壁7aの各々には、図1乃至図4に示すように、冷却槽4内に上り傾斜に配置された第一底板8Aの当該上り傾斜に沿った延長線上に、一本の長尺の第一レール17が固定される。当該固定は、側壁7aに溶接してもよいし、ボルト及びナットなどで側壁7aに締結してもよい。当該上り傾斜に沿った延長線上に固定されるので、第一レール17は、+X軸方向に向かうにつれて+Y軸方向に向かうように傾いている。
【0018】
ここで、「上り傾斜に沿った延長線上」とは、冷却槽4内に上り傾斜に配置された第一底板8Aの当該上り傾斜の延長線上を意味するだけでなく、当該上り傾斜に「沿った」延長線上であれば、多少の傾斜角度の相違や多少の位置ずれがあっても許容する意味である。例えば、第一レール17は、+X軸方向に向かうにつれて+Y軸方向に向かうように傾斜している必要はあるが、設計に応じて、当該傾斜角度が、排出口3における第一底板8Aの傾斜角度と異なっていてもよい。また、第一底板8Aと第二底板16の各々の上面が面一にならない位置ずれがあってもよい。さらに、当該延長線は、直線のみならず曲線であってもよいので、第一レール17は、直線状の形状のみならず、第二底板16を支持可能な程度に湾曲した形状であってもよい。
これらの構成であっても、冷却槽4の外側に水切領域8dを延長することができるので、焼却灰の自重で加圧して焼却灰の含水率を低下させるとともに、焼却灰の自重で加圧してスクレーパ近傍の焼却灰の硬さを増すことができる。従って、焼却灰のスクレーパによる排出を促進することができる。
第一レール17による第二底板16の支持については、後に詳述する。
【0019】
なお、上述のように、シュート7は、少なくとも両側壁7aを備えればよいが、図1に示すように、シュート7は、矩形状の排出口3の上縁と両側壁7aに接続し且つXZ平面上に配置された天壁7bと、天壁7bの最も+X軸方向の端部と両側壁7aに接続した前壁7cと、矩形状の排出口3の下縁3aと両側壁7aに接続し且つYZ平面上に配置された後壁7dとを備えてもよい。
天壁7b、2つの側壁7a、前壁7c、及び後壁7dにより、排出口3を入口とし、開口7eを出口とする密閉筒状の焼却灰の流路が形成される。当該流路は、密閉筒状の形状であるので、灰押出装置1の外部への焼却灰の飛散を防止することができる。
【0020】
では、第二底板16、及び、第一レール17による第二底板16の支持について詳述する。
図3に示すように、第二底板16は、矩形状の形状であり、底板8と同様の耐摩耗性能を持つ金属製であることが望ましい。第二底板16の長辺の長さは、シュート7の2つの側壁7aの幅方向(Z軸方向)の間隔と同一またはやや小さい長さである。第二底板16の短辺の長さは、第二底板16を設置する際の作業の簡便性を鑑みて、長辺よりも短く、例えば長辺の1/3以下にするのが望ましい。作業の簡便性と、水切領域8dを延長する際のより繊細な調整を鑑みて、第二底板16の短辺の長さを、長辺の1/20~1/10程度にしてもよい。
ここでは、複数枚用意される矩形状の第二底板16の短辺の長さは、すべて同一寸法として説明するが、例えば、短辺の長さがL、2L(Lの2倍)、3L(Lの3倍)など、複数のバリエーションを事前に用意し、適宜、これら短辺の長さが異なる第二底板16を混在させて、第一レール17に配置してもよい。これにより、冷却槽4の外側へ水切領域8dを延長する際、より繊細な調整が可能となる。
【0021】
第一レール17は、図4に示すように、断面形状がL字型且つ長尺の金属製アングル材である。第一レール17は、側壁7aに沿う立面17aと、立面17aに対して略垂直をなす載置面17bとを有する。立面17aは、側壁7aに対して第一レール17を固定するための固定面である。第一レール17の立面17aと側壁7aとは、ボルト及びナットで締結してもよいし、溶接して固定してもよい。
載置面17bは、第二底板16が載置される面であり、第二底板16を支持する。載置面17bには、複数枚の第二底板16をボルト18a及びナット18bで締結するため、ボルト18aを挿通する複数の通孔17cが設けられている。ただし、図4では、一つの通孔17cだけを図示して、他を省略している。
【0022】
図3では、第二底板16において、+Z軸方向側の側壁7aの第一レール17に載置される箇所に2箇所、及び、-Z軸方向側の側壁7aの第一レール17に載置される箇所に2箇所の計4箇所、言い換えれば、第二底板16のZ軸方向の両端にそれぞれ2箇所づつ、第一レール17の通孔17cに対応する位置に同様の通孔が形成されている。第二底板16の通孔と第一レール17の通孔17cを位置合わせした後にボルト18aを挿通し、ナット18bで締結することで、図2に示すように、第二底板16は、2つの側壁7aの間に支持され且つ固定される。
シュート7の2つの側壁7aのそれぞれの第一レール17に第二底板16を複数固定する際には、図3に示すように、冷却槽4の排出口3の下縁3aにおいて、第一底板8Aと1つの第二底板16を接して固定した後、複数の第二底板16を+X軸方向に順次、隙間なく連続的に固定する。
L字型の金属製アングル材は安価であるのみならず、2つの第一レール17に第二底板16を載置して固定する単純な構成であるので、製造費用を抑制できるのみならず、メンテナンスも容易であることからメンテナンス費用も抑制することができる。
【0023】
なお、第二底板16を第一レール17の載置面17bにボルト18a及びナット18bで固定するのは、第二底板16を取り外し自在にするためである。これにより、冷却槽4の外側へ水切領域8dを延長する際、容易に水切領域8dの長さの調整が可能となる。
焼却炉で焼却される廃棄物の種類は季節によって変化し、このため焼却灰の性状が季節によって異なる場合があり、従来の灰押出装置では水切領域の長さが一定であるため、焼却灰の排出が容易でない場合があった。しかし、実施形態の灰押出装置1は、水切領域8dの長さを季節によって適切な長さに容易に調整且つ変更することができるので、季節によらず、焼却灰の含水率を低下させ且つ焼却灰の優れた排出性能を示すことができる。
【0024】
図1乃至図4では、1つの側壁7aには1つの第一レール17のみを固定したが、図5に示す変形例1の灰押出装置1′のように、第一レール17に替えて、第一レール17が配置されるべき上述の延長線上に、第一レール17と同一断面形状で且つ第一レール17よりも短尺の複数の第二レール17′を、互いに間隔を開けて断続的に設置してもよい。このように断続的に第二レール17′を配置しても、第一レール17と同様に、第二底板16を隙間なく連続的に支持し且つ固定できればよい。なお、変形例1の灰押出装置1′は、ここに言及の構成のみ実施形態の灰押出装置1と異なり、他の構成は灰押出装置1と同様である。従って、灰押出装置1と同一の構成については灰押出装置1と同一付番をして説明を省略する。
また、図6に示す変形例2の灰押出装置のように、第二レール17′と同一断面形状で且つ第二レール17′よりもさらに短尺の複数の金具17′′を、互いに間隔を開けて断続的に設置してもよい。このように断続的に金具17′′を配置しても、第一レール17と同様に、第二底板16を隙間なく連続的に支持し且つ固定できればよい。なお、変形例2の灰押出装置は、ここに言及の構成のみ変形例1の灰押出装置1′と異なり、他の構成は灰押出装置1′と同様である。従って、変形例1と同様、灰押出装置1と同一の構成については灰押出装置1と同一付番をして説明を省略する。
【0025】
以上、本発明の実施形態、変形例1、及び変形例2の灰押出装置について説明した。ただし、これらは例示であり、第二底板16を2つの側壁7aの間に支持できるのであれば、例えば、第二レール17′と金具17′′を混在させて側壁7aに配置してもよい。
また、例えば、車庫のシャッターのように、複数の矩形状の第二底板16が互いに屈曲可能に連結した状態で冷却槽4の底板8の下方に格納され、焼却灰の性状に応じて、排出口3の下縁3aからスライド式に引き出され、第一レール17、第二レール17′または金具17′′に載置され、シュート7の両側壁7aの間に支持される構成としてもよい。
さらに、例えば、第二底板16は、上述のような矩形状の構造物ではなく、矩形筒の底板として構成され、当該矩形筒が、焼却灰の性状に応じて、冷却槽4の排出口3から出し入れ可能なスライド式の構成であってもよい。この場合、当該矩形筒の底板は、第一レール17、第二レール17′または金具17′′に載置され、シュート7の両側壁7aの間に支持される構成となる。
【符号の説明】
【0026】
1、1′ 灰押出装置
2 導入口
3 排出口
3a 下縁
3b 側縁
4 冷却槽
4a 駆動室
5 スクレーパ
5a 上板
5b 押出板
5c 側板
5d 先端
6 駆動装置
6a 駆動軸
6b アーム
7 シュート
7a 側壁
7b 天壁
7c 前壁
7d 後壁
7e 開口
8 底板
8a 第一傾斜面
8b 第二傾斜面
8c 最下面
8d 水切領域
8A 第一底板(第一傾斜面8aの底板8)
9 壁面
10 水位計
11 供給管
11a ノズル
11b 電磁弁
12 駆動室天井板
13 排水管
14 制御装置
15 搬送装置
16 第二底板
17 第一レール
17a 立面
17b 載置面
17c 通孔
17′ 第二レール
17′′ 金具
18a ボルト
18b ナット
【要約】
【課題】単純な構造で焼却灰の含水率を低下させ且つ焼却灰の排出性を向上するとともに製造費用やメンテナンス費用を低減する灰押出装置を提供する。
【解決手段】灰押出装置1は、焼却灰が導入される導入口2及び貯留水で冷却された焼却灰を排出する排出口3を有するとともに、導入口2の下方から排出口3へ向かって上り傾斜をなす第一底板8Aを備えた冷却槽4と、導入口2に対し排出口3と逆側に配置された駆動室4aに設置され、スクレーパ5を排出口3に向けて往復動作させる駆動装置6と、
冷却槽4の外側に配置され、排出口3に接続された互いに対向する2つの側壁7aを少なくとも備えたシュート7と、当該2つの側壁7aの間に支持される第二底板16とを有する。第二底板16は、冷却槽4の外側且つ上記上り傾斜に沿った延長線上に、第一底板8Aから連続的に配置される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6